特許異議申立
2023-700393
無電解ニッケルめっき液及び無電解ニッケルめっき方法
- 審判番号
- 2023-700393
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-093319
- 登録番号
- 7157435
- 請求日
- 2023年04月18日
- 審決日
- 2024年01月22日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】奥野製薬工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】内藤 明
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 池渕 立
- 審判官 相澤 啓祐
- 分類
- P1651.113-YAA(C23C) / P1651.121-YAA(C23C) / P1651.537-YAA(C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7157435号発明「無電解ニッケルめっき液及び無電解ニッケルめっき方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7157435号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、7、8について訂正することを認める。
特許第7157435号の請求項5に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。
特許第7157435号の請求項1~4、6~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第7157435号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、平成30年 5月14日の出願であって、令和 4年 10月12日にその特許権の設定登録がされ、同年10月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~8(全請求項)に係る特許について、令和 5年 4月18日に特許異議申立人である内藤明(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年 6月26日付けで取消理由が通知され、同年 8月28日に特許権者から訂正請求書及び意見書が提出され、これに対して、同年10月20日に申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正請求について
1 訂正請求の趣旨、及び訂正の内容
令和 5年 8月28日に提出された訂正請求書により特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものであり、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(訂正箇所には、当審が下線を付した。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化2】
[図:0001409113000001.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは3~5の整数である。]」と記載されているのを、
「[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化2】
[図:0001409113000002.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは3~5の整数である。]」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に
「[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化4】
[図:0001409113000003.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは2~5の整数である。]」と記載されているのを、
「[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化4】
[図:0001409113000004.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは2~5の整数である。]」に訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1~5のいずれかに記載の無電解ニッケルめっき液。」と記載されているのを、
「請求項1~4のいずれかに記載の無電解ニッケルめっき液。」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に
「[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化6】
[図:0001409113000005.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは3~5の整数である。]」と記載されているのを、
「[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化6】
[図:0001409113000006.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは3~5の整数である。]」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に
「[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化8】
[図:0001409113000007.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは2~5の整数である。]」と記載されているのを、
「[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化8】
[図:0001409113000008.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは2~5の整数である。]」に訂正する。
2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1に係る発明の特定事項である「一般式(I)
【化1】
[図:0001409113000009.jpg]
」で表される「アルキレンアミン化合物」について、当該一般式(I)中の「R1、R2、R3及びR4」が「同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化2】
[図:0001409113000010.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基」であるところ、さらに「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子で」あることを特定することにより、当該「アルキレンアミン化合物」をより限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
訂正事項1による訂正は、上述のとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。
また、本願の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)には次の記載がある(下線は当審が付した。)。
「【0023】
一般式(I)で表されるアルキレンアミン化合物は、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であるアルキレンアミン化合物、又は、R1、R2、R3及びR4のうちの3個が水素原子であるアルキレンアミン化合物であることが好ましい。」
上記記載によれば、一般式(I)で表されるアルキレンアミン化合物は、「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子で」あることが好ましいものであるから、訂正事項1による訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2に係る発明の特定事項である「一般式(I)
【化3】
[図:0001409113000011.jpg]
」で表される「アルキレンアミン化合物」について、当該一般式(I)中の「R1、R2、R3及びR4」が「同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化4】
[図:0001409113000012.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基」であるところ、さらに「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子」であることを特定することにより、当該「アルキレンアミン化合物」をより限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
訂正事項2による訂正は、上述のとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。
また、本件特許明細書の段落【0023】の上記記載によれば、一般式(I)で表されるアルキレンアミン化合物は、「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子で」あることが好ましいものであるから、訂正事項2による訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
訂正事項3による訂正は、請求項5を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。また、訂正事項3による訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項6が「請求項1~5のいずれか」を引用するものであったところ、訂正事項3による訂正によって請求項5が削除されたことに伴って、請求項6が引用する請求項から請求項5を省いたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
訂正事項4による訂正は、上述のとおり、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。また、訂正事項4による訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。
したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、請求項7に係る発明の特定事項である「一般式(I)
【化5】
[図:0001409113000013.jpg]
」で表される「アルキレンアミン化合物」について、当該一般式(I)中の「R1、R2、R3及びR4」が「同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化6】
[図:0001409113000014.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基」であるところ、さらに「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子」であることを特定することにより、当該「アルキレンアミン化合物」をより限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
訂正事項5による訂正は、上述のとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。
また、本件特許明細書の段落【0023】の上記記載によれば、一般式(I)で表されるアルキレンアミン化合物は、「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子で」あることが好ましいものであるから、訂正事項5による訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、請求項8に係る発明の特定事項である「一般式(I)
【化7】
[図:0001409113000015.jpg]
」で表される「アルキレンアミン化合物」について、当該一般式(I)中の「R1、R2、R3及びR4」が「同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化8】
[図:0001409113000016.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基」であるところ、さらに「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子」であることを特定することにより、当該「アルキレンアミン化合物」をより限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
訂正事項5による訂正は、上述のとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。
また、本件特許明細書の段落【0023】の上記記載によれば、一般式(I)で表されるアルキレンアミン化合物は、「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子で」あることが好ましいものであるから、訂正事項5による訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(7)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1、3~6が「一群の請求項」を構成するとともに、本件訂正前の請求項2~6も「一群の請求項」を構成しており、このとき、共通する請求項3~6を有するこれらの「一群の請求項」は組み合わされて、請求項1~6が1つの「一群の請求項」になるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
そして、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めがないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~6〕、7、8のそれぞれを訂正単位とする訂正の請求をするものである。
(8)独立特許要件について
本件は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 本件訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、7、8について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるから、本件訂正請求によって訂正された特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明(以下、請求項1~8に係る発明をそれぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明8」といい、総称して「本件特許発明」ということがある。)は、その訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】
[図:0001409113000017.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化2】
[図:0001409113000018.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは3~5の整数である。]で表されるアルキレンアミン化合物を含有することを特徴とする、無電解ニッケルめっき液。
【請求項2】
下記一般式(I)
【化3】
[図:0001409113000019.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化4】
[図:0001409113000020.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは2~5の整数である。]で表されるアルキレンアミン化合物を含有し、
前記R1及びR2は互いに結合して環状になっており、
フレキシブル基板用であることを特徴とする、無電解ニッケルめっき液。
【請求項3】
前記無電解ニッケルめっき液中の前記一般式(I)で表されるアルキレンアミン化合物の含有量は、7g/L未満である、請求項1又は2に記載の無電解ニッケルめっき液。
【請求項4】
前記一般式(I)で表されるアルキレンアミン化合物は、nが3又は4である、請求項1~3のいずれかに記載の無電解ニッケルめっき液。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
更に、水溶性ニッケル化合物、還元剤及び錯化剤を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の無電解ニッケルめっき液。
【請求項7】
下記一般式(I)
【化5】
[図:0001409113000021.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化6】
[図:0001409113000022.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは3~5の整数である。]で表されるアルキレンアミン化合物を含有する無電解ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させることを特徴とする、無電解ニッケルめっき方法。
【請求項8】
下記一般式(I)
【化7】
[図:0001409113000023.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化8】
[図:0001409113000024.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは2~5の整数である。]で表されるアルキレンアミン化合物を含有する無電解ニッケルめっき液に、被めっき物であるフレキシブル基板を接触させることを特徴とする、無電解ニッケルめっき方法。」
第4 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、いずれも本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、後記する甲第1号証~甲第4号証を提出し、以下の理由により、本件請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1(新規性。取消理由として条文を変えて採用。)
本件訂正前の請求項1、3~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(新規性、進歩性。取消理由として不採用。)
本件訂正前の請求項8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(進歩性、取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項8に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立理由4(進歩性、取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項8に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
5 申立理由5(サポート要件、取消理由として一部採用)
本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、一般式(I)で表される種々のアルキレンアミン化合物を含有する無電界ニッケルめっき液を含むものであるが、本件特許明細書の実施例において具体的に効果が示されているのは、トリス(2-アミノエチル)アミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミンの4種類のみである。
また、本願出願時において、これら4種の化合物以外の一般式(I)で表される化合物においても、これら4種の化合物と同様の効果を奏すると推定することができたとするべき理由も存在しない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲に記載された範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができないので、本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないから、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
<証拠方法>
甲第1号証:大韓民国公開特許公報10-2014-0025105号
甲第2号証:特開昭58-199887号公報
甲第3号証:特開昭60-36353号公報
甲第4号証:特開平9-49085号公報
(以下、甲第1号証~甲第4号証を、それぞれ「甲1」~「甲4」という。)
第5 取消理由の概要
当審は、上記第4の各申立理由のうち、申立理由1と申立理由5を採用し、以下の取消理由1、2を通知した。
取消理由1 本件訂正前の請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、また、本件訂正前の請求項1、3~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2 本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、課題を解決することのできないとの疑義が生じる発明を含んでおり、本件特許の特許請求の範囲に記載された範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができないので、発明の詳細な説明に記載された発明ではないから、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第6 当審の判断
1 取消理由1について
(1)甲1の記載
ア 甲1には、「
[図:0001409113000025.jpg]
」(発明の名称。当審訳:無電解ニッケル-リン合金めっき液及びこれを利用した電子部品)に関して、以下の記載がある(なお、下線は当審によるものであり、「…」は記載の省略を表す。以下同様。)。
「
[図:0001409113000026.jpg]
」(当審訳:[請求項1]
水溶性ニッケル塩、還元剤、安定剤、錯化剤及びpH調整剤を含む無電解ニッケル-リン合金めっき液において、下記[化学式1]をさらに含む無電解ニッケル-リン合金めっき液。
[化学式1]
R1-[(CH2)l-NH-(CH2)m]n-R2
(ここで、l、m、nは1以上の整数で、n=1である場合にR1及びR2はNH2で、nが2以上の場合にR1及びR2はNH2、CH3、OH、CH2OH、COOHの中で選択されることでR1及びR2は同じか違うことができる))
「
[図:0001409113000027.jpg]
」(当審訳:[請求項2]
硫酸ニッケル6水和物10~45g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物15~45g/L、28%アンモニア水1~40ml/L、乳酸1~20g/L、りんご酸1~20g/L、アジピン酸1~20g/L、グルタミン酸ナトリウム1水和物1~10g/L、酢酸鉛3水和物0.1~50mg/L、チオウレア0.05~5mg/L及び下記[化学式1]0.0001~1mg/Lを含む無電解ニッケル-リン合金めっき液。
[化学式1]
R1-[(CH2)l-NH-(CH2)m]n-R2
(ここで、l、m、nは1以上の整数で、n=1である場合にR1及びR2はNH2で、nが2以上の場合にR1及びR2はNH2、CH3、OH、CH2OH、COOHの中で選択されることでR1及びR2は同じか違うことができる))
「
[図:0001409113000028.jpg]
」(当審訳:[請求項3]
請求項1または請求項2において、前記[化学式1]はジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンを含む無電解ニッケル-リン合金めっき液。
[請求項4]
請求項3による無電解ニッケル-リン合金めっき液を利用してめっき層を形成させた電子部品。
[請求項5]
請求項4において、前記電子部品はフレキシブルプリント回路基板である電子部品。)
「
[図:0001409113000029.jpg]
[図:0001409113000030.jpg]
[図:0001409113000031.jpg]
」(当審訳:
[0006]銅層の上に形成されるニッケル-リン/金めっき層またはニッケル-リン/パラジウム(またはパラジウム-リン合金)/金めっき層においてニッケル-リン合金被膜の厚さに比べて金被膜またはパラジウム(またはパラジウム-リン合金)被膜の厚さが相対的にさらに薄いので、フレキシブルプリント回路基板の変形に対応するためにはニッケル-リン合金被膜の内節曲性(折曲などの変形に抵抗する特性)を向上させる必要がある。
[0007]よってニッケル-リン合金被膜の内節曲性を向上させることができる方案が模索されるところである。
【発明が解決しようとする課題】
[0008]本発明の実施例は内節曲性が向上した無電解ニッケル-リン合金めっき液と、前記無電解ニッケル-リン合金めっき液を利用してめっき層を形成させることで内節曲性が向上した電子部品を提供しようとする。)
「
[図:0001409113000032.jpg]
[図:0001409113000033.jpg]
」(当審訳:
【課題を解決するための手段】
[0009]本発明の1側面によると、水溶性ニッケル塩、還元剤、安定剤、錯化剤及びpH調整剤を含む無電解ニッケル-リン合金めっき液において、下記[化学式1]をさらに含む無電解ニッケル-リン合金めっき液が提供されることができる。
[0010][化学式1]
[0011]R1-[(CH2)l-NH-(CH2)m]n-R2
[0012](ここで、l、m、nは1以上の整数で、n=1である場合にR1及びR2はNH2で、nが2以上の場合にR1及びR2はNH2、CH3、OH、CH2OH、COOHの中で選択されることでR1及びR2は同じか違うことができる))
「
[図:0001409113000034.jpg]
」(当審訳:[0013]本発明の他の側面によると、硫酸ニッケル6水和物10~45g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物15~45g/L、28%アンモニア水1~40ml/L、乳酸1~20g/L、りんご酸1~20g/L、アジピン酸1~20g/L、グルタミン酸ナトリウム1水和物1~10g/L、酢酸鉛3水和物0.1~50mg/L、チオウレア0.05~5mg/L及び前記[化学式1]0.0001~1mg/Lを含む無電解ニッケル-リン合金めっき液が提供されることができる。
[0014]この時、前記[化学式1]はジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンを含むことができる。
[0015]本発明のまた他の側面によると、前記無電解ニッケル-リン合金めっき液を利用してめっき層を形成させた電子部品が提供されることができ、この時前記電子部品はフレキシブルプリント回路基板であることができる。)
「
[図:0001409113000035.jpg]
」(当審訳:【実施例】
[0019]以下、本発明の実施例に対して具体的に説明するようにする。
[0020]本発明の一実施例による無電解ニッケル-リン合金めっき液は水溶性ニッケル塩、還元剤、安定剤、錯化剤及びpH調整剤を含む無電解ニッケル-リン合金めっき液において、下記[化学式1]をさらに含むことを特徴とする。
[0021][化学式1]
[0022]R1-[(CH2)l-NH-(CH2)m]n-R2
[0023]ここで、l、m、nは1以上の整数で、n=1である場合にR1及びR2はNH2である。 また、nが2以上の場合にR1及びR2はNH2、CH3、OH、CH2OH、COOHの中で選択されることでR1及びR2は同じか違うことができる。)
「
[図:0001409113000036.jpg]
」(当審訳:[0026](1)水溶性ニッケル塩は析出されてめっきされる主な物質である。前記水溶性ニッケル塩の例では硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル及びこれらの混合物などがあるが、これに限定されるものではなく公知の水溶性ニッケル塩をすべて含むことができる。…)
「
[図:0001409113000037.jpg]
」(当審訳:[0027](2)還元剤はニッケルイオンをニッケル金属で還元させる機能をする。前記還元剤は次亜リン酸または次亜燐酸塩を使用することができるが、これに限定されるものではなく無電解ニッケル-リン合金めっき液で使われる公知の還元剤をすべて含むことができる。一方、前記次亜リン酸及び次亜燐酸塩の例では次亜リン酸ナトリウム、次亜燐酸カリウムなどがある。前記還元剤の含量は0.1ないし100g/Lであることがある。…)
「
[図:0001409113000038.jpg]
」(当審訳:[0028](3)安定剤はめっき液の分解を阻止させる機能をすることで、析出されるニッケル粒子を小さくする結晶粒微細化剤の役目をすることもできる。前記ニッケル粒子の結晶粒が微細化される場合には溶接性及び内節曲性が向上することができる。前記安定剤は鉛、ビスマスなどの重金属を含む化合物や硫黄を含む化合物であることができる。前者の例では酢酸鉛、クエン酸鉛、酢酸ビスマス、クエン酸ビスマスなどがあり、これに限定されるものではない。また、後者の例ではチオウレア、アルキルチオウレア、チオディアセット酸、チオディアセット酸塩、チオジグリコール酸、ジチオネイト、ジチオネイト塩、チオ硫酸、チオ硫酸エステル、チオ硫酸ソーダ、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオグリコール酸などがあり、これに限定されるものではない。…)
「
[図:0001409113000039.jpg]
」(当審訳:[0029](4)錯化剤はニッケル塩を着火させて安定的なニッケルイオンを供給する機能をする。前記錯化剤は琥珀酸、アジピン酸、乳酸、マロニック酸、クエン酸、シュウ酸などのカルボン酸及びこれらの塩や、グリシン、グルタミン酸、グルルタム、アルガニンなどのアミノ酸及びこれらの塩を使用することができるが、これに限定されるものではなく無電解ニッケル-リン合金めっき液で使われる公知の錯化剤をすべて含むことができる。…)
「
[図:0001409113000040.jpg]
[図:0001409113000041.jpg]
」(当審訳:[0030](5)pH調整剤はめっき液のpHを調整する機能をする。前記pH調整剤は酸または塩基を含むことができる。例えば、前記pH調整剤は硫酸、リン酸、塩酸、亜硫酸、硝酸、炭酸などの酸性物質、またはアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性物質を含むことができ前記列挙された物質が2以上混合した形態を含むことも可能である。…)
「
[図:0001409113000042.jpg]
」(当審訳:[0031](6)前記[化学式1]に表現される化合物は本発明の一実施例による無電解ニッケル-リン合金めっき液の内節曲性(folding endurance)を向上させる機能をする。前記[化学式1]はジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンを含むことができ、ここに限定されず前記[化学式1]を満足するすべての化合物を含むことができる。一方、本明細書で“内節曲性”と言うのは折曲などの変形に抵抗する特性を意味して、内節曲性が向上するという意味は折曲などの変形が加えられる場合に損傷/破壊される程度が以前より低いことを言う。)
「
[図:0001409113000043.jpg]
」(当審訳:[0034]前記[化学式1]の含量は0.00001ないし100mg/Lであることがある。前記[化学式1]の含量があまりにも多い場合にはめっき速度が低下される問題があり、反対にあまりにも少ない場合にはニッケル-リン合金めっき層の垂直成長がまともに成り立たないので内節曲性向上を期待することが困難であるという問題がある。)
「
[図:0001409113000044.jpg]
」(当審訳:[0036]また、本発明では上述した無電解ニッケル-リン合金めっき液を利用してめっき層を形成させた電子部品をさらに提供することができる。この時、前記電子部品はフレキシブルプリント回路基板であることができる。前記電子部品(フレキシブルプリント回路基板)は内節曲性が向上した無電解ニッケル-リン合金めっき液によってめっき層が形成されたので長期間使用の時にも損傷/破壊されなくて製品寿命が長くなるという長所を有する。)
「
[図:0001409113000045.jpg]
」(当審訳:[0039](1)比較例及び実施例の準備
[0040]試験のために、下記[表1]に記載した比較例及び実施例1,2,3のめっき液を準備した。また、脱脂、酸洗(acid cleaning)、表面活性処理などのめっきのための前処理工程を経て銅(配線)層が形成されたフレキシブルプリント回路基板を準備した。)
「
[図:0001409113000046.jpg]
」(当審訳:[0041]次に、10リットル容器にイオン交換水5リットルを満たして比較例及び実施例1,2,3のめっき液をそれぞれ添加して溶解させた後にイオン交換水を利用して全体体積が10リットルになるようにしてめっき浴を造成した(pHは4.6で合わせられた)。次に、前記フレキシブルプリント回路基板を82℃で10分間前記めっき浴に浸漬させることでニッケル-リンめっき層が形成されたフレキシブルプリント回路基板を得た。次に、前記フレキシブルプリント回路基板を金鍍金液(AUL-5、KPM TECH社)に浸漬して前記ニッケル-リンめっき層上部に0.04~0.08μmの厚さを有する金鍍金層を形成した。)
「
[図:0001409113000047.jpg]
」(当審訳:[0042](2) 内節曲性評価
[0043]前記(1)で用意された比較例及び実施例1,2,3に対して内節曲性評価試験を行った。前記内節曲性評価試験はJIS P8115(支流、板紙類の内節曲性評価方法)に規定された評価方法を通じて行われた。より具体的にはJIS P8115MIT自動折曲試験機器に比較例及び実施例1,2,3に該当するフレキシブルプリント回路基板を付着して前記フレキシブルプリント回路基板が破断される時までの折曲回数を測定した。)
「
[図:0001409113000048.jpg]
」(当審訳:[0046]
[表1]
単位 比較例 実施例1 実施例2 実施例3
硫酸ニッケル6水和物 g/L 22 22 22 22
次亜リン酸ナトリウム1水和物 g/L 25 25 25 25
28%アンモニア水 ml/L 30 30 30 30
乳酸 g/L 15 15 15 15
りんご酸 g/L 10 10 10 10
アジピン酸 g/L 10 10 10 10
グルタミン酸ナトリウム1水和物g/L 5.0 5.0 5.0 5.0
酢酸鉛3水和物 mg/L 1.0 1.0 1.0 1.0
チオウレア mg/L 0.1 0.1 0.1 0.1
ジエチレントリアミン mg/L - 0.01 - -
トリエチレンテトラアミン mg/L - - 0.005 -
テトラエチレンペンタアミン mg/L - - - 0.003
めっき層厚さ μm(10分)2.0 1.9 1.9 1.8
内節曲性(折曲回数) 回数 78 313 415 435
「
[図:0001409113000049.jpg]
」(当審訳:[0047]前記[表1]を参照すると、他の条件が等しい状態でジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンが追加的に含まれた無電解ニッケル-リン合金めっき液(実施例1,2,3)の場合がそうではない場合(比較例)に比べて内節曲性が大きく向上したこと(4倍以上)が分かる。)
(2)甲1に記載された発明
ア [0006]~[0008]によれば、甲1において発明が解決しようとする課題の一つは、フレキシブルプリント回路基板の銅層の上に形成されるニッケルーリン合金皮膜の内節曲性(折り曲げなどの変形に抵抗する特性)が向上した無電解ニッケル-リン合金めっき液を提供することである(以下、単に「課題」という。)。
イ 上記(1)の請求項1、[0009]等によれば、上記課題を解決するための、甲1の無電解ニッケル-リン合金めっき液は、水溶性ニッケル塩、還元剤、安定剤、錯化剤及びpH調整剤を含む無電解ニッケル-リン合金めっき液において、下記[化学式1]をさらに含むことを特徴とするものである。
[化学式1]
R1-[(CH2)l-NH-(CH2)m]n-R2
(ここで、l、m、nは1以上の整数で、n=1である場合にR1及びR2はNH2である。 また、nが2以上の場合にR1及びR2はNH2、CH3、OH、CH2OH、COOHの中で選択されることでR1及びR2は同じか違うことができる。)
ウ 上記(1)の[0046]の[表1]には、[化学式1]で表現される化合物としてジエチレントリアミンを含有する、実施例1のめっき液が記載されており、ジエチレントリアミンは、その構造式が次のとおりのものであるから、
H2N-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2
上記イの[化学式1]において、l=m=2、n=1の場合に相当する。
また、上記[表1]には、ジエチレントリアミンの含有量が0.01mg/Lであることが記載されている。
エ 上記(1)の[0041]によれば、実施例1のめっき液をイオン交換水に希釈して全体体積が10Lになるようにしためっき浴を造成し、当該めっき浴にフレキシブルプリント回路基板を浸漬することにより、ニッケル-リンめっき層を形成することが記載されている。
オ 以上の検討により、甲1には、実施例1のめっき液(希釈めっき液)に注目すると、次の発明が記載されているものと認められる。
「水溶性ニッケル塩、還元剤、安定剤、錯化剤及びpH調整剤を含有し、さらに、ジエチレントリアミン(構造式 H2N-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2)を0.01mg/L含有する無電解ニッケル-リン合金めっき液を5Lのイオン交換水に溶解させた後にイオン交換水を利用して全体体積が10Lになるようにしためっき浴。」(以下、「甲1発明」という。)
「甲1発明のめっき浴にフレキシブルプリント回路基板を浸漬することによってニッケル-リンめっき層を形成する、無電解ニッケル-リン合金めっき方法。」(以下、「甲1方法発明」という。)
(3)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1発明との対比
(ア)甲1発明の「ジエチレントリアミン(構造式 H2N-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2 )」は、本件特許発明1の一般式(I)において、
R1=R2=R3=H、n=2、R4=-(CH2)2-NH2、R5=-(CH2)2-
である場合に該当するから、甲1発明の「ジエチレントリアミン(構造式 H2N-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2 )」と、本件特許発明1の「下記一般式(I)
【化1】
[図:0001409113000050.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化2】
[図:0001409113000051.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは3~5の整数である。]で表されるアルキレンアミン化合物」とは、nの値とR1、R2、R3及びR4のうちの水素原子の個数を除いて、
「下記一般式(I)
【化1】
[図:0001409113000052.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化2】
[図:0001409113000053.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、互いに結合して環状になっていてもよい。]で表されるアルキレンアミン化合物」である限りにおいて一致している。
(イ)本件特許明細書の段落【0065】の【表1】には、例えば、硫酸ニッケル・6水和物と次亜リン酸ナトリウムを含むめっき液を用いて、実施例4のニッケルめっき皮膜を形成することが記載されており、当該ニッケルめっき皮膜にはニッケル以外にリンも含有されていると考えられることから、本件特許発明1の「無電解ニッケルめっき」には、ニッケル以外にリンを含有する「無電解ニッケル-リン合金めっき」が含まれることは明らかである。
したがって、甲1発明の「無電解ニッケル-リン合金めっき液」を「イオン交換水に溶解させた」「めっき浴」は、本件特許発明1の「無電解ニッケルめっき液」に相当する。
(ウ)以上の検討によれば、本件特許発明1と甲1発明との一致点と相違点は次のとおりである。
<一致点>
「下記一般式(I)
【化1】
[図:0001409113000054.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化2】
[図:0001409113000055.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、互いに結合して環状になっていてもよい。]で表されるアルキレンアミン化合物を含有することを特徴とする、無電解ニッケルめっき液。」の点。
<相違点1>
「一般式(I)」のアルキレンアミン化合物における「n」の値について、本件特許発明1は「3~5の整数」であるのに対して、甲1発明は「2」である点。
<相違点2>
「一般式(I)」のアルキレンアミン化合物における「R1、R2、R3及びR4のうち」の「水素原子」の個数について、本件特許発明1は「2個」であるのに対して、甲1発明は「3個」である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑みて上記相違点2について検討する。
(ア)甲1発明に含まれる「ジエチレントリアミン(構造式 H2N-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2)」は、甲1の請求項1に記載された
「[化学式1]
R1-[(CH2)l-NH-(CH2)m]n-R2
(ここで、l、m、nは1以上の整数で、n=1である場合にR1及びR2はNH2である。 また、nが2以上の場合にR1及びR2はNH2、CH3、OH、CH2OH、COOHの中で選択されることでR1及びR2は同じか違うことができる。)」
において、l=m=2、n=1、R1=R2=NH2の場合に該当するものであるから、甲1発明においてジエチレントリアミンに代えて上記[化学式1]の化合物のうち、他のl、m、nの値と他のR1及びR2を採用した化合物に変更する動機はあるといえる。
(イ)しかしながら、上記[化学式1]において、本件特許発明1の一般式(I)の「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子」における2個の水素原子に該当し得るのは、R1又はR2=NH2である場合のNに結合する水素原子と、[(CH2)l-NH-(CH2)m]1である場合のNに結合する水素原子だけであるところ、選択可能な範囲でR1とR2のいずれの基を選択したとしても、Nに結合する水素原子の数は1個(R1とR2のいずれもNH2ではない場合)か、3個(R1とR2のいずれか一方がNH2である場合)か、5個(R1とR2のいずれもNH2である場合)となるだけであり、水素原子が2個となるような選択は存在しない。
つまり、甲1発明のジエチレントリアミンと置き換え可能である上記[化学式1]の化合物において、R1及びR2の選択可能な基のうちのいずれの基を選択したとしても、本件特許発明1の一般式(I)において「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子」であるアルキレンアミン化合物に該当する化合物とすることができない。
(ウ)そうすると、甲1発明において、ジエチレントリアミンに代えて、「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子」であるような「一般式(I)」のアルキレンアミン化合物にすること、すなわち、相違点2に係る本件特許発明1の特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(4)本件特許発明3~4、6について
本件特許発明3~4、6は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用することによって、本件特許発明1の全ての特定事項を備えているものであるから、甲1発明と対比すると少なくとも相違点2で相違しており、上記(3)イと同様の理由によって、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(5)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1方法発明とを対比すると、上記(3)アと同様の検討によって、本件特許発明7と甲1方法発明は、少なくとも相違点2と同様の点で相違しており、上記(3)イと同様の理由によって、甲1方法発明において、上記の点に係る本件特許発明7の特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
(6)本件特許発明8について
本件特許発明8と甲1方法発明とを対比すると、上記(3)アと同様の検討によって、本件特許発明8と甲1方法発明は、少なくとも相違点2と同様の点で相違しているから、本件特許発明8は甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明8は、上記(3)イと同様の理由によって、甲1方法発明において、上記の点に係る本件特許発明8の特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
(7)申立人の意見について
申立人は、令和5年10月20日付けの意見書において、訂正事項1は「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子」である点を特定するものであるが、この訂正は、R1、R2、R3及びR4のうち規定されていないものが水素原子であることを除外していない、と主張している。
しかし、上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の一般式(I)のアルキレンアミン化合物において、「R1、R2、R3及びR4のうちの1個が水素原子」、「R1、R2、R3及びR4のうちの3個が水素原子」及び「R1、R2、R3及びR4のうちの4個が水素原子」であることを排除し、「R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子」であるもののみに限定するものであるから、上記主張は採用できない。
また、申立人は、同意見書において、仮に本件訂正後の本件特許発明1が、R1、R2、R3及びR4のうちの2個のみが水素原子であるものであるとしても、本件特許発明1は甲1に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも主張しているが、上記(3)に記載した理由により、当該主張は採用できない。
2 取消理由2について
(1)特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるところ(平成17年(行ケ)第10042号、知的財産高等裁判所判決、第6の1(1)参照)、以下、この判断基準に従って検討する。
(2)本件特許発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0007】の記載によれば、耐折り曲げ性に優れたニッケルめっき皮膜を形成することができ、且つ、ニッケルめっきの析出速度に優れた無電解ニッケルめっき液を提供することと認められる(以下、単に「課題」という。)。
(3)上記課題は、同段落【0012】~【0016】の記載によれば、「下記一般式(I)
[図:0001409113000056.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
[図:0001409113000057.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは2~5の整数である。]で表されるアルキレンアミン化合物を含有する無電解ニッケルめっき液」を用いて無電解めっきを行うことによって、解決されることが示されている。
(4)さらに、同段落【0023】には次の記載がある。
「一般式(I)で表されるアルキレンアミン化合物は、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であるアルキレンアミン化合物、又は、R1、R2、R3及びR4のうちの3個が水素原子であるアルキレンアミン化合物であることが好ましい。当該アルキレンアミン化合物を用いることにより、本発明の無電解ニッケルめっき液が耐折り曲げ性により一層優れたニッケルめっき皮膜を形成することができ、且つ、ニッケルめっきの析出速度がより一層向上する。これらのアルキレンアミン化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。」
当該記載によれば、上記(3)の無電解ニッケルめっき液は、さらに、一般式(1)で表されるアルキレンアミン化合物において、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子である場合に、耐折り曲げ性により一層優れたニッケルめっき皮膜を形成することができ、且つ、ニッケルめっきの析出速度がより一層向上するものである。
(5)そして、特許権者が令和5年8月28日に提出した意見書の第7頁の4)には、一般式(I)のR1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子である場合に、窒素原子上の立体障害が増大することによって、ニッケルイオンとこれに配位するアルキレンアミン化合物との結合力が弱くなるので、無電解ニッケルめっき液の優れた析出速度とニッケルめっき被膜の優れた耐折り曲げ性を両立させることができる点で有利であると説明されている。
(6)また、本件特許明細書の段落【0065】の【表1】には、一般式(1)で表される、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であるアルキレンアミン化合物を含有する無電解ニッケルめっき液に該当する、実施例1(トリス(2-アミノエチル)アミンを含有)、実施例2(N-(2-アミノエチル)ピペラジンを含有)及び実施例3(3,3'-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミンを含有)はいずれも、耐折り曲げ性が「○」、析出速度が「12~13(μm/h)」であり、比較例よりも優れた結果が得られることが記載されている。
「【0065】
【表1】
[図:0001409113000058.jpg]
」(当審注:表1の一部の実施例の部分のみを抜粋したものである。)
(7)したがって、上記(3)の無電解ニッケルめっき液において、一般式(1)で表される、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であるアルキレンアミン化合物を含有するものは、耐折り曲げ性により一層優れたニッケルめっき皮膜を形成することができ、且つ、ニッケルめっきの析出速度がより一層向上するものであるから、上記課題を解決するものであり、そのように優れた効果を奏する機序は上記(5)に示されたとおりであり、その実施例が実際に優れた効果を奏することは上記(6)に示されたとおりである。
そして、本件特許発明1は、上記(3)の無電解ニッケルめっき液において、一般式(1)で表される、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であるアルキレンアミン化合物を含有するものである。
(8)以上の検討により、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、サポート要件に適合するものである。
また、本件特許発明1を引用する本件特許発明3~4、6、及び本件特許発明1と同様の発明特定事項を備える本件特許発明2、7、8も同様に、サポート要件に適合するものである。
(9)なお、令和5年6月26日付けで通知された取消理由において、サポート要件に関して、本件特許発明1、2は、想定発明、想定発明2のように課題を解決することのできないとの疑義が生じる発明を含んでいるから、本件特許の特許請求の範囲に記載された範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができないので、本件特許発明1、2は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない、と説示したが、本件訂正によって、想定発明及び想定発明2は特許請求の範囲から排除されたので、本件特許発明1、2が課題を解決することのできない発明を含んでいるとの疑いは解消した。
3 採用されなかった申立理由2(甲2を主たる引用文献とする本件特許発明8の新規性、進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2には、電子部品の端子や鋼板にメッキを施した場合に当該メッキのはんだ濡れ性を改善することを目的とした「ジエチレントリアミンを含有する無電解ニッケルめっき浴に電子部品の端子や鋼板を浸漬する、無電解ニッケルめっき方法」が記載されている(甲2の第2頁左上欄下から2行目~左下欄9行参照。以下、「甲2発明」という。)。
(2)本件特許発明8と甲2発明との対比
甲2発明に含有されるジエチレントリアミンは、上記甲1発明に含有されていたジエチレントリアミンと同じ化合物であるから、上記1(3)アと同様に対比を行うと、本件特許発明8と甲2発明は次の点で相違している。
「一般式(I)」のアルキレンアミン化合物における「R1、R2、R3及びR4のうち」の「水素原子」の個数について、本件特許発明8は「2個」であるのに対して、甲2発明は「3個」である点(以下、「相違点3」という。)。
また、被めっき物が、本件特許発明8はフレキシブル基板であるのに対して、甲2発明は電子部品の端子や鋼板である点(以下、「相違点4」という。)。
(3)相違点3の検討
事案に鑑み、相違点3について検討する。
上記相違点3が実質的な相違点であることは、明らかであるから、本件特許発明8は甲2に記載された発明ではない。また、甲2の第1頁右下欄の下から7~1行には、ジエチレントリアミンと置換可能な窒素化合物として、ジフェニル尿素、メラミン、トリアミノベンゼン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、エチレンジアミンが例示されているが、これらのいずれも、本件特許発明8の一般式(I)において、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であるものに該当していないから、甲2発明において、甲2の記載に基いて相違点3に係る本件特許発明8の特定事項とすることが、当業者が容易になし得たことであるともいえない。
(4)相違点4の検討
フレキシブル基板においても、めっき部のはんだ濡れ性を改善することが好ましいことは明らかであるから、甲2発明のめっき方法をフレキシブル基板の製造に適用すること自体について動機があるとはいえるが、本件特許発明8の無電解ニッケルめっき方法は、無電解ニッケルめっき液に、被めっき物であるフレキシブル基板を接触させることにより、耐折り曲げ特性に優れためっき皮膜を形成することができるとともに、めっきの析出速度が改善されるという優れた効果を奏するものであり、このような優れた効果を奏する点については当業者といえども、甲2の記載や周知技術に基いて予測可能であるとはいえない。
(5)小括
以上の検討から、本件特許発明8は、相違点3及び相違点4の点で相違するから、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
4 採用されなかった申立理由3(甲3を主たる引用文献とする本件特許発明8の進歩性)について
(1)甲3に記載された発明
甲3には、いずれもガラス板にニッケルめっきを施すことを目的とした、
・「ジエチレントリアミン及び硫酸ニッケルを含有する無電解ニッケルメッキ浴にガラス板を浸漬する、無電解ニッケルメッキ方法」(第3頁右上欄の実施例1参照。以下、「甲3発明1」という。)、
・「エチレンジアミン及び硫酸ニッケルを含有する無電解ニッケルめっき浴にガラス板を浸漬する、無電解ニッケルメッキ方法」(第3頁左下欄の実施例2を参照。以下、「甲3発明2」という。)、
が記載されている。
なお、第3頁右下欄の実施例3は、「トリエチレントリアミン」を含有するものであるが、トリエチレントリアミンは存在せず、誤記と認められるので、発明の認定はしなかった。
(2)本件特許発明8と甲3発明1、2との対比
本件特許発明8と甲3発明1、2の対比をまとめて行う。
甲3発明1に含有されるジエチレントリアミンは、上記甲1発明に含有されていたジエチレントリアミンと同じ化合物であるから、上記1(3)アと同様に対比を行うと、本件特許発明8と甲3発明1は、次の点で相違している。
「一般式(I)」のアルキレンアミン化合物における「R1、R2、R3及びR4のうち」の「水素原子」の個数について、本件特許発明8は「2個」であるのに対して、甲3発明1は「3個」である点(以下、「相違点5」という。)。
甲3発明2のエチレンジアミンは、その構造式がH2N-(CH2)2-NH2であり、本件特許発明8の一般式(I)のアルキレンアミン化合物において、R1、R2、R3及びR4の全てが水素原子であるものに該当するから、本件特許発明8と甲3発明2は、次の点で相違している。
「一般式(I)」のアルキレンアミン化合物における「R1、R2、R3及びR4のうち」の「水素原子」の個数について、本件特許発明8は「2個」であるのに対して、甲3発明2は「4個」である点(以下、「相違点6」という。)。
被めっき物が、本件特許発明8はフレキシブル基板であるのに対して、甲3発明1、2はいずれもガラス板である点(以下、「相違点7」という。)。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて上記相違点7について検討する。
甲3発明1、2はいずれも、ガラス板にニッケルめっきを施すことを目的とするものであるから、被めっき物として、ガラス板に代えてフレキシブル基板とする動機が存在しない。
また、仮に、ガラス板に代えてフレキシブル基板とする動機が存在するとしても、本件特許発明8が奏する効果である、耐折り曲げ特性やめっきの析出速度が改善される点については、当業者といえども甲3の記載や周知技術に基いて予測可能であるとはいえない。
(4)小括
したがって、相違点5、6について検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲3発明1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5 採用されなかった申立理由4(甲4を主たる引用文献とする本件特許発明8の進歩性)について
(1)甲4に記載された発明
甲4には、黒色皮膜が、カメラや分析機器部品のほかに、ICリードフレームのフォトエッチング加工工程において、リードフレーム材料の黒色化により紫外線吸収効率を良好にして露光時間を短縮でき、製品の安定再現性を良くする等の用途で用いられており(【0002】)、黒色化のための後処理をすることなしに、黒色めっき皮膜を形成することができる無電解黒色めっき浴と(請求項1及び【0006】)、当該無電解黒色めっき浴に被めっき物を所定時間浸漬する無電解黒色めっき膜の形成方法が記載されており(請求項11及び【0006】参照。)、さらに、無電解めっき浴に窒素含有化合物を含ませることにより良好な黒色めっきが形成できることが記載されている(請求項2、6及び【0015】)。そうすると、甲4には次の発明が記載されているものと認められる。
「ニッケル塩および還元剤を含む無電解黒色めっき浴であって、さらに硫黄含有化合物、亜鉛イオン、及び窒素含有化合物を含有し、前記窒素含有化合物がアンモニア、ヒドラジン、トリエタノールアミン、グリシン、アラニン、アスパラギンサン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン又はピリジンのいずれかである、無電解黒色めっき浴に被めっき物を所定時間浸漬する無電解黒色めっき膜の形成方法」(以下、「甲4発明」という。)。
(2)本件特許発明8と甲4発明との対比
ア 甲4発明の「ニッケル塩および還元剤を含む無電解黒色めっき浴」は、本件特許発明8の「無電解ニッケルめっき液」に相当する。
イ 甲4発明の「アンモニア、ヒドラジン、トリエタノールアミン、グリシン、アラニン、アスパラギンサン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン又はピリジンのいずれかである」「窒素含有化合物」と本件特許発明8の「下記一般式(I)
【化7】
[図:0001409113000059.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化8】
[図:0001409113000060.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは2~5の整数である。]で表されるアルキレンアミン化合物」とは、窒素含有化合物である限りにおいて一致している。
ウ 甲4発明の「無電解黒色めっき浴に被めっき物を所定時間浸漬する無電解黒色めっき膜の形成方法」と、本件特許発明8の「無電解ニッケルめっき液に、被めっき物であるフレキシブル基板を接触させることを特徴とする、無電解ニッケルめっき方法」とは、無電解ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる、無電解ニッケルめっき方法である限りにおいて一致している。
エ 以上の検討によれば、本件特許発明8と甲4発明との一致点と相違点は次のとおりである。
<一致点>
「窒素含有化合物を含有する無電解ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させることを特徴とする、無電解ニッケルめっき方法。」
<相違点8>
無電解ニッケルめっき液に含有される窒素含有化合物が、本件特許発明8では
「下記一般式(I)
【化7】
[図:0001409113000061.jpg]
[式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II):
【化8】
[図:0001409113000062.jpg]
(式中、R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)で示される基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される少なくとも1つは前記一般式(II)で示される基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの2個が水素原子であり、互いに結合して環状になっていてもよく、nは2~5の整数である。]で表されるアルキレンアミン化合物」
であるのに対して、甲4発明では、
「アンモニア、ヒドラジン、トリエタノールアミン、グリシン、アラニン、アスパラギンサン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン又はピリジンのいずれかである」「窒素含有化合物」
である点。
<相違点9>
被めっき物が、本件特許発明8では「フレキシブル基板」であるのに対して、甲4発明では無電解黒色めっき膜が形成されるものであれば特に限定されるものではない点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて上記相違点9について検討する。
甲4発明において、被めっき物は、具体的には、リードフレーム材料やカメラ、分析機器部品などが例示されるものであり、リードフレーム材料である場合に黒色めっき膜を形成するのは、リードフレーム材料の黒色化によって、紫外線の吸収効率を良好にして露光時間を短縮でき、製品の安定再現性を良くするためであるところ(甲4の段落【0002】)、フレキシブル基板の製造時においても、配線パターンの形成時に、フォトエッチングによって露光パターンを短時間で安定再現性良く形成することが好ましいことは明らかであるから、甲4発明のめっき膜の形成方法をフレキシブル基板の製造に適用することについての動機はあるといえるが、本件特許発明8が奏する効果である、耐折り曲げ特性やめっきの析出速度が改善される点については当業者といえども、甲4の記載や周知技術に基いて予測可能であるとはいえない。
(4)小括
以上の検討から、相違点8について検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 まとめ
以上のとおり、令和 5年 6月26日付け取消理由通知書に記載した取消理由と、申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項1~4、6~8に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件訂正後の請求項1~4、6~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件訂正前の請求項5が本件訂正によって削除されたため、同請求項に対する異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700393