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特許異議申立

2025-701111

海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料及び魚類用飼料向け添加剤、並びにそれらを用いた魚類の飼育方法

審判番号
2025-701111
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-025872
登録番号
7688341
請求日
2025年12月01日
審決日
2026年04月03日
公報発行日
2026年05月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社田村薬草農場グループ
  • 【権利者代理人】デロイトトーマツ弁理士法人
  • 【権利者】学校法人北里研究所
  • 【権利者代理人】デロイトトーマツ弁理士法人
  • 【異議申立人】清水 誠
審判長/審判官
  • 審判長 有家 秀郎
  • 審判官 石川 信也
  • 審判官 土屋 真理子
分類
P1651.121-Y (A23K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7688341号発明「海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料及び魚類用飼料向け添加剤、並びにそれらを用いた魚類の飼育方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7688341号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7688341号(以下、「本件特許」という。)に係る特許出願は、令和5年2月22日に出願され、令和7年5月27日にその特許権の設定登録がされ、同年6月4日に特許掲載公報が発行されたものである。 本件特許に対し、令和7年12月1日に、特許異議申立人 清水 誠(以下「申立人」という。)により、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1~3に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 魚類用飼料100重量部に対して0.2~2重量部の粉末状の甘草根を含有していることを特徴とする海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料。 【請求項2】 魚油に粉末状の甘草根を含有させたことを特徴とする海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料向け添加剤。 【請求項3】 淡水飼育期間と海水飼育期間とを設ける魚類の飼育方法であって、 前記淡水飼育期間に、魚類用飼料100重量部に対して0.2~2重量部の粉末状の甘草根を含有している海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料を給餌する ことを特徴とする魚類の飼育方法。 第3 証拠方法及び特許異議申立理由の概要 1 証拠方法 申立人が申立書に添付して提出した証拠は、次のとおりである(以下、申立人の提出した甲第1号証等を、「甲1」等という場合がある。)。 (1)甲第1号証:特許第2535559号公報 (2)甲第2号証:特開平2-283247号公報 (3)甲第3号証:Xiao-lin Meng et.al.,”Effects of dietary licorice (Glycyrrhiza uralensis) supplementation on growth performance, muscle quality, and immunity in the common carp (Cyprinus carpio haematopterus), Aquaculture Reports,Volume 27, (4)甲第4号証:Mohsen Abdel-Tawwab et.al.,”Immune and antioxidative effects of dietary licorice (Glycyrrhiza glabra L.) on performance of Nile tilapia, Oreochromis niloticus (L.) and its susceptibility to Aeromonas hydrophila infection”, Aquaculture, Volume 530 (5)甲第5号証:特開2005-269913号公報 2 申立理由 申立人が申立書において主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)申立理由1(新規性欠如) 本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1、甲2、甲3又は甲4に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当する。 また、本件特許の請求項2に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3又は甲5に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当する。 したがって、これらの発明に係る特許は、同項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(進歩性欠如) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1、甲2、甲3、甲4又は甲5に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、これらの発明に係る特許は、同項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 各甲号証について (1)甲1 ア 記載事項 甲1には、以下の記載がある(下線は、当審において付した。以下、同様。)。 (ア)「本発明はまた生薬を飼料中に配合して投与することからなる魚類のせっそう病の予防及び治療方法を提供するものである。 せっそう病は、魚類、特にベニザケ、シロザケ、カラフトマス、ギンザケ、サクラマス、マスノスケ、大西洋マス、アマゴ、カワマス、ニジマス、ブラウントラウト、ヒメマス、ヤマメ等のサケ科の魚類に見られる疾病である。本発明の予防及び治療剤並びに予防及び治療方法はサケ科の魚類にはもちろんのこと、その他の魚類に対しても有効である。」(2頁4欄28行~37行) (イ)「カンゾウ(甘草)は、カンゾウ(Glycyrrhiza glabra Linne var.glandulifera Regel et Herder)の根および根茎をそのまま、またはコルク皮を除いたものである。このものの成分はグリシルリチン、リキリチン、ブドウ糖、アスパラギン等であり、ヒトの緩和、鎮痙薬、「去」(当審注:「去」は衣偏に去)痰薬として用いられている。」(2頁4欄38行~43行) (ウ)「実施例 1 配合飼料にカンゾウ粉末を1%添加して供試飼料とした。この供試飼料を体重約100g/尾のギンザケ500尾にカンゾウ粉末として0.2g/体重kg/日の割合で給餌し、1ヶ月間飼育した(試験区)。 また対照区として配合飼料のみを1ヶ月間与えた。両区とも1ヶ月後の体重は140gであった。 その結果飼育中に野外感染によりせっそう病で死亡したギンザケは試験区ではわずか10尾であったが、対照区は55尾であった。」(5頁左欄6~15行) イ 甲1に記載された発明 上記アより、甲1には、次の3の発明(以下、それぞれ「甲1飼料発明」、「甲1添加剤発明」及び「甲1方法発明」という。)が記載されていると認められる。 (ア)甲1飼料発明 配合飼料にカンゾウ粉末を1%添加した供試飼料であって、 カンゾウは、カンゾウの根および根茎をそのまま、またはコルク皮を除いたものであり、 この供試飼料を体重約100g/尾のギンザケ500尾にカンゾウ粉末として0.2g/体重kg/日の割合で給餌し、1ヶ月間飼育した結果、結果飼育中に野外感染によりせっそう病で死亡したギンザケは試験区ではわずか10尾であったが、配合飼料のみを1ヶ月間与えた対照区は55尾であった、ギンザケ供試飼料。 (イ)甲1添加剤発明 配合飼料に添加して甲1飼料発明のギンザケ供試飼料とするカンゾウ粉末であって、 カンゾウは、カンゾウの根および根茎をそのまま、またはコルク皮を除いたものである、カンゾウ粉末。 (ウ)甲1方法発明 甲1飼料発明のギンザケ供試飼料を、 体重約100g/尾のギンザケにカンゾウ粉末として0.2g/体重kg/日の割合で給餌し、1ヶ月間飼育した、 ギンザケの飼育方法。 (2)甲2 ア 記載事項 甲2には、以下の記載がある。 (ア)「2.特許請求の範囲 (1)(a)連ぎょう及び(b)甘草、柴胡及び川きゅうから選ばれる少なくとも一種とを含有することを特徴とする養殖魚用飼料添加剤。 (2)請求項1記載の養殖魚用飼料添加剤を含有することを特徴とする養殖魚用飼料。」(1頁左下欄4~9行) (イ)「〔従来の技術〕 現在ハマチ、ブリなどの養殖が大規模に行われているが、これらの魚を長期間養殖していると、飼料や養殖環境の悪化などに起因する養殖魚の肝臓等の働きの低下や、水温の変化や環境の変化に起因するストレスの発生等の原因により、養殖魚の健康が損なわれることが多い。また、養殖魚の移動、綱替えや選別時に魚体が傷ついて色々の病気にかかることがある。そこで、養殖魚の健康の維持をはかり、養殖を効率的に行うために各種薬剤を添加した養殖魚用飼料が販売されている。例えば、養殖魚の健康維持、肝臓の機能低下防止及び生餌の酸敗防止を図るためにヨモギ粉末、甘草粉末、ウコン粉末などを添加した養殖魚用飼料が販売されている。たしかにこのような添加剤を添加した飼料を魚に与えると上記効果が得られるものの、その効果は未だ十分とはいえないのが現状である。」(1頁右下欄6行~2頁左上欄3行) (ウ)「〔発明が解決しようとする課題〕 従って、本発明は、養殖魚に与えることによって、魚の内臓諸器官の強化を図ることができ、もって各種病気の発生を防止でき、養殖魚の体重の増加を効率的に図ることができる養殖魚用飼料添加剤を提供することを目的とする。又、本発明は、該養殖魚用飼料添加剤を含有する養殖魚用飼料を提供することを目的とする。」(2頁左上欄12~19行) (エ)「〔課題を解決するための手段〕 本発明は、特定の漢方薬を少なくとも2種併用しこれを養殖魚用飼料に添加して魚に与えると、魚に発生する各種病気を極めて効果的に防止でき、もって養殖魚の体重の増加を効率的に図ることができるとの知見に基づいてなされたのである。 すなわち、本発明は、(a)連ぎょう及び(b)甘草、柴胡及び川きゅうから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする養殖魚用飼料添加剤を提供する。本発明は、又、該養殖魚用飼料添加剤を含有する養殖魚用飼料をも提供する。 ・・・ 本発明の必須成分(b)として使用する甘草は、マメ科植物の乾燥品または抽出物であり、グリチルリチン酸又はその塩を主成分として含有するものである。ここで、塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩(部分塩も含む)が好適に使用でき、特に3カリウム塩が好ましい。又、甘草としては、甘草エキス(抽出物)を乾燥して製造した甘草乾燥エキスを使用するのが好ましい。柴胡は、セリ科の多年草の乾燥物又は抽出物であり、サイコサポニンを主成分として含有する。特にその根部の乾燥品が好ましく使用される。又、川きゅうも、セリ科の多年草の乾燥物又は抽出物であり、クニジウムラクトンやセダノン酸を主成分とし、特にその根部の乾燥品が好ましく使用される。川きゅうを水で抽出して得た軟エキスを乾燥した川きゅう乾燥エキスを用いるのが好ましい。(2頁右上欄1行~左下欄13行) (オ)「上記養殖魚用飼料添加剤は、各成分を混合した粉末状のものとして使用することができるが、造粒剤や粘結剤を用いて所望の粒径を有する粒状に成形して使用する等任意の形態で使用できる。 さらに、本発明の養殖魚用飼料添加剤には、ビタミン、ミネラル、抗酸化剤、抗生物質、抗菌剤などを添加することができる。 本発明の養殖魚用飼料添加剤を通常の飼料1kg当たりに1~30g(0,1~3%)、好ましくは3~15g(0,3~1.5%)添加して養殖魚用飼料とすることができる。ここで、通常の飼料としては、生餌、配合飼料、ベレット及びモイストペレット飼料等をあげることができる。 該養殖魚用飼料は、上記通常の飼料に養斌魚用飼料添加剤を添加して混合する方法等常法により容易に製造することができる。」(2頁右下欄7行~3頁左上欄2行) (カ)「〔発明の効果〕 本発明によれば、その作用機能の詳細は不明であるが、特定の漢方薬を2種類併用することによって該薬剤の相乗作用により、魚に発生する各種の病気を極めて効果的に防止でき、もって養殖魚の体重の増加を効率的に図ることができる養殖魚用飼料添加剤が提供される。又、上記成分(a)と(b)とは共に水溶性であるから、広範囲に応用可能である。 従って、該養殖魚用飼料添加剤を含有する養殖魚用飼料は、ハマチ、ブリ、ヒラメ、シャケ、フグ、タイ、マス、コイ、ウナギ、アユなどの養殖魚、稚魚から成魚にわたって長期間連続投与することができる。」(3頁左上欄3~16行) (キ)「 実施例1 連ぎょう末と甘草末の1/2(重量比)混合物を飼料に1重量%添加して本発明の養殖魚用飼料を調製した。ここで、飼料としては、モイストペレットを用いた。この養殖魚用飼料をハマチ17,000匹に90日間与えてへい死した数を記録した。 一方、コントロールとして連ぎょう末と甘草末を添加しない飼料を用い、これを上記方法と同様にしてハマチ18,000匹に与えてへい死した数を記録した。 この結果、コントロールでは、1日平均のへい死数が17.0匹であったのに、本発明の養殖魚用飼料添加剤を与えた場合には、15.4匹であり、本発明の養殖魚用飼料添加剤を与えた場合のへい死数指数を100とすると、コントロールでは110.3と高い値を示した。従って、本発明の養殖魚用飼料添加剤を用いると効率的に養殖魚のへい死数を低下できることがわかる。」(3頁左上欄19行~右上欄17行) イ 甲2に記載された発明 上記アより、甲2には、次の3の発明(以下、それぞれ「甲2飼料発明」、「甲2添加剤発明」及び「甲2方法発明」という。)が記載されていると認められる。 (ア)甲2飼料発明 養殖魚に与えることによって、魚の内臓諸器官の強化を図ることができ、もって各種病気の発生を防止でき、養殖魚の体重の増加を効率的に図ることができる養殖魚用飼料添加剤を含有する養殖魚用飼料であって、 シャケなどの養殖魚、稚魚から成魚にわたって長期間連続投与することができるものであり、 連ぎょう末と甘草末の1/2(重量比)混合物を飼料としてのモイストペレットに1重量%添加して調製した養殖魚用飼料は、 この養殖魚用飼料をハマチ17,000匹に90日間与えてへい死した数を記録し、コントロールとして連ぎょう末と甘草末を添加しない飼料を用い、同様にしてハマチ18,000匹に与えてへい死した数を記録したところ、 コントロールでは、1日平均のへい死数が17.0匹であったのに、養殖魚用飼料添加剤を与えた場合には、15.4匹であった養殖魚用飼料。 (イ)甲2添加剤発明 甲2飼料発明の飼料に添加する養殖魚用飼料添加剤である連ぎょう末と甘草末の1/2(重量比)混合物。 (ウ)甲2方法発明 「養殖魚用飼料」を「ハマチ17,000匹に90日間与え」ることは、給餌により「飼育」しているといえるから、甲2には、以下の飼育方法が開示されていると認められる。 甲2飼料発明の養殖魚用飼料を、ハマチ17,000匹に90日間与えた、飼育方法。 (3)甲3 ア 記載事項 甲3には、以下の記載がある(日本語訳は、当審において付与した。以下、同様)。 (ア)「ABSTRACT The study aimed to investigate the effects of dietary licorice (Glycyrrhiza uralensis) on the growth performance, muscle quality, and immunity of common carp (Cyprinus carpio haematopterus). Five diets were formulated to contain 0.0%, 0.5%, 1.5%, 2.5%, and 4.0% licorice, respectively. Each diet was randomly distributed to triplicate groups of 60 juvenile (average weight 21.27 ± 0.13 g) per aquarium. After 15 weeks of feeding, the licorice had positive effects on body growth and feed utilization, the FBW, WGR, PER and SGR reached a maximum in the 4.0% treatment group (P < 0.05. Moreover, the qualities of muscle were also improved by licorice including crude protein, the composition of amino acids and fatty acids, especially the highest proportions of DAAs, FAAs and PUFAs were in 0.5% treatment groups (P < 0.05). The activities of liver function enzymes (AST and ALP) in serums did not influence (P > 0.05) by licorice except for significant lower alanine transaminase in 0.5% and 1.5% groups (P < 0.05). However, other serum indices in terms of TG, TC, and HDL were down-regulated or up-regulated after licorice dealing, of which the lowest TG, TC, and the highest HDL were in 0.5%, 1.5%, and 4.0% groups, respectively. In addition, the immunity and oxidant resistance also improved as well as growth performance and muscle quality. Among them, the survival rate of 0.0% and 1.5% groups was the lowest and highest after A. hydrophila dealing, respectively. The licorice diet reduced the mRNA levels of pro-inflammatory cytokines (IL-6, IL-1β) and INOS, but enhanced IL-10 and hepcidin expression (P < 0.05). Meanwhile, the antioxidant enzyme genes (GPX1 and SOD) were also strongly increased by licorice (P < 0.05). Subsequently, the abilities of licorice in pathogenic and oxidant resistance were further checked by Aeromonas hydrophila infection. The levels of cytokines, INOS, hepcidin, GPX1, and SOD were obviously lower than that of the 0.0% groups (P < 0.05), which echoed the decreasing mortality in other licorice treatment groups during A. hydrophila infection. Similarly, the villi height and myenteron thickness were significantly increased with licorice addition (P < 0.05). In summary, the study proves that long-term licorice (5-15 g/kg) addition can improve growth performance, muscle quality, non-specific immunity, antioxidant activity, and A. hydrophila resistance of the common carp. The results lay a foundation for the application of licorice as a safe and effective feed additive in aquaculture. (日本語訳) 要約 本研究は、甘草(Glycyrrhiza uralensis)がコイ(Cyprinus carpio haematopterus)の成長性能、筋肉の質、および免疫に与える影響を調査することを目的とした。5つの飼料がそれぞれ0.0%、0.5%、1.5%、2.5%、および4.0%の甘草を含むように配合された。各飼料は、60匹の幼魚(平均体重21.27 ± 0.13 g)を含む3つのグループにランダムに与えられた。15週間の給餌後、甘草は体の成長と飼料利用に対して正の効果を示し、FBW、WGR、PERおよびSGRは4.0%の処理群で最大に達した(P < 0.05)。さらに、甘草によって筋肉の質も改善され、粗タンパク質、アミノ酸および脂肪酸の組成が向上し、特に0.5%の処理群ではDAA、FAAおよびPUFAの割合が最も高かった(P < 0.05)。血清中の肝機能酵素(ASTおよびALP)の活性は、甘草によって影響を受けなかった(P > 0.05)が、0.5%および1.5%群ではアラニンアミノトランスフェラーゼが有意に低下した(P < 0.05)。しかし、甘草処理後の血清指標において、TG、TC、HDLはそれぞれ下方調整または上方調整され、0.5%、1.5%、および4.0%群ではそれぞれ最も低いTG、TCと最も高いHDLが観察された。さらに、免疫および酸化抵抗も成長性能や筋肉の質と同様に改善された。その中で、A. hydrophila処理後の0.0%群と1.5%群の生存率はそれぞれ最低および最高であった。甘草飼料は、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1β)およびINOSのmRNAレベルを低下させたが、IL-10およびヘプシジンの発現を増加させた(P < 0.05)。同時に、抗酸化酵素遺伝子(GPX1およびSOD)も甘草によって強く増加した(P < 0.05)。その後、甘草の病原体および酸化抵抗能力は、Aeromonas hydrophila感染によってさらに確認された。サイトカイン、INOS、ヘプシジン、GPX1、SODのレベルは、0.0%群よりも明らかに低かった(P < 0.05)、これはA. hydrophila感染中の他の甘草処理群での死亡率の低下と一致している。同様に、絨毛の高さと腸間膜の厚さは、甘草の添加によって有意に増加した(P < 0.05)。要するに、本研究は、長期的な甘草(5-15 g/kg)の添加がコイの成長性能、筋肉の質、非特異的免疫、抗酸化活性、およびA. hydrophila抵抗を改善できることを証明している。この結果は、水産養殖における甘草の安全で効果的な飼料添加物としての応用の基盤を築くものである。」 (イ)「2. Materials and methods 2.1. Experimental diet The experimental groups were supplemented with 0.0%, 0.5%, 1.5%, 2.5% and 4.0% licorice. The composition of the experimental diet was shown in Table 1. The basal diet and licorice root slices were crushed by a pulverizer and then filtered through 40 and 60 mesh screens, respectively. Licorice powder with concentrations of 0.0%, 0.5%, 1.5%, 2.5% and 4.0% was added to the basal diet powder and fully mixed by the “four-part method”, and then fish oil and a proper amount of water were added and mixed well. Round strip feed with a synthetic radius of 1.0 mm was produced by a special feed press and then crushed into pelleted form with a suitable diameter, then all experimental feedstuffs were naturally dried in a cool and ventilated outside environment. Finally, the feeds were put into a sealed bag, labelled and stored at - 20 °C. (日本語訳) 2. 材料と方法 2.1. 実験飼料 実験群には、0.0%、0.5%、1.5%、2.5%、および4.0%の甘草が添加された。実験飼料の成分は表1に示されている。基礎飼料と甘草の根スライスは粉砕機で粉砕され、それぞれ40メッシュと60メッシュのふるいで濾過された。甘草粉は0.0%、0.5%、1.5%、2.5%、および4.0%の濃度で基礎飼料粉に加えられ、「四分法」で十分に混合され、その後、魚油と適量の水が加えられ、よく混ぜられた。合成半径1.0 mmの丸いストリップ状の飼料は特別な飼料プレスで製造され、適切な直径のペレット状に粉砕された。その後、すべての実験飼料は、涼しく通気の良い屋外環境で自然乾燥された。最後に、飼料は密封袋に入れられ、ラベルが付けられ、-20 °Cで保存された。」 イ 甲3に記載された発明 上記アより、甲3には、次の3の発明(以下、それぞれ「甲3飼料発明」、「甲3添加剤発明」及び「甲3方法発明」という。)が記載されていると認められる。 (ア)甲3飼料発明 甘草がコイの成長性能、筋肉の質、および免疫に与える影響を調査することを目的とし、60匹の幼魚を含む3つのグループに15週間、給餌された飼料であって、甘草粉は0.0%、0.5%、1.5%、2.5%、および4.0%の濃度で基礎飼料粉に加えられ、「四分法」で十分に混合され、その後、魚油と適量の水が加えられ、よく混ぜられて製造された飼料。 (イ)甲3添加剤発明 甲3飼料発明の基礎飼料粉に加えられた甘草粉及び魚油。 (ウ)甲3方法発明 「飼料」を「コイ」に「給餌」することは、給餌により「飼育」しているといえるから、甲3には、以下の飼育方法が開示されていると認められる。 甲3飼料発明の飼料を、コイに15週間、給餌した、飼育方法。 (4)甲4 ア 記載事項 甲4には、以下の記載がある。 (ア)「ABSTRACT Licorice (Glycyrrhiza glabra L.) is considered as one of the most extensively used medicinal plants because of its innumerable pharmacological functions. In the present study, licorice root powder (LRP) was incorporated in practical diets for Nile tilapia, Oreochromis niloticus (L.), at levels of 0 (control), 5, 10, and 20 g/kg diet and its effects on growth, biochemical, antioxidants, and immune responses were investigated. For this, fish (11.5 ± 0.8 g) were fed on experimental diets up to apparent satiation thrice a day for 60 days. After that, fish were intrapreatinally injected with pathogenic bacteria Aeromonas hydrophila and fish mortality was observed for 10 days. The dietary LRP significantly improved growth parameters (weight gain, weight gain %, specific growth rate, and feed intake but did not affect the feed conversion ratio) as compared with the control group. Additionally, serum biochemical parameters (glucose, total protein, albumin, and globulin), antioxidants (catalase, superoxide dismutase, and glutathione peroxidase), and immunological responses (lysozyme activity, respiratory burst, and total immunoglobulin) were significantly improved with respect to the control group. Conversely, the markers of the hepato-renal functions, such as activities of serum alanine and aspartate aminotransferase and values of creatinine and uric acid significantly decreased in LRP-fed fish in relation to the control group. Meanwhile, fish survivability after bacterial challenge significantly increased as inclusion levels of dietary LRP increased with no mortality recorded in fish group fed 10-20 g/kg diet. The control fish group was more susceptible to bacterial infection showing the lowest survival rate (15%). Conclusively, the current study found that the LRP inclusion in a diet at a level of 10 g/kg diet was the optimum for Nile tilapia where this level reduced the diet's cost by 8.5% of the control diet. (日本語訳) 要約 甘草(Glycyrrhiza glabra L.)は、その無数の薬理学的機能により、最も広く使用されている薬用植物の一つと考えられている。本研究では、ナイルティラピア(Oreochromis niloticus L.)の実用的な飼料に甘草根粉(LRP)を0(対照)、5、10、20 g/kgのレベルで添加し、成長、生化学的指標、抗酸化物質、および免疫応答に与える影響を調査した。魚(11.5 ± 0.8 g)は、60日間、実験飼料を満腹になるまで1日3回給餌された。その後、魚は病原菌であるAeromonas hydrophilaを腹腔内に注射され、魚の死亡率が10日間観察された。飼料にLRPを添加することで、対照群と比較して成長パラメータ(体重増加、体重増加率、特定成長率、飼料摂取量)が有意に改善されたが、飼料転換率には影響がなかった。さらに、血清の生化学的パラメータ(グルコース、総タンパク質、アルブミン、グロブリン)、抗酸化物質(カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ)、および免疫応答(リゾチーム活性、呼吸バースト、総免疫グロブリン)が対照群に比べて有意に改善された。逆に、血清中のアラニンおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの活性やクレアチニンおよび尿酸の値などの肝腎機能のマーカーは、LRPを摂取した魚で対照群に比べて有意に低下した。一方、細菌挑戦後の魚の生存率は、飼料中のLRPの添加レベルが増加するにつれて有意に向上し、10-20 g/kgの飼料を摂取した魚群では死亡が記録されなかった。対照群の魚は細菌感染に対してより感受性が高く、最も低い生存率(15%)を示した。結論として、本研究は、ナイルティラピアの飼料に10 g/kgのLRPを添加することが最適であり、このレベルで飼料コストが対照飼料の8.5%削減されることを見出した。」 イ 甲4に記載された発明 上記アより、甲4には、次の3の発明(以下、それぞれ「甲4飼料発明」、「甲4添加剤発明」及び「甲4方法発明」という。)が記載されていると認められる。 (ア)甲4飼料発明 ナイルティラピアの成長、生化学的指標、抗酸化物質、および免疫応答に与える影響を調査するために、ナイルティラピアの飼料に甘草根粉(LRP)を5、10、20 g/kgのレベルで添加した飼料であって、 ナイルティラピアに60日間、満腹になるまで1日3回給餌した飼料。 (イ)甲4添加剤発明 甲4飼料発明のナイルティラピアの飼料に添加した甘草根粉(LRP)。 (ウ)甲4方法発明 「飼料」を「ナイルティラピア」に「給餌」することは、給餌により「飼育」しているといえるから、甲4には、以下の飼育方法が開示されていると認められる。 甲4飼料発明の飼料を、ナイルティラピアに60日間、給餌した、飼育方法。 (5)甲5 ア 記載事項 甲5には、以下の記載がある。 (ア)「【発明の効果】 【0005】 この出願発明は、コール酸及び/またはシムノールを含む魚類用飼料添加剤に関するものであり、魚類とくに養殖魚類の成育率、増体量などの点で著しい効果をもつ飼料添加剤、飼料を提供することができるという優れた効果がある。 さらに、よく発育するので、死亡率も低下し、効率的な養殖を行うことができる。 また、雌などとくに産卵間近い雌に与えると、食欲がよくなり、孵化した稚魚がよく育ち、また、病気にかかりにくくなるので、効率的な養殖を行うことができる。 魚類としては、とくに、限定されないが、食用魚類としては、鰤、鯛、鮪、ヒラマサ、カンパチ、河豚、平目、鱸、鮎、虹鱒、鰻、鯉などが好ましく、観賞魚としては、鯉、金魚などが好ましい。 この出願発明の魚類用飼料添加剤を含む飼料を与えることにより、雌の場合には、孵化してくる稚魚に対しても免疫力がつき、病気にかかりにくく、発育がよく、成長が早いという優れた効果がある。 栄養が十分にいきわたるので、抗生物質を使用する必要がなくなる。また、イリドウィルス感染症、連鎖球菌症、類結節症、ノノダムシルイケツ症、黄疸、エビテリオシスチス病、エトウジエラ症、ビブリオ病、はだむし病、白点病、飼料性肝臓障害、せっそう病、えらむし病、はだむし病、タルダその他の病気になっても、これまでに比べて抗生物質がより有効に作用するので、使用量を少なくすることができる。 飼料は分けて与えることにより、食べ残しを防ぐことができ、食べ残しの腐敗による病気の発生を防ぐことができる。」 (イ)「【0013】 自律神経に支配される器官、腺、血管の機能を賦活する生薬は十種以上が知られており、例えば、ニンジンその他があるが、ニンジンをはじめこれらの生薬の幾つかの有効成分は既に明らかにされている。 したがって、これらの有効成分を加えることが好ましい。これらの有効成分をさらに加えることにより、機能賦活作用を発揮することができる。 このような生薬としては、人参(ニンジン)、党参(トウジン)、太子参(タイシジン)、西洋参(セイヨウジン)、黄耆(オウギ)、白朮(ビャクジュツ)、山薬(サンヤク)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、膠飴(コウイ)、黄精(オウセイ)、四葉参(シヨウジン)などがとくに好ましい。」 (ウ)「【0020】 以下に、この出願発明を具体的に説明する。 使用する大豆イソフラボン、大豆イソフラボン配糖体の純度は40%とした。 また、純品以外の使用するコール酸の純度は90%である。 各実施例は体重120kgあたりの量であるが、症状に応じて適宜量を変えることができる。 ・・・ 【実施例18】 【0038】 タラ肝油 500mg 27%ドコサヘキサエン酸 100mg コール酸 200mg 大豆イソフラボン 50mg クルクミン 50mg カンゾウ末 800mg オウギ末 500mg センキュウ末 400mg 50%ビタミンE 2mg 無水ケイ酸 500mg とうもろこしでんぷん 適量 計 120g 」 イ 甲5に記載された発明 上記アより、甲5には、次の3の発明(以下、それぞれ「甲5飼料発明」、「甲5添加剤発明」及び「甲5方法発明」という。)が記載されていると認められる。 (ア)甲5飼料発明 コール酸及び/またはシムノールを含む魚類用飼料添加剤を含む飼料であって、 魚類としては、食用魚類としての虹鱒などが好ましく、 自律神経に支配される器官、腺、血管の機能を賦活する生薬をさらに加えることにより、機能賦活作用を発揮することができ、生薬としては、甘草(カンゾウ)などがとくに好ましく、計120gのうち、コール酸200mg、タラ肝油500mg、カンゾウ末800mgを含むものとすることができ、 養殖魚類の成育率、増体量などの点で著しい効果をもつ、 コール酸及び/またはシムノールを含む飼料添加剤を含む飼料。 (イ)甲5添加剤発明 甲5飼料発明に含まれる魚類用飼料添加剤。 (ウ)甲5方法発明 「飼料」を「養殖魚類」に与えることは、飼料を与えることにより「飼育」しているといえるから、甲5には、以下の飼育方法が開示されていると認められる。 甲5飼料発明の魚類用飼料添加剤を含む飼料を与える飼育方法。 2 甲1を主引用発明とした新規性および進歩性 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と、甲1飼料発明とを対比する。 (ア)甲1飼料発明の「配合飼料にカンゾウ粉末を1%添加した供試飼料」であって、「カンゾウは、カンゾウの根および根茎をそのまま、またはコルク皮を除いたものであ」る「ギンザケ供試飼料」は、本件発明1の「魚類用飼料100重量部に対して0.2~2重量部の粉末状の甘草根を含有している」「魚類用飼料」に相当する。 (イ)そうすると、両者は、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点1A) 魚類用飼料100重量部に対して0.2~2重量部の粉末状の甘草根を含有している魚類用飼料。 (相違点1A) 本件発明1は、魚類用飼料が「海水適応能の増進作用を有する」と特定されるのに対し、甲1飼料発明は、「ギンザケ供試飼料」であって「海水適応能の増進作用を有する」とは特定されていない点。 イ 判断 上記相違点1Aについて検討する。 (ア)「海水適応能の増進作用を有する」との発明特定事項の意味について a 本件明細書を参酌して理解できることについて 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)によれば、本件特許は、「サケ・マスなどの魚の養殖において、まず淡水中で一定程度まで魚を育て、その後、海水に移してさらに養殖を継続するという手法が採用されて」おり、「魚の海水適応能が十分でない場合、海水に魚を移した際に、一定数の魚が死んでしまうという課題があった」が「魚類の海水適応能の増進を促す飼料についての知見は皆無に等しい」(【0003】)ことから、「養殖業において淡水飼育期間を設定する魚類の海水適応能の増進」について検討し(【0009】)たものとされる。 具体的には、実施例1においては、「魚粉および穀類を含有した魚類用飼料原料1kgあたりに5g(0.5%甘草配合飼料)および10g(1%甘草配合飼料)甘草成分として甘草根の粉末を配合した魚類用飼料を、淡水で飼育しているニジマスの体重あたり2%量を90日間与えて飼育した後、100%海水に移行させてからそれぞれ同様の魚類用飼料を与えて30日間飼育」(【0029】)し、淡水飼育期間及び海水移行後のそれぞれの期間の生存率、死亡率を甘草無配合飼料(コントロール)の群と比較して、海水適応能の増進効果を検証したものである。また、実施例2は、イワナについて同様の検証をしている。 そして、実施例1においては、淡水飼育期間の最終日である飼育期間90日の生存率は、コントロール、0.5%甘草配合飼料、1.0%甘草配合飼料のの群において、それぞれ、93.33%、95.00%、95.00%であったのに対し、100%海水に移行後の最終日である飼育期間120日の生存率は、それぞれ、46.43%、70.18%、82.46%であったことが示されている。実施例2においても、同様に、飼育期間90日の生存率は、コントロール、0.5%甘草配合飼料、1.0%甘草配合飼料の群において、それぞれ、81.82%、87.22%、85.45%であったのに対し、100%海水に移行後の最終日である飼育期間120日の生存率は、それぞれ、40.00%、66.67%、78.72%であったことが示されている。 この実験によれば、実施例1、2ともに、100%海水に移行後の最終日における甘草配合飼料給餌群の生存率は、コントロールのそれに比して上昇しており、その上昇の度合いが淡水飼育期間におけるそれと比較して顕著に大きいことが理解できる。 そして、本件発明1は、「魚の海水適応能が十分でない場合、海水に魚を移した際に、一定数の魚が死んでしまう」という課題に対し、「養殖業において淡水飼育期間を設定する魚類」に給餌する、粉末状の甘草根を含有している魚類用飼料が、淡水飼育期間を設定する魚類の淡水飼育から海水に移行する際の生存率を上昇させるという機能を有し、海水適応能を増進させるという用途に用いることができることを見いだしたものであるから、「海水適応能の増進作用を有する」という構成を特定したことは、物の新たな機能及び/又は用途を見いだして特定した点で、技術的意義を有するものといえる。 b 申立人の主張について (a)申立人の主張の概要 申立人は、「海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料」との記載について、その機能、特性を示す記載はその物を特定するのに役立っておらず、「海水適応能の増進作用」は魚類の海水適応能を増進できる当該魚類用飼料又は当該当該魚類用飼料向け添加剤の固有の性質であるから、甘草成分を含む魚類用飼料又は魚類用飼料向け添加剤が海水適応能の増進作用を有することが知られていたか否かにかかわらず、「海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料」は「(甘草成分を含む)魚類用飼料」そのものを意味していると認定すべきである旨主張する(申立書22頁6行~23頁7行)。 (b)主張の検討 上記aのとおり、本件発明1における「海水適応能の増進作用を有する」という構成は、養殖業において淡水飼育期間を設定する魚類に給餌する、粉末状の甘草根を含有している魚類用飼料について、新たに見いだされた機能及び/又は用途を特定した構成という点で、技術的意義を有すると理解される。 よって、申立人の主張のように、本件発明1が相違点1Aに係る構成を有さない「魚類用飼料」そのものを特定しているとはいえず、申立人の主張を採用することはできない。 (イ)新規性の判断 本件発明1と甲1発明との相違点1Aは、上記(ア)において検討したように、物について新たに見いだされた機能及び/又は用途を構成として特定した点で、技術的意義を有するから、実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。 (ウ)進歩性の判断 甲1飼料発明は、配合飼料にカンゾウ粉末を1%添加した、ギンザケに給餌する供試飼料ではあるものの、せっそう病の予防ないし治療のために与えるものであって、ギンザケの飼育をした1ヶ月間が淡水飼育であるのか、その後に海水移行させているか不明であり、給餌した「魚類用飼料」について、「海水適応能の増進作用」という機能又は用途を示唆しているとはいえない。 そして、甲1飼料発明の供試飼料を「海水適応能の増進作用を有する」ものとすることが、当業者が容易になし得たことともいえない。 ウ 小括 本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。 本件発明1は、甲1飼料発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について ア 対比 本件発明2と、甲1添加剤発明とを対比する。 本件発明2の「魚油に粉末状の甘草根を含有させた」「海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料向け添加剤」と、甲1添加剤発明の「配合飼料」に「添加」して「ギンザケ供試飼料」とする「カンゾウ粉末」であって、「カンゾウは、カンゾウの根および根茎をそのまま、またはコルク皮を除いたものであ」る「カンゾウ粉末」とは、「粉末状の甘草根」を含む「魚類用飼料向け添加剤」の点で共通する。 そうすると、両者は、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点1B) 粉末状の甘草根を含む魚類用飼料向け添加剤。 (相違点1B(1)) 添加剤が本件発明2は、「魚油に粉末状の甘草根を含有させた」ものであるのに対し、甲1添加剤発明は、そのように特定されていない点。 (相違点1B(2)) 本件発明2は、「添加剤」について、「魚類用飼料向け」として「海水適応能の増進作用を有する」という機能又は用途が特定されているのに対し、甲1添加剤発明は、そのように特定されていない点。 イ 判断 上記相違点1B(2)は、上記(1)において本件発明1と甲1飼料発明との相違点1Aについて検討したのと同様の理由から、甲1に記載されたものであるとも、甲1に記載された事項から容易に発明をすることができたものともいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1添加剤発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 本件発明2は、甲1添加剤発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3について ア 対比 本件発明3と、甲1方法発明とを対比する。 (ア)本件発明3の「淡水飼育期間と海水飼育期間とを設ける魚類の飼育方法」と甲1方法発明の「ギンザケの飼育方法」とは、「魚類の飼育方法」の点で共通する。 (イ)本件発明3の「前記淡水飼育期間に、魚類用飼料100重量部に対して0.2~2重量部の粉末状の甘草根を含有している海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料を給餌する」ことと、甲1方法発明の「配合飼料にカンゾウ粉末を1%添加した供試飼料」であって、「カンゾウは、カンゾウの根および根茎をそのまま、またはコルク皮を除いたものであ」る「供試飼料」を「ギンザケ」に「給餌」することとは、「魚類用飼料100重量部に対して0.2~2重量部の粉末状の甘草根を含有している魚類用飼料を給餌する」点で共通する。 (ウ)そうすると、両者は、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点1C) 魚類の飼育方法であって、 魚類用飼料100重量部に対して0.2~2重量部の粉末状の甘草根を含有している魚類用飼料を給餌する魚類の飼育方法。 (相違点1C(1)) 本件発明3は、魚類の飼育方法が「淡水飼育期間と海水飼育期間とを設ける」ものであって、魚類用飼料を給餌するのが「前記淡水飼育期間」であることが特定されているのに対し、甲1方法発明は、そのように特定されていない点。 (相違点1C(2)) 本件発明3は、魚類用飼料が「海水適応能の増進作用を有する魚類用飼料」と特定されるのに対し、甲1飼料発明は、「魚類用飼料」であって「海水適応能の増進作用を有する」とはされていない点。 イ 判断 上記相違点1C(2)は、上記(1)において本件発明1と甲1飼料発明との相違点として検討した相違点1Aと同様の点であり、当該相違点については、上記(1)イにおいて検討したとおり、甲1に記載されたものであるとも、甲1に記載された事項から容易に発明をすることができたものともいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1方法発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 本件発明3は、甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 甲2を主引用発明とした新規性および進歩性 (1)本件発明1~3について ア 対比 本件発明1~3と甲2に記載された発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 相違点2 本件発明1~3は、魚類用飼料または魚類用飼料向け添加剤が「海水適応能の増進作用を有する」と特定されるのに対し、甲2に記載された発明(甲2飼料発明、甲2添加剤発明、甲2方法発明)は、いずれも、そのように特定されない点。 イ 判断 (ア)新規性の判断 本件発明1と甲2に記載された発明との相違点2は、上記2(1)イ(ア)及び(イ)において検討したように実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2に記載された発明ではない。 (イ)進歩性の判断 甲2飼料発明は、「連ぎょう末と甘草末の1/2(重量比)混合物」を飼料に「1重量%添加」して調製した「養殖魚用飼料」であって、「シャケなどの養殖魚」を対象とでき、「稚魚から成魚にわたって長期間連続投与する」ことができ、「養殖魚に与えることによって、魚の内臓諸器官の強化を図ることができ、もって各種病気の発生を防止でき」るものであるが、飼料を投与する期間の前後において淡水飼育から海水移行させているか不明であり、投与した飼料について、「海水適応能の増進作用」という機能又は用途を示唆するとはいえない。 甲2添加剤発明、甲2方法発明についても同様である。 よって、甲2に記載された発明(甲2飼料発明、甲2添加剤発明、甲2方法発明)を相違点2に係る本件発明1~3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 本件発明1は、甲2に記載された発明ではない。 本件発明1~3は、甲2に記載された発明(甲2飼料発明、甲2添加剤発明、甲2方法発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 甲3を主引用発明とした新規性および進歩性 (1)本件発明1~3について ア 対比 本件発明1~3と甲3に記載された発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 相違点3 本件発明1~3は、魚類用飼料または魚類用飼料向け添加剤が「海水適応能の増進作用を有する」と特定されるのに対し、甲3に記載された発明(甲3飼料発明、甲3添加剤発明、甲3方法発明)は、いずれも、そのように特定されない点。 イ 判断 (ア)新規性の判断 本件発明1、2と甲3に記載された発明との相違点3は、上記2(1)イ(ア)及び(イ)において検討したように実質的な相違点であるから、本件発明1及び2は、甲3に記載された発明ではない。 (イ)進歩性の判断 甲3飼料発明は、「コイ」に給餌された飼料であって、飼料を給餌する期間の前後において淡水飼育から海水移行させるものではないから、給餌した飼料について、「海水適応能の増進作用」という機能又は用途を示唆するとはいえない。 甲3添加剤発明、甲3方法発明についても同様である。 よって、甲3に記載された発明(甲3飼料発明、甲3添加剤発明、甲3方法発明)を相違点3に係る本件発明1~3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 本件発明1、2は、甲3に記載された発明ではない。 本件発明1~3は、甲3に記載された発明(甲3飼料発明、甲3添加剤発明、甲3方法発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 甲4を主引用発明とした新規性および進歩性 (1)本件発明1~3について ア 対比 本件発明1~3と甲4に記載された発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 相違点4 本件発明1~3は、魚類用飼料または魚類用飼料向け添加剤が「海水適応能の増進作用を有する」と特定されるのに対し、甲4に記載された発明(甲4飼料発明、甲4添加剤発明、甲4方法発明)は、いずれも、そのように特定されない点。 イ 判断 (ア)新規性の判断 本件発明1と甲4に記載された発明との相違点4は、上記2(1)イ(ア)及び(イ)において検討したように実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲4に記載された発明ではない。 (イ)進歩性の判断 甲4飼料発明は、「ナイルティラピア」に給餌された飼料であって、飼料を給餌する期間の前後において淡水飼育から海水移行させるものではないから、給餌した飼料について、「海水適応能の増進作用」という機能又は用途を示唆するとはいえない。 甲4添加剤発明、甲4方法発明についても同様である。 よって、甲4に記載された発明(甲4飼料発明、甲4添加剤発明、甲4方法発明)を相違点4に係る本件発明1~3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 本件発明1は、甲4に記載された発明ではない。 本件発明1~3は、甲4に記載された発明(甲4飼料発明、甲4添加剤発明、甲4方法発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 甲5を主引用発明とした新規性および進歩性 (1)本件発明1~3について ア 対比 本件発明1~3と甲5に記載された発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 相違点5 本件発明1~3は、魚類用飼料または魚類用飼料向け添加剤が「海水適応能の増進作用を有する」と特定されるのに対し、甲5に記載された発明(甲5飼料発明、甲5添加剤発明、甲5方法発明)は、いずれも、そのように特定されない点。 イ 判断 (ア)新規性の判断 本件発明2と甲5に記載された発明との相違点5は、上記2(1)イ(ア)及び(イ)において検討したように実質的な相違点であるから、本件発明2は、甲5に記載された発明ではない。 (イ)進歩性の判断 甲5飼料発明は、「コール酸及び/またはシムノールを含む魚類用飼料添加剤を含む飼料」であって、「計120gのうち」、「生薬として」「カンゾウ末800mgを含むものとすることができ」、「魚類としては、食用魚類としての虹鱒などが好まし」いものであるが、飼料を与える期間の前後において淡水飼育から海水移行させているか不明であり、与える飼料について、「海水適応能の増進作用」という機能又は用途を示唆するとはいえない。 甲5添加剤発明、甲5方法発明についても同様である。 よって、甲5に記載された発明(甲5飼料発明、甲5添加剤発明、甲5方法発明)を相違点5に係る本件発明1~3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 小括 本件発明2は、甲5に記載された発明ではない。 本件発明1~3は、甲5に記載された発明(甲5飼料発明、甲5添加剤発明、甲5方法発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701111

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