特許異議申立
2021-701045
放電ランプおよび放電ランプの製造方法
- 審判番号
- 2021-701045
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-229471
- 登録番号
- 6929763
- 請求日
- 2021年11月04日
- 審決日
- 2023年03月30日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社オーク製作所
- 【権利者代理人】神崎 真
- 【権利者代理人】松浦 孝
- 【権利者代理人】小倉 洋樹
- 【異議申立人】清水 真美子
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 松川 直樹
- 分類
- P1652.113-ZDA(H01J) / P1652.121-ZDA(H01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6929763号発明「放電ランプおよび放電ランプの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6929763号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7について訂正することを認める。
特許第6929763号の請求項4に係る特許を取り消す。
特許第6929763号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
手続の経緯
特許第6929763号の請求項1、4に係る特許についての出願は、平成29年11月29日に出願され、令和3年8月13日にその特許権の設定登録がされ、令和3年9月1日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 3年11月 4日 :特許異議申立人清水真美子(以下「申立人
」という。)による請求項1、4に係る特
許に対する特許異議の申立て
令和 4年 5月 9日付け:取消理由通知書
令和 4年 7月14日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提
出
令和 4年 9月 1日 :申立人による意見書の提出
令和 4年10月21日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 4年12月 9日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提
出
令和 5年 1月20日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「発光管内の電極を支持する電極支持棒と、前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられていることを特徴とする放電ランプ。」
と記載されているのを、
「発光管内の電極を支持する電極支持棒と、前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、前記石英管の端面が、前記円板箔の電極側側面および金属箔と接し、前記円板部材と接しておらず、前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられていることを特徴とする放電ランプ。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記円板箔の外径が、前記円板部材の外径より小さく、前記空隙が、前記円板部材と前記石英管との間に形成された空間部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。」
と記載されているのを、
「発光管内の電極を支持する電極支持棒と、前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、前記円板箔の外径が、前記円板部材の外径より小さく、前記空隙が、前記円板部材と前記石英管との間に形成された空間部分を含むことを特徴とする放電ランプ。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記空隙が、前記円板箔と前記石英管との間に形成された空間部分を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の放電ランプ。」
と記載されているのを、
「発光管内の電極を支持する電極支持棒と、前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、前記空隙が、前記円板箔と前記石英管との間に形成された空間部分を含むことを特徴とする放電ランプ。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「前記金属箔の内面側に当接して前記金属箔を支持する柱状石英部材とを備え、前記円板部材の外径が、前記柱状石英部材の前記円板部材側端面の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の放電ランプ。」
と記載されているのを、
「発光管内の電極を支持し、封止管内において、ランプ軸に沿って配置される電極支持棒と、前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材であって、前記電極支持棒に対して同軸的に配置される円板部材と、前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、前記空隙が、前記円板箔と前記石英管との間に形成された空間部分を含むことを特徴とする放電ランプ。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「前記金属箔の内面側に当接して前記金属箔を支持する柱状石英部材とを備え、前記金属箔は、前記円板部材の前記柱状石英部材側の側面と接続され、前記金属箔が、前記円板部材の外周面よりランプ径方向外側で屈曲していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の放電ランプ。」
と記載されているのを、
「発光管内の電極を支持する電極支持棒と、前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、前記金属箔の内面側に当接して前記金属箔を支持する柱状石英部材を備え、前記金属箔は、前記円板部材の前記柱状石英部材側の側面と接続され、前記金属箔が、前記円板部材の外周面よりランプ径方向外側で屈曲していることを特徴とする放電ランプ。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「前記金属箔の少なくとも一部が、ランプ軸方向に関して、前記円板部材より前記石英管側に突出していることを特徴とする請求項5に記載の放電ランプ。」
と記載されているのを、
「発光管内の電極を支持する電極支持棒と、前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、前記金属箔の内面側に当接して前記金属箔を支持する柱状石英部材を備え、前記金属箔は、前記円板部材の前記柱状石英部材側の側面と接続され、前記金属箔が、前記円板部材の外周面よりランプ径方向外側で屈曲し、前記金属箔の少なくとも一部が、ランプ軸方向に関して、前記円板部材より前記石英管側に突出していることを特徴とする放電ランプ。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「前記石英管の円板部材側端部には、前記円板部材に向けて同軸状に突出した突出部が設けられ、前記突出部の外径が、前記円板箔の外径より小さいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかにに記載の放電ランプ。」
と記載されているのを、
「発光管内の電極を支持する電極支持棒と、前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、前記石英管の円板部材側端部には、前記円板部材に向けて同軸状に突出した突出部が設けられ、前記突出部の外径が、前記円板箔の外径より小さいことを特徴とする放電ランプ。」
に訂正する。
なお、訂正前の請求項1ないし7は、請求項2ないし7が請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1ないし7について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、石英管について、「前記石英管の端面が、前記円板箔の電極側側面および金属箔と接し、前記円板部材と接しておらず、」と限定する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないか否かについて
訂正事項1は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1について、本件特許の登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0024】には「隙間Sの形成により、ガラス管24の端面24Fは、円板箔34および金属箔33の屈曲部33Bと接する一方、金属リング32と接しない。」と記載されている。
したがって、訂正事項1は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1を引用する本件訂正前の請求項2を独立形式の請求項にするための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないか否かについて
訂正事項2は、上記アで述べたとおり、独立形式の請求項に変更するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2の記載を独立形式の請求項に変更するものであるから、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1または2を引用する本件訂正前の請求項3を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項にするための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないか否かについて
訂正事項3は、上記アで述べたとおり、請求項1または2を引用する請求項3を、請求項1を引用する形で独立形式の請求項に変更するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3の記載を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項に変更するものであるから、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
(i)本件訂正前の請求項1乃至3のいずれか1項を引用する本件訂正前の請求項4を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項にするための訂正。
(ii)本件訂正前の請求項1及び4の電極支持棒について、発光管内の電極を支持し「、封止管内において、ランプ軸に沿って配置され」ると限定する訂正。
(iii)本件訂正前の請求項1及び4の導電性の円板部材について、導電性の円板部材「であって、前記電極支持棒に対して同軸的に配置される円板部材」と限定する訂正。
(iV)本件訂正前の請求項1及び4の空間部分について、「前記空間部分は、ランプ軸を含むランプ軸方向に沿った断面において、非矩形状であって、」と限定する訂正。
(V)本件訂正前の請求項4において、柱状石英部材と他の構成要件とが併記されていないのに「柱状石英部材とを」と誤って記載されていたものを、「柱状石英部材を」とする訂正。
上記(i)の訂正は、特許請求の範囲を減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、上記(ii)~上記(iV)の訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであり、上記(V)の訂正は、誤記を訂正するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないか否かについて
訂正事項4は、上記アで述べたとおり、本件訂正前の請求項1乃至3のいずれか1項を引用する本件訂正前の請求項4を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項に変更し、電極支持棒の配置、導電性の円板部材の配置、及び空間部分の形状について限定するものであり、また、誤記を訂正するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(i)の訂正について、本件訂正前の請求項4の記載を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項に変更するものであるから、新たな技術的事項が導入されるものではない。
上記(ii)の訂正について、明細書等の【0020】には「封止管20内では、電極支持棒22が電極軸(ランプ軸)Eに沿って配置されている。」が記載されている。
上記(iii)の訂正について、明細書等の【0020】には「電極支持棒22は、ガラス管24、ガラス部材26により電極軸E上で保持される。」、【0021】には「電極支持棒22は、円板箔34、金属リング32、円板箔36に挿通され、金属リング32は電極支持棒22に溶接されている。」、「【0022】には「封止管20内には、所定間隔を置いて金属製のリード棒(図示せず)が同軸的に配置されている。」が記載され、図2には、電極支持棒22に対して同軸的に配置される金属リング32が、見て取れる。
上記(iV)の訂正について
明細書等の【0028】には「電極支持棒22を含めたマウント部品20Aを封止管20に挿入し、加熱処理を行うと、封止管20がガラス管24、ガラス部材26と溶着する。ガラス管24の端面24Fは加熱、溶着過程において加熱変形し、複雑な凹凸状端面に変わる。そして隙間Sが形成される。このような隙間Sは、突出部24Sを設けたガラス管24と、金属リング32の外径D2をガラス部材26の端面26Nの外径D3よりも小さくしていることに基づいている。特に、柱状突出部24Sを形成し、突出部24Sの外径D1を、円板箔34の外径D4より小さくして、ガラス管端面24Fより金属リング側に大きな空間を形成することによって、ガラス管24が加熱変形しても隙間Sが形成される。」、【0030】には「隙間Sの形成により、封止後の金属リング32は、外周面32F付近でガラス管24と接触せず、熱膨張率の差に起因するクラック発生を防ぐことができる。金属リング32の外周面32Fから径方向に向けて隙間部分S1が形成されているため、加熱処理、ランプ点灯/消灯時に金属リング32が径方向に膨張、収縮しても、ガラス管24の端面24Fがそれに引きずられるような形で剥がれることがない。」と記載され、図2には、ガラス管24の端面24F、金属リング32及び金属箔33に囲まれた封止管の隙間部分S1が把握できる。
そうすると、ガラス管24の端面24Fは加熱、溶着過程において加熱変形し、複雑な凹凸状端面であることから、封止管の隙間部分S1を囲むガラス管24が複雑な凹凸状端面となり、封止官の隙間部分S1は、非矩形状になっているといえる。
以上から、円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分は、ランプ軸を含むランプ軸方向に沿った断面において、非矩形状である。
上記(V)の訂正について、誤記を訂正するものなので、新たな技術的事項が導入されるものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
(i)本件訂正前の請求項1乃至4のいずれかを引用する本件訂正前の請求項5を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項にするための訂正。
(ii)本件訂正前の請求項5において、柱状石英部材と他の構成要件とが併記されていないのに「柱状石英部材とを」と誤って記載されていたものを、「柱状石英部材を」とする訂正。
したがって訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないか否かについて
訂正事項5は、上記アで述べたとおり、本件訂正前の請求項1乃至4を引用する本件訂正前の請求項5を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項に変更し、また、誤記を訂正するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項5は、本件訂正前の請求項5の記載を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項に変更し、誤記を訂正するものであるから、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定に適合するものである。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
(i)本件訂正前の訂正事項6は、本件訂正前の請求項1乃至4のいずれかを引用する本件訂正前の請求項5を引用する本件訂正前の請求項6を、本件訂正前の請求項1を引用する形の本件訂正前の請求項5を含める形で独立形式の請求項にするための訂正。
(ii)本件訂正前の請求項5を引用する本件訂正前の請求項6において、柱状石英部材と他の構成要件とが併記されていないのに「柱状石英部材とを」間違って記載されていたものを、「柱状石英部材を」と誤記を訂正する訂正。
したがって、訂正事項6は、特許第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないか否かについて
訂正事項6は、上記アで述べたとおり、本件訂正前の請求項1乃至4のいずれかを引用する本件訂正前の請求項5を引用する本件訂正前の請求項6を、本件訂正前の請求項1を引用する形の本件訂正前の請求項5を含める形で独立形式の請求項に変更し、また、誤記を訂正するものでり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項6は、本件訂正前の請求項1乃至4のいずれかを引用する本件訂正前の請求項5を引用する本件訂正前の請求項6を、本件訂正前の請求項1を引用する形の本件訂正前の請求項5を含める形で独立形式の請求項に変更し、誤記を訂正するものであるから、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定に適合するものである。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項1乃至6のいずれかを引用する本件訂正前の請求項7を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項にするための訂正であり、特許第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないか否かについて
訂正事項7は、上記アで述べたとおり、本件訂正前の請求項1乃至6のいずれかを引用する本件訂正前の請求項7を、本件訂正前の請求項1を引用する形で独立形式の請求項に変更するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項7は、本件訂正前の請求項1乃至6のいずれかを引用する本件訂正前の請求項7を、本件訂正前の請求項1を引用する形の本件訂正前の請求項5を含める形で独立形式の請求項に変更するものであるから、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定に適合するものである。
(8)独立特許要件について
訂正事項1、3、7は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものを含んでおり、訂正事項4~6は、「特許請求の範囲の減縮」及び「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものを含んでいるところ、請求項3、5~7については特許異議の申立てがなされていないことから、請求項3、5~7に係る訂正事項3、5~7に関しては、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。
しかしながら、請求項3で特定する「前記空隙が、前記円板箔と前記石英管との間に形成された空間部分を含むこと」、請求項5及び6で特定する「前記金属箔は、前記円板部材の前記柱状石英部材側の側面と接続され」ていること、請求項6で特定する「前記金属箔の少なくとも一部が、ランプ軸方向に関して、前記円板部材より前記石英管側に突出していること」、及び請求項7で特定する「前記石英管の円板部材側端部には、前記円板部材に向けて同軸状に突出した突出部が設けられ、前記突出部の外径が、前記円板箔の外径より小さいこと」については、申立人が提出した甲第1号証に記載も示唆もなく、他に証拠を発見しない。
そして、請求項3、5~7に係る発明について、新規性や進歩性以外の独立特許要件違反となる理由も発見しない。
よって、請求項3、5~7に係る訂正事項3、5~7は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するといえる。
3 小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、さらに、同条第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定にも適合するので、当該訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし8に係る発明(以下順に「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、下記のとおりのものである。
「【請求項1】
発光管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、
前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、
前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、
前記石英管の端面が、前記円板箔の電極側側面および金属箔と接し、前記円板部材と接しておらず、
前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
発光管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、
前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、
前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、
前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、
前記円板箔の外径が、前記円板部材の外径より小さく、
前記空隙が、前記円板部材と前記石英管との間に形成された空間部分を含むことを特徴とする放電ランプ。
【請求項3】
発光管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、
前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、
前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、
前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、
前記空隙が、前記円板箔と前記石英管との間に形成された空間部分を含むことを特徴とする放電ランプ。
【請求項4】
発光管内の電極を支持し、封止管内において、ランプ軸に沿って配置される電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、
前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材であって、前記電極支持棒に対して同軸的に配置される円板部材と、
前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、
前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、
前記空間部分は、ランプ軸を含むランプ軸方向に沿った断面において、非矩形状であって、
前記金属箔の内面側に当接して前記金属箔を支持する柱状石英部材を備え、
前記円板部材の外径が、前記柱状石英部材の前記円板部材側端面の外径よりも小さいことを特徴とする放電ランプ。
【請求項5】
発光管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、
前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、
前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、
前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、
前記金属箔の内面側に当接して前記金属箔を支持する柱状石英部材を備え、
前記金属箔は、前記円板部材の前記柱状石英部材側の側面と接続され、
前記金属箔が、前記円板部材の外周面よりランプ径方向外側で屈曲していることを特徴とする放電ランプ。
【請求項6】
発光管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、
前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、
前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、
前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、
前記金属箔の内面側に当接して前記金属箔を支持する柱状石英部材を備え、
前記金属箔は、前記円板部材の前記柱状石英部材側の側面と接続され、
前記金属箔が、前記円板部材の外周面よりランプ径方向外側で屈曲し、
前記金属箔の少なくとも一部が、ランプ軸方向に関して、前記円板部材より前記石英管側に突出していることを特徴とする放電ランプ。
【請求項7】
発光管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、
前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、
前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、
前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、
前記石英管の円板部材側端部には、前記円板部材に向けて同軸状に突出した突出部が設けられ、
前記突出部の外径が、前記円板箔の外径より小さいことを特徴とする放電ランプ。
【請求項8】
石英管の端部において、同軸状の突出部を設け、
前記石英管と柱状石英部材との間に円板箔、円板部材を設置し、電極支持棒を含めたマウント部品を作製し、
前記マウント部品を封止管内に挿入し、加熱処理によって前記封止管を縮径する
ことを特徴とする放電ランプの製造方法。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
1 請求項1、4に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した令和4年10月21日付け取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
2 本件特許の請求項1、4に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、
または、本件特許の請求項1,4に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 引用文献等一覧
甲第1号証:特開2008-152993号公報
(以下、甲第1号証を「甲1」と略して記載する。)
4 なお、上記取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由はない。
第5 当審の判断
当審は、本件特許の請求項4に係る特許は、取消理由によって、特許を取り消すと判断する。
さらに、本件特許の請求項1に係る特許については、取消理由によって、これらの特許を取り消すことができないと判断する。
以下、詳述する。
1 引用文献の記載事項
甲1には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(1)「【請求項1】
密封体を内包する筒状の封止管部を両端に有する透光性封体内に前記両端の密封体にそれぞれ支持される一対の電極を有する放電ランプであって、
少なくとも陽電極または陰電極のいずれかは、前記電極から延設される電極リード棒の端部が、石英板および外周に複数の導電箔を有する集電板を貫通して前記密封体に挿入され、
前記集電板は、下記式で示される直径(r2)を有する集電板円盤部と、該集電板円盤部の外周に設けられた複数の集電板片部とからなり、
前記導電箔は、前記集電板片部から延設され、かつ
前記導電箔は前記密封体を長軸方向に被覆することを特徴とする、放電ランプ。
【数1】
[図:0001400412000001.jpg]
」
「【請求項4】
前記集電板と前記密封体との間に、更に、導電体を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の放電ランプ。」
「【請求項7】
前記導電箔は、モリブデンまたは、モリブデンとタンタル、タングステン、モリブデン、ルテニウム、レニウムまたはイットリウムとの合金である、請求項1~6のいずれかに記載の放電ランプ。」
「【0024】
本発明の第一は、密封体を内包する筒状の封止管部を両端に有する透光性封体内に前記両端の密封体にそれぞれ支持される一対の電極を有する放電ランプであって、
少なくとも陽電極または陰電極のいずれかは、前記電極から延設される電極リード棒の端部が、石英板および外周に複数の導電箔を有する集電板を貫通して前記密封体に挿入され、
前記集電板は、下記式で示される直径(r2)を有する集電板円盤部と、該集電板円盤部の外周に設けられた複数の集電板片部とからなり、
前記導電箔は、前記集電板片部から延設され、かつ
前記導電箔は前記密封体を長軸方向に被覆することを特徴とする、放電ランプである。」
「【0026】
図1において、10は放電ランプ、11は透光性封体、11aは発光管部、11bは封止管部、20は陽電極、30は陰電極、40は密封体、50は外部端子、60は電極リード棒、65は導入線、70は石英板、80は導電体、85は集電用ディスク、90は集電板、95は集電板の導電箔を示す。」
「【0029】
なお、図1では、陽電極(20)の電極リード棒(60)のみが上記構成となっているが、陰電極(30)側が上記構成となっていてもよく、陽電極(20)および陰電極(30)の双方が上記構成となっていてもよい。なお、図2では、陰電極(30)側の封止管部(11b)には、前記電極側から順に石英板(70)および導電体(80)が配設され、これらはいずれも円盤状であり、その中央部で電極リード棒(60)を貫通させる態様を示す。」
「【0031】
石英板(70)は、その中央部に電極リード棒(60)を貫通させる貫通孔を有し、該貫通孔は、電極リード棒(60)の熱膨張による管径の増加に対応できるように、および隣接する集電板(90)の熱膨張による電極方向への移動に対応できるように、熱膨張の際に電極リード棒(60)の管径と同じかそれよりも大きくなるように調整されている。」
「【0040】
集電板(90)における集電板円盤部(90a)や集電板片部(90b)の厚みは、50~1000μmであることが好ましく、より好ましくは100~300μmである。50μmより薄いと、強度を十分確保することができず、一方、1000μmより厚くても流せる電流量が増大せず、むしろ重量が増加し、かつ折り曲げ操作が困難となり、不利となる。なお、集電板円盤部(90a)と集電板片部(90b)の厚みは、同一であっても異なっていてもよい。」
「【0050】
図3では、集電板円盤部(90a)、集電板片部(90b)、導電箔(95)の順に溶接される態様を示すが、本発明はこれに限定されるものでない。」
「【0056】
導電体(80)は、その中央部に電極リード棒(60)を貫通させる貫通孔(81)を有する。該貫通孔(81)は、電極リード棒(60)の熱膨張による管径の増加に対応できるように、電極リード棒(60)の外径よりも大きい孔径の貫通孔(81となっている。」
「【0060】
本発明では、図6(c)に示すように、密封体(40)は、その電極リード棒挿入側の端面に導電体(80)が隣接され、更に電極側に前記集電板円盤部(90a)が隣接され、前記密封体前部端面の外周は前記集電板片部(90b)で被覆され、その長軸方向は、延設される導電箔(95)によって被覆される。
【0061】
導電体(80)を併用する場合は、図6(b)に示すように、あらかじめ導電体(80)と集電板円盤部(90a)と導電体(80)とを溶接などで一体化し、集電板円盤部(90a)と集電板片部(90b)との境界部で折り曲げる、これを密封体(40)に嵌合させればよい。なお、前記集電板(90)は前記した所定の厚みを有するため、図6(b)に示すように、集電板片部(90b)が隣接される密封体(40)の端面外周部を、集電板片部(90b)の厚み分だけ後方より薄くすれば、集電板片部(90b)と導電箔(95)とを密封体(40)に沿わせて被覆する場合に、封止管部(11b)との接触部分の厚みを均一にすることができる。上記によれば、図6(b)に示すように、集電板(90)と導電体(80)と導電箔(95)とが一体となり、図6(c)に示すような態様で密封体(40)に装着される。
【0062】
本発明で使用する導電体(80)の直径(r3)は、下記式で示される長さであることが好ましい。
【0063】
【数3】
[図:0001400412000002.jpg]
r3=r1×0.5を下回ると、集電板(90)に対する支持部材としての機能が十分でない。また、集電板(90)と溶接などによって導電性を確保しつつ固定する場合、溶接面積が小さくなるため、大電流を維持することが困難となる場合がある。一方、r3=r1×0・98を超えると、熱膨張時に封止管部(11b)の内径を超える場合があり、封止管部(11b)を破損する恐れがある。より好ましくは、r3=r1×(0.8~0・98)である。この点を詳記すると以下のようになる。」
「【0065】
【数4】
[図:0001400412000003.jpg]
しかしながら、放電ランプの点灯時には熱膨張によって好適な間隙となるが、放電ランプの製造時には熱膨張がないため、この範囲で導電体(80)が傾く可能性がある。このため、傾きによる引っ張りによって導電箔(95)が切断される。しかしながら、このような場合でも、導電体(80)の直径r3を上記の範囲にすると、集電板円盤部(90a)の直径は密封体(40)の端面直径(r1)以上であるため、密封体(40)の直径(r1)と導電体(80)の直径(r3)との差(r1-r3=r1×(0.2~0.02))以上の間隙(L3)を導電体(80)の外周と集電板円盤部(90a)との間隙に設けることができ、この間隙(L3)によって、たとえ電極の重量によって導電体(80)や集電板(90)が傾斜した場合でも、導電箔(95)の切断を効果的に防止することができる。」
「【0069】
本発明では、電極リード棒(60)の端部は密封体(40)に挿入され、かつ密封体(40)に接触して導電体(80)が配設されている。この導電体(80)は、その中央部で電極リード棒(60)を貫通させているが、該電極リード棒(60)は導電体(80)の貫通孔(81)内で溶接固定などによって固定されている。このように電極リード棒(60)が導電体(80)と溶着され、かつ電極側から、石英板(70)を経て密封体(40)に挿入されることで、石英板(70)との固定をより確実にでき、電極リード棒(60)の動きを抑制して導電箔(95)の切断を防止することができる。」
「【0079】
(10)製造方法
本発明の放電ランプは、上記構成であればその製造方法に限定はない。また、本発明の放電ランプは、封止管部において電極リード棒が上記構成によって固定される以外は、従前のいずれの態様であってもよい。例えば、発光管部(11a)と封止管部(11b)とからなる透光性封体(11)は、石英ガラスなど従来公知の材料にて構成され、陽電極(20)および陰電極(30)は放電に適した材料にて形成され、通常タングステンなどの高融点の金属にて形成される。また、電極リード棒(60)は導電性材料にて形成され、通常タングステンにて形成される。密封体(40)は透光性封体(11)と膨張率が近く、かつ、密閉に適した材料にて形成され、通常、石英ガラスにて形成される。集電用ディスク(85)は導電性材料にて形成され、通常モリブデンにて形成される。導入線(65)は従来公知の導電性材料にて構成される。」
「【0085】
本発明の放電ランプは、石英板(70)を封止管部(11b)に固定するが、両者は材質が同じであるから熱融着が容易である。また、密封体(40)と石英板(70)との間に、L2で示される間隙を有するため、熱膨張による封止管部の破損を防止することができる。」
図1、図6、及び図7は以下のとおりである。
図6及び図7から、石英板(70)と導電体(80)との間に集電板円盤部(90a)が配置されることが、見て取れる。また、【0065】を参照しつつ図7(b)を見ると、導電体(80)が傾斜したものが、把握できる。
【図1】
[図:0001400412000004.jpg]
【図6】
[図:0001400412000005.jpg]
【図7】
[図:0001400412000006.jpg]
(2)したがって、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(参考までに、甲1発明の認定に用いた段落等の段落番号等を括弧書きに記載する。)。
「密封体(40)を内包する筒状の封止管部(11b)を両端に有する透光性封体(11)内に前記両端の密封体(40)にそれぞれ支持される一対の電極を有する放電ランプ(10)であって、
少なくとも陽電極または陰電極のいずれかは、前記電極から延設される電極リード棒(60)の端部が、石英板(70)および外周に複数の導電箔(95)を有する集電板(90)を貫通して前記密封体(40)に挿入され、(【0024】、【0026】)
石英板(70)は、その中央部に電極リード棒(60)を貫通させる貫通孔を有し、(【0031】)
石英板(70)を封止管部(11b)に固定するが、両者は材質が同じであるから熱融着が容易であり、(【0085】)
電極側から順に石英板(70)および導電体(80)が配設され、これらはいずれも円盤状であり、(請求項4、【0029】)
導電体(80)は、その中央部に電極リード棒(60)を貫通させる貫通孔(81)を有し、(【0056】)
集電板円盤部(90a)、集電板片部(90b)、導電箔(95)の順に溶接され、(【0050】)
集電板円盤部(90a)と導電体(80)とを溶接で一体化し、(【0061】)
電極リード棒(60)が導電体(80)と溶着され、(【0069】)
導電箔は、モリブデンまたは、モリブデンとタンタル、タングステン、モリブデン、ルテニウム、レニウムまたはイットリウムとの合金であり、(請求項7)
石英板(70)と導電体(80)との間に集電板円盤部(90a)が配置され、(図6及び図7)
集電板円盤部(90a)や集電板片部(90b)の厚みは、50~1000μmであり、(【0040】)
密封体(40)の直径(r1)と導電体(80)の直径(r3)との差(r1-r3=r1×(0.2~0.02))以上の間隙(L3)を導電体(80)の外周と集電板円盤部(90a)との間隙に設けることができ、導電体(80)が傾斜したものであり、(【0063】、【0065】及び図7(b))
密封体(40)は石英ガラスにて形成され、(【0079】)
密封体(40)の長軸方向は、延設される導電箔(95)によって被覆される(【0060】)
放電ランプ(10)。(【0024】、【0026】)」
2 理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)甲1発明の「透光性封体(11)」は、本件発明1の「発光管」に、
甲1発明の「一対の電極」は、本件発明1の「電極」に、
甲1発明の「電極リード棒(60)」は、本件発明1の「電極支持棒」に、
甲1発明の「封止管部(11b)」は、本件発明1の「封止管」に、
甲1発明の「石英板(70)」は、本件発明1の「石英管」に、
甲1発明の「『モリブデンまたは、モリブデンとタンタル、タングステン、モリブデン、ルテニウム、レニウムまたはイットリウムとの合金であ』る『導電箔(95)』」は、本件発明1の「金属箔」に、
甲1発明の「『円盤状』の『導電体(80)』」は、本件発明1の「導電性の円板部材」に、
甲1発明の「『厚みは、50~1000μmであ』る『集電板円盤部(90a)』」は、本件発明1の「円板箔」に、
甲1発明の「放電ランプ(10)」は、本件発明1の「放電ランプ」に、
それぞれ相当する。
(イ)本件発明1の「発光管内の電極を支持する電極支持棒」の構成について
甲1発明は「密封体(40)を内包する筒状の封止管部(11b)を両端に有する透光性封体(11)内に前記両端の密封体(40)にそれぞれ支持される一対の電極を有する放電ランプ(10)であって、少なくとも陽電極または陰電極のいずれかは、前記電極から延設される電極リード棒(60)の端部が、石英板(70)および外周に複数の導電箔(95)を有する集電板(90)を貫通して前記密封体(40)に挿入され」ていることから、電極リード棒(60)は、透光性封体(11)内の電極を支持しているといえる。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(ウ)本件発明1の「前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管」の構成について
甲1発明の「石英板(70)は、その中央部に電極リード棒(60)を貫通させる貫通孔を有し、石英板(70)を封止管部(11b)に固定するが、両者は材質が同じであるから熱融着が容易であ」ることから、石英板(70)は、電極リード棒(60)を貫通させ、封止管部(11b)に熱融着され固定するものといえる。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(エ)本件発明1の「前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材」の構成について
甲1発明は「電極側から順に石英板(70)および導電体(80)が配設され、これらはいずれも円盤状であり、集電板円盤部(90a)、集電板片部(90b)、導電箔(95)の順に溶接され、導電体(80)と集電板円盤部(90a)と導電体(80)とを溶接で一体化し、電極リード棒(60)が導電体(80)と溶着され、前記導電箔は、モリブデンまたは、モリブデンとタンタル、タングステン、モリブデン、ルテニウム、レニウムまたはイットリウムとの合金であり、石英板(70)と導電体(80)との間に集電板円盤部(90a)が配置され」ていることから、電極側から順に石英板(70)および導電体(80)が配設されており、導電体(80)は、電極リード棒(60)と導電箔(95)とを導電可能に接続しているものといえる。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(オ)本件発明1の「前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔」の構成について
甲1発明の「集電板円盤部(90a)が」「石英板(70)と導電体(80)との間に」「配置され」ている。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(カ)本件発明1の「前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられている」の構成について
甲1発明は「密封体(40)の直径(r1)と導電体(80)の直径(r3)との差(r1-r3=r1×(0.2~0.02))以上の間隙(L3)を導電体(80)の外周と集電板円盤部(90a)との間隙に設けることができ」ることから、導電体(80)の外周に間隙(L3)を設けているといえる。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(キ)以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
「発光管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、
前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材と、
前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、
前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられている放電ランプ。」
【相違点1】
本件発明1は石英管の端面が、円板箔の電極側側面および金属箔と接し、円板部材と接していないのに対し、甲1発明の「石英板(70)」は、「『厚みは、50~1000μmであ』る『集電板円盤部(90a)』」、「『モリブデンまたは、モリブデンとタンタル、タングステン、モリブデン、ルテニウム、レニウムまたはイットリウムとの合金であ』る『導電箔(95)』」及び「『円盤状』の『導電体(80)』」に接していない点。
イ 判断
(ア)甲1の【0015】には、発明の解決しようとする課題として「本発明の目的は、耐久性に優れ、ランプの大型化、大電流に対応できる放電ランプを提供することを目的とする。」と記載され、甲1の【0064】には「本発明の放電ランプは、図7に模式的に示すように、熱膨張による封止管部(11b)の破損を防止するため、石英板(70)と密封体(40)との間にL2で示される間隙が設けられている。この間隙(L2)は、導電体(80)の厚さをDとした場合に下記式で示される長さであり、これによって導電体(80)などの熱膨張による封止管部(11b)の破損を防止するものである。」と記載され、甲1の【0085】には「本発明の放電ランプは、石英板(70)を封止管部(11b)に固定するが、両者は材質が同じであるから熱融着が容易である。また、密封体(40)と石英板(70)との間に、L2で示される間隙を有するため、熱膨張による封止管部の破損を防止することができる。」と記載されている。
(イ)このことから、甲1は、導電体(80)などの熱膨張による封止管部(11b)の破損を防止するものである間隙(L2)を設けることからも、耐久性に優れるという発明の解決しようとする課題を解決しているものといえ、集電板円盤部(90a)及び導電箔(95)も熱膨張するものなので、石英板(70)と所定の隙間を設けて、耐久性に優れるものとしているといえる。
(ウ)そうすると、甲1発明の「石英板(70)」が、「『厚みは、50~1000μmであ』る『集電板円盤部(90a)』」及び「「『モリブデンまたは、モリブデンとタンタル、タングステン、モリブデン、ルテニウム、レニウムまたはイットリウムとの合金であ』る『導電箔(95)』」と接するようにすることは、耐久性に優れないものとすることであり、そのようにすることは阻害要因があることから、当業者が適宜なし得たことではない。
(エ)したがって、本件発明1は甲1発明ではなく、また、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明4について
ア 対比
(ア)甲1発明の「透光性封体(11)」は、本件発明4の「発光管」に、
甲1発明の「一対の電極」は、本件発明4の「電極」に、
甲1発明の「電極リード棒(60)」は、本件発明4の「電極支持棒」に、
甲1発明の「封止管部(11b)」は、本件発明4の「封止管」に、
甲1発明の「石英板(70)」は、本件発明4の「石英管」に、
甲1発明の「『モリブデンまたは、モリブデンとタンタル、タングステン、モリブデン、ルテニウム、レニウムまたはイットリウムとの合金であ』る『導電箔(95)』」は、本件発明4の「金属箔」に、
甲1発明の「『円盤状』の『導電体(80)』」は、本件発明4の「導電性の円板部材」に、
甲1発明の「『厚みは、50~1000μmであ』る『集電板円盤部(90a)』」は、本件発明4の「円板箔」に、
甲1発明の「放電ランプ(10)」は、本件発明4の「放電ランプ」に、
甲1発明の「『長軸方向』を有し『石英ガラスにて形成され』る『密封体(40)』」は、本件発明4の「柱状石英部材」に、
それぞれ相当する。
(イ)本件発明4の「発光管内の電極を支持」する「電極支持棒」の構成について
甲1発明は「密封体(40)を内包する筒状の封止管部(11b)を両端に有する透光性封体(11)内に前記両端の密封体(40)にそれぞれ支持される一対の電極を有する放電ランプ(10)であって、少なくとも陽電極または陰電極のいずれかは、前記電極から延設される電極リード棒(60)の端部が、石英板(70)および外周に複数の導電箔(95)を有する集電板(90)を貫通して前記密封体(40)に挿入され」ていることから、電極リード棒(60)は、透光性封体(11)内の電極を支持しているといえる。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(ウ)本件発明4の「前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管」の構成について
甲1発明の「石英板(70)は、その中央部に電極リード棒(60)を貫通させる貫通孔を有し、石英板(70)を封止管部(11b)に固定するが、両者は材質が同じであるから熱融着が容易であ」ることから、石英板(70)は、電極リード棒(60)を貫通させ、封止管部(11b)に熱融着され固定するものといえる。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(エ)本件発明4の「前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材であって、前記電極支持棒に対して同軸的に配置される円板部材」の構成について
甲1発明は「電極側から順に石英板(70)および導電体(80)が配設され、これらはいずれも円盤状であり、集電板円盤部(90a)、集電板片部(90b)、導電箔(95)の順に溶接され、導電体(80)と集電板円盤部(90a)と導電体(80)とを溶接で一体化し、電極リード棒(60)が導電体(80)と溶着され、前記導電箔は、モリブデンまたは、モリブデンとタンタル、タングステン、モリブデン、ルテニウム、レニウムまたはイットリウムとの合金であり、石英板(70)と導電体(80)との間に集電板円盤部(90a)が配置され」ていることから、電極側から順に石英板(70)および導電体(80)が配設されており、導電体(80)は、電極リード棒(60)と導電箔(95)とを導電可能に接続しているものといえる。
また、甲1発明の「導電体(80)は、その中央部に電極リード棒(60)を貫通させる貫通孔(81)を有し、」「電極リード棒(60)が導電体(80)と溶着され」ていることから、甲1発明の電極リード棒(60)は、導電体(80)の中央部の貫通孔(81)に貫通し、溶着されているといえる。そうすると、甲1発明の「『円盤状』の『導電体(80)』」は、電極リード棒(60)に対して同軸的に配置されていると考えるのが自然である。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(オ)本件発明4の「前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔」の構成について
甲1発明の「集電板円盤部(90a)が」「石英板(70)と導電体(80)との間に」「配置され」ている。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(カ)本件発明4の「前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ」の構成について
甲1発明は「密封体(40)の直径(r1)と導電体(80)の直径(r3)との差(r1-r3=r1×(0.2~0.02))以上の間隙(L3)を導電体(80)の外周と集電板円盤部(90a)との間隙に設けることができ」ることから、導電体(80)の外周に間隙(L3)を設けているといえる。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(キ)本件発明4の「前記空間部分は、ランプ軸を含むランプ軸方向に沿った断面において、非矩形状であって」の構成について
甲1発明は「導電体(80)が傾斜したものであ」ることから、傾斜した導電体(80)、集電円盤部(90a)、集電板片部(90b)及び密封体(40)に囲まれた空間部分は、ランプ軸を含む電極リード棒(60)に沿った断面において、非矩形形状といえる(なお、甲1発明の根拠とした図7(b)も参照されたい。)。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(ク)本件発明4の「前記金属箔の内面側に当接して前記金属箔を支持する柱状石英部材を備え」の構成について
甲1発明の「密封体(40)は、その長軸方向は、延設される導電箔(95)によって被覆される」。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(ケ)本件発明4の「前記円板部材の外径が、前記柱状石英部材の前記円板部材側端面の外径よりも小さい」の構成について
甲1発明では「密封体(40)の直径(r1)と導電体(80)の直径(r3)との差(r1-r3=r1×(0.2~0.02))」を有することから、導電体(80)の直径(r3)は、密封体(40)の直径(r1)より小さいといえる。
したがって、甲1発明は上記構成を備えているものといえる。
(コ)以上のことから、本件発明4と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
「発光管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着する石英管と、
前記石英管のランプ軸方向端部側で前記電極支持棒と金属箔とを電気的に接続させる導電性の円板部材であって、前記電極支持棒に対して同軸的に配置される円板部材と、
前記石英管と前記円板部材との間に配置される円板箔とを備え、
前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられ、
前記空間部分は、ランプ軸を含むランプ軸方向に沿った断面において、非矩形状であって、
前記金属箔の内面側に当接して前記金属箔を支持する柱状石英部材を備え、
前記円板部材の外径が、前記柱状石英部材の前記円板部材側端面の外径よりも小さい放電ランプ。」
【相違点2】
電極支持棒につき、本件発明4は「封止管内において、ランプ軸に沿って配置され」ているのに対し、甲1発明は、導電体(80)が傾斜しているため、ランプ軸からずれている点。
イ 判断
(ア)甲1の図1から、放電ランプは、陽電極(20)と陰電極(30)との一対の電極を含み、各電極から延設される電極リード棒(60)が、把握できる。そして、甲1の図7(b)のように、電極リード棒(60)が溶着されている導電体(80)が傾斜した場合においても、放電ランプは、導電箔(95)の切断を効果的に防止し、放電ランプとして機能している。そうすると、甲1発明は、放電ランプ(10)の発明であることから、導電体(80)が傾斜することによって、電極リード棒(60)が、ランプ軸から多少ずれているとしても、陽電極(20)と陰電極(30)との間で放電し放電ランプとして機能する程度には、放電ランプのランプ軸に沿って、電極リード棒(60)が配置されているといえる。
なお、本件発明4は「ランプ軸に一致して配置され」と特定されているわけではない。そして、本件明細書においても、【0026】に「金属箔33は、ガラス部材26の表面に沿って延び、ガラス部材26の端面26Nに沿って折り曲げられる。」と記載されているように、「沿って」は、「一致して」との意味では用いられていない。このことからしても、本件発明4の「ランプ軸に沿って配置され」を「ランプ軸に一致して配置され」のみの意味とは解されない。
したがって、相違点2は実施的な相違点ではない。
(イ)以上から、本件発明4は甲1発明である。
仮にそうでないとしても、本件発明4は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)特許権者の主張について
ア 特許権者は令和4年12月9日付けの意見書において、
(ア)甲1では、製造時における導電体の傾きにより、空隙の空間部分が非矩形状になっている放電ランプが図示されている。導電体が傾くことは、電極リード棒がランプ軸に沿って配置されないランプの配置構造となる。また、仮に、電極リード棒がランプ軸に沿った状態で、導電体が傾いた配置構造となった場合、そのような傾きのある導電体がランプ配置構造体に対して同軸的に配置されない構造になると認められる。(9頁)
(イ)電極リード棒がランプ軸に沿って配置され、導電体が電極支持棒に対して同軸的に配置された構成であれば、図7(a)に示すように、空隙の空間部分は矩形状にするのが当業者にとって、当然、あるいは必然である。(10頁)
旨主張する。
イ 上記主張について以下検討する。
上記(2)ア(エ)で説示したとおりである。
加えて、本件発明4は「電極支持棒に対して同軸的に配置される円板部材」と特定されており、同軸に配置される円板部材とは特定されていない。そして、同軸的は同軸と同じ意味とは通常解されない。また、上記訂正事項4は、【0022】の「封止管20内には、所定間隔を置いて金属製のリード棒(図示せず)が同軸的に配置されている。」、【0021】の「電極支持棒22は、円板箔34、金属リング32、円板箔36に挿通され、金属リング32は電極支持棒22に溶接されている。」及び図2等を訂正の根拠としていることから、電極支持棒22と金属リング32とが同軸的であることは、電極支持棒22が金属リング32の中央部に挿通され、溶接される程度のものといえる。このことからも、同軸的は同軸と同じ意味とは解されないといえる。
したがって、特許権者の上記主張は失当である。
(4)申立人の主張について
ア 令和5年1月20日付け意見書において、
(ア)本件発明1が特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないことについて
a 本件発明1には「前記石英管の端面が、前記円板箔の電極側側面および金属箔と接し、前記円板部材と接しておらず、前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられている」と記載されている。
b そして、本件特許明細書及び図面には、【0024】に「金属リング32の外周面32Fから径方向外側に向けた隙間部分(空間部分)を“S1”、側面32S2から軸方向電極側に向けた隙間部分(ランプ軸方向に沿った側面32S2とガラス管24の端面24Fとの間の隙間部分)を“S2”と表す。また、円板箔34の電極側側面34Sから軸方向電極側に形成された隙間部分(ランプ軸方向に沿った円板箔34の側面34Sとガラス管24の端面24Fとの間の隙間部分)を“S3”で表す。隙間Sの形成により、ガラス管24の端面24Fは、円板箔34および金属箔33の屈曲部33Bと接する一方、金属リング32と接しない。」と記載されている。
しかしながら、本件発明1では、隙間部分S1を有することが特定されているだけで、隙間部分S2及び隙間部分S3を有することが特定されていない。そして、本件発明1の「前記円板箔の電極側面」「と接し、前記円板部材と接しておらず」を達成するために、発明の詳細な説明に記載された上記隙間部分S1~S3を形成する開示に基づいて、隙間部分S2及びS3を形成しない形態まで、当業者は拡張ないし一般化できない。(3~4頁)
c また、本件特許明細書及び図面には、【0023】に「金属箔33は、ガラス部材26のテーパー部26Sと封止管20との間に沿って延びながら屈曲部33Bを形成するとともに、その端部が金属リング32に溶接されている。」と記載されている。
しかしながら、本件発明1の「前記円板箔の電極側面」「と接し、前記円板部材と接しておらず」を達成するために、石英管に向かって突出する屈曲部33Bを有する構造の開示から、このような屈曲部33Bを有しない形態まで、当業者は拡張ないし一般化できない。(4頁)
(イ)本件発明1は、訂正事項1により、石英管の端面が、円板箔の電極側側面および金属箔と接し、円板部材と接してない旨の構成を備えることになったが、当該構成を採用することによる技術的な効果と意義は、本件特許明細書に示されていない。そして、甲1発明に接した当業者であれば、適宜設計変更することによって容易に想到し得ることである。(5~6頁)
(ウ)甲1の技術的課題は、溶接部や集電板、導電箔の破断を効率的に回避することであり、この技術的課題を解決されるために、甲1では、導電体の径方向外側に空隙を形成するような径が採用されている。甲1において、石英板と導電体との間に所定間隔L2を設けたことは、単に実施形態としての一形態を示すものであって、これに拘泥されるものではない。(6~7頁)
旨主張している。
イ 上記主張について以下検討する。
(ア)上記ア(ア)について
本件発明1の解決しようとする課題として、【0006】に「巻き箔などの金属箔で金属リングなどの環状部材を覆うことなく、熱膨張率の差によるクラック発生を抑える電極構造が求められる。」と記載されている。
そして、本件発明1は「前記円板部材の外周面からランプ径方向外側に形成された空間部分を含む空隙が設けられていること」を特定していることから、上記課題を解決できることが理解できる。
したがって、上記隙間部分S2及び隙間部分S3又は屈曲部33Bを形成しない形態まで、当業者は拡張ないし一般化できないとする主張には理由がない。
(イ)上記ア(イ)及び(ウ)について
上記(1)イで説示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は失当である。
第6 まとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。さらに、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、さらに、本件特許の請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-701045