特許異議申立
2023-700208
液晶ポリマーフィルム、及び液晶ポリマーフィルムから成る積層体
- 審判番号
- 2023-700208
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-210276
- 登録番号
- 7125468
- 請求日
- 2023年02月22日
- 審決日
- 2024年07月08日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
- 【権利者代理人】山口 朔生
- 【権利者代理人】大島 信之
- 【権利者代理人】山口 真二郎
- 【異議申立人】掛樋 美佐保
- 審判長/審判官
- 審判長 磯貝 香苗
- 審判官 淺野 美奈
- 審判官 松本 陶子
- 分類
- P1651.111-YAA(C08J) / P1651.112-YAA(C08J) / P1651.113-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7125468号発明「液晶ポリマーフィルム、及び液晶ポリマーフィルムから成る積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7125468号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7125468号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7125468号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、
令和 2年12月18日(パリ条約の例による優先権主張 2019年12月23日、アメリカ合衆国)を出願日とする出願であって、
令和 4年 8月16日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、
令和 4年 8月24日に特許掲載公報が発行され、
その後、その特許に対し、
令和 5年 2月22日に特許異議申立人 掛樋 美佐保(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、
令和 5年 6月12日付けで取消理由が通知され、
令和 5年 9月13日に特許権者 長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求がされるとともに意見書の提出がされ、
令和 5年 9月28日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、
令和 5年11月 2日に特許異議申立人から意見書が提出され、
令和 5年12月14日付けで取消理由<決定の予告>の通知がされ、
令和 6年 3月15日に特許権者より訂正の請求がされるとともに意見書が提出されたものである。
なお、令和 5年 9月13日に提出された訂正請求書による請求は、特許法第120条の5第5項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、令和 6年 3月15日にされた訂正請求については、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、後記のとおり、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見を踏まえてさらに審理を進めたとしても、特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、特許異議申立人に対して改めて意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるものと判断し、意見書提出の機会を与えないこととした。
第2 本件訂正について
1 訂正請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7125468号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について、訂正することを求める。」ものである。
2 訂正の内容
令和 6年 3月15日にされた訂正請求における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。下線は当審が記入した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.289μm以下であり、」と記載されているのを、「前記第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.164μm以下であり、」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2~5についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1表面のSa及びSzはISO25178:2012で定義することを特徴とする、液晶ポリマーフィルム。」と記載されているのを、「前記液晶ポリマーフィルムはエッチングされておらず、前記第1表面のSa及びSzはISO25178:2012で定義することを特徴とする、液晶ポリマーフィルム。」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2~5も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「第1金属箔、及び請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶ポリマーフィルムから成る積層体であって、」と記載されているのを、「第1金属箔、及び請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶ポリマーフィルムから作製される積層体であって、」に訂正する。
請求項4の記載を引用して特定する請求項5も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記第1金属箔は前記液晶ポリマーフィルムの前記第1表面上に配置することを特徴とする、」と記載されているのを、「前記第1金属箔は前記液晶ポリマーフィルムの前記第1表面上に配置され、次いで加熱工程及びプレス工程を含む表面積層により処理され、前記第1金属箔の十点平均粗度(Rz)は0.lμm以上2.0μm以下であることを特徴とする、」に訂正する。
請求項4の記載を引用して特定する請求項5も同様に訂正する。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び2に係る請求項1の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、「第1表面の表面相加平均高さ(Sa)」の上限を「0.289μm以下」から「0.164μm以下」に特定するものであり、訂正事項2に係る請求項1の訂正は、「液晶ポリマーフィルム」について「エッチングされておらず、」ということを特定するものであるから、訂正事項1及び2に係る請求項1の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1の訂正は、本件特許明細書の【0010】、【0041】の【表2】のE8の記載からみて、訂正事項2の訂正は、【0038】~【0041】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1及び2に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~5についても同様である。
(2)訂正事項3及び4に係る請求項4の訂正について
訂正事項3に係る請求項4の訂正は、「積層体」が第1金属箔、及び請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶ポリマーフィルムから「作製される」ことを特定するものであり、訂正事項4に係る請求項4の訂正は、「第1金属箔」が「加熱工程及びプレス工程を含む表面積層により処理され」る構成であり、「前記第1金属箔の十点平均粗度(Rz)は0.lμm以上2.0μm以下である」ことを特定するものであるから、訂正事項3及び4に係る請求項4の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3の訂正は、本件特許明細書の【0056】~【0058】の記載からみて、訂正事項4の訂正は、【0023】及び【0057】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項3及び4に係る請求項4の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項4を引用する請求項5についても同様である。
4 訂正についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正前の請求項1~5について特許異議申立がされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明5」という。)は、令和 6年 3月15日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルムであって、
前記第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.164μm以下であり、
前記第1表面の表面最大高さ(Sz)は0.921μm以上7.239μm以下であり、
前記液晶ポリマーフィルムはエッチングされておらず、
前記第1表面のSa及びSzはISO25178:2012で定義することを特徴とする、
液晶ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記第2表面のSaは0.32μm未満であり、前記第2表面のSaはISO25178:2012で定義する、請求項1に記載の液晶ポリマーフィルム。
【請求項3】
前記第2表面のSzは0.8μm以上であり、前記第2表面のSzはISO25178:2012で定義する、請求項1又は2に記載の液晶ポリマーフィルム。
【請求項4】
第1金属箔、及び請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶ポリマーフィルムから作製される積層体であって、
前記第1金属箔は前記液晶ポリマーフィルムの前記第1表面上に配置され、次いで加熱工程及びプレス工程を含む表面積層により処埋され、前記第1金属箔の十点平均粗度(Rz)は0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする、
積層体。
【請求項5】
前記積層体は更に第2金属箔から成り、前記第2金属箔は前記液晶ポリマーフィルムの前記第2表面上に配置する、請求項4に記載の積層体。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和 5年 2月22日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1~5は、下記の甲第1~3号証に示されるとおり、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然知られ又は公然実施された発明であるか、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第1号~第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1~3号証に示されるとおり、公然知られ又は公然実施された発明、若しくは、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第6号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第7号証に基づく進歩性)
本件特許発明1~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(実施可能要件)
本件特許の請求項1~5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明1~3について
本件特許発明1~3は、第1表面または、第1表面及び第2表面のSa、Szで発明を定義しているが、当業者は、実施例の記載を見ても、いかにすれば、発明の範囲内となるSa、Szを液晶ポリマーフィルムに付与し得るのか、理解することができない。
実施例で使用されたLCP樹脂は、本件特許の発明の詳細な説明の【0029】の記載を、甲第18号証の記載と照らしあわせて判断すると、タイプIIの熱可塑性液晶ポリマー樹脂である。甲第9~11号証の記載から容易に類推できるように、熱可塑樹脂フィルムを加熱・加圧した場合、相手側部材の表面粗さが、フィルムの表面粗さに大きく影響する。
フィルムの作製方法について、【0031】には、「初めに、LCP樹脂を、スクリュー径27ミリメートル(mm)の押出機(メーカー:Leistritz社、型式:ZSE27)に投入し、300℃~330℃の範囲の温度まで加熱した後、毎時5.5キログラム(kg/hr)~9.5kg/hrの送り速度で、温度が300℃~330℃で幅500mmのTダイから押し出した。次いで、Tダイから約5mm~40mmの間隔をとって、各々が約290℃~330℃の温度であり、約35センチメートル(cm)~45cmの直径を有する2つの鋳造ホイールの間の空間にLCP樹脂を送り、約20キロニュートン(kN)~60kNの力で押し出し、その後、室温の冷却用の冷却ホイールに移し、厚さ50μmで融点約250℃~360℃のLCPフィルムを得た。」と記載されている。
【0032】には、「実施例1~12の工程は、Tダイから鋳造ホイール表面までの距離、送り速度、押出機の温度が比較例1~5の工程と異なる。」と記載されており、具体的数値も表1に示されているが、鋳造ホイールにおける条件については、「各々が約290℃~330℃の温度であり、約35センチメートル(cm)~45cmの直径を有する2つの鋳造ホイールの間の空間にLCP樹脂を送り、約20キロニュートン(kN)~60kNの力で押し出し、」としか記載しておらず、どの実施例・比較例をどの温度、どの圧力で加圧したのかも不明であり、また鋳造ホイールの表面粗さも不明である。表面粗さを規定する上で最も重要な鋳造ホイールにおける条件が不明であれば、当業者は、実施例の表面粗さも再現することは困難である。
なお、【0031】には、「融点約250℃~360℃のLCPフィルムを得た。」と記載されているが、融点305℃の樹脂を熱圧処理して、どうすれば融点250℃のフィルムが得られるのかも不明である。
(2)本件特許発明4及び5について
本件特許発明4は、「第1金属箔、及び請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶ポリマーフィルムから成る積層体」について記載している。挿入損失の低減や剥離強度の向上の効果が主張されているので、この積層体は、単に金属箔を液晶ポリマーフィルムの上に載せたものではなく、両者を接合させた積層体であると想定される。
ここで本件特許の実施例では、【0056】において、所定の表面粗度を有する液晶ポリマーフィルムを市販銅箔ではさみ、熱圧着したものしか記載されていない。その場合、甲第9~12号証の記載から理解されるように、熱可塑性を有する液晶ポリマーフィルムは塑性変形し、積層体の界面における液晶ポリマーフィルムの粗さは、銅箔の粗さを反映したものとなるはずである。
しかしながら、本件実施例では積層前の液晶ポリマーフィルムの表面粗さしか測定されておらず、また使用した銅箔の粗さも、市販品の銘柄も不明であるから、当業者はどうすれば、第1表面が本件特許発明1に記載のSa、Szの範囲の粗さを有する液晶ポリマーフィルムと金属箔からなる積層体を得ることができるのか、理解することができない。
7 申立理由7(サポート要件)
本件特許の請求項1~5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明1~5について
本件特許発明1~3は特定の表面粗さを有する「液晶ポリマー」を記載している。
しかし、特許権者は、「当業者であれば、出願時の技術常識に基づいて、異なる材料から作られた樹脂フィルムが銅箔に対して異なる密着性を示すことが理解できるため、他の特別な動機づけがない限り、2つの異なる材料に対して同一の表面特性を適用できるとは考えない。」と主張している。
特許権者は、上述の議論において、ポリイミドと液晶ポリマーの化学構造が異なることを指摘しているが、「液晶ポリマー」という用語自体、各種の化学構造を有する樹脂の総称であって、例えば、甲第18号証に記載するように、熱可塑性液晶ポリマーにもタイプI~IIIの三種類の化学構造が知られている。ところが、本件特許の発明の詳細な説明において、発明の効果を示すものとして記載されているのは、タイプIIに属し、ナフタレンカルボン酸(ヒドロキシナフトエ酸)とヒドロキシ安息香酸からなる繰り返し単位を特定のモル比で有するただ一種の調整例の樹脂にすぎない。したがって、特許権者の主張に拠って判断すると、本件特許発明1~3は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。請求項1~3を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明4及び5も同様の問題を含む。
(2)本件特許発明4及び5について
本件特許発明4及び5はプロダクトバイプロセス形式の発明ではなく、所定の表面粗さを有する液晶ポリマーフィルムと金属箔とからなる「物」の発明として記載されている。
本件特許の発明の詳細な説明において、発明の効果を示すものとして記載されている「積層体」は、所定の表面粗さを有する熱可塑性液晶ポリマーフィルムを表面粗さ不明の銅箔に熱圧着した実施例のみであり、積層体の状態では液晶ポリマーフィルムの元の表面粗さは保持されない蓋然性が高い。従って、本件特許発明4及び5は本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
8 申立理由8(明確性)
本件特許の請求項1~5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明1~5について
本件特許発明1は、「互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルムであって、」と記載しているが、この記載はフィルムが第1表面および第2表面の表面のみを構成部分とすることを示しているにすぎず、通常、「フィルム」とは、「互いに相対する第1表面及び第2表面」を有し、両表面の間に何らかの材料からなる「本体」をさらに備えるものである。請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明2~5も同様の不明確性を含む。
(2)本件特許発明4及び5について
本件特許発明4における、「前記第1金属箔は前記液晶ポリマーフィルムの前記第1表面上に配置することを特徴とする、」との記載では、金属箔が第1表面に接合しているのか、ただ載せただけであるのか明確ではない。本件特許発明5にも同様の記載があり、また「前記積層体は更に第2金属箔から成り、」との記載も、日本語として不明確である。
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甲第27号証:「塩化第二鉄液によるエッチング加工」, 防食技術, 38巻, 4号, pp.231-237, 1989年4月15日, 社団法人 腐食防食協会
甲第28号証:「液晶ポリマーフィルム上への無電解銅めっき」, エレクトロニクス実装学会誌, 7巻, 4号, pp.328-332, 2004年7月1日, 一般社団法人 エレクトロニクス実装学会
甲第29号証:CHEMICAL RESISTANCE OF POLYESTER GRP, p15, 2023年10月18日ダウンロードおよび印刷(https://www.allbro.com/download-catalogue/enclosures.pdf)
なお、甲第27~29号証は、令和 5年11月 2日に提出された意見書に添付されたものである。証拠の表記は、おおむね特許異議申立書及び上記意見書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 令和 5年12月14日付け取消理由<決定の予告>の概要
当審が令和 5年12月14日付けで特許権者に通知した取消理由<決定の予告>の要旨は次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1~3に係る発明は、下記の甲1~3に示されるとおり、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然知られ又は公然実施された発明であるか、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第1号~第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1~3に示されるとおり、公然知られ又は公然実施された発明、若しくは、甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 当審の判断
以下に述べるように、当審が令和 5年12月14日付けで特許権者に通知した取消理由<決定の予告>における取消理由1並びに特許異議申立書に記載した申立理由1(請求項4及び5について)及び2~8は、いずれも理由がないものと判断される。
1 新規性及び進歩性判断の基準日について
本件特許の優先権主張の基礎出願(米国仮出願第62/952,553号)の明細書又は特許請求の範囲(甲第24号証)には、本件特許発明1及び請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明2~5の発明特定事項である「前記第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.164μm以下であり、前記第1表面の表面最大高さ(Sz)は0.921μm以上7.239μm以下であり、前記第1表面のSa及びSzはISO25178:2012で定義する」に関する記載はない。
したがって、本件特許の本件特許発明1及び請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明2~5は、優先権の利益を享受することはできず、新規性及び進歩性判断に際しての基準日は本件特許の現実の出願日である令和 2年12月18日である。
2 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1の記載事項
甲1には、「高周波用のポリイミドと液晶ポリマー基板上へのエアロゾルジェット印刷の比較研究」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語文献のため、訳文のみ摘記する。下線は当審が記入した。
・「要旨
エアロゾルジェット印刷は、フレキシブル・携帯型高周波(RF)電子機器の回路製造技術として、従来の製造技術にない機能をもたらすことから、有望視されつつある。本論文では、カプトンとLCP上への伝送線の印刷性に関するAJPパラメータを詳細に調査した。」
・「II 実験法
・・・(略)・・・
A.材料
二種類の通常のRF基板、2ミルのデュポン製カプトンHN(ポリイミド)と、2ミルのパナソニック製液晶ポリマー(LCP R-F705T)をこの対比研究で使用した。LCPは、両面に12μmの銅箔を帯びていた。そのため、両面の銅を、トランセン製の塩化第二鉄バースの銅エッチング液CE-2000を蒸留水で1:5に希釈したものを用いてエッチング除去した。次いで、基板をイソプロビルアルコールで十分洗浄し、窒素雰囲気で乾燥した。伝送線(TLs)は、銀ナノ粒子ベースのインク(韓国PARU社製、PG 007 AP)で印刷した。このインクは、平均粒径100nm未満のナノ粒子を固形分重量として60%含む。
III. 結果と議論
A.基板の特性解析結果
表面粗度は、キーエンス製の三次元共焦点レーザ顕微鏡で測定した。表(I)に、算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)、二乗平方根平均高さ(Sq)を含む表面粗度測定の結果をまとめる。」
・「表I
基板の表面粗度
[図:0001415262000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明1>
「2ミルのパナソニック製液晶ポリマー(LCP R-F705T)の両面銅を、トランセン製の塩化第二鉄バースの銅エッチング液CE-2000を蒸留水で1:5に希釈したものを用いてエッチング除去し、イソプロビルアルコールで十分洗浄し、窒素雰囲気で乾燥したLCP基板において、キーエンス製の三次元共焦点レーザ顕微鏡で測定した表面粗度の算術平均高さ(Sa)が0.178μm、最大高さ(Sz)が2.678μmである、LCP基板。」
<甲1発明2>
「LCP基板の両面に銅箔を帯びている2ミルのパナソニック製液晶ポリマー(LCP R-F705T)。」
(2)甲4に記載された事項等
ア 甲4の記載事項
甲4には、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審が記入した。
・「[0034]<樹脂フィルム>
樹脂フィルム2は、金属層積層面に他の部分と組成が異なり、金属層3との密着性を向上させた改質層4を有する。
[0035] 樹脂フィルム2の材料としては、例えばポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の可撓性を有する樹脂、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材などを用いることが可能である。これらの中でも、金属酸化物等との結合力が大きく、絶縁性及び機械的強度に優れることから、ポリイミドが特に好ましい。」
・「[0099] 以下の要領で、樹脂フィルムの表面に改質層を形成してから金属層を積層したプリント配線板用原板の試作品No.1~No.11を作成した。これらのプリント配線板用原板No.1~No.11について、エッチングによる金属層除去後に露出する樹脂フィルム表面のISO25178に規定される最大高さSz及び算術平均粗さSa、断面における金属層の主金属の拡散深さ、金属層と樹脂フィルムと間の剥離強度(密着力の指標)、改質層表面の異種金属元素の含有率(金属量)、並びに金属層のエッチングにより形成可能なパターンの最小幅をそれぞれ測定した。また、これらのプリント配線板用原板No.1~No.11を、150℃で7日間保持する耐候性試験に供し、この耐候性試験後に、再度、断面における金属層の主金属の拡散深さ、並びに金属層と樹脂フィルムと間の剥離強度をそれぞれ測定した。
[0100] (プリント配線板用原板No.1)
樹脂フィルムとして、カネカ社のポリイミドシート「アピカルNPI」(平均厚さ25μm)を使用した。この樹脂フィルムを40℃の2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(pH約14)に30秒浸漬して改質層を形成した後、溜め水に9秒浸漬することにより水洗してから乾燥した。金属層は、先ず、上記改質層の表面に銅ナノインク(粒径80nmの銅粒子を26質量%含むインク)を塗布及び乾燥し、350℃の窒素雰囲気で2時間焼成して平均厚さ150nmの第1金属層を形成した。次に、無電解銅めっきにより平均合計厚さが0.5μmとなるよう銅を積層し、350℃の窒素雰囲気で2時間焼成して第2金属層を形成した。さらに、電解銅めっきにより銅を積層して第3金属層を積層することにより、平均合計厚さ20μmの金属層を形成して、プリント配線板用原板No.1を得た。
[0101] (プリント配線板用原板No.2)
プリント配線板用原板No.2は、アルカリ溶液への浸漬時間を90秒とした以外は上記プリント配線板用原板No.1と同様に作成した。
・・・略・・・
[0109] (プリント配線板用原板No.10)
プリント配線板用原板No.10は、水洗時間を210秒とした以外は上記プリント配線板用原板No.2と同様に作成した。」
・「[0111] (最大高さSz)
上記最大高さSzは、ISO25178に準拠し、キーエンス社のレーザー顕微鏡「VK-X」を用いて、一辺20μmの方形領域について測定した。
[0112] (算術平均粗さSa)
上記算術平均粗さSaは、ISO25178に準拠し、キーエンス社のレーザー顕微鏡「VK-X」を用いて一辺20μmの方形領域について測定した。」
・「[0117]
[図:0001415262000002.jpg]
」
イ 甲4に記載された発明
上記アより、甲4の実施例10を中心に整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
<甲4発明>
「カネカ社のポリイミドシート「アピカルNPI」を40℃の2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(pH約14)に30秒浸漬して改質層を形成した後、第1金属層から第3金属層を積層して平均合計厚さ20μmの金属層を形成し、その後のエッチングによる金属層除去後に露出する樹脂フィルム表面を、ISO25178に準拠し、キーエンス社のレーザー顕微鏡「VK-X」を用いて一辺20μmの方形領域について測定した算術平均粗さSaが0.028μmで、最大高さSzが0.255μmである、プリント配線用原板。」
(3)甲5に記載された事項等
ア 甲5の記載事項
甲5には、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審が記入した。
・「【0042】
本発明の銅放熱材は、レーザー光の波長が405nmであるレーザー顕微鏡で測定した、前記一方又は両方の表面の面粗さSz(表面の最大高さ)が5μm以上である。銅放熱材の一方又は両方の表面の表面粗さSzが5μm未満であると、発熱体からの熱の放熱性が不良となる。銅放熱材の一方又は両方の表面の面粗さSzは、好ましくは7μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、更により好ましくは14m以上であり、更により好ましくは15μm以上であり、更により好ましくは25μm以上である。上限は特に限定されないが、例えば、90μm以下であってもよく、80μm以下であってもよく、70μm以下であってもよい。面粗さSzが90μmを超える場合、生産性が低くなる場合がある。
ここで、銅放熱材の「表面」とは、基本的に銅放熱材の合金層の表面を意味し、さらに、銅放熱材の表面に耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層等の表面処理層が設けられている場合には、当該表面処理層が設けられた後の最表面のことを意味する。
【0043】
本発明の銅放熱材は、一方又は両方の表面の表面粗さSa(表面の算術平均粗さ)が0.13μm以上であるのが好ましい。銅放熱材の一方又は両方の表面の表面粗さSaが0.13μm未満であると、発熱体からの熱の放熱性が低下するおそれがある。銅放熱材の一方又は両方の表面の表面粗さSaは、より好ましくは0.20μm以上であり、更により好ましくは0.25μm以上であり、更により好ましくは0.30μm以上であり、典型的には0.1~1.0μmであり、より典型的には0.1~0.9μmである。」
・「【0130】
本発明の銅放熱材を、表面処理層側または表面処理層側とは反対側から樹脂基板に貼り合わせて積層体を製造することができる。樹脂基板はプリント配線板等に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、フッ素樹脂含浸クロス、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、フレキシブルプリント基板(FPC)用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム、液晶ポリマー(LCP)フィルム、フッ素樹脂およびフッ素樹脂・ポリイミド複合材等を使用する事ができる。なお、液晶ポリマー(LCP)は誘電損失が小さいため、高周波回路用途のプリント配線板には液晶ポリマー(LCP)フィルムを用いることが好ましい。
【0131】
貼り合わせの方法は、リジッドPWB用の場合、ガラス布などの基材に樹脂を含浸させ、樹脂を半硬化状態まで硬化させたプリプレグを用意する。銅箔をプリプレグに重ねて加熱加圧させることにより行うことができる。FPCの場合、液晶ポリマーやポリイミドフィルム等の基材に接着剤を介して、又は、接着剤を使用せずに高温高圧下で銅箔に積層接着して、又は、ポリイミド前駆体を塗布・乾燥・硬化等を行うことで積層体を製造することができる。」
・「【実施例】
【0134】
・実施例1~11、13~18、比較例1~8
実施例1~11、13~18、比較例1~8として、表1~4に記載の厚みを有する各種銅基材を準備した。次に、当該銅基材上に合金層を形成した。このとき、表1~4に示すように合金層形成(1)~(3)の順に形成した。」
・「【0137】
・表面のSz、Sa、Sku;
ISO25178に準拠して、オリンパス社製レーザー顕微鏡OLS4000(LEXTOLS 4000)にて、銅放熱材表面のSz、Sa、Skuを測定した。レーザー顕微鏡における対物レンズ50倍を使用して約200μm×200μm面積(具体的には40106μm2)の測定を行い、Sz、Sa、Skuを算出した。なおレーザー顕微鏡測定において、測定結果の測定面が平面でない、曲面になった場合は、平面補正を行った後に、Sz、Sa、Skuを算出した。なお、レーザー顕微鏡によるSz、Sa、Skuの測定環境温度は23~25℃とした。」
・「【0149】
【表3】
[図:0001415262000003.jpg]
」
イ 甲5に記載された発明
上記アより、甲5の実施例13を中心に整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。
<甲5発明>
「ISO25178に準拠して、オリンパス社製レーザー顕微鏡OLS4000(LEXTOLS 4000)にて測定したSaが0.13μmで、Szが5.02μmである、以下の表3の実施例13の銅放熱材を、表面処理層側または表面処理層側とは反対側から樹脂基板に貼り合わせて製造した、積層体。
【表3】
[図:0001415262000004.jpg]
」
(4)甲6に記載された事項等
ア 甲6の記載事項
甲6には、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審が記入した。
・「【0009】
本発明は上記知見を基礎として完成したものであり、一側面において、銅箔と、前記銅箔の少なくとも一方の表面に、粗化処理層を有し、前記粗化処理層側表面の粗さRaが0.08μm以上0.20μm以下であり、表面処理銅箔の前記粗化処理層側表面のTDの光沢度が70%以下である表面処理銅箔である。」
・「【0070】
キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がして銅張積層板とし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。」
・「【0113】
また、このように構成した積層体に樹脂層と回路とを、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路を少なくとも1回形成した後に、前記積層体のキャリア付銅箔から前記極薄銅層又はキャリアを剥離させる工程を実施することでコアを有さないプリント配線板を作製することができる。なお、当該積層体の一方または両方の表面に、樹脂層と回路とを設けてもよい。
前述した積層体に用いる樹脂基板、樹脂層、樹脂、プリプレグは、本明細書に記載した樹脂層であってもよく、本明細書に記載した樹脂層に用いる樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでもよい。なお、前述のキャリア付銅箔または積層体は平面視したときに樹脂又はプリプレグ又は樹脂基板又は樹脂層よりも小さくてもよい。なお、前述または後述の樹脂基板、樹脂層、樹脂、プリプレグと本発明の表面処理銅箔とを積層して銅張積層板を製造することができる。そして、当該銅張積層板の表面処理銅箔をエッチング等により銅配線に加工することにより、プリント配線板を製造することができる。
【0114】
また、樹脂基板はプリント配線板等に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム、LCP(液晶ポリマー)フィルム、フッ素樹脂フィルム、低誘電率ポリイミド樹脂フィルム、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム等を使用する事ができる。なお、LCP(液晶ポリマー)フィルムやフッ素樹脂フィルムを用いた場合、ポリイミドフィルムを用いた場合よりも、当該フィルムと表面処理銅箔とのピール強度が小さくなる傾向にある。よって、LCP(液晶ポリマー)フィルムやフッ素樹脂フィルムを用いた場合には、銅回路を形成後、銅回路をカバーレイで覆うことによって、当該フィルムと銅回路とが剥がれにくくし、ピール強度の低下による当該フィルムと銅回路との剥離を防止することができる。
なお、LCP(液晶ポリマー)フィルムやフッ素樹脂フィルムや低誘電率ポリイミド樹脂フィルムやCOP(シクロオレフィンポリマ―)樹脂フィルムは誘電正接が小さいため、LCP(液晶ポリマー)フィルムやフッ素樹脂フィルムや低誘電率ポリイミド樹脂フィルムやCOP(シクロオレフィンポリマ―)樹脂フィルムと本発明に係る表面処理銅箔とを用いた銅張積層板、プリント配線板、プリント回路板は高周波回路(高周波で信号の伝送を行う回路)用途に適する。また、本発明に係る表面処理銅箔は粗化粒子のアスペクト比が所定の形状に制御されているため、高周波回路用途にも適する。」
・「【実施例】
【0116】
以下、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例のみに制限されるものではない。すなわち、本発明に含まれる他の態様または変形を包含するものである。
・実施例1~34、比較例1~13、15、参考例14
表1に記載の条件で作製した各種銅箔を準備し、一方の表面に、粗化処理として表2及び3に記載の条件にてめっき処理を行った。なお、参考例14については、表2及び3に記載の通り、処理1及び処理2をこの順で行った。処理1については、処理1-1の電流密度及びめっき時間の処理を行った後に、処理1-2の電流密度及びめっき時間の処理を行った。」
・「【0129】
・銅箔表面の粗さ;
表面処理前の銅箔の線粗さRz、粗化処理層側表面の線粗さRa、Rz、および面粗さSq、Ssk、Sa、Sz、Sku、Spkはオリンパス社製レーザー顕微鏡(試験機:OLYMPUS LEXT OLS 4000、解像度:XY-0.12μm、Z-0.0μm、カットオフ:なし)を用いて測定した。なお、観察部の測定面積を66524μm2とした。また、評価長さは257.9μmとした。測定環境温度は23~25℃とした。面粗さSq、Ssk、Sa、Sz、Sku、SpkについてはISO25178に準拠して測定を行った。また、表面処理前の銅箔の線粗さRz、粗化処理層側表面の線粗さRa、RzについてはTDに平行な方向で測定を行った。なお、表面処理前の銅箔の線粗さRz、粗化処理層側表面の線粗さRa、RzについてはJISB0601 1994に準拠して測定した。
測定点数は10cm×10cm四方の表面処理銅箔の任意の箇所5点とし、それらの平均値を各表面処理の粗さとした。」
・「【0134】
【表1】
[図:0001415262000005.jpg]
【0135】
【表2】
[図:0001415262000006.jpg]
」
・「【0137】
【表4】
[図:0001415262000007.jpg]
」
イ 甲6に記載された発明
上記アより、甲6の実施例1を中心に整理すると、甲6には次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認める。
<甲6発明>
「樹脂基板と表面処理銅箔とを積層して製造された銅張積層板であって、前記表面処理銅箔は、無酸素銅+Ag100ppmの金属箔に対して、Cu:15g/L、Co:10g/L、Ni:10g/L、pH3、51℃の粗化メッキ浴に、電流密度20A/dm2、めっき時間0.3secの条件で表面処理を施したものであって、前記表面処理銅箔の粗化処理層側表面のSa及びSz(ISO25178に準拠して測定)は、Sa:0.122μm、Sz:2.237μmである、銅張積層板。」
(5)甲7に記載された事項等
ア 甲7の記載事項
甲7には、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
表面処理銅箔であって、前記表面処理銅箔が処理面を含み、前記処理面の空隙容積が0.1から1.0μm3/μm2であり、かつ前記処理面の最大高さが1.0から7.0μmであることを特徴とする、表面処理銅箔。」
・「【09】
前記実施例によれば、表面処理銅箔の処理面の空隙容積(Vv)を0.1から1.0μm3/μm2に製御し、かつ処理面の最大高さ(Sz)を1.0から7.0μmに製御することで、後に表面処理銅箔を搭載板に圧接させる時に、処理面と搭載板の間の付着性がより良くなり、かつ比較的に低い信号伝達ロスレベルを維持できる。表面処理銅箔の処理面と搭載板との間の付着性を高めることにより、後のエッチングステップで形成される導電回路が搭載板の表面から剥がれにくくなり、銅箔基板の歩留まり及び耐用性を高めることができる。」
・「【31】
なお、前記搭載板にベーク板、高分子板またはガラス繊維板を用いることができるが、これに限定されない。前記高分子板の高分子成分は例えば、・・・液晶高分子(Liquid Crystal Polymer、LCP)・・・である。」
・「【129】 <最大高さ(Sz)>」
・「【130】
規格ISO 25178-2:2012に基づき、レーザー顕微鏡(LEXT OLS5000-SAF、Olympus)の表面模様分析により、表面処理銅箔の処理面の最大高さ(Sz)を測定した。検査結果は表2に記載されている。具体的な測定条件は以下の通りである。」
イ 甲7に記載された発明
上記アより、甲7の請求項1を中心に整理すると、甲7には次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認める。
<甲7発明>
「表面処理銅箔であって、前記表面処理銅箔が処理面を含み、前記処理面の空隙容積が0.1から1.0μm3/μm2であり、かつ前記処理面の最大高さが1.0から7.0μmであることを特徴とする、表面処理銅箔。」
3 令和 5年12月14日付けで特許権者に通知した取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)についての判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明1を対比する。
甲1発明1における「LCP基板」は、本件特許発明1における「互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルム」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルム。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1においては、「液晶ポリマーフィルム」の「前記第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.164μm以下であり、前記第1表面の表面最大高さ(Sz)は0.921μm以上7.239μm以下であり、」と特定されているのに対して、甲1発明1においては、「LCP基板」の「表面粗度の算術平均高さ(Sa)が0.178μm、最大高さ(Sz)が2.678μmである」点。
<相違点1-2>
本件特許発明1においては、「前記液晶ポリマーフィルムはエッチングされておらず」と特定されているのに対して、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-3>
本件特許発明1においては、「前記第1表面のSa及びSzはISO25178:2012で定義する」と特定されているのに対して、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。
相違点1-1について検討する。
甲1発明1における液晶ポリマーフィルム表面のSa及びSzの値は、0.178μm及び2.678μmであり、本件特許発明1のSa及びSzの範囲外となる。そうすると、相違点1-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲1発明1ではない。
また、甲1及び他の証拠をみても、甲1発明1において、Saを0.028μm以上0.164μm以下の範囲内に変更する動機となる記載はない。
そして、本件特許発明1は、LCPフィルムの第1表面のSa特性を制御することにより、高周波の信号伝送時、LCPフィルムから成る積層体の挿入損失を低減又は抑制でき、高周波電子製品(例えば、5G製品)に積層体を適用できるようになる(【0008】)という、甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
してみれば、甲1発明において、Sa値を調整して相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)公然知られ又は公然実施された発明に基づく本件特許発明1~3の新規性・進歩性の検討
甲2及び3によると、パナソニック株式会社は、甲2に記載されたR-F705Tの型番を有する液晶ポリマーフィルムをFELIOS LCPの商品名で製品化し、甲3のカタログにも掲載している。カタログには、甲1発明における「パナソニック製液晶ポリマー(LCP R-F705T)」に対応する製品として、厚さ50μmのLCPフィルム両面に厚み12μmの銅箔を積層した両面銅張板も掲載されている。
そして、甲1の記載は、この両面銅張板が本件特許の出願前から、他人に供給されていたことを示しており、また、甲1の記載から、パナソニック社の両面銅張板の界面において、液晶ポリマーフィルムの表面が、Sa:0.178μm、Sz:2.678μmの粗さを有することが知られ、両面銅張板の銅箔をエッチングすることにより、Sa:0.178μm、Sz:2.678μmの表面粗さを両面に有する液晶ポリマーフィルムが回路基板用途で作製されたことも知られている。
ここで、上記(1)及び(2)の判断のとおり、本件特許発明1~3は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許発明1~3は、本件特許の出願前に公然知られ又は公然実施された発明ではなく、また、公然知られ又は公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1~3は特許法第29条第1項第1号~第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1~3は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
4 令和 5年12月14日付けで特許権者に通知した取消理由以外の特許異議申立理由についての判断
取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、
・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうち請求項4及び5について
・申立理由2(甲4に基づく新規性・進歩性)
・申立理由3(甲5に基づく新規性・進歩性)
・申立理由4(甲6に基づく新規性・進歩性)
・申立理由5(甲7に基づく進歩性)
・申立理由6(実施可能要件)
・申立理由7(サポート要件)
・申立理由8(明確性)
である。
以下、順に検討する。
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうち請求項4及び5に関する理由について
ア 本件特許発明4及び5について
本件特許発明4及び5と、甲1発明2を対比する。
本件特許発明4は、本件特許発明1の液晶ポリマーフィルム及び金属箔から作製される積層体である。
ここで、甲1発明2は、甲1発明1のLCP基板の両面に銅箔を帯びているものであるから、甲1発明2におけるLCP基板のSaは0.178μmであり、本件特許発明1のSaの範囲外である。
してみると、上記3(1)の判断と同様に、本件特許発明4は、甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、本件特許発明5は、請求項4を引用して特定するものであり、本件特許発明4の発明特定事項を全て有するものであるであるから、本件特許発明4と同様に、甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 公然知られ又は公然実施された発明に基づく本件特許発明4及び5の新規性・進歩性について
上記3(3)の判断のとおり、本件特許発明1の液晶ポリマーフィルムは、本件特許の出願前に公然知られ又は公然実施された発明ではないから、本件特許発明1の液晶ポリマーフィルムから作製される本件特許発明4の積層体は、本件特許の出願前に公然知られ又は公然実施された発明ではない。
また、本件特許発明5は、請求項4を引用して特定するものであり、本件特許発明4の発明特定事項を全て有するものであるであるから、本件特許発明4と同様に、本件特許の出願前に公然知られ又は公然実施された発明ではない。
そして、上記3(3)の判断と同様に、本件特許発明4及び5は、公然知られ又は公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうち請求項4及び5の理由についてのむすび
したがって、本件特許発明4及び5は特許法第29条第1項第1号~第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明4及び5は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項4及び5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1のうち請求項4及び5に対する理由によっては取り消すことはできない。
(2)申立理由2(甲4に基づく新規性・進歩性)について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
甲4発明における「プリント配線用原板」は、本件特許発明1における「互いに相対する第1表面及び第2表面から成るフィルム」に相当する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「互いに相対する第1表面及び第2表面から成るフィルム。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1においては、「フィルム」が「液晶ポリマー」からなることが特定されているのに対して、甲4発明においては、「プリント配線用原板」が「ポリイミド」からなる点。
<相違点4-2>
本件特許発明1においては、「液晶ポリマーフィルム」の「前記第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.164μm以下であり、前記第1表面の表面最大高さ(Sz)は0.921μm以上7.239μm以下であり、」と特定されているのに対して、甲4発明においては、「プリント配線用原板」の表面の「算術平均粗さSaが0.028μmで、最大高さSzが、0.255μmである」点。
<相違点4-3>
本件特許発明1においては、「前記液晶ポリマーフィルムはエッチングされておらず」と特定されているのに対して、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4-4>
本件特許発明1においては、「前記第1表面のSa及びSzはISO25178:2012で定義する」と特定されているのに対して、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
事案に鑑みて、相違点4-2について検討する。
甲4発明におけるプリント配線用原板表面の最大高さSzが0.255μmであるであるから、上記相違点4-2は実質的な相違点である。よって、本件特許発明1は甲4発明ではない。
そして、甲4及び他の証拠をみても、甲4発明におけるプリント配線用原板において、表面最大高さSzを上記相違点に係る数値範囲とする動機となる記載はない。
そして、本件特許発明1は、LCPフィルムの第1表面のSa特性を制御することにより、高周波の信号伝送時、LCPフィルムから成る積層体の挿入損失を低減又は抑制でき、高周波電子製品(例えば、5G製品)に積層体を適用できるようになる(【0008】)という、甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
してみれば、甲4発明において、Sz値を調整して相違点4-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に相当し得たこととは言えない。
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2~5について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、本件特許発明4及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有する液晶ポリマーフィルムを用いた積層体であるから、甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 申立理由2についてのむすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
(3)申立理由3(甲5に基づく新規性・進歩性)について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明を対比すると、両者は、樹脂からなる薄層を有するフィルム状物体である点で共通するものの、以下の点で相違する。
<相違点5-1>
本件特許発明1には、「互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルムであって、」と特定されているのに対して、甲5発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点5-2>
本件特許発明1には、「液晶ポリマーフィルム」の「前記第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.164μm以下であり、前記第1表面の表面最大高さ(Sz)は0.921μm以上7.239μm以下であり、」と特定されているのに対し、甲5発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点5-3>
本件特許発明1には、「前記ポリマーフィルムはエッチングされておらず、」と特定されているのに対して、甲5発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点5-4>
本件特許発明1には、「液晶ポリマーフィルム」の「前記第1表面のSa及びSzはISO25178:2012で定義する」と特定されているのに対し、甲5発明においては、そのような特定がされていない点。
相違点5-1について検討する。
甲5発明は積層体の発明であるが、当該積層体から合金層をエッチングして樹脂基板のみとすることは記載されていないから、上記相違点5-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲5発明ではない。
そして、甲5及び他の証拠をみても、甲5発明における積層体から合金層をエッチングにより除去して樹脂基板のみとする動機となる記載はない。
また、本件特許発明1は、LCPフィルムの第1表面のSa特性を制御することにより、高周波の信号伝送時、LCPフィルムから成る積層体の挿入損失を低減又は抑制でき、高周波電子製品(例えば、5G製品)に積層体を適用できるようになる(【0008】)という、甲5及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
してみれば、甲5発明において、相違点5-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2~5について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるであるから、本件特許発明1と同様に、甲5発明であるとはいえないし、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、本件特許発明4及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有する液晶ポリマーフィルムを用いた積層体であるから、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 申立理由3についてのむすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。
(4)申立理由4(甲6に基づく新規性・進歩性)について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲6発明を対比すると、両者は、樹脂からなる薄層を有するフィルム状物体である点で共通するものの、以下の点で相違する。
<相違点6-1>
本件特許発明1には、「互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルムであって、」と特定されているのに対して、甲6発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点6-2>
本件特許発明1には、「液晶ポリマーフィルム」の「前記第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.164μm以下であり、前記第1表面の表面最大高さ(Sz)は0.921μm以上7.239μm以下であり、」と特定されているのに対し、甲6発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点6-3>
本件特許発明1には、「前記ポリマーフィルムはエッチングされておらず、」と特定されているのに対して、甲6発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点6-4>
本件特許発明1には、「液晶ポリマーフィルム」の「前記第1表面のSa及びSzはISO25178:2012で定義する」と特定されているのに対し、甲6発明においては、そのような特定がされていない点。
相違点6-1について検討する。
甲6発明は銅張積層板の発明であるが、当該銅張積層板から表面処理銅箔をエッチングして樹脂基板のみとすることは記載されていないから、上記相違点6-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲6発明ではない。
そして、甲6及び他の証拠をみても、甲6発明における銅張積層板から表面処理銅箔をエッチングにより除去して樹脂基板のみとする動機となる記載はない。
また、本件特許発明1は、LCPフィルムの第1表面のSa特性を制御することにより、高周波の信号伝送時、LCPフィルムから成る積層体の挿入損失を低減又は抑制でき、高周波電子製品(例えば、5G製品)に積層体を適用できるようになる(【0008】)という、甲6及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
してみれば、甲6発明において、相違点6-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2~5について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるであるから、本件特許発明1と同様に、甲6発明であるとはいえないし、甲6発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、本件特許発明4及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有する液晶ポリマーフィルムを用いた積層体であるから、甲6発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 申立理由4についてのむすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。
(5)申立理由5(甲7に基づく進歩性)について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲7発明を対比すると、両者は、層状物体である点で共通するものの、以下の点で相違する。
<相違点7-1>
本件特許発明1には、「互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルムであって、」と特定されているのに対して、甲7発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点7-2>
本件特許発明1には、「液晶ポリマーフィルム」の「前記第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.164μm以下であり、前記第1表面の表面最大高さ(Sz)は0.921μm以上7.239μm以下であり、」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点7-3>
本件特許発明1には、「前記ポリマーフィルムはエッチングされておらず、」と特定されているのに対して、甲7発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点7-4>
本件特許発明1には、「液晶ポリマーフィルム」の「前記第1表面のSa及びSzはISO25178:2012で定義する」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのような特定がされていない点。
相違点7-1について検討する。
甲7発明には、特定の数値範囲内の空隙容積及び最大高さを有する表面処理銅箔が記載されているのみで、互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルムについては何ら記載されていないから、上記相違点7-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲7発明ではない。
そして、甲7及び他の証拠をみても、甲7発明において、Saを0.028μm以上0.164μm以下であり、Szを0.921μm以上7.239μm以下の液晶ポリマーフィルムを作製する動機となる記載はない。
そして、本件特許発明1は、「互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルムであって、第1表面の表面相加平均高さ(Sa)は0.028μm以上0.164μm以下であり、前記第1表面の表面最大高さ(Sz)は0.921μm以上7.239μm以下である、液晶ポリマーフィルム。」とすることで、高周波での信号伝送時に、LCPフィルムから成る積層体の挿入損失を低減又は抑制し、積層体の高周波電子製品への適用性を向上させるという、甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
したがって、甲7発明において、相違点に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、本件特許発明1は甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2~5について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるであるから、本件特許発明1と同様に、甲7発明であるとはいえないし、甲6発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、本件特許発明4及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有する液晶ポリマーフィルムを用いた積層体であるから、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 申立理由5についてのむすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。
(6)申立理由6(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断基準
本件特許発明1~5は、上記第3のとおり、物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
イ 実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0012】~【0014】には、LCPフィルムの原料や厚さ等について、【0015】~【0019】には、積層体について、【0020】~【0026】には、金属箔の材料や特性等について、具体的に記載されており、【0028】~【0067】には、具体的な実施例も記載されている。
したがって、発明の詳細な説明には、本件特許発明1~5の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
そうすると、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1~5を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1~5に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は申立理由6について、上記第4 6(1)及び(2)の主張をするが、以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1~5を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
また、本件特許発明1~5を実施することができないとする具体的な証拠を挙げるものでもないから、何れの主張も採用することができない。
エ 申立理由6についてのまとめ
上記のとおり、本件特許発明1~5は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、申立理由6によって本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
(7)申立理由7(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
イ サポート要件の判断
(ア)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(イ)サポート要件についての判断
本件発明の詳細な説明の【0006】によると、本件特許発明1の解決しようとする課題(以下、「本件特許発明1の課題」という。)は「高周波での信号伝送時に、挿入損失を低減又は抑制し得る、LCPフィルム」を提供することであり、本件特許発明4の解決しようとする課題(以下、「本件特許発明4の課題」という。)は「高周波での信号伝送時に、挿入損失を低減又は抑制し得る、LCPフィルムから成る積層体」である。
ここで、発明の詳細な説明には、発明の詳細な説明には、「LCPフィルムの第1表面のSa特性を制御することにより、高周波の信号伝送時、LCPフィルムから成る積層体の挿入損失を低減又は抑制でき、高周波電子製品(例えば、5G製品)に積層体を適用できるようになる。」(【0008】)こと、「LCPフィルムの第1表面のSzは、上記の値のうちの任意の2つの数値間の範囲内に該当してもよい。好ましくは、本出願のLCPフィルムの第1表面のSzは0.9μm以上であってもよく、より好ましくは、0.92μm以上であってもよい。従って、LCPフィルムを積層体に塗布することには、挿入損失が少なく、LCPフィルムと金属箔との剥離強度が向上するという利点がある。これらの利点により、その後の積層体の処理中のワイヤ剥離などの問題を回避できる。」(【0011】)こと、「E1~E11のLCPフィルムのいずれか一方の表面は(1)0.32μm未満のSa、及び(2)0.9μm以上のSzの両方の特性を有していたため、銅箔及びE1~E11のLCPフィルムから成る積層体は、挿入損失が低く(-3.0dB/10cm以下)、LCPフィルムと銅箔との剥離強度が1.0kN/m以上に向上するという利点を有していた。従って、LCPフィルムのSaに加えて、LCPフィルムのSzを適切にすると、LCPフィルムと銅箔との積層を更に最適化でき、よって高剥離強度及び低挿入損失を両立した積層体が得られた。」(【0067】)ことが記載されており、これらのことを裏付ける具体的な実施例の記載もある。
そうすると、当業者は、互いに相対する第1表面及び第2表面から成る液晶ポリマーフィルムであって、制御された数値範囲内のSa及びSzを有する液晶ポリマーフィルムであれば、上記本件特許発明1の課題を解決できることが認識できるし、当該液晶ポリマーフィルムと銅箔とから作製される積層体であれば、上記本件特許発明4の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1~5はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、あるいは、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明1~5はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は申立理由7について、上記第4 7(1)及び(2)の主張をするが、本件発明の課題を解決し得ないとする具体的な証拠を挙げるものでもないから、何れの主張も採用することができない。
エ 申立理由7についてのむすび
上記のとおり、本件特許発明1~5は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しない。
よって、申立理由7によって本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
(8)申立理由8(明確性)について
ア 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
イ 明確性要件の判断
(ア)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(イ)明確性要件についての判断
本件特許の請求項1~5の記載は、それ自体に不明瞭な記載はなく、願書に添付した明細書の記載とも整合する。
したがって、本件特許発明1~5に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由8については、上記第4 8(1)及び(2)の主張をするが、本件特許の発明の詳細な説明【0012】~【0013】には「フィルム」の材料や厚さについて記載されており、【0015】~【0026】には「積層体」の構造や材料について記載されており、その他の点についても、当業者であれば出願時における技術常識を基礎として理解できる程度のものであり、これらの点を以て第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
エ 申立理由8についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、申立理由8によって本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
第7 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1~5に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700208