特許異議申立
2023-700329
ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法
- 審判番号
- 2023-700329
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-530952外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7146145
- 請求日
- 2023年03月31日
- 審決日
- 2023年12月27日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第41条第1項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7146145号発明「ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7146145号の特許請求の範囲を、令和5年9月1日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~22〕について訂正することを認める。
特許第7146145号の請求項1~22に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7146145号の請求項1~22に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)1月13日(優先権主張2021年(令和3年)3月26日)を国際出願日とする出願であって、令和4年9月22日にその特許権の設定登録がされ、同年10月3日に特許掲載公報が発行された。
そして、その請求項1~22に係る特許について、令和5年3月31日に特許異議申立人渋谷都(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年6月28日付けで取消理由を通知した。
それに対し、特許権者は、その指定期間内である同年9月1日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、同年10月11日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行ったが、申立人からの意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
令和5年9月1日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)について検討する。
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正請求書の記載のとおり。)
(1) 訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有することを特徴とするワークハンドリングシート。」
と記載されているのを、
「基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有し、
前記ワークハンドリングシートは、
前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備え
前記分離工程における前記レーザー光の照射を、前記硬化工程における前記活性エネルギー線の照射を兼ねるものとして行い、前記界面アブレーション層の局所的な硬化と前記界面アブレーションとを同時に行う
デバイス製造方法で使用されるためのものである
ことを特徴とするワークハンドリングシート。」
との記載に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4、6~9および11~14も同様に訂正するとともに、請求項14の記載を引用する請求項15および16も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記界面アブレーション層における前記基材とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、前記界面アブレーション層に対して高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して前記界面アブレーション層を硬化させた後における、前記シリコンウエハの前記ミラー面に対する粘着力は、10mN/25mm以上、300mN/25mm以下であることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。」
と記載されているのを、
「基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有し、
前記活性エネルギー線硬化性成分は、活性エネルギー線硬化性粘着剤であり、
前記界面アブレーション層における前記基材とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、前記界面アブレーション層に対して高圧水銀ランプを用いて光量190mJ/cm2で紫外線を照射して前記界面アブレーション層を硬化させた後における、前記シリコンウエハの前記ミラー面に対する粘着力は、10mN/25mm以上、300mN/25mm以下であることを特徴とするワークハンドリングシート。」
との記載に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6~9および11~14も同様に訂正するとともに、請求項14の記載を引用する請求項15および16も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10に、
「前記紫外線吸収剤は、複数の芳香環を有する化合物であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。」
と記載されているのを、
「基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有し、
前記紫外線吸収剤は、
トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン、および、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンとの混合物
の少なくとも1種である
ことを特徴とするワークハンドリングシート。」
との記載に訂正する(請求項10の記載を引用する11~14も同様に訂正するとともに、請求項14の記載を引用する請求項15および16も同様に訂正する)。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項17に、
「基材と、前記基材における片面側に積層された、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有する界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備えることを特徴とするデバイス製造方法。」
と記載されているのを、
「基材と、前記基材における片面側に積層された、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有する界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備えるデバイス製造方法であって、
前記ワークハンドリングシートでは、
前記活性エネルギー線硬化性成分が、活性エネルギー線硬化性粘着剤であり、
前記界面アブレーション層における前記基材とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、前記界面アブレーション層に対して高圧水銀ランプを用いて光量190mJ/cm2で紫外線を照射して前記界面アブレーション層を硬化させた後における、前記シリコンウエハの前記ミラー面に対する粘着力が、10mN/25mm以上、300mN/25mm以下であることを特徴とするデバイス製造方法。」
との記載に訂正する(請求項17の記載を引用する請求項18および20~21も同様に訂正するとともに、請求項21の記載を引用する請求項22も同様に訂正する)。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項19に、
「前記分離工程における前記レーザー光の照射を、前記硬化工程における前記活性エネルギー線の照射を兼ねるものとして行い、前記界面アブレーション層の局所的な硬化と前記界面アブレーションとを同時に行うことを特徴とする請求項17に記載のデバイス製造方法。」
と記載されているのを、
「基材と、前記基材における片面側に積層された、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有する界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備え、
前記分離工程における前記レーザー光の照射を、前記硬化工程における前記活性エネルギー線の照射を兼ねるものとして行い、前記界面アブレーション層の局所的な硬化と前記界面アブレーションとを同時に行う
ことを特徴とするデバイス製造方法。」
との記載に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20~21も同様に訂正するとともに、請求項21の記載を引用する請求項22も同様に訂正する)。
(2) 一群の請求項について
ア 請求項1~16(訂正事項1~3)について
(ア) 訂正事項1
訂正前の請求項1~4、6~9、11~16について、請求項2~4、6~9、11~16はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4、6~9、11~16に対応する訂正後の請求項1~4、6~9、11~16は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(イ) 訂正事項2
訂正前の請求項5~9、11~16について、請求項6~9、11~16はそれぞれ請求項5を直接又は間接的に引用しており、訂正事項2によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項5~9、11~16に対応する訂正後の請求項5~9、11~16は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(ウ) 訂正事項3
訂正前の請求項10~16について、請求項11~16はそれぞれ請求項10を直接又は間接的に引用しており、訂正事項3によって記載が訂正される請求項10に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項10~16に対応する訂正後の請求項10~16は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(エ) 組み合わされた「一群の請求項」
共通する請求項11~16を有する上記(ア)~(ウ)の「一群の請求項」は組み合わされて、請求項1~16が1つの「一群の請求項」になる。
イ 請求項17~22(訂正事項4~5)について
(ア) 訂正事項4
訂正前の請求項17~18、20~22について、請求項18、20~22はそれぞれ請求項17を直接又は間接的に引用しており、訂正事項4によって記載が訂正される請求項17に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項17~18、20~22に対応する訂正後の請求項17~18、20~22は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(イ) 訂正事項5
訂正前の請求項19~22について、請求項20~21はそれぞれ請求項19を直接又は間接的に引用しており、訂正事項5によって記載が訂正される請求項19に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項19~22に対応する訂正後の請求項19~22は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(ウ) 組み合わされた「一群の請求項」
共通する請求項20~22を有する上記(ア)~(イ)の「一群の請求項」は組み合わされて、請求項17~22が1つの「一群の請求項」になる。
(3) 独立特許要件について
本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1~22が特許異議の申立ての対象とされているので、訂正前の請求項1~22に係る訂正事項1~5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 請求項1~16について
ア 訂正事項1について
(ア) 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「ワークハンドリングシート」について、特定の「デバイス製造方法で使用されるためのものである」との事項を直列的に付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
訂正事項1により、訂正前の請求項1に記載された「ワークハンドリングシート」について、直列的に付加される特定の「デバイス製造方法」は、訂正前の請求項17を引用する請求項19に記載されたデバイス製造方法であるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記のとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2について
(ア) 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項2を引用する請求項5で特定される、ワークハンドリングシートの、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して硬化させた後における界面アブレーション層の粘着力について、照射する光量が「190mJ/cm2」との事項を直列的に付加するものであり、かつ、独立請求項とするものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び4号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
硬化させた後における界面アブレーション層の粘着力を測定する際に照射する高圧水銀ランプの光量を「190mJ/cm2」とすることは、本件明細書等の段落0153、0159に記載された事項であるから、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3について
(ア) 訂正の目的の適否
訂正事項3は、請求項1を引用する請求項10のワークハンドリングシートの「複数の芳香環を有する化合物である」と特定された紫外線吸収剤を、「トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン、および、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンとの混合物の少なくとも1種である」(以下「特定紫外線吸収剤」という。)と、上位概念から下位概念へ変更し、かつ、独立請求項とするものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び4号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
特定紫外線吸収剤は、本件明細書等の段落0163に記載された事項であるから、訂正事項3は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2) 請求項17~22について
ア 訂正事項4について
(ア) 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項17のデバイス製造方法のワークハンドリングシートについて、
「前記活性エネルギー線硬化性成分が、活性エネルギー線硬化性粘着剤であり、
前記界面アブレーション層における前記基材とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、前記界面アブレーション層に対して高圧水銀ランプを用いて光量190mJ/cm2で紫外線を照射して前記界面アブレーション層を硬化させた後における、前記シリコンウエハの前記ミラー面に対する粘着力が、10mN/25mm以上、300mN/25mm以下である」との事項を直列的に付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
ワークハンドリングシートについての直列的に付加される上記事項は、訂正前の請求項2、5及び本件明細書等の段落0153、0159に記載された事項であるから、訂正事項4は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記のとおり、訂正事項4は、特許請求の範囲を減縮する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項5について
(ア) 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項19を独立請求項とするものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
訂正後の請求項19に記載された事項は、訂正前の請求項19に記載された事項であるから、訂正事項5は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、単に請求項間の引用関係の解消を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
3 小括
上記のとおり、一群の請求項1~16についての訂正事項1~3による訂正、及び、一群の請求項17~22についての訂正事項4、5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、令和5年9月1日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~22〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正請求による訂正後の本件発明1~22
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1~22に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明22」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~22に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有し、
前記ワークハンドリングシートは、
前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備え
前記分離工程における前記レーザー光の照射を、前記硬化工程における前記活性エネルギー線の照射を兼ねるものとして行い、前記界面アブレーション層の局所的な硬化と前記界面アブレーションとを同時に行う
デバイス製造方法で使用されるためのものである
ことを特徴とするワークハンドリングシート。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性成分は、活性エネルギー線硬化性粘着剤であることを特徴とする請求項1に記載のワークハンドリングシート。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤は、アクリル系粘着剤であることを特徴とする請求項2に記載のワークハンドリングシート。
【請求項4】
シリコンウエハのミラー面に対する粘着力は、300mN/25mm以上、30000mN/25mm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のワークハンドリングシート。
【請求項5】
基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有し、
前記活性エネルギー線硬化性成分は、活性エネルギー線硬化性粘着剤であり、
前記界面アブレーション層における前記基材とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、前記界面アブレーション層に対して高圧水銀ランプを用いて光量190mJ/cm2で紫外線を照射して前記界面アブレーション層を硬化させた後における、前記シリコンウエハの前記ミラー面に対する粘着力は、10mN/25mm以上、300mN/25mm以下である
ことを特徴とするワークハンドリングシート。
【請求項6】
前記光重合開始剤は、250nm以上、500nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤は、有機化合物であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項8】
前記紫外線吸収剤は、1個以上の複素環を有する化合物であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項9】
前記紫外線吸収剤は、炭素環および複素環の少なくとも1種を有し、
前記紫外線吸収剤が有する全ての前記炭素環および前記複素環は、それぞれ単環である
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項10】
基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有し、
前記紫外線吸収剤は、
トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン、および、
2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンとの混合物
の少なくとも1種である
ことを特徴とするワークハンドリングシート。
【請求項11】
前記界面アブレーション層中における紫外線吸収剤の含有量は、1質量%以上、75質量%以下であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項12】
前記レーザー光は、紫外域の波長を有するものであることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項13】
前記界面アブレーション層に界面アブレーションを生じさせたときに、当該界面アブレーションが生じた位置においてブリスターが形成されることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項14】
活性エネルギー線の照射により前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させるとともに、前記レーザー光の照射により前記界面アブレーション層において局所的に界面アブレーションを生じさせることによって、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、前記界面アブレーション層から選択的に分離するために使用されるものであることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項15】
前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項14に記載のワークハンドリングシート。
【請求項16】
前記ワーク小片は、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードであることを特徴とする請求項14または15記載のワークハンドリングシート。
【請求項17】
基材と、前記基材における片面側に積層された、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有する界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備えるデバイス製造方法であって、
前記ワークハンドリングシートでは、
前記活性エネルギー線硬化性成分が、活性エネルギー線硬化性粘着剤であり、
前記界面アブレーション層における前記基材とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、前記界面アブレーション層に対して高圧水銀ランプを用いて光量190mJ/cm2で紫外線を照射して前記界面アブレーション層を硬化させた後における、前記シリコンウエハの前記ミラー面に対する粘着力が、10mN/25mm以上、300mN/25mm以下である
ことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項18】
前記硬化工程の完了後に、前記分離工程を行うことを特徴とする請求項17に記載のデバイス製造方法。
【請求項19】
基材と、前記基材における片面側に積層された、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有する界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備え、
前記分離工程における前記レーザー光の照射を、前記硬化工程における前記活性エネルギー線の照射を兼ねるものとして行い、前記界面アブレーション層の局所的な硬化と前記界面アブレーションとを同時に行う
ことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項20】
前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項17~19のいずれか一項に記載のデバイス製造方法。
【請求項21】
ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードを前記ワーク小片として用いて、前記発光ダイオードを複数備える発光装置を製造することを特徴とする請求項17~20のいずれか一項に記載のデバイス製造方法。
【請求項22】
前記発光装置は、ディスプレイであることを特徴とする請求項21に記載のデバイス製造方法。」
第4 証拠等
申立人が提出した甲第1号証~甲第7号証は以下のとおりであり、以下、それぞれ「甲1」~「甲7」という。
甲第1号証 国際公開第2022/102691号
(特願2022-51722号に対応する国際公開)
甲第2号証 特開2004-111675号公報
甲第3号証 国際公開第2020/153499号
甲第4号証 特表2019-527465号公報
甲第5号証 国際公開第2020/168174号(特表2022-521498号公報)
甲第6号証 「粘着カ・剥離力とは」、協和界面科学株式会社、打ち出し(令和5年3月23日) https://www.face-kyowa.co.jp/science/theory/what_adhesion_peel.html#:~:text=180%E5%BA%A6%E5%89%A5%E9%9B%A2%E3%81%AF%E7%B2%98%E7%9D%80, %E3%81%8C%E7%8F%BE%E7%8A%B6%E3%81%A8%E8%80%83%E3%81%88%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
甲第7号証 「機能性添加剤製品カタログ Tinuvin(R)UVA Series Lignostab(R) Irganox(R) Tinopal(R) Irgastab(R)」(当審注:「(R)」は丸囲いR(登録商標)を示す。)、2019年4月、BASFジャパン株式会社、[検索日不明]、インターネットURL:https://www.basf.com/jp/documents/ja/products-and-industories/paint-coating-industory/catalog.pdf
甲1~7以外に取消理由通知書で引用した文献1は次のものである。
文献1 “Technical Information Tinuvin(R) 479”(「(R)」は丸囲いR(登録商標)を示す。)[online]、2011年、BASF、[2023年6月12日検索]、 インターネット<URL: http://reenaorganics.com/wp-content/uploads/2019/08/Tinuvin-479.pdf>
1 先願明細書等(甲1)、及び先願発明
(1) 先願明細書等の記載
甲1は、積水化学工業株式会社を出願人、杉田大平を発明者とし、本件特許の優先日(令和3年3月26日)前の令和2年11月13日に出願された特願2020-189556号を優先基礎とする特願2022-517220号に対応する国際公開である。
そして、特許法第41条第1項の規定による優先権の主張の基礎とされ、同法第41条第3項の規定により出願公開されたものとみなされる特願2020-189556号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下「先願明細書等」という。)には次の記載がある。(【】内に示される先願明細書等の段落番号、請求項番号の後に、便宜上、対応する甲1の段落番号、請求項番号を[]内に示す。また、下線は、引用箇所を示すため当審が付加した。)
ア 「【0002】([0002])
マイクロLEDディスプレイは、画素を構成するチップの1つ1つが微細な発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)チップであり、このマイクロLEDチップが自発光して画像を表示する表示装置である。マイクロLEDディスプレイは、コントラストが高く、応答速度が速く、また、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等で使用されるカラーフィルターを必要としないこと等により薄型化も可能であることから、次世代の表示装置として注目されている。
【0003】([0003])
マイクロLEDディスプレイにおいては、多数のマイクロLEDチップが平面状に高密度で敷き詰められている。このようなマイクロLEDディスプレイを製造する際には、粘着剤層を有する転写用基板上に多数のマイクロLEDチップが配置された転写用積層体から、駆動回路基板上にマイクロLEDチップを転写し、電気的に接続する工程が行われる。
マイクロLEDチップの転写工程では、転写用積層体のLEDチップが配置された面と、駆動回路基板の電極が形成された面とを対向させた状態で、転写用積層体からマイクロLEDチップを剥離させて転写する。
・・・(中略)・・・
【0009】([0009])
本発明の電子部品の製造方法は、まず、少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープの上記硬化型粘着剤層上にチップ部品を配置する工程(1)を行う。
上記工程(1)の具体的な方法は特に限定されず、例えば、各チップ部品を個別に支持テープ上に配置する方法や、支持テープにウエハを貼り付けて個片化する方法や、基板や粘着テープ等の部材上に配置されたチップ部品を支持テープ上に転写する方法等が挙げられる。なかでも、生産効率に優れることから、部材上に配置されたチップ部品を支持テープ上に転写する方法が好ましい。より具体的には、上記工程(1)は、上記チップ部品を配置した部材の上記チップ部品側の面と上記支持テープとを貼り合わせ、上記部材を除去することで、上記支持テープの上記硬化型粘着剤層上にチップ部品を配置する工程であることが好ましい。
【0010】([0010])
ここで、上記工程(1)のなかでも上記チップ部品を転写して支持テープ上に配置する方法の様子を模式的に表した図を図1、2に示す。上記工程(1)では、図1に示すように、まずチップ部品1を配置した部材のチップ部品1が配列された面を、硬化型粘着剤層を有する支持テープ3の硬化型粘着剤層上に貼り合わせる。即ち、チップ部品1の背面を、支持テープ3の硬化型粘着剤層3a上へ貼り合わせる。その後、部材2を剥離等の方法で除去することで、図2に示すように、チップ部品1が支持テープ3の硬化型粘着剤層上へ転写される。上記支持テープ3は片面テープであっても両面テープであってもよいし、基材を有していてもいなくてもよいが、上記支持テープ3が両面テープである場合は、上記チップ部品1を転写する面とは反対側の面はガラス等の支持体4に貼り付けられることが好ましい。上記部材2は特に限定されず、例えば、ガラス基板、サファイヤ基板、シリコン基板、金属基板、有機基板等が挙げられる。
上記支持体4は特に限定されず、例えば、ガラス基板、サファイヤ基板、シリコン基板、金属基板、有機基板等が挙げられる
【0011】([0011])
上記チップ部品は特に限定されず、例えば、マイクロLEDチップ、イメージセンサーの光学チップ等が挙げられる。なかでも、本発明の電子部品の製造方法は、糊残りなく、かつ、歩留まりよく剥離することが難しい極小のチップ部材において特に効果が高いことから、上記チップ部品がマイクロLEDであることが好ましい。
【0012】([0012])
本発明の電子部品の製造方法は、次いで、上記チップ部品が配置された上記支持テープの上記チップ部品が積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程(2)を行う。
ここで、上記工程(2)の様子を模式的に表した図を図3に示す。図3に示すように、上記工程(2)では硬化型粘着剤層上にチップ部品が配置された支持テープのチップ部品が積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する。エネルギー線を照射することにより支持テープ3の硬化型粘着剤層が硬化するため、支持テープ3の粘着力が低下し、チップ部品1への糊残りを抑えつつチップ部品1を剥離することが可能になる。その結果、糊残りのない正常なチップを転写できることから、不良品の数を減らすことができ、歩留まりを向上させることができる。
上記エネルギー線は上記硬化型粘着剤層を硬化させることができれば特に限定されず、例えば、超音波、光等が挙げられる。なかでも、硬化が容易に行えることから、上記エネルギー線は300~450nmの波長の紫外線であることが好ましい。なお、上記エネルギー線のエネルギー量は、上記硬化型粘着剤層を硬化できる程度であるため、後述する刺激のエネルギー量と比べて格段に小さいものである。
【0013】([0013])
上記エネルギー線が300~450nmの波長の光である場合、上記工程(2)では、波長365nmの光を5mW/cm2以上の照度で照射することが好ましく、10mW/cm2以上の照度で照射することがより好ましく、20mW/cm2以上の照度で照射することが更に好ましく、50mW以上の照度で照射することが特に好ましい。また、波長365nmの光を300mJ/cm2以上の積算照度で照射することが好ましく、500mJ/cm2以上、10000mJ/cm2以下の積算照度で照射することがより好ましく、500mJ/cm2以上、7500mJ/cm2以下の積算照度で照射することが更に好ましく、1000mJ/cm2以上、5000mJ/cm2以下の積算照度で照射することが特に好ましい。
【0014】([0014])
本発明の電子部品の製造方法は、次いで、上記支持テープの上記チップ部品が積層した面とは反対側の面より刺激を加え、チップ部品を支持テープから次部材へ転写する工程(3)を行う。
ここで、上記工程(3)の様子を模式的に表した図を図4に示す。図4に示すように、上記工程(3)では、チップ部品1が配置された支持テープ3の、チップ部品が積層した面とは反対側の面、つまり、支持テープの背面から、例えば光照射装置6から照射される光6aにより刺激を加える。上記刺激を支持テープ3に加えると、熱によって硬化型粘着剤の分子が切れて低分子化し、瞬間的に蒸発したり、高温となることで昇華したりするため、支持テープの光6aを照射した部分が焼き切れる。従って、上記刺激を支持テープ3のチップ部品1上の位置に加えることで、支持テープが焼き切れ、支持テープ3からチップ部品1が剥離して、次部材5上にチップ部品1が転写される。この際、上記工程(2)によって支持テープ3の硬化型粘着剤層は硬化しているため、チップ部品1への糊残りが起き難く、より軽い力でチップ部品を剥離できる。その結果、糊残りが起き難く、チップ部品を転写することができるため、歩留まりを向上させることができる。また、上記刺激によりチップ部品を剥離する方法は、ごく小さい範囲に対して剥離を起こさせることができるため、マイクロLEDのような極小のチップ部品が配列している場合であっても個別かつ歩留まりよく剥離することができる。更に、後述するが、上記支持テープ3の硬化型粘着剤層は特定波長の紫外線の吸収率が高く、上記刺激を効率よく熱や振動に変えることができるため、支持テープをよりムラなく確実に焼き切ることができ、更に糊残りを抑えられるとともに剥離不良を抑えることもできる。なお、図4では次部材5を基板として描写しているが、上記次部材5は、特に限定されず、例えば、ガラス基板、サファイヤ基板、シリコン基板、金属基板、有機基板や、駆動回路基板等が挙げられる。
【0015】([0015])
上記刺激は、上記チップ部品を剥離することができれば特に限定されず、例えば、光、熱、電磁波又は電子線等が挙げられる。なかでも、マイクロLED等の極小のチップ部材であっても個別かつ歩留まりよく剥離できることから、上記刺激はレーザーであることが好ましく、350~370nmの波長のレーザーであることがより好ましい。なお、上記刺激のエネルギー量は、支持テープを焼き切ることができる程度であるため、上記エネルギー線のエネルギー量よりも格段に大きいものである。
【0016】([0017])
上記刺激がレーザーである場合、上記レーザーの出力はパルス照射により、5nsec/パルスで50mJ/cm2以上1500mJ/cm2以下であることが好ましい。
レーザーの出力を上記範囲とすることで、目標のチップ部品上の支持テープのみを充分に焼き切ることができ、より糊残りなく確実にチップ部品を剥離することができる。上記レーザーの出力は100mJ/cm2以上であることがより好ましく、1000mJ/cm2以下であることがより好ましい。
【0017】([0018])
上記硬化型粘着剤層は重合性ポリマーと反応開始剤とを含有する。
粘着剤層が重合性ポリマーと反応開始剤を含有する、つまり、硬化型粘着剤を含有することで、上記工程(1)では充分な粘着力でチップ部品を固定することができ、上記工程(2)で硬化型粘着剤層を硬化させることにより、上記工程(3)で糊残りなくチップ部品を転写することができる。
【0018】([0019])
上記反応開始剤は特に限定されず、例えば、光反応開始剤、熱反応開始剤等が挙げられ、なかでも、エネルギー線照射により活性化し、硬化型粘着剤層を硬化することができるため、光反応開始剤が好ましく、後述の紫外線による光反応開始剤を好適に用いることができる。
【0019】([0020])
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)を予め合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)を反応させることにより得ることができる。
・・・<中略>・・・
【0028】([0029])
上記硬化型粘着剤層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
硬化型粘着剤層が紫外線吸収剤を含有することで、後述する紫外線吸収率を特定の範囲へ調節しやすくすることができる。その結果、上記工程(3)においてチップ部品をより糊残りなく剥離することができ、歩留まりをより向上させることができる。
【0029】([0030])
上記硬化型粘着剤層は、上記紫外線吸収剤として、紫外線による光反応開始剤と紫外線による光反応開始剤以外の紫外線吸収剤とを含有することが好ましい。上記紫外線吸収剤として紫外線による光反応開始剤を用いることで、硬化型粘着剤層の硬化の際に未反応のまま残った反応開始剤を剥離の際に紫外線吸収剤としても用いることができる。更に、光反応開始剤以外の紫外線吸収剤も併用することで、硬化型粘着剤層の硬化の際に光反応開始剤が大量に消費されてしまった場合であっても、紫外線吸収性の低下を抑えることができ、後述するエネルギー線照射後の紫外線吸収率を特定の範囲へ調節しやすくすることができる。
【0030】([0031])
上記紫外線による光反応開始剤は、例えば、350~370nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物や、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物や、フォスフィンオキシド誘導体化合物が挙げられる。また、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等も挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
・・・<中略>・・・
【0032】([0033])
上記紫外線による光反応開始剤の含有量は、上記紫外線吸収剤の合計100重量%に対して50重量%以下であることが好ましい。
紫外線による光反応開始剤の含有量を上記範囲とすることで硬化型粘着剤層が硬化する際に上記紫外線による光反応開始剤が大量に消費されてしまった場合であっても、充分に紫外線吸収性を維持することが可能となる。上記紫外線吸収剤の合計100重量%に対する上記紫外線による光反応開始剤の含有量は、40重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが更に好ましい。上記紫外線吸収剤の合計に対する上記紫外線による光反応開始剤の含有量の下限は特に限定されないが例えば、15重量%であることが好ましい。
【0033】([0034])
上記紫外線による光反応開始剤以外の紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール系やヒドロキシルフェニルトリアジン系の他にメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸オクチル、パラメトキシ桂皮酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン等が挙げられる。なかでも、粘着剤への配合適用性に優れることから、ベンゾトリアゾール系やヒドロキシルフェニルトリアジン系が好ましい。上記紫外線による光反応開始剤以外の紫外線吸収剤は単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】([0035])
上記紫外線吸収剤は、合計含有量が上記重合性ポリマー100重量部に対して6重量部以上であることが好ましい。
上記紫外線吸収剤の総含有量を上記範囲とすることで、上記工程(3)の際により効率的に刺激を熱や振動に変えることができるため、チップ部品をより確実に剥離することができる。上記紫外線吸収剤の合計含有量は、10重量部以上であることがより好ましく、15重量部以上であることが更に好ましい。上記紫外線吸収剤の合計含有量の上限は特に限定されないが、上記工程(1)の際の粘着力を確保する観点から30重量部以下であることが好ましい。
・・・<中略>・・・
【0044】([0045])
上記硬化型粘着剤層は、上記エネルギー線照射後における剥離力が0.5N/25mm以下であることが好ましい。硬化型粘着剤層のエネルギー線照射後における剥離力が上記範囲であることで、糊残りを抑えて容易にチップ部品を剥離することができるため、歩留まりを向上させることができる。上記硬化型粘着剤層のエネルギー線照射後における剥離力は、0.3N/25mm以下であることがより好ましく、0.2N/25mm以下であることが更に好ましい。なお、上記剥離力は、JIS Z0237に準拠して、23℃、50%湿度の条件下、引張速度300mm/分の条件で180°方向の剥離試験を行うことで測定することができる。
【0045】([0046])
上記硬化型粘着剤層の厚みは特に限定されないが、200μm以下であることが好ましい。上記厚みが200μm以下であれば、上記硬化型粘着剤層の残渣をより抑えつつ、上記チップ部品を剥離することができる。上記厚みのより好ましい上限は50μm、更に好ましい上限は20μmである。上記厚みの下限は特に限定されないが、上記チップ部品を保持しつつ、剥離を良好にする観点から、好ましい下限は2μm、より好ましい下限は5μmである。
【0046】([0047])
上記支持テープは、片面粘着テープであっても両面粘着テープであってもよい。なかでも、支持体を用いる場合に、簡便に支持体へ貼り合わせることができることから、上記支持テープは両面粘着テープであることが好ましい。上記支持テープが両面粘着テープである場合、上記支持テープは少なくとも片面が上記硬化型粘着剤層であればよく、もう片面は硬化型粘着剤層であっても非硬化型の粘着剤層であってもよい。また、両面粘着テープの粘着剤層は、両面とも同じ成分の粘着剤を用いてもよく、異なる成分の粘着剤を用いてもよい。
・・・<中略>・・・
【0048】([0049])
また、上記支持テープは、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよいが、取り扱い、及び、裁断が容易になることから基材を有することが好ましい。上記基材は特に限定されないが、上記工程(2)において上記硬化型粘着剤層をより確実に硬化させる観点から、300~450nmのエネルギー線透過率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
・・・<中略>・・・
【0051】([0052])
本発明の電子部品の製造方法の用途は特に限定されず、どのようなチップ部品を用いた電子部品であっても歩留まりよく製造できるが、本発明はチップ部品への糊残りが起き難く、より軽い力でチップ部品を剥離できることから、糊残りなく、かつ、歩留まりよく転写することが難しい極小のチップ部品において特に効果が高い。そのため、本発明はチップ部品としてマイクロLEDを用いた表示装置の製造に好適である。
このような、少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープの前記硬化型粘着剤層上にマイクロLEDチップを配置する工程(1)と、前記マイクロLEDチップが配置された前記支持テープの前記マイクロLEDチップが積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程(2)と、前記支持テープの前記マイクロLEDチップが積層した面とは反対側の面より刺激を加え、マイクロLEDチップを支持テープから次部材へ転写する工程(3)とを有し、前記硬化型粘着剤層は、重合性ポリマーと反応開始剤とを含有し、前記硬化型粘着剤層は、前記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が99%以上であり、前記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である、表示装置の製造方法もまた、本発明の1つである。
なお硬化型粘着剤層、支持テープ及び各工程の詳細については、上記電子部品の製造方法と同様のもの及び方法を用いることができる。
・・・<中略>・・・
【発明を実施するための形態】
【0054】([0058])
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0055】([0059])
(重合性ポリマーの合成)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意した。この反応器内に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2-エチルヘキシルアクリレート51重量部、イソボルニルアクリレート37重量部、官能基含有モノマーとしてアクリル酸1重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル19重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部と、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量60万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2-イソシアナトエチルメタクリレート12重量部を加えて反応させて(メタ)アクリル系ポリマー(重合性ポリマー)を得た。
【0056】([0060])
(実施例1)
(1)支持テープの製造1
得られた重合性ポリマーの酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、架橋剤(エスダイン硬化剤UA、積水フーラー社製)1.25重量部、光反応開始剤(Omnirad651、豊通ケミプラス社製)1重量部、及び、紫外線吸収剤(Tinuvin 928、富士フィルム和光純薬社製)5重量部を混合した。これにより、硬化型粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。
次いで、得られた硬化型粘着剤溶液を、コロナ処理がなされた厚み50μmのPETフィルム(基材)上に乾燥皮膜の厚さが20μmとなるようにドクターナイフで塗工し、常温で10分間静置した。その後、予め110℃に加温しておいたオーブンを用いて110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させ、硬化型粘着剤層と基材とを有する支持テープを得た。
【0057】([0061])
(2)剥離力の測定
厚さ1mmのSUS板の表面をエタノールで洗浄し、充分に乾燥させた。予め幅25mm、長さ10cmにカットした支持テープの硬化型粘着剤層側とSUS板とを重ね、2kgローラーを1往復させることで測定用サンプルを得た。
得られた測定サンプルについて、オートグラフ(島津製作所社製)を用い、JISZ0237に準じて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で300mm/minの引張速度で180°方向に支持テープを引き剥がす剥離試験を行い、初期剥離力を測定した。
次いで、同様の方法で作製した別の測定用サンプルの支持テープ側に、超高圧水銀紫外線照射器を用いて365nmの紫外線を積算照射量が3000mJ/cm2となるように照射した。照射強度が100mW/cm2となるよう照度を調節した。その後初期剥離力と同様の方法で剥離試験を行い、エネルギー線照射後の剥離力を測定した。結果を表1に示した。
・・・<中略>・・・
【0060】([0064])
(実施例2~6、比較例1、2)
光反応開始剤及び紫外線吸収剤の配合量を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして支持テープを得て、各測定を行った。結果を表1に示した。
【0061】([0065])
(実施例7)
(支持テープの製造2)
得られた重合性ポリマーの酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、架橋剤(エスダイン硬化剤UA、積水フーラー社製)1.25重量部、光反応開始剤(OmniradTPO、豊通ケミプラス社製)1重量部、及び、紫外線吸収剤(Tinuvin 479、富士フィルム和光純薬社製)5重量部を混合した。これにより、硬化型粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。
次いで、得られた硬化型粘着剤溶液を、コロナ処理がなされた厚み50μmのPETフィルム(基材)上に乾燥皮膜の厚さが20μmとなるようにドクターナイフで塗工し、常温で10分間静置した。その後、予め110℃に加温しておいたオーブンを用いて110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させ、硬化型粘着剤層と基材とを有する支持テープを得た。得られた支持テープについて実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示した。
【0062】([0066])
<評価>
実施例及び比較例について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0063】([0067])
(チップ部品の処理)
Siチップ(500μm×500μm角、厚み50μm)が10個配列されたウエハのSiチップ側の面と支持テープの硬化型粘着剤層側とを貼り合わせ、その後ウエハを剥離することで、Siチップを指示テープ上へ転写した。次いで、高圧水銀紫外線照射装置(GWSM-300R、タカトリ社製)を用いて365nmの紫外線を支持テープの基材側から積算照射量が3000mJ/cm2となるように照射することで、硬化型粘着剤層を硬化させた。その後、半導体固体レーザーを用いて、出力4W、4KHzの365nmのレーザーを支持テープの基材側から各Siチップに照射して、Siチップを支持テープから剥離した。
【0064】([0068])
(1)剥離性能の評価
上記チップ部品の処理において、Siチップがいくつ剥離できたかを測定した。
10個のSiチップをすべて剥離できた場合を「〇」、8~9個剥離できた場合を「△」、剥離できたSiチップが7個以下の場合を「×」としてチップ剥離性能を評価した。
【0065】([0069])
(2)糊残りの評価
上記チップ部品の処理後のSiチップ表面を顕微鏡にて観察し、糊残りの有無を確認した。糊残りが全くなかった場合を「○」、わずかに糊残りがあった場合(チップの表面の20%未満)を「△」、大量に糊残りがあった場合(チップの表面の20%以上)を「×」として糊残りを評価した。
【0066】([0070][表1])
【表1】
[図:0001409109000001.jpg]
【産業上の利用可能性】
【0067】([0071])
本発明によれば、チップ部品への糊残りを抑えてチップ部品を歩留まりよく転写することができる電子部品の製造方法及び該電子部品の製造方法を用いた表示装置の製造方法を提供することができる。
・・・(中略)・・・
【請求項1】([請求項1])
少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープの前記硬化型粘着剤層上にチップ部品を配置する工程(1)と、
前記チップ部品が配置された前記支持テープの前記チップ部品が積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程(2)と、
前記支持テープの前記チップ部品が積層した面とは反対側の面より刺激を加え、チップ部品を支持テープから次部材へ転写する工程(3)とを有し、
前記硬化型粘着剤層は重合性ポリマーと反応開始剤とを含有し
前記硬化型粘着剤層は、前記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上であり、
前記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である、
電子部品の製造方法。
【請求項2】([請求項2])
前記エネルギー線が300~450nmの波長の紫外線である、請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】([請求項3])
前記刺激が350~370nmの波長のレーザーである、請求項1又は2記載の電子部品の製造方法。
・・・(中略)・・・
【請求項12】([請求項12])
前記支持テープは、基材を有し、前記基材の300~450nmのエネルギー線透過率が90%以上である、請求項1~11のいずれかに記載の電子部品の製造方法。」
イ
「【図1】
[図:0001409109000002.jpg]
【図2】
[図:0001409109000003.jpg]
【図3】
[図:0001409109000004.jpg]
【図4】
[図:0001409109000005.jpg]
」
(2) 先願発明1
上記(1)によると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明1」という。)が記載されているといえる。
「チップ部品1の背面を、支持テープ3の硬化型粘着剤層3a上へ貼り合わせ(段落0010)、
レーザーであることが好ましい刺激(段落0015)を支持テープ3に加えると、熱によって硬化型粘着剤の分子が切れて低分子化し、瞬間的に蒸発したり、高温となることで昇華したりするため、支持テープの光6aを照射した部分が焼き切れ、従って、上記刺激を支持テープ3のチップ部品1上の位置に加えることで、支持テープが焼き切れ、支持テープ3からチップ部品1が剥離して、次部材5上にチップ部品1が転写される(段落0014)支持テープ3であって、
得られた重合性ポリマーの酢酸エチル溶液の樹脂固形分、架橋剤(エスダイン硬化剤UA、積水フーラー社製)、光反応開始剤(Omnirad651、豊通ケミプラス社製)、及び、紫外線吸収剤(Tinuvin 928、富士フイルム和光純薬社製)又は紫外線吸収剤(Tinuvin 479、富士フイルム和光純薬社製)を混合することにより、硬化型粘着剤の酢酸エチル溶液を得、
次いで、得られた硬化型粘着剤溶液を、コロナ処理がなされた厚み50μmのPETフィルム(基材)上に乾燥皮膜の厚さが20μmとなるようにドクターナイフで塗工し、常温で10分間静置し、その後、予め110℃に加温しておいたオーブンを用いて110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させて得た、硬化型粘着剤層と基材とを有する支持テープ(段落0056、0060~0061)。」
(3) 先願発明2
ア 上記(1)イの図4によると、次部材5に対して、チップ部品1が積層した面が向かい合うように支持テープ3が配置されることが見てとれる。
イ 上記アを踏まえると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明2」という。)が記載されているといえる。
「少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープの上記硬化型粘着剤層上にチップ部品を配置する工程(1)(段落0009)と、
上記チップ部品が配置された上記支持テープの上記チップ部品が積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程(2)であって、
エネルギー線を照射することにより支持テープ3の硬化型粘着剤層が硬化するため、支持テープ3の粘着力が低下し、チップ部品1への糊残りを抑えつつチップ部品1を剥離することが可能になる工程(2)(段落0012)と、
次部材5に対して、チップ部品1が積層した面が向かい合うように支持テープ3が配置され(上記ア)、
上記支持テープの上記チップ部品が積層した面とは反対側の面より刺激を加え、チップ部品を支持テープから次部材へ転写する工程(3)(段落0014)であって
光照射装置6から照射される光6aによる上記刺激を支持テープ3に加えると、熱によって硬化型粘着剤の分子が切れて低分子化し、瞬間的に蒸発したり、高温となることで昇華したりするため、支持テープの光6aを照射した部分が焼き切れ、従って、上記刺激を支持テープ3のチップ部品1上の位置に加えることで、支持テープが焼き切れ、支持テープ3からチップ部品1が剥離して、次部材5上にチップ部品1が転写される工程(3)(段落0014)であり、
上記刺激はレーザーであることが好ましい(段落0015)工程(3)と、
を行う電子部品の製造方法であって、
支持テープは、
重合性ポリマーの酢酸エチル溶液の樹脂固形分、架橋剤(エスダイン硬化剤UA、積水フーラー社製)、光反応開始剤(Omnirad651、豊通ケミプラス社製)、及び、紫外線吸収剤(Tinuvin 928、富士フイルム和光純薬社製)を混合することにより、硬化型粘着剤の酢酸エチル溶液を得、
次いで、得られた硬化型粘着剤溶液を、コロナ処理がなされた厚み50μmのPETフィルム(基材)上に乾燥皮膜の厚さが20μmとなるようにドクターナイフで塗工し、常温で10分間静置し、その後、予め110℃に加温しておいたオーブンを用いて110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させて得た、硬化型粘着剤層と基材とを有する支持テープ(段落0056)である、
電子部品の製造方法。」
2 甲2、及び、甲2発明
(1) 甲2には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すため当審が付加した。)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個又は複数種の素子を共通の基体に作り込む工程と、
少なくとも前記素子の存在領域において前記基体の一方の面上に接着剤層を形成する工程と、
前記基体の所定箇所を切断して、前記素子を少なくとも1つ含みかつ一方の面に前記接着剤層を有するチップ部品を形成する工程と、
前記チップ部品を前記接着剤層の側で実装する工程とを有する、実装方法。
・・・(中略)・・・
【請求項3】
支持基板上で前記ダイシングを行い、得られた前記接着剤層付きの前記チップ部品を前記接着剤層を介して実装基板に接着し、この状態で所定の位置にレーザー光を照射して前記実装基板上に前記チップ部品の選択転写を行う、請求項2に記載した実装方法。
【請求項4】
前記レーザー光照射により、前記支持基板と前記チップ部品との界面でアブレーションを生じさせ、前記支持基板から前記チップ部品を分離する、請求項3に記載した実装方法。
【請求項5】前記レーザー光照射と同時に、前記実装基板の側から加熱を行う、請求項3に記載した実装方法。
・・・(中略)・・・
【0008】
次に、図5(d)に示すように、UV硬化粘着剤層4’を有する基板25を実装部品24上に接着し、シート基材5の側からレーザー光10を照射する。レーザー光10照射によってシート基材5側のUV硬化粘着剤層4と、シート基材5との界面がアブレーション現象により分子分解され、これにより粘着力が低下し、図5(e)に示すように、UV硬化粘着剤層4付きのシート基材5と、UV硬化粘着剤層4’を介して実装部品24が実装された基板25とに分離する。
・・・(中略)・・・
【0025】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板1の一方の面上、即ち電極2が存在する面とは反対側の面上に接着剤層3を全面塗布する。なお、半導体基板1については、複数個又は複数種の前記素子を共通の前記基体に作り込むことによって製造することができ、例えば上記に図4を参照して説明した製造方法によって得られた半導体ウェーハ等を用いることができる。
【0026】
また、接着剤層3は、熱可塑性接着剤によって形成されることが望ましい。これにより、例えばUV硬化型接着剤は紫外線レーザー光が照射され、一度硬化すると元には戻らず、再利用することはできないが、前記熱可塑性接着剤を用いれば、再加熱により再び接着力を発現するので、繰り返し使用することができる。
・・・(中略)・・・
【0028】
次に、図1(b)に示すように、接着剤層3を有する半導体基板1の電極2を有する面側に、UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5を接着する。そして、接着剤層3を有する側からブレード6を用いてスクライブライン7に沿ってブレードダイシングを行うことにより、図1(c)に示すように、接着剤層3付きのチップ部品8を得ることができる。
【0029】
上記のようにして半導体基板1を個片化した後、図1(d)に示すように、接着剤層3を介してチップ部品8を実装基板9に接着する。ここで、実装基板9はマザーボードであってもよく、或いは再配置配線用の中間基板、即ちインターポーザーであってもよい。この場合、インターポーザー上にチップ部品8を予め実装した後、このインターポーザーの電極とマザーボードの電極とを電気的に接続することも可能である。これによれば、より一層の微細な配線が可能となる。
【0030】
次に、図1(e)に示すように、シート基材5の側から所定の位置にレーザー光10を照射し、図2(f)に示すように、実装基板9上にチップ部品8の選択転写を行う。レーザー光10を、実装基板9に転写したいチップ部品8が存在する部分のみに照射することにより、レーザー光10が照射された部分のUV硬化粘着剤層4のみが硬化し、粘着力が低下するので、前記選択転写を行うことができる。なお、シート基材5上に接着している全てのチップ部品8を実装基板9上に実装したい場合は、シート基材5側の全面にレーザー光10を照射すればよい。
・・・(中略)・・・
【0036】
本発明に基づく実装方法によれば、半導体基板1の電極2が存在しない面上に接着剤層3を形成し、半導体基板1をブレードダイシングして個片化し、電極2を有しかつ一方の面に接着剤層3を有するチップ部品8を形成し、チップ部品8を接着剤層3の側で実装基板9に接着するので、ブレードダイシングの前に接着剤層3を形成することによって、ディスペンサ等では困難であった微小なチップ部品8も容易に実装することができる。
・・・(中略)・・・
【0041】
また、UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5を用いる例を示したが、これに代えて、ダイシングシートなどの支持基板を用いてよく、前記ダイシングシートとしては、紫外線吸収特性が悪い材質のものが好適に用いられる。例えば、ポリオレフィン系の材料からなる基材等が挙げられる。また、前記ダイシングシートに用いられる粘着剤に紫外線吸収特性のよい材料を用いてもよい。この場合、シートと粘着剤層の界面でアブレーションを起こすことが可能となる。
【0042】
また、レーザー光10を照射することにより、UV硬化粘着剤層4を硬化させ、粘着力を低下させてUV硬化粘着剤層4とチップ部品8とを分離する例を示したが、チップ部品8がLIP(LED In Plastic)の場合、又はチップ部品8がSi基板からなりかつ電極2面上が、レーザー光10の波長を選んで、そのレーザー光10を効率良く吸収できる材料で覆われてなる場合は、前記ダイシングシートなどの支持基板を用い、レーザー光10を照射することによって前記支持基板とチップ部品8との界面でアブレーションを生じさせ、前記支持基板からチップ部品8を分離することも可能である。
【0043】
即ち、プラスチック部品は、紫外線領域の前記レーザー光を照射されるとアブレーションと呼ばれる分子分解反応を生じ、表面は0.2~0.6μ程度削られる。従って、実装したい前記チップ部品が存在する部分に前記レーザー光が照射されると、表面は適度に荒らされ均一な表面状態を得ることができ、かつ前記支持基板から前記チップ部品を分離することができる。一方、上述したように、実装したい前記チップ部品とは別に、実装を望まない前記チップ部品が存在する部分には前記レーザー光を照射しないことが望ましい。なお、前記レーザー光が照射され、アブレーションが生じた前記チップ部品は、表面の粗さが均一になっているため、条件だしを行いやすい状態である。」
イ「【図1】
[図:0001409109000006.jpg]
」
(2) 甲2発明1、甲2発明2
ア 甲2の段落0028には、「UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5」が記載されている。
イ 甲2の段落0028~0030には、「UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5」を使用する実装方法について、「接着剤層3を有する半導体基板1の電極2を有する面側に、UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5を接着し(図1(b))、
接着剤層3を有する側からブレード6を用いてスクライブライン7に沿ってブレードダイシングを行うことにより、接着剤層3付きのチップ部品8を得(図1(c))」(段落0028)、
「接着剤層3を介してチップ部品8を実装基板9に接着し(図1(d))」(段落0029)、
「シート基材5の側から所定の位置にレーザー光10を照射し(図1(e))、
実装基板9上にチップ部品8の選択転写を行い(図2(f))、
レーザー光10を、実装基板9に転写したいチップ部品8が存在する部分のみに照射することにより、レーザー光10が照射された部分のUV硬化粘着剤層4のみが硬化し、粘着力が低下するので、前記選択転写を行う」(段落0030)との工程が記載されているといえる。
ウ 甲2発明1
以上を踏まえると、甲2には次の発明(以下「甲2発明1」という。)が記載されているといえる。
「UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5であって、
前記UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5は、
接着剤層3を有する半導体基板1の電極2を有する面側に、UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5を接着し(図1(b))、
接着剤層3を有する側からブレード6を用いてスクライブライン7に沿ってブレードダイシングを行うことにより、接着剤層3付きのチップ部品8を得(図1(c))、
接着剤層3を介してチップ部品8を実装基板9に接着し(図1(d))、
シート基材5の側から所定の位置にレーザー光10を照射し(図1(e))、
実装基板9上にチップ部品8の選択転写を行い(図2(f))、
レーザー光10を、実装基板9に転写したいチップ部品8が存在する部分のみに照射することにより、レーザー光10が照射された部分のUV硬化粘着剤層4のみが硬化し、粘着力が低下するので、前記選択転写を行う実装方法で使用されるものである
UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5。」
エ 甲2発明2
同様に甲2には次の発明(以下「甲2発明2」という。)が記載されているといえる。
「接着剤層3を有する半導体基板1の電極2を有する面側に、UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5を接着し(図1(b))、
接着剤層3を有する側からブレード6を用いてスクライブライン7に沿ってブレードダイシングを行うことにより、接着剤層3付きのチップ部品8を得(図1(c))、
接着剤層3を介してチップ部品8を実装基板9に接着し(図1(d))、
シート基材5の側から所定の位置にレーザー光10を照射し(図1(e))、
実装基板9上にチップ部品8の選択転写を行い(図2(f))、
レーザー光10を、実装基板9に転写したいチップ部品8が存在する部分のみに照射することにより、レーザー光10が照射された部分のUV硬化粘着剤層4のみが硬化し、粘着力が低下するので、前記選択転写を行う実装方法。」
3 甲3
甲3には次の記載がある。
「[0010] 本発明は、半導体ウェハの加工工程に用いた際に、表面保護テープへの紫外線照射に伴う薄膜ウェハの反りを抑制することができ、しかも、ダイシング時におけるチップ飛びの抑制とその後の優れたピックアップ性とを両立可能な半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープを提供することを課題とする。また、本発明は、表面保護テープへの紫外線照射に伴う薄膜ウェハの反りを抑制することができ、しかも、ダイシング時におけるチップ飛びの抑制とその後の優れたピックアップ性とを両立可能な半導体チップの製造方法を提供する。また、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの粘着力の低下を抑制しながら、紫外線硬化型表面保護テープを硬化させ、粘着力を十分に低下させることができる、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法を提供することを課題とする。
・・・(中略)・・・
[0024] 上記粘着剤に含まれるポリマー(本明細書中において、「ベースポリマー」とも称す。)としては、(メタ)アクリルポリマーが好ましい。
粘着剤層4中に含まれるベースポリマーの含有量は、50~95質量%が好ましく、70~95質量%がより好ましい。
・・・(中略)・・・
[0050] (光重合開始剤)
側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーを紫外線照射によって硬化させる場合には、粘着剤中に光重合開始剤を配合することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、特に制限はなく、通常用いられる光重合開始剤を広く用いることができる。例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を使用することができる。
本発明の粘着テープ2に、所定の波長域に対する反応性差を持たせるため、粘着剤層4中において、光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー成分100質量部に対して、0.1~3.0質量部が好ましく、0.1~1.5質量部がより好ましく、0.1~1.0質量部がさらに好ましい。光重合開始剤の含有量が上記上限値以下であると、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射による硬化反応性と高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射による硬化反応性との間に、所望の差を持たせることができる。光重合開始剤の含有量が上記下限値以上であると、高圧水銀ランプを光源とする紫外線の照射時に硬化反応が十分に進行して硬化され、本発明の粘着テープ2と被着体との剥離性をより向上させることができる。
[0051] (紫外線吸収剤)
本発明の粘着テープ2に、所定の波長域の吸収性を高め、所定の光源を用いた際の硬化反応性を制御する点から、粘着剤に紫外線吸収剤を添加してもよい。
[0052] 上記紫外線吸収剤として、トリアジン骨格、ベンゾフェノン骨格、ベンゾトリアゾール骨格またはベンゾエート骨格を有する紫外線吸収剤のうち少なくとも1種を含有することが好ましい。
上記トリアジン骨格を有する化合物として、例えば、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
・・・(中略)・・・
[0057] 紫外線吸収剤は1種類でも2種以上併用してもよい。
紫外線吸収剤の添加量は、所望の波長域に対する硬化反応性に応じて調整することができる。例えば、ベースポリマー100質量部に対して0.1~10.0質量部が好ましく、0.1~5.0質量部がより好ましく、0.1~1.0質量部がさらに好ましい。
・・・(中略)・・・
[0079] (2)粘着剤の調製
粘着剤は、ベースポリマーとして、側鎖に紫外線硬化性炭素-炭素二重結合を有する紫外線硬化型アクリルポリマーを有する、以下の粘着剤を使用した。
((メタ)アクリル共重合体Aの合成)
2-エチルヘキシルアクリレート70mol%、2-ヒドロキシエチルアクリレート20mol%およびメチルメタクリレート10mol%を記載のモル比で配合し、酢酸エチル溶液中で共重合させることにより(メタ)アクリル共重合体のポリマー溶液を得た。このポリマー溶液中へ、(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して10質量部の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI(商品名))を加えて反応させ、(メタ)アクリル共重合体の側鎖のヒドロキシル基に前記イソシアネートに由来する二重結合含有基を付加させることで、側鎖に二重結合含有基を有する(メタ)アクリル共重合体Aの組成物を得た。
側鎖に二重結合含有基を有するアクリル共重合体Aは、質量平均分子量60万、ガラス転移温度(Tg)-64℃、紫外線硬化性炭素-炭素二重結合量0.9meq/gであった。
(粘着剤の調製)
上記(メタ)アクリル共重合体Aの組成物中へ、100質量部の(メタ)アクリル共重合体Aに対する配合量で、硬化剤としてコロネートL〔日本ポリウレタン工業(株)社製、商品名、イソシアネート系硬化剤〕を2.0質量部と、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASF社製、商品名)を0.1質量部とを配合し、粘着剤Aを得た。
[0080] (3)粘着テープの作製
上記粘着剤Aを剥離ライナー上に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗工し、粘着剤層4を形成した。形成した粘着剤層4を、上記で作製した厚さ80μmの基材フィルム3におけるコロナ処理を施した面側に貼り合せ、総厚90μmの半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ(粘着テープ)2を作製した。
[0081]<実施例2>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)の配合量を0.1質量部から0.75質量部に変更して粘着剤Bを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Bを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ2を作製した。
[0082]<実施例3>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)の配合量を0.1質量部から1.0質量部に変更して粘着剤Cを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Cを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ2を作製した。
[0083]<実施例4>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)の配合量を0.1質量部から0.5質量部に変更し、紫外線吸収剤としてLA-F70(株式会社ADEKA製、商品名)を0.3質量部配合し粘着剤Dを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Dを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ2を作製した。
[0084]<実施例5>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)を光重合開始剤のイルガキュア651(BASF社製、商品名)に変更し、かつ配合量を0.1質量部から0.3質量部へ変更し、紫外線吸収剤としてLA-F70(株式会社ADEKA製)を0.3質量部配合し粘着剤Eを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Eを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ2を作製した。
・・・(中略)・・・
[0089][試験例1]粘着力の測定
本発明における粘着力は、JIS Z 0237に基づく、ステンレス試験板に対する90°引きはがし粘着力試験方法により測定される値である。具体的な測定方法は以下の通りである。なお、以下に記載しない条件については、JIS Z 0237に基づく。
まず、粘着テープから幅25mm×長さ150mmの試験片を3つ採取した。これらの試験片を、JIS R 6253に規定する280番の耐水研磨紙で仕上げた、JIS G 4305に規定する厚さ1.5mm~2.0mmのSUS304鋼板(ステンレス鋼試験版)上に貼着した。その後、2kgのゴムローラを3往復かけて圧着し、1時間放置した。その後、測定値がその容量の15~85%の範囲に入るJIS B 7721に適合する引張試験機を用いて粘着力を測定した。測定は、90°引きはがし法により、引張速さ50mm/min、測定温度23℃、相対湿度49%の条件で行った。本発明における粘着力は、上記方法により測定した3つの試験片の粘着力の算術平均である。
・・・(中略)・・・
[0096][表1]
[図:0001409109000007.jpg]
・・・(中略)・・・
請求の範囲
[請求項1] 基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた紫外線硬化型の粘着剤層とを少なくとも有する半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープであって、
JIS Z 0237に基づくSUS304に対する90°引きはがし試験方法により測定される前記粘着テープの粘着力の値が、下記(1)及び(2)を共に満たすことを特徴とする、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
(1)[波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cm2の紫外線照射後の粘着力]/[紫外線照射前の粘着力]≧0.50
(2)[高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cm2の紫外線照射後の粘着力]/[紫外線照射前の粘着力]≦0.50
・・・(中略)・・・
[請求項3] 前記粘着剤層がベースポリマー成分と光重合開始剤とを含有し、該ベースポリマー成分100質量部に対する光重合開始剤の含有量が0.1~3.0質量部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
[請求項4] 前記ベースポリマーが側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するポリマーであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
[請求項5] 前記粘着剤層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。」
4 甲4
甲4には次の記載がある。
「【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、方法は、複数の個別部品を第1の基板から第2の基板に移送する方法であって、前記第1の基板に前記複数の個別部品を付着する動的剥離層の上面の複数の領域を同時に照射し、前記照射された領域の各々が前記個別部品の対応する1つと位置合わせされる段階を含む。前記照射により、前記照射された領域の各々における前記動的剥離層の少なくとも一部のアブレーションが誘発される。前記アブレーションにより、前記個別部品の少なくとも一部が前記第1の基板から同時に取り外される。
【0004】
実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。
【0005】
前記複数の領域を照射する段階が、前記複数の領域にレーザエネルギーを照射する段階を含む。この方法は、前記レーザエネルギーを複数のビームレットに分離する段階と、前記複数の領域の各々に前記レーザエネルギーのビームレットの1つを照射する段階とを含む。この方法は、回折光学素子を用いて前記レーザエネルギーを分離する段階を含む。前記照射により、前記照射された領域の各々における前記動的剥離層の部分厚さのアブレーションが誘発される。前記動的剥離層の前記部分厚さのアブレーションにより、前記照射された領域の各々における前記動的剥離層の残りの厚さの変形が誘発される。前記変形は、前記動的剥離層の前記照射された領域の各々にブリスターを含み、前記ブリスターはそれぞれ、前記対応する個別部品に力を加える。前記ブリスターによって加えられる力によって、前記個別部品が前記第1の基板から取り外される。前記部分厚さのアブレーションによって、前記照射された領域の各々において塑性変形が誘発される。前記部分厚さのアブレーションによって、前記照射された領域の各々において弾性変形が誘発される。前記照射により、前記照射された領域の各々における前記動的剥離層の厚さ全体のアブレーションが誘発される。この方法は、前記複数の領域を照射する前に、前記動的剥離層の接着力を低下させる段階を含む。前記動的剥離層の付着力を低下させる段階は、前記動的剥離層を刺激に晒すことを含む。
・・・<中略>・・・
前記個別部品は、発光ダイオード(LED)を含み、前記特性は、光学特性及び電気特性の1つ又は複数を含む。」
5 甲5
甲5の段落093には次の記載がある。(記載は、甲5に対応する特表2022-521498号公報の段落0087の記載に基づいて当審が作成した訳文で示す。)
「図1Bも参照するとわかるように、レーザ援用転写プロセスでは、支持板106の裏面に、光、たとえばレーザ光線などの放射線116が照射される。支持板106と動的剥離テープ110の可撓性支持層112はどちらも、放射線116の波長(たとえば、レーザエネルギー)を透過させる。所与の波長を透過させる要素は、少なくとも所与の波長のある放射線が通過する要素である。放射線116は、支持板106および動的剥離テープ110の可撓性支持層112を通過して、動的剥離構造114の一領域に入射し、動的剥離構造114の部分厚さを放射線116が入射する領域(照射領域と呼ぶ)において焼灼させる。焼灼によって、閉じ込めガスが発生し、閉じ込めガスが膨張して、動的剥離構造114において応力が生じる。この応力は、動的剥離構造114の材料の少なくとも一部を変形させ、ブリスター118を形成する。ブリスター118は、個別構成要素102に機械的な力を加える。ブリスター118によって加えられる機械的な力が個別構成要素102と動的剥離構造114との間の接着に打ち勝つのに十分であるとき、ブリスター118によって加えられる機械的な力は、(重力と相まって)個別構成要素を支持板106から(たとえば、下向きに)引き離して目標基板130に転写する。」
6 甲6
甲6には次の記載がある。
「
[図:0001409109000008.jpg]
」
7 甲7
(1) Tinuvin(R) PS
甲7の2ページにはベンゾトリアゾール(BTZ)系紫外線吸収剤である「Tinuvin(R) PS」について次の化学構造式が記載されている。
「
[図:0001409109000009.jpg]
」
(2) Tinuvin(R) 400
甲7の10ページには、ヒドロキシフェニルホリアジン(HPT)系紫外線吸収剤である「Tinuvin(R) 400」について次の化学構造式が記載されている。
「
[図:0001409109000010.jpg]
(3) Tinuvin(R) 928
甲7の7ページには、先願明細書等の段落0056に記載された、実施例1~6、比較例1、2の紫外線吸収剤として用いられる「Tinuvin(R) 928」について、次の化学構造式が記載されている。
「
[図:0001409109000011.jpg]
」
8 文献1
上記文献1には、先願明細書等の段落0061に記載された、実施例7の紫外線吸収剤として用いられる「Tinuvin(R) 479」について、次の化学構造式が記載されている。
「
[図:0001409109000012.jpg]
」
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、令和5年6月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由(拡大先願) 請求項1~18、20~22に係る発明は、特許法第41条第1項の規定による優先権の主張の基礎とされ、同法第41条第3項の規定により出願公開されたものとみなされる、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた、下記の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1~18、20~22に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
特願2020-189556号(甲1:国際公開第2022/102691号)
2 当審の判断
(1) 本件発明17~22について
事案に鑑み本件発明17~22について先に判断する。
ア 本件発明19について
先願明細書等には、訂正前の請求項19に記載された「前記分離工程における前記レーザー光の照射を、前記硬化工程における前記活性エネルギー線の照射を兼ねるものとして行い、前記界面アブレーション層の局所的な硬化と前記界面アブレーションとを同時に行う」(以下「硬化・分離工程」という。)に相当する事項は記載されておらず、取消理由通知では、訂正前の請求項19に係る発明に対して取消理由を通知していない。
そして、本件発明19は、訂正事項5により、訂正前の請求項19に係る発明を単に独立請求項としたものである。
そうすると、本件発明19と先願発明2とを対比した場合、両者は、少なくとも、本件発明19が硬化・分離工程を備えるのに対し、先願発明2が硬化・分離工程を備えない点で相違する(以下、この点を「相違点1」という。)。
そして、相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえないから、本件発明19と先願発明2とは同一とはいえない。
イ 本件発明17、18について
訂正事項4により、本件発明17は、デバイス製造方法における、ワークハンドリングシートの、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して硬化させた後における界面アブレーション層の粘着力について、照射する光量が「190mJ/cm2」であると訂正された。
一方、先願明細書等の段落0057(甲1の段落0061)には、粘着力に相当する剥離力を測定する際の超高圧水銀紫外線照射器の紫外線の積算照射量について「3000mJ/cm2」と記載されている。
そうすると、本件発明17と先願発明2とでは、粘着力を測定する際の前提となる条件が相違するから、本件発明17と先願発明2とを対比した場合、両者は、少なくとも、本件発明17のデバイス製造方法において使用する「ワークハンドリングシート」と、先願発明2の電子部品の製造方法において使用する「支持テープ」の粘着力が異なる点で相違する(以下、この点を「相違点2」という。)。
そして、相違点2は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないから、本件発明17と先願発明2とは同一とはいえない。
本件発明17の構成をすべて含む、本件発明18についても、同様である。
ウ 本件発明20~22について
本件発明20~22は、本件発明17又は本件発明19のいずれかの構成をすべて含むから、上記ア、イと同様に、先願発明2と同一とはいえない。
(2) 本件発明1~16について
ア 本件発明1~4について
上記(1)アのとおり、先願明細書等には、硬化・分離工程に相当する事項は記載されていないから、本件発明19と同様に、本件発明1と先願発明1とを対比した場合、両者は、少なくとも、本件発明1のワークハンドリングシートが、硬化・分離工程を備えるデバイス製造方法で使用されるためのものであるのに対し、先願発明1の支持テープが用いられる電子部品の製造方法において、硬化工程に相当する工程(2)と、分離工程に相当する工程(3)との関係が、硬化・分離工程のように特定されていない点で相違する(以下、この点を「相違点3」という。)。
そして、相違点3は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないから、本件発明1と先願発明1とは同一とはいえない。
本件発明1の構成をすべて含む、本件発明2~4についても同様である。
イ 本件発明5について
上記(1)イと同様に、訂正事項2により、本件発明5は、ワークハンドリングシートの、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して硬化させた後における界面アブレーション層の粘着力について、照射する光量が「190mJ/cm2」であると訂正された。
一方、先願明細書等の段落0057(甲1の段落0061)には、粘着力に相当する剥離力を測定する際の超高圧水銀紫外線照射器の紫外線の積算照射量について「3000mJ/cm2」と記載されている。
そうすると、本件発明5と先願発明1とは、粘着力を測定する際の前提となる条件が相違するから、本件発明5と先願発明1とを対比した場合は、両者は、少なくとも、本件発明5の「ワークハンドリングシート」と、先願発明2の「支持テープ」の粘着力が相違する(以下、この点を「相違点4」という。)。
そして、相違点4は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないから、本件発明5と先願発明1とは同一とはいえない。
ウ 本件発明6~9について
本件発明6~9は、本件発明1又は本件発明5のいずれかの構成をすべて含むから、上記ア、イと同様に、先願発明1と同一とはいえない。
エ 本件発明10について
訂正事項3により、本件発明10の「ワークハンドリングシート」の紫外線吸収剤は、特定紫外線吸収剤(上記「第2の2(1)ウ(ア)」参照)であると訂正された。
一方、先願明細書等には、特定紫外線吸収剤についての記載はない。
そうすると、本件発明10と先願発明1とを対比した場合、両者は、少なくとも、本件発明10の「ワークハンドリングシート」が特定紫外線吸収剤を含有するのに対し、先願発明1の「支持テープ」が含有する紫外線吸収剤が特定紫外線吸収剤ではない点で相違する(以下、この点を「相違点5」という。)。
そして、相違点5は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないから、本件発明10と先願発明1とは同一とはいえない。
オ 本件発明11~16について
本件発明11~16は、本件発明1、本件発明5、本件発明10のいずれかの構成をすべて含むから、上記ア、イ、エと同様に、先願発明1と同一とはいえない。
(3) 小括
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1~22に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由
申立人は、特許異議申立書において、取消理由通知において採用した申立理由の他に、次の申立理由2、3も主張した。
(1) 申立理由2(甲第2号証を主たる引用文献とする新規性・進歩性欠如)
(2) 申立理由3(明確性要件)
ア 「ワーク小片を保持可能」との記載について
「b 以上の記載からすると、「ワーク小片を保持可能」とは、界面アブレーション層にワーク小片を貼り付けて、その状態のまま保持することを意味するといえる。
しかしながら、「ワーク小片」が特定されていない以上、その材質や重み、形状等により、必ずしも界面アブレーション層に、貼り付けた状態のまま保持することができるとはいえず、かつ、「その状態のまま保持」の「その状態のまま」とはどの程度の同一性を意味するのか明確ではない。
また、界面アブレーション層自体もワーク小片を貼付するために、ワーク小片に対する粘着性を発揮することが必要であるものの、どの程度の粘着性が必要であるのか、また、界面アブレーション層を構成する材料の粘度によっては造膜性の確保が難しくなる可能性があることから、はたして、「ワーク小片を保持可能」とする界面アブレーション層の粘着性の程度が不明であるといえる。
してみると、上記「ワーク小片を保持可能」とする構成が、例えば粘着性の程度も含めて不明であることから、ワークハンドリングシートとして存在するものが、本件発明の構成を満たすのか否かの判断が困難となり、第三者に不測の不利益を及ぼすものである。」(特許異議申立書73ページ16~最下行)
イ 「レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層」の記載について
「c しかしながら、界面アブレーション層を構成する成分の一部が蒸発または揮発し、発生したガスがガス抜けすることなくその界面に溜まる否かは、レーザー光の波長、周波数特性、レーザー物質の性質(気体・液体・固体・半導体)、出力、応答性、干渉性、パルス波長など様々な特性によって異なることとなる。
してみると、「レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層」とする構成が、例えばレーザー光の強度等が不明であることから、ワークハンドリングシートとして存在するものが、本件発明の構成を満たすのか否かの判断が困難となり、第三者に不測の不利益を及ぼすものである。
d してみると、本件特許請求の範囲の請求項1に記載の「ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層」、及び請求項17に記載の「界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されて」なり、「レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせる」とは、どのような条件が必要であるか明確でないため、本件特許請求の範囲の請求項1及び17の記載は明確ではない。
また、請求項1を直接的もしくは間接的に引用する請求項2~16、並びに請求項17を直接的もしくは間接的に引用する請求項18~22も同様に明確でない。」(特許異議申立書78ページ下から9行~79ページ10行)
2 当審の判断
(1) 申立理由2(甲第2号証を主たる引用文献とする新規性・進歩性欠如)について
ア 本件発明1~16について
(ア) 本件発明1と甲2発明1とを対比する。
甲2発明1の「シート基材5」は、本件発明1の「基材」に相当する。
そして、甲2発明1の「UV硬化粘着剤層4」は、本件発明1の「界面アブレーション層」と対応するが、本件発明1と甲2発明1とは、少なくとも、本件発明1の「界面アブレーション層」が紫外線吸収剤を含有するのに対し、甲2発明1の「UV硬化粘着剤層4」が紫外線吸収剤を含有すると特定されていない点で相違する(以下「相違点6」という)。
(イ) 相違点6の検討
甲2の段落0041には「紫外線吸収特性のよい材料を用いてもよい。」との記載があるが、当該記載は、UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5に代えてダイシングシートなどの支持基板を用いた場合についての記載であるから、「UV硬化粘着剤層4を有するシート基材5」に係る甲2発明1の「UV硬化粘着剤層4」を、紫外線吸収特性のよいものとすること、すなわち、紫外線吸収剤を含有するものとすることを示唆するものではない。
また、甲2の段落0042~0043には、界面でアブレーションを生じさせ、支持基板からチップ部品8を分離するとの記載があるが、「チップ部品8がLIP(LED In Plastic)の場合、又はチップ部品8がSi基板からなりかつ電極2面上が、レーザー光10の波長を選んで、そのレーザー光10を効率良く吸収できる材料で覆われてなる場合」についての記載であり、当該記載は、甲2発明1の「UV硬化粘着剤層4」を、紫外線吸収特性のよいものとすること、すなわち、紫外線吸収剤を含有するものとすることを示唆するものとはいえず、甲2の他の箇所にも、「UV硬化粘着剤層4」に紫外線吸収剤を含有させることを示唆する記載もない。
そうすると、甲2には、UV硬化粘着剤層4が紫外線吸収剤を含有することについて何ら示唆がないから、甲2発明1において、相違点6に係る構成を採用する動機付けが存在しない。
したがって、本件発明1は、甲2発明1ではなく、また、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ) 本件発明5、10
本件発明5、10も、「界面アブレーション層」が紫外線吸収剤を含有することを発明特定事項としているから、本件発明1と同様に、甲2発明1ではなく、また、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ) 本件発明2~4、6~9、11~16
本件発明2~4、6~9、11~16は、本件発明1、本件発明5、本件発明10のいずれかの構成をすべて含むから、上記のとおり、甲2発明1ではなく、また、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明17~22について
本件発明17も、デバイス製造方法におけるワークハンドリングシートの界面アブレーション層が紫外線吸収剤を含有することを発明特定事項としているから、本件発明17を甲2発明2と対比した場合、上記ア(ア)と同様に、本件発明17のデバイス製造方法におけるワークハンドリングシートの界面アブレーション層が紫外線吸収剤を含有するのに対し、甲2発明2の実装方法におけるUV硬化粘着剤層4を有するシート基材5のUV硬化粘着剤層4が紫外線吸収剤を含有すると特定されていない点で相違する(以下「相違点7」という)。
そして、上記ア(イ)のとおり、甲2発明2において、相違点7に係る構成を採用する動機付けが存在しないから、本件発明17は、甲2発明2ではなく、また、甲2発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明17と同様に、デバイス製造方法におけるワークハンドリングシートの界面アブレーション層が紫外線吸収剤を含有することを発明特定事項とする本件発明19、及び、本件発明17又は本件発明19のいずれかの構成をすべて含む本件発明18、20~22についても同様に、甲2発明2ではなく、また、甲2発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1~22は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもないから、申立理由2(甲第2号証を主たる引用文献とする新規性・進歩性欠如)は理由がない。
(2) 申立理由3(明確性要件)について
発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そして、本件発明1、5、10、17、19は、いずれも、ワークハンドリングシートが備える界面アブレーション層の組成について、「活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有」することを発明特定事項としているから、粘着性の程度、界面アブレーションする際のレーザー光の強度などが特定されていなくても、ワークハンドリングシートとして存在するものが、本件発明1、5、10、17、19の構成を満たすのか否かの判断が困難とはいえず、第三者に不測の不利益を及ぼすものであるともいえない。
また、本件発明1、5、10、17、19のいずれかの構成をすべて含む本件発明2~4、6~9、11~16、18、20~22についても同様である。
したがって、本件発明1~22は明確であるから、申立理由3(明確性要件)は理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由2、3によっては、請求項1~22に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700329