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特許異議申立

2023-700344

樹脂組成物

審判番号
2023-700344
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-244936外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7148946
請求日
2023年04月05日
審決日
2024年02月08日
公報発行日
2024年05月31日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7148946号発明「樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7148946号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
特許第7148946号の請求項1~14に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 21項目
理 由

第1 手続の経緯

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1 特許異議の申立ての経緯

特許第7148946号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成29年12月21日に出願された特願2017-244936号であって、令和4年9月28日にその特許権の設定登録(請求項の数14)がされ、同年10月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年4月5日に加藤 三千代(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~14)がされたものである。

その後の経緯は、以下のとおりである。

令和5年6月16日付け: 取消理由通知
同年8月14日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年8月18日付け: 訂正請求があった旨の申立人への通知
同年9月11日 : 申立人による意見書の提出

2 証拠方法

申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証:再公表特許WO2014/188934号公報
甲第2号証:特開平7-304851号公報
甲第3号証:国際公開2009/069429号
甲第4号証:特開平6-232296号公報
甲第5号証:国際公開2014/013780号
甲第6号証:特開2015-218229号公報
甲第7号証:特開2003-1487号公報
甲第8号証:化学便覧 基礎編改訂5版 表紙、目次vii、II-336頁、II-337頁、奥付 編者 社団法人日本化学会 発行日平成16年2月20日 発行所丸善株式会社
甲第9号証:特開平10-204319号公報
甲第10号証:ナノマテリアル情報提供シート 材料名:非晶質コロイダルシリカ 事業者名:日産化学工業株式会社 発行:経済産業省平成28年6月時点
甲第11号証:再公表特許WO2009/008509号公報

甲第1号証等を、順に「甲1」等という。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

令和5年8月14日提出の訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラー、および、(D2)シランカップリング剤を含有する樹脂組成物であり、前記(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするシリカフィラーである、樹脂組成物。」と記載されているのを、

「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラー、および、(D2)シランカップリング剤を含有する樹脂組成物であり、前記(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするシリカフィラー(ただし、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」を除く)であり、前記(D2)シランカップリング剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである、樹脂組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~14も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に「前記pKaが9.4以上の塩基性物質が、3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)、および、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の樹脂組成物。」と記載されているのを、

「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラー、および、(D2)シランカップリング剤を含有する樹脂組成物であり、前記(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするシリカフィラーであり、前記pKaが9.4以上の塩基性物質が、3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)、および、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)からなる群から選択される少なくとも一つであり、前記(D2)シランカップリング剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである、樹脂組成物。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3~14も同様に訂正する)。

(3)一群の請求項について

訂正前の請求項1~14について、請求項2~14は請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~14に対応する訂正後の請求項1~14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

なお、訂正により、請求項2は請求項1を引用しないものとされたが、特許権者により「別の訂正単位とする求め」はない。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1

訂正事項1のうち、(C2)成分のシリカフィラーから「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」を除く訂正は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項1のうち、(D2)シランカップリング剤が「前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」ことを特定する訂正は、本取消理由通知書の取消理由1(明確性要件)に記載の「(D2)シランカップリング剤」が、「樹脂組成物に配合する前に」「表面処理されている」「シランカップリング剤」を意味しているのか、当該「シランカップリング剤」とは別に、後から配合した「シランカップリング剤」を意味するのか、2通りの解釈が可能である。」との指摘に対して、(D2)シランカップリング剤が「前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」ことを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

したがって、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもの、及び、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(C2)成分のシリカフィラーから「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」を除く訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。

また、(D2)シランカップリング剤が「前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」ことは、願書に添付した明細書の段落[0058]の「本発明の樹脂組成物(2)は、さらに、(D2)成分として、シランカップリング剤を含有してもよい。」や願書に添付した明細書の段落[0078]の表2の実施例5等に記載されている。

したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2

訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

さらに前記目的に加え、この訂正は、訂正事項1と同様に、(D2)シランカップリング剤が「前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」ことを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」をも目的とするものである。

そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

3 小括

以上のとおり、請求項1~14についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号、3号、4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

そして、本件の特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~14に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の特許請求の範囲の記載

本件訂正請求により訂正された請求項1~14に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものである。以下、請求項1~14に係る発明を「本件発明1」~「本件発明14」といい、まとめて「本件発明」ということもある。

「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラー、および、(D2)シランカップリング剤を含有する樹脂組成物であり、前記(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするシリカフィラー(ただし、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」を除く)であり、前記(D2)シランカップリン剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである、樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラー、および、(D2)シランカップリング剤を含有する樹脂組成物であり、前記(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするシリカフィラーであり、前記pKaが9.4以上の塩基性物質が、3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)、および、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)からなる群から選択される少なくとも一つであり、前記(D2)シランカップリング剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである、樹脂組成物。
続きを表示(全28行)
【請求項3】
前記シランカップリング剤が、エポキシ系シランカップリング剤、および、メタクリル系シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物を室温下で24時間後放置した際、樹脂組成物の粘度の増加率が初期の粘度から100%未満である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)成分のエポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、および、アミノフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)成分の硬化剤が、アミン系硬化剤、および、イミダゾール系硬化剤からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C2)シリカフィラーの真球度が、0.9以上である、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C2)シリカフィラーの平均粒径が、0.05~80μmである、請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記(C2)シリカフィラーの含有量が、樹脂組成物の各成分の合計質量100質量部に対して、30~60質量部である、請求項1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
半導体封止材用である、請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
キャピラリーフロー封止用である、請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する半導体封止材。
【請求項13】
請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する一液型接着剤。
【請求項14】
請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する接着フィルム。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要

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1 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要

申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)申立理由1-1(甲1を主引用例とする新規性欠如)

本件発明1、3、5、10、12は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由1-2(甲2を主引用例とする新規性欠如)

本件発明1、5は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由2-1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)

本件発明1~14は、甲1に記載された発明を主たる引用発明とし、それに基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由2-2(甲2を主引用例とする進歩性欠如)

本件発明1~14は、甲2に記載された発明を主たる引用発明とし、それに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(4)申立理由2-3(甲3を主引用例とする進歩性欠如)

本件発明1~14は、甲3に記載された発明を主たる引用発明とし、それに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(5)申立理由2-4(甲4を主引用例とする進歩性欠如)

本件発明1~14は、甲4に記載された発明を主たる引用発明とし、それに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 取消理由の概要

令和5年6月16日付けで通知した取消理由通知の取消理由(以下、単に「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。

(1)取消理由1(明確性要件違反)

本件特許の請求項1~14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

具体的な理由の概要は以下のとおり。

「(D2)シランカップリング剤」が、「樹脂組成物に配合する前に」「表面処理されている」「シランカップリング剤」を意味しているのか、当該「シランカップリング剤」とは別に、後から配合した「シランカップリング剤」を意味するのか、2通りの解釈が可能であり、特許を受けようとする発明の範囲が明確でない。

(2)取消理由2(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性欠如)

本件特許の請求項1、3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1、3~14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第5 取消理由についての当審の判断

以下に述べるように、当審が通知した取消理由によっては、本件発明1~14に係る特許は取り消すことはできない。

1 取消理由1(明確性要件違反)について

(1)判断

本件訂正により、「(D2)シランカップリング剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」ことが明らかになった。したがって、明確性における取消理由1は解消された。

よって、請求項1~14に係る発明は明確である。

(2)取消理由1についてのむすび

したがって、本件特許の請求項1~14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由1によっては取り消すことはできない。

2 取消理由2及び申立理由1-1、申立理由2-1について

申立理由1-1(甲1を主引用例とする新規性欠如)及び申立理由2-1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)は、取消理由2(甲1を主引用例とする新規性・進歩性欠如)と同旨であるから、以下、取消理由と同旨である申立理由についても併せて検討する。

(1)証拠に記載された事項等

ア 甲1に記載された事項及び甲1発明

(ア)甲1に記載された事項(なお、下線は当審で付したものである。以下同様。)

「[0013]
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、半導体パッケージ用配線基板や半導体封止材に用いられる樹脂に充填が容易であり、α線の放出量が極めて小さく、且つ低吸湿性のナノサイズのシリカ粒子を含有するシリカゾルを提供すること、及びそのシリカゾルを含有する樹脂組成物を提供することにある。」
「[発明の効果]
[0016]
本発明のシリカゾルは、α線の放出量が極めて小さく、且つ低吸湿性のナノサイズのシリカ粒子を含有するシリカゾルであり、半導体パッケージ用配線基板や半導体封止材に用いられる樹脂に容易に配合して、低い線膨張率を達成することができる。」
「[0073]
〔実施例1〕
(a)工程:原料の水溶性アルカリ金属珪酸塩として、JIS3号の珪酸ナトリウム水溶液を用意した。この珪酸ナトリウム水溶液の水以外の主な成分は、SiO228.8質量%、Na2O9.47質量%であった。上記珪酸ナトリウム水溶液52.5kgを純水367.5kgに溶かして、SiO2濃度3.6質量%の珪酸ナトリウム水溶液420kgを調製した。次いで、25℃の上記珪酸ナトリウム水溶液を、水素型強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IR-120Bが充填されたカラムに1時間当たりの空間速度3で通液した後、得られたSiO2濃度3.6質量%、pH2.93を有する25℃の活性珪酸の水溶液357kgを容器に回収した。
[0074]
続きを表示(全21行)
(b)工程:用いる強酸として、市販品の特級試薬の硫酸(関東化学(株)製)を純水で希釈して得られた10質量%の硫酸を用意した。(a)工程で得られた活性珪酸の水溶液357kgに上記10質量%の硫酸8.9kgを加え、pH1.54とし、20℃で48時間保持して(b)工程を終了した。
[0075]
(c)工程:上記(b)工程で得られた硫酸が添加された活性珪酸の水溶液365.9kgを、水素型強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IR-120Bが20リットル充填された約25℃のカラムに、1時間当たりの空間速度5で通液した。得られた液の全量は、引き続き水酸基型強塩基性陰イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IRA-410が50リットル充填された約25℃のカラムに1時間当たりの空間速度2で通液した。次いで、得られた液の全量を先に用いたものとは別の水素型強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IR-120Bが10リットル充填された約25℃のカラムに、1時間当たりの空間速度10で通液し、得られた液の全量362.3kgを容器に回収した。このイオン交換された活性珪酸の水溶液は、SiO2濃度3.5質量%、pH4.38であった。
[0076]
(d)工程:市販の特級試薬の水酸化ナトリウム(関東化学(株)製)を純水に溶解して得た水酸化ナトリウム10質量%水溶液2.1kgを(c)工程で得られたイオン交換された活性珪酸の水溶液362.3kgに加えることにより、安定化された活性珪酸の水溶液を得た。この水溶液は、SiO2濃度3.5質量%、SiO2/Na2Oモル比80、pH8.20を有していた。
[0077]
(e)工程:内容積3リットルのステンレス製オートクレーブ反応器に(d)工程で得られた安定化された活性珪酸の水溶液2.8kgを投入し、130℃で5時間水熱処理した。この水熱処理を5回行って水熱処理反応物14kgを得た。この水熱処理反応物は、SiO2濃度3.5質量%、pH10.3、平均一次粒子径粒子径13nm、動的光散乱法により測定されるシリカ粒子径は22nmのアルカリ性シリカゾルであった。
[0078]
(f)工程:(e)工程で得られたアルカリ性シリカゾルを、限外濾過膜装置を使用して濃縮し、SiO2濃度31.0質量%、pH9.27のアルカリ性シリカゾル1.6kgを得た。
[0080]
(h)工程:内容積3リットルのSUS製オートクレーブ反応器に、(g)工程でSiO2/Na2Oモル比400に調整されたアルカリ性シリカゾル1.5kgを投入し、245℃で2時間30分水熱処理した。得られたシリカゾルはpH10.2、平均一次粒子径粒子径45nm、動的光散乱法により測定されるシリカ粒子径は74nmであった。
[0081]
(i)工程:(h)工程で得られたアルカリ性シリカゾル1.5kgを水素型強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IR-120Bを充填した約25℃のカラムに、1時間当たりの空間速度10で通液して、SiO2濃度30.0質量%、pH3.50の酸性シリカゾルを得た。
[0082]
(j)工程:(i)工程で得られた酸性シリカゾル1200gを2リットルのセパラブルフラスコに仕込み、攪拌しながら、メタノール200g及びトリn-プロピルアミン1.0gを添加した。その後、メタノールガスをシリカゾル中に供給しながら溶媒置換してSiO2濃度20質量%、水分1.2質量%のメタノール分散シリカゾル1800gを得た。
[0083]
(k)工程:(j)工程で得られたメタノール分散シリカゾル1000gを2リットルのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら、フェニルトリメトキシシラン12.1gを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。添加したフェニルトリメトキシシランは、該ゾル中のシリカ粒子の表面積1nm2当たり3.0個に相当する。その後、ナス型フラスコをロータリーエバポレータにセットし、浴温80℃、500~350Torrの減圧下で、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行うことによりメチルエチルケトン分散シリカゾルを得た。得られたゾルは、SiO2濃度30.5質量%、水分0.03質量%、メタノール0.5質量%、動的光散乱法により測定されるシリカ粒子径74nm、動的光散乱法により測定されるシリカ粒子径/平均一次粒子径の比1.6であった。得られたシリカゾルを80℃真空乾燥機で乾燥して得られたシリカゲルを乳鉢で粉砕した後、更に180℃で3時間乾燥させてシリカ粉末とした。23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときのシリカ粉末の吸湿率は0.1質量%であった。」
「[0086]
〔実施例3〕
実施例1の(k)工程において、フェニルトリメトキシシラン12.1gの代わりにエポキシシクロヘキシルトリメトキシシランを15.1g添加した以外は、実施例1と同様に行い、メチルエチルケトン分散シリカゾルを得た。添加したエポキシシクロヘキシルトリメトキシシランは、ゾル中のシリカ粒子の表面積1nm2当たり3.0個に相当する。得られたゾルは、SiO2濃度30.5質量%、水分0.07質量%、メタノール0.5質量%、平均一次粒子径45nm、動的光散乱法により測定されるシリカ粒子径75nm、動的光散乱法により測定されるシリカ粒子径/平均一次粒子径の比1.7であった。得られたシリカゾルを80℃真空乾燥機で乾燥して得られたシリカゲルを乳鉢で粉砕した後、更に180℃で3時間乾燥させてシリカ粉末とした。23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときのシリカ粉末の吸湿率は0.1質量%であった。シリカ粉末のα線の放出量は0.002カウント/cm2・hrであった。
[0087]
〔実施例4〕
フェニルトリメトキシシランの代わりにメタクリロキシプロピルトリメトキシシランをゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり3.0個添加すること以外は実施例1と同様に行って、メチルエチル分散シリカゾル1000gを得た。得られたゾルは、SiO2濃度30.5質量%、水分0.07質量%、メタノール0.5質量%、平均一次粒子径45nm、動的光散乱法により測定されるシリカ粒子径74nm、動的光散乱法により測定されるシリカ粒子径/平均一次粒子径の比1.6であった。得られたシリカゾルを80℃真空乾燥機で乾燥して得られたシリカゲルを乳鉢で粉砕した後、更に180℃で3時間乾燥させてシリカ粉末とした。23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときのシリカ粉末の吸湿率は0.1質量%であった。シリカ粉末のα線の放出量は0.002カウント/cm2・hrであった。」
「[0089]
〔実施例6〕
実施例1で得られたメチルエチルケトン分散ゾル100gに脂環式エポキシ樹脂モノマー(セロキサイド2021P:(株)ダイセル)36.7gを添加し、浴温100℃、200~10Torrの減圧下で脱溶媒を行い、脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られたシリカゾルは、SiO2濃度45.4質量%、メチルエチルケトン0.1質量%未満、23℃におけるB型粘度1050mPa・sであった。
[0090]
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〔実施例7〕
実施例1で得られたメチルエチルケトン分散ゾル100gにビスフェノールF型エポキシ樹脂モノマー(YL-983U:三菱化学(株))36.7gを添加し、浴温100℃、200~10Torrで脱溶媒を行い、ビスフェノールF型エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られたシリカゾルは、SiO2濃度45.4質量%、メチルエチルケトン0.1質量%未満、50℃におけるB型粘度2500mPa・sであった。
[0091]
〔実施例8〕
実施例2で得られたメチルエチルケトン分散ゾル100gに脂環式エポキシ樹脂モノマー(セロキサイド2021P:(株)ダイセル)36.7gを添加し、浴温100℃、200~10Torrの減圧下で脱溶媒を行い、脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られたシリカゾルは、SiO2濃度45.4質量%、メチルエチルケトン0.1質量%未満、23℃におけるB型粘度1500mPa・sであった。
[0092]
〔実施例9〕
実施例3で得られたメチルエチルケトン分散シリカゾル100gに脂環式エポキシ樹脂モノマー(セロキサイド2021P:(株)ダイセル製)36.7gを添加し、浴温100℃、200~10Torrの減圧下で脱溶媒を行い、脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度45.0質量%、メチルエチルケトン0.1質量%未満、23℃におけるB型粘度1200mPa・sであった。
[0093]
〔実施例10〕
実施例4で得られたメチルエチルケトン分散シリカゾル100gに脂環式エポキシ樹脂モノマー(セロキサイド2021P:(株)ダイセル)36.7gを添加し、浴温100℃、200~10Torrの減圧下で脱溶媒を行い、脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルを得た。得られた脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルは、SiO2濃度45.0質量%、メチルエチルケトン0.1質量%未満、23℃におけるB型粘度1100mPa・sであった。」
「[0112]
〔実施例12〕
300mLの四つ口フラスコに実施例6で得られた脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾル40.5gとメチルヘキサヒドロフタル酸無水物26.5gを入れ、80℃で40分間攪拌して混合物を得た。次いでこの混合物に硬化促進剤としてテトラブチルホスホニウムO,O’-ジエチルジチオホスフェート(商品名:ヒシコーリン(登録商標)PX-4ET:日本化学工業(株)製)222mgを加えて10分間攪拌を行い、更に減圧下で2分間脱泡を行って、シリカ含有エポキシ樹脂硬化用組成物を得た。得られたシリカ含有エポキシ樹脂硬化用組成物には残留有機溶媒は検出されなかった。得られたシリカ含有エポキシ樹脂硬化用組成物を注型板(離型剤SR-2410(東レ・ダウシリコーニング(株)製)で処理されたガラス板、ガラス板2枚の間隔3mm厚)に流し込み、90℃で2時間、続いて150℃で1時間の加熱処理を行い、シリカ含有エポキシ樹脂硬化物を得た。
[0113]
〔実施例13〕
脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルの代わりに実施例7で得られたビスフェノールF型エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルを使用し、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物22.3gを使用した以外は、実施例12と同様に行って、シリカ含有エポキシ樹脂硬化物を得た。
[0114]
〔実施例14~16〕
シリカゾルとして、実施例8~10で得られた脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルを用いたこと以外は実施例12と同様に行って、それぞれシリカ含有エポキシ樹脂硬化物を得た。」
「[0129]
本発明のシリカゾルは、α線の放出量が極めて小さく、且つ低吸湿性のナノサイズのシリカ粒子を含有するシリカゾルであり、半導体パッケージ用配線基板や半導体封止材に好適に利用することができる。」

(イ)甲1発明

甲1の実施例15([0114]の実施例15、[0092]の実施例9、[0086]の実施例3、[0082]~[0083]の実施例1、[0112]の実施例12参照)のエポキシ樹脂硬化用組成物に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。

「酸性シリカゾル1200gを2リットルのセパラブルフラスコに仕込み、攪拌しながら、メタノール200g及びトリn-プロピルアミン1.0gを添加し、その後、メタノールガスをシリカゾル中に供給しながら溶媒置換してSiO2濃度20質量%、水分1.2質量%のメタノール分散シリカゾル1800gを得、得られたメタノール分散シリカゾル1000gを2リットルのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら、エポキシシクロヘキシルトリメトキシシランを15.1g添加し(ゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり3.0個添加する)、60℃に加熱して3時間保持し、その後、ナス型フラスコをロータリーエバポレータにセットし、浴温80℃、500~350Torrの減圧下で、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行うことによりメチルエチルケトン分散シリカゾルを得、得られたメチルエチルケトン分散シリカゾル100gに脂環式エポキシ樹脂モノマー(セロキサイド2021P:(株)ダイセル)36.7gを添加し、浴温100℃、200~10Torrの減圧下で脱溶媒を行い、脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルを得、得られた脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾル40.5gとメチルヘキサヒドロフタル酸無水物26.5gを300mLの四つ口フラスコに入れ、80℃で40分間攪拌して混合物を得、次いでこの混合物に硬化促進剤としてテトラブチルホスホニウムO,O’-ジエチルジチオホスフェート(商品名:ヒシコーリン(登録商標)PX-4ET:日本化学工業(株)製)222mgを加えて10分間攪拌を行い、更に減圧下で2分間脱泡を行うことにより得られた、シリカ含有エポキシ樹脂硬化用組成物。」(以下、「甲1実施例15発明」という。)

甲1の実施例16([0114]の実施例16、[0093]の実施例10、[0087]の実施例4、[0082]~[0083]の実施例1、[0112]の実施例12参照)のエポキシ樹脂硬化用組成物に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。

「酸性シリカゾル1200gを2リットルのセパラブルフラスコに仕込み、攪拌しながら、メタノール200g及びトリn-プロピルアミン1.0gを添加し、その後、メタノールガスをシリカゾル中に供給しながら溶媒置換してSiO2濃度20質量%、水分1.2質量%のメタノール分散シリカゾル1800gを得、得られたメタノール分散シリカゾル1000gを2リットルのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを添加し(添加したエポキシシクロヘキシルトリメトキシシランは、ゾル中のシリカ粒子の表面積1nm2当たり3.0個に相当する。)、60℃に加熱して3時間保持し、その後、ナス型フラスコをロータリーエバポレータにセットし、浴温80℃、500~350Torrの減圧下で、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行うことによりメチルエチルケトン分散シリカゾルを得、得られたメチルエチルケトン分散シリカゾル100gに脂環式エポキシ樹脂モノマー(セロキサイド2021P:(株)ダイセル製)36.7gを添加し、浴温100℃、200~10Torrの減圧下で脱溶媒を行い、脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾルを得、得られた脂環式エポキシ樹脂モノマー分散シリカゾル40.5gとメチルヘキサヒドロフタル酸無水物26.5gを300mLの四つ口フラスコに入れ、80℃で40分間攪拌して混合物を得、次いでこの混合物に硬化促進剤としてテトラブチルホスホニウムO,O’-エチルジチオホスフェート(商品名:ヒシコーリン(登録商標)PX-4ET:日本化学工業(株)製)222mgを加えて10分間攪拌を行い、更に減圧下で2分間脱泡を行うことにより得られた、シリカ含有エポキシ樹脂硬化用組成物。」(以下、「甲1実施例16発明」という。)

イ 甲5に記載された技術的事項

「[請求項1](A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)シリカフィラー、および、(D)カップリング剤を含む液状封止材であって、前記(C)シリカフィラーのホウ素含有量の平均値が、1~50ppmであることを特徴とする液状封止材。」

「[請求項3]前記(C)シリカフィラーがカップリング剤にて予め表面処理されている、請求項1または2に記載の液状封止材。」

「[0032] 本発明の液状封止材(2)では、(C)成分のシリカフィラーとして、カップリング剤で予め表面処理されたものを用いる。これにより、液状封止材中でのシリカフィラーの分散安定性が向上し、液状封止材の保存安定性が向上し、かつ、液状封止材の注入性が向上する。
本発明の液状封止材(1)についても、(C)成分のシリカフィラーとして、カップリング剤で予め表面処理されたものを用いることが、液状封止材中でのシリカフィラーの分散安定性が向上し、液状封止材の保存安定性が向上すること、および、液状封止材の注入性が向上することから好ましい。」

「[0039](D):カップリング剤 本発明の液状封止材(1)は、アンダーフィルとして使用した際の密着性を向上させるために、(D)成分としてカップリング剤を含有する。(D)成分のカップリング剤としては、ビニル系、グリシドキシ系、メタクリル系、アミノ系、メルカプト系などのシランカップリング剤やアルコキシド系、キレート系、アシレート系などのチタンカップリング剤等の各種カップリング剤を用いることができる。これらの中でも、エポキシ系シランカップリング剤が、半導体樹脂封止材をアンダーフィルとして使用した際の密着性および機械的強度を向上させる効果に優れることから好ましい。エポキシ系シランカップリング剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(商品名:KBM-303、信越化学株式会社製)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM-402、信越化学株式会社製)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学株式会社製)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(商品名:KBE-402、信越化学株式会社製)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE-403、信越化学株式会社製)等が挙げられる。」

「[0058] (実施例1~22、比較例1~6)
下記表に示す配合割合となるように、ロールミルを用いて原料を混練して実施例1~22、比較例1~6の液状封止材を調製した。なお、表中の各組成に関する数値は質量部を表している。
[0059] (A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂A-1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、新日鐵化学株式会社製、エポキシ当量158
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エポキシ樹脂A-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、製品名828、三菱化学株式会社製、エポキシ当量184~194
(B)硬化剤
アミン系硬化剤B-1:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、製品名カヤハードA-A、日本化薬株式会社製
アミン系硬化剤B-2:ジエチルトリエンジアミン、製品名エタキュア100、ALBEMARLE Co.,Ltd.製
酸無水物系硬化剤B-3:3,4-ジメチル-6-(2-メチル-1-プロペニル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、製品名YH306、三菱化学株式会社製
酸無水物系硬化剤B-4:メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、製品名エピクロンB650、DIC株式会社製
フェノール系硬化剤B-5:フェノールノボラック型樹脂
(C)シリカフィラー
シリカフィラーC-1:平均粒径1.5μm
シリカフィラーC-2:平均粒径0.5μm
シリカフィラーC-3:平均粒径1.5μm
なお、シリカフィラーC-3は、乾式法により、カップリング剤で予め表面処理した。カップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、製品名KBM403、信越化学工業株式会社製を用いた。表面処理に用いたカップリング剤の量は、(A)成分のエポキシ樹脂、および、(B)成分の硬化剤の合計質量に対する質量百分率で0.5質量%であった。
(D)カップリング剤
カップリング剤D-1:エポキシ系シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、製品名KBM403、信越化学工業株式会社製(E)エラストマーエラストマーE-1:シリコーンパウダー、製品名KMP600、信越化学工業株式会社製 なお、(C)成分のシリカフィラーについては、以下の手順でホウ素含有量を測定し、平均値を求めた。シリカフィラーにおけるホウ素含有量の平均値は、所定量のシリカフィラーを測り取って作成した試料を用いて、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)によるホウ素の含有量を定量することによって求めた。」
「[0067]
[表3]
[図:0001410198000001.jpg]
」

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲1実施例15、16発明とを対比する。

(ア)甲1実施例15、16発明の「トリn-プロピルアミン」は、甲第7号証の【0050】の「有機アミンとして、本発明の沸点156℃、pKa10.3のトリプロピルアミン・・・を適宜加えてハンダ付けフラックスを調製した。」という記載より、トリプロピルアミンは、pKa10.3、つまり共役酸の酸解離定数(pKa)が9. 4以上の塩基性物質であるといえる。また、シリカゾルの表面シラノール基は弱酸であって、当該シリカゾルに塩基性物質を添加すると表面のシラノール基が中和されることは明らかである。

よって、甲1実施例15、16発明の「酸性シリカゾル1200gを2リットルのセパラブルフラスコに仕込み、攪拌しながら、メタノール200g及びトリn-プロピルアミン1.0gを添加し、その後、メタノールガスをシリカゾル中に供給しながら溶媒置換して」得られた「メタノール分散シリカゾル」は、本件発明1の「共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラー」に相当する。

甲1実施例15発明の「エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン」、甲1実施例16発明の「メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」は、本件発明1の「シランカップリング剤」に相当する。

甲1実施例15発明は、「メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを12.1g添加し(添加したエポキシシクロヘキシルトリメトキシシランは、ゾル中のシリカ粒子の表面積1nm2当たり3.0個に相当する。)、60℃に加熱して3時間保持し、・・・、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行うことによりメチルエチルケトン分散シリカゾルを得、得られたメチルエチルケトン分散シリカゾル100gに脂環式エポキシ樹脂モノマー・・・を添加し、」、甲1実施例16発明は、「エポキシシクロヘキシルトリメトキシシランを添加し(添加したエポキシシクロヘキシルトリメトキシシランは、ゾル中のシリカ粒子の表面積1nm2当たり3.0個に相当する。)、60℃に加熱して3時間保持し、・・・、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行うことによりメチルエチルケトン分散シリカゾルを得、得られたメチルエチルケトン分散シリカゾル100gに脂環式エポキシ樹脂モノマー・・・を添加し」ていることから、脂環式エポキシ樹脂を配合する前にシリカ粒子の表面がシランカップリング剤で表面処理されているといえる。

よって、甲1実施例15、16発明の「メチルエチルケトン分散シリカゾル」中の「シリカ粒子」は、本件発明1の「樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されている」「シリカフィラー」に相当する。

甲1実施例15、16発明の「メチルヘキサヒドロフタル酸無水物」は、本件発明1の「硬化剤」に相当する。

甲1実施例15、16発明の「脂環式エポキシ樹脂モノマー」は、本件発明1の「エポキシ樹脂」に相当する。

甲1実施例15、16発明の「シリカ含有エポキシ樹脂硬化用組成物」は、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。

そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1-1>、<相違点1-2>で相違する。

<一致点>

(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラーを含有する樹脂組成物であり、前記(C2)シリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするシリカフィラーである、樹脂組成物。

<相違点1-1>

本件発明1は、「(D2)シランカップリング剤」を含有し、「前記(D2)シランカップリン剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」のに対し、甲1実施例15、16発明は、「(D2)シランカップリング剤」を含まない点

<相違点1-2>

シリカフィラーに関し、本件発明1は、「ただし、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」を除く」のに対し、甲1実施例15、16発明は、その点明らかでない点

イ 判断

そこで、事案に鑑み、相違点1-2について検討する。

甲1実施例15、16発明について、甲1の[0086]、[0087]には、甲1実施例15、16発明のシリカゾル中のシリカ粒子が45nmの平均一次粒子径を有し、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.1質量%であり、α線の放出量が0.002カウント/cm2・hr以下であることが記載されている。そうすると、甲1実施例15、16発明は、シリカ粒子が「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」に相当するのに対し、本件発明1では、当該シリカ粒子を除くことが特定されているから、相違点1-2は実質的な相違点である。

この点についてさらに検討すると、甲1の段落[0016] によれば、α線の放出量が極めて小さく、且つ低吸湿性のナノサイズのシリカ粒子を含有することにより、半導体パッケージ用配線基板や半導体封止材に用いられる樹脂に容易に配合して、低い線膨張率を達成することができることが記載されているから、甲1実施例15、16発明は、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子を含有」することにより、樹脂に容易に配合して、低い線膨張率を達成することができることが理解できる。

そうすると、甲1実施例15、16発明のエポキシ樹脂硬化用組成物には、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子を含有」することが不可欠なものであって、上記シリカ粒子を除くことは動機付けられていないものであるから、本件発明1の「(ただし、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」を除く)」ことにすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。また、甲2~甲11の記載を見ても、上記シリカ粒子を除くことが動機付けられるとはいえない。

よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1実施例15、16発明、甲1及び甲2~甲11の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 申立人の主張について

申立人は、令和5年9月8日付け意見書の第5~6頁において、除く訂正を備えることにより、本件発明の効果に関して顕著な効果を奏するものとなるとは記載されておらず、特許権者が提出した令和5年8月14日付け意見書においても、除く訂正が本件発明の進歩性に関して格別な意義を有する構成要素であるとは表明されていないから、除く訂正は、発明の進歩性有りに貢献する技術的意義を何ら有するものではないから、本件発明は、除く訂正を備えたとしても、依然として、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである旨主張する。

しかしながら、上記イで述べた通り、甲1実施例15、16発明は、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子を含有」することが不可欠なものであり、上記シリカ粒子を除くことは甲1及び他の証拠の記載には動機付けがあるともいえない。したがって、申立人の主張は採用できない。

(3)本件発明3~14について

本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明3~14についても同様である。

(4)取消理由2及び申立理由1-1、2-1についてのむすび

したがって、本件発明1、3、5、10、12は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件発明1、3~14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、3~14に係る特許は、取消理由2及び申立理由1-1、2-1によっては取り消すことはできない。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について

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取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由2-1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)のうち請求項2、申立理由1-2(甲1を主引用例とする新規性欠如)、申立理由2-2(甲2を主引用例とする進歩性欠如)、申立理由2-3(甲3を主引用例とする進歩性欠如)、申立理由2-4(甲4を主引用例とする進歩性欠如)であるため、これらについて以下検討する。

1 申立理由2-1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)のうち請求項2について

(1)対比・判断

本件発明2と甲1実施例15、16発明とを対比すると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1-1>、<相違点1-3>で相違する。

<一致点>

エポキシ樹脂、硬化剤、シリカフィラーを含有する樹脂組成物であり、前記シリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするシリカフィラーである、樹脂組成物。

<相違点1-1’>

本件発明2は、「(D2)シランカップリング剤」を含有し、「前記(D2)シランカップリン剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」のに対し、甲1実施例15、16発明は、「(D2)シランカップリング剤」を含まない点

<相違点1-3>

「pKaが9.4以上の塩基性物質」に関し、本件発明2は、「3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)、および、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)からなる群から選択される少なくとも一つであ」るのに対し、甲1実施例15、16発明は、「トリn-プロピルアミン」である点

そこで、事案に鑑み、相違点1-3について検討する。

甲1実施例15、16発明には、「pKaが9.4以上の塩基性物質」として「トリn-プロピルアミン」が特定されているし、甲1には、「3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)」、「1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)」については記載されていないから、<相違点1-3>は実質的な相違点である。よって、本件発明2は、甲1に記載された発明でない。

ついで、<相違点1-3>に係る発明特定事項の容易想到性について検討する。

甲3の【0021】には、シリカ粒子の表面処理用塩基性物質の具体例として、「用いられる塩基性物質としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、有機アミン等が挙げられる。有機アミンとしては、イソプロピルアミン、ジイソプピルアミン、n-プロピルアミン、ジイソブチルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;ピペリジン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第4級アンモニウム;イミダゾール、イミダゾール誘導体;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザ-ビシクロ(4,3,0)ノネン-5、1,4-ジアザ-ビシクロ(2,2,2)オクタン等の環状アミン;アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン;などを用いることができる。」と記載されている。一方、本件発明2は、pKaが9.4以上の塩基性物質で処理することを特徴とし、「1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)はその具体例であり、pKaが9.36の塩基性物質で処理した比較例2では実施例1より増粘率が高くなることが示されている。そうすると、pKaが9.4以上の塩基性物質を用いるという技術思想のない甲1実施例15、16発明において、甲3の【0021】に記載された多数の塩基物質の中からpKaが9.4以上である「1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)」を選択する動機付けがあるとはいえない。

したがって、本件発明2は、甲1実施例15、16発明及び甲1、甲3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)申立人の主張及び検討

申立人は、特許異議申立書の第56~58頁の(2)において、甲3に挙げられた、「1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン」は、本件発明2の発明特定事項「3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)、および、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)からなる群から選択される少なくとも一つ」を満たす旨主張する。

しかしながら、上記(1)で述べた通り、甲1には、甲1実施例15、16発明において、「トリn-プロピルアミン」に変えて直ちに「3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)、および、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)からなる群から選択される少なくとも一つ」に積極的に置き換えようとする動機付けの記載もないし、また、甲3の記載に基づき、「トリn-プロピルアミン」を「1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7」に置き換える動機付けも十分にあるとはいえない。

したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(3)申立理由2-1のうち請求項2についてのむすび

よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明2は、甲1実施例15、16発明、甲1、甲3の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

本件発明2を直接又は間接的に引用する本件発明3~14についても同様である。

したがって、本件発明2~14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2-1によっては取り消すことはできない。

2 申立理由1-2(甲2を主引用例とする新規性欠如)、申立理由2-2(甲2を主引用例とする進歩性欠如)について

(1)証拠に記載された事項等

ア 甲2に記載された事項及び甲2発明

(ア)甲2に記載された事項

「【請求項1】 (A)次の一般式に示されるエポキシ樹脂、
【化1】
[図:0001410198000002.jpg]
(B)フェノール樹脂、
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(C)有機塩基を極微量添加した、次の一般式で示されるエポキシ基を有するシランカップリング剤、
【化2】
R1 -Cn H2n-Si (OR2 )3
(但し、式中R1はエポキシ基を有する原子団を、R2はメチル基又はエチル基を、nは0又は1以上の整数をそれぞれ表す)
(D)最大粒径が100μm以下の溶融シリカ粉末および
(E)硬化促進剤
を必須成分とし、全体の樹脂組成物に対して前記(D)の溶融シリカ粉末を25~90重量%の割合で含有してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。」

「【0022】・・・これらの溶融シリカ粉末に、シランカップリング剤に有機塩基を添加し、直ちにヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等で処理を行うと均一に表面処理ができ、その効果が十分に発揮できる。」

「【0029】 実施例1
溶融シリカ粉末(最大粒径100μm以下)84%をヘンシェルミキサーに入れ、攪拌しながら前述した化12のシランカップリング剤0.4%、ジエチルアミン4×10-4%を加えて溶融シリカ粉末の表面処理をした。次に前述した化5のビフェニル型エポキシ樹脂6.2%、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂1.5%、前述した化7のフェノールノボラック樹脂1.5%、前述した化8のフェノールアラルキル樹脂3.5%、トリフェニルホスフィン0.2%、カルナバワックス類0.4%、カーボンブラック0.3%、三酸化アンチモン2.0%を常温で混合し、さらに90~100℃で混練冷却した後、粉砕して成形材料(A)を製造した。」

(イ)甲2発明

甲2の実施例1に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。

「溶融シリカ粉末(最大粒径100μm以下)84%をヘンシェルミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤0.4%、ジエチルアミン4×10-4%を加えて溶融シリカ粉末の表面処理をし、ビフェニル型エポキシ樹脂6.2%、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂1.5%、フェノールノボラック樹脂1.5%、フェノールアラルキル樹脂3.5%、トリフェニルホスフィン0.2%、カルナバワックス類0.4%、カーボンブラック0.3%、三酸化アンチモン2.0%を常温で混合し、さらに90~100℃で混練冷却した後、粉砕することにより得られた成形材料(A)。」(以下、「甲2発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲2発明とを対比する。

甲第8号証のII-336頁の表11.3 脂肪族アミンの酸解離定数」には、ジエチルアミンのpKaが11.02であることが記載されているから、甲2発明の「ジエチルアミン」は、共役酸の酸解離定数(pKa)が9. 4以上の塩基性物質であるといえる。

甲2発明の「シランカップリング剤」は、本件発明1の「シランカップリング剤」に相当する。

甲2発明の「ビフェニル型エポキシ樹脂」、「テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂」は、本件発明1の「エポキシ樹脂」に相当する。

甲2発明の「溶融シリカ粉末」は、「溶融シリカ粉末(最大粒径100μm以下)84%をヘンシェルミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤0.4%、ジエチルアミン4×10-4%を加えて溶融シリカ粉末の表面処理をし、ビフェニル型エポキシ樹脂6.2%、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂1.5%、フェノールノボラック樹脂1.5%、フェノールアラルキル樹脂3.5%、トリフェニルホスフィン0.2%、カルナバワックス類0.4%、カーボンブラック0.3%、三酸化アンチモン2.0%を常温で混合し」という記載より、本件発明1の「樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されている」「シリカフィラー」に相当する。

甲2発明の「成形材料」は、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。

そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、少なくとも以下の<相違点2-1>~<相違点2-3>で相違する。

<一致点>

(A)エポキシ樹脂、(C2)シリカフィラーを含有する樹脂組成物であり、前記シリカフィラーが、シランカップリング剤及び共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面処理されているシリカフィラーである、樹脂組成物。

<相違点2-1>

本件発明1は、「(D2)シランカップリング剤」を含有し、「前記(D2)シランカップリン剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」のに対し、甲2発明は、「(D2)シランカップリング剤」を含有しない点

<相違点2-2>

本件発明1は、「(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されている」のに対し、甲2発明は、溶融シリカ粉末をヘンシェルミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤、ジエチルアミンを加えて溶融シリカ粉末の表面処理を行う点

<相違点2-3>

シリカフィラーに関し、本件発明1は、「ただし、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」を除く」のに対し、甲2発明は、その点明らかでない点

イ 判断

そこで、事案に鑑み、相違点2-2について検討する。

甲2発明は、溶融シリカ粉末を攪拌しながらシランカップリング剤、ジエチルアミンを加えて溶融シリカ粉末の表面処理を行っていることから、溶融シリカ粉末は、シランカップリング剤とジエチルアミンとで同時に表面処理されたものであり、「樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理され」たものではない。また、甲2発明は、溶融シリカ粉末84%にジエチルアミンを4×10-4%という極微量しか加えていないから、このような配合条件で「表面のシラノール基が中和されている」とはいえない。

したがって、<相違点2-2>は実質的な相違点である。よって、本件発明1は、甲2に記載された発明でない。

ついで、<相違点2-2>に係る発明特定事項の容易想到性について検討する。

甲2には、溶融シリカ粉末について、塩基性物質により表面のシラノール基を中和した後、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理することについては記載がないから、甲2発明においてジエチルアミンで表面処理し、さらに、シランカップリング剤で表面処理することを採用する動機付けがあるとはいえない。また、甲2の請求項1には「有機塩基を極微量添加」することが記載されており、甲2には塩基によってシリカ表面のシラノール基を中和するという技術思想の開示もないから、甲2発明において、ジエチルアミンをシリカ表面のシラノール基を中和するほど多量に配合することが動機付けられるとはいえない。そして、甲1及び甲3~甲11にも、甲2発明において相違点2-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。

よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明であるとも、甲2発明並びに甲1~甲11に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明3~14について

本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明3~14についても同様である。

(4)本件発明2について

ア 対比

本件発明2と甲2発明とを対比すると、両者は、以下の<一致点>で一致し、少なくとも以下の<相違点2-1’>~<相違点2-3’>で相違する。

<一致点>

(A)エポキシ樹脂、(C2)シリカフィラーを含有する樹脂組成物であり、前記シリカフィラーが、シランカップリング剤及び共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面処理されているシリカフィラーである、樹脂組成物。

<相違点2-1’>

本件発明2は、「(D2)シランカップリング剤」を含有し、「前記(D2)シランカップリン剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」のに対し、甲2発明は、「(D2)シランカップリング剤」を含有しない点

<相違点2-2’>

本件発明2は、「(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されている」のに対し、甲2発明は、溶融シリカ粉末をヘンシェルミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤、ジエチルアミンを加えて溶融シリカ粉末の表面処理を行う点

<相違点2-3’>

「pKaが9.4以上の塩基性物質」に関し、本件発明2は、「3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)、および、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)からなる群から選択される少なくとも一つであ」るのに対し、甲2発明は、「ジエチルアミン」である点

イ 判断

そこで、事案に鑑み、相違点2-2’について検討する。

相違点2-2’は、上記(2)本件発明1についての<相違点2-2>と同旨であり、同様に判断される。

したがって、甲2発明において、相違点2-2’に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明3~14について

本件発明2を直接又は間接的に引用する本件発明3~14についても同様である。

(6)申立理由1-2、申立理由2-2についてのむすび

したがって、本件発明1、5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件発明1~14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~14に係る特許は、申立理由1-2、申立理由2-2によっては取り消すことはできない。

3 申立理由2-3(甲3を主引用例とする進歩性欠如)について

(1)証拠に記載された事項等

ア 甲3に記載された事項及び甲3発明

(ア)甲3に記載された事項

「[0013]
本発明のエポキシ硬化剤に含まれるコロイダルシリカ粒子の平均一次粒子径は、窒素吸着法(BET法)により求めた比表面積S(m2/g)により、D(nm)=2720/Sの式で計算される窒素吸着法粒子径である。コロイダルシリカ粒子の平均一次粒子径が5nm未満では、本発明のエポキシ硬化剤のシリカ濃度を高くすることができないため好ましくない。また、前記平均一次粒子径が40nmを超えると、エポキシ樹脂硬化体の透明性が低下するため好ましくない。より好ましいコロイダルシリカ粒子の平均一次粒子径は、10~30nmである。」
「[0015]
・・・また、本発明のエポキシ硬化剤に含まれるコロイダルシリカ粒子は、コロイダルシリカ粒子表面のシラノール基と反応して共有結合を形成することができる有機シラン化合物によって表面処理されていることが好ましい。この表面処理によりコロイダルシリカ粒子は完全飽和ジカルボン無水物及びエポキシ樹脂硬化用組成物への分散性を向上させることができる。・・・」
「[0020]
また、本発明のエポキシ硬化剤に含まれるコロイダルシリカ粒子が酸性シリカゾル由来である場合、エポキシ樹脂硬化用組成物の熱硬化後、硬化体の着色が起こり、硬化体の透明性が低下する場合がある。そのため、完全飽和ジカルボン酸無水物と酸性シリカゾルとを混合する前に前記酸性シリカゾルに塩基性物質を添加して中和することが好ましい。塩基性物質の添加は、酸性の水性シリカゾル又は有機溶媒分散シリカゾルの段階で行われ、好ましくはシリカゾルのpHが4~8、より好ましくはシリカゾルのpHが5~8になるように調整する。
[0021]
用いられる塩基性物質としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化ナ トリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、有機アミン等が挙げられる。有機アミンとしては、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n-プロピルアミン、ジイソブチルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;ピペリジン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第4級アンモニウム;イミダゾール、イミダゾール誘導体;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザ-ビシクロ(4,3,0)ノネン-5、1,4-ジアザ-ビシクロ(2,2,2)オクタン等の環状アミン;アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン;などを用いることができる。」
「[0065]
得られたエポキシ樹脂硬化用組成物には適宣、硬化促進剤が併用されても良い。硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、等のイミダゾール類;2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン等のアミン類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機リン化合物;トリフェニルエチルホスフォニウムブロミド等のハロゲン化トリフェニルモノアルキルホスフォニウム;テトラブチルホスホニウムO,O’-ジエチルジチオホスフェート等の第4級ホスフォニウム塩;等が挙げられる。・・・」
「[0070]
(エポキシ硬化剤)
実施例1
メタノール分散シリカゾル[MT-ST(商品名)、窒素吸着法粒子径12nm、動的光散乱法粒子径20nm、SiO2濃度30質量%、メタノール濃度68質量%、及び水分2質量%、日産化学工業社製]800gを内容積1Lの茄子型フラスコに仕込み、ロータリーエバポレーターにて630mbar、浴温70℃でアセトニトリルを添加しながら溶媒を蒸発留去した。ゾルの液面をほぼ一定に保ちながらアセトニトリルの供給量が600gになるまで蒸発留去を行い、アセトニトリル・メタノール混合溶媒ゾル(SiO2濃度30質量%、メタノール濃度20質量%、アセトニトリル濃度49質量%、及び水分1質量%)800gを得た。次いで大気圧下で攪拌しながら、得られたゾルにフェニルトリメトキシシラン16.0gを添加し、浴温65℃で5時間加熱した。このゾルに1.0質量%水酸化ナトリウムメタノール溶液を17.0g添加し、攪拌した。
[0071]
その後、ロータリーエバポレーターにて630~450mbar、浴温70℃で、ゾルの液面をほぼ一定に保つように、アセトニトリル1200gを供給しながら溶媒の蒸発留去を行い、アセトニトリル分散シリカゾル(SiO2濃度30.0質量%、アセトニトリル濃度69.9質量%、メタノール濃度0.05%、及び水分0.03質量%、当該ゾルを等質量の水で希釈した場合のpHは5.7)800gを得た。このアセトニトリル分散シリカゾル800gにメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(東京化成工業社製)を480g添加し、エバポレーターにて340~20mbar、浴温70~90℃でアセトニトリルを蒸発留去することによって、無色透明のコロイダルシリカ粒子及びメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を含有するエポキシ硬化剤(SiO2濃度34.5質量%、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物濃度65.4質量%、アセトニトリル濃度0.1質量%、30℃におけるB型粘度290mPa・s、光線透過率99%)を得た(エポキシ硬化剤(I))。得られたエポキシ硬化剤をガラス容器に密封し、25℃で1ヶ月保存したところ、外観は無色透明、30℃におけるB型粘度は300mPa・sであり、保存時も安定であった。」
「[0082]
(エポキシ硬化体の作製)
エポキシ樹脂(1):
トリス-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレート(日産化学工業社製、商品名:テピック(登録商標)S)をエポキシ樹脂(1)として用いた。・・・」
「[0088]
実施例5
四つ口フラスコにエポキシ樹脂(1)16.50gと実施例1で得られたエポキシ硬化剤(I)40.21gを入れ、80℃で40分間の混合攪拌を行った。その後、硬化促進剤としてトリフェニルエチルホスホニウムブロミド170mgをメチルヘキサヒドロフタル酸無水物3.2gに溶解したものを加えて更に減圧下で2分間脱泡を行い、エポキシ樹脂硬化用組成物を得た。・・・」
「[0098]
本発明のエポキシ硬化剤を用いたエポキシ樹脂硬化体は、透明性に優れ、LED等の光半導体素子の封止用として産業上利用可能である。」

(イ)甲3発明

甲3の実施例5([0088]の実施例5、[0070]~[0071]の実施例1参照)に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。

「メタノール分散シリカゾル[MT-ST(商品名)、窒素吸着法粒子径12nm、動的光散乱法粒子径20nm、SiO2濃度30質量%、メタノール濃度68質量%、及び水分2質量%、日産化学工業社製]800gを内容積1Lの茄子型フラスコに仕込み、ロータリーエバポレーターにて630mbar、浴温70℃でアセトニトリルを添加しながら溶媒を蒸発留去を行い、アセトニトリル・メタノール混合溶媒ゾル(SiO2濃度30質量%、メタノール濃度20質量%、アセトニトリル濃度49質量%、及び水分1質量%)800gを得、次いで大気圧下で攪拌しながら、得られたゾルにフェニルトリメトキシシラン16.0gを添加し、浴温65℃で5時間加熱し、このゾルに1.0質量%水酸化ナトリウムメタノール溶液を17.0g添加し、攪拌し、その後、ロータリーエバポレーターにて630~450mbar、浴温70℃で、ゾルの液面をほぼ一定に保つように、アセトニトリル1200gを供給しながら溶媒の蒸発留去を行い、アセトニトリル分散シリカゾル(SiO2濃度30.0質量%、アセトニトリル濃度69.9質量%、メタノール濃度0.05%、及び水分0.03質量%、当該ゾルを等質量の水で希釈した場合のpHは5.7)800gを得て、このアセトニトリル分散シリカゾル800gにメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(東京化成工業社製)を480g添加し、エバポレーターにて340~20mbar、浴温70~90℃でアセトニトリルを蒸発留去することによって得られた、無色透明のコロイダルシリカ粒子及びメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を含有するエポキシ硬化剤(SiO2濃度34.5質量%、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物濃度65.4質量%、アセトニトリル濃度0.1質量%、30℃ におけるB型粘度290mPa・s、光線透過率99%)(エポキシ硬化剤(I))と、
エポキシ樹脂(1)(トリス-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレート(日産化学工業社製、商品名:テピック(登録商標)S))を四つ口フラスコに入れ、80℃で40分間の混合攪拌を行い、その後、硬化促進剤としてトリフェニルエチルホスホニウムブロミド170mgをメチルヘキサヒドロフタル酸無水物3.2gに溶解したものを加えて更に減圧下で2分間脱泡を行い得られた、エポキシ樹脂硬化用組成物。」(以下、「甲3発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲3発明とを対比する。

甲3発明の「エポキシ硬化剤(I)」は、本件発明1の「硬化剤」に相当する。

甲3発明の「水酸化ナトリウム」のpKaは13であるから(特開2013-211571号公報の【0098】参照))、水酸化ナトリウムは、共役酸の酸解離定数(pKa)が9. 4以上の塩基性物質であるといえる。また、シリカ粉末の表面シラノール基は弱酸であって、当該溶融シリカ粉末に塩基性物質を添加すると表面のシラノール基が中和されることは明らかである。よって、甲3発明のシリカは、「ゾルに1.0質量%水酸化ナトリウムメタノール溶液を17.0g添加し、攪拌し」ていることから、本件発明1の「共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラー」に相当する。

甲3発明の「フェニルトリメトキシシラン」は、本件発明1の「シリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤」に相当する。

甲3発明の「エポキシ樹脂(1)(トリス-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレート(日産化学工業社製、商品名:テピック(登録商標)S))」は、本件発明1の「エポキシ樹脂」に相当する。

甲3発明の「溶融シリカ粉末」は、「メタノール分散シリカゾル[MT-ST(商品名)、窒素吸着法粒子径12nm、動的光散乱法粒子径20nm、SiO2濃度30質量%、メタノール濃度68質量%、及び水分2質量%、日産化学工業社製]800gを内容積1Lの茄子型フラスコに仕込み、・・・次いで大気圧下で攪拌しながら、得られたゾルにフェニルトリメトキシシラン16.0gを添加し」という記載より、本件発明1の「樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されている」「シリカフィラー」に相当する。

甲3発明の「エポキシ樹脂硬化用組成物」は、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。

そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、少なくとも以下の<相違点3-1>~<相違点3-3>で相違する。

<一致点>

(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラーを含有する樹脂組成物。

<相違点3-1>

本件発明1は、「(D2)シランカップリング剤」を含有し、「前記(D2)シランカップリン剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」のに対し、甲3発明は、「(D2)シランカップリング剤」を含まない点

<相違点3-2>

本件発明1は、「(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されている」のに対し、甲3発明は、シリカゾルにフェニルトリメトキシシランを添加して表面処理を行った後に、水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加して中和処理を行う点

<相違点3-3>

シリカフィラーに関し、本件発明1は、「ただし、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」を除く」のに対し、甲3発明は、その点明らかでない点

イ 判断

そこで、事案に鑑み、相違点3-2について検討する。

甲3発明は、シリカゾルにフェニルトリメトキシシランを添加した後、水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加して、シリカゾルの表面処理を行っていることから、シリカゾルは、シランカップリング剤で表面処理を行った後に水酸化ナトリウムで中和処理されたものであるから、塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されたものではない。

したがって、<相違点3-2>は実質的な相違点である。よって、本件発明1は、甲3に記載された発明でない。

ついで、<相違点3-2>に係る発明特定事項の容易想到性について検討する。

甲3には、溶融シリカ粉末について、塩基性物質により表面のシラノール基を中和した後、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理することについては記載がないし、そのようにすると、中和によってシリカのシラノール基が、カップリング剤と反応しにくくなるから、甲3発明においてジエチルアミンで表面処理し、さらに、シランカップリング剤で表面処理することを採用する動機付けがあるとはいえない。また、甲1、甲2、甲4~甲11にも、甲3発明において相違点3-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。

よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は甲3に記載された発明であるとも、甲3発明並びに甲1~11に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明3~14について

本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明3~14についても同様である。

(4)本件発明2について

ア 対比

本件発明2と甲3発明とを対比すると、両者は、以下の<一致点>で一致し、少なくとも以下の<相違点3-1’>~<相違点3-3’>で相違する。

<一致点>

(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラーを含有する樹脂組成物。

<相違点3-1’>

本件発明2は、「(D2)シランカップリング剤」を含有し、「前記(D2)シランカップリン剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」のに対し、甲3発明は、「(D2)シランカップリング剤」を含まない点

<相違点3-2’>

本件発明2は、「(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されている」のに対し、甲3発明は、シリカゾルにフェニルトリメトキシシランを添加した後、水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加して、シリカゾルの表面処理を行う点

<相違点3-3’>

「pKaが9.4以上の塩基性物質」に関し、本件発明2は、「3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)、および、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)からなる群から選択される少なくとも一つであ」るのに対し、甲3発明は、「ジエチルアミン」である点

イ 判断

そこで、事案に鑑み、相違点3-2’について検討する。

相違点3-2’は、上記(2)本件発明1についての<相違点3-2>と同旨であり、同様に判断される。

したがって、甲3において、相違点3-2’に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件発明2は、甲3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明3~14について

本件発明2を直接又は間接的に引用する本件発明3~14についても同様である。

(6)申立理由2-3についてのむすび

したがって、本件発明1~14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~14に係る特許は、申立理由2-3によっては取り消すことはできない。

4 申立理由2-4(甲4を主引用例とする進歩性欠如)について

(1)証拠に記載された事項等

ア 甲4に記載された事項及び甲4発明

(ア)甲4に記載された事項

「【請求項2】
下記の(A)~(C)成分を含む半導体素子封止用樹脂組成物。
(A)熱硬化性樹脂。
(B)硬化剤成分。
(C)粒子径が0.5μm以下であり、ブチルアミンにより滴定した酸性度が0.01mmol/g以下であるシリカ粒子。」
「【0010】
硬化促進剤としては、三級アミン、四級アンモニウム塩、イミダゾ-ル化合物、ホウ素化合物および有機金属錯塩等が挙げられる。
【0011】
三級アミンとしては、トリエタノ-ルアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアミノエタノ-ル、ジエチルアミノエタノ-ル、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N, -ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、および2-(ジメチルアミノ)メチルフェノ-ル等が挙げられる。
四級アンモニウム塩としては、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライドおよびステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
イミダゾ-ル類としては、2-メチルイミダゾ-ル、2-ウンデシルイミダゾ-ル、2-エチルイミダゾ-ル、1-ベンジル-2-メチルイミダゾ-ルおよび1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾ-ル等が挙げられる。・・・」
「【0012】
なお上記(C成分)としてのシリカ粒子を得るには、有機溶媒中において0.5μm以下のシリカ粒子と有機成分を混合することで、シリカ粒子表面のシラノール基を処理することにより、シリカ粒子の酸性度を低下させるかもしくは塩基性にすることが可能である。(なお、ここの塩基性とはシリカ分散液に指示薬としてp-ジメチルアミノアゾベンゼンを添加すると黄色を示すものをいう。)その方法は次の如くである。
(1)有機アミンでシリカ粒子表面のシラノ-ル基を中和する。有機アミンとしては例えばエチルアミン、ブチルアミンおよびモノエタノ-ルアミン等が挙げられる。
(2)酸無水物でシリカ粒子表面のシラノ-ル基を処理する。酸無水物としては例えば、無水酢酸、無水フタル酸、無水安息香酸、無水マレイン酸、無水コハク酸および前述した本発明において硬化剤として用いる酸無水物などが挙げられる。
(3)有機カルボン酸でシリカ粒子表面のシラノ-ル基を処理する。有機カルボン酸としては、酢酸、安息香酸、アクリル酸、メチルアクリル酸、エチルアクリル酸およびブチルアクリル酸等が挙げられる。
(4)シランでシリカ粒子表面のシラノ-ル基を処理する。シランとしては例えば、アルコキシシランあるいはクロロシラン等であり、トリエチルモノエトキシシラン、トリエチルモノメトキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリメチルクロロシランおよびジメチルジクロロシラン等が挙げられる。
(5)シランカップリング剤でシリカ粒子表面のシラノール基を処理する。シランカップリング剤としては例えば、化1~化10のような構造のものが挙げられる。・・・」
「【0021】
【実施例】次に、実施例について比較例と併せて説明する。
【0022】実施例1
メチルイソブチルケトンに分散させた粒子径が0.01μmのシリカ粒子の表面をブチルアミンで処理した。〔このシリカ分散液(シリカ分;30重量%)に、指示薬としてp-ジメチルアミノアゾベンゼンを添加すると黄色を示した。〕従って、このシリカ粒子の酸性度は滴定するまでもなく0.01mmol/g以下である。この様にして得られたシリカ分散液670部にエポキシ当量185のビスフェノールA型エポキシ樹脂(液状樹脂)100部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸100部を溶解させた。そして、これを減圧して脱溶媒した後、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾール0.4部、老化防止剤2.5部を混合し、シリカ粒子含有透明樹脂組成物を得た。」

(イ)甲4発明

甲4の実施例1に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。

「メチルイソブチルケトンに分散させた粒子径が0.01μmのシリカ粒子の表面をブチルアミンで処理し、得られたシリカ分散液670部にエポキシ当量185のビスフェノールA型エポキシ樹脂(液状樹脂)100部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸100部を溶解させて、これを減圧して脱溶媒した後、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾール0.4部、老化防止剤2.5部を混合して得られた、シリカ粒子含有透明樹脂組成物。」(以下、「甲4発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲4発明とを対比する。

甲4発明の「シリカ粒子」は、本件発明1の「シリカフィラー」に相当する。

甲4発明の「ブチルアミン」は、甲8に示されるようにpKa10.77であるから、pKaが9. 4以上の塩基性物質であるといえる。また、シリカ粒子の表面シラノール基は弱酸であって、当該シリカ粒子に塩基性物質を添加すると表面のシラノール基が中和されることは明らかである。よって、甲4発明の「表面をブチルアミンで処理」された「シリカ粒子」は、本件発明1の「共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラー」に相当する。

甲4発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」は、本件発明1の「エポキシ樹脂」に相当する。

甲4発明の「メチルヘキサヒドロ無水フタル酸」は、本件発明1の「硬化剤」に相当する。

甲4発明の「シリカ粒子含有透明樹脂組成物」は、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。

そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、少なくとも以下の<相違点4-1>~<相違点4-3>で相違する。

<一致点>

(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラーを含有する樹脂組成物であり、前記(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーである、樹脂組成物。

<相違点4-1>

本件発明1は、「(D2)シランカップリング剤」を含有し、「前記(D2)シランカップリン剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」のに対し、甲4発明は、「(D2)シランカップリング剤」を含有しない点

<相違点4-2>

本件発明1は、「さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されている」のに対し、甲4発明は、シリカ粒子の表面をブチルアミンで処理するのみであり、シランカップリング剤で表面処理されていない点

<相違点4-3>

シリカフィラーに関し、本件発明1は、「ただし、「α線の放出量が0.005カウント/cm2・hr以下であり、且つ23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときの吸湿率が0.5質量%以下である有機シラン化合物により表面修飾された20~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子」を除く」のに対し、甲4発明は、その点明らかでない点

イ 判断

そこで、事案に鑑み、相違点4-2について検討する。

甲4発明は、シリカ粒子について、表面をブチルアミンで処理するのみであるから、塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーであって、さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されたものではない。

したがって、<相違点4-2>は実質的な相違点である。よって、本件発明1は、甲4に記載された発明でない。

ついで、<相違点4-2>に係る発明特定事項の容易想到性について検討する。

甲4の【0012】には、「シリカ粒子表面のシラノール基を処理することにより、シリカ粒子の酸性度を低下させるかもしくは塩基性にすることが可能である。・・・その方法は次の如くである。(1)有機アミンでシリカ粒子表面のシラノ-ル基を中和する。有機アミンとしては例えばエチルアミン、ブチルアミンおよびモノエタノ-ルアミン等が挙げられる。・・・(5)シランカップリング剤でシリカ粒子表面のシラノール基を処理する。」と記載されているものの、「(5)シランカップリング剤でシリカ粒子表面のシラノール基を処理する」方法は、シリカ粒子の酸性度を低下させる手段として並列的に記載されているにすぎないから、当業者はいずれか一方を行えば十分であり、有機アミンで処理した後に、さらにシランカップリング剤で処理することが動機付けられるとはいえない。また、甲1~甲3、甲5~甲11にも、甲4発明において相違点4-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。

よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は甲4に記載された発明であるとも、甲4発明並びに甲1~甲11に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明3~14について

本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明3~14についても同様である。

(4)本件発明2について

ア 対比

本件発明2と甲4発明とを対比すると、両者は、以下の<一致点>で一致し、少なくとも以下の<相違点4-1’>~<相違点4-3’>で相違する。

<一致点>

(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラーを含有する樹脂組成物であり、前記シリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質により表面のシラノール基が中和されているシリカフィラーである、樹脂組成物。

<相違点4-1’>

本件発明2は、「(D2)シランカップリング剤」を含有し、「前記(D2)シランカップリン剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」のに対し、甲4発明は、その点明らかでない点

<相違点4-2’>

本件発明2は、「さらに、樹脂組成物に配合する前にシランカップリング剤で表面処理されている」のに対し、甲4発明は、シリカ粒子の表面をブチルアミンで処理するのみであり、シランカップリング剤で表面処理されていない点

<相違点4-3’>

「pKaが9.4以上の塩基性物質」に関し、本件発明2は、「3-メトキシプロピルアミン(3MOPA)、および、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)からなる群から選択される少なくとも一つであ」るのに対し、甲4発明は、「ブチルアミン」である点

そこで、事案に鑑み、相違点4-2’について検討する。

相違点4-2’は、上記(2)本件発明1についての<相違点4-2>と同旨であり、同様に判断される。

したがって、甲4において、相違点4-2’に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件発明2は、甲4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明3~14について

本件発明2を直接又は間接的に引用する本件発明3~14についても同様である。

(6)申立理由2-4についてのむすび

したがって、本件発明1~14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~14に係る特許は、申立理由2-4によっては取り消すことはできない。

第7 申立人の主張する新たな申立理由について

1 申立人の主張する新たな申立理由の概要

申立人は、令和5年9月11日付け意見書において、サポート要件違反及び明確性要件違反の申立理由を主張しているので以下検討する。

(1)サポート要件違反

申立人は、上記意見書の第8~9頁において、

「本件明細書には、(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用されたシランカップリング剤とは別に後から配合した(D2)シランカップリング剤として、(C2)シリカフィラーの表面処理に使用されたシランカップリング剤と同一のシランカップリング剤を適用した例しか記載が無い。・・・従って、訂正請求後の本件発明は、本件明細書に記載された発明に比して格段に広範囲であり、本件明細書に記載されていない発明をも特定するものであると云える。」と主張する。

本件発明は、【0010】の記載によると、半導体封止材等の用途に使用される樹脂組成物における貯蔵安定性の向上を課題とするものであって、その課題解決のために、「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、および、(C2)シリカフィラーを含有する樹脂組成物であり、前記(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質で表面処理した後、さらに、シランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするシリカフィラーである、樹脂組成物(2)を提供する」(【0012】)ものであるから、本件発明1の「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、および、(C2)シリカフィラーを含有する樹脂組成物であり、前記(C2)成分のシリカフィラーが、共役酸の酸解離定数(pKa)が9.4以上の塩基性物質で表面処理した後、さらに、シランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするシリカフィラーである、樹脂組成物」という特定事項により上記「貯蔵安定性の向上」という課題が解決されると当業者は理解できる。

また、(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用されたシランカップリング剤とは別に後から配合した(D2)シランカップリング剤として、(C2)シリカフィラーの表面処理に使用されたシランカップリング剤とは異なるシランカップリング剤を適用した場合には、貯蔵安定性の向上という効果を奏しないとする具体的な根拠は認められない。

よって、上記申立人の主張は採用できない。

(2)明確性要件違反

ア 申立人は、上記意見書の第9~10頁において、

「(D2)シランカップリング剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」という訂正事項の記載は、シランカップリング剤を用いて(C2)成分のシリカフィラーに対する表面処理を為し、その後、該シランカップリング剤とは別に、(D2)シランカップリング剤を後から配合するという方法〔時系列手順〕を特定するものであり、訂正請求後の本件特許の請求項は、樹脂組成物という物の発明についての請求項であるが、その物(樹脂組成物)の製造方法を記載する請求項〔プロダクト・バイ・プロセス・クレーム〕であると捉えることができるから、明確でないと主張する。

しかしながら、上記訂正事項は、(D2)シランカップリング剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に配合したものであることを特定しただけであり、請求項1において時系列的な記載が含まれているとしても、それによって特定される組成物が「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C2)シリカフィラー、および、(D2)シランカップリング剤」という4成分を含有する樹脂組成物であることは明らかであるから、請求項1で特定される樹脂組成物は明確である。

よって、上記申立人の主張は採用できない。

イ 申立人は、上記意見書の第10~12頁において、

「(D2)シランカップリング剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合したものである」という訂正事項の記載は、(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用されたシランカップリング剤と、(D2)シランカップリング剤とは、樹脂組成物の内部組織において区別することができない旨主張する。

しかしながら、上記(2)アで述べたとおり、「(D2)シランカップリング剤が、前記(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用された前記シランカップリング剤とは別に後から配合」すると特定されても、組成物が、(C2)成分のシリカフィラーの表面処理に使用されたシランカップリング剤と、それ以外の(D2)シランカップリング剤を含有する樹脂組成物であることを理解することができ、この点で明確であるといえる。

よって、上記申立人の主張は採用できない。

第8 むすび

上記第5~第7のとおり、本件特許の請求項1~14に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由等によっては取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2023-700344

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