特許異議申立
2023-700921
照明装置
- 審判番号
- 2023-700921
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-127297
- 登録番号
- 7234834
- 請求日
- 2023年09月06日
- 審決日
- 2024年09月26日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人きさ特許商標事務所
- 【権利者代理人】伊達 研郎
- 【権利者】三菱電機照明株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人きさ特許商標事務所
- 【権利者代理人】伊達 研郎
- 【異議申立人】内藤 明
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 高橋 学
- 審判官 草野 顕子
- 分類
- P1651.113-YAA(F21S) / P1651.121-YAA(F21S) / P1651.537-YAA(F21S)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7234834号発明「照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7234834号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7234834号の請求項1、3~5に係る特許を維持する。
特許第7234834号の請求項2、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7234834号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和元年7月9日に出願され、令和5年2月28日にその特許権の設定登録がされ、同年3月8日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 9月 6日 :特許異議申立人内藤明(以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
同年11月20日付け:取消理由通知書
令和6年 1月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 4月 8日 :申立人による意見書の提出
同年 5月21日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 7月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 8月28日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「光源部が発する光を透過する透光性カバーと、前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバーと、を備え、前記透光性カバーは、入射された光を出射する発光面を有し、前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有する照明装置。」と記載されているのを、「光源部が発する光を透過する透光性カバーと、前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバーと、を備え、壁面に取り付けられる照明装置であって、前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有し、前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有し、前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から上方に離れるように傾斜する傾斜面である照明装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~5も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記透光性カバーの発光面は、長辺と短辺を有する長方形状であり、前記透光性カバーは、前記長辺を両側から挟み込むように支持する透光性カバー取付部を有する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の照明装置。」と記載されているのを、「前記透光性カバー及び前記端部カバーが取り付けられた灯具本体部をさらに備え、前記透光性カバーの発光面は、長辺と短辺を有する長方形状であり、前記灯具本体部は、前記長辺を両側から挟み込むように支持する透光性カバー取付部を有する請求項1または請求項3に記載の照明装置。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0005】に「本発明の照明装置は、光源部が発する光を透過する透光性カバーと、前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバーと、を備え、前記透光性カバーは、入射された光を出射する発光面を有し、前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有する。」と記載されているのを、「本発明の照明装置は、光源部が発する光を透過する透光性カバーと、前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバーと、を備え、壁面に取り付けられる照明装置であって、前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有し、前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有し、前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から上方に離れるように傾斜する傾斜面である。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1に、「壁面に取り付けられる照明装置であって」との事項を付加した訂正(以下「訂正事項1-1」という。)は、「照明装置」の構成をより具体化し、更に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1に「前記透光性カバーは、入射された光を出射する発光面を有し」と記載されているのを、「前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有し」とする訂正(以下「訂正事項1-2」という。)は、「透光性カバー」の「発光面」の出射方向を具体的に特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
更に、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1に「前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており」との事項を付加する訂正(以下「訂正事項1-3」という。)は、「透光性カバー」に関して、その「長手方向に延びる縁部」が「水平に配設されている」ことを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1に、「前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から上方に離れるように傾斜する傾斜面である」との事項を付加する訂正(以下「訂正事項1-4」という。)は、「掃出部」の構成を特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1-1に関しては、願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「明細書等」という。)における、段落【0008】の「照明装置1000は、壁面に取り付けられる器具本体部100と、この器具本体部100に取り付けられる灯具200を有する。」との記載に基づくものである。
また、訂正事項1-2に関しては、明細書等の段落【0010】の「灯具200は、・・・、上方を照射する上方光源部220と、この上方光源部220の発光方向を覆い、灯具本体部210に取り付けられた上方透光性カバー230と、・・・、を有する。」との記載に基づくものである。
更に、訂正事項1-3に関しては、明細書等の段落【0014】~【0015】、段落【0019】、及び図1~図4の記載から、「透光性カバー取付部211b、212b」に支持される「上方透光性カバー230」の長手方向に延びる縁部は、引き紐150が垂下する方向に対して略直交しているといえる。そうすると、明細書等には、「照明装置1000」において、上記「上方透光性カバー230」の長手方向に延びる縁部が水平となるように、上記「上方透光性カバー230」が配置されていることが記載されているといえる。
そして、訂正事項1-4に関しては、明細書等の図6~図8において、「掃出部263」が「上方透光性カバー230」から離れるにしたがって「上方透光性カバー230」の面から上方に離れるように傾斜することが示されていること、及び本件訂正前の請求項2の「前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにつれて傾斜する傾斜面である」という記載に基づくものである。
以上のとおりであるので、訂正事項1の各訂正事項は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するというものであるから、明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3のうち、本件訂正前の請求項4の「前記透光性カバーの発光面は、長辺と短辺を有する長方形状であり、前記透光性カバーは、前記長辺を両側から挟み込むように支持する透光性カバー取付部を有する」との記載を「前記透光性カバー及び前記端部カバーが取り付けられた灯具本体部をさらに備え、前記透光性カバーの発光面は、長辺と短辺を有する長方形状であり、前記灯具本体部は、前記長辺を両側から挟み込むように支持する透光性カバー取付部を有する」とする訂正(以下「訂正事項3-1」という。)は、本件訂正前の請求項4に記載された「前記透光性カバー」と「透光性カバー取付部」との関係を明確にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3のうち、本件訂正前の請求項4の「請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の照明装置。」との記載を「請求項1または請求項3に記載の照明装置。」とする訂正(以下「訂正事項3-2」という。)は、削除された請求項2の引用という明瞭でない記載の釈明を目的とするもの、又は請求項2との引用関係の解消を目的とするものであり、そして、引用先の請求項の選択肢を限定するものなので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3-1は、明細書等の段落【0011】~【0015】及び図4の記載に基づくものであり、訂正事項3-2は、削除された請求項2を引用先の請求項の記載から削除するものであるので、いずれも、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項3の各訂正事項は、明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、明りょうでない記載の釈明、特許請求の範囲の減縮、請求項間の引用関係の解消を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項6を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項4は、本件訂正前の請求項6を削除するというものであるから、明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正事項1に係る本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
前記(1)イで述べたのと同じ理由から、訂正事項5は、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、明瞭でない記載を明確化するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~6について、請求項2~6は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~6〕について請求されたものである。
4 小括
以上のとおり、訂正事項1~5に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の発明
前記「第2」で説示したように本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1、3~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3~5に記載された事項により特定される次のとおりのものであるところ、訂正特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
光源部が発する光を透過する透光性カバーと、
前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバーと、を備え、
壁面に取り付けられる照明装置であって、
前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有し、
前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、
前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有し、
前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から上方に離れるように傾斜する傾斜面である照明装置。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記掃出部は、前記透光性カバーの前記発光面と略面一な平面である請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記透光性カバー及び前記端部カバーが取り付けられた灯具本体部をさらに備え、
前記透光性カバーの発光面は、長辺と短辺を有する長方形状であり、
前記灯具本体部は、前記長辺を両側から挟み込むように支持する透光性カバー取付部を有する請求項1または請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記端部カバーは、前記透光性カバー取付部と略面一となる外郭部を有する請求項4に記載の照明器具。
【請求項6】(削除)」
第4 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由について
本件訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和6年5月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1:(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
理由2:(新規性)本件特許の下記請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するので、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
理由3:(進歩性)本件特許の下記請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
1 甲号証一覧
甲第1号証:特開2012-169207号公報
甲第2号証:特開2018-73793号公報
甲第3号証:特開2014-75315号公報
甲第4号証:特開2016-35841号公報
以下、「甲第○号証」を「甲○」といい、「甲○号証に記載された発明」を「甲○発明」という。
2 理由2及び理由3における請求項と甲号証との関係
・請求項 1~6
・引用文献 甲1
・請求項 1~4、6
・引用文献 甲2
・請求項 1、4
・引用文献 甲3
・請求項 1、3、6
・引用文献 甲4
第5 当審の判断
1 理由1(明確性要件)について
前記第2の1(1)で述べたように、本件訂正前の請求項1に対して、「前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、」との事項が追加されたところ、当該記載により「透光性カバーの長手方向に延びる縁部」が「水平に配設」されることが明確となった。
よって、本件訂正後の請求項1において、前記取消理由の理由1は、解消した。
2 理由2(新規性)及び理由3(進歩性)について
(1)甲1発明
甲1には、以下の甲1発明が記載されていると認められる(括弧内に根拠箇所を示した。以下同様。)
「光源ユニット41の発光部46が発光されると、照明光を、上向きに透過する投光パネル28と(【0097】、図8)、
前記投光パネル28の長手方向の端面に接して配設されている防水部材61と(【0073】)、前記投光パネル28の長手方向の端面との間に、防水部材61を挟んで連結されている側板71とを備え(【0078】、図2~図6)、
器具ホルダに連結される照明器具1であって(【0031】、図8)、
前記投光パネル28は、入射された照明光を出射する前記投光パネル28の上面を有し(【0097】、図8)、
二本の上縁材31は前記投光パネル28の平行な縁部に被さって連結上縁部16にねじ止めされ、これらのねじ止めによって前記投光パネル28の上面を底とする溝38が形成され、前記溝38は、本体11の長手方向全長にわたって延び(【0048】、図8)、前記防水部材61の幅方向に沿う部材凹部62の長さは、前記溝38の幅に等しく、前記部材凹部62は前記溝38の端に連続し(【0075】)、側板凹部76は側板71の上端部に上方に開口して設けられ、前記側板71の幅方向に沿う前記側板凹部76の長さは前記部材凹部62の長さに等しく、前記側板凹部76は前記部材凹部62を介して前記溝38の端に連続しており(【0084】)、前記溝38に溜まろうとする水を前記部材凹部62及び前記側板凹部76に通して前記溝38の外部に排出することが可能であり(【0102】、図3)、
前記投光パネル28を上向きにした略水平な状態で設置され(【0097】、図1、図8、図9)、
前記側板凹部76の底面76aは、前記部材凹部62に接した側板71の裏面から表側面に向かうに従い次第に下がるように傾けられている(【0085】、図6)、
照明器具1(【0031】)。」
(2)甲2発明
甲2には、以下の甲2発明が記載されていると認められる。
「光源40からの光を透過させるパネル体22と(【0017】、図3、図5)、
前記パネル体22の端部に隣接して設けられた第1筐体21の第2側壁242及び第3側壁243とを備え(【0020】、図1、図5)、
床80に設置される照明器具10であって(【0030】、図6)、
前記パネル体22は、入射された光を出射する斜め上を向いた第1拡散パネル221を有し(【0017】、図1~図3、図5)、
前記第1筐体21の第2側壁242は、前記第1拡散パネル221に対して連続的な側面242aを有すると共に、前記第1筐体21の第3側壁243は、前記第2側壁242とは逆側に、前記第1拡散パネル221に対して連続的な側面243aを有し(【0017】、【0020】、図1、図4、図5)、
前記パネル体22の第2方向D23(図4の左右方向)に延びる縁部が水平に配設され(【0026】、【0030】、図1~図6)、
前記第2側壁242の側面242a及び前記第3側壁243の側面243aは、第1筐体21の前方向D21aに向かうにつれて、前記パネル体22が取り付けられた開口210から遠ざかるように傾斜している(【0020】、図1、図4、図5)、
照明器具10(【0010】)。」
(3)甲3発明
甲3には、以下の甲3発明が記載されていると認められる。
「光源29からの光を透光する透光性のカバー部25と(【0011】、【0035】)、
前記透光性のカバー部25の長手方向両端部に取り付けられたエンドキャップ31と、ケース部10とを備え(【0030】、図2(a))、
前記透光性のカバー部25は、入射された光を斜め上方の天井面2に向けて出射する表面を有し(【0035】、図1)、
前記エンドキャップ31は、カバー部25と一体的に形成された前記ケース部10の長手方向に見た外郭形状に応じた形状とされ(【0030】、【0031】)、
前記透光性のカバー部25の長手方向に延びる縁部が水平になるように、前記ケース部10の取付面13を壁面3に沿わせて取り付けられる(【0035】、【0037】、図1~図3)、
発光装置1(【0011】)。」
(4)甲4発明
甲4には、以下の甲4発明が記載されていると認められる。
「光源部34が発する光を透光する透光性カバー38と(【0009】、【0017】、図2)、
前記透光性カバー38の端部を覆う端部カバー40と、(【0019】)とを
備え、
前記透光性カバー38は、入射された光を出射する透光性カバー38の表面を有し(図2)、
前記端部カバー40は、前記透光性カバー38の表面と当接する一方側は前記透光性カバー38の表面に対して連続的な面が形成される前記端部カバー40の周面を有し(図1、図2)、
前記透光性カバー38の長手方向に延びる縁部が水平に配置されるように、壁に取り付けられる(【0010】~【0012】、図1)、
照明器具10A」
(5)甲1を主引用文献とした理由
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「光源ユニット41の発光部46」は前者の「光源部」に相当し、以下同様に、後者の「照明光」が前者の「光源部が発する光」に、後者の「投光パネル28」は前者の「透光性カバー」に、後者の「防水部材61」及び「側板71」は前者の「端部カバー」に、後者の「投光パネル28の上面」は前者の「発光面」に、後者の「照明器具1」は前者の「照明装置」に、それぞれ相当する。
以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
b 後者の「光源ユニット41の発光部46が発光されると、照明光を、上向きに透過する投光パネル28」は、前者の「光源部が発する光を透過する透光性カバー」に相当する。
c 後者の「前記投光パネル28の長手方向の端面に接して配設されている防水部材61」及び「前記投光パネル28の長手方向の端面との間に、防水部材61を挟んで連結されている側板71」は、前者の「前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバー」に相当する。
d 後者の「前記投光パネル28は、入射された照明光を出射する投光パネル28の上面を有」することは、「照明光」が「投光パネル28の上面」から上方に出射しているので、前者の「前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有」することに相当する。
e 後者は「投光パネル28の上面を底とする溝38が形成され」、「前記防水部材61の幅方向に沿う部材凹部62の長さは、前記溝38の幅に等し」いから、図5を参照すると、後者の「防水凹部62」は「面」を形成するものといえ、また、後者は「側板71の幅方向に沿う前記側板凹部76の長さは前記部材凹部62の長さに等し」いから、後者の「側板凹部76」も「面」を形成するといえる。
また、後者は「前記溝38に溜まろうとする水を前記部材凹部62及び前記側板凹部76に通して前記溝38の外部に排出することが可能」なものであるから、当然に溝38の清掃性を向上させることにも資する構成であるところ、後者の「部材凹部62及び側板凹部76」は前者の「掃出部」に相当し得る。
そして、後者において、「前記防水凹部62は前記溝38の端に連続し」「前記側板凹部76は前記部材凹部62を介して前記溝38の端に連続して」いる。
そうすると、後者の「二本の上縁材31は前記投光パネル28の平行な縁部に被さって連結上縁部16にねじ止めされ、これらのねじ止めによって前記投光パネル28の上面を底とする溝38が形成され、前記溝38は、本体11の長手方向全長にわたって延び、前記防水部材61の幅方向に沿う部材凹部62の長さは、前記溝38の幅に等しく、前記防水凹部62は前記溝38の端に連続し、側板凹部76は側板71の上端部に上方に開口して設けられ、前記側板71の幅方向に沿う前記側板凹部76の長さは前記部材凹部62の長さに等しく、前記側板凹部76は前記部材凹部62を介して前記溝38の端に連続しており、前記溝38に溜まろうとする水を前記部材凹部62及び前記側板凹部76に通して前記溝38の外部に排出することが可能である」ことは、前者の「前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有する」ことに相当する。
f 後者において、「照明器具1」が「前記投光パネル28を上向きにした略水平な状態で設置され」た際には、「前記投光パネル28」の上面、又は少なくとも「前記投光パネル28」の長手方向に延びる縁部は、略水平な状態で設置されることとなるので、後者の「前記投光パネル28を上向きにした略水平な状態で設置される」ことは、前者の「前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されて」いることに相当する。
g 後者の「前記側板凹部76の底面76aは、前記部材凹部62に接した側板71の裏面から表側面に向かうに従い次第に下がるように傾けられている」ことと、前者の「前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から上方に離れるように傾斜する傾斜面である」ことは、「前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から離れるように傾斜する傾斜面である」点で共通する。
h 後者の「器具ホルダに連結され」ることと、前者の「壁面に取り付けられる」こととは、「設置位置に取り付けられる」点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「光源部が発する光を透過する透光性カバーと、
前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバーと、を備え、
設置場所に取り付けられる照明装置であって、
前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有し、
前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、
前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有し、
前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から離れるように傾斜する傾斜面である照明装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
照明装置の取り付けに関して、本件発明1は、「壁面に取り付けられる」照明装置であるのに対して、甲1発明では、「器具ホルダに連結される」照明器具1ではあるものの、「器具ホルダ」と「壁面」との関係が不明である点。
(相違点2)
掃出部の傾斜面に関して、本件発明1では、傾斜面が透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から「上方」に離れるように傾斜するのに対して、甲1発明では、側板凹部76の底面76aは、前記部材凹部62に接した側板71の裏面から表側面に向かうに従い次第に「下がる」ように傾けられている点。
(イ)相違点についての検討
まず、新規性について検討すると、前記相違点1~2は実質的な相違点であるので、本件発明1は、甲1発明ではない。
次に、進歩性について検討するに、事案に鑑み、まず、前記相違点2について検討する。
甲1には、側板凹部76の底面76aの傾斜に関して、段落【0104】に「側板凹部76の底面76aは、投光パネル28の端面及び防水部材61から遠ざかるほど投光パネル28の上面及び部材凹部62の底面62aより次第に低くなるように傾けられている。このため、部材凹部62から側板凹部76へ排出された水を、側板凹部76の底面76aの傾きによって円滑に導いて排出することが可能である。」との記載があり、段落【0105】に「こうした排水により、溝38に水が留まり続けないようにできるので、防水リング25が劣化してその防水性能が低下した場合でも、投光パネル28まわりから本体11内へ浸水することを抑制可能である。・・・しかも、以上のような円滑な排水により、部材凹部62及び側板凹部76にも水が留まり難いので、本体11の端面及び投光パネル28の端面と防水部材61の接触部に、浸水をすることも抑制することが可能である。」との記載がある。
これらの記載を踏まえると、甲1発明において、側板凹部76の底面76aが、部材凹部62に接した側板71の裏面から表側面に向かうに従い次第に下がるように傾けられているのは、前記部材凹部62から前記側板凹部76へ排出された水を、前記底面76aの傾きによって円滑に導いて排出し、溝38に水が留まり続けないようにすることを意図しているものであるといえる。
一方、前記相違点2に係る本件発明1の構成における傾斜面の傾きは、甲1発明に当てはめた場合には、前記底面76aが、前記部材凹部62に接した前記側板71の裏面から表側面に向かうに従い次第に上がっていくような傾きであるといえるところ、前記底面76aがこのような傾きを有した場合、前記水の排出が妨げられてしまうことは明らかである。
そうすると、甲1発明において、前記相違点2に係る本件発明1の構成を採ることには、阻害要因があるといえる。
したがって、甲1発明において、前記相違点2に係る本件発明1の構成を採ることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明1が、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3~5についても、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)甲2を主引用文献とした理由
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲2発明とを対比すると、後者の「光源40」は前者の「光源部」に相当し、以下同様に、後者の「パネル体22」は前者の「透光性カバー」に、後者の「第2側壁242」及び「第3側壁243」は前者の「端部カバー」に、後者の「第1拡散パネル221」は前者の「発光面」に、後者の「第2方向D23(図4の左右方向)」は前者の「長手方向」に、後者の「照明器具10」は前者の「照明装置」に、それぞれ相当する。
以上の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
b 後者の「光源40からの光を透過させるパネル体22」は、前者の「光源部が発する光を透過する透光性カバー」に相当する。
c 後者の「前記パネル体22の端部に隣接して設けられた第1筐体21の第2側壁242及び第3側壁243」は、前者の「前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバー」に相当する。
d 後者の「前記パネル体22は、入射された光を出射する斜め上を向いた第1拡散パネル221を有」することは、「第1拡散パネル221」から上方に向けて「光」が出射しているといえるので、前者の「前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有」することに相当する。
e 後者の「第1拡散パネル221」は「斜め上を向い」ているので、表面に埃やチリが溜まり得ることは自明であるから、前記「第1拡散パネル221」に対して連続的な後者の「第2側壁242の側面242a及び第3側壁の側面243a」は前者の「掃出部」に、相当する。
そうすると、後者の「前記第1筐体21の第2側壁242は、前記第1拡散パネル221に対して連続的な側面242aを有すると共に、前記第1筐体21の第3側壁243は、前記第2側壁242とは逆側に、前記第1拡散パネル221に対して連続的な側面243aを有する」ことは、前者の「前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有する」ことを含むものである。
f 後者の「前記パネル体22の第2方向D23(図4の左右方向)に延びる縁部が水平に配設される」ことは、前者の「前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されて」いることに相当する。
g 後者の「前記パネル体22は、入射された光を出射する斜め上を向いた第1拡散パネル221を有し」「前記第2側壁242の側面242a及び前記第3側壁243の側面243aは、第1筐体21の前方向D21aに向かうにつれて、前記パネル体22が取り付けられた開口210から遠ざかるように傾斜していること」と、前者の「前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から上方に離れるように傾斜する傾斜面である」こととは、「前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から出射する光の光軸方向に離れるように傾斜する傾斜面である」点で、共通する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「光源部が発する光を透過する透光性カバーと、
前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバーと、を備え、
前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有し、
前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、
前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有し、
前記掃出部は、前記透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から出射する光の光軸方向に離れるように傾斜する傾斜面である照明装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
本件発明1が「壁面に取り付けられる」照明装置であるのに対して、甲2発明は「床80に設置される」照明器具10である点。
(相違点4)
「掃出部」の「傾斜面」に関して、本件発明1が、掃出部は、透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から「上方」に離れるように傾斜する傾斜面であるのに対して、甲2発明では、第2側壁242の側面242a及び第3側壁243の側面243aは、「第1筐体21の前方向D21aに向かうにつれて、前記パネル体22が取り付けられた開口210から遠ざかるように」傾斜している点。
(イ)相違点についての検討
まず、新規性について検討すると、前記相違点3~4は実質的な相違点であるので、本件発明1は、甲2発明ではない。
次に、進歩性について検討するに、まず、前記相違点3について検討する。
甲2には、段落【0030】に照明器具10の使用態様として、「照明器具10は、例えば、図6に示すように、舞台のホリゾント(例えば、背景用の幕や壁)90を照らすために用いられる。照明器具10は、電源装置30の第2筐体31の第1端(前面311)がホリゾント90に対向し、かつ、光源装置20がホリゾント90から一定距離L離れるように、床80に設置される。」ことが記載されている。
すなわち、甲2の記載からは、照明器具10は、舞台の床に置いて使用されるものであって、壁面に取り付けて使用することを想定したものではないといえ、むしろ、その使用態様を踏まえれば、甲2発明において、照明器具10を壁面に取り付けることには阻害要因があるといえる。
そうすると、甲2発明において、前記相違点3に係る本件発明1の構成を採ることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明1が、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3~5についても、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)甲3を主引用文献とした理由
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲3発明とを対比すると、後者の「光源29」は前者の「光源部」に相当し、以下同様に、後者の「透光性のカバー部25」及び「カバー部25」は前者の「透光性カバー」に、後者の「エンドキャップ31」は前者の「端部カバー」に、後者の「透光性のカバー部25」の「表面」は前者の「発光面」に、後者の「長手方向」は前者の「長手方向」に、後者の「壁面3」が前者の「壁面」に、後者の「発光装置1」は前者の「照明装置」に、それぞれ相当する。
以上の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
b 後者の「光源29からの光を透光する透光性のカバー部25」は、前者の「光源部が発する光を透過する透光性カバー」に相当する。
c 後者の「前記透光性のカバー部25の長手方向両端部に取り付けられたエンドキャップ31」は、前者の「前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバー」に相当する。
d 後者の「前記透光性のカバー部25は、入射された光を斜め上方の天井面2に向けて出射する表面を有」することは、前者の「前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有」することに相当する。
e 後者の「カバー部25」は、図1を参照すると天井面に向かって斜め上方を向いているため、表面に埃やチリが溜まり得ることは自明であるから、後者の「カバー部25の長手方向両端部に取り付けられ」、「カバー部25と一体的に形成されたケース部10の長手方向に見た外郭形状に応じた形状」である「エンドキャップ31」の「カバー部25」に連なる部分は前者の「掃出部」に相当する。
そうすると、後者の「前記透光性のカバー部25の長手方向両端部に取り付けられたエンドキャップ31」は、前者の「前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバー」であって、「端部カバーは、発光面と当接する一方側は発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有する」ことを含むものといえる。
f 後者の「前記透光性のカバー部25の長手方向に延びる縁部は、水平に配設される」ことは、前者の「前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されている」ことに相当する。
g 後者の「前記ケース部10の取付面13を壁面3に沿わせて取り付けられる」ことは、「ケース10」が「発光装置1」を構成するものなので、前者の「照明装置」が「壁面に取り付けられる」ことに相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「光源部が発する光を透過する透光性カバーと、
前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバーと、を備え、
壁面に取り付けられる照明装置であって、
前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有し、
前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、
前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有する照明装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点5)
掃出部に関して、本件発明1では、掃出部は、「透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から上方に離れるように傾斜する傾斜面である」のに対して、甲3発明では、エンドキャップ31のバー部25に連なる部分にかかる傾斜面は形成されていない点。
(イ)相違点についての検討
まず、新規性について検討すると、前記相違点5は実質的な相違点であるので、本件発明1は、甲3発明ではない。
次に、進歩性について検討するに、甲3においては、段落【0031】に「エンドキャップ31,31は、・・・、図2及び図3に示すように、ケース部10の長手方向に沿う方向に薄型で、ケース部10の長手方向に見た外郭形状に応じた形状とされている。」ことだけが記載されており、エンドキャップ31のカバー部25に連なる部分に対して傾斜面を形成することについては記載も示唆もされていない。
また、申立人が提出した他の証拠である甲2には、照明器具10の第2側壁242の側面242a及び第3側壁243の側面243aを、前記照明器具10の第1筐体21の前方向D21aに向かうにつれて、透光性カバーであるパネル体22が取り付けられた開口210から遠ざかるように傾斜させることについては記載されているものの、甲3発明における発光装置1と甲2に記載された前記照明器具10とは、前提とする照明装置としての構造が大きく異なるものであるので、甲3発明のエンドキャップ31に対して甲2に記載された前記照明器具10の前記第2側壁242の前記側面242a及び前記第3側壁243の前記側面243aの構成を採用する動機はない。
そうすると、甲3発明において、前記相違点5に係る本件発明1の構成を採ることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明1が、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3~5についても、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)甲4を主引用文献とした理由
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲4発明とを対比すると、後者の「光源部34」は前者の「光源部」に相当し、以下同様に、後者の「透光性カバー38」は前者の「透光性カバー」に、後者の「端部カバー40」は前者の「端部カバー」に、後者の「透光性カバー38の表面」は前者の「発光面」に、後者の「長手方向」は前者の「長手方向」に、後者の「照明器具10a」は前者の「照明装置」に、それぞれ相当する。
以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
b 後者の「光源部34が発する光を透光する透光性カバー38」は、前者の「光源部が発する光を透過する透光性カバー」に相当する。
c 後者の「前記透光性カバー38の端部を覆う端部カバー40」は、前者の「前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバー」に相当する。
d 後者の「前記透光性カバー38は入射された光を出射する透光性カバー38の表面を有」することと、前者の「前記透光性カバーは、入射された光を上方に出射する発光面を有」することとは、「前記透光性カバーは、入射された光を出射する発光面を有」する点で、共通する。
e 後者の「透光性カバー38の表面」には、静電気等により表面に埃やチリが付着し得ることは自明であるから、透光性カバー38の表面に対して連続的な面が形成される「前記端部カバー40の周面」は前者の「掃出部」に相当する。
そうすると、後者の「前記端部カバー40は、前記透光性カバー38の表面と当接する一方側は透光性カバー38の表面に対して連続的な面が形成される前記端部カバー40の周面を有する」ことは、前者の「前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有する」ことに相当する。
f 後者の「前記透光性カバー38の長手方向に延びる縁部は、水平に配置される」ことは、前者の「透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されて」いることに相当する。
g 後者の「壁に取り付けられる照明器具10A」は、前者の「壁面に取り付けられる照明装置」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、
「光源部が発する光を透過する透光性カバーと、
前記透光性カバーの端部に隣接させて取り付けられた端部カバーと、を備え、
壁面に取り付けられる照明装置であって、
前記透光性カバーは、入射された光を出射する発光面を有し、
前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、
前記端部カバーは、前記発光面と当接する一方側は前記発光面に対して連続的な面が形成される掃出部を有する照明装置。」
である点で、一致し、以下の点で相違する。
(相違点6)
入射された光を出射する発光面に関して、本件発明1では入射された光を「上方」に出射する発光面であるのに対して、甲4発明では、照明器具10Aを壁に取り付けた際の透光性カバー38の表面から出射する光の方向が特定されていない点。
(相違点7)
掃出部に関して、本件発明1では、掃出部は、「透光性カバーから離れるにしたがって前記透光性カバーの面から上方に離れるように傾斜する傾斜面である」のに対して、甲4発明では、端部カバー40の周面が透光性カバー38の表面に対して連続的な面として形成されるものの、当該周面にかかる傾斜面は形成されていない点。
(イ)相違点についての検討
まず、新規性について検討すると、前記相違点6~7は実質的な相違点であるので、本件発明1は、甲4発明ではない。
次に、進歩性について検討するに、事案に鑑み、まず、前記相違点7について検討する。
甲4の記載において、端部カバー40の周面と透光性カバー38の表面との関係は、図1~図2に示唆されるのみである。
したがって、甲4には、透光性カバー38の表面に対して連続的な面として形成される端部カバー40の周面に対して傾斜面を形成することについては記載も示唆もされていない。
また、申立人が提出した他の証拠である甲2には、照明器具10の第2側壁242の側面242a及び第3側壁243の側面243aを、前記照明器具10の第1筐体21の前方向D21aに向かうにつれて、透光性カバーであるパネル体22が取り付けられた開口210から遠ざかるように傾斜させることについては記載されているものの、甲4発明における照明器具10Aと甲2に記載された前記照明器具10とは、前提とする照明装置としての構造が大きく異なるものであるので、甲4発明の端部カバー40に対して甲2に記載された前記照明器具10の前記第2側壁242の前記側面242a及び前記第3側壁243の前記側面243aの構成を採用する動機はない。
そうすると、甲4発明において、前記相違点7に係る本件発明1の構成を採ることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明1が、甲4発明ではなく、また、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3~5についても、甲4発明ではなく、また、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立人の主張について
申立人は、令和6年8月28日に提出した意見書において、サポート要件違反及び明確性要件違反、並びに進歩性欠如について、意見を述べているので、以下では、その点について検討する。
(1)サポート要件違反及び明確性要件違反の主張について
意見書におけるサポート要件違反及び明確性要件違反に関する申立人の主張は、要するに、
ア 本件訂正後の請求項1には、「前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、」との記載があるが、当該記載における「水平」とは、「傾きを有さないさま」を意味するものであるところ、「縁部」が何に対して傾きを有さないかが特定されていない点、
イ 本件特許の図4では、上方透光性カバー230の図面左右両端部が前記「縁部」に相当すると考えられるが、当該部分は、上下方向に対してやや傾きを有するように延びており、前記記載と矛盾している点、
ウ 本件特許の明細書には、「器具本体部100は、壁面に取り付けられる取付板110…を有する。」(段落【0008】)との記載はあるものの、壁面と水平との位置関係を示す記載は、本件特許の明細書および図面には開示されていない点
を挙げ、前記ア~ウを理由として、本件訂正後の請求項1は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、明確でもないので、本件発明1、3~5は、サポート要件及び明確性要件を満たしていないというものである。
まず、前記アについてであるが、一般に水平とは、「地球の重力と直角に交わる方向」を意味する(岩波書店 広辞苑 第六版)ので、そうすると、本件訂正後の請求項1における「前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部は、水平に配設されており、」との記載においては、「透光性カバーの長手方向に延びる縁部」が地球の重力と直角に交わる方向に沿って配設されることが明確に理解できるといえる。
また、前記イについてであるが、本件補正後の請求項1の前記記載において、「水平に配設される」のは、「透光性カバーの長手方向に延びる縁部」であるところ、前記イにおいて主張する図4における上方透光性カバー230の図面左右両端部の上下方向に延びる縁部は、「透光性カバーの長手方向に延びる縁部」ではない。
したがって、前記イにおける主張は当を得ていないものである。
最後に、前記ウについてであるが、本件特許の明細書等の段落【0008】、段落【0014】~【0015】、段落【0019】、及び図1~図4)の記載を踏まえると、「透光性カバー取付部211b、212b」に支持される「上方透光性カバー230」の長手方向に延びる縁部は、「引き紐150」が垂下する方向に対して略直交して延びること、及び「器具本体100」の「壁面に取り付けられる取付板110」であって、「点灯装置120」が取り付けられた「取付板110」の長手方向に延びる縁部が、前記「引き紐150」が垂下する方向に対して略直交する方向に延びることが示唆されているといえる(取付板110については、以下の参考図を参照のこと。)。
本件特許の図3に基づく参考図
[図:0001418209000001.jpg]
そして、一般に、引き紐を有する照明器具を壁面に配置するに際して、引き紐が垂下するような姿勢で、照明器具を配置することは、技術常識であるといえる。
そうすると、本件特許の明細書等には、「前記透光性カバーの長手方向に延びる縁部」が「水平に配設され」るように「器具本体100」が「壁面」に取り付けられることが示唆されているといえる。
以上のとおりであるから、申立人の上記主張を採用することはできない。
(2)進歩性欠如の主張について
意見書における本件発明1、3~5に対する進歩性欠如に関する主張は、要するに、本件発明1、3~5は、甲1発明と甲2に記載された照明器具10の第2側壁242の側面242a及び第3側壁243の側面243aの傾斜面に関する記載(以下「甲2記載事項」という。)から容易に想到し得たものであり、本件発明1、3~4は、甲3発明と甲2記載事項から容易に想到し得たものであり、本件発明1、3は、甲4発明と甲2記載事項から容易に想到し得たものであるということである。
しかしながら、前記2(5)ア(イ)で述べたように、甲1発明において、側板凹部76の底面76aを部材凹部62に接した側板71の裏面から表側面に向かうに従い次第に上がるような傾斜面とすることには阻害要因があるので、本件発明1が甲1発明と甲2記載事項から容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、前記2(7)ア(イ)及び前記2(8)ア(イ)で述べたように、甲3発明における発光装置1、甲4発明における照明器具10Aと、甲2に記載された照明器具10とは、前提とする照明装置としての構造が大きく異なるものであり、甲3発明又は甲4発明において甲2記載事項における傾斜面に関する構成を採用することに動機がないので、本件発明1が甲3発明又は甲4発明と甲2記載事項から容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件発明3~5は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明1が、甲1発明、甲3発明、又は甲4発明、及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものともいえない以上、本件発明3~5についても、甲1発明、甲3発明、又は甲4発明、及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものともいえない。
よって、上記申立人の主張を採用することはできない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、3~5は、明確である。
また、本件発明1、3~5は、甲1発明、甲2発明、甲3発明、又は甲4発明ではなく、また、甲1発明、甲2発明、甲3発明、又は甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、以下の特許異議申立理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
1 申立理由
(1)請求項5に対する明確性要件違反[特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)]
(2)請求項5に対するサポート要件違反[特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)]。
2 申立理由についての判断
(1)申立理由の内容
申立理由(1)、(2)の内容は、要するに、請求項5には、「前記端部カバーは、前記透光性カバー取付部と略面一となる外郭部を有する」との記載があるが、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、当該記載に関して、何ら記載されておらず、また、端部カバーの外郭部が端部カバーのどの領域を指しているのか、及び端部カバーのどの領域が、透光性カバー取付部のどの領域と面一になっているのかについて、何ら説明がなく不明であるので、本件発明5は、サポート要件を満たしておらず、また、明確でないというものである
(2)検討
ア 明確性要件について
本件訂正後の請求項5には、「前記端部カバーは、前記透光性カバー取付部と略面一となる外郭部を有する」との記載があるところ、外郭とは、「外部を囲むかこい」を意味する(岩波書店 広辞苑第六版)ものである。
そうすると、請求項5の記載における「端部カバー」の「外郭部」とは、「端部カバー」の外部を囲むかこいの部分、すなわち、「端部カバー」の外周面であるといえる。
一方、請求項5は、請求項4を引用する請求項であるところ、請求項4の記載を踏まえると、「透光性カバー取付部」は、「端部カバーが取り付けられ」る「灯具本体部」における「透光性カバーの発光面」の「長辺を両側から挟み込むように支持する」部分であるといえる。
したがって、請求項5の記載は、「端部カバー」は、「灯具本体部」における「透光性カバーの発光面」の「長辺を両側から挟み込むように支持する」部分と「略面一となる外周面を有」しているといえ、その記載において、「端部カバー」の「外郭」と「透光性カバー取付部」との関係は、明確であるといえる。
また、本件特許の明細書等の記載をみても、図4及び図6~図9の記載から、上方透光性カバー230の長辺を支持する部分を有している上方係合部213aの外表面と端部カバー260の外周面とが略面一であることが看取できるので、本件特許の明細書等と請求項5の記載との間に矛盾があるともいえない。
したがって、請求項5の記載は、明確である。
イ サポート要件について
前記3で述べたように、請求項5の記載における「端部カバー」の「外郭部」とは、「端部カバー」の外周面であるといえる。
そして、本件特許の明細書等の図4及び図6~図9から、上方透光性カバー230の長辺を支持する部分を有している上方係合部213aの外表面と端部カバー260の外周面とが略面一であることが看取できる。
そうすると、請求項5の記載は、本件特許の明細書等の発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
また、本件特許の課題は、本件特許の明細書等の段落【0004】に記載された「汎用性の高い簡易な構造で、上方を照射する照明装置における上方透光性カバーの清掃性を向上させること」である。
そして、当該課題の解決に関しては、本件特許の明細書等の段落【0021】~【0032】及び図6~図8に記載されているところ、前記課題の解決に必要な「掃出部」と「上方透光性カバー」との関係については、請求項5が引用する請求項1に記載されている。
そうすると、請求項5は、その記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、請求項5の記載は、サポート要件を満たしている。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明5は、明確であり、また、本件発明5は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、申立理由(1)~(2)は、理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、3~5に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項1、3~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2、6に係る特許に対する特許異議の申立ては、本件訂正により請求項2、6が削除されたことにより、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700921