特許異議申立
2024-700492
ポリ硫酸化多糖類を用いた術後関節痛の処置
- 審判番号
- 2024-700492
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-545141
- 登録番号
- 7391858
- 請求日
- 2024年05月24日
- 審決日
- 2024年07月12日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】パラダイム バイオファーマシューティカルズ リミテッド
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【異議申立人】清水 誠
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 原田 隆興
- 審判官 井上 千弥子
- 審判官 田中 耕一郎
- 分類
- P1651.121-Y (A61K) / P1651.536-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7391858号発明「ポリ硫酸化多糖類を用いた術後関節痛の処置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7391858号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7391858号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、平成31年2月27日(パリ条約による優先権主張 平成30年2月28日 オーストラリア(AU))を国際出願日とする出願であって、令和5年11月27日にその特許権の設定登録がされ、同年12月5日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、本件特許に対し、令和6年5月24日付け(受理日同月27日)で、特許異議申立人 清水 誠(以下「申立人A」という。)により、また、令和6年5月31日付け(受理日6月3日)で、特許異議申立人 赤松 智信(以下「申立人B」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~19に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明19」といい、これらをまとめて「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
哺乳動物における無菌性持続性術後関節痛の処置のための方法で用いるための医薬組成物であって、ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩を含み、
前記方法は、ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩を含む前記医薬組成物を前記哺乳動物に投与するステップを含み、前記無菌性持続性術後関節痛が、関節形成術の結果生じる関節内疼痛である、医薬組成物。
【請求項2】
前記無菌性持続性術後関節痛が、足首、肘、指、股、膝、肩、および手首からなる群から選択される少なくとも1つの関節におけるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの関節が膝である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記関節形成術が、足首関節部分置換術、肘関節部分置換術、指関節部分置換術、股関節部分置換術、膝関節部分置換術、肩関節部分置換術、および手首関節部分置換術からなる群から選択される関節部分置換術である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記関節形成術が、足首関節全置換術、肘関節全置換術、指関節全置換術、股関節全置換術、膝関節全置換術、肩関節全置換術、および手首関節全置換術からなる群から選択される関節全置換術である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記無菌性持続性痛が、無菌性の人工関節の緩み、人工関節の装着、不安定性、再発性関節血症、膝蓋骨トラッキング異常、および凝りからなる群から選択される状態によって引き起こされる関節内持続痛である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記哺乳動物が、前記術後関節痛に加えてさらなる関節炎状態に罹患しており、前記さらなる関節炎状態が関節リウマチ、変形性関節症または変性変形性関節症である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記さらなる関節炎状態が、前記術後痛によって影響される関節とは異なる第2の関節におけるものであり、かつ第2の関節における疼痛が、低減する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記第2の関節が、1つの膝関節であり、前記術後痛によって影響される関節が、別の膝関節である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ペントサンポリ硫酸(PPS)が、ペントサンポリ硫酸のナトリウム塩(NaPPS)、ペントサンポリ硫酸のマグネシウム塩(MgPPS)、ペントサンポリ硫酸のカルシウム塩(CaPPS)、およびペントサンポリ硫酸の亜鉛塩(ZnPPS)からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ペントサンポリ硫酸(PPS)が、ペントサンポリ硫酸ナトリウム(NaPPS)である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
処置が、前記ペントサンポリ硫酸またはその許容される前記塩を、用量あたり、前記哺乳動物1kgあたり約0.5~約2mg;約0.5~約1mg;約1.0~約1.5mgまたは約1.5~約2.0mgの有効量または約25mg~約4000mgの範囲の固定用量である有効量で前記哺乳動物に投与することによる、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記有効量が、用量あたり、前記哺乳動物1kgあたり約0.5mg、約1.0mgまたは約2.0mgである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記固定用量が、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約2000mg、約3000mgまたは約4000mgである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記処置が、皮下(SC)注射、筋肉内(IM)注射、静脈内(IV)注射、関節内(IA)注射もしくは関節周囲注射の投与による;局所投与による;坐剤を介する、または経口投与による、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ヒト患者への投与が、1日1回、週2回または週3回の処置レジメンで投薬することによる、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ヒトへの投与が、投薬間が最小で3日および最大で4日で週2回の処置レジメンで投薬することによる、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
ヒト患者における疼痛が、数値化スケール(NRS)を使用することによって決定された場合に低減する、請求項1から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
哺乳動物における無菌性持続性術後関節痛の処置のための医薬の製造における、ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩の使用であって、前記無菌性持続性術後関節痛が、関節形成術の結果生じる関節内疼痛である、使用。」
第3 申立理由の概要
1 申立人Aの申立理由の概要
申立人Aは、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第7号証を提出するとともに、概略、以下の申立理由A-1~A-3(合議体注:合議体が申立人Aの申立理由に符号を付した。)により、本件発明に係る特許は、取り消されるべきものであると主張している。
(1)申立理由A-1(甲第1号証を主引例とする進歩性)
本件発明1~19は、本件特許の優先日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証~甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)申立理由A-2(実施可能要件)
請求項1~19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
(3)申立理由A-3(サポート要件)
請求項1~19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
(4)証拠方法
甲第1号証:Sampson et al. BMC Musculoskeletal Disorders (2017) 18:396
甲第2号証:Kumagai et al. BMC Clinical Pharmacology 2010, 10:7
甲第3号証:Current Therapeutic Research Volume 66, Number 6, November/December 2005, pp.552-571
甲第4号証:J. Vet. Med. Sci. 74(6): pp.707-711, 2012
甲第5号証:特表2014-504613号公報
甲第6号証:The Journal of Arthroplasty Vol.22 No.6 2007,pp.787-799
甲第7号証:米国特許出願公開第2013/0102562号明細書
なお、申立人Aが提出した特許異議申立書を「申立書A」、甲第1~7号証を「甲1A」~「甲7A」のように略記する場合がある。
2 申立人Bの申立理由の概要
申立人Bは、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第5号証を提出するとともに、概略、以下の申立理由B-1~B-4(合議体注:合議体が申立人Bの申立理由に符号を付した。)により、本件発明に係る特許は、取り消されるべきものであると主張している。
(1)申立理由B-1(実施可能要件)
請求項1~19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
(2)申立理由B-2(サポート要件)
請求項1~19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
(3)申立理由B-3(明確性要件)
請求項1~19に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
(4)申立理由B-4(甲第5号証を主引例とする進歩性)
本件発明1~4、6~19は、本件特許の優先日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4、6~19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(5)証拠方法
甲第1号証:「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(ICD)」のICD-10(2013年版)に準拠して、本邦で統計基準として採用されている「疾病、傷害及び死因の統計分類」について、「痛」を含む疾病、傷害の分類項目をウエブサイトで検索した結果(https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/40?search_method=keyword&search_word=%E7%97%9B&komokuSearchFlg_dummy=1&komokuSearchFlg=1&revision=03&search_kind=40&base_code=&form_id=main_form&op=search&searchboxShow1=1&searchboxShow2=0&searchboxShow3=0&page=1&srchcndId=)、[令和6年5月19日検索]
甲第2号証:欧州特許出願第19759993.9号の2023年10月25日付けの拒絶理由通知書
甲第3号証:欧州特許出願第19759993.9号の2023年10月25日付けの拒絶理由通知書に対する2024年3月1日付けの意見書
甲第4号証:国際公開第2019/165498号
甲第5号証:特表2014-504613号公報
なお、申立人Bが提出した特許異議申立書を「申立書B」、甲第1~5号証を「甲1B」~「甲5B」のように略記する場合がある。
第4 当審の判断
以下に述べるとおり、当審は、申立人A及びBが申し立てる申立理由は、いずれも理由がないものと判断する。
なお、事案に鑑み、明確性要件に関する申立理由B-3、進歩性に関する申立理由A-1及び申立理由B-4、実施可能要件に関する申立理由A-2及び申立理由B-1、サポート要件に関する申立理由A-3及び申立理由B-2の順に判断する。
1 申立理由B-3(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1~19の記載は、上記第2のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、本件明細書の記載とも整合する。
したがって、本件発明1~19に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確とはいえない。
(3)申立人Bの主張について
ア 申立人Bは、本件発明1~19における「無菌性持続性術後関節痛」との発明特定事項は、概略、以下の(ア)、(イ)の理由により、本件明細書の記載及び当業者の出願時における技術常識を考慮しても明確ではないと主張する(申立書B28頁7行~29頁10行、18頁6行~19頁下から7行)。
(ア)「無菌性持続性術後関節痛」という症状又は疾患は、出願時において、当業者の技術常識と言えるほど、よく知られた症状又は疾患とは言えない。例えば、世界保健機関(WHO)が作成した「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(ICD)」のICD-10(2013年版)に準拠して、本邦で統計基準として採用されている「疾病、傷害及び死因の統計分類」について、「痛」を含む疾病、傷害の分類項目をウエブサイトで検索し、ヒットした項目をダウンロードした結果を提出する(甲1B)。当該検索結果によれば、「痛」を含む分類項目に「無菌性持続性術後関節痛」を見出すことはできない。前記「疾病、傷害及び死因の統計分類」は、統計法(平成19年法律第53号)に基づく統計調査に使用されるほか、医学的分類として医療機関における診療録の管理等に活用されているものであり、かかる統計分類にも掲載されていない「無菌性持続性術後関節痛」という症状又は疾患は、当業者の技術常識とは言えない症状又は疾患であると評価できる。してみれば、当該用語の範囲は、本件明細書の記載に基づき画定されるべきである。
本件明細書には、関節内無菌性持続痛について、例示的に、「無菌性の人工関節の緩み、人工関節の装着、不安定性、再発性関節血症、膝蓋骨トラッキング異常、腱断裂および凝りを含む群から選択される状態によって引き起こされる」(【0034】)などの記載があるが、本件発明の「関節形成術」とは、関節部分置換術を含むものであり(請求項4など)、本件明細書【0004】、【0034】、【0035】及び【0054】~【0058】の記載に鑑みれば、前記関節内無菌性持続痛は、関節部分置換術によって残存する関節に発症する関節リウマチ、変形性関節症又は骨髄浮腫等を含む関節炎状態に罹患していることによる疼痛も含み得る概念であると理解される。一方、その診断については、「無菌性疼痛の診断はそれほど明確ではない」(【0003】)と記載されているに過ぎず、当該疾患の客観的な診断基準及び診断方法について明確にされていない。本件明細書の実施例においても、無菌性持続痛を有していると診断された客観的な診断基準及び診断方法については明らかにされていない。
したがって、当業者にとって、「無菌性持続性術後関節痛」の範囲が明確であるとは言えない。
(イ)また、「無菌性持続性術後関節痛」の「持続性」という用語が、「無菌性持続性術後関節痛」の範囲をさらに不明確にしている。本件明細書には、「術後関節痛は、急性疼痛、慢性疼痛、全身疼痛および持続痛からなる群から選択される」と開示されている(【0033】)。かかる記載によれば、「慢性疼痛」及び「持続痛」は別意の疼痛として列挙されていることが明らかである。しかしながら、本件明細書において、「慢性疼痛」及び「持続痛」を区別するような具体的な定義又は説明は記載されておらず、それらの用語の示す範囲は不明であると言わざるを得ない。
一方、本件発明の出願時において、「慢性疼痛」及び「持続痛」を区別するような技術常識があることは示されていないので、「持続痛」、すなわち、前記の「無菌性持続性術後関節痛」が示す範囲が不明確と言わざるを得ない。
このような観点からも、本件発明の医薬組成物が適用される「無菌性持続性術後関節痛」の範囲が明確であるとは言えない。
イ しかしながら、本件発明1~19は、その特許請求の範囲において、「前記無菌性持続性術後関節痛が、関節形成術の結果生じる関節内疼痛である」と特定されているから、本件発明1~19における「無菌性持続性術後関節痛」とは、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」に限定されていることが明らかである。
そして、「関節形成術」は、通常用いられる技術用語であって当業者にその意味は明らかであるから、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」の意味も明らかである。そして、「持続性」という用語についても、関節形成術の後、疼痛が持続していることであると理解できる。
また、申立人Bは、本件発明における疼痛は、「関節部分置換術によって残存する関節に発症する関節リウマチ、変形性関節症又は骨髄浮腫等を含む関節炎状態に罹患していることによる疼痛」も含む概念であると主張するが、「関節部分置換術によって残存する関節に発症する関節リウマチ、変形性関節症又は骨髄浮腫等を含む関節炎状態に罹患していることによる疼痛」は、「関節リウマチ、変形性関節症又は骨髄浮腫等を含む関節炎状態に罹患していることによる疼痛」であって、「関節形成術の結果生じる」関節内疼痛ではないから、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」の範囲が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確ということはない。
したがって、申立人Bの主張は、採用できない。
(4)申立理由B-3についてのまとめ
よって、本件発明1~19の特許請求の範囲の記載は明確であり、申立理由B-3は、理由がない。
2 申立理由A-1(甲1Aを主引例とする進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 甲1Aに記載された発明
甲1Aには、変形性膝関節症と関節鏡視下内側半月板部分切除術の既往があり、左膝部の痛みを有する、70歳の女性に対して、PPS(ペントサンポリ硫酸ナトリウム)を投与したこと、当該女性は人工膝関節全置換術(TKA)の待機リストに載っていたこと、また当該女性は膝関節滲出液貯留と内側半月板(体と後角)の再発性裂傷が認められたこと、PPS投与により痛みの強力な回復が実証されたことが記載されている(2~3頁「Case Presentation」欄)。
そして、関節鏡視下内側部分半月板切除術が無菌状態で行われることは周知であり、関節鏡視下内側部分半月板切除術の既往があり、左膝部の痛みを有するということから、当該痛みは「持続性術後関節痛」といえる。
また、上記女性は「患者」ということができ、投与したPPS(ペントサンポリ硫酸ナトリウム)は「ペントサンポリ硫酸ナトリウムを含む医薬組成物」であり、PPSを女性に対して投与したことは、「医薬組成物を患者に投与するステップを含む」といえる。
そうすると、甲1Aには、以下の発明が記載されていると認められる。
「患者における無菌性持続性術後関節痛の処置のための方法で用いるための医薬組成物であって、ペントサンポリ硫酸ナトリウムを含み、前記方法は、ペントサンポリ硫酸ナトリウムを含む前記医薬組成物を前記患者に投与するステップを含む医薬組成物。」(以下「甲1A発明」という。)
イ 本件発明1と甲1A発明の対比
甲1A発明の「患者」、「ペントサンポリ硫酸ナトリウム」は、本件発明1の「哺乳動物」、「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1A発明の一致点及び相違点(以下「相違点1A」という。)は、次のとおりである。
<一致点>
「哺乳動物における無菌性持続性術後関節痛の処置のための方法で用いるための医薬組成物であって、ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩を含み、
前記方法は、ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩を含む前記医薬組成物を前記哺乳動物に投与するステップを含む、医薬組成物。」
<相違点1A>
無菌性持続性術後関節痛が、本件発明1は、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」であるのに対し、甲1A発明は、そのようなものではない点。
ウ 相違点1Aの判断
上記アのとおり、甲1Aには、甲1A発明の患者が、変形性膝関節症と関節鏡視下内側半月板部分切除術の既往があり、左膝部の痛みを有すること、人工膝関節全置換術(TKA)の待機リストに載っていたこと、膝関節滲出液貯留と内側半月板(体と後角)の再発性裂傷が認められたことが記載されているが、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」を有していることは記載されていないから、甲1A発明の患者に、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」の処置を行う動機付けは見いだせない。
甲1A発明の患者は、人工膝関節全置換術(TKA)、すなわち、「関節形成術」の待機リストに載っていたから、将来的に、関節形成術を行い、その結果、関節内疼痛を有することになる可能性がないわけではないが、現状、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」を有していない甲1A発明の患者に対して、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」の処置を行う動機付けはない。
そして、申立人Aが提出した甲1A以外の甲2A~7Aを検討しても、甲1A発明の患者に、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」の処置を行う動機付けは見いだせない。
したがって、甲1A発明において、無菌性持続性術後関節痛を「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」とすることは、当業者が容易に行うことではない。
エ 本件発明1の効果について
本件明細書には、本件発明1は、PPS処置が、関節形成術後の対象における持続性の術後痛を低減させるという驚くべき発見に基づくと記載され(【0008】)、実施例1において、右膝に膝関節全置換術(TKR)を受け、その関節置換術後に由来する無菌性持続痛を有していた患者について、PPSの投与により、右の人工膝関節における術後の無菌性持続痛が、弱まり/止まり、ゼロになったことが具体的に確認されている(【0259】~【0273】)。
一方、甲1A~7Aを検討しても、本件発明1が、PPSの投与により、関節形成術の結果生じる関節内疼痛を低減できるという効果を奏することについて、当業者が予測し得たといえる理由はない。
したがって、本件発明1は、甲1A~7Aの記載からは予測し得ないような優れた効果を奏するものである。
オ 申立人Aの主張について
(ア)申立人Aは、申立書Aにおいて、概略、以下の(主張1)~(主張3)を挙げて、本件発明1は、甲1Aの記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している(申立書A49頁下から10行~52行下から10行)。
(主張1)甲1Aには、患者が人工膝関節全置換術(TKA)の順番待ちをしており、当該手術を受けることが予定されていたことが記載されているから、当該手術を受けた後の疼痛改善のためにも当然同様にPPSを用いることを容易に想到することができる。
(主張2)本件優先日の時点において、PPSが、様々な経路によって疼痛を抑制し得ることは公知であった。(この点については、必要に応じて甲2A~5Aの記載を参酌することで、より明らかである。)
甲2A~5Aの記載から、本件優先日において、PPSが炎症を抑制できることは公知であり、そのメカニズムについても、炎症性メディエーターに作用して軟骨分解を抑制すること、細胞外マトリックスに取り込まれるプロテオグリカン量を増加させること、ヒアルロン酸の合成及び分子量を増加させること、血流改善作用があること(甲2A)、抗補体活性とそれに続く炎症の体液性メディエーターの減少を促進すること(甲3A)、IL-1βによって誘導される炎症性細胞内反応を、特定のMAPKのリン酸化阻害を介して抑制すること(甲4A)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の局所産生を減少させること(甲5A)、等の様々なメカニズムが知られていたといえる。また、特に甲5Aにおいては、「患者が強い疼痛を感じている場合には、できるだけ早くPPSの治療的ローディング量に達することが好ましい」ことや、「PPSは結合組織に蓄積するので、ローディングは長い時間をかけて行うことができる」ことも記載されており、関節形成術の結果生じ得る無菌性持続性関節内疼痛についても、関節内の疼痛であることには変わりなく、関節は結合組織であることはよく知られており、そうするとPPSが疼痛を抑制し得、結合組織に蓄積し得るという当該教示に基づけば、より一層、無菌性持続性関節内疼痛の抑制のためにPPSを投与することが動機づけられ、容易に行い得たことである。
(主張3)甲6Aの記載から、本願優先日において、人工股関節全置換術及び人工膝関節全置換術(TKA)において、骨溶解は再手術が必要となる主な原因であること(Abstract欄)、当該骨溶解は人工関節の摩耗により生じる粉(摩耗粉)に対する異物反応の結果として起こり得ること、より具体的には、粒子がインプラントやその周囲から発生すると、滑膜組織や人工関節周囲組織のマクロファージや巨細胞に貪食され、これらの細胞は活性化され、直接的または間接的に骨溶解を引き起こすこと、さらには、滑膜マクロファージまたは人工関節周囲マクロファージが刺激されると、サイトカイン産生が活性化され、インターロイキン1β(IL-1β)は、これらの活性化マクロファージから放出される多くのサイトカインの一つであり、炎症性で破骨細胞刺激を引き起こすこと(Etiology欄)、このような骨溶解では疼痛が伴い得ること(Fig.5レジェンド部分)等が公知であり、また甲7Aの記載から、このような骨溶解にはPPSの投与が有効であり、実際にPPSの1種であるキシロピラノース多硫酸塩(XPS)を用いることで破骨細胞の形成及び機能を阻害し得たこと(甲7A)等が公知であったことから、人工膝関節全置換術(TKA)後に、人工関節の摩耗により生じる粉(摩耗粉)によって生じた骨溶解に伴う炎症(IL-1β等の炎症性サイトカインによる)や疼痛を軽減するべく、例えばIL-1βによって誘導される炎症性細胞内反応を抑制(甲4A)しようとPPSを投与することは、当業者であれば動機があり容易に行い得たことである。
(イ)そこで、上記(主張1)~(主張3)について検討すると、申立人Aが主張するように、甲1A発明の患者は、人工膝関節全置換術(TKA)を受けることが予定され(主張1)、PPSが様々なメカニズムにより疼痛を抑制し得ることが知られ(主張2)、関節形成術において骨溶解が再手術の主な原因であり、骨溶解にはPPSの投与が有効であることが知られているが(主張3)、甲1A発明の患者が、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」を有していなければ、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」の処置をする動機付けを見いだせないことは、上記ウのとおりである。
したがって、申立人Aの主張は、採用できない。
カ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1Aに記載された発明、又は、甲1A~7Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~19について
本件発明2~18は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明19は、本件発明1である「医薬組成物」の発明を「使用」の発明に変更したものであって、いずれも、上記(1)イに挙げた「相違点1A」を甲1A発明との間に有するから、上記(1)ウ~カのとおり、本件発明2~19は、甲1Aに記載された発明、又は、甲1A~7Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由A-1についてのまとめ
したがって、本件発明1~19は、甲1Aに記載された発明、又は、甲1A~7Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由A-1は、理由がない。
3 申立理由B-4(甲5Bを主引例とする進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 甲5Bに記載された発明
甲5Bには、「哺乳類における骨髄浮腫を治療するための、その塩を含めたポリ硫酸化多糖類の有効量、および薬学的に許容される担体を含む組成物」が記載され(請求項2)、「その塩を含めたポリ硫酸化多糖類」として、具体的にはPPS(ペントサンポリ硫酸)が記載されている(【0070】~【0072】の実施例1~3)。
そうすると、甲5Bには、以下の発明が記載されていると認められる。
「哺乳類における骨髄浮腫を治療するための、PPS(ペントサンポリ硫酸)の有効量、および薬学的に許容される担体を含む組成物」(以下「甲5B発明」という。)
イ 本件発明1と甲5B発明の対比
甲5B発明の「哺乳類」、「PPS(ペントサンポリ硫酸)」は、本件発明1の「哺乳動物」、「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」に相当する。
また、甲5B発明の「組成物」は、「治療するための」ものであるから、本件発明1の「医薬組成物」に相当し、哺乳類の治療のためには、「哺乳類に投与するステップを含む」といえるから、本件発明1の「哺乳動物に投与するステップを含む」ものにも相当する。
そして、甲5B発明の「組成物」は、「哺乳類」を「治療するための」「組成物」であるから、本件発明1の「哺乳動物における」「処置のための方法で用いるための医薬組成物」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲5B発明の一致点及び相違点(以下「相違点5B」という。)は、次のとおりである。
<一致点>
「哺乳動物における処置のための方法で用いるための医薬組成物であって、ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩を含み、
前記方法は、ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩を含む前記医薬組成物を前記哺乳動物に投与するステップを含む、医薬組成物。」
<相違点5B>
本件発明1は、「無菌性持続性術後関節痛の処置のための方法で用いるため」のものであって、「前記無菌性持続性術後関節痛が、関節形成術の結果生じる関節内疼痛」であるのに対し、甲5B発明は、そのようなものではない点。
ウ 相違点5Bの判断
甲5B発明において、哺乳類は「骨髄浮腫」に罹患しているところ、甲5Bには、甲5B発明の哺乳類が、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」を有していることは記載も示唆もされていないから、甲5B発明において、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」の処置を行う動機付けは見いだせない。
したがって、甲5B発明について、「無菌性持続性術後関節痛の処置のための方法で用いるため」のものであって、「前記無菌性持続性術後関節痛が、関節形成術の結果生じる関節内疼痛」であるものとすることは、当業者が容易に行うことではない。
エ 本件発明1の効果について
上記2(1)エのとおり、本件明細書には、本件発明1は、PPS処置が、関節形成術後の対象における持続性の術後痛を低減させるという驚くべき発見に基づくと記載され(【0008】)、実施例1において、右膝に膝関節全置換術(TKR)を受け、その関節置換術後に由来する無菌性持続痛を有していた患者について、PPSの投与により、右の人工膝関節における術後の無菌性持続痛が、弱まり/止まり、ゼロになったことが具体的に確認されている(【0259】~【0273】)。
一方、甲5Bを検討しても、本件発明1が、PPSの投与により、関節形成術の結果生じる関節内疼痛を低減できるという効果を奏することについて、当業者が予測し得たといえる理由はない。
したがって、本件発明1は、甲5Bの記載からは予測し得ないような優れた効果を奏するものである。
オ 申立人Bの主張について
(ア)申立人Bは、申立書において、概略、以下の(イ)の理由により、本件発明1は、甲5Bの記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。
(イ)本件発明1における「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」は、「関節部分置換術によって残存する関節に発症する関節リウマチ、変形性関節症又は骨髄浮腫等を含む関節炎状態に罹患していることによる疼痛」も含む概念であるから、甲5B発明における「骨髄浮腫」の罹患による疼痛は、本件発明1の「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」に含まれる。
そうすると、当業者であれば、関節形成術の結果生じる関節内疼痛であっても、それが骨髄浮腫に基づく疼痛であれば、甲5Bに開示されたペントサンポリ硫酸を含む組成物が、関節形成術の結果生じる関節内疼痛の改善に有効であることに容易に想到することができる。本件発明1が、骨髄浮腫に基づく疼痛以外の疼痛の改善効果を奏するとしても、従来から知られた医薬用途、又は従来から知られた医薬用途から当業者にとって自明な医薬用途を含むものであれば、本件発明1全体としては、従来から知られた医薬用途と特許的に区別することができないと言える。よって、本件発明1全体としては、当業者にとって、甲5Bの開示から容易に想到できるものであるので、本件発明1は、甲5Bの開示に基づき進歩性を有しない。(申立書B29頁11行~30頁22行、18頁6行~19頁下から7行)
(ウ)そこで、上記主張について検討すると、申立人Bは、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」は、「関節部分置換術によって残存する関節に発症する関節リウマチ、変形性関節症又は骨髄浮腫等を含む関節炎状態に罹患していることによる疼痛」も含む概念であると主張するが、上記1(3)イでも述べたとおり、「関節部分置換術によって残存する関節に発症する関節リウマチ、変形性関節症又は骨髄浮腫等を含む関節炎状態に罹患していることによる疼痛」は、「関節リウマチ、変形性関節症又は骨髄浮腫等を含む関節炎状態に罹患していることによる疼痛」であって、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」には該当しない。
したがって、甲5B発明における「骨髄浮腫」の罹患による疼痛は、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」ではなく、上記ウのとおり、甲5B発明において、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」の処置を行う動機付けは見いだせない。
よって、申立人Bの主張は、採用できない。
カ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲5Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~4、6~19について
本件発明2~4、6~18は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明19は、本件発明1である「医薬組成物」の発明を「使用」の発明に変更したものであって、いずれも、上記(1)イに挙げた「相違点5B」を少なくとも有するから、上記(1)ウ~オのとおり、甲5Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由B-4についてのまとめ
したがって、本件発明1~4、6~19は、甲5Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由B-4は、理由がない。
4 申立理由A-2(実施可能要件)及び申立理由B-1(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、発明の詳細な説明に、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて過度の試行錯誤を要することなくその発明を実施することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)には、本件発明における「無菌性持続性術後関節痛」である「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」について記載され(【0029】~【0034】)、本件発明に含まれる「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」について記載され(【0038】~【0040】)、実施例には、「右膝関節全置換術後の持続痛に罹患している患者」をPPSで処置した結果、右の人工膝関節における術後の無菌性持続痛が、弱まり/止まり、ゼロになったことを確認している(【0259】~【0273】)。
したがって、発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1~19を実施することができる程度の記載があるといえる。
よって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~19について実施可能要件を満たしている。
(3)申立人の主張について
ア 申立人Aの主張
申立人Aは、申立書Aにおいて、概略、以下の主張1(A)~3(A)を挙げて、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~19について実施可能要件を満たさないと主張している(申立書A56頁11行~58頁18行)。
主張1(A)
発明の詳細な説明の【実施例】で実際に検討されたのは、右膝に末期変形性関節症(OA)を有していた約60歳の女性患者たった一人であり、しかも、当該患者は、右膝に膝関節全置換術(TKR)を受け、その関節置換術後に由来する無菌性持続痛を有しており、また、その左膝にも疼痛を有し(変性変形性関節症)、その関節にもTKRを受けるよう勧められていた、という特定の症状を有する患者であった(【0261】)。当然、プラセボとの比較も行われていない。
そして、行われた具体的な検討も、当該患者に対して、皮下注射により3週間にわたって週に2回(合計6回の注射)、2mg/kg体重の用量でPPSを投与したというだけのものである(【0262】、【0266】)。
このような特殊な患者たった一人に対して、特定の処方スケジュール、特定の投与方法でPPSを投与しただけで、比較データ(プラセボデータ)も無いような検討結果に基づき、「関節形成術後の対象における持続性の術後痛を低減させる」、また「対象における変形性関節症疼痛および持続性の術後関節痛を低減させる」という作用効果が奏されるとは、当業者であっても認識することはできない。単なる特殊なケースであったり、あるいはプラセボ効果であったりする可能性も大いにあるためである。
主張2(A)
「皮下注射により3週間にわたって週に2回(合計6回の注射)、2mg/kg体重の用量でPPSを投与した」場合においては、当該作用効果が奏されるであろうと当業者が認識したと仮定しても、これ以外の処方スケジュールや投与方法でPPSを投与した際にも、同様の効果が得られるとは当業者であっても認識することはできない。例えば、経口投与した場合には、その有効成分(PPS)の吸収経路や代謝経路は皮下注射投与とは全く異なるわけであり、果たして皮下注射投与時と同様の効果が得られるかは全く不明である。
なお、本件発明1~14、16~18の医薬組成物、及び本件発明19の医薬の製造における使用は、その投与形態についての限定は行われておらず、本件発明15において投与形態の限定が行われているものの、その中には「経口投与」も含まれている。
主張3(A)
本件特許権者は、従来知られていた疼痛抑制経路(PPSがBMEを消失させることで疼痛を抑制する)とは全く関係の無い(少なくとも予測できない)経路でPPSが「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」を抑制すると主張している。しかし、どのような経路でPPSが当該効果を奏するかについては不明であり、そうすると、ますます、上記の特殊な患者たった一人に対して、特定の処方スケジュール、特定の投与方法でPPSを投与しただけで、比較データ(プラセボデータ)も無いような検討結果に基づき、「関節形成術後の対象における持続性の術後痛を低減させる」、また「対象における変形性関節症疼痛および持続性の術後関節痛を低減させる」という作用効果が奏されるとは、当業者であっても認識することはできない。
イ 申立人Bの主張
申立人Bは、申立書Bにおいて、概略、以下の主張1(B)~5(B)を挙げて、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~19について実施可能要件を満たさないと主張している(申立書B18頁1行~26頁最下行)。
主張1(B)無菌性持続性術後関節痛について
上記1(3)ア(ア)、(イ)で主張したとおり、本件発明の医薬組成物が適用される「無菌性持続性術後関節痛」の範囲が明確であるとは言えず、その範囲を画定することができないので、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の範囲全体を容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。
主張2(B)ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩について
発明の詳細な説明には、「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」について、その名称で表すことができる、あらゆる構造(異性体)、分子量、又はその他の特性を有する化学物質の製造・入手方法について開示されていない。また、発明の詳細な説明の実施例において評価されたのは、ただ1つのPPS(ペントサンポリ硫酸)である。高分子の化学物質の構造、分子量等が異なれば、その薬理活性を含む特性が異なることは当業者のよく知るところであり、実施例に開示されたただ1つのPPSの作用効果から、本件発明1に記載された「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」の名称で特定される全ての化学物質の作用効果について、発明の詳細な説明には示されていない。さらに、発明の詳細な説明の実施例で使用されたPPSの製造・入手方法については開示されていない。
したがって、当業者は、発明の詳細な説明の実施例の追試すら困難であり、ましてや、本件発明の範囲全体について、当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。
主張3(B)哺乳動物について
発明の詳細な説明では、「無菌性持続性術後関節痛」の客観的な診断基準及び診断方法について明確にされていない。仮に、本件発明に係る「無菌性持続性術後関節痛」の診断が、患者の痛みの報告によってなされるとすれば、報告能力を欠くヒト以外の哺乳動物については、本件発明に係る「無菌性持続性術後関節痛」の診断ができないことは明らかであり、本件発明の医薬用途発明が適用できる範囲を画定することができない。
したがって、発明の詳細な説明は、ヒト以外の哺乳動物に適用される本件発明の範囲全体について、当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。
主張4(B)発明の詳細な説明に開示された実施例の記載と本件発明の範囲について
発明の詳細な説明には、本件発明に係る医薬組成物が、哺乳動物における無菌性持続性術後関節痛に対する作用効果を示す作用機序については、一切開示も示唆もされていない。現に、本件特許に対応する欧州特許出願の審査における、拒絶理由通知(甲2B)に対する、出願人(本件特許権者に同じ)の応答書(甲3B)において、本件特許権者は、前記作用機序が不明であることを認め、本件発明が驚くべきものであることを主張している。
確かに、本件発明の実施可能要件の充足性の評価において、前記作用機序の解明及び開示を必ずしも要するものとは言えないが、一試験例の結果から、発明の実施可能な範囲を画定するには、前記作用機序の解明及び開示は、客観的な根拠となり得る重要な情報である。仮に、前記作用機序が不明であれば、複数の試験例及びその結果から、帰納的に、発明の実施可能な範囲を画定する必要があると言える。
しかるに、発明の詳細な説明においては、ただ1つの試験例及びその結果が開示されているに過ぎず、前記作用機序については、開示も示唆もされていないので、前記1つの試験例の結果から、発明の実施可能な範囲を画定することができない。
したがって、発明の詳細な説明は、本件発明の範囲全体について、当業者が容易に実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものではないと認められる。そして、ただ1つの試験例及びその結果が開示されているに過ぎないので、複数の試験例及びその結果から、帰納的に、発明の実施可能な範囲を画定することもできない。
主張5(B)発明の詳細な説明における薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載について
発明の詳細な説明には、無菌性持続性術後関節痛のみを有し、変性変形性関節症等に罹患していない患者の疼痛に対して本件発明に係る医薬が有効であることは示されていない。さらに、「右膝における疼痛応答の改善は、左膝における改善の結果ではなく、リハビリテーションと関連するものでもなく、左膝における改善の代償でもないことがさらに観察された」と記載されているが、かかる結論の根拠となる客観的なデータ又は観察記録は具体的に開示されておらず、薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載があるとは言えない。
また、【0264】の「右の人工関節における無菌性の持続痛も弱まり/止まり、ゼロになった」という記載については、客観的な薬理データが開示されているとは言えない。前記「ゼロになった」という記載が、左膝の評価にも使用されている数値化スケール(NRS)疼痛スコアの値がゼロになったことを意味すると解する余地がなくもないが、たとえそのように解するとしても、発明の詳細な説明には、右膝の無菌性持続痛のPPS投与前の疼痛スコアの値が全く示されていない。したがって、右膝の無菌性持続痛のPPS投与前の疼痛スコアの値が、想像できる最悪の疼痛である「10」(本件明細書【0269】)であったのか、ないしは疼痛スコアの値が「1」未満であり、疼痛なしの状態を表す「0」と区別できない程度であったのか不明である。よって、発明の詳細な説明の記載から、当業者は、どの程度の無菌性の持続痛に対して有効であるのか、どの程度の痛みに対してどの程度の用量を適用すればよいのか理解することができず、当該用途の有用性及びそのための当該医薬組成物の有効量を予測することは困難であるので、薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載があるとは言えない。すなわち、発明の詳細な説明には、本件発明の実施可能要件を満たすための薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載があるとは言えず、本件発明が実施可能要件を満たすものではない。
仮に、前記【0264】の記載が、薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載であるとしても、発明の詳細な説明には、ただ1つの実施例で示された作用効果から、本件発明の範囲全体について、当業者が容易に実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えず、実施可能要件を満たすものではない。
ウ 検討
(ア)主張1(A)について
発明の詳細な説明に記載された実施例の患者が、特定の症状を有するたった一人の患者であり、プラセボとの比較も行われていないとしても、当該患者に対して、PPSを投与した結果、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」が弱まり/止まり、ゼロになったのであれば、本件発明が実施できないということはなく、実施例の結果が、単なる特殊なケースであり、プラセボ効果であるというべき具体的な理由もない。
したがって、主張1(A)は、採用できない。
(イ)主張2(A)について
申立人Aは、例えば、経口投与した場合には、発明の詳細な説明に記載された実施例の皮下注射投与時と同様の効果が得られるかは不明であり、当該実施例とは異なる処方スケジュールや投与方法でPPSを投与した際にも、同様の効果が得られるとは認識できないと主張する。
しかしながら、甲5Bには、PPS(ペントサンポリ硫酸)の投与経路について、経口投与を含め、様々な経路により投与し得ることが記載されている(請求項6~8、【0040】)。
そうすると、PPSについて、経口投与では効果を奏さないと当業者が認識しているということはなく、また、本願実施例とは異なる処方スケジュールや投与方法であると、本件発明の実施をすることができないといえる具体的な理由もない。
したがって、主張2(A)は、採用できない。
(ウ)主張3(A)、4(B)について
申立人A及びBは、PPSがどのような経路や作用機序で本件発明に係る効果を奏するか不明であるから、特殊な患者たった一人に対して、特定の処方スケジュール、特定の投与方法でPPSを投与しただけで、比較データ(プラセボデータ)も無いような検討結果に基づき、本件発明に係る効果が奏されると認識することはできないと主張する。
しかしながら、効果を発現する経路や作用機序が不明であっても、実施例の患者に対して、PPSを投与した結果、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」が弱まり/止まり、ゼロになったのであれば、本件発明は、実施をすることができるということができ、実施例の患者がたった一人だからといって、単なる特殊なケースであり、プラセボ効果であるというべき具体的な理由もないことは、上記(ア)のとおりである。
したがって、主張3(A)、4(B)は、採用できない。
(エ)主張1(B)について
上記1(3)イのとおり、本件発明における「無菌性持続性術後関節痛」とは、「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」に限定されていることが明らかであり、本件発明が不明確ということはなく、本件発明の実施をすることができないというべき理由もない。
したがって、主張1(B)は、採用できない。
(オ)主張2(B)について
申立人Bは、発明の詳細な説明には、「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」について、その名称で表すことができる、あらゆる構造(異性体)、分子量、又はその他の特性を有する化学物質の製造・入手方法について開示されていないと主張する。
しかしながら、本件明細書の【0008】に、「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」を含む医薬組成物に関する従来技術について参考文献7~18を引用しつつ説明されているように、本件特許の優先日前に、「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」を含む医薬組成物は広く知られており、例えば、進歩性の異議申立理由(申立理由A-1、B-4)で証拠として引用された甲1A、甲5Bにも、「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」を含む医薬組成物は記載されている。
そうすると、当業者であれば、上記参考文献7~18や甲1A、甲5B等の「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」を含む医薬組成物に関する文献の記載を参考にして、「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」を含む医薬組成物を製造・入手することができ、本件発明を実施することができるといえる。その際、「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」という名称で表すことができる、あらゆる構造(異性体)、分子量、又はその他の特性を有する化学物質について製造・入手できなければ、本件発明を実施することができないというべき理由はない。
したがって、主張2(B)は、採用できない。
(カ)主張3(B)について
申立人Bは、報告能力を欠くヒト以外の哺乳動物については、「無菌性持続性術後関節痛」の診断ができないと主張するが、ヒト以外の哺乳動物であっても、その反応を見ることなどによって、疼痛が軽減できたか否か理解することができるから、ヒト以外の哺乳動物について、本件発明が実施することができないということはない。
したがって、主張3(B)は、採用できない。
(キ)主張5(B)について
申立人Bは、無菌性持続性術後関節痛のみを有し、変性変形性関節症等に罹患していない患者の疼痛に対して本件発明に係る医薬が有効であることは示されておらず、【0264】の「右の人工関節における無菌性の持続痛も弱まり/止まり、ゼロになった」という記載だけでは、客観的な薬理データが開示されているとは言えないから、発明の詳細な説明には、本件発明の実施可能要件を満たすための薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載があるとは言えないと主張している。
しかしながら、本件明細書の実施例において、患者の右の人工関節における無菌性の持続痛が改善されているのであるから、左膝の変性変形性関節症も改善されているとしても、無菌性持続性術後関節痛のみを有し、変性変形性関節症等に罹患していない患者の疼痛に対して本件発明に係る医薬が有効でないといえる理由はない。また、疼痛が弱まり/止まり、ゼロになったという記載だけでは、本件発明に係る医薬が実施をすることができないといえる理由もない。
したがって、主張5(B)は、採用できない。
(ク)また、申立人Bは、本件発明2~19について、個別に理由を挙げて、実施可能要件を満たしていないと主張しているが(申立書B23頁下から8行~26頁16行)、いずれも、発明の詳細な説明に記載された実施例とは異なる態様については実施をすることができない旨の主張であり、当該主張が採用できないことは、上記(ア)~(キ)のとおりである。
(ケ)以上のとおりであるから、申立人A、Bの主張は、いずれも採用できない。
(4)申立理由A-2、B-1についてのまとめ
よって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~19を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、申立理由A-2、B-1は、理由がない。
5 申立理由A-3(サポート要件)及び申立理由B-2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
ア 本件発明が解決しようとする課題
発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題について明示的に記載された箇所はないが、【0006】に、「術後関節痛、特に、診断が困難であり、処置が困難である無菌性持続痛を管理するのに現在利用可能な限られた数の選択肢を拡大するために、NSAIDまたは副腎皮質ステロイドの負の効果を有しない医薬品が必要である」と記載され、【0008】には、「本発明は、PPS処置が、関節形成術後の対象における持続性の術後痛を低減させるという驚くべき発見に基づく」と記載され、【0009】には、「したがって、PPSは、疼痛低減活性の可能性を有するNSAIDおよび副腎皮質ステロイドに対する改善された代替的な医薬品選択肢であり得る」と記載されていること、及び、本件発明1~19が、「無菌性持続性術後関節痛」の処置に関する発明であって、「前記無菌性持続性術後関節内疼痛が、関節形成術の結果生じる関節内疼痛」であることからみて、本件発明が解決しようとする課題は、「負の効果を有するNSAIDまたは副腎皮質ステロイドに代替してPPSを含有する、関節形成術の結果生じる関節内疼痛の処置のための方法で用いるための医薬組成物の提供」であるといえる。
イ 本件発明1について
発明の詳細な説明には、本件発明1における「無菌性持続性術後関節痛」である「関節形成術の結果生じる関節内疼痛」について記載され(【0029】~【0034】)、本件発明1に含まれる「ペントサンポリ硫酸またはその許容される塩」について記載され(【0038】~【0040】)、実施例には、本件発明1の具体的な態様として、「右膝関節全置換術後の持続痛に罹患している患者」をPPSで処置した結果、右の人工膝関節における術後の無菌性持続痛が、弱まり/止まり、ゼロになったことが記載されている(【0259】~【0273】)。
そうすると、本件発明1により、「負の効果を有するNSAIDまたは副腎皮質ステロイドに代替してPPSを含有する、関節形成術の結果生じる関節内疼痛の処置のための方法で用いるための医薬組成物の提供」との課題を解決することができると当業者は認識できるといえる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 本件発明2~19について
本件発明2~18は、本件発明1をさらに特定したものであり、本件発明19は、本件発明1である「医薬組成物」の発明を「使用」の発明に変更したものであるから、上記イの本件発明1と同様に、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(3)申立人の主張について
ア 申立人Aの主張について
申立人Aのサポート要件に関する主張は、実施可能要件に関する主張と同様である(申立書A56頁11行~58頁18行)。
そして、上記4(3)ウ(イ)と同様に、発明の詳細な説明に記載された実施例とは異なる患者や処方スケジュール、投与方法では、本件発明の解決しようとする課題を解決できないといえる具体的な理由はないから、本件発明が、本件発明の解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものではないということはできない。
したがって、申立人Aの主張は、採用できない。
イ 申立人Bの主張について
申立人Bは、発明の詳細な説明には、ただ1つの実施例において、一人の患者に対してPPSを含む製剤を適用した結果が開示されているに過ぎず、本件発明の作用機序も明らかにされていないので、当業者は、前記実施例に示された本件発明に係る医薬組成物の作用効果を、本件発明1~19のいずれかの範囲にまで、拡張又は一般化して理解することができないと主張する(申立書B27頁1行~28頁6行)。
しかしながら、上記アと同様に、発明の詳細な説明に記載された実施例と異なる患者に対しては、本件発明の解決しようとする課題を解決できないといえる具体的な理由はなく、また、作用機序が明らかにされていないと、当該実施例以外の範囲について、本件発明の解決しようとする課題を解決することができないといえる具体的な理由もない。
したがって、申立人Bの主張は、採用できない。
(4)申立理由A-3、B-2についてのまとめ
よって、本件発明1~19は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、申立理由A-3、B-2は、理由がない。
第5 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件発明1~19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700492