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特許異議申立

2023-700158

匍匐害虫の忌避方法

審判番号
2023-700158
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-238562
登録番号
7190255
請求日
2023年02月14日
審決日
2023年11月27日
公報発行日
2023年12月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】アース製薬株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人朝日奈特許事務所
  • 【異議申立人】川▲崎▼ 義孝
  • 【異議申立人】小林 瞳
審判長/審判官
  • 審判長 瀬良 聡機
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 齊藤 真由美
分類
P1651.121-Y (A01N) / P1651.536-Y (A01N) / P1651.537-Y (A01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7190255号発明「匍匐害虫の忌避方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7190255号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7190255号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成29年12月13日に特願2017-238562号として出願され、令和4年12月7日にその請求項1~3に係る特許権の設定登録がなされ、令和4年12月15日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~3に係る特許に対し、令和5年2月14日に川崎義孝(以下「申立人A」という。)により、また、令和5年6月13日に小林瞳(以下「申立人B」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、本件特許の請求項1~3に係る発明を「本1発明」~「本3発明」と略記する場合がある。)。 「【請求項1】 匍匐害虫の忌避成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品から、前記エアゾール組成物を、下方に向けて噴射し、 噴射された前記エアゾール組成物の平均粒子径(D50)が15~95μmとなるよう噴射する、匍匐害虫の忌避方法。 【請求項2】 1回あたりの噴射量が0.2~1.0mLであり、 処理容量が、1畳当たり、0.2~1.0mLとなるよう噴射する、請求項1記載の匍匐害虫の忌避方法。 【請求項3】 前記忌避成分は、ピレスロイド系化合物であり、 前記匍匐害虫は、ダニである、請求項1または2記載の匍匐害虫の忌避方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 1.申立人Aの申立理由 申立人Aが主張する申立理由1~2の概要、及び提示する甲第1~6号証は、次のとおりである。 (1)申立理由1(新規性) 本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。また、本件特許発明1、3は、甲第2号証に記載された発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(申立人Aの申立書の第23~24頁)。 (2)申立理由2(進歩性) 本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明に、従来周知の技術事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(申立人Aの申立書の第24頁)。 (3)申立人Aが提示する甲第1~6号証 甲第1号証:特開2012-149007号公報 甲第2号証:特開2006-325489号公報 甲第3号証:特開2014-227378号公報 甲第4号証:特開2014-31342号公報 甲第5号証:特開2007-269792号公報 甲第6号証:特開平5-255026号公報 なお、申立人Aが提示する甲第1~6号証の表記について、以下「甲1A」のように略記する場合がある。 2.申立人Bの申立理由 申立人Bが主張する申立理由A~Dの概要、及び提示する甲第1~6号証は、次のとおりである。 (1)申立理由A(進歩性) 本件特許発明1~3は、甲第1号証~甲第6号証に基いて、当業者が容易になし得るものであり、特許法第29条第2項の規定に違反しているため、同法113条第2号により、その特許は取り消されるべきである(申立人Bの申立書の第23頁)。 (2)申立理由B(実施可能要件) 本件特許発明1~3について、構成要件Aの「忌避成分」は、その成分、濃度、使用量によって致死させることができるかどうか検証を必要とする点で当業者に過度の試行錯誤を強いるものであり、構成要件Eの「下方」は、明細書に実証されていない角度について当業者に過度の試行錯誤を強いるものであるから、明細書の記載は当業者が実施できる程度に明確かつ十分であるとはいえず、特許法第36条第4項第1号の規定に違反しているため、同法113条第4号により、その特許は取り消されるべきである(申立人Bの申立書の第20及び23頁)。 (3)申立理由C(サポート要件) 本件特許発明1~3について、構成要件Aの「忌避成分」は、実施例に基づいた妥当な範囲の成分に特定しておらず、構成要件Eの「下方」は、30°下向きの1点のみで、例えばわずかでも下向きである場合の効果が全く検証されていないから、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定に違反しているため、同法113条第4号により、その特許は取り消されるべきである(申立人Bの申立書の第21~23頁)。 (4)申立理由D(明確性要件) 本件特許発明1~3について、構成要件Aの「忌避成分」は、具体的にいかなる成分、濃度、量まで包含されるのかが不明確であり、構成要件Eの「下方」も範囲が不明確であるから、明確性要件違反であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反しているため、同法113条第4号により、その特許は取り消されるべきである(申立人Bの申立書の第23頁)。 (5)申立人Bが提示する甲第1~6号証 甲第1号証:特開2014-227378号公報 甲第2号証:特開2012-149007号公報 甲第3号証:特開2000-302612号公報 甲第4号証:特開2006-320857号公報 甲第5号証:特開2011-219132号公報 甲第6号証:国際公開第2017/171030号 なお、申立人Bが提示する甲第1~6号証の表記について、以下「甲1B」のように略記する場合がある。 第4 当審の判断 1.申立人Aの申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について (1)甲1A~甲6Aの記載事項 ア 甲1A(甲2Bと同じ。)には、次の記載がある。 摘記1a:請求項1及び8 「【請求項1】 Donovan法による25℃における蒸気圧が2×10-6~2×10-5mmHgの殺虫成分を0.5~5重量%、沸点が150~280℃の親油性溶剤を35~70重量%、並びに、前記殺虫成分及び前記親油性溶剤と相溶性を有する液状噴射剤を25~64.5重量%含有することを特徴とする地面噴霧用害虫忌避エアゾール組成物。… 【請求項8】 請求項1~5のいずれかに記載の地面噴霧用害虫忌避エアゾール組成物を地面に噴霧することにより、前記地面の上方空間への害虫の侵入を阻止することを特徴とする害虫の忌避方法。」 摘記1b:段落0008、0035~0037、0039及び0041 「【0008】 本発明における「地面」には、いわゆる地面(地表)そのものの他に、地面と同一視できる「地面に類似する表面」も含まれる。地面に類似する表面の例としては、地上構造物における表面(例えば、ビルの屋上、ベランダ、屋根など)、地面等に置いた物品(例えば、シート、ゴザ、椅子、テントなど)の表面などが挙げられ、以下これらを総称して単に「地面」と呼ぶ。… 【0035】 本発明の害虫の忌避方法は、本発明の地面噴霧用害虫忌避エアゾール組成物を地面に噴霧することにより、前記地面の上方空間への害虫の侵入を阻止するものである。地面1m2あたりの殺虫成分量を1~5mgとなるように、必要に応じて、複数回噴霧しても良い。特に、飛翔害虫を忌避する時間を2時間以上とするには、地面1m2あたりの殺虫成分量を2mg以上とすることが好ましい。 【0036】 本発明の地面噴霧用害虫忌避エアゾール組成物の噴霧対象としては、地面(岩場、草原、芝生、グラウンドなど)の他、地面に類似する表面、例えば、前述した地上構造物における表面(例えば、ビルの屋上、ベランダ、屋根など)、地面等に置いた物品(例えば、シート、ゴザ、椅子、テントなど)の表面、などが挙げられる。 【0037】 本発明の忌避対象となる害虫としては、各種の有害昆虫やクモ、ダニ類等を挙げることができるが、飛翔害虫が代表的である。飛翔害虫の例としては、チョウバエ類、ユスリカ類、イエカ類、ヤブカ類、ハマダラカ類、ハエ類、アブ類、ブユ類、ヌカカ類などが挙げられる。… 【0039】 〔製剤例〕 メトフルトリン200mg、イソパラフィン系飽和炭化水素(沸点164~176℃のイソパラフィン系飽和炭化水素溶剤の混合物)4.9gをエアゾール缶に入れ、0.2mL定量噴霧エアゾールバルブを装着後、液化石油ガス5.1gを充填した。内圧は0.3MPa(ゲージ圧、25℃)であった。これにより、メトフルトリンを2重量%、イソパラフィン系飽和炭化水素を48重量%、及び液化石油ガスを50重量%含有する地面噴霧用害虫忌避エアゾール組成物(本発明組成物)と、当該エアゾール組成物が充填された地面噴霧用害虫忌避エアゾール製品(本発明エアゾール製品)を得た。本発明エアゾール製品によれば、一回の定量噴霧あたり2.5mgのメトフルトリンがエアゾールとなって噴霧される。… 【0041】 〔試験例〕 ヤブ蚊の発生地の近くに2m×2mの正方形のエリアを設定し、エリアの4つの角の地面に1回ずつ、本発明エアゾール製品または比較エアゾール製品を用いて、本発明組成物または比較例組成物を定量噴霧した(処理区)。噴霧直後、噴霧後1時間、噴霧後2時間、および噴霧後3時間の時点における、各エリアの飛翔害虫の忌避効果を調べた。」 イ 甲2Aには、次の記載がある。 摘記2a:請求項1 「【請求項1】 予め設定された定量を勢いよく噴霧できる機能を有するエアゾール製品の内容物の噴霧状態下で、害虫を防除することを特徴とする害虫防除方法。」 摘記2b:段落0013、0047~0048、0053~0055及び0062~0065 「【0013】 定量を勢いよく噴霧する時の一回の噴霧量、即ち、定量バルブの定量室の容積は、1.0~15.0mlが好ましく、3.0~10.0mlがより好ましい。また、噴霧距離100cmにおける平均粒子径(D50)は、用途が空間用・塗布用により違いがあるが、50~100μmが好ましい。なお、上記数値範囲は、本発明を達成できるものであれば任意であり、特に限定されない。… 【0047】 本発明例に使用するエアゾール剤容器には、定量室の容積5ml、ステム孔は口径3.5mm×2、アンダータップ径6.5mm、噴口径2.5mmの定量噴霧機能を達成する定量バルブが備えられている。 【0048】 以下に、各試験に使用する本発明例1、本発明例2、比較例1及び比較例2を説明する。 本発明例1:イミプロトリン0.48w/v%を含む原液70mlと、噴射剤230mlと、からなるエアゾール薬剤を、上記した定量噴霧機能を備えるエアゾール剤容器に充填したエアゾール製品。… 【0053】 [粒子径の測定試験] 本試験では、本発明例1、比較例1、本発明例2及び比較例2を各1個ずつ用意し、それぞれを一定距離で噴霧させて、その粒子径を測定する。 【0054】 本試験は、次の(1)、(2)の手順で行う。 (1)試験検体を25°Cの恒温水槽に1時間浸す。 (2)レーザー粒度分布測定装置LDSA-1400A(東日コンピュータアプリケーションズ(株)製)を用いて、50cm及び100cmの位置における試験検体の粒子径を測定する。なお、測定方法は、オート・スタート平均(平均化回数3回、間隔0.60ms)とする。 試験結果を表6及び表7に示す。 【0055】 【表6】 [図:0001404804000001.jpg] …【0062】 [クロゴキブリに対する効力試験] 本試験では、本発明例1及び比較例1を各1個ずつ用意し、それぞれをクロゴキブリに噴霧させて、その効力を確認する。 【0063】 本試験は、次の(1)~(3)の手順で行う。 (1)供試虫(クロゴキブリ)を入れたプラスチックカップを2個(カップ1,2)用意し、傾斜角45°の台に、カップ1を試験検体の噴射線上に取り付け、カップ2をカップ1から15cm平行に離れた位置に並べて取り付ける。 (2)カップ1から70cmの距離で、カップ1の中心に向けて試験検体を噴霧する。なお、比較例1の噴射時間は、本発明例1に合わせて、2.0秒間である。 (3)噴霧直後より1時間毎のノックダウン数を計測すると共に、24時間及び48時間後の致死率を計算する。なお、ノックダウン数とは、行動不能になった供試虫の数のことである。 試験結果を表9に示す。 【0064】 【表9】 [図:0001404804000002.jpg] 【0065】 表9から明らかなように、クロゴキブリに対する効力試験の結果、カップ1において、本発明例1の方が比較例1よりKT50及びKT90の秒数が小さいことから、本発明例1の方が比較例1よりも速効性があることがわかった。また、カップ2において、比較例1の供試虫が死亡していないのに対して、本発明例1の供試虫が死亡していることから、本発明例1の方が比較例1よりも害虫防除効果(致死効果)が高いことがわかった。なお、表中のKT50(90)とは、プラスチックカップ内に入れた供試虫の50(90)%がノックダウンするまでにかかった時間(秒)である。」 ウ 甲3A(甲1Bと同じ。)には、次の記載がある。 摘記3a:請求項1 「【請求項1】 屋内ダニ忌避成分として、酸部分とアルコール部分の炭素数の総数が14~23である脂肪族カルボン酸エステル化合物を含有するエアゾール原液と噴射剤とを、定量噴霧用エアゾールバルブを備えたエアゾール容器に充填してなるエアゾール剤を用いて、屋内に一定量噴霧処理することを特徴とする屋内ダニ忌避方法。」 摘記3b:段落0002及び0023~0026 「【0002】 近年、居住環境の変化により、屋内にコナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ等の屋内塵性ダニ類が大発生し、不快感を与えるばかりでなく、アレルギー性喘息や皮疹を惹起する等の問題を生じている。 そこで、カーペットや寝具等を処理するための屋内用殺ダニ剤が求められてきたが、屋内では直接肌に接触する使用場面が多いためにより安全性の高い薬剤の開発が必要とされ、今なお的確な防除法は確立されていない。更に、アレルギー性喘息を引き起こすヒョウヒダニ類は、虫体の死骸そのものでもアレルギーの原因になることが明らかとなってきた。… 【0023】…本発明の屋内ダニ忌避方法で用いるエアゾール剤は、…定量噴霧用エアゾールバルブを備え一定量を少量噴霧処理する方法に特定される。… 【0024】 前記エアゾール剤のエアゾール原液/噴射剤比率は、対象面への付着効率を考慮して20~60/40~80(容量比)とし、そのうえで、噴霧粒子の粒子径分布において、10~50μmの噴霧粒子が全体の60%以上を占め、かつ全体の噴霧粒子のうちの30~80%が噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着するように設計するのが好ましい。 【0025】 また、本発明で用いるエアゾール剤は、屋内で一定量、好ましくは一回当たり空中に向けて0.2~0.9mL(屋内ダニ忌避成分量として、0.5~50mg/m3)噴霧させるタイプであり、その他噴口、ノズル、容器等の形状については、その用途、使用目的等に応じて適宜選択すればよい。例えば、上から押して噴霧するボタンと斜め上方向きのノズルを備えた卓上タイプとしたり、小型容器の携帯用として設計することができる。 【0026】 本発明の屋内ダニ忌避方法は、リビングや和室、玄関などの室内で、畳、カーペット、床、ベッド、布団、枕、クッション、縫いぐるみ、布製ソファーなどに適用される。そして、対象面に付着したエアゾール剤内容物は、コナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ等に対して顕著な屋内ダニ忌避効力を奏し、しかも残効性にも優れるので極めて有用性が高いものである。」 摘記3c:段落0027~0031 【0027】 次に具体的な実施例に基づき、本発明の屋内ダニ忌避方法について更に詳細に説明する。 【実施例1】 【0028】 屋内ダニ忌避成分のミリスチン酸イソプロピルに、サリチル酸シクロヘキシル2.0w/v%とイソオイゲノール1.0w/v%を溶解させエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液12mLと液化石油ガス18mL[エアゾール原液/噴射剤比率:40/60(容量比)]を定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填して、本発明で用いる屋内ダニ忌避エアゾール剤を得た。 このエアゾール剤の噴霧粒子は、その分布において10~50μmの噴霧粒子が全体の72%を占めた。 【0029】 ほぼ密閉した6畳の部屋中央で、前記エアゾール剤を1ショット当り0.2mLずつ、やや斜め上方4隅に向けて4ショット噴霧した。このエアゾール剤は、全体の噴霧粒子のうちの63%が噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着し、約2週間にわたり屋内塵性ダニ類を寄せ付けなかった。なお、このエアゾール剤は、一度に0.8mL(0.2mL×4)使用するとして、約30回分有効であった。 また、6畳の部屋で約6~12mL噴霧する従来のエアゾール剤に実施例1のエアゾール原液処方を適用した場合、ミリスチン酸イソプロピルによるベタツキが避けられず、使用性の点で不適であった。 【実施例2】 【0030】 実施例1に準じて、表1に示す各種屋内ダニ忌避エアゾール剤を調製し、ダニ忌避効果を評価した。 [ダニ忌避効力試験] 1000cm2の方形綿布に供試エアゾール剤を2mL噴霧処理し、風乾後直径4cmの円形に裁断した。これを直径4cmのシャーレにはめ込み、その中央部に誘引用培地50mgを置いた。別に、直径9cmのシャーレに供試ヤケヒョウヒダニを培地とともに約10000匹放ち、この中央部に先に用意した直径4cmのシャーレを置いた。 同様に、噴霧処理しない綿布を用いて無処理区とした。 24時間後に綿布上に侵入したダニ数を計数し、次式に従って忌避率を算出した。 なお、試験は噴霧処理直後の綿布とこれを20日間室内に放置後の綿布について行った。 忌避率(%)=[無処理区の侵入ダニ数-処理区の侵入ダニ数]/無処理区の侵入ダニ数 ×100 【0031】 【表1】 [図:0001404804000003.jpg] …」 エ 甲4Aには、次の記載がある。 摘記4a:段落0052 「【0052】 次に、クリーン性についての実験結果を説明する。クリーン性とは、例えばカーテンや机、床等にエアゾール組成物を噴射した際に、エアゾール組成物が残ってべとついたりしにくく、エアゾール組成物が残っていてもべとつきが低い性質のことである。」 オ 甲5Aには、次の記載がある。 摘記5a:段落0010 「【0010】 本発明は、エアゾール原液をエアゾール容器に充填後、(c)噴射剤としての圧縮ガスを封入し、かつ15cm離れた塗布面に向けて噴射した時、粒度分布測定装置にて測定した噴霧粒子の平均粒子径が50μm以上で、更に(a)害虫忌避成分の塗布面付着率が70%以上となるようにエアゾール化したことを特徴とする。本発明において、平均粒子径とは粒度分布測定装置にて測定され、自動演算処理装置によって解析されたD50(累積50%)の粒子径を意味するものであり、害虫忌避成分の付着率をより改善する為には噴霧粒子の粒子径を50μm以上、好ましくは70μm以上にするのがよい。」 カ 甲6Aには、次の記載がある。 摘記6a:段落0006 「【0006】本発明の忌避成分であるフェノトリンは、ピレスロイド系の公知化合物であり、ゴキブリ、ハエ類に対して高い殺虫効力を示し、しかも安全性が高いことから家庭用殺虫剤の殺虫成分として広く使用されている。しかしながら、噴霧法による蚊やブユ等に対する殺虫効力は、アレスリン、フラメトリン、レスメトリン等の他のピレスロイドに比べるとかなり低く、忌避剤用途に不向きと考えられていたものである。しかるに本発明者らは、殺虫効力を奏する濃度より低い濃度で実用的な忌避試験を行ったところ、蚊、ブユ、ダニ類等に対して高い忌避作用を示すことを見い出したのである。」 (2)甲1A(甲2B)を主引用例とした場合の検討 ア 甲1発明 摘記1aの「殺虫成分を0.5~5重量%、…親油性溶剤を35~70重量%、並びに、…液状噴射剤を25~64.5重量%含有する…地面噴霧用害虫忌避エアゾール組成物を地面に噴霧することにより、前記地面の上方空間への害虫の侵入を阻止する…害虫の忌避方法。」との記載、及び 摘記1bの「本発明の忌避対象となる害虫としては、各種の有害昆虫やクモ、ダニ類等を挙げることができる…〔製剤例〕…0.2mL定量噴霧エアゾールバルブを装着後、液化石油ガス5.1gを充填した。…メトフルトリンを2重量%、イソパラフィン系飽和炭化水素を48重量%、及び液化石油ガスを50重量%含有する…エアゾール組成物が充填された地面噴霧用害虫忌避エアゾール製品(本発明エアゾール製品)を得た。本発明エアゾール製品によれば、一回の定量噴霧あたり2.5mgのメトフルトリンがエアゾールとなって噴霧される。…ヤブ蚊の発生地の近くに2m×2mの正方形のエリアを設定し、エリアの4つの角の地面に1回ずつ、本発明エアゾール製品または比較エアゾール製品を用いて、本発明組成物または比較例組成物を定量噴霧した(処理区)。噴霧直後、噴霧後1時間、噴霧後2時間、および噴霧後3時間の時点における、各エリアの飛翔害虫の忌避効果を調べた。」との記載からみて、甲1Aには、 『殺虫成分(メトフルトリン)2重量%、親油性溶剤(イソパラフィン系飽和炭化水素)48重量%、及び液状噴射剤(液化石油ガス)50重量%を含有するエアゾール組成物を充填し、0.2mL定量噴霧エアゾールバルブを装着した地面噴霧用害虫忌避エアゾール製品の一回の定量噴霧により、地面の上方空間への害虫の侵入を阻止する飛翔害虫の忌避方法。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 対比 本1発明と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「飛翔害虫の忌避方法」に用いられる「殺虫成分(メトフルトリン)2重量%」と「親油性溶剤(イソパラフィン系飽和炭化水素)48重量%」からなる二成分は、害虫を、メトフルトリン(殺虫成分)を防除のための有効成分として用い、これを親油性の「溶剤」に溶解して液体として用いるものと解されるから、甲1発明の当該二成分と、本1発明の「匍匐害虫の忌避成分を含む原液」とは、両者とも「害虫の防除成分を含む原液」という点において共通する。 甲1発明の「液状噴射剤(液化石油ガス)」は、本1発明の「噴射剤」に相当する。 甲1発明の「エアゾール組成物を充填し、0.2mL定量噴霧エアゾールバルブを装着した地面噴霧用害虫忌避エアゾール製品」は、本1発明の「エアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品」に相当する。 甲1発明の「飛翔害虫の忌避方法」と、本1発明の「匍匐害虫の忌避方法」は、両者とも「害虫の忌避方法」という点において共通する。 してみると、本1発明と甲1発明は『害虫の防除成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品から、前記エアゾール組成物を、噴射する、害虫の忌避方法。』という点において一致し、次の(α)並びに(β1)及び(β2)の点において相違する。 (α)害虫の防除成分が、本1発明は「匍匐害虫の忌避成分」であるのに対して、甲1発明は「殺虫成分(メトフルトリン)2重量%」であり、害虫の忌避方法が、本1発明は「匍匐害虫の忌避方法」であるのに対して、甲1発明は「飛翔害虫の忌避方法」である点 (β1)噴射が、本1発明は「前記エアゾール組成物を、下方に向けて噴射」であるのに対して、甲1発明は「地面噴霧用害虫忌避エアゾール製品の一回の定量噴霧」である点 (β2)本1発明は「噴射された前記エアゾール組成物の平均粒子径(D50)が15~95μmとなるよう噴射」するのに対して、甲1発明は、噴霧されたエアゾール組成物の平均粒子径(D50)の値が不明な点 ウ 判断 事案に鑑み、まず、本1発明の課題との関係で、上記(β1)と(β2)の相違点を合わせて検討し、次に上記(α)の相違点について検討する。 (ア)相違点(β1)及び(β2)について 本1発明は、噴射方向と組成物の平均粒径を共に特定することによって、処理量の調整を容易にしながら、匍匐害虫を致死させにくく忌避するという効果を得るものである。以下、この前提に立って、相違点(β1)及び(β2)について判断する。 甲1発明の認定の根拠となった甲1Aには、地面の上方空間への害虫の侵入を阻止することを目的として、地面に噴射することの記載はあるものの、その段落0008及び0036に記載されるように、地面の定義として下方に向けて噴射することを目的としたものではない上に、噴霧されたエアゾール組成物の平均粒子径(D50)を「15~95μm」の範囲に特定するという必要性もなく、記載も示唆もない。 したがって、相違点(β1)及び(β2)は、実質的な相違点である。 また、甲1A~甲6Aの記載を考慮しても、甲1発明において、噴霧されたエアゾール組成物の平均粒子径(D50)を「15~95μm」の範囲とした上で、さらに噴射方向を「下方」にすることは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。 (イ)相違点(α)について 本1発明は、本件特許明細書の段落0004の「特許文献1に記載の方法は、殺虫、殺ダニ組成物を用いることにより、害虫やダニを防除することを意図している。そのため、特許文献1に記載の害虫、ダニの防除方法は、ダニ等の死骸(虫体)が適用箇所に残りやすく、ダニアレルゲンを低減させることが困難である。」との記載、及び同段落0011の「本発明によれば、ダニ等の匍匐害虫を致死させにくく、忌避することにより、適用箇所に残存する虫体の数を低減するための匍匐害虫の忌避方法を提供することができる。」との記載にあるように、ダニ等の死骸によるダニアレルゲンの低減を意図して、ダニ等の匍匐害虫を致死させにくく、忌避させることで、殺虫、殺ダニ組成物を用いた従来技術の問題点を改善することを目的として「害虫の忌避成分」を用いるものである。 これに対して、甲1発明は、甲1Aの段落0035(摘記1b)の記載にあるように、エアゾール組成物を野外の地面に噴霧することで、害虫の侵入を阻止するものであって、地面1m2あたりの殺虫成分量は2mg以上が好ましいとするものであるから、甲1発明の「殺虫成分」は、本1発明の「忌避成分」のように防除対象となる害虫を致死させないような有効成分の種類と量を意図したものではない。 そして、甲1発明の「飛翔害虫の忌避方法」から、粒径と噴射方向を調整して忌避にとどまるようにする点が動機づけられない。 してみると、上記(α)の相違点は実質的な相違点であり、甲1A~甲6Aの記載を考慮しても、甲1発明の「飛翔害虫の忌避方法」を、本1発明の「匍匐害虫の忌避方法」に変更することは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。 (ウ)本1発明の効果について 本1発明の効果について検討するに、本件特許明細書の段落0067~0069の記載には、本1発明の具体例である実施例1のエアゾール製品(平均粒子径42.8μm)を、水平方向に対して30°下向きの角度で噴射した場合の平均忌避率が92.4%になるのに対して、実施例1の上方噴射の場合の平均忌避率は0%になることが、具体的な試験結果によって示されているところ、噴射方向を下方とすることにより平均忌避率が大きく向上するという効果は、甲1発明に甲1A~甲6Aを含む技術常識を適用して、上記本1発明の構成を想定した場合の効果から、当業者にとって予測できない顕著な効果である。 エ 本2及び本3発明について 本1発明を直接又は間接的に引用する本2及び本3発明についても、上記イと同様に、相違点(α)並びに(β1)及び(β2)の実質的な相違点を有し、これらの相違点は、甲1A~甲6Aの記載を考慮しても、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。また、本2及び本3発明の効果は、当業者にとって予測できない効果である。 オ まとめ 以上総括するに、本1発明及び本1発明を直接又は間接的に引用する本2及び本3発明は、甲1Aに記載された発明ではなく、甲1Aに記載された発明、及び甲1A~甲6Aに記載された技術事項、並びに本件特許の出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲1Aを主引用例とする申立人Aの申立理由1及び2に理由はない。 (3)甲2Aを主引用例とした場合の検討 ア 甲2発明 摘記2bの「本発明例に使用するエアゾール剤容器には、定量室の容積5ml…の定量噴霧機能を達成する定量バルブが備えられている。…本発明例1:イミプロトリン0.48w/v%を含む原液70mlと、噴射剤230mlと、からなるエアゾール薬剤を、上記した定量噴霧機能を備えるエアゾール剤容器に充填したエアゾール製品。…レーザー粒度分布測定装置LDSA-1400A…を用いて、50cm及び100cmの位置における試験検体の粒子径を測定する。…表6…本発明例1…67.55…59.57…粒子径D50(n=2)単位:μm…[クロゴキブリに対する効力試験]…供試虫(クロゴキブリ)を入れたプラスチックカップを2個(カップ1,2)用意し、傾斜角45°の台に、カップ1を試験検体の噴射線上に取り付け、…カップ1から70cmの距離で、カップ1の中心に向けて試験検体を噴霧する。…表9…カップ1…本発明例1…48時間後の致死率…70%」との記載からみて、甲2Aには、 『イミプロトリン0.48w/v%を含む原液70mlと、噴射剤230mlと、からなるエアゾール薬剤を、定量室の容積5mlの定量噴霧機能を備えるエアゾール剤容器に充填した、50cm及び100cmの位置における試験検体の粒子径D50が67.55μm及び59.57μmとなるエアゾール製品を用い、供試虫(クロゴキブリ)を入れたプラスチックカップを傾斜角45°の台に試験検体の噴射線上に取り付け、70cmの距離でカップの中心に向けて試験検体を噴霧し、48時間後の致死率が70%となる害虫防除方法。』についての発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 イ 対比 本1発明と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「イミプロトリン0.48w/v%を含む原液70ml」は「供試虫(クロゴキブリ)」を「48時間後の致死率が70%となる害虫防除」させるための有効成分として用いるものであるから、甲2発明の当該原液と、本1発明の「匍匐害虫の忌避成分を含む原液」とは、両者とも「匍匐害虫の防除成分を含む原液」という点において共通する。 甲2発明の「噴射剤230ml」は、本1発明の「噴射剤」に相当する。 甲2発明の「エアゾール薬剤を、定量室の容積5mlの定量噴霧機能を備えるエアゾール剤容器に充填した…エアゾール製品」は、本1発明の「エアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品」に相当する。 甲2発明の「供試虫」を「クロゴキブリ」と「48時間後の致死率が70%となる害虫防除方法」と、本1発明の「匍匐害虫の忌避方法」は、両者とも「匍匐害虫の防除方法」という点において共通する。 してみると、本1発明と甲2発明は『匍匐害虫の防除成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品から、前記エアゾール組成物を、噴射する、匍匐害虫の防除方法。』という点において一致し、次の(γ1)及び(γ2)の点において相違する。 (γ1)噴射が、本1発明は「下方に向けて噴射し、噴射された前記エアゾール組成物の平均粒子径(D50)が15~95μmとなるよう噴射する」と特定されているのに対して、甲2発明は「50cm及び100cmの位置における試験検体の粒子径D50が67.55μm及び59.57μmとなるエアゾール製品を用い、供試虫(クロゴキブリ)を入れたプラスチックカップを傾斜角45°の台に試験検体の噴射線上に取り付け、70cmの距離でカップの中心に向けて試験検体を噴霧し」と特定されている点 (γ2)匍匐害虫の防除成分及び防除方法が、本1発明は「匍匐害虫の忌避成分」を「匍匐害虫の忌避方法」としての種類や量で用いる「忌避」のためのものであるのに対して、甲2発明は「イミプロトリン0.48w/v%を含む原液70ml」という種類や量で用いて「48時間後の致死率が70%」という「殺虫」のためのものである点 ウ 判断 事案に鑑み、上記(γ2)の相違点について検討する。 本1発明は、本件特許明細書の段落0004の「特許文献1に記載の方法は、殺虫、殺ダニ組成物を用いることにより、害虫やダニを防除することを意図している。そのため、特許文献1に記載の害虫、ダニの防除方法は、ダニ等の死骸(虫体)が適用箇所に残りやすく、ダニアレルゲンを低減させることが困難である。」との記載、及び同段落0011の「本発明によれば、ダニ等の匍匐害虫を致死させにくく、忌避することにより、適用箇所に残存する虫体の数を低減するための匍匐害虫の忌避方法を提供することができる。」との記載にあるように、ダニ等の死骸によるダニアレルゲンの低減を意図して、ダニ等の匍匐害虫を致死させにくく、忌避させることで、殺虫、殺ダニ組成物を用いた従来技術の問題点を改善することを目的として「匍匐害虫の忌避成分」を用いた「匍匐害虫の忌避方法」に関するものである。 これに対して、甲2発明は、甲2Aの段落0065(摘記2b)の「本発明例1の方が比較例1よりも害虫防除効果(致死効果)が高いことがわかった」との記載にあるように、致死率(致死効果)が高い方が好ましいとするものであるから、甲2発明の「イミプロトリン0.48w/v%」は、本1発明の「忌避成分」のように防除対象となる害虫を致死させない程度の有効成分の種類と量を意図したものではない。 してみると、上記(γ2)の相違点は、実質的な相違点である。 そして、噴射組成物の噴射方向や粒径を全く考慮していない甲1A~甲6Aの記載を考慮しても、殺虫率を高めることを目的とした甲2発明の「イミプロトリン0.48w/v%」を用いた「48時間後の致死率が70%となる害虫防除方法」を、匍匐害虫が致死しない程度の使用量(少量)にして、本1発明のような「匍匐害虫の忌避成分」を用いた「匍匐害虫の忌避方法」の構成にする動機付けは見当たらない。 さらに、本1発明の効果について検討するに、本件特許明細書の段落0067~0069の記載された噴射方向を下方とすることにより、平均忌避率が0%から92.4%に大きく向上するという効果は、甲1発明に甲1A~甲6Aを含む技術常識を適用して、上記本1発明の構成を想定した場合の効果から、当業者にとって予測できない顕著な効果である。 エ 本2及び本3発明について 本1発明を直接又は間接的に引用する本2及び本3発明についても、上記イと同様に、相違点(γ2)の実質的な相違点を有し、この相違点は、甲1A~甲6Aの記載を考慮しても、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。また、本2及び本3発明の効果は、当業者にとって予測できない効果である。 オ まとめ 以上総括するに、上記(γ1)の相違点について検討するまでもなく、本1発明及び本1発明を直接又は間接的に引用する本2及び本3発明は、甲2Aに記載された発明ではなく、甲2Aに記載された発明、及び甲1A~甲6Aに記載された技術事項、並びに本件特許の出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲2Aを主引用例とする申立人Aの申立理由1及び2に理由はない。 2.申立人Bの申立理由A(進歩性)について (1)甲1B~甲6Bの記載事項 ア 甲1B(甲3Aと同じ。)には、上記1.(1)ウに示したとおりの記載がある。 イ 甲2B(甲1Aと同じ。)には、上記1.(1)アに示したとおりの記載がある。 ウ 甲3Bには、次の記載がある。 摘記3A:請求項4 「【請求項4】有効成分として2,4-ジオキソ-1-(2-プロピニル)イミダゾリジン-3-イルメチル クリサンテマートを含有する液剤および噴射剤からなり、該液剤と噴射剤との重量比が7/3~9/1である混合物を、噴霧開始地点から30cmの距離における噴霧粒子の体積平均粒子径が70~120μmとなるように匍匐性害虫、その生息地、または匍匐性害虫の通り道に噴霧することを特徴とする匍匐性害虫の駆除方法。」 摘記3B:段落0002、0026~0027及び0029~0030 「【0002】…2,4-ジオキソ-1-(2-プロピニル)イミダゾリジン-3-イルメチルクリサンテマートを有効成分とする殺虫エアゾール組成物は、…殺虫エアゾールを噴霧された直後に匍匐性害虫が物陰等へ逃げ込む場合もあり、即効性がさらに高く、かつ駆除効力の持続性の高いエアゾールの開発が望まれていた。… 【0026】本エアゾールには、本化合物の以外の殺虫有効成分の1種以上をさらに配合することができる。… 【0027】かかる殺虫有効成分としては例えば、…フェノトリン…を挙げることができる… 【0029】本エアゾールが効力を発揮し得る匍匐性害虫としては、例えば次のものがあげられる。 ゴキブリ類:チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等… 室内塵性ダニ類:コナダニ類、チリダニ類、ツメダニ類、イエダニ類等… 【0030】かかる匍匐性害虫の駆除においては、本エアゾールを例えば、害虫に直接、あるいは害虫の通り道や家屋への進入路となりうる窓や壁等の隙間、害虫の生息地等に予め噴霧したり噴射することにより施用することができる。この際、有効成分量で0.001~100mg/m2程度を施用するのが適当である。」 摘記3C:段落0031及び0047~0048 「【0031】 【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。 実施例1 2,4-ジオキソ-1-(2-プロピニル)イミダゾリジン-3-イルメチル1R-シス、トランス-クリサンテマート0.1重量部にアルキルベンゼン(商品名:アルキルベンゼンAB-SG、三菱化学株式会社製)を加え20重量部とした後、脱臭ケロセン(アイソパーM、エクソン化学株式会社製)60重量部を加え混合し、エアゾール容器に充填した。該エアゾール容器にエアゾールバルブ(日本プリシジョンバルブ株式会社製、ステム孔径0.51mm×2、ハウジング主孔径2.03mm、ベーパータップ(VT)孔径0.41mm)をクリンプした後、液化石油ガス(商品名:脱臭LPG4.8KG、4.8kg/cm2・ゲージ圧(20℃)、大同ほくさん株式会社製)を20重量部充填しエアゾールアクチュエーター(日本プリシジョンバルブ株式会社製、孔径0.58mm、噴口構造:フォワードテーパー型)を装着することによって本エアゾール1を得た。粒子径測定装置で該エアゾールの噴霧粒子の噴射口から30cmの距離における体積平均粒子径(マルバーン社の粒子径測定装置2600型を用いて測定)は83μmであった。また噴射速度は1.78g/秒であった。… 【0047】試験例1 ピレスロイド抵抗性チャバネゴキブリ雌雄各5頭を入れた直径15cmの円形容器に、直径30cm、高さ50cmのガラス製円筒を被せ、該ガラス製円筒の上方から本エアゾール1、2、3、比較エアゾール1、2または3を0.4g噴射した。噴射直後に該ガラス製円筒に上蓋を被せ、30秒後に円形容器を取り出して経過時間毎のノックダウン虫数を数えた。実験は3~4反復で行い、その平均値からノックダウン率KT90値(供試虫の90%がノックダウンするのに要する時間)を求めた。結果を表1に示す。 【0048】 【表1】 [図:0001404804000004.jpg] 」 エ 甲4Bには、次の記載がある。 摘記4A:段落0032、0034、0043及び0046 「【0032】 前記エアゾール容器11内に充填されるエアゾール組成物Aは、炭化水素系溶剤を含有する原液と可燃性液化ガスとからなる。 前記原液は、炭化水素系溶剤を有効成分の溶媒として含有しており、噴射時に液化ガスの気化により微細化されて霧状となり、畳やカーペットなどの床面に付着して、あるいは害虫に直接付着して効力を発揮する。… 【0034】 前記有効成分としては、たとえば、フタルスリン、アレスリン、ペルメトリン、フラメトリン、プラレトリン、レスメトリン、d-フェノトリン、テフルスリン、トランスフルトリン、イミプロトリン、アミドフルメトなどの殺虫及び殺ダニ成分…があげられる。… 【0043】 このエアゾール製品10を使用する場合は、耐圧容器13の胴部13aを把持し、噴射口32を床面に向けて押しボタンの天面28を指Yで押し下げる(図4a参照)。… 【0046】 本発明のエアゾール製品は、床面などに噴射しても跳ね返りが少なく付着量が多いことから、畳やカーペットなどに潜んでいるダニやノミなどの害虫を死滅させる床用殺虫エアゾール製品に好適に用いることができる。」 オ 甲5Bには、次の記載がある。 摘記5A:請求項1及び10 「【請求項1】 エアゾール容器と、そのエアゾール容器のバルブに取り付けられる噴射部材と、エアゾール容器に充填されるエアゾール組成物とからなるエアゾール製品であって、 前記エアゾール容器が、所定量のエアゾール組成物を噴射させる定量噴射機構を備えており、 前記噴射部材から10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径が10cm以上である、エアゾール製品。… 【請求項10】 前記噴射部材が、エアゾール容器のバルブと係合する係合部と、噴射物を噴射する複数の噴射孔と、それらの噴射孔と係合部とを連通する連通路とを備えており、隣り合う噴射孔間の角度が30~120度である、 請求項1記載のエアゾール製品。」 カ 甲6Bには、次の記載がある。 摘記6A:段落0006、0026、0043及び0054 「[0006]本発明者らは、上記害虫忌避成分が配合されている場合における粘膜への刺激の原因について鋭意研究し、以下の知見を得た。すなわち、噴射された害虫忌避剤の中には、皮膚や髪等の適用箇所に付着せずに、適用距離(たとえば噴口から15cmの距離)を超えてさらに離れた位置(たとえば噴口から30cm離れた位置)に到達し、浮遊するものがある。このような離れた位置では、粒子径は、適用距離における粒子径よりも小さくなる。その結果、小さくなった粒子は、吸引されやすく粘膜を刺激しやすい。そこで、本発明者らは、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比が所定の値以上となるよう調整された噴射製品であれば、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減され、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。… [0026]本実施形態の噴射製品によって噴射された害虫忌避組成物は、噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30が50μm以上であればよく、70μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、50%平均粒子径r30が300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。50%平均粒子径r30が50μm未満である場合、使用者等は、粘膜が刺激されやすい。… [0043]…本実施形態の噴射方法は、ポンプ製品である噴射製品を用いて実施することもでき、エアゾール製品である噴射製品を用いて実施することもできる。… [0054]…バットの中心にティッシュ(セレナーデフラワー 200mm×205mm、イデシギョー(株)製)を5枚重ねてバットの中央に設置した。バットの中心から水平方向に30cm、垂直方向に100cm離れた位置から、地面と水平方向へ検体を噴霧した。」 (2)甲1B(甲3A)を主引用例とした場合の検討 ア 甲X発明 摘記3aの「屋内ダニ忌避成分として、酸部分とアルコール部分の炭素数の総数が14~23である脂肪族カルボン酸エステル化合物を含有するエアゾール原液と噴射剤とを、定量噴霧用エアゾールバルブを備えたエアゾール容器に充填してなるエアゾール剤を用いて、屋内に一定量噴霧処理することを特徴とする屋内ダニ忌避方法。」との記載、 摘記3bの「本発明で用いるエアゾール剤は、屋内で一定量、好ましくは一回当たり空中に向けて0.2~0.9mL(屋内ダニ忌避成分量として、0.5~50mg/m3)噴霧させるタイプであり、その他噴口、ノズル、容器等の形状については、その用途、使用目的等に応じて適宜選択すればよい。例えば、上から押して噴霧するボタンと斜め上方向きのノズルを備えた卓上タイプとしたり、小型容器の携帯用として設計することができる。…本発明の屋内ダニ忌避方法は、リビングや和室、玄関などの室内で、畳、カーペット、床、ベッド、布団、枕、クッション、縫いぐるみ、布製ソファーなどに適用される。」との記載、及び 摘記3cの「実施例1…屋内ダニ忌避成分のミリスチン酸イソプロピルに、サリチル酸シクロヘキシル2.0w/v%とイソオイゲノール1.0w/v%を溶解させエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液12mLと液化石油ガス18mL[エアゾール原液/噴射剤比率:40/60(容量比)]を定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填して、本発明で用いる屋内ダニ忌避エアゾール剤を得た。このエアゾール剤の噴霧粒子は、その分布において10~50μmの噴霧粒子が全体の72%を占めた。…ほぼ密閉した6畳の部屋中央で、前記エアゾール剤を1ショット当り0.2mLずつ、やや斜め上方4隅に向けて4ショット噴霧した。…実施例2…実施例1に準じて、表1に示す各種屋内ダニ忌避エアゾール剤を調製し、ダニ忌避効果を評価した。…1000cm2の方形綿布に供試エアゾール剤を2mL噴霧処理し、風乾後直径4cmの円形に裁断した。これを直径4cmのシャーレにはめ込み、その中央部に誘引用培地50mgを置いた。」との記載からみて、甲1B(甲3A)には、実施例2の具体例として、 『屋内ダニ忌避成分のミリスチン酸イソプロピルに、サリチル酸シクロヘキシル2.0w/v%とイソオイゲノール1.0w/v%を溶解させエアゾール原液12mLと液化石油ガス18mLを定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填して得られる屋内ダニ忌避エアゾール剤を、1ショット当り0.2mLずつ噴霧する、室内で、畳、カーペット、床、ベッド、布団、枕、クッション、縫いぐるみ、布製ソファーなどに適用される屋内ダニ忌避方法であって、このエアゾール剤の噴霧粒子は、その分布において10~50μmの噴霧粒子が全体の72%を占め、1000cm2の方形綿布に供試エアゾール剤を2mL噴霧処理する屋内ダニ忌避方法。』についての発明(以下「甲X発明」という。)が記載されているといえる。 イ 対比 本1発明と甲X発明とを対比する。 甲X発明の「屋内ダニ忌避成分のミリスチン酸イソプロピルに、サリチル酸シクロヘキシル2.0w/v%とイソオイゲノール1.0w/v%を溶解させエアゾール原液12mL」は、本1発明の「匍匐害虫の忌避成分を含む原液」に相当する。 甲X発明の「液化石油ガス18mL」は、本1発明の「噴射剤」に相当する。 甲X発明の「定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填して得られる屋内ダニ忌避エアゾール剤」は、本1発明の「エアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品」に相当する。 甲X発明の「このエアゾール剤の噴霧粒子は、その分布において10~50μmの噴霧粒子が全体の72%を占め」は、そのD50(累積50%)の値が10~50μmの範囲から逸脱しない範囲にあることが明らかであって、摘記3bの「対称面への付着効率を考慮して…設計するのが好ましい。…対称面に付着したエアゾール剤内容物は…顕著な屋内ダニ忌避効力を奏し、しかも残香性にも優れる」という観点からの好適な噴霧粒子の分布を意図したものであって、単純には「D50」の値が10~50μmの中央値(30μm)の近傍にあると合理的には解されることから、本1発明の「噴射された前記エアゾール組成物の平均粒子径(D50)が15~95μmとなるよう噴射する」に相当する。 甲X発明の「屋内ダニ忌避方法」は、本1発明の「匍匐害虫の忌避方法」に相当する。 してみると、本1発明と甲X発明は『匍匐害虫の忌避成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品から、噴射された前記エアゾール組成物の平均粒子径(D50)が15~95μmとなるよう噴射する、匍匐害虫の忌避方法。』という点において一致し、次の(δ)の点において相違する。 (δ)本1発明は「エアゾール組成物を、下方に向けて噴射」するのに対して、甲X発明は「1000cm2の方形綿布に供試エアゾール剤を2mL噴霧処理」するものであって、その噴霧処理の方向が「下方に向けて」か否か不明な点 ウ 判断 上記(δ)の相違点について検討する。 甲X発明の「1000cm2の方形綿布」は、甲1B(甲3A)の段落0030(摘記3c)の実施例2の「ダニ忌避効力試験」のための試験片であって、甲X発明の「室内で、畳、カーペット、床、ベッド、布団、枕、クッション、縫いぐるみ、布製ソファーなどに適用される屋内ダニ忌避方法」における「布団」や「布製ソファー」などの布製品に適用する場合を想定しているものと合理的には理解される。 しかしながら、甲X発明の「方形綿布」や「布団」などへ噴霧処理時に「下方に向けて噴射」することが普通であると解すべき合理的な理由や技術常識の存在は見当たらないので、上記(δ)の相違点は実質的な相違点である。 そして、甲2B(甲1A)の請求項1(摘記1a)には「地面噴霧用害虫忌避エアゾール組成物」が記載されており、地面に向けて噴霧するエアゾール組成物は、エアゾールを「下方に向けて」噴射することの記載があるといえるが、甲2Bは、野外開放空間において飛翔害虫の侵入を長期間安定に阻止することを課題とするもので、甲2Bに記載の技術事項を甲X発明に適用して、甲X発明の噴射を「下方に向けて」行うことに動機付けはない。 また、甲3Bの段落0047(摘記3C)の試験例1では、チャバネゴキブリを入れた円形容器に、上方からエアゾールを噴射することが記載されており、甲3Bには、エアゾールを「下方に向けて」噴射することの記載があるといえるが、甲3Bは、即効性、持続性の点で従来のものに比して優れた駆除用エアゾールを提供することを課題とするもので、甲3Bに記載の技術事項を甲X発明に適用して、甲X発明の噴射を「下方に向けて」行うことに動機付けはない。 さらに、甲4Bの段落0043(摘記4A)には、エアゾール製品の噴射口を「床面に向けて」使用することが記載されており、甲4Bには、エアゾールを床面のある方向、すなわち「下方に向けて」噴射することの記載があるといえるが、甲4Bは、噴射の勢いを弱くして床面への付着数を向上させて駆除することを前提とするもので、甲4Bに記載の技術事項を甲X発明に適用して、甲X発明の噴射を「下方に向けて」行うことに動機付けはない。 加えて、甲5Bの請求項10(摘記5A)には、エアゾール製品の「隣り合う噴射孔間の角度が30~120度」であることが記載されているが、甲5Bには、このエアゾール製品が「下方に向けて」噴射するものであることについての明示的な記載がなく、甲X発明の噴射を「下方に向けて」行うことに動機付けはない。 同様に、甲6Bの段落0054(摘記6A)には、ティッシュを設置したバットの中心から、水平方向に30cm、垂直方向に100cm離れた位置から、地面と水平方向へ検体を噴霧したことが記載されているところ、当該「水平方向」への噴霧は「下方に向けて」行っているものではないから、甲X発明の噴射を「下方に向けて」行うことに動機付けはない。 さらに、本1発明の効果について検討するに、本件特許明細書の段落0067~0069の記載された噴射方向を下方とすることにより、平均忌避率が0%から92.4%に大きく向上するという効果は、甲1発明に甲1B~甲6Bを含む技術常識を適用して、上記本1発明の構成を想定した場合の効果から、当業者にとって予測できない顕著な効果である。 エ 本2及び本3発明について 本1発明を直接又は間接的に引用する本2及び本3発明についても、上記イと同様に、相違点(δ)の実質的な相違点を有し、この相違点は、甲1B~甲6Bの記載を考慮しても、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。また、本2及び本3発明の効果は、当業者にとって予測できない効果である。 オ まとめ 以上総括するに、本1発明及び本1発明を直接又は間接的に引用する本2及び本3発明は、甲1Bに記載された発明ではなく、甲1Bに記載された発明、及び甲1B~甲6Bに記載された技術事項、並びに本件特許の出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲1Bを主引用例とする申立人Bの申立理由Aに理由はない。 (3)甲2B(甲1A)を主引用例とした場合の検討 甲2B(甲1A)には、上記1.(2)アに示したとおりの「甲1発明」が記載されているといえる。 そして、本1発明と甲1発明とを対比するに、両者は、上記1.(2)イに示したように、上記(α)並びに(β1)及び(β2)の点で相違する。 しかしながら、上記1.(2)で甲1B~甲6Bの記載を考慮しても、甲2Bに記載の発明(甲1発明)の「殺虫成分(メトフルトリン)2重量%」を、本1発明のような「匍匐害虫の忌避成分」にして、甲2Bに記載の発明(甲1発明)の「飛翔害虫の忌避方法」を、本1発明の「匍匐害虫の忌避方法」に変更する動機付けはない。 してみると、本1発明及び本1発明を直接又は間接的に引用する本2及び本3発明は、甲2Bに記載された発明、及び甲1B~甲6Bに記載された技術事項、並びに本件特許の出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲2Bを主引用例とする申立人Bの申立理由Aに理由はない。 (4)甲3Bを主引用例とした場合の検討 ア 甲Y発明 摘記3Aの「有効成分…を含有する液剤および噴射剤からなり、該液剤と噴射剤との…混合物を、噴霧開始地点から30cmの距離における噴霧粒子の体積平均粒子径が70~120μmとなるように匍匐性害虫、その生息地、または匍匐性害虫の通り道に噴霧する…匍匐性害虫の駆除方法。」との記載、及び 摘記3Cの「実施例1 2,4-ジオキソ-1-(2-プロピニル)イミダゾリジン-3-イルメチル1R-シス、トランス-クリサンテマート0.1重量部にアルキルベンゼン…を加え20重量部とした後、脱臭ケロセン…60重量部を加え混合し、エアゾール容器に充填した。該エアゾール容器にエアゾールバルブ…をクリンプした後、液化石油ガス…を20重量部充填しエアゾールアクチュエーター…を装着することによって本エアゾール1を得た。粒子径測定装置で該エアゾールの噴霧粒子の噴射口から30cmの距離における体積平均粒子径…は83μmであった。…試験例1 ピレスロイド抵抗性チャバネゴキブリ雌雄各5頭を入れた直径15cmの円形容器に、直径30cm、高さ50cmのガラス製円筒を被せ、該ガラス製円筒の上方から本エアゾール1、2、3、比較エアゾール1、2または3を0.4g噴射した。」との記載からみて、甲3Bには、 『有効成分〔2,4-ジオキソ-1-(2-プロピニル)イミダゾリジン-3-イルメチル1R-シス、トランス-クリサンテマート〕を含有する液剤および噴射剤からなる混合物をエアゾール容器に充填したエアゾール0.4gを、噴霧開始地点から30cmの距離における噴霧粒子の体積平均粒子径が83μmとなるように、匍匐性害虫(ピレスロイド抵抗性チャバネゴキブリ)の生息地の上方から噴霧する匍匐性害虫の駆除方法。』についての発明(以下「甲Y発明」という。)が記載されているといえる。 イ 対比 本1発明と甲Y発明とを対比する。 甲Y発明の「有効成分〔2,4-ジオキソ-1-(2-プロピニル)イミダゾリジン-3-イルメチル1R-シス、トランス-クリサンテマート〕を含有する液剤および噴射剤からなる混合物をエアゾール容器に充填したエアゾール0.4gを…噴霧する」は、甲3Bの段落0002(摘記3B)の「2,4-ジオキソ-1-(2-プロピニル)イミダゾリジン-3-イルメチルクリサンテマートを有効成分とする殺虫エアゾール組成物は、…殺虫エアゾールを噴霧された直後に匍匐性害虫が物陰等へ逃げ込む場合もあり」との記載にあるように、甲Y発明の「有効成分」は、匍匐性害虫が「物陰等へ逃げ込む」という忌避行動を生じさせるための有効成分(忌避成分)に該当することが明らかであり、甲Y発明の「0.4g」の規定量を噴霧するエアゾールは、定量噴射型のエアゾールに該当することが明らかであるから、本1発明の「匍匐害虫の忌避成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品」に相当する。 甲Y発明の「噴霧開始地点から30cmの距離における噴霧粒子の体積平均粒子径が83μmとなるように…噴射する」は、本1発明の「噴射された前記エアゾール組成物の平均粒子径(D50)が15~95μmとなるよう噴射する」に相当する。 甲Y発明の「匍匐性害虫(ピレスロイド抵抗性チャバネゴキブリ)の生息地の上方から噴霧する」は、本1発明の「前記エアゾール組成物を、下方に向けて噴射し」に相当する。 甲Y発明の「匍匐性害虫の駆除方法」と、本1発明の「匍匐害虫の忌避方法」とは、両者とも「匍匐害虫の防除方法」という点において共通する。 してみると、本1発明と甲Y発明は、両者とも『匍匐害虫の忌避成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品から、前記エアゾール組成物を、下方に向けて噴射し、 噴射された前記エアゾール組成物の平均粒子径(D50)が15~95μmとなるよう噴射する、匍匐害虫の防除方法。』という点において一致し、次の(ε)の点で相違する。 (ε)匍匐害虫の防除方法が、本1発明は「匍匐害虫の忌避方法」であるのに対して、甲Y発明は「匍匐性害虫の駆除方法」である点 ウ 判断 上記(ε)の相違点について検討する。 甲1B(甲3A)の段落0002及び0023(摘記3b)の「カーペットや寝具等を処理するための屋内用殺ダニ剤が求められてきたが、…アレルギー性喘息を引き起こすヒョウヒダニ類は、虫体の死骸そのものでもアレルギーの原因になることが明らかとなってきた。…本発明の屋内ダニ忌避方法で用いるエアゾール剤は、…定量噴霧用エアゾールバルブを備え一定量を少量噴霧処理する方法に特定される。」との記載にあるように、匍匐害虫の死骸がアレルギーの原因になることから、エアゾールを少量噴霧処理する「屋内ダニ忌避方法」とすることが知られている。 しかしながら、防除対象の害虫を殺す「駆除方法」と、防除対象の害虫を殺さない「忌避方法」とでは、その技術思想の根本において相違するから、甲Y発明の「匍匐性害虫の駆除方法」を、本1発明のような「匍匐害虫の忌避方法」にする動機付けはない。 さらに、本1発明の効果について検討するに、本件特許明細書の段落0067~0069の記載された噴射方向を下方とすることにより、平均忌避率が0%から92.4%に大きく向上するという効果は、甲1発明に甲1B~甲6Bを含む技術常識を適用して、上記本1発明の構成を想定した場合の効果から、当業者にとって予測できない顕著な効果である。 エ 本2及び本3発明について 本1発明を直接又は間接的に引用する本2及び本3発明についても、上記イと同様に、相違点(ε)の実質的な相違点を有し、この相違点は、甲1B~甲6Bの記載を考慮しても、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。また、本2及び本3発明の効果は、当業者にとって予測できない効果である。 オ まとめ 以上総括するに、本1発明及び本1発明を直接又は間接的に引用する本2及び本3発明は、甲3Bに記載された発明、及び甲1B~甲6Bに記載された技術事項、並びに本件特許の出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲3Bを主引用例とする申立人Bの申立理由Aに理由はない。 3.申立人Bの申立理由B~D(特許法第36条関連)について (1)申立理由B(実施可能要件)について ア 構成要件Aの「忌避成分」について 申立人Bは、本件特許発明の構成要件Aである「匍匐害虫の忌避成分」について、忌避成分とは曖昧な用語であり、当業者においてもどの成分がこれに該当するのか範囲が特定できず、本件発明の実施例で使用しているフェノトリンは、殺虫成分と表示されることもあり、非常に広範囲な様々な化合物を包含し得る。そして、フェノトリンに限ってみても、どのような濃度でどの程度使用すれば良いか、効果を阻害するかもしれない(致死に至る)点について、実施例以外に理解することができず、明細書に実証されていない広範囲な成分や濃度を対象に試験を行い、検証することは、当業者に過度の試行錯誤を強いるものといわざるを得ない旨主張する(申立人Bの申立書の第19~20頁参照)。 しかしながら、忌避成分の種類と量(濃度)の選択は、公知の忌避成分において、その種類ごとの性質に応じて量や濃度を設定すればよく、当業者にとって過度の試行錯誤を強いるものとはいえないから、構成要件Aの「忌避成分」に関する申立理由Bに理由はない。 イ 構成要件Eの「下方」について 申立人Bは、本件特許発明の構成要件Eである「下方に向けて噴射し」について、下方とは曖昧な用語であり、実施例に開示される「30°」以外にどの程度の傾きであれば下方と言えるのか、当業者の共通認識として明確ではなく、明細書に実証されていない角度について試験を行い、検証することは、当業者に過度の試行錯誤を強いるものといわざるを得ない旨主張する(申立人Bの申立書の第20頁参照)。 しかしながら、当該「下方」とは、水平方向より下の方向を意味することは明らかであり、適宜他の条件を考慮しながら、噴射方向を下方の適切な方向に設定することに、当業者にとって過度の試行錯誤を強いるものでないことは明らかであるから、構成要件Eの「下方」に関する申立理由Bに理由はない。 (2)申立理由C(サポート要件)について ア 構成要件Aの「忌避成分」について 申立人Bは、本件特許発明の構成要件Aである「匍匐害虫の忌避成分」について、非常に広範囲な様々な化合物を包含し得るのに、実施例で使用されているのは、フェノトリンの特定の濃度範囲のみであり、忌避成分は、その構造の相違、物理的性質、毒性等により、性質や清浄、あるいは殺虫及び忌避抗力も様々に異なるものがあることが技術常識として当業者に明らかであるから、具体的に実施例で実証されている物以外において、本件特許発明の効果が奏されるか否か、特に粒子径との関係についてどのような挙動を示すのかについては当業者にとっても全く明らかではない点(例えば、甲3Bからは、忌避成分の種類とその適用により、本件発明の粒子径の範囲内であっても致死させることができる場合と忌避の場合があると明確に理解できる。)、エアゾール製剤においては、溶剤、忌避駆除成分の種類、濃度により、害虫に対する挙動も変化し得る点を指摘し、請求項1~3に係る発明のエアゾール製品すべてが、本件特許発明の課題を解決するとはいえない旨主張する(申立人Bの申立書の第21~22頁参照)。 しかしながら、甲3Bの何れの記載から「忌避成分の種類とその適用により、本件発明の粒子径の範囲内であっても致死させることができる場合と忌避の場合があると明確に理解できる」といえるのか、申立人Bは明らかにしていないし、例えば、甲3Bの段落0048(摘記3C)の表1の試験結果においては、本エアゾール1~3及び比較エアゾール1~3の何れもが、供試虫の90%がノックダウンするのに要する時間が最長でも27.6秒(最短で1.3秒)となっており、匍匐害虫の種類によって、忌避成分の種類や濃度の有効性や、噴霧粒子の好適な粒径範囲に有意の差異が生じると、当業者は認識しないといえる。 そして、本件特許明細書の表1~表3に示されるフェノトリンを用いたヤケヒョウヒダニの試験結果や一般記載を参考に、同段落0018に列挙される「ハッカ油」等の各種の忌避成分、並びに同段落0044(及び甲3Bの段落0029)に列挙される各種の「匍匐害虫」においても一定程度課題が解決できることは、当業者の技術常識により明らかであるから、構成要件Aの「忌避成分」に関する申立理由Cに理由はない。 イ 構成要件Eの「下方」について 申立人Bは、本件特許発明の構成要件Eである「下方に向けて噴射し」について、具体的に実施例で実験されているのは「30°」の傾きの例のみであり、明細書の段落0069の「参考までに、実施例1のエアゾール製品を上方(水平方向に対する角度が30°)に1回噴射した結果、供試虫に対する忌避効果は認められなかった。」との記載があるが、参考として示された上方噴射の態様では具体的にどのような状態で綿布が設置されているのか不明であるなど、実験の検証方法が明細書から明らかでなく、その結果もどのように解釈すべきか不明で、本件発明の課題の認識が困難であり、それに対応する課題解決手段も把握が困難である旨主張する(申立人Bの申立書の第22~23頁参照)。 しかしながら、本件特許明細書には、上方噴射した場合に忌避効果が認められず、30°下向きに噴射した場合に忌避効果が認められることが、具体的な試験結果により裏付けられており、本件発明の課題も課題解決手段も明確であり、本件発明は、平均粒子径と噴射方向を組み合わせて特定したことに技術的思想のある発明であるので、具体例が特定のものであるからといって、その他の一般的記載や技術常識から一定程度課題が解決できると認識できる。 したがって、本件特許の請求項1~3に記載された発明が、一定程度課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであることは明らかであり、構成要件Eの「下方」に関する申立理由Cに理由はない。 (3)申立理由D(明確性要件)について ア 構成要件Aの「忌避成分」について 申立人Bは、本件特許発明の構成要件Aである「匍匐害虫の忌避成分」について、具体的にいかなる成分までが包含され、さらにその濃度、量までが包含されるのかが不明確である旨主張する(申立人Bの申立書の第23頁参照)。 しかしながら、忌避成分とは、匍匐害虫を忌避させる成分の種類(並びに量及び濃度)のうち、技術常識から適正な範囲のものを意味することは明らかであるから、構成要件Aの「忌避成分」に関する申立理由Dに理由はない。 イ 構成要件Eの「下方」について 申立人Bは、本件特許発明の構成要件Eである「下方に向けて噴射し」の「下方」の範囲が不明確である旨主張する(申立人Bの申立書の第23頁参照)。 しかしながら、当該「下方」とは、水平方向より下の方向を意味することは技術常識から範囲が明らかであるから、構成要件Eの「下方」に関する申立理由Dに理由はない。 第5 まとめ 以上のとおり、申立人A及びBが申し立てた理由及び証拠によっては、本1~本3発明の特許を取り消すことができない。 また、ほかに本1~本3発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700158

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