特許異議申立
2021-700878
無電解めっき用触媒付与液
- 審判番号
- 2021-700878
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-115474
- 登録番号
- 6841462
- 請求日
- 2021年09月10日
- 審決日
- 2022年12月26日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】奥野製薬工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】平居 博美
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 井上 猛
- 審判官 羽鳥 友哉
- 分類
- P1651.537-YAA(C23C) / P1651.536-YAA(C23C) / P1651.113-YAA(C23C) / P1651.121-YAA(C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6841462号発明「無電解めっき用触媒付与液」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6841462号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4~12〕、2、3、13について訂正することを認める。
特許第6841462号の請求項1~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6841462号(請求項の数13。以下、「本件特許」という。)は、令和2年7月3日を出願日とする特許出願(特願2020-115474号)に係るものであって、令和3年2月22日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年3月10日である。)。
その後、令和3年9月10日に、本件特許の請求項1~13に係る特許に対して、特許異議申立人である平居博美(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年 9月10日提出 特許異議申立書
11月26日付け 取消理由通知書
令和4年 1月28日提出 意見書、訂正請求書
2月14日付け 手続補正指令書(方式)(訂正請求書について)
3月16日提出 手続補正書(方式)(訂正請求書について)
3月25日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
4月25日提出 意見書(申立人)
6月13日付け 取消理由通知書(決定の予告)
8月10日提出 意見書、訂正請求書
9月12日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
10月14日提出 意見書(申立人)
第2 訂正の請求について
1 請求の趣旨及び請求の理由(訂正の内容)
令和4年8月10日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
なお、令和4年1月28日提出の訂正請求書による訂正の請求は、本件訂正の請求がされたことに伴い、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「コバルト化合物及び還元剤を含有する、無電解パラジウムめっき、無電解ニッケルめっき、及び無電解金めっきからなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)に用いるための触媒付与液。」とあるのを、「コバルト化合物及び還元剤を含有する、無電解パラジウムめっき、及び無電解ニッケルめっきからなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)に用いるための触媒付与液。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記還元剤がアミン化合物を含む、請求項1に記載の触媒付与液。」とあるのを、「コバルト化合物及び還元剤を含有し、前記還元剤がアミン化合物を含む、無電解パラジウムめっきである無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)、又は触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)に用いるための触媒付与液。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記アミン化合物が、アミンボラン、ヒドラジン、及びヒドラジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載の触媒付与液。」とあるのを、「コバルト化合物及び還元剤を含有し、前記還元剤がアミン化合物を含み、前記アミン化合物が、アミンボラン、ヒドラジン、及びヒドラジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、無電解パラジウムめっきである無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)に用いるための触媒付与液。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項13に「前記金属上の触媒核1(但し、触媒金属として銀を含有する触媒核を除く)」とあるのを、「前記金属上に還元析出により形成された前記金属上の触媒核1(但し、触媒金属として銀を含有する触媒核を除く)」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項13に「前記皮膜2が無電解パラジウムめっき皮膜、無電解ニッケルめっき皮膜、及び無電解金めっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき皮膜である、」とあるのを、「前記皮膜2が無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき皮膜である、」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれかに記載の触媒付与液。」とあるのを、「請求項1に記載の触媒付与液。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれかに記載の触媒付与液。」とあるのを、「請求項1及び4~6のいずれかに記載の触媒付与液。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれかに記載の触媒付与液。」とあるのを、「請求項1及び4~7のいずれかに記載の触媒付与液。」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれかに記載の触媒付与液。」とあるのを、「請求項1及び4~8のいずれかに記載の触媒付与液。」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれかに記載の触媒付与液。」とあるのを、「請求項1及び4~9のいずれかに記載の触媒付与液。」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれかに記載の触媒付与液。」とあるのを、「請求項1及び4~10のいずれかに記載の触媒付与液。」に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~10のいずれかに記載の触媒付与液。」とあるのを、「請求項1及び4~10のいずれかに記載の触媒付与液。」に訂正する。
(13)一群の請求項について
訂正前の請求項1~12について、請求項2~12は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~12は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、その一群の請求項ごとに請求がされたものである。
2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1における「無電解めっき」の種類について、「無電解パラジウムめっき、無電解ニッケルめっき、及び無電解金めっきからなる群より選択される少なくとも1種」を「無電解パラジウムめっき、及び無電解ニッケルめっきからなる群より選択される少なくとも1種」とするものである。
この訂正は、「無電解めっき」の種類について、「無電解金めっき」を削除し、「無電解パラジウムめっき、及び無電解ニッケルめっきからなる群より選択される少なくとも1種」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、この訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「訂正前明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項2について、引用形式の記載から独立形式の記載に改める訂正を含むものである。
この訂正は、請求項の記載について、訂正前の引用形式の記載を独立形式の記載に改めるものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。そして、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項2における「無電解めっき」の種類について、「無電解パラジウムめっき、無電解ニッケルめっき、及び無電解金めっきからなる群より選択される少なくとも1種」を「無電解パラジウムめっき」又は「触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う」ものとする訂正を含むものである。
この訂正は、「無電解めっき」の種類について、「無電解金めっき」を削除した上で、残された2つの選択肢である「無電解パラジウムめっき」と「無電解ニッケルめっき」のいずれか1種のみを行うものと、2種のいずれも行うもの(その順序により2つの場合がある。)のうち、「無電解パラジウムめっき」を行うものと、「無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う」ものに限定するとともに、後者について「触媒側から」順に行うものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正前明細書等には、以下の記載がある。
「本発明は、その一態様において、(1)無電解めっき対象材料と、本発明の触媒付与液とを接触させる工程、及び(2)工程(1)後に、無電解めっき処理する工程を含む、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法、或いは、無電解めっき対象材料を無電解めっきする方法(本明細書において、「本発明の方法2」と示すこともある。)に関する。」(【0071】)
「また、工程(2)で無電解ニッケルめっき液又は無電解ニッケル合金めっき液を使用した場合は、さらに無電解パラジウムめっき又は無電解パラジウム合金めっきを行うことが好ましく、これに続いてさらに無電解金めっき又は無電解金合金めっきを行うことがより好ましい。」(【0075】)
訂正前明細書等の上記記載によれば、訂正前明細書等には、無電解めっき対象材料と触媒付与液とを接触させた後、無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきを順に行うことが記載されており、「触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う」ことが記載されているといえるから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3について、引用形式の記載から独立形式の記載に改める訂正を含むものである。
この訂正は、請求項の記載について、訂正前の引用形式の記載を独立形式の記載に改めるものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。そして、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3における「無電解めっき」の種類について、「無電解パラジウムめっき、無電解ニッケルめっき、及び無電解金めっきからなる群より選択される少なくとも1種」を「無電解パラジウムめっき」とする訂正を含むものである。
この訂正は、「無電解めっき」の種類について、「無電解ニッケルめっき」及び「無電解金めっき」を削除し、「無電解パラジウムめっき」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項13に対して、「前記金属上に還元析出により形成された」との記載を追加するものである。
この訂正は、訂正前の請求項13における「金属上の触媒核1」が「金属上に還元析出により形成された」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正前明細書等には、以下の記載がある。
「本発明は、その一態様において、コバルト化合物及び還元剤を含有する、無電解めっき用触媒付与液(本明細書において、「本発明の触媒付与液」と示すこともある。)に関する。」(【0023】)
「還元剤としては、コバルト金属を析出させることが可能な還元剤である限り特に制限されず、還元めっきで使用され得る還元剤を使用することができる。」(【0028】)
「本発明は、その一態様において、(1)無電解めっき対象材料と、本発明の触媒付与液とを接触させる工程を含む、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法、或いは、無電解めっき対象材料を触媒付与処理する方法(本明細書において、「本発明の方法1」と示すこともある。)に関する。」(【0059】)
「本発明の方法1により、無電解めっき対象材料の表面金属上にコバルトを含む触媒核が形成される。」(【0065】)
訂正前明細書等の上記記載によれば、訂正前明細書等には、コバルト化合物を還元剤により還元しコバルト金属を析出させ、無電解めっき対象材料の表面金属上にコバルトを含む触媒核を形成することが記載されており、「金属上の触媒核1」が「金属上に還元析出により形成された」ものであることが記載されているといえるから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項13における「無電解めっき皮膜」の種類について、「無電解パラジウムめっき皮膜、無電解ニッケルめっき皮膜、及び無電解金めっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種」を「無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種」とするものである。
この訂正は、「無電解めっき皮膜」の種類について、「無電解金めっき皮膜」を削除し、「無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6~12について
訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項4における引用請求項について、「請求項1~3のいずれか」を「請求項1」に訂正するものである。
訂正事項7に係る訂正は、訂正前の請求項7における引用請求項について、「請求項1~6のいずれか」を「請求項1及び4~6のいずれか」に訂正するものである。
訂正事項8に係る訂正は、訂正前の請求項8における引用請求項について、「請求項1~7のいずれか」を「請求項1及び4~7のいずれか」に訂正するものである。
訂正事項9に係る訂正は、訂正前の請求項9における引用請求項について、「請求項1~8のいずれか」を「請求項1及び4~8のいずれか」に訂正するものである。
訂正事項10に係る訂正は、訂正前の請求項10における引用請求項について、「請求項1~9のいずれか」を「請求項1及び4~9のいずれか」に訂正するものである。
訂正事項11に係る訂正は、訂正前の請求項11における引用請求項について、「請求項1~10のいずれか」を「請求項1及び4~10のいずれか」に訂正するものである。
訂正事項12に係る訂正は、訂正前の請求項12における引用請求項について、「請求項1~10のいずれか」を「請求項1及び4~10のいずれか」に訂正するものである。
これらの訂正は、いずれも、上記の訂正事項2及び3による訂正(引用関係の解消を目的とする訂正)に伴い、請求項間の引用関係を整理するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、これらの訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
3 まとめ
上記2のとおり、各訂正事項に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号又は4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
また、訂正後の請求項2及び3に係る訂正事項2及び3は、上記2のとおり、いずれも認められるものであるところ、特許権者は、訂正後の請求項2及び3についての訂正が認められる場合には、これらの請求項については、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
したがって、結論のとおり、訂正後の請求項〔1、4~12〕、2、3、13 について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
【請求項1】
コバルト化合物及び還元剤を含有する、
無電解パラジウムめっき、及び無電解ニッケルめっきからなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)に用いるための触媒付与液。
【請求項2】
コバルト化合物及び還元剤を含有し、
前記還元剤がアミン化合物を含む、
無電解パラジウムめっきである無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)、又は触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)に用いるための触媒付与液。
【請求項3】
コバルト化合物及び還元剤を含有し、
前記還元剤がアミン化合物を含み、
前記アミン化合物が、アミンボラン、ヒドラジン、及びヒドラジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
無電解パラジウムめっきである無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)に用いるための触媒付与液。
【請求項4】
錯化剤を含有する、請求項1に記載の触媒付与液。
【請求項5】
前記錯化剤がカルボン酸を含む、請求項4に記載の触媒付与液。
【請求項6】
前記カルボン酸がヒドロキシカルボン酸又はジカルボン酸を含む、請求項5に記載の触媒付与液。
【請求項7】
前記還元剤が、ホウ素含有化合物及びリン含有化合物からなる群より選択される少なくと
も1種を含む、請求項1及び4~6のいずれかに記載の触媒付与液。
【請求項8】
さらに、金属塩を含有する、請求項1及び4~7のいずれかに記載の触媒付与液。
【請求項9】
コバルト含有量が金属100質量%に対して50質量%以上である、請求項1及び4~8のいずれかに記載の触媒付与液。
【請求項10】
前記還元剤が、ホウ素含有化合物及びリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、且つ
前記無電解めっきが、銅及び/又は銅合金が表面に露出している材料に対する無電解めっきである、
請求項1及び4~9のいずれかに記載の触媒付与液。
【請求項11】
(1)無電解めっき対象材料と、請求項1及び4~10のいずれかに記載の触媒付与液とを接触させる工程を含む、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法。
【請求項12】
(1)無電解めっき対象材料と、請求項1及び4~10のいずれかに記載の触媒付与液とを接触させる工程、及び
(2)工程(1)後に、無電解めっき処理する工程
を含む、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法。
【請求項13】
金属が表面に露出している材料、前記金属上に還元析出により形成された前記金属上の触媒核1(但し、触媒金属として銀を含有する触媒核を除く)、及び前記触媒核1上の皮膜2を含み、且つ
前記触媒核1がコバルトを含有し、
前記皮膜2が無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき皮膜である、
材料。
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件特許の請求項1~13に係る特許は、下記(1)~(4)のとおり、特許法113条2号及び4号に該当する。証拠方法は、甲第1号証~甲第17号証(以下、単に「甲1」等という。下記(5)を参照。)である。
(1)申立理由1(サポート要件)
本件訂正前の請求項1~13に係る発明については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、同法113条4号に該当する。
(2)申立理由2(実施可能要件)
本件訂正前の請求項1~13に係る発明については、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、同法113条4号に該当する。
(3)申立理由3(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1~12に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、同法113条2号に該当する。
本件訂正前の請求項1~13に係る発明は、甲1に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、同法113条2号に該当する。
(4)申立理由4(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1~12に係る発明は、甲2に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、同法113条2号に該当する。
本件訂正前の請求項1~13に係る発明は、甲2に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、同法113条2号に該当する。
(5)証拠方法
・甲1 特開2012-216722号公報
・甲2 特開昭55-102297号公報
・甲3 特開2019-7067号公報
・甲4 特開2020-33628号公報
・甲5 特開2019-7068号公報
・甲6 特開2017-128791号公報
・甲7 特表2018-535325号公報
・甲8 特開2016-211014号公報
・甲9 特願2020-115474に対する令和2年9月25日付け拒絶理由通知書
・甲10 特願2020-115474に対する令和2年11月24日提出の意見書
・甲11 特表2009-522445号公報
・甲12 特開平2-93076号公報
・甲13 特開平2-81627号公報
・甲14 特開2015-155566号公報
・甲15 特開2007-246981号公報
・甲16 特開2005-082883号公報
・甲17 特開2002-180261号公報
2 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)令和3年11月26日付けの取消理由通知書
ア 取消理由1(サポート要件)
上記1の申立理由1(サポート要件)と同旨
イ 取消理由2(サポート要件)
本件訂正前の請求項13に係る発明については、「触媒核1」が置換めっきにより形成されるもの等を包含する点で、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項13に係る特許は、同法113条4号に該当する。
(2)令和4年6月13日付けの取消理由通知書(決定の予告)
ア 取消理由1’(サポート要件)
上記(1)の取消理由1(サポート要件)と同旨(ただし、令和4年1月28日提出の訂正請求書による訂正後の請求項1~13に係る発明に対するもの。)
第5 当審の判断
以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
1 取消理由1’(サポート要件)、取消理由1(サポート要件)、申立理由1(サポート要件)
(1)令和3年11月26日付けの取消理由通知書では、概ね以下のとおり指摘した。
「本件明細書の記載(【0006】)によれば、本件訂正前の請求項1~13に係る発明が解決しようとする課題は、「金属材料上に無電解めっきを行う際の前処理に使用する触媒付与液であって、めっき析出性、選択析出性、バリア特性、接合性等がより優れた無電解めっき皮膜を形成するために有用であり、また浴安定性がより優れた触媒付与液を提供すること」と認められる。
本件明細書には、上記課題を解決するための手段について、コバルト化合物及び還元剤を含有する無電解めっき用触媒付与液であれば、上記課題を解決できると記載され(【0007】)、特定の金属材料を無電解めっきする場合に限られるとは記載されていない。
しかしながら、
・本件明細書には、あらゆる金属材料を無電解めっきする場合について、上記課題を解決できると理解できるような機序は説明されていないこと、
・本件明細書の実施例及び比較例において上記課題を解決できることが確認されているのは、上記触媒付与液を無電解パラジウムめっきの前処理に使用する場合のみであること、
・通常、無電解ニッケルめっき皮膜、無電解金めっき皮膜には、下地金属の拡散を防止するバリア特性がないこと(本件明細書【0002】、甲3~6、8)、
を踏まえると、上記触媒付与液を無電解ニッケルめっき又は無電解金めっきの前処理に使用する場合については、特にバリア特性に関し上記課題を解決できるとはいえない。
以上によれば、無電解ニッケルめっき又は無電解金めっきに使用する場合を包含する本件訂正前の請求項1~13に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識し得る範囲を超えるものである。」
また、令和4年6月13日付けの取消理由通知書(決定の予告)でも、上記と同様の指摘をした。
(2)これに対して、前記第2のとおり、本件訂正により、無電解めっき(皮膜)の種類が、本件発明1では「無電解パラジウムめっき、及び無電解ニッケルめっきからなる群より選択される少なくとも1種」に限定され、本件発明2では「無電解パラジウムめっき」を行うものと「触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う」ものに限定され、本件発明3では「無電解パラジウムめっき」に限定され、本件発明13では「無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種」に限定されたので、以下検討する。
(3)ア 本件発明1~13が解決しようとする課題は、上記(1)で指摘したとおりのものである。
本件明細書には、上記(1)のとおり、コバルト化合物及び還元剤を含有する無電解めっき用触媒付与液であれば、上記課題を解決できると記載されている(【0007】、【0021】)。
また、本件明細書には、無電解めっき処理に用いられる無電解めっき液として、無電解パラジウムめっき液、無電解ニッケルめっき液、無電解金めっき液等を使用することが好ましく、無電解ニッケルめっき液を使用した場合は、さらに無電解パラジウムめっきを行うことが好ましく、これに続いてさらに無電解金めっきを行うことがより好ましいことも記載されている(【0075】)。
そうすると、本件明細書には、上記触媒付与液を「無電解パラジウムめっき」の前処理に使用する場合のほか、「無電解ニッケルめっき」の前処理に使用する場合や、「触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う」ものの前処理に使用する場合についても、上記課題を解決できると記載されていることが理解できる。
イ そして、本件明細書には、実施例及び比較例(【0077】~【0113】、表1)として、前処理(酸性脱脂、ソフトエッチング)した無電解めっき対象材料の金属表面上に、実施例1~8及び比較例1~7の各種の触媒付与液を用いて触媒核を形成し、次いで無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順に処理した旨(【0094】~【0099】)記載されており、表1には、各種の評価試験の結果について、実施例1~8の触媒付与液を用いた場合に、比較例1~7の触媒付与液を用いた場合と比べて、バリア特性のほか、めっき析出性、選択析出性、接合性(はんだ接合性)、浴安定性がより優れたものとなることが示されている。この結果は、上記触媒付与液を「無電解パラジウムめっき」の前処理に使用する場合について、具体的に裏付けるものである。
ウ さらに、令和4年8月10日提出の意見書には、無電解めっきの種類を「無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順」から「無電解ニッケルめっき、無電解金めっきの順」に変更したこと、バリア特性の評価における処理基板の熱処理時間を「16h」から「1h」に変更したこと以外は、本件明細書の実施例及び比較例と同様とした試験を行ったところ、当該実施例及び比較例と同様の結果が得られたことが示されている(意見書4~12頁)。この結果は、上記触媒付与液を「無電解ニッケルめっき」の前処理に使用する場合について、具体的に裏付けるものである。
また、同意見書には、無電解めっきの種類を「無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順」から「無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順」に変更したこと以外は、本件明細書の実施例及び比較例と同様とした試験を行ったところ、当該実施例及び比較例と同様の結果が得られたことが示されている(意見書13~21頁)。この結果は、上記触媒付与液を「触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う」ものの前処理に使用する場合について、具体的に裏付けるものである。
(なお、後者の試験については、意見書16、18~20頁に「無電解ニッケルめっき、無電解金めっきの順」と記載されているものの、同13頁に「訂正後の請求項2に係る発明については、無電解ニッケルめっきを使用する場合については触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う無電解めっきに限定されています。・・・上記のような無電解めっきの場合であっても、本件発明の課題を解決できます。このことを確認的に示す試験結果を以下に示します。」と記載され、同17頁に「(d)無電解ニッケルめっき」、「(e)無電解パラジウムめっき」、「(f)無電解金めっき」と記載されていることから、後者の試験においては、実際には「無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順」に行われたものと解される。)
エ 以上によれば、上記触媒付与液を「無電解パラジウムめっき」の前処理に使用する場合のほか、「無電解ニッケルめっき」の前処理に使用する場合や、「触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う」ものの前処理に使用する場合についても、当業者であれば、バリア特性を含め上記課題を解決できることが理解できるといえる。
オ 以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、無電解めっき(皮膜)の種類が上記(2)のとおりに特定された本件発明1~13は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明により上記課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。
(4)ア 申立人は、事後的に実験データを提出して明細書の記載内容を記載外で補足することによって、サポート要件を満たすようにすることは、発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し許されないから、意見書に添付された試験結果は考慮すべきではないと主張する(令和4年10月14日提出の意見書7~9頁)。
しかしながら、本件明細書には、上記触媒付与液を「無電解パラジウムめっき」の前処理に使用する場合のほか、「無電解ニッケルめっき」の前処理に使用する場合や、「触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う」ものの前処理に使用する場合についても、上記課題を解決できると記載されていることは、上記(3)アのとおりである。このように本件明細書に記載された事項について、確認的に試験結果を示すことは許容されると解される。よって、申立人の主張は採用できない。
イ 申立人は、意見書に添付された試験結果は、バリア特性の評価について、無電解ニッケルめっき皮膜表面における下地金属検出の有無について評価していないから、無電解ニッケルめっき皮膜がバリア特性を有するか判断できないと主張する(同意見書9頁)。
しかしながら、意見書に添付された試験結果においては、本件明細書の実施例及び比較例の場合(【0108】)と同様に、最も上に形成されたAu皮膜表面における下地金属検出の有無を評価しており、当業者であれば、Au皮膜よりも下に形成された無電解ニッケルめっき皮膜がバリア特性を有することは理解できるといえる。よって、申立人の主張は採用できない。
ウ 申立人は、意見書に添付された試験結果では、特定の組成を有する無電解ニッケルめっき液を用いて形成した特定の膜厚の無電解ニッケルめっき皮膜と金めっき皮膜との組み合わせが効果を奏することが示されているのみであるところ、通常、無電解ニッケルめっき皮膜には下地金属の拡散を防止するバリア特性がないという技術常識を考慮すると、試験結果に示された特定の構成のみでは、組成や膜厚も何ら限定されていない全ての無電解ニッケルめっき皮膜がバリア特性を有する根拠とはならないと主張する(同意見書9~10頁)。
しかしながら、無電解ニッケルめっき液の組成や無電解ニッケルめっき皮膜の膜厚によって程度の差はあれ、一定程度のバリア特性が得られることは、当業者であれば、本件明細書の記載及び意見書に添付された試験結果から理解できるといえる。よって、申立人の主張は採用できない。
(5)以上のとおりであるから、本件発明1~13については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。
したがって、取消理由1’(サポート要件)、取消理由1(サポート要件)、申立理由1(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(サポート要件)
令和3年11月26日付けの取消理由通知書では、本件訂正前の請求項13に係る発明について、本件明細書の記載によれば、当業者が課題を解決できると認識できるのは、コバルト化合物及び還元剤を含有する触媒付与液を使用して無電解めっきによって触媒核を形成する場合のみであるところ、本件訂正前の請求項13に係る発明の「触媒核1」は、上記触媒付与液を使用した無電解めっきによって形成されるものに限られるものではなく、バリア特性及び接合性において不十分なおそれのある置換めっきによって形成されるもの等を包含すると解されるから、発明の詳細な説明の記載により当業者が課題を解決できると認識し得る範囲を超えるものとなっている旨、指摘した。
これに対して、前記第2のとおり、本件訂正により、本件訂正前の請求項13における「金属上の触媒核1」が「金属上に還元析出により形成された」ものに限定された結果、バリア特性及び接合性において不十分なおそれのある置換めっきによって形成されるもの等を包含しないものとなったから、上記の点に関するサポート要件違反は解消した。
したがって、取消理由2(サポート要件)によっては、本件特許の請求項13に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由2(実施可能要件)
(1)本件発明1~10は、無電解めっきに用いるための触媒付与液に関するものであり、本件発明11は、当該触媒付与液を用いて触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法に関するものであり、本件発明12は、当該触媒付与液を用いて無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法であり、本件発明13は、触媒核上の無電解めっき皮膜を含む材料に関するものである。
本件明細書には、触媒付与液、当該触媒付与液に含まれるコバルト化合物、還元剤、錯化剤及び金属塩(【0023】~【0058】)の各事項について、具体的な説明がなされている。
また、本件明細書には、触媒付与液の調整方法(【0078】)について記載されており、水を溶媒として(【0053】)、上記各成分を混合することで触媒付与液を調整できることは、当業者にとって明らかである。
さらに、本件明細書には、触媒付与液を用いて触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法、及び当該方法に用いられる無電解めっき対象材料(【0059】~【0070】)、触媒付与液を用いて無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法、当該方法に用いられる無電解めっき液、及び当該方法で得られる無電解めっき皮膜を含む材料(すなわち、触媒核上の無電解めっき皮膜を含む材料)(【0071】~【0076】)の各事項について、具体的な説明がなされており、また、触媒核上の無電解めっき皮膜を含む材料の用途(【0002】)についても、具体的な説明がなされている。
そして、本件明細書には、実施例及び比較例(【0077】~【0113】、表1)として、前処理(酸性脱脂、ソフトエッチング)した無電解めっき対象材料の金属表面上に、実施例1~8及び比較例1~7の各種の触媒付与液を用いて触媒核を形成し、次いで無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順に処理したことが記載されている(【0094】~【0099】)。
また、上記実施例1~8以外の場合についても、当業者であれば、本件明細書の記載に基づき、各種のコバルト化合物、還元剤、錯化剤及び金属塩を含む触媒付与液を調整し、当該触媒付与液を用いて触媒核を含む各種の無電解めっき対象材料を製造したり、各種の無電解めっき皮膜を含む材料(すなわち、触媒核上の無電解めっき皮膜を含む材料)を製造したりすることができる。
以上によれば、当業者であれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、本件発明1~10に係る無電解めっきに用いるための触媒付与液、及び本件発明13に係る触媒核上の無電解めっき皮膜を含む材料を製造し、使用することができるといえる。
また、同様に、当業者であれば、本件発明11に係る触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法を使用することができ、当該方法により得られた無電解めっき対象材料を使用することができるとともに、本件発明12に係る無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法を使用することができ、当該方法により得られた無電解めっき皮膜を含む材料(すなわち、触媒核上の無電解めっき皮膜を含む材料)を使用することができるといえる。
(2)申立人は、上記1の申立理由1(サポート要件)と同様の理由により、本件訂正前の請求項1に係る発明の「触媒付与液」と「無電解ニッケルめっき、及び無電解金めっきからなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき」との組み合わせにおいて上記課題を達成できるように、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、また、本件訂正前の請求項2~13に係る発明についても同様であると主張する(特許異議申立書37頁)。
しかしながら、そもそも、実施可能要件で問題とされるのは、本件発明1~13の課題を解決できるかどうかではなく、物の発明については、その物を製造し、使用することができるかどうかであり、また、物の製造方法の発明については、その物の製造方法を使用し、その製造方法で得られた物を使用することができるかどうかであるから、申立人の主張は、その前提において失当である。
そして、当業者であれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、本件発明1~13を実施することができるといえることは、上記(1)のとおりである。
よって、申立人の主張は採用できない。
なお、本件発明1~13が、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により課題を解決できると認識できる範囲のものということができることは、上記1で述べたとおりである。
(3)以上のとおりであるから、本件発明1~13については、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するものである。
したがって、申立理由2(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由3(新規性、進歩性)
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1の記載(請求項1~19、【0001】、【0010】、【0011】、【0032】、【0034】~【0093】、表1)によれば、甲1には、貫通ビア電極を有する基板について記載されているところ(【0001】)、基板に貫通ビア電極を形成する際には、基板に形成されている孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成し、自己組織化単分子膜上に無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子を吸着させ、金属ナノ粒子を触媒として孔の内周面に無電解めっき処理によりバリア層となる金属膜を形成し、このバリア層の金属膜上にシード層となる金属を無電解めっき処理により積層し、貫通ビア電極材をシード層上に電解めっきにより孔が充填されるまで堆積させ、貫通ビア電極を形成することが記載されている(請求項7、12、【0034】)。
ここで、甲1の実施例(【0057】~【0093】、表1)においては、上記のバリア層となる金属膜を形成するための無電解めっき処理に用いられる無電解めっき浴を構成するメッキ液として、表1の無電解Co-W-Bメッキ液が用いられており(【0066】~【0071】)、また、バリア層の金属膜上にシード層となる無電解Cuを直接置換めっきにより堆積させている(【0072】)。
以上によれば、特に表1の無電解Co-W-Bメッキ液に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「硫酸コバルト44g/L、クエン酸120g/L、ジメチルアミンボラン2.9g/L、タングステン酸1.25g/Lを含有する、貫通ビア電極を有する基板におけるバリア層となる金属膜を形成するための無電解めっき処理に用いられる無電解Co-W-Bメッキ液であって、上記バリア層の金属膜上にシード層となる無電解Cuを直接置換めっきにより堆積させる前に用いるための無電解Co-W-Bメッキ液。」(以下、「甲1発明1」という。)
イ 甲1の上記アの記載によれば、特に、甲1の請求項7、11、12、19、【0036】、【0038】、【0041】の記載のほか、甲1の実施例で製造された貫通ビア電極を有する基板(【0057】~【0073】、表2)に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「基板厚さ方向に、アスペクト比が7.5で形成された孔を充填している貫通ビア電極を有するSi基板であって、
前記貫通ビア電極は、
トルエンを溶媒とした3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)溶液であるシランカップリング剤を用いたシランカップリング処理により、前記孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成し、PVP(ポリビニルピロリドン)である保護剤及び平均金属粒子径4nmのPdナノ粒子が含まれるPdナノコロイド溶液中に浸漬することによって、前記自己組織化単分子膜上に無電解めっきの触媒となるPdナノ粒子を吸着させることで、前記孔の内周面に吸着されたPdナノ粒子と、
前記Pdナノ粒子を触媒として、無電解めっき処理により、前記孔の内周面に形成されたCo-W-Bであるバリア層と、
前記Co-W-Bであるバリア層上に無触媒置換めっきにより堆積されたコンフォーマルCuシード層と、
前記コンフォーマルCuシード層上に、前記孔を埋めるようにして堆積されたCuである貫通ビア電極材とを有してなり、
前記Co-W-Bであるバリア層は、前記孔の内周面への密着強度が、スタッドプルテストで14.1MPaである基板。」(以下、「甲1発明2」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1における「硫酸コバルト」は、本件発明1における「コバルト化合物」に相当する。
甲1発明1における「ジメチルアミンボラン」は、本件明細書の記載(【0028】、【0029】、【0036】)に照らして、本件発明1における「還元剤」に相当する。
本件発明1における「触媒付与液」と、甲1発明1における「無電解Co-W-Bメッキ液」とは、いずれも「液」である限りで共通する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明1とは、
「コバルト化合物及び還元剤を含有する、液。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1-1
本件発明1は、「触媒付与液」であるのに対して、甲1発明1は、「無電解Co-W-Bメッキ液」である点。
・相違点1-2
本件発明1では、触媒付与液が、「無電解パラジウムめっき、及び無電解ニッケルめっきからなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)に用いるための」ものであるのに対して、甲1発明1では、無電解Co-W-Bメッキ液が、「貫通ビア電極を有する基板におけるバリア層となる金属膜を形成するための無電解めっき処理に用いられる」ものであって、「上記バリア層の金属膜上にシード層となる無電解Cuを直接置換めっきにより堆積させる前に用いるための」ものである点。
イ 相違点1-1の検討
(ア)まず、相違点1-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a 本件発明1に係る「触媒付与液」は、本件明細書の記載(【0004】、【0059】、【0065】、【0070】)によれば、基板の金属材料上に無電解めっきを行う際に、めっき析出性等を向上させる目的で、金属材料上にあらかじめ触媒核となる金属を析出させるために用いられるものと認められる。
一方、甲1発明1に係る「無電解Co-W-Bメッキ液」は、「貫通ビア電極を有する基板におけるバリア層となる金属膜を形成するための無電解めっき処理に用いられる」もの、すなわち、無電解めっき処理それ自体に用いられるメッキ液であり、本件発明1のような「触媒付与液」とは異なるものである。
b この点、申立人は、触媒付与液とは、使用により被めっき物に触媒を付与できるという用途を付加しためっき液であり、本件明細書の記載(【0024】、【0028】、【0037】、【0045】、【0062】、【0065】)によれば、触媒付与液はすなわち、無電解Coめっき液であり、本件発明1と甲1発明1とは表現が異なるものの、いずれも無電解Coめっき液であると主張する(特許異議申立書39~40頁)。
しかしながら、本件発明1に係る「触媒付与液」は、上記aで認定したとおりのものであり、甲1発明1に係る「無電解Co-W-Bメッキ液」とは異なるものであるから、申立人の主張は採用できない。
c 以上によれば、相違点1-1は実質的な相違点である。
したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)次に、相違点1-1の容易想到性について検討する。
甲1発明1に係る「無電解Co-W-Bメッキ液」は、上記(ア)のとおり、無電解めっき処理それ自体に用いられるメッキ液である。甲1の記載全体をみても、このような甲1発明1に係る「無電解Co-W-Bメッキ液」を、本件発明1のような「触媒付与液」として用いることを動機付ける記載は見当たらず、また、そのようなことが本件特許の出願時の技術常識であるともいえない。
以上によれば、甲1発明1において、「無電解Co-W-Bメッキ液」を「触媒付与液」として用いることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2、3について
本件発明2、3と甲1発明1とを対比すると、上記(2)アと同様に、両者は、少なくとも、相違点1-1と同様の点で相違するところ、この相違点については、上記(2)イで述べたのと同様の理由により、実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、本件発明2、3は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明4~12について
本件発明4~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4~12についても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない
(5)本件発明13について
ア 対比
本件発明13と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2における「Si基板」は、本件発明13における「材料」に相当する。
本件発明13における「コバルトを含有」する「触媒核1(但し、触媒金属として銀を含有する触媒核を除く)」と、甲1発明2における「Pdナノ粒子」からなる「触媒」は、いずれも「触媒核1(但し、触媒金属として銀を含有する触媒核を除く)」である限りで共通する。
甲1発明2における「Co-W-Bであるバリア層」は、Pdナノ粒子を触媒として、無電解めっき処理により、孔の内周面に形成されたものであるから、Pdナノ粒子からなる触媒の上に形成されたものといえる。そうすると、本件発明13における「触媒核1上の皮膜2」である「無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき皮膜」と、甲1発明2におけるPdナノ粒子からなる触媒の上に形成されたと解される「無電解めっき処理によ」る「Co-W-Bであるバリア層」とは、いずれも「触媒核1上の皮膜2」である限りで共通する。
以上によれば、本件発明13と甲1発明2とは、
「材料、触媒核1(但し、触媒金属として銀を含有する触媒核を除く)、及び前記触媒核1上の皮膜2を含む、材料。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1-3
触媒核1が、本件発明13では、「コバルトを含有」するものであるのに対して、甲1発明2では、「Pdナノ粒子」からなるものである点。
・相違点1-4
皮膜2が、本件発明13では、「無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき皮膜である」のに対して、甲1発明2では、「無電解めっき処理によ」る「Co-W-Bであるバリア層」である点。
・相違点1-5
本件発明13では、材料が「金属が表面に露出している」ものであり、また、触媒核1が「前記金属上に還元析出により形成された前記金属上の」ものであるのに対して、甲1発明2では、Si基板が「金属が表面に露出している」ものではなく、また、Pdナノ粒子からなる触媒は、「トルエンを溶媒とした3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)溶液であるシランカップリング剤を用いたシランカップリング処理により、前記孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成し、PVP(ポリビニルピロリドン)である保護剤及び平均金属粒子径4nmのPdナノ粒子が含まれるPdナノコロイド溶液中に浸漬することによって、前記自己組織化単分子膜上に」「吸着させることで、前記孔の内周面に吸着された」ものである点。
イ 相違点1-3の検討
甲1には、バリア層を無電解めっきによって形成する場合の触媒を構成する金属ナノ粒子としては、Pd、Pt、Auナノ粒子が具体的に記載されているだけであり(請求項3、8、9、19、【0038】、【0041】)、「コバルトを含有」するものについては記載も示唆もないから、甲1発明2において、そのようなことが動機付けられるとはいえない。
そうすると、甲1発明2において、触媒として「Pdナノ粒子」に代えて、「コバルトを含有」するものを用いることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 相違点1-5の検討
甲1発明2においては、Pdナノ粒子からなる触媒は、「トルエンを溶媒とした3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)溶液であるシランカップリング剤を用いたシランカップリング処理により、前記孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成し、PVP(ポリビニルピロリドン)である保護剤及び平均金属粒子径4nmのPdナノ粒子が含まれるPdナノコロイド溶液中に浸漬することによって、前記自己組織化単分子膜上に」「吸着させることで、前記孔の内周面に吸着された」ものである。
甲1には、Pdナノ粒子からなる触媒を孔の内周面に吸着させる際に、「金属上に還元析出により形成」させることについては記載も示唆もないから、甲1発明2において、そのようなことが動機付けられるとはいえない。
そうすると、甲1発明2において、Pdナノ粒子からなる触媒を孔の内周面に吸着させる際に、上記のような方法に代えて、「金属上に還元析出により形成」させることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
エ 申立人の主張について
申立人は、Si基板表面にPdPVP触媒(当審注:PVP(ポリビニルピロリドン)により保護されたPdナノ粒子からなる触媒の意味と解される。)が付着しているから、本件発明13の「金属が表面に露出している材料」を充足し、当該PdPVPを触媒として無電解Co-W-Bメッキ液でCoを含むバリア層を形成しているから、本件発明13の「金属上に触媒核1」、「触媒核1がコバルトを含む」を充足し、バリア層上に無電解Cuめっき皮膜を形成しているから、本件発明13の「触媒核1上の皮膜2」を充足すると主張する(特許異議申立書45頁)。
しかしながら、上記(2)イ(ア)で指摘したとおり、触媒付与液は、基板の金属材料上に無電解めっきを行う際に、めっき析出性等を向上させる目的で、金属材料上にあらかじめ触媒核となる金属を析出させるために用いられるものであるのに対して、甲1で用いられている無電解Co-W-Bメッキ液は、無電解めっき処理それ自体に用いられるメッキ液であり、触媒付与液とは異なるものである。
そうすると、そのような無電解Co-W-Bメッキ液を用いて形成されたCo-W-Bであるバリア層は、単なる無電解めっき皮膜であり、本件発明13における「Coを含有する」「触媒核1」に相当するものとはいえない。また、そうであれば、バリア層上に形成された無電解Cuめっき皮膜も、本件発明13における「触媒核1上の皮膜2」ということもできない。
よって、申立人の主張採用できない。
オ 小括
したがって、相違点1-4について検討するまでもなく、本件発明13は、甲1に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件発明1~12は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明1~13は、甲1に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由3(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由4(新規性、進歩性)
(1)甲2に記載された発明
ア 甲2の記載(特許請求の範囲、3頁左下欄17行~右下欄6行、9頁左下欄15行~11頁左下欄15行)によれば、特に、実施例10に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「グルコヘプトン酸のタングステンエステル0.2モル/l、硫酸コバルト0.1モル/l、ジメチルアミンボラン0.06モル/l、チオ尿素1ppmを有する、引き続くコバルトの重ね被覆のための、触媒化フィルムを施す錯化剤の水性浴。」(以下、「甲2発明1」という。)
イ 甲2の実施例10においては、どのような材料を対象に触媒フィルムを施し、引き続くコバルトの重ね被覆が行われたかは明記されていないものの、甲2の実施例1では、「銅合金上に密着した触媒フィルムを形成し、次いでこれに無電解ニッケルを重ねめっきした。印刷回路板が製造され」と記載され、また、実施例2では、「他の触媒化浴を、一般的に実施例1に従い製造し」と記載され、さらに、実施例3でも、「触媒化剤として使用に適する、調製した他の浴」と記載されていることから、実施例10においても、実施例1に従い、銅合金上に密着した触媒フィルムを形成し、次いでこれに無電解コバルトを重ねめっきし、印刷回路板を製造したものと理解できる。
以上によれば、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「銅合金上に、グルコヘプトン酸のタングステンエステル0.2モル/l、硫酸コバルト0.1モル/l、ジメチルアミンボラン0.06モル/l、チオ尿素1ppmを有する錯化剤の水性浴を用いて、密着した触媒フィルムを形成し、次いでこれに無電解コバルトを重ねめっきした、印刷回路板。」(以下、「甲2発明2」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
甲2発明1における「硫酸コバルト」は、本件発明1における「コバルト化合物」に相当する。
甲2発明1における「ジメチルアミンボラン」は、本件明細書の記載(【0028】、【0029】、【0036】)に照らして、本件発明1における「還元剤」に相当する。
甲2発明1における「触媒化フィルムを施す錯化剤の水性浴」は、本件発明1における「触媒付与液」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲2発明1とは、
「コバルト化合物及び還元剤を含有する、触媒付与液。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2-1
触媒付与液が、本件発明1では、「無電解パラジウムめっき、及び無電解ニッケルめっきからなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)に用いるための」ものであるのに対して、甲2発明1では、「引き続くコバルトの重ね被覆のための」ものである点。
イ 相違点2-1の検討
(ア)まず、相違点2-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲2発明1における「引き続くコバルトの重ね被覆」は、甲2の記載(3頁左下欄17行~右下欄3行、4頁右下欄1~11行等)によれば、引き続く無電解めっきによるコバルトの重ね被覆を意味すると解されるところ、本件発明1と甲2発明1とは、適用される無電解めっきの種類が異なる。
以上によれば、相違点2-1は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。
(イ)次に、相違点2-1の容易想到性について検討する。
a 甲2には、引き続く無電解めっきによる重ね被覆の種類について、コバルトのほかに、ニッケルも記載されている(請求項1、4頁右下欄1~11行等)。
しかしながら、甲2の実施例1~14に示されるとおり、触媒化フィルムを施す錯化剤の水性浴において、コバルト化合物を含むものを用いる場合は、引き続く無電解めっきによるコバルトの重ね被覆が行われており(実施例10)、一方、触媒化フィルムを施す錯化剤の水性浴において、ニッケル化合物を含むもの(実施例1~9)を用いる場合は、引き続く無電解めっきによるニッケルの重ね被覆が行われている(実施例13、14)。
すなわち、甲2には、コバルト化合物を含む触媒化フィルムを施す錯化剤の水性浴を用いて、引き続く無電解めっきによるニッケルの重ね被覆を行うことは、記載されているとはいえない。また、甲2には、コバルト化合物を含む触媒化フィルムを施す錯化剤の水性浴を用いて、引き続く無電解めっきによるパラジウムの重ね被覆を行うことについても、記載されているとはいえない。そうである以上、甲2発明1において、これらのことが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の実施例及び比較例の記載(【0077】~【0113】、表1)のほか、令和4年8月10日提出の意見書における試験の結果(4~21頁)によれば、本件発明1は、金属材料上に「無電解パラジウムめっき」、「無電解ニッケルめっき」、「触媒側から無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっきの順に行う無電解めっき」を行う際の前処理に使用する触媒付与液であって、めっき析出性、選択析出性、バリア特性、接合性等がより優れた無電解めっき皮膜を形成するために有用であり、また浴安定性がより優れた触媒付与液を提供することができる(【0021】)という、当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。
以上によれば、甲2発明1において、触媒化フィルムを施す錯化剤の水性浴を、「引き続くコバルトの重ね被覆のための」ものに代えて、引き続く「ニッケル」又は「パラジウム」の重ね被覆のためのものとすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
b この点、申立人は、少なくとも「無電解ニッケルめっきに用いる」という記載については、用途発明の要件(審査基準)を充足せず、一般に、触媒付与液を所定の無電解めっきと組み合わせることができるとの有用性を示しているにすぎないから、考慮すべきでないと主張する(特許異議申立書48頁(40頁も参照))。
しかしながら、本件明細書の記載(【0004】~【0007】、【0021】、【0075】、【0077】~【0113】、表1)によれば、本件発明1は、所定の成分を含む触媒付与液を無電解めっきに用いた場合に、上記aで指摘した効果を奏することを見出したことに基づいて、所定の成分を含む触媒付与液を特定の無電解めっきに用いるという技術思想を特定した発明と理解することができるものであるから、「一般に、触媒付与液を所定の無電解めっきと組み合わせることができるとの有用性を示しているにすぎない」などということはできない。そして、そのような技術思想を特定した本件発明1について、当業者が容易に想到することができないことは、上記aのとおりである。よって、申立人の主張は採用できない。
c したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2、3について
本件発明2、3と甲2発明1とを対比すると、上記(2)アと同様に、両者は、少なくとも、相違点2-1と同様の点、すなわち、適用される無電解めっきの種類の点で相違するところ、この相違点については、上記(2)イで述べたのと同様の理由により、実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、本件発明2、3は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明4~12について
本件発明4~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4~12についても同様に、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない
(5)本件発明13について
ア 対比
本件発明13と甲2発明2とを対比する。
甲2発明2における「印刷回路板」を構成する「銅合金」は、本件発明13における「金属が表面に露出している材料」に相当する。
甲2発明2における「触媒フィルム」は、硫酸コバルトを含む錯化剤の水性浴を用いて、銅合金上に密着して形成されるから、本件発明13における「コバルトを含有」する「前記金属上の触媒核1(但し、触媒金属として銀を含有する触媒核を除く)」に相当する。
本件発明13における「触媒核1上の皮膜2」である「無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき皮膜」と、甲2発明2における触媒フィルムの上に形成される「無電解コバルト」の「重ねめっき」とは、いずれも「触媒核1上の皮膜2」である限りで共通する。
以上によれば、本件発明13と甲2発明2とは、
「金属が表面に露出している材料、前記金属上の触媒核1(但し、触媒金属として銀を含有する触媒核を除く)、及び前記触媒核1上の皮膜2を含み、且つ前記触媒核1がコバルトを含有する、材料。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2-2
皮膜2が、本件発明13では、「無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき皮膜である」のに対して、甲2発明2では、甲2発明2では、「無電解コバルト」の「重ねめっき」である点。
・相違点2-3
本件発明13では、触媒核1が「金属上に還元析出により形成された」ものであるのに対して、甲2発明2では、「金属上に還元析出により形成された」ものであるか不明である点。
イ 相違点2-2の検討
上記(2)イ(イ)aでも述べたとおり、甲2には、引き続く無電解めっきによる重ね被覆の種類について、コバルトのほかに、ニッケルも記載されているものの、甲2には、コバルト化合物を含む触媒化フィルムを施す錯化剤の水性浴を用いて、引き続く無電解めっきによるニッケルの重ね被覆を行ったり、同パラジウムの重ね被覆を行ったりすることについては、記載されているとはいえないから、甲2発明2において、これらのことが動機付けられるとはいえない。
そして、本件発明13は、上記(2)イ(イ)aでも述べたとおりの、当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。
以上によれば、甲2発明2において、「無電解コバルト」の「重ねめっき」に代えて、「無電解パラジウムめっき皮膜、及び無電解ニッケルめっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき皮膜」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、相違点2-3について検討するまでもなく、本件発明13は、甲2に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件発明1~12は、甲2に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明1~13は、甲2に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由4(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700878