特許異議申立
2023-700395
飲み応えが付与されたビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法
- 審判番号
- 2023-700395
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-235750
- 登録番号
- 7154994
- 請求日
- 2023年04月18日
- 審決日
- 2023年06月22日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】キリンホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】横田 修孝
- 【権利者代理人】榎 保孝
- 【権利者代理人】大森 未知子
- 【異議申立人】松山 徳子
- 審判長/審判官
- 審判長 平塚 政宏
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 中村 和正
- 分類
- P1651.536-Y (C12C) / P1651.537-Y (C12C) / P1651.113-Y (C12C) / P1651.121-Y (C12C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7154994号発明「飲み応えが付与されたビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7154994号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7154994号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成30年12月17日の出願であって、令和4年10月7日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年4月18日に特許異議申立人 松山 徳子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が11~17%であり、分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)の前記ペプチドが、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、ビールテイスト発酵アルコール飲料。
【請求項2】
糖質濃度が0.5g/100mL未満である、請求項1に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
【請求項3】
麦芽使用比率が50%以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
【請求項4】
麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を11~17%に調整することを含んでなり、分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)の前記ペプチドが、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、方法。
【請求項5】
ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造工程において、麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に含まれる分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドを添加する工程を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に含まれる分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドを有効成分として含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。
【請求項7】
麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を11~17%に調整することを含んでなり、分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)の前記ペプチドが、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、方法。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和5年4月18日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明1では、「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)の前記ペプチドが、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と規定されている。
そのため、イ号製品(ある具体的な物)が本件特許発明1の技術的範囲に属するか否かを本件特許発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が理解するためには、イ号製品に含まれる「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチド」が「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」ことが特定される必要がある。
しかしながら、イ号製品からHPLC分析用ゲル濾過法により分離、定量された分子量2600~4600Daのペプチドの由来が「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」であるのか、「それ以外のもの」であるのかを特定することができない。そのため、イ号製品が本件特許発明1の技術的範囲に属するか否かを当業者が理解することができない。
すなわち、本件特許発明1の発明の範囲が明確ではない。
本件特許発明2ないし7も本件特許発明1と同様に不明確である。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許明細書の記載からは「分子量2600~4600Daのペプチドの全てが、麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」場合以外は、本件特許発明1で規定するペプチドの質量の比率を特定することができない。本件特許発明1には、麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来しない分子量2600~4600Daのペプチドを含む形態が含まれているが、そのような形態は本件特許明細書には記載されていない。
本件特許の出願時の技術常識に照らして、「HPLC分析用ゲル濾過法」によるペプチドの定量を行う際に「分子量2600~4600Daのペプチド」が「麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」のかを当業者が区別することができない。そのため、本件特許明細書に具体例(実施例)として記載された、「分子量2600~4600Daのペプチドの全てが、麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」形態の内容を、「麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来しない分子量2600~4600Daのペプチドを含む形態」の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえないので、サポート要件を満たさない。
(2)本件特許明細書の【0027】の記載から、分子量2600~4600Daのペプチドが麦芽以外の穀物に由来することが許容されている。そして、「市販のビールテイスト飲料」には、「麦芽を原料の少なくとも一部として使用したビールテイスト発酵アルコール飲料」の他に、以下のような飲料が本件特許の出願時に存在する。
(飲料a)麦芽を原料として使用したビールテイストノンアルコール飲料
(飲料b)麦芽を原料として使用せず、他のペプチド源を含むビールテイストアルコール飲料
本件特許明細書の実施例で使用した「市販のビールテイスト飲料」が上記(飲料a)又は(飲料b)のような飲料であれば、本件特許明細書の実施例においてビールテイスト発酵アルコール飲料に添加された分子量2600~4600Daのペプチドは「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」ものではない。
すなわち、本件特許明細書の実施例において測定されているペプチド比率が、「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量2600~4600Daのペプチド比率」であることは本件特許明細書から明らかではない。
実施例において分子量2600~4600Daのペプチドを添加するために使用された「市販のビールテイスト飲料」が、「麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料」であることが裏付けられていないのであるから、本件特許発明1は実施例によって裏付けられていないといえる。
そのため、本件特許発明1はサポート要件を満たさない。
(3)本件では、実施例に記載された「市販のビールテイスト飲料に由来する分子量2600~4600Daのペプチド」が、特許請求の範囲に記載された抽象的な概念である「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量2600~4600Daのペプチド」の具体例であるのかが不明である。
そのため、特許請求の範囲に記載する発明の範囲を「実施例で使用された市販のビールテイスト飲料に由来する分子量2600~4600Daのペプチド」から、それ以外の「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量2600~4600Daのペプチド」の全般に拡張することは、妥当ではない。
3 申立理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)「麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来しない分子量2600~4600Daのペプチドを含む飲料」については、「HPLC分析用ゲル濾過法」によるペプチドの定量を行って本件特許発明1で規定するペプチドの質量の比率である11~17%の要件を満たすのかを確認することができない。すなわち、本件特許発明1に含まれる、特定の実施形態である「飲料に含まれる分子量2600~4600Daのペプチドの全てが、麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」以外の部分が実施可能でないといえるので、実施可能要件を満たさない。
(2)本件特許明細書には、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量2600~4600Daのペプチド比率が11~17%である飲料を得た実施例が記載されているとはいえず、実施例において分子量2600~4600Daのペプチドを添加するために使用された「市販のビールテイスト飲料」がどのような飲料であるか不明であるので、当業者が本件特許発明を追試することはできない。
したがって、当業者が実施できる程度に発明の詳細な説明が記載されておらず、実施可能要件を満たさない。
4 申立理由4(甲第12号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1、3及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第12号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第14号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第14号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 証拠方法
甲第1号証:特許、実用新案審査基準第II部第2章第3節明確性要件
甲第2号証:特公昭39-14490号公報
甲第3号証:アサヒ スマートオフ ニュースリリース 2015年8月28日(https://www.asahibeer.co.jp/news/2015/0828_2.html)
甲第4号証:特開2011-211962号公報
甲第5号証:本件特許出願に係る令和4年7月13日付手続補正書
甲第6号証:特開2018-42494号公報
甲第7号証:特開2016-168039号公報
甲第8号証:特開2017-112912号公報
甲第9号証:大豆タンパク質由来ペプチドの多面的生理機能の解明に関する研究_九州大学博士論文_2013年(https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1441352/agrl63.pdf)
甲第10号証:新ジャンル「麦とホップ」の開発 生物工学 第87巻 2009年 第5号 252-253頁
甲第11号証:本件特許出願に係る令和4年5月9日(起案日)付け拒絶理由通知書
甲第12号証:醜造酒工 学 中国 工 出版社(当審注:中国語特有の漢字はスペースで代用した。) 1996年12月第1版
甲第13号証:本件特許出願に係る令和3年12月6日(起案日)付け拒絶理由通知書
甲第14号証:特開2017-216999号公報
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審の判断
1 申立理由1(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし7(以下、順に「請求項1」のようにいう。)の記載は、上記第2のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、また、本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1ないし7に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由1における主張について検討するに、次のとおり採用できない。
本件特許発明1及び請求項1を直接又は間接的に引用して特定される本件特許発明2及び3は、請求項1並びに発明の詳細な説明の【0028】及び【0037】ないし【0064】の記載からみて、次のアないしウの「ビールテイスト発酵アルコール飲料」であると当業者は理解する。
ア 「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチド」の全てがベースとなる「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」自体に含まれるように製造された「ビールテイスト発酵アルコール飲料」。
イ 「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチド」が多少は含まれているベースとなる「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」に「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」から調整された「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチド」を添加して製造された「ビールテイスト発酵アルコール飲料」。
ウ 「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチド」が全く含まれていないベースとなる「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」に「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」から調整された「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチド」を添加して製造された「ビールテイスト発酵アルコール飲料」。
そうすると、イ号が「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチド」を「11~17%」の比率(百分率)で含む「ビールテイスト発酵アルコール飲料」(以下、「イ号製品」という。)の場合、自身がイ号製品を製造していれば、当業者は、その製造方法から、イ号製品が本件特許発明1ないし3の技術的範囲に属するか否かを判断することができるし、自身がイ号製品を製造していない場合には、当業者は、イ号製品を製造した者に製造方法を確認することによって、イ号製品が本件特許発明1ないし3の技術的範囲に属するか否かを判断することができる。
したがって、イ号製品が本件特許発明1ないし3の技術的範囲に属するか否かを当業者が理解することができないとはいえない。
イ号が製品の製造方法(以下、「イ号製法」という。)の場合は、本件特許発明4及び5とイ号製法を対比して、各発明特定事項の充足関係を判断することによって、イ号製法が本件特許発明4又は5の技術的範囲に属するか否かは、当業者であれば判断することができる。
イ号が風味改善剤(以下、「イ号風味改善剤」という。)の場合も、本件特許発明6とイ号風味改善剤を対比して、各発明特定事項の充足関係を判断することによって、イ号風味改善剤が本件特許発明6の技術的範囲に属するか否かは、当業者であれば判断することができる。
イ号が風味改善方法(以下、「イ号風味改善方法」という。)の場合も、本件特許発明7とイ号風味改善方法を対比して、各発明特定事項の充足関係を判断することによって、イ号風味改善方法が本件特許発明7の技術的範囲に属するか否かは、当業者であれば判断することができる。
よって、申立理由1における主張は採用できない。
(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0005】によると、本件特許発明1ないし3の解決しようとする課題は「飲み応えとキレを両立させた新規なビールテイスト発酵アルコール飲料を提供すること」であり、本件特許発明4及び5の解決しようとする課題は「飲み応えとキレを両立させた新規なビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法を提供すること」であり、本件特許発明6の解決しようとする課題は「飲み応えとキレを両立させた新規なビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤を提供すること」であり、本件特許発明7の解決しようとする課題は「飲み応えとキレを両立させた新規なビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。
また、発明の詳細な説明の【0006】には「本発明者らは今般、ビールテイスト発酵アルコール飲料において2600~4600Daのペプチドの含有比率を調整することにより、後味を抑えつつ味の厚みを高められること見出した。」と記載され、同【0007】には、本件特許発明1ないし7に対応する記載がある。
また、発明の詳細な説明の【0015】には「本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料ではHPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料由来の全ペプチド質量に対する飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が特定範囲内であることを特徴とする。当該比率は、飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの濃度(mg/mL)をHPLC分析用ゲル濾過法で分画された飲料由来の全ペプチド濃度(mg/mL)で除することで算出することができる。本発明において、当該ペプチド比率の下限値(以上または超える)は、味の厚みの付与の観点から11%(好ましくは12%)とすることができ、また、上限値(以下または未満)は、後味の抑制の観点から17%(好ましくは16%)とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、例えば、当該ペプチド比率の範囲は11~17%であり、好ましくは12~16%とすることができる。」と記載され、同【0020】には「本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、後味を抑えつつ味の厚みが高められていることを特徴とする。ここで、「味の厚み」とは、味の広がり、複雑さ、ボディ感付与等により認識される香味感覚を意味し、「後味」とは、飲みこんだ後に口腔内に残る基本五味や刺激味(甘味、酸味、塩味、旨味、苦味、渋味、辛味、ざらつき等)からなる香味感覚を意味する。ビールテイスト発酵アルコール飲料において、味の厚みは飲み応えに寄与し、後味を抑えることによりキレが増すことから、本発明によれば飲み応えとキレを両立させたビールテイスト発酵アルコール飲料を提供することができる。」と記載されている。
そして、発明の詳細な説明の【0037】ないし【0064】において、「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が11~17%であ」るという条件を満たす「ビールテイスト発酵飲料」において、「後味を抑えつつ味の厚みを高められること」、すなわち「飲み応えとキレ」が「両立」されていることを確認している。
そうすると、当業者は、「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が11~17%であ」る「ビールテイスト発酵アルコール飲料」、該「飲料」の「製造方法」、「麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に含まれる分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドを有効成分として含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤」及び「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を11~17%に調整することを含んでな」る「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法」は、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし3は、上記発明の課題を解決できると認識できる「ビールテイスト発酵アルコール飲料」をさらに限定したものであり、本件特許発明4及び5は、上記発明の課題を解決できると認識できる「飲料」の「製造方法」をさらに限定したものであり、本件特許発明6は上記発明の課題を解決できると認識できる「風味改善剤」であり、本件特許発明7は上記発明の課題を解決できると認識できる「風味改善方法」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし7は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1ないし7に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由2における主張について検討するに、次のとおり採用できない。
ア 申立理由2の(1)について
上記(2)のとおり、「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)」の「ペプチド」の由来は当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲の認定に関係がない。
なお、請求項1の記載からみて、本件特許発明1は、「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)」の「ペプチド」の「全て」が「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」ものなので、「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」に由来しない「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)」の「ペプチド」を含む形態が、発明の詳細な説明に記載されている必要はない。
したがって、申立理由2の(1)の主張は採用できない。
イ 申立理由2の(2)について
上記(2)のとおり、「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)」の「ペプチド」の由来は当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲の認定に関係がない。
なお、発明の詳細な説明の【0027】の記載は、本件特許発明1とは関係がない。
したがって、申立理由2の(2)の主張は採用できない。
ウ 申立理由2の(3)について
上記(2)のとおり、「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)」の「ペプチド」の由来は当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲の認定に関係がない。
なお、発明の詳細な説明の【0028】の記載からみて、同【0041】に記載された「市販のビールテイスト飲料」は「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」であると当業者は理解する。
したがって、申立理由2の(3)の主張は採用できない。
(4)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第2のとおり、本件特許発明1ないし3及び6は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明4及び5は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明7は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし7の各発明特定事項について、具体的に記載されている。
特に、発明の詳細な説明の【0028】には、「麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、該飲料から分子量2600~4600Daのペプチドが含まれる画分を調製し、該画分をビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによって、分子量2600~4600Daのペプチドの比率を所定値の範囲内に調整することができ、ひいては後味を抑えつつ味の厚みが高められたビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。」と記載されている。
そして、発明の詳細な説明の【0037】ないし【0064】には、実施例についてその製造方法を含め具体的に記載されている。
すなわち、発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし7の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし3及び6を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明4及び5の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明7の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし7に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由3における主張について検討するに、次のとおり採用できない。
ア 申立理由3の(1)について
上記(2)のとおり、本件特許発明1ないし7に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
なお、請求項1の記載からみて、本件特許発明1には、「麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来しない分子量2600~4600Daのペプチドを含む飲料」は含まれないことは明らかであり、「飲料に含まれる分子量2600~4600Daのペプチドの全てが、麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」以外の部分が実施可能であるかどうかは、本件特許発明1の実施可能要件の判断とは関係がない。
したがって、申立理由3の(1)の主張は採用できない。
イ 申立理由3の(2)について
上記(2)のとおり、本件特許発明1ないし7に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
なお、発明の詳細な説明の【0028】の記載からみて、同【0041】に記載された「市販のビールテイスト飲料」は「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」であると当業者は理解するから、「実施例において分子量2600~4600Daのペプチドを添加するために使用された「市販のビールテイスト飲料」がどのような飲料であるか不明である」とはいえない。
したがって、申立理由3の(2)の主張は採用できない。
(4)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。
4 申立理由4(甲12に基づく新規性)について
(1)甲12に記載された事項等
ア 甲12に記載された事項
甲12は、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲12は、外国語文献のため、必要箇所の訳文のみを摘記した。
・「
[図:0001399434000001.jpg]
[図:0001399434000002.jpg]
[図:0001399434000003.jpg]
・・・(略)・・・
[図:0001399434000004.jpg]
[図:0001399434000005.jpg]
」(第167ないし169ページ)
・「
[図:0001399434000006.jpg]
」(第170ページ)
イ 甲12に記載された発明
甲12に記載された事項を、特に第170ページの表1-4-45に関して整理すると、甲12には次の発明(以下、順に「甲12発明」及び「甲12製法発明」という。)が記載されていると認める。
なお、特許異議申立人は、甲12に記載された発明を具体的に認定していないので、特許異議申立人が指摘した記載を考慮した上で、当審で適切と考える発明を甲12に記載された発明として認定した。
<甲12発明>
「相対分子質量の区分2600~4600の区分/総アンモニア量/%が11.8%である溶解が正常(コールバッハ数41%)な12°P全麦汁又は相対分子質量の区分2600~4600の区分/総アンモニア量/%が13%である溶解が不十分(コールバッハ数35%)な12°P全麦汁。」
<甲12製法発明>
「相対分子質量の区分2600~4600の区分/総アンモニア量/%が11.8%である溶解が正常(コールバッハ数41%)な12°P全麦汁又は相対分子質量の区分2600~4600の区分/総アンモニア量/%が13%である溶解が不十分(コールバッハ数35%)な12°P全麦汁を製造する方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲12発明を対比する。
甲12発明における「溶解が正常(コールバッハ数41%)な12°P全麦汁」又は「溶解が不十分(コールバッハ数35%)な12°P全麦汁」は本件特許発明1における「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」と、「麦芽を原料の少なくとも一部とする、液体」という限りにおいて一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦芽を原料の少なくとも一部とする、液体。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点12-1>
「麦芽を原料の少なくとも一部とする、液体」に関して、本件特許発明1においては、「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」と特定されているのに対して、甲12発明においては、「溶解が正常(コールバッハ数41%)な12°P全麦汁」又は「溶解が不十分(コールバッハ数35%)な12°P全麦汁」と特定されている点。
<相違点12-2>
本件特許発明1においては、「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が11~17%であり、分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)の前記ペプチドが、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と特定されているのに対して、甲12発明においては、「相対分子質量の区分2600~4600の区分/総アンモニア量/%が11.8%である」又は「相対分子質量の区分2600~4600の区分/総アンモニア量/%が13%である」と特定されている点。
イ 判断
両者の間に相違点がある以上、本件特許発明1は甲12発明であるとはいえない。
なお、相違点12-2に関して、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「麦汁の段階で存在するペプチドはビール中にも存在し、麦汁とビールとの間でペプチドの比率が大きく変わることはないので、特許権者の主張は失当であり、本件特許発明1は甲第13号証の拒絶理由通知書において指摘された通り、甲第12号証に基づき新規性を有しない。本件特許の審査経過については、審判官合議体においても再考されるべきである。」(特許異議申立書第27ページ)と主張する。
そこで、該主張について、検討するに、該主張の裏付けとなる具体的な証拠は何ら示されていないから、該主張は採用できず、相違点12-2は実質的な相違点である。
また、そもそも、甲12発明は、「全麦汁」であって、「ビールテイスト発酵アルコール飲料」ではないので、相違点12-1も実質的な相違点である。
(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲12発明であるとはいえない。
(4)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲12製法発明を対比する。
本件特許発明4と甲12製法発明の間には、本件特許発明1と甲12発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦芽を原料の少なくとも一部とする、液体の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点12-3>
「麦芽を原料の少なくとも一部とする、液体」に関して、本件特許発明4においては、「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料」と特定されているのに対して、甲12製法発明においては、「溶解が正常(コールバッハ数41%)な12°P全麦汁」又は「溶解が不十分(コールバッハ数35%)な12°P全麦汁」と特定されている点。
<相違点12-4>
本件特許発明4においては、「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を11~17%に調整することを含んでなり、分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)の前記ペプチドが、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と特定されているのに対して、甲12製法発明においては、「相対分子質量の区分2600~4600の区分/総アンモニア量/%が11.8%である」又は「相対分子質量の区分2600~4600の区分/総アンモニア量/%が13%である」と特定されている点。
イ 判断
両者の間に相違点がある以上、本件特許発明4は甲12製法発明であるとはいえない。
(5)申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3及び4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、3及び4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。
5 申立理由5(甲14に基づく進歩性)について
(1)甲14に記載された事項等
ア 甲14に記載された事項
甲14には、「低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線は予め付されたものに加え当審で付したものがある。
・「【請求項1】
麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、全タンパク量に対する分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド量の比率が2.5%より大きい、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料。
・・・(略)・・・
【請求項3】
分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを配合する工程を含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
【請求項4】
前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、請求項3に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
分子量10~20kDaのペプチド(HPLCゲル濾過法)が飲料中の全タンパク量に対して2.5%以上の比率となるよう配合される、請求項3または4に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
・・・(略)・・・
【請求項10】
分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを有効成分として含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。
【請求項11】
分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを添加する工程を含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビールは、発泡酒や新ジャンルと比べて柔らかでスムーズなテクスチャーを有し、ボディ感が強いなどの好ましい味の特徴がある。本発明者らは、この違いに基づき、低糖質ビールにおいてビールの特徴をさらに強化する技術開発が実現すれば、これまでにない香味特徴のある低糖質ビールの製造を実現できると考えた。
【0005】
本発明は、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、味の持続性が認められる、新しい香味を有する低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤と風味改善方法を提供することも目的とする。」
・「【0036】
参考例1:ビールテイスト発酵アルコール飲料に好ましい香味を付与するペプチド画分の特定
(1)ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
大麦麦芽、ホップ、酵素製剤を用いて、インフュージョン法にてビールテイスト発酵アルコール飲料を製造した。
【0037】
試験区1は、50℃の湯300mLに大麦麦芽100gを入れ、酵素製剤を添加して60分保持後、65℃に昇温して60分保持し、さらに78℃に昇温して5分保持後、濾過して麦汁を得た。試験区2は、50℃工程を行わず、酵素製剤を添加しない以外は同様に麦汁を得た。続いて、ホップを0.8g/L投入して100℃で90分煮沸したのち、濾過して発酵前液を得た。
【0038】
その後、常法に従ってビール酵母により発酵を行い、発酵液の香味確認を行った。8名のパネルにより、「味の柔らかさ」、すなわち雑味が抑制され、ビールらしく柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがあることを指標に、最低は1点、最高は5点として五段階で官能評価を行い、平均点を算出した。結果は表1に示される通りであった。」
・「【0041】
(2)ゲル濾過分画
上記(1)で得られた発酵液を0.45μmフィルターで濾過し、濾過済み発酵液を計量して凍結乾燥した。乾燥物を100mM NaCl溶液で溶解して5倍濃縮液を調製し、分画用サンプルとした。サンプルは、以下の条件にてゲル濾過分画を行った。
【0042】
カラム:Hiload Superdex30pg 26/600(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量:5mL
溶離液組成:100mM NaCl
流速:2.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分取:0.29cv(カラム・ボリューム)から19.1mL(フラクション0)、その後0.35cvから5mLずつ分画(フラクション1~51)
【0043】
分画物の官能評価により、香味の特徴の違いによって、表2のようにフラクションをプレ画分、A1、A2、B、C、D、E、F、Gの9つのグループに分けた。
【0044】
【表2】
[図:0001399434000007.jpg]
」
・「【0051】
ペプチド分画物は、実施例1に記載の、Superdex 75 10/300カラムにて分析を行い、分子量を推定したところ、画分A1のペプチドが分子量約10~20kDaに分布し、SDS-PAGE電気泳動上でも、画分A1~A2において、同様の分子量約10~20kDaのペプチドが分布していることが確認された(データ示さず)。また、香味上優れていた試験区2では、そのペプチド量が多くなっていることが確認された(図1)。
【0052】
以上の結果より、分画・精製した分子量約10~20kDaのペプチド画分A1およびA2は、雑味が抑制され調和のとれたビールらしい味わいをビール系飲料に付与できることが明らかとなった。」
・「【0066】
(イ)HPLCゲル濾過法
HPLCゲル濾過法の条件は以下の通りであった。
<HPLCゲル濾過法分析条件>
カラム:Superdex 75 10/300(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量:100μL
溶離液組成:50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、20%(v/v)アセトニトリル、150mM NaCl
流速:0.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分画プログラム:
【0067】
【表5】
[図:0001399434000008.jpg]
」
イ 甲14に記載された発明
甲14に記載された事項を、特に特許請求の範囲に関して整理すると、甲14には、次の発明(以下、順に「甲14発明」、「甲14製法発明」、「甲14風味改善剤発明」及び「甲14風味改善方法発明」という。)が記載されていると認める。
なお、特許異議申立人は、甲14に記載された発明を具体的に認定していないので、特許異議申立人が指摘した記載を考慮した上で、当審で適切と考える発明を甲14に記載された発明として認定した。
<甲14発明>
「麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、全タンパク量に対する分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド量の比率が2.5%より大きい、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料。」
<甲14製法発明>
「分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドが飲料中の全タンパク量に対して2.5%以上の比率となるように配合する工程を含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法であって、前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。」
<甲14風味改善剤発明>
「分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを有効成分として含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。」
<甲14風味改善方法発明>
「分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを全タンパク量に対して2.5%以上の比率となるように添加する工程を含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法であって、前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲14発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点14-1>
本件特許発明1においては、「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が11~17%であり、分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)の前記ペプチドが、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と特定されているのに対して、甲14発明においては、「全タンパク量に対する分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド量の比率が2.5%より大きい、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と特定されている点。
イ 判断
相違点14-1について検討する。
甲14を含め、いずれの証拠にも、甲14発明において、「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)」に着目し、その数値範囲を「11~17%」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲14発明において、甲14及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点14-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「飲み応えとキレを両立させた新規なビールテイスト発酵アルコール飲料を提供することができる」(発明の詳細な説明の【0008】及び【0020】)という効果は、甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書第33及び34ページにおいて、「甲第14号証から、画分A1~A2が10~20kDaのペプチドに対応することが理解でき、甲第6号証から、画分C、Dが800~1500Daのペプチドに対応することが理解できる。従って、画分A1と画分Cの間にある画分Bが、1500~10kDaのペプチドに対応することになる。1500~10kDaのペプチド画分Bは、甲第14号証の表5における画分6(1.5~2.6kDa)、画分5(2.6~4.6kDa)、画分4(4.6~10kDa)に対応する。本件特許発明1で着目する分子量2600~q4600Daのペプチドは画分5に対応することになる。画分Bには画分4、5、6のペプチドが対応するが、中央の分子量に対応する分子量2600~4600Daのペプチドは画分Bには必ず含まれているといえる。ここで、画分Bの香味特徴は甲第14号証の表2及び甲第6号証の表2によると「やや飲み応えあり」となっており、飲み応えを向上させる香味特徴を有することが記載されている。この記載から、ビールテイスト発酵アルコール飲料における飲み応えを向上させるために、画分Bのペプチドの量を増やすことを当業者は自然に想起される。特定の画分のペプチドの量を増やすことでビールテイスト発酵アルコール飲料の香味を調整することは、甲第6号証の[0052]において、「ペプチド画分C及びDを加えることで厚みやボティ、旨味をビール系飲料に付与する」と記載されているように、当業者が困難なく実施できる方法である。甲第14号証の[0036]に記載された参考例1で製造したビールテイスト発酵アルコール飲料には画分Bのペプチドが含まれているが、画分Bのペプチドを添加する処理をしていないので、本件特許明細書の実施例の試験区1のビールベース1又は試験区6のビールベース6と同様に、分子量2600~4600Daペプチド比率は11%未満である可能性が高い。甲第14号証の参考例1で製造したビールテイスト発酵アルコール飲料に対して、分子量2600~4600Daペプチドが含まれる画分Bのペプチドを添加することによりビールテイスト発酵アルコール飲料における飲み応えを向上させ、その結果、2600~4600Daペプチド比率が11~17%であるビールテイスト発酵アルコール飲料を得ることは当業者が容易になし得たことであるので、本件特許発明1は進歩性を有しない。」(当審注:改行及び空白行は省略した。)旨主張する。
そこで、検討する。
甲14及び6の記載から、仮に「甲第14号証から、画分A1~A2が10~20kDaのペプチドに対応することが理解でき、甲第6号証から、画分C、Dが800~1500Daのペプチドに対応することが理解できる。従って、画分A1と画分Cの間にある画分Bが、1500~10kDaのペプチドに対応することになる。1500~10kDaのペプチド画分Bは、甲第14号証の表5における画分6(1.5~2.6kDa)、画分5(2.6~4.6kDa)、画分4(4.6~10kDa)に対応する。」ことがいえたとしても、「分子量10~20kDa」の画分に着目する甲14発明において、「飲み応え」及び「飲み応え強」の香味特徴の画分ではなく、「やや飲み応え」の香味特徴の画分Bのうちの画分5(2.6~4.6kDa)に着目し、その比率を調整する動機付けとなる記載は甲14及び6にはないし、他の証拠にもない。
また、「飲み応えとキレを両立」させるという本件特許発明1の効果を予測させる記載も、甲14及び6にはないし、他の証拠にもない。
したがって、「甲第14号証の参考例1で製造したビールテイスト発酵アルコール飲料に対して、分子量2600~4600Daペプチドが含まれる画分Bのペプチドを添加することによりビールテイスト発酵アルコール飲料における飲み応えを向上させ、その結果、2600~4600Daペプチド比率が11~17%であるビールテイスト発酵アルコール飲料を得ることは当業者が容易になし得たことである」とはいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
エ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明1と甲14製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点14-2>
本件特許発明4においては、「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を11~17%に調整することを含んでなり、分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)の前記ペプチドが、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と特定されているのに対して、甲14製法発明においては、「分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドが飲料中の全タンパク量に対して2.5%以上の比率となるように配合する工程を含んでなる」と特定された上で「前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と特定されている点。
イ 判断
相違点14-2について検討する。
相違点14-2は相違点14-1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。
すなわち、甲14製法発明において、甲14及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点14-2に係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、本件特許発明4の奏する「飲み応えとキレを両立させた新規なビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法を提供することができる」(発明の詳細な説明の【0008】及び【0033】)という効果は、甲14製法発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明4は甲14製法発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項4を引用して特定するものであり、本件特許発明4の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明4と同様に、甲14製法発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲14風味改善剤発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点14-3>
本件特許発明6においては、「分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドを有効成分として含んでなる」と特定されているのに対して、甲14風味改善剤発明においては、「分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを有効成分として含んでなる」と特定されている点。
イ 判断
相違点14-3について検討する。
甲14を含め、いずれの証拠にも、甲14風味改善剤発明において、「分子量2600~4600Daのペプチド」に着目し、それを「有効成分」として含ませる動機付けとなる記載はない。
したがって、甲14風味改善剤発明において、甲14及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点14-3に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明6の奏する「飲み応えとキレを両立させたビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤を提供することができる」(発明の詳細な説明の【0008】及び【0034】)という効果は、甲14風味改善剤発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明6の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明6は甲14風味改善剤発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(7)本件特許発明7について
ア 対比
本件特許発明7と甲14風味改善方法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点14-4>
本件特許発明7においては、「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチド質量に対する前記飲料中の分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を11~17%に調整することを含んでなり、分子量2600~4600Da(HPLC分析用ゲル濾過法)の前記ペプチドが、麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と特定されているのに対して、甲14風味改善方法発明においては、「分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを全タンパク量に対して2.5%以上の比率となるように添加する工程を含んでなる」と特定された上で「前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と特定されている点。
イ 判断
相違点14-4について検討する。
相違点14-4は相違点14-1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。
すなわち、甲14風味改善方法発明において、甲14及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点14-4に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、本件特許発明7の奏する「飲み応えとキレを両立させたビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法を提供することができる」(発明の詳細な説明の【0008】及び【0035】)という効果は、甲14風味改善方法発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明7は甲14風味改善方法発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(8)申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。
第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700395