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特許異議申立

2023-700197

フィリング用油中水型乳化油脂組成物

審判番号
2023-700197
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-004082
登録番号
7129779
請求日
2023年02月20日
審決日
2023年06月30日
公報発行日
2023年08月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】月島食品工業株式会社
  • 【権利者代理人】廣田 雅紀
  • 【権利者代理人】小澤 誠次
  • 【権利者代理人】東海 裕作
  • 【権利者代理人】松田 一弘
  • 【権利者代理人】堀内 真
  • 【権利者代理人】山内 正子
  • 【権利者代理人】園元 修一
  • 【権利者代理人】山村 昭裕
  • 【異議申立人】清水 誠
審判長/審判官
  • 審判長 井上 猛
  • 審判官 粟野 正明
  • 審判官 山本 佳
分類
P1652.113-Y (A23D) / P1652.121-Y (A23D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7129779号発明「フィリング用油中水型乳化油脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7129779号の請求項1、5、6、10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7129779号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願(特願2018-4082号。以下、「本願」という。)は、平成30年 1月15日(優先権主張:平成29年 1月16日)の出願であって、令和 4年 8月25日にその特許権の設定登録がされ、同年 9月 2日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1、5、6、10に係る特許について、令和 5年 2月20日に特許異議申立人である清水 誠(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明10」といい、総称して「本件特許発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものであり、そのうち、本件特許の請求項1、5、6、10に係る発明は、以下のとおりである。 「【請求項1】 ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の油中水型乳化油脂組成物であって、 ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を含有し、 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸残基の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸であり、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が10以上であり、 前記有機酸モノグリセリドが、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ヨウ素価10以下の酢酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の有機酸モノグリセリドであり、 水の含有量が5~35質量%であり、両親媒性蛋白質を含有する、前記油中水型乳化油脂組成物(但し、固体粉末を含有するものは除く)。」 「【請求項5】 0.005~3質量%のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、請求項1に記載のフィリング用油中水型乳化油脂組成物(但し、固体粉末を含有するものは除く)。」 「【請求項6】 ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を含有し、水の含有量が5~35質量%である、ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の油中水型乳化油脂組成物(但し、固体粉末を含有するものは除く)を調製するための油脂組成物であって、 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸残基の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸であり、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が10以上であり、 前記有機酸モノグリセリドが、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ヨウ素価10以下の酢酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上のモノグリセリドである、前記油脂組成物。」 「【請求項10】 0.005~10質量%のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、請求項6~9のいずれかに記載の油脂組成物。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、下記3の甲第1号証、及び甲第2号証(以下、「甲1」等という。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1、5、6、10に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 1 申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)(甲1を主たる引用文献とするもの) 本件特許発明1、5、6、10は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、又は甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性)(甲2を主たる引用文献とするもの) 本件特許発明1、5、6、10は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、又は甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 証拠方法 甲1:特開昭64-39941号公報 甲2:特開2001-8617号公報 第4 当審の判断 以下に述べるとおり、当審は、上記第3の1、2のいずれの申立理由によっても、本件特許の請求項1、5、6、10に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 甲1、甲2の記載事項、甲1に記載された発明、及び甲2に記載された発明 (1)甲1の記載事項 本願の優先権主張の日前に公知となった甲1には、「可塑性油脂の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の記載がある(下線は当審が付したものである。以下同様。)。 ア 「特許請求の範囲 1.(A)親水性又はHLB10以上の乳化剤、又は/及び(B)動植物性蛋白質より得られる水溶性蛋白質の、(A)、(B)を水相中の濃度として(A)が0.05~1重量%、(B)が蛋白質換算にて1~10重量%になるように加え、溶解又は分散した水相に、レシチンを含まない油相(I)を加え乳化し、次いで予めレシチンを溶解した油相(II)を加え乳化した後、急冷可塑化することを特徴とする可塑性油脂の製造方法 2.親水性又はHLB10以上の乳化剤がソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルより成る群より選ばれたる少なくとも1種である特許請求の範囲第1項記載の可塑性油脂の製造方法 3.動植物性蛋白質より得られる水溶性蛋白質が、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、豆乳及びこれらより得られる水溶性蛋白質より成る群より選ばれたる少なくとも1種である特許請求の範囲第1項記載の可塑性油脂の製造方法」(特許請求の範囲) イ 「[産業上の利用分野] 本願発明は可塑性油脂の製造方法に関するものであり、更に詳しくはバタークリーム、製菓用フィリング、製菓用スプレッドとして用いるに際し、巾広い可塑性範囲、迅速な口溶け、油っぽさの少ない食感、良好なホイップ性等の特性を持つ、優れた食品用素材として利用する事ができる可塑性油脂の製造方法に関するものである。」(第1頁右欄第5~12行) ウ 「このような問題点に着目し、可能な限り少量の乳化剤の使用で広い可塑性範囲、迅速な口溶け、油っぽさの少ない食感、良好なホイップ性等の特徴を有する可塑性油脂の製造方法を検討した結果、本願発明に到達したものである。」(第2頁左下欄第5~9行) エ 「[問題点を解決する為の手段] すなわち本願発明は親水性又はHLB 10以上の乳化剤又は/及び動植物性蛋白質より得られる水溶性蛋白質を添加した水相に、レシチンを含まない油相(I)と、レシチンを添加し溶解した油相(II)とを順次混合乳化し、得られた水中油型乳化物を急冷可塑化装置を通して製造する事を特徴とする可塑性油脂の製造方法である。」(第2頁左下欄第10~17行) オ 「親水性乳化剤としては、ソルビタンとモノクリセリドをアルカリ触媒下でエステル交換反応をして得られる親水性の自己乳化型ソルビタン脂肪酸エステル(これを以下「反応型ソルビタン脂肪酸エステル」と称す)や、HLB10以上の乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルがあげられ、これらを単独又は混合して用いることができる。これらの乳化剤は水相中に対して0.05~1.0%の範囲で用いるのであるが、多量の乳化剤の添加は可塑性油脂の風味が劣る点て好ましくなく、0.1~0.5%の範囲で配合するのが好ましい。 水溶性蛋白質としては、全脂粉乳、脱脂粉乳、カセイン、カゼインナトリウム、ホエーパウダー等の乳蛋白質、並びに無糖練乳、加糖練乳、濃縮乳等の乳製品、卵白、卵黄蛋白、アルブミン等の卵蛋白質、セラチン、ミオシン等の動物性蛋白質、大豆蛋白、小麦蛋白等の植物性蛋白質の使用が挙げられる。このうち呈味性の面より、全脂粉乳、脱脂粉乳、無糖練乳、濃縮乳、卵白、卵黄蛋白等の使用が望ましい。これらを蛋白質換算にて対水相において1~10重重%の範囲で添加し、使用するのであるが、10質量%以上の添加は乳化物の粘度の著しい増加を起こし、急冷可塑化装置への配管移送が困難になる等、作業性の面で好ましくない。」(第2頁右下欄第15行~第3頁左上欄第20行) カ 「上記の親水性乳化剤及び/又は水溶性動植物性蛋白質に必要によって呈味剤、着色料、着香料、保存料、酒類を水に添加して水相を調製するが、水相の量は全組成分中の10~60重量%であるのが好ましく、乳化物調製の際の粘度及び乳化物の安定性等の点で20~45重量%であるのが更に好ましい。」(第3頁左下欄第1~7行) キ 「[実施例] 次に本願発明を実施例で説明する。 実施例1 水相として水25kgにHLB16のショ糖ステアリン酸エステル50g、キサンタンガム25gを添加し加熱溶解した後、60~65℃に調温しておく。油相(I)としてヤシ油10kg、パーム油15kgを混合した物を60~65℃に調温しておく。レシチン添加油相(II)として融点36℃のナタネ硬化油20kg、パーム油20kg、ナタネ油10kgに卵黄レシチン(アセトン不溶物 30.7%)を50gと、ステアリン酸モノグリセリド75gを添加し加熱溶解した後、60~65℃に調温しておく。ホモミキサーを取り付けである攪拌槽内にまず水相を投入し、回転数3000rpmで攪拌する。この中にレシチン無添加の油相(I)を徐々に添加し乳化する。油相(I)投入乳化後、レシチンを添加した油相(II)を徐々に添加してゆき二次乳化を行う。乳化終了後、この乳化物をオンレータを通して急冷可塑化を行い可塑性油脂を得た。」(第4頁右上欄第11行~同頁左下欄第11行) ク 「実施例5 水相として無糖練乳(水分 72.5%、蛋白質含量 6.8%)35kgにHLB11のポリグリセリンステアリン酸エステル28gを添加し加熱溶解した後60~65℃に調温した物を用意する。油相(I)としてヤシ油15kg、パーム油15kg、ナタネ油10kg、グリセリンモノリノール酸エステル60g、HLB5のソルビタンオレイン酸エステル20gを混合し加熱溶解した後60~65℃に調温した物を用意する。油相(II)として融点36℃のナタネ硬化油15kg、ナタネ油10kgを混合した後、酵素処理大豆レシチン(アセトン不溶物 40.6%)50gを溶解し60~65℃に調温した物を用意する。これらを実施例1と同様の方法で乳化及び急冷可塑化を行い可塑性油脂を得た。」(第5頁左上欄第15行~同頁右上欄第10行) ケ 「[発明の効果] 以上説明した様に、本願発明を利用して製造した可塑性油脂は、従来の製造方法によるものに比較して広い可塑性範囲、迅速な口溶け、油っぽさの少ない食感、良好なホイップ性等の特徴を持つ優れた食品用素材として用いる事ができる。この可塑性油脂は食品を製造する際、製菓、製パン用に使用するにおいては、デコレーション用のトッピング、フィリング、サンドクリーム、練り込み用油脂として利用し、食卓をバラエティ-化できる事はもちろん、カスタードクリーム、チョコレートクリーム、レモンクリーム、あん等の炊き込み用油脂、冷凍食品への添加、各種ソースの炊き込み用として巾広く使用する事によって特徴のある食品の製造が可能となる。更に製造方法が比較的簡便であり、製造工程においては作業が能率化できる等の効果を有する。」(第8頁右上欄第18行~同頁右下欄第14行) (2)甲1に記載された発明 上記(1)に摘記した甲1の記載事項、特に、上記(1)イ、エの記載事項、及び実施例5の可塑性油脂に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「水相として無糖練乳(水分 72.5%、蛋白質含量 6.8%)35kgにHLB11のポリグリセリンステアリン酸エステル28gを添加し加熱溶解した後60~65℃に調温した物を用意し、 油相(I)としてヤシ油15kg、パーム油15kg、ナタネ油10kg、グリセリンモノリノール酸エステル60g、HLB5のソルビタンオレイン酸エステル20gを混合し加熱溶解した後60~65℃に調温した物を用意し、 油相(II)として融点36℃のナタネ硬化油15kg、ナタネ油10kgを混合した後、酵素処理大豆レシチン(アセトン不溶物 40.6%)50gを溶解し60~65℃に調温した物を用意し、 ホモミキサーを取り付けである攪拌槽内にまず水相を投入し、回転数3000rpmで攪拌し、この中にレシチン無添加の油相(I)を徐々に添加し乳化し、油相(I)投入乳化後、レシチンを添加した油相(II)を徐々に添加してゆき二次乳化を行い、乳化終了後、得られた水中油型乳化物をオンレータを通して急冷可塑化を行い得た可塑性油脂であって、 バタークリーム、製菓用フィリング、製菓用スプレッドとして用いるに際し、巾広い可塑性範囲、迅速な口溶け、油っぽさの少ない食感、良好なホイップ性等の特性を持つ、優れた食品用素材として利用する事ができる可塑性油脂。」(以下、「甲1発明1」という。) 「甲1発明1に係る可塑性油脂を得るために用いられる、HLB11のポリグリセリンステアリン酸エステル。」(以下、「甲1発明2」という。) (3)甲2の記載事項 本願の優先権主張の日前に公知となった甲2には、「油中水型乳化油脂組成物」(発明の名称)に関して、以下の記載がある(「・・・」は記載の省略を表す。)。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ジグリセリドを15重量%以上含有する油脂及び風味成分を含有する油中水型乳化油脂組成物であって、36℃の水中で全乳化物の30%以上が初期の1分間に転相することを特徴とする油中水型乳化油脂組成物。 【請求項2】 解乳化剤を含有するものである請求項1記載の油中水型乳化油脂組成物。 【請求項3】 解乳化剤が、HLB7以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、水溶性分解蛋白質、HLB8以上のリゾレシチン、HLB5以上のショ糖脂肪酸エステル、HLB8以上のモノグリセリド有機酸エステル、HLB8以上のソルビタン脂肪酸エステルの内の1種以上である請求項2記載の油中水型乳化油脂組成物。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、摂取時の風味発現性(フレーバーリリース)に優れたジグリセリド含有油中水型乳化油脂組成物に関する。本発明の油中水型乳化油脂組成物は、マーガリン、ファットスプレッド、バタークリーム、ショートニング類などに好適に利用される。」 ウ 「【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、先進諸国の食生活においては脂質の摂取量が増大しており、このことは血中トリグリセリド(中性脂肪)濃度の増加、肥満を招き、成人病の大きな原因となっている。ジグリセリドは、食後の血中中性脂肪濃度が上昇しにくく、体脂肪になりにくい油脂であることが明らかになり(特開平10-176181号公報)、調理油や特にマーガリン、スプレッドのような油脂の多い(油中水型乳化)食品において、従来の油脂に代えての使用が期待される。油脂にジグリセリドを配合する油中水型乳化組成物は、例えば、特開平7-121196号公報、特開平3-91441号公報、US4284655、特開昭61-63242号公報、US5879735、WO95/22257、WO96/32022などに各種提案されている。本発明者らは、油中水型乳化油脂組成物について更に検討を続けたところ、ジグリセリドを高濃度に含む場合、食品の美味しさに直接係わる摂取時の風味発現が良くないという問題が見出された。このような現象はトリグリセリドを主体とする油脂には見られない。」 エ 「【0007】本発明でいう解乳化剤とは、保存時は乳化の安定性に影響することなく、摂取時に口中で速やかに転相することにより、優れたフレーバーリリースを実現させる、風味増強剤あるいはフレーバーリリース・エンハンサーとして機能する添加剤である。解乳化剤としては、以下に説明するポリグリセリン脂肪酸エステル、水溶性分解蛋白質、リゾレシチン、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリド有機酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸の炭素数が10~22の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのモノ、ジ、ポリエステルであり、HLBが7以上(好ましくは11以上)であることが必要である。HLBが7未満のものは、逆にフレーバーリリースを悪くする。分解蛋白質としては、乳蛋白、植物性蛋白、卵蛋白等を酵素または酸で分解して得た1種以上を使用できる。具体的には、乳蛋白としては、カゼイン、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、ラクトフェリン、ホエー、脱脂粉乳、全脂粉乳、バターミルクパウダー、乳清蛋白、ミルク等が用いられる。植物性蛋白としては、大豆蛋白、小麦蛋白、コーン蛋白等が挙げられる。卵蛋白としては、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド、オボグロブリン、卵白蛋白、卵黄蛋白、全卵蛋白等が挙げられる。これらを分解した分解蛋白の好ましい物性としては、水溶性であることが挙げられる。水に不溶の場合、蛋白のゲル化のためフレーバーリリースは逆に悪くなる。また、分解処理としては、配合前に蛋白を分解するのが好ましいが、乳化中や乳化後に分解処理をしてもかまわない。リゾレシチンとしては、構成脂肪酸の炭素数が10~22の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸で、HLBが8以上(好ましくは12以上)で、水溶性のものである。HLBが8未満のものは、逆にフレーバーリリースを悪くする。」 オ 「【0012】本発明の油中水型乳化油脂組成物の調製は常法によれば良く、油相に対する水を基質とする水相の重量比率は、油相:水相=20:80~85:15(好ましくは40:60~85:15)の範囲とすることができる。」 カ 「【0016】実施例1~5、比較例1~4 製造後の可塑性乳化物が800gとなるように、表1の処方に従って、70℃で10分間、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)により乳化した。得られた乳化物を常法により急冷し、可塑化することにより油中水型乳化油脂組成物を製造した。・・・」 キ 「【0017】 【表1】 [図:0001400494000001.jpg] 」 ク 「【0018】A;分解ホエー蛋白(森永乳業(株)製) B;HLB15のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬(株)製、F-160) C;HLB15のポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品(株)製、ML-750) D;HLB11のポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品(株)製、SO-750) E;ホエー蛋白(森永乳業(株)製) F;HLB1のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬(株)製、F-10) G;HLB4.5のポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)製、サンソフトQ-175S)」 (4)甲2に記載された発明 上記(3)に摘記した甲2の記載事項、特に、上記(3)イの記載事項、及び上記(3)カ~クの実施例3の油中水型乳化油脂組成物に着目すると、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。 「製造後の可塑性乳化物が800gとなるように以下の処方に従って、70℃で10分間、ホモミキサーにより乳化し、得られた乳化物を常法により急冷し、可塑化することにより製造され、マーガリン、ファットスプレッド、バタークリーム、ショートニング類などに好適に利用される油中水型乳化油脂組成物であって、 上記処方が、油相として、ジグリセド:48.9部、部分硬化パーム油(IV=40):21.0部、ビタミンE:0.02部、βカロチン:0.002部、バターフレーバー:0.1部を含有し、水相として、蒸留水:27.9部、添加剤2であるC;HLB15のポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品(株)製、ML-750):0.5部、脱脂粉乳:0.3部、食塩:1.3部を含有する、 油中水型乳化油脂組成物。」(以下、「甲2発明1」という。) 「甲2発明1に係る油中水型乳化油脂組成物の製造に用いられる添加剤2であるC;HLB15のポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品(株)製、ML-750)。」(以下、「甲2発明2」という。) 2 申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 甲1発明1との対比 (ア)甲1発明1の「HLB11のポリグリセリンステアリン酸エステル」は、本件特許発明1の「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤」に対応するものであって、両者は、「前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸残基」が「ステアリン酸」を含むものであって、「HLB値が10以上であ」る点で共通する。 (イ)甲1発明1の「乳化終了後、得られた水中油型乳化物をオンレータを通して急冷可塑化を行い得た可塑性油脂」は、「バタークリーム、製菓用フィリング、製菓用スプレッドとして用いる」ものであるから、本件特許発明1の「油中水型乳化油脂組成物」とは、「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤」を含有する「ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の」「乳化油脂組成物」であり、固体粉末を含有するものではない点で共通する。 (ウ)甲1発明1の「無糖練乳」に含まれる「蛋白質」は、本件特許発明1の「両親媒性蛋白質」に相当する。 (エ)甲1発明1の「可塑性油脂」に含まれる「無糖練乳」「35kg」に「72.5%」含まれる「水分」は、25.375kgであって、「可塑性油脂」の全質量(35kg+0.028kg+15kg+15kg+10kg+0.060kg+0.020kg+15kg+10kg+0.050kg=100.158kg)の約25.3質量%を占めるものであるから、甲1発明1の「可塑性油脂」が上記水分を含む点は、本件特許発明1の「油中水型乳化油脂組成物」において、「水の含有量が5~35質量%であ」る点に相当する。 (オ)そうすると、本件特許発明1と甲1発明1とは、 「ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の乳化油脂組成物であって、 ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を含有し、 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸残基がステアリン酸を含むものであり、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が10以上であり、 水の含有量が5~35質量%であり、両親媒性蛋白質を含有する、前記乳化油脂組成物(但し、固体粉末を含有するものは除く)。」 の点で一致し、 以下の点で相違する。 <相違点1> 「乳化油脂組成物」が、本件特許発明1では、「油中水型乳化油脂組成物」であるのに対して、甲1発明1では、「水中油型乳化物をオンレータを通して急冷可塑化を行い得た可塑性油脂」であって、「油中水型」であるかどうか不明であり、「油中水型」であるとはいえない点。 <相違点2> 「乳化剤」として含有する「ポリグリセリン脂肪酸エステル」について、本件特許発明1では、「脂肪酸残基の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸であ」るのに対して、甲1発明1では、脂肪酸残基がステアリン酸のみからなり、パルミチン酸を含まない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、上記相違点1について、まず検討する。 (ア)甲1発明1の「水中油型乳化物をオンレータを通して急冷可塑化を行い得た可塑性油脂」が上記(ア)のいずれの構造であるかについての明記はないが、「水中油型乳化物」を急冷可塑化したものであることからすると、「水中油型」の構造を有するものである蓋然性が高いものと認められる。 (イ)そして、乳化物質に関する本願の優先権主張日当時の技術常識によれば、「水中油型」とは、水の中に油が分散した構造を有するものであり、「油中水型」とは、油の中に水が分散した構造を有するものであって、両者は、基本的な構造を異にするものである。 (ウ)そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点であるといえる。 (エ)次に、上記相違点1の容易想到性について検討するに、甲1の記載事項や本願の優先権主張の日当時の技術常識を考慮しても、「水中油型」の構造を有するものである蓋然性が高い甲1発明1の「可塑性油脂」を本件特許発明1のように「油中水型乳化油脂組成物」に替える動機付けを見いだせない。 (オ)したがって、甲1発明1において、上記相違点1に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ よって、上記相違点2及び本件特許発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明1であるとはいえず、また、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明5について ア 本件特許発明5は、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えたものであるから、本件特許発明5と甲1発明1とは、上記相違点1で少なくとも相違する。 イ そして、上記相違点1については、上記(1)イにおいて検討したとおりである。 ウ したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲1発明1であるとはいえず、また、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明6について ア 甲1発明2との対比 (ア)甲1発明2の「HLB11のポリグリセリンステアリン酸エステル」は、本件特許発明6の「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤」に対応するものであって、両者は、「前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸残基」が「ステアリン酸」を含むものであって、「HLB値が10以上であり」、「乳化油脂組成物」を「調製するための油脂組成物」である点で共通する。 (イ)上記(1)アの検討結果を踏まえると、甲1発明2の「甲1発明1に係る可塑性油脂」と、本件特許発明6の「油中水型乳化油脂組成物」とは、「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を含有」する「ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の」「乳化油脂組成物」であり、「固体粉末を含有するもの」ではないものであり、かつ「水の含有量が5~35質量%であ」る点で共通する。 (ウ)そうすると、本件特許発明6と甲1発明2とは、 「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を含有し、水の含有量が5~35質量%である、ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の乳化油脂組成物(但し、固体粉末を含有するものは除く)を調製するための油脂組成物であって、 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸残基がステアリン酸を含むものであり、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が10以上である、前記油脂組成物。」 の点で一致し、 以下の点で相違する。 <相違点3> 「乳化油脂組成物」が、本件特許発明6では、「油中水型乳化油脂組成物」であるのに対して、甲1発明2では、「水中油型乳化物をオンレータを通して急冷可塑化を行い得た可塑性油脂」であって、「油中水型」であるかどうか不明であり、「油中水型」であるとはいえない点。 <相違点4> 「乳化剤」として含有する「ポリグリセリン脂肪酸エステル」について、本件特許発明6では、「脂肪酸残基の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸であ」るのに対して、甲1発明2では、脂肪酸残基がステアリン酸のみからなり、パルミチン酸を含まない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、上記相違点3について、まず検討するに、上記(1)イにおいて相違点1について検討したのと同様であるから、上記相違点3は、実質的な相違点であるといえ、また、甲1発明2において、上記相違点3に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ よって、上記相違点4及び本件特許発明6によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲1発明2であるとはいえず、また、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明10について ア 本件特許発明10は、本件特許発明6の発明特定事項を全て備えたものであるから、本件特許発明10と甲1発明2とは、上記相違点3で少なくとも相違する。 イ そして、上記相違点3については、上記(3)イにおいて検討したとおりである。 ウ したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1発明2であるとはいえず、また、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)小括 以上のとおり、本件特許発明1、5、6、10は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由1-1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件特許発明1、5、6、10は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由2-1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 甲2発明1との対比 (ア)甲2発明1の「油中水型乳化油脂組成物」の「水相」に含有される「添加剤2であるC;HLB15のポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品(株)製、ML-750)」は、ラウリン酸エステルに分類されるポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社ウェブサイトの「工業材料部門」「製品一覧」(https://www.sy-kogyo.co.jp/division/functional/product/)による)であって乳化に用いられる物質であるから、本件特許発明1の「ポリグリセリン脂肪酸エステル」とは、「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤」である「HLB値が10以上であ」る「ポリグリセリン脂肪酸エステル」である限りにおいて共通する。 (イ)甲2発明1の「製造後の可塑性乳化物が800gとなるように以下の処方に従って、70℃で10分間、ホモミキサーにより乳化し、得られた乳化物を常法により急冷し、可塑化することにより製造され、マーガリン、ファットスプレッド、バタークリーム、ショートニング類などに好適に利用される油中水型乳化油脂組成物」は、本件特許発明1の「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を含有」する「ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の油中水型乳化油脂組成物」であって、固体粉末を含有しないものに相当する。 (ウ)甲2発明1の「油中水型乳化油脂組成物」の「水相」に含まれる「脱脂粉乳:0.3部」は、本件特許発明1の「油中水型乳化油脂組成物」に含まれる「両親媒性蛋白質」に相当する。 (エ)甲2発明1の「油中水型乳化油脂組成物」の「水相」に含有される「蒸留水:27.9部」は、「油中水型乳化油脂組成物」の全質量部(48.9部+21.0部+0.02部+0.002部+0.1部+27.9部+0.5部+0.3部+1.3部=100.022部)の約27.9質量%を占めるものであるから、甲2発明1の「油中水型乳化油脂組成物」が上記蒸留水を含む点は、本件特許発明1の「油中水型乳化油脂組成物」において、「水の含有量が5~35質量%であ」る点に相当する。 (オ)そうすると、本件特許発明1と甲2発明1とは、 「ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の油中水型乳化油脂組成物であって、 ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を含有し、 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が10以上であり、 水の含有量が5~35質量%であり、両親媒性蛋白質を含有する、前記油中水型乳化油脂組成物(但し、固体粉末を含有するものは除く)。」 の点で一致し、 以下の点で相違する。 <相違点5> 「乳化剤」として含有する「ポリグリセリン脂肪酸エステル」について、本件特許発明1では、「脂肪酸残基の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸であ」るのに対して、甲2発明1では、脂肪酸残基がラウリン酸からなる点。 イ 相違点についての判断 (ア)本件特許発明1の「ポリグリセリン脂肪酸エステル」の「脂肪酸残基の80質量%以上」を構成する「パルミチン酸」及び「ステアリン酸」は、それぞれ炭素数16、18の飽和脂肪酸であり、一方、甲2発明1の「ポリグリセリン脂肪酸エステル」の脂肪酸残基を構成する「ラウリン酸」は、炭素数12の飽和脂肪酸であるから、上記相違点5は、実質的な相違点であるといえる。 (イ)次に、上記相違点5の容易想到性について検討する。 a 上記1(3)エに摘記したとおり、甲2の【0007】には、「ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸の炭素数が10~22の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのモノ、ジ、ポリエステルであり、HLBが7以上(好ましくは11以上)であることが必要である。」との記載があり、上記(ア)の本件特許発明1に係る「パルミチン酸」及び「ステアリン酸」、甲2発明1に係る「ラウリン酸」は、いずれも上記「構成脂肪酸の炭素数が10~22の飽和脂肪酸」に包含されるものではあるが、この記載のみから、甲2発明1のように「ポリグリセリン脂肪酸エステル」の脂肪酸残基を構成する脂肪酸が「ラウリン酸」である態様から、「脂肪酸残基の80質量%以上」を「パルミチン酸及びステアリン酸」の両者から構成する態様に変更する動機付けがあるとはいえない。 b したがって、甲2発明1において、上記相違点5に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ よって、本件特許発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明1であるとはいえず、また、甲2発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明5について ア 本件特許発明5は、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えたものであるから、本件特許発明5と甲2発明1とは、上記相違点5で少なくとも相違する。 イ そして、上記相違点5については、上記(1)イにおいて検討したとおりである。 ウ したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲2発明1であるとはいえず、また、甲2発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明6について ア 甲2発明2との対比 (ア)甲2発明2の「添加剤2であるC;HLB15のポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品(株)製、ML-750)」は、本件特許発明6の「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤」に対応するものであって、両者は、「HLB値が10以上であり」、「油中水型乳化油脂組成物」を「調製するための油脂組成物」である点で共通する。 (イ)上記(1)アの検討結果を踏まえると、甲2発明2の「甲2発明1に係る油中水型乳化油脂組成物」と、本件特許発明6の「油中水型乳化油脂組成物」とは、「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を含有」する「ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の」「油中水型乳化油脂組成物」であり、「固体粉末を含有するもの」ではないものであり、かつ「水の含有量が5~35質量%であ」る点で共通する。 (ウ)そうすると、本件特許発明6と甲2発明2とは、 「ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を含有し、水の含有量が5~35質量%である、ベーカリー製品にトッピング、注入、塗布、又はサンドにより添えられる副食材であるフィリング用の油中水型乳化油脂組成物(但し、固体粉末を含有するものは除く)を調製するための油脂組成物であって、 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が10以上である、前記油脂組成物。」 の点で一致し、 以下の点で相違する。 <相違点6> 「乳化剤」として含有する「ポリグリセリン脂肪酸エステル」について、本件特許発明6では、「脂肪酸残基の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸であ」るのに対して、甲2発明2では、脂肪酸残基がラウリン酸からなる点。 イ 相違点についての判断 上記相違点6について検討するに、上記(1)イにおいて相違点5について検討したのと同様であるから、上記相違点6は、実質的な相違点であるといえ、また、甲2発明2において、上記相違点6に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ よって、本件特許発明6によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲2発明2であるとはいえず、また、甲2発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明10について ア 本件特許発明10は、本件特許発明6の発明特定事項を全て備えたものであるから、本件特許発明10と甲2発明2とは、上記相違点6で少なくとも相違する。 イ そして、上記相違点6については、上記(3)イにおいて検討したとおりである。 ウ したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲2発明2であるとはいえず、また、甲2発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)小括 以上のとおり、本件特許発明1、5、6、10は、甲2に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由1-2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件特許発明1、5、6、10は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由2-2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1、5、6、10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、5、6、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700197

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