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特許異議申立

2022-700540

ウレタン樹脂組成物

審判番号
2022-700540
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-165958
登録番号
6985002
請求日
2022年06月17日
審決日
2023年09月11日
公報発行日
2023年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】積水化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】田口 昌浩
  • 【異議申立人】和栗 由莉菜
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 小出 直也
分類
P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G) / P1651.55 -YAA(C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6985002号発明「ウレタン樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6985002号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 特許第6985002号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6985002号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成28年8月26日に出願された特願2016-165958号に係る出願であって、令和3年11月29日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年12月22に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年6月17日に特許異議申立人 和栗 由莉菜(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 その後、令和4年9月26日付けで取消理由通知が通知され、同年11月18日付けで特許権者 積水化学工業株式会社(以下、「特許権者」という。)により訂正請求がされると共に意見書、さらに同年12月12日に訂正請求書の手続補正書が提出され、同年同月15日付けで特許法第120条の5第5項の通知がされた後に、令和5年1月18日付けで申立人により意見書が提出され、令和5年3月17日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され、同年5月18日付けで特許権者により意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年11月18日付けの本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 本件特許明細書の段落【0149】に記載された「ポリイソシアネート(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200、4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)」を「ポリイソシアネート」に訂正する。 (2)明細書の訂正と関係する請求項について 実施例が請求項1の具体例であること、請求項1ないし7が一群の請求項であることから、明細書の訂正である訂正事項1は、前記明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて請求されたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1の訂正について 申立人の提出した甲第4号証の2である特表2018-502960号公報の段落【0042】には、ポリウレタン発泡体の原料であるポリイソシアネートとして、「ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(PM-200 (Wanhua、煙台)」が使用されていることが記載されている。「ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート」は、ポリメリックMDIあるいはクルードMDIと呼ばれるものである。一方、本件明細書の段落【0149】に記載された「4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート」は、モノメリックMDIと呼ばれるものであり、一般にポリメリックMDIから蒸留乃至は晶析により分離されることにより得られるものである(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8B%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%83%88 参照)。 すなわち、「4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート」と「ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート」とは異なる化合物質である。そうすると、本件特許明細書の段落【0149】の「万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200」なるポリイソシアネートが、「4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート」なのか「ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート」なのか不明となっている。 そうすると、訂正事項1による訂正は、本件特許明細書の段落【0149】に記載された「ポリイソシアネート」の「(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200、4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)」の明瞭でない記載を削除するものである。 よって、訂正事項1の訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項1の訂正は、願書に最初に添付された明細書の記載に戻すものであるから、新たな技術的事項を導入するものともいえない。さらに、請求項1ないし7は、「ポリイソシアネート化合物」についてその化学構造を特定するものではなく、また、「ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート」も「4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート」も本件明細書の段落【0047】に「ポリイソシアネート化合物」として例示されていたことも踏まえると、訂正事項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。 よって、訂正事項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 申立人の主張について 申立人は、令和5年1月18日に提出した意見書において、以下の主張をしている。 ・主張ア 「明瞭でない記載の釈明」とは、本件明細書、本件特許請求の範囲中のそれ自体意味の不明瞭な記載の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることですから、本件明細書に明瞭でない記載が存在することが必要です。しかしながら、上述したように本件明細書の「(2)ポリイソシアネート万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート」の記載自体は明瞭ですから、本件訂正は、明瞭でない記載の釈明という目的には該当しません。」 ・主張イ 「本件明細書の実施例に記載されている「(2)ポリイソシアネート(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)」を「(2)ポリイソシアネート」とする訂正は、実施例の「PM200」をポリイソシアネート化合物全般に拡張するものあり、実施例にどのようなポリイソシアネート化合物が用いられているかは、特許請求の範囲の「ポリイソシアネート化合物」の解釈に影態を与えるものであります。」 そこで上記主張について検討する。 ・主張アについて 上記2で述べたように、本件特許明細書の段落【0149】の「万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200」なるポリイソシアネートが、「4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート」なのか「ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート」なのか不明であった。そのため、訂正事項1による訂正は、それ自体意味の不明瞭な記載の不備を訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 よって、申立人の主張アは首肯できない。 ・主張イについて 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1は、「ポリイソシアネート化合物」について、それ以上の特定はされていない。そして、実施例にどのようなポリイソシアネート化合物が用いられているかにより、特許請求の範囲の「ポリイソシアネート化合物」の解釈に影響を及ぼすものではない。 よって、申立人の主張イは首肯できない。 4 むすび 以上のとおり、訂正事項1による本件特許明細書の段落【0149】に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第4ないし6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし7を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール溶液組成物であって、ポリオール、発泡剤、整泡剤、三量化金属触媒及び樹脂化金属触媒を含有し、 前記発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含有し、 前記三量化金属触媒としてオクチル酸カリウムを含有し、 前記樹脂化金属触媒として、ビスマスの有機酸金属塩を含有し、 前記樹脂化金属触媒重量部数に対する前記三量化金属触媒重量部数が13以上25以下であることを特徴とするポリオール溶液組成物。 【請求項2】 ハイドロフルオロオレフィンが(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである、請求項1に記載のポリオール溶液組成物。 【請求項3】 請求項1又は2に記載のポリオール溶液組成物及びポリイソシアネート化合物を分離して含む、発泡性ポリウレタンプレミックス組成物。 【請求項4】 請求項1又は2に記載のポリオール溶液組成物とポリイソシアネート化合物との混合物であることを特徴とする発泡性ポリウレタン組成物。 【請求項5】 イソシアネートインデックスが250以上であることを特徴とする請求項4に記載の発泡性ポリウレタン組成物。 【請求項6】 請求項5に記載の発泡性ポリウレタン組成物が硬化したポリウレタン発泡体。 【請求項7】 成形体であることを特徴とする請求項6に記載のポリウレタン発泡体。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由・証拠、取消理由(決定の予告)の概要及び特許権者の提出した証拠 1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年6月17日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(新規事項) 令和3年3月30日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下の通り。 「本特許権者は、令和3年3月30日付で審判請求書と同時に提出した手続補正書によって、本願の発明の詳細な説明における段落0149には「(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート」という文言が追加された。・・・しかし・・・当業者は出願時の技術常識に照らしても「PM200」が「万華化学ジャパン株式会社製」の「4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート」であることを直ちに理解できない。」。」(申立書の第19~20ページ) (3)申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下の通り。 「特許請求の範囲の請求項5の発明におけるイソシアネートインデックスについて、発明の詳細な説明の段落0053に計算式が記載されている。しかし、同段落0141~0155に記載された実施例には、使用したイソシアネートについて同段落0155の表1に「PM200」としか記載されておらず、これがどのようなものであるかも、そのイソシアネート当量数も一切記載されていないから、同段落0053の式に従ったとしてもイソシアネートインデックスを算出できない。上述のように「PM-200」についてした補正は、いわゆる新規事項の追加であるから認められない。従って、請求項5の発明を実施するにあたってどのようなイソシアネートを用いるのかということを当業者が理解できない」(申立書の第20ページ) (4)申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下の通り。 「請求項1に記載されている「ハイドロフルオレフィン」としては、発明の詳細な説明の段落0068に「(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン」が例示されているのみである。 ところで、発泡剤として用いられているハロゲン化ヒドロオレフィン材料としては、甲第2号証に記載されているように「HFO1336mzz ((Z)-1, 1, 1, 4, 4, 4-hexafluorobut-2-ene)」に代表される「塩素成分を含有しないハロゲン化ヒドロオレフィン材料」である「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」と「HCFO1233zd((E)-1-Chrolo-3, 3, 3-trifloroprop-1-ene)」に代表される「塩素成分を含有するハロゲン化ヒドロオレフィン材料」である「ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)」とが存在し、両者は明確に区別されている。同様に、甲第5号証においても、「HFO-1234ze(1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)」等を示す「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」と「HCFO-1233zd(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)」等を示す「ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)」とで明確に区別されている。 このことから、請求項1に記載された「ハイドロフルオロオレフィン」は、「塩素成分を含有しないハロゲン化ヒドロオレフィン材料」である「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」のことである。 しかしながら、その発明の詳細な説明には、段落0068に「ハイドロフルオロオレフィン」として「(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン」が例示されているのみであり、「塩素成分を含有しないハロゲン化ヒドロオレフィン材料」である「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」については全く記載されていない。・・・ 請求項2は、「ハイドロフルオロオレフィンが(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである」ことが記載されている。 しかし、その発明の詳細な説明の実施例で用いた発泡剤は、段落0146に単に「(HFO」としか記載されていない。また、発泡剤である「(HFO」は上述したように「塩素成分を含有しないハロゲン化ヒドロオレフィン材料」である「ハイドロフルオロオレフィン」のことであるから、請求項2には、実施例でサポートされていない発泡剤が記載されている。」(申立書の第20~21ページ) 2 申立人の提出した証拠方法 (1)申立書に添付して提出された証拠 甲第1号証:国際公開2015/130939号 甲第1号証の2:特表2017-508043号公報 甲第2号証:ニチアス技術時報 2014年1号 No.364 第1~8頁 甲第3号証:特開2016-29180号公報 甲第4号証:国際公開2016/115751号 甲第4号証の2:特表2018-502960号公報 甲第5号証:特許第5416086号公報 (2)令和5年1月18日提出の意見書に添付して提出された証拠 甲第6号証:知財高裁、平成28年(行ケ)第10154号判決 複写 以下、「甲第1号証」等を、順に「甲1」等という。 3 取消理由(決定の予告)の概要 令和5年3月17日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。 ・取消理由A(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・取消理由B(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・取消理由C(甲1に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明及び甲2、甲3の技術的知見に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 特許権者の提出した証拠 特許権者は、令和5年5月18日付けで提出した意見書に添付して、以下の証拠を提出している。 乙第1号証:「設計図書「断熱材」吹付け硬質ウレタンフォーム 仕様見直しのお願い」、ウレタンフォーム工業会、2019年2月6日、ウェブページ打ち出し http://www.urethane-jp.org/manual/%E6%96%AD%E7%86%B1%E6%9D%90%E4%BB%95%E6%A7%98%E8%A6%8B%E7%9B%B4%E3%81%97%E3%81%AE%E3%81%8A%E9%A1%98%E3%81%84.pdf 乙第2号証:揖斐敏夫(編集兼発行人) 「JIS A9526 建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム」、一般財団法人 日本規格協会発行、平成27年12月21日(第一刷)、目次、まえがき、1~20頁、裏付け 乙第3号証:Honeywell 「SOLSTICE○R(当審注:丸囲みのRを表す。) LIQID BLOWING AGENT Technical Information」、2022年2月、及びその部分日本語翻訳 https://sustainabi1ity.honeywel1.com/content/dam/sustainability/en/documents/document-lists/technical/Solstice-LBA-Technical-Document.pdf 以下、「乙第1号証」等を、順に「乙1」等という。 第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断 1 取消理由A(サポート要件)及び申立理由4(サポート要件)について 申立理由4は、サポート要件に関するものであるから、取消理由A(サポート要件)と併せて検討する。 (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書の発明の詳細の記載には、おもに次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ウレタン発泡体に不燃性を付与する方法として、イソシアヌレート生成率を高めることが知られている。イソシアヌレート比率を高めるには、例えば、三量化触媒を用いる。触媒としては、他にウレタン生成を促進するための樹脂化触媒がある。一般的にウレタン硬化は、樹脂化>三量化の順に反応する。樹脂化と三量化との活性に大きな差があると発泡が2段階になる。2段発泡になると、セル形成が乱れて、接着性や断熱性などに影響を及ぼす。そのため、三量化触媒と樹脂化触媒との量比のバランスが発泡形成に重要である。 【0006】 一方、発泡剤として、従前ハイドロフルオロカーボン類(HFC)が広く使われていたが、HFCは2020年以降法的に使用が禁止される。そこで、HFCの代替として地球温暖化係数(GWP)の低いハイドロフルオロオレフィン類(HFO)への切替が進んでいる。 【0007】 しかし、HFOは前記触媒による分解性が課題となっており、HFOと触媒との分解反応を抑制しつつ良好な発泡体形成を両立できる組成は知られていなかった。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本願発明者らは、上記の目的を達成すべく種々検討したところ、樹脂化触媒として樹脂化金属触媒を用い、三量化触媒として三量化金属触媒を用い、樹脂化金属触媒部数に対する三量化金属触媒部数の比が2.5以上であれば上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。」 「【0051】 本発明の組成物において、イソシアネートインデックスが250以上であることが好ましく、260以上700以下であることがより好ましく、280以上600以下更に好ましく、300以上500以下であることが最も好ましい。 【0052】 イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。 【0053】 INDEX=イソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100 ここで、 イソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用部数×NCO含有率(%)÷100/NCOの分子量、 ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mg KOH/g)、 水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量 である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート化合物中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。」 「【0054】 3.触媒 本発明の組成物は、触媒として樹脂化金属触媒及び三量化金属触媒を含む。 【0055】 樹脂化触媒とは、ポリオール等とイソシアネートとの反応を促進する触媒である。樹脂化アミン触媒とは樹脂化触媒の中で、アミン構造を有する触媒であり、樹脂化金属触媒とは樹脂化触媒の中で、金属または金属塩を有する触媒である。 【0056】 三量化触媒とは、イソシアネートが互いに反応することでイソシアヌレートの生成を促進する触媒である。三量化アミン触媒とは三量化触媒の中で、アンモニウム塩を有する触媒であり、三量化金属触媒とは三量化触媒の中で、金属または金属塩を有する触媒である。 【0057】 樹脂化金属触媒としては、鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる金属塩が挙げられ、好ましくは鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる有機酸金属塩であり、より好ましくはジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫バーサテート、ビスマストリオクテート、ジオクチル酸スズ、ジオクチル酸鉛である。 【0058】 三量化金属触媒としては有機酸カリウムが挙げられ、好ましくはオクチル酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ブタン酸カリウム、安息香酸カリウムなどの炭素数2~8のカルボン酸カリウムである。 【0059】 本発明の組成物は、触媒として、さらに樹脂化アミン触媒及び/又は三量化アミン触媒を含んでもよい。 【0060】 樹脂化アミン触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物;トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。 【0061】 三量化アミン触媒としては、3級アミン触媒、例えばアルキル化ポリアルキレンポリアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N-エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、N,N,N’ ,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン、ジアミノビシクロオクタン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、ビス(ジメチルアミノエチル)エ-テル、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-ウンデセン-7等が挙げられる。 【0062】 触媒は一種もしくは二種以上を使用することができる。 【0063】 本発明の組成物において、樹脂化金属触媒重量部数に対する三量化金属触媒重量部数の比が2.5以上であることを特徴とする。好ましくは樹脂化金属触媒重量部数に対する三量化金属触媒重量部数の比は2.5以上35以下であり、より好ましくは5.0以上25以下であり、さらに好ましくは10以上15以下である。上記下限値以上の場合は樹脂化と三量化との活性に大きな差が生まれず、発泡が2段階になることを抑制できる。上記上限値以下の場合は樹脂化反応が活性に進行することで、樹脂化反応熱によって三量化の活性を助けることができ、良好な発泡体を形成することができる。 【0064】 本発明の組成物における樹脂化金属触媒の含有量は、ポリオール100重量部に対して、0.13重量部~7.5重量部の範囲であることが好ましく、0.25重量部~3.8重量部の範囲であることがより好ましく、0.4重量部~1.2重量部の範囲であることが更に好ましく、0.5重量部~1.0重量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100重量部に対して、0.05重量部~2.0重量部の範囲とすることができ、0.1重量部~1.0重量部の範囲であることがより好ましく、0.15重量部~0.30重量部の範囲であることが更に好ましい。上記下限値以上の場合は樹脂化反応が活性に進行することで、樹脂化反応熱によって三量化の活性を助けることができ、良好な発泡体を形成することができる。上記上限値以下の場合は樹脂化と三量化との活性に大きな差が生まれず、発泡が2段階になることを抑制できる。 【0065】 本発明の組成物における三量化金属触媒の含有量は、ポリオール100重量部に対して、1.3重量部~25.0重量部の範囲であることが好ましく、2.5重量部~20.0重量部の範囲であることがより好ましく、4.0重量部~14.0重量部の範囲であることが更に好ましく、5.5重量部~10.0重量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100重量部に対して、0.5重量部~6.5重量部の範囲とすることができ、1.0重量部~5.0重量部の範囲であることがより好ましく、1.5重量部~3.5重量部の範囲であることが更に好ましい。上記下限値以上の場合は樹脂化と三量化との活性に大きな差が生まれず、発泡が2段階になることを抑制できる。上記上限値以下の場合は樹脂化反応が活性に進行することで、樹脂化反応熱によって三量化の活性を助けることができ、良好な発泡体を形成することができる。」 「【0066】 4.整泡剤 整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。」 「【0069】 5.発泡剤 発泡剤は、ウレタン樹脂の発泡を促進する。発泡剤としては、例えば、水;プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素;ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物;CHF3、CH2F2、CH3F等のフッ素化合物;トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、ジクロロモノフルオロエタン、(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン))等のハイドロクロロフルオロカーボン化合物;HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等のハイドロフルオロカーボン;HFO-1233zd((E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)等のハイドロフルオロオレフィン;ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物、あるいはこれらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。 【0070】 良好な発泡体形成という観点から、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を含むことが好ましい。」 「【実施例】 【0141】 以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例3~8については、参考例という位置づけである。 【0142】 1.発泡性ポリウレタン組成物およびその発泡体の製造 表1に示した配合により、実施例および比較例に係る発泡性ポリウレタン組成物を、(1)ポリオールプレミックスおよび(2)ポリイソシアネートの2つに分けて準備した。なお表中の各成分の詳細は次の通りである。 【0143】 (1)ポリオールプレミックス ・ポリオール p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)。 【0144】 ・整泡剤 ポリアルキレングリコール系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH-193)。 【0145】 ・触媒 三量化アミン触媒(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-TRX) 三量化アミン触媒(サンアプロ株式会社製、製品名:U-CAT 18X) 三量化金属触媒(エアープロダクツ社製、製品名:DABCO K-15) 三量化金属触媒(エアープロダクツ社製、製品名:POLYCAT 46) 樹脂化アミン触媒(サンアプロ株式会社製、製品名:U-CAT 202) 樹脂化アミン触媒(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-TT:N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン) 樹脂化アミン触媒(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-DM70:1,2-ジメチルイミダゾール) 樹脂化金属触媒(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-600、トリス(2-エチルヘキサン酸ビスマス(III)) 樹脂化金属触媒(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-830、ジオクチルスズモノデカネート)。 【0146】 ・発泡剤 水 HFO(ハネウェル社製、製品名:ソルティスLBA)。 【0147】 ・難燃剤 トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP、「TMCPP」という。) 赤リン(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140) ホウ酸亜鉛(早川商事株式会社製、製品名:Firebrake ZB) ウォラストナイト(SiO2・CaO)(キンセイマテック社製、製品名:SH-1250)。 【0148】 下記の表1の配合及びその他発砲剤として水を0.2重量部及びHFOを15.0重量部;難燃剤としてTMCPPを12.0重量部、ノーバエクセル140を8.0重量部、Firebrake ZBを3.0重量部、SH-1250を3.5重量部との配合に従い、(1)ポリオールプレミックスの成分を1000mLポリプロピレンビーカーにはかりとり、25℃、1分間手混ぜで撹拝した。 【0149】 発泡体の形成は以下の手順に従った。(1)ポリオールプレミックスの成分の混練物に対して、(2)ポリイソシアネートを加え、ハンドミキサーで約10秒間擾拝し発泡性ポリウレタン樹脂組成物を作製した。得られた発泡性ポリウレタン樹脂組成物は時間の経過と共に流動性を失い、発泡性ポリウレタン樹脂組成物の発泡体を得た(各成分の割合をウレタン樹脂100重量部に対する重量部で示す)。 【0150】 2.評価 下記の基準により、実施例を評価した。 [HFO/触媒分解性評価] HFOと触媒との分解反応が発生すると、触媒の活性が低下し、発泡挙動に変化が見られる。そこで、ポリオールプレミックスを、60℃、1週間(1w)で加速試験をし、加速試験前後の発泡挙動に差があるかを、タックフリータイムにより評価した。 【0151】 加速試験前後でタックフリータイム変化が3割以上:発泡挙動に変化有り、× 加速試験前後でタックフリータイム変化が3割未満:発泡挙動に変化無し、○。 [発泡形成評価] 一般的にウレタン硬化は、樹脂化>三量化の順に反応する。樹脂化と三量化との活性に大きな差があると発泡が2段階になる。2段発泡になると、セル形成が乱れて、接着性や断熱性などに影響を及ぼす。なぜなら、2段発泡になる発泡の場合、1段階目の発泡で樹脂の硬化がある程度進行し、その後に2段階目の発泡が起き1段階目で形成されたセルが引き伸ばされ、発泡形成終了後には縦長のセル形状となるためである。1段階目の発泡と2段回目の発泡がほぼ同時に起きる発泡の場合に、良好な発泡体形成が達成される。 【0152】 目視により、2段発泡の有無を評価した。2段発泡の場合、発泡による樹脂上昇が一瞬止まり数秒後再び上昇開始する。 【0153】 2段発泡が有り:× 2段発泡が無し:○。 【0154】 結果を表1に示す。 【0155】 【表1】 [図:0001404746000001.jpg] 」 (4)サポート要件の判断 ア 本件特許の発明の詳細な説明の段落【0007】等によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「本件特許発明の課題」という。)は、「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)と触媒との分解反応を抑制しつつ良好な発泡体形成を両立できるポリオール溶液組成物」を提供することである。 イ ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の一般的な記載について見てみる。 段落【0008】に、「本願発明者らは、上記の目的を達成すべく種々検討したところ、樹脂化触媒として樹脂化金属触媒を用い、三量化触媒として三量化金属触媒を用い、樹脂化金属触媒部数に対する三量化金属触媒部数の比が2.5以上であれば上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載され、段落【0063】に「本発明の組成物において、樹脂化金属触媒重量部数に対する三量化金属触媒重量部数の比が2.5以上であることを特徴とする。好ましくは樹脂化金属触媒重量部数に対する三量化金属触媒重量部数の比は2.5以上35以下であり、より好ましくは5.0以上25以下であり、さらに好ましくは10以上15以下である。上記下限値以上の場合は樹脂化と三量化との活性に大きな差が生まれず、発泡が2段階になることを抑制できる。上記上限値以下の場合は樹脂化反応が活性に進行することで、樹脂化反応熱によって三量化の活性を助けることができ、良好な発泡体を形成することができる。」と記載されている。 ウ ついで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例について見てみる。 【実施例】及び【表1】には、「樹脂化触媒として樹脂化金属触媒を用い、三量化触媒として三量化金属触媒を用い」、かつ「樹脂化金属触媒重量部数に対する三量化金属触媒重量部数の比」が13である実施例1~4、7、8、当該比が22.5である実施例5、当該比が29.5である実施例6は、「60℃前後での発砲挙動の変化が無い、すなわちHFOの分解反応を抑制しつつ、2段発泡が無いものとなっている。一方、「樹脂化触媒として樹脂化金属触媒」及び「三量化触媒として三量化金属触媒」を用いない比較例1、「樹脂化触媒として樹脂化金属触媒」を用いるものの、「三量化触媒として三量化金属触媒」を用いない比較例2では、2段発泡が無いものの60℃前後での発砲挙動の変化が有りとなって、HFOの分解反応を抑制できていない。また、「樹脂化触媒として樹脂化金属触媒を用い、三量化触媒として三量化金属触媒を用い」ているものの、「樹脂化金属触媒重量部数に対する三量化金属触媒重量部数の比」が2である比較例3は、2段発泡が有りとなり良好な発泡体形成を両立できていない。この実施例・比較例の結果は、上記本件特許の発明の詳細な説明の一般的な記載を裏付けるものとなっている。 エ そうすると、当業者は、「樹脂化触媒として樹脂化金属触媒を用い、三量化触媒として三量化金属触媒を用い、樹脂化金属触媒部数に対する三量化金属触媒部数の比が2.5以上29.5以下」という特定事項により、本件特許発明の課題を解決できると認識するものである。 オ ところで、本件特許明細書の段落【0059】に、「本発明の組成物は、触媒として、さらに樹脂化アミン触媒及び/又は三量化アミン触媒を含んでもよい。」と記載されている。 そして、ウレタン硬化は、樹脂化>三量化の順に反応するため、組成物中の「すべての三量化触媒」と「すべての樹脂化触媒」との量比のバランスが、発泡形成に影響を及ぼすことは出願時の技術常識である。また、甲3の段落【0003】には、「・・・第三級アミンは、また、ハロゲン含有有機化合物と反応して、第三級アミン触媒の脱活性を生じさせ、重合化プロセスの反応速度の正味の低減をもたらすことが知られている。第三級アミンとハロゲン含有有機化合物との間の反応はハロゲン原子がオレフィン系炭素に結合しているときに、より急速である。というのは、ハロゲン置換オレフィンは第三級アミンによる求核攻撃を受けやすいからである。これにより、第三級アミン触媒の急速な脱活性化が起こり、プレミックスがイソシアネートとの反応のために十分に活性でなくなる。ハロゲン含有化合物との反応による第三級アミンの脱活性化はハロゲン含有脂肪族化合物においても、第四級アンモニウム塩の生成又は脱ハロゲン化水素により起こり、両方の経路により、第三級アミンの脱活性化をもたらすことがある。」と記載されている。 すなわち、甲3の記載より、触媒として第三級アミンを使用し、発泡剤としてハロゲン含有有機化合物を使用すると、両者が反応し、第三級アミンが失活することが把握できる。 そこで、本件特許発明1において、「アミン触媒」を含まれる場合に、本件特許発明の課題が解決し得るものであるか検討する。 カ 触媒及び発泡剤の分解反応が起こると、反応活性が低下し、発泡挙動に変化が見られることとなるが、本件特許発明の課題が解決できるかを判断する基準は、2段発泡が無いことと、タックフリータイム(指触乾燥時間)変化が3割以上あってはならないというものである(本件特許明細書段落【0150】~【0154】)。すなわち、2段発泡が無く、タックフリータイム変化が3割以上とならないような触媒活性が維持できれば本件発明の課題は解決できているといえ、アミン触媒が存在したとしても、触媒活性が上記条件をクリアできれば本件特許発明の課題は解決できているといえることとなる。 そして、金属触媒とアミン触媒が併存する場合、アミン触媒の活性はHFOとの反応によって低下するが、金属触媒の活性はHFOによって低下することはない。つまり、触媒としてアミン触媒のみを含有する場合、アミン触媒の活性はHFOとの反応よって不活性化が進行し、かかる不活性化による影響は無視できないほど大きくなるものの、金属触媒の活性はHFOによって低下することが無いので、アミン触媒に金属触媒を組み合わせることにより、アミン触媒の不活性化の程度を最小限に抑えることができる。 そうすると、本件特許発明1においては、「アミン触媒」を含まれる場合においても、本件特許発明の課題が解決し得るものであるといえる。 キ したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、本件特許発明2ないし7についても同様である。 (5)申立人の主張について 申立人は、申立書の第20~22ページにおいて、第4 1(4)の主張を行っている。 しかしながら、申立人は、単に「その発明の詳細な説明には、段落0068に「ハイドロフルオロオレフィン」として「(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン」が例示されているのみであり、「塩素成分を含有しないハロゲン化ヒドロオレフィン材料」である「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」については全く記載されていない。」と述べるにとどまり、発泡剤として、「塩素成分を含有しないハロゲン化ヒドロオレフィン材料」を使用した場合に、本件特許発明の課題を解決できないことについて、具体的証拠をもって立証しているものではない。 そうすると、発泡剤として、「塩素成分を含有しないハロゲン化ヒドロオレフィン材料」である「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」を包含する本件特許発明1が、本件特許発明の課題を解決できないということまではいえない。 よって、申立人の主張は首肯できない。 (6)取消理由A(サポート要件)2及び申立理由4(サポート要件)についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、当該理由によっては、取り消すことはできない。 2 取消理由B(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。 (2)明確性要件の判断 本件特許発明1は、「発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含有」することが特定されているところ、本件特許発明1を引用する本件特許発明2では、「ハイドロフルオロオレフィンが(E)-1-クロロ-3、3、3-トリフルオロプロペン」であると特定されている。 そして、甲1の段落【0053】には、「・・・FEA‐1100(Formacel(登録商標)1100)等のヒドロフルオロオレフィン(HFO)、HFCO‐1233zd(Solstice(登録商標)LBA)及びHFCO‐1234ze(Solstice(登録商標)GBA)等のヒドロクロロフルオロオレフィン(HFCO)・・・」、甲2には、「・・・注)ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)はHCFCに代表される地球温暖化ガスと同種の誤解を避けるために、HCFCと区別する意図で主鎖に二重結合を含むハイドロカーボンと意図的に表している。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)も同様に地球温暖化ガスであるHFCと区別する意図で主鎖に二重結合を含むハイドロカーボンをHFOと意図的に表している。・・・」(第5頁右欄第19行目~第6頁左欄第6行目)と記載されている。 そうすると、本件特許発明1の「ハイドロフルオロオレフィン」が、「ハイドロクロロフルオロオレフィン(HFCO)」を意図するのか、ハロゲンを含有しない「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」を意図するのか、あるいは、「ハイドロクロロフルオロオレフィン(HFCO)」とハロゲンを含有しない「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」の両者を包含するものを意図するのか、一見不明である。 しかしながら、特許権者の提出した乙2には、以下の事項が記載されている。 「序文 この規格は,1989年に制定され,その後5回の改正を経て今日に至っている。前回の改正は2013年に行われたが,今回はオゾン破壊係数(ODP)が0,かつ,地球温暖化係数(GWP)が50未満である発泡剤ハイドロフルオロオレフィン(HFO)1)を 使用した処方技術が開発されたことを受けて改正した。この発泡剤ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は,フロン類には該当しない。また,技術上重要な改正に関する新旧対照表を,附属書Aに示す。 なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。 注1) ハイドロフルオロオレフィン(HF0)とは,HF0-1233zd, HF0-1336mzzなどをいう。」 そして、本件特許明細書の段落【0069】に、「HFO-1233zd((E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)」と記載されている。 すなわち、「ハイドロクロロフルオロオレフィン(HFCO)」についても、「ハイドロフルオロオレフィン」と表現されていることを勘案すると、本件特許発明1の「ハイドロフルオロオレフィン」とは、「ハイドロクロロフルオロオレフィン(HFCO)」とハロゲンを含有しない「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」の両者を包含するものを意図していると解するのが相当である。 よって、本件特許発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。 また、本件特許発明2ないし7についても同様である。 (3)取消理由B(明確性要件)についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由Bによっては、取り消すことはできない 3 取消理由C(甲1に基づく進歩性)及び申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうち進歩性について 申立理由1のうち、甲1に基づく進歩性は、取消理由C(甲1に基づく進歩性)と同旨であるから、併せて検討する。 (1)証拠等の記載等 ア 甲1の記載事項等 (ア)甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。下記事項は、翻訳のみを示し、段落番号も含め、甲1のパテントファミリーである甲1の2の記載を参考にした。 なお、下線は、当審により付与したものである。以下、同様。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも1種のビスマスカルボキシレート塩と、アルカリ金属カルボキシレート塩及び第四級アンモニウムカルボキシレート塩からなる群から選択される少なくとも1種の要素と、を含む、組成物。 【請求項2】 ビスマスカルボキシレート塩が、構造: 【化1】 [図:0001404746000002.jpg] (式中、R1、R2、R3は、独立してH、C1~C20アルキル若しくはアルケニル基又はフェニル基又は置換フェニル基であり、Mはビスマスであり、nは3である。)を有する、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 ビスマスカルボキシレート塩が、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオクトエート、ビスマスベルサレート、ビスマスナフテネート、及びビスマスピバレートからなる群から選択される少なくとも1種の要素を含む、請求項2に記載の組成物。 【請求項4】 アルカリ金属カルボキシレート塩及び第四級アンモニウムカルボキシレート塩が、構造: 【化2】 [図:0001404746000003.jpg] (R1、R2及びR3はH、C1~C20アルキル若しくはアルケニル基又はフェニル基又は置換フェニル基であり、Mはアルカリ金属由来の金属イオンであり、又はMは構造NR4R5R6R7(式中、R4及びR5及びR6及びR7はC1~C18アルキル若しくはアルケニル基、若しくはフェニル、若しくは置換フェニル、若しくはアルキルフェニルであり、又はR4及びR5及びR6が、C1~C18アルキル若しくはアルケニル基、若しくはフェニル、若しくは置換フェニル、若しくはアルキルフェニルであり、かつ、R7が‐CH2‐CH(OH)‐CH3型の2‐ヒドロキシアルキルである。)を有するテトラアルキルアンモニウムイオンであり、nは1である。)を有する、請求項1に記載の組成物。 【請求項5】 第四級アンモニウムカルボキシレート塩及びアルカリ金属塩が、カリウムピバレート、テトラメチルアンモニウムピバレート、カリウムオクトエート、カリウムアセテート、カリウムアクリレート2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムピバレート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムピバレート、テトラエチルアンモニウムピバレート、テトラプロピルアンモニウムピバレート、テトラブチルアンモニウムピバレート、カリウムトリエチルアセテート、テトラメチルアンモニウムトリエチルアセテート、2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムトリエチルアセテート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムトリエチルアセテート、テトラエチルアンモニウムトリエチルアセテート、テトラプロピルアンモニウムトリエチルアセテート、テトラブチルアンモニウムトリエチルアセテート、カリウムネオヘプタノエート、テトラメチルアンモニウムネオヘプタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムネオヘプタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムネオヘプタノエート、テトラエチルアンモニウムネオヘプタノエート、テトラプロピルアンモニウムネオヘプタノエート、テトラブチルアンモニウムネオヘプタノエート、カリウムネオオクタノエート、テトラメチルアンモニウムネオオクタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムネオオクタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムネオオクタノエート、テトラエチルアンモニウムネオオクタノエート、テトラプロピルアンモニウムネオオクタノエート、テトラブチルアンモニウムネオオクタノエート、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の要素を含む、請求項4に記載の組成物。 【請求項6】 組成物が、スズ化合物を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。 【請求項7】 ビスマスカルボキシレート塩が、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオクトエート、ビスマスベルサレート、ビスマスナフテネート、ビスマスピバレート、ビスマスアセテート、次炭酸ビスマス、及びビスマスシトレートからなる群から選択される少なくとも1種の要素を含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項8】 請求項1に記載の組成物の存在下において、少なくとも1種のポリオールと、少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種の発泡剤とを接触させることを含む、発泡体の製造方法。 【請求項9】 ポリオールが、少なくとも1種のポリエステルポリオールを含む、請求項8に記載の方法。 【請求項10】 イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(「TDI」)、及び4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)からなる群から選択される少なくとも1種の要素を含む、請求項8に記載の方法。 【請求項11】 前記方法が、噴霧、成形、及び積層の群から選択される少なくとも1つの工程を含む、請求項8に記載の方法。 【請求項12】 発泡剤が、水、ヒドロフルオロカーボン、二酸化炭素、ヒドロハロオレフィン及び炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の要素を含む、請求項8に記載の方法。 【請求項13】 さらに、少なくとも1種の第三級アミン触媒を含む、請求項8に記載の方法。 【請求項14】 少なくとも1種のアミン触媒、少なくとも1種の発泡剤、並びに少なくとも1種のビスマスカルボキシレートと、アンモニウムカルボキシレート及びカリウムカルボキシレート塩の少なくとも1種とを含む少なくとも1種のカルボキシレート触媒の存在下において、少なくとも1種のイソシアネートを少なくとも1種のポリオールと接触させることによる、ポリイソシアヌレート発泡体の製造方法。 【請求項15】 請求項8に記載の方法により得られる、発泡体。 【請求項16】 発泡体のR値が、約6.5~約7.5である、請求項15に記載の発泡体。 【請求項17】 発泡体の平均セル直径が、約50~約500ミクロンである、請求項15に記載の発泡体。 【請求項18】 アルカリ金属カルボキシレート又は第四級アンモニウムカルボキシレートと、ビスマスカルボキシレートとのモル比が、10:1~100:1である、請求項1に記載の組成物。 【請求項19】 アルカリ金属カルボキシレート又は第四級アンモニウムカルボキシレートと、ビスマスカルボキシレートとのモル比が、30:1~50:1である、請求項1に記載の組成物。 【請求項20】 少なくとも1種のポリイソシアネートを、プレミックスと接触させることを含み、 該プレミックスが、 少なくとも1種のポリオール、 少なくとも1種の発泡剤、並びに ビスマスネオデカノエート、ビスマスオクトエート、ビスマスベルサレート、ビスマスナフテネート、及びビスマスピバレートの群から選択される少なくとも1種の要素と、 カリウムピバレート、テトラメチルアンモニウムピバレート、カリウムオクトエート、カリウムアセテート、カリウムアクリレート2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムピバレート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムピバレート、テトラエチルアンモニウムピバレート、テトラプロピルアンモニウムピバレート、テトラブチルアンモニウムピバレート、カリウムトリエチルアセテート、テトラメチルアンモニウムトリエチルアセテート、2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムトリエチルアセテート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムトリエチルアセテート、テトラエチルアンモニウムトリエチルアセテート、テトラプロピルアンモニウムトリエチルアセテート、テトラブチルアンモニウムトリエチルアセテート、カリウムネオヘプタノエート、テトラメチルアンモニウムネオヘプタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムネオヘプタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムネオヘプタノエート、テトラエチルアンモニウムネオヘプタノエート、テトラプロピルアンモニウムネオヘプタノエート、テトラブチルアンモニウムネオヘプタノエート、カリウムネオオクタノエート、テトラメチルアンモニウムネオオクタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムネオオクタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムネオオクタノエート、テトラエチルアンモニウムネオオクタノエート、テトラプロピルアンモニウムネオオクタノエート、及びテトラブチルアンモニウムネオオクタノエートからなる群から選択される少なくとも1種の要素と、 の溶液を含む触媒組成物の触媒量 を含む、ポリイソシアヌレート/ポリウレタン発泡体の製造方法。」 「【背景技術】 【0003】 ポリイソシアヌレート及びポリウレタン発泡体、すなわちPUR/PIR発泡体は、構造壁、屋根、冷蔵庫キャビネット、及びガレージの戸等の用途に用いられる。PUR/PIR発泡体考案者及び製造者が直面しているある課題は、発泡体厚みの増加なしでPUR/PIR発泡体のインスレーション性能又は効率を向上させることである。PUR/PIR発泡体のインスレーション効率の向上は、最終的な壁、屋根、又は他の製品のエネルギー効率を向上させ、所望のエネルギー効率を達成するのに最終製品において必要とされるPUR/PIR発泡体をより少なくするため有益である。 【0004】 PUR/PIR発泡体考案者及び製造者が直面している別の課題は、発泡製品の製造の速度を増加させることである。アプリケーション処理の仕様及びPUR/PIR発泡体の製造に用いられる装置にもよるが、発泡製品の製造の速度は、PUR/PIR形成の全硬化時間に依存する。与えられた時間での商業的な生産高を増加させるために、全硬化時間をより短くすることは有益である。」 「【発明の概要】 【0015】 本発明は、少なくとも1種のビスマスカルボキシレート塩と、アルカリ金属系カルボキシレート塩及び第四級アンモニウム系カルボキシレート塩の少なくとも1種又はそれより多くとの組み合わせを含む触媒組成物、並びにポリウレタン発泡体(例えば、PUR/PIRインスレーション発泡体)を製造するための触媒組成物の使用方法を提供することにより、前述の欠点及び問題を解決する。本発明は、従来の触媒系により製造された他の発泡体と比較してより速い硬化プロファイル、増加した製造速度、減少した発泡体セルサイズ、及び増加したR値を含む有益な特性を有する発泡体製品をもたらす。R値は、(ft2・°F・時間/Btu)で報告され、ASTM C518に準拠して、LaserComp Inc.のFox200熱流メーターにより測定される。 【0016】 本発明の別の利益は、触媒組成物が、発泡体が製造される温度にて熱的に安定であり、それによってアミン臭気なしで製品を生産することである。熱的に安定であることにより、少なくとも100℃、少なくとも125℃、及び幾つかの場合において最大150℃の温度にて、触媒が揮発性アミン副生成物(例えば、アンモニア等の窒素の酸化物又は水素化物)に分解せず、ついでそれから逃れ、最終的な発泡体製品に望ましくないアミン臭気を付与しないことを意味する。これらのアミン副生成物は、GC/MS分析により検出することができる。」 「【0037】 本発明の触媒組成物は、少なくとも1種のアルカリ金属系と組み合わせた少なくとも1種のビスマスカルボキシレート塩、又は少なくとも1種の第四級アンモニウム系カルボキシレート塩と組み合わせた少なくとも1種のビスマスカルボキシレート塩を含む。ビスマスカルボキシレート塩とアルカリ金属又は第四級アンモニウム系のカルボキシレート塩とのモル比は、約1~100モルのアルカリ又はアンモニウムカルボキシレートに関して約1モルのビスマスであり、幾つかの場合において、約15~70モルのアルカリ金属又は第四級アンモニウムカルボキシレートに関して約1モルのビスマスであり、幾つかの場合において、25~50モルのアルカリ金属又は第四級アンモニウムカルボキシレートに対して約1モルのビスマスである。20質量%のビスマス金属であるビスマスカルボキシレート触媒組成物は、全樹脂の約0.10質量%~約0.50質量%、約0.15質量%~約0.35質量%、幾つかの場合において、全樹脂の約0.20質量%~約0.30質量%にて用いることができる。約15質量%のカリウムであるアルカリカルボキシレート触媒は、樹脂の約1.0質量%~約5.0質量%、約2.0質量%~約4.5質量%、幾つかの場合において、全樹脂の約2.25質量%~約3.0質量%にて用いることができる。「樹脂の質量」は、ポリイソシアネートを除く発泡体成分の全てを含む樹脂のプレブレンド又はプレミックスを意味し、典型的には「B」と呼ばれる(例えば、B側は、発泡体を製造するために、ポリイソシアネートを含むA側と接触する)。」 「【0047】 触媒組成物の成分は、以下の表に列記されたもの等の1種又はそれより多くの材料と組み合わせることができる。以下の表の製品名は、この詳細な説明及び例において用いられる。触媒組成物の成分は、従来の装置において、適切な質量を幾らかの適切な混合/保有容器へ計量すること、及び均一な混合物が達成されるまで何らかの幾つかの機械的手段を用いて撹拌すること等の任意の適した方法により、混ぜ合わせることができる。 【0048】 【表1】 [図:0001404746000004.jpg] 」 「【0049】 本発明の1つの側面は、発泡体の製造方法に関する。本発明による方法は、発泡体を製造するための従来の装置を用いて実施することができる(例えば、硬質発泡体、成形発泡体、積層発泡体、及び噴霧発泡体)。本発明の触媒組成物の触媒的に有効な量が、少なくとも1種のポリイソシアネート、少なくとも1種のポリエーテル又はポリエステルポリオール、水又は他の適した発泡剤、及びシリコン界面活性剤等のセル安定化剤を含むポリウレタン/ポリイソシアヌレート配合中で用いられる。適したポリイソシアネートの例は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(「TDI」)、及び4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)からなる群から選択される少なくとも1種の要素を含む。特に適しているのは、個々の又はその市販で入手可能な混合物としてまとまる2,4‐及び2,6‐トルエンジイソシアネートである。ジイソシアネートの他の適した混合物は、他の異性体及び類似のより高次のポリイソシアネートと共に、約60%の4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、「ポリマーMDI」として商業的に知られているものである。また、適しているのは、ポリイソシアネート及びポリエーテル及びポリエステルポリオールの部分的に前反応させた混合物を含むこれらのポリイソシアネートの「プレポリマー」である。ポリイソシアネートの量は、典型的には樹脂の約100質量%~約200質量%、樹脂の約115質量%~約170質量%、及び幾つかの場合において樹脂の約120質量%~約150質量%の範囲である。 ・・・ 【0053】 本組成物において用いることのできる発泡剤は、水、メチレンクロリド、アセトン、クロロフルオロカーボン(CFC)、HCFC‐141b(Genetron(登録商標)141bとして市販で入手可能)、HCFC‐22、HCFC‐123等のヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、HFC‐245fa(Enovate(登録商標)3000として市販で入手可能)、HFC‐134a(Formacel(登録商標)Z‐4として市販で入手可能)、HFC‐365mfc(Solkane(登録商標)365mfcとして市販で入手可能)等のヒドロフルオロカーボン、n‐ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン及びその混合物等の炭化水素、FEA‐1100(Formacel(登録商標)1100)等のヒドロフルオロオレフィン(HFO)、HFCO‐1233zd(Solstice(登録商標)LBA)及びHFCO‐1234ze(Solstice(登録商標)GBA)等のヒドロクロロフルオロオレフィン(HFCO)からなる群から選択される少なくとも1種の要素を含むことができる。本発明の1つの側面において、発泡剤は、水、ヒドロフルオロカーボン、二酸化炭素、ヒドロハロオレフィン、及び炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の要素を含む。発泡剤の量は、典型的には樹脂の約5質量%~約25質量%、樹脂の約8質量%~約18質量%、及び幾つかの場合において約樹脂の10質量%~約15質量%の範囲である。 【0054】 望む場合には、本組成物は、少なくとも1種のオルガノポリシロキサン界面活性剤等のセル安定化剤、ハロゲン化有機リン化合物等の難燃剤、及びエチレングリコール及びブタンジオール等の鎖延長剤を含むことができる。前述のものの量は、典型的には樹脂の約0.5質量%~約10質量%、樹脂の約1.0質量%~約8質量%、及び幾つかの場合において樹脂の約1.5質量%~約7質量%の範囲である。」 「【0058】 本発明により得られる発泡体は、電化製品インスレーション(例えば、インスレーション冷蔵庫又は温水器)、構造インスレーション(例えば商業的な又は住居のインスレーションに関する噴霧発泡体又は積層発泡体)、特に知られた使用を含む広範な用途に関して用いることができる。イソシアネートインデックスは、意図された発泡体使用に関して適合させることができ、化学量論計算により決定される。これは、化学量論当量の観点において、Polyurethane Foam Basic Chemistry and Polyurethane Foam Polymerization Reaction(Dow Chemical Co.により「Flexible Polyurethane Foams」において発行)に記載されるように、ポリオール及び任意の他の反応性添加剤との反応に要求されるイソシアネートの量として記述することができる。イソシアネートインデックスは、約100~約400、約120~約300及び幾つかの場合において約150~約250の範囲であることができる。」 「【実施例】 【0068】 例 例1:PIR配合中のコントロール触媒の評価 PIR系の触媒反応性の評価は、フォーマットソーナー上昇速度デバイス(これ以降「ROR」と呼ばれる)により自由上昇コップ発泡体サンプルを用いて実施された。フォーマットデバイスは、配合の全ての成分を混合したすぐ後に、時間(秒(s))に対する発泡体サンプルの上昇の高さ(ミリメートル(mm))を測定し、記録するソーナーセンサを含む。フォーマット標準ソフトウェアは、時間プロットに対する高さと時間プロットに対する速度の両方を生成する。これらのプロットは、異なる触媒配合の相対的な反応性を比較するのに有用である。異なる成分の相対量を含む、フォーマットによるROR測定に関するPIR発泡体サンプルを製造するための1つの適した配合は、以下の表2に記載される。 【0069】 【表3】 [図:0001404746000005.jpg] 【0070】 コントロール実験は、全樹脂ブレンド中の2.25質量%のDabco(登録商標)K15、及び0.50質量%のPolycat(登録商標)46を使用し、これ以降「コントロール」と呼ばれる。各触媒のパーセント量は、ポリオール、難燃剤、界面活性剤、水、アミン触媒、金属触媒、及び発泡剤を含む全樹脂ブレンドの質量パーセントで与えられる。全ての例に関して、ポリオール、難燃剤、界面活性剤、水、アミン触媒、発泡剤、及びイソシアネートの比は一定に維持され、金属又はアンモニウムカルボキシレート触媒のみが変更される。 【0071】 ポリエステルポリオール、トリクロロプロピルホスフェート難燃剤、Dabco(登録商標)DC5585界面活性剤、水、及びn‐ペンタン発泡剤は、Nalgene容器中で混ぜ合わされ、混合物がよくブレンドされてポリオールプレブレンドが製造されるまで手で振とうすることにより撹拌された。Polycat(登録商標)36アミン触媒及びDabco(登録商標)K15及びPolycat(登録商標)46トリマー触媒は、別個のNalgene容器中で混ぜ合わされ、よくブレンドされて触媒プレブレンドが製造されるまで舌圧子により撹拌された。 ・・・ 【0079】 例3:ビスマスカルボキシレートとカリウムカルボキシレートとの本発明の触媒の組み合わせのさらなる評価 全樹脂ブレンドが、2.75質量%のDabco(登録商標)K15(例3a)、2.75質量%の触媒A(例3b)、又は3.30質量%のPolycat(登録商標)46(例3c)を含むように、第一の一連の発泡体は、例1に記載された手順にしたがって製造された。第二の一連の発泡体が、同じ手順で、さらに各々に関して全樹脂ブレンド中において0.25質量%の触媒Dを含んで製造された(例3d、3e、3f)。各発泡体に関する触媒の質量パーセントは、表4に示される。触媒Dが含まれる3種の配合全てに関して、ビスマスとカリウムとのモル比は、1モルのビスマス当たり約40モルのカリウムであった。発泡体が50mm及び300mmの高さに到達する混合後の時間、最大発泡体上昇速度、及びそれが最大速度に到達するのにかかる混合後の時間は、表4に示される。R値は、例1にしたがった成形品により測定された。またR値は、表4に与えられる。 【0080】 表4に示されるように、ビスマスカルボキシレート触媒の添加は、3種の系全てに関して反応性に重大な影響を与えた。各場合において、発泡体が50mm又は300mmの高さに到達するまでの配合の混合後に必要な時間は、少なくとも30%減少し、幾つかの場合において、50%程度であり、ROR装置により測定された発泡体上昇の最大速度は、約40%増加し、反応が最大速度まで進行するのにかかる時間は、約50%減少した。その後、カリウムカルボキシレートとビスマスカルボキシレート触媒との組み合わせにより製造された発泡体サンプルのR値は、約6%~10%増加し、カリウムカルボキシレート触媒とビスマスカルボキシレート触媒との組み合わせを用いて製造された発泡体に関するインスレーション特性の有意の改善を表す。 【0081】 【表5】 [図:0001404746000006.jpg] 」 (イ)甲1発明 甲1に記載された事項について、 甲1の「【請求項20】には、「少なくとも1種のポリイソシアネートを、プレミックスと接触させることを含み、 該プレミックスが、 少なくとも1種のポリオール、 少なくとも1種の発泡剤、並びに ビスマスネオデカノエート、ビスマスオクトエート、ビスマスベルサレート、ビスマスナフテネート、及びビスマスピバレートの群から選択される少なくとも1種の要素と、 カリウムピバレート、テトラメチルアンモニウムピバレート、カリウムオクトエート、カリウムアセテート、カリウムアクリレート2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムピバレート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムピバレート、テトラエチルアンモニウムピバレート、テトラプロピルアンモニウムピバレート、テトラブチルアンモニウムピバレート、カリウムトリエチルアセテート、テトラメチルアンモニウムトリエチルアセテート、2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムトリエチルアセテート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムトリエチルアセテート、テトラエチルアンモニウムトリエチルアセテート、テトラプロピルアンモニウムトリエチルアセテート、テトラブチルアンモニウムトリエチルアセテート、カリウムネオヘプタノエート、テトラメチルアンモニウムネオヘプタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムネオヘプタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムネオヘプタノエート、テトラエチルアンモニウムネオヘプタノエート、テトラプロピルアンモニウムネオヘプタノエート、テトラブチルアンモニウムネオヘプタノエート、カリウムネオオクタノエート、テトラメチルアンモニウムネオオクタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリメチルアンモニウムネオオクタノエート、2‐ヒドロキシルプロピルトリエチルアンモニウムネオオクタノエート、テトラエチルアンモニウムネオオクタノエート、テトラプロピルアンモニウムネオオクタノエート、及びテトラブチルアンモニウムネオオクタノエートからなる群から選択される少なくとも1種の要素と、 の溶液を含む触媒組成物の触媒量 を含む、ポリイソシアヌレート/ポリウレタン発泡体の製造方法。」と記載されているところ、当該製造方法で使用される「プレミックス」についても開示されているといえる。 そして、【表5】の実施例3dには 2.75質量%のDabco(登録商標)K15(カリウムオクトエート(15質量%カリウム)を含む、Air Products, Inc.から市販で入手可能なトリマー触媒)+0.25質量%の触媒D(US6825238に記載された方法にしたがって調整されたビスマスネオデカノエート)(20質量%ビスマス)を含む金属触媒)」の組み合わせが記載され、段落【0079】には、「・・・第一の一連の発泡体は、例1に記載された手順にしたがって製造された。第二の一連の発泡体が、同じ手順で、さらに各々に関して全樹脂ブレンド中において0.25質量%の触媒Dを含んで製造された(例3d、3e、3f)」と記載されている。そして、引用する例1について、段落【0071】に、「ポリエステルポリオール、トリクロロプロピルホスフェート難燃剤、Dabco(登録商標)DC5585界面活性剤、水、及びn‐ペンタン発泡剤は、Nalgene容器中で混ぜ合わされ、混合物がよくブレンドされてポリオールプレブレンドが製造されるまで手で振とうすることにより撹拌された。」と記載されている。 そこで、実施例の例3dを「プレミックス」として整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」のようにいう。)が記載されていると認められる。 「少なくとも1種のポリイソシアネートを、プレミックスと接触させ、ポリイソシアヌレート/ポリウレタン発泡体を製造するためのプレミックスであって、 該プレミックスが、 ポリエステルポリオール、 水、及びn‐ペンタン発泡剤、 2.75質量%のDabco(登録商標)K15(カリウムオクトエート(15質量%カリウム)を含む、Air Products, Inc.から市販で入手可能なトリマー触媒)、 0.25質量%の触媒D(US6825238に記載された方法にしたがって調整されたビスマスネオデカノエート)(20質量%ビスマス)を含む金属触媒) トリクロロプロピルホスフェート難燃剤、 Dabco(登録商標)DC5585界面活性剤(Air Products, Inc.から市販で入手可能なシリコンポリエーテル界面活性剤)、 を含むプレミックス。」 イ 甲2の記載事項 甲2には、硬質ウレタンフォームの発泡剤について、以下の記載がある。 (ア)「2.4 発泡剤の役割 硬質ウレタンフォームの発泡方法としては、発泡剤を反応熱によって気化させる方法が主流であるが、これに使用する発泡剤はそのガスの熱伝導率が小さいことと常温付近に沸点があることが必須要件である。また、それ以外にもウレタン原料に適度な溶解性をもっていること、化学的に安定で毒性がないこと、不燃性であることなど発泡剤が具備すべき特性には多く要求がある。また発泡剤に は、気化する際の蒸発潜熱によりウレタン原料の反応熱による硬質ウレタンフォーム生成時の内部の過剰な発熱を抑制する効果もある。 これらの要求満たす発泡剤の選択肢は非常に少なく、従来クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)のようなフロオロカーボン類が使用されてきた。かつて用いられたCFC-11は前述の要求を満たす優れた発泡剤であり、CFC-11があったがうえに硬質ウレタンフォームが開発され、広く利用されるようになったといえる。(第2ページ右欄2~23行)」 (イ)「表1 硬質ウレタンフォームの主な発泡剤 [図:0001404746000007.jpg] 注1:ODP(Ozone Depletion Potential) オゾン破壊係数。気体のオゾン層破壊能力を表す。CFCを1とした指数。基本的には塩素を含まない物質のODPは0である。 注2:GWP(Global Warming Potential) 地球温暖化係数。気体の地球温暖化能力を示す二酸化炭素を1とした係数。多くの場合、その影響度合を100年間に渡り積分した値が使われる。」(第2ページ表2) (ウ)「3.発泡剤をめぐる環境問題と関連法規 前項で述べてきたように、CFCは優れた発泡剤として利用されてきた。しかし、CFCは化学的に安定であったことがかえって災いし、大気中に拡散して地球の成層圏にまで到達した結果、オゾン層を破壊する環境問題を引き起こしたのは周知の事実となっている。このため、CFCはODPがCFCの10分の1となるHCFCに代替された。 さらに、現在ではODOがゼロのHFCが開発された結果、HFC-245faおよびHFC-365mfcが硬質ウレタンフォームの主要な発泡剤となっている。CFCがHFCに置き換わったことで、オゾン層破壊問題はひとまず対処がされたが、一方でHFCは一般に強力な地球温暖化ガスであり、現在はむしろこちらのほうが大きな問題となっている。 表2に環境問題への対策の動向の概要をまとめた。 [図:0001404746000008.jpg] 」(第3ページ左欄第8行~右欄第9行及び表2) (エ)「4.新規発泡剤の開発動向 国際的規模での地球温暖化防止対策が議論されている中で、硬質ウレタンフォームの製造において待ち望まれていたオゾン層破壊と地球温化の2大問題を解決する新しい発泡剤が近年開発され、一部は商業生産がスタートした(表3)。 1) HCFO-1233zd注) 米国Honeywell○R(当審注:丸囲いの中にR。以下、同様。)社がSoltice○R(ソルティス○R)LBAという商品名で発表した。既に小規模生産が開始されている。・・・ 2) HFO-1336mzz注) デュポンTM社がFormacel○R 1100との商品名で発表した発泡剤である。・・・ 注)ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)はHCFCに代表される地球温暖化ガスと同種の誤解を避けるために、HCFCと区別する意図で主鎖に二重結合を含む ハイドロカーボンと意図的に表している。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)も同様に地球温暖化ガスであるHFCと区別する意図で主鎖に二重結合を含むハイドロカーボンをHFOと意図的に表している。 これらの発泡剤の特色として、炭素の主鎖に二重結合を含んでいることから大気中での寿命が短く、地球温暖化への影響が非常に小さいことと、ガスの熱伝導率が旧来のフロン類並みに低いため、これを用いた断熱材の断熱性能の向上が期待できる。 ・・・ 表3 [図:0001404746000009.jpg] 」(第5ページ右欄第19行~第6ページ左欄第6行及び表3) ウ 甲3の記載事項 甲3には、以下の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも1種のハロゲン化発泡剤、少なくとも1種のポリオール、水、二酸、三酸又はポリ酸から選ばれる少なくとも1種の成分を含む少なくとも1種の有機カルボン酸成分、及び、前記有機カルボン酸成分とともに、テトラアルキルグアニジン及びイソシアネート反応性基を含む第三級アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む、ポリオールプレミックス組成物。 【請求項2】 前記ハロゲン化発泡剤はヒドロハロオレフィンを含む、請求項1記載のポリオールプレミックス組成物。 【請求項3】 ヒドロハロオレフィン発泡剤はトランス?1?クロロ?3,3,3?トリフルオロプロペンを含む、請求項2記載のポリオールプレミックス。 【請求項4】 イソシアネート反応性基を含むアミンはN,N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)-N-イソプロパノールアミン、N,N-ジメチルアミノエチル-N'-メチルエタノールアミン、N,N,N'-トリメチルアミノプロピルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチル-N',N'-2-ヒドロキシ(プロピル)-1,3-プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、(N,N-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ビス(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)アミン、N,N-ジメチルアミノプロピルウレア、N,N'-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)ウレア、ビス(ジメチルアミノ)-2-プロパノール、N-(3-アミノプロピル)イミダゾール)、N-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール及びN-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、2-[N-(ジメチルアミノエトキシエチル)-N-メチルアミノ]エタノール、N,N-ジメチルアミノエチル-N'-メチル-N'-エタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N'-トリメチル-N'-3-アミノプロピル-ビス(アミノエチル)エーテル又はそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む、請求項1記載のプレミックス組成物。 【請求項5】 少なくとも1種の溶媒をさらに含む、請求項1記載のプレミックス組成物。 【請求項6】 前記溶媒はグリコール、水及びポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む、請求項5記載のプレミックス組成物。 【請求項7】 前記テトラアルキルグアニジンはテトラメチルグアニジンを含む、請求項1記載のプレミックス組成物。 【請求項8】 前記有機酸はコハク酸、グルタル酸、アジピン酸及び他の二酸又はポリ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む、請求項1記載のプレミックス組成物。 【請求項9】 前記有機酸はマロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタコン酸、トラウマチン酸、ムコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ポリアクリル酸及びポリスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む、請求項1記載のプレミックス組成物。 【請求項10】 少なくとも1種の気泡安定剤をさらに含む、請求項1記載のプレミックス組成物。 【請求項11】 少なくとも1種の架橋剤をさらに含む、請求項1記載のプレミックス組成物。 【請求項12】 少なくとも1種の連鎖延長剤をさらに含む、請求項1記載のプレミックス組成物。 【請求項13】 約10~約50%のTMG、約10~約50%のコハク酸、及び、約0~約50%の水又はグリコール希釈剤のうちの少なくとも1種の触媒組成物であって、組成物のpHが<7である、触媒組成物。 【請求項14】 少なくとも1種のポリオール、及び、二酸、三酸又はポリ酸から選ばれる少なくとも1種の成分を含む少なくとも1種の有機カルボン酸成分と、テトラアルキルグアニジン及びイソシアネート反応性基を含む第三級アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とから得られる接触生成物を、前記有機カルボン酸成分とともに含む、ポリオールプレミックス組成物。 【請求項15】 少なくとも1種のポリオール、及び、二酸、三酸又はポリ酸から選ばれる少なくとも1種の成分を含む少なくとも1種の有機カルボン酸成分と、テトラアルキルグアニジン及びイソシアネート反応性基を含む第三級アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分との塩を、前記有機カルボン酸成分とともに含む、ポリオールプレミックス組成物。 【請求項16】 請求項1記載のプレミックス組成物と、少なくとも1種のイソシアネートとを接触させることを含む、フォームの製造方法。 【請求項17】 請求項15の方法により得られるフォーム。」 「【背景技術】 【0002】 本発明の分野はハロゲンを含有する発泡剤を用いて製造される断熱性ポリウレタンフォームの製造に有用な触媒の組成物及び応用である。 【0003】 ポリウレタンフォーム組成物は、通常、イソシアネートと、ポリオールなどのイソシアネート反応性成分からなるプレミックスとの反応により調製される。プレミックスは、場合により、水、難燃剤、発泡剤、フォーム安定化界面活性剤、及び、イソシアネートを、ポリオールと反応させて、ウレタンを製造し、水と反応させてCO2を形成し、そして過剰のイソシアネートと反応させて、イソシアヌレート(三量体)を製造することを促進する触媒などの他の成分を含む。プレミックス中の発泡剤は、通常、液体又は気体であり、重合反応の間に解放される熱により蒸発されるのに十分に低い沸点を有する。断熱性ポリウレタンフォームの製造に有用な発泡剤の例としては、限定するわけではないが、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロクロロオレフィン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ホルメート及び炭化水素が挙げられる。プレミックス中の成分及びイソシアネートの適切な選択及び組み合わせはスプレイ塗布され、定位置に注がれるポリウレタンフォームの製造に有用であることができ、そして、冷蔵機、冷凍機、給湯ヒータ、断熱パネル、ガレージドア、入口ドアなどの用途、及び、断熱が望まれる他の種々の用途で使用されうる。これらの幾つかの用途では、プレミックスはイソシアネートと反応してポリウレタンフォームを生じるまでに1日から1年間貯蔵される。このことは、プレミックス及びイソシアネートのドラムが現場適用の場所まで輸送されるスプレイフォーム用途で一般的である。このため、断熱フォーム配合物のプレミックスが化学的にも物理的にも安定していることが望ましい。しかしながら、ポリウレタン反応を促進するのに有用である触媒は、プレミックス中に存在する発泡剤との所望されない反応に参加し又は反応を誘発することもあり、貯蔵安定性を低減することになりうる。これらの所望されない反応はハロゲンを含む発泡剤でよく起こり、そして不飽和及びオレフィン系炭素を含むハロゲン化発泡剤で特に問題となる。ポリウレタンフォームの製造に有用な一般的なアミン触媒としては、第三級アミン、例えば、N,N,N',N,N-ペンタメチルジエチレントリアミン(Air ProductsからPolycat(登録商標)-5として入手可能)又は1,4-ジアザビシクロ [2.2.2]オクタン(Air Productsから溶液でDabco(登録商標)33LXとして入手可能)が挙げられ、ポリウレタンポリマーの生成を促進するウレタン反応を加速させることが知られている。しかしながら、第三級アミンは、また、ハロゲン含有有機化合物と反応して、第三級アミン触媒の脱活性を生じさせ、重合化プロセスの反応速度の正味の低減をもたらすことが知られている。第三級アミンとハロゲン含有有機化合物との間の反応はハロゲン原子がオレフィン系炭素に結合しているときに、より急速である。というのは、ハロゲン置換オレフィンは第三級アミンによる求核攻撃を受けやすいからである。これにより、第三級アミン触媒の急速な脱活性化が起こり、プレミックスがイソシアネートとの反応のために十分に活性でなくなる。ハロゲン含有化合物との反応による第三級アミンの脱活性化はハロゲン含有脂肪族化合物においても、第四級アンモニウム塩の生成又は脱ハロゲン化水素により起こり、両方の経路により、第三級アミンの脱活性化をもたらすことがある。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上記の欠点の1つ以上に悩まされることのない方法、ポリウレタン組成物、ポリウレタン製品、触媒組成物の製造方法及び触媒は当該技術分野において望まれている。 【課題を解決するための手段】 【0009】 1つの例示の実施形態において、方法は、少なくとも1種の有機カルボン酸二酸、三酸又はポリ酸成分を含むプレミックスを提供すること、テトラアルキルグアニジン及びイソシアネート反応性基を含む第三級アミンの少なくとも1種と、有機カルボン酸成分とを前記プレミックス中で接触させることを含み、ここで、前記プレミックスは発泡剤であるヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロカーボン、ヒドロクロロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロクロロオレフィン、フルオロオレフィン、クロロオレフィン、ヒドロクロロフルオロカーボンのうちの少なくとも1種を含み、対応するカルボン酸の塩を形成する。」 「【0033】 本発明の触媒は任意の硬質断熱フォームの製造に有用であり、そしてスプレイ塗布フォーム、電気製品断熱材、断熱構造パネル、及び、独立気泡硬質ポリウレタンフォームを含む種々のその他の断熱製品に特に有用である。本発明は約70~約500、約90~約270、そして通常には、約100~約150のイソシアネートインデックスを有するフォームを含む。本発明で記載される触媒は任意のハロゲン含有発泡剤との組み合わせで使用でき、それにより、改良された系安定性を提供するが、ヒドロハロオレフィン発泡剤、例えば、他のHFOの中でもとりわけHFCO-1234ze (トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロプ-1-エン)及びHFCO-1233zd (1-プロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ)の少なくとも1つを含む系の安定性を改良するのに特に有用である。」 「【0072】 1つの実施形態において、第三級アミン触媒成分は遷移金属触媒との組み合わせで使用される。例えば、1つの実施形態において、第三級アミン触媒成分はオルガノスズ化合物、スズ(II)カルボキシレート塩、ビスマス(III)カルボキシレート塩又はそれらの組み合わせとともに使用される。オルガノスズ化合物又はビスマスカルボキシレートなどの遷移金属触媒の例は、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジラウレート、ジメチルジアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズジラウリルメルカプチド、ジブチルスズジラウリルメルカプチド、、ジメチルスズジイソオクチルマレエート、ジブチルスズジイソオクチルマレエート、ジメチルスズビ(2-エチルヘキシルメルカプトアセテート)(dibutyltin bi(2-thylhexyl mercaptacetate))、ジブチルスズビ(2-エチルヘキシルメルカプトアセテート)(dibutyltin bi(2-thylhexyl mercaptacetate))、オクタン酸第一スズ、他の適切なオルガノスズ触媒、又はそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種以上の成分を含むことができる。ビスマス(Bi)などの他の金属も、また、含めることができる。適切なビスマスカルボキシレート塩としては、ペンタン酸、ネオペンタン酸、ヘキサン酸、2-エチルヘキシルカルボン酸、ネオヘキサン酸、オクタン酸、ネオオクタン酸、ヘプタン酸、ネオヘプタン酸、ノナン酸、ネオノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ネオウンデカン酸、ドデカン酸、ネオドデカン酸及び他の適切なカルボン酸の塩を挙げることができる。鉛(Pb)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)の遷移金属と、ペンタン酸、ネオペンタン酸、ヘキサン酸、2 - エチルヘキシルカルボン酸、オクタン酸、ネオオクタン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、ネオウンデカン酸、ネオドデカン酸及び他の適切なカルボン酸と他の塩も含まれてよい。第三級アミン触媒成分を含まない実施形態において、芳香族カルボン酸のテトラアルキルグアニジンの塩を有する触媒組成物は、このような遷移金属触媒とともに又はそれ伴わずに使用される。触媒組成物が第三級アミン触媒成分又は遷移金属触媒なしに使用される実施形態において、芳香族カルボン酸のテトラアルキルグアニジン塩は所定の量であり、例えば、約0.1~約30 ピーピーエム (ppm)、約0.1~約15 ppm、約0.1~約5.0 ppmであり、又は、その任意の組み合わせ又は副次組み合わせである。」 「【0087】 [例2:立体障害アミン触媒及びNCO反応性基を有する官能化第三級アミン触媒をHFO発泡剤トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの存在下に含む配合物の評価] 本例において、典型的な立体障害第三級アミンであるPolycat(登録商標)-12の評価は、スプレイ硬質フォーム配合物Bを用いたこのクラスの化合物の利点及び欠点を例示するものであった。また、本例では、DABCO(登録商標)-Tの性能はスプレイフォーム用途に一般的に使用されている、OH基 (NCO反応性基)を有する典型的な第三級アミンの例として示される。 【0088】 【表3】 [図:0001404746000010.jpg] 【0089】 Polycat(登録商標)-12及びDABCO(登録商標)-Tとのプレミックスブレンドを50℃で貯蔵し、そしてサンプルを7日毎に取り、老化したプレミックスがポリウレタンフォームを製造する能力及び動特性を決定した。動的パラメータ及び重合パラメータを老化したプレミックスに対して測定し、老化していないプレミックスからのデータと比較した。約25 gの上記のプレミックスを25 g のイソシアネート (MDI)と、2リットルプラスチック容器中で機械アジテータにて混合した。イソシアネートを除く成分混合物のサンプルを閉止容器中に入れ、そして50℃で炉内で条件調節した。1日後、7日後及び14日後に、フォーム調製物のサンプルを取った。サンプルを室温で平衡に到達させ、その後、約6000 rpmで機械混合ブレードにより提供される激しい機械攪拌下に、対応する量のイソシアネートと混合した。フォームライズを音波検知装置 (FOMAT装置)のもとで測定し、そして選択時間を各場合に記録した。選択時間を秒で測定し、そして各発泡塊が完全高さの80 %に到達するのに要する時間を示す。FOMAT装置は、また、98 %最大高さに到達する時間及び最大高さでの時間も提供することができる。 【0090】 【表4】 [図:0001404746000011.jpg] 【0091】 最大ライズ速度までの時間(時間Vmax)及びゲル化時間も老化なし(初期)を用いて測定した。 【0092】 【表5】 [図:0001404746000012.jpg] 【0093】 老化の1週間後に、Vmax 時間及びライズ時間の増加を両方の触媒に対して測定したが、より悪いのはDABCO(登録商標)-T触媒の場合であった。しかしながら、Polycat(登録商標)-12もΔライズ時間の増加により証明されるように活性の有意な低下を示した。 【0094】 【表6】 [図:0001404746000013.jpg] 【0095】 [例3:発泡剤トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとしてHFOを用いた立体障害アミン触媒及びNCO反応性基を有する官能化第三級アミン触媒を標準的なな有機モノカルボン酸の存在下に含む配合物の評価] 本例において、立体障害第三級アミン触媒Polycat(登録商標)-12及びOH含有第三級アミン触媒DABCO(登録商標)-Tを有機カルボンモノ酸の存在下に評価した。 【0096】 【表7】 [図:0001404746000014.jpg] 【0097】 Polycat(登録商標)-12及びDABCO(登録商標)-T及び酸のプレミックスブレンドを50℃で貯蔵し、そしてサンプルを7日毎に取り、老化したプレミックスBがポリウレタンフォームを製造する能力及び動特性を決定した。動的パラメータ及び重合パラメータを老化したプレミックスに対して測定し、老化していないプレミックスからのデータと比較した。データはDABCO(登録商標)-Tをモノカルボン酸と混合することは遊離DABCO(登録商標)-Tに対する安定性を改良するのに寄与したことを示した。しかしながら、系の安定性はΔライズ時間の増加により示されるとおりに影響される。 【0098】 【表8】 [図:0001404746000015.jpg] 」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ポリイソシアネート」、「ポリエステルポリオール」、「水、及びn‐ペンタン発泡剤」及び「ポリイソシアヌレート/ポリウレタン発泡体」は、それぞれ本件特許発明1の「ポリイソシアネート化合物」、「ポリオール」、「発泡剤」、「ポリウレタン発泡体」に相当する。 また、甲1発明の「Dabco(登録商標)K15」に含有される「カリウムオクトエート」は、本件特許発明1の「三量化金属触媒」である「オクチル酸カリウム」であり、甲1発明の「触媒D」に含有される「ビスマスネオデカノエート」は、本件特許発明1の「樹脂化金属触媒」である「ビスマスの有機金属塩」に相当する。 本件特許発明1の「整泡剤」について、本件特許明細書の段落 【0066】に、「整泡剤としては、例えば・・・オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。」と記載されている。そして、甲1発明の「Dabco(登録商標)DC5585界面活性剤」である「シリコンポリエーテル」で、「オルガノポリシロキサン」といえ、本件特許発明1の「整泡剤」に相当する。 さらに、甲1発明の「少なくとも1種のポリイソシアネートを、プレミックスと接触させ、ポリイソシアヌレート/ポリウレタン発泡体を製造するためのプレミックス」は、本件特許発明1の「ポリオール、発泡剤、整泡剤、三量化金属触媒及び樹脂化金属触媒」に相当するものを含有するものであるから、本件特許発明1の「ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール溶液組成物」に相当する。 甲1発明の「0.25質量%の触媒D」に対する「2.75質量%のDabco(登録商標)K15」の比は11であるから、「ビスマスネオデカノエート」の質量部に対する「カリウムオクトエート」の質量部数は11となる。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。 <一致点> ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール溶液組成物であって、ポリオール、発泡剤、整泡剤、三量化金属触媒及び樹脂化金属触媒を含有し、 前記三量化金属触媒としてオクチル酸カリウムを含有し、 前記樹脂化金属触媒として、ビスマスの有機酸金属塩を含有する ポリオール溶液組成物。 <相違点1> 発泡剤が、本件特許発明1は「ハイドロフルオロオレフィンを含有」するものあるのに対し、甲1発明は「水、及びn‐ペンタン発泡剤」である点 <相違点2> 前記樹脂化金属触媒重量部数に対する前記三量化金属触媒重量部数が、本件特許発明1が「13以上25以下」であるのに対し、甲1発明は「11」である点 (イ)判断 a 本件特許発明1の技術的意義について 上記1(4)で示したように、本件特許発明の課題は、「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)と触媒との分解反応を抑制しつつ良好な発泡体形成を両立できるポリオール溶液組成物」を提供することであり、発泡剤として「ハイドロフルオロオレフィンを含有」するものであっても、「三量化触媒としてオクチル酸カリウムを含有するものを用い、樹脂化触媒としてビスマスの有機酸金属塩を含有するものを用い、樹脂化金属触媒部数に対する三量化金属触媒部数の比が13以上25以下である」という事項とにより、本件特許発明の課題が解決されるものである。 b 相違点及び効果の検討 <相違点1>について 発泡剤について、甲1の段落 【0053】に、「本組成物において用いることのできる発泡剤は、水・・・n‐ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン及びその混合物等の炭化水素、FEA‐1100(Formacel(登録商標)1100)等のヒドロフルオロオレフィン(HFO)、HFCO‐1233zd(Solstice(登録商標)LBA)及びHFCO‐1234ze(Solstice(登録商標)GBA)等のヒドロクロロフルオロオレフィン(HFCO)からなる群から選択される少なくとも1種の要素を含むことができる。」と記載されている。 ところで、甲3の段落【0003】には、ポリウレタン反応を促進する触媒(第3級アミン)が、プレミックス中に存在するハロゲンを含む発泡剤、特に不飽和及びオレフィン系炭素を含むハロゲン系発泡剤と反応し、第三 級アミン触媒の脱活性を生じさせることについて記載されている。 しかしながら、申立人の提出した甲1ないし甲3のいずれの証拠にも、三量化触媒又は樹脂化触媒として、「金属触媒」を使用することにより、ハイドロフルオロオレフィンと触媒との分解反応が抑えられることは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明において、「水、及びn‐ペンタン」の発泡剤を、触媒と反応するおそれがある「ハイドロフルオロオレフィンを含有」するものに積極的に代替する動機付けはない。 ついで、本件特許発明1の効果について検討する。 本件特許発明1の効果は、「ハイドロフルオロオレフィンと触媒との分解反応を抑制しつつ良好な発泡体形成を両立できる」ことであるが、当該効果は、甲1ないし甲3の記載に基いても当業者が予測し得るものとはいえない。 そうすると、本件特許発明1は、<相違点2>を検討するまでもなく、甲1発明及び甲2、甲3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件特許発明2ないし7について 本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1発明及び甲2、甲3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は、申立書の第16~19ページ及び令和5年1月18日に提出した意見書の第14ないし16ページにおいて、「ビスマスの有機酸金属塩を採用する甲第1号証の触媒組成物では、甲第1号証に記載された発泡剤のうちから、甲第1号証に記載された、従来の「CFC-11」と同様な物性を有し且つ地球温暖化とオゾン層破壊との2大問題を解決し得る発泡剤であって、甲第3号証でビスマスの有機酸金属塩を採用することにより、触媒組成物の貯蔵安定性を保持できるとされているヒドロハロオレフィン発泡剤であるハイドロクロロフルオロオレフィンとハイドロフルオロオレフィンとを採用する程度のことは、甲第1号証~甲第3号証の記載に基づいて当業者が容易に為し得る程度のことである。」旨主張している。 しかしながら、たとえハイドロオレフィンが地球温暖化とオゾン層破壊との2大問題を解決し得る発泡剤であったとしても、上記ア(イ)で述べたように、申立人の提出した甲1ないし甲3のいずれの証拠にも、三量化触媒又は樹脂化触媒として、「金属触媒」を使用することにより、ハイドロフルオロオレフィンと触媒との分解反応が抑えられることが記載も示唆もされていない以上、甲1発明において、「水、及びn‐ペンタン」の発泡剤を、触媒との反応性が不明な「ハイドロフルオロオレフィンを含有」するものに代替する動機付けは乏しいものといわざるを得ない。 よって、申立人の主張は首肯することができない。 (4)取消理由C(甲1に基づく進歩性)及び申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうち進歩性についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、当該理由によっては取り消すことはできない。 第6 取消理由(決定の予告)で採用しなかった申立理由について 1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうち新規性について (1)検討 上記第5の3(2)ア(イ)で示したとおり、少なくとも<相違点1>は実質的な相違点である。 よって、本件特許発明1ないし7は、甲1に記載された発明ではない。 (2)申立人の主張について 申立人は、申立書の第13~16ページ及び令和5年1月18日に提出した意見書の第10~14ページにおいて、本件特許発明1ないし7の各構成は、甲1の各箇所に記載されていることから、新規性がない旨主張している。 しかしながら、甲1に、本件特許発明1の各構成が一応記載されているものの、特定の触媒である「前記三量化金属触媒としてオクチル酸カリウムを含有し、前記樹脂化金属触媒として、ビスマスの有機酸金属塩を含有する」ものと、特定の発泡剤である「ハイドロフルオロオレフィンを含有」したものとの組み合わせたものが当然に記載されているとまではいえない。 よって、申立人の主張は首肯することができない。 (3)申立理由1(甲1に基づく新規・進歩性)のうち新規性についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、当該理由によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(新規事項)について 訂正により、新規事項と判断した「(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)」が削除された。 よって、申立理由2(新規事項)は解消された。 したがって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、当該理由によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(実施可能要件)について 申立人は、申立書の第20ページ及び令和5年1月18日に提出した意見書の第10~14ページにおいて、上記第4(3)における主張を行っているので、検討する。 本件特許明細書の段落【0053】に、イソシアネートインデックスの具体的算出方法が記載されている。そして、本件特許明細書の実施例で使用されたイソシアネートである「PM200」について、「万華化学ジャパン株式会社製」と記載されていることから、当該製造元からイソシアネート当量数等のイソシアネートインデックスを算出するための情報を入手することは可能であり、本件特許発明5を実施する際に当業者に過度の試行錯誤が要求されるとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 したがって、本件特許の請求項5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、当該理由によっては、取り消すことはできない 第7 むすび 上記第5及び第6のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700540

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