特許異議申立
2023-700398
油性固形化粧料
- 審判番号
- 2023-700398
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-240893
- 登録番号
- 7157431
- 請求日
- 2023年04月19日
- 審決日
- 2023年07月03日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本メナード化粧品株式会社
- 【異議申立人】竹ノ下 真央
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬良 聡機
- 審判官 赤澤 高之
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P1651.121-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7157431号発明「油性固形化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7157431号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7157431号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成29年12月15日に特許出願され、令和4年10月12日に特許権の設定登録がされ、同年同月20日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和5年4月19日(差出日)に、特許異議申立人 竹ノ下 真央(以下「特許異議申立人」という。)により、請求項1~6に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである。
第2 特許請求の範囲の記載
本件の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明6」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
マイクロプラスチックビーズを含有しない化粧料において、下記成分(A)~(C)を含有することを特徴とする油性固形化粧料。
(A)球状無水ケイ酸 10~30重量%
(B)煙霧状無水ケイ酸 1~3重量%
(C)25℃でペースト状のポリグリセリン脂肪酸エステル 1~5重量%
【請求項2】
成分(A)の球状無水ケイ酸が平均一次粒子径2~15μmであることを特徴とする請求項1記載の油性固形化粧料。
【請求項3】
成分(A)の球状無水ケイ酸が吸油量150mL/100g以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の油性固形化粧料。
【請求項4】
成分(B)の煙霧状無水ケイ酸が平均一次粒子径5~50nmであることを特徴とする請求項1~3いずれか一項記載の油性固形化粧料。
【請求項5】
成分(C)のポリグリセリン脂肪酸エステルが(イソステアリン酸/ベヘン酸)(グリセリル/ポリグリセリル-6)エステルズ及び/又はマカデミアナッツ油ポリグリセリルである請求項1~4いずれか一項記載の油性固形化粧料。
【請求項6】
請求項1~5記載の油性固形化粧料において、さらに成分(D)N-長鎖アシル酸性アミノ酸ジエステルを0.1~3重量%含有する油性固形化粧料。」
第3 特許異議申立人が申し立てた理由の概要
特許異議申立人が申し立てた理由の概要は以下のとおりである。
[理由1]本件発明1~6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の甲第1~6号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
なお、理由1は、甲第1号証を主引用例とする理由である。
記
甲第1号証:特開平11-255616号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2011-32252号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2010-105952号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:阪本薬品工業株式会社、化粧品処方ガイド、改訂日2017年5月18日、表紙、1~25頁、奥付(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2015-44804号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開2008-189618号公報(以下「甲6」という。)
第4 当審合議体の判断
当審合議体は、本件発明1~6に係る特許は、特許異議申立人が申し立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。
1 甲1~6の記載事項
(1)甲1の記載事項
1a)「【請求項1】 デキストリン脂肪酸エステルと、水酸基価20以下の液状油と、粒子径が0.001~0.05μmの不定形微粒子無水珪酸と、粒子径が0.1~30μmの球状無水珪酸とを含有することを特徴とする固形化粧料。」
1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、固形化粧料に関し、具体的には、ファンデーション、下地用ファンデーション、口紅、アイシャドウ、及びリップクリーム等の油性の固形化粧料に関する。特に、本発明は、透明性に優れ、塗布時のべたつき感が無く、且つ塗布後さっぱりとした使用感が得られ、しかも、伸び及び保存安定性が良好な油性の固形化粧料に関する。」
1c)「【0003】しかしながら、これらの透明化粧料は、いずれも、透明性、保存安定性、及び使用感等の全てを必ずしも満足させるものではなかった。
・・・
【0006】したがって、本発明は、外観の透明性に優れているだけでなく、塗布時のべたつき感が無く、且つ塗布後さっぱりとした使用感を与え、更に、伸び及び保存安定性が良好な固形化粧料を提供することを目的とする。」
1d)「【0015】上記水酸基価20以下の液状油としては、例えば、スクワラン及び流動パラフィン等の液状炭化水素、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコン油、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ2ーエチルへキサン酸グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、及びテトライソステアリン酸ポリグリセリル等のエステル油、並びにオリーブ油及びサフラワー油等の植物油等があげられる。前記液状油としては、流動パラフィン等の液状炭化水素及びアルキルアリールポリシロキサン例えばメチルフェニルポリシロキサンが特に好ましい。」
1e)「【0021】前記不定形微粒子無水珪酸の含有量は、固形化粧料の全量に対して0.1~15重量%の範囲が好ましく、1~10重量%の範囲が特に好ましい。前記不定形微粒子無水珪酸の含有量が0.1重量%未満の場合には、さっぱりとした感触が得られないことがある。一方、前記含有量が15重量%を越える場合には不定形微粒子無水珪酸の粉体特性(吸水性)が著しく顕れて、得られる固形化粧料の伸びが悪く、皮膚上での乾燥感が強くなるなど、使用感への悪影響が現れる場合がある。」
1f)「【実施例】以下に本発明の実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらによって何ら限定されるものでは無い。尚、各成分の配合量等は、特に断りが無い限り重量%で示す。
【0028】(実施例1~8)全成分を加熱溶解して均一に混合した後、得られた混合物を冷却して固形化粧料を得た。成分として用いられた原料の種類及び含有量を表1に示す。
【0029】
【表1】
[図:0001400510000001.jpg]
」
(2)甲2の記載事項
2a)「【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)主鎖にセルロース骨格を有し、全水酸基の67mol%以上が基-O-M-R(MはCH2又はカルボニル基C=Oを示し、Rは炭素数3~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す)で置換されているセルロース誘導体 0.1~15質量%、
(B)25℃で液状のエステル油 10~80質量%、
(C)ダイマー酸エステル、ダイマージオール誘導体、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれる1種以上のペースト油剤 0.5~50質量%
を含有する油性化粧料。」
2b)「【0024】
成分(B)のエステル油は、1種以上用いることができ、成分(A)のセルロース誘導体の溶解性と油性化粧料の使用感(伸び、馴染み)の観点から、本発明の油性化粧料中に10~80質量%含有され、好ましくは20~60質量%含有される。」
2c)「【0030】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、マカデミアナッツ油ポリグリセリル、(イソステアリン酸/ベヘン酸)(グリセリン/ポリグリセリル-6)エステルズ等が挙げられ、例えば、Sフェイス VL-211、VL-212(以上、阪本薬品工業社)等の市販品を使用することができる。」
2d)「【0033】
成分(C)は、1種以上用いることができ、光沢付与と使用感の観点から、本発明の油性化粧料中に0.5~50質量%、好ましくは3~30質量%含有される。」
(3)甲3の記載事項
3a)「【請求項1】
(A)干渉色を呈する板状複合粉末、
(B)屈折率1.40~1.60である球状粉末の表面に屈折率2.00~2.90である被覆成分を被覆した球状複合粉末、及び
(C)1~40質量%の半固形油分を含有することを特徴とする油性固形化粧料。」
3b)「【0021】
本発明における半固形油としては、通常化粧品に使用されるラノリン、シア脂,部分水添ヤシ油など植物脂、部分水添ホホバ油などの他、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、マカデミアナッツ油ポリグリセリル-6-エステルズベヘネート、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット等を用いることが出来る。
これらの半固形油は市販品でもよく、例えば以下のものが挙げられる。「コスモール168EV/M/AR」、「サラスコP-B822」(以上日清オイリオ社製)、「SフェイスVL-211」(坂本薬品工業社製)、「YOFCO-MAS」、「プランドゥール-S/H/G/PB」(以上日本精化社製)、「SOFTISAN649」(サソール社製)、「エルデュウPS-304」(味の素社製)。
【0022】
半固形油の配合量は、化粧料全重量に対して、1~40質量%、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。配合量が1質量%より少ないと経時的なシワの隠蔽効果が得られず、40質量%を越えて配合すると滑らかさが失われる。」
(4)甲4の記載事項
4a)「リップスッティック
・・・
VL-211を組み合わせることで、ワックスの結晶を微細化し、なめらかに保存性が向上します。
・・・
[図:0001400510000002.jpg]
」
(5)甲5の記載事項
5a)「【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用される成分(a)の球状中空無機粉体は、外周部がシリカ等の無機物質からなる殻であり中心部が中空の構造をもち、平均粒子径が3~25μm、吸油量が80ml/100g以下のものである。外周部の無機物質はシリカ、硼珪酸ガラスやアルミナ珪酸塩等があげられる。成分(a)は内部に空洞を有するが、吸油量が少ない無機粒子である。吸油量が80ml/100gを超えるものであると、化粧料中の油分を吸収し、延び広がりの軽さや、着手時に滑らかな液状様なとれが得られなくなる。この点において、無孔質、もしくは比表面積50m2/g以下、更には30m2/g以下、更に好ましくは10m2/g以下であると好適である。成分(a)は、比重が軽いものがよく、例えば、比重が0.6以下や、空隙率が70%以上のものであると延び広がりの軽さを演出することができ好ましい。また、吸油量は20ml/100g以上であることが好ましい。成分(a)の平均粒径は3~25μmであるが、好ましくは5~20μm、更に好ましくは10~20μmである。粒子径が25μmを超えるとパウダリーな感触が得られず、延び広がりが重く、ぼかしにくくなり、3μm未満であると、パウダリーな感触が得られにくい。」
(6)甲6の記載事項
6a)「【請求項1】
ダイマー酸エステル、室温で固形のロウ類、炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有してなる口唇用油性固形化粧料。
【請求項2】
1,2-アルカンジオールが、1,2-ヘキサンジオール及び/又は1,2-オクタンジオールである請求項1に記載の口唇用油性固形化粧料。
【請求項3】
更に、N-アシルグルタミン酸ジエステルを含有してなる請求項1又は2に記載の口唇用油性固形化粧料。」
6b)「【0018】
本発明の口唇用油性固形化粧料には、艶やしっとり感をより向上させる観点から、N-アシルグルタミン酸ジエステルを含有させることができる。用い得るN-アシルグルタミン酸ジエステルは、下記一般式1で表される。
【0019】
【化1】
[図:0001400510000003.jpg]
【0020】
尚、式中、R1は炭素数7~21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、R2及びR3は、同一又は異なっていてもよく、炭素数8~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ステロールのエステル残基を表す。m及びnは、同一又は異なっていてもよく、0~10の整数を表す。
【0021】
具体的には、N-ラウロイルグルタミン酸ジヘキシルデシル、N-ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、N-ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、N-ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、N-ラウロイルグルタミン酸ポリオキシエチレン(2)オクチルドデシルエーテルジエステル、N-ラウロイルグルタミン酸ポリオキシエチレン(5)オクチルドデシルエーテルジエステル、N-ラウロイルグルタミン酸ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテルジエステル、N-ラウロイルグルタミン酸ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテルジエステル、N-ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、N-ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N-ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N-ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)などを例示することができる。なかでも、N-ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、N-ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N-ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N-ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)などのステロールのエステル残基を有するものを好ましく用いることができる。
【0022】
尚、N-アシルグルタミン酸ジエステルの上記した化合物は、市販品として入手することができる。例えば、商品名 AMITER LG-1600、LG-2000、SG-2000、LG-OD(H)、LGOD-2(H)、LGOD-5(H)、LGS-2(H)、LGS-5(H)(いずれも日本エマルジョン社製)、商品名 エルデュウ CL202、PS203、CL-301、PS-304(いずれも味の素社製)などをそれぞれ例示することができる。
【0023】
N-アシルグルタミン酸ジエステルは、その1種を単独で、或いは2種以上を適宜組合せて用いることができる。その含有量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定はなく、艶及びしっとり感を良好にする観点から、化粧料中、0.5重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上である。また、べたつき感の抑制の観点から、化粧料中、30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下である。これらから、口唇用油性固形化粧料中のN-アシルグルタミン酸ジエステルの含有量は、0.5~30重量%が好ましく、1~20重量%がより好ましい。」
2 引用発明
(1)甲1について
甲1には、固形化粧料についての記載があるところ(摘記1a)、実施例6の記載(摘記1f)からみて、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
甲1発明:
「以下の表1の実施例6の処方の固形化粧料。
[図:0001400510000004.jpg]
」
3 理由1について
(1)本件発明1について
ア 対比・判断
本件発明1と甲1発明を対比する。
まず、甲1発明は「マイクロプラスチックビーズを含有し」ていない。
甲1発明の「疎水性球状無水珪酸」は、本件発明1の「球状無水ケイ酸」に該当し、その含有量は「10重量%」であり、本願請求項1に係る「10~30重量%」に該当する。
甲1の摘記1bの「本発明は、・・・油性の固形化粧料に関する。」との記載及び摘記1dのトリ2ーエチルへキサン酸グリセリルが液状油であるとの記載、並びに、甲1発明は、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルを相当量含有することから、甲1発明の「固形化粧料」は、本件発明1の「油性固形化粧料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「マイクロプラスチックビーズを含有しない化粧料において、下記成分(A)を含有する油性固形化粧料。
(A)球状無水ケイ酸 10~30重量%」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は煙霧状無水ケイ酸を1~3重量%含むのに対し、甲1発明は疎水性不定形微粒子無水珪酸「アエロジルR972(日本アエロジル株式会社製)」を5重量%含む点。
<相違点2>
本件発明1は25℃でペースト状のポリグリセリン脂肪酸エステルを1~5重量%含むのに対し、甲1発明は、かかる成分を含まない点。
上記相違点について検討する。
<相違点1>について
甲1発明の疎水性不定形微粒子無水珪酸「アエロジルR972(日本アエロジル株式会社製)」は、その商品名が本願明細書の【0017】に、成分(B)の煙霧状無水ケイ酸の具体例として記載されているAEROSIL R972(日本アエロジル株式会社製)と同じ名称であるものの、商品名が同じであっても、製造時点によって同じ物質であると必ずしもいえないから、甲1発明の疎水性不定形微粒子無水珪酸「アエロジルR972(日本アエロジル株式会社製)」が煙霧状であるのか不明であるし、甲1発明の疎水性不定形微粒子無水珪酸が煙霧状であるという本件特許出願時の技術常識もない。
仮に、甲1発明の疎水性不定形微粒子無水珪酸が煙霧状であったとして以下念のため検討する。
甲1発明は、疎水性不定形微粒子無水珪酸を5重量%含むから、含有量が本件発明1の「1~3重量%」の範囲内にないところ、甲1には、「前記不定形微粒子無水珪酸の含有量は、固形化粧料の全量に対して0.1~15重量%の範囲が好ましく、1~10重量%の範囲が特に好ましい。」と記載され(摘記1e)、1~10重量%の範囲が特に好ましいと記載されている。
しかしながら、上記記載があるからといって、甲1発明の表1の実施例6の処方の固形化粧料として、成分組成が決められているにもかかわらず、疎水性不定形微粒子無水珪酸を「1~3重量%」の範囲とする積極的な動機付けがあるとはいえない。
また、甲1発明の表1の実施例6の処方の固形化粧料において、疎水性不定形微粒子無水珪酸の含有割合を変更しようとした場合には、本件発明1の「球状無水ケイ酸」に相当する甲1発明の「疎水性球状無水珪酸」等のその他の成分の含有割合も自ずと変化(変更)することになるから、甲1発明の表1の実施例6の処方の固形化粧料において、甲1発明の「疎水性球状無水珪酸」の含有割合を10重量%に固定したまま、疎水性不定形微粒子無水珪酸のみを「1~3重量%」の範囲とすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そして、本件発明1は、(B)煙霧状無水ケイ酸の含有割合を「1~3重量%」とすることにより、経時的な発汗を抑制でき、塗布時の伸びの滑らかさに優れる等の効果を当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである(本件明細書【0041】~【0044】、実施例12、13等)。
<相違点2>について
甲1には、「25℃でペースト状のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有するものとすることは記載も示唆もされていないし、また、甲1発明の表1の実施例6の処方の固形化粧料において、「25℃でペースト状のポリグリセリン脂肪酸エステル」を配合する動機付けがあるものともいえない。
また、甲2には、マカデミアナッツ油ポリグリセリル、(イソステアリン酸/ベヘン酸)(グリセリン/ポリグリセリル-6)エステルズ等のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する油性化粧料が記載され(摘記2a、摘記2c)、目的として光沢付与と使用感(伸び、馴染み)が記載され(摘記2b、摘記2d)、甲3には、マカデミアナッツ油ポリグリセリル-6-エステルズベヘネート等の半固形油を含有する油性固形化粧料が記載され(摘記3a、摘記3b)、目的として滑らかさが記載され(摘記3b)、甲4には、マカデミアナッツ油ポリグリセリル-6エステルズベヘネートを含むリップスティックが記載され(摘記4a)、目的として滑らかさが記載されている(摘記4a)ものの、甲2~4には、甲1発明において、「25℃でペースト状のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有するものとすることについて記載も示唆もされていない。
そして、甲1は、外観の透明性、使用感、保存安定性等の全てを満足する固形化粧料を提供すること(摘記1c)を課題とする発明であるところ、甲2~4には、一部目的が重なる記載があるものの、使用感、伸び及び保存安定性等の全てを両立することを目的とすることは記載されていないため、甲1発明に、そのような事項を目的とするものではない甲2~4に記載された上記物質を加える動機付けがあるとはいえない。
さらに、上述のとおり、甲1は、外観の透明性、使用感、保存安定性等の全てを満足する固形化粧料を提供すること(摘記1c)を課題とする発明であるところ、一部の目的が一致しているからといって、そもそも甲1発明に対して、甲1の上記課題に影響が出る可能性がある追加成分を含ませることになる相違点2に係る構成とすることに積極的な動機付けがあるということはできない。
したがって、25℃でペースト状のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そして、本件発明1は、(C)25℃でペースト状のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合させることにより、塗布時の伸びの滑らかさに優れ、経時的な発汗を抑制でき、塗布時のつやが高くなる等の当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものであるし、また、(C)25℃でペースト状のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有割合を「1~5重量%」とすることにより、経時的な発汗を抑制でき、塗布時の伸びの滑らかさに優れる等の当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである(本件明細書【0045】~【0048】、実施例18~23等)。
イ まとめ
したがって、本件発明1は甲1~4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2、4及び5について
本件発明2、4及び5は、いずれも本件発明1を引用するものであり、甲1発明とは少なくとも相違点1及び2で相違するから、本件発明1と同様に、甲1~4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1を引用するものであり、甲1発明とは少なくとも相違点1及び2で相違するところ、甲5には、球状無水ケイ酸の吸油量範囲の点に関して記載されているに過ぎないから、甲5の記載事項を考慮しても、本件発明1と同様に、甲1~5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1を引用するものであり、甲1発明とは少なくとも相違点1及び2で相違するところ、甲6には、N-長鎖アシル酸性アミノ酸時エステルの点に関して記載されているに過ぎないから、甲6の記載事項を考慮しても、本件発明1と同様に、甲1~6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)小括
以上のとおりであるから、理由1は理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~6に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって、取り消すことができない。
また、ほかに請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700398