特許異議申立
2023-700320
塊状窒化ホウ素粒子、熱伝導樹脂組成物及び放熱部材
- 審判番号
- 2023-700320
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-509520外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7145315
- 請求日
- 2023年03月28日
- 審決日
- 2023年07月26日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7145315号発明「塊状窒化ホウ素粒子、熱伝導樹脂組成物及び放熱部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7145315号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7145315号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)3月25日(優先権主張 平成31年3月27日)を国際出願日とする出願であって、令和4年9月21日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年3月28日に、本件特許の請求項1~5に係る特許について、特許異議申立人 高橋愛佳(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集してなる塊状窒化ホウ素粒子であって、
BET法により測定した比表面積が2~6m2/gであり、
圧壊強度が5MPa以上である塊状窒化ホウ素粒子(ただし、バインダーを含むものを除く。)。
【請求項2】
前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の厚さに対する長径の比(長径/厚さ)が8~15である請求項1に記載の塊状窒化ホウ素粒子。
【請求項3】
平均粒子径が15~90μmである請求項1又は2に記載の塊状窒化ホウ素粒子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の塊状窒化ホウ素粒子を含む熱伝導樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の熱伝導樹脂組成物を用いた放熱部材。」
第3 申立理由の概要
1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反したものである。
2 証拠方法
甲第1号証:再公表特許WO2017/038512号
甲第2号証:国際公開第2018/066277号公報
甲第3号証:再公表特許WO2015/119198号
甲第4号証:特開2015-224264号公報
以下、甲第1号証~甲第4号証を、それぞれ甲1~甲4と略記する。
ここで、甲3、甲4は、本件発明1の「(ただし、バインダーを含むものを除く。)」との特定事項を解釈するための証拠である。
第4 各甲号証の記載
1 甲1の記載
甲1には「六方晶窒化ホウ素粉末、その製造方法、樹脂組成物及び樹脂シート」(発明の名称)に関して、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1) 「[請求項1] 六方晶窒化ホウ素の一次粒子の凝集体を含む六方晶窒化ホウ素粉末であって、一次粒子径が10μm未満、一次粒子の平均長径(L1)の平均厚さ(d1)に対する比〔L1/d1〕が5.0以上20以下、BET比表面積が10m2/g未満であり、
45μm以上106μm以下の粒径に分級された前記六方晶窒化ホウ素粉末の粒径分布曲線において、粒径45μm以上150μm以下の範囲内に最大ピークを1つ有し、前記六方晶窒化ホウ素粉末を水に分散させた分散液を1分間超音波処理したときの下記式(1)で算出される最大ピークのピーク減少率が10%以上40%未満である、六方晶窒化ホウ素粉末。
ピーク減少率=〔(処理前の最大ピーク高さ(a))-(処理後の最大ピーク高さ(b))〕/(処理前の最大ピーク高さ(a)) (1)
[請求項2] BET比表面積が1.5m2/g以上6.0m2/g以下である、請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素粉末。
[請求項3] BET比表面積が1.5m2/g以上5.0m2/g以下である、請求項1又は2に記載の六方晶窒化ホウ素粉末。」
(2) 「[0005] ・・・しかしながら、凝集体の強度が十分でないと、樹脂との複合化過程において凝集体が崩壊してしまい、熱伝導性シートに異方性が生じ、また、凝集体の崩壊を防ぐために熱伝導性シート中におけるhBN粉末の充填率を十分に上げることができず、熱伝導性が低下するという問題がある。」
(3) 「[0017]<hBN粉末>
本発明のhBN粉末のBET比表面積は、熱伝導性の向上の観点から、10m2/g未満であり、好ましくは1.0m2/g以上9.5m2/g以下であり、より好ましくは1.5m2/g以上9.0m2/g以下、更に好ましくは1.5m2/g以上8.0m2/g以下、より更に好ましくは2.0m2/g以上7.0m2/g以下、より更に好ましくは2.5m2/g以上6.0m2/g以下、より更に好ましくは3.0m2/g以上5.0m2/g以下、より更に好ましくは3.5m2/g以上4.5m2/g以下である。BET比表面積が10m2/g未満であると、hBN粉末に含まれる凝集体の比表面積も小さくなり、樹脂組成物を製造する際に凝集体内部に取り込まれる樹脂成分の量が少なくなる。そのため、相対的に凝集体間に存在する樹脂成分の量が多くなり、凝集体の樹脂成分に対する分散性が向上し、hBN粉末と樹脂成分との馴染みが良くなり、熱伝導性が向上すると考えられる。
なお、hBN粉末のBET比表面積は、実施例に記載の流動法によるBET1点法にて測定したものである。」
2 甲2の記載
甲2には、「窒化ホウ素塊状粒子、その製造方法およびそれを用いた熱伝導樹脂組成物」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
(1) 「[0010] そこで、本発明は、熱伝導率に優れ粒子強度の高い窒化ホウ素粉末を提供することを主目的とする。」
(2) 「[0023]<1-1.(B)塊状窒化ホウ素粒子>
本発明の第一実施形態の「(B)塊状窒化ホウ素粒子」について、塊状粒子の累積破壊率63.2%時の粒子強度が8.0MPa以上であること、かつ、累積破壊率20.0%時の粒子強度が4.5MPa以上であることが好ましい。この粒子強度値未満では、樹脂との混練時やプレス時などに応力で凝集粒子が崩れてしまい、熱伝導率が低下する恐れがある。
塊状粒子の累積破壊率63.2%時の粒子強度が、より好ましくは8.0MPa以上、さらに好ましくは9.0MPa以上である。
また、塊状粒子の累積破壊率63.2%時の粒子強度の上限値は、特に制限はないが、例えば、50MPa、40MPa、30MPa、20MPa等と作製可能である。
塊状粒子の累積破壊率20.0%時の粒子強度が、より好ましくは4.5MPa以上、さらに好ましくは5.0MPa以上である。また、塊状粒子の累積破壊率20.0%時の粒子強度の上限値は、特に制限されないが、例えば20MPa、13MPa等と作製可能である。
なお、後述の<2-1.本発明の第三実施形態に係る塊状窒化ホウ素微粉末>において表面改質処理をするための原料として用いる場合、強度の強い塊状窒化ホウ素粒子が好ましく、塊状粒子の累積破壊率63.2%時の粒子強度が20MPa~50MPaのような、強度がより強い塊状窒化ホウ素粒子が、好ましい。」
(3) 「[0111](2)粒子強度
JIS R1639-5に準じて測定を実施した。測定装置としては、微小圧縮試験器(「MCT-W500」島津製作所社製)を用いた。粒子強度(σ:MPa)は、粒子内の位置によって変化する無次元数(α=2.48:-)と圧壊試験力(P:N)と粒子径(d:μm)からσ=α×P/(π×d2)の式を用いて20粒子以上で測定を行い、累積破壊率20%及び/又は63.2%それぞれの値を算出した。表3及び4において、累積破壊率63.2%の値を、粒子強度(圧壊強度)として表示した。」
第5 当審の判断
1 甲1記載の発明(甲1発明)
甲1の記載(上記第4の1)を、「六方晶窒化ホウ素粉末」に注目して整理すると、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「六方晶窒化ホウ素の一次粒子の凝集体を含む六方晶窒化ホウ素粉末であって、一次粒子径が10μm未満、一次粒子の平均長径(L1)の平均厚さ(d1)に対する比[L1/d1]が5.0以上20以下、BET比表面積が2.0m2/g以上6.0m2/g以下であり、
45μm以上106μm未満の粒径に分級された前記六方晶窒化ホウ素粉末の粒径分布曲線において、粒径45μm以上150μm以下の範囲内に最大ピークを1つ有し、前記六方晶窒化ホウ素粉末を水に分散させた分散液を1分間超音波処理したときの下記式(1)で算出される最大ピークのピーク減少率が10%以上40%未満である、六方晶窒化ホウ素粉末。
ピーク減少率=〔(処理前の最大ピーク高さ(a))-(処理後の最大ピーク高さ(b))〕/(処理前の最大ピーク高さ(a)) (1)」
2 本件発明1について
(1) 本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「六方晶窒化ホウ素の一次粒子の凝集体を含む六方晶窒化ホウ素粉末」及び「BET比表面積が2.0m2/g以上6.0m2/g以下」は、本件発明1の「六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集してなる塊状窒化ホウ素粒子」及び「BET法により測定した比表面積が2~6m2/g」を満足する。
イ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「 六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集してなる塊状窒化ホウ素粒子であって、
BET法により測定した比表面積が2~6m2/gである、
塊状窒化ホウ素粒子。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1が「圧壊強度が5MPa以上である」ことを特定するのに対し、甲1発明は「45μm以上106μm未満の粒径に分級された前記六方晶窒化ホウ素粉末の粒径分布曲線において、粒径45μm以上150μm以下の範囲内に最大ピークを1つ有し、前記六方晶窒化ホウ素粉末を水に分散させた分散液を1分間超音波処理したときの下記式(1)で算出される最大ピークのピーク減少率が10%以上40%未満」であり、当該下記式(1)が「ピーク減少率=〔(処理前の最大ピーク高さ(a))-(処理後の最大ピーク高さ(b))〕/(処理前の最大ピーク高さ(a)) (1)」であって、圧壊強度が不明である点。
<相違点2>
本件発明1が「バインダーを含むものを除く」ことを特定するのに対し、甲1発明はバインダの有無が不明である点。
(2) 事案に鑑み、まず相違点1について検討する。
ア 上記第4の2(1)によれば、甲2には、「熱伝導率に優れ粒子強度の高い窒化ホウ素粉末を提供することを主目的」とし、「窒化ホウ素粉末」における「累積破壊率が63.2%時の粒子強度」を「8.0MPa以上」とすることが理解されるものの([0010]、[0023]、[0111])、窒化ホウ素粉末のBET比表面積を2~6m2/gとすることは記載も示唆もなく、またBET比表面積を維持したまま「累積破壊率が63.2%時の粒子強度」を「8.0MPa以上」に調整する技術的思想もみられない。
イ そうすると、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することが、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。
ウ よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
エ 申立人の主張について検討する。
(ア) 申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明及び甲第2号証に開示の発明は、全て熱伝導性を高めるために凝集体の強度を高める点で共通している。 この点は、本件特許公報の【0016】、甲第1号証の【0005】及び甲第2号証の【0023】をみれば明らかである。 よって、甲1発明において、凝集体の強度を高め、熱伝導性を高めるために、甲2号証の記載を参考に、凝集体の圧壊強度を5.0MPa以上とすることは当業者において容易である。」と主張する。
(イ) 申立人の主張するとおり、上記第4の1(2)(甲1の【0005】)及び上記第4の2(2)(甲2の【0023】)より、凝集体強度の評価手法は異なるものの、熱伝導性を高めるために凝集体の強度を高める点で共通していることは理解できる。
しかしながら、上記アのとおり、甲2には、窒化ホウ素粉末のBET比表面積を2~6m2/gとすることは記載も示唆もなく、またBET比表面積を維持したまま「累積破壊率が63.2%時の粒子強度」を「8.0MPa以上」に調整する技術的思想もみられない。
したがって、上記イで検討したとおり、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することが、当業者にとって容易に想到し得ることであったとはいえず、出願人の主張は採用できない。
3 本件発明2~5について
本件発明1の全ての特定事項を備えた本件発明2~5も、上記2と同様の理由で、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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