特許異議申立
2023-700268
電池
- 審判番号
- 2023-700268
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-560877
- 登録番号
- 7135001
- 請求日
- 2023年03月10日
- 審決日
- 2023年07月03日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社エンビジョンAESCジャパン
- 【権利者代理人】速水 進治
- 【権利者代理人】天城 聡
- 【異議申立人】田中 俊子
- 審判長/審判官
- 審判長 篠原 功一
- 審判官 渡辺 努
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7135001号発明「電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7135001号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7135001号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)11月15日(優先権主張 平成29年12月20日)を国際出願日とする出願であって、令和4年9月2日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和4年9月12日)がされた。
その後、令和5年3月10日に特許異議申立人田中俊子(以下、「特許異議申立人」という。)により本件の請求項1~7の特許に対する特許異議の申立てがなされ、甲第1号証ないし甲第6号証が提出された。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~7に係る特許発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
なお、本件特許発明1の各構成には、A~Dの符号を当審で付した。以下、「構成A」~「構成D」という。
「【請求項1】(本件特許発明1)
A 第1電極、第2電極及びセパレータを含み、前記第1電極と前記第2電極とが前記セパレータによって隔てられるように前記第1電極、前記第2電極及びセパレータが所定方向に積層されており、前記所定方向の一方の側の第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面の間にあって、 前記第1面側又は前記第2面側から見て第1方向に延伸している第1側面と、を有する積層体と、
B 前記第1電極に電気的に接続され、前記第1方向において前記積層体の両側のうちの一方に位置する第1リードと、
C1 前記積層体を包む1枚のシートからなり、前記第1面から前記第2面にかけて前記シートが前記第1側面に沿って折り返された第1部分と、
C2 前記第1方向において前記第1部分の両外側のうち前記第1リードが位置する側に位置していて、前記シートの前記第1部分より外側へ突出した折り返し部分が、前記第1方向に交わる方向に沿って折り曲げられている第2部分と、
C を含む外装材と、
D を備える電池。
【請求項2】(本件特許発明2)
請求項1に記載の電池において、
前記外装材は、前記第1方向において前記第1部分の両外側のうちのもう一方にあって、前記シートの前記第1部分より外側へ突出した折り返し部分が、前記第1方向に交わる方向に沿って折り曲げられている第3部分を含む電池。
【請求項3】(本件特許発明3)
請求項1又は2に記載の電池において、
前記積層体は、前記第1側面の反対側の第2側面を有し、
前記外装材は、互いに貼り合わされた部分を前記第2側面の外側に有する電池。
【請求項4】(本件特許発明4)
請求項1又は2に記載の電池において、
前記積層体は、前記第1側面の反対側の第2側面を有し、
前記外装材は、前記第1面から前記第2面にかけて前記シートが前記第2側面に沿って折り返された第4部分と、前記第1方向において前記第4部分の両外側のうちの一方にあって、前記シートの前記第4部分より外側へ突出した折り返し部分が、前記第1方向に交わる方向に沿って折り曲げられている第5部分と、を含む電池。
【請求項5】(本件特許発明5)
請求項4に記載の電池において、
前記外装材は、前記第1方向において前記第4部分の両外側のうちのもう一方にあって、前記シートの前記第4部分より外側へ突出した折り返し部分が、前記第1方向に交わる方向に沿って折り曲げられている第6部分を含む電池。
【請求項6】(本件特許発明6)
請求項4又は5に記載の電池において、
前記外装材は、互いに貼り合わされた部分を前記第1面の外側に有する電池。
【請求項7】(本件特許発明7)
請求項1から6までのいずれか一項に記載の電池において、
前記積層体は、前記第1面と前記第2面の間に5.0mm以上の厚さを有する電池。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人が申し立てた申立ての理由は、以下のとおりである。
請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
請求項4~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証~甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2016-119290号公報
甲第2号証:特開2014-99271号公報
甲第3号証:特開平11-120989号公報
甲第4号証:特開2013-225517号公報
甲第5号証:特開2005-71907号公報
甲第6号証:特開2000-90975号公報
第4 各甲号証について
1 甲第1号証に記載された発明
ア 【0017】、【0018】より、電池10の電極体20は、長尺帯状の正極体21および負極体25が、セパレータ29を介して積層され、捲回軸P1,P2の双方に対して直交する方向を長手方向とする直方体状に形成されている。また、【図1】~【図3】より、電池10の電極体20は、正極体21、負極体25、セパレータ29が積層されている方向に対して上側の面および下側の面を有し、上側の面と下側の面の間に長手方向の面を有するものである。
イ 【0035】より、電池10の正極端子41は、電極体20の正極体21の他端部に接続され、外装体30の外部へ導出されている。また、【図1】、【図5】~【図7】より、電池10の正極端子41は、電極体20の長手方向の一方の側に位置するものである。
ウ 【0028】より、電池10の外装体30は、電極体20を内包するように、1枚の矩形状のシート31を折り返して重ね合わせることにより形成されている。また、【図6】、【0033】より、シート31は、電極体20の長手方向に沿って折り返され、電極体20の上側の面から下側の面にかけて長手方向の面に沿っている。
すなわち、電池10の外装体30は、電極体20を内包するように、電極体20の長手方向に沿って折り返され、電極体20の上側の面から下側の面にかけて長手方向の面に沿っている1枚の矩形状のシート31より形成されるものである。
エ 上記ア~ウの記載から、甲第1号証には、電池について、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
なお、甲1発明の各構成には、a~dの符号を当審で付した。以下、「構成a」~「構成d」という。
(甲1発明)
a 長尺帯状の正極体および負極体が、セパレータを介して積層され、2つの捲回軸の双方に対して直交する方向を長手方向とする直方体状に形成され、正極体、負極体、セパレータが積層されている方向に対して上側の面および下側の面を有し、上側の面と下側の面の間に長手方向の面を有する電極体と、
b 電極体の正極体の他端部に接続され、外装体の外部へ導出され、電極体の長手方向の一方の側に位置する正極端子と、
c 電極体を内包するように、電極体の長手方向に沿って折り返され、電極体の上側の面から下側の面にかけて長手方向の面に沿っている1枚の矩形状のシートより形成される外装体
d を備える電池。
2 甲第2号証に記載された技術事項
ア 【0031】より、電池100は、外装体102と、発電要素120とを備えるものである。
イ 【0032】より、電池100の外装体102は、両端部が封止される前は、両端部が開口した筒形状であり、両端部が封止されることで形成されるものである。
ウ 【0059】~【0061】より、筒状の外装体102の両端部の一方から、発電要素120が挿入され、両端部が、溶着された結果、外装体102の両端部が封止され、外装体102の両端部にシール部103が形成されるものである。
エ 【0069】より、外装体102のシール部103の幅bは、発電要素120の外周にほぼフィットするように作成された外装体102の本体部(発電要素120を収容している部分)よりも広くなる、つまり、発電要素120の幅aよりも大きいものである。
オ 上記ア~エの記載から、甲第2号証には、
「外装体と、発電要素とを備え、
外装体は、両端部が封止される前は、両端部が開口した筒形状であり、両端部が封止されることで形成されるものであり、
筒状の外装体の両端部の一方から、発電要素が挿入され、両端部が、溶着された結果、外装体の両端部が封止され、外装体の両端部にシール部が形成され、
外装体のシール部の幅は、発電要素の外周にほぼフィットするように作成された外装体の本体部(発電要素を収容している部分)よりも広く、つまり、発電要素の幅よりも大きいものである
電池。」
という技術事項(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されている。
3 甲第3号証に記載された技術事項
ア 【0024】、【符号の説明】、【図3】より、電池ケース用の包装材料Fを用いて、ヒートシール部4、背貼り部5、開放部6を有するピロータイプの袋C0を形成することが記載されている。
イ 【0025】より、ポリマー電池Tは、電池ケースの開放部6から電池本体を挿入し、開放部をヒートシールして得られるものである。
ウ 【図3】より、ヒートシール部4の幅は、ヒートシール部4の部分を除くピロータイプの袋C0の幅より大きいものである。
エ 上記ア~ウの記載から、甲第3号証には、
「電池ケース用の包装材料を用いて、ヒートシール部、背貼り部、開放部を有するピロータイプの袋を形成し、
電池ケースの開放部から電池本体を挿入し、開放部をヒートシールして得られ、
ヒートシール部の幅は、ヒートシール部の部分を除くピロータイプの袋の幅より大きい
ポリマー電池T。」
という技術事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されている。
4 甲第4号証に記載された技術事項
ア 【0036】より、リチウムイオン電池1は、エンボス成形された外装体10にリチウムイオン電池本体を封入後、周縁部10bを密封シールして完成するものである。
イ 【0037】、【0038】より、リチウムイオン電池1はプラスチックケース19に収納され使用され、リチウムイオン電池1の小型化を図る場合、リチウムイオン電池1の外装体周縁シール部10bを折り曲げてプラスチックケース19に収納するものである。
ウ 上記ア、イの記載から、甲第4号証には、
「エンボス成形された外装体にリチウムイオン電池本体を封入後、周縁部を密封シールして完成するものであって、
プラスチックケースに収納され使用され、リチウムイオン電池の小型化を図る場合、リチウムイオン電池の外装体周縁シール部を折り曲げてプラスチックケースに収納する
リチウムイオン電池。」
という技術事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されている。
5 甲第5号証に記載された技術事項
ア 【0013】より、電池1は、発電要素であるセル2が電池容器4の中に密封された構造を有するものである。
イ 【0022】より、電池容器4は、セル2を収容するための凹部4pを有する容器本体4bと、蓋部4aとで構成され、容器本体4bの凹部4pにセル2を収容させた後に、蓋部4aを被せ、容器本体4bの凹部4pの開口を完全に塞ぐように蓋部4aを配置し、容器本体4bおよび蓋部4aの溶融した樹脂層33,33が一体になりながら固化し、これにより電池容器4内の気密を保持する融着代11が形成されるものである。
ウ 【0024】より、融着代11は、セル2の周囲に沿って形成され、厚さ方向に折り曲げることにより、電池1のコンパクト化を図ることができるものである。
エ 上記ア~ウの記載から、甲第5号証には、
「発電要素であるセルが電池容器の中に密封された構造を有する電池であって、
電池容器は、セルを収容するための凹部を有する容器本体と、蓋部とで構成され、容器本体の凹部にセルを収容させた後に、蓋部を被せ、容器本体の凹部の開口を完全に塞ぐように蓋部を配置し、容器本体および蓋部の溶融した樹脂層が一体になりながら固化し、これにより電池容器内の気密を保持する融着代が形成され、
融着代は、セルの周囲に沿って形成され、厚さ方向に折り曲げることにより、電池のコンパクト化を図ることができるようにした
電池。」
という技術事項(以下、「甲5技術事項」という。)が記載されている。
6 甲第6号証に記載された技術事項
ア 【0016】より、リチウムイオン二次電池1は、帯状の正極材3と負極材4とをセバレータ5及び高分子電解質を介して積層するとともに正極材3と負極材4とにそれぞれ正極端子部材6と負極端子部材7とを接続して電池構体2を構成し、この電池構体2をラミネート材8によって封装してなるものである。
イ 【0033】より、ラミネート材8は、電池構体2の一方の主面2bにおいて先端部8a、8bが互いに重ね合わされるものである。
ウ 【0047】より、電池構体2は、正極材3、負極材4及びセバレータ5の積層体を36mm×70mm×5mmの大きさに折り畳むことにより構成されるものである。
エ 上記ア~ウの記載から、甲第6号証には、
「帯状の正極材と負極材とをセバレータ及び高分子電解質を介して積層するとともに正極材と負極材とにそれぞれ正極端子部材と負極端子部材とを接続して電池構体を構成し、この電池構体をラミネート材によって封装し、
ラミネート材は、電池構体の一方の主面において先端部が互いに重ね合わされ、
電池構体は、正極材、負極材及びセバレータの積層体を36mm×70mm×5mmの大きさに折り畳むことにより構成される
リチウムイオン二次電池。」
という技術事項(以下、「甲6技術事項」という。)が記載されている。
第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
ア 甲1発明との対比
(ア)構成Aについて
構成aの「正極体」、「負極体」、「セパレータ」は、それぞれ、構成Aの「第1電極」、「第2電極」、「セパレータ」に相当する。
また、構成aは、「長尺帯状の正極体および負極体が、セパレータを介して積層」されていることから、積層されている方向を「所定方向」と称すると、構成Aのように、「第1電極、第2電極及びセパレータを含み、前記第1電極と前記第2電極とが前記セパレータによって隔てられるように前記第1電極、前記第2電極及びセパレータが所定方向に積層」されている構成に相当する構成を有している。
構成aは、「正極体、負極体、セパレータが積層されている方向に対して上側の面および下側の面を有し、上側の面と下側の面の間に長手方向の面を有する」構成であり、ここで、「上側の面」を「第1面」と称すると、「下側の面」は「上側の面」の反対側であるから、構成aの「上側の面」、「下側の面」は、それぞれ、構成Aの「第1面」、「前記第1面の反対側の第2面」に相当する。
また、構成aの「長手方向」を「前記第1面側又は前記第2面側から見て第1方向」と称すると、構成aにおける「上側の面と下側の面の間」にある「長手方向の面」は、構成Aの「前記第1面と前記第2面の間にあって、前記第1面側又は前記第2面側から見て第1方向に延伸している第1側面」に相当する。
構成aの「電極体」は、正極体および負極体が、セパレータを介して積層されている構成であるから、構成Aの「積層体」に相当する。
以上より、甲1発明は、構成Aに相当する構成を有しているものである。
(イ)構成Bについて
構成bより、正極端子は、正極体に接続されている。ここで、正極端子は、外部機器と接続して電力を供給するために設けられたものであるから、正極体とは電気的に接続されていることは明らかである。
そして、上記(ア)の検討より、構成bの「正極体」、「長手方向」は、それぞれ、構成Bの「第1電極」、「第1方向」に相当する。
したがって、構成bの「電極体の正極体の他端部に接続され、外装体の外部へ導出され、電極体の長手方向の一方の側に位置する正極端子」は、構成Bの「前記第1電極に電気的に接続され、前記第1方向において前記積層体の両側のうちの一方に位置する第1リード」に相当する。
(ウ)構成C1、構成C2、構成Cについて
上記(ア)の検討より、構成cの「電極体」、「上側の面」、「下側の面」、「長手方向の面」は、それぞれ、構成C1の「積層体」、「第1面」、「第2面」、「第1側面」に相当する。
構成cの「1枚の矩形状のシート」は、「電極体を内包する」ものであるから、構成cの「1枚の矩形状のシート」は、構成C1の「前記積層体を包む1枚のシート」に相当する。
構成cの「1枚の矩形状のシート」は、「電極体の長手方向に沿って折り返され、電極体の上側の面から下側の面にかけて長手方向の面に沿っている」ことから、構成C1の「前記第1面から前記第2面にかけて前記シートが前記第1側面に沿って折り返された第1部分」に相当する構成を有しているものである。
構成cの「外装体」は、1枚の矩形状のシートより形成されている、すなわち、1枚のシートからなることから、構成Cの「外装材」に相当する。
そうすると、甲1発明は、構成C1、構成C、すなわち、「前記積層体を包む1枚のシートからなり、前記第1面から前記第2面にかけて前記シートが前記第1側面に沿って折り返された第1部分」「を含む外装材」に相当する構成を有しているものである。
しかし、甲1発明の外装体は、本件特許発明1の外装材のように、「前記第1方向において前記第1部分の両外側のうち前記第1リードが位置する側に位置していて、前記シートの前記第1部分より外側へ突出した折り返し部分が、前記第1方向に交わる方向に沿って折り曲げられている第2部分」(構成C2)を含むものではない。
(エ)構成Dについて
構成dの「電池」は、構成Dの「電池」に相当する。
イ 一致点・相違点
以上より、本件特許発明1と甲1発明との一致点・相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
A 第1電極、第2電極及びセパレータを含み、前記第1電極と前記第2電極とが前記セパレータによって隔てられるように前記第1電極、前記第2電極及びセパレータが所定方向に積層されており、前記所定方向の一方の側の第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面の間にあって、 前記第1面側又は前記第2面側から見て第1方向に延伸している第1側面と、を有する積層体と、
B 前記第1電極に電気的に接続され、前記第1方向において前記積層体の両側のうちの一方に位置する第1リードと、
C1 前記積層体を包む1枚のシートからなり、前記第1面から前記第2面にかけて前記シートが前記第1側面に沿って折り返された第1部分
C を含む外装材と、
D を備える電池。
(相違点)
本件特許発明1の外装材は「前記第1方向において前記第1部分の両外側のうち前記第1リードが位置する側に位置していて、前記シートの前記第1部分より外側へ突出した折り返し部分が、前記第1方向に交わる方向に沿って折り曲げられている第2部分」を含むのに対し、甲1発明の外装体はそのような構成を含むものではない点。
ウ 判断
上記イの相違点が容易に想到し得るものであるかについて検討する。
甲2技術事項における「外装体のシール部の幅は、発電要素の外周にほぼフィットするように作成された外装体の本体部(発電要素を収容している部分)よりも広く、つまり、発電要素の幅よりも大きい」構成及び甲3技術事項における「ヒートシール部の幅は、ヒートシール部の部分を除くピロータイプの袋の幅より大きい」構成は、上記相違点に係る構成C2とは「前記シートの前記第1部分より外側へ突出した」構成である点で共通するものの、「前記第1方向に交わる方向に沿って折り曲げられている」構成を含むものではなく、そもそも、甲1発明のように、「電極体を内包するように、電極体の長手方向に沿って折り返され、電極体の上側の面から下側の面にかけて長手方向の面に沿っている1枚の矩形状のシートより形成される外装体」を用いた電池に係るものではない。
また、甲4技術事項の「外装体周縁シール部」及び甲5技術事項の「融着代」は、「折り曲げられている部分」を開示するが、上記相違点に係る構成C2の「前記第1方向において前記第1部分の両外側のうち前記第1リードが位置する側に位置していて、前記シートの前記第1部分より外側へ突出した折り返し部分」に対して適用したものではない。
そうすると、甲2技術事項から甲5技術事項のいずれも、「電極体を内包するように、電極体の長手方向に沿って折り返され、電極体の上側の面から下側の面にかけて長手方向の面に沿っている1枚の矩形状のシートより形成される外装体」を用いる構成において、「前記第1方向において前記第1部分の両外側のうち前記第1リードが位置する側に位置していて、前記シートの前記第1部分より外側へ突出した折り返し部分が、前記第1方向に交わる方向に沿って折り曲げられている第2部分」(構成C2)という上記相違点に係る構成を開示するものではないから、上記相違点に係る構成は、甲2技術事項から甲5技術事項を勘案しても、甲1発明から当業者が容易に想到することはできない。
したがって、請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明ならびに甲第2号証~甲第5号証に記載された技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記相違点について、以下のような主張をしている。
「甲第1号証には直接的には開示されていないもの、甲第2号証および甲第3号証に開示されている事項に鑑みれば、甲1発明において、電極体20の長手方向におけるシート31の両端部に外側に張り出した部分が形成されることは明らかである。そして、甲第4号証および甲第5号証では、そのような張り出した部分を折り曲げることによって、電池を小型に構成できるという事項が開示されている。このため、当業者であれば、甲1発明におけるシート31の両端部の外側に張り出した部分の一方を折り曲げること、換言すれば、本件発明1の構成1Dに容易に想到できる。」(23頁18~25行)
しかしながら、甲2技術事項の外装体は、両端部が封止される前は、両端部が開口した筒形状であり、両端部が封止されることで形成されるものであるし、甲3技術事項のポリマー電池は、ピロータイプの袋を形成し、開放部から電池本体を挿入し、開放部をヒートシールして得られるものであって、いずれも、甲1発明のような「電極体を内包するように、電極体の長手方向に沿って折り返され、電極体の上側の面から下側の面にかけて長手方向の面に沿っている1枚の矩形状のシートより形成される外装体」を用いるものではない。
そうすると、甲2技術事項及び甲3技術事項を勘案しても、甲1発明において、電極体の長手方向におけるシートの両端部に外側に張り出した部分が形成されることを当業者が普通に想起し得るとまではいえない。
また、仮に、当業者が、甲1発明において、電極体の長手方向におけるシートの両端部に外側に張り出した部分が形成されることを想起し得たとしても、甲4技術事項における外装体周縁シール部、甲5技術事項における融着代は、シートの両端部に外側に張り出した部分を折り曲げたものではないから、当業者であっても、甲2技術事項から甲5技術事項に基づいて、上記相違点に係る構成を容易に想到し得るものということはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張を認めることは出来ない。
2 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3は、本件特許発明1を直接もしくは間接に引用する発明であるから、少なくとも、上記1イの相違点を有するものである。
そして、上記1ウの判断と同様に、請求項2、3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明ならびに甲第2号証~甲第5号証に記載された技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件特許発明4~7について
本件特許発明4~7は、本件特許発明1を直接もしくは間接に引用する発明であるから、少なくとも、上記1イの相違点を有するものである。
そして、上記1ウの判断と同様に、甲第2号証から甲第5号証に記載されたいずれの技術事項をみても、上記相違点に係る構成を含むものでなく、甲第6号証に記載された技術事項についても同様である。
したがって、請求項4~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明ならびに甲第2号証~甲第6号証に記載された技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700268