特許異議申立
2023-700317
液状封止樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
- 審判番号
- 2023-700317
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-514472
- 登録番号
- 7167912
- 請求日
- 2023年03月28日
- 審決日
- 2024年11月20日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社レゾナック
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】伊藤 治子
- 【異議申立人】神尾 喜代子
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 細井 龍史
- 審判官 松本 直子
- 分類
- P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.16 -YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G) / P1651.55 -YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条の2、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第7項、特許法第131条の2第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第2条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7167912号発明「液状封止樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7167912号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
特許第7167912号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7167912号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成30年4月20日を国際出願日(優先日 平成29年4月28日(2件)、平成29年6月29日、日本国)とする特願2019-514472号に係る出願であって、令和4年10月31日にその特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年11月9日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年3月28日に特許異議申立人 伊藤 治子(以下、「申立人1」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし11)がされ、同年4月6日に特許異議申立人 神尾 喜代子(以下、「申立人2」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし11)がされたものである。
その後の手続は以下のとおりである。
令和5年 9月29日付け 取消理由通知
同年12月 4日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月14日付け 訂正請求があった旨の通知
令和6年 1月 9日 意見書の提出(申立人1)
同年 3月29日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 6月 3日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 7月16日 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
同年 8月 1日付け 訂正請求があった旨の通知
令和6年 8月22日 意見書の提出(申立人1)
申立人2からの意見書の提出はなかった。
なお、令和5年12月4日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年6月3日に提出されるとともに同年7月16日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)ないし(4)のとおりである。
なお、当該手続補正書(方式)による補正は、令和6年6月27日付けの手続補正指令書(方式)に対してなされたもので、特許法第131条の2第1項第3号に適合するものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~2.0質量%である、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。」とあるのを、「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記ジシアンジアミドの含有率が0.2質量%~0.3質量%である、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。」に訂正する。また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、6、8~11も同様に訂正する。なお、下線は当審により付与した。以下、同様。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.01~1.0の範囲内であり、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~2.0質量%である、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。」とあるのを、「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.01~0.1の範囲内であり、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~0.3質量%である、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。」に訂正する。また、請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、6、8~11も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~5.0質量%であり、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂とを含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。」とあるのを、「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記ジシアンジアミドの含有率が0.2質量%~0.3質量%であり、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂とを含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。」に訂正する。請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~11も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.01~1.0の範囲内であり、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂とを含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。」とあるのを、「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.01~0.1の範囲内であり、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~0.3質量%であり、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂とを含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。」に訂正する。請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~11も同様に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし11について、請求項1、請求項2、請求項5、請求項7は、共通する請求項8ないし11に引用されているため、請求項1ないし11が一群の請求項を構成する。
よって、訂正前の請求項1ないし11に対応する訂正後の請求項1ないし11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び3による訂正について
訂正事項1及び3による請求項1及び5についての訂正は、ジシアンジアミドの含有率を「0.05質量%~2.0質量%」から「0.2質量%~0.3質量%」と数値範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そして、ジシアンジアミドの含有率が「0.2質量%~0.3質量%」であることは、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0077】及び【0112】に記載されているから、訂正事項1及び3による請求項1及び5についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
(2)訂正事項2による訂正について
訂正事項2による請求項2についての訂正は、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)を「0.01~1.0」から「0.01~0.1」と数値範囲を狭めるとともに、ジシアンジアミドの含有率を「0.05質量%~2.0質量%」から「0.05質量%~0.3質量%」と数値範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そして、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比が「0.01~0.1」であることは、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0076】に記載されており、ジシアンジアミドの含有率が「0.05質量%~0.3質量%」であることは、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0077】に記載されているから、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
(3)訂正事項4による訂正について
訂正事項4による請求項7についての訂正は、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)を「0.01~1.0」から「0.01~0.1」と数値範囲を狭めるとともに、液状封止樹脂組成物において、「ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~0.3質量%」なる発明特定事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比が「0.01~0.1」であることは、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0076】に記載されており、ジシアンジアミドの含有率が「0.05質量%~0.3質量%」であることは、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0077】に記載されているから、訂正事項4による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
4 むすび
以上のとおり、請求項1ないし11についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項で準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし11を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記ジシアンジアミドの含有率が0.2質量%~0.3質量%である、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
【請求項2】
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.01~0.1の範囲内であり、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~0.3質量%である、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
【請求項3】
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、カップリング剤と、無機充填材と、を含む請求項1又は請求項2に記載の液状封止樹脂組成物。
【請求項4】
前記カップリング剤の含有率が前記液状封止樹脂組成物全体の0.05質量%~10質量%である、請求項3に記載の液状封止樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記ジシアンジアミドの含有率が0.2質量%~0.3質量%であり、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂とを含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
【請求項6】
さらに無機充填材を含有する、請求項1又は請求項2に記載の液状封止樹脂組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.01~0.1の範囲内であり、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~0.3質量%であり、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂とを含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
【請求項8】
溶剤を含まないか、溶剤の含有率が前記液状封止樹脂組成物全体の5質量%以下である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の液状封止樹脂組成物。
【請求項9】
電子部品装置のアンダーフィル材である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の液状封止樹脂組成物。
【請求項10】
回路を有する基板と、前記基板上に配置され、かつ前記回路と電気的に接続された電子部品と、前記基板と前記電子部品との間に配置される請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の液状封止樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
【請求項11】
回路を有する基板と、前記基板上に配置され、かつ前記回路と電気的に接続された電子部品と、の間の空隙の少なくとも一部を請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の液状封止樹脂組成物を用いて封止する工程を備える電子部品装置の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要、証拠方法及び取消理由の概要
1 令和5年3月28日に申立人1が提出した特許異議申立書(以下、「申立書1」という。)に記載した申立ての理由の概要
(1)申立理由1-1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び技術常識並びに周知技術(甲第2号証の1~甲第5号証の9)に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由1-2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由1-3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
2 申立人1が提出した証拠方法
(1)申立書1に添付された証拠方法
甲第1号証:特許第6233441号公報
甲第2号証の1:特開2010-192525号公報
甲第2号証の2:特開2010-111711号公報
甲第3号証の1:特開2000-178342号公報
甲第3号証の2:特開平3-181512号公報
甲第4号証の1:特開2010-095702号公報
甲第4号証の2:特表2016-532000号公報
甲第4号証の3:特開2014-205732号公報
甲第5号証の1:特開平9-263683号公報
甲第5号証の2:特開2010-180406号公報
甲第5号証の3:特開2006-089660号公報
甲第5号証の4:特開平5-051436号公報
甲第5号証の5:特開平5-051433号公報
甲第5号証の6:特開平8-032243号公報
甲第5号証の7:特開平7-316525号公報
甲第5号証の8:スリーボンド・テクニカルニュース32 平成2年12月20日発行
甲第5号証の9:スリーボンド・テクニカルニュース19 昭和62年10月1日発行
(2)令和6年1月9日に提出した意見書に添付された証拠方法
甲第6号証:特開2012-144661号公報
(3)令和6年8月22日に提出した意見書に添付された証拠方法
甲第7号証の1:特開2015-135867号公報
甲第7号証の2:特開2008-192983号公報
甲第8号証の1:特開2013-136702号公報
甲第8号証の2:特開2015-105304号公報
以下、申立人1が提出した「甲第1号証」等を「甲1-1」等という。
3 令和5年4月6日に申立人2が提出した特許異議申立書(以下、「申立書2」という。)に記載した申立ての理由の概要
(1)申立理由2-1(甲第1号証に基づく拡大先願、本件特許の優先権主張が認められる場合)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、本件特許の優先日後に出願公開がされた下記の甲第1号証に示される出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が本件特許の優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許の上記請求項に係る発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2-2(甲第1号証に基づく新規性、本件特許の優先権主張が認められない場合)
本件特許の請求項1ないし4、6、8ないし11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由2-3-1(甲第1号証に基づく進歩性、本件特許の優先権主張が認められない場合)
本件特許の請求項5、7ないし11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由2-3-2(甲第17号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項5、7ないし11に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第17号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5)申立理由2-4(新規事項の追加)
令和4年5月16日に提出された手続補正書による請求項1及び2、及び当該請求項を直接又は間接的に引用する請求項3、4、6、8ないし11に係る補正は、願書に最初に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し取り消すべきものである。
(6)申立理由2-5(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
4 申立人2が提出した証拠方法
(1)申立書2に添付された証拠方法
甲第1号証:特願2016-58084号(特開2017-171754号公報)
甲第2号証:特開2019-19194号公報
甲第3号証:Henan Tianfu Chemical社の製品情報に関するWebページ、令和5年3月15日に下記URLのWebページをプリントアウト
<資料入手先URL> https://jp.tianfuchem.com/finechemical/57187371.html
甲第4号証:特開2016-69549号公報
甲第5号証:久保山俊史、「アンダーフィル材 概論」、日本ゴム協会誌、第84巻 第10号(2011)p313-320、令和5年3月14日に下記URLより入手)
<資料入手先URL> https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/84/10/84_10_313/_pdf
甲第6号証:特開2007-182561号公報
甲第7号証:特開2015-134928号公報
甲第8号証:特開2013-64152号公報
甲第9号証:特開2014-237837号公報
甲第10号証:特開2011-79973号公報
甲第11号証:特開2016-135888号公報
甲第12号証:特開2015-32638号公報
甲第13号証:特願2017-90741号(本件特許の基礎出願1)
甲第14号証:特願2017-90742号(本件特許の基礎出願2)
甲第15号証:特願2017-127857号(本件特許の基礎出願3)
甲第16号証:本件特許発明と基礎出願との対比表 令和5年3月16日に特許異議申立人が作成
甲第17号証:特開平9-302201号公報
甲第18号証:特願2019-514472号(国際公開第2018/198992号)
甲第19号証:本件特許発明5、7と本件特許明細書に記載の第1~第3実施形態の説明との対比表 令和5年3月17日に特許異議申立人が作成
以下、申立人2が提出した「甲第1号証」等を「甲2-1」等という。
5 職権により採用する証拠方法
甲第1-1’号証:特開2016-135888号公報
以下、「甲1-1’」という。なお、甲1-1’は、甲1-1と出願を同じくする特願2016-82166号の公開公報である。
6 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審において令和6年3月29日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(甲1-1’に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1-1’に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第5 当審の判断
以下に述べるとおり、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、当審において通知した取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
1 取消理由1(甲1-1’に基づく進歩性)
(1)証拠に記載された事項等
ア 甲1-1’
甲1-1’の実施例6の液状エポキシ樹脂組成物に着目するとともに、甲1-1’の段落【0029】には、当該組成物をアンダーフィル材に用いることが示されていることから、甲1-1’には、以下の発明が記載されていると認められる。
「(A)エポキシ樹脂:液状の、ビスF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:エポキシ当量160、[東都化成株式会社製商品名YDF-8170C])50重量部、アミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:エポキシ当量95、[ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名EP-630])30重量部、反応性希釈剤(エポキシ当量128、[坂本薬品工業株式会社製商品名SR-16H
L])20重量部
(B)硬化剤:液状芳香族アミン(硬化剤1:活性水素当量45、[ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピキュアW])35重量部
(C)無機充填剤:組成及び形状が実質的に球状の溶融シリカである無機充填剤#3(平均粒径1.0μm、0.1μm未満の粒子含有量0.4重量%、16μmより大の粒子含有量<0.1重量%、最密充填分率72容積%)430重量部
カップリング剤:エポキシシラン(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)4.3重量部
着色剤:カーボンブラック[三菱化学株式会社製商品名MA-600]0.7重量部
からなる、アンダーフィル材に用いられる液状エポキシ樹脂組成物。」(以下、「甲1-1’発明1」という。)
イ 甲1-2の1
甲1-2の1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
有機材料製の基板上に設けられた電極部と半導体素子のバンプ電極とを電気的に接続しつつ該基板上に該半導体素子を配置する工程、該基板表面をプラズマ処理する工程、および、該基板と半導体素子との間のギャップにアンダーフィルを充填した後、該アンダーフィルを加熱硬化させることにより該ギャップを封止する工程をこの順に実施することを含むフリップチップ型の半導体装置の製造方法であって、
前記プラズマ処理後の前記基板において、前記半導体素子の外縁からの距離が少なくとも2.5mm以内の領域の表面凹凸の山頂部平均間隔をSmとする時、前記アンダーフィルが、平均粒径が前記Sm値の10%以下の絶縁性粒子を1~40wt%含有することを特徴とするフリップチップ型の半導体装置の製造方法。」
「【0022】
[アンダーフィル]
アンダーフィルは、基板上に半導体素子を配置した後、基板と半導体素子との間のギャップに充填し、その後加熱硬化させることにより、該ギャップを封止するものである。このため、アンダーフィルには、加熱硬化前においては、基板と半導体素子との間のギャップに充填するのに十分な流動性を有することが求められ、加熱硬化後においては、封止部が十分な電気絶縁性、耐熱性、耐湿性、耐熱衝撃性を有することが求められる。
これらの特性を満足するため、アンダーフィルは、主剤としてエポキシ樹脂を含有するものであることが好ましい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、接着性や耐湿性の観点からは芳香族アミンが好ましい。しかしながら、エポキシ樹脂の硬化剤として芳香族アミンを含有するアンダーフィルを使用した場合、アンダーフィルのブリード現象が顕著になる傾向がある。
したがって、エポキシ樹脂の硬化剤として、芳香族アミンを含有するアンダーフィルを使用する場合には、アンダーフィルのブリード現象を抑制する作用のある本発明の方法を採用することが好ましい。但し、本発明の方法はこれに限定されず、上記以外のアンダーフィルを使用した場合であっても、アンダーフィルのブリード現象を抑制する作用を発揮する。」
ウ 甲1-2の2
甲1-2の2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)平均粒子径が0.1~1.0μmである球状シリカ粉末を必須成分とし、該球状シリカ粉末を該必須成分の合計に対し20~60質量%含有する液状エポキシ樹脂組成物であって、該液状エポキシ樹脂組成物が、(イ)室温(23~25℃)における初期の粘度が20Pa・s以下、(ロ)120℃保持における粘度挙動が初期の10倍に到達する時間が30~100秒、(ハ)120℃に加熱された10μmの隙間を有する二枚重ねのガラス板の該隙間への端部から深さ10mmまでの侵入時間が60秒以下、及び(ニ)120℃の雰囲気下に置かれたSiの鏡面に3mg滴下し、広がりが止まった状態でのその直径、すなわち、短径と長径の平均値が5mm以下であることを特徴とする半導体封止用液状エポキシ樹脂組成物。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、半導体装置の封止に際し、COC用アンダーフィル材として、基板、素子等の間の隙間侵入性と該素子への汚染防止(ブリード防止)の機能を併わせもつ半導体封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物をアンダーフィル材として用いたフリップチップ型半導体装置を提供することを目的とする。」
「【0011】
(B)硬化剤
硬化剤としては、一般的に公知のものを使用することができる。
例えば、芳香族アミン系化合物、フェノール系化合物、酸無水物、カルボン酸が挙げられる。
特に、接着性、耐環境試験における信頼性の観点から、芳香族アミン、フェノール系化合物、酸無水物を使用するのが好ましい。
これらは1種単独又は2種以上を混合して用いても差し支えないが、2種以上を混合する場合は、保存安定性の悪化を考慮し、酸性物と塩基性物を併用することは好ましくない。
また、硬化剤として、フェノール系化合物、酸無水物を用いる場合は、作業性の観点から、本発明のエポキシ樹脂組成物は室温における適度な流動性が必要であり、硬化剤は25℃において液状であるものを使用することが望ましく、25℃において固形の硬化剤を使用する場合は、25℃において液状の硬化剤に溶解し、硬化剤全体で液状とするのが望ましい。
・・・
【0017】
また、硬化剤としては、上記の他にジシアンジアミド、アジピン酸ヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド等のカルボン酸ヒドラジドも使用することができる。硬化剤としてこのようなカルボン酸ヒドラジドを用いる場合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1モルに対して0.3~0.7モル、特に、0.4~0.6モルのカルボン酸ヒドラジドを配合することが望ましく、配合量が0.3モル未満では硬化性が不充分となる場合があり、0.7モルを超えるとポットライフが短くなる場合がある。」
エ 甲1-3の1
甲1-3の1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 一般式(1)で表される数平均分子量が600~1000であるエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、有機溶剤(C)、カップリング剤(D)、無機フィラー(E)からなり、該エポキシ樹脂(A)100重量部に対して該硬化剤(B)の配合割合が50~100重量部であり、該有機溶剤(C)の配合割合が50~150重量部、該カップリング剤(D)の配合割合が5~10重量部であり、該無機フィラー(E)の配合割合が50~150重量部であることを特徴とする絶縁ペースト。
【化1】
[図:0001419305000001.jpg]
【請求項2】 該硬化剤(B)がジシアンジアミド、フェノールノボラック、イミダゾールから選ばれた少なくとも一つである請求項1記載の絶縁ペースト。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこれらの問題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂成分のブリードアウト(以下単にブリードという)が少なく、接着性に優れた絶縁ペーストを提供するものである。」
「【0008】本発明の硬化剤としてはジシアンジアミド、イミダゾール、フェノールノボラック等があるが硬化時のブリード低減と硬化物の接着強度の点からこれらの中から選ばれた少なくとも一つを用いることが望ましい。もちろん併用して用いることも差し支えない。また本発明で用いられるイミダゾールとして2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール,2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]エチル-s-トリアジン{イソシアヌル酸付加物}、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール,2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾールなどが挙げられるが特に限定されるものではない。」
オ 甲1-3の2
甲1-3の2には、以下の事項が記載されている。
「(1)(A)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むエポキシ樹脂
(B)ジシアンジアミド及び
(C)下記式〔 I 〕で示される構造の芳香族ジアミン
[図:0001419305000002.jpg]
(式中、R1~R4は同一、または異なるアルキル基、またはHを表わす)
を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
「〔作 用〕
本発明はエポキシ樹脂と硬化剤としてジシアンジアミド及び特定構造の芳香族ジアミンを併用することにより、硬化速度及び耐湿性の優れたエポキシ樹脂組成物を得ることにある。
・・・
本発明に用いるジシアンジアミドは、エポキシ樹脂に対する潜在性硬化剤として知られており、所定温度以上で優れた硬化作用を与える硬化剤である。しかしエポキシ樹脂に対する配合比率を上げるに従って、ワニスのゲル化時間を大幅に短縮してしまったり、あるいは硬化物の耐湿性が劣るといった欠点がある。
一方、本発明で併用するエポキシ樹脂用硬化剤である芳香族ジアミンは硬化作用が比較的弱いが硬化物の耐湿性は優れている。該芳香族ジアミンとジシアンジアミドを併用することにより、ワニスのゲル化時間を大幅には短くすることなく、硬化作用を上げることができ、しかも経時変化を小さく抑えることができる。また、温度に対するゲル化時間の変化が小さくなるためガラス布基材ヘワニスを含浸させ、加熱乾燥させることによるプリプレグを製造する工程での品質管理が容易に行なえ、得られたプリプレグの保存安定性も優れている。」(第2ページ左下欄第3行~第3ページ左上欄第7行)
「実施例1
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A) 100重量部
(加水分解性塩素量0.05重量)
ジシアンジアミド 1.7重量部
4、4′-ジアミノ-3、3′-ジエチル-5、5′-ジメチルジフェニルメタン
2.8重量部
2-エチル-4-メチルイミダゾール 0.15重量部
メチルエチルケトン 50重量部
を常温で均一に混合溶解し、ワニスを得た。得られたワニスのゲル化時間を測定し、ワニスの経時変化を追跡した。また、このワニスを厚さ0.18mmのガラス基材に含浸させた後、乾燥させプリプレグを作威した.次に、このプリプレグ8枚を重ね上下に銅箔を入れ、加熱温度180℃、圧力40kg/cm2の条件で加熱時間を60~100分の間で変えて銅張積層板を成形し、得られた積層板のガラス転移温度、プレッシャークッカー処理後の吸水率及び半田耐熱性試験を行なった。配合割合及び評価結果について第1表に示す。
実施例2~4
第1表に示した配合割合でワニスを作成し、実施例1と同様にして得られた積層板を評価した。
評価結果を第1表に示した。
比較例1~4
第1表に示した配合割合でワニスを作威し、実施例1と同様にして得られた積層板を評価した。
評価結果を第1表に示した。
[図:0001419305000003.jpg]
」(第3ページ左下欄第4行~第4ページ)
カ 甲1-4の1
甲1-4の1には、以下の事項が記載されている。
「【0013】
本発明の樹脂組成物は、硬化剤を含む。硬化剤としては、特に限定はされないが、アミン系、特にジシアンジアミドと芳香族アミン、テトラメチレンヘキサミン、又はフェノールノボラック系硬化剤や酸無水物系硬化剤等が挙げられる。」
キ 甲1-4の2
甲1-4の2には、以下の事項が記載されている。
「【0007】
ジシアンジアミドは、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤として長らく知られてきた。(H.Lee及びK. Neville、「Epoxy Resins」、McGraw Hill、NewYork、1967、10~16ページ。)ジシアンジアミドはエポキシ樹脂と硬化剤のどちらにおいても溶解性があまり高くないため、ジシアンジアミドは一般にエポキシ樹脂中に分散されて、少なくとも6ヶ月の保存期間を有する1成分エポキシを提供する。米国特許第3,391,113号公報は、エポキシ樹脂の硬化剤としてのジシアンジアミドの使用及びジシアンジアミドの促進剤としてのテトラアルキルグアニジンの使用を開示している。欧州特許第659833号公報は、エポキシ樹脂並びにジシアンジアミド、環状脂肪族ポリアミン、ポリオキシアルキレンアミン及び第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、又はアルカリ金属アルコキシドの硬化促進剤からなる硬化剤、を含むエポキシ樹脂組成物を開示している。米国特許第5,214,098号公報は、少なくとも80℃の温度で硬化するエポキシ樹脂組成物の潜在性硬化剤としてのジシアンジアミドの使用を開示している。この組成物はまた、アミン及びチオール及びイミダゾール又は置換されたイミダゾールの硬化促進剤を含む。米国特許出願公開第2005/0137357号公報は、エポキシ接着剤組成物のための、ポリアミン、ポリアミド、ジシアンジアミド及びイミダゾールを含む硬化剤組成物を開示している。ジシアンジアミドはエポキシ樹脂中に分散される。
【0008】
上に列挙したエポキシ硬化剤の技術分野において、ジシアンジアミドは一般に、エポキシ樹脂中に分散され、イミダゾール誘導体などの促進剤と併せて潜在性硬化剤として用いられる。ジシアンジアミド硬化エポキシ系は、高い衝撃強度及び耐摩耗性、基材への極めて優れた接着性、並びに水及び化学薬品に対する良好な安定性を有するため、均一な硬化剤溶液を調製してジシアンジアミドを組み込み、その利点を最大化することにも努力が向けられてきた。」
ク 甲1-4の3
甲1-4の3には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A):下記式(1)で表されるエポキシ樹脂と、 (B):アミン類、ポリフェノール類、及びグアニジン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤と、を含む、樹脂組成物。
【化1】
[図:0001419305000004.jpg]
(式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1~6の分岐を有してもよいアルキル基であり、R1及びR2の少なくともひとつは、炭素数1~6の分岐を有してもよいアルキル基であり、R3はn価の有機基であり、nは1~3の整数を表す。)」
「【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、貯蔵安定性に優れ、耐湿性に優れる硬化物を与える樹脂組成物、及び該樹脂硬化物を含む硬化物を提供することを目的とする。」
「【0041】
〔(B)成分〕
本実施形態に用いる(B)成分は、アミン類、ポリフェノール類、及びグアニジン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤である。(B)成分は、(A)成分を硬化させる硬化剤として働く。(B)成分は用途により適宜選択される。
【0042】
硬化物の耐熱性がより優れる傾向にあるという観点から、(B)成分は、芳香族アミン類、脂環式アミン類、ポリフェノール類、及びグアニジン類からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、芳香族アミン類及びグアニジン類からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、芳香族アミン類であることがさらに好ましい。
【0043】
また、硬化物の耐湿性がより優れる傾向にあるという観点から、(B)成分は、アミン類であることが好ましく、脂環式アミン類であることがより好ましい。
【0044】
さらに、貯蔵安定性により優れる傾向にあるという観点から、(B)成分は、ポリフェノール類及びグアニジン類からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、グアニジン類であることがより好ましい。」
ケ 甲1-5の1
甲1-5の1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 下記(A) ~(C) からなる導電性エポキシ樹脂組成物。
(A) ○1(当審注:丸囲みの数字を表す。以下、同様。)エポキシ当量 450~2000のビスフェノールA型エポキシ樹脂40~60重量部、○2エポキシ当量 180~210 のビスフェノールA型エポキシ樹脂10~40重量部、および○3ノボラック型エポキシ樹脂20~50重量部からなるエポキシ樹脂100 重量部、
(B) 芳香族ジアミン2~6重量部およびジシアンジアミド6~12重量部からなる硬化剤、ならびに
(C) 導電性粉末25~55重量部。」
「【0023】硬化剤
本発明では、芳香族ジアミンとジシアンジアミドという2種類のエポキシ硬化剤を使用する。芳香族ジアミンは塩基性が弱く、エポキシ樹脂との反応が遅いため、80℃程度に加熱しないと実質的な硬化反応が起こらない。ジシアンジアミドは、エポキシ樹脂との反応がさらに遅く、さらに高温に加熱しないと硬化反応を生じない。この両者を併用することで、加熱しないとエポキシ樹脂が硬化せず、また加熱温度を制御することにより、半硬化状態 (即ち、Bステージ状態) で一旦エポキシ樹脂の硬化反応を停止させ、さらに高温に加熱することで完全に硬化させることが可能となる。」
コ 甲1-5の2
甲1-5の2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
基材に含浸させてシート状のプリプレグを形成するために用いる樹脂組成物であって、
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドと、分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物とを含有することを特徴とする樹脂組成物。」
「【0015】
本発明の樹脂組成物では、ジシアンジアミドを用いる。これにより、樹脂組成物の耐熱性を維持したまま密着性を向上させることができる。
【0016】
ジシアンジアミドをエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移点が高くなる。また、ジシアンジアミドに窒素原子が含まれるため、密着性が向上する。
【0017】
しかしながら、ジシアンジアミドはエポキシ樹脂、特にジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂に対する溶解性が悪い。このためジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を充分に硬化させるのに必要なジシアンジアミドを加えると、樹脂組成物中でジシアンジアミドが析出し、未反応のジシアンジアミドが積層板中にも残存するため、耐熱性が悪化する問題がある。また、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂に溶解するだけの量のジシアンジアミドでは、硬化が不充分となり耐熱性が悪化する問題がある。
【0018】
これに対して本発明の樹脂組成物は、ジシアンジアミドとともに、分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物を用いることを特徴とする。これにより、耐熱性を低下させることなく、密着性を付与することができる。
本発明の樹脂組成物においては、ジシアンジアミドとともに分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物を用いるので、ジシアンジアミドとしては、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂(以下、単に「エポキシ樹脂」ということがある)に溶解できるだけの量を用いることができる。これにより、未反応のジシアンジアミドが析出することによる耐熱性の低下を防止することができる。
また、分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物は、そのアミノ基により、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応するため、樹脂中に未反応のエポキシ基が残存することがなく充分な耐熱性を付与することができる。
さらに、分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物は、その1分子に対し、エポキシ基2つとしか反応しないため、樹脂の硬化過程において樹脂組成物の粘度が上がりにくいという特徴を有する。これにより、エポキシ樹脂に対するジシアンジアミドの溶解度を実質的に低下させることがなく、配合したジシアンジアミドをエポキシ樹脂と効率的に反応させることができる。
本発明の樹脂組成物は、このように、ジシアンジアミドと分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物とが各々有する単独の効果だけでなく、両者を併用することによる上記の相乗効果をも有するものである。そして、ジシアンジアミドの溶解性が低いジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を用いた場合でも、その低線膨張性とともに、積層板に高い密着性、耐熱性を付与することができるものである。」
「【0019】
ジシアンジアミドの含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂100重量部に対して1.5~3.5重量部、特に2.0~3.0重量部が好ましい。含有量が上記下限値未満であると樹脂の密着性が低下し、上記上限値を超えるとジシアンジアミドが析出し半田耐熱性が低下する場合がある。」
サ 甲1-5の3
甲1-5の3には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
基材に含浸させてシート状のプリプレグを形成するために用いる樹脂組成物であって、
ノボラック型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドと、分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物と、難燃剤とを含有することを特徴とする樹脂組成物。」
「【0011】
本発明の樹脂組成物は、ジシアンジアミドを含む。これにより、耐熱性を維持したまま密着性を向上させることができる。
【0012】
ジシアンジアミドをエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移点が高くなる。また、ジシアンジアミドに窒素原子が含まれるため、銅箔などの導体回路金属箔との密着性が向上する。
【0013】
しかしながら、ジシアンジアミドはエポキシ樹脂、特にノボラック型エポキシ樹脂に対する溶解性が低い。このためノボラック型エポキシ樹脂を充分に硬化させるのに必要な量のジシアンジアミドを加えると、樹脂組成物中でジシアンジアミドが析出し、未反応のジシアンジアミドが積層板中にも残存するため、耐熱性が悪化する問題がある。また、ノボラック型エポキシ樹脂に溶解するだけの量のジシアンジアミドでは、硬化が不充分となり耐熱性が悪化する問題がある。
【0014】
これに対して本発明の樹脂組成物は、ジシアンジアミドとともに、分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物を用いることを特徴とする。これにより、耐熱性を低下させることなく、密着性を付与することができる。
本発明の樹脂組成物においては、ジシアンジアミドとともに分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物を用いるので、ジシアンジアミドとしては、ノボラック型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂(以下、単に「エポキシ樹脂」ということがある)に溶解できるだけの量を用いることができる。これにより、未反応のジシアンジアミドが析出することによる耐熱性の低下を防止することができる。
また、分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物は、そのアミノ基により、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応するため、樹脂中に未反応のエポキシ基が残存することがなく充分な耐熱性を付与することができる。
さらに、分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物1分子に対し、エポキシ基2つとしか反応しないため、樹脂の硬化過程において樹脂組成物の粘度が上がりにくいという特徴を有する。これにより、エポキシ樹脂に対するジシアンジアミドの溶解度を実質的に低下させることがなく、配合したジシアンジアミドをエポキシ樹脂と効率的に反応させることができる。
本発明の樹脂組成物は、このように、ジシアンジアミドと分子内にアミノ基を1つ有する芳香族アミノ化合物とが各々有する単独の効果だけでなく、両者を併用することによる上記の相乗効果をも有するものである。そして、ジシアンジアミドの溶解性が低いノボラックエポキシ樹脂を用いた場合でも、積層板に高い密着性、耐熱性を付与することができるものである。
【0015】
ジシアンジアミドの含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂100重量部に対して2.0~4.5重量部が好ましく、特に2.5~4.0重量部が好ましい。
含有量が前記下限値未満であると密着性が低下し、前記上限値を超えるとジシアンジアミドが析出して耐熱性が低下する場合がある。」
シ 甲1-5の4
甲1-5の4には、以下の事項が記載されている。
「【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を解決するものとして、
(a)エポキシ樹脂、
(b)○1 ジシアンジアミド、
○2 1分子中に2個以上のフェノール性OH基を有する化合物、および
○3 1分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミン化合物
からなる硬化剤、並びに
(c)硬化促進剤
を配合してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物を提供する。」
「【0018】この3種の硬化剤については、○1ジシアンジアミドの持つ接着性の向上、○2多官能フェノール化合物(樹脂)の持つ耐湿性、プリプレグの保存性の向上、さらには、○3芳香族アミン化合物の持つTgの向上等という長所を相乗的にさらに一層向上させ、かつ、各々の短所を補うという特徴がある。たとえば、○1ジシアンジアミドの吸湿性、電食性、○2多官能フェノール化合物(樹脂)のTg、硬化物着色、○3芳香族アミン化合物の吸湿耐熱性、プレプレグ保存性等の面における短所を補い、長所をより大きな効果として実現することを可能としている。」
ス 甲1-5の5
甲1-5の5には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】(a)○1 次式で表わされる多官能エポキシ樹脂、
【化1】
[図:0001419305000005.jpg]
○2 テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られる臭素化多官能エポキシ樹脂、
とからなるエポキシ樹脂成分、
(b)○1 ジシアンジアミド、
○2 1分子中に2個以上のフェノール性OH基を有する化合物、および
○3 1分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミン化合物
からなる硬化剤、並びに
(c)硬化促進剤
を配合してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。」
「この3種の硬化剤については、○1ジシアンジアミドの持つ接着性の向上、○2多官能フェノール化合物(樹脂)の持つ耐熱性、プリプレグの保存性の向上、○3芳香族アミン化合物の持つTgの向上等という長所を相乗的にさらに一層向上させ、かつ、各々の短所を補うという特徴がある。たとえば、○1ジシアンジアミドの吸湿性、電食性、○2多官能フェノール化合物(樹脂)のTg、硬化物の着色、○3芳香族アミン化合物の吸湿耐熱性、プリプレグ保存性の面等における短所を補い、長所をより大きな効果として実現することを可能としている。」(第4ページ左欄第14~24行)
セ 甲1-5の6
甲1-5の6には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 回路加工された両面銅張積層板の両面に、熱硬化性樹脂を基材に含浸、乾燥させたプリプレグを重ね合わせて積層プレスする多層プリント配線板の製造方法において、前記回路加工された両面銅張積層板の両面に、熱硬化型アンダーコート剤を塗布した後、更にその両面に、
(a)エポキシ基を1分子中に2個以上有するエポキシ樹脂
(b)芳香族ジアミン
(c)ジシアンジアミド
(d)芳香環骨格を有するグアニド化合物
からなる樹脂組成物を含有するプリプレグを重ね合わせて積層プレスすることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。」
「【0010】芳香族ジアミンについては、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフォン、メタフェニレンジアミン、あるいは、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジエチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン等のアルキル変性芳香族アミンが例示される。これらの配合量については、多ければ多い程耐熱性が向上するという利点があるものの、特にプリプレグの保存性を考慮し、配合量が決定されねばならない。従って、エポキシ樹脂1当量に対して0.1当量未満の配合量であると耐熱性向上に対する芳香族ジアミンの添加効果が顕著には認められず、また、0.8当量を超える量の配合を行った場合、通常の市場要求である保存性3ヶ月を満足することは困難である。更に、芳香族ジアミンとして、請求項3に示すハロゲンを有する芳香族アミンを使用すると、それ以外の芳香族ジアミンを使用した場合に比べ、同一配合量において、1.5~3倍の保存性を示し、本用途においてはなお望ましい。
【0011】ジシアンジアミドは良好な銅箔との密着性を付与するために添加される。配合量については、耐熱性や吸湿時の耐熱性等を考慮して決定される。即ち、0.1当量未満の配合であると、充分な銅箔密着性を得ることは困難であり、また、0.8当量を超える量の配合を行った場合、吸湿量が多くなり吸湿処理後の半田耐熱性劣化の原因になりやすい。」
ソ 甲1-5の7
甲1-5の7には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 (a)一分子あたり実質的に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、
(b)カルボキシル基含有ニトリルゴムまたはカルボキシル基含有水添ニトリルゴム、および
(c)一分子あたり実質的に2個以上の1級アミノ基を有する芳香族アミン(c1)とジシアンジアミド(c2)とを含む硬化剤を必須成分とする接着剤組成物であって、芳香族アミン(c1)とジシアンジアミド(c2)との配合割合が、モル比で35/65≦(c1)/(c2)≦99/1であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。」
「【0020】ジシアンジアミド(c2)は前記芳香族アミン(c1)とともに硬化剤(c)として使用するものである。ジシアンジアミド(c2)は安価であり、金属に対する接着力と潜在性に優れているため、特に一液型エポキシ系接着剤用硬化剤や、紙/エポキシあるいはガラス/エポキシ製プリント積層板用硬化剤として賞用されている。
【0021】各成分は次の割合で使用するのが好ましい。エポキシ樹脂(a)100重量部に対して(b)成分は25~200重量部、好ましくは33~100重量部の割合で配合するのが望ましい。またエポキシ樹脂(a)に対して芳香族アミン(c1)およびジシアンジアミド(c2)の合計量は当量比で0.7~1.3程度、好ましくは0.8~1.2とするのが望ましい。(a)成分と、硬化剤(c1)および(c2)成分との配合割合がこの範囲外になると、接着強度、半田耐熱性の低下を生じる他、耐薬品性が低下する傾向にある。
【0022】硬化剤(c)を調製するにあたり、(c1)成分と(c2)成分との配合割合はモル比で35/65(0.54)≦(c1)/(c2)≦99/1(99.0)、好ましくは45/55(0.82)≦(c1)/(c2)≦98/2(49.0)とする。この範囲外になると、いずれの場合も、防錆皮膜を除去した銅箔光沢面に対する接着強度、半田耐熱性が低下するとともに半田のしみ込みが著しく増加する。すなわちジシアンジアミド(c2)に対する芳香族アミン(c1)の量が上記範囲より少ない場合は、防錆皮膜を除去した銅箔光沢面に対する接着強度、半田耐熱性が低下するとともに、耐半田潜り性が悪くなる。芳香族アミン(c1)に対するジシアンジアミド(c2)の添加はわずかの添加でも効果があり、芳香族アミン(c1)に対して1モル%の添加でも、著しい接着性能の向上が認められる。しかし、ジシアンジアミド(c2)を全く添加しない場合は、接着性、半田耐熱(潜り)性が急激に低下する。」
タ 甲1-5の8
甲1-5の8には、以下の事項が記載されている。
「ジシアンジアミド(DICY)は、代表的な潜在性硬化剤である。融点207~210℃と高融点結晶で、エポキシ樹脂に溶剤などで溶解させるとそのポットライフは24時間であるが、一般には微粉末で樹脂に分散して用い、このポットライフは 6~12ヵ月と非常に長い。硬化は160°~180℃で60分~20分と硬化温度が高く、硬化時の発熱が大きく、塗料、接着剤、積層などの薄膜にしか応用されない。硬化物は接着性が良く、着色が少ない。一液接着剤用や粉体塗料、プリプレグなどによく用いられる。
DICYは優れた潜在性をもつが、硬化温度が高く、硬化時間が長いので促進剤が用いられる。一般に塩基性化合物として、三級アミン、イミダゾール、芳香族アミンなどが用いられる。」(第9ページ左欄第1行~右欄第6行)
チ 甲1-5の9
甲1-5の9には、以下の事項が記載されている。
「《ジシアンジアミド及びその誘導体》
融点が207~210℃の高融点の結晶で、エポキシ樹脂中に微粉末の状態で分散させると6~12ヶ月のポットライフが見込まれ、イミダゾール等に比べ、長く安定である。添加量は、DGEBAに4~10部程度、添加して用いる。
硬化は160~180℃で1時間~数時間と高温が要求され、硬化時の発熱も大きい。また、比重が高いことから、沈降が起きやすく、注型等には不向きで、塗料、接着、積層などに用いられる。」(第5ページ左欄下から第7行~右欄第3行)
ツ 甲1-6
甲1-6には、以下の事項が記載されている。
「【0063】
(2)接着力試験
上面の直径2mm、下面の直径5mm、高さ3mmの円錐台形状のポリテトラフルオロエチレン製の型に各アンダーフィル材を注入した試験体を15個用意した。前記試験体の樹脂組成物の上にポリイミド(PI)膜コートしたシリコンチップ、Cu板、及び窒化ケイ素膜コートしたシリコンチップを夫々載せたものを5個ずつ用意し、150℃で3時間硬化させた。硬化後、ポリテトラフルオロエチレン製の型を外して得られた各試験片を一定の速度(1mm/秒)で押すことによって、剪断接着力を測定し初期値とした。更に、各試験片をプレッシャークッカーテスター(121℃/2.1atm)中で336時間保持した後、同様に接着力を測定し、各5個の試験片の平均値をPCT336hr後の接着力として表1に記載した。表1において「0」は試験片を一定の速度(1mm/秒)で押したら剥離してしまったことを示す。」
テ 甲1-7の1
甲1-7の1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A)グリシジルアミン型エポキシ樹脂、(B)ジシアンジアミド、(C)プレゲル化剤、(D)硬化促進剤、及び(E)無機フィラーを必須成分とし、150℃、1時間加熱後の揮発成分の発生量が0.5質量%以下であることを特徴とする半導体用接着剤組成物。」
「【0014】
本発明における成分(B)であるジシアンジアミドは特に制限は無く、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として各種用途に使用されるものであれば使用することができる。均一に分散させるためには、100μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。市販品としては、たとえば、DICY7(三菱化学製、商品名平均粒径3μm)が挙げられる。ジシアンジアミドとしては、DICY(日本カーバイド製、商品名、平均粒径100~200μm)も市販されているが、平均粒径が大きいので好ましくない。
成分(B)のジシアンジアミドの含有量は、加熱時の接着強度を維持するという観点から半導体用接着剤組成物は全エポキシ樹脂(グリシジルアミン型エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の合計量)100質量部に対して、好ましくは3~20質量部より好ましくは5~10質量部である。」
ト 甲1-7の2
甲1-7の2には、以下の事項が記載されている。
「【0016】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
万能混合機を用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。まず、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(融点65℃)16質量部とフェノールノボラック樹脂(融点75℃)7質量部を85℃に加熱し、攪拌して溶融し、次に、カップリング剤(エポキシシラン)0.3質量部、ワックス(カルノウバ天然ワックス)0.3質量部および高粘度系シリコーンオイル(GE東芝シリコーン社製、商品名10M)0.2質量部を加えた後、微細粉砕シリカ(平均粒径1μm、ふるい径45μm)4質量部を徐々に加え、次いで、球状シリカ(平均粒径12μm、ふるい径45μm)74質量部を徐々に加え、球状シリカを加え終わった後、すばやくトリフェニルホスフィン(粉砕平均粒径0.03mm)0.10質量部とジシアンジアミド(粉砕平均粒径0.03mm)0.10質量部との混合物を散布し、攪拌しながら減圧脱気して、樹脂タンクに注入し、すばやく冷却した。保管は冷凍(-40℃)で行った。使用する前日より冷蔵庫(5℃)に保管し、常温戻しを行った。この樹脂組成物は、75℃以下で固体状となり、80℃以上で液状を示した。
次に、図1に示す樹脂組成物供給装置Aと同様の基本構成を有する樹脂組成物供給装置にて、樹脂組成物供給プロセスの確認を行った。この樹脂組成物供給装置には上下左右駆動装置を設けず、手動にてノズル(図1の注入口9に対応)の位置を調整した。また、圧入パイプ(図1の参照番号4に対応)に1個のノズルのみを設けた状態で樹脂組成物供給プロセスの確認を行った。用いた樹脂組成物供給装置の主要項目は、樹脂タンク容量2L、圧入圧力0.2MPa、減圧能力133Pa、樹脂タンクの加熱温度90℃、パイプ径10.2mm、パイプ長(タンク出口からノズル先端まで)1200mmとして。」
ナ 甲1-8の1
甲1-8の1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
(a)エポキシ樹脂、(b)芳香族アミン系硬化剤、(c)包接化合物、(d)無機充填材を含む液状封止材であって、
前記(c)包接化合物が、5-ヒドロキシイソフタル酸とイミダゾール誘導体との包接化合物、および、5-ニトロイソフタル酸とイミダゾール誘導体との包接化合物の少なくとも一方であり、
前記(a)~(c)成分の合計質量に対する前記(c)成分の質量比((c)/((a)+(b)+(c))が0.003以上0.1以下であることを特徴とする液状封止材。」
「【0008】
しかしながら、エポキシ樹脂の硬化剤として、アミン系硬化剤を使用した場合、加熱硬化時に、半導体素子の周囲の基板上にアンダーフィル材が染み出すブリード現象が生じる場合があることが明らかとなった。
半導体装置を構成する部品は、ハンダ等を用いて基板上に電極部に接続されるが、ブリード現象によって基板上の電極部が汚染されると、ハンダ付け等の不良が起こる場合があり、該部品の接続信頼性が失われてしまうという問題がある。」
「【0050】
(ブリード幅)
FR-4基板上に、鏡面処理した10mm□のシリコンチップを接着剤で固定した試験片を作製した。試験片を150℃で30分間乾燥させた後、基板表面をプラズマ処理した。プラズマ処理の条件は以下の通り。
ガス種:Ar
出力:400W
処理時間:300sec
ガス流量:80mmTorr
プラズマ処理後、シリコンチップの外周部にアンダーフィル材を塗布し、90℃で10分間放置した後、165℃で60分間加熱してアンダーフィル材を硬化させた。アンダーフィル材の硬化後、光学顕微鏡(オリンパス社製、型式STM6-F21-3)を用いて、ブリード幅を測定した。測定は4辺にて行い、4辺のブリード幅の平均値を加熱硬化時のブリード幅の測定値とした。なお、90℃で10分間放置した後も上記と同様の手順でブリード幅の測定を行い、注入時のブリード幅の測定値とした。」
【0051】
【表1】
[図:0001419305000006.jpg]
ニ 甲1-8の2
甲1-8の2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】(A)エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)0.1~10質量%の、平均粒径10~100nmのシリカフィラーと、
(D)40~75質量%の、平均粒径0.3μm~5μmのシリカフィラーと
を有し、
前記(C)成分および前記(D)成分を、合計で40.1~77質量%含む
ことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。」
「【0006】
これに対し本発明は、より簡単な組成でブリードを抑制するエポキシ樹脂組成物を提供する。」
「【0041】
3-2-1.ブリード試験
試料としてソルダーレジスト(PSR4000AUS703)付きの有機基板(FR-4基板)を用いた。まず試料を150℃で1時間、乾燥させた。次にこの試料をプラズマ処理した。プラズマ処理の条件は以下のとおりである。
ガス種:Ar
ガス流量:21sccm
供給電力:400W
処理時間:300sec
【0042】
この試料に対し、封止剤(評価用試料)を0.5mg、滴下(塗布)した後、150℃で2時間、熱硬化させた。硬化後、発生したブリードの長さを測定した。」
「【0047】
3-3.評価結果
【表1】
[図:0001419305000007.jpg]
」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1
本件特許発明1と甲1-1’発明1とを対比する。
甲1-1’発明1の「(A)エポキシ樹脂」である「液状の、ビスF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:エポキシ当量160、[東都化成株式会社製商品名YDF-8170C])」と「アミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:エポキシ当量95、[ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名EP-630])」は、本件特許発明1の「エポキシ樹脂」に相当し、甲1-1’発明1の「(B)硬化剤:液状芳香族アミン(硬化剤1:活性水素当量45、[ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピキュアW])」は、本件特許発明1の「芳香族アミン化合物」に相当する。
また、甲1-1’発明1の「液状エポキシ樹脂組成物」は、「アンダーフィル材」として、「封止」のために用いられるものであるから、本件特許発明1の「液状封止樹脂組成物」に相当する。
そして、甲1-1’発明1の「液状エポキシ樹脂組成物」には、シアン酸エステルは含まれていない。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物とを含有する、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
<相違点1-1-1>
ジシアンジアミドの含有率が、本件特許発明1は「0.2質量%~0.3質量%」であるのに対し、甲1-1’発明1はジシアンジアミドが含有されていないため、「0質量%」である点
そこで、上記相違点について検討する。
甲1-3の2には、「ジシアンジアミド」が、エポキシ樹脂に対する潜在硬化剤、すなわち所定温度以上で優れた硬化作用を与える硬化剤であることが知られており、エポキシ樹脂の硬化剤として、「ジシアンジアミド」と「芳香族ジアミン」を併用することにより、硬化速度及び耐湿性の優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができることが記載されている(第2ページ左下欄第4~7行、右下欄第9~15行)。しかしながら、甲1-3の2には、「ジシアンジアミド」の含有率についての記載はなく、実施例1~4において「1.6質量%」(メチルエチルケトンを除く場合)、「1.1質量%」(メチルエチルケトンを含む場合)である例しか記載されておらず、「ジシアンジアミド」の含有率を「0.2質量%~0.3質量%」とすることは記載されていない。
また、申立人1の提出した他のいずれの証拠にも、エポキシ樹脂の硬化剤として、「芳香族ジアミン」に加え「ジシアンジアミド」を併用した際における「ジシアンジアミド」の含有率を「0.2質量%~0.3質量%」とすることは記載されていない。
したがって、甲1-1’発明1において、ジシアンジアミドを含有させ、その含有率を「0.2質量%~0.3質量%」とすることは当業者が容易に想到し得たことではない。
そして、本件特許発明1は、金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性に優れる効果を奏するものである。また、本件特許発明1は、表2によれば、耐ブリード性に優れていることが示されている。
よって、本件特許発明1は、甲1-1’発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2と甲1-1’発明1とを対比する。
甲1-1’発明1の「(A)エポキシ樹脂」である「ビスF型エポキシ樹脂」のエポキシ当量は160で50重量部使用しているから、当該樹脂のエポキシ基数は、50/160=0.313となる。また、甲1-1’発明1の「(A)エポキシ樹脂」である「アミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂」はエポキシ当量95で30重量部使用しているから、当該樹脂のエポキシ基数は30/95=0.316となる。両者を合計するとエポキシ樹脂のエポキシ基数は、「0.629」となる。そして、甲1-1’発明1の硬化剤である「液状芳香族アミン」は活性水素当量45で35重量部使用しているから、当該芳香族アミン化合物の活性水素数は「0.7778」(=35/45)となる。
してみると、甲1-1’発明1の芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数は「1.23」(=0.7778/0.629)となる。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物とを含有する、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
<相違点1-2-1>
ジシアンジアミドの含有率が、本件特許発明2は「0.05質量%~0.3質量%」であるのに対し、甲1-1’発明1はジシアンジアミドが含有されていないため、「0質量%」である点
<相違点1-2-2>
前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が、本件特許発明2は「0.01~0.1の範囲内」であるのに対し、甲1-1’発明1はジシアンジアミドが含有されていないため、「0」である点
<相違点1-2-3>
前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が、本件特許発明2は「0.5~1.1の範囲内」であるのに対し、甲1-1’発明1は「1.23」である点
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点1-2-1>について
上記アと同様の理由により、甲1-1’発明1において、ジシアンジアミドを含有させ、その含有率を「0.05質量%~0.3質量%」とすることは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件特許発明2は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1-1’発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明5
本件特許発明5と甲1-1’発明1とを対比する。
甲1-1’発明1の「液状の、ビスF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:エポキシ当量160、[東都化成株式会社製商品名YDF-8170C])」、「アミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:エポキシ当量95、[ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名EP-630])」は、各々本件特許発明5の「ビスフェノール型エポキシ樹脂」、「グリシジルアミン型エポキシ樹脂」に相当する。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、を含有し、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂とを含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
<相違点1-5-1>
ジシアンジアミドの含有率が、本件特許発明1は「0.2質量%~0.3質量%」であるのに対し、甲1-1’発明1はジシアンジアミドが含有されていないため、「0質量%」である点
そこで上記相違点について検討するに、<相違点1-5-1>は、上記アの<相違点1-1-1>と同じである。
そうすると、上記アで説示したのと同様、甲1-1’発明1において、ジシアンジアミドを含有させ、その含有率を「0.2質量%~0.3質量%」とすることは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件特許発明5は、甲1-1’発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明7
本件特許発明7と甲1-1’発明1とを対比するに、上記イ、ウで対比した結果を参酌すると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、を含有し、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂とを含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
<相違点1-7-1>
ジシアンジアミドの含有率が、本件特許発明7は「0.05質量%~0.3質量%」であるのに対し、甲1-1’発明1はジシアンジアミドが含有されていないため、「0質量%」である点
<相違点1-7-2>
前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が、本件特許発明7は「0.01~0.1の範囲内」であるのに対し、甲1-1’発明1はジシアンジアミドが含有されていないため、「0」である点
<相違点1-7-3>
前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が、本件特許発明7は「0.5~1.1の範囲内」であるのに対し、甲1-1’発明1は「1.23」である点
そこで上記相違点について検討するに、<相違点1-7-1>は、上記イの<相違点1-2-1>と同じである。
そうすると、上記イで説示したのと同様、甲1-1’発明1において、ジシアンジアミドを含有させ、その含有率を「0.05質量%~0.3質量%」とすることは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件特許発明7は、甲1-1’発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件特許発明3、4、6、8ないし11
本件特許発明3、4、6、8ないし11は、本件特許発明1及び2を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1及び2の発明特定事項を全て有するものであり、本件特許発明8ないし11は、本件特許発明5及び7を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明5及び7の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1、2、5及び7と同様の理由で、本件特許発明3、4、6、8ないし11は、甲1-1’発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立人1の主張の検討
申立人1は、令和6年8月22日に提出した意見書において、以下の主張を行っている。
「アンダーフィル材において、硬化時にブリードを低減することは一般的な課題であり、甲1-2の1に記載の事項を併せて考慮すると、甲1-1’発明1においても上記課題が存在することを当業者は理解し、甲1-3の1及び甲1-3の2には、「ジシアンジアミド」を用いることにより、硬化時におけるブリードを低減することが記載されていることから、甲1-1’発明1において、硬化時におけるブリードを低減させるために、硬化剤として、液状芳香族アミンに加え、「ジシアンジアミド」をさらに含有させることは当業者が容易に着想し得ることである。
このとき、ジシアンジアミドの含有率については、当業者であれば、少しずつジシアンジアミドを添加していき、ブリードを低減できる範囲を適宜決定し、その含有率を「0.2質量%~0.3質量%」(訂正事項1、5(当審注:訂正事項1、3の誤記。))、「0.05質量%~0.3質量%」(訂正事項2、4)と0.3質量%以下にすることは容易に想到し得たことである。
なお、半導体用途のエポキシ樹脂組成物におけるジシアンジアミドの含有率についての技術常識として、甲第7号証の1(特開2015-135867号公報)には、ブリードの低減を課題とすること(段落【0008】)、ジシアンジアミドの含有量がエポキシ樹脂100質量部に対して3~20重量部が好ましいことが記載されており(段落【0014】)、甲第7号証の2(特開2008-192983号公報)には、ジシアンジアミドの含有率が0.10質量%(段落【0016】)や0.15質量%(段落【0020】)であることが記載されている。」
そこで、上記主張について検討する。
上記(2)で説示したように、甲1-3の2には、「ジシアンジアミド」の含有率についての記載はなく、実施例1~4において、「1.6質量%」(メチルエチルケトンを除く場合)、「1.1質量%」(メチルエチルケトンを含む場合)である例しか記載されておらず、「ジシアンジアミド」の含有率を「0.2質量%~0.3質量%」、或いは「0.05質量%~0.3質量%」とすることは記載されていない。
また、甲1-7の1には、「成分(B)のジシアンジアミドの含有量は、加熱時の接着強度を維持するという観点から半導体用接着剤組成物は全エポキシ樹脂(グリシジルアミン型エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の合計量)100質量部に対して、好ましくは3~20質量部より好ましくは5~10質量部である。」(段落【0014】)と記載されているにとどまり、甲1-7の2においても、ジシアンジアミドの含有率が0.10質量%(実施例1)や0.15質量%(比較例2)が例示されているにとどまり、エポキシ樹脂の硬化剤として、「芳香族ジアミン」に加え「ジシアンジアミド」を併用すること、及び併用した際における「ジシアンジアミド」の含有率を「0.2質量%~0.3質量%」、或いは「0.05質量%~0.3質量%」とすることは記載されていない。
したがって、申立人1の上記主張を首肯することができない。
(4)取消理由1(甲1-1’に基づく進歩性)についてのまとめ
よって、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由1-1(甲1-1に基づく進歩性)
甲1-1は、本件特許優先日である平成29年6月29日の後の同年11月22日に発行された特許公報であり、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものではない。
したがって、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、申立理由1-1によっては取り消すことはできない。
3 申立理由2-1(甲2-1に基づく拡大先願、本件特許の優先権主張が認められる場合)
(1)証拠に記載された事項等
甲2-1に示される出願の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲(以下、「先願明細書等」という。)の実施例1のエポキシ樹脂組成物aに着目して、【請求項6】((D)カップリング剤を更に含む)を引用する【請求項7】((E)シリカフィラーを更に含む)の記載にならって整理するとともに、【請求項9】の「アンダーフィル剤」なる用途も加味すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「(A)エポキシ樹脂である「YDF8170(ビスフェノールF型エポキシ樹脂。エポキシ当量158g/eq。新日鉄住金化学株式会社製)」35.5重量%、
(B)硬化剤である「HDAA(アミン系硬化剤。活性水素当量63.5g/eq。日本化薬株式会社製)」14.5重量%、
(C)ポリエーテル変成ジメチルシロキサンである「KF-6013」0.01重量%(全体に対して100ppmになる量)、
(D)カップリング剤である「KBM403(信越化学工業株式会社製)」0.3重量%(全体に対して3000ppmになる量)、
(E)シリカフィラーである「SE2200-SEE(シリカフィラ―。アドマテックス株式会社製)」49.5重量%、
硬化促進剤である「AmicureCG1400(エアープロダクツジャパン株式会社製)」0.12重量%(全体に対して1200ppmになる量)、
着色剤である「MA-100」0.1重量%
の組成からなる、アンダーフィル剤として用いられる、エポキシ樹脂組成物a。」(以下、「先願発明1-1」という。)
さらに、先願明細書の比較例1のエポキシ樹脂組成物a’に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「(A)エポキシ樹脂である「YDF8170(ビスフェノールF型エポキシ樹脂。エポキシ当量158g/eq。新日鉄住金化学株式会社製)
」35.5重量%、
(B)硬化剤である「HDAA(アミン系硬化剤。活性水素当量63.5g/eq。日本化薬株式会社製)」14.5重量%、
(D)カップリング剤である「KBM403(信越化学工業株式会社製)」0.3重量%(全体に対して3000ppmになる量)、
(E)シリカフィラーである「SE2200-SEE(シリカフィラ―。アドマテックス株式会社製)」49.5重量%、
硬化促進剤である「AmicureCG1400(エアープロダクツジャパン株式会社製)」0.12重量%(全体に対して1200ppmになる量)、
着色剤である「MA-100」0.1重量%
の組成からなる、アンダーフィル剤として用いられるエポキシ樹脂組成物a’。」(以下、「先願発明2-1」という。)
(2)本件特許に係る出願の優先権主張の効果について
本件特許に係る出願は、平成29年4月28日を優先日とする特願2017-90741号(甲2-13)、及び特願2017-90742号(甲2-14)、平成29年6月29日を優先日とする特願2017-127857号(甲2-15)(以下、順に「基礎出願1」ないし「基礎出願3」という。)を基に出願されたものである。
また、独立請求項である本件特許発明1、5、及び、それらを直接又は間接的に引用する本件特許発明3、4、6、8ないし11は、第1実施態様(本件特許明細書の段落【0015】~【0066】)に対応し、基礎出願1に記載されたものであり、また、独立請求項である本件特許発明2、7、及び、それらを直接又は間接的に引用する本件特許発明3、4、6、8ないし11は、第2実施態様(同段落【0067】~【0072】)に対応し、基礎出願2に記載されたものである。
そして、本件特許明細書の段落【0073】~【0078】、【0104】~【0113】は、基礎出願3に記載されたものである。
そうすると、本件特許発明1ないし11は基礎出願1~3に記載されているから、本件特許は、遅くとも平成29年6月29日を優先日とする優先権主張の効果が認められる。
(3)対比・判断
ア 先願発明1-1との対比・判断
(ア)本件特許発明1
本件特許発明1と先願発明1-1とを対比する。
a 先願発明1-1の「(A)エポキシ樹脂である「YDF8170(ビスフェノールF型エポキシ樹脂。エポキシ当量158g/eq。新日鉄住金化学株式会社製)」は、本件特許発明1の「エポキシ樹脂」に相当する。
b 先願発明1-1の「(B)硬化剤である「HDAA(アミン系硬化剤。活性水素当量63.5g/eq。日本化薬株式会社製)」は、甲2-2の段落【0048】の記載
「(B´1)下記式(3)の構造を含む芳香族アミン、商品名HDAA、日本化薬製【化6】
[図:0001419305000008.jpg]
」を参酌すると、本件特許発明1の「芳香族アミン化合物」に相当する。
c 先願発明1-1の「硬化促進剤である「AmicureCG1400(エアープロダクツジャパン株式会社製)」は、甲2-3であるカタログを参酌すると、本件特許発明1の「ジシアンジアミド」に相当する。そして、先願発明1-1の当該硬化促進剤の含有量は、「0.12重量%」である。
d 先願発明1-1の「エポキシ樹脂組成物a」は、「アンダーフィル剤」として、「封止」のために用いられるものであるから、本件特許発明1の「液状封止樹脂組成物」に相当する。
そして、先願発明1-1の「エポキシ樹脂組成物a」には、シアン酸エステルは含まれていない。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有する液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
<相違点2-1-1>
ジシアンジアミドの含有率が、本件特許発明1は「0.2質量%~0.3質量%」であるのに対し、先願発明1-1は「0.12重量%」である点
そこで、<相違点2-1-1>について検討するに、エポキシ樹脂の硬化剤として、「芳香族ジアミン」に加え「ジシアンジアミド」を併用した際の「ジシアンジアミド」の含有率を「0.2質量%~0.3質量%」の範囲とする事項は周知慣用技術とはいえない。
してみると、当該相違点は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
したがって、本件特許発明1は、先願発明1-1と同一ないし実質同一ではない。
(イ)本件特許発明2
本件特許発明2と先願発明1-1とを対比する。
a 上記(ア)で対比したのと同様、先願発明1-1の「(A)エポキシ樹脂である「YDF8170(ビスフェノールF型エポキシ樹脂。エポキシ当量158g/eq。新日鉄住金化学株式会社製)」は、本件特許発明2の「エポキシ樹脂」に相当し、先願発明1-1の「(B)硬化剤である「HDAA(アミン系硬化剤。活性水素当量63.5g/eq。日本化薬株式会社製)」は、本件特許発明2の「芳香族アミン化合物」に相当する。
また、先願発明1-1の「硬化促進剤である「AmicureCG1400(エアープロダクツジャパン株式会社製)」の含有量は、「0.12重量%」であるから、本件特許発明2の「ジシアンジアミド含有率が0.05質量%~0.3質量%」の範囲と重複一致する。
b ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数の計算に必要なジシアンジアミドの活性水素当量は21g/eqである(たとえば、甲2-4の段落【0129】参照)。
また、先願発明1-1のエポキシ樹脂(YDF8170)、芳香族アミン化合物(HDAA)およびジシアンジアミド(Amicure CG1400)のエポキシ当量あるいは活性水素当量は、各々、158g/eq、63.5g/eq、21g/eqであり、エポキシ樹脂(YDF8170)、芳香族アミン化合物(HDAA)およびジシアンジアミド(Amicure CG1400)の含有割合は、各々、35.5重量%、14.5重量%、0.12重量%である。
それゆえ、エポキシ樹脂(YDF8170)のエポキシ基数=35.5/158=0.225、芳香族アミン化合物(HDAA)の活性水素数=14.5/63.5=0.228、ジシアンジアミド(Amicure CG1400)の活性水素数=0.12/21=0.0057となる。
そうすると、芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数=0.228/0.225=1.0となり、本件特許発明2の「0.5~1.1」の範囲と重複一致する。
また、ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数=0.0057/0.225=0.25となる。
してみると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~0.3質量%である、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
<相違点2-2-1>
前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が、本件特許発明1は「0.01~0.1」であるのに対し、先願発明1-1は「0.25」である点
そこで、<相違点2-2-1>について検討するに、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)を「0.01~0.1」の範囲とする事項は周知慣用技術とはいえない。
したがって、当該相違点は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
よって、本件特許発明2は、先願発明1-1と同一ないし実質同一ではない。
(ウ)本件特許発明5
本件特許発明5と先願発明1-1とを対比する。
先願発明1-1の「(A)エポキシ樹脂である「YDF8170(ビスフェノールF型エポキシ樹脂。エポキシ当量158g/eq。新日鉄住金化学株式会社製)」は、本件特許発明5「ビスフェノール型エポキシ樹脂」に相当する。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
<相違点2-5-1>
ジシアンジアミドの含有率が、本件特許発明5は「0.2質量%~0.3質量%」であるのに対し、先願発明1-1は「0.12重量%」」である点
<相違点2-5-2>
エポキシ樹脂として、「グリシジルアミン型エポキシ樹脂」を、本件特許発明5は含むのに対し、先願発明1-1は含まない点
そこで、<相違点2-5-1>について検討するに、当該相違点は、上記(ア)の<相違点2-1-1>と同じく課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
したがって、本件特許発明5は、<相違点2-5-2>を検討するまでもなく、先願発明1-1と同一ないし実質同一ではない。
(エ)本件特許発明7
本件特許発明7と先願発明1-1とを対比するに、上記(イ)、(ウ)で対比した結果を参酌すると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~0.3質量%であり、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、液状封止樹脂組成物(ただし、シアン酸エステルを含むものを除く)。
<相違点2-7-1>
前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が、本件特許発明7は「0.01~0.1」であるのに対し、先願発明1-1は「0.25」である点
<相違点2-7-2>
エポキシ樹脂として、「グリシジルアミン型エポキシ樹脂」を、本件特許発明7は含むのに対し、先願発明1-1は含まない点
そこで、<相違点2-7-1>について検討するに、当該相違点は、上記(イ)の<相違点2-2-1>と同じく課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
したがって、本件特許発明7は、<相違点2-7-2>を検討するまでもなく、先願発明1-1と同一ないし実質同一ではない。
(オ)本件特許発明3、4、6、8ないし11
本件特許発明3、4、6、8ないし11は、本件特許発明1及び2を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1及び2の発明特定事項を全て有するものであり、本件特許発明8ないし11は、本件特許発明5及び7を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明5及び7の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1、2、5及び7と同様の理由で、本件特許発明3、4、6、8ないし11は、先願発明1-1と同一ないし実質同一ではない。
イ 先願発明2-1との対比・判断
先願発明2-1は、先願発明1-1に対し、「(C)ポリエーテル変成ジメチルシロキサンである「KF-6013」0.01重量%(全体に対して100ppmになる量)」を含まない点でのみ相違する。
そうすると、上記アで説示したのと同様、本件特許発明1ないし11は、先願発明2-1と同一ないし実質同一ではない。
(4)申立理由2-1(甲2-1に基づく拡大先願、本件特許の優先権主張が認められる場合)についてのまとめ
したがって、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、申立理由2-1によっては取り消すことはできない。
4 申立理由2-2、2-3-1(甲2-1に基づく新規性、進歩性、本件特許の優先権主張が認められない場合)
上記3(2)で検討したように、本件特許発明1ないし11は基礎出願1~3に記載されているから、本件特許は、遅くとも平成29年6月29日を優先日とする優先権主張の効果が認められる。
このため、甲2-1は、本件特許優先日である平成29年6月29日の後の同年9月28日に公開されたもので、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものではない。
したがって、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、申立理由2-2、2-3-1によっては取り消すことはできない。
5 申立理由2-3-2(甲2-17に基づく進歩性)
(1)証拠に記載された事項等
ア 甲2-17の記載事項
「【請求項1】 (A) フェノールノボラック型エポキシ樹脂とエポキシ当量が200 以下のビスフェノールA型エポキシ樹脂とを 1.2:0.8 ~ 0.8:1.2 の重量比で配合したエポキシ樹脂中に、(B) 全樹脂固形分に基づいて2~6重量%のポリビニルブチラール樹脂を含有する、気密封止用エポキシ樹脂系組成物。
【請求項2】 (A) クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とエポキシ当量が200 以下のビスフェノールA型エポキシ樹脂とを 1.4:0.8 ~ 1.0:1.2 の重量比で配合したエポキシ樹脂中に、(B) 全樹脂固形分に基づいて2~6重量%のポリビニルブチラール樹脂を含有する、気密封止用エポキシ樹脂系組成物。
【請求項3】 エポキシ樹脂が、硬化剤として、ジシアンジアミド4~6重量%および芳香族ポリアミン3~5重量%、またはジシアンジアミド4~6重量%、芳香族ポリアミン3~5重量%およびトリフェニルホスフィン1~4重量%を含有する、請求項1または2記載のエポキシ樹脂系組成物。」
「【0040】本発明の気密封止用エポキシ樹脂系組成物は、セラミックパッケージの封止に好適であるが、金属製パッケージの封止、さらにはセラミック基板面上のパターン保護にも利用できる。本発明のエポキシ樹脂系組成物で封止できる素材としては、アルミナ、コージエライト、ムライト、ガラスセラミック、窒化アルミニウム等のセラミック、ニッケル、コバルト、42アロイ、金、銅等の金属、エポキシ、ポリイミド等のプラスチックなどがある。
【0041】使用時には、エポキシ樹脂系組成物を、パッケージ材である基板もしくはキャップまたはその両方(通常はキャップ)の接着部にスクリーン印刷、ディスペンサー或いは転写等の手法により規定の厚みに塗布した後、強制循環式オーブン内で加熱して、樹脂をBステージ状態にする。この加熱は、溶媒が蒸発し、樹脂表面にベタツキがなくなるが、なお樹脂が硬化性および可塑性を残すように行う。加熱温度は、樹脂種や硬化剤の種類に応じて適当に選択すればよいが、例えば、硬化剤が上記の2成分系または3成分系混合物の場合には、75~85℃で2~4時間程度が適当である。
【0042】その後、このパッケージ材の基板にICチップや水晶振動子等の被封止部品を適宜の手法で実装し、基板にキャップをセットしてから、加圧下で加熱して、エポキシ樹脂を硬化させると、パッケージの封止が完成する。硬化は 155~165 ℃に 1.5~2.5 時間加熱して行うことが好ましい。
【0043】本発明のエポキシ樹脂系組成物は、Bステージの状態でかなりの期間貯蔵することができるので、例えば、パッケージ材の製造業者がパッケージ材に本発明のエポキシ樹脂系組成物を塗布し、加熱してBステージ状態にした後、出荷することができる。それにより、パッケージの製造業者は、基板にICチップや水晶振動子を実装した後、加圧下に加熱するだけでパッケージを製造することができるので、煩雑なエポキシ樹脂の塗布作業を省略できるという利点がある。」
「【0044】
【実施例】
実施例1
フェノールノボラック型エポキシ樹脂 (エポキシ当量179)と、表1に示す4種類の他のエポキシ樹脂のいずれか1種とを、エポキシ基濃度がほぼ等しくなるように (即ち、添加量をエポキシ当量で除したエポキシ当量重量がほぼ等しくなるように) 配合し、これに全樹脂固形分に基づいて4%のブチラール樹脂 (ブチラール化度72モル%、残存水酸基量26モル%、残存アセチル基量2.0 モル%、ガラス転移温度約280 ℃) を添加した。この樹脂混合物100 部に対して25部のメチルセロソルブアセテートを溶媒として加え、混合物を90±5℃に30~40分加熱して、樹脂を溶媒中に完全に溶解させた後、25~30℃まで冷却した。
【0045】冷却した樹脂溶液に、硬化剤として、エポキシ樹脂+硬化剤の合計量に基づいてジシアンジアミド5重量%、ジアミノジフェニルメタン4重量%およびトリフェニルホスフィン2.5 重量%を、全樹脂固形分に基づいて2%の無水硅酸 (平均粒子径16 nm 、充填材) および2%のシランカップリング剤 (信越化学社製KBM-403 、濡れ剤) と共に加え、室温で三本ロールにて均一に混合し、エポキシ樹脂系組成物を調製した。
【0046】このエポキシ樹脂系組成物を用いて、図1(A) ~(C) に示すようにして、試験用のパッケージを作製した。まず、図1(A) に示す形状を持つセラミック (アルミナ) 製キャップに、図1(B) に示すように試験する樹脂組成物を塗布した後、80±2℃に3時間加熱して樹脂をBステージ状態にした。その後、図1(C) に示すように、樹脂組成物を塗布したキャップを透明なガラス板に接着し、160 ℃に2時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ、パッケージを作製した。
【0047】図1(A) に示した寸法からわかるように、キャップの肉厚、従って封止幅は、0.7~0.75mmとなる。この試験用パッケージの封止部の耐水透過性を、80℃±2℃の温水中に4日間浸漬した後のガラス面の結露の有無により評価した。試験結果を、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量179)に配合した他のエポキシ樹脂の種類とエポキシ当量とともに次の表1に示す。
【0048】
【表1】
[図:0001419305000009.jpg]
【0049】表1に示すように、ノボラック型エポキシ樹脂に配合するのが、エポキシ当量200 以下のビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合には、耐水透過性が向上し、4日間の温水浸漬でガラス面 (従って、パッケージ内部) に結露を生じなかったが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量が200 より大きくなると耐水透過性の向上効果がなかった。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂では、エポキシ当量が200 以下と小さくても、耐水透過性の向上効果がなかった。
【0050】なお、ノボラック型エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を使用した場合にも、これにエポキシ当量189 のビスフェノールA型エポキシ樹脂を、エポキシ基濃度がほぼ等しくなるように配合し、さらに上記と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を調製することにより、上記の耐水性試験で4日間の温水浸漬後のガラス面に結露を生じない、良好な耐水透過性が得られることを確認した。
【0051】実施例2
エポキシ樹脂として、エポキシ当量179 のフェノールノボラック型エポキシ樹脂と、エポキシ当量189 のビスフェノールA型エポキシ樹脂との配合割合を変えた混合物を使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物の調製および試験用パッケージの作製を行った。
【0052】比較のために、ブチラール樹脂を配合しなかった以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物の調製と試験用のパッケージの作製とを行った。」
イ 甲2-17に記載された発明
甲2-17の請求項3に着目すると、以下の発明が記載されている。
「(A) フェノールノボラック型エポキシ樹脂とエポキシ当量が200 以下のビスフェノールA型エポキシ樹脂とを 1.2:0.8 ~ 0.8:1.2 の重量比で配合したエポキシ樹脂中に、(B) 全樹脂固形分に基づいて2~6重量%のポリビニルブチラール樹脂を含有する、気密封止用エポキシ樹脂系組成物であって、エポキシ樹脂が、硬化剤として、ジシアンジアミド4~6重量%および芳香族ポリアミン3~5重量%、またはジシアンジアミド4~6重量%、芳香族ポリアミン3~5重量%およびトリフェニルホスフィン1~4重量%を含有する、気密封止用エポキシ樹脂系組成物。」(以下、「甲2-17発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明5
本件特許発明5と甲2-17発明とを対比する。
甲2-17発明の「エポキシ当量が200 以下のビスフェノールA型エポキシ樹脂」、「芳香族ポリアミン」は、本件特許発明5の「ビスフェノール型エポキシ樹脂」、「芳香族アミン化合物」に相当する。また、甲2-17発明の「気密封止用エポキシ樹脂系組成物」は、本件特許発明5の「封止樹脂組成物」に相当する
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドを含有し、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、封止樹脂組成物。
<相違点3-5-1>
ジシアンジアミドの含有率が、本件特許発明5は「0.2質量%~0.3質量%」であるのに対し、甲2-17発明は「4~6重量%」である点
<相違点3-5-2>
エポキシ樹脂が、本件特許発明5は「グリシジルアミン型エポキシ樹脂」を含むものであるのに対し、甲2-17発明は当該樹脂を含有するか否か不明である点
<相違点3-5-3>
封止樹脂組成物が、本件特許発明5は「シアン酸エステルを含むものを除く」ものであるのに対し、甲2-17発明はそのようなものであるか否か不明である点
<相違点3-5-4>
封止樹脂組成物が、本件特許発明5は「液状」であるのに対し、甲2-17発明は液状であるのか否か不明である点
そこで上記相違点について検討する。
<相違点3-5-1>について
甲2-17には、ジシアンジアミドの含有量が「4~6重量%」であることしか記載されていない。また、申立人2の提出した他のいずれの証拠にも、エポキシ樹脂の硬化剤として、「芳香族ジアミン」に加え「ジシアンジアミド」を併用した際における「ジシアンジアミド」の含有率を「0.2質量%~0.3質量%」とすることは記載されていない。
したがって、甲2-17発明において、ジシアンジアミドの含有率を「0.2質量%~0.3質量%」とすることは当業者が容易に想到し得たことではない。
そして、本件特許発明5は、金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性に優れる効果を奏するものである。また、本件特許発明5は、表2によれば、耐ブリード性に優れていることが示されている。
よって、本件特許発明5は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2-17発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明7
本件特許発明7と甲2-17発明とを対比すると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドを含有し、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、封止樹脂組成物。
<相違点3-7-1>
ジシアンジアミドの含有率が、本件特許発明7は「0.05質量%~0.3質量%」であるのに対し、甲2-17発明は「4~6重量%」である点
<相違点3-7-2>
エポキシ樹脂が、本件特許発明7は「グリシジルアミン型エポキシ樹脂」を含むものであるのに対し、甲2-17発明は当該樹脂を含有するか否か不明である点
<相違点3-7-3>
封止樹脂組成物が、本件特許発明7は「シアン酸エステルを含むものを除く」ものであるのに対し、甲2-17発明はそのようなものであるか否か不明である点
<相違点3-7-4>
封止樹脂組成物が、本件特許発明7は「液状」であるのに対し、甲2-17発明は液状であるのか否か不明である点
<相違点3-7-5>
前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が、本件特許発明7は「0.5~1.1の範囲内」であるのに対し、甲2-17発明は当該比が不明である点
<相違点3-7-6>
前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が、本件特許発明7は「0.01~0.1の範囲内」あるのに対し、甲2-17発明は当該比が不明である点
そこで上記相違点について検討する。
<相違点3-7-1>について
甲2-17には、ジシアンジアミドの含有量を「4~6重量%」であることしか記載されていない。また、申立人2の提出した他のいずれの証拠にも、エポキシ樹脂の硬化剤として、「芳香族ジアミン」に加え「ジシアンジアミド」を併用した際における「ジシアンジアミド」の含有率を「0.05質量%~0.3質量%」とすることは記載されていない。
したがって、甲2-17発明において、ジシアンジアミドの含有率を「0.05質量%~0.3質量%」とすることは当業者が容易に想到し得たことではない。
そして、本件特許発明7は、金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性に優れ、耐ブリード性に優れる効果を奏するものである。また、本件特許発明7は、表2によれば、耐ブリード性に優れていることが示されている。
よって、本件特許発明7は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2-17発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明9ないし11
本件特許発明9ないし11は、本件特許発明5及び7を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明5及び7の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明5及び7と同様の理由で、本件特許発明9ないし11は、甲2-17発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立理由2-3-2(甲2-17に基づく進歩性)についてのまとめ
したがって、本件特許発明5、7、9ないし11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項5、7、9ないし11に係る特許は、取消理由2-3-2によっては取り消すことはできない。
6 申立理由1-2(サポート要件)及び申立理由2-5(サポート要件)
申立理由1-2及び申立理由2-5は、いずれもサポート要件違反を趣旨とするものであるため、併せて検討する。
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載事項
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「【0015】
<液状封止樹脂組成物(第1実施形態)>
本実施形態の液状封止樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~5.0質量%である。液状封止樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
【0016】
本発明者らの検討により、上記構成を有する液状封止樹脂組成物は、バンプ等の金属部材に対する接着性に優れていることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、金属に対する接着性に優れるアミン化合物を硬化剤として用いることに加え、一定温度以下ではエポキシ樹脂と反応しない潜在性硬化剤としてジシアンジアミドが作用することが考えられる。すなわち、ジシアンジアミドが硬化反応前に金属部材に吸着し、金属部材に吸着している状態でエポキシ樹脂と反応するために、金属部材に対する接着性が向上することが考えられる。さらに、ジシアンジアミドは金属に対する接着性に優れるというアミン化合物の性質を備え、かつ分子量が小さく活性水素密度が大きいため、ジシアンジアミドを用いない場合に比べて接着性が向上すると考えられる。
さらに本発明者らの検討により、上記構成を有する液状封止樹脂組成物は、電子部品表面に設けられるパッシベーション膜に対する接着性に優れていることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、上記と同様に、ジシアンジアミドが硬化反応前にパッシベーション膜に吸着し、パッシベーション膜に吸着している状態でエポキシ樹脂と反応するために、パッシベーション膜に対する接着性が向上することが考えられる。
【0017】
ジシアンジアミドの含有率(液状封止樹脂組成物の全体における含有率)は、0.05質量%~5.0質量%である。ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%以上であることで、芳香族アミン化合物の耐湿接着性能を発揮しつつ、ジシアンジアミドによる接着性の向上効果が充分に発揮される。また、ジシアンジアミドの含有率が5.0質量%以下であることで、他成分との配合バランスが良好に維持される。ジシアンジアミドの含有率は、1.0質量%~4.0質量%であることが好ましく、2.0質量%~3.0質量%であることがより好ましい。」
「【0067】
<液状封止樹脂組成物(第2実施形態)>
本実施形態の液状封止樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、前記エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する前記ジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.01~1.0の範囲内である。液状封止樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
【0068】
本発明者らの検討により、上記構成を有する液状封止樹脂組成物は、バンプ等の金属部材に対する接着性に優れていることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、金属に対する接着性に優れるアミン化合物を硬化剤として用いることに加え、一定温度以下ではエポキシ樹脂と反応しない潜在性硬化剤としてジシアンジアミドが作用することが考えられる。すなわち、ジシアンジアミドが硬化反応前に金属部材に吸着し、金属部材に吸着している状態でエポキシ樹脂と反応するために、金属部材に対する接着性が向上することが考えられる。さらに、ジシアンジアミドは金属に対する接着性に優れるというアミン化合物の性質を備え、かつ分子量が小さく活性水素密度が大きいため、ジシアンジアミドを用いない場合に比べて接着性が向上すると考えられる。
さらに本発明者らの検討により、上記構成を有する液状封止樹脂組成物は、電子部品表面に設けられるパッシベーション膜に対する接着性に優れていることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、上記と同様に、ジシアンジアミドが硬化反応前にパッシベーション膜に吸着し、パッシベーション膜に吸着している状態でエポキシ樹脂と反応するために、パッシベーション膜に対する接着性が向上することが考えられる。
【0069】
本実施形態の液状封止樹脂組成物は、エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~1.1の範囲内であり、エポキシ樹脂のエポキシ基数に対するジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.01~1.0の範囲内である。これらの条件を満たすことで、金属部材又はパッシベーション膜に対する良好な接着性が得られる。
【0070】
エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する芳香族アミン化合物の活性水素数の比は、0.6~1.0の範囲内にあることが好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ基数に対するジシアンジアミドの活性水素数の比は、0.2~0.8の範囲内にあることが好ましく、0.4~0.6の範囲内にあることがより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する芳香族アミン化合物の活性水素数とジシアンジアミドの活性水素数の合計の比は、0.7~1.9の範囲内にあることが好ましく、1.0~1.6の範囲内にあることがより好ましい。
【0071】
ジシアンジアミドの含有率(液状封止樹脂組成物の全体における含有率)は、0.05質量%~5.0質量%であることが好ましい。ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%以上であることで、芳香族アミン化合物の耐湿接着性能を発揮しつつ、ジシアンジアミドによる接着性の向上効果が充分に発揮される。また、ジシアンジアミドの含有率が5.0質量%以下であることで、他成分との配合バランスが良好に維持される。ジシアンジアミドの含有率は、1.0質量%~4.0質量%であることがより好ましく、2.0質量%~3.0質量%であることがさらに好ましい。」
「【0073】
<液状封止樹脂組成物(第3実施形態)>
本実施形態の液状封止樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、ジシアンジアミドと、カップリング剤と、無機充填材と、を含む液状封止樹脂組成物である。液状封止樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
【0074】
本発明者らの検討により、ジシアンジアミドを含有する液状封止樹脂組成物は、耐ブリード性に優れることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、液状封止樹脂組成物に含まれるジシアンジアミドが樹脂成分(エポキシ樹脂及び硬化剤)の硬化速度を速めるように作用し、滲み出し(ブリード)成分が析出する前に液状封止樹脂組成物を硬化させることができるためと考えられる。
【0075】
また、ジシアンジアミドは常温で固形であるため、溶剤を含まないかその含有量が少ない(例えば、溶剤の含有率が液状封止樹脂組成物全体の5質量%以下である)液状封止樹脂組成物の成分として積極的に用いられていないが、本開示ではジシアンジアミドを含有することで、液状封止樹脂組成物が溶剤を含まないかその含有量が少ない場合であっても優れた耐ブリード性を実現している。
【0076】
耐ブリード性向上の観点からは、エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対するジシアンジアミド中の反応性基(活性水素)数の比(ジシアンジアミド中の活性水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、0.01~0.1の範囲内にあることが好ましく、0.02~0.06の範囲内にあることがより好ましく、0.03~0.05の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0077】
液状封止樹脂組成物におけるジシアンジアミドの含有率は特に制限されないが、例えば、液状封止樹脂組成物全体の0.05質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.1質量%~1.5質量%であることがより好ましく、0.1質量%~1.0質量%であることがさらに好ましく、0.1質量%~0.3質量%であることが特に好ましい。」
「【実施例】
【0096】
以下、本開示の液状封止樹脂組成物を実施例によってさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
<実施例1>
以下の成分をそれぞれ表1に示す組成で配合し、三本ロール、次いでらいかい機にて混練分散した後、真空脱泡して、実施例1-1~1-6及び比較例1-1、1-2の液状封止樹脂組成物を調製した。
【0098】
・エポキシ樹脂1-1…ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社、商品名「YDF8170C」)
・エポキシ樹脂1-2…トリグリシジルアミノフェノール(三菱ケミカル株式会社、商品名「jER630」)
・エポキシ樹脂1-3…ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社、商品名「EPICLON HP-4032D」)
【0099】
・芳香族アミン化合物1-1…ジエチルトルエンジアミン(油化シェルエポキシ株式会社、商品名「エピキュア-W」)
・芳香族アミン化合物1-2…3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社、商品名「カヤハードAA」)
・ジシアンジアミド(三菱ケミカル株式会社、商品名「DICY7」)
【0100】
・カップリング剤…3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(JNC株式会社、商品名「サイラエース S510」)
・可とう剤…シリコーンゴム粒子(東レ・ダウコーニング株式会社、商品名「トレフィルEP-2601」
・着色剤…カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社、商品名「MA100」)
・無機充填材…球状シリカ(株式会社アドマテックス、商品名「SE2200」)
【0101】
調製した液状封止樹脂組成物を用いて、下記の接着力試験により接着力の評価を行った。
最初に液状封止樹脂組成物をホットプレート上で120℃で30分プリベークした。次に、被着体である7mm角の銅又は窒化ケイ素の板の上に、直径3mmの穴が開いた高さ1mmのシリコーンゴム板を設置した。110℃の温度下において、上記プリベークした液状封止樹脂組成物をシリンジ(1cm3)を用いて、上記シリコーンゴムの穴に充填した。次いで、オーブンを用いて150℃で2時間加熱することで液状封止樹脂組成物の硬化物を得た。この硬化物と被着体に対する接着性を、ボンドテスター(ノードソン・アドバンスド・テクノロジー株式会社、商品名「Dage 4000-PXY」)を用いて評価した。測定条件は、測定スピードを50μm/sとし、測定高さを50μmとした。3点で測定した値の算術平均値(MPa)を表1に示す。数値が大きいほど、硬化物の被着体に対する接着性が高いと評価できる。
【0102】
【表1】
[図:0001419305000010.jpg]
【0103】
表1に示す結果から、ジシアンジアミドを使用することで液状封止樹脂組成物の銅又は窒化ケイ素に対する接着性が向上することがわかる。
【0104】
<実施例2>
下記成分を表2に示す組成で配合し、三本ロール及び真空らいかい機にて混練分散して、実施例2-1~2-3及び比較例2-1の液状封止樹脂組成物を調製した。
【0105】
・エポキシ樹脂2-1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社、商品名「YDF-8170C」)
・エポキシ樹脂2-2:トリグリシジルアミノフェノール(三菱ケミカル株式会社、商品名:jER630)
【0106】
・硬化剤2-1:ジエチルトルエンジアミン(三菱ケミカル株式会社、商品名「jERキュア-W」)
・硬化剤2-2:2…3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社、商品名「カヤハードAA」)
【0107】
・ジシアンジアミド:三菱ケミカル株式会社、商品名「DICY7」
・カップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社、商品名「KBM-403」)
・無機充填材:平均粒子径0.5μmの球状溶融シリカ(株式会社アドマテックス、商品名「SE2050」)
・着色剤:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社、商品名「MA100」)
【0108】
調製した液状封止樹脂組成物を用いて、下記の試験により耐ブリード性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(1)評価用電子部品装置の作製
液状封止樹脂組成物5mgを、110℃の条件下でディスペンス方式により支持部材(基板)と電子部品(半導体素子)との間の空隙に9回に分けて注入した後、150℃で2時間、空気中で硬化することで間隙を封止し、評価用電子部品装置を作製した。評価用電子部品装置の仕様は以下のとおりである。
【0110】
・半導体素子のサイズ:10mm×10mm×0.2mm
・基板のサイズ:35mm×35mm×1mm厚
・基板(コア)の種類:E-679FG(G)(日立化成株式会社、商品名)
・ソルダーレジストの種類:SR-1(太陽インキ製造株式会社、商品名)
・基板と半導体素子との間のギャップ:50μm
【0111】
(2)滲み出し(ブリード)長さの測定
評価用電子部品装置の基板における、液状封止樹脂組成物の硬化物であるフィレットの末端が基板の表面と接する部分の近傍を、マイクロスコープ(株式会社キーエンス、商品名「Digital microscope VHX-500」)で観察し、樹脂成分の滲み出し(ブリード)が最も著しい部分の長さを測定した。結果を表2に示す。滲み出し(ブリード)長さが短いほど、耐ブリード性に優れると判断できる。
【0112】
【表2】
[図:0001419305000011.jpg]
【0113】
表2に示すように、液状封止樹脂組成物がジシアンジアミドを含む実施例2-1~2-3は、液状封止樹脂組成物がジシアンジアミドを含まない比較例2-1に比べて滲みだし長さの測定値が小さく、耐ブリード性に優れていることがわかる。また、ジシアンジアミドの含有率が液状封止樹脂組成物全体の0.2質量%である実施例2-1は、比較例2-1に比べて滲み出し長さが顕著に小さく、耐ブリード性に特に優れていることがわかる。」
(3)検討
ア 本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0008】等からみて、「金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性に優れる液状封止樹脂組成物、この液状封止樹脂組成物を用いた電子部品装置及びその製造方法」を提供すること(以下、「本件特許発明の課題1」という。)か、又は「耐ブリード性に優れる液状封止樹脂組成物、この液状封止樹脂組成物を用いた電子部品装置及びその製造方法」を提供すること(以下、「本件特許発明の課題2」という。)と認められる。
イ 判断
本件特許明細書の段落【0016】に、「本発明者らの検討により、上記構成を有する液状封止樹脂組成物は、バンプ等の金属部材に対する接着性に優れていることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、金属に対する接着性に優れるアミン化合物を硬化剤として用いることに加え、一定温度以下ではエポキシ樹脂と反応しない潜在性硬化剤としてジシアンジアミドが作用することが考えられる。すなわち、ジシアンジアミドが硬化反応前に金属部材に吸着し、金属部材に吸着している状態でエポキシ樹脂と反応するために、金属部材に対する接着性が向上することが考えられる。さらに、ジシアンジアミドは金属に対する接着性に優れるというアミン化合物の性質を備え、かつ分子量が小さく活性水素密度が大きいため、ジシアンジアミドを用いない場合に比べて接着性が向上すると考えられる。
さらに本発明者らの検討により、上記構成を有する液状封止樹脂組成物は、電子部品表面に設けられるパッシベーション膜に対する接着性に優れていることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、上記と同様に、ジシアンジアミドが硬化反応前にパッシベーション膜に吸着し、パッシベーション膜に吸着している状態でエポキシ樹脂と反応するために、パッシベーション膜に対する接着性が向上することが考えられる。」と、「ジシアンジアミド」により、金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性が向上することの作用機序が記載されている。
そして、実施例において、エポキシ樹脂、芳香族アミン化合物を含み、ジシアンジアミドを含まない比較例1-1のせん断接着力(被着体:銅)が2.9Mpa、せん断接着力(被着体:窒化ケイ素)が12.3Mpaであるのに対し、エポキシ樹脂、芳香族アミン化合物が比較例と同じ組成でジシアンジアミドの含有率が1.0、2.0、3.0質量%とする実施例1-1、1-2、1-3のせん断接着力(被着体:銅)が各々9.3、12.3、23.1Mpa、せん断接着力(被着体:窒化ケイ素)が各々18.9、22.9、26.4Mpaとなり、金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性が向上することが示されている。
そして、ジシアンジアミドの含有量についても、段落【0017】に、「ジシアンジアミドの含有率(液状封止樹脂組成物の全体における含有率)は、0.05質量%~5.0質量%である。ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%以上であることで、芳香族アミン化合物の耐湿接着性能を発揮しつつ、ジシアンジアミドによる接着性の向上効果が充分に発揮される。」ことが記載されている。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明より、「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~5.0質量%である、液状封止樹脂組成物。」である技術的事項により、本件特許発明の課題1が解決し得るものと認められる。
そして、本件件特許発明1及び5は「前記ジシアンジアミドの含有率が0.2質量%~0.3質量%」を発明特定事項とし、本件件特許発明2及び7は「前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~0.3質量%」を発明特定事項とし、上記で示した課題を解決するための具体的手段である上記技術的事項に範囲内のものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題1を解決できるものである。
したがって、本件特許発明1、2、5及び7は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件特許発明1、2、5及び7を直接又は間接的に引用する本件特許発明3、4、6、8ないし11についても同様である。
(4)申立人の主張について
ア 申立人の主張
申立人は、主に以下の主張を行っている。
主張(ア):エポキシ樹脂や芳香族アミン化合物について、何らその種類、配合量が特定されていない点
・「液状封止樹脂組成物において、用いるエポキシ樹脂や芳香族アミン化合物の種類、配合量が変われば接着力、滲み出し易さなどの特性が変わることが技術常識である(例えば、甲第2号証の2など)。
本願明細書の実施例には、エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とトリグリシジルアミノフェノールを必須として所定の配合量で組み合わせて用い、芳香族アミン化合物として特定の2種類の化合物を所定量組み合わせて用いた液状封止樹脂組成物のみが記載されているに過ぎない。
このように、本件特許発明の詳細な説明においては、本件特許発明の出願時の技術常識に照らしても、エポキシ樹脂や芳香族アミン化合物について、何らその種類、配合量が特定されていない場合にまで、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。そのため、本件特許発明の請求項1のように、エポキシ樹脂や芳香族アミン化合物について、何ら種類、配合量を特定しない範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を一般化できるとはいえない。」(申立書1の第82~84ページ)
主張(イ):ジシアンジアミドの含有率全体にわたって、本件特許発明の課題1を解決できていない点
・「実施例1-1~1-6のジシアンジアミドの含有率は1.0~3.0質量%、ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数は0.2~0.6である。
比較例1-1、1-2のジシアンジアミドの含有率は0.0質量%、ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数は0.0である。
さらに、実施例1-4(ジシアンジアミドの含有率1.0質量%)では、せん断接着力(被着体:窒化ケイ素)が11.9MPa(ジシアンジアミドの含有率0.0質量%)で比較例1-1の12.3MPaよりも小さくなっている。
つまり、ジシアンジアミドの含有率が0.0質量%超1.0質量%未満のデータはなく、1.0質量%で「金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性に優れる液状封止樹脂組成物の提供」という本件特許発明が解決しようとする課題を解決できていない。・・・
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものでもないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとも言えない。
むしろ、ジシアンジアミドにより銅箔などの導体回路金属箔との密着性が向上するという技術常識(例えば、甲第5号証の3)に照らせば、ジシアンジアミドの含有率が0.0質量%超1.0質量%で、金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性に優れる液状封止樹脂組成物が提供できるとは認識できないと思料する。」(申立書1の第85~87ページ)
・「本件特許発明5の構成要件Bにおいて特定される数値範囲の下限値(ジシアンジアミドの含有率=0.05質量%)は、上記表Aの第一グループについて検討するとジシアンジアミドの含有率の観点では、実施例1-1よりも比較例1-1に限りなく近い値であるから、本件特許発明5において、ジシアンジアミドの含有率として0.05質量%を選択した場合、比較例1-1と実質同程度の接着力しか得られず、本件特許発明5の課題(優れた接着性)が達成できないことは明かである。そして、この点は第二グループについて検討した場合も同様である。」(申立書2の第58~59ページ)
主張(ウ):本件特許発明により、本件特許発明の課題2を解決できていない点
・「実施例2-1~2-3のジシアンジアミドの含有率は0.2~1.0質量%である。
比較例2-1のジシアンジアミドの含有率は0.0質量%である。
滲み出し(ブリード)長さについて、ジシアンジアミドの含有率と相関はなく、0.2質量%(実施例2-1)と1.0質量%(実施例2-3)の時の差が約200μmで、比較例2-1と実施例2-3の差も約200μmであるため、誤差を含めると有意であるとは言えない。
つまり、ジシアンジアミドの含有率が0.0質量%超0.2質量%未満及び1.0質量%超のデータがなく、0.0質量%超0.2質量%未満及び1.0質量%超で「耐ブリード性に優れる液状封止樹脂組成物の提供」という本件特許発明が解決しようとする課題を解決できることが示されていない。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものでもないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとも言えない。
むしろ、ジシアンジアミドによりブリードを低減できるという技術常識(例えば、甲第3号証の1)に照らせば、ジシアンジアミドの含有率が0.0質量%超0.2質量%未満及び1.0質量%超で、耐ブリード性に優れる液状封止樹脂組成物が提供できるとは認識できないと思料する。」(申立書1の第87~88ページ)
・「優れた耐ブリード性を得ることを課題とする当初請求項3に係る発明(第3実施形態)に関する評価結果について示した本件特許明細書/表2を参照すると、ジシアンジアミドの含有率が0.2質量%において耐ブリード性の評価指標である滲み出し長さが最も改善されている。このことからは、本件特許発明1、2において、ジシアンジアミドの含有率として0.05質量%を選択した場合、優れた耐ブリード性が得られる可能性はあり得ると考えられるため、ジシアンジアミドの含有率を踏まえた課題達成の観点において、本件特許発明1、2と本件特許明細書/表2との間では矛盾・不整合が生じていないと言える余地はある。
しかし、優れた耐ブリード性を得るためには、少なくともエポキシ樹脂、硬化剤およびジシアンジアミドの他に、さらにカップリング剤および無機充填材も組み合わせて用いる必要がある(本件特許明細書(あるいは甲第18号証)/段落0073-0074。また、参考として基礎出願3(甲第15号証)/請求項1-2、段落0007、0014-0017も参照されたし)。これに対して、本件特許発明1、2はカップリング剤および無機充填材を必須成分として用いるものでは無いから、優れた耐ブリード性を得るために必要な成分が明かに欠落している。」(申立書2の第57ページ)
イ 申立人の主張の検討
(ア)主張(ア)について
上記(3)イで説示したように、「エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、ジシアンジアミドと、を含有し、前記ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%~5.0質量%である、液状封止樹脂組成物。」である技術的事項により、本件特許発明の課題である「金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性に優れる液状封止樹脂組成物を提供すること」が解決し得るものと認められる。
そして、申立人1は、「用いるエポキシ樹脂や芳香族アミン化合物の種類、配合量が変われば接着力、滲み出し易さなどの特性が変わる」と化学分野における一般的な技術的事項を述べるにとどまり、実験成績証明書等の具体的な証拠をもって、本件特許発明が本件特許発明の課題を解決し得ないことを立証していない。また、申立人1が上記主張の根拠とする甲1-2の2を参酌しても、用いるエポキシ樹脂や芳香族アミン化合物の種類等が異なることで接着力、滲み出し易さが異なることは具体的に示されていない。
したがって、申立人1の上記主張は首肯できない。
(イ)主張(イ)について
申立人1が主張するように、ジシアンジアミドの含有率が0.0質量%超1.0質量%未満のデータはない。しかしながら、上記(3)イで説示したように、本件特許明細書には、「ジシアンジアミド」により、金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性が向上することの作用機序が記載されている。また、申立人1が提出した証拠、例えば甲1-5の3の段落【0012】に「ジシアンジアミドをエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移点が高くなる。また、ジシアンジアミドに窒素原子が含まれるため、銅箔などの導体回路金属箔との密着性が向上する。」と記載され、甲1-5の7の段落【0020】に「ジシアンジアミド(c2)は前記芳香族アミン(c1)とともに硬化剤(c)として使用するものである。ジシアンジアミド(c2)は安価であり、金属に対する接着力と潜在性に優れているため、特に一液型エポキシ系接着剤用硬化剤や、紙/エポキシあるいはガラス/エポキシ製プリント積層板用硬化剤として賞用されている。」と記載されているように、「ジシアンジアミド」により、金属部材に対する接着性が向上することは一般的に知られていたのであるから、「ジシアンジアミド」を配合することにより、ジシアンジアミドを配合しないものに比べて、少なからず金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性が向上することを当業者は理解するものである。
そして、申立人1及び申立人2は、実験成績証明書等の具体的な証拠をもって、本件特許発明が本件特許発明の課題を解決し得ないことを立証していない。
したがって、申立人1及び申立人2の上記主張は首肯できない。
(ウ)主張(ウ)について
上記(3)アで示したように、本件特許発明の課題は、本件特許発明の課題1か本件特許発明の課題2のいずれかであって、本件特許発明により、いずれかの課題が解決できれば良いものである。
そして、上記(3)イで説示したように、本件特許発明1、2、5及び7は本件特許発明の課題1を解決できるものである。
したがって、申立人1及び2の上記主張は首肯できない。
(5)申立理由1-2(サポート要件)及び申立理由2-5(サポート要件)についてのまとめ
よって、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由1-2及び申立理由2-5によっては取り消すことはできない。
7 申立理由1-3(実施可能要件)
(1)実施可能要件の判断基準
実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、方法の発明の場合には、その方法を使用することができる程度の記載があるか、物の発明の場合には、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
(2)検討
本件特許明細書の【実施例】において、下記の材料を使用した液状封止樹脂組成物において、エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する芳香族アミン化合物の活性水素数の比を1.0、ジシアンジアミドの含有率を各々1.0、2.0、3.0質量%、エポキシ樹脂のエポキシ基数に対するジシアンジアミドの活性水素数の比を各々0.2、0.4、0.6とする実施例1-1、1-2、1-3のせん断接着力(被着体:銅)が各々9.3、12.3、23.1Mpa、せん断接着力(被着体:窒化ケイ素)が各々18.9、22.9、26.4Mpaとなり、金属部材及びパッシベーション膜に対する接着性が向上することが示されている。
「・エポキシ樹脂1-1…ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社、商品名「YDF8170C」)
・エポキシ樹脂1-2…トリグリシジルアミノフェノール(三菱ケミカル株式会社、商品名「jER630」)
・エポキシ樹脂1-3…ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社、商品名「EPICLON HP-4032D」)
・芳香族アミン化合物1-1…ジエチルトルエンジアミン(油化シェルエポキシ株式会社、商品名「エピキュア-W」)
・芳香族アミン化合物1-2…3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社、商品名「カヤハードAA」)
・ジシアンジアミド(三菱ケミカル株式会社、商品名「DICY7」)」
そして、本件特許明細書の段落【0018】~【0024】には、使用し得るエポキシ樹脂について特に制限されず、具体例が記載されており、特に段落【0021】において、「エポキシ樹脂のなかでも、流動性の観点からはビスフェノール型エポキシ樹脂(より好ましくはビスフェノールF型エポキシ樹脂)が好適であり、耐熱性、接着性及び流動性の観点からはグリシジルアミン型エポキシ樹脂(より好ましくはトリグリシジルアミノフェノール)が好適である。」と記載されている。また、同段落【0025】~【0031】には、使用し得る芳香族アミン化合物について特に制限されず、具体例が記載されており、段落【0028】には、「芳香族アミン化合物のなかでも、保存安定性の観点からは3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンが好適である。」ことが記載されている。
また、ジシアンジアミドの含有率について、段落【0017】に、「ジシアンジアミドの含有率(液状封止樹脂組成物の全体における含有率)は、0.05質量%~5.0質量%である。ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%以上であることで、芳香族アミン化合物の耐湿接着性能を発揮しつつ、ジシアンジアミドによる接着性の向上効果が充分に発揮される。」ことが記載され、エポキシ樹脂のエポキシ基数に対するジシアンジアミドの活性水素数の比について、段落【0034】には、「エポキシ樹脂のエポキシ基数に対するジシアンジアミドの活性水素数の比(ジシアンジアミドの活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)は、0.01~1.0の範囲内にあることが好ましく、0.2~0.8の範囲内にあることがより好ましく、0.4~0.6の範囲内にあることがさらに好ましい。」ことが記載され、エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する芳香族アミン化合物の活性水素数の比について、段落【0031】に「エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する芳香族アミン化合物の活性水素数の比(芳香族アミン化合物の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)は、0.5~1.1の範囲内にあることが好ましく、0.55~0.9の範囲内にあることがより好ましく、0.6~0.7の範囲内にあることがさらに好ましい。」ことが記載されている。
そうすると、当業者は、実施例のみでなく、実施例以外の本件特許発明1、2、5及び7に係る液状封止樹脂組成物、及び当該液状封止樹脂組成物を用いて封止する電子部品装置についても、実施例を基に発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を参酌し、配合量等を適宜調整しながら、当業者が過度の試行錯誤を要することなく製造することができるものと認められる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1、2、5及び7、並びにそれらを直接又は間接的に引用する本件特許発明3、4、6、8ないし11を実施することができる程度の記載があるものと認められる。
(3)申立人の主張の検討
申立人1は、以下の主張を行っている。
「本件特許明細書の実施例では、エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とトリグリシジルアミノフェノールを必須として所定の配合量で組み合わせて用い、芳香族アミン化合物として、ジエチルトルエンジアミンと3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンの2種類の化合物を所定量組み合わせて用いた液状封止樹脂組成物のみが記載されているに過ぎない。・・・
ここで、液状封止樹脂組成物において、用いるエポキシ樹脂や芳香族アミン化合物の種類、配合量が変われば接着力、滲み出し易さなどの特性が変わることが技術常識である(例えば、甲第2号証の2など)。
してみると、請求項1の「(1A)エポキシ樹脂」、「(1B)芳香族アミン化合物」として、無数に存在する化合物の中から如何なる物質を用いればよいのか、合理的に推測することは困難であり、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を要するものと思料する。」(申立書1の第88~91ページ)
そこで、上記主張について検討する。
上記(2)で説示したように、エポキシ樹脂や芳香族アミン化合物の種類を変更する際には、実際例を基に発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を参酌し、その配合量を適宜調整しながら、当業者が過度の試行錯誤を要することなく製造することができるものと認められる。
なお、実施可能要件の充足性は、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、物の発明の場合には、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるかどうかであるから、エポキシ樹脂や芳香族アミン化合物の種類を変更した場合に、接着力や滲み出し易さの程度が変化したとしても、本件特許発明に係る液状封止樹脂組成物自体を製造及び使用できることには疑いの余地がない。
また、申立人1は、「用いるエポキシ樹脂や芳香族アミン化合物の種類、配合量が変われば接着力、滲み出し易さなどの特性が変わる」と化学分野における一般的な技術的事項を述べるにとどまり、実験成績証明書等の具体的な証拠をもって、本件特許発明が当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を要することを立証していない。
したがって、申立人1の上記主張は首肯できない。
(4)申立理由1-3(実施可能要件)についてのまとめ
よって、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由1-3によっては取り消すことはできない。
8 申立理由2-4(新規事項の追加)
(1)新規事項の追加の判断基準
新規事項の追加について、「「明細書又は図面に記載した事項」とは、技術的思想の高度の創作である発明について、特許権による独占を得る前提として、第三者に対して開示されるものであるから、ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ、「明細書又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。」(知財高判平20.5.30、平18(行ケ)第10563号)と判示されている。
(2)申立人の主張
申立人2は、申立書2において、「本件特許発明1、2は、これら発明を特定する個々の事項について当初明細書中に形式的・表面的な開示があるものに過ぎず、これら発明を特定する個々の事項の全てを組み合わせたものについては、本件特許明細書/段落0008に開示される課題(優れた接着性あるいは耐ブリード性)との関係で明らかに技術的整合性に欠けるあるいは技術的矛盾があるから、課題達成のために何某かの一貫性・一体性のある技術的思想を有する発明には該当しない(なお、特許法第2条第1項には、『「発明」とは、自然法則を利用した“技術的思想”の創作のうち高度のものを言う』と定義されている点にも留意されたし)。言い換えれば、本件特許発明1、2は、“技術的思想”として当初明細書中には何ら開示・示唆されていない。
ゆえに、本件特許発明1、2について審査においてなされた補正(すなわち当初請求項1、2を当初請求項5等で限定する補正)は、当初明細書等に記載した事項に対して実質的に新たな技術的事項を導入する」旨主張している(第55~58ページ)。
(3)検討
そこで、本件特許発明1、2が本件特許の願書に最初に添付された特許明細書 (以下、「当初明細書」という。)に記載されたものであるか、上記判断基準に沿って検討する。
本件特許発明1、2について審査においてなされた補正(すなわち当初請求項1、2を当初請求項5等で限定する補正)とは、令和4年5月16日の補正により、ジシアンジアミドの含有率について、「0.05質量%~5.0質量%」から「0.05質量%~2.0質量%」に変更されたものである。
ジシアンジアミドの含有率について、当初明細書の段落【0017】及び【0071】に、「ジシアンジアミドの含有率(液状封止樹脂組成物の全体における含有率)は、0.05質量%~5.0質量%である。ジシアンジアミドの含有率が0.05質量%以上であることで、芳香族アミン化合物の耐湿接着性能を発揮しつつ、ジシアンジアミドによる接着性の向上効果が充分に発揮される。」ことが記載されている。すなわち、訂正前の本件特許発明1及び2のジシアンジアミドの含有率が「0.05質量%~2.0質量%」という範囲は、当初明細書の「0.05質量%~5.0質量%」という範囲内のものであって、新たな技術的事項を伴うものではない。。
したがって、令和4年5月16日に提出された手続補正書による補正は、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、特段、新たな技術的事項を導入するものでもない。
(4)申立理由2-4(新規事項の追加)についてのまとめ
よって、令和4年5月16日付け手続補正書でした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないとはいえないから、本件特許の請求項1、2、及びそれらを直接的又は間接的に引用する請求項3ないし4、6、8ないし11に係る特許は申立理由2-4によっては取り消すことはできない。
第6 むすび
上記第5のとおり、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、当審において通知した取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700317