特許異議申立
2023-700232
熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物、熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡成形体およびその製造方法
- 審判番号
- 2023-700232
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-116289
- 登録番号
- 7147285
- 請求日
- 2023年02月28日
- 審決日
- 2023年12月18日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東洋紡エムシー株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 近野 光知
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1652.113-YAA(C08L) / P1652.121-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7147285号発明「熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物、熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡成形体およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7147285号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第7147285号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7147285号(請求項の数9。以下、「本件特許」という。)は、平成30年6月19日を出願日とする出願(特願2018-116289号)に係る特許であって、令和4年9月27日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年10月5日である。)。
その後、令和5年2月28日に、本件特許の請求項1及び2に係る特許に対して、特許異議申立人である弁理士法人朝日奈特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和5年 7月10日付け取消理由通知書
同年 9月 8日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
なお、申立人に対して、令和5年9月15日付け通知書により、訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年9月8日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項1に「熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。」とあるのを、「発泡成形体用熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。」に訂正する。
(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。)
訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正の訂正事項は、本件明細書の【0001】の記載を基に訂正されたものであり、これは特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 請求項3~9に係る発明の独立特許要件について
(1)第1で述べたように、本件特許異議の申立ては、請求項1~9に係る特許のうち請求項1及び2に係る特許に対してされ、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3~9に係る発明に対しては申立てがされていない。
そして、上記2で述べたように、請求項1に対する訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3~9に係る発明も、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がされたといえる。そこで、本件訂正後の請求項3~9に係る発明の独立特許要件について検討する。
(2)後記の第5で述べるように、本件訂正後の請求項1及び2に係る発明には、当審が通知した取消理由及び申立人が申し立てた理由によっては特許を受けることができないとすべき理由がないから、請求項1を直接又は間接的に引用する本件訂正後の請求項3~9に係る発明も、請求項1及び2に係る発明と同様に特許を受けることができないとすべき理由がない。また、他に請求項3~9に係る発明が特許を受けることができないとすべき理由を発見しない。
そうすると、請求項3~9に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、請求項3~9に係る特許は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するといえる。
4 訂正の適否についての判断のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5~7項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。
第3 訂正後の本件発明
請求項1~9に係る発明は、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1~9に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)
「【請求項1】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルにより形成されたハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントとが結合した熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)、増粘剤(B)、及び可塑剤(C)を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物であって、
前記増粘剤(B)は、エポキシ基、グリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種の官能基を、1分子あたり2つ以上有する反応性化合物であり、
前記可塑剤(C)は、トリメリット酸エステル系可塑剤及び/又はピロメリット酸エステル系可塑剤であり、
前記増粘剤(B)の含有量は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して0.05~4.5質量部であり、
前記可塑剤(C)の含有量は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して0.1~30質量部である、発泡成形体用熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。
【請求項2】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントの含有量が45~95質量%である請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。
【請求項3】
増粘剤(B)は、ビニル芳香族モノマー(X)20~99質量%、及びグリシジル(メタ)アクリレート(Y)1~80質量%を含むモノマー組成物から得られる、グリシジル基を1分子あたり2つ以上有する重量平均分子量4000~25000の共重合体である請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。
【請求項4】
230℃におけるメルトフローレートが10~50g/10minである請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。
【請求項5】
前記組成物の融点+10℃の温度で測定した時の溶融張力が50~200mNである請求項1~4のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物から得られ、密度が0.01~0.35g/cm3であり、ヒステリシスロス荷重が4~10Nであり、反発弾性率が40~70%であり、かつ硬度が10~30Cである、熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡成形体。
【請求項7】
前記発泡成形体は、発泡層の両面に、厚み100~800μmの非発泡スキン層を有するサンドイッチ構造を持ち、
前記発泡層は、平均セル径が10~500μmの発泡セルを有しており、
前記発泡セルは、平均直径が5~200μmの貫通孔を少なくとも1つ有しており、
前記発泡セルの平均断面積(Sa)と、前記発泡セルの断面における平均総貫通孔面積(Sb)との比(Sb/Sa)が0.1~0.4である請求項6に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡成形体。
【請求項8】
型締めされた複数の金型で形成されるキャビティ内に、溶融状態の前記熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を、化学発泡剤および/または超臨界状態の不活性ガスとともに射出、充填し、厚み100~800μmの非発泡スキン層が形成された段階で少なくとも一つの金型を型開き方向へ移動してキャビティの容積を拡大させることを特徴とする請求項6又は7に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡成形体の製造方法。
【請求項9】
前記不活性ガスが、窒素である請求項8に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡成形体の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び当審が通知した取消理由について
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記(1)~(3)のとおり、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、 下記(4)の甲第1号証~甲第2号証を提出する。
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性)
本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)申立理由2a(甲第1号証に基づく進歩性)
本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(3)申立理由2b(甲第2号証に基づく進歩性)
本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(4)証拠方法
甲第1号証:特開2017-43687号公報
甲第2号証:国際公開第2017/138548号
(以下、甲第1号証、甲第2号証を順に「甲1」等という。)
2 令和5年7月10日付け取消理由通知の取消理由
(1)取消理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(3)当審が職権で発見した証拠方法
参考資料1:住友化学株式会社のウェブサイト ボンドファースト○R(○は丸付き文字を表す。)の製品情報、<URL: https://www.sumitomo-chem.co.jp/func_polymer/product/bondfast/>
参考資料2:特許第6336743号公報
第5 当審の判断
以下に述べるように、当審が通知した取消理由、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1及び2に係る特許は取り消すことはできない。
1 取消理由通知の取消理由1(新規性)及び取消理由2a(進歩性)について
申立理由1(新規性)及び申立理由2a(進歩性)は、甲1を主引用文献とする理由であるから、取消理由1(新規性)及び取消理由2a(進歩性)と併せて検討する。
(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)100重量部に対し、可塑剤(B)0.1~5.0重量部、酸化防止剤(C)0.1~5.0重量部、および、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)0.1~5.0重量部を含有し、ASTM D-1238にしたがって、230℃、荷重2160gで測定したメルトフローレートが0.5g/10min以上、5.0g/10min未満である熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項2】
・・・
【請求項4】
熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)が、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメントと、脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点セグメントとを構成成分とするポリエステルブロック共重合体であり、高融点結晶性重合体セグメントと低融点重合体セグメントの合計を100重量%としたとき、高融点結晶性重合体セグメント30~70重量%と、低融点重合体セグメント70~30重量%とを含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項5】
・・・
【請求項7】
可塑剤(B)が、トリメリット酸エステル系可塑剤である請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項8】
・・・
【請求項9】
グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)が、α-オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸のグリシジルエステルの共重合体、またはα-オレフィン、α,β-不飽和カルボン酸アルキルエステルおよびα,β-不飽和カルボン酸のグリシジルエステルからなる3元共重合体であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。」
「【0001】
本発明は、柔軟で弾性に富み、高温での屈曲疲労性に優れると共に、射出成形、押出成形、ブロー成形など各種成形加工性に優れた熱可塑性エラストマ樹脂組成物に関する。
【0002】
熱可塑性ポリエステルエラストマは、強度、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などの機械的性質や、低温、高温特性に優れ、さらに熱可塑性で成形加工が容易であることから、自動車、電気・電子部品、消費材などの分野に広く使用されている。 熱可塑性ポリエステルエラストマの成形加工方法としては、射出成形、押出成形、インジェクションブロー成形、ブロー成形などが使用されているが、各々の成形加工方法の違いにより異なった材料特性が施されている。例えば射出成形では、固化を早くする事で成形サイクルを短くし、寸法精度を向上させている。また、押出成形やブロー成形では、溶融時の賦形性を考慮して、溶融弾性を高めて固化速度を遅くさせた材料設計を施している。
【0003】
例えば、等速ジョイント駆動装置のカバーブーツ、エーアーダクト、フューエルチューブなどの成形品には、ブロー、押出成形が活用されている。中でも、自動車の等速ジョイント駆動装置のカバーブーツは、熱可塑性ポリエステルエラストマが幅広く使用されている用途であり、一般的にはプレスブロー成形が使用されている。しかし、プレスブロー成形以外に射出成形とブロー成形方法を併せ持つインジェクションブロー成形での検討が進められているが、前述した成形加工方法の違いにより材料設計が異なるために、射出成形とブロー成形に適した特性を併せ持つ材料がなく、成形性を満足する材料が得られていないという問題があった。
【0004】
…
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術における問題点を解決するために検討した結果達成されたものであり、柔軟で弾性に富み、高温での屈曲疲労性に優れると共に、射出成形、押出成形、インジェクションブロー成形、ブロー成形性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供することを目的とするものである。」
「【0022】
高融点結晶性重合体セグメントの好ましい例は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートと、1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位からなるものである。高融点結晶性重合体セグメントの共重合量は、高融点結晶性重合体セグメントと低融点重合体セグメントの合計を100重量%としたとき、通常20~80重量%、好ましくは30~70重量%、さらに好ましくは35~60重量%である。
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)で使用される低融点重合体セグメントは、必要に応じ脂肪族ポリエーテルを使用することができる。
かかる脂肪族ポリエーテルの具体例としては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。これらのなかでも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールおよび/またはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物および/またはエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体が好ましく用いられる。
【0023】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)の低融点重合体セグメントの共重合量は、高融点結晶性重合体セグメントと低融点重合体セグメントの合計を100重量%としたとき、通常、80~20重量%、好ましくは70~30重量%、さらに好ましくは65~40重量%である。」
「【0044】
さらに、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で必要に応じて、紫外線吸収剤、HALSなどの光安定剤、帯電防止剤、金属石鹸、脂肪酸アミドなどの滑剤、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールなどポリエーテル類や液状ポリブタジエンなどの潤滑剤、染料、顔料、難燃剤、離型剤等の添加剤や、マイカ、ガラスフレーク、クレー、硫酸バリウム、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維などの補強材を添加することができる。
【0045】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物は、柔軟で弾力性に富み、高温での屈曲疲労性に優れると共に、射出成形、押出成形、ブロー成形などの異なった成形加工方法にも適用可能であることから、射出成形とブロー成形を合わせたインジェクションブロー成形などの複数の成形加工技術を合わせた成形方法に好適である。」
「【0053】
[熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-1)の製造方法]
テレフタル酸44.4部、1,4-ブタンジオール38.6部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール43.9部を、チタンテトラブトキシド0.04部とモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキサイド0.02部と共にヘリカルリボン型攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱し、反応水を系外に流出させながらエステル化反応を行った。反応混合物にテトラ-n-ブチルチタネート0.2部を追添加し、“イルガノックス”1098(BASF社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.05部を添加した後、245℃に昇温し、次いで、50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で1時間50分重合を行った。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングによりペレットとした。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-1)は、硬度50D、融点は203℃、メルトフローレートは230℃、荷重2160gでの測定にて18g/10分であった。
【0054】
[熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-2)の製造方法]
テレフタル酸41.9部、1,4-ブタンジオール39.7部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール47.6部を、チタンテトラブトキシド0.03部とモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキサイド0.01部と共にヘリカルリボン型攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱し、反応水を系外に流出させながらエステル化反応を行った。反応混合物にテトラ-n-ブチルチタネート0.2部を追添加し、“イルガノックス”1098(BASF社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.05部を添加した後、245℃に昇温し、次いで、50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で1時間50分重合を行った。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングによりペレットとした。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-2)は、硬度47D、融点は199℃、メルトフローレートは230℃、荷重2160gでの測定にて20g/10分であった。
【0055】
[熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-3)の製造方法]
熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-1)のペレットを回転可能な反応容器に仕込み、系内の圧力を27Paの減圧とし、170から180℃で48時間回転させながら加熱して固相重縮合を行った。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-3)は、硬度50D、融点は203℃、メルトフローレートは230℃、荷重2160gでの測定にて0.5g/10分であった。
【0056】
[熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-4)の製造方法]
熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-2)のペレットを回転可能な反応容器に仕込み、系内の圧力を27Paの減圧とし、170から180℃で72時間回転させながら加熱して固相重縮合を行った。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-4)は、硬度47D、融点は199℃、メルトフローレートは0.5g/10分であった。
【0057】
[熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-5)の製造方法]
熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-2)のペレットを回転可能な反応容器に仕込み、系内の圧力を27Paの減圧とし、170から180℃で82時間回転させながら加熱して固相重縮合を行った。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-5)は、硬度47D、融点は199℃、メルトフローレートは0.2g/10分であった。
【0058】
また、可塑剤(B)、酸化防止剤(C)、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)、およびポリアミド樹脂(E)としては下記のものを使用した。
【0059】
[可塑剤(B)]
実施例、比較例において使用した可塑剤(B-1)は、トリメリット酸トリ2-エチルヘキシルである。
【0060】
[酸化防止剤(C)]
実施例において使用した酸化防止剤(C-1)、(C-2)および(C-3)の略号と構造式を表1に示す。
【0061】
【表1】
[図:0001407823000001.jpg]
【0062】
[グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)]
実施例、比較例において使用した(D-1)は、住友化学社製ボンドファースト 7Mである。
【0063】
[ポリアミド樹脂(E)]
実施例、比較例において使用したポリアミド樹脂(E―1)は、東レ株式会社製 アミランCM4000である。
【0064】
[実施例1~6]
熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-3)、(A-4)を、可塑剤(B-1)、酸化防止剤(C-1)、(C-2)、(C-3)、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D-1)、およびポリアミド樹脂(E-1)とともに、表2に示す配合比率(重量部)でV-ブレンダーを用いて混合し、直径45mmで3条ネジタイプのスクリューを有する2軸押出機を用いて250℃で溶融混練し、ペレット化した。
【0065】
[比較例1~9]
熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)、(A-5)を、可塑剤(B-1)、酸化防止剤(C-1)、(C-2)、(C-3)、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D-1)およびポリアミド樹脂(E-1)とともに、表2に示す配合比率(重量部)でV-ブレンダーを用いて混合し、直径45mmで3条ネジタイプのスクリューを有する2軸押出機を用いて250℃で溶融混練し、ペレット化した。 得られたペレットを用いて、硬度、融点、屈曲疲労性、メルトフローレートの物性を評価した。また成形性として、射出成形性およびブロー成形性を評価した。結果を表2、表3に示す。
【0066】
[図:0001407823000002.jpg]
【0067】
[図:0001407823000003.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1には、「熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)100重量部に対し、可塑剤(B)0.1~5.0重量部、酸化防止剤(C)0.1~5.0重量部、および、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)0.1~5.0重量部を含有し、ASTM D-1238にしたがって、230℃、荷重2160gで測定したメルトフローレートが0.5g/10min以上、5.0g/10min未満である熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。」(請求項1)が記載されており、その具体例である実施例1は、表2によると、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-4)100重量部、可塑剤(B-1)であるトリメリット酸トリ2-エチルヘキシル1.0重量部、表1(【0061】)に示された酸化防止剤(C-1)1.0重量部、同じく酸化防止剤(C-2)0.3重量部、同じく酸化防止剤(C-3)0.3重量部、グリシジル基変性ポリオレフィン(D)である「ボンドファースト 7M」(住友化学社製、D-1)0.5重量部をV-ブレンダーを用いて混合し、2軸押出機を用いて250℃で溶融混練したペレット化した熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物が記載されている。
そして、上記熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-4)は、テレフタル酸41.9部、1,4-ブタンジオール39.7部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール47.6部を、チタンテトラブトキシド0.03部とモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキサイド0.01部と共にヘリカルリボン型攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱し、反応水を系外に流出させながらエステル化反応を行い、反応混合物にテトラ-n-ブチルチタネート0.2部を追添加し、“イルガノックス”1098(BASF社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.05部を添加した後、245℃に昇温し、次いで、50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で1時間50分重合を行い、得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングによりペレットとした熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-2)(【0054】)を得て、これを回転可能な反応容器に仕込み、系内の圧力を27Paの減圧とし、170から180℃で72時間回転させながら加熱して固相重縮合を行ったものである(【0056】)。
そうすると、甲1には、実施例1に着目して、次の発明が記載されているといえる。
「テレフタル酸41.9部、1,4-ブタンジオール39.7部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール47.6部を、チタンテトラブトキシド0.03部とモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキサイド0.01部と共にヘリカルリボン型攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱し、反応水を系外に流出させながらエステル化反応を行い、反応混合物にテトラ-n-ブチルチタネート0.2部を追添加し、“イルガノックス”1098(BASF社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.05部を添加した後、245℃に昇温し、次いで、50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で1時間50分重合を行い、得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングによりペレットとした熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-2)を得て、これを回転可能な反応容器に仕込み、系内の圧力を27Paの減圧とし、170から180℃で72時間回転させながら加熱して固相重縮合を行ったものである熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-4)100重量部、
可塑剤(B-1)であるトリメリット酸トリ2-エチルヘキシル1.0重量部、
酸化防止剤(C-1)1.0重量部、
酸化防止剤(C-2)0.3重量部、
酸化防止剤(C-3)0.3重量部、
グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)である「ボンドファースト 7M」(住友化学社製、D-1)0.5重量部、
をV-ブレンダーを用いて混合し、2軸押出機を用いて250℃で溶融混練したペレット化した熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「テレフタル酸」、「1,4-ブタンジオール」、「ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール」はそれぞれ、本件発明1の「芳香族ジカルボン酸」、「脂肪族ジオール」及び「脂肪族ポリエーテル」に相当する。そして、甲1発明における「テレフタル酸」及び「1,4-ブタンジオール」は、甲1の【0022】によると、「高融点結晶性重合体セグメント」を形成し、甲1発明の「ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール」は「低融点重合体セグメント」を形成し、これらのセグメントはそれぞれ、本件発明1の「ハードセグメント」及び「ソフトセグメント」に相当し、甲1発明の「熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-4)」は、本件発明1の「熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)」に相当するといえる。
甲1発明の「可塑剤(B-1)であるトリメリット酸トリ2-エチルヘキシル」は、本件発明1の「可塑剤(C)」である「トリメリット酸エステル系可塑剤」に相当し、その含有量は、「熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-4)」100重量部に対して1.0重量部であるから、本件発明1の「可塑剤(C)の含有量は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して0.1~30質量部である」を満たす。
甲1発明の「グリシジル基変性ポリオレフィン(D)である「ボンドファースト 7M」(住友化学社製、D-1)」の構成成分は、グリシジルメタクリレート6wt%、メチルアクリレート27wt%、残部がエチレンであり(参考資料1の「グレード」における「BF-7M」欄を参照)、上記「ボンドファースト 7M」の重量平均分子量が14万(参考資料2の【0108】)であることを基に上記構成成分に由来する構造単位を算出すると、1分子中にグリシジルメタクリレート由来単位が2以上あることは明らかである。このことから、甲1発明の「グリシジル基変性ポリオレフィン(D)である「ボンドファースト 7M」(住友化学社製、D-1)」は、本件発明1の「エポキシ基、グリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種の官能基を、1分子あたり2つ以上有する反応性化合物」である「増粘剤(B)」に相当し、その含有量は、「熱可塑性ポリエステルエラストマ(A-4)」100重量部に対して0.5重量部であるから、本件発明1の「増粘剤(B)の含有量は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して0.05~4.5質量部」を満たす。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルにより形成されたハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントとが結合した熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)、増粘剤(B)、及び可塑剤(C)を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物であって、
前記増粘剤(B)は、エポキシ基、グリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種の官能基を、1分子あたり2つ以上有する反応性化合物であり、
前記可塑剤(C)は、トリメリット酸エステル系可塑剤及び/又はピロメリット酸エステル系可塑剤であり、
前記増粘剤(B)の含有量は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して0.05~4.5質量部であり、
前記可塑剤(C)の含有量は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して0.1~30質量部である、発泡成形体用熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物が、本件発明1では「発泡成形体用」であるのに対して、甲1発明では発泡成形体用であるか不明である点
イ 検討
相違点1について検討する。
まず、甲1発明に係る熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物は、これを「発泡体成形用」であることを示唆する成分や物性を有するものとはいえないから、相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
次に、相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性を検討すると、甲1には、従来、等速ジョイント駆動装置のカバーブーツ、エアーダクト、フューエルチューブなどの成形品には、熱可塑性ポリエステルエラストマのブロー成形や押出成形が活用されているが、成形加工方法の違いにより材料設計が異なるために、射出成形とブロー成形に適した特性を併せ持つ材料がなく、成形性を満足する材料が得られていないという問題があったため、柔軟で弾性に富み、高温での屈曲疲労性に優れると共に、射出成形、押出成形、インジェクションブロー成形、ブロー成形性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供することを目的とすることが記載されているが(【0002】、【0009】)、このような熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物の成形品が発泡成形体であることは記載されていない。
また、甲1には、熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物に、上記目的を損なわない範囲で必要に応じて、種々の添加剤を添加できる旨が記載されているが(【0044】)、そのような添加剤として、発泡剤や整泡剤のような発泡成形体の製造に用いる添加剤は記載されていない。
そうすると、甲1には、甲1発明に係る熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を発泡成形体の製造に用いることを動機付ける記載は見当たらず、甲1発明において、「発泡成形体用」とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 本件発明1の効果について
本件発明1によって奏される「本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡成形体は、軽量性に優れるのみならず、心地良いクッション性と高い反発弾性率を有する。」(本件明細書の【0012】)という効果は、実施例7と「増粘剤(b)」の量が本件発明1の範囲外である比較例1及び2とを比べたり、実施例1及び2と「可塑剤(c)」の量が本件発明1の範囲外である比較例3とを比べたりすることにより、具体的に確認することができる。
したがって、本件発明1の効果は、甲1の記載から予測し得ないものであるといえる。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1について上記1で述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(4)まとめ
以上のことから、本件発明1及び2に係る特許は、取消理由1及び2、並びに申立理由1及び2aによっては取り消すことはできない。
2 取消理由通知に採用しなかった申立理由2bについて
(1)甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
ア 甲2に記載された事項
「【請求項1】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して、増粘剤(B)0~5質量部とアミン価50eq/t以上の尿素化合物捕捉剤(C)0.1~10質量部を含有することを特徴とするポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項2】
…
【請求項4】
増粘剤(B)が、エポキシ基、酸無水物基、カルボジイミド基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種の反応性基を有する多官能性化合物である請求項1~3のいずれかに記載のポリエステルエラストマー樹脂組成物。」
「[0002] 熱可塑性ポリエステルエラストマーは、射出成形性、押出成形性に優れ、機械的強度が高く、弾性回復性、耐衝撃性、柔軟性などのゴム的性質、耐寒性に優れる材料として、自動車部品、電気・電子部品、繊維、フィルムなどの用途に使用されている。
[0003] 従来、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、溶融粘度が低いためブロー成形用には不適であったが、ポリエポキシ化合物やポリイソシアネート化合物などで増粘する方法が採用されるようになり、近年、自動車の等速ジョイントのような自在軸継手の防塵、グリース保持を目的としたフレキシブルブーツなどのブロー成形品にも熱可塑性ポリエステルエラストマーの特徴を生かして採用されている(特許文献1)。
[0004] フレキシブルブーツなどの機能性部品に対する要求特性としては、耐屈曲疲労性、耐熱老化性、耐油性、耐グリース性などがあるが、年々、より高いレベルが要求されるようになってきており、対処法として酸化防止剤の組み合わせ(特許文献2)、酸化防止剤とエポキシ化合物との組み合わせ(特許文献3)、エポキシ化合物類とカルボジイミド化合物との組み合わせ(特許文献4)などが提案されている。
…
発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明の目的は、高温環境下での耐グリース性にも優れるポリエステルエラストマー樹脂組成物を提供することにある。」
「[0021] 本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、ハードセグメントとソフトセグメントの質量比は、一般に、ハードセグメント:ソフトセグメント=30:70~95:5であることが好ましく、より好ましくは40:60~90:10、さらに好ましくは45:55~87:13、最も好ましくは50:50~85:15の範囲である。」
「[0023][増粘剤(B)]
本発明における増粘剤(B)は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の持つヒドロキシル基あるいはカルボキシル基と反応し得る官能基を有する反応性化合物(以下、単に反応性化合物と称することがある)であり、反応し得る官能基としては、エポキシ基(グリシジル基)、酸無水物基、カルボジイミド基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、該官能基は1分子あたり2個以上含有する。該官能基は、エポキシ基(グリシジル基)、またはカルボジイミド基がより好ましい。」
「[0044]本発明の樹脂組成物には、芳香族アミン系、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系などの汎用の酸化防止剤を配合することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。」
「[0050] さらに本発明の樹脂組成物に耐候性を必要とする場合は、紫外線吸収剤および/またはヒンダードアミン系化合物を添加することが好ましい。例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアゾール系、ニッケル系、サリチル系の光安定剤が使用可能である。添加量は、ポリエステルエラストマー樹脂組成物の質量基準で、0.1%以上5%以下が好ましい。
[0051] 本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物には、その他各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、上記以外の樹脂、無機フィラー、安定剤、及び老化防止剤を本発明の特徴を損なわない範囲で添加することができる。また、その他の添加剤として、着色顔料、無機または有機系の充填剤、カップリング剤、タック性向上剤、クエンチャー、金属不活性化剤等の安定剤、難燃剤等を添加することもできる。これら各種添加剤は、合計で、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。」
イ 甲2に記載された発明
甲2には、請求項1を引用する請求項4に係る発明を独立形式で表現すると、次の発明が記載されているといえる。
「芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して、増粘剤(B)0~5質量部とアミン価50eq/t以上の尿素化合物捕捉剤(C)0.1~10質量部を含有することを特徴とするポリエステルエラストマー樹脂組成物であって、増粘剤(B)が、エポキシ基、酸無水物基、カルボジイミド基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種の反応性基を有する多官能性化合物である、上記ポリエステルエラストマー樹脂組成物。」(以下「甲2発明」という。)。
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「ポリエステルエラストマー樹脂組成物」は、本件発明1の「熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物」に相当する。
甲2発明の「エポキシ基、酸無水物基、カルボジイミド基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種の反応性基を有する多官能性化合物」である「増粘剤(B)」は、本件発明1の「エポキシ基、グリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種の官能基を、1分子あたり2つ以上有する反応性化合物」である「増粘剤(B)」に相当する。
また、甲2発明の「熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して、増粘剤(B)0~5質量部」は、「増粘剤(B)の含有量は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して0.05~4.5質量部」と重複一致する。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルにより形成されたハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントとが結合した熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)、増粘剤(B)を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物であって、
前記増粘剤(B)は、エポキシ基、グリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種の官能基を、1分子あたり2つ以上有する反応性化合物であり、
前記増粘剤(B)の含有量は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して0.05~4.5質量部である、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点2a:本件発明1では「前記可塑剤(C)は、トリメリット酸エステル系可塑剤及び/又はピロメリット酸エステル系可塑剤であり」、「前記可塑剤(C)の含有量は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して0.1~30質量部である」のに対して、甲2発明では、そのような可塑剤を含むか不明である点
相違点2b:熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は、本件発明1では、「発泡成形体用」であるのに対して、甲2発明では、発泡成形体用であるか不明である点
イ 検討
事案に鑑みて、相違点2bから検討する。
甲2には、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、近年、自動車の等速ジョイントのような自在軸継手の防塵、グリース保持を目的としたフレキシブルブーツなどのブロー成形品にも採用されており、フレキシブルブーツなどの機能性部品に対する要求特性としては、耐屈曲疲労性、耐熱老化性、耐油性、耐グリース性などがあるが、年々、より高いレベルが要求されるようになってきているため、高温環境下での耐グリース性にも優れるポリエステルエラストマー樹脂組成物を提供することを目的とすることが記載されている([0003]、[0004]、[0006])、このような熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物の成形品が発泡成形体であることは記載されていない。
また、甲2には、上記ポリエステルエラストマー樹脂組成物に、酸化防止剤([0044])、紫外線吸収剤および/またはヒンダードアミン系化合物([0050])、その他各種の添加剤を配合することができることが記載されているが([0051])、そのような添加剤として、発泡剤や整泡剤のような発泡成形体の製造に用いる添加剤は記載されていない。
そうすると、甲2には、甲2発明に係るポリエステルエラストマー樹脂組成物を発泡成形体の製造に用いることを動機付ける記載は見当たらず、甲2発明に係るポリエステルエラストマー樹脂組成物を「発泡成形体用」とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1について上記(1)で述べたのと同じ理由により、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(3)まとめ
以上のことから、本件発明1及び2に係る特許は、申立理由2bによっては取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1及び2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700232