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特許異議申立

2022-700763

ハチ捕獲剤液中でのハチ及び他の昆虫の死骸沈降剤

審判番号
2022-700763
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-019205
登録番号
7000609
請求日
2022年08月04日
審決日
2023年11月20日
公報発行日
2024年02月22日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】アース製薬株式会社
  • 【権利者代理人】山田 泰之
  • 【権利者代理人】長谷部 善太郎
  • 【権利者代理人】太田 千香子
  • 【権利者代理人】安藤 達也
  • 【異議申立人】川▲崎▼ 義孝
審判長/審判官
  • 審判長 井上 典之
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 齊藤 真由美
分類
P1651.113-YAA(A01N) / P1651.121-YAA(A01N) / P1651.537-YAA(A01N) / P1651.851-YAA(A01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7000609号発明「ハチ捕獲剤液中でのハチ及び他の昆虫の死骸沈降剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7000609号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5について訂正することを認める。 特許第7000609号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7000609号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和元年8月27日(優先権主張 平成30年8月28日)を出願日とする特願2019-154663号の一部を、令和3年2月9日に新たな特許出願として出願したものであって、令和3年12月27日に特許権の設定登録がされ、令和4年2月10日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~5に係る発明の特許に対し、令和4年8月4日に川崎(“崎”は、山と立と可の“崎”)義隆(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。 令和4年10月21日付け 取消理由通知 同年12月13日 面接(特許権者) 同年12月27日 意見書(特許権者) 令和5年 1月27日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 3月27日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 4月 7日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 5月 1日 意見書(特許異議申立人) 同年 6月 5日付け 訂正拒絶理由通知 同年 7月 7日 意見書(特許権者) 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和5年3月27日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第7000609号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~5からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の「下記界面活性剤(A)を有効成分とする死骸沈降剤を含み、ハチ及び他の昆虫の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤であって、」との記載部分を、 訂正後の請求項1の「下記界面活性剤(A)を有効成分とする死骸沈降剤を含み、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤であって、」との記載に訂正するとともに(訂正事項1-1)、 訂正前の請求項1の「前記界面活性剤(A)を、前記ハチ捕獲剤全体に対して0.01重量%以上含有することを特徴とするハチ捕獲剤。」との記載部分を、 訂正後の請求項1の「前記界面活性剤(A)を、前記ハチ捕獲剤全体に対して0.05重量%以上5重量%以下含有することを特徴とするハチ捕獲剤。」との記載に訂正する(訂正事項1-2)。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項2の「下記界面活性剤(A)を有効成分とする死骸沈降剤及びハチ誘引成分を含み、ハチ及び他の昆虫の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤であって、」との記載部分を、 訂正後の請求項2の「下記界面活性剤(A)を有効成分とする死骸沈降剤及びハチ誘引成分を含み、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤であって、」との記載に訂正するとともに(訂正事項2-1)、 訂正前の請求項2の「前記界面活性剤(A)を、前記ハチ捕獲剤全体に対して0.01重量%以上含有することを特徴とするハチ捕獲剤。」との記載部分を、 訂正後の請求項2の「前記界面活性剤(A)を、前記ハチ捕獲剤全体に対して0.05重量%以上5重量%以下含有することを特徴とするハチ捕獲剤。」との記載に訂正する(訂正事項2-2)。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3の「下記界面活性剤(A)を有効成分とする、ハチ及び他の昆虫の死骸沈降剤。」との記載部分を、 訂正後の請求項3の「下記界面活性剤(A)を有効成分とする、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸沈降剤であって、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤用であり、前記界面活性剤(A)が前記ハチ捕獲剤全体に対して0.05重量%以上5重量%以下となるように用いられる、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸沈降剤。」との記載に訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項4の「下記界面活性剤(A)を含有する溶液を用いた、」との記載部分を、 訂正後の請求項4の「下記界面活性剤(A)を0.05重量%以上5重量%以下含有する溶液を用いた、」との記載に訂正するとともに(訂正事項4-1)、 訂正前の請求項4の「ハチの死骸の沈降方法。」との記載部分を、 訂正後の請求項4の「アシナガバチ亜科に属するハチの死骸の沈降方法。」との記載に訂正する(訂正事項4-2)。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項5の「下記界面活性剤(A)を含有する溶液を用いて、」との記載部分を、 訂正後の請求項5の「下記界面活性剤(A)を0.05重量%以上5重量%以下含有する溶液を用いて、」との記載に訂正するとともに(訂正事項5-1)、 訂正前の請求項5の「ハチの死骸を前記溶液中に沈降させることによるハチの捕獲方法。」との記載部分を、 訂正後の請求項5の「アシナガバチ亜科に属するハチの死骸を前記溶液中に沈降させることによるハチの捕獲方法。」との記載に訂正する(訂正事項5-2)。 2.本件訂正による訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1-1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の段落0018の「本発明のハチ捕獲剤が優れた捕獲効果を発揮するハチは…アシナガバチ亜科(Polistinae)に属するハチを挙げることができる」との記載、及び同段落0038の「本発明のハチ捕獲器は、捕獲された蛾やコバエ類等の他の昆虫の死骸も沈降するため、」との記載を根拠に、訂正前の請求項1の「ハチ及び他の昆虫の死骸」との記載部分を、訂正後の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸」に改めて、沈降すべき昆虫の種類を限定するものである。 訂正事項1-2は、同段落0012の「0.05重量%以上含有することが特に好ましい。…浸透力に優れた界面活性剤(A)の含有量は、ハチ捕獲剤全体に対して0.005重量%未満であると、使用者が満足する程度のハチ捕獲効果を十分に発揮することができない。…含有量は5重量%以下であることが好ましい」との記載を根拠に、訂正前の請求項1の「0.01重量%以上含有」との記載部分を、訂正後の「0.05重量%以上5重量%以下含有」との記載に改めて、含有量の数値範囲を限定するものである。 したがって、訂正事項1-1及び1-2からなる訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであって、特許請求の範囲の減縮のみを目的とする訂正によって、発明のカテゴリーや対象、目的が変更され、実質上特許請求の範囲が拡張し又は変更されるとはいえないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2-1は、本件特許明細書の段落0018の「本発明のハチ捕獲剤が優れた捕獲効果を発揮するハチは…アシナガバチ亜科(Polistinae)に属するハチを挙げることができる」との記載、及び同段落0038の「本発明のハチ捕獲器は、捕獲された蛾やコバエ類等の他の昆虫の死骸も沈降するため、」との記載を根拠に、訂正前の請求項2の「ハチ及び他の昆虫の死骸」との記載部分を、訂正後の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸」に改めて、沈降すべき昆虫の種類を限定するものである。 訂正事項2-2は、同段落0012の「0.05重量%以上含有する…含有量は5重量%以下」との記載を根拠に、訂正前の請求項2の「0.01重量%以上含有」との記載部分を、訂正後の「0.05重量%以上5重量%以下含有」との記載に改めて、含有量の数値範囲を限定するものである。 したがって、訂正事項2-1及び2-2からなる訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであって、特許請求の範囲の減縮のみを目的とする訂正によって、発明のカテゴリーや対象、目的が変更され、実質上特許請求の範囲が拡張し又は変更されるとはいえないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件特許明細書の段落0018の「本発明のハチ捕獲剤が優れた捕獲効果を発揮するハチは…アシナガバチ亜科(Polistinae)に属するハチを挙げることができる」との記載、及び同段落0038の「本発明のハチ捕獲器は、捕獲された蛾やコバエ類等の他の昆虫の死骸も沈降するため、」との記載、並びに同段落0012の「0.05重量%以上含有する…含有量は5重量%以下」との記載を根拠に、訂正前の請求項3の「ハチ及び他の昆虫の死骸沈降剤」との記載部分を、訂正後の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸沈降剤であって、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤用であり、前記界面活性剤(A)が前記ハチ捕獲剤全体に対して0.05重量%以上5重量%以下となるように用いられる、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸沈降剤」に改めて、沈降すべき昆虫の種類を限定するとともに、含有量の数値範囲を限定するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであって、特許請求の範囲の減縮のみを目的とする訂正によって、発明のカテゴリーや対象、目的が変更され、実質上特許請求の範囲が拡張し又は変更されるとはいえないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について 訂正事項4-1は、本件特許明細書の段落0012の「0.05重量%以上含有する…含有量は5重量%以下」との記載を根拠に、訂正前の請求項4の「界面活性剤(A)を含有する溶液を用いた、」との記載部分を、訂正後の「界面活性剤(A)を0.05重量%以上5重量%以下含有する溶液を用いた、」との記載に改めて、含有量の数値範囲を限定するものである。 訂正事項4-2は、同段落0018の「本発明のハチ捕獲剤が優れた捕獲効果を発揮するハチは…アシナガバチ亜科(Polistinae)に属するハチを挙げることができる」との記載を根拠に、訂正前の請求項4の「ハチの死骸の沈降方法」との記載部分を、訂正後の「アシナガバチ亜科に属するハチの死骸の沈降方法」に改めて、沈降すべきハチの死骸の種類を限定するものである。 したがって、訂正事項4-1及び4-2からなる訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであって、特許請求の範囲の減縮のみを目的とする訂正によって、発明のカテゴリーや対象、目的が変更され、実質上特許請求の範囲が拡張し又は変更されるとはいえないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5について 訂正事項5-1は、本件特許明細書の段落0012の「0.05重量%以上含有する…含有量は5重量%以下」との記載を根拠に、訂正前の請求項5の「界面活性剤(A)を含有する溶液を用いて、」との記載部分を、訂正後の「界面活性剤(A)を0.05重量%以上5重量%以下含有する溶液を用いて、」との記載に改めて、ハチ捕獲効果を十分に発揮できる範囲に含有量の数値範囲を限定するものである。 訂正事項5-2は、同段落0018の「本発明のハチ捕獲剤が優れた捕獲効果を発揮するハチは…アシナガバチ亜科(Polistinae)に属するハチを挙げることができる」との記載を根拠に、訂正前の請求項5の「ハチの死骸を前記溶液中に沈降させることによるハチの捕獲方法」との記載部分を、訂正後の「アシナガバチ亜科に属するハチの死骸を前記溶液中に沈降させることによるハチの捕獲方法」に改めて、ハチ捕獲時の溶液中に沈降させる死骸の種類を「アシナガバチ亜科に属する」ものに限定するものである。 したがって、訂正事項5-1及び5-2からなる訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであって、特許請求の範囲の減縮のみを目的とする訂正によって、発明のカテゴリーや対象、目的が変更され、実質上特許請求の範囲が拡張し又は変更されるとはいえないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 3.まとめ 以上総括するに、訂正事項1~5による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、なおかつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正により訂正された訂正後の請求項1~5に係る発明(以下「本1発明」~「本5発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線は、本件訂正による記載の変更箇所を示す。)。 「【請求項1】 下記界面活性剤(A)を有効成分とする死骸沈降剤を含み、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤であって、 前記界面活性剤(A)を、前記ハチ捕獲剤全体に対して0.05重量%以上5重量%以下含有することを特徴とするハチ捕獲剤。 界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 【請求項2】 下記界面活性剤(A)を有効成分とする死骸沈降剤及びハチ誘引成分を含み、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤であって、 前記界面活性剤(A)を、前記ハチ捕獲剤全体に対して0.05重量%以上5重量%以下含有することを特徴とするハチ捕獲剤。 界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 【請求項3】 下記界面活性剤(A)を有効成分とする、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸沈降剤であって、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤用であり、前記界面活性剤(A)が前記ハチ捕獲剤全体に対して0.05重量%以上5重量%以下となるように用いられる、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸沈降剤。 界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 【請求項4】 下記界面活性剤(A)を0.05重量%以上5重量%以下含有する溶液を用いた、アシナガバチ亜科に属するハチの死骸の沈降方法。 界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 【請求項5】 下記界面活性剤(A)を0.05重量%以上5重量%以下含有する溶液を用いて、アシナガバチ亜科に属するハチの死骸を前記溶液中に沈降させることによるハチの捕獲方法。 界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」 第4 取消理由通知(決定の予告)の概要 1.先に通知した取消理由 令和5年1月27日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知された取消理由は、次の〔理由4〕~〔理由6〕の取消理由からなるものである。 〔理由4〕本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 甲第2号証:米国特許第6019964号明細書 甲第6号証:Neotrop Entomol (2018) 47:152-159 よって、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。 〔理由5〕本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:J. Entomol. Soc. Brit. Columbia 2005, vol.102, p.35-42 甲第2号証:米国特許第6019964号明細書 甲第3号証:ANTHROPOD MONITORING: SEASONAL VARIATION IN THE ABUNDANCE OF SURFACE ACTIVE, SUB-SURFACE AND LOW FLYING ARTHROPODS, 2008, p.1-8 甲第4号証:Chemoecology, DOI 10.1007/s00049-014-0180-3, 2014 甲第5号証:Potato Research (2014) 57:59-75 甲第6号証:Neotrop Entomol (2018) 47:152-159 甲第7号証:Backyard Gardener - Wasps and Yellow Jackets - June 21, 2006 <URL:https://cals.arizona.edu/yavapai/anr/hort/byg/archive/waspsandyellowjackets.html> 甲第8号証:Pest Control Empireのウェブページ <URL:https://pestcontrolempire.com.au/> 甲第9号証:米国特許第4332100号明細書 甲第10号証:Protecting Garden Fruits from Spotted Wing Drosophila, 2011 甲第11号証:ロシア特許第2282353号明細書 甲第12号証:Journal of Insect Science, (2017) 17(5):91;1-7 甲第13号証:「ツイーン20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)」の安全データシート(SDS)、昭和化学株式会社、改訂日:2020/08/24 参考例A:特開2004-73144号公報 参考例B:特開2012-246273号公報 参考例C:特表2011-522953号公報 参考例D:特開2004-16151号公報 参考例E:特開平11-155560号公報 よって、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。 〔理由6〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 『(1)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載によっては、本件特許の出願時の技術常識を参酌しても、オオスズメバチなどの他のハチ目の昆虫や、イガ(0.06重量%の濃度での溺沈率が85.7%であるチョウ目の昆虫)などの他の昆虫を含む本1~3発明の「ハチ及び他の昆虫」という広範な種類の範囲、並びに本1~3発明の「0.01重量%以上」という広範な濃度範囲の全てにおいて、界面活性剤11(Tween20)を有効成分として、その死骸が液中に沈降できると直ちに解することができない。 (2)オオスズメバチなどの他のハチ目の昆虫を含む本4発明の「ハチの死骸の沈降方法」及び本5発明の「ハチの捕獲方法」の全てが、課題を解決できると認識できる範囲にあるとは認められない。』 よって、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1.理由4(新規性)及び理由5(進歩性)について (1)甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載事項について ア 甲第1号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記1a:第36頁左欄第18~48行 「Dome or Trappitt(登録商標)トラップ(アメリカ合衆国ウイスコンシン州ベルヴィル村のゲンプラーズ社)をスズメバチを誘引して捕獲するのに使用した。これらのトラップは、透明なプラスチック製の頂部と、溺死溶液を配置した不透明な黄色の底部の梨形からなる。スズメバチは、トラップの陥入した底部からトラップに入る。誘引物質は、化学物質を放出するために蓋に複数の孔を開けたポリプロピレン製の薬瓶から投与される。各薬瓶は、綿の玉に付けた化学的な誘引物質を内蔵している。薬瓶の大きさ、活性成分の装填量、及び孔の直径は、スズメバチの応答性に関する先行する研究結果、並びに実験室条件下での薬瓶からの化学物質放出率に基づいて選定された。実験室の周囲温度(22.5℃)において、直径3mmの複数の孔を有する薬瓶からの化合物の放出の概算レートは、1時間あたり200μgの酪酸ヘプチル(ランドルトら2003年)、1時間あたり8.2mgの酢酸(ランドルトとアルファロ2001年)、及び1時間あたり10mgのイソブタノール(ランドルトとアルファロ2001年で報告された重量測定法を使用)であった。薬瓶は、トラップの内部の頂部に懸架された。トラップには、水に0.125%の無香洗剤と2%のホウ素酸を入れた200~300mlの溺死溶液も含まれた。トラップは、少なくとも20mの間隔をあけて配置され、植え込みや柵の上の1.0から1.5mの高さで配置された。」 イ 甲第2号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記2a:第1欄第5~11行 「1.発明の分野 本発明は、合成虫誘引剤、ならびに虫の検出および防除のためのその使用に関する。特に、本発明は、ナスミバエ(Bactrocera latifrons (Hendel))用誘引剤としてのα-イオノールおよびカデ油の組成物または組み合わせ、ならびにこの害虫を検出、調査、観察および/または防除するための該組成物または組み合わせの使用に関する。」 摘記2b:第7欄第65行~第8欄第3行 「溺死溶液を使用して防除を行うトラップの場合、その溺死溶液は、本発明の誘引剤の誘引性を実質的に損なわない限りにおいて、誘引したハエの捕捉および殺生を援助する添加剤を任意に含んでもよく、その添加剤は、例えば、界面活性剤または染色剤である。」 摘記2c:第8欄第20~43行 「実施例1 α-イオノール単独、カデ油単独および本発明(α-イオノール+カデ油)による誘引性を野外で評価した実施例を下記に示す。 材料及び方法:溺死溶液として100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20(ICN Biomedicals、オハイオ州、オーロラ)を滴下したものを含む、黄色底のプラスチックドームトラップ(BioSys, Inc、カリフォルニア州、パロアルト)(McPhail型トラップ)の上から、複数の綿芯(長さ2.5cm、直径1.0cm)をカップの中に吊るした。そして、該綿芯を、0.5mLのα-イオノール(Bedoukian Research, Inc、コネチカット州、ダンベリー)、0.5mLのカデ油(Penta International Corporation、ニュージャージー州,リビングストン)または0.5mLのα-イオノールと0.5mLのカデ油の混合物で、綿芯のトラップ底側の端を処理した。それぞれの処理につき5つのトラップを用いて、ハワイ州、ヒロにあるマカデミアナッツ農家において、完全乱塊法で試験した。この実験法では、それぞれの処理毎に1つのトラップを、5列それぞれに設定し,その際、それぞれの列における処理毎のトラップの順序は無作為とした。格子内のそれぞれのトラップの下に、1箱当たり500匹の7~11日齢ナスミバエを放出した。同様のテストを、1994年11月3日~11月4日、1994年11月21日~11月22日および1995年1月9日~1月10日に計3回行った。」 ウ 甲第3号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記3a:第1頁下から13行目~第2頁第2行 「改良したマライセ/ピットフォール捕獲罠は、地表活動及び低飛行の節足動物の捕獲のために使用した。この方法はバイロット島での使用・試験で成功を収めている。…捕獲罠は、上方に垂直のメッシュスクリーンが設置された白いプラスチックの落とし穴の捕獲罠と、飛行昆虫の捕獲を増やすための底部の捕獲罠によって構成されている(下記の捕獲罠構築の章を参照;図1)。…頂部のボトル捕獲罠と底部の落とし穴の捕獲部は、少なくとも1cmのグリセリン又は石鹸水(理想的には、Tween20のような無香性の洗剤であるが、通常の食器用洗剤の1滴を代用してもよい。)によって満たされていなければならない。」 エ 甲第4号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記4a:4頁目左欄第19~22行 「ハエの逃亡を防ぐために、Tween-20(シグマ・アルドリッチ社、ブラジル)を含む250mLの水(1Lの水に1mLのTween-20)を各トラップに追加した。」 オ 甲第5号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記5a:第65頁第22~28行 「アブラムシのモニタリングは、ジャガイモが出現する前の6月中旬に開始され、9月初旬に収穫されるまで続けられた。使用した標準的な黄色のパントラップ(YPT)(シンジェンタ・アグロ・ゲエムベーハー社、ドイツ、マインタール)は、サイズが27.0×33.0×8.0cm(幅×長さ×高さ)であった。無臭洗剤として1mLの50%のTween20を含む約1.5Lの水道水を入れ、畑の端に置いた。トラップは週に2回空にされ、捕獲物は70%エタノールに保管された。」 カ 甲第6号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記6a:第153頁の図1 「 [図:0001406673000001.jpg] 図1 リンゴ果樹園にいるナシヒメシンクイの成虫の捕獲のために評価されたトラップモデル:Mcphail(a)、Pot(b)、及びAjar(c)。ブラジル、サンタカタリーナ州、サンジョアキン町」 摘記6b:第154頁左欄第12~25行 「テストしたベイト剤は誘引性の溶液である:(a)ブドウジュース(25%)ホルティ-フルーティー カーラロ(登録商標)モンテ アレグレ ドス キャンパス、ブラジル(GJ)、(b)サトウキビ糖蜜(25%)モリアリ(登録商標)パルホサ、ブラジル(SM)、及び(c)酢酸テルピニル(0.05%)バイオフラガン(登録商標)ポンタ グロッサ、ブラジル、に、ブラウンシュガー(8.69%)ホルティ-フルーティー カーラロ(登録商標)モンテ アレグレ ドス キャンパス、ブラジル、を添加し、Tween20 シグマ-アルドリッチ(登録商標)ジュルバツバ、ブラジルを添加(TAS)。全てのトラップにおいて、ベイト剤を収容するようにした容器には、それぞれ300mLの誘引剤が充填された。ベイト剤としてブドウジュース、サトウキビ糖蜜が選ばれたのは、それらがナシヒメシンクイの成虫にとって魅力的であることが知られているからである(キャンパスとガルシア 2001)。一方、TASは非標的種に対して効果的かつ選択的である(コバンチら2005、シチョンら2013、ナイトら2014)。」 摘記6c:第155頁左欄第17~24行 「非標的生体の選択性 果樹園Aでは、Ajar/TASとAjar/SMは、非標的昆虫の捕獲数が最も少なかった。その一方で、Mcphail/GJのセットは、ハエ目に属するものを筆頭に非標的昆虫の合計捕獲数が最も多かった。Pot/SMのセットは、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)のミツバチのような、受粉昆虫を含むハチ目(Hymenoptera)の昆虫の最大数を捕獲した(表1)。」 摘記6d:第155頁の表1 「果樹園Aにおける異なるトラップとベイト剤による、捕獲したナシヒメシンクイと非標的昆虫の平均数±標準誤差、雌比率、及び交配比率、2014年1月23日と2014年2月3日の間(ブラジル、サンタカタリーナ州、サンジョアキン町)。 ────────────────────────────────── 罠/ベイト剤… トラップ当たりの非標的捕獲の平均数±標準誤差a … ハチ目 チョウ目 ハエ目 その他 計 Ajar/TAS … 1.5±0.2c 3.25±1.0bc 7.9±2.1d 1.7±0.7cd … Pot/TAS … 20.75±8.1b 10.25±1.4a 24.8±10.3bc 15.9±5.3ab … … ────────────────────────────────── 」 キ 甲第7号証には、原文及び和訳として、次の記載がある。 摘記7a:1枚目~2枚目 原文:「BACKYARD GARDENER Wasps and Yellow Jackets - June 21, 2006 … When they take off, they hit the side of the bucket and fall into the soapy water where they sink to the bottom.」 和訳:「裏庭の庭師 ワスプ(訳注:ミツバチとアリ以外の有剣類)とイエロージャケット(訳注:西洋スズメバチ=Vespula pensylvanica)-2006年6月21日…彼らが離陸するとき、彼らはバケツの側面にぶつかり、石鹸水に落ち、そこで彼らは底に沈む。」 ク 甲第8号証には、和訳又は原文として、次の記載がある。 摘記8a:2枚目の21~22行目(和訳) 「洗剤は水の表面張力を壊すので、ハチが表面に着地すると、それは底に沈んで溺れます。」 摘記8b:3枚目の下から2行目(原文) 「COPYRIGHT 2020 PEST CONTROL」 ケ 甲第9号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記9a:第2欄第55~58行 「家庭用洗剤を数滴含む普通の水は、液体26として非常に適切に機能する。このような混合物は、無毒で簡単に入手できることが非常に望ましく、洗剤は昆虫を濡らし、一般にリザーバの底に沈ませる。」 コ 甲第10号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記10a:第4頁右欄の下から8~5行 「無香料の液体石鹸を一滴加えると、液体の表面張力が崩れ、ハエがカップの底に沈むことができます。」 サ 甲第11号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記11a:第3頁第50~52行 「果汁または砂糖水のような液体の誘引餌に、熟した果物片が加えられることや、水面の表面張力を低下させ捕獲器に入ったスズメバチ類がより早く沈むように、液体石鹸が加えられることもある。」 摘記11b:請求項1 「スズメバチ類およびスズメバチの駆除剤であって、前記駆除剤が捕獲器に設置することのできる誘引餌の形態を有し、砂糖、誘引剤および界面活性剤を含むものである際に、前記駆除剤が、前記誘引剤としての果物の香料を含み、前記界面活性剤としてポリオキシエチル化アルキルフェノール、アルキルベンゼンスルホン酸塩、トリポリリン酸ナトリウムを含有する群から選ばれた物質を含み、さらに前記駆除剤が酵母および充填剤を含み、前記充填剤が小麦ふすま、粉砕堅パン、小麦粉、またはそれらのうち1つと果物の粉末を1:1の割合で混ぜた混合物を含み、また前記駆除剤の構成成分が以下の割合(重量%)である場合に、殺虫剤ダイアジノンを含むことがあることを特徴とする駆除剤。 砂糖 42-79 酵母 2-4 充填剤 14.5-50 果実の香料 1-2 界面活性剤 1-4 殺虫剤ダイアジノン 1以下」 シ 甲第12号証には、和訳にして、次の記載がある。 摘記12a:要約及び第2頁左欄第46~50行 「ドイツのスズメバチVespula germanica F.とふつうのスズメバチVespula vulgaris L.(膜翅目:ハチ目)は、多くの国で経済的、環境的、および医学的に重要な害虫です。これらのハチを問題のある場所で捕獲して殺すためにトラップに配置できる魅力的なベイトの開発と改善が必要です。… 2つの果物を等重量比で混合し、この混合物25gをティーバッグ(6×8cm;…)に入れ、ラウリル硫酸ナトリウム(2.5g)を添加して、水の表面張力を低下させました。」 ス 甲第13号証には、次の記載がある。 摘記13a:1枚目 「ツイーン20 〔ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート〕 改訂日:2020/08/24」 摘記13b:3枚目 「比重 :1.08~1.13(25/4℃)」 セ 参考例Aには、次の記載がある。 摘記A1:請求項2 「【請求項2】 容器20内に、害虫に対して忌避性の少ない殺虫剤を配合した液状物21を収納して捕獲部とし、その容器20に液状物21の液面に害虫を誘引する誘引源22を設けたことを特徴とする害虫誘引捕獲器。」 摘記A2:段落0001、0005、0006及び0015 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ゴキブリ、ハエ、小型飛翔昆虫、農業害虫、スズメバチ、アシナガバチ等の害虫を誘引して捕獲する害虫誘引捕獲器に関する。… 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 前述したように、害虫を液体に落下して捕獲し、溺死させるようにした形態の害虫誘引捕獲器の場合、スズメバチやアシナガバチ以外の混虫、例えば、ショウジョウバエ、ノミバエ、キノコバエ等のコバエ類が、誘引組成物に誘引されて卵を産み付け、容器内にこれらコバエ類が発生することがあった。… 【0006】 本発明は、前述のことに鑑みなされたものであって、その目的は、害虫を液体に落下して捕獲し、溺死させるようにした形態でありながら、容器内にハエ類などが発生することがない害虫誘引捕獲器を提供することである。… 【0015】…前記液状物21としては液体に界面活性剤を混ぜたもの等が用いられる。」 摘記A3:段落0020、0025及び0034 「【0020】次に実施例を説明する。容器としては図1に示すものを用いた。液状の害虫誘引捕獲組成物としては、エタノール40g、水110g、酢20g、砂糖50gを混合したものを用いた。前記液状の害虫誘引捕獲組成物に害虫に対して忌避性の少ない殺虫剤として下記の表1に示すように昆虫成長制御剤を配合したものを実施例1~5とし、比較例1として下記の表1に示すように液状の害虫誘引捕獲組成物にピレスロイド系殺虫剤を配合したもの、比較例2として殺虫剤を配合しないものとした。… 【0025】以上の結果から、昆虫成長制御剤を混合した場合および殺虫剤がない場合は捕獲されるスズメバチに大きな差はみられなかったが、ピレスロイド系殺虫剤(フェノトリン)を配合した場合捕獲数が少ない傾向が見られ、昆虫に対して忌避作用がある可能性が示唆された。… 【0034】…害虫を液体に落下して捕獲し、溺死させるようにした形態でありながら、容器内にハエ類などが発生することがない害虫誘引捕獲器となる。」 ソ 参考例Bには、次の記載がある。 摘記B1:段落0007及び0016 「【0007】…本発明のa成分であるポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタンは、ソルビトール又はソルビタンとラウリン酸との部分エステルであるソルビタン脂肪酸エステルに、エチレンオキシドを付加させた非イオン性界面活性剤である。エチレンオキシドの付加モル数は特に限定されるものではないが、一般的に5~50モル、好ましくは10~30モル、より好ましくは20モルであり、エチレンオキシドの20モル付加物はポリソルベート20として食品添加物公定書に収載されている。エチレンオキシドの付加モル数が5モル未満では害虫の捕獲効果が不十分であり、50モルを超えると殺虫効果の速効性が発揮されない場合がある。… 【0016】…本発明の害虫駆除組成物の対象生物は、例えば、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ等のゴキブリ類が主体であるが、アブラムシ類、ハダニ類、ノミ類、ダニ類、シラミ類等の昆虫類などの気門を有する陸性節足動物であれば特に限定されることなく広く使用することができる。」 タ 参考例Cには、次の記載がある。 摘記C1:段落0048 「ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(例えば、TWEEN 20)」 チ 参考例Dには、次の記載がある。 摘記D1:段落0002、0017~0018及び0021~0022 「【0002】【従来の技術】従来、人畜に害を与える虫として夜盗蛾、ハエ、ゴキブリ、アブラムシ、又は蚊などが知られる。例えば、鱗翅目ヤガ科に属する夜盗蛾は、夜中に活動して野菜類を食害することで良く知られる。一方、それらの害虫を捕食したり植物の受粉を媒介する益虫として蜂やカマキリなどが知られるが、蜂などは時によって人畜を襲う害虫にもなる。… 【0017】斯くて、捕虫容器1内に進入した虫はそのまま薬液8中に落下して溺死し、落下を免れた虫は薬液8上を飛び回るなどしてから翅を休めるべく吊糸12に留まる。しかし、吊糸12には薬液8が浸透しているため、その薬液8が虫の翅や体に付着する。このため、吊糸12に留まった虫も飛翔能力を失って薬液8中に落下し、又は気門を閉塞されて窒息し、やがては薬液8中で死に絶える。特に、虫の死骸からはフェロモンその他の誘引物質が発散され、これによって誘引効果が助長される。因に、薬液8に神経系を麻痺させる物質を混入しれおけば、虫を直ぐさま薬液8中に落下させることができ、殺虫剤入りのものでは薬液8に落下した虫を即死させることができる。尚、薬液8中に落下した虫が苦し紛れに捕虫容器1の内壁を這い上がるのを防止するため、その内壁を平滑な垂直面としたり、あるいは薬液8に界面活性剤などの潤滑剤を混入しておくとよい。 【0018】ところで、以上のような害虫駆除装置として、1.5リットルの捕虫容器1を用い、その中に誘引成分としてアルコール及び蜂蜜などの糖類、虫の神経系を麻痺させる物質としてリモネンを含む柑橘類及び辛辣性香辛料の抽出エキスを含んで成る薬液200ccを入れ、これを野菜畑の近くに一週間設置したところ、夜盗蛾、ハエ、蜂などを捕虫容器1の半分適度の位置まで捕獲することができた。… 【0021】【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に係る害虫駆除装置によれば、虫を誘引するための誘引手段が収容される捕虫容器を備え、この捕虫容器の外側に虫の進入を許容する空洞部が形成されると共に、捕虫容器には空洞部に来集した虫を該捕虫容器内に通す穴が穿設されて成ることから、これを所定の場所に配置しておくだけで捕虫容器内に虫を進入せしめて捕獲することができる。 【0022】又、誘引手段として誘引成分を含んだ薬液が捕虫容器内に収容されるようにしていることから、捕虫容器内に誘引した虫を逃さず溺死させることができる。しかも、捕虫容器の穴から漏れ出す誘引成分が空洞部に滞留することから、屋外での使用でも空洞部に多数の虫を来集せしめ、これを捕虫容器内に誘引して死滅させることができる。」 ツ 参考例Eには、次の記載がある。 摘記E1:段落0028 「【0028】次に、500ml容三角フラスコ(実容量620ml)に上記の菌液40mlとTween-20を1滴(0.02ml)入れた。」 (2)甲第2号証及び甲第6号証に記載された発明 ア 甲2発明 甲第2号証の第1欄第5~11行(摘記2a)の「本発明は、ナスミバエ(…)用誘引剤としてのα-イオノールおよびカデ油の組成物または組み合わせ、ならびにこの害虫を検出、調査、観察および/または防除するための該組成物または組み合わせの使用に関する。」との記載、及び 同第8欄第20~43行(摘記2c)の「実施例1…溺死溶液として100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20(…)を滴下したものを含む、黄色底のプラスチックドームトラップ(…)の上から、複数の綿芯(長さ2.5cm、直径1.0cm)をカップの中に吊るした。そして、…0.5mLのα-イオノールと0.5mLのカデ油の混合物で、綿芯のトラップ底側の端を処理した。」との記載からみて、甲第2号証には、 『害虫(ナスミバエ)を防除するためのトラップに使用される、100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20を滴下したものを含む、溺死溶液。』についての発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 また、甲第2号証には、 『100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20を滴下したものを含む溺死溶液をトラップに使用する、害虫(ナスミバエ)の防除方法。』についての発明(以下「甲2発明の2」という。)が記載されているといえる。 イ 甲6発明 甲第6号証の第153頁の図1(摘記6a)の「リンゴ果樹園にいるナシヒメシンクイの成虫の捕獲のために評価されたトラップモデル:…Pot(b)」との記載、 同第154頁左欄第12~25行(摘記6b)の「テストしたベイト剤は誘引性の溶液である:…(c)酢酸テルピニル(0.05%)バイオフラガン(登録商標)ポンタ グロッサ、ブラジル、に、ブラウンシュガー(8.69%)ホルティ-フルーティー カーラロ(登録商標)モンテ アレグレ ドス キャンパス、ブラジル、を添加し、Tween20 シグマ-アルドリッチ(登録商標)ジュルバツバ、ブラジルを添加(TAS)。」との記載、及び 同第155頁の表1(摘記6d)の「果樹園Aにおける異なるトラップとベイト剤による、捕獲したナシヒメシンクイと非標的昆虫の平均数±標準誤差」における「Pot/TAS」の記載からみて、甲第6号証には、 『リンゴ果樹園にいるナシヒメシンクイの成虫の捕獲のためのトラップに充填されたベイト剤(誘引性の溶液)であって、酢酸テルピニル0.05%と、ブラウンシュガー8.69%とTween20を含み、ナシヒメシンクイ、並びにハチ目、チョウ目、ハエ目、及びその他の非標的昆虫を捕獲したベイト剤。』についての発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているといえる。 また、甲第6号証には、 『酢酸テルピニル0.05%と、ブラウンシュガー8.69%とTween20を含むベイト剤(誘引性の溶液)を用いた、ナシヒメシンクイ、並びにハチ目、チョウ目、ハエ目、及びその他の非標的昆虫の捕獲方法。』についての発明(以下「甲6発明の2」という。)が記載されているといえる。 (3)本1発明について ア 甲第2号証を主引用例とした場合の検討 (ア)対比 本1発明と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「TWEEN 20」は、参考例Cの段落0048(摘記C1)の「ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(例えば、TWEEN 20)」との記載からみて、本1発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」に相当する。 甲2発明の「害虫(ナスミバエ)を防除するためのトラップに使用される…TWEEN 20…を含む、溺死溶液」と、本1発明の「前記界面活性剤(A)を…含有することを特徴とするハチ捕獲剤」とは、甲2発明の「害虫」を「トラップ」する「溺死溶液」が「害虫捕獲剤」であり、甲2発明の「TWEEN 20」が「界面活性剤(A)」であることから、両者は「界面活性剤(A)を含有する害虫捕獲剤」という点において共通する。 してみると、本1発明と甲2発明は『下記界面活性剤(A)を含有する害虫捕獲剤。界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)』という点において一致し、次の(α)~(γ)の3つの点において相違する。 (α)害虫捕獲剤全体に対する界面活性剤(A)の含有量が、本1発明は「0.05重量%以上5重量%以下」であるのに対して、甲2発明は「100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20」の量である点 (β)害虫捕獲剤に含まれる界面活性剤(A)が、本1発明は「死骸沈降剤」の「有効成分」として含まれるものとして特定され、これにより「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降する」ものとして特定されているのに対して、甲2発明においては、溺死溶液に含まれる「TWEEN 20」という成分が「死骸沈降剤」の「有効成分」として説明されておらず、この成分により「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降する」ことが明らかにされていない点 (γ)害虫捕獲剤が、本1発明は「アシナガバチ亜科に属するハチ」を害虫としているのに対して、甲2発明においては「ナスミバエ」を害虫としている点 (イ)判断 上記(ア)のとおり、本1発明と甲2発明との間には、相違点(α)、(β)及び(γ)が存在するから、本1発明は甲2発明に対して新規性を有する。 さらに、進歩性に関して、事案に鑑みて、先ず上記(γ)の相違点について検討し、次いで(β)の相違点、(α)の相違点の順に検討する。 a.上記(γ)の相違点について 甲2発明は、ナスミバエを防除するためのトラップに使用される溺死溶液であるところ、甲第2号証には、当該溺死溶液をナスミバエ以外の害虫を対象にするとの記載や示唆はない。 一方、甲第6号証の第155頁左欄第17~24行(摘記6c)の「果樹園Aでは、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)のミツバチのような、受粉昆虫を含むハチ目(Hymenoptera)の昆虫の最大数を捕獲した(表1)。」との記載にあるように、ナシヒメシンクイの成虫を捕獲するためのトラップに、不可避的にハチ目の昆虫が捕獲されてしまうことは知られている。 また、参考例Dの段落0018(摘記D1)の「害虫駆除装置として、1.5リットルの捕虫容器1を用い、…これを野菜畑の近くに一週間設置したところ、夜盗蛾、ハエ、蜂などを捕虫容器1の半分適度の位置まで捕獲することができた。」との記載にあるように、夜盗蛾、ハエ、ハチなどを対象とする害虫駆除装置も知られている。 しかしながら、特定の昆虫の捕獲を目的とした捕獲装置(トラップ)を、別の昆虫の捕獲を対象とする際には、捕獲剤や装置の構造等をその昆虫に合わせたものにする必要があることを考えれば、ナスミバエを対象としたトラップを「アシナガバチ亜科に属するハチ」を対象とするものにすることの動機付けはない。 また、参考例Dの段落0002(摘記D1)の「害虫を捕食したり植物の受粉を媒介する益虫として蜂やカマキリなどが知られる」との記載にあるように、アシナガバチ亜科に属するハチは害虫を捕食する益虫として知られているので、本1発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ」のような益虫を駆除対象とする動機付けがあるとはいえない。 してみると、上記(γ)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 b.上記(β)の相違点について 甲第7号証(摘記7a)の「ワスプ…とイエロージャケット…彼らはバケツの側面にぶつかり、石鹸水に落ち、そこで彼らは底に沈む。」との記載や、甲第9号証(摘記9a)の「洗剤は昆虫を濡らし、一般にリザーバの底に沈ませる」との記載や、甲第10号証(摘記10a)の「無香料の液体石鹸を一滴加えると、液体の表面張力が崩れ、ハエがカップの底に沈む」との記載や、甲第11号証(摘記11a)の「水面の表面張力を低下させ捕獲器に入ったスズメバチ類がより早く沈むように、液体石鹸が加えられる」との記載にあるように、洗剤(界面活性剤・石鹸)が存在すると、水面の表面張力が低下して、ハチ及び他の昆虫(ハエなど)が、底に沈むことは、科学的な事実として普通に知られている。 しかしながら、上述のとおり、ナスミバエを対象とする甲2発明を「アシナガバチ亜科に属するハチ」とする動機付けはないから、甲2発明の溺死溶液に含まれる「TWEEN 20」という成分を「アシナガバチ亜科に属するハチ」の「死骸沈降剤」の「有効成分」にする動機付けはない。 また、本件特許明細書の段落0026の表1には、界面活性剤1~21を水と混合して「0.06重量%」の均一な水溶液をハチ捕獲剤の試験献体とした場合に、界面活性剤1~21の一部に溺沈率がDの評価になるという試験結果が示されており、界面活性剤の種類によって「ハチ致死時間」や「溺沈率」の作用が異なることが示されている。 加えて、令和4年12月27日付けの意見書(特許権者)の第32頁には、同じチョウ目に属する昆虫であっても、界面活性剤11の「0.06重量%」の濃度での溺沈率が、イガ(85.7%)とコイガ(100%)とで異なることが具体的な試験結果によって実証されていることを考えれば、甲第7及び9~11号証に記載のハエ目やハチ目に属する昆虫の生体が液中に沈む事例が記載されていたとしても、ナスミバエを対象とする溺死溶液である甲2発明を、「コバエ類」と「アシナガバチ亜科に属するハチ」という特定の種類の昆虫の死骸が溺沈させるための「死骸沈降剤」とすることまで当業者が想到するとはいえない。 さらに、甲2発明の「溺死溶液」の「溺死」とは、捕獲された害虫が生きたまま液中に沈降し、空気が遮断された液中で呼吸ができずに窒息することを意味し、ハチ及びコバエ類を短い時間で致死させ、致死後の死骸を容器の底まで沈降させるという「死骸沈降」と異なるものと解されるので、甲2発明の界面活性剤が「死骸」の沈降剤の有効成分として機能しているとは認められない。 そして、本1発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本1発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という含有量で用いて、本1発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類」を、短い時間で致死に至らしめ、高い溺沈率となる「死骸沈降剤」として機能することについては、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらない。 してみると、上記(β)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 c.上記(α)の相違点について 甲第13号証(摘記13b)の「比重 :1.08~1.13(25/4℃)」との記載にあるように、甲2発明の「TWEEN 20」の比重は、四捨五入すると1.1程度であり、参考例Eの段落0028(摘記E1)の「Tween-20を1滴(0.02ml)」との記載を参酌すると、甲2発明の「100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20」の重量%は、0.02mL×2滴×1.1÷100mL×100=0.044重量%と計算されるので、上記(α)の点は実質的な相違点である。 そして、甲第2号証には、甲2発明の「100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20」の量を変更しようとする動機付けとなる記載がなく、甲第4号証(摘記4a)の「ハエの逃亡を防ぐために、Tween-20(シグマ・アルドリッチ社、ブラジル)を含む250mLの水(1Lの水に1mLのTween-20)を各トラップに追加した。」との記載にある「1Lの水に1mLのTween-20」の濃度は、1mL×1.1÷1000mL×100=0.11重量%であり、甲第5号証(摘記5a)の「無臭洗剤として1mLの50%のTween20を含む約1.5Lの水道水」との記載にある「Tween20」の濃度は、1mL×50%×1.1÷1500mL=0.0366重量%であり、甲第11号証(摘記11b)の「スズメバチ類およびスズメバチの駆除剤であって、…前記駆除剤の構成成分が以下の割合(重量%)… 界面活性剤1-4」との記載にある「スズメバチの駆除剤」中の「界面活性剤」の濃度は1~4重量%とされているものの、昆虫の種類によって実用上の捕獲効果が得られる界面活性剤の有効濃度は異なるのが普通であるから、甲2発明のようなナスミバエの「トラップに使用」される「溺死溶液」に含まれる界面活性剤(Tween20)の「100mLの蒸留水に2滴」という濃度を、本1発明のような「0.05重量%以上5重量%以下」とすることの動機付けは、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらない。 してみると、上記(α)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 d.本1発明の効果について 本1発明は、本件特許明細書の段落0039に記載されるように、「本発明のハチ捕獲剤は、ハチが致死するまでの時間が短いため、ハチ捕獲器からハチが脱出することもなく、優れたハチ捕獲効果を発揮する。しかも、本発明のハチ捕獲剤は、ハチの死骸がハチ捕獲剤の液中に沈降するため、ハチ捕獲剤の液面にハチの死骸が浮いて、別のハチの足場となって脱出を促すことや、別のハチのハチ捕獲剤への接触を妨げることがないため、効率的にハチを捕獲することができ有用である。また、本発明のハチ捕獲剤は、捕獲されたハチ以外の昆虫も溺死し死骸が沈降するため、例えば、コバエ類の大量発生等もなく、長期間にわたり優れたハチ捕獲効果とともに、美観をも維持することができる。」との効果を有するとされているところ、実際に、令和4年12月27日付けの意見書(特許権者)の第17頁には「界面活性剤11:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20)」の0.06重量%の均一な水溶液において、アシナガバチの致死時間が「98秒」になることが記載され、同第33頁には、界面活性剤11の0.06重量%の均一な水溶液において、ショウジョウバエの致死時間と溺沈率が「23.3秒」と「100%」になることが記載されおり、例えば、参考例Aの段落0005(摘記A2)の「害虫を液体に落下して捕獲し、溺死させるようにした形態の害虫誘引捕獲器の場合、…ショウジョウバエ、ノミバエ、キノコバエ等のコバエ類が、誘引組成物に誘引されて卵を産み付け、容器内にこれらコバエ類が発生する」との記載にあるように、ショウジョウバエは「コバエ類」の一種に分類されるところ、本1発明が上記効果を奏することが示されている。 そして、甲2発明は、ナスミバエのトラップに使用される溺死溶液であり、かつ溺死溶液に含まれる界面活性剤(Tween20)が「100mLの蒸留水に2滴」という濃度のものであるところ、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても、そのようなものが上記効果を奏することは見いだせないので、本1発明の効果が当業者によって容易に予測可能であるとはいえない。 e.特許異議申立人の主張について (a)令和5年5月1日付けの意見書(特許異議申立人)の3(2)アの項(第3頁)において、特許異議申立人は『1滴の量が0.02mLであることが疑いの余地がないほど明確なことであり、特許権者の主張は、取消理由通知で認定された1滴の容量(0.02mL)を覆すに足るものではありません。』と主張する。 しかしながら、上記c.に示したように、甲2発明の「100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20」の重量%は、0.02mL×2滴×1.1÷100mL×100=0.044重量%と計算されるので、特許異議申立人の当該主張を参酌しても、上記(α)の点は実質的な相違点であるといわざるを得ない。 (b)また、同意見書の3(2)イの項(第3頁)において、特許異議申立人は『界面活性剤が0.05重量%未満の場合と0.05重量%以上の場合とで作用効果に格別な差が生じるものではなく、また界面活性剤が5重量%よりも多いと、5重量%以下の場合とで作用効果に格別な差が生じるものでもないので、界面活性剤を0.05重量%以上5重量%以下含有していることに臨界的な意義はありません。』と主張する。 しかしながら、本件特許明細書の段落0008の「本発明のハチ捕獲剤は、ハチが致死するまでの時間が短いため、ハチ捕獲器からハチが脱出することもなく、優れたハチ捕獲効果を発揮する。」との記載、及び同段落0012の「0.05重量%以上含有することが特に好ましい。…浸透力に優れた界面活性剤(A)の含有量は、ハチ捕獲剤全体に対して0.005重量%未満であると、使用者が満足する程度のハチ捕獲効果を十分に発揮することができない。」との記載にあるように、本1発明は、優れたハチ捕獲効果(ハチが致死するまでの時間が短いため、ハチ捕獲器からハチが脱出することがない)を十分に発揮させるために、界面活性剤の下限値を「0.05重量%以上」に設定しているものであるから、界面活性剤の下限値を「0.05重量%以上」に設定することに臨界的な意義がないとはいえない。 そして、令和4年12月27日付けの意見書(特許権者)の第15頁には、セイヨウミツバチの場合に、界面活性剤11の濃度が0.0044重量%(0.005重量%未満)の場合に、ハチが致死することなく脱出してしまい、同濃度が0.01重量%(0.005重量%以上)の場合に、ハチ致死時間が328.0秒になるという具体的な試験結果が示されているところ、特定の種類の昆虫に対する特定の種類の界面活性剤の捕獲効果は、その濃度によって大きく左右されるものであり、その濃度の臨界的な下限値は実際に試験してみないと確認できないものである。 してみると、アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類に対する界面活性剤11の捕獲効果(又は沈降効果)を奏する界面活性剤の含有量の臨界的な下限値を「0.05重量%」に設定することが、本願出願時の技術水準において当業者にとって容易想到であるとはいえず、その下限値の設定に臨界的な意義がないとはいえないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (c)さらに、同意見書の3(2)ウの項(第4頁)において、特許異議申立人は『アシナガバチ亜科を捕獲対象としても、アシナガバチ亜科はハチ目昆虫であり、甲第2号証はハチ捕獲に転用が容易なので、依然として進歩性を肯定する理由がありません。また、自然界に存在している様々な害虫の中から、アシナガバチ亜科というありふれた害虫を捕獲対象害虫として選定すること自体に意外性、困難性はありません。』と主張する。 しかしながら、特定の昆虫の捕獲を目的とした捕獲器(トラップ)を、別の昆虫を対象とする際には、捕獲剤や装置の構造をその昆虫に合わせたものにする必要があるところ、特定の種類の昆虫に対する特定の種類の界面活性剤の捕獲効果は、その濃度によって大きく左右されるものであるから、ナスミバエを対象とする甲2発明を「アシナガバチ亜科に属するハチ」を対象とするものに転用することは容易とはいえない。 また、上記「アシナガバチ亜科というありふれた害虫を捕獲対象害虫として選定すること自体に意外性、困難性はありません」との主張について、アシナガバチ亜科に属するハチが「ありふれた害虫」であることを裏付ける具体的な刊行物等の証拠は、特許異議申立人によって提示されていないので、特許異議申立人の証拠方法によっては、甲2発明の「ナスミバエ」を「アシナガバチ亜科に属するハチ」に変更することが容易であるとはいえない。 さらに、昆虫の種類によって致死時間や溺沈率に差が生じることは、科学的な事実として否定できないので、本1発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という濃度範囲で「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降する」ことを予見できるといえる、本願出願時の技術常識や公知刊行物等の存在が示されない以上、甲2発明をハチ捕獲に転用が容易であるとはいえない。 このため、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (d)加えて、同意見書の3(2)エの項(第4頁)において、特許異議申立人は『甲第10号証には、捕獲されたオウトウショウジョウバエがカップの底に沈むことが記載されており、…コバエ類を捕獲対象としても、進歩性を肯定する理由にはなりません。』と主張する。 しかしながら、甲第10号証の「オウトウショウジョウバエから庭の果物を守る…無香料の液体石鹸を一滴加えると、液体の表面張力が崩れ、ハエがカップの底に沈むことができます。」との記載は、液体石鹸が本1発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」であり、一滴が本1発明の「0.05重量%以上5重量%以下」であることを示すものではない。 そして、昆虫の種類や界面活性剤の種類と濃度によって溺沈率が大きく左右されることは、科学的な事実として否定できないところ、甲第10号証の記載によっては、本1発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という濃度範囲で「コバエ類」が「死骸」として「液中に沈降する」ことまでをも予見できない。このため、甲2発明の捕獲対象をコバエ類に変更することが容易であるとはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 f.まとめ 以上総括するに、本1発明は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。 また、甲第2号証を主引用例とした場合の進歩性について、本1発明は、甲第1~13号証に記載された発明若しくは技的事項、並びに参考例A~Eに記載の技術事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するとはいえない。 したがって、本1発明について、取消理由の理由4及び理由5に理由はない。 イ 甲第6号証を主引用例とした場合の検討 (ア)対比 本1発明と甲6発明をと対比する。 甲6発明の「Tween20」は、参考例Cの段落0048の「ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(例えば、TWEEN 20)」との記載からみて、本1発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」に相当する。 甲6発明の「ナシヒメシンクイ、並びにハチ目、チョウ目、ハエ目、及びその他の非標的昆虫を捕獲したベイト剤」は、本1発明の「ハチ捕獲剤」に相当する。 してみると、本1発明と甲6発明は『下記界面活性剤(A)を含有するハチ捕獲剤。界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)』という点において一致し、次の(δ)~(ε)の2つの点において相違する。 (δ)ハチ捕獲剤全体に対する界面活性剤(A)の含有量が、本1発明は「0.05重量%以上5重量%以下」であるのに対して、甲6発明は含有量が不明な点 (ε)ハチ捕獲剤に含まれる界面活性剤(A)が、本1発明は「死骸沈降剤」の「有効成分」として含まれるものとして特定され、これにより「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降する」ものとして特定されているのに対して、甲6発明においては、ベイト剤に含まれる「Tween20」という成分が「死骸沈降剤」の「有効成分」として説明されておらず、この成分により「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降する」ことが明らかにされていない点 (イ)判断 上記(ア)のとおり、本1発明と甲6発明との間には、相違点(δ)及び(ε)が存在するから、本1発明は甲6発明に対して新規性を有する。 さらに、進歩性に関して、事案に鑑みて、先ず上記(ε)の相違点について検討し、次いで(δ)の相違点を検討する。 a.上記(ε)の相違点について 上記ア(イ)b.に示したように、甲6発明は、ナシヒメシンクイを捕獲するベイト剤に関するものであるところ、甲第6号証には、捕獲した昆虫がベイト剤中に溺沈することについて何ら記載されていない。 そして、捕獲にとどまらず、死骸の沈降まで意図していると仮定しても、洗剤(界面活性剤・石鹸)が存在すると、水面の表面張力が低下して、ハチやハエなどの昆虫が、底に沈むことは、甲第7号証や甲第9~11号証に記載されるように、科学的な事実として普通に知られているが、界面活性剤の種類や昆虫の種類によって、特定の濃度域における溺沈率などの有用性(効果)が大きく異なるという科学的な事実が存在するので、甲6発明の「Tween20」の所定量での使用が、害虫を致死して液中に沈降させるための「死骸沈降剤」の「有効成分」として機能していると直ちには解せない。 また、本1発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本1発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という含有量において、本1発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類」を、短い時間で致死に至らしめ、高い溺沈率となる「死骸沈降剤」として機能することについては、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらない。 してみると、上記(ε)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 b.上記(δ)の相違点について 甲6発明には「Tween20」という成分が配合され、甲第6号証にはセイヨウミツバチ等のハチ目の昆虫、チョウ目の昆虫及びハエ目の昆虫が捕獲されることが示されている。 また、甲第4号証には、ハエの逃亡を防ぐために「Tween-20」を0.11重量%の濃度でトラップ用の液体(水)に添加することが記載されており、甲第11号証には「界面活性剤」を「スズメバチ」の捕獲器に設置される駆除剤(ベイト剤)に1~4重量%の濃度で使用することが記載されている。 しかしながら、これらの記載から、甲6発明の「Tween20」という界面活性剤の配合量が、本1発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という数値範囲にあるとはいえない。 そして、同じハチ目やハエ目に属する昆虫であっても、昆虫の種類によって実用上の捕獲効果が得られる界面活性剤の有効濃度は異なるのが普通であることも考慮すれば、甲6発明の「Tween20」の濃度を、本1発明のような「0.05重量%以上5重量%以下」とすることの動機付けは、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらない。 してみると、上記(δ)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 c.まとめ 以上総括するに、本1発明は、甲第6号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。 また、甲第6号証を主引用例とした場合の進歩性について、本1発明は、甲第1~13号証に記載された発明若しくは技的事項、並びに参考例A~Eに記載の技術事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するとはいえない。 したがって、本1発明について、取消理由の理由4及び理由5に理由はない。 (4)本2発明について 本2発明は、本1発明において「ハチ誘引成分」を更に含むことを特定した「ハチ捕獲剤」に関するものであるから、本1発明の新規性及び進歩性が、甲第1~13号証及び参考例A~Eによって否定できない以上、その進歩性及び新規性を否定できない。 (5)本3発明について ア 甲第2号証を主引用例とした場合の検討 (ア)対比 本3発明と甲2発明を対比すると、両者は『下記界面活性剤(A)を含有する剤。界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)』という点において一致し、 (ζ)剤が、本3発明は「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤用」の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸沈降剤」であるのに対して、甲2発明は「害虫(ナスミバエ)を防除するためのトラップに使用される」ための「溺死溶液」である点、及び (η)剤全体に対する界面活性剤(A)の含有量が、本3発明は「0.05重量%以上5重量%以下」であるのに対して、甲2発明は「100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20」の量である点、 の2つの点において相違する。 (イ)判断 上記(ζ)の相違点について、上記(3)ア(イ)b.に示した理由と同様に、ナスミバエを対象とする甲2発明を「アシナガバチ亜科に属するハチ」とする動機付けはないから、甲2発明の溺死溶液に含まれる「TWEEN 20」という成分を「アシナガバチ亜科に属するハチ」の「死骸沈降剤」の「有効成分」にする動機付けはなく、甲2発明の「溺死溶液」の「溺死」とは、捕獲された害虫が生きたまま液中に沈降し、空気が遮断された液中で呼吸ができずに窒息することを意味し、ハチ及びコバエ類を短い時間で致死させ、致死後の死骸を容器の底まで沈降させるという「死骸沈降」と異なるものと解されるので、甲2発明の界面活性剤が「死骸」の沈降剤の有効成分として機能しているとは認められない。 そして、上記(η)の相違点について、上記(3)ア(イ)c.に示した理由と同様に、甲2発明のような「トラップに使用」される「溺死溶液」に含まれる界面活性剤(Tween20)の「100mLの蒸留水に2滴」という濃度を、本3発明のような「0.05重量%以上5重量%以下」とすることの動機付けは、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらない。 さらに、本3発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本3発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という含有量において、本3発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類」の死骸を液中に沈降させることについては、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらない。 してみると、上記(ζ)及び(η)の相違点に係る構成及び効果を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 イ 甲第6号証を主引用例とした場合の検討 (ア)対比 本3発明と甲6発明を対比すると、両者は『下記界面活性剤(A)を有効成分とするハチ類及びハエ類の捕獲用の剤。界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)』という点において一致し、 (θ)剤が、本3発明は「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤用」の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸沈降剤」であるのに対して、甲6発明は「ナシヒメシンクイ、並びにハチ目、チョウ目、ハエ目、及びその他の非標的昆虫」を捕獲するための「トラップに充填されたベイト剤(誘引性の溶液)」である点、及び (ι)剤全体に対する界面活性剤(A)の含有量が、本3発明は「0.05重量%以上5重量%以下」であるのに対して、甲6発明は「Tween20」の量が不明な点、 の2つの点において相違する。 (イ)判断 上記(θ)の相違点について、上記(3)イ(イ)a.に示した理由と同様に、界面活性剤の種類や昆虫の種類によって、特定の濃度域における溺沈率などの有用性(効果)が大きく異なるという科学的な事実が存在するので、甲6発明の「Tween20」の所定量での使用が、害虫を致死して液中に沈降させるための「死骸沈降剤」の「有効成分」として機能していると直ちには解せないし、甲第6号証には、捕獲した昆虫がベイト剤中に溺沈することについて何ら記載されていない。 そして、上記(ι)の相違点について、上記(3)イ(イ)b.に示した理由と同様に、甲6発明の「Tween20」という界面活性剤の配合量が、本1発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という数値範囲にあるとはいえないから、上記(δ)の点は実質的な差異であり、同じハチ目やハエ目に属する昆虫であっても、昆虫の種類によって実用上の捕獲効果が得られる界面活性剤の有効濃度は異なるのが普通であることも考慮すれば、甲6発明の「Tween20」の濃度を、本1発明のような「0.05重量%以上5重量%以下」とすることの動機付けは、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらない。 さらに、本3発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本3発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という含有量において、本3発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類」の死骸を液中に沈降させることについては、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらない。 してみると、上記(θ)及び(ι)の相違点に係る構成及び効果を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 (6)本4発明について ア 甲第2号証を主引用例とした場合の検討 本4発明と甲2発明の2とを対比すると、両者は『下記界面活性剤(A)を含有する溶液を用いた、昆虫の沈降方法。界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)』という点において一致し、 (κ)溶液に含有される界面活性剤(A)の量が、本4発明は「0.05重量%以上5重量%以下」であるのに対して、甲2発明の2は「100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20」の量である点、及び (λ)昆虫の沈降方法が、本4発明は「アシナガバチ亜科に属するハチ」の死骸の沈降方法であるのに対して、甲2発明の2は「害虫(ナスミバエ)」の溺死による沈降方法である点、 の2つの点において相違する。 しかしながら、上記(5)ア(イ)に示した理由と同様に、本4発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本4発明の「0.05重量%以上5重量%以下」の量で用いて、本4発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ」の死骸を液中に沈降させることについては、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらないので、上記(κ)及び(λ)の相違点に係る構成及び効果を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 イ 甲第6号証を主引用例とした場合の検討 本4発明と甲6発明の2とを対比すると、両者は『下記界面活性剤(A)を含有する溶液を用いた、昆虫の沈降方法。界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)』という点において一致し、 (μ)溶液に含有される界面活性剤(A)の量が、本4発明は「0.05重量%以上5重量%以下」であるのに対して、甲6発明の2は「Tween20」の量が不明な点、及び (ν)昆虫の沈降方法が、本4発明は「アシナガバチ亜科に属するハチ」の死骸の沈降方法であるのに対して、甲6発明の2は「ハチ目」の昆虫の溺死による沈降方法であって、ハチの種類が具体的には「セイヨウミツバチ」である点、 の2つの点において相違する。 しかしながら、上記(5)イ(イ)に示した理由と同様に、本4発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本4発明の「0.05重量%以上5重量%以下」の量で用いて、本4発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ」の死骸を液中に沈降させることについては、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらないので、上記(μ)及び(ν)の相違点に係る構成及び効果を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 (7)本5発明について ア 甲第2号証を主引用例とした場合の検討 本5発明と甲2発明の2とを対比すると、両者は『下記界面活性剤(A)を含有する溶液を用いて、昆虫を前記溶液中に沈降させることによる昆虫の捕獲方法。界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)』という点において一致し、 (ξ)溶液に含有される界面活性剤(A)の量が、本5発明は「0.05重量%以上5重量%以下」であるのに対して、甲2発明の2は「100mLの蒸留水に2滴のTWEEN 20」の量である点、及び (ο)溶液中に沈降させる「昆虫」及び捕獲する「昆虫」が、本4発明は「アシナガバチ亜科に属するハチの死骸」及び「ハチ」であるのに対して、甲2発明の2は「害虫(ナスミバエ)」の溺死体及び「ハエ」である点、 の2つの点において相違する。 しかしながら、上記(5)ア(イ)に示した理由と同様に、本5発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本5発明の「0.05重量%以上5重量%以下」の量で用いて、本5発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ」の死骸を液中に沈降させることについては、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらないので、上記(ξ)及び(ο)の相違点に係る構成及び効果を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 イ 甲第6号証を主引用例とした場合の検討 本5発明と甲6発明の2とを対比すると、両者は『下記界面活性剤(A)を含有する溶液を用いて、ハチを前記溶液中に沈降させることによるハチの捕獲方法。界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)』という点において一致し、 (π)溶液に含有される界面活性剤(A)の量が、本5発明は「0.05重量%以上5重量%以下」であるのに対して、甲6発明の2は「Tween20」の量が不明な点、及び (ρ)溶液中に沈降させる「ハチ」が、本4発明は「アシナガバチ亜科に属するハチの死骸」であるのに対して、甲6発明の2は、具体的には「セイヨウミツバチ」であって、液中に沈降してから溺死するのか、液面で致死してから沈降するのか不明な点、 の2つの点において相違する。 しかしながら、上記(5)イ(イ)に示した理由と同様に、本5発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本5発明の「0.05重量%以上5重量%以下」の量で用いて、本5発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ」の死骸を液中に沈降させることについては、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらないので、上記(π)及び(ρ)の相違点に係る構成及び効果を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 (8)本2~本5発明の新規性及び進歩性のまとめ 以上総括するに、本3発明は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえず、また、本2~5発明は、甲第6号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。 さらに、本2~5発明は、甲第1~13号証に記載された発明及び参考例A~Eに記載の技術事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するとはいえない。 2.理由6(サポート要件)について (1)特許法第36条第6項第1号の判断の前提について 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点に立って、判断する。 (2)特許請求の範囲の記載 前記第3に記載したとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、ハチ捕獲剤、この捕獲剤を含有するハチ捕獲器およびこのハチ捕獲器を使用するハチ捕獲方法に関する。詳しくは、特定の浸透力を有する界面活性剤を有効成分とすることを特徴とする発明に関する。 【背景技術】 【0002】 従来から、害虫捕獲器として様々なものが知られており、例えば、ゴキブリや、ハエなどの小型飛翔害虫等を対象とした害虫誘引捕獲器は、一般家庭、飲食店、工場等において汎用されている。 また、ハチ捕獲器としては、各種形状のものが提案されている。具体的には、特許文献1には、カップ状の容器内部にハチを誘引するための誘引捕獲組成物を収納し、容器上部にハチの侵入口を有する蓋を取り付けた捕獲器が記載されている。特許文献2、3には、捕獲器の可視光透過率や色を調整することにより、ハチの捕獲効率を向上させる技術が紹介されている。特許文献4には、一旦捕獲されたハチが捕獲器から脱出することを抑制するために、ハチ侵入口を捕獲器上部中心部に配置されたものが記載されている。さらに、特許文献5には、特定の糖分濃度のハチ誘引成分を使用することにより、腐敗による発酵臭を発生させて、捕獲効率を向上させることが記載されている。 【0003】 しかしながら、これらのハチ捕獲器内に液状の誘引捕獲剤が使用されている場合には、ハチが液状の誘引捕獲剤中に落ちても致死するまでに時間がかかり、その間にハチは液状の誘引捕獲剤の中を泳いで容器内から脱出してしまい、捕獲効率が低下するという問題があった。また、ハチが致死しても、液状の誘引捕獲剤の液面にハチの死骸が浮いてしまい、これが別のハチの足場となって脱出を促してしまうという問題もあった。… 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、捕獲されたハチが致死するまでの時間を短縮することを目的としている。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の浸透力を有する界面活性剤において、ハチが致死するまでの時間を短縮するのみならず、上記界面活性剤を有効成分とするハチ捕獲剤の中で、ハチの死骸が沈降することを見出し、この特定の浸透力を有する界面活性剤を有効成分とするハチ捕獲剤とすることにより上記課題を解決するに至ったものである。… 【発明の効果】 【0008】 本発明のハチ捕獲剤は、ハチが致死するまでの時間が短いため、ハチ捕獲器からハチが脱出することもなく、優れたハチ捕獲効果を発揮する。しかも、本発明のハチ捕獲剤は、ハチの死骸がハチ捕獲剤の液中に沈降するため、ハチ捕獲剤の液面にハチの死骸が浮いて、別のハチの足場となって脱出を促すことや、別のハチのハチ捕獲剤への接触を妨げることがないため、効率的にハチを捕獲することができ有用である。 また、本発明のハチ捕獲剤は、公知の殺虫剤と組み合わせることにより、誘引したハチを確実に防除できる防除薬剤とすることができ、ハチに対する効率的な防除効果を容易に得ることができ有用である。… 【0012】…本発明のハチ捕獲剤は、有効成分である上記浸透力を有する浸透力に優れた界面活性剤(A)を、ハチ捕獲剤全体に対して0.005重量%以上含有することが好ましく、0.01重量%以上含有することがより好ましく、0.05重量%以上含有することが特に好ましい。有効成分である上記浸透力を有する浸透力に優れた界面活性剤(A)の含有量は、ハチ捕獲剤全体に対して0.005重量%未満であると、使用者が満足する程度のハチ捕獲効果を十分に発揮することができない。また、この含有量が5重量%を超えると、溶解性など製剤化における課題が出てくるため、含有量は5重量%以下であることが好ましい。… 【0018】 本発明のハチ捕獲剤が優れた捕獲効果を発揮するハチは、スズメバチ科(Vespidae)に属するハチを主な対象とするものであるが、アリガタバチ類、クマバチ、ベッコウバチ、ジガバチ、ドロバチ等の膜翅目害虫に属するものが挙げられる。中でも、スズメバチ科ハチとしては、スズメバチ亜科(Vespinae)およびアシナガバチ亜科(Polistinae)に属するハチを挙げることができる。 スズメバチ亜科に属するハチとしては、例えば、オオスズメバチ、キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、ヒメスズメバチ、チャイロスズメバチ、クロスズメバチ、シダクロスズメバチ、ヤドリスズメバチなどを挙げることができる。 また、アシナガバチ亜科に属するハチとしては、例えば、キアシナガバチ、セグロアシナガバチ、フタモンアシナガバチ、トガリフタモンアシナガバチ、ヤマトアシナガバチ、キボシアシナガバチ、コアシナガバチ、ヤエヤマアシナガバチ、ムモンホソアシナガバチ、ヒメホソアシナガバチなどの土着種を挙げることができる。これら土着種に加えて、対馬や北九州市に侵入したツマアカスズメバチも挙げることができる。アシナガバチの攻撃性や毒性はスズメバチに比べて小さいものの、民家に営巣することがあり、また、それに刺されることによる死亡例もあるため、防除対象である点ではスズメバチと同様である。 これらのハチの中でも、本発明のハチ捕獲剤は、体長が10mm以上45mm以下の範囲のハチ、好ましくは体長が10mm以上30mm以下の範囲のハチ、より好ましくは体長が10mm以上25mm以下の範囲のハチに対して優れた捕獲効果を発揮する。… 【実施例】 【0020】 以下、処方例および試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。 なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。 【0021】 <浸透力の確認試験> (1)試験検体の調製 下記界面活性剤1~21それぞれを、水と混合して1重量%の均一な水溶液を得、これを試験検体とした。 (2)浸透力の測定 20℃において、ウール布帛(染色堅ろう度試験用塗布白布:JIS L 0803準拠、毛(ウール)、大きさ:200mm×200mm)を、φ150mmステンレスシャーレとプラスチック製の試験片保持枠でゆるみ無く張った状態で固定し、これを光源(935lux)と観察者の間に置き、試験検体を滴下するピペットマンを、その先端とウール布帛表面までが10mmとなるように設置した。観察者は、水による鏡面反射を確実に確認できる角度から観察した。ピペットマンから試験検体を50μL滴下し、ウール布帛表面に形成された液滴の鏡面反射を観察した。試験検体がウール布帛表面に達した時から、ウール布帛が液滴全てを吸収(鏡面反射が消失)して、ウール布帛表面上に湿潤だけが残った状態となるまでの時間(秒)を、ストップウォッチで測定した。測定を5回行い、その平均値を使用した界面活性剤の浸透力(秒)とした。 【0022】 <ハチ致死効果確認試験1> (1)試験検体の調製 下記界面活性剤1~21それぞれを、水と混合して0.06重量%の均一な水溶液を得、これをハチ捕獲剤の試験検体とした。 (2)試験方法について 上記各試験検体を、容器(口径92mm、高さ131mm、底径58mm、東罐興業株式会社製)の底面から100mmの高さまで注ぎ入れた。試験検体液面に体長10~15mm程度のセイヨウミツバチ(以下、「試験ハチ」という。)1匹を投入し、行動停止するまでの時間を測定した。この試験を3回繰り返し、その平均値をハチ致死時間(秒)とした。 【0023】 <ハチ溺沈効果確認試験1> (1)試験検体の調製 下記界面活性剤1~21それぞれを、水と混合して0.06重量%の均一な水溶液を得、これをハチ捕獲剤の試験検体とした。 (2)試験方法について 上記「ハチ致死効果確認試験1」と同じ容器に、各試験検体を底面から100mmの高さまで注ぎ入れた。試験検体液面に試験ハチ7匹を投入し、24時間後の試験ハチ死骸の溺沈数を確認した。ここで溺沈とは、試験ハチの死骸が容器底面まで沈降していることを意味し、水面下や液中に浮遊しているものは意味しない。 下記式(1)から、溺沈率(%)を算出した。 式(1):溺沈率(%)=100×(容器底面まで沈降した試験ハチ)/(試験ハチ数7) 【0024】 各試験検体の浸透力(秒)、ハチ致死時間(秒)、溺沈率(%)をまとめて示した。ハチ致死時間(秒)と溺沈率(%)に関する下記[評価基準]に従い、それぞれの評価結果も併せ下記表1に示す。 [ハチ致死時間(秒)の評価基準] A:ハチ致死時間(秒)が200秒未満 B:ハチ致死時間(秒)が200秒以上400秒未満 C:ハチ致死時間(秒)が400秒以上600秒未満 D:ハチ致死時間(秒)が600秒以上または脱出 上記ハチ致死時間(秒)の評価基準A~Cを、実用性があると判断した。 [溺沈率(%)の評価基準] A:溺沈率(%)が80%以上 B:溺沈率(%)が65%以上80%未満 C:溺沈率(%)が50%以上65%未満 D:溺沈率(%)が50%未満または脱出 ×:試験検体入りの容器から逃走したことを意味する 上記溺沈率(%)の評価基準A~Cを、実用性があると判断した。 【0025】 使用した界面活性剤の詳細は、以下のとおりである。 界面活性剤1:ラウリン酸ポリグリセリル(10)、HLB:15.5 界面活性剤2:ポリオキシエチレンアルキル(C12~14)エーテル、HLB:13.5 界面活性剤3:ラウリルスルホ酢酸ナトリウム 界面活性剤4:ショ糖ラウリン酸エステル、HLB:16 界面活性剤5:ショ糖ミリスチン酸エステル、HLB:16 界面活性剤6:ポリオキシエチレントリスチリル化フェニルエーテル、HLB:12 界面活性剤7:ラウリン酸ポリグリセリル(5)、HLB:15.8 界面活性剤8:ポリオキシエチレンジスチリル化フェニルエーテル、HLB:12.8 界面活性剤9:ラウリン酸ポリグリセリル(10)、HLB:17.1 界面活性剤10:ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、HLB:16.7 界面活性剤11:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、HLB :16.7 界面活性剤12:ミリスチン酸ポリグリセリル(5)、HLB:15.4 界面活性剤13:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(20E.O.)(8P.O.)、HLB:12.5 界面活性剤14:ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、HLB:13.2 界面活性剤15:モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、HLB:15.0 界面活性剤16:ショ糖オレイン酸エステル、HLB:15 界面活性剤17:モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)、HLB:17.5 界面活性剤18:ポリオキシエチレンフィトスチロール、HLB:12.5 界面活性剤19:ポリオキシエチレンフィトスチロール、HLB:18.0 界面活性剤20:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、HLB:12.5 界面活性剤21:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、HLB:14.0 【0026】 【表1】 [図:0001406673000002.jpg] 【0027】 表1に示すとおり、本発明の浸透力が2000秒以下の界面活性剤(A)である界面活性剤1~17を有効成分とするハチ捕獲剤は、ハチが致死するまでの時間が短く、しかも、ハチの死骸がハチ捕獲剤の液中に溺沈することが確認された。特に、本発明の浸透力が1000秒以下の界面活性剤1~16を有効成分とするハチ捕獲剤は、優れたハチ捕獲効果を発揮することが明らかとなった。なお、界面活性剤18および19においては、ハチを試験検体に投入したものの、当該ハチは試験検体から脱出し、致死に至らなかった。よって、表1中の「-」は、前記理由により致死の時間および溺沈率が測定できなかったことを意味する。 【0028】 <ハチ致死効果確認試験2> (1)試験検体の調製 上記界面活性剤1の含有量が0.3重量%となるように、ハチ誘引成分(酒、酢、糖など)を組み合わせて、ハチ捕獲剤原液を調製し、この原液を水で5倍希釈して実施例試験検体を作製した。また、実施例試験検体と同様にして、界面活性剤1を含まない比較例試験検体を作製した。 (2)試験方法について 上記「ハチ致死効果確認試験1」と同様の方法で試験を行い、行動停止するまでの時間を測定した。この試験を3回繰り返し、その平均値をハチ致死時間(秒)とした。実施例試験検体を用いたものを実施例1とし、比較例試験検体を用いたものを比較例1として、得られた結果を表2に示す。なお、評価基準についても、上記「ハチ致死効果確認試験1」と同様とした。 【0029】 <ハチ溺沈効果確認試験2> (1)試験検体の調製 上記「ハチ致死効果確認試験2」の実施例試験検体と比較例試験検体を使用した。 (2)試験方法について 84時間後に試験ハチの死骸の溺沈数を確認した以外は、上記「ハチ溺沈効果確認試験1」と同様の方法で試験を行い、溺沈率(%)を算出した。実施例試験検体を用いたものを実施例1とし、比較例試験検体を用いたものを比較例1として、得られた結果を表2に示す。なお、評価基準についても、上記「ハチ溺沈効果確認試験1」と同様とした。 【0030】 【表2】 [図:0001406673000003.jpg] 【0031】 表2に示すように、本発明の浸透力が2000秒以下の界面活性剤(A)である界面活性剤1と、誘引剤とを混合した実施例1においては、ハチが致死するまでの時間が短く、しかも、ハチの死骸がハチ捕獲剤の液中に溺沈することが確認された。一方、界面活性剤1を含まない誘引剤である比較例1は、ハチが溺死したものの、その時間は極めて長時間を要した。さらに、ハチの死骸は、比較例1の液中にほとんど溺沈せず、液面に浮かんだ状態であった。このことから、比較例1を屋外での実場面で用いた場合には、ハチが誘引されたとしても、先に捕獲され、比較例1の液面に浮かんだ状態のハチが足場となり、後から誘引されたハチは、比較例1の液中に捕獲および溺沈することなく脱出してしまう可能性が高くなると推察される。 【0032】 <ハチ溺沈・致死効果確認試験> (1)試験検体の調製 上記界面活性剤1を、水と混合して0.1重量%の均一な水溶液を得て、これをハチ捕獲剤の実施例試験検体とした。 (2)試験方法について 上記試験検体を、容器(口径92mm、高さ131mm、底径58mm、東罐興業株式会社製)の底面から100mmの高さまで注ぎ入れた。この試験検体液面に体長20~25mm程度のセグロアシナガバチ(以下、「試験ハチ」という。)1匹を投入し、溺死するまでの時間を測定した。この試験を2回繰り返し、その平均値をハチ致死時間(秒)とした。 また、溺死から24時間後に、試験ハチの死骸が容器底面まで溺沈しているかを確認し、上記「ハチ溺沈効果確認試験1」と同様に溺沈率(%)を算出した。 実施例試験検体を用いたものを実施例2として、ハチ致死時間(秒)と溺沈率(%)および、その評価結果を表3にまとめて示す。なお、評価基準についても、上記「ハチ溺沈効果確認試験1」と同様とした。 【0033】 【表3】 [図:0001406673000004.jpg] 【0034】 表3に示すように、本発明の浸透力が2000秒以下の界面活性剤(A)である界面活性剤1を含有する実施例2は、アシナガバチ類に対しても致死するまでの時間が短く、しかも、ハチの死骸がハチ捕獲剤の液中に溺沈することが確認された。 【0035】 <スズメバチ捕獲効果確認試験> 本発明のハチ捕獲剤のスズメバチに対する捕獲効果を確認するために、屋外においてスズメバチ捕獲効果確認試験を行った。参考例として、市販されているハチ誘引液入りの捕獲器(市販品A)を使用した。 (1)実施例検体の調製 上記「ハチ致死効果確認試験2」の実施例試験検体を使用し、これを、上記市販品Aのハチ誘引液が入っていないハチ捕獲器に、市販品Aと同じ液量となるように注入したものを実施例3とした。 (2)試験方法について 雑木林の中(試験区1)と建物近くの庭園(試験区2)それぞれに、上記実施例3と参考例を3m離し、地上から2mの高さに設置し、スズメバチの累積捕獲数を4週間(2018年5月)にわたり観測した。試験は上記2箇所で行い、その合計をスズメバチ累計捕獲数とした。 試験区1、2における、実施例3と参考例とにおけるスズメバチ累計捕獲数を表4と図1に、捕獲されたスズメバチの種類について、表5に示す。 【0036】 【表4】 [図:0001406673000005.jpg] 【0037】 【表5】 [図:0001406673000006.jpg] 【0038】 表4、図1に示すように、本発明のハチ捕獲剤を含有するハチ捕獲器(実施例3)は、参考例の市販品に比べて、1~2週目の初期段階でのハチ捕獲効果に非常に優れており、4週目までに約1.7倍のハチを捕獲できることが確認された。この結果は、本発明のハチ捕獲剤が、浸透力に優れハチが致死するまでの時間が短い界面活性剤を有効成分としていることにより、発揮された効果であると考えられる。しかも、本発明のハチ捕獲剤(実施例3)は、ハチの死骸がハチ捕獲剤に沈降する効果を有するため、ハチの死骸が液面に浮遊し、捕獲器に入り込んだ別のハチの脱出の足掛りとなることもないため、捕獲開始の初期段階からハチ捕獲数が順調に増えたものと考えられる。 実際にハチ捕獲器の中を観察したところ、本発明のハチ捕獲器は、捕獲されたハチは捕獲器の底面に溺沈していたが、参考例の市販品は、ハチのみならず蛾やコバエ類も捕獲されており、しかも、それらの死骸は全て捕獲液面に浮かんだ状態であった。そのため、捕獲液面に浮かんだそれらの死骸が液面を覆ってしまったため、新たなハチの捕獲が阻害され、ハチ捕獲数が少なかったものと考えられる。本発明のハチ捕獲器は、捕獲された蛾やコバエ類等の他の昆虫の死骸も沈降するため、新たなハチの捕獲および溺死を妨げることなく、長期にわたり優れたハチ捕獲効果を得ることができ有用である。 さらに、参考例の市販品ではコバエ類が産卵し、捕獲器の中でコバエ類が大量発生して見た目が汚いという欠点があった。これに対して、本発明のハチ捕獲器は、捕獲されたコバエ類もすぐに溺死し、かつ死骸が沈降するため、産卵によるコバエ類の大量発生もなく、見た目もきれいに使用を継続できることも明らかとなった。 また、表5に示すように、本発明のハチ捕獲剤を含有するハチ捕獲器(実施例3)は、参考例の市販品に比べて、オオスズメバチ(体長25~45mm程度)、コガタスズメバチ(体長22~30mm程度)、キイロスズメバチ(17~28mm程度)の攻撃性の高い肉食系ハチのハチ捕獲効果に優れていることが改めて確認された。 【産業上の利用可能性】 【0039】 本発明のハチ捕獲剤は、ハチが致死するまでの時間が短いため、ハチ捕獲器からハチが脱出することもなく、優れたハチ捕獲効果を発揮する。しかも、本発明のハチ捕獲剤は、ハチの死骸がハチ捕獲剤の液中に沈降するため、ハチ捕獲剤の液面にハチの死骸が浮いて、別のハチの足場となって脱出を促すことや、別のハチのハチ捕獲剤への接触を妨げることがないため、効率的にハチを捕獲することができ有用である。 また、本発明のハチ捕獲剤は、捕獲されたハチ以外の昆虫も溺死し死骸が沈降するため、例えば、コバエ類の大量発生等もなく、長期間にわたり優れたハチ捕獲効果とともに、美観をも維持することができる。」 (4)取消理由の〔理由6〕の指摘事項(1)について ア 本1~本3発明の解決しようとする課題 本1~本3発明の解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落0005及び0008の記載を含む発明の詳細な説明の全ての記載からみて『ハチが致死するまでの時間が短いため、ハチ捕獲器からハチが脱出することもなく、優れたハチ捕獲効果を発揮する、ハチ及び他の昆虫の死骸が液中に沈降するハチ捕獲剤の提供』にあるものと認められる。 イ 発明の詳細な説明の具体例の開示 本件特許明細書の段落0022~0023には、すでに捕獲済みの「体長10~15mm程度のセイヨウミツバチ」1匹を界面活性剤1~21(そのうち、界面活性剤11が「モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」である。)のそれぞれを、水と混合した「0.06重量%」の均一な水溶液からなる試験検体の液面に投入し、行動停止するまでの時間を測定する試験を3回繰り返し、その平均値を「ハチ致死時間(秒)」とした「ハチ致死効果確認試験1」と、試験検体の液面に「セイヨウミツバチ」7匹を投入し、24時間後の試験ハチの死骸の溺沈数を確認して「溺沈率(%)」を算出した「ハチ溺沈効果確認試験1」の試験例が記載されている。 また、同段落0028の「(1)試験検体の調製 上記界面活性剤1の含有量が0.3重量%となるように、ハチ誘引成分(酒、酢、糖など)を組み合わせて、ハチ捕獲剤原液を調製し、この原液を水で5倍希釈して実施例試験検体を作製した。」との記載において、界面活性剤の「0.3重量%」という濃度が「ハチ捕獲剤原液」と「実施例試験検体」のいずれを基準にしているのか明確ではないところ、同段落0030の表2、同段落0033の表3、及び同段落0036の表4には「界面活性剤1:ラウリン酸ポリグリセリル(10)」の含有量が、0.06重量%(原液基準)又は0.3重量%(試験検体基準)となるようにした実施例1(セイヨウミツバチ)及び実施例3(オオスズメバチ、コガタスズメバチ、及びキイロスズメバチ)、並びに0.1重量%となるようにした実施例2(セグロアシナガバチ)の具体例が記載され、その実施例3では、雑木林や庭園などの野外におけるハチ捕獲剤(界面活性剤1を用いたもの)の実用性が確認されている。 ウ 検討 上記イで述べた実施例では、本1~本3発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、「0.05重量%以上5重量%以下」の含有量で用い、「アシナガバチ亜科に属するハチ」及び「コバエ類」を対象昆虫とした場合における、致死効果、溺沈効果、及び野外での実用性は確認されていない。 しかしながら、実施例の表1には、界面活性剤の浸透力が2000秒以下のものが、セイヨウミツバチに対して、ハチ致死時間及び溺沈率の点で有利な効果を奏することが示されており、特に、界面活性剤1(9.2秒)、界面活性剤2(13.4秒)、界面活性剤4(118.0秒)、界面活性剤5(125.2秒)、界面活性剤8(178.6秒)、界面活性剤9(198.8秒)、界面活性剤10(202.2秒)、界面活性剤11(219.2秒)、界面活性剤15(603.2秒)が、ハチ致死時間及び溺沈率がいずれもAの評価となっている(当審注:括弧内の秒数は、表1に示された各界面活性剤の浸透力を示す。)。 そして、表1において、ハチ致死時間及び溺沈率がいずれもA評価となっている界面活性剤1について、セイヨウミツバチ(実施例1)とセグロアシナガバチ(実施例2)のどちらのハチ目の昆虫に対しても、優れた致死効果及び溺沈効果を示しているのであるから、表1において、ハチ致死時間及び溺沈率がいずれもAの評価となっている界面活性剤2、4、5、7、9、10、11及び15についても、同様に、セイヨウミツバチとセグロアシナガバチのどちらのハチ目の昆虫に対して、優れた致死効果及び溺沈効果を期待できると当業者は理解するといえる。 さらに、溺沈率については、85.7%の界面活性剤1よりも100.0%の界面活性剤11の方が優れているから、界面活性剤11は、界面活性剤1よりも優れた溺沈効果を期待できると当業者は理解するといえる。 また、本件特許明細書の段落0012には「有効成分である上記浸透力を有する浸透力に優れた界面活性剤(A)を、…0.05重量%以上含有することが特に好ましい。有効成分である…浸透力に優れた界面活性剤(A)の含有量は、ハチ捕獲剤全体に対して0.005重量%未満であると、使用者が満足する程度のハチ捕獲効果を十分に発揮することができない。また、この含有量が5重量%を超えると、溶解性など製剤化における課題が出てくるため、含有量は5重量%以下であることが好ましい。」と記載されており、この記載から、当業者であれば、界面活性剤(A)を「0.05重量%以上5重量%以下含有」するものが適切であることを認識できるといえる。そして、本件特許明細書には「0.05重量%以上5重量%以下」という含有量の下限値の近傍の「0.06重量%」という少量で用いた水溶液であっても、セイヨウミツバチに対して、ハチ致死時間及び溺沈率がいずれもA評価となったことが示され(表1、表2、表3)、また、スズメバチに対する捕獲効果が優れていることが示されており(表4、表5)、使用者が満足する程度の効果を十分に発揮することができると当業者は認識できるといえる。 そうしてみれば、本件特許明細書に接した当業者であれば、本1~本3発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤、すなわち、本件特許明細書の表1でいう「界面活性剤11」を、本1~本3発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という含有量で用いることにより、本件明細書中で実際に確認されたハチ目であるセグロアシナガバチの属するアシナガバチ亜科に属するハチなどに対して、使用者が満足する程度の効果が得られると当業者は認識できる。 なお、令和4年12月27日付けの意見書(特許権者)の第17頁に示された試験データも、上記判断と矛盾するものではない。 エ まとめ 以上総括するに、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、当業者が本1~本3発明の課題を解決できると認識できる程度に開示されているといえるので、本1~本3発明が明細書のサポート要件に適合しないとはいえない。 したがって、本件特許の請求項1~3の記載は、本1~本3発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合する。 (5)取消理由の〔理由6〕の指摘事項(2)について ア 本4~本5発明の解決しようとする課題 本4~5発明の解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落0005及び0008の記載を含む発明の詳細な説明の全ての記載からみて『ハチが致死するまでの時間が短いため、ハチ捕獲器からハチが脱出することもなく、優れたハチ捕獲効果を発揮する、ハチの死骸が液中に沈降する、ハチの死骸の沈降方法及びハチの捕獲方法の提供』にあるものと認められる。 イ 検討 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本4~本5発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本4~本5発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という含有量で用いて、本4~本5発明の「アシナガバチ亜科に属するハチの死骸」を対象として実施した試験結果についての記載がない。 しかしながら、上記(4)ウで述べたように、本4~本5発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本4~本5発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という含有量の下限値の近傍の「0.06重量%」という少量で用いた水溶液であっても、アシナガバチ亜科に属するハチである「アシナガバチ」の死骸を沈降させることができ、使用者が満足する程度のハチ沈降効果を十分に発揮することができると当業者は認識できる。 ウ まとめ 以上総括するに、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、当業者が本4~本5発明の課題を解決できると認識できる程度に開示されているといえるので、本4~本5発明が明細書のサポート要件に適合しないとはいえない。 したがって、本件特許の請求項4~5の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載された範囲のものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合する。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由1及び申立理由2について 特許異議申立人が主張する申立理由1(新規性)は、本件特許発明1、2は、甲1発明と同一の発明であり、本件特許発明3は、甲1発明または甲9発明と同一の発明であり、本件特許発明4、5は、甲8発明と同一の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができず、本件特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである、というものである。 また、特許異議申立人が主張する申立理由2(進歩性)は、本件特許発明1-5は、甲1-13発明ないし従来周知の技術事項を組み合わせることにより、いわゆる当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本件特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである、というものである(申立書の第35頁)。 (2)甲号証及びその記載事項 特許異議申立人が提示した甲第1~13号証は、上記『第4 1.』の項に示したとおりであり、その記載事項は、上記『第5 1.(1)』の項に示したとおりである。 (3)本1~本3発明と甲1発明との対比・判断 ア 甲1発明 摘記1aの「スズメバチを誘引して捕獲するのに使用…トラップには、水に0.125%の無効洗剤と2%のホウ素酸を入れた200~300mlの溺死溶液も含まれた。」との記載からみて、甲第1号証には『水に0.125%の無香洗剤と2%のホウ素酸を入れたスズメバチを誘引して捕獲するための溺死溶液。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 対比 本1発明と甲1発明とを対比すると、両者は『界面活性剤を有効成分として含むハチ捕獲剤であって、前記界面活性剤を、前記ハチ捕獲剤全体に対して0.05重量%以上5重量%以下含有するハチ捕獲剤。』という点において一致し、次の点で相違する。 (σ)ハチ捕獲剤に含まれる「界面活性剤」が、本1発明は「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類の死骸」を「液中に沈降」させる「死骸沈降剤」として含まれるものとして特定されているのに対して、甲1発明においては「スズメバチ」を「溺死」させるための有効成分として含まれるものである点 (τ)界面活性剤の種類が、本1発明は「浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という「界面活性剤(A)」であるのに対して、甲1発明は「無香洗剤」であって、具体的にどのような界面活性剤を用いているのか不明な点 ウ 判断 上記(σ)及び(τ)の相違点について、甲第7号証の「ワスプ…とイエロージャケット…彼らはバケツの側面にぶつかり、石鹸水に落ち、そこで彼らは底に沈む。」との記載や、甲第9~11号証の同様な記載にあるように、洗剤(界面活性剤・石鹸)が存在すると、水面の表面張力が低下して、ワスプ(アシナガバチなどの有剣類)やイエロージャケット(西洋スズメバチ)などのハチを含む昆虫類が、底に沈むことは、科学的な事実として普通に知られている。 しかしながら、甲1発明の「溺死溶液」の「溺死」とは、捕獲された害虫が生きたまま液面から液中に沈降し、その後に空気が遮断された液中で呼吸ができずに窒息することで「溺死」するという作用機序にあるものと解されるから、ハチ及びコバエ類を秒単位の短い時間で致死させ、致死後の死骸を沈降させるという本1発明の「死骸沈降剤」の作用機序と異なるものと合理的には解されるので、甲1発明の「無香洗剤」が「死骸」の沈降剤の有効成分として機能しているとは認められない。 そして、本1発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本1発明の「0.05重量%以上5重量%以下」という含有量で用いて、本1発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類」を、秒単位の短い時間で致死に至らしめ、溺沈率が100%となる「死骸沈降剤」として機能することについては、甲第1~13号証及び参考例A~Eの記載を精査しても見当たらない。 してみると、上記(σ)及び(τ)の相違点は、実質的な相違点であるから、本1発明が、甲第1号証の刊行物に記載された発明であるとはいえず、上記(σ)及び(τ)の相違点に係る構成及び効果を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえないから、本1発明の新規性及び進歩性を否定することはできない。 また、本2~本3発明についても、同様の理由により、その新規性及び進歩性を否定することはできない。 (4)本3発明と甲9発明との対比・判断 本3発明と甲第9号証の「家庭用洗剤を数滴含む普通の水は、液体26として非常に適切に機能する。このような混合物は、無毒で簡単に入手できることが非常に望ましく、洗剤は昆虫を濡らし、一般にリザーバの底に沈ませる。」との記載にある発明(甲9発明)とを対比すると、両者は『界面活性剤を有効成分とする昆虫の沈降剤。』という点において一致し、その余の点において相違する。 そして、本3発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本3発明の「0.05重量%以上5重量%以下」の量で用いて、本3発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ及びコバエ類」を死骸として液中に沈降させることについては、甲第1~13号証の記載を精査しても見当たらない。 してみると、本3発明と甲9発明は、実質的な相違点を有するから、本3発明の新規性を否定することはできない。また、甲第1~13号証に記載された発明ないし技術事項をどのように組み合わせても、本3発明の構成を導き出す動機付けは見当たらず、当該構成を具備することによって得られる本3発明の効果を当業者が容易に予測できるともいえないので、本3発明の進歩性を否定することはできない。 (5)本4~本5発明と甲8発明との対比・判断 本4発明と甲第8号証の「洗剤は水の表面張力を壊すので、ハチが表面に着地すると、それは底に沈んで溺れます。」との記載にある発明(甲8発明)とを対比すると、両者は『界面活性剤を含有する溶液を用いた、ハチの沈降方法。』という点において一致し、その余の点において相違する。 そして、本4発明の「界面活性剤(A):浸透力が2000秒以下のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」という界面活性剤を、本4発明の「0.05重量%以上5重量%以下」の量で用いて、本4発明の「アシナガバチ亜科に属するハチ」を死骸として液中に沈降させることについては、甲第1~13号証の記載を精査しても見当たらない。 してみると、本4発明と甲8発明は、実質的な相違点を有するから、本4発明の新規性を否定することはできない。また、甲第1~13号証に記載された発明ないし技術事項をどのように組み合わせても、本4発明の構成を導き出す動機付けは見当たらず、当該構成を具備することによって得られる本4発明の効果を当業者が容易に予測できるともいえないので、本4発明の進歩性を否定することはできない。 本5発明についても、同様の理由により、その新規性及び進歩性を否定することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、訂正後の請求項1~5に係る発明の特許を取り消すことができない。 また、他に訂正後の請求項1~5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700763

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