特許異議申立
2023-700366
二次電池とその製造方法
- 審判番号
- 2023-700366
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-133807
- 登録番号
- 7150672
- 請求日
- 2023年04月11日
- 審決日
- 2024年02月14日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】本田技研工業株式会社
- 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
- 【権利者代理人】鈴木 慎吾
- 【権利者代理人】酒井 太一
- 【権利者代理人】渡辺 伸一
- 【異議申立人】田中 俊子
- 審判長/審判官
- 審判長 篠原 功一
- 審判官 山田 正文
- 審判官 岩田 淳
- 分類
- P1651.113-ZDA(H01M) / P1651.121-ZDA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7150672号発明「二次電池とその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7150672号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔8-10〕について訂正することを認める。
特許第7150672号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。
同請求項6ないし10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7150672号の請求項1ないし10に係る発明についての出願は、令和1年7月19日の出願であって、令和4年9月30日にその特許権が設定登録され、令和4年10月11日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 5年 4月11日 :特許異議申立人田中俊子(以下、「申立人」という。)により請求項1-10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 5年 7月 5日付け:取消理由通知
令和 5年 8月31日 :面接記録
令和 5年 9月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 5年10月26日 :申立人による意見書の提出
令和 5年11月 8日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 6年 1月12日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和6年1月12日に訂正の請求がなされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、令和5年9月8日にされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年1月12日付けの訂正請求の趣旨は、特許第7150672号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項8-10について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項8に「前記電解質が固体であることを特徴とする請求項請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。」とあるのを、「前記電解質が固体であることを特徴とする請求項6または7に記載の二次電池。」に訂正する。
(請求項8を引用する請求項10についても同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に「前記電解質が液体であることを特徴とする請求項請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。」とあるのを、「前記電解質が液体であることを特徴とする請求項6または7に記載の二次電池。」に訂正する。
(請求項9を引用する請求項10についても同様に訂正する。)
2 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項8-10について、請求項10は請求項8または9を引用するものであり上記訂正事項1による請求項8の訂正、上記訂正事項2による請求項9の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項8-10に対応する本件訂正の請求項〔8-10〕は一群の請求項である。
したがって、本件訂正前の請求項8-10に対応する本件訂正後の請求項8-10は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項8が「請求項1~7のいずれか一項」を引用する記載であったところ、引用する請求項を「請求項6または7」と減少させる訂正である。これは、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。また、「請求項請求項」なる明らかな誤記を「請求項」に訂正するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同条第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正である。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、引用する請求項を削除すると共に明らかな誤記を訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項9が「請求項1~7のいずれか一項」を引用する記載であったところ、引用する請求項を「請求項6または7」と減少させる訂正である。これは、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。また、「請求項請求項」なる明らかな誤記を「請求項」に訂正するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同条第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正である。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項2は、引用する請求項を削除すると共に明らかな誤記を訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 独立特許要件について
訂正事項1および2は、上記「ア」、「イ」に示したとおり「特許請求の範囲の減縮」を目的とするところ、本件においては、訂正前の請求項1ないし10について特許異議の申立てがされているから、対応する訂正後の請求項1ないし10に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔8-10〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるものである。なお、下線は、訂正箇所を表す。
「【請求項1】
電解質を介して正極と負極とを交互に積層してなる積層体と、
前記積層体の一方の側壁側において、
前記正極を構成する板状の正極集電体の端部に取り付けられた正極補強部材と、
前記積層体の一方の側壁を覆うとともに、前記正極補強部材の端部に対して取り付けられた正極用タブと、
前記積層体の他方の側壁側において、
前記負極を構成する板状の負極集電体の端部に取り付けられた負極補強部材と、
前記積層体の他方の側壁を覆うとともに、前記負極補強部材の端部に対して取り付けられた負極用タブと、
前記積層体と、前記正極補強部材と、前記正極用タブと、前記負極補強部材と、前記負極用タブと、を内包する外装体と、を有することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記積層体が、前記正極用タブと前記負極用タブとを結ぶ軸線の周りに複数回巻回され、
前記正極用タブに対する前記正極補強部材の複数の取り付け位置が、互いに離間しており、
前記負極用タブに対する前記負極補強部材の複数の取り付け位置が、互いに離間していることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記積層体が、正極、負極をそれぞれ複数含み、
前記正極用タブに対する前記正極補強部材の複数の取り付け位置が、互いに離間しており、
前記負極用タブに対する前記負極補強部材の複数の取り付け位置が、互いに離間していることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
電解質を介して正極と負極とを交互に積層してなる積層体と、
前記積層体の一方の側壁側において、
前記正極を構成する板状の正極集電体の端部に取り付けられた正極補強部材と、
前記積層体の一方の側壁を覆うとともに、前記正極補強部材の端部に対して取り付けられた正極用タブと、
前記積層体の他方の側壁側において、
前記負極を構成する板状の負極集電体の端部に取り付けられた負極補強部材と、
前記積層体の他方の側壁を覆うとともに、前記負極補強部材の端部に対して取り付けられた負極用タブと、
前記積層体と、前記正極補強部材と、前記正極用タブと、前記負極補強部材と、前記負極用タブと、を内包する外装体と、を有し、
前記正極用タブが、前記正極補強部材を一方の主面に接合する正極用平坦部と、前記正極用平坦部の他方の主面から突出する正極用突出部と、を有し、
前記負極用タブが、前記負極補強部材を一方の主面に接合する負極用平坦部と、前記負極用平坦部の他方の主面から突出する負極用突出部と、を有することを特徴とする二次電池。
【請求項5】
前記正極集電体の主面と前記正極用タブの主面とのなす角度、前記負極集電体の主面と前記負極用タブの主面とのなす角度が、それぞれ、85度以上95度以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記積層体の積層方向に並ぶ、複数の前記正極補強部材、複数の前記負極補強部材の中心位置が、それぞれ、前記正極用タブと前記負極用タブの中心同士を結ぶ中心線から離間しており、
それぞれの前記中心位置の離間の大きさが、前記積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記積層体の積層方向において、複数の前記正極補強部材、複数の前記負極補強部材が並んでおり、
前記正極用タブと前記負極用タブの中心同士を結ぶ中心線と直交する方向において、複数の前記正極補強部材の長さ、複数の負極補強部材の長さが、それぞれ、前記積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記電解質が固体であることを特徴とする請求項6または7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記電解質が液体であることを特徴とする請求項6または7に記載の二次電池。
【請求項10】
請求項8または9のいずれかに記載の二次電池の製造方法であって、
前記正極集電体、前記負極集電体に、それぞれ前記正極補強部材、前記負極補強部材を取り付ける工程と、
前記正極補強部材が取り付けられた前記正極集電体、前記負極補強部材が取り付けられた前記負極集電体に、それぞれ、前記正極用タブ、前記負極用タブを取り付ける工程と、を有することを特徴とする二次電池の製造方法。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1-5、8-10に係る特許に対して、当審が令和5年11月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
・請求項1、2、3について引用文献1
請求項4、5、8-10について引用文献1、2
〈引用文献等〉
引用文献1:特開2011-176137号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2009-16188号公報(甲第3号証)
第5 当審の判断
1 引用文献の記載事項・引用発明
(1)引用文献1
ア 記載事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
(ア)「【0001】
本発明は、電池や電気二重層キャパシタ(EDLC)などの電気化学デバイスに関する。」
(イ)「【0015】
図1は、巻回型の電気化学デバイスに用いられる積層体の分解斜視図であり、図2は、巻回型の電気化学デバイスに用いられる積層体の斜視図である。この電気化学デバイスは、電気二重層キャパシタ(EDLC)であるが、この構造は通常の電池にも適用できる。
【0016】
この積層体は、帯状であり、一対の帯状電極(アノード電極A、カソード電極K)と、帯状電極の一方(本図ではカソード電極K)を挟む一対のセパレータS1,S2とを有している。以下の説明では、三次元直交座標系が設定されており、帯状電極の幅方向をZ軸方向とし、厚み方向をX軸方向とし、これらの双方に垂直な長手方向をY軸とする。
【0017】
アノード電極Aを構成する帯状電極は、帯状の主金属箔A1及び主金属箔A1の両面にそれぞれ設けられた一対の活物質層AE1,AE2を有している。カソード電極Kを構成する帯状電極は、帯状の主金属箔K2及び主金属箔K2の両面にそれぞれ設けられた一対の活物質層KE1,KE2を有している。帯状の主金属箔A1,K2の隣接するもの同士の位置は幅方向(Z軸方向)に沿ってずれており、これらが重なっていない領域に活物質層AE1,AE2、KE1,KE2が形成されていない露出領域(図7の寸法Z3で示される)が設定されている。
【0018】
アノード電極Aにおいては、その主金属箔A1の上記露出領域の上面に、帯状の補助金属箔T1が、主金属箔A1の長手方向(Y軸)に沿って設けられている。同様に、カソード電極Kにおいては、その主金属箔K2の上記露出領域の上面に、帯状の補助金属箔T2が、主金属箔K2の長手方向(Y軸)に沿って設けられている。これらの補助金属箔T1と補助金属箔T2とは、Z軸方向に沿って離間している。
【0019】
セパレータS1,S2の幅は等しく、活物質層AE1,AE2、KE1,KE2の幅も等しいが、セパレータの幅の方が、活物質層の幅よりも若干広い。補助金属箔T1,T2の単独の厚みは、活物質層AE1,AE2、KE1,KE2の単独の厚みよりも薄い。上述の関係は、積層体の巻回後においても保持されるが、巻回後においては、補助金属箔T1,T2は、幅方向(Z軸方向)の両端に設けられる蓋となる電極板L1,L2とそれぞれ接触する(図6参照)。なお、補助金属箔T1,T2は、それぞれ主金属箔A1,K2と共に、電極板L1,L2に対して溶接され、特に、レーザ溶接される(図6参照)。
【0020】
なお、上述のセパレータS1,S2、活物質層AE1,AE2、KE1,KE2、金属箔A1,K2の材料としては、公知のものを用いればよい。これらの材料について、以下に一例を示すが、本発明は、これらの材料に限定されるものではない。」
(ウ)「【0023】
主金属箔A1、K2は集電体であり、アルミニウム箔や銅箔の表面をエッチングによって表面を荒く加工したもの使用することができる。なお、電極製造方法として、活性炭に導電補助剤とバインダを加えてシート状にして集電極に接着する方法のほか、活性炭をスラリー状にして集電極に塗工する方法なども無数に存在する。
【0024】
図3は、巻芯に巻きつけられた積層体の斜視図である。
【0025】
外面が円筒面を有する巻芯Bの周囲に、図1及び図2に示した積層体が巻きつけられ、これらから電気化学デバイス本体10が構成される。巻芯Bの中心軸はZ軸であり、積層体はZ軸回りに巻回されることになる。軸芯から離れるに従って、アノード電極Aとカソード電極Kとが交互に積層されており、これらの間にはセパレータS1,S2が介在している。Z軸方向に端部には、補助金属箔T1、T2が位置している。Z軸の正方向端部においては、XZ平面内において、補助金属箔T1が径方向に沿って隣接して配置されている。Z軸の負方向端部においては、XZ平面内において、補助金属箔T2が径方向に沿って隣接して配置されている。補助金属箔T1,T2の厚みは、端部において対向する主金属箔間の隙間の距離よりも小さい。」
(エ)「【0029】
なお、この電気化学デバイスの製造においては、電気化学デバイス本体10を、筒体Hの内部に、それぞれの軸を一致させて挿入し、筒体Hの両端開口部を蓋である電極板L1,L2によって順次封止するが、一方の電極板L1の封止前に電解液LQを包囲体内部に導入する。この封止には接着剤を用いることもできる。筒体H及び電極板L1,L2から包囲体が構成される。筒体Hの形状は円筒形の他、角筒形とすることもできる。また、巻芯Bの外面形状を角筒面とすることも可能である。巻芯B及び筒体Hの材料としては、アノード電極とカソード電極間の短絡を防止できるものであれば、各種材料を用いることができるが、例えば、絶縁体を用いることができる。巻芯B或いは筒体Hの構造は、絶縁体筒の両端に、金属筒を接合したものであってもよい。
【0030】
図5は、蓋となる電極板取付時の電気化学デバイスの斜視図であり、図6は、蓋となる電極板取付後の電気化学デバイスの縦断面図(XZ断面図)である。
【0031】
この電気化学デバイスは、巻回された帯状の積層体と、積層体を電解液LQと共に収納する包囲体とを備えている。上述のように、包囲体は筒体Hと電極板L1,L2からなる。電極板L1,L2と、補助金属箔T1,T2(主金属箔A1,K2:図1参照)とをそれぞれ電気的に接続するため、電極板L1,L2に外側からレーザビームLBを照射し、照射位置を溶解し、これらの内側にそれぞれ位置する補助金属箔T1,T2と電極板L1,L2とを接合する。レーザビームLBの照射位置には、凹部Dが形成される。複数の凹部DはXY平面内において放射状に形成されている。なお、レーザビームLBに代えて、高圧で電流を電極板L1,L2に与えることで、電流供給部位を溶解し、同様に、これらの内側にそれぞれ位置する補助金属箔T1,T2と電極板L1,L2とを接合することもできる。なお、包囲体の内部には電解液LQが封入されている。」
(オ)「【0049】
また、補助金属箔T1,T2の単独の厚みX4は、活物質層AE1,AE2,KE1,KE2の単独の厚みX2の最大値の1/3以上であることが好ましい。すなわち、(1/3)×X2≦X4<X2である。この場合、活物質層AE1,AE2,KE1,KE2のみならず補助金属層(当審注:「補助金属層」は「補助金属箔」の誤記と認める。)T1,T2が主金属箔A1,K2の強度増加に対して大きく寄与することとなり、この補助金属箔T1,T2を設けた主金属箔A1,K2が著しく変形しにくくなる。」
(カ)「【図1】
[図:0001411283000001.jpg]
【図2】
[図:0001411283000002.jpg]
【図3】
[図:0001411283000003.jpg]
【図4】
[図:0001411283000004.jpg]
【図5】
[図:0001411283000005.jpg]
【図6】
[図:0001411283000006.jpg]
」
イ 引用文献に記載される技術事項
(ア)【0001】の「本発明は、電池や電気二重層キャパシタ(EDLC)などの電気化学デバイスに関する。」との記載、【0015】の「この電気化学デバイスは、電気二重層キャパシタ(EDLC)であるが、この構造は通常の電池にも適用できる。」との記載によれば、引用文献1に記載された電気化学デバイスは電池であるといえる。また、【0031】の記載によれば、「電気化学デバイスは、巻回された帯状の積層体と、積層体を電解液LQと共に収納する包囲体とを備え」ている。
してみると、引用文献1には、巻回された帯状の積層体と、積層体を電解液LQと共に収納する包囲体とを備えた電池である電気化学デバイスが記載されているといえる。
(イ)【0016】の記載によれば、「積層体は、帯状であり、一対の帯状電極(アノード電極A、カソード電極K)と、帯状電極の一方」「を挟む一対のセパレータS1,S2とを有し」たものである。
(ウ)【0017】の記載によれば、「アノード電極Aを構成する帯状電極は、帯状の主金属箔A1及び主金属箔A1の両面にそれぞれ設けられた一対の活物質層AE1,AE2を有し」、「カソード電極Kを構成する帯状電極は、帯状の主金属箔K2及び主金属箔K2の両面にそれぞれ設けられた一対の活物質層KE1,KE2を有し」、「帯状の主金属箔A1,K2の隣接するもの同士の位置は幅方向(Z軸方向)に沿ってずれており、これらが重なっていない領域に活物質層AE1,AE2、KE1,KE2が形成されていない露出領域」「が設定」されている。また、【0023】の記載によれば、「主金属箔A1、K2は集電体」である。
(エ)【0018】の記載によれば、「アノード電極Aにおいては、その主金属箔A1の上記露出領域の上面に、帯状の補助金属箔T1が、主金属箔A1の長手方向(Y軸)に沿って設けられ」、「同様に、カソード電極Kにおいては、その主金属箔K2の上記露出領域の上面に、帯状の補助金属箔T2が、主金属箔K2の長手方向(Y軸)に沿って設けられ」ている。
また、【0049】の記載によれば、「補助金属箔T1,T2」は「主金属箔A1,K2の強度増加に対して」「寄与する」ものであり、図2より、補助金属箔T1は主金属箔A1の幅方向(Z軸)の一方の端部に、補助金属箔T2は主金属箔K2の幅方向(Z軸)の他方の端部に設けられていることが見てとれる。
(オ)【0031】の記載によれば、「包囲体は筒体Hと電極板L1,L2からなる」。
(カ)【0025】の記載によれば、「外面が円筒面を有する巻芯Bの周囲に」「積層体が巻きつけられ、これらから電気化学デバイス本体10が構成」される。また、「巻芯Bの中心軸はZ軸」である。
(キ)【0029】の記載によれば、「電気化学デバイス本体10を、筒体Hの内部に、それぞれの軸を一致させて挿入し、筒体Hの両端開口部を蓋である電極板L1,L2によって順次封止するが、一方の電極板L1の封止前に電解液LQを包囲体内部に導入」するものである。
(ク)【0031】の記載によれば、「電極板L1,L2と、補助金属箔T1,T2」「とをそれぞれ電気的に接続するため、電極板L1,L2に外側からレーザビームLBを照射し、照射位置を溶解し、これらの内側にそれぞれ位置する補助金属箔T1,T2と電極板L1,L2とを接合」し、「レーザビームLBの照射位置には、凹部Dが形成され」、「複数の凹部DはXY平面内において放射状に形成され」る。また、図5、図6によれば、複数の凹部Dは放射状に離散的に形成されることが見てとれ、図4ないし図6によれば、電極板L1,L2は、補助金属箔T1,T2と平坦な面上でそれぞれ電気的に接続されることが見てとれる。
ウ 引用発明
上記「イ(ア)ないし(ク)」によれば、引用文献1には電気化学デバイスとして以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「巻回された帯状の積層体と、積層体を電解液LQと共に収納する包囲体とを備えた電池である電気化学デバイスにおいて、
積層体は、帯状であり、一対の帯状電極(アノード電極A、カソード電極K)と、帯状電極の一方を挟む一対のセパレータS1,S2とを有し、
アノード電極Aを構成する帯状電極は、集電体である帯状の主金属箔A1及び主金属箔A1の両面にそれぞれ設けられた一対の活物質層AE1,AE2を有し、
カソード電極Kを構成する帯状電極は、集電体である帯状の主金属箔K2及び主金属箔K2の両面にそれぞれ設けられた一対の活物質層KE1,KE2を有し、
帯状の主金属箔A1,K2の隣接するもの同士の位置は幅方向(Z軸方向)に沿ってずれており、これらが重なっていない領域に活物質層AE1,AE2、KE1,KE2が形成されていない露出領域が設定されており、
アノード電極Aにおいては、その主金属箔A1の上記露出領域の上面に、帯状の補助金属箔T1が、主金属箔A1の長手方向(Y軸)に沿って設けられ、
同様に、カソード電極Kにおいては、その主金属箔K2の上記露出領域の上面に、帯状の補助金属箔T2が、主金属箔K2の長手方向(Y軸)に沿って設けられ、
補助金属箔T1,T2は主金属箔A1,K2の強度増加に対して寄与し、補助金属箔T1は主金属箔A1の幅方向(Z軸)の一方の端部に、補助金属箔T2は主金属箔K2の幅方向(Z軸)の他方の端部に設けられたものであり、
包囲体は筒体Hと電極板L1,L2からなり、
外面が円筒面を有し中心軸はZ軸である巻芯Bの周囲に積層体が巻きつけられ、これらから電気化学デバイス本体10が構成され、
電気化学デバイス本体10を、筒体Hの内部に、それぞれの軸を一致させて挿入し、筒体Hの両端開口部を蓋である電極板L1,L2によって順次封止するが、一方の電極板L1の封止前に電解液LQを包囲体内部に導入するものであり、
電極板L1,L2と、補助金属箔T1,T2とをそれぞれ電気的に接続するため、電極板L1,L2に外側からレーザビームLBを照射し、照射位置を溶解し、これらの内側にそれぞれ位置する補助金属箔T1,T2と電極板L1,L2とを接合し、レーザビームLBの照射位置には、凹部Dが形成され、複数の凹部DはXY平面内において放射状に離散的に形成され、
電極板L1,L2は、補助金属箔T1,T2と平坦な面上でそれぞれ電気的に接続される、
電気化学デバイス。」
(2)引用文献2
ア 記載事項
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
(ア)「【0001】
本発明は、渦巻き状構造を有する捲回電極体を備える電池に関する。詳しくは、当該捲回電極体と集電部材との接合構造に関する。」
(イ)「【0041】
外装ケース30は、捲回電極体20を収容し得る形状(本実施形態では円筒形状)を有する。また、その材質は、典型的な電池で使用されるものと同じであればよく特に制限はないが、比較的軽量な材質が挙げられる。例えば、好ましくは表面に絶縁用樹脂コーティングが施されているような金属製ケース、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂その他の合成樹脂製ケースが好適である。
【0042】
外装ケース30は、開口部32a、32b(図1)を有し、当該開口部32a、32b(図1)を介して捲回電極体20はケース内部に収容される。かかる外装ケース30の開口部32a、32bは、集電部材10a、10bによって塞がれている。すなわち、本実施形態の正極集電部材10aは、捲回電極体20の正極集電箔積層部分22aに接合されるとともに外装ケース30の上側の開口部32aを塞いでいる。また、負極集電部材10bも正極集電部材10aと同様に、捲回電極体20の負極集電箔積層部分22bに接合されるとともに外装ケース30の下側の開口部32bを塞いでいる。上記構成では、集電部材10a、10bに外装ケース30の蓋体としての機能を付与することができる。したがって電池の構成部品点数を減らすことができる。なお、外装ケース30が金属製の場合には、当該外装ケース30と集電部材10a、10bとの間に絶縁性を確保する絶縁部材(例えばガスケット等)が配置され得る。」
(ウ)「【図1】
[図:0001411283000007.jpg]
」
イ 引用文献に記載される技術事項
(ア)【0041】の記載によれば、「外装ケース30は、捲回電極体20を収容」するものである。
(イ)【0042】の記載によれば、「外装ケース30の開口部32a、32bは、集電部材10a、10bによって塞がれている」。
(ウ)図1によれば、集電部材10a、10bの外表面に捲回軸方向に突出する端子が設けられることが見てとれる。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用文献2には以下の技術事項が記載されているといえる。
「捲回電極体を収容する外装ケースの開口部を塞ぐ集電部材の外表面に捲回軸方向に突出する端子を設けること。」
2 対比及び判断
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「一対の帯状電極(アノード電極A、カソード電極K)」は本件発明1の「正極と負極」に相当し、引用発明の「電解液LQ」は本件発明1の「電解質」に相当する。
そして、引用発明は「巻回された帯状の積層体と、積層体を電解液LQと共に収納する包囲体とを備え」、「積層体は、帯状であり、一対の帯状電極(アノード電極A、カソード電極K)と、帯状電極の一方を挟む一対のセパレータS1,S2とを有し」たものであるから、積層体を構成するアノード電極Aとカソード電極Kとの間にも電解液が存在するのは明らかであり、引用発明の「巻回された帯状の積層体」は本件発明1の「電解質を介して正極と負極とを交互に積層してなる積層体」に相当する。
イ 引用発明の「カソード電極Kを構成する帯状電極は、集電体である帯状の主金属箔K2及び主金属箔K2の両面にそれぞれ設けられた一対の活物質層KE1,KE2を有し」「活物質層」「KE1,KE2が形成されていない露出領域が設定されており、」「カソード電極Kにおいては、その主金属箔K2の上記露出領域の上面に、帯状の補助金属箔T2が、主金属箔K2の長手方向(Y軸)に沿って設けられ」、「補助金属箔」「T2は主金属箔」「K2の強度増加に対して寄与し、」「補助金属箔T2は主金属箔K2の幅方向(Z軸)の他方の端部に設けられたもの」である。
してみると、引用発明は、カソード電極Kを構成する集電体である帯状の主金属箔K2の幅方向(Z軸)の他方の端部において、主金属箔K2の露出領域の上面に長手方向(Y軸)に沿って主金属箔K2の強度を増加する補助金属箔T2が設けられたものである。
ここで、引用発明の主金属箔K2の幅方向(Z軸)の他方の端部は、積層体の幅方向の一の側部を形成するから、本件発明1の「積層体の一方の側壁側」に相当する。また、引用発明のカソード電極Kを構成する集電体である帯状の主金属箔K2は、本件発明1の「正極を構成する板状の正極集電体」に、引用発明の補助金属箔T2は、本件発明1の「正極補強部材」にそれぞれ相当し、引用発明が主金属箔K2の幅方向(Z軸)の他方の端部において、主金属箔K2の露出領域の上面に長手方向(Y軸)に沿って補助金属箔T2が設けられたものであることは、本件発明1の「正極補強部材」を「正極を構成する板状の正極集電体の端部に取り付け」ることに相当する。
以上のことより、引用発明の「補助金属箔T2」は、本件発明1の「前記積層体の一方の側壁側において、前記正極を構成する板状の正極集電体の端部に取り付けられた正極補強部材」に相当する。
ウ 引用発明は、「電極板L1,L2と、補助金属箔T1,T2とをそれぞれ電気的に接続するため、電極板L1,L2に外側からレーザビームLBを照射し、照射位置を溶解し、これらの内側にそれぞれ位置する補助金属箔T1,T2と電極板L1,L2とを接合」するから、電極板L1,L2の一方は、補助金属箔T2の端部と接合されているといえ、本件発明1の「前記正極補強部材の端部に取り付けられた正極用タブ」に相当する。
そして、引用発明は、「中心軸はZ軸である巻芯Bの周囲に積層体が巻きつけられ」た「電気化学デバイス本体10」を「筒体Hの内部に、それぞれの軸を一致させて挿入し、筒体Hの両端開口部を蓋である電極板L1,L2によって順次封止」しているから、引用発明の電極板L1,L2の一方が主金属箔K2の幅方向(Z軸)の他方の端部を覆っていることは明らかであり、このことは、本件発明1の「前記積層体の一方の側壁側において」「正極用タブ」が「前記積層体の一方の側壁を覆う」ことに相当する。
以上のことより、引用発明の電極板L1,L2の一方は、本件発明1の「前記積層体の一方の側壁側において、」「前記積層体の一方の側壁を覆うとともに、前記正極補強部材の端部に取り付けられた正極用タブ」に相当する。
エ 引用発明の「アノード電極Aを構成する帯状電極は、集電体である帯状の主金属箔A1及び主金属箔A1の両面にそれぞれ設けられた一対の活物質層AE1,AE2を有し」「活物質層AE1,AE2」「が形成されていない露出領域が設定されており、」「アノード電極Aにおいては、その主金属箔A1の上記露出領域の上面に、帯状の補助金属箔T1が、主金属箔A1の長手方向(Y軸)に沿って設けられ、」「補助金属箔T1」「は主金属箔A1」「の強度増加に対して寄与し、補助金属箔T1は主金属箔A1の幅方向(Z軸)の一方の端部に」「設けられたもの」である。
そして、引用発明は「包囲体は筒体Hと電極板L1,L2からなり」、「電極板L1,L2と、補助金属箔T1,T2とをそれぞれ電気的に接続するため、電極板L1,L2に外側からレーザビームLBを照射し、照射位置を溶解し、これらの内側にそれぞれ位置する補助金属箔T1,T2と電極板L1,L2とを接合」するものであるから、アノード電極Aを構成する補助金属箔T1、電極板L1,L2の他方は、補助金属箔T2、電極板L1,L2の一方と積層体の反対側に位置するものである。
以上のことより、上記イおよびウの対比を考慮すると、引用発明の「補助金属箔T1」は、本件発明1の「前記積層体の他方の側壁側において、前記負極を構成する板状の負極集電体の端部に取り付けられた負極補強部材」に相当する。また、引用発明の電極板L1,L2の他方は、本件発明1の「前記積層体の他方の側壁側において、」「前記積層体の他方の側壁を覆うとともに、前記負極補強部材の端部に取り付けられた負極用タブ」に相当する。
オ 本件発明1は「前記積層体と、前記正極補強部材と、前記正極用タブと、前記負極補強部材と、前記負極用タブと、を内包する外装体」を有するのに対し、引用発明は「筒体Hと電極板L1、L2からな」る「包囲体」を有する点で相違する。
カ 引用発明の「電池である電気化学デバイス」は本件発明1の「二次電池」と「電池」である点で共通する。
ただし、本件発明1は「二次電池」であるのに対して、引用発明の電気化学デバイスは「電池」であるものの二次電池とは特定されていない点で相違する。
キ してみると、本件発明1と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「電解質を介して正極と負極とを交互に積層してなる積層体と、
前記積層体の一方の側壁側において、
前記正極を構成する板状の正極集電体の端部に取り付けられた正極補強部材と、
前記積層体の一方の側壁を覆うとともに、前記正極補強部材の端部に対して取り付けられた正極用タブと、
前記積層体の他方の側壁側において、
前記負極を構成する板状の負極集電体の端部に取り付けられた負極補強部材と、
前記積層体の他方の側壁を覆うとともに、前記負極補強部材の端部に対して取り付けられた負極用タブと、を有することを特徴とする電池。」
〈相違点1〉
本件発明1は「前記積層体と、前記正極補強部材と、前記正極用タブと、前記負極補強部材と、前記負極用タブと、を内包する外装体」を有するのに対し、引用発明は「筒体Hと電極板L1、L2からな」る「包囲体」を有する点。
〈相違点2〉
本件発明1は「二次電池」であるのに対して、引用発明の電気化学デバイスは「電池」であるものの二次電池とは特定されていない点。
ク 上記相違点1について検討する。
電池全体を絶縁性の部材などの外装材により被覆することは例示するまでもなく周知技術であり、引用発明に周知技術を適用し、筒体H、電極板L1,L2からなる包囲体及び包囲体に収納される積層体を外装材により被覆して本件発明1の相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
ケ 上記相違点2について検討する。
電池として二次電池は例示するまでもなく周知のものであり、引用発明の電池である電気化学デバイスを二次電池とし本件発明1の相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
コ したがって、本件の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)本件発明2について
引用発明は「外面が円筒面を有し中心軸はZ軸である巻芯Bの周囲に積層体が巻きつけられ、これらから電気化学デバイス本体10が構成され、電気化学デバイス本体10を、筒体Hの内部に、それぞれの軸を一致させて挿入し、筒体Hの両端開口部を蓋である電極板L1,L2によって順次封止」したものである。また、引用発明は「電極板L1,L2と、補助金属箔T1,T2とをそれぞれ電気的に接続するため、電極板L1,L2に外側からレーザビームLBを照射し、照射位置を溶解し、これらの内側にそれぞれ位置する補助金属箔T1,T2と電極板L1,L2とを接合し、レーザビームLBの照射位置には、凹部Dが形成され、複数の凹部DはXY平面内において放射状に離散的に形成され」るものである。
したがって、本件の請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)本件発明3について
電池の電極体構造として、巻回(捲回)型、積層型は例示するまでもなくいずれも周知のものであり、引用発明において、正極、負極をそれぞれ複数含む積層型の構造とすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、本件の請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)本件発明4について
ア 本件発明4は、本件発明1の構成に加え「前記正極用タブが、前記正極補強部材を一方の主面に接合する正極用平坦部と、前記正極用平坦部の他方の主面から突出する正極用突出部と、を有し、前記負極用タブが、前記負極補強部材を一方の主面に接合する負極用平坦部と、前記負極用平坦部の他方の主面から突出する負極用突出部と、を有する」との構成を有するものである。
ここで当該構成について引用発明と対比すると、引用発明の「電極板L1,L2は、補助金属箔T1,T2と平坦な面上でそれぞれ電気的に接続される」ものであるから、引用発明の「電極板L1,L2」は、本件発明4の「前記正極用タブが、前記正極補強部材を一方の主面に接合する正極用平坦部と」「を有し、前記負極用タブが、前記負極補強部材を一方の主面に接合する負極用平坦部と」「を有する」点で一致する。
しかしながら、本件発明4は、「前記正極用タブが、」「前記正極用平坦部の他方の主面から突出する正極用突出部と、を有し、前記負極用タブが、」「前記負極用平坦部の他方の主面から突出する負極用突出部と、を有する」のに対して、引用発明の「電極板L1,L2」は突出部を有さない点で相違する。
イ 上記アの対比に加え、上記(1)で検討した引用発明と本件発明1との対比を考慮すると、引用発明と本件発明4とは、以下の点で相違しその余で一致する。
〈相違点3〉
本件発明4は「前記積層体と、前記正極補強部材と、前記正極用タブと、前記負極補強部材と、前記負極用タブと、を内包する外装体」を有するのに対し、引用発明は「筒体Hと電極板L1、L2からな」る「包囲体」を有する点。
〈相違点4〉
本件発明4は、「前記正極用タブが、」「前記正極用平坦部の他方の主面から突出する正極用突出部と、を有し、前記負極用タブが、」「前記負極用平坦部の他方の主面から突出する負極用突出部と、を有する」のに対して、引用発明の「電極板L1,L2」は突出部を有さない点。
〈相違点5〉
本件発明4は「二次電池」であるのに対して、引用発明の電気化学デバイスは「電池」であるものの二次電池とは特定されていない点。
ウ 相違点3および相違点5に係る本件発明4の構成を得ることは、上記「(1)クおよびケ」で検討したのと同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たことと認められる。
エ 相違点4について検討する。
引用文献2には、「捲回電極体を収容する外装ケースの開口部を塞ぐ集電部材の外表面に捲回軸方向に突出する端子を設けること」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。
引用発明と引用文献2記載の技術はともに、捲回された積層体(捲回電極体)を収容する筒体(外装ケース)の開口部を塞ぐ電極板(集電部材)を有する電池に関する技術であり、引用発明に引用文献2記載の技術を適用し電極板の外表面に突出する端子を設け、上記相違点4に係る本件発明4の構成を得ることは当業者が容易になし得たことと認められる。
オ したがって、本件の請求項4に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)本件発明5について
引用発明は「積層体は、」「集電体である帯状の主金属箔A1」、「集電体である帯状の主金属箔K2」を有し、「外面が円筒面を有し中心軸はZ軸である巻芯Bの周囲に積層体が巻きつけられ、これらから電気化学デバイス本体10が構成され、電気化学デバイス本体10を、筒体Hの内部に、それぞれの軸を一致させて挿入し、筒体Hの両端開口部を蓋である電極板L1,L2によって順次封止」したものであるから、電気化学デバイス本体10を構成する集電体である帯状の主金属箔A1,K2と電極板L1,L2はほぼ直角に接合されているものと認められる。
したがって、本件の請求項5に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(6)本件発明8ないし10について
本件発明8ないし10は、本件訂正により当審が令和5年11月8日付けで特許権者に通知した取消理由において取消理由を通知していない請求項6および7のみを引用するものとなった。
したがって、当審が令和5年11月8日付けで特許権者に通知した取消理由は解消した。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の主張
申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張している。
(1)請求項1、2、5、9に係る発明は甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、請求項1、2、3、5、8、9に係る発明は甲第2号証に記載された発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、2、3、5、8、9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項1、2、4ないし7、9、10に係る発明は甲第1号証および甲第3ないし5号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、請求項1ないし10に係る発明は甲第2号証および甲第3ないし5号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特開2011-176137号公報(引用文献1)
甲第2号証:特開2015-82499号公報
甲第3号証:特開2009-16188号公報(引用文献2)
甲第4号証:特開2019-53898号公報
甲第5号証:特開2012-43609号公報
そこで、上記「第4」で検討した取消理由のない請求項6ないし10について、以下検討する。
2 当審の判断
(1)特許法第29条第1項の規定違反について
本件発明8は、本件訂正により、申立人が甲第2号証に記載された発明に基づく特許法第29条第1項の規定違反を申し立てていない請求項6および7のみを引用するものとなった。
したがって、請求項8に係る発明は甲第2号証に記載された発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項8に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとの申立人の主張は採用できない。
また、本件発明9は、本件訂正により、申立人が甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明に基づく特許法第29条第1項の規定違反を申し立てていない請求項6および7のみを引用するものとなった。
したがって、請求項9に係る発明は甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項9に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとの申立人の主張は採用できない。
(2)特許法第29条第2項の規定違反(進歩性の欠如)について
ア 甲第1号証に記載された発明に基づく主張について
(ア)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証は、当審が令和5年11月8日付けで特許権者に通知した取消理由で引用した引用文献1であり、上記「第5」の「1(1)ウ」に記載された「引用発明」と同一の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
(イ)本件発明6について
a 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、概略以下のように主張している。
本件発明6と甲1発明とは、構成6A(前記積層体の積層方向に並ぶ、複数の前記正極補強部材、複数の前記負極補強部材の中心位置が、それぞれ、前記正極用タブと前記負極用タブの中心同士を結ぶ中心線から離間しており)および構成6B(それぞれの前記中心位置の離間の大きさが、前記積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少することを特徴とする)において相違するものの、甲第4号証の段落【0012】の記載、甲第5号証の段落【0038】、【0040】の記載に鑑みれば、甲1発明において、積層体の積層方向に並ぶ、複数の補助金属箔T1、複数の補助金属箔T2の中心位置が、それぞれ、電極板L1と電極板L2の中心同士を結ぶ中心線から離間するように構成することは、当業者が容易に想到でき、また、甲1発明において、複数の補助金属箔T1、複数の補助金属箔T2の中心位置の離間の大きさが、積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少するように構成することは、当業者が容易に想到できる。(第38頁下から4行ないし第39頁第21行)
b 当審の判断
甲1発明は「巻回された帯状の積層体」からなり、「積層体は、帯状であり、一対の帯状電極(アノード電極A、カソード電極K)と、帯状電極の一方を挟む一対のセパレータS1,S2とを有し」、「アノード電極Aを構成する帯状電極は、集電体である帯状の主金属箔A1」を有し、「カソード電極Kを構成する帯状電極は、集電体である帯状の主金属箔K2」を有し、「主金属箔A1の上記露出領域の上面の一部に、帯状の補助金属箔T1が、主金属箔A1の長手方向(Y軸)に沿って設けられ、」「主金属箔K2の上記露出領域の上面の一部に、帯状の補助金属箔T2が、主金属箔K2の長手方向(Y軸)に沿って設けられ」るものである。
してみると、甲1発明は、1つの帯状の補助金属箔T1及び1つの帯状の補助金属箔T2から構成されるものであり、積層体の積層方向に並ぶ、複数の補助金属箔T1、複数の補助金属箔T2を有するものではない。
したがって、甲第4号証に各電極部材のタブを積層時の直下の電極部材のタブに対して平面方向に重複部を有しつつオフセットを有するように形成することが記載され、甲第5号証に正極集電板は積層電極体の積層方向にわたる複数の正極板にレーザ溶接され、負極集電板は積層電極体の負極板の先端部に溶接されることが記載されていることを考慮しても、甲1発明と、甲第4号証及び甲第5号証の記載に基づき、本件発明6の構成(構成6A、6B)とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、甲第3号証に正極集電体および負極集電体に捲回方向に突出する端子を接続することが記載されていることを考慮しても、甲1発明と、甲第3号証の記載に基づき、本件発明6の構成(構成6A、6B)とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、申立人の意見は採用できない。
(ウ)本件発明7について
a 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、概略以下のように主張している。
本件発明7と甲1発明とは、構成7B(前記正極用タブと前記負極用タブの中心同士を結ぶ中心線と直交する方向において、複数の前記正極補強部材の長さ、複数の負極補強部材の長さが、それぞれ、前記積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少することを特徴とする)において相違するものの、電極板L1と電極板L2の中心同士を結ぶ中心線と直交する方向において、複数の補助金属箔T1の長さ、複数の補助金属箔T2の長さが、それぞれ、積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少するように構成することは、当業者が適宜行う設計事項である。(第40頁第6ないし12行)
b 当審の判断
上記「(イ)b」で検討したように、甲1発明は、1つの帯状の補助金属箔T1及び1つの帯状の補助金属箔T2から構成されるものであり、積層体積層方向に並ぶ、複数の補助金属箔T1、複数の補助金属箔T2を有するものではない。
したがって、甲1発明に基づき、本件発明7の構成(構成7B)とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、申立人の意見は採用できない。
(エ)本件発明9、10について
本件発明9、10は、本件発明6または7のみを直接又は間接的に引用するものであるから、甲1発明と、甲第3号証ないし甲第5号証の記載に基づき、本件発明9、10の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、申立人の意見は採用できない。
イ 甲第2号証に記載された発明に基づく主張について
(ア)甲第2号証について
a 甲2号証の記載
甲第2号証には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
(a)「【0004】
しかし、このような製造工程はレーザビームが電極板組立の内部にまで流入することによって、電極板組立の内部に不具合を生ずるという問題があった。例えば、活物質非コーティング部の内部にまでレーザビームが流入することによって、セパレータおよび/または電極板が損傷しやすく、したがって電極板の間に内部短絡が発生するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、レーザビームによって集電板が電極組立体に溶接されるとき、レーザビームおよび/またはスパッタが電極組立体の内部に流入しないようにして、電極板組立の内部に不具合を生ずることを防止することが可能な、新規かつ改良された2次電池を提供することにある。」
(b)「【0027】
図1a~図1d及び図2に示されているように、本発明の一実施例による2次電池100はケース110、電極組立体120、第1集電板130a、第1光吸収部材140a、第1絶縁部材150a、第2集電板130b、第2光吸収部材140b、第2絶縁部材150b、キャッププレート160、第1端子170aおよび第2端子170bを含む。」
(c)「【0030】
電極組立体120は、長側壁111a、111bに対向し、ほぼ平らで互いに向き合う一対の長側面120a、120bと、底壁113に対向し、長側面120a、120bを連結し互いに向き合う一対の短側面120c、120dとを含む。ここで、長側面120a、120bの面積は短側面120c、120dの面積に比べて相対的に広い。
【0031】
また、電極組立体120の第1活物質がコーティングされない第1活物質非コーティング部121a(第1無地部)、および第2活物質がコーティングされない第2活物質非コーティング部122a(第2無地部)は互いにセパレータ123に対して反対方向に一定の長さ突出されている。つまり、第1活物質非コーティング部121aは長側面120a、120bおよび短側面120c、120dに平行に一側方向に一定の長さ突出し、第2活物質非コーティング部122aは長側面120a、120bおよび短側面120c、120dに平行に前記一側方向の反対である他側方向に一定の長さ突出している。また、電極組立体120の第1活物質非コーティング部121aおよび第2活物質非コーティング部122aはそれぞれケース110に具備された短側壁112a、112bに向かって突出されている。
【0032】
さらに、電極組立体120は薄い板型あるいは膜型からなる第1電極板121、第2電極板122、および第1、第2電極板121、122の間に介在したセパレータ123の積層体が巻き取られるか、または重なって形成される。ここで、第1電極板121は正極として動作することができ、第2電極板122は陰極として動作することができる。もちろん、その逆も可能である。
【0033】
第1電極板121はアルミニウムまたはアルミニウム合金のような金属箔からなる第1電極集電体121bに遷移金属酸化物などの第1電極活物質121c(場合によっては、第1活物質コーティング部という)が塗布されて形成され、第1活物質が塗布されない領域である第1活物質非コーティング部121aを含む。第1活物質非コーティング部121aは第1電極板121と第1集電板130aとの間の電流の通路となる。なお、本発明において本実施例は前記第1電極板121の材質を限定するものではない。
【0034】
第2電極板122は銅、銅合金またはニッケルのような金属箔からなる第2電極集電体122bに黒鉛または炭素などの第2電極活物質122c(場合によっては、第2活物質コーティング部という)が塗布されて形成され、第2活物質が塗布されない領域である第2活物質非コーティング部122aを含む。第2活物質非コーティング部122aは第2電極板122と第2集電板130bとの間の電流の通路となる。なお、本発明において本実施例は前記第2電極板122の材質を限定するものではない。このような第1電極板121および第2電極板122は極性を異にして配置されることができる。
【0035】
セパレータ123は第1電極板121と第2電極板122との間に位置して相互間で短絡を防止しリチウムイオンの移動を可能にする役割を果たし、ポリエチレンやポリプロピレンやポリエチレンとポリプロピレンの複合フイルムからなる。なお、本発明において本実施例は前記セパレータ123の材質を限定するものではない。
【0036】
このような電極組立体120は前述のように電解液と共にケース110に収容される。前記電解液はEC(ethylenecarbonate)、PC(propylene carbonate)、DEC(diethyl carbonate)、EMC(ethyl methyl carbonate)、DMC(dimethyl carbonate)のような有機溶媒にLiPF6、LiBF4のようなリチウム塩からなることができる。また、前記電解液は液体、固体またはゲル状であり得る。
【0037】
第1光吸収部材140aは第1活物質非コーティング部121aに結合している。つまり、第1光吸収部材140aは多数の第1活物質非コーティング部121aがなす空間で第1活物質非コーティング部121aに挟まれている。このようにして、第1光吸収部材140aの一側に位置した第1電極板121の第1活物質121c、セパレータ123および第2電極板122は第1光吸収部材140aを通じて外側に露出しない。言い換えれば、第1電極板121の第1活物質121c、セパレータ123および第2電極板122は第1光吸収部材140aによって第1集電板130aから隔離される。したがって、後述する第1集電板130aと第1活物質非コーティング部121aの間のレーザ溶接工程で、レーザビームおよびスパッタなどが第1電極板121の第1活物質121c、セパレータ123および第2電極板122に流入しない。」
(d)「【0040】
第1集電板130aはケース110の内側に位置し、第1端子170aと電極組立体120の間に電気的に接続する。具体的に、第1集電板130aは第1端子170aに電気的に連結されるほぼ平らな第1領域131a、第1領域131aから折り曲げられて電極組立体120の第1活物質非コーティング部121aに電気的に連結されるほぼ平らな第2領域132a、そして第1領域131aと第2領域132aとの間に形成された折り曲げ領域133aを含む。さらに、第2領域132aには最外郭の第1活物質非コーティング部121aを囲むように第2領域132aから折り曲げられた第3領域134aをさらに形成することができる。
【0041】
ここで、第1集電板130aのうち平らな第2領域132aは第1活物質非コーティング部121aの積層体を積層する方向に垂直な方向又は積層体を巻き取る軸方向(以下、第1方向と呼ぶ。)の端部に溶接される。このため、第1集電板130aのうち平らな第2領域132aの面は上記第1方向に対してほぼ垂直であってもよい。また、第1集電板130aのうち第2領域132aと第1活物質非コーティング部121aの上記第1方向の端部とをレーザ溶接する際にレーザ溶接を妨害しないように、第1光吸収部材140aは上記第1方向に対してほぼ垂直に位置することができる。」
(e)「【0051】
一方、第2集電板130b、第2光吸収部材140bおよび第2端子170bの構造は基本的に前述した第1集電板130a、第1光吸収部材140aおよび第1端子170aの構造と同一または類似する。さらに、第2集電板130bにはヒューズホール135bおよびヒューズ部136bが存在する。もちろん、場合によってはヒューズホール135bおよびヒューズ部136bは存在しないこともある。
【0052】
ただし、第2光吸収部材140bは第2活物質非コーティング部122aに結合している。つまり、第2光吸収部材140bは多数の第2活物質非コーティング部122aがなす空間で第2活物質非コーティング部122aに挟まれている。このようにして、第2光吸収部材140bの一側に位置した第2電極板122の第2活物質122c、セパレータ123および第1電極板121は第2光吸収部材140bを通じて外側に露出しない。言い換えれば、第2電極板122の第2活物質122c、セパレータ123および第1電極板121は第2光吸収部材140bによって第2集電板130bから隔離される。したがって、後述する第2集電板130bと第2活物質非コーティング部122bの間のレーザ溶接工程でレーザビームおよびスパッタなどが第2電極板122の第2活物質122c、セパレータ123および第1電極板121に流入しない。」
(f)「【図1b】
[図:0001411283000008.jpg]
【図2】
[図:0001411283000009.jpg]
」
b 甲第2号証に記載された技術事項
(a)段落【0027】の記載によれば、甲第2号証には「ケース110、電極組立体120、第1集電板130a、第1光吸収部材140a、第1絶縁部材150a、第2集電板130b、第2光吸収部材140b、第2絶縁部材150b、キャッププレート160、第1端子170aおよび第2端子170bを含む」「2次電池100」が記載されている。
(b)段落【0032】には、「電極組立体120は薄い板型あるいは膜型からなる第1電極板121、第2電極板122、および第1、第2電極板121、122の間に介在したセパレータ123の積層体が巻き取られるか、または重なって形成される」ことが記載されている。
(c)段落【0033】、【0034】には、「第1電極板121は」「第1電極集電体121bに」「第1電極活物質121c」「が塗布されて形成され、第1活物質が塗布されない領域である第1活物質非コーティング部121aを含」み、「第2電極板122は」「第2電極集電体122bに」「第2電極活物質122c」「が塗布されて形成され、第2活物質が塗布されない領域である第2活物質非コーティング部122aを含む」ことが記載されている。
(d)段落【0031】には、「第1活物質非コーティング部121a」「、および」「第2活物質非コーティング部122a」「は互いにセパレータ123に対して反対方向に一定の長さ突出されている」ことが記載されている。
(e)段落【0037】には、「第1光吸収部材140aは多数の第1活物質非コーティング部121aがなす空間で第1活物質非コーティング部121aに挟まれ」、「第1電極板121の第1活物質121c、セパレータ123および第2電極板122は第1光吸収部材140aによって第1集電板130aから隔離され」、「第1集電板130aと第1活物質非コーティング部121aの間のレーザ溶接工程で、レーザビームおよびスパッタなどが第1電極板121の第1活物質121c、セパレータ123および第2電極板122に流入しない」ことが記載されている。
(f)段落【0040】、【0041】には、「第1集電板130aは第1端子170aに電気的に連結されるほぼ平らな第1領域131a、第1領域131aから折り曲げられて電極組立体120の第1活物質非コーティング部121aに電気的に連結されるほぼ平らな第2領域132a、そして第1領域131aと第2領域132aとの間に形成された折り曲げ領域133aを含」み、「さらに、第2領域132aには最外郭の第1活物質非コーティング部121aを囲むように第2領域132aから折り曲げられた第3領域134aをさらに形成することができ」、「第1集電板130aのうち平らな第2領域132aは第1活物質非コーティング部121aの積層体を積層する方向に垂直な方向又は積層体を巻き取る軸方向」「の端部に溶接される」ことが記載されている。
(g)段落【0051】には、「第2集電板130b、第2光吸収部材140bおよび第2端子170bの構造は」「第1集電板130a、第1光吸収部材140aおよび第1端子170aの構造と同一」であることが記載されている。
c 甲第2号証に記載された発明
上記「b(a)ないし(g)」によれば、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「ケース110、電極組立体120、第1集電板130a、第1光吸収部材140a、第1絶縁部材150a、第2集電板130b、第2光吸収部材140b、第2絶縁部材150b、キャッププレート160、第1端子170aおよび第2端子170bを含む2次電池100において、
電極組立体120は薄い板型あるいは膜型からなる第1電極板121、第2電極板122、および第1、第2電極板121、122の間に介在したセパレータ123の積層体が巻き取られるか、または重なって形成され、
第1電極板121は第1電極集電体121bに第1電極活物質121cが塗布されて形成され、第1活物質が塗布されない領域である第1活物質非コーティング部121aを含み、
第2電極板122は第2電極集電体122bに第2電極活物質122cが塗布されて形成され、第2活物質が塗布されない領域である第2活物質非コーティング部122aを含み、
第1活物質非コーティング部121a、および第2活物質非コーティング部122aは互いにセパレータ123に対して反対方向に一定の長さ突出され、
第1光吸収部材140aは多数の第1活物質非コーティング部121aがなす空間で第1活物質非コーティング部121aに挟まれ、第1電極板121の第1活物質121c、セパレータ123および第2電極板122は第1光吸収部材140aによって第1集電板130aから隔離され、第1集電板130aと第1活物質非コーティング部121aの間のレーザ溶接工程で、レーザビームおよびスパッタなどが第1電極板121の第1活物質121c、セパレータ123および第2電極板122に流入せず、
第1集電板130aは第1端子170aに電気的に連結されるほぼ平らな第1領域131a、第1領域131aから折り曲げられて電極組立体120の第1活物質非コーティング部121aに電気的に連結されるほぼ平らな第2領域132a、そして第1領域131aと第2領域132aとの間に形成された折り曲げ領域133aを含み、さらに、第2領域132aには最外郭の第1活物質非コーティング部121aを囲むように第2領域132aから折り曲げられた第3領域134aをさらに形成することができ、第1集電板130aのうち平らな第2領域132aは第1活物質非コーティング部121aの積層体を積層する方向に垂直な方向又は積層体を巻き取る軸方向の端部に溶接され、
第2集電板130b、第2光吸収部材140bおよび第2端子170bの構造は第1集電板130a、第1光吸収部材140aおよび第1端子170aの構造と同一である、
2次電池。」
(イ)本件発明6について
a 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、本件発明6と本件発明6が引用する独立請求項である請求項1、4に係る発明である本件発明1、4について、概略以下のように主張している。
甲第2号証の第1光吸収部材140aは、本件発明1の構成1B(前記積層体の一方の側壁側において、前記正極を構成する板状の正極集電体の端部に取り付けられた正極補強部材)と対応し、甲第2号証の第2光吸収部材140bは、本件発明1の構成1D(前記積層体の他方の側壁側において、前記負極を構成する板状の負極集電体の端部に取り付けられた負極補強部材)と対応する。(第34頁第20ないし25行)
甲第2号証の第1光吸収部材140aは、本件発明4の構成4B(前記積層体の一方の側壁側において、前記正極を構成する板状の正極集電体の端部に取り付けられた正極補強部材)と対応し、甲第2号証の第2光吸収部材140bは、本件発明4の構成4D(前記積層体の他方の側壁側において、前記負極を構成する板状の負極集電体の端部に取り付けられた負極補強部材)と対応する。(第41頁第6ないし11行)
本件発明6と甲2発明とは、構成6A(前記積層体の積層方向に並ぶ、複数の前記正極補強部材、複数の前記負極補強部材の中心位置が、それぞれ、前記正極用タブと前記負極用タブの中心同士を結ぶ中心線から離間しており)および構成6B(それぞれの前記中心位置の離間の大きさが、前記積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少することを特徴とする)において相違するものの、甲第4号証の段落【0012】の記載、甲第5号証の段落【0038】、【0040】の記載に鑑みれば、甲2発明において、積層体の積層方向に並ぶ、複数の第1光吸収部材140a、複数の第2光吸収部材140bの中心位置が、それぞれ、第1集電板130aと第2集電板130bの中心同士を結ぶ中心線から離間するように構成すること、すなわち、本件発明6の構成6Aのように構成することは、当業者が容易に想到でき、また、甲2発明において、複数の第1光吸収部材140a、複数の第2光吸収部材140bの中心位置の離間の大きさが、積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少するように構成すること、すなわち、本件発明6の構成6Bのように構成することは、当業者が容易に想到できる。(第42頁下から6行ないし第43頁第19行)
b 当審の判断
甲2発明の「第1光吸収部材140a」は、「多数の第1活物質非コーティング部121aがなす空間で第1活物質非コーティング部121aに挟まれ、第1電極板121の第1活物質121c、セパレータ123および第2電極板122は第1光吸収部材140aによって第1集電板130aから隔離され」、「第1集電板130aと第1活物質非コーティング部121aの間のレーザ溶接工程で、レーザビームおよびスパッタなどが第1電極板121の第1活物質121c、セパレータ123および第2電極板122に流入」しないようにするものである。また、甲2発明の「第2光吸収部材140b」「の構成は」「第1光吸収部材140a」「の構造と同一」である。
してみると、甲2発明の「第1光吸収部材140a」、「第1光吸収部材140a」はいずれも、レーザビームおよびスパッタなどが活物質やセパレータ等に流入しないように、活物質やセパレータ等と集電板とを隔離するものであり、集電体の破損等を防ぐものではない。
よって、甲2発明の「第1光吸収部材140a」、「第2光吸収部材140b」は、本件発明1又は4の「正極補強部材」、「負極補強部材」に相当するとはいえない。
また、甲2発明は、レーザビームが電極板組立の内部にまで流入することによって、電極板組立の内部に不具合を生ずるという問題を解決しようとするものであるから(甲第2号証の段落【0004】)、甲2発明において、レーザビーム等の流入を防ぐための構成である光吸収部材を集電体の破損等を防ぐ補強部材とする動機はない。
したがって、甲2発明に基づき、本件発明1又は4の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、甲第4号証に各電極部材のタブを積層時の直下の電極部材のタブに対して平面方向に重複部を有しつつオフセットを有するように形成することが記載され、甲第5号証に正極集電板は積層電極体の積層方向にわたる複数の正極板にレーザ溶接され、負極集電板は積層電極体の負極板の先端部に溶接されることが記載されていることを考慮しても、甲2発明と、甲第4号証及び甲第5号証の記載に基づき、本件発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、甲第3号証に正極集電体および負極集電体に捲回方向に突出する端子を接続することが記載されていることを考慮しても、甲2発明と、甲第3号証の記載に基づき、本件発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、申立人の意見は採用できない。
(ウ)本件発明7について
a 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、概略以下のように主張している。
本件発明7と甲2発明とは、構成7B(前記正極用タブと前記負極用タブの中心同士を結ぶ中心線と直交する方向において、複数の前記正極補強部材の長さ、複数の負極補強部材の長さが、それぞれ、前記積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少することを特徴とする)において相違するものの、第1集電板130aと第2集電板130bの中心同士を結ぶ中心線と直交する方向において、複数の第1光吸収部材140aの長さ、複数の第2光吸収部材140bの長さが、それぞれ、積層方向の並び順にしたがって、単調に増加または減少するように構成することは、当業者が適宜行う設計事項である。(第44頁第5ないし11行)
b 当審の判断
上記「(イ)b」で検討したように、甲2発明の「第1光吸収部材140a」、「第2光吸収部材140b」は本件発明1又は4の「正極補強部材」、「負極補強部材」に相当するとはいえず、また、甲2発明において、光吸収部材を補強部材とする動機はない。
したがって、甲2発明に基づき、本件発明7の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、申立人の意見は採用できない。
(エ)本件発明8ないし10について
本件発明8ないし10は、本件発明6または7のみを直接又は間接的に引用するものであるから、甲2発明と、甲第3号証ないし甲第5号証の記載に基づき、本件発明8ないし10の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、申立人の意見は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本件の請求項1ないし5に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明、引用文献2(甲第3号証)に記載された技術及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。そうすると、本件の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件の請求項6ないし10に係る特許は、取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項6ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700366