特許異議申立
2023-700186
セラミック板及びその製造方法、板ばね、セッター、並びにセラミック焼結体の製造方法
- 審判番号
- 2023-700186
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-540695
- 登録番号
- 7126035
- 請求日
- 2023年02月17日
- 審決日
- 2024年01月24日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】デンカ株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】和田 雄二
- 【権利者代理人】中塚 岳
- 【権利者代理人】石坂 泰紀
- 【異議申立人】佐々木 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 河本 充雄
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1652.113-YAA(C04B) / P1652.121-YAA(C04B) / P1652.537-YAA(C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7126035号発明「セラミック板及びその製造方法、板ばね、セッター、並びにセラミック焼結体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7126035号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5、11、12、13について訂正することを認める。
特許第7126035号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7126035号の請求項1~10に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)9月2日(優先権主張 令和2年9月10日(以下、「本件特許出願の優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、令和4年8月17日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 2月17日:特許異議申立人 佐々木 毅(以下、「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 4月17日付け:取消理由通知
同年 6月12日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 7月19日:申立人による意見書の提出
同年 8月23日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年10月18日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年12月 1日:申立人による意見書の提出
なお、令和5年6月12日に特許権者によりされた訂正の請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、申立人が提出した甲第1号証~甲第9号証を、以下、「甲1」~「甲9」という。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年10月18日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため合議体が付与した。)。
(1)訂正事項1
請求項1に「1mm以上である、」と記載されているのを「1mm以上であり、 厚みが1mm以下であり、平板形状になるように弾性変形可能である、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
請求項2に「厚みが2mm以下であり、前記第1主面」と記載されているのを、「前記第1主面」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~4も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
ア 訂正事項3-1
請求項5に、「請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミック板で構成される板ばね。」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有し、前記第1主面を上向きにして水平面に載置したときに前記水平面からの前記第2主面の最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上であるセラミック板で構成される板ばね。」に訂正する。
イ 訂正事項3-2
請求項5に、「請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミック板で構成される板ばね。」とあるうち、請求項1及び請求項2を引用するものについて独立形式に改め、「凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有し、前記第1主面を上向きにして水平面に載置したときに前記水平面からの前記第2主面の最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上であり、厚みが2mm以下であり、前記第1主面と前記第2主面の曲率半径が100~1000mmであるセラミック板で構成される板ばね。」と記載し、新たな請求項11とする。
ウ 訂正事項3-3
請求項5に、「請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミック板で構成される板ばね。」とあるうち、請求項1及び請求項3を引用するものについて独立形式に改め、「凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有し、前記第1主面を上向きにして水平面に載置したときに前記水平面からの前記第2主面の最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上であり、前記第1主面と前記第2主面の面積の平均値に対する反り量Wの比が1×10-5/mm以上であるセラミック板で構成される板ばね。」と記載し、新たな請求項12とする。
エ 訂正事項3-4
請求項5に、「請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミック板で構成される板ばね。」とあるうち、請求項1及び請求項4を引用するものについて独立形式に改め、「凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有し、前記第1主面を上向きにして水平面に載置したときに前記水平面からの前記第2主面の最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上であり、窒化ケイ素焼結体で構成されるセラミック板で構成される板ばね。」と記載し、新たな請求項13とする。
(4)なお、訂正後の請求項5、11、12及び13に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び独立特許要件について
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、セラミック板について、「厚みが1mm以下であり、平板形状になるように弾性変形可能である」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1のうち、「厚みが1mm以下であり」との事項については、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0024】の「セラミック板100の厚み(第1主面100Aと第2主面100Bとの距離)は、たわみを十分に大きくする観点から、・・・1mm以下であってよい。」との記載に基づくものである。
また、訂正事項1のうち、「平板形状になるように弾性変形可能である」との事項については、本件明細書等の【0057】の「図10の保持体350では、セッター96の上面に対向するように配置されているセラミック板100aは、固定部材37によって積層体300に向かって押圧されている。このため、反り量が小さくなるように弾性変形し、平板形状になっている。」、同【0061】の「セラミック板100の代わりにセラミック板102を用いてもよい。」、同【0030】の「図3は、別の実施形態に係るセラミック板の斜視図である。セラミック板102は、4つの側面24がいずれもアーチ状となるように反っており、凸状に湾曲している第1主面102Aと、第1主面102Aの反対側に凹状に湾曲している第2主面102Bとを有する。」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1による訂正は、セラミック板について、「厚みが1mm以下であり、平板形状になるように弾性変形可能である」ものに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1に「厚みが1mm以下である」との事項を加えたことに伴い、訂正後の請求項1を引用する請求項2において、当該事項と整合を図るために、訂正前の請求項2から「厚みが2mm以下であり、」との事項を削除するものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
なお、本件においては、本件訂正前の請求項1~4について特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1及び2による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項所定の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3-1は、訂正前の請求項5が、「請求項1~4のいずれか一項に記載」を引用するものであるところ、請求項1を引用するものとした上で、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項3-2は、訂正前の請求項5が、「請求項1~4のいずれか一項に記載」を引用するものであるところ、請求項1及び請求項2を引用するものとした上で、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項3-3は、訂正前の請求項5が、「請求項1~4のいずれか一項に記載」を引用するものであるところ、請求項1及び請求項3を引用するものとした上で、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項3-4は、訂正前の請求項5が、「請求項1~4のいずれか一項に記載」を引用するものであるところ、請求項1及び請求項4を引用するものとした上で、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 訂正事項3-1~訂正事項3-4は、上記アで検討したとおり、いずれも請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項3-1~訂正事項3-4は、上記アで検討したとおり、訂正前の請求項5についての特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、訂正前の請求項5は、特許異議の申立てがされていないから、訂正後の請求項5、11~13に係る発明(以下、「本件発明5、11~13」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かを検討する。
(ア)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本件発明5、11~13は、いずれも「凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有し、前記第1主面を上向きにして水平面に載置したときに前記水平面からの前記第2主面の最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上であるセラミック板で構成される」との構成を有する「板ばね」に関する発明であることころ、本件明細書等の【0005】の記載によれば、本件発明5、11~13が解決しようとする課題は、優れた耐熱性を有し、積層された複数のセラミックグリーンシートの互いの位置がずれることを抑制できる板ばねを提供することである。
そして、同【0006】の「本開示は、一つの側面において、凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面とを有し、反り量Wが1mm以上である、セラミック板を提供する。このようなセラミック板は、セラミック製であることから耐熱性に優れる。また、凸状の第1主面と凹状の第2主面を有するとともに、大きい反り量Wを有することから、弾性変形によって生じる復元力を利用する板ばねとして好適に用いることができる。」との記載、同【0030】の「セラミック板102は、4つの側面24がいずれもアーチ状となるように反っており、凸状に湾曲している第1主面102Aと、第1主面102Aの反対側に凹状に湾曲している第2主面102Bとを有する。」との記載、同【0031】の「セラミック板102の反り量Wも、図2と同様に、第1主面102A側を上向きにして、測定台150上に載置したときの測定台150からの第2主面102Bの最大高さとして測定される。」との記載、同【0060】の「保持体351は、板ばねとして機能するセラミック板100(100b)を備えることから、脱脂工程の間、セラミックグリーンシート42が収縮しても、弾性変形していたセラミック板100の復元力が作用することによって積層体301を継続して拘束することができる。このため、セラミックグリーンシート41,42の位置がずれて、焼き具合がばらついたり、反りが発生したりすることを抑制できる。」との記載、同【0061】の「セラミック板100の代わりにセラミック板102を用いてもよい。」との記載から、「凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有し、前記第1主面を上向きにして水平面に載置したときに前記水平面からの前記第2主面の最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上である」セラミック板で構成される」との構成を有する「板ばね」に関する発明である本件発明5、11~13は、上記課題を解決し得るものといえる。
したがって、本件発明5、11~13は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
(イ)特許法第29条第1項第3号(新規性)、同法同条第2項(進歩性)について
甲1~甲10(後記第6 1参照)のいずれにも「板ばね」については記載も示唆もされていないから、本件発明5、11~13は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
したがって、本件発明5、11~13は、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、特許を受けることができないものではなく、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
(ウ)また、他に本件発明5、11~13について特許を受けることができないとする理由はない。
(エ)以上とおりであるから、本件発明5、11~13は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(4)まとめ
本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項~第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕、5、11、12、13について訂正を認める。
第3 訂正後の請求項1~4に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4の特許に係る発明(以下、「本件発明1~4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と 、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有し、
前記第1主面を上向きにして水平面に載置したときに前記水平面からの前記第2主面の最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上であり、
厚みが1mm以下であり、平板形状になるように弾性変形可能である、セラミック板。
【請求項2】
前記第1主面と前記第2主面の曲率半径が100~1000mmである、請求項1に記載のセラミック板。
【請求項3】
前記第1主面と前記第2主面の面積の平均値に対する反り量Wの比が1×10-5/mm以上である、請求項1又は2に記載のセラミック板。
【請求項4】
窒化ケイ素焼結体で構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミック板。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、令和5年8月23日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件発明1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(新規性)
本件発明1~3は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(進歩性)
本件発明1~4は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲1:“JISハンドブック 8-1 建築I-1”、日本規格協会、第1版、一般財団法人日本規格協会、2019年1月31日、p415-429
甲2:“セラミックタイル試験方法 第2部:寸法・形状の測定方法”、日本規格協会、第1刷、一般財団法人日本規格協会、平成26年6月20日、p1-11
甲3:データベースサイトイプロス、“株式会社トウゴクセラミック 耐摩耗性セラミックタイル”、[online]、2019年10月30日(最終更新日)、[令和5年1月30日検索]、インターネット<URL:https://www.ipros.jp/product/detail/2000476708/>
甲4:特開2001-192273号公報
甲5:特開昭63-222059号公報
甲6:大塚毅、“弾性接着剤による外装タイル張り仕上の耐久性に関する研究”、日本接着学会誌、日本接着学会、2006年、Vol.42、No.5、p.180~187
甲7:特許第3689277号公報
甲8:“ファインセラミックス 窒化ケイ素Si3N4”、[online]、[令和5年11月22日検索]、インターネット<URL:https://www.kyocera.co.jp/prdct/fc/material-property/material/silicon_nitride/index.html>
甲9:“INTERNATIONAL STANDARD IS023242:2020(E)”、[online]、2020年2月、p.1~7、[令和5年11月20日検索]、インターネット< https://cdn.standards.iteh.ai/samples/75054/8327af1f8a864a9aab4976da3e7c7357/ISO-23242-2020.pdf>
第5 取消理由1(サポート要件)
1 本件発明1について
(1)本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明及び図面(以下、単に「発明の詳細な説明」及び「図面」という。)の記載
発明の詳細な説明及び図面には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミックグリーンシートに含まれる成分が揮発して収縮すると、揮発及び収縮に伴って積層されている複数のセラミックグリーンシートの位置が互いにずれて、品質に影響を及ぼすことが懸念される。そこで、本開示は、優れた耐熱性を有し、積層された複数のセラミックグリーンシートの互いの位置がずれることを抑制できる板ばね、並びに、当該板ばねとして好適に用いられるセラミック板及びその製造方法を提供する。また、本開示では、そのようなセラミック板を簡便に製造できるセッターを提供する。また、本開示では、積層された複数のセラミックグリーンシートの互いの位置がずれることを抑制することによって、高い品質を有するセラミック焼結体を安定的に製造すること可能な製造方法を提供する。」
「【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一つの側面において、凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面とを有し、反り量Wが1mm以上である、セラミック板を提供する。このようなセラミック板は、セラミック製であることから耐熱性に優れる。また、凸状の第1主面と凹状の第2主面を有するとともに、大きい反り量Wを有することから、弾性変形によって生じる復元力を利用する板ばねとして好適に用いることができる。」
「【0020】
図1は、一実施形態に係るセラミック板の斜視図である。セラミック板100は、アーチ状に反っており、凸状に湾曲している第1主面100Aと、第1主面100Aの反対側に凹状に湾曲している第2主面100Bとを有する。セラミック板100の4つの側面のうち、対向配置される一対の側面11は長方形であるのに対し、対向配置される別の一対の側面13はアーチ状に湾曲している。
【0021】
図2は、図1のセラミック板100の側面図である。セラミック板100は、水平な平面を有する測定台150上に載置されている。セラミック板100はアーチ状に反っている。このため、セラミック板100の第2主面100Bのうち、一対の側面11側の辺12のみが測定台150と接触し、第2主面100Bの他の部分と測定台150との間には隙間が生じている。セラミック板100の反り量Wは、セラミック板100を、第1主面100A側を上向きにして、測定台150上に載置したときの測定台150からの第2主面100Bの最大高さとして測定される。反り量Wは、セラミック板100に外力が与えられておらず、弾性変形していない状態での値である。反り量Wは1mm以上であるため、第2主面100Bと測定台150とが平行になるまでのたわみを十分に大きくすることができる。したがって、復元力を利用する板ばねとして好適に用いることができる。セラミック板100の反り量Zは、凸状に湾曲している第1主面100Aの高低差の最大値である。反り量Zも1mm以上であってよい。
・・・
【0024】
セラミック板100の厚み(第1主面100Aと第2主面100Bとの距離)は、たわみを十分に大きくする観点から、2mm以下であってよく、1.5mm以下であってよく、1mm以下であってよい。セラミック板100の厚みは、板ばねとしたときの復元力を十分に大きくする観点から、0.1mm以上であってよく、0.2mm以上であってもよい。セラミック板100の厚みの一例は、0.1~2mmであってよい。
・・・
【0029】
セラミック板100は、セラミック製であるため、耐熱性に優れる。このため、セラミック板100で構成される板ばねは、種々の環境下において好適に用いることができる。例えば、高温環境下において、弾性変形による復元力が必要となる用途に好適である。」
「【0030】
図3は、別の実施形態に係るセラミック板の斜視図である。セラミック板102は、4つの側面24がいずれもアーチ状となるように反っており、凸状に湾曲している第1主面102Aと、第1主面102Aの反対側に凹状に湾曲している第2主面102Bとを有する。第1主面102Aの中心部は端部よりも上方に突出している。第2主面102Bの中心部は端部よりも窪んでいる。4つの側面24のアーチ形状は互いに同じであってよく、異なっていてもよい。
【0031】
セラミック板102を、図2と同様に、第1主面102A側を上向きにして、測定台150上に載置すると、セラミック板102の第2主面102Bのうち、4つの頂部20のみが測定台150と接触する。第2主面102Bの他の部分と測定台150との間には隙間が生じる。セラミック板102の反り量Wも、図2と同様に、第1主面102A側を上向きにして、測定台150上に載置したときの測定台150からの第2主面102Bの最大高さとして測定される。セラミック板102の反り量Zも、凸状に湾曲している第1主面102Aの高低差の最大値として測定される。
【0032】
セラミック板102の反り量W、反り量Z、厚み、及び厚みに対する反り量Wの比等の数値範囲、並びに材質は、セラミック板100と同じであってよい。第1主面102A及び第2主面102Bの曲率半径及び面積等の数値範囲も、第1主面100A及び第2主面100Bと同じであってよい。セラミック板102も、板ばねとして種々の環境下において好適に用いることができる。
「【0056】
図10は、本実施形態のセラミック焼結体の製造方法で用いる積層体及び保持体の一例を示す側面図である。図10の保持体350は、積層体300と、積層体300の上方に設けられ、積層体300を固定する固定部材37と、固定部材37と積層体300の間にセラミック板100aと、を備える。積層体300は、支持体400の上に載置されており、支持体400側から、セッター92、複数のセラミックグリーンシート41、セッター94、複数のセラミックグリーンシート41、及びセッター96が、この順に積層されている。これらのセッター及びセラミックグリーンシートは、いずれも平板形状を有している。セラミック板100aは、外力が与えられていない状態では、図2にセラミック板100として示すように反り量Wのアーチ状を呈する。
【0057】
図10の保持体350では、セッター96の上面に対向するように配置されているセラミック板100aは、固定部材37によって積層体300に向かって押圧されている。このため、反り量が小さくなるように弾性変形し、平板形状になっている。セラミック板100aの下側にあるセッター96は、セラミック板100aの板ばねとしての復元力によって、下方に付勢されている。このようにして、保持体350は、積層体300を支持体400とセラミック板100aとによって積層方向に挟んで拘束している。
・・・
【0060】
保持体351は、板ばねとして機能するセラミック板100(100b)を備えることから、脱脂工程の間、セラミックグリーンシート42が収縮しても、弾性変形していたセラミック板100の復元力が作用することによって積層体301を継続して拘束することができる。このため、セラミックグリーンシート41,42の位置がずれて、焼き具合がばらついたり、反りが発生したりすることを抑制できる。したがって、高い品質を有するセラミック焼結体を安定的に製造することができる。
【0061】
保持体350(351)で用いられるセラミック板100の枚数は一枚に限定されず、複数枚を上下方向に重ねて用いてもよい。これによって板ばねとしての復元力を大きくして、積層体300,301をより強固に拘束することができる。また、セラミック板100の配置は、セッター96と固定部材37の間に限定されず、セッター92と支持体400との間であってもよいし、一対のセラミックグリーンシート41(42)の間であってもよい。複数のセラミック板100を、互いに異なる位置に配置してもよい。セラミック板100の代わりにセラミック板102を用いてもよい。また、板ばねとして機能するものであれば、これらとは異なる形状を有するセラミック板を用いてもよい。」
「【図1】
[図:0001409097000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001409097000002.jpg]
」
「【図10】
[図:0001409097000003.jpg]
」
(2)本件発明が解決しようとする課題
発明の詳細な説明の【0005】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、優れた耐熱性を有し、積層された複数のセラミックグリーンシートの互いの位置がずれることを抑制できる板ばねとして好適に用いられるセラミック板を提供すること(以下、「本件課題」という。)である。
(3)発明の詳細な説明の記載
ア 発明の詳細な説明の【0020】には、一実施形態として、凸状に湾曲している第1主面100Aと、第1主面100Aの反対側に凹状に湾曲している第2主面100Bとを有するセラミック板100が記載され、同【0021】には、セラミック板100の反り量Wは、セラミック板100を、第1主面100A側を上向きにして、測定台150上に載置したときの測定台150からの第2主面100Bの最大高さとして測定されること、及び、反り量Wは1mm以上であることが記載され、同【0024】には、セラミック板100の厚みは、1mm以下であってよいことが記載されている。
イ 同【0030】には、別の実施形態として、4つの側面24がいずれもアーチ状となるように反っており、凸状に湾曲している第1主面102Aと、第1主面102Aの反対側に凹状に湾曲している第2主面102Bとを有するセラミック板102が記載され、同【0031】には、セラミック板102の反り量Wも、第1主面102A側を上向きにして、測定台150上に載置したときの測定台150からの第2主面102Bの最大高さとして測定されることが記載され、同【0032】には、セラミック板102の反り量W、厚みは、セラミック板100と同じであってよいことが記載されている。
ウ 上記ア及びイによれば、発明の詳細な説明には、4つの側面24がいずれもアーチ状となるように反っており、すなわち、4つの側面24がアーチ状に湾曲しており、凸状に湾曲している第1主面102Aと、第1主面102Aの反対側に凹状に湾曲している第2主面102Bとを有し、第1主面102A側を上向きにして、測定台150上、すなわち、水平面に載置したときに、水平面からの第2主面102Bの最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上であり、厚みが1mm以下である、セラミック板102が記載されているといえる。
エ 同【0006】には、【課題を解決するための手段】として、凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面とを有し、反り量Wが1mm以上である、セラミック板は、セラミック製であることから耐熱性に優れ、また、凸状の第1主面と凹状の第2主面を有するとともに、大きい反り量Wを有することから、弾性変形によって生じる復元力を利用する板ばねとして好適に用いることができることが記載されている。
オ 同【0057】には、セラミック板100aは、固定部材37によって積層体300に向かって押圧されているため、反り量が小さくなるように弾性変形し、平板形状になっていることが記載されており、同【0060】には、保持体351は、板ばねとして機能するセラミック板100(100b)を備えることから、セラミックグリーンシート42が収縮しても、弾性変形していたセラミック板100の復元力が作用することによって積層体301を継続して拘束することができるため、積層された複数のセラミックグリーンシート41,42の位置がずれて、焼き具合がばらついたり、反りが発生したりすることを抑制できることが記載され、同【0061】には、セラミック板100の代わりにセラミック板102を用いてもよいことが記載されている。
カ 上記エ及びオによれば、セラミック板102は、セラミック製であることから耐熱性に優れ、また、平板形状になるように弾性変形可能であることから、積層された複数のセラミックグリーンシートの位置が互いにずれることを抑制できる板ばねに好適に用いられるといえる。
キ 以上によれば、凸状に湾曲している第1主面102Aと、第1主面102Aの反対側に凹状に湾曲している第2主面102Bとを有し、アーチ状に湾曲している4つの側面24と、を有し、第1主面102A側を上向きにして、水平面に載置したときに水平面からの第2主面102Bの最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上であり、厚みが1mm以下であり、平板形状になるように弾性変形可能である、セラミック板102は、耐熱性に優れ、また、積層された複数のセラミックグリーンシートの位置が互いにずれることを抑制できる板ばねに好適に用いられることが理解できる。
そうすると、凸状に湾曲している第1主面102Aと、第1主面102Aの反対側に凹状に湾曲している第2主面102Bとを有し、アーチ状に湾曲している4つの側面24と、を有し、第1主面102A側を上向きにして、水平面に載置したときに水平面からの第2主面102Bの最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上であり、厚みが1mm以下であり、平板形状になるように弾性変形可能である、セラミック板102は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、当該発明は、上記本件課題を解決できるといえる。
(4)上記(3)の検討によれば、上記本件課題を解決できる発明の詳細な説明に記載された発明は、本件発明1とは同様の構成を有するものであるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
2 本件発明2~4について
発明の詳細な説明の【0022】、【0026】、【0027】には、本件発明2~4と同様の構成が記載されているから、本件発明2~4は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、また、本件発明2~4は、いずれも本件発明1の構成を有するものであるから、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
3 申立人の主張について
申立人は、令和5年12月1日提出の意見書4ページ12行~5ページ11行において、セラミック板が、積層された複数のセラミックグリーンシートの互いの位置がずれることを抑制できる程度の板ばねとして機能しうるか否かは、セラミック板の反り量Wだけでなく、セラミック板の弾性率、材質、硬度、大きさ、第1主面及び第2主面の曲率半径などにも依存するものであり、本件発明1~4の「セラミック板」は、「反り量Wが1mm以上であり、厚みが1mm以下であり、平板形状になるように弾性変形可能である」ことが特定されているものの、弾性率、硬度、大きさなどが特定されておらず、また、本件発明1~4の「セラミック板」が、積層された複数のセラミックグリーンシートの互いの位置がずれることを抑制できる板ばねとして好適に用いられることが、本件特許出願当時の技術常識であるともいえないから、本件発明1~4の「セラミック板」は、必ずしも、積層された複数のセラミックグリーンシートの位置ずれの抑制に十分な弾性力を発揮する板ばねとして好適に用いられるとはいえず、本件発明1~4は、発明の詳細な説明及び本件特許の出願当時の技術常識に照らして、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものではない旨主張している。
しかし、本件発明1~4は、「反り量Wが1mm以上であり、厚みが1mm以下であり、平板形状になるように弾性変形可能である」ことが特定されており、当該特定事項を備える本件発明1~4が、上記本件課題を解決し得ると認識できる範囲のものであることは、上記1及び2で検討したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~4は、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、取消理由1には理由がない。
第6 取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について
1 甲号証の記載事項、甲号証に記載された発明等
(1)甲1(“JISハンドブック 8-1 建築I-1”、日本規格協会、第1版、一般財団法人日本規格協会、2019年1月31日、p415-429)
ア 本件特許出願の優先日前に公開された甲1には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
(ア)「
[図:0001409097000004.jpg]
[図:0001409097000005.jpg]
」(416~417ページ)
(イ)「
[図:0001409097000006.jpg]
[図:0001409097000007.jpg]
」(422~423ページ)
(ウ)「
[図:0001409097000008.jpg]
[図:0001409097000009.jpg]
[図:0001409097000010.jpg]
[図:0001409097000011.jpg]
」(426~429ページ)
イ 甲1に記載された発明
(ア)上記ア(ア)には、厚さ40mm未満のセラミックタイルが記載されている。
(イ)上記ア(イ)には、タイルの面反りは、タイル表面の対角線方向の湾曲であり、面反りには、表面方向に山なりに湾曲したでこ反りがあること記載されているから、タイルは、面反りしており、面反りは、タイル表面の対角線方向の湾曲であり、かつ、表面方向に山なりに湾曲したでこ反りであるといえる。
(ウ)上記ア(ウ)には、タイルの面反りについて、JIS A 1509-2の箇条8(反り)に規定する測定を行ったとき、50mmを超え105mm以下の制作寸法を有するタイルの面反りの許容差が±1.2mmであることが記載されている。
(エ)以上によれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「厚さ40mm未満のセラミックタイルであって、
セラミックタイルは、面反りしており、
面反りは、タイル表面の対角線方向の湾曲であり、かつ、表面方向に山なりに湾曲したでこ反りであり、
JIS A 1509-2の箇条8(反り)に規定する測定を行ったとき、50mmを超え105mm以下の制作寸法を有するセラミックタイルの面反りの許容差が±1.2mmである、セラミックタイル。」
(2)甲2(“セラミックタイル試験方法 第2部:寸法・形状の測定方法”、日本規格協会、第1刷、一般財団法人日本規格協会、平成26年6月20日、p1-11)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2には、以下の記載がある。
「
[図:0001409097000012.jpg]
」(4ページ)
「
[図:0001409097000013.jpg]
」(5ページ)
(3)甲3(データベースサイトイプロス、“株式会社トウゴクセラミック 耐摩耗性セラミックタイル”、[online]、2019年10月30日(最終更新日)、[令和5年1月30日検索]、インターネット<URL:https://www.ipros.jp/product/detail/2000476708/>)
本件特許出願の優先日前に公開された甲3には、以下の記載がある。
「
[図:0001409097000014.jpg]
」
(4)甲4(特開2001-192273号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲4には、以下の記載がある。
「【0016】本発明の焼却炉用耐熱部材は、耐熱性、耐熱衝撃性、耐食性、耐酸化性などに優れると共に、強度や破壊靭性値などが大きい窒化ケイ素焼結体からなるものである。本発明の焼却炉用耐熱部材は、焼却炉の各種構造材として使用されるものである。具体的には、焼却炉本体の炉壁材、煙道(排ガス筒)の内壁材、排ガス用熱回収装置の構成材など、焼却炉設備において耐熱性が必要される各種構造材に適用することができる。」
「【0018】上記したような焼却炉においては、燃焼帯や冷却帯部分の炉壁材、排ガス筒の内壁材などとして、本発明の窒化ケイ素焼結体からなる焼却炉用耐熱部材が用いられる。本発明の焼却炉は、このような構成を有する。本発明の焼却炉用耐熱部材の具体的な利用例としては、例えばタイル状やレンガ状の窒化ケイ素焼結体を作製し、耐火タイルを炉体や排ガス筒などの内壁に内張りしたり、また耐火レンガで炉体や排ガス筒などを構成するなどが挙げられる。」
(5)甲5(特開昭63-222059号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲5には、以下の記載がある(当審注:丸字は、「○1」等と表記する。)。
「○1圧力いこみ成形
前項○B坏土に水と解膠剤(含水24%、珪酸ソーダ0.35%、トリポリ隣酸ソーダ0.5%)を加えてスラリーを調整し、別途製作した圧力いこみ成形用石膏型にスラリーを1.8kg/cm2の空気圧で20分間送泥した後、離型してタイル(113×113×2mm、287 ×287 ×3 mm)を成形した。」(5ページ左上欄11~18行)
「○3製品の厚さ
従来のセラミックス 5~10mm
本発明のセラミックス 2~ 4mm」(6ページ左上欄10~12行)
(6)甲6(大塚毅、“弾性接着剤による外装タイル張り仕上の耐久性に関する研究”、日本接着学会誌、日本接着学会、2006年、Vo1.42、No.5、p.180~187)
本件特許出願の優先日前に公開された甲6には、以下の記載がある。
「
[図:0001409097000015.jpg]
」(180ページ左欄下から10~9行)
「
[図:0001409097000016.jpg]
」(181ページ右欄)
(7)甲7(特許第3689277号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲7には、以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】
スキッドパネルは、表面に磁器タイル、バサルトタイル等の耐摩耗性材料を貼着したプレキャスト舗装版であって、自動車の試験コースなどの路面に敷設され、自動車のブレーキテスト等に用いられる床版である。このようなスキッドパネルは、敷設長手方向に反りや歪み等があってはならない。」
「【0009】スキッドパネルの全高さH=16cm、タイル厚さht=1.5cm、コンクリート厚さhc=14.5cm、計算幅B=100cm、幅1m当たりの目地幅bst=6cmである。タイルのヤング率Et=710,000kg/cm2、コンクリートのヤング率Ec=140,000kg/cm2 、ヤング率比n=5.07とし、コンクリートの硬化、乾燥収縮量を材令28日で250μm/cmとする。スキッドパネルの反りは図6に示すように、円弧状であるとする。反り量γは、γ=R-(R2-L2)1/2 となる。ここでRは反りの曲率半径、Lはスキッドパネルの長さの2分の1である。」
(8)甲8(“ファインセラミックス窒化ケイ素Si3N4”、[online]、[令和5年11月22日検索]、インターネットURL:https://www.kyocera.co.jp/prdct/fc/material-property/material/siliconnitride/index.html)
甲8には以下の記載がある。
「
[図:0001409097000017.jpg]
」
(9)甲9(“INTERNATIONAL STANDARD IS023242:2020(E)”、[online]、2020年2月、p.1~7、[令和5年11月20日検索]、インターネット< https://cdn.standards.iteh.ai/samples/75054/8327af1f8a864a9aab4976da3e7c7357/ISO-23242-2020.pdf>)
本件特許出願の優先日前に公開された甲9には、以下の記載がある。なお、甲9の記載は、当審の訳文で示す。
「ファインセラミックス(アドバンストセラミックス、アドバンストテクニカルセラミックス)-一枚物のセラミック薄板の室温における三点曲げまたは四点曲げによる曲げ強さの試験方法
1 スコープ
この文書では、一枚物のセラミック薄板の室温での3点曲げまたは4点曲げによる曲げ強さの試験方法について説明します。
この文書は、巨視的に均質であるとみなされるモノリシックセラミックス及びウィスカー又は粒子で強化されたセラミックスでの使用を目的としています。連続繊維強化セラミック複合材料は含まれません。この文書は、厚さ0.2mm~1.0mmのセラミック薄板に適用されます。
この文書は、材料開発、材料比較、品質保証、特性評価及び信頼性データ生成を目的としています。」(1ページ1~13行)
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「セラミックタイル」は、本件発明1の「セラミック板」に相当する。
イ 甲1発明の「セラミックタイル」は「面反りしており」、「面反り」は、「タイル表面の対角線方向の湾曲であり、かつ、表面方向に山なりに湾曲したでこ反りであ」るから、凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有しているといえる。
したがって、甲1発明と本件発明1とは、「凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有し」ている点で共通する。
ウ 以上によれば、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「凸状に湾曲している第1主面と、当該第1主面の反対側に凹状に湾曲している第2主面と、アーチ状に湾曲している4つの側面と、を有する、セラミック板。」
<相違点>
相違点1:本件発明1は、「前記第1主面を上向きにして水平面に載置したときに前記水平面からの前記第2主面の最大高さとして測定される反り量Wが1mm以上である」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点2:本件発明1は、「厚みが1mm以下」であるのに対し、甲1発明は、「厚さ40mm未満」である点。
相違点3:本件発明1は、「平板形状になるように弾性変形可能である」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
(2)相違点についての判断
ア 本件発明1において、「セラミック板」が「平板形状になるように弾性変形可能である」ことは、「セラミック板」の「反り量W」及び「厚さ」も関連するといえるから、相違点1~相違点3は、まとめて検討する。
イ 新規性について
(ア)甲1には、相違点1~相違点3に係る本件発明1の構成については、記載も示唆もされていない。
また、甲1発明が、相違点1~相違点3に係る本件発明1の構成を備えていることは、本件特許出願の優先日前において技術常識であるともいえない。
したがって、相違点1~相違点3は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。
(イ)申立人の主張について
a 申立人は、令和5年12月1日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)6ページ3~5行において、甲1には、相違点2について、厚さ40mm未満のセラミックタイルが記載されている、すなわち、甲1発明は、厚さ1mm以下であるセラミック板を含む旨主張している。
しかし、本件発明1のセラミック板の厚さ1mm以下との範囲は、甲1発明のセラミックタイルの厚さ40mm未満より狭い範囲であるから、両者の厚さが一致しているとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
b 申立人は、意見書7ページ9行~9ページ1行において、相違点3について、一般的に、セラミックタイルは弾性を有し、変形可能であり、甲6、甲7の記載から、一般のセラミックタイルは、少なくとも30~70GPa程度の弾性率を有することがわかるところ、本件発明1~4及び本件明細書等には、セラミック板の具体的な弾性率は記載されておらず、ここで、本件明細書等の【0027】の記載から、セラミック板が窒化ケイ素焼結体であれば、たわみを十分に大きくすることができ、板ばねとして機能しうるものと解され、窒化ケイ素焼結体の弾性率(ヤング率)は、甲8の「特性」の表に記載されたように、290~300GPa程度であり(なお、弾性率は、物体の厚さには依存しない物質に固有の値である)、弾性率が高いほど、物質は変形し難く、290~300GPaのヤング率を有する窒化ケイ素焼結体であっても平板形状に弾性変形可能であるならば、30~70GPa程度の弾性率を有するセラミックタイルが容易に平板形状に弾性変形可能であることは自明であり、甲1発明に係るタイルも、セラミック製である以上、容易に平板形状に弾性変形可能であることは明らかである旨主張している。
申立人の上記主張は、甲1発明の「セラミックタイル」が窒化ケイ素焼結体からなることを前提とするものである。
しかし、甲1には、セラミックタイルが窒化ケイ素焼結体からなることは記載も示唆もされておらず、本件特許出願の優先日前において技術常識であるともいえない。
したがって、申立人の上記主張は、前提において誤っているから採用できない。
ウ 進歩性について
(ア)上記第5 1(2)~(4)の検討を参酌すると、本件発明1は、優れた耐熱性を有し、積層された複数のセラミックグリーンシートの互いの位置がずれることを抑制できる板ばねとして好適に用いられるセラミック板を提供するために、相違点1~相違点3に係る本件発明1の構成を備えるものであるといえる。
しかし、甲2~甲10には、優れた耐熱性を有し、積層された複数のセラミックグリーンシートの互いの位置がずれることを抑制できる板ばねとして好適に用いられるセラミック板を提供するために、相違点1~3に係る本件発明1の構成とすることについて、何ら記載も示唆もされていない。また、当該構成が、本件特許出願の優先日前において周知技術であるともいえない。
そうすると、甲1発明において、甲2~甲9に記載された事項を適用しても、相違点1~相違点3に係る本件発明1の構成は得られない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)申立人の主張について
a 申立人は、意見書9ページ14行~10ページ6行において、相違点2について、甲9には、ファインセラミックスに関する国際標準が記載されており、「ファインセラミックス」とは、機能性を高めたセラミックスの総称であるところ、セラミックタイルの分野においては、甲5に記載のように、機械的強度や、曲げ強さなどが向上されたファインセラミックスが開発され、使用されており、このファインセラミックスについて、甲9に記載された国際標準では、曲げ強さの測定方法が規定されており、また、厚さ1mm以下のファインセラミックスを対象としていることからすると、セラミックスの厚さを1mm以下とすることは、本件特許出願の優先日前において周知の技術であるから、甲1発明のセラミックタイルを厚さ1mm以下とすることは、当業者が容易になし得たことである旨主張している。
そこで、検討するに、申立人が主張するとおり、「ファインセラミックス」とは、機能性を高めたセラミックスの総称であるところ、甲9には、そのファインセラミックスに関する国際標準が記載されているものの、甲1の記載されているセラミックタイルに関する記載はない。
そうすると、ファインセラミックスに関する甲9の記載を根拠として、セラミックタイルの厚さを1mm以下とすることは、本件特許出願の優先日前において周知の技術であるとはいえないから、甲1発明のセラミックタイルを厚さ1mm以下とすることは、当業者が容易になし得たことであるともいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
b 申立人は、意見書10ページ10~21行において、相違点3について、本件明細書等の発明の詳細な説明には、「アーチ状に湾曲している4つの側面を有し、反り量Wが1mm以上であり、厚みが1mm以下」という形状を備えたセラミック板を、「平板形状になるように弾性変形可能」とするために必要な硬度や弾性率について、何ら記載されておらず、発明の詳細な説明に記載された内容を踏まえると、上記の形状を備えた「板」が「セラミック(特に窒化ケイ素焼結体)」で構成されていれば、その板は「平板形状になるように弾性変形可能」であるものと解され、セラミックタイルを窒化ケイ素焼結体で構成することは、甲3及び甲4に記載されたように周知の技術であるから、甲1発明において、セラミックタイルを窒化ケイ素焼結体で構成し、板ばねとしても好適に用いることができるセラミックタイルを得ることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない旨主張している。
しかし、本件発明1の「セラミック板」は、「反り量Wが1mm以上であり、厚みが1mm以下であり、平板形状になるように弾性変形可能である」ところ、セラミック板が平板形状になるように弾性変形可能かどうかは、セラミック板の材質だけでなく、反り量や厚さにも依存するものであるから、甲1発明において、セラミックタイルを窒化ケイ素焼結体で構成すれば、必ず「平板形状になるように弾性変形可能である」とはいえないし、そのような技術常識もない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
3 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を減縮したものであり、いずれも相違点1~3に係る本件発明1の構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~4は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。
また、本件請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
よって、取消理由2、3には理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700186