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特許異議申立

2023-700061

糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料

審判番号
2023-700061
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-043350
登録番号
7103980
請求日
2023年01月20日
審決日
2023年04月27日
公報発行日
2023年05月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】キリンホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】横田 修孝
  • 【権利者代理人】榎 保孝
  • 【権利者代理人】大森 未知子
  • 【権利者代理人】赤羽 桃子
  • 【権利者代理人】内山 尚和
  • 【異議申立人】松山 徳子
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 磯貝 香苗
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.113-Y (C12C) / P1651.121-Y (C12C) / P1651.536-Y (C12C) / P1651.537-Y (C12C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号、特許法第2条第3項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7103980号発明「糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7103980号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7103980号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成31年3月11日(優先権主張 平成30年3月13日)を出願日とする特許出願であって、令和4年7月11日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年1月20日に特許異議申立人 松山 徳子(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1ないし6)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合があり、また、これらをまとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が18~25%であり、かつ、前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、ビールテイスト発酵アルコール飲料。 【請求項2】 麦芽使用比率が50%以上である、請求項1に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。 【請求項3】 風味が改善された、麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を18~25%に調整することを含んでなり、かつ、前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、方法。 【請求項4】 ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造工程において、麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に含まれる分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドを添加する工程を含む、請求項3に記載の製造方法。 【請求項5】 麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドを有効成分として含んでなる、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。 【請求項6】 麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を18~25%に調整することを含んでなり、かつ、前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 1 申立理由1(甲第3号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許の請求項1ないし3及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし3及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由3の具体的理由はおおむね次のとおりである。 (1) 申立理由3-1 タンパク分解法により本件特許発明1及び2の飲料を得るための具体的な方法が記載されていないので、本件特許発明1ないし3及び6は実施可能要件を満たさない。 (2) 申立理由3-2 本件特許明細書の実施例で画分添加法により本件特許発明1及び2の飲料を得るために使用する市販のビールテイスト飲料が不明なので、本件特許発明1ないし6は実施可能要件を満たさない。 (3) 申立理由3-3 「分子量が800~1500Daのペプチド」には、苦み、旨味、酸味といった様々な呈味を有するペプチドが含まれ、そこには味の厚みの実現に寄与するペプチドもあれば、味の厚みの実現に寄与しないペプチドも含まれる。そのため、「分子量が800~1500Daのペプチド」の質量の比率を本件特許発明1で規定する範囲に調整したとしても、本件特許発明1の課題を解決する飲料が得られるとは限らないため、本件特許発明1ないし6は実施可能要件を満たさない。 4 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし3及び6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由4の具体的理由はおおむね次のとおりである。 本件特許明細書の実施例において、ビールテイスト発酵アルコール飲料の味の厚みが向上したことが確認されているのは、ペプチド画分を添加した場合についてのみであり、タンパク分解法の場合についてはサポートされていないので、本件特許発明1ないし3及び6はサポート要件を満たさない。 5 申立理由5(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし3及び6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由5の具体的理由はおおむね次のとおりである。 本件特許発明1における「前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」との特定事項の「ビールテイスト発酵アルコール飲料」の語が、本件特許発明1の対象物であるビールテイスト発酵アルコール飲料そのものを指すのか、本件特許発明1の対象物とは別のビールテイスト発酵アルコール飲料を指すのかが、特許請求の範囲の記載からは明確ではないので、本件特許発明1及び2は明確性要件を満たさない。 本件特許発明3及び6も同様に明確性要件を満たさない。 6 証拠方法 ・甲第1号証:特願2019-43350号の拒絶査定、起案日 令和3年11月8日 ・甲第2号証:特願2019-43550号の手続補正書、提出日 令和4年3月31日 ・甲第3号証:特開2016-149975号公報 ・甲第4号証:ビール酒造組合、ビールの基本技術、財団法人日本醸造協会、2010、p.34-37 ・甲第5号証:日本醸造協会雑誌 1976年、Vol.71、No.9、pp.682-688 「第三章 含窒素化合物」 ・甲第6号証:岡井秀雄ら、化学と生物、Vol.20、No.11、1982、709-716 ・甲第7号証:西村敏英、化学と生物、Vol.39、No.3、2001、177-183 なお、証拠の表記については、おおむね特許異議申立書における記載にしたがった。 第4 当審の判断 以下のとおり、当審は、何れの特許異議申立理由も、その理由がないものと判断する。 1 申立理由1及び2(甲第3号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について (1) 主な証拠の記載事項等 ア 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、「低糖質ビールテイストアルコール飲料およびその製造方法」について、次の記載がある。 「【請求項1】 麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とする低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、分子量10~20kDa(ゲル濾過法)のペプチド濃度が0.05mg/ml以上である、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料。 【請求項2】 麦芽使用比率が3分の2未満である、請求項1に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。 【請求項3】 全タンパク量に対する分子量10~20kDaのペプチド量の比率が2.7%以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とする低糖質ビールテイストアルコール飲料とその製造方法に関する。本発明はまた、特定分子量のペプチドを有効成分とする低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤および該ペプチドを使用した低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善方法にも関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、香味が改善された低糖質ビールテイストアルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤と風味改善方法を提供することも目的とする。」 「【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、低糖質ビールテイストアルコール飲料において、特定分子量のペプチドがビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れを付与するとともに、雑味の低減や調和の取れた味わいの付与に寄与することを見出した。本発明者らはまた、特定分子量のペプチドの濃度を特定の濃度範囲内にすることで、よりビールらしい調和感のある味わいが実現できることを見出した。本発明者らはさらに、ビールテイストアルコール飲料の風味改善に寄与するペプチドを具体的に特定した。本発明はこれらの知見に基づくものである。」 「【0008】 本発明によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10~20kDaのペプチドを配合するか、該ペプチドの濃度を所定値の範囲内にすることによって、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れがあり、雑味が低減され、調和のとれた味わいを有する低糖質のビールテイストアルコール飲料を提供することができる。特に、麦芽使用比率25%未満の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料では、ビールで感じられるような味わい(特に柔らかくスムーズなテクスチャー)が不十分な場合があり、また、香味上の改善点(渋味やざらつきなどの雑味)が存在する場合や、味わいの調和が不十分である場合があり、本発明はこのような飲料のビールテイスト飲料としての風味を改善ないし向上させることができる点で有利である。また、分子量10~20kDaのペプチドは麦芽や未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に存在するものであることから、該ペプチドを低糖質ビールテイストアルコール飲料に上乗せして配合しても異味を生じさせることがない点でも有利である。」 「【0012】 本明細書において「低糖質」のビールテイストアルコール飲料とは、糖質の量(糖質濃度)が通常の製法で作られた同等の比較対象の飲料に対して70%以上削減されたもの(すなわち、糖質オフ表示がなされた飲料)、あるいは糖質の量が0.5g/100ml未満(すなわち、糖質ゼロ表示がなされた飲料)であるものを意味する。このうち前者(糖質オフ表示がなされた飲料)の糖質濃度は、1.1g/100ml以下とすることができ、好ましくは0.7~1.1g/100mlの範囲である。ここで、糖質の量の測定は公知の方法に従って行うことができ、当該試料の質量から、水分、タンパク質、脂質、灰分および食物繊維量を除いて算出する方法(栄養表示基準(平成21年12月16日消費者庁告示第9号 一部改正)参照)に従って測定することができる。 【0013】 本発明の第一の面によれば麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とする低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料が提供される。本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料は麦由来の原料として少なくとも麦芽を使用するものとすることができ、その場合、麦芽使用比率は3分の2未満とすることができ、好ましくは麦芽使用比率が50%未満、さらに好ましくは25%未満である。本明細書において「麦芽使用比率」とは、醸造用水を除く全原料の質量に対する麦芽質量の割合をいう。麦芽使用比率が25%未満であるビールテイスト発酵アルコール飲料としては、麦芽使用比率が25%未満の発泡酒や、麦芽使用比率が25%未満のリキュール系新ジャンル飲料が挙げられる。」 「【0014】 本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料ではビールテイスト発酵アルコール飲料の原料に由来する分子量10~20kDaのペプチド濃度が特定値以上であることを特徴とする。本明細書において「ペプチド濃度」は10~20kDaの分子量を有する1種または2種以上のペプチドの含有量を合計して算出されるものである。また本明細書においてペプチドの「分子量」はゲル濾過法により測定されるものであり、測定の具体例は後記実施例2に示される通りである。ペプチドの定量はローリー法(Lowry法)により実施することができる。」 「【0026】 本発明の第二の面によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10~20kDaの1種または2種以上のペプチドを配合してなる低糖質ビールテイストアルコール飲料と、該飲料の製造方法が提供される。該ペプチドが配合されてなる飲料は低糖質ビールテイストアルコール飲料としての風味が改善あるいは向上されており、具体的には、柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れが感じられ、雑味が低減された調和のとれた味わいがある飲料である。」 「【0028】 本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料における分子量10~20kDaのペプチド濃度は0.05mg/ml以上とすることができ、好ましくは0.055mg/ml以上、より好ましくは0.11mg/ml以上である。該ペプチド濃度は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、0.45mg/mlを上限とすることができる。また、全タンパク量に対する分子量10~20kDaのペプチド量の比率は2.7%以上とすることができ、好ましくは3.2%以上、より好ましくは3.9%以上である。該比率は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、8.0%を上限とすることができる。後記実施例2および3に示されるように分子量10~20kDaのペプチドの濃度や比率を特定値以上に設定することによって、低糖質ビールテイストアルコール飲料(特に、麦芽使用比率が25%未満である低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料)の雑味を抑制するとともに、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れ、さらには、調和のとれた味わいがある飲料とすることができる。分子量10~20kDaのペプチドの分子量や含有量の測定は本発明の第一の面である低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料についての記載を参照することができる。」 「【0039】 本発明の第三の面によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10~20kDaの1種または2種以上のペプチドを有効成分として含んでなる、低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤と、該飲料の風味改善方法が提供される。本明細書において「低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善」とは、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れ、さらには調和のとれた味わいがより感じられるとともに、雑味が抑制されることを意味するものとする。本発明の風味改善剤と風味改善方法は本発明の第二の面である低糖質ビールテイストアルコール飲料および該飲料の製造方法についての記載に従って実施することができる。」 「【0053】 実施例2:低糖質ビールテイストアルコール飲料の成分分析と官能評価 (1)低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造 パイロットプラントで低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造を行った。低糖質ビールテイストアルコール飲料の使用原料中の麦芽比率は25%未満とした。 【0054】 低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造においては、主原料として、大麦麦芽を使用し、副原料として、大麦および液糖のいずれかまたは両方を使用した。糖化に際しては酵素製剤を用い、糖化の温度、時間を調整し、濾過することで、異なる組成の麦汁を得た。すなわち、糖化の温度帯は、50、60、あるいは65℃など、50~65℃の中で選択した。糖化の時間は、それぞれの温度工程において、5分から140分の間で調整した。また、原料の熱処理温度は70から100℃の中から選択した。具体的には以下のようにして麦汁を得た。 【0055】 (ア)サンプルNo.5の糖化条件 50℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽11.4質量部、大麦12.1質量部、酵素製剤を投入して60分保持してさらに65℃に昇温して90分保持した後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。 【0056】 (イ)サンプルNo.6の糖化条件 50℃の湯100質量部に対して、大麦26.2質量部、酵素製剤を投入して60分保持後60℃に昇温して30分保持してさらに70℃に昇温して30分保持したものをA醪とした。また、別の釜で、50℃の湯85.7質量部に大麦麦芽24.8質量部、酵素製剤を投入して60分保持したものB醪とした。得られたA醪とB醪を直ちに混合させて65℃とした。その後、65℃で90分保持した後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。 【0057】 (ウ)サンプルNo.7、8の糖化条件 50℃の湯100質量部に対して、大麦21.1質量部と酵素製剤を投入して60分保持してさらに65℃に昇温して90分保持したものをA醪とした。別の釜で50℃の湯93質量部に大麦麦芽19.4質量部、酵素製剤を投入し60分保持後65℃に昇温して90分保持したものをB醪とした。得られたA醪およびB醪を直ちに混合し、AB混合醪として78℃に昇温して5分保持後、濾過して麦汁を得た。 【0058】 上記の麦汁調製工程(ア)、(イ)および(ウ)に続いて、得られたそれぞれの麦汁にホップおよび液糖をさらに投入して100℃で60~70分煮沸した後、麦汁静置を行い、トリューブを分離した後、冷却して発酵前液を得た。その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加して発酵液を調整した。この発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより主発酵を行った。さらに、主発酵後の発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより後発酵を行った。続いて、後発酵後の発酵液を、より低温で所定期間維持することにより貯蔵を行い、濾過して、清澄な低糖質ビールテイストアルコール飲料(発泡酒、サンプルNo.5~8)を得た。」 「【0071】 【表5】 [図:0001397236000001.jpg] 」 イ 甲第3号証に記載された発明 上記アの記載、特に実施例2のサンプルNo.5の記載を中心に整理すると、甲第3号証には次の発明が記載されていると認める。 「50℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽11.4質量部、大麦12.1質量部、酵素製剤を投入して60分保持してさらに65℃に昇温して90分保持した後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得、続いて、得られたそれぞれの麦汁にホップおよび液糖をさらに投入して100℃で60~70分煮沸した後、麦汁静置を行い、トリューブを分離した後、冷却して発酵前液を得、その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加して発酵液を調整し、この発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより主発酵を行い、さらに、主発酵後の発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより後発酵を行い、続いて、後発酵後の発酵液を、より低温で所定期間維持することにより貯蔵を行い、濾過して得られた、栄養表示基準に基づく糖質濃度が8.9mg/mlの清澄な低糖質ビールテイストアルコール飲料。」(以下、「甲3飲料発明」という。) 「50℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽11.4質量部、大麦12.1質量部、酵素製剤を投入して60分保持してさらに65℃に昇温して90分保持した後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得、続いて、得られたそれぞれの麦汁にホップおよび液糖をさらに投入して100℃で60~70分煮沸した後、麦汁静置を行い、トリューブを分離した後、冷却して発酵前液を得、その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加して発酵液を調整し、この発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより主発酵を行い、さらに、主発酵後の発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより後発酵を行い、続いて、後発酵後の発酵液を、より低温で所定期間維持することにより貯蔵を行い、濾過をする、栄養表示基準に基づく糖質濃度が8.9mg/mlの清澄な低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造方法。」(以下、「甲3飲料製法発明」という。) また、【0028】、【0039】の記載を中心に整理すると、甲第3号証には次の発明も記載されているものと認める。 「麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10~20kDaの1種または2種以上のペプチドを、飲料の全タンパク量に対する分子量10~20kDaのペプチド量の比率が2.7~8.0%となるよう調整する、低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善方法。」(以下、「甲3風味改善方法発明」という。) (2) 対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲3飲料発明とを対比する。 甲3飲料発明の「低糖質ビールテイストアルコール飲料」は、本件特許発明1の「ビールテイスト発酵アルコール飲料」に相当する。 また、甲3飲料発明の「低糖質ビールテイストアルコール飲料」の原料からみて、本件特許発明1の「麦芽を原料の少なくとも一部とする」ものであることは明らかである。 してみると、両者は、 「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料。」 で一致し、次の点で相違する。 ・相違点1-1 糖質濃度に関し、本件特許発明1は「0.5g/100mL未満」であるのに対し、甲3飲料発明は「栄養表示基準に基づく糖質濃度が8.9mg/ml」である点。 ・相違点1-2 本件特許発明1は「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が18~25%であり、かつ、前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」と特定されるのに対し、甲3飲料発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑み、上記相違点1-2について検討する。 甲3飲料発明における原料の割合、製造条件は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明における実施例の条件とは異なるものである。 してみれば、甲3飲料発明において生成するペプチドが、相違点1-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものであると推認することはできない。 したがって、相違点1-2は実質的な相違点である。 よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3飲料発明ではない。 また、甲第3号証及び他の全ての証拠をみても、甲3飲料発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとする動機付けもない。 故に、甲3飲料発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、特許異議申立人は、本件特許の実施例における製造条件と甲3飲料発明(サンプルNo.5)における製造条件を比較し、甲3飲料発明の製造条件の方が温度・時間の点でより多くの特定分子量のペプチドが生成する旨主張するが、そもそも、本件特許の実施例と甲3飲料発明における原料(大麦麦芽及び大麦の量)が大きく異なるから、単に製造時の温度及び時間の条件のみを抽出・比較する特許異議申立人の主張は採用できない。 イ 本件特許発明2について 本件特許発明2は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。 そして、本件特許発明1は、上記アの検討のとおり、甲3飲料発明ではなく、また、甲3飲料発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2も、甲3飲料発明ではなく、甲3飲料発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲3飲料製法発明とを対比すると、上記アと同様の相当関係から、両者は、 「麦芽を原料の少なくとも一部とする、ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。」 で一致し、次の点で相違する。 ・相違点3-1 糖質濃度に関し、本件特許発明3は「0.5g/100mL未満」であるのに対し、甲3飲料製法発明は、「栄養表示基準に基づく糖質濃度が8.9mg/ml」である点。 ・相違点3-2 本件特許発明3は「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を18~25%に調整することを含んでなり、かつ、前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とする」と特定されるのに対し、甲3飲料製法発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑み、相違点3-2について検討するに、相違点3-2は、実質的に上記相違点1-2と同旨であり、上記アと同様に判断される。 したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明3は甲3飲料製法発明ではなく、また、甲3飲料製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ 本件特許発明6について 本件特許発明6と甲3風味改善方法発明とを対比する。 甲3風味改善方法発明の「低糖質ビールテイストアルコール飲料」は、甲第3号証の【0012】の記載からみて、本件特許発明6の「麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料」に相当する。 また、甲3風味改善方法発明の「分子量10~20kDaの1種または2種以上のペプチド」は、「麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」ものであるから、本件特許発明6の「ペプチド」に関し、「前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」との限りにおいて一致する。 すると、両者は、 「麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法であって、ペプチドの比率を調整することを含んでなり、かつ、前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、方法。」 で一致し、次の点で相違する。 ・相違点6 風味改善に用いるペプチドについて、本件特許発明6は「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を18~25%に調整する」ことを特定するのに対し、甲3風味改善方法発明は「飲料の全タンパク量に対する分子量10~20kDaのペプチド量の比率が2.7~8.0%となるよう調整する」ものである点。 上記相違点について検討する。 相違点6にあるように、本件特許発明6と甲3風味改善方法発明は、用いるペプチドの分子量が明らかに異なるものであり、これは、実質的な相違点であることは明らかである。 よって、本件特許発明6は甲3風味改善方法発明ではない。 また、甲第3号証及び他の全ての証拠をみても、甲3風味改善方法発明において、分子量10~20kDaのペプチドに代えて、分子量800~1500Daのペプチドを用いる動機付けもない。 してみれば、甲3風味改善方法発明において、相違点6に係る本件特許発明6の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。 なお、特許異議申立人は、甲第3号証の実施例2のサンプルNo.5を根拠とした理由を主張しているが、甲第3号証の実施例2のサンプルNo.5は、本件特許発明6における「糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料」にはあたらないし、さらに、「飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)を18~25%に調整する」点を導くこともできないことは、上記アで検討したとおりである。 したがって、本件特許発明6は、甲3風味改善方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立理由1及び2についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由1及び2は、その理由がない。 2 申立理由3(実施可能要件)について (1) 実施可能要件の判断基準 本件特許発明1、2及び5は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 また、本件特許発明3及び4は、上記第2のとおり、「物を生産する方法」の発明であるところ、物を生産する方法の発明における実施とは、そのものを生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 さらに、本件特許発明6は、上記第2のとおり「方法」の発明であるところ、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等にその方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 (2) 実施可能要件についての判断 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明が「糖質濃度が0.5g/100mL未満であるビールテイスト発行アルコール飲料に関すること」(【0001】)であって、「味の厚みが実現された糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料を提供することを目的とする」こと(【0006】)、「糖質濃度が0.5mg/100mL未満まで低減されたビールテイスト発酵アルコール飲料において、分子量800~1500Daのペプチドの比率を特定範囲内にすることで、当該ビールテイスト発酵アルコール飲料において味の厚みを実現できることを見出した」こと(【0007】)が記載され、「【発明の具体的な説明】」として、ビールテイスト発酵アルコール飲料の定義(【0012】)、麦芽を用いること及びその割合(【0013】)、糖質濃度の測定法(【0015】)、分子量800~1500Daのペプチドの比率の算出法(【0016】)、ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法(【0022】ないし【0027】)、分子量800~1500Daのペプチドの比率の調整法(【0024】ないし【0025】及び【0028】ないし【0029】)、ビールテイスト発酵アルコール飲料における糖質の低減法(【0031】)が記載され、これらの製造方法により、「風味が改善された、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする、糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料」が得られること(【0034】)、「糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤」が提供されること(【0035】)、風味改善方法が提供されること(【0036】)の記載もある。 これらの記載によれば、本件特許発明1ないし6に関し、明細書の発明の詳細な説明には過度の試行錯誤を要することなく当業者が実施できる程度に記載されているものといえ、実施可能要件を満たす。 よって、本件特許発明1ないし6に関する明細書の発明の詳細な説明に記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合する。 (3) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記「第3 3」に記載のとおり、タンパク質分解法による具体的な方法の記載がないこと、実施例における「市販のビールテイスト飲料」が不明であること、「分子量が800~1500Daのペプチド」には呈味に様々な影響を及ぼすものが存在することなどを挙げ、本件特許発明1ないし6に関する本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たさない旨主張する。 しかしながら、実施可能要件の判断は上記(1)の基準にしたがって判断されるものであり、特許異議申立人の主張は何れも、上記(2)における検討に何ら影響するものではない。 (4) 申立理由3についてのまとめ 上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由3は、その理由がない。 3 申立理由4(サポート要件)について (1) サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) サポート要件についての判断 本件特許発明における発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「味の厚みが実現された糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料を提供すること」(【0006】)である。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「糖質濃度が0.5mg/100mL未満まで低減されたビールテイスト発酵アルコール飲料において、分子量800~1500Daのペプチドの比率を特定範囲内にすることで、当該ビールテイスト発酵アルコール飲料において味の厚みを実現できることを見出した」こと(【0007】)が記載され、「糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料において、分子量800~1500Daのペプチドの比率を特定範囲内に調整することによって、味の厚みが実現された糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料を提供でき、消費者の健康志向など、多様なニーズに応えることができる点で有利である」(【0009】)こと、「本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、糖質濃度が低減された糖質ゼロの飲料であり、具体的には、本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の糖質濃度は、0.5g/100mL未満である」(【0014】)こと、「本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料ではHPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料由来の全ペプチドの質量に対する飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が特定範囲内であること」(【0016】)、「当該ペプチド比率の下限値(以上または超える)は、味の厚みの付与の観点から17%(好ましくは18%)とすることができ」(【0016】)ること、「本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、飲料中の糖質濃度が所定の範囲内に低減され、かつ、飲料中の800~1500Daのペプチド比率が所定の範囲内に調整される限り、通常のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造手順に従って製造することができる」(【0022】)ことが記載され、具体的な実施例等の記載もある。 これらの記載に接した当業者であれば、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料において、分子量800~1500Daのペプチドの比率を17%以上に調整することにより、発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1ないし3及び6は何れも、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料において、分子量800~1500Daのペプチドの比率を17%以上に調整する、との特定事項を全て有し、かつ、さらに特定するものであるから、当然発明の課題を解決できると認識できる。 よって、本件特許発明1ないし3及び6はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。 (3) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記「第3 4」のとおり、実施例においてタンパク質分解法によるものが示されていないことを挙げ、本件特許発明1ないし3及び6はサポート要件を満たさない旨主張する。 しかしながら、上記(2)で検討したとおり、本件特許発明1ないし3及び6の発明の課題は、「分子量800~1500Daのペプチドの比率」を特定の範囲とすることで解決できると認識できるものであり、「分子量800~1500Daのペプチド」を得る手法を問うものではない。また、特許異議申立人は、「分子量800~1500Daのペプチド」を得る手法の違いにより、発明の課題を解決し得ないとする具体的な証拠を提示するものでもない。 さらに、特許異議申立人は、本件特許の審査経緯を参照しつつ縷々主張するが、いずれも、上記(2)の判断には影響するものではない。 (4) 申立理由4についてのまとめ 上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由4は、その理由がない。 4 申立理由5(明確性要件)について (1) 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2) 明確性要件についての判断 本件特許の請求項1には、「麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満のビールテイスト発酵アルコール飲料であって、HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が18~25%であり、かつ、前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、ビールテイスト発酵アルコール飲料。」と記載されており、当該記載からは、「ビールテイスト発酵アルコール飲料」であって、「麦芽を原料の少なくとも一部とする、糖質濃度が0.5g/100mL未満」のものであること、「HPLC分析用ゲル濾過法で分画された前記飲料の全ペプチドの質量に対する前記飲料中の分子量800~1500Da(HPLC分析用ゲル濾過法)のペプチドの質量の比率(百分率)が18~25%」であること、「前記ペプチドが麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」ことが明確に理解できる。 よって、本件特許発明1に関する請求項1の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 本件特許発明2、3及び6に関する請求項2、3及び6の記載について検討しても、その記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 したがって、本件特許発明1ないし3及び6に関する請求項1ないし3及び6の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。 (3) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記「第3 5」において、ペプチドの由来が明確ではない旨主張するが、本件特許発明1ないし3及び6において、ペプチドが「麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する」ものであることは明らかであり、どの「ビールテイスト発酵アルコール飲料」に由来するものかを区別しているものではないことは明らかである。 (4) 申立理由5についてのまとめ 上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由5は、その理由がない。 第5 結語 以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700061

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