特許異議申立
2023-700183
抗菌・抗ウイルスコーティング組成物
- 審判番号
- 2023-700183
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-197442
- 登録番号
- 7121356
- 請求日
- 2023年02月17日
- 審決日
- 2024年07月17日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】山本 宗雄
- 【権利者代理人】齋藤 明子
- 【権利者】日本ペイントコーポレートソリューションズ株式会社
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】山本 宗雄
- 【権利者代理人】齋藤 明子
- 【権利者】TOTO株式会社
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】山本 宗雄
- 【権利者代理人】齋藤 明子
- 【異議申立人】清水 誠
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 山田 貴之
- 分類
- P1651.121-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7121356号発明「抗菌・抗ウイルスコーティング組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7121356号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。
特許第7121356号の請求項1-16に係る特許を維持する。
理由
理 由
本件訂正は、以下の訂正事項1~5からなる。訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「である、抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。」と記載されているのを、「であり、室温乾燥に用いられる、抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。」に訂正する。(請求項1の記載を直接又は間接に引用する請求項2~16も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物により形成された、抗菌・抗ウイルスコーティング層。」と記載されているのを、「請求項1~10のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を用い、室温乾燥により形成された、抗菌・抗ウイルスコーティング層。」に訂正する。(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項13に、「被塗物に、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、該抗菌・抗ウイルスコーティング組成物の乾燥後の質量が0.02~0.20g/m2となるように塗装して抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成する工程、を含む、抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成方法。」と記載されているのを、「被塗物に、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、該抗菌・抗ウイルスコーティング組成物の乾燥後の質量が0.02~0.20g/m2となるように塗装し、室温において乾燥して抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成する工程、を含む、抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成方法。」に訂正する。(請求項13の記載を直接又は間接に引用する請求項14~16も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項14に、「前記抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成は、前記抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、浸漬塗装、刷毛塗装、布を用いての塗装、ローラー塗装、ロールコーター塗装、スプレー塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーカーテンコーター塗装及びダイコーター塗装からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により塗装することにより行われる」と記載されているのを、「前記抗菌・抗ウイルスコーティング層の塗装は、前記抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、浸漬塗装、刷毛塗装、布を用いての塗装、ローラー塗装、ロールコーター塗装、スプレー塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーカーテンコーター塗装及びダイコーター塗装からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により行われる」に訂正する。(請求項14の記載を引用する請求項15、16も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1において、「前記無機系バインダー(A)は、シリ力微粒子であり」とあるのを、「前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子からなり」に訂正する。(請求項1の記載を直接又は間接に引用する請求項2~16も同様に訂正する。)
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1のうち、訂正前の請求項1の「抗菌・抵ウイルスコーティング組成物。」について、その下位の概念である「室温乾燥に用いられる、抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。」へと限定する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項1は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項1は、願書に添付した明細書段落【0106】の「コーティング層は、コーティング組成物を被塗物に塗装後、室温(例えば、5℃~35℃)において乾燥することによって得られる。」なる記載に基づくものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2のうち、訂正前の請求項11の「抗菌・抗ウイルスコーティング組成物により形成された、抗菌・抗ウイルスコーティング層。」について、その下位の概念である「抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を用い、室温乾燥により形成された、抗菌・抗ウイルスコーティング層。」へと限定する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項11の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項2は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項2は、願書に添付した明細書段落【0106】の「コーティング層は、コーティング組成物を被塗物に塗装後、室温(例えば、5℃~35℃)において乾燥することによって得られる。」なる記載に基づくものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3のうち、訂正前の請求項13の「被塗物に、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、該抗菌・抗ウイルスコーティング組成物の乾燥後の質量が0.02~0.20g/m2となるように塗装して抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成する工程、を含む、抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成方法。」について、その下位の概念である「被塗物に、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、該抗菌・抗ウイルスコーティング組成物の乾燥後の質量が0.02~0.20g/m2となるように塗装し、室温において乾燥して抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成する工程、を含む、抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成方法。」へと限定する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項13の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項3は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項3は、願書に添付した明細書段落【0106】の「コーティング層は、コーティング組成物を被塗物に塗装後、室温(例えば、5℃~35℃)において乾燥することによって得られる。」なる記載に基づくものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4のうち、訂正前の請求項14の「前記抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成は、前記抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、浸漬塗装、刷毛塗装、布を用いての塗装、ローラー塗装、ロールコーター塗装、スプレー塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーカーテンコーター塗装及びダイコーター塗装からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により塗装することにより行われる」について、「前記抗菌・抗ウイルスコーティング層の塗装は、前記抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、浸漬塗装、刷毛塗装、布を用いての塗装、ローラー塗装、ロールコーター塗装、スプレ一塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーカーテンコーター塗装及びダイコーター塗装からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により行われる」とする訂正は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い請求項13の記載と請求項14の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項4は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、請求項14に記載された種々の方法が塗装方法であることを限定する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項4は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項4は、願書に添付した明細書段落【0096】の「一の実施態様において、本発明のコーティング組成物は、例えば、浸漬塗装、刷毛塗装、布を用いての塗装、ローラー塗装、ロールコーター塗装、スプレー塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーカーテンコーター塗装、ダイコーター塗装等を用いて塗装することができる。」なる記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。したがって、訂正事項4は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5の「前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子であり」について、その下位の概念である「前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子からなり」へと限定する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項5は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項5は、願書に添付した明細書段落【0018】において、「無機系バインダー(A)は、ケイ素化合物系バインダーを含む」旨が記載されていること、段落【0019】において、「ケイ素化合物系バインダーは、より好ましくは、ケイ素化合物である。ケイ素化合物としては、例えば、アルカリ系酸塩、具体的には、シリカ微粒子、アルキルシリケート等を挙げることができる」旨が記載されていること、及び、実施例1~5、7~12、14~20において、無機系バインダーとしては、コロイダルシリカに分類される(A1)~(A5)のみを用いていること(表1A~表1C)に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。したがって、訂正事項5は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(6)独立特許要件
本件においては、訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1~16について、請求項2~16は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~16に対応する訂正後の請求項1~16は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~16についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~16に係る発明は、令和6年3月22日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明16」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
無機系バインダー(A)、光触媒型酸化チタン(B)、アルコール(C)及び水を含み、
前記無機系バインダー(A)は、酸性タイプであり、
前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子からなり、
前記無機系バインダー(A)に対する前記光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、0.5~5.0の範囲にあり、
水の含有率が、5質量%以上であり、
室温乾燥に用いられる、
抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項2】
前記無機系バインダー(A)に対する前記光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、0.5以上2.5未満である、請求項1に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項3】
前記シリカ微粒子の平均一次粒子径は、3~50nmである、請求項1又は2に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項4】
前記光触媒型酸化チタン(B)は、銀及び銅並びに水酸化第四アンモニウムを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項5】
前記アルコール(C)は、炭素数1~7のアルコールを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項6】
前記アルコール(C)は、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール及びプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項7】
水の含有率が、25.89質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項8】
更に、界面活性剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤である、請求項8に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項10】
更に、消色性色素を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を用い、室温乾燥により形成された、抗菌・抗ウイルスコーティング層。
【請求項12】
基材と、該基材の表面に請求項11に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング層とを含む物品。
【請求項13】
被塗物に、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、該抗菌・抗ウイルスコーティング組成物の乾燥後の質量が0.02~0.20g/m2となるように塗装し、室温において乾燥して抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成する工程、を含む、抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成方法。
【請求項14】
前記抗菌・抗ウイルスコーティング層の塗装は、前記抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を、浸漬塗装、刷毛塗装、布を用いての塗装、ローラー塗装、ロールコーター塗装、スプレー塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーカーテンコーター塗装及びダイコーター塗装からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により行われる、請求項13に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成方法。
【請求項15】
前記スプレー塗装は、エアゾールスプレー塗装又は非エアゾールスプレー塗装である、請求項14に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成方法。
【請求項16】
前記布を用いての塗装は、前記抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を布に含浸させ、被塗物の表面を拭くことにより行われる、請求項14に記載の抗菌・抗ウイルスコーティング層の形成方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 本件特許登録時の請求項1~16に係る特許に対して、令和5年7月6日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由1及び理由2である。
理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
甲第1号証:特開平9-75243号公報
甲第2号証:特開2003-13007号公報
甲第3号証:国際公開第99/52986号
甲第4号証:特開2018-144003号公報
甲第5号証:特開2011-110455号公報
甲第6号証:特開2003-284959号公報
甲第7号証:特開2012-20897号公報
甲第8号証:特開2020-40047号公報
甲第9号証:特開2008-80253号公報
甲第13号証:スノーテックス(R)(当審注:(R)はマルの中にR、以下同様。)、日産化学のホームページ
(https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/inorganic/products/01/;平成30年)
甲第14号証:スノーテックス(R)O、日産化学のホームページ
(https://db.nissanchem.co.jp/db/detail.cgi?id=145;令和4年)
甲第15号証:酸化チタン光触媒の抗菌性及び親水性の応用に関する研究(筑波大学大学院発行;平成30年2月)
甲第16号証:特開2004-83469号公報
理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~16に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
本件特許発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0003】~【0008】段落に記載のとおり、従来の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物では抗菌性又は抗ウイルス性の持続性や、被塗物に十分定着せず耐久性に問題があったことから、水ラビング性を有し、さらに貯蔵安定性及び塗装時の作業性が良好な抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を提供することである。
そして、本件明細書の【0127】及び【0141】には、「(a2)」すなわち同【0117】の「ST-C、コロイダルシリカ、中性タイプ」を使用した比較例4では、コーティング組成物の貯蔵安定性の評価が「×」であり、本件特許発明の課題を解決することができないことが記載されている。
ここで、甲第13号証に記載の以下のグラフから、ST-Cは酸性領域(pH2.0~5.0)において、別の商品ST-30における準安定域よりもさらに良好な安定性を有することを読み取ることができる。
[図:0001415260000001.jpg]
以上から、本件明細書中の比較例4は、本件特許発明における「酸性タイプ」と同等の安定性を有する「ST-C」を使用し、かつ、その他の発明特定事項も満たしているにもかかわらず課題を解決することができていないといえる。そうすると、本件特許発明1-16は、その全範囲においては、課題を解決することができないことが明らかであり、本件特許発明1-16はサポート要件を満たさない。
2 本件訂正前の請求項1~16に係る特許に対して、当審が令和6年1月16日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
甲第1号証:特開平9-75243号公報
甲第2号証:特開2003-13007号公報
甲第3号証:国際公開第99/52986号
甲第4号証:特開2018-144003号公報
甲第5号証:特開2011-110455号公報
甲第6号証:特開2003-284959号公報
甲第7号証:特開2012-20897号公報
甲第8号証:特開2020-40047号公報
甲第9号証:特開2008-80253号公報
甲第13号証:スノーテックス(R)(当審注:(R)はマルの中にR、以下同様。)、日産化学のホームページ
(https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/inorganic/products/01/;平成30年)
甲第14号証:スノーテックス(R)O、日産化学のホームページ
(https://db.nissanchem.co.jp/db/detail.cgi?id=145;令和4年)
甲第15号証:酸化チタン光触媒の抗菌性及び親水性の応用に関する研究(筑波大学大学院発行;平成30年2月)
甲第16号証:特開2004-83469号公報
理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~16に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
本件特許発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0003】~【0008】段落に記載のとおり、従来の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物では抗菌性又は抗ウイルス性の持続性や、被塗物に十分定着せず耐久性に問題があったことから、水ラビング性を有し、さらに貯蔵安定性及び塗装時の作業性が良好な抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を提供することである。
そして、本件特許明細書【0014】には「酸性タイプとは、無機系バインダー(A)が酸性領域にある際に安定に存在し得るものをいう。」と記載され、本件特許明細書の【0127】及び【0141】には、「(a2)」すなわち同【0117】の「ST-C、コロイダルシリカ、中性タイプ」を使用した比較例4では、コーティング組成物の貯蔵安定性の評価が「×」であり、本件特許発明の課題を解決することができないことが記載されている。
ここで、甲第13号証に記載の以下のグラフから、ST-Cは酸性領域(pH2.0~5.0)において、良好な安定性を有することを読み取ることができるから、本件特許発明における「酸性タイプ」であるといえる。
[図:0001415260000002.jpg]
以上から、本件明細書中の比較例4は、本件特許発明における「酸性タイプ」といえる「ST-C」を使用し、かつ、その他の発明特定事項も満たしているにもかかわらず課題を解決することができていない。そうすると、本件特許発明1~16は、その全範囲においては、課題を解決することができないものであるから、本件特許発明1~16はサポート要件を満たさない。
第5 前記第4における理由1(進歩性)について
1 甲号証について
甲第1号証~甲第9号証及び甲第13号証~甲第16号証は前記第4 理由1の甲第1号証~甲第9号証及び甲第13号証~甲第16号証
甲第10号証:特開平10-068824号公報
甲第11号証:トコトンやさしい光触媒の本(日刊工業新聞社発行;平成14年2月28日)
甲第12号証:特開2002-068915号公報
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】 汚れ発散原因となる装置の周囲に配置されてその汚れを受ける防汚板であって;光半導体を含む表面層を有し、該光半導体の光励起に対応して表面が親水性を示すことを特徴とする防汚板。」
1b「【0023】(1)有機チタン化合物の加水分解と脱水縮重合
チタンのアルコキシド、例えば、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn-プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン、に塩酸又はエチルアミンのような加水分解抑制剤を添加し、エタノールやプロパノールのようなアルコールで希釈した後、部分的に加水分解を進行させながら又は完全に加水分解を進行させた後、混合物をスプレーコーティング、フローコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティングその他のコーティング法により、基材の表面に塗布し、常温から200℃の温度で乾燥させる。乾燥により、チタンのアルコキシドの加水分解が完遂して水酸化チタンが生成し、水酸化チタンの脱水縮重合により無定形チタニアの層が基材の表面に形成される。チタンのアルコキシドに代えて、チタンのキレート又はチタンのアセテートのような他の有機チタン化合物を用いてもよい。
・・・
【0027】シリカ配合チタニアからなる光触媒層
水との接触角が0°になる程度の高度の親水性を呈する耐摩耗性に優れた光半導体含有層を形成する他の好ましいやり方は、チタニアとシリカとの混合物からなる光半導体含有層を基材の表面に形成することである。チタニアとシリカとの合計に対するシリカの割合は、5~90モル%、好ましくは10~70モル%、より好ましくは10~50モル%にすることができる。シリカ配合チタニアからなる光半導体含有層の形成には、次のいずれかの方法を採用することができる。
【0028】(1)アナターゼ型又はルチル型チタニアの粒子とシリカの粒子とを含む懸濁液を基材の表面に塗布し、基材の軟化点以下の温度で焼結する。
(2)無定形シリカの前駆体(例えば、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン、等のテトラアルコキシシラン;それらの加水分解物であるシラノール;又は平均分子量3,000以下のポリシロキサン)と結晶性チタニアゾルとの混合物を基材の表面に塗布し、必要に応じて加水分解させてシラノールを形成した後、約100℃以上の温度で加熱してシラノールを脱水縮重合に付すことにより、チタニアが無定形シリカで結着された光半導体含有層を形成する。特に、シラノールの脱水縮重合温度を約200℃以上の温度で行えば、シラノールの重合度を増し、光半導体含有層の耐アルカリ性能を向上させることができる。
・・・
【0033】光半導体含有シリコーン塗料
水との接触角が0°になる程度の高度の親水性を呈する光半導体層を形成する更に他の好ましいやり方は、未硬化の若しくは部分的に硬化したシリコーン(オルガノポリシロキサン)又はシリコーンの前駆体からなる塗膜形成要素に光半導体の粒子を分散させてなる組成物を用いることである。この組成物を基材の表面に塗布し、塗膜形成要素を硬化させた後、光半導体を光励起すると、シリコーン分子のケイ素原子に結合した有機基は光半導体の作用により水酸基に置換され、光半導体含有層の表面は親水化される。
【0034】このやり方には、幾つかの利点がある。光半導体含有シリコーン塗料は常温又は比較的低温で硬化させることができるので、プラスチックスや有機物のような非耐熱性の材料にも適用することができる。光半導体を含有したこのコーティング組成物は、表面の親水化を要する既存の基材に、ディッピング、刷毛塗り、スプレーコーティング、ロールコーティング等により必要に応じ何時でも塗布することができる。光半導体の光励起による親水化は、太陽光のような光源でも容易に行うことができる。」
1c「【0039】抗菌増強剤の添加
光半導体含有層にはAg、Cu、Znのような金属をドーピングすることができる。光半導体にAg、Cu、又はZnをドーピングするためには、光半導体粒子の懸濁液にこれらの金属の可溶性塩を添加し、得られた溶液を用いて光半導体含有層を形成することができる。或いは、光半導体含有層を形成後、これらの金属の可溶性塩を塗布し、光照射により光還元析出させてもよい。」
1d「【0048】
【実施例】本発明の実施例を説明する。
実施例1
以下の方法により、基材タイル上にアナターゼ型酸化チタン70部とシリカ30部と白金1部からなる表面層を形成した。まずアナターゼ型チタニアゾル(大阪の石原産業、STS-11)とコロイダルシリカゾル(日産化学、スノーテックスO)と塩化白金酸六水和塩を混合し、15cm四角の施釉タイル(東陶機器、AB02E01)の表面にスプレーコーティング法により塗布し、800℃の温度で1時間焼成し、チタニアとシリカからなる被膜で被覆された試料を得た。被膜の膜厚は0.5μm であった。焼成直後の水との接触角は5°であった。試料を1週間暗所に放置した後の水との接触角は依然5°であった。BLB蛍光灯を用いて試料の表面に0.03mW/cm2の紫外線照度で1日間紫外線を照射したところ、水との接触角は0°になった。」
(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】 コロイダルシリカ(A)と、下記の一般式(1)で示されるアルコキシシラン類の2種以上からなる混合物(B)と、下記の一般式(2)で示されるテトラアルコキシシラン(C)とを反応させて得られるシリコーン系バインダー(D)に、光触媒酸化チタン(E)を配合させてなることを特徴とするコーティング用組成物。
SiR1n(OR2)4-n (1)
〔式中、R1は炭素数1~8のアルキル基、ビニル基、フェニル基、またはアミノ基、メタクリロキシ基、グリシドキシ基若しくはアミノアルキルアミノ基で置換された炭素数1~8のアルキル基を表し、R2は炭素数1~8のアルキル基または炭素数1~8のアルコキシ基で置換された炭素数1~8のアルキル基を表し、nは1~3の整数を表す。〕
Si(OR2)4 (2)
〔式中、R2は炭素数1~8のアルキル基または炭素数1~8のアルコキシ基で置換された炭素数1~8のアルキル基を表す。〕
・・・
【請求項4】 シリコーン系バインダー(D)における各成分の含有量は、コロイダルシリカ(A)が10~40重量%、一般式(1)で示されるアルコキシシラン類の2種以上からなる混合物(B)が35~75重量%、及び一般式(2)で示されるテトラアルコキシシラン(C)が10~30重量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコーティング用組成物。
【請求項5】 光触媒酸化チタン(E)の配合量は、シリコーン系バインダー(D)100重量部に対して、25~150重量部であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のコーティング用組成物。
・・・
【請求項8】 請求項1~7のいずれかに記載のコーティング用組成物による塗膜が形成させてなる建材。」
2b「【0023】4.シリコーン系バインダー(D)
本発明において用いられるシリコーン系バインダー(D)とは、光触媒酸化チタン(E)をその中に分散させ、基材の表面に塗布・乾燥され、光触媒酸化チタン(E)を結合し且つ基材表面に防汚性、セルフクリーニング性に優れたコーティング膜を形成するものであり、コロイダルシリカ(A)が10~40重量%、一般式(1)で示されるアルコキシシラン類の2種以上からなる混合物(B)が35~75重量%、及び一般式(2)で示されるテトラアルコキシシラン(C)が10~30重量%である各成分を水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルグリコール類、ブチルグリコール類などの溶媒中で温度0~80℃、1~36時間攪拌し、反応させることで製造されたものである。コロイダルシリカ(A)が10重量%未満ではコーティング用組成物において常温での保存安定性に劣り、40重量%を超えると塗膜が脆く、基材との接着性に劣るので好ましくない。また、アルコキシシラン類の2種以上から選ばれた混合物(B)が35重量%未満ではコーティング用組成物において常温での保存安定性に劣り、75重量%を超えると塗膜が脆く、基材との接着性に劣るので好ましくない。さらに、テトラアルコキシシラン(C)が10重量%未満ではコーティング用組成物において常温での保存安定性に劣り、30重量%を超えると塗膜が脆く、基材との接着性に劣るので好ましくない。
・・・
【0029】次に製造方法について詳細に説明する。
9.コーティング用組成物の製造方法
本発明のコーティング用組成物は上記バインダー100重量部に対し光触媒酸化チタン(E)25~150重量部を分散、混合することで製造される。コーティング用組成物において優れた防汚性、セルフクリーニング性を得るには光触媒酸化チタン(E)25~150重量部が好ましく、40~150部がより好ましく用いられる。また、コーティング用組成物における分散性や経済性を向上する目的で、無機系バインダー100部に対して水0~300重量部が好ましく、0~200重量部がより好ましく用いられる。さらに防汚方法、該防汚方法により防汚性を付与された建材について詳細に説明する。」
2c「【0028】8.その他の配合成分
本発明のコーティング用組成物にポリジオルガノシロキサンのエマルジョンを添加すると、塗膜に平滑性を与え、レベリング性を向上させる効果がある。ポリジオルガノシロキサンとしてはジメチルポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、カルボン酸変性ポリシロキサン、シラノール変性ポリシロキサン、ビニル変性ポリシロキサンなどが挙げられるが特に限定されない。これらのエマルジョンは、例えばジメチルポリシロキサンにポリオキシエチレン-ノニルフェニルエーテルと水を添加し、ホモミキサーで乳化して作る事ができる。また、本発明のコーティング用組成物に、水溶性メラミン樹脂や水溶性アクリル樹脂の水溶性樹脂を添加しても良い。これらの添加により、硬く均一な被膜が形成しやすい。さらに、本発明のコーティング用組成物に通常用いられる顔料、染料、帯電防止剤、架橋剤、防曇剤、粘度調整剤、分散肋剤、界面活性剤、造核剤、滑剤、金属粉末、酸化防止剤、紫外線防止剤などを必要に応じて添加しても良い。」
2c「【0032】1)接着性、及び保存安定性
コーティング用組成物を調整直後、及び常温で90日間保管後、タイルピース表面へ厚み30μmになるようスプレー塗装し、常温で5日間乾燥硬化させた。得られた塗膜面における粘着テープによる剥離度合いについて調整直後を接着性、常温で90日間保管後を保存安定性として評価した。
◎:塗膜状態の変化なし。
○:僅かに塗膜が剥がれる。
△:一部塗膜が剥がれる。
×:塗膜の脱落が著しい。
【0033】2)防汚性
コーティング用組成物をモルタルピース表面へ厚み30μmになるようスプレー塗装し、常温で5日間乾燥硬化させた。得られた塗膜面の3箇所に、汚れ基準物質としてメチレンブルー試薬を塗布後、1ヶ月間屋外に放置したときの消失度合いを目視で観察した。
◎:100%消失している。
○:僅かに残っている。
△:一部残っている。
×:半分以上残っている。
【0034】3)セルフクリーニング性
コーティング用組成物をモルタルピース表面へ厚み30μmになるようスプレー塗装し、常温で5日間乾燥硬化させた。得られた塗膜面の3箇所に、汚れ基準物質としてメチレンブルー試薬を塗布し、紫外線強度3mW/cm2のBLBランプを24時間照射したときの消失度合いを目視で観察した。評価基準は防汚性評価と同等である。
【0035】実施例1
コロイダルシリカ(製品名:スノーテックスO、日産化学(株)製)25重量%、メチルトリメトキシシラン(製品名:A-163、日本ユニカー(株)製)25重量%、フェニルトリメトキシシラン(製品名:A-153、日本ユニカー(株))35重量%、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製)15重量%を蒸留水の存在下、液温25℃、20分間攪拌混合した後、真空吸引により脱アルコールを行ない、得られたバインダー100重量部とルチル型光触媒酸化チタン(製品名:SR-97、石原テクノ(株)製)100重量部を水200重量部に分散・混合することでコーティング用組成物を得た。得られたコーティング用組成物については上述した評価方法に基づき試験片を作成し、保存安定性、接着性、並びに防汚性、セルフクリーニング性の評価を行った。結果を表1に示す。表1より明らかなように本発明のコーティング用組成物は、接着性、保存安定性において良好であった。また、防汚性、セルフクリーニング性で若干の改善が見られた。」
(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「請求の範囲
・・・
11.基材の表面に塗布、乾燥、及び硬化させて親水性無機塗膜を形成するために用いる、シリコーンレジンを主成分として含む無機塗料組成物において、
該シリコーンレジンが、式
Si(OR)4 (I)
[式中、Rは炭素数7までのアルキル基又はアリール基である。]
で表される4官能性アルコキシシランのみを加水分解重縮合させて得たものであり、
該無機塗料組成物の全固形分含有量が5重量%以下であり、
該親水性無機塗膜の膜厚が0.01~0.5μmである、無機塗料組成物。」
3b「シリコーンレジンは無機塗料組成物のバインダー成分であり、形成される塗膜に耐久性、強度等を付与するとともに、塗膜の表面に親水性(水濡れ性)を付与し、防曇性、雨水洗浄による防汚性等を主としてもたらす成分である。
このシリコーンレジンは、重合性成分として4官能性アルコキシシランのみを加水分解重縮合して形成したポリシロキサンであることを必要とする。重合性成分として4官能性アルコキシシランのみを用いるということは、3官能以下のアルコキシシランを含まないことを意味する。重合性成分として3官能以下のアルコキシシランを添加すると、形成される塗膜の表面親水性、防曇性、雨水洗浄防汚性、耐候性、耐久性、強度等の塗膜性能が低下してしまう。無機塗料組成物中のシリコーンレジンの形態は特に限定はされず、たとえば、溶液状のものでも分散液状のもの等でも構わない。
・・・
無機塗料組成物は、形成される硬化塗膜の硬度を高くし、平滑性と耐クラック性を改善する等の目的で、必要に応じて、シリカ等のフィラー(製膜助剤)を含むことができる。シリカとしては公知のものを使用できる。
なお、シリカはシリコーンレジンの調製の際に用いられる反応溶媒中にコロイダルシリカの形で分散させておくことで塗料に導入することが、製膜性、工程の簡素化の点で好ましい。しかし、この方法は限定的ではなく、たとえば、シリカ抜きで調製して得られたシリコーンレジンにシリカを混合した後、得られた混合物を塗料に導入してもよいし、あるいは、シリカをシリコーンレジンとは別途に塗料に導入してもよい。
・・・
シリカは、前述の効果があるが、配合量が多すぎると、硬化塗膜が硬くなりすぎてクラックが発生する恐れがある。そのため、シリカを用いる場合、その配合量は、固形分基準でシリコーンレジン100重量部に対して10~90重量部、好ましくは20~85重量部とする。この配合量が10重量部未満であると、所望の被膜硬度が得られなくなる傾向がある。一方、90重量部を越えると、クラックが発生しやすくなる。」第4ページ第23行~第5ページ第26行)
3c「これらの中でも、上記金属酸化物が、実用的に容易に利用可能な点で好ましく、金属酸化物の中でも特に酸化チタンが、その光触媒性能、硬化促進性能、安全性、入手の容易さおよびコストの面で好ましい。なお、酸化チタンを光半導体材料として用いる場合は、結晶型がアナタース型(アナターゼ型)であるものを用いる方が、光触媒性能および硬化促進性能が最も強く、しかも長期間発現するとともに、光触媒性能および硬化促進性能がより短時間で発現する点で好ましい。光半導体材料は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」(第6ページ第8~14行)
3d「光半導体材料は、紫外線を照射されると、活性酸素を発生すること(光触媒性)は公知である。活性酸素は、有機物を酸化、分解させることができるため、その特性を利用して、塗装品に付着したカーボン系汚れ成分(たとえば、自動車の排気ガス中に含まれるカーボン留分や、タバコのヤニ等)を分解する自己洗浄効果;アミン化合物、アルデヒド化合物に代表される悪臭成分を分解する消臭効果;大腸菌、黄色ブドウ球菌に代表される菌成分の発生を防ぐ抗菌効果;防カビ効果等を得ることができる。また、光半導体材料を含む塗膜に紫外線が当たると、光半導体材料がその光触媒作用で水を水酸化ラジカル化し、この水酸化ラジカルが、塗膜表面に付着した、水をはじく有機物等の汚れを分解除去することにより、水に対する塗膜の親水性(濡れ性)がさらに向上して、防曇性や、雨水洗浄による防汚性等がより高いレベルで得られたり長期間維持されたりするという効果もある。」(第6ページ第25行~第7ページ第7行)
3e「無機塗料組成物が光半導体材料をも含む場合、光半導体材料の配合量は、固形分基準でシリコーンレジン100重量部に対して5~80重量部、好ましくは10~50重量部とする。また、光半導体材料の表面に金属が担持されている場合は、1~75重量重量部、好ましくは3~45重量部とする。」(第8ページ第5~8行)
3f「無機塗料組成物中、全固形分濃度は、塗料全量に対し5重量%以下に調整されていることを要する。塗料の全固形分濃度がこのように薄いため、塗料の保存安定性が向上するとともに、塗膜薄膜化が容易で、塗膜薄膜化により、塗膜のクラックや剥離の発生が防止される。塗料の全固形分濃度は、これらの点で、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。また、塗料の全固形分濃度の下限は、好ましくは0.001重量%、より好ましくは0.01重量%である。塗料の全固形分濃度が0.001重量%より低いと、塗料としての機能が出にくかったり何層もコーティングしなければならなかったりする傾向があり、好ましくない。
上記濃度の調整に用いられる希釈溶剤は、シリコーンレジン(光半導体材料を用いる場合はさらに光半導体材料)と混合可能なものであれば特に限定はされないが、たとえば、各種有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の種類は、シリコーンレジンの各成分の有する1価炭化水素基の種類、または、シリコーンレジンの各成分の分子量の大きさ等に応じて適宜選定することができる。
このような有機溶媒としては、特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;および、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム、ジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上を使用することができる。
無機塗料組成物を製造する方法は、特に限定はされず、各成分を通常の方法および装置等を用いて混合すればよい。塗料に導入する際の各成分の形態についても、それ自身液状のものや、溶媒に溶解してなる溶液、分散媒中に分散してなる分散液等の液状、粉体等の固体状等を問わず、特に限定はされない。
各成分を溶液または分散液の形で導入する場合、その溶媒または分散媒としては、たとえば、水、上述の有機溶媒、または、水と上述の有機溶媒との混合物を使用できる。また、各成分は、別個に添加してもよいし、あるいは、2成分以上を予め混合しておいてから残りの成分と混合したり、全成分を同時に混合したりしてもよく、その添加や混合の時機等についても特に限定はされない。
・・・
また、硬化剤としての水の量は、4官能性アルコキシシランのアルコキシ基1モル当量当たり、水0.01~3.0モルが好ましく、1.0~2.5モルがより好ましい。
・・・
基材の表面上に形成された無機塗料組成物の塗布層は、低温加熱するか、あるいは、常温放置することにより、シリコーンレジンの有する加水分解性基同士が縮合反応して硬化塗膜とすることができる。このような無機塗料組成物は、常温で硬化するときにも湿度の影響をほとんど受けない。また、加熱処理を行えば、縮合反応を促進して硬化塗膜を形成することができる。
塗布層の硬化方法については、公知の方法を用いればよく、特に限定はされない。また、硬化の際の温度も特に限定はされず、所望される硬化塗膜性能や、光半導体材料および基材の耐熱性等に応じて常温~加熱温度の広い範囲をとることができる。」(第9ページ第10行~第12ページ第2行)
3g「本発明の親水性無機塗膜形成方法に従って形成される親水性無機塗膜(本発明の親水性塗装品の有する塗膜でもある)は、それを各種材料または物品の少なくとも一部に装備させることにより、たとえば、下記の用途に好適に用いることができる。
建物関連の部材または物品、たとえば、外装材(たとえば、外壁材、平板瓦・日本瓦・金属瓦等の瓦等)、塩ビ雨とい等の樹脂製雨とい・ステンレス雨とい等の金属製雨とい等の雨とい、門およびそれに用いるための部材(たとえば、門扉・門柱・門塀等)、フェンス(塀)およびそれに用いるための部材、ガレージ扉、ホームテラス、ドア、柱、カーポート、駐輪ポート、サインポスト、宅配ポスト、配電盤・スイッチ等の配線器具、ガスメーター、インターホン、テレビドアホン本体およびカメラレンズ部、電気錠、エントランスポール、縁側、換気扇吹き出し口、建物用ガラス等;窓(たとえば、採光窓、天窓、ルーバー等の開閉窓
等)およびそれに用いるための部材(たとえば、窓枠、雨戸、ブラインド等)、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、機械装置、道路周辺部材(たとえば、防音壁、トンネル内装板、各種表示装置、ガードレール、車止め、高欄、交通標識の標識板および標識柱、信号機、ポストコーン等)、広告塔、屋外または屋内用照明器具およびそれに用いるための部材(たとえば、ガラス、樹脂、金属およびセラミックスからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の材料からなる部材等)、太陽電池用ガラス、農業用ビニールおよびガラスハウス、エアコン用室外機、VHF、UHF、BS、CS等のアンテナ等。」第15ページ第7~26行)
3h「 実施例1
テトラエトキシシラン50部、テトライソプロポキシシラン50部、酸性コロイダルシリカであるイソプロパノール分散オルガノシリカゾル(商品名「OSCAL1432」、触媒化成工業(株)製、固形分30%)100部に、希釈溶媒としてイソプロパノール75部を混合し、更に、水100部を添加し、撹拌した。得られた液を60℃恒温槽中で5時間加熱することにより、反応生成物である加水分解重縮合物の重量平均分子量(Mw)を1500~1800に調整して加水分解重縮合物のアルコール溶液を得た。
加水分解重縮合物のアルコール溶液の調製条件:
[図:0001415260000003.jpg]
この溶液に希釈溶媒としてさらにイソプロパノール1000部を添加混合することにより、無機塗料組成物(1)を得た。この塗料において、塗料全量に対する全固形分濃度は、4.1%であった。
調製して間もない無機塗料組成物(1)を、アセトンで洗浄したガラス基板にスプレー塗装法により塗布し、塗膜を室温下で0.5時間乾燥硬化させた後、150℃で1時間焼成することにより、親水性塗装品(1)を得た。なお、塗膜の硬化後の膜厚は0.2μmであった。
実施例2
テトラメトキシシラン10部、テトラエトキシシラン100部、酸性コロイダルシリカであるメタノール分散シリカゾル(商品名「MT-ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)30部に、希釈溶媒としてメタノール100部を混合し、更に、水60部を添加し、撹拌した。得られた液を60℃恒温槽中で5時間加熱することにより、反応生成物である加水分解重縮合物の重量平均分子量(Mw)を1800~2000に調整して加水分解重縮合物のアルコール溶液を得た。
加水分解重縮合物のアルコール溶液の調製条件:
[図:0001415260000004.jpg]
この溶液に、希釈溶媒としてイソプロパノール1000部を添加混合するとともに、光半導体材料として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィーンタイタニック11-1020G」)を、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体材料成分との合計100部に対し20部になる量添加混合することにより、無機塗料組成物(2)を得た。この塗料において、塗料全量に対する全固形分濃度は、4.7%あった。
調製して間もない無機塗料組成物(2)を、アセトンで洗浄したガラス基板にスプレー塗装法により塗布し、塗膜を室温下で0.5時間乾燥硬化させた後、150℃で1時間焼成することにより、親水性塗装品(2)を得た。なお、塗膜の硬化後の膜厚は0.2μmであった。」(第16ページ第13行~第17ページ第20行)
(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「【請求項1】
抗菌性金属化合物(A1)と、抗菌性を有しない非抗菌性無機化合物(AA)とを含む光触媒組成物であって、
前記非抗菌性無機化合物(AA)が、光触媒活性を有しない光触媒不活性無機化合物(A2)と、光触媒活性を有する光触媒活性無機化合物(B)とを含み、
前記抗菌性金属化合物(A1)の前記光触媒不活性無機化合物(A2)に対する質量比(A1/A2)が、0.001以上0.25以下であり、
前記光触媒活性無機化合物(B)が、以下の(i)の条件を満たすか、以下の(i)及び以下の(ii)両方の条件を満たす、光触媒組成物。
(i)前記光触媒活性無機化合物(B)を含む懸濁液に、波長380nm以下、強度5mW/cm2の紫外光を60秒間照射した際に発生する過酸化水素量([H2O2])が、80μM以下である;
(ii)前記光触媒活性無機化合物(B)を含む懸濁液に、波長380nm以下、強度5mW/cm2の紫外光を60秒間照射した際に発生するヒドロキシラジカル量[・OH]が、1.0μM以下である:」
4b「【0017】
本実施形態の抗菌性金属化合物(A1)に含まれる金属は、例えば、水銀、銀、金、パラジウム、白金、カドミウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、タリウム、鉛、マンガンなどの重金属が挙げられる。これらの金属は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの金属の中でも、安全性及び実用性が優れる観点から銅、銀、金、白金、及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、銅、銀、及び金からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。」
4c「【0025】
コロイダルシリカは、例えば、水性分散液に分散された状態で、酸性のコロイダルシリカであってもよく、塩基性のコロイダルシリカであってもよい。水を分散媒体とする酸性のコロイダルシリカとしては、市販品を用いることもでき、市販品としては、例えば、日産化学工業社製品「スノーテックス(商標)-OXS」、「スノーテックス-OS」、「スノーテックス-O」、「スノーテックス-O-40」、「スノーテックス-OL」及び「スノーテックス-OYL」、旭電化工業社製品「アデライト(商標)AT-20Q」、クラリアントジャパン社製品「クレボゾール(商標)20H12」及び「クレボゾール30CAL25」等が挙げられる。」
4d「【0054】
<フルオロカーボン界面活性剤(E)>
本実施形態の光触媒組成物は、さらにフルオロカーボン界面活性剤(E)を含むことが好ましい。本実施形態の光触媒組成物は、フルオロカーボン界面活性剤(E)を含むことにより、水系コーティング剤又は水系コーティング剤を含む水系塗料として用いて塗装する際、基材(例えば、有機基材)等に対する濡れ性がより一層向上し、はじき等による外観上の問題をより一層抑制できる傾向にあり、塗膜の均一性がより一層向上する傾向にある。この要因は、フルオロカーボン界面活性剤(E)を含むことにより、水系コーティング剤の表面張力を低下できることに起因すると考えられるが、本発明は、この要因に何ら限定されるものではない。
【0055】
フルオロカーボン界面活性剤(E)としては、特に限定されないが、例えば、両性界面活性剤などが挙げられ、少ない添加量で塗膜の均一性を向上できる観点から、両性界面活性剤であることが好ましい。両性界面活性剤としては、例えば、非イオン性両性界面活性剤、陰イオン性両性界面活性剤、陽イオン性両性界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に入手容易性の観点から、炭素数3~20のパーフルオロアルキル基を有する両性界面活性剤であることが好ましい。」
4e「【0060】
<退色性色素(F)>
本実施形態の光触媒組成物は、さらに退色性色素(F)含むことが好ましい。本実施形態の光触媒組成物は、退色性色素(F)を含むことにより、塗装忘れ、重複塗装、塗装むら等の問題を防ぐことができる。」
(5)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
5a「【0071】
[実施例6]
重合体粒子(B-2)水分散体100g(固形分10.0質量%)に、数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20質量%)187gと、シリカ30質量部被覆アナターゼ型酸化チタンゾル(C-1)、13gとを混合し攪拌することにより組成物(E-6)を得た。この組成物(E-6)中の重合体粒子(B-2)の総表面積は、二酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子及び重合体粒子の総表面積(100%)に対し、3%であった。
片面(裏面)に黒色印刷が施されたガラス板の別の片面(表面)にアクリルシリコーン樹脂を予め1μmの膜厚で塗工した10cm×10cmの基板を準備した。この基板の片面(アクリルシリコーン樹脂側の面)に上記組成物(E-6)をバーコート法にて塗布した。その後、塗布した組成物(E-6)を70℃で10分間乾燥することにより、基板上に塗膜が形成された試験板(F-6)を得た。この試験板(F-6)から塗膜を一部剥離し、その断面を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、二酸化ケイ素粒子により連続相が形成され、その連続相中に重合体粒子(B-2)及び酸化チタン粒子が分散している様子が確認できた。この試験板(F-6)の各種評価結果を表1に示す。」
(6)甲第6号証(以下、「甲6」という。)
6a「【請求項1】 基材表面に光半導体微粒子分散ゾルを塗布し、乾燥熱処理し、光触媒性を有する層を形成する工程と、金属アルコキサイドをさらにその表面に塗布し、乾燥熱処理する工程より成る光触媒性薄膜部材の製造方法において、金属アルコキサイドの部分加水分解・重縮合物の重量平均分子量(Mw)が300~1000であることを特徴とする光触媒性部材の製造方法。」
6b「【0016】分散溶媒としては、特に限定されないが、水単独又は、水と有機溶剤(低級脂肪族アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロパノール、n-ブタノール等、エチレングリコール誘導体としてエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル等、ジエチレングリコール誘導体として、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)との混合溶媒を用いることができる。本発明においては、水、ノルマルプロパノールの混合溶媒、水、メタノールの混合溶媒、水、メタノール、ノルマルプロパノールの混合溶媒が、コーティング時の成膜性、光半導体微粒子の分散安定性に優れ、適している。」
(7)甲第7号証(以下、「甲7」という。)
7a「【請求項1】
無機酸化物微粒子に抗菌消臭性能を有する金属成分を担持してなる平均粒子径1~500nmの抗菌消臭性無機酸化物微粒子と、アルコールとを含む水分散液であって、該アルコールの含有量が該抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに4.4×10-6~1.32×10-3mol/m2となる範囲にあることを特徴とする抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項2】
前記アルコールがメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項3】
抗菌性無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001~20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項4】
アルコール濃度が0.5~8重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項5】
前記無機酸化物微粒子が、酸化チタン微粒子またはシリカアルミナ微粒子であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。」
7b「【0002】
銀や亜鉛などの金属を修飾した酸化チタンやシリカアルミナなどの微粒子は、抗菌性能や消臭性能、また抗アレルゲンや抗ウイルス機能を有しており、各種の抗菌消臭剤に配合して用いられ、また抗菌、消臭や抗アレルゲン、抗ウイルスを目的として塗料、布、繊維製品、樹脂組成物などに配合して用いられている。
このような抗菌・消臭剤粒子の例として、特許文献1には抗菌性無機酸化物コロイド溶液が記載されている。」
(8)甲第8号証(以下、「甲8」という。)
8a「【請求項1】
光触媒粒子と銀ナノワイヤと分散媒とを含む、光触媒分散液。」
8b「【0002】
光触媒は、光によって励起された正孔を生じ、強い酸化反応を促進することが知られている。このような作用を有する光触媒としては種々のものが知られており、この促進作用は有害有機分子の分解除去や殺菌、基材の親水性維持等に利用されている。しかしながら光触媒による抗菌性は光が照射されていない場合には発現することが難しい。このような問題を解決するために、光が照射されていない場合にも抗菌性が発現し得るように、また光照射時にはプラズモン効果によって光吸収を増加させるために、銀ナノ粒子を光触媒に混合させた光触媒が知られている。」
8c「【0029】
実施形態による光触媒分散液は水分散液が好ましい。分散媒にアルコールを混入させることもできる。分散媒がアルコールを含むと、分散液の表面張力が低下して基材に塗布しやすくなる。アルコールとしてはエタノールもしくはメタノール、イソプロパノール等が好ましく、エタノールが安全性からはより好ましい。アルコールの含有量は、光触媒分散液の総質量を基準として、1~95質量%が好ましく、5~93質量%がより好ましく、10~90質量%がさらに好ましい。」
(9)甲第9号証(以下、「甲9」という。)
9a「【請求項1】
銀および銅並びに水酸化第四アンモニウムを含有する光触媒酸化チタンゾル。」
9b「【0002】
酸化チタンは紫外線を照射することにより酸化還元作用を発現し、有害物質を分解したり、抗菌性、超親水現象を示したりする光触媒効果を有することが知られており、この効果を利用した工業製品の開発が盛んに行われている。光触媒反応は酸化チタンの表面近傍における反応であるため、薄膜状にして利用されることが多く、酸化チタンの微粒子からなる酸化チタンゾルが薄膜形成材料として広く用いられている。
ところで、酸化チタンの光触媒効果は、その名の通り光のエネルギーによって発現することから、その効果は太陽光や紫外線ランプなどの光が照射されているときだけに限定されている。光触媒による効果の内、超親水性に起因する防汚性については連続的に紫外線が照射されずとも、間欠的な照射によって光触媒機能を有する膜表面の外観的な汚れは取り除くことができる。また、有害物質の分解においても、自然に増加しない物質であれば、間欠的な光照射で徐々に分解が進むことになる。しかしながら、抗菌性や脱臭効果については、光触媒効果が発現していない間に菌や臭気が増殖、拡大することから、効果を持続させるためには連続的な紫外線の照射が必要となる。空気清浄機や浄化装置に組み込まれた光触媒のように連続して光照射を行うことができる製品は常に光照射することができるが、屋内、屋外において用いられる建材やその他のアメニティー関連製品などは独自の光源を持たないため太陽光やランプがない暗所では光触媒が機能しないことになる。このことは、光触媒による有害物分解、防汚効果とともに抗菌性を期待する光触媒製品にとって大きな問題であり、光触媒への暗所での抗菌性や脱臭効果が強く切望されていた。
・・・
【0015】
本発明の光触媒酸化チタンゾルは、光触媒である酸化チタンと抗菌性金属として銀を含んでいるにもかかわらず、光照射による変色が僅少で、ゲル化や増粘が極めて少ないことが特徴である。本発明では銅と水酸化第四アンモニウムを巧みに利用することにより、抗菌性の高い銀を含有させることが可能となったため、暗所での銀単独での抗菌効果は勿論、従来の紫外線殺菌を行う用途等において、本発明の光触媒酸化チタンゾルとこれら紫外線殺菌装置等とを併用することにより、より有効な抗菌効果を得ることができる。」
(10)甲第10号証(以下、「甲10」という。)
10a「【請求項1】偏光フィルムに貼合する透明プラスチックフィルムの反対側の面に、
(1)分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体(a)、
(2)光重合開始剤(b)、
(3)有機溶剤に分散された超微粒子シリカ(c)とその超微粒子シリカを凝集させるに可能なアミン化合物(d)とから得られる凝集物を含有する艶消し被覆用光硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させてなる微細な表面凹凸を有する硬化被膜を設けたことを特徴とする防眩性に優れた偏光板。」(当審注:(1)~(3)は○に数字。)
10b「【0024】本発明において、コロイダルシリカ(c)はその超微粒子シリカの粒径は通常800nm以下、好ましくは5~600nm程度であり、その濃度は特に限定されるものではなく、例えば市販品として入手が容易な有機溶剤中に超微粒子シリカを約20~40重量%含有するものが使用できる。市販品のコロイダルシリカ(c)としては、例えば、有機溶剤がメチルアルコールである商品名メタノールシリカゾル[シリカ粒径:10~15nm、固形分:30重量%、日産化学工業(株)製]、商品名MA-ST-M[シリカ粒径:20~25nm、固形分:40重量%、日産化学工業(株)製]もしくは商品名OSCAL1132[シリカ粒径:10~20nm、固形分:30~31重量%、触媒化成工業(株)製]、該溶剤がエチルアルコールである商品名OSCAL1232[シリカ粒径:10~20nm、固形分:30~31重量%、触媒化成工業(株)製]、該溶剤がn-プロピルアルコールである商品名OSCAL1332[シリカ粒径:10~20nm、固形分:30~31重量%、触媒化成工業(株)製]、該溶剤がイソプロピルアルコールである商品名IPA-ST[シリカ粒径:10~15nm、固形分:30重量%、日産化学工業(株)製]もしくは商品名OSCAL1432[シリカ粒径:10~20nm、固形分:30~31重量%、触媒化成工業(株)製]、該溶剤がn-ブチルアルコールである商品名NBA-ST[シリカ粒径:10~15nm、固形分:20重量%、日産化学工業(株)製]もしくは商品名OSCAL1532[シリカ粒径:10~20nm、固形分:30~31重量%、触媒化成工業(株)製]、該溶剤がエチレングリコールである商品名EG-ST[シリカ粒径:10~15nm、固形分:20重量%、日産化学工業(株)製]、該溶剤がエチルセロソルブである商品名OSCAL1632[シリカ粒径:10~20nm、固形分:30~31重量%、触媒化成工業(株)製]、該溶剤がエチレングリコールモノn-プロピルエーテルである商品名NPC-ST[シリカ粒径:10~15nm、固形分:30重量%、日産化学工業(株)製]もしくは商品名NPC-ST-2[シリカ粒径:400~500nm、固形分:20重量%、日産化学工業(株)製]、該溶剤がジメチルアセトアミドである商品名DMAC-ST[シリカ粒径:10~15nm、固形分:20重量%、日産化学工業(株)製]もしくは商品名DMAC-ST-ZL[シリカ粒径:70~100nm、固形分:20重量%、日産化学工業(株)製]、該溶剤がキシレン及びn-ブチルアルコールの混合溶剤である商品名XBA-ST[シリカ粒径:10~15nm、固形分:30重量%、日産化学工業(株)製]、該溶剤がメチルイソブチルケトンである商品名MIBK-ST[シリカ粒径:10~15nm、固形分:30重量%、日産化学工業(株)製]等が挙げられる。コロイダルシリカ(c)は、これらの1種又は2種以上使用できる。」
(11)甲第11号証(以下、「甲11」という。)
11a「
[図:0001415260000005.jpg]
」(第26ページ上段第4~15行)
11b「
[図:0001415260000006.jpg]
」(第98ページ上段第12~17行)
(12)甲第12号証(以下、「甲12」という。)
12a「【請求項1】 主成分として結晶質酸化チタンと銅化合物とアルカノールアミンとを含有したゾル。」
12b「【0011】アルカノールアミン/銅化合物(CuO)モル比については、特段制約はないが、アルカノールアミン/銅化合物(CuO)モル比=1.7~5.8が好ましい。アルカノールアミン/銅化合物(CuO)モル比が低くなるのに従い、溶液はコロイド状を呈するようになり、アルカノールアミンで錯体化した銅化合物溶液は、コロイド状溶液を含む状態となる。アルカノールアミン/銅化合物(CuO)モル比が1.7未満になると、水酸化銅ゲルが溶解しにくくなる。また、モル比が5.8以上になると、アルカノールアミンで安定化された銅含有結晶質酸化チタン複合ゾルの安定性が悪くなる。加えて、理由は定かではないが、抗菌性能が低下する。
【0012】ところで、本発明者らが抗菌性成分として銅を選定した理由について言えば、多数ある無機系抗菌成分の内、先ず安全性の点から銀、銅、亜鉛に限定される。これらのうち銀イオンは、酸化チタンの光触媒による酸化反応が起こると、光還元を受け、黒色に変化するため汎用性がなく、また、酸化亜鉛は光溶解性があり、酸化チタンコロイドが凝集し、使用できなかった。銅の場合、光還元を受けにくく、銅本来の着色はあるものの、変色度は小さく、特に結晶質酸化チタンとの関係に於いて抗菌効果が優れ、アルカノールアミンの使用に於いて顕著な安定性を示した。本発明に使用するアルカノールアミンについて言えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが特に望ましい。
【0013】次に、本発明ゾルの主成分の含有割合について言えば、結晶質酸化チタン(TiO2として)と銅化合物(CuOとして)とアルカノールアミンとの重量割合が100:0.5~20:1~90であることが望ましい。銅化合物が0.5を下廻ると抗菌性が不充分となり、20を上廻ると着色が強くなるだけで抗菌効果は向上しなくなる。また、アルカノールアミンが1を下廻ると銅化合物溶液の安定性が悪く、沈降物が見られ、光触媒として必要な透光性に劣るようになり、90を上廻るとチタンゾルの安定性が悪くなり、透光性に劣るようになる。光触媒能及び抗菌性の観点から更に好ましくは100:2~18:3~80である。銅化合物について言えば、必ずしも明確な形態について言及できないが、アルカノールアミン中で安定に存在することから考えてその形態は銅イオン、酸化銅又は水酸化銅の形態をとっているものと推定される。
・・・
【0027】
【表2】
[図:0001415260000007.jpg]
」
(13)甲第13号証(以下、「甲13」という。)
13a「スノーテックス(R)はナノサイズのシリカ粒子が水中に分散した材料です。
多様な機能を活かし、紙・繊維・鉄鋼・鋳造・耐火物・電池・触媒バインダー・各種コーティング剤・電子基板材料や電子記録媒体の研磨剤など幅広い分野で使用されています。」
(14)甲第14号証(以下、「甲14」という。)
14a「
[図:0001415260000008.jpg]
」
(15)甲第15号証(以下、「甲15」という。)
15a「出発原料として、市販のTiO2ゾル(石原産業製、STS-11,固形分濃度15wt%)、及びSiO2ゾル(日産化学工業製、スノーテックス20,固形分濃度20wt%)を用いた。基材としてのタイルは、外装用施釉タイル(東陶機器製、AB02E11,サイズ約50×100mm)を用いた。」(第31ページ下から第4~2行)
(16)甲第16号証(以下、「甲16」という。)
16a「【請求項1】
銀系無機抗菌剤、変色防止剤、増粘剤、分散剤および分散媒を含有とする銀系無機抗菌剤分散液であって、銀系無機抗菌剤が銀系無機抗菌剤分散液100質量部に対し5~60質量部、増粘剤が銀系無機抗菌剤100質量部に対して0.1~10質量部であることを特徴とする銀系無機抗菌剤分散液。」
16b「【0017】
○分散剤
本発明で使用する分散剤に特に制限はないが、アルケニルコハク酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,アルキル硫酸エステル塩,高級アルコール硫酸エステル塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩,ジアルキルスルホサクシネート塩,アルキルリン酸エステル塩,リン酸エステル系共重合体,ポリカルボン酸型高分子界面活性剤などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル,有機変性オルガノポリシロキサンなどのノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、第四アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤、アルキルベタイン,アミドベタインなどのベタイン型両性界面活性剤、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、トリエタノ-ネアミンなどのポリアミンなどが例示できる。
好ましくは酸性官能基を含む共重合体(樹脂)を含む高分子系分散剤であり、基本骨格はエステル連鎖、ビニル連鎖、アクリル連鎖、エーテル連鎖およびウレタン連鎖などで構成されているものがより好ましく、分子中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。これらの中でもアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびアルキド樹脂が好ましく、特にアクリル樹脂とポリエステル樹脂が好適である。」
16c「【0023】
○用途
本発明の銀系無機抗菌剤分散液は抗菌性の付与が求められる様々な製品に利用可能である。例えば、繊維、不織布、シートなどは、本発明の分散液を水や水系エマルションなどで添加、希釈した加工液中に浸漬することにより抗菌剤を添着することが可能である。アクリル繊維などのように湿式紡糸法によって製造する繊維には、紡糸液や溶剤に本発明の分散液を添加することにより抗菌剤が練り込まれた繊維に加工することができる。また水性塗料に本発明の銀系無機抗菌剤分散液を混合することで抗菌性を有する塗料とすることができ、これを塗布することで様々な材料に簡単に抗菌性を付与することができる塗料となる。さらに、本分散液を水や各種水溶液などに希釈することで消毒剤やスプレーとすることも可能である。
分散液の添加量または希釈率は、必要とする性能により適宜選定することが必要である。例えば、繊維製品や塗料などに加工する場合は、銀系無機抗菌剤が0.01~1g/m2が加工製品に付着するように分散液を添加、希釈すればよい。湿式紡糸やウレタンスポンジなどのように樹脂中に銀系無機抗菌剤が練りこまれる場合には、樹脂固形分100質量部に対して本発明の銀系無機抗菌剤分散液を0.1~5質量部となるよう添加、希釈すればよい。
具体的な用途としては、肌着、ストッキング、シャツ、靴下、布団、布団カバー、座布団、毛布、じゅうたん、カーテン、ソファー、カーシート、エアーフィルター、壁紙などの各種繊維、不織布、紙製品、スポンジ、塗料、床用ワックスなどが挙げられる。」
3 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1には実施例1に「アナターゼ型チタニアゾル(大阪の石原産業、STS-11)とコロイダルシリカゾル(日産化学、スノーテックスO)と塩化白金酸六水和塩を混合した混合物であって、15cm四角の施釉タイル(東陶機器、AB02E01)の表面にスプレーコーティング法により塗布し、800℃の温度で1時間焼成し、タイル上にアナターゼ型酸化チタン70部とシリカ30部と白金1部からなる表面層を形成し、チタニアとシリカからなる被膜で被覆された試料を得るための混合物。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1d参照)。
(2)甲2に記載された発明
甲2には実施例1に「コロイダルシリカ(製品名:スノーテックスO、日産化学(株)製)25重量%、メチルトリメトキシシラン(製品名:A-163、日本ユニカー(株)製)25重量%、フェニルトリメトキシシラン(製品名:A-153、日本ユニカー(株))35重量%、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製)15重量%を蒸留水の存在下、液温25℃、20分間攪拌混合した後、真空吸引により脱アルコールを行ない、得られたバインダー100重量部とルチル型光触媒酸化チタン(製品名:SR-97、石原テクノ(株)製)100重量部を水200重量部に分散・混合することで得た、モルタルピース表面へ厚み30μmになるようスプレー塗装するためのコーティング用組成物。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる(摘記2c参照)。
(3)甲3に記載された発明
甲3に「光半導体材料は」「抗菌効果;防カビ効果等を得ることができる」ことが記載されている(摘記3d参照)ことも考慮すれば、甲3には実施例2において「テトラメトキシシラン10部、テトラエトキシシラン100部、酸性コロイダルシリカであるメタノール分散シリカゾル(商品名「MT-ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)30部に、希釈溶媒としてメタノール100部を混合し、更に、水60部を添加し、撹拌し、得られた液を60℃恒温槽中で5時間加熱することにより、反応生成物である加水分解重縮合物の重量平均分子量(Mw)を1800~2000に調整した、加水分解重縮合物のアルコール溶液に、希釈溶媒としてイソプロパノール1000部を添加混合するとともに、光半導体材料として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィーンタイタニック11-1020G」)を、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体材料成分との合計100部に対し20部になる量添加混合することにより得た、塗料全量に対する全固形分濃度が4.7%である、アセトンで洗浄したガラス基板にスプレー塗装法により塗布する、抗菌効果;防カビ効果等を得ることができる無機塗料組成物(2)。」(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる(摘記3h参照)。
4 対比・判断
(1)甲1発明を主引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲1発明との対比
甲1発明の「アナターゼ型チタニアゾル(大阪の石原産業、STS-11)」は本件特許発明1の「光触媒型酸化チタン(B)」に相当する。
甲1発明の「コロイダルシリカゾル(日産化学、スノーテックスO)」は、水分散コロイダルシリカであり(摘記4c、5a、13a参照)、酸性タイプの中粒子径シリカゾルであり(摘記14a参照)、甲1発明は他にシリカ粒子を含まないから、本件特許発明1の「無機系バインダー(A)」、「水を含み」、「前記無機系バインダー(A)は、酸性タイプであり」及び「前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子からなり」に相当する。
甲1発明の「タイル上にアナターゼ型酸化チタン70部とシリカ30部」は本件特許発明1の「前記無機系バインダー(A)に対する前記光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、0.5~5.0の範囲にあり」に相当する。
甲1発明の「混合物」は、15cm四角の施釉タイル(東陶機器、AB02E01)の表面にスプレーコーティング法により塗布しているから、本件特許発明1の「抗菌・抗ウイルスコーティング組成物」と「コーティング組成物」の限りにおいて一致する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「無機系バインダー(A)、光触媒型酸化チタン(B)及び水を含み、
前記無機系バインダー(A)は、酸性タイプであり、
前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子からなり、
前記無機系バインダー(A)に対する前記光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、0.5~5.0の範囲にある、
コーティング組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
コーティング組成物が、本件特許発明1では、水の含有率が、5質量%以上であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。
<相違点1-2>
コーティング組成物が、本件特許発明1では、アルコール(C)を含むのに対し、甲1発明ではアルコールを含まない点。
<相違点1-3>
コーティング組成物が、本件特許発明1では抗菌・抗ウイルスのものであるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。
<相違点1-4>
コーティング組成物が、本件特許発明1では室温乾燥に用いられるのに対し、甲1発明では800℃の温度で1時間焼成する点。
(イ)相違点についての検討
事案に、まず、<相違点1-4>について検討する。
甲1には甲1発明のアナターゼ型チタニアゾル(大阪の石原産業、STS-11)とコロイダルシリカゾル(日産化学、スノーテックスO)を含む混合物は、チタニアとシリカからなる被膜を得るために焼結することが記載されており(摘記1b参照)、焼結の代わりに、室温乾燥に用いられるものとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲2~甲16にも、甲1発明のアナターゼ型チタニアゾル(大阪の石原産業、STS-11)とコロイダルシリカゾル(日産化学、スノーテックスO)を含む混合物を室温乾燥に用いられるものとする動機付けとなる記載があるとはいえない。
(ウ)本件特許発明1の効果について
本件特許明細書の実施例の記載からみて、本件特許発明1のコーティング組成物は、焼結することなく、水ラビング耐性を有する抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成できるという効果を奏するから、室温乾燥に用いても、水ラビング耐性を有する抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成できるという効果を奏するといえ、本件特許発明1のそのような効果は、甲1発明のものと比較して、当業者の予測を超える顕著なものであるとはいえる。
(エ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和6年5月日提出の意見書において「確かに、今般の訂正請求により本件特許発明1、11及び13において、「室温乾燥」に関する発明特定事項が追加されたが、訂正請求後の本件特許発明が「室温乾燥」との限定により、抗菌・抗ウイルスコーティング組成物が室温乾燥に適した特別な構造等を意味するものと解釈することができないし、抗菌・抗ウイルスコーティング層が室温乾燥により形成されることで特別な構造等を意味するものと解釈することもできず、本件明細書の段落【0106】及び【0015】の記載から、抗菌・抗ウイルスコーティング組成物や抗菌・抗ウイルスコーティング層が室温乾燥に最適化された組成等を有するものでないことは明らかであり、室温乾燥が好ましいと読み取れる記載は存在しないし、本件明細書の実施例(本件明細書の段落【0128】)、熱を加えて短時間の間にシリカ微粒子と酸化チタンをガラス板に定着させるからこそ、耐久性が発揮できることを確認しているものの、室温乾燥という成り行きまかせの製造方法でシリカ微粒子と酸化チタンが対象基材に十分定着し、耐久性を発揮できるかどうか不明と言わざるを得ないため、「水ラビング耐性を有する抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成できる」との主張は明らかに失当であるし、上記主張は、室温乾燥であっても水ラビング耐性を有することを主張しているだけであって、室温乾燥が特に優れているとの主張にはなっていない。つまり、高温で加熱する場合と比較して室温で乾燥することが優れていることの証拠がないため、仮に当該効果主張を参酌するとしても、当業者の予測を超える程度の効果を奏するとは認められないと主張する。
しかし、本件特許発明1の抗菌抗ウイルスコーティング組成物は室温乾燥に用いられるとしてその用途が特定され、一方、甲1発明の混合物は焼結で用いられ、両者はその用途において相違するところ、さらに、本件特許発明1は抗菌・抗ウイルスコーティング層が室温乾燥により形成されることで、甲1発明の焼結されたものとは構造も相違することは明らかである。
そして、本件特許明細書の段落【0106】には本件特許発明1の抗菌抗ウイルスコーティング組成物が室温で乾燥できることは明記されているし、段落【0015】の記載は、固形分の定義についての記載であり、本件特許発明1の抗菌抗ウイルスコーティング組成物の使用に関する記載ではない。
また、本件特許発明は室温乾燥のみを行った場合であっても、水ラビング耐性を有する抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成できるか否かについては、進歩性の判断に関係はないが、本件特許明細書の実施例の記載において100℃で10分乾燥してそのような抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成できることが記載され、室温で長く乾燥すれば、同様の抗菌・抗ウイルスコーティング層を形成できることは明らかである。
確かに、特許権者の本件特許発明1の抗菌抗ウイルスコーティング組成物室温乾燥が特に優れているとの主張にはなっていないかもしれないが、本件特許発明1の効果については前記(ウ)のとおりである。
よって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
(オ)小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点1-1>~<相違点1-3>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2~16
本件特許発明2~16は、本件特許発明1を引用し、あるいは、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1-4>と同じの相違点を有するものであるから、本件特許発明2~16は、甲1に記載された発明及び甲2~甲16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)甲2発明を主引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲2発明との対比
甲2発明の「コロイダルシリカ(製品名:スノーテックスO、日産化学(株)製)」は、水分散コロイダルシリカであり(摘記4c、5a、13a参照)、酸性タイプの中粒子径シリカゾルであるから(摘記14a参照)、本件特許発明1の「無機系バインダー(A)」、「前記無機系バインダー(A)は、酸性タイプであり」及び「前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子」に相当し、甲2発明の「ルチル型光触媒酸化チタン(製品名:SR-97、石原テクノ(株)製)」は本件特許発明1の「光触媒型酸化チタン(B)」に相当する。
甲2発明の「水200重量部」は、甲2発明のコーティング組成物中水の含有量は50質量%(100×200/(100+100+200))であるから、本件特許発明1の「水を含み」及び「水の含有率が、5質量%以上である」に相当する。
甲2発明の「常温で5日間乾燥硬化させる」は本件特許発明1の「室温乾燥に用いられる」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「無機系バインダー(A)、光触媒型酸化チタン(B)及び水を含み、
前記無機系バインダー(A)は、酸性タイプであり、
前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子であり、
前記無機系バインダー(A)に対する前記光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、0.5~5.0の範囲にあり、
水の含有率が、5質量%以上であり、
室温乾燥に用いられる、
コーティング組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
コーティング組成物が、本件特許発明1では、アルコール(C)を含むのに対し、甲2発明ではアルコールを含まない点。
<相違点2-2>
コーティング組成物が、本件特許発明1では抗菌・抗ウイルスのものであるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。
<相違点2-3>
コーティング組成物が、本件特許発明1では、前記無機系バインダー(A)に対する前記光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、0.5~5.0の範囲にあるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。
<相違点2-4>
無機系バインダー(A)が、本件特許発明1ではシリカ微粒子からなるのに対し、甲2発明ではコロイダルシリカ(製品名:スノーテックスO、日産化学(株)製)25重量%、メチルトリメトキシシラン(製品名:A-163、日本ユニカー(株)製)25重量%、フェニルトリメトキシシラン(製品名:A-153、日本ユニカー(株))35重量%、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製)15重量%を蒸留水の存在下、液温25℃、20分間攪拌混合した後、真空吸引により脱アルコールを行ない、得られたものである点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点2-4>について検討する。
そして、甲2には甲2発明のコーティング組成物において、シリコーン系バインダー(D)は、コロイダルシリカ(A)と、下記の一般式(1)で示されるアルコキシシラン類の2種以上からなる混合物(B)と、下記の一般式(2)で示されるテトラアルコキシシラン(C)とを反応させて得られるものであることが記載されており(摘記2a参照)、コロイダルシリカ(A)からなるものとする記載はないから、コロイダルシリカ(製品名:スノーテックスO、日産化学(株)製)からなるものとして、シリカ微粒子からなるものとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲1及び甲3~甲16にも甲2発明のコーティング組成物において、シリコーン系バインダー(D)コロイダルシリカ(A)からなるものとする記載はないから、コロイダルシリカ(製品名:スノーテックスO、日産化学(株)製)からなるものとして、シリカ微粒子からなるものとする動機付けとなる記載はない。
(ウ)本件特許発明1の効果について
本件特許明細書の実施例からみて、本件特許発明1は、無機系バインダー(A)がシリカ微粒子からなるものとしても、水ラビング耐久性を有し、良好な抗菌・抗ウイルス性を維持できるという効果を奏するものであり、本件特許発明1により奏される効果は、無機系バインダーがシリカ微粒子からなるものではない甲2発明から当業者が予測できない顕著なものであるとはいえる。
(エ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和6年5月10日提出の意見書において「「前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子からなり」という表現は、
(a)無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子のみを含む
(b)無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子を含む(他の成分を含んでもよい)
(c)無機系バインダー(A)は、主成分としてシリカ微粒子のみを含むのいずれを表す表現であるのかが判然としない。
・・・
以上のとおり、無機系バインダー(A)をシリカ微粒子のみに限定し、他の有効成分を含まないことを意図するのであれば、「前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子のみからなり」のように「のみ」等の明確な限定を意味する用語を使用しなければならないところ、特許権者による訂正では、明確な限定を意味する用語を使用しておらず、「前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子からなり」という表現は、上記(a)~(c)のうち(b)を意味しており、他の成分を排除しない表現であると考えるべきである。
よって、今回の訂正によっても無機系バインダー(A)としてシリカ微粒子のみに限定されたとは言えず、他のシリカ化合物を含むことを排除されていないため、特許権者の主張に理由はなく、取消理由通知の判断を左右するものではない。」と主張する。
しかし、本件訂正により「シリカ微粒子であり」が「シリカ微粒子からなり」と特定され、特許権者の令和6年3月22日提出の意見書においても「本件特許発明では、無機系バインダー(A)がシリカ粒子からなることを規定しており(本件・請求項1)、かかる記載は、無機バインダーとして機能し得る化合物としては、シリカ微粒子のみを含むことを意図しております。」と主張していることから、前記(a)~(c)のうち(b)を意味していることは明らかであり、今回の訂正によっても無機系バインダー(A)としてシリカ微粒子のみに限定されたといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、前記(ア)の<相違点2-4>の点で相違し、<相違点2-4>については前記(イ)のとおりであり、<相違点2-4>に基づく本件特許発明1の効果も前記(ウ)のとおりである。
そうすると、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
(オ)小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点2-1>~<相違点2-3>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2~16
本件特許発明2~16は、本件特許発明1を引用し、あるいは、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2発明との<相違点2-4>と同じの相違点を有するものであるから、本件特許発明2~16は、甲1に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)甲3発明を主引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲3発明との対比
甲3発明の「酸性コロイダルシリカであるメタノール分散シリカゾル(商品名「MT-ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)」は、バインダーであるシリカレジンに含まれるものであるから(摘記3b参照)、本件特許発明1の「無機系バインダー(A)」、「前記無機系バインダー(A)は、酸性タイプであり」及び「前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子」に相当し、甲3発明の「光半導体材料として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィーンタイタニック11-1020G」)」は本件特許発明1の「光触媒型酸化チタン(B)」に相当するから、甲3発明の「テトラメトキシシラン10部、テトラエトキシシラン100部、酸性コロイダルシリカであるメタノール分散シリカゾル(商品名「MT-ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)30部に、希釈溶媒としてメタノール100部を混合し、更に、水60部を添加し、撹拌し、得られた液を60℃恒温槽中で5時間加熱することにより、反応生成物である加水分解重縮合物の重量平均分子量(Mw)を1800~2000に調整した、加水分解重縮合物のアルコール溶液に、希釈溶媒としてイソプロパノール1000部を添加混合するとともに、光半導体材料として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィーンタイタニック11-1020G」)を、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体材料成分との合計100部に対し20部になる量添加混合することにより得た」は、「酸性コロイダルシリカであるメタノール分散シリカゾル(商品名「MT-ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)」に対する「光半導体材料として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィーンタイタニック11-1020G」)」の質量比は3.3(20/(30×0.3×80)/(10+100+30×0.3))であるから、本件特許発明1の「前記無機系バインダー(A)に対する前記光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、0.5~5.0の範囲にあり」に相当する。
甲3発明の「希釈溶媒としてイソプロパノール」は本件特許発明1の「アルコール(C)」に相当する。
甲3発明の「無機塗料組成物(2)」は本件特許発明1の「コーティング組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明は、「無機系バインダー(A)、光触媒型酸化チタン(B)、アルコール(C)及び水を含み、
前記無機系バインダー(A)は、酸性タイプであり、
前記無機系バインダー(A)は、シリカ微粒子であり、
前記無機系バインダー(A)に対する前記光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、0.5~5.0の範囲にある、
抗菌コーティング組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1では、水の含有率が、5質量%以上であるのに対し、甲3発明では、水を含むものの、その含有量は不明である点。
<相違点3-2>
コーティング組成物が、本件特許発明1では抗菌・抗ウイルスであるのに対し、甲3発明は、抗菌のものではあるが、抗ウイルスのものかどうかは不明である点。
<相違点3-3>
コーティング組成物が、本件特許発明1では室温乾燥に用いられるのに対し、甲3発明では、室温下で0.5時間乾燥硬化させた後、150℃の温度で1時間焼成する点。
<相違点3-4>
無機系バインダー(A)が、本件特許発明1ではシリカ微粒子からなるのに対し、甲3発明ではテトラメトキシシラン10部、テトラエトキシシラン100部、酸性コロイダルシリカであるメタノール分散シリカゾル(商品名「MT-ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)30部に、希釈溶媒としてメタノール100部を混合し、更に、水60部を添加し、撹拌し、得られた液を60℃恒温槽中で5時間加熱することによる、反応生成物である加水分解重縮合物である点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点3-4>について検討する。
そして、甲3には甲3発明の無機塗料組成物において、シリコーンレジンは無機塗料組成物のバインダー成分であり、シリカはシリコーンレジンの調製の際に用いられる反応溶媒中にコロイダルシリカの形で分散させておくことで塗料に導入するか、シリカ抜きで調製して得られたシリコーンレジンにシリカを混合した後、得られた混合物を塗料に導入してもよいし、あるいは、シリカをシリコーンレジンとは別途に塗料に導入してもよいことが、記載されており(摘記3a、3b参照)、バインダー成分をシリカからなるものとする記載はないから、酸性コロイダルシリカであるメタノール分散シリカゾル(商品名「MT-ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)からなるものとして、シリカ微粒子からなるものとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲1、甲2及び甲4~甲16にも甲3発明の無機塗料組成物において、シリコーン系バインダー(D)コロイダルシリカ(A)からなるものとする記載はないから、酸性コロイダルシリカであるメタノール分散シリカゾル(商品名「MT-ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)からなるものとして、シリカ微粒子からなるものとする動機付けとなる記載はない。
(ウ)本件特許発明1の効果について
前記(2)ア(ウ)と同じ理由で、本件特許発明1により奏される効果は、無機系バインダーがシリカ微粒子からなるものではない甲3発明から当業者が予測できない顕著なものであるとはいえる。
(エ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和6年5月10日提出の意見書において前記(2)ア(エ)と同様の主張をしており、前記(2)ア(エ)のとおり、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
(オ)小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点3-1>~<相違3-3>について検討するまでもなく、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲2及び甲4~16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2~16
本件特許発明2~16は、本件特許発明1を引用し、あるいは、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲3発明との<相違点3-4>と同じの相違点を有するものであるから、本件特許発明2~16は、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲2及び甲4~16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第6 前記第4における理由2(サポート要件)について
1 判断
本件特許発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0003】~【0008】段落に記載のとおり、従来の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物では抗菌性又は抗ウイルス性の持続性や、被塗物に十分定着せず耐久性に問題があったことから、水ラビング性を有し、さらに貯蔵安定性及び塗装時の作業性が良好な抗菌・抗ウイルスコーティング組成物を提供することである。
ここで、本件特許明細書の【0127】及び【0141】には、酸性タイプのST-O、ST-OUP、ST-PS-SO、ST-OXS及びST-OLを使用した実施例では前記課題を解決できることが記載されており、ST-Cを使用した比較例4では、コーティング組成物の貯蔵安定性の評価が「×」であり、本件特許発明の課題を解決することができないことが記載されている。
そして、前記「酸性タイプ」について本件特許明細書【0014】には「酸性タイプとは、無機系バインダー(A)が酸性領域にある際に安定に存在し得るものをいう。」と記載され、酸性領域がpH2.0~5.0であることも記載されているところ、確かに、第4 理由2における甲第13号証に記載のグラフにおいて、ST-Cは酸性領域であるpH2.0~5.0において良好な安定性を有することを読み取ることができるかもしれないが、安定性についてST-Oとの比較はされておらず、一方、特許権者が令和6年5月10日提出の意見書とともに提出した乙第3号証(以下、「乙3」という。)である特許権者による実験成績証明書において、ST-CはpH2.20及びpH2.60でゲル化することが示されており、ST-Cは、必ずしも、酸性領域であるpH2.0~5.0にある際に安定に存在し得るものとはいえないから、前記本件特許明細書【0014】の記載からみて、ST-Cは酸性タイプとはいえない。
そうすると、本件特許発明1~16はその全範囲においては、課題を解決することができないものとはいえず、本件特許発明1~16はサポート要件を満たさないとはいえない。
2 特許異議申立人の主張及び当審の判断
特許権者は、令和6年5月10日提出の意見書において、乙3の実験成績書では本件特許明細書に記載のない酸性タイプの判別方法を補うものであるから、審査基準に照らしサポート要件の判断において実験成績書を参酌することは許されず、仮に、百歩譲って乙3の実験成績書を参酌できると仮定したとして、無機系バインダー(A)が酸性タイプか否かを判断するための適正な実験として採用することはできないものであり、乙3の実験成績書ではST-OがpH3.0~5.0程度での安定性は不明であるし、前記意見書とともに提出され甲第17号証(以下、「甲17」という。)の下記スライドに基づいて、本件特許発明の出願日前のST-OとST-Cは酸性領域において安定であったことに疑いはないと主張する。
[図:0001415260000009.jpg]
しかし、本件特許明細書【0014】には「酸性タイプ」は酸性領域で安定であることが記載されているところ、乙3の実験成績証明書はその記載を確認するものであるからサポート要件の判断において実験成績書を参酌することはできるし、ST-CはpH2.20及びpH2.60でゲル化することが示されている以上、適正な実験として採用できないものではないし、甲17の前記スライドにおいてST-OはpH4~5でも安定であることが示されているから、乙3で示されるpH2.10及びpH2.69での安定性と同等の安定性を示し、pH3.0~5.0程度での安定性も同等であると考えるのが自然であり、前記甲17はST-Cの前記乙3の実験成績証明書に示されるpH2.20及びpH2.60での安定性を示すものではなく、酸性領域(pH2.0~5.0)全般において、ST-Oは安定であるが、ST-Cは酸性領域全般で安定であったとはいえない。
よって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
当審が取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は理由1~3である。
理由1(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項5~7に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
請求項1には、無機系バインダー(A)が、「酸性タイプ」である旨、及び「シリカ微粒子である」旨の特定がなされている。
本件明細書の【0014】段落によれば、「酸性タイプのものを用いることにより、コーティング組成物は安定に存在し得る。ここで、コーティング組成物が安定であるとは、例えば、コーティング組成物を静置した場合に、無機系バインダー(A)や光触媒型酸化チタン(B)等の沈降が生じにくいことをいう。言い換えると、コーティング組成物の貯蔵安定性が良好である。」と記載されているように、無機系バインダー(A)が酸性タイプであることは、課題解決に直結する本件特許発明の根幹を構成する。
そのうえで、本件明細書の【0014】段落には、「酸性タイプとは、無機系バインダー(A)が酸性領域にある際に安定に存在し得るものをいう。例えば、後述するシリカ微粒子の懸濁液であれば、酸性タイプとは、酸性領域(例えば、pH2.0~5.0)においてゲル化しにくいことをいう。」と記載されている。しかしながら、本件明細書には、何をもってゲル化しにくいと言えるのか、その指標が全く記載されておらず、定性的である。しかも、本件明細書において、実施例で使用されている自称「酸性タイプ」のシリカ微粒子は、(A1)~(A5)に示されるコロイダルシリカであるが、これらのコロイダルシリカが酸性領域においてゲル化しにくいのかどうか、何らの情報もないため、本件明細書中の実施例1~20が本件特許発明を充足するのかどうかが曖昧であるため、「酸性タイプ」の意味するところが曖昧であり、その結果、本件特許発明の外延が不明確である。
しかも、本件明細書によれば、日産化学社製のST-Cは中性タイプであり、「酸性タイプではない」との分類がなされている。しかしながら、甲第13号証(日産化学株式会社のホームページ)によれば、ST-Cの粒子表面はAlで処理されており、pHの変化に対して安定であると記載されており、つまり、どのpH範囲であっても安定であることが記載されている。甲第13号証に記載の以下のグラフからも、ST-Cは酸性領域(pH2.0~5.0)において、別の商品ST-30における安定域と同定の安定性を有することが読み取ることができるため、中性タイプと分類されてはいても、ST-Cは酸性領域(例えば、pH2.0~5.0)において安定であり、ゲル化しにくいという本件特許発明における「酸性タイプ」の要件を満たしていることが明らかである。
[図:0001415260000010.jpg]
理由2(サポート要件)本件特許の請求項1~16に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(1)抗菌・抗ウイルス性
本件明細書では、抗菌性をJIS R 1752(2020)で、抗ウイルス性をJIS R 1756(2020)で判定しているところ、いずれも20Wの白色蛍光灯ネオラインFL20S・W(東芝ライテック社製)を光源として用い、紫外線カットフィルターN-169(日東樹脂工業社製)を通して、380nm以上の可視光を、照度500ルクスで照射して、菌やウイルスの活性状況を基に抗菌性や抗ウイルス性を判定している。
ここで本件特許発明1のコーティング組成物は、光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンのみからなる構成を含むところ、酸化チタンが酸化還元作用を発現し抗菌作用を奏するのは酸化チタンに紫外線を照射した場合であることが当業者の技術常識である(必要があれば、甲第1号証の【0013】段落、甲第3号証の6ページ25~7ページ2行目、甲第6号証の【0002】段落、甲第9号証の【0002】段落等参照)。すると、光触媒型酸化チタン(B)として酸化チタンのみを用いたコーティング組成物では、紫外線がカットされた380nm以上の可視光では抗菌性や抗ウイルス性を発揮することができず、抗菌性及び抗ウイルス性を有するコーティング組成物を提供するという本件特許発明の課題を解決することができないのは明らかである。
また、光触媒型酸化チタン(B)として酸化チタンのみを用いたコーティング組成物でも紫外線を含む太陽光が照射された場合は、抗菌性や抗ウイルス性を発揮することが可能であると考えることができたとしても、本件特許発明の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物は、金属基材、プラスチック基材、無機材料基材等様々な基材を被塗物とすることができ、車両、航空機、移動手段、建築物、家具類、家電類、設備類等様々な物の内外装に適用可能と記載されている(【0107】~【0112】段落)。すると、本件特許発明の抗菌・抗ウイルスコーティング組成物が塗布された物は、その全てが、常時太陽光が照射される環境にはないため、甲第9号証の【0002】段落や甲第11号証の98ページに記載のとおり太陽光が照射していない間に菌が増殖・拡大して、コーティング層が菌で覆われてしまうと酸化チタンに太陽光があたらず、継続的に抗菌性及び抗ウイルス性を発揮できなくなり、本件特許発明の課題を解決することができないのは明らかである。
なお、本件明細書の実施例1~20は抗菌性及び抗ウイルス性を有する結果となっているが、実施例1~20の光触媒型酸化チタン(B)には酸化チタンの他に光の照射に関係なく抗菌性能を発揮できる銀及び銅が含まれており、これらの実施例をもって銀や銅を含まない酸化チタンのみの場合でも実施例と同等の抗菌・抗ウイルス効果を奏するとは当業者が理解できないことは明らかである。
さらには、本件特許発明1では、無機系バインダー(A)に対する前記光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、0.5~5.0の範囲にすることが規定され、本件明細書の【0043】段落にはこの数値範囲にすることにより、コーティング層が抗菌性及び抗ウイルス性を示すと記載され、質量比[(B)/(A)]が0.6の実施例12では抗菌性及び抗ウイルス性を有し、0.4の比較例2では抗菌性は有するものの抗ウイルス性を有しない結果となっている。これらを比較すると、質量比[(B)/(A)]を0.5以上にすることにより、抗菌性と抗ウイルス性を担保できると理解できるが、両方とも光触媒型酸化チタン(B)として酸化チタンの他に銀と銅を含むものである。ここで、光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンのみから構成される場合は、銀や銅を含む場合より抗菌性や抗ウイルス性が低下するのは明らかであるところ、質量比[(B)/(A)]が0.5、換言すれば酸化チタンより無機系バインダーであるコロイダルシリカが2倍も多い場合に、抗菌性及び抗ウイルス性を発揮できるかどうか、当業者は理解できない。むしろ、特許権者も令和3年12月2日付意見書で自認しているとおり、コロイダルシリカは不透明乃至半透明であり(4ページ下から7行目)、また甲第11号証の96ページに記載のとおりバインダーが多いと、酸化チタンがその中に埋もれて光が当たらなくなってしまうことから、酸化チタンの他に銀や銅を含む実施例と同様の抗菌性や抗ウイルス性を発揮できないのは明らかであり、酸化チタン単独の場合は質量比[(B)/(A)]を0.5以上程度としたのでは不十分であり、課題を解決することができないことは自明である。
以上のとおり、本件特許発明1には課題を解決できない構成を含んでおり、サポート要件を従属しないことは明らかである。また、本件発明1を引用し、光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンのみの構成を含む本件特許発明2-3及び5-12もサポート要件を充足していないことは明らかである。
(2)貯蔵安定性
本件特許発明の課題の一つに抗菌・抗ウイルスコーティング組成物の貯蔵安定性があり、本件明細書では40℃で14日間静置後のコーティング組成物の状態を目視観察し、分離及び/又は沈降が生じなかったか否かで貯蔵安定性を判断している。また、本件明細書には光触媒型酸化チタン(B)には酸化チタンの他に、銀や銅を含んでもよいことが記載されている(【0036】~【0041】段落)ことから、本件特許発明1の光触媒型酸化チタン(B)として、酸化チタンと銀が含まれる場合や酸化チタンと銅が含まれる構成が包含されることとなる。
まず、光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンと銀から構成される場合、甲第9号証によると、酸化チタンに銀を混合した場合、銀成分が還元を受けて酸化チタンゾルが黄色から茶色に着色し、銀成分の沈殿が生じるようになり、保存安定性に欠けることが記載されており(甲第9号証の【0004】段落)、保存安定性を確保するために、銀の他に銅及び水酸化第四アンモニウムを含有させる必要があるとされている(甲第9号証の請求項1、【0015】段落)。
また、光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンと銅から構成される場合、甲第12号証には、酸化チタンと銅の他に所定量のアルカノールアミンを添加しないと酸化チタンゾルの安定性が悪くなると記載されており(甲第12号証の【0011】~【0013】段落)、酸化チタンと銅のみからなる比較例4の酸化チタンゾルは1日で酸化チタンが沈殿したことが記載されている(甲第12号証の【0027】段落の表2)。
さらに、本件明細書の実施例の光触媒型酸化チタン(B)は酸化チタン、銀、銅及び水酸化テトラエチルアンモニウムから成る組成物を使用しており、この組み合わせは甲第9号証において安定性が確認されたものであるから、この実施例をもって、前記酸化チタンと銀又は銅単独の組み合わせや、酸化チタン単独の場合でも実施例同等の保存安定性を有することを当業者が理解できないことは明らかである。
しかも、特許権者自身も、本件明細書中で、「光触媒型酸化チタン(B)が、銀、銅及び水酸化第四アンモニウムを含有する酸化チタンゾルである場合に、銀の変色を大幅に抑えることができる。」(本件明細書の【0041】段落)と記載しており、換言すれば、光触媒型酸化チタン(B)が、銀、銅及び水酸化第四アンモニウムを含有する酸化チタンゾルでない場合は、銀の変色を大幅に抑えることができないこととなるため、貯蔵安定性の観点から、光触媒型酸化チタン(B)が、銀、銅及び水酸化第四アンモニウムを含有する必要性があることを特許権者自身が自認している。
さらには、本件明細書中では、「光触媒酸化チタンゾルに対してTiO2として3~15質量%の範囲であることが好ましい。上記範囲内にあることで、酸化チタンゾルに沈降、増粘等が無く、貯蔵安定性を良好にでき、」(本件明細書の【0035】段落)との記載があるとおり、光触媒酸化チタンゾルに対してTiO2として3~15質量%の範囲であるからこそ、貯蔵安定性を良好にできることを特許権者自身が自認している一方、本件特許発明1では、TiO2の含有量がごく微量(例えば1分子程度)である場合も包含される。
また、本件明細書には、「ゾルを不安定化する硝酸イオンや塩素イオンを含まない」(本件明細書の【0041】段落)との記載があるが、本件特許発明1は、ゾルを不安定化する硝酸イオンや塩素イオンを包含し得る構成であるため、保存安定性に劣る構成が包含されることは明らかである。本件明細書の実施例においても、ろ過水洗することで塩素イオンを除去しているし、酸化チタン、酸化銀、水酸化銅、水酸化テトラエチルアンモニウムが使用されており、ゾルを不安定化する硝酸イオンや塩素イオンを含まないように調整されているため、ゾルを不安定化する硝酸イオンや塩素イオンを含んでいても課題を解決できるほどの貯蔵安定性を有するとは想定されない。
したがって、光触媒型酸化チタン(B)として酸化チタンと銀又は酸化チタンと銅から構成される場合は、保存安定性が劣ることが明らかであり、また酸化チタン単独の場合に実施例同等の保存安定性を有するか否か不明であるうえに、銀、銅及び水酸化第四アンモニウムを含有する酸化チタンゾルでない場合は、銀の変色を大幅に抑えることができず、光触媒酸化チタンゾルに対してTiO2として3~15質量%の範囲としない場合は貯蔵安定性を良好にできず、硝酸イオンや塩素イオンを含む場合はゾルが不安定になることから、「銀、銅及び水酸化第四アンモニウムをいずれも含有し、光触媒型酸化チタン(B)の含有量が光触媒酸化チタンゾルに対してTiO2として3~15質量%の範囲であり、且つ、硝酸イオンや塩素イオンを含まない」ことを特定していない本件特許発明1はサポート要件を充足していない。また、本件特許発明1を引用し、光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタン単独、酸化チタン及び銀又は酸化チタン及び銅の構成を含む本件発明2-3及び5-16、銀、銅及び水酸化第四アンモニウムを含有することは特定するが、硝酸イオンや塩素イオンを含まないことを特定しない本件特許発明4もサポート要件を充足していないことは明らかである。
理由3(実施可能要件)本件特許の請求項1~16に係る出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許法第36条第4項の規定に違反してされたものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
本件明細書中の比較例4は、本件特許発明における「酸性タイプ」の要件を満たしている「ST-C」を使用しており、また、その他の発明特定事項も満たしているにもかかわらず課題を解決することができていないことから、どのようにすれば、本件特許発明を実施することができるのかを理解することができないため、本件特許発明1-16は、実施可能要件を満たさない。
光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンのみからなる構成を包含しており、銀や銅を含まない構成も包含される本件特許発明1-3及び5-12については、どのようにすれば、本件特許発明を実施することができるのかを理解することができないため、本件特許発明1-3及び5-12は、実施可能要件を満たさない。
光触媒型酸化チタン(B)が「銀、銅及び水酸化第四アンモニウムをいずれも含有し、光触媒型酸化チタン(B)の含有量が光触媒酸化チタンゾルに対してTiO2として3~15質量%の範囲であり、且つ、硝酸イオンや塩素イオンを含まない」ことを特定していない本件特許発明1-16については、どのようにすれば、本件特許発明を実施することができるのかを理解することができないため、本件特許発明1-16は、実施可能要件を満たさない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
(1)理由1(明確性要件)について
本件特許明細書【0014】に記載されるものとして「酸性タイプ」なる特定は明確であるし、前記第5で判断したとおりST-Cは「酸性タイプ」のものとはいえないから、本件特許発明の外延が不明確とはいえない。
(2)理由2(サポート要件)について
ア 抗菌・抗ウイルス性
本件特許明細書の実施例の記載からみて、本件特許発明1は、光触媒型酸化チタン(B)が銀を含む場合、紫外線がカットされた380nm以上の可視光で抗菌性や抗ウイルス性を発揮することが理解でき、本件特許発明1は、光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンのみからなる構成を含むところ、酸化チタンが酸化還元作用を発現し抗菌作用を奏するのは酸化チタンに紫外線を照射した場合であることが当業者の技術常識であるから、酸化チタンに紫外線を照射した場合に、抗菌性や抗ウイルス性を発揮し、前記第5 1に記載の前記課題を解決できることは理解できる。
本件特許発明1は、光触媒型酸化チタン(B)が銀を含む場合、常時太陽光が照射される環境にはなくても、抗菌性や抗ウイルス性を発揮することが可能であると理解でき、本件特許発明1が光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンのみからなる場合であっても、常時太陽光が遮断される環境でない限り、抗菌性や抗ウイルス性を発揮することが可能であると理解できる。
確かに、銀や銅を含まない酸化チタンのみの場合でも、実施例と同等の抗菌・抗ウイルス効果を奏するとはいえないとしても、前記第7(1)に記載のとおり、光触媒型酸化チタンに紫外線を照射した場合に、抗菌性や抗ウイルス性を発揮できることは技術常識であるといえる。
本件特許明細書の実施例の記載から、本件特許発明1の光触媒型酸化チタン(B)が銀を含む場合、質量比[(B)/(A)]を0.5以上にすることにより、抗菌性と抗ウイルス性を担保できると理解でき、光触媒型酸化チタン(B)が銀を含まない場合であっても、質量比[(B)/(A)]を0.5以上であれば、それ以下のものと比較して、光触媒型酸化チタン(B)が銀を含む場合より劣るとしても、抗菌性と抗ウイルス性を担保できると理解できるといえる。
以上のとおり、本件特許発明1及び本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~16は、課題を解決できない構成を含んでいるとはいえず、サポート要件を充足しないとはいえない。
イ 貯蔵安定性
本件特許明細書の実施例の記載からみて、本件特許発明1の光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンと銀及び銅から構成される場合、水酸化テトラエチルアンモニウムを含むことにより、貯蔵安定性は良好であることが理解でき、水酸化テトラエチルアンモニウムが含まれない場合であっても、同様に、水酸化テトラエチルアンモニウムを含む場合より多少劣るとしても、貯蔵安定性は良好であることが推認でき、前記課題を解決できない程度に貯蔵安定性が悪くなるとはいえず、特許異議申立人は、水酸化テトラエチルアンモニウムが含まれない場合に、前記課題を解決できない程度に貯蔵安定性が悪くなることを実証しているわけではない。
また、本件特許発明1は、そもそも、ゾルを不安定化するほど硝酸イオンや塩素イオンを含むものを想定しておらず、硝酸イオンや塩素イオンが多少含まれている場合でも、前記課題を解決できない程度に貯蔵安定性が悪くなるとはいえず、特許異議申立人は、水硝酸イオンや塩素イオンが多少含まれている場合に、前記課題を解決できない程度に貯蔵安定性が悪くなることを実証しているわけではない。
以上のとおり、本件特許発明1及び本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~16は、課題を解決できない構成を含んでいるとはいえず、サポート要件を充足しないとはいえない。
(3)理由3(実施可能要件)について
前記第5で判断したとおりST-Cは「酸性タイプ」のものとはいえないから、本件特許発明を実施することができるのかを理解することができないとはいえず、本件特許発明1~16は実施可能要件を満たさないとはいえない。
前記(2)のとおり、酸化チタンが酸化還元作用を発現し抗菌作用を奏するのは酸化チタンに紫外線を照射した場合であることが当業者の技術常識であるから、光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンのみからなり、銀や銅を含まない場合、酸化チタンに紫外線を照射した場合に、抗菌性や抗ウイルス性を発揮できることが理解できるから、本件特許発明を実施することができるのかを理解することができ、本件特許発明1~3及び5~12は、実施可能要件を満たさないとはいえない。
前記(2)のとおり、本件特許発明1の光触媒型酸化チタン(B)が酸化チタンと銀及び銅から構成される場合、水酸化テトラエチルアンモニウムを含むことにより、貯蔵安定性は良好であることが理解できる以上、本件特許発明1は、そもそも、ゾルを不安定化するほど硝酸イオンや塩素イオンを含むものを想定しておらず、本件特許発明を実施することができるのかを理解することができ、本件特許発明1~16は、実施可能要件を満たさないとはいえない。
第8 令和5年12月6日提出の意見書において申し立てられた新たな特許異議申立理由
1 申立の概要
(1)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について(訂正請求によって生じた取消理由)
特許権者は、意見書において訂正後の本件特許発明に関して、室温乾燥のみを行った場合であっても、水ラビング性を有する抗菌抗ウイルスコーティング層を形成できると主張している(意見書5ページ16~23行目)。
しかしながら、本件特許発明1の抗菌抗ウイルスコーティング組成物はアルコールを含むところ、特にアルコールの分子量は限定されておらず、分子量が大きく室温で蒸発が進まないものが含まれることは明らかである。
また、本件明細書の実施例ではガラス板にコーティング組成物の液の塗布量が10g/m2となるようにスプレー塗装し、ジェット乾燥機(風速:10m/s)にて100℃で10分間乾燥させて試験板を調製しており(本件明細書の段落【0128】)、熱を加えて短時間の間にシリカ微粒子と酸化チタンをガラス板に定着させるからこそ、耐久性が発揮できることを確認しているものの、室温乾燥という成り行きまかせの製造方法でシリ力微粒子と酸化チタンが対象基材に十分定着し、耐久性を発揮できるかどうか不明と言わざるを得ない。
特に、アルコールは被塗物への濡れ性を向上させ、コーティング組成物が被塗物表面で玉状にならないようにしているところ(本件明細書の段落【0046】、【0128】)、例えばアルコールとして実施例で用いられたエタノールを使用した場合は、水より先にエタノールが蒸発してしまい、コーティング組成物の濡れ性が消失して、コーティング組成物が被塗物表面で玉状になり、シリカ微粒子と酸化チタンが被塗物に均ーに定着せず、十分な水ラビング性・抗菌性・抗ウイルス性を発揮できなくなる蓋然性が高い。
よって、訂正後の本件特許発明は、サポート要件を充足していない。
(2)明確性(特許法第36条第6項第2号)について(訂正請求によって生じた取消理由)
特許権者は、上記のとおり、本件特許発明1、11及び13において、「室温乾燥」に関する発明特定事項が追加している。
一方、本件明細書では、段落【0015】において、「本開示において、無機系バインダー(A)の含有量は、コーティング組成物の総質量に対する無機系バインダー(A)の固形分質量又は有効成分質量を意味し、具体的には、無機系バインダー(A)がケイ素化合物の場合には有効成分質量を、それ以外の場合には固形分質量を意味する。ここで、無機機系バインダーの有効成分とは、希アンモニア水で加水分解した後、水分を蒸発させ、更に900℃で焼成した後の残分を意味し、固形分とは、100℃で1時間乾燥した後の加熱残分を意味する。」と記載されているように、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、900℃で焼成した後の残分又は100℃で1時間乾燥した後の加熱残分を前提に算出する。このため、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]を算出する際には、水やアルコール等の溶媒は蒸発して計算に入らないことが想定される。
それに対して、訂正請求後の本件特許発明は室温乾燥が必須であるところ、当該温度は水やアルコール等の溶媒の沸点より低いことから、室温乾燥後においても、水やアルコール等の溶媒が含まれていることが想定されることから、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]の算出に使用される「900℃で焼成した後の残分又は100℃で1時間乾燥した後の加熱残分」と、室温乾燥後に実際に含まれている無機系バインダー(A)及び光触媒型酸化チタン(B)の含有量とは、ずれが生じているはずである。
そうすると、「900℃で焼成した後の残分又は100℃で1時間乾燥した後の加熱残分」を前提に算出される無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、室温乾燥後に実際に含まれている無機系バインダー(A)及び光触媒型酸化チタン(B)の含有量とは異なる数値によって算出されるものであるから、実際のところ、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]によって何を特定しようとしているのかが不明となる。
(3)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について(訂正請求によって生じた取消理由)
特許権者は、上記のとおり、本件特許発明1、11及び13において、「室温乾燥」に関する発明特定事項が追加している。
一方、本件明細書では、段落【0015】において、「本開示において、無機系バインダー(A)の含有量は、コーティング組成物の総質量に対する無機系バインダー(A)的には、無機系バインダーの固形分質量又は有効成分質量を意味し、具体(A)がケイ素化合物の場合には有効成分質量を、それ以外の場合には固形分質量を意味する。ここで、無機機系バインダーの有効成分とは、希アンモニア水で加水分解した後、水分を蒸発させ、更に900℃で焼成した後の残分を意味し、固形分とは、100℃で1時間乾燥した後の加熱残分を意味する。」と記載されているように、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、900℃で焼成した後の残分又は100℃で1時間乾燥した後の加熱残分を前提に算出する。このため、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]を算出する際には、水やアルコール等の溶媒は蒸発して計算に入らないことが想定される。
それに対して、訂正請求後の本件特許発明は室温乾燥が必須であるところ、当該温度は水やアルコール等の溶媒の沸点より低いことから、室温乾燥後においても、水やアルコール等の溶媒が含まれていることが想定されることから、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]の算出に使用される「900℃で焼成した後の残分又は100℃で1時間乾燥した後の加熱残分」と、室温乾燥後に実際に含まれている無機系バインダー(A)及び光触媒型酸化チタン(B)の含有量とは、ずれが生じているはずである。
そうすると、本件明細書の実施例では、100℃で乾燥した場合、つまり、エタノールや水等については蒸発させた状態の加熱残分を使用して、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]を算出したところ、この質量比による効果が実施例において示されているとしても、室温で乾燥した場合、つまり、エタノールや水等について蒸発しない状態において、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は100℃で乾燥した場合とはずれが生じることから、当該質量比はどこに臨界性があるのかを判断することができないため、本件特許発明の課題を解決することができないし、どのようにすれば本件特許発明を実施することができるか理解できないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
2 当審の判断
(1)サポート要件
アルコールが、分子量の大きなものであり、室温で蒸発が進まないものであったとしても、蒸発すれば、水ラビング性を有する抗菌抗ウイルスコーティング層を形成できるといえる。
また、本件明細書の実施例ではガラス板にコーティング組成物の液の塗布量が10g/m2となるようにスプレー塗装し、ジェット乾燥機(風速:10m/s)にて100℃で10分間乾燥させて試験板を調製しており(本件明細書の段落【0128】)、熱を加えて短時間の間にシリカ微粒子と酸化チタンをガラス板に定着させるからこそ、耐久性が発揮できることを確認できており、室温乾燥であっても、100℃というそれほど高温でない温度で、10分間という短い時間での乾燥と同様に耐久性が発揮できると推認できる。
そして、水より先にエタノールが蒸発するとしても、作業時にエタノールが含まれていれば、コーティング組成物が被塗物表面で玉状になることなく、それにより、コーティング層が十分な水ラビング性・抗菌性・抗ウイルス性を発揮できるといえる。
(2)明確性
本件特許明細書の段落【0043】において、無機系バインダーの量は無機系バインダーの固形分質量又は有効成分質量を、光触媒型酸化チタンの量は光触媒型酸化チタンの固形分質量を、それぞれ意味すると記載されるから、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]は、段落【0043】の記載により一義的に算出され、無機系バインダー(A)に対する光触媒型酸化チタン(B)の質量比[(B)/(A)]によって何を特定しようとしているのか明確であるといえる。
なお、室温乾燥後において、コーティング層が水やアルコール等の溶媒が含まれているとしても、無機系バインダーの量は無機系バインダーの固形分質量又は有効成分質量、及び、光触媒型酸化チタンの量は光触媒型酸化チタンの固形分質量は、異なるものとはならない。
(3)サポート要件及び実施可能要件
前記(2)のとおり、質量比[(B)/(A)]は、段落【0043】の記載により一義的に算出されるから、室温で乾燥した場合、100℃で乾燥した場合とはずれが生じないから、本件特許発明の課題を解決することができないとはいえず、どのようにすれば本件特許発明を実施することができるか理解できないともいえず、サポート要件及び実施可能要件を満たさないとはいえない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、令和5年7月6日付けの取消理由通知、令和6年1月16日付けの取消理由通知、令和5年12月6日提出の意見書において申し立てられた特許異議申立理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700183