審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2023-700659

ジルコニア粉末、ジルコニア焼結体、及び、ジルコニア焼結体の製造方法

審判番号
2023-700659
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-523220
登録番号
7195481
請求日
2023年06月22日
審決日
2024年04月01日
公報発行日
2024年07月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】第一稀元素化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
  • 【異議申立人】土田 裕介
  • 【異議申立人代理人】長谷川 芳樹
  • 【異議申立人代理人】清水 義憲
  • 【異議申立人代理人】吉住 和之
  • 【異議申立人代理人】石坂 泰紀
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 宮澤 尚之
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.113-YAA(C01G) / P1651.121-YAA(C01G) / P1651.536-YAA(C01G) / P1651.537-YAA(C01G) / P1651.851-YAA(C01G) / P1651.853-YAA(C01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7195481号発明「ジルコニア粉末、ジルコニア焼結体、及び、ジルコニア焼結体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7195481号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9、16〕、〔10~15〕について訂正することを認める。 特許第7195481号の請求項1~3、5~12、14~16に係る特許を維持する。 特許第7195481号の請求項4、13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7195481号の請求項1~16に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、2021年(令和3年)10月6日(優先権主張 令和2年10月9日)を国際出願日とする出願であって、令和4年12月15日にその特許権の設定登録がされ、同月23日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許1~16に対して、令和5年6月22日に特許異議申立人土田裕介(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年10月17日付けで取消理由が通知され、同年12月15日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされ、令和6年1月31日に申立人により意見書の提出がされた。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和5年12月15日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~9、16〕、〔10~15〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.4mol%以上2.0mol%未満であり」 とあるのを、 「前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であり」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5~9、16も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記安定化剤がEr2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Er2O3の含有量が、1.4mol%以上1.8mol%以下であり」 とあるのを、 「前記安定化剤がEr2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Er2O3の含有量が、1.5mol%以上1.8mol%以下であり」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5~9、16も同様に訂正する。)。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記安定化剤がYb2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Yb2O3の含有量が、1.4mol%以上1.8mol%以下であり」 とあるのを、 「前記安定化剤がYb2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Yb2O3の含有量が、1.5mol%以上1.8mol%以下であり」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5~9、16も同様に訂正する。)。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記安定化剤がCaOである場合、ジルコニア粉末全体に対する前記CaOの含有量が、3.5mol%以上4.5mol%以下であり」 とあるのを、 「前記安定化剤がCaOである場合、ジルコニア粉末全体に対する前記CaOの含有量が、3.8mol%以上4.4mol%以下であり」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5~9、16も同様に訂正する。)。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に、 「水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が20nm以上120nm以下であり、細孔容積が0.2ml/g以上0.5ml/g未満であり、細孔分布幅が30nm以上170nm以下である」 とあるのを、 「水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が38nm以上113nm以下であり、細孔容積が0.25ml/g以上0.45ml/g以下であり、細孔分布幅が41nm以上138nm以下である」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5~9、16も同様に訂正する。)。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記ピークトップ径が20nm以上70nm以下であり、 前記細孔分布幅が40nm以上105nm以下である」 とあるのを、 「前記ピークトップ径が70nm以下であり、 前記細孔分布幅が105nm以下である」 に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~9、16も同様に訂正する。)。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項5に、 「前記安定化剤がY2O3である場合、前記Y2O3の含有量が、1.4mol%以上1.8mol%未満である」 とあるのを、 「前記安定化剤がY2O3である場合、前記Y2O3の含有量が、1.8mol%未満である」 に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~9、16も同様に訂正する。)。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項6に、 「請求項2~5のいずれか1に記載の」 とあるのを、 「請求項2、3、5のいずれか1に記載の」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~9、16も同様に訂正する。)。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項2~6のいずれか1に記載の」 とあるのを、 「請求項2、3、5、6のいずれか1に記載の」 に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、9、16も同様に訂正する。)。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項1~7のいずれか1に記載の」 とあるのを、 「請求項1~3、5~7のいずれか1に記載の」 に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、16も同様に訂正する。)。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項9に、 「請求項1~8のいずれか1に記載の」 とあるのを、 「請求項1~3、5~8のいずれか1に記載の」 に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項16も同様に訂正する。)。 (13) 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項16に、 「請求項1~9のいずれか1に記載の」 とあるのを、 「請求項1~3、5~9のいずれか1に記載の」 に訂正する。 (14) 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項10に、 「前記安定化剤が、CaO、Y2O3、Er2O3、及び、Yb2O3からなる群より選ばれる1種以上であり、」 とあるのを、 「前記安定化剤が、CaO、Y2O3、Er2O3、及び、Yb2O3からなる群より選ばれる1種以上であり、 前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であり、 前記安定化剤がEr2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Er2O3の含有量が、1.5mol%以上1.8mol%以下であり、 前記安定化剤がYb2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Yb2O3の含有量が、1.5mol%以上1.8mol%以下であり、 前記安定化剤がCaOである場合、ジルコニア粉末全体に対する前記CaOの含有量が、3.8mol%以上4.4mol%以下であり、」 に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11、12、14、15も同様に訂正する。)。 (15) 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (16) 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項14に、 「請求項10~13のいずれか1に記載の」 とあるのを、 「請求項10~12のいずれか1に記載の」 に訂正する(請求項14の記載を引用する請求項15も同様に訂正する。)。 (17) 訂正事項17 特許請求の範囲の請求項15に、 「請求項10~14のいずれか1に記載の」 とあるのを、 「請求項10~12、14のいずれか1に記載の」 に訂正する。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」といい、明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「本件特許明細書等」という。)の【0054】の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載されたY2O3の含有量をさらに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、本件特許明細書の【0055】の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載されたEr2O3の含有量をさらに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、本件特許明細書の【0056】の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載されたYb2O3の含有量をさらに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4は、本件特許明細書の【0057】の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載されたCaOの含有量をさらに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5) 訂正事項5について 訂正事項5は、本件特許明細書の【0164】【表2】の実施例9、10、15、30、34の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載された、細孔分布の10nm以上200nm以下の範囲における細孔容積分布のピークトップ径、細孔容積、細孔分布幅をさらに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6) 訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項3に記載のピークトップ径及び細孔分布幅の下限値について、訂正事項5による訂正に伴う請求項1の記載との不整合を解消させるためのものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7) 訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8) 訂正事項8について 訂正事項8は、訂正前の請求項5に記載のY2O3の含有量の下限値について、訂正事項1による訂正に伴う請求項1の記載との不整合を解消させるためのものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9) 訂正事項9~13について 訂正事項9~13は、訂正事項7による請求項4の削除に伴い、請求項6~9、16における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10) 訂正事項14について 訂正事項14は、本件特許明細書の【0054】~【0057】の記載に基づき、訂正前の請求項10に記載されたCaO、Y2O3、Er2O3、及び、Yb2O3の各含有量を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11) 訂正事項15について 訂正事項15は、訂正前の請求項13を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12) 訂正事項16、17について 訂正事項16、17は、訂正事項15による請求項13の削除に伴い、請求項14、15における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1項及び第3項に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9、16〕、〔10~15〕について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明) 前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。そして、請求項1~3、5~12、14~16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、その記載事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 安定化剤を含み、 前記安定化剤が、CaO、Y2O3、Er2O3、又は、Yb2O3であり、 前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であり、 前記安定化剤がEr2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Er2O3の含有量が、1.5mol%以上1.8mol%以下であり、 前記安定化剤がYb2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Yb2O3の含有量が、1.5mol%以上1.8mol%以下であり、 前記安定化剤がCaOである場合、ジルコニア粉末全体に対する前記CaOの含有量が、3.8mol%以上4.4mol%以下であり、 水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が38nm以上113nm以下であり、細孔容積が0.25ml/g以上0.45ml/g以下であり、細孔分布幅が41nm以上138nm以下であることを特徴とするジルコニア粉末。 【請求項2】 比表面積が10m2/g以上50m2/g以下であり、 粒子径D50が0.1μm以上0.7μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア粉末。 【請求項3】 前記ピークトップ径が70nm以下であり、 前記細孔分布幅が105nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア粉末。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記安定化剤がY2O3である場合、前記Y2O3の含有量が、1.8mol%未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のジルコニア粉末。 【請求項6】 前記比表面積が20m2/g以上40m2/g以下であることを特徴とする請求項2、3、5のいずれか1に記載のジルコニア粉末。 【請求項7】 前記粒子径D50が0.1μm以上0.3μm未満であることを特徴とする請求項2、3、5、6のいずれか1に記載のジルコニア粉末。 【請求項8】 アルミナ、及び、タンマン温度が1200℃以下の金属酸化物からなる群より選ばれる1種以上を、0.005質量%以上2質量%以下含むことを特徴とする請求項1~3、5~7のいずれか1に記載のジルコニア粉末。 【請求項9】 Fe、V、Er、Mn、Co、Tb、Zn、Cu及び、Tiからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1~3、5~8のいずれか1に記載のジルコニア粉末。 【請求項10】 安定化剤を含み、 前記安定化剤が、CaO、Y2O3、Er2O3、及び、Yb2O3からなる群より選ばれる1種以上であり、 前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であり、 前記安定化剤がEr2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Er2O3の含有量が、1.5mol%以上1.8mol%以下であり、 前記安定化剤がYb2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Yb2O3の含有量が、1.5mol%以上1.8mol%以下であり、 前記安定化剤がCaOである場合、ジルコニア粉末全体に対する前記CaOの含有量が、3.8mol%以上4.4mol%以下であり、 結晶相に含まれる単斜晶相率が0.2%以上5%以下であり、 IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さが1μm以上90μm以下であり、 3点曲げ強度が80kg/mm2以上150kg/mm2以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。 【請求項11】 相対焼結密度が99%以上であることを特徴とする請求項10に記載のジルコニア焼結体。 【請求項12】 IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときの靭性値が10MPa・m0.5以上40MPa・m0.5以下であることを特徴とする請求項10又は11に記載のジルコニア焼結体。 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 Fe、V、Mn、Co、Zn、Cu及び、Tiからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項10~12のいずれか1に記載のジルコニア焼結体。 【請求項15】 134℃で75時間水熱条件下に曝露した後の、表面の単斜晶相率が32%以下であることを特徴とする請求項10~12、14のいずれか1に記載のジルコニア焼結体。 【請求項16】 請求項1~3、5~9のいずれか1に記載のジルコニア粉末を成型し、成型体を得る工程Xと、 前記工程Xの後、前記成型体を1200℃以上1350℃以下、1時間以上5時間以下の条件で焼結する工程Yと を有することを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が特許権者に通知した、令和5年10月17日付けの取消理由は、概略、以下のとおりである。 (1) 取消理由1(サポート要件違反) 設定登録時の請求項1~9、16に係る発明の課題は、「高靱性なジルコニア焼結体を簡便に得ることが可能な」「ジルコニア粉末」及び「ジルコニア焼結体の製造方法」を提供することといえるところ、発明の詳細な説明の実施例欄に記載された実施例1~34のジルコニア粉末は、当業者が上記課題を解決できると認識できる。他方、発明の詳細な説明の記載からは、ジルコニア粉末の細孔容積分布の10nm以上200nm以下の範囲におけるピークトップ径、細孔容積、細孔分布幅といった粉末物性、安定化剤や添加剤の添加量が、ジルコニア焼結体の単斜晶相率や靱性値に作用する機序、あるいは、これらの相関関係が認識できないため、当該実施例を超える範囲のジルコニア粉末については、当業者が前記課題を解決できると認識できない。 そして、設定登録時の請求項1~9、16に係る発明は、前記実施例を超える範囲を含むものであるから、前記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえず、発明の詳細な説明に記載された発明といえない。 以上のとおりであるから、本件特許1~9、16は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2) 取消理由2(実施可能要件違反) ジルコニア粉末の細孔容積分布の10nm以上200nm以下の範囲におけるピークトップ径、細孔容積、細孔分布幅といった粉末物性の制御は、製造時の塩基性硫酸ジルコニウム含有溶液を得る工程における、SO42-/ZrO2重量比率と温度によって実施することが発明の詳細な説明に記載されているが、実施例には、当該工程の条件を変えた具体例がなく、また、製造工程が全く同じであっても前記粉末物性が異なるジルコニア粉末が得られる具体例が記載されているため、ジルコニア粉末の前記粉末物性の制御方法を理解できない。 そのため、発明の詳細な説明の記載は、設定登録時の請求項1~16に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえない。 以上のとおりであるから、本件特許1~16は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 当審の判断 (1) 取消理由1(サポート要件違反)について ア サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 以下、この観点に立って検討する。 イ 本件発明1~3、5~9、16の課題について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0002】~【0006】の記載からして、本件発明1~3、5~9、16の課題は、前記1(1)で示したとおり、「高靱性なジルコニア焼結体を簡便に得ることが可能な」「ジルコニア粉末」及び「ジルコニア焼結体の製造方法」を提供することといえる。 ウ 発明の詳細な説明の記載について (ア) 本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例欄(【0134】~【0165】)には、次のa~dのジルコニア粉末が具体的に記載されている(【表1】、【表2】)。 a Y2O3を含むジルコニア粉末(実施例1~19、27~34) 安定化剤であるY2O3の添加量が1.5~1.9mol%の範囲内であり、焼結助剤であるAl2O3の添加量が0~0.50mol%の範囲内であり、着色剤の添加量が、Fe2O3で0~0.25mol%、ZnOで0~0.05mol%、MnO2で0~1.0mol%、CoOで0~0.05mol%、TiO2で0~0.1mol%、Tb4O7で0~0.1mol%、CuOで0~0.3mol%の各範囲内であり、水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が38~113nmの範囲内であり、細孔容積が0.25~0.45ml/gの範囲内であり、細孔分布幅が41~138nmの範囲内であるジルコニア粉末。 b Er2O3を含むジルコニア粉末(実施例20、21) 安定化剤であるEr2O3の添加量が1.6mol%であり、焼結助剤であるAl2O3の添加量が0.25mol%であり、水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が44nmであり、細孔容積が0.37ml/gであり、細孔分布幅が60nmであるジルコニア粉末。 c CaOを含むジルコニア粉末(実施例22~25) 安定化剤であるCaOの添加量が3.8~4.4mol%の範囲内であり、焼結助剤であるAl2O3の添加量が0.25mol%であり、水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が80~91nmの範囲内であり、細孔容積が0.27~0.39ml/gの範囲内であり、細孔分布幅が106~121nmの範囲内であるジルコニア粉末。 d Yb2O3を含むジルコニア粉末(実施例26) 安定化剤であるYb2O3の添加量が1.6mol%であり、焼結助剤であるAl2O3の添加量が0.25mol%であり、水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が51nmであり、細孔容積が0.30ml/gであり、細孔分布幅が46nmであるジルコニア粉末。 (イ) そして、当該実施例欄(【0134】~【0165】)には、前記実施例1~34のジルコニア粉末について、それぞれ、成型圧2t/cm2の冷間等方圧加圧法(CIP)で成形体とし、この成形体を1200~1350℃で2時間焼結してジルコニア焼結体を得ること(【0154】、【0165】【表3】)、及び、得られたジルコニア焼結体について、単斜晶相量が0.2~2.9%の範囲内、IF法による加重50kgfの靱性値が10~36MPa・m0.5の範囲内であり、比較例2~6のジルコニア焼結体の単斜晶相量(0.1%)及び靱性値(6MPa・m0.5)よりも大きな値となっていること(【0165】【表3】)が記載されているから、前記実施例1~34のジルコニア粉末は、当業者が、前記イに示した課題を解決できると認識できる。 (ウ) 発明の詳細な説明には、「本発明者は、ジルコニア焼結体の結晶相に含まれる単斜晶相率を0.2%以上5%以下とすることにより」、「マイクロクラックを容易に形成することができ、マイクロクラック強化機構による靱性向上効果が得られることを見出した」こと(【0007】)、「ジルコニア粉末に含まれる安定化剤の量を特定の範囲内とすることに加えて、細孔分布を特定の範囲内とすることにより、当該ジルコニア粉末を焼結して得られるジルコニア焼結体の結晶相に含まれる単斜晶相率を0.2%以上5%以下とし易くなることを見出した」こと(【0008】)、「一般的に、安定化剤の量を少なくするほど、ジルコニア焼結体中の単斜晶相率が多くなること」(【0007】)、及び、「1350℃を超えるような高温での焼結条件では、高靭性を得るために安定化剤を少なくした場合、焼結のための降温時の正方晶相から単斜晶相への相転移の量が多くなりすぎ、体積変化により焼結体に大きな亀裂が発生することとなる。そこで、粉末物性(細孔容積・細孔分布幅)を制御することで、低温で焼結を可能とし、所定の単斜晶相比率(0.2%以上5%以下)を達成することができる」こと(【0012】)が記載されており、ジルコニア粉末に含まれる安定化剤の量と細孔分布を個別に調整することにより、ジルコニア焼結体の結晶相に含まれる単斜晶相率を0.2%以上5%以下にでき、靱性を向上できることが示されている。 (エ) また、発明の詳細な説明には、「前記ジルコニア粉末は、添加剤を含有していてもよい」こと(【0065】)、「前記添加剤としては、焼結助剤、着色剤等が挙げられる」こと(【0065】)、「前記ジルコニア粉末は、焼結助剤を含んでも構わないが、焼結助剤を含まない構成としてもよい」こと(【0066】)、及び、「前記ジルコニア粉末は、Fe、V、Er、Mn、Co、Tb、Zn、Cu及び、Tiからなる群より選ばれる1種以上を含んでいてもよい。Fe、V、Er、Mn、Co、Tb、Zn、Cu及び、Tiからなる群より選ばれる1種以上を着色元素として含むと、当該ジルコニア粉末を焼結させることにより得られるジルコニア焼結体を好適に着色することができる」こと(【0068】)が記載されており、ジルコニア粉末中の焼結助剤及び着色剤が任意成分であることも示され、前記(ア)の実施例において、焼結助剤であるAl2O3を含有しない具体例(実施例34)や着色剤を含まない具体例(実施例1~26)も示されている。 (オ) 加えて、安定化剤としての挙動は、元素のイオン半径に影響を受けるところ、Y、Er及びYbはいずれも3価をとり、イオン半径も同程度であるため、Y2O3、Er2O3及びYb2O3が、安定化剤として同様の挙動を示すことは技術常識であるといえる。 (カ) 前記(ア)~(オ)の事項を併せ考えれば、ジルコニア粉末が、安定化剤として、Y2O3、Er2O3又はYb2O3を1.5~1.9mol%の範囲、あるいは、CaOを3.8~4.4mol%の範囲で含有すること、及び、水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が38~113nmの範囲内であり、細孔容積が0.25~0.45ml/gの範囲内であり、細孔分布幅が41~138nmの範囲内であることにより、当業者において、前記イに示した課題を解決できると認識できる。 エ 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比、検討 本件特許請求の範囲の記載は、前記第3に示したとおりであるところ、本件発明1のジルコニア粉末は、前記ウ(カ)に示したジルコニア粉末に包含されるものであるから、本件発明1は、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、前記イに示した課題を解決できると認識できる範囲のものであり、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。 また、本件発明1に係る請求項1の記載を引用する本件発明2、3、5~9、16についても事情は同じである。 オ 申立人の主張について (ア) 申立人の主張の概要 申立人は、(i)実施例のジルコニア粉末は、添加剤として少なくともAl2O3又はMnO2を含有しているところ、本件発明1~3、5~7、9、16では、これらの成分が特定されていないこと、(ii)発明の詳細な説明には、Er2O3及びYb2O3がY2O3と全く同じ数値範囲で前記イに示した課題を解決できることが記載されていないこと、及び、(iii)本件発明1の細孔容積分布の10nm以上200nm以下の範囲におけるピークトップ径、細孔容積、細孔分布幅といった粉末物性の数値範囲の根拠である、実施例10及び15の粉末物性の値が間違っている可能性があることを論拠として、本件発明1~3、5~9、16は、サポート要件に違反している旨を主張している(令和6年1月31日付け意見書の「(3)サポート要件違反について」参照)。 (イ) 申立人の主張に対する判断 申立人の上記(i)の主張を検討すると、前記ウ(エ)で検討したとおり、Al2O3は焼結助剤として、MnO2は着色剤として添加されたものであり、いずれも任意成分であるから、前記イに示した課題を解決するために、当該成分の特定が必要であるといえない。 次に、申立人の上記(ii)の主張を検討すると、前記ウ(オ)で検討したとおり、当業者であれば、Y2O3、Er2O3及びYb2O3は、安定化剤として同様の挙動を示すものであることを理解できる。 最後に、申立人の上記(iii)の主張を検討すると、後記(2)イ(ウ)で検討したとおり、実施例10及び15の記載に間違いがあることは明らかであるが、その間違いは、ジルコニア粉末を製造するための製造条件と、得られたジルコニア粉末の粉末物性との対応関係が誤っていたということであり、粉末物性の数値自体が誤っているといえない。 したがって、申立人の主張はいずれも採用できない。 カ 取消理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、取消理由1に理由はない。 (2) 取消理由2(実施可能要件違反)について ア 実施可能要件の判断手法 物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要する。 以下、この観点に立って検討する。 イ 本件発明1~3、5~9について (ア) 本件発明1~3、5~9の「ジルコニア粉末」の製造することに関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「本実施形態に係るジルコニア粉末の製造方法は、ジルコニウム塩溶液及び硫酸塩化剤溶液をそれぞれ別々に95℃以上100℃以下に加熱する工程1、前記加熱後のジルコニウム塩溶液と前記加熱後の硫酸塩化剤溶液とを、接触開始から終了までの間に混合液の濃度が変化しないように接触させることにより、混合液として塩基性硫酸ジルコニウム含有反応液を得る工程2、工程2で得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有反応液を、95℃以上で3時間以上熟成する工程3、工程3で得られた熟成後の塩基性硫酸ジルコニウム含有反応液に安定化剤を添加する工程4、工程4で得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有反応液にアルカリを添加することにより、ジルコニウム含有水酸化物を得る工程5、工程5で得られたジルコニウム含有水酸化物を熱処理することにより,ジルコニア粉末を得る工程6を含み、前記工程2では、当該接触開始から終了まで、混合液中のSO42-/ZrO2重量比率を0.3~0.8の範囲に維持するとともに、混合液の温度を95℃以上に維持する」こと(【0082】)、「工程2では」、「当該接触開始から終了まで、混合液中のSO42-/ZrO2重量比率を0.3~0.8の範囲に維持するとともに、混合液の温度を95℃以上に維持する」こと(【0090】)、「このような工程(工程2)を採用することにより、一次粒子のピークトップ径、細孔容積、細孔分布幅を制御することができる」こと(【0091】)、「工程4では、工程3で得られた熟成後の塩基性硫酸ジルコニウム含有反応液に安定化剤を添加する」こと(【0094】)、及び、「工程6では」、「熱処理温度を600℃以上1050℃以下とすることにより、得られるジルコニア粉末の細孔分布を好適な範囲とすることができる」こと(【0096】)が記載されている。 これらの記載によれば、ジルコニア粉末のピークトップ径、細孔容積、及び、細孔分布幅の制御は、【0082】に記載された製造方法の工程2及び工程6によって制御され、安定化剤の含有量は、工程4の安定化剤の添加量で制御しているといえる。 (イ) 次に、発明の詳細な説明の実施例欄(【0134】~【0165】)をみてみると、実施例1には、ジルコニア粉末の具体的な製造方法、特に、工程2において、「混合液中のSO42-/ZrO2質量比率が0.50となるように、2分間かけて、加熱された水溶液同士を接触させ」、工程4において、「Y2O3換算で10質量%の塩化イットリウム水溶液を、Y2O3が1.5mol%となるように添加し」、工程6において、「乾燥させた水酸化物を大気中860℃(焼成温度)で2時間熱処理」すること(【0135】)、及び、当該製造方法によって、Y2O3含有量が1.5mol%であり、細孔容積分布の10nm以上200nm以下の範囲におけるピークトップ径が43nm、細孔容積が0.30ml/g、細孔分布幅が54nmといった粉末物性を有するジルコニア粉末が得られたこと(【0163】【表1】、【0164】【表2】)が記載されている。また、実施例6、9、13、14、20~34にも、安定化剤の種類や添加量、Al2O3の添加量、着色剤の種類や添加量を変更した製造方法、及び、当該製造方法で得られたジルコニア粉末の安定化剤含有量や、細孔容積分布の10nm以上200nm以下の範囲におけるピークトップ径、細孔容積、細孔分布幅といった粉末物性が具体的に記載されている(【0136】~【0148】、【0163】【表1】、【0164】【表2】)。 (ウ) さらに、実施例2~5、7、8、10~12にも、具体的な製造方法と得られたジルコニア粉末の細孔容積分布の10nm以上200nm以下の範囲におけるピークトップ径、細孔容積、細孔分布幅といった粉末物性が具体的に記載されているところ(【0136】、【0163】【表1】、【0164】【表2】)、当該実施例では、全ての添加量及び製造手順が全く同じであるにも関わらず、当該粉末物性の異なるジルコニア粉末が得られているから、当該実施例の記載に誤記があることは当業者にとって明らかであるし、また、当該実施例の添加量及び製造手順で得られたジルコニア粉末は、なにがしかの粉末物性を有しており、この粉末物性が、当該実施例に示されたいずれかの1つであることも理解できる。このことは、実施例15~17、あるいは、実施例18、19についても同様である。 (エ) 前記(ア)~(ウ)の事項を踏まえれば、実施例1~34に記載された製造方法の添加量や製造手順、あるいは、得られたジルコニア粉末の安定化剤含有量や粉末物性を基準にして、工程2の「混合液中のSO42-/ZrO2重量比率」を【0090】に記載された「0.3~0.8の範囲」で調整し、工程4の安定化剤の添加量を調整し、工程6の「熱処理温度」を【0096】に記載された「600℃以上1050℃以下」で調整することで、当業者の過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1~3、5~9の「ジルコニア粉末」を得ることができることを当業者であれば理解できる。 (オ) したがって、前記アの判断手法に従えば、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~3、5~9について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 ウ 本件発明10~12、14~16について 本件発明10~12、14、15の「ジルコニア焼結体」の製造すること、及び、本件発明16の「ジルコニア焼結体の製造方法」に関して、発明の詳細な説明には、前記イで検討した「ジルコニア粉末」を使用して、「前記ジルコニア粉末を成型し、成型体を得る工程Xと、前記工程Xの後、前記成型体を1200℃以上1350℃以下、1時間以上5時間以下の条件で焼結する工程Yとを有する」こと(【0101】)、「実施例、比較例のジルコニア粉末を冷間等方圧加圧法(CIP)にて、成型体を得た。成型圧は、2t/cm2とした。次に、前記成型体を、表3に記載の温度(焼結温度)にて2時間の条件で焼結をさせ、ジルコニア焼結体を得た」こと(【0154】)、及び、焼成温度が1200~1350℃の範囲であること(【0165】【表3】)が記載されているから、前記イでの検討と同様な理由により、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明10~12、14、15の「ジルコニア焼結体」の製造すること、及び、本件発明16の「ジルコニア焼結体の製造方法」を実施することができるといえる。 したがって、前記アの判断手法に従えば、発明の詳細な説明の記載は、本件発明10~12、14~16について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 エ 申立人の主張について (ア) 申立人の主張の概要 申立人は、実施例2~5、7、8、10~12、実施例15~17、あるいは、実施例18、19に間違いがあることが理解できても、具体的にどこに間違えがあるのかが不明であり、正しい内容を理解できないことを論拠として、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たさない旨を主張している(令和6年1月31日付け意見書の「(2)実施可能要件違反について」参照)。 (イ) 申立人の主張に対する判断 前記イ(ウ)で検討したとおり、実施例2~5、7、8、10~12の共通した添加量及び製造手順でジルコニア粉末を製造した場合には、なにがしかの粉末物性を有したジルコニア粉末が得られ、この粉末物性は、当該実施例に示されたいずれかの1つであることも理解できるし、さらに、この粉末物性を基準にして、前記イ(エ)で検討したように、その他の実施例の粉末物性が得られるように製造条件を調整することは、当業者の過度の試行錯誤を要するものであるともいえないから、申立人の前記(ア)の主張は採用できない。 オ 取消理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、取消理由2に理由はない。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 標記特許異議申立理由の概要 申立人が主張する特許異議申立理由のうち、標記特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。 甲第1号証 Motozo Hayakawa and Masanori Tamaki, “Size-Dependence of Martensite Transformation Temperature of Yttria- Doped Zirconia and the Distribution of Nucleation Sites”, Materials Transactions, 2008, Vol.49, No.8, pp.1785-1790 甲第2号証 楠大樹作成、実験成績証明書 甲第3号証 特表2017-516741号公報 甲第4号証 国際公開第86/05174号 甲第5号証 特公平6-67785号公報 甲第6号証 特開2007-332026号公報 甲第7号証 特開2006-240928号公報 甲第8号証 特開2015-93813号公報 甲第9号証 特開2018-80064号公報 甲第10号証 特開2011-20873号公報 甲第11号証 JIS R1607:2015、日本規格協会、第8~ 10頁 甲第12号証 近石一弘、山口拓哉、「粉体物性」、SCAS NEWS 2001-II、2001年, 第11~14頁 (1) 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1、2、4、5、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同請求項1~16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第3、4、6~8号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~16は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(甲第3号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~8、10、12、13、15、16に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同請求項1~16に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、又は、甲第3号証に記載された発明、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~16は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 申立理由3(甲第4号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1、3~6、9、10、12~16に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同請求項1~16に係る発明は、甲第4号証に記載された発明、又は、甲第4号証に記載された発明、甲第3号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~16は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (4) 申立理由4(実施可能要件違反) 本件特許10~15は、発明の詳細な説明の記載が後記3(4)アの点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (5) 申立理由5(サポート要件違反) 本件特許10~15は、特許請求の範囲の記載が後記3(5)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (6) 申立理由6(明確性要件違反) 本件特許2、6は、特許請求の範囲の記載が後記3(6)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 各甲号証について (1) 甲第1号証の記載について 甲第1号証には、「Size-Dependence of Martensite Transformation Temperature of Yttria-Doped Zirconia and the Distribution of Nucleation Sites」(タイトル)(当審仮訳:イットリア添加ジルコニアのマルテンサイト変態温度のサイズ依存性と核生成サイトの分布)に関して、以下の内容が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下、同様である。)。 ア 「Specimen-size dependence of Mb temperatures (burst-type martensite transformation temperatures) was measured on many small spherical specimens of 1.5 mol%Y2O3-ZrO2 ranging from 100 to 1000 μm diameter.・・・」(アブストラクト欄) (当審仮訳:Mb温度(バースト型マルテンサイト変態温度)の試料サイズ依存性を、直径100~1000μmの範囲の1.5mol%Y2O3-ZrO2の多数の小型球状試料で測定した。・・・) イ 「2.2 Preparation of small spherical specimens ・・・Powders of ZrO2 (TZ-0, Tohso) and ZrO2-3 mol%Y2O3 (TZ-3Y, Tohso, Japan) were weighed in proper portions to obtain a 100 g ZrO2-1.5 mol%Y2O3 and they were thoroughly mixed through ball milling with φ3mm zirconia balls and ethanol in a polyethylene pot for 100 h. After drying, the mixed powders were uniaxially pressed into a disk of φ19×~1mm thick in steel dies under 20 MPa. The disk was diced by a knife edge into cubes of between 0.5 and 1.3 mm, depending on the size of beads to be prepared. These cubes were spheroidized by a handmade granulator similar to that described in the literature.6) Since the diced cubes were soft, they were quickly spheroidized and reduced in size in the granulator. When the size became appropriate, the beads were taken out of the granulator and lightly sintered at 973K for 1 h in a platinum crucible. The beads were placed in the granulator again and subjected to final spheroidization. Intermediate sintering was necessary to obtain beads of high sphericity and smooth surface. These beads were finally sintered at 1773K for 2 h in a platinum crucible and quenched from 1273K by dipping the bottom of the platinum crucible in iced water. SEM pictures of a few spherical specimens are presented in Fig. 1, where good sphericity and a smooth surface are revealed. The microstructure of a polished and thermally etched cross-section of a sphere is shown in Fig. 2. It shows densely packed grains with no extraneous defects. The wrinkles observed in some grains are the terraces resulting from preferential thermal etching for certain surface orientations. The average grain size was determined to be 0.6 μm using the linear intercept method.」(第1786頁左欄第38行~右欄第20行) (当審仮訳:2.2 小型球状試料の作製 ・・・ZrO2(TZ-0、東ソー社製)とZrO2-3mol%Y2O3(TZ-3Y、東ソー社製、日本)の粉末を、100gのZrO2-1.5mol%Y2O3となるように適量ずつ秤り取り、φ3mmのジルコニアボールとエタノールを用いて100時間ポリエチレンポット内でボールミリングで十分に混合した。乾燥後、混合粉末を、鋼製金型で20MPa下、φ19×~1mm厚の円盤に一軸プレス成形した。円盤を、調製するビーズのサイズに応じて、0.5~1.3mmの立方体にナイフエッジで切断した。これらの立方体を文献6)に記載されているものと同様の手作りの造粒機で球状化した。切断された立方体は柔らかく、造粒機中で急速に球状化しサイズが小さくなった。適切な大きさになったらビーズを造粒機から取り出して、白金るつぼ中で 973Kで1時間、軽く焼結した。ビーズを再び造粒機に入れ、最終的な球状化を行った。高い真球度と滑らかな表面のビーズを得るには中間焼結が必要であった。これらのビーズを最終的に白金るつぼ中で1773Kで2時間焼結し、白金るつぼの底を氷水に浸すことによって1273Kから急冷した。 数個の球状試料のSEM写真が図1に示されており、良好な球形度と滑らかな表面が確認できる。研磨及び熱エッチングされた球体の断面の微細構造を図2に示す。これは、外来欠陥がない密に詰まった結晶粒を示している。一部の結晶粒に観察されるしわは、特定の面方位に対して優先的に熱エッチングを行ったことにより生じた段差である。平均粒径は、直線切片法を用いて0.6μmと決定された。) (2) 甲第2号証の記載について 甲第2号証には、楠大樹によって令和5年5月15日から6月9日に行われた実験に関して、以下の内容が記載されている。 ア 「“Size-Dependence of Martensite Transformation Temperature of Yttria-Doped Zirconia and the Distribution of Nucleation Sites”(甲1)の “2.2 Preparation of small spherical specimens”に記載された手順で、ZrO2(TZ-0、東ソー株式会社製)とZrO2-3mol%Y2O3(TZ-3Y、東ソー株式会社製)の粉末を混合して調整したジルコニア粉末を、特許第7195481号に記載された手順に沿って分析し、特許第7195481号の請求項1~5、7で特定される各特性を求めることを目的とする。」 イ 「4-1.ジルコニア混合粉末の調製 (1)東ソー株式会社製のZrO2粉末(商品名:TZ-0、ロット番号: ZY001037P)と、東ソー株式会社製のZrO2-3mol%Y2O3粉末(商品名:TZ-3Y、ロット番号:Z301947P)を、50gずつ秤量した。 (2)ポリエチレンポット(容量:500mL)に秤量した各粉末を入れ、直径3mmのジルコニアボール(1kg)と、エタノール(100g)とを加え、100時間、湿式で粉砕混合を行った。 (3)粉砕混合で得られたスラリーをシャーレに移し、ドラフト内で約3日間乾燥させた。その後、乾燥器内にシャーレを移動し、110℃で3時間乾燥させることでエタノールを完全に蒸発させた。その後、乾燥物を乳鉢を用いて解砕して、計算上Y2O3を3mol%含有するジルコニア混合粉末を得た。」 ウ 「4-2.ジルコニア混合粉末の分析 以下のとおり、特許第7195481号の発明の詳細な説明に記載された方法と同様の方法で、4-1で調製したジルコニア混合粉末の評価を行った。」 エ 「4-3.分析結果 4-1に記載の手順に沿って調整したジルコニア混合粉末を、4-2に記載の手順に沿って分析した結果は、以下の表1に示すとおりであった。 [図:0001412293000001.jpg] 」 (3) 甲第3号証の記載について 甲第3号証には、「焼結されたセラミック材料、焼結されたセラミック材料を得るための粉末組成物、その製造方法及びセラミック部品」(発明の名称)に関して、以下の内容が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、イットリアで安定化されたジルコニア粉末から得られる、高い破壊靱性及び曲げ強度を有する焼結されたセラミック材料、前記材料を得るための粉末組成物、焼結されたセラミック部品、その製造方法及び可能な用途を開示する。」 イ 「【0014】 破壊靱性の計算は、硬度の計算に用いる押し込みによって生じる割れ目の大きさを使う圧痕法(indentation method)に基づいて行ってもよい。本明細書で得られ、提示された結果は、パルムクビストタイプの破壊を考慮している。このタイプの破壊に関しては、ニイハラの式が、98.07N(HV10)の力で10秒間押し込むときの破壊靱性を計算するために使用された。Niihara, K., Morena, R., and Hasselman, D.P.H., "A fracture mechanics analysis of identation induced" - Palmqvist crack in ceramics. J. Mater. Sci. Lett., 1983, 2(5) 221-3。 【0015】 本材料の曲げ強度は、イットリアで安定化された正方晶ジルコニア(Y-TZP)に関して、20℃で、ISO 6872:2008 (E):"Dentistry - Ceramic materials"に記載されているように、2軸性曲げ手法(英語表現“biaxial bending strength”から)によって測定された。」 ウ 「【0029】 結晶相/相のパーセント/結晶の大きさの同定と定量とは、利用可能ないくつかの方法で決定できる。例えば、本粉末のキャラクタリゼーションで使用された方法は、X線回折法が選択された(Bruker D8 Advance x-ray diffractometerを使用)。相定量と結晶サイズの計算では、ブルカー(Bruker)AXSのDiffracPlus TOPAS ソフトウェアを使ったリートベルト精密化(Rietveld refinement)を適用した。使用した基準は、「ASTM F1873-98 手術移植用の高純度 高密度イットリア正方晶酸化ジルコニウム多結晶(Y-TZP)の標準規格(2007年取り下げ)」である。結晶のサイズは、得られた回折図の主ピークの高さの半値における幅(FWHM)を考慮するシェラーの式によって決定される。Patterson, A. L., The Scherrer formula for x-ray particle size determination. Phys. Rev., 1939, 56(10) 978-92. Rodriguez-Carvajar, J., Recent advances in magnetic structure determination by neutron power diffraction. Physica B: Condensed Matter., 1993, 192(1-2) 55-69。」 エ 「【0035】 さらに良い結果が、0.2と1%モル(アルミナ)/モル(最終組成物)の間でさらにアルミナでドープされた、イットリアで安定化されたジルコニア粉末組成物に関して得られる。」 オ 「【実施例】 【0069】 表1は、機械的性質、特に、曲げ強度と破壊靱性とに関し、焼結されたセラミック材料に関して幾回かのキャラクタリゼーション試験が行われたいくつかの実施態様を示す。 【0070】 試験1~7(イットリア含量の効果) EDS(エマルション合成デトネーション)により得られた、イットリアで安定化されたジルコニアの粉末のこの一連の試験サンプルに関しては、化学純度が99.9%(ジルコニア+ハフニウム+イットリア+アルミナに関して表されたとき)よりも大きく、粒子サイズのd50が250nmであり、0.40%アルミナでドープされた粉末が使用された。ここで、1.7%、1.8%、1.9%、2%、2.1%、2.25%、2.5%及び3モル%の異なるイットリアのモルパーセントが試験された。原料粉末に関する残りの制御パラメータは、表面積、結晶サイズ、を含む。異なるイットリア含量を有する粉末サンプルは、ディメンショナルダイ(dimensional die)(キャビティ直径が20nm)の内部で、70MPaで、30秒間、一軸プレスにより成形された。続いて、全てのサンプルが1350℃まで2.0℃/分の加熱速度で焼結サイクルを受け、1350℃で2時間留め、ついで室温にまで5℃/分の速度で冷却された。表1に示す結果が得られた。 【0071】 【表1】 [図:0001412293000002.jpg] 」 (4) 甲第4号証の記載について 甲第4号証には、「ジルコニア焼結体およびその製造方法」(発明の名称)に関して、以下の内容が記載されている。 ア 「〔技術分野〕 本発明は、完全安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニアならびにアルミナ含有部分安定化ジルコニア(以下「ジルコニア」と総称する。ただし、特記した場合を除く。)を含むジルコニア焼結体およびその製造方法に関する。 さらに詳しくは、ジルコニア焼結体製造用の易焼結性原料粉末の製造方法、該方法で製造した原料粉末を、成形、焼結する高密度ジルコニア焼結体の製造方法、および、前記の組合せで得られる新規な組成のY2O3部分安定化ジルコニア焼結体ならびにアルミナ含有部分安定化ジルコニア焼結体に関する。」(明細書第1頁第4~13行) イ 「実施例1 易焼結性原料粉末および焼結体の製造 (1) 焼結体製造用原料粉末の製造 試料(1-1) ZrOCl2およびYC13を酸化物モル換算:Y2O3/(Y2O3+ZrO2)=0.03の比率で含有する混合水溶液に、アンモニア水を添加してpHを調整し、混合水酸化物を共沈させた。共沈水酸化物を濾取、乾燥し、Y2O3部分安定化ジルコニア前駆体粉末を得た。 得られた前駆体粉末の一部を、800℃の温度で1時間仮焼し、Y2O3部分安定化ジルコニア粉末を得た。 遷移金属化合物として、下記の化合物をエタノ一ルに溶解または分散し、遷移金属化合物溶液または分散液を調整した。 溶 液 分散液 Mn:Mn(CH3COO)2・4H20 MnO2 Fe:Fe(NO3)3・9H20 Fe(OH)3 Co:Co(CH3COO)2・4H20 CoO Ni:Ni(NO3)2・6H20 Ni(OH)2 Cu:Cu(CH3COO)2 CuO Zn:Zn(CH3COO)2・2H20 ZnO 調整した遷移金属化合物溶液または分散液に、前記製造した部分安定化ジルコニア粉末を添加懸濁した後、エタノールを留去、乾燥して遷移金属化合物の被着したY2O3部分安定化ジルコニア焼結体製造用原料粉末(1-1)を得た。」(明細書第12頁第2~23行) ウ 「(4) 評価試験 得られた焼結体の密度の測定および得られた焼結体の一部について、JIS R-1601(1981)に基づき3点曲げ試験を行った。」(明細書第14頁第22~24行) エ 「実施例2 Y2O3部分安定化ジルコニア焼結体およびその製造 (1) 原料粉末の製造 実施例1の試料(1-1)の製造過程における前駆体粉末の製造において、ZrOCl2とYC13との混合比を変え、共沈水酸化物を得た。 該共沈水酸化物を実施例1と同一の条件で処理し、Y2O3含有率の異なる部分安定化ジルコニア粉末を得た。 試料(2-1) 得られた部分安定化ジルコニア粉末を、実施例1で使用した遷移金属化合物の溶液により同一の条件で処理し、焼結体製造用の原料粉末(2-1)を得た。 試料(2-2) 前記製造した共沈水酸化物の乾燥粉末を、試料(2-1)と同一の条件で処理し、さらに800℃の温度で1時間仮焼し、焼結体製造用の原料粉末(2-2)を得た。 ・・・ (2) 焼結体の製造 得られた原料粉未(2-1)~(2-3)を、実施例1と同一の条件で成形した後、大気圧下、所定の温度で3時間焼結し、Y2O3部分安定化ジルコニア焼結体を得た。」(明細書第20頁第1~22行) オ 「第4表に、原料粉末(2-2)ならびに(2-3)およびそれらを使用した焼結体の諸特性を示す。 ・・・ (C) 部分安定化ジルコニア焼結体の破壌靱性値:KIC ビッカース圧痕法によった。 鏡面研磨した試料の表面に、ビッカース圧子を打ち込み、得られた圧痕の大きさ、および、圧痕から発生した亀裂の長さから、新原等の提案による下記式により算出した。圧子の打ち込み荷重は、50kgfとした。 (KICΦ/H a1/2)(H/EΦ)0.4 = 0.035(l/a)-1/2 Φ:拘束係数(~3) H:ビッカース硬度 E:弾性係数 a:圧痕の対角線の長さの1/2 l:圧痕から発生した亀裂の長さ (D) 部分安定化ジルコニア焼結体の曲げ強度 JIS R-1601 (1981)の規定に基づき測定した。 3×4×40mmの試料を使用し、スパン;30mmおよびクロスヘッドスピード;0.5mm/minの条件で測定し、5試料の平均値を求めた。 (E) 部分安定化ジルコニア焼結体の正方晶相含有率 試料の表面を、3μmのダイヤモンドスラリーで研磨した後、X線回折を行い、次式により算出した。 [図:0001412293000003.jpg] (111)t:正方晶(111)面回折強度 (lll)m:単斜晶(111)面回折強度 (lll)m:単斜晶(111)面回折強度 (lll)t回折ピークは、立方晶の(lll)c回折ビークを含むが、全て正方晶として計算した。」(明細書第21頁第5行~第22頁第12行) カ 「 [図:0001412293000004.jpg] 」(明細書第25頁) 3 当審の判断 (1) 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)について ア 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の前記2(1)イの記載を「混合粉末」及び「小型球状試料」に注目して整理すると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる。 (甲1発明1) 「ZrO2(TZ-0、東ソー社製)とZrO2-3mol%Y2O3(TZ-3Y、東ソー社製、日本)の粉末を、100gのZrO2-1.5mol%Y2O3となるように適量ずつ秤り取り、φ3mmのジルコニアボールとエタノールを用いて100時間ポリエチレンポット内でボールミリングで十分に混合し、乾燥して得られた混合粉末。」 (甲1発明2) 「甲1発明1の混合粉末を、鋼製金型で20MPa下、φ19×~1mm厚の円盤に一軸プレス成形し、0.5~1.3mmの立方体にナイフエッジで切断し、造粒機で球状化して、適切な大きさになったらビーズを造粒機から取り出して、白金るつぼ中で973Kで1時間、軽く焼結し、ビーズを再び造粒機に入れ、最終的な球状化を行い、これらのビーズを最終的に白金るつぼ中で1773Kで2時間焼結して得られた、平均粒径が0.6μmの小型球状試料。」 イ 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲1発明1の対比 甲1発明1の「混合粉末」は、「ZrO2(TZ-0、東ソー社製)とZrO2-3mol%Y2O3(TZ-3Y、東ソー社製、日本)の粉末を、100gのZrO2-1.5mol%Y2O3となるように」「混合し」で得られたものであるから、本件発明1の「安定化剤を含み」、「前記安定化剤が」、「Y2O3」「であり、前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であ」る「ジルコニア粉末」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明1とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 (相違点1) 本件発明1の「ジルコニア粉末」の細孔分布は、「水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が38nm以上113nm以下であり、細孔容積が0.25ml/g以上0.45ml/g以下であり、細孔分布幅が41nm以上138nm以下である」のに対して、甲1発明1では、「混合粉末」の細孔分布が明らかでない点。 (イ) 相違点1の検討 甲第2号証の「実験成績証明書」には、前記2(2)アによれば、甲第1号証の「2.2 Preparation of small spherical specimens」に記載された手順で、ZrO2(TZ-0、東ソー株式会社製)とZrO2-3mol%Y2O3(TZ-3Y、東ソー株式会社製)の粉末を混合して調製したジルコニア粉末を分析して、本件発明1で特定された特性を求めたとされている。 しかしながら、甲第1号証の「2.2 Preparation of small spherical specimens」に記載された手順は、前記2(1)イに摘記したように、「ZrO2(TZ-0、東ソー社製)とZrO2-3mol%Y2O3(TZ-3Y、東ソー社製、日本)の粉末を、100gのZrO2-1.5mol%Y2O3となるように適量ずつ秤り取り、φ3mmのジルコニアボールとエタノールを用いて100時間ポリエチレンポット内でボールミリングで十分に混合し」、「乾燥」するものであるのに対して、甲第2号証に記載された「ジルコニア混合粉末の調製」は、前記2(2)イに摘記した手順であって、少なくとも、「ボールミリング」における「ジルコニアボールとエタノール」の使用量、「乾燥」における具体的条件、及び、「乾燥」後の解砕の有無の点で甲第1号証に記載された手順と相違しているため、甲第2号証において調製された「ジルコニア混合粉末」は、甲第1号証に記載された手順で調製された「ジルコニア粉末」、すなわち、甲1発明1の「混合粉末」であるといえない。 よって、甲1発明1の「混合粉末」の細孔分布は、前記2(2)エに摘記した「分析結果」の測定値であるということはできない。 また、甲第3~12号証には、ジルコニア粉末の細孔分布を相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることについて、記載も示唆もされていないし、また、このことが周知技術であるもいえない。 よって、甲1発明1が、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を満たしているといえないし、また、甲1発明1において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることが、当業者によって容易想到の事項であるともいえない。 (ウ) 小括 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第1号証に記載された発明、甲第3~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 ウ 本件発明2、3、5~9、16について 本件発明2、3、5~9、16は、何れも本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記イの本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明2、5、7は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明2、3、5~9、16は、甲第1号証に記載された発明、甲第3~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 エ 本件発明10について (ア) 本件発明10と甲1発明2の対比 甲1発明2の「小型球状試料」は、「甲1発明1の混合粉末を、鋼製金型で20MPa下、φ19×~1mm厚の円盤に一軸プレス成形し、0.5~1.3mmの立方体にナイフエッジで切断し、造粒機で球状化して、適切な大きさになったらビーズを造粒機から取り出して、白金るつぼ中で973Kで1時間、軽く焼結し、ビーズを再び造粒機に入れ、最終的な球状化を行い、これらのビーズを最終的に白金るつぼ中で1773Kで2時間焼結して得られた」ものであり、そして、「甲1発明1の混合粉末」は、前記イ(ア)で検討したとおりであるから、本件発明10の「安定化剤を含み」、「前記安定化剤が」、「Y2O3」「であり、前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であ」る「ジルコニア焼結体」に相当する。 したがって、本件発明10と甲1発明2とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 (相違点2) 本件発明10の「ジルコニア焼結体」は、「結晶相に含まれる単斜晶相率が0.2%以上5%以下であり、IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さが1μm以上90μm以下であり、3点曲げ強度が80kg/mm2以上150kg/mm2以下である」との特性を有しているのに対して、甲1発明2の「小型球状試料」は、その点が明らかでない点。 (イ) 相違点2の検討 甲第3~12号証には、ジルコニア焼結体の特性を相違点2に係る本件発明10の発明特定事項とすることについて、記載も示唆もされていないし、また、このことが周知技術であるもいえないから、甲1発明2において、相違点2に係る本件発明10の発明特定事項とすることが、当業者によって容易想到の事項であるといえない。 (ウ) 小括 したがって、本件発明10は、甲第1号証に記載された発明、甲第3~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 オ 本件発明11、12、14、15について 本件発明11、12、14、15は、何れも本件発明10の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記エの本件発明10についての検討と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、甲第3~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 カ 申立理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由1に理由はない。 (2) 申立理由2(甲第3号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)について ア 甲第3号証に記載された発明 (ア) 甲第3号証には、前記2(3)ア~オによれば、「イットリアで安定化されたジルコニア粉末から得られる、高い破壊靱性及び曲げ強度を有する焼結されたセラミック材料、前記材料を得るための粉末組成物」(【0001】)に関して、次の事項が記載されているといえる。 a 実施例の「試験6」において、「EDS(エマルション合成デトネーション)により得られた」、「粒子サイズのd50が250nmであり、0.40%アルミナでドープされ」、「イットリア」の含有量が「1.8」「モルパーセント」である「イットリアで安定化されたジルコニアの粉末」が「使用された」こと(【0070】)。 b 「試験6」の「イットリアで安定化されたジルコニアの粉末」は、「BET(m2/g)」が「26」であること(【0071】【表1】)。 c アルミナのドープ量の単位は、「モル%」であること(【0035】)。 d 「試験6」の「イットリアで安定化されたジルコニアの粉末」から得られた「焼結されたセラミック材料」の「正方晶相%」が「95」であり、「破壊靭性(MPa・m1/2)」が「22.0」であり、「曲げ強度(MPa)」が「1270」であること(【0071】【表1】)。 e 「破壊靭性」は、「98.07N(HV10)の力で10秒間押し込」んだ「圧痕法」で測定されたものであること(【0014】)。 f 「曲げ強度」は、「2軸性曲げ手法」で測定されたものであること(【0015】)。 g 「結晶相/相のパーセント」の「同定と定量」は、「X線回折法」で測定されたものであること(【0029】)。 (イ) 前記(ア)の記載事項を、実施例の「試験6」の「ジルコニア粉末」及び「セラミックス材料」に注目して整理すると、甲第3号証には、次の発明が記載されていると認められる。 (甲3発明1) 「EDS(エマルション合成デトネーション)により得られた、1.8モル%のイットリアで安定化されたジルコニアの粉末であって、 粒子サイズのd50が250nmであり、 BET表面積が26m2/gであり、 0.40モル%アルミナがドープされたジルコニアの粉末。」 (甲3発明2) 「1.8モル%イットリアで安定化され、0.40モル%のアルミナがドープされたジルコニアの粉末の焼結されたセラミック材料であって、 X線回折法で測定された結晶相に含まれる正方晶相が95%であり、 98.07N(HV10)の力で10秒間押し込んだ圧痕法で測定された破壊靭性が22.0MPa・m1/2であり、 2軸性曲げ手法で測定された曲げ強度が1270MPaである、焼結されたセラミック材料。」 イ 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲3発明1の対比 甲3発明1の「1.8モル%のイットリアで安定化されたジルコニアの粉末」は、本件発明1の「安定化剤を含み」、「前記安定化剤が」、「Y2O3」「であり、前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であ」る「ジルコニア粉末」に相当する。 したがって、本件発明1と甲3発明1とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 (相違点3) 本件発明1の「ジルコニア粉末」の細孔分布は、「水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が38nm以上113nm以下であり、細孔容積が0.25ml/g以上0.45ml/g以下であり、細孔分布幅が41nm以上138nm以下である」のに対して、甲3発明1の「ジルコニアの粉末」は、「粒子サイズのd50が250nmであり、BET表面積が26m2/g」であるが、その細孔分布が明らかでない点。 (イ) 相違点3の検討 粉末の粒子サイズ、BET表面積、細孔分布における細孔容積分布、ピークトップ径及び細孔分布幅は、それぞれ異なるパラメータであって、粒子サイズ及びBET表面積が決まると、その細孔分布における細孔容積分布、ピークトップ径及び細孔分布幅が一義的に定まるものではないから、甲3発明1の「ジルコニアの粉末」が、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を満たしているということはできない。 また、甲第1、4~12号証には、ジルコニア粉末の細孔分布を相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることについて、記載も示唆もされていないし、また、このことが周知技術であるもいえないから、甲3発明1において、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることが、当業者によって容易想到の事項であるともいえない。 (ウ) 小括 したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第3号証に記載された発明、甲第1、4~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 ウ 本件発明2、3、5~9、16について 本件発明2、3、5~9、16は、何れも本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記イの本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明2、3、5~8、16は、甲第3号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明2、3、5~9、16は、甲第3号証に記載された発明、甲第1、4~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 エ 本件発明10について (ア) 本件発明10と甲3発明2の対比 甲3発明2の「1.8モル%イットリアで安定化され」た、「ジルコニアの粉末の焼結されたセラミック材料」は、本件発明10の「安定化剤を含み」、「前記安定化剤が」、「Y2O3」「であり、前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であ」る「ジルコニア焼結体」に相当する。 したがって、本件発明10と甲3発明2とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 (相違点4) 本件発明10の「ジルコニア焼結体」は、「結晶相に含まれる単斜晶相率が0.2%以上5%以下」であるのに対して、甲3発明2の「セラミック材料」は、「X線回折法で測定された結晶相に含まれる正方晶相が95%」である点。 (相違点5) 本件発明10の「ジルコニア焼結体」は、「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さが1μm以上90μm以下であり、3点曲げ強度が80kg/mm2以上150kg/mm2以下である」のに対して、甲3発明2の「セラミック材料」は、「98.07N(HV10)の力で10秒間押し込んだ圧痕法で測定された破壊靭性が22.0MPa・m1/2であり、2軸性曲げ手法で測定された曲げ強度が1270MPa」である点。 (イ) 相違点5の検討 事案に鑑み、まず、相違点5について検討する。 ジルコニア焼結体の「98.07N(HV10)の力で10秒間押し込んだ圧痕法で測定された破壊靭性」及び「2軸性曲げ手法で測定された曲げ強度」によって、「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さ」及び「3点曲げ強度」が一義的に定まるとの技術常識はないから、甲3発明2の「セラミック材料」が、相違点5に係る本件発明10の発明特定事項を満たしているということはできない。 また、甲第1、4~12号証のいずれにも、ジルコニア焼結体の「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さ」を「1μm以上90μm以下」とするとともに、「3点曲げ強度」を「80kg/mm2以上150kg/mm2以下」とすることは記載も示唆もされていないし、このことが周知技術であるとの証拠もないから、甲3発明2において、相違点5に係る本件発明10の発明特定事項とすることが、当業者によって容易想到の事項であるともいえない。 (ウ) 申立人の主張について a 申立人の主張の概要 申立人は、(i)甲3発明2の「2軸性曲げ手法で測定された曲げ強度が1270MPa」は、本件発明10の「曲げ強度」と測定方法が異なるものの、当業者の技術常識からすれば、本件発明10の「3点曲げ強度が80kg/mm2以上150kg/mm2以下」の数値範囲に含まれる蓋然性が高いこと、及び(ii)本件特許明細書の【0165】【表3】の「靱性50kgf」及び「亀裂長50kgf」が値から作成したグラフを根拠にして、甲3発明2の「破壊靭性が22.0MPa・m1/2」のセラミック材料の亀裂長さは20~25μm程度であって、本件発明10の「亀裂長さが1μm以上90μm以下」の数値範囲に含まれることを論拠として、相違点5は実質的な相違点でないことを主張している(特許異議申立書第36~38頁の「(ア)本件発明10」参照)。 b 申立人の主張に対する判断 申立人の上記(i)の主張を検討すると、申立人は、「2軸性曲げ手法で測定された曲げ強度が1270MPa」であることが、「3点曲げ強度が80kg/mm2以上150kg/mm2以下」の数値範囲に含まれることについて、具体的な証拠を示していない。 次に、申立人の上記(ii)の主張を検討すると、甲3発明2の「破壊靱性」は、本件特許明細書の【0158】に記載された「靱性値」の算出式で得られたものであるのか明らかでない上、そもそも、甲3発明2の「98.07N(HV10)の力で10秒間押し込んだ圧痕法で測定された破壊靱性」と「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さ」との関係が、申立人の主張するグラフに当てはまる確証もない。 したがって、申立人の主張はいずれも採用できない。 (ウ) 小括 したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明10は、甲第3号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第3号証に記載された発明、甲第1、4~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 オ 本件発明11、12、14、15について 本件発明11、12、14、15は、何れも本件発明10の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記エの本件発明10についての検討と同様の理由により、本件発明12、15は、甲第3号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明11、12、14、15は、甲第3号証に記載された発明、甲第1、4~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 カ 申立理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由2に理由はない。 (3) 申立理由3(甲第4号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)について ア 甲第4号証に記載された発明 (ア) 甲第4号証には、前記2(4)ア~カによれば、「ジルコニア焼結体製造用の易焼結性原料粉末の製造方法、該方法で製造した原料粉末」から得られた「Y2O3部分安定化ジルコニア焼結体」(前記2(4)ア参照)に関して、次の事項が記載されているといえる。 a 実施例2の「焼結体製造用の原料粉末(2-2)」について、「ZrOCl2およびYC13」の「混合水溶液に、アンモニア水を添加してpHを調整し、混合水酸化物を共沈させ」、「共沈水酸化物を濾取、乾燥し、Y2O3部分安定化ジルコニア前駆体粉末」とし、この「前駆体粉末」を「800℃の温度で1時間仮焼し、Y2O3部分安定化ジルコニア粉末」とし、「遷移金属化合物溶液」に「前記製造した部分安定化ジルコニア粉末を添加懸濁した後、エタノールを留去、乾燥して遷移金属化合物の被着し」、「さらに800℃の温度で1時間仮焼し、焼結体製造用の原料粉末(2-2)を得た」こと(前記2(4)イ、エ参照)。 b 「焼結体製造用の原料粉末(2-2)」について、「遷移金属」である「Zn」の「被着量原子%」が「0.3」、「Y2O3含有率モル%」が「1.7」、「結晶子径Å」が「230」、「比表面積m2/g」が「28.5」であること(前記2(4)カ参照)。 c 前記a及びbで特定される「焼結体製造用の原料粉末(2-2)」から得られた「Y2O3部分安定化ジルコニア焼結体」について、「破壊靱性値(KIC)MN/m3/2」が「14.8」、「曲げ強度Kg/mm2」が「148」、「正方晶含有率%」が「>95」であること(前記2(4)エ、カ参照)。 d 「破壊靭性値」は、「圧子の打ち込み荷重」を「50kgfとした」「ビッカース圧痕法」で測定されたものであり、「曲げ強度」は、「3点曲げ試験」で測定されたものであり、「正方晶含有率」は、「X線回折」で測定されたものであること(前記2(4)ウ、オ参照)。 (イ) 前記(ア)の記載事項を、実施例2の「原料粉末(2-2)」及び「原料粉末(2-2)」から得られた「Y2O3部分安定化ジルコニア焼結体」に注目して整理すると、甲第4号証には、次の発明が記載されていると認められる。 (甲4発明1) 「ZrOCl2及びYC13の混合水溶液に、アンモニア水を添加してpHを調整し、混合水酸化物を共沈させ、共沈水酸化物を濾取、乾燥し、Y2O3部分安定化ジルコニア前駆体粉末とし、この前駆体粉末を800℃の温度で1時間仮焼し、Y2O3部分安定化ジルコニア粉末とし、遷移金属化合物溶液に前記部分安定化ジルコニア粉末を添加懸濁した後、エタノールを留去、乾燥して、遷移金属化合物の被着し、さらに800℃の温度で1時間仮焼して得られた、ジルコニア焼結体製造用焼結体製造用の易焼結性原料粉末であって、 Y2O3含有率が1.7モル%であり、 Znの被着量が0.3原子%であり、 結晶子径が230Åであり、 比表面積が28.5m2/gである、易焼結性原料粉末。」 (甲4発明2) 「Y2O3含有率が1.7モル%であり、 X線回折で測定された正方晶含有率が>95%であり、 圧子の打ち込み荷重を50kgfとしたビッカース圧痕法で測定された破壊靱性値(KIC)が14.8 MN/m3/2であり、 3点曲げ試験で測定された曲げ強度が148Kg/mm2である、Y2O3部分安定化ジルコニア焼結体。」 イ 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲4発明1の対比 甲4発明1の「ジルコニア焼結体製造用焼結体製造用の易焼結性原料粉末」は、「Y2O3部分安定化ジルコニア粉末」を「遷移金属化合物溶液」で「懸濁した後、エタノールを留去、乾燥して、遷移金属化合物の被着し、さらに800℃の温度で1時間仮焼して得られた」ものであり、「Y2O3含有率が1.7モル%」であるから、本件発明1の「安定化剤を含み」、「前記安定化剤が」、「Y2O3」「であり、前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であ」る「ジルコニア粉末」に相当する。 したがって、本件発明1と甲4発明1とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 (相違点6) 本件発明1の「ジルコニア粉末」の細孔分布は、「水銀圧入法に基づく細孔分布における10nm以上200nm以下の範囲において、細孔容積分布のピークトップ径が38nm以上113nm以下であり、細孔容積が0.25ml/g以上0.45ml/g以下であり、細孔分布幅が41nm以上138nm以下である」のに対して、甲4発明1の「易焼結性原料粉末」は、「結晶子径が230Åであり、比表面積が28.5m2/gである」が、その細孔分布が明らかでない点。 (イ) 相違点6の検討 前記(2)イ(イ)で検討したとおり、ジルコニア粉末の結晶子径及び比表面積によって、その細孔分布における細孔容積分布、ピークトップ径及び細孔分布幅が一義的に定まるものではないから、甲4発明1の「易焼結性原料粉末」が、相違点6に係る本件発明1の発明特定事項を満たしているということはできない。 また、甲第1、3、5~12号証には、ジルコニア粉末の細孔分布を相違点6に係る本件発明1の発明特定事項とすることについて、記載も示唆もされていないし、また、このことが周知技術であるもいえないから、甲4発明1において、相違点6に係る本件発明1の発明特定事項とすることが、当業者によって容易想到の事項であるともいえない。 (ウ) 小括 したがって、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第4号証に記載された発明、甲第1、3、5~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 ウ 本件発明2、3、5~9、16について 本件発明2、3、5~9、16は、何れも本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記イの本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明3、5、6、9、16は、甲第4号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明2、3、5~9、16は、甲第4号証に記載された発明、甲第1、3、5~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 エ 本件発明10について (ア) 本件発明10と甲4発明2の対比 甲4発明2の「Y2O3含有率が1.7モル%」である「Y2O3部分安定化ジルコニア焼結体」は、本件発明10の「安定化剤を含み」、「前記安定化剤が」、「Y2O3」「であり、前記安定化剤がY2O3である場合、ジルコニア粉末全体に対する前記Y2O3の含有量が、1.5mol%以上1.9mol%以下であ」る「ジルコニア焼結体」に相当する。 また、甲4発明2の「3点曲げ試験で測定された曲げ強度が148Kg/mm2である」ことは、本件発明10の「3点曲げ強度が80kg/mm2以上150kg/mm2以下である」ことに相当する。 したがって、本件発明10と甲4発明2とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 (相違点7) 本件発明10の「ジルコニア焼結体」は、「結晶相に含まれる単斜晶相率が0.2%以上5%以下」であるのに対して、甲4発明2の「ジルコニア焼結体」は、「X線回折で測定された正方晶含有率が>95%」である点。 (相違点8) 本件発明10の「ジルコニア焼結体」は、「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さが1μm以上90μm以下」であるのに対して、甲4発明2の「ジルコニア焼結体」は、「圧子の打ち込み荷重を50kgfとしたビッカース圧痕法で測定された破壊靱性値(KIC)が14.8 MN/m3/2」であり、「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さ」が明らかでない点。 (イ) 相違点8の検討 事案に鑑み、まず、相違点8について検討する。 前記(2)エ(イ)で検討したのと同様に、ジルコニア焼結体の「圧子の打ち込み荷重を50kgfとしたビッカース圧痕法で測定された破壊靱性値(KIC)」によって、「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さ」が一義的に定まるとの技術常識はないから、甲4発明2の「ジルコニア焼結体」が、相違点8に係る本件発明10の発明特定事項を満たしているということはできない。 また、甲第1、3、5~12号証のいずれにも、ジルコニア焼結体の「3点曲げ試験で測定された曲げ強度」を「80kg/mm2以上150kg/mm2以下」としつつ、「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さ」を「1μm以上90μm以下」とすることは記載も示唆もされていないし、このことが周知技術であるとの証拠もないから、甲4発明2において、「3点曲げ試験で測定された曲げ強度」を「148Kg/mm2」としつつ、相違点8に係る本件発明10の発明特定事項とすることが、当業者によって容易想到の事項であるともいえない。 (ウ) 申立人の主張について a 申立人の主張の概要 申立人は、前記(2)エ(ウ)aでの主張と同様に、本件特許明細書の【0165】【表3】の「靱性50kgf」及び「亀裂長50kgf」が値から作成したグラフを根拠にして、甲4発明2の「破壊靭性が14.8MPa・m1/2」のジルコニア焼結体の「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さ」は40~60μm程度である蓋然性が高いから、相違点8は実質的な相違点でないことを主張している(特許異議申立書第52~53頁の「<亀裂長さについて>」参照)。 b 申立人の主張に対する判断 前記(2)エ(ウ)bで検討したの同様に、甲4発明2の「破壊靱性」は、本件特許明細書の【0158】に記載された「靱性値」の算出式で得られたものであるのか明らかでない上、そもそも、甲4発明2の「圧子の打ち込み荷重を50kgfとしたビッカース圧痕法で測定された破壊靱性値(KIC)」と「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さ」との関係が、申立人の主張するグラフに当てはまる確証はないから、申立人の主張は採用できない。 (ウ) 小括 したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明10は、甲第4号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第4号証に記載された発明、甲第1、3、5~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 オ 本件発明11、12、14、15について 本件発明11、12、14、15は、何れも本件発明10の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記エの本件発明10についての検討と同様の理由により、本件発明12、14、15は、甲第4号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明11、12、14、15は、甲第4号証に記載された発明、甲第1、3、5~12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 カ 申立理由3についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由3に理由はない。 (4) 申立理由4(実施可能要件違反)について ア 具体的な指摘事項 設定登録時の請求項10に係る発明は、「ジルコニア焼結体」の「結晶相に含まれる単斜晶相率が0.2%以上5%以下であり」、「3点曲げ強度が80kg/mm2以上150kg/mm2以下である」ことを特定している。これらの点に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「単斜晶相率」を安定化剤含有量や焼結温度により制御できること【0109】、及び、「3点曲げ強度」を単斜晶相率と相対焼結密度により制御できること【0112】が記載されているものの、実施例に記載されていない、単斜晶相率が3~5%のジルコニア焼結体、あるいは、3点曲げ強度が80~92kg/mm2のジルコニア焼結体を、どのようにしたらを得ることができるのかを当業者が理解できないため、発明の詳細な説明には、請求項10に係る発明及びこれを引用する請求項11~15に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 イ 実施可能要件適合性の判断 発明の詳細な説明の記載が、本件発明10~12、14、15に対して、実施可能要件を満たすことは、前記第4の2(2)ウで検討したとおりである。 そこで、前記アの指摘事項を改めて検討すると、本件特許明細書の【0007】及び【0012】に記載されているように、安定化剤が少なくなること、あるいは、焼結温度が高くなることで、正方晶相から単斜晶相への相転移の量が多くなることは技術常識であるし、また、実施例及び比較例における安定化剤量と単斜晶相率からも、安定化剤が少なくなることで単斜晶相率が高くなることが見て取れる。また、焼結温度が1200℃の実施例及び比較例における単斜晶相率と3点曲げ強度から、単斜晶相率が増加することで3点曲げ強度が低下することが見て取れる。 これらのことを踏まえれば、当業者であれば、例えば、単斜晶率が2.9%である実施例23を基準として、安定化剤が少なくしたり、焼結温度が高くして、単斜晶相率が3~5%のジルコニア焼結体を得ること、あるいは、3点曲げ強度が93kg/mm2である実施例22を基準として、単斜晶率を高くして、3点曲げ強度が80~92kg/mm2のジルコニア焼結体を得ることは、当業者の過度の試行錯誤を要することなく、実施できるものといえる。 したがって、発明の詳細な説明には、本件発明10~12、14,15について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 ウ 申立理由4についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由4に理由はない。 (5) 申立理由5(サポート要件違反)について ア 具体的な指摘事項 設定登録時の請求項10に係る発明の課題は、「高靱性なジルコニア焼結体」を提供することといえるところ、単斜晶相率が高いほど靱性が向上することは技術常識といえないし、本件特許明細書の【0007】の記載からは、単斜晶相率が高いほど靱性が低下すると理解するはずであるから、請求項10に係る発明の「結晶相に含まれる単斜晶相率が0.2%以上5%以下」のうち、本件特許明細書の実施例に具体的に記載されている最大値「2.9%」を超える範囲については、前記課題を解決できるといえない。よって、請求項10に係る発明及びこれを引用する請求項11~15に係る発明は、発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えている。 イ サポート要件適合性の判断 本件発明10は、前記第3に示したとおりの発明であって、「結晶相に含まれる単斜晶相率が0.2%以上5%以下であ」ることが特定されていることに加えて、さらに「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さが1μm以上90μm以下であ」ることが特定された「ジルコニア焼結体」の発明である。 そして、本件特許明細書には、「前記亀裂長さが1μm以上90μm以下であるため、靱性に優れる」こと(【0031】、【0110】)が記載され、さらに、実施例において、50kgf加重における亀裂長さが3~88μmのジルコニア焼結体が比較例と比べて高靱性であることが記載されていることを踏まえれば、「IF法による靭性測定において加重を50kgfとしたときに焼結体に発生する亀裂長さが1μm以上90μm以下であ」ることが特定された本件発明10は、単斜晶相率の数値に関わらず、当業者が前記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 また、本件発明10に係る請求項10の記載を引用する本件発明11、12、14、15についても同様である。 ウ 申立理由5についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由5に理由はない。 (6) 申立理由6(明確性要件違反)について ア 具体的な指摘事項 設定登録時の請求項2、6に記載された「比表面積」について、発明の詳細な説明には、BET法による比表面積の測定において、一点法と多点法のどちらを用いているのかの記載がなく、また、吸着されるガスの種類も記載されていないため、請求項2、6に記載された「比表面積」の数値範囲を一義的に確定することができないから、請求項2、6に係る発明は明確でない。 イ 明確性要件適合性の判断 本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0149】には、「ジルコニア粉末の比表面積を、比表面積計(「マックソーブ」マウンテック製)を用いてBET法にて測定した」ことが記載されており、当該測定装置で使用する吸着ガスは定まっていること、及び、BET法の一点法は、BETプロットが直線であることの確証が得られる場合に使用されることが技術常識であることを踏まえると、本件発明2の「比表面積が10m2/g以上50m2/g以下あ」るとの特定事項、及び、本件発明6の「前記比表面積が20m2/g以上40m2/g以下である」との特定事項が、第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確であるとはいえない。 ウ 申立理由6についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由6に理由はない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許1~3、5~12、14~16を取り消すことはできない。また、他に本件特許1~3、5~12、14~16を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項4、13は、前記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、これらの請求項に係る本件特許4、13に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700659

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決54件(土田 裕介、第一稀元素化学工業株式会社)
  • 2025-701016異議申立 / 2025-12-22 / 維持研磨用分散液
    同じ当事者: 第一稀元素化学工業株式会社
  • 2023-701055異議申立 / 2025-11-27 / 請求成立(取消)ポリオレフィン樹脂フィルム
    同じ当事者: 土田 裕介
  • 2021-700934異議申立 / 2024-10-29 / 訂正認容植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、お…
    同じ当事者: 土田 裕介
  • 2024-700291異議申立 / 2024-06-27 / 維持自動作業システム
    同じ当事者: 土田 裕介
  • 2024-700134異議申立 / 2024-06-25 / 維持抗ウィルス性基体
    同じ当事者: 土田 裕介
同じ論点・分野の審決(審決分類)110件(113・C01G、121・C01G、536・C01G ほか)
  • 2020-700662異議申立 / 2022-12-13 / 訂正認容リチウム金属複合酸化物粉末、リチウム二次電池用正極活物質、及びリチウム金属複合酸…
    共通の審決分類: 113・C01G、121・C01G、536・C01G、537・C01G ほか2件
  • 2022-700329異議申立 / 2022-12-13 / 訂正認容ペロブスカイト型化合物の製造方法およびペロブスカイト型化合物
    共通の審決分類: 113・C01G、121・C01G、536・C01G、537・C01G ほか2件
  • 2019-700382異議申立 / 2021-06-29 / 訂正認容ニッケルリチウム金属複合酸化物粉体及びその製造方法
    共通の審決分類: 113・C01G、121・C01G、536・C01G、537・C01G ほか2件
  • 2018-701076異議申立 / 2020-08-18 / 訂正認容遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法
    共通の審決分類: 113・C01G、121・C01G、536・C01G、537・C01G ほか2件
  • 2019-700536異議申立 / 2020-08-12 / 訂正認容低アルカリ性ニッケルリチウム金属複合酸化物粉体及びその製造方法
    共通の審決分類: 113・C01G、121・C01G、536・C01G、537・C01G ほか2件

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存