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特許異議申立

2023-700164

フィルム状焼成材料、及び支持シート付フィルム状焼成材料

審判番号
2023-700164
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-501679
登録番号
7124049
請求日
2023年02月15日
審決日
2023年10月20日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】リンテック株式会社
  • 【権利者代理人】西澤 和純
  • 【権利者代理人】五十嵐 光永
  • 【権利者代理人】加藤 広之
  • 【異議申立人】東條 直人
審判長/審判官
  • 審判長 池渕 立
  • 審判官 井上 猛
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P1651.113-YAA(B22F) / P1651.121-YAA(B22F) / P1651.161-YAA(B22F) / P1651.537-YAA(B22F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条、特許法第41条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7124049号発明「フィルム状焼成材料、及び支持シート付フィルム状焼成材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7124049号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 特許第7124049号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7124049号(請求項の数3。以下、「本件特許」という。)は、2019年(平成31年)2月8日(優先権主張:平成30年2月22日)を国際出願日とする特許出願(特願2020-501679号)に係るものであって、令和4年8月15日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和4年8月23日である。)。 その後、令和5年2月15日に、本件特許の請求項1~3に係る特許に対して、特許異議申立人である東條直人(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 令和5年 2月15日提出 特許異議申立書 4月28日付け 取消理由通知書 7月12日提出 意見書、訂正請求書 8月 4日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知) なお、令和5年8月4日付けの通知書(訂正請求があった旨の通知)に対して、申立人から意見書は提出されなかった。 第2 訂正の請求について 1 請求の趣旨及び請求の理由(訂正の内容) 令和5年7月12日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記第2の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径が1000~7000nmであり」と記載されているのを、「前記第2の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径が1250~6000nmであり」に訂正する。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項1~3について、請求項2、3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~3は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、その一群の請求項ごとに請求がされたものである。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1における「第2の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径」について、「1000~7000nm」を「1250~6000nm」とするものである。 この訂正は、「第2の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径」について、「1000~7000nm」を「1250~6000nm」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「訂正前明細書等」という。)には、「フィルム状焼成材料が含む第2の金属粒子の平均粒子径は、1000~7000nmであり、1250~6000nmが好ましく、1500~5000nmがより好ましい。」(【0027】)と記載されているから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項1~3について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 3 まとめ 上記2のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。 第3 本件発明 前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 第1の金属粒子、第2の金属粒子及びバインダー成分を含有するフィルム状焼成材料であって、 第1の金属粒子の金属種が、銀又は酸化銀であり、 第2の金属粒子の金属種が、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミ、パラジウム、白金、チタン、又は、これらの酸化物若しくはこれらの合金であり、 前記第1の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径が100nm以下であり、かつ最大粒子径が250nm以下であり、 前記第2の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径が1250~6000nmであり、最小粒子径が250nm超であり、かつ最大粒子径が10000nm以下であり、 第1の金属粒子/第2の金属粒子で表される質量比が3.0以上25以下である、フィルム状焼成材料。 【請求項2】 請求項1に記載のフィルム状焼成材料と、前記フィルム状焼成材料の少なくとも一方の側に設けられた支持シートと、を備えた支持シート付フィルム状焼成材料。 【請求項3】 前記支持シートが、基材フィルム上に粘着剤層が設けられたものであり、 前記粘着剤層上に、前記フィルム状焼成材料が設けられている、請求項2に記載の支持シート付フィルム状焼成材料。 第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由 本件特許の請求項1~3に係る特許は、下記(1)~(5)のとおり、特許法113条2号及び4号に該当する。証拠方法は、甲第1号証~甲第6号証(以下、単に「甲1」等という。下記(6)を参照。)である。 (1)申立理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (2)申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2に係る特許は、同法113条2号に該当する。 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2又は甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項3に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (3)申立理由3(拡大先願) 本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、本件特許の優先日後に特許法41条3項(同法184条の15第2項参照)の規定により出願公開がされたものとみなされた、甲4に係る日本語特許出願(PCT/JP2018/032290)の優先権の主張の基礎とされた甲5に係る特願2017-218355号の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、同法29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件訂正前の請求項1~3に係る発明については、焼結性金属粒子と非焼結性金属粒子とを併用することを規定していない点、実施例において第2の金属粒子として用いられる平均粒子径が3500nmと5000nmの2種類のみである点、バインダー成分の種類が特定されていない点で、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、同法113条4号に該当する。 (5)申立理由5(明確性要件) 本件訂正前の請求項1~3に係る発明については、SEM、TEMで粒子を観察する際の観察倍率が不明である点、画像解析法を行う際の条件が不明である点、TEMで観察する際に二次粒子と一次粒子のいずれを1つの粒子とするのか不明である点、SEM、TEMで観察する際に粒子の断面と表面のいずれを観察するのか不明である点で、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、同法113条4号に該当する。 (6)証拠方法 ・甲1 特表2015-536385号公報 ・甲2 特開2015-130417号公報 ・甲3 特開2018-6735号公報 ・甲4 国際公開第2019/092960号 ・甲5 優先権証明書:特願2017-218355号 ・甲6 特許情報プラットフォームのウェブページ <https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2019-092960/ECA9AB9F38251964EC0B1749291C0984E9D824775BDAC66596EE66F61FD74EC1/19/ja> 2 取消理由通知書に記載した取消理由 (1)取消理由1(拡大先願) 上記1(3)の申立理由3(拡大先願)と同旨。 第5 当審の判断 以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 1 取消理由1(拡大先願)、申立理由3(拡大先願) (1)甲5に係る特願2017-218355号の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「甲5に係る出願の当初明細書等」という。)に記載された発明 甲5の記載(特許請求の範囲、【0001】~【0019】、【0021】~【0026】、【0038】、【0048】、【0049】、【0068】~【0072】、【0089】、【0090】)によれば、特に実施例1(【0089】)、実施例2(【0090】)にそれぞれ着目すると、甲5に係る出願の当初明細書等には、以下の発明が記載されていると認められる。 (なお、甲5に係る特願2017-218355号を優先権の主張の基礎とした、甲4に係る日本語特許出願(PCT/JP2018/032290)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(特に実施例1([0089])、実施例2([0090]))にも、同じ発明が記載されている。) 「焼結性粒子としての第1の銀粒子(平均粒径60nm,粒径分布5~100nm,DOWAエレクトロニクス株式会社製)53.78質量部と、焼結性粒子としての第2の銀粒子(平均粒径1100nm,粒径分布400~5000nm,三井金属鉱業株式会社製)5.976質量部と、熱分解性高分子バインダーとしてのポリカーボネート樹脂(商品名「QPAC40」,重量平均分子量は150000,常温で固体,Empower Materials社製)0.87質量部と、低沸点バインダーとしてのイソボルニルシクロヘキサノール(商品名「テルソルブMTPH」,常温で液体,日本テルペン化学工業株式会社製)3.47質量部と、溶剤としてのメチルエチルケトン 35.91質量部とを、ハイブリッドミキサー(商品名「HM-500」,株式会社キーエンス製)をその撹拌モードで使用して混合し、撹拌時間3分間で、ワニスを調製し、 得られたワニスを、離型処理フィルム(商品名「MRA50」,三菱樹脂株式会社製)に塗布した後に、乾燥温度110℃、乾燥時間3分間で乾燥させて、焼結接合用の厚さ40μmの粘着層であるシート体を形成して、作製された焼結接合用シート。」(以下、「先願発明1」という。) 「焼結性粒子としての第1の銀粒子(平均粒径60nm,粒径分布5~100nm,DOWAエレクトロニクス株式会社製)61.29質量部と、焼結性粒子としての第2の銀粒子(平均粒径1100nm,粒径分布400~5000nm,三井金属鉱業株式会社製)6.81質量部と、熱分解性高分子バインダーとしてのポリカーボネート樹脂(商品名「QPAC40」,重量平均分子量は150000,常温で固体,Empower Materials社製)0.75質量部と、低沸点バインダーとしてのイソボルニルシクロヘキサノール(商品名「テルソルブMTPH」,常温で液体,日本テルペン化学工業株式会社製)3.02質量部と、溶剤としてのメチルエチルケトン 28.13質量部とを、ハイブリッドミキサー(商品名「HM-500」,株式会社キーエンス製)をその撹拌モードで使用して混合し、撹拌時間3分間で、ワニスを調製し、 得られたワニスを、離型処理フィルム(商品名「MRA50」,三菱樹脂株式会社製)に塗布した後に、乾燥温度110℃、乾燥時間3分間で乾燥させて、焼結接合用の厚さ40μmの粘着層であるシート体を形成して、作製された焼結接合用シート。」(以下、「先願発明2」という。) (2)本件発明1について ア 先願発明1との対比 (ア)対比 本件発明1と先願発明1とを対比する。 a 先願発明1における「焼結性粒子としての第1の銀粒子(平均粒径60nm,粒径分布5~100nm,DOWAエレクトロニクス株式会社製)」は、本件発明1における「粒度分布における平均粒子径が100nm以下であり、かつ最大粒子径が250nm以下であり」、「金属種が、銀又は酸化銀であ」る「第1の金属粒子」に相当する。 b 先願発明1における「焼結性粒子としての第2の銀粒子(平均粒径1100nm,粒径分布400~5000nm,三井金属鉱業株式会社製)」と、本件発明1における「粒度分布における平均粒子径が1250~6000nmであり、最小粒子径が250nm超であり、かつ最大粒子径が10000nm以下であり」、「金属種が、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミ、パラジウム、白金、チタン、又は、これらの酸化物若しくはこれらの合金であ」る「第2の金属粒子」とは、「粒度分布における」「最小粒子径が250nm超であり、かつ最大粒子径が10000nm以下であり」、「金属種が、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミ、パラジウム、白金、チタン、又は、これらの酸化物若しくはこれらの合金であ」る「第2の金属粒子」である限りで共通する。 c 先願発明1における「熱分解性高分子バインダーとしてのポリカーボネート樹脂(商品名「QPAC40」,重量平均分子量は150000,常温で固体,Empower Materials社製)」、「低沸点バインダーとしてのイソボルニルシクロヘキサノール(商品名「テルソルブMTPH」,常温で液体,日本テルペン化学工業株式会社製)」は、いずれも、本件発明1における「バインダー成分」に相当する。 d 先願発明1におけるワニスには、第1の銀粒子が「53.78質量部」、第2の銀粒子が「5.976質量部」含まれており、そのワニスを用いて作製された焼結接合用シートにも同量の第1の銀粒子、第2の銀粒子が含まれていると認められるところ、第1の銀粒子/第2の銀粒子で表される質量比は9.0(=53.78質量部/5.976質量部)であるから、本件発明1における「第1の金属粒子/第2の金属粒子で表される質量比が3.0以上25以下」に相当する。 e 先願発明1の焼結接合用シートは、第1の銀粒子、第2の銀粒子、熱分解性高分子バインダー、低沸点バインダー等を含むワニスを、離型処理フィルムに塗布した後に、乾燥させて、離型処理フィルム上に、厚さ40μmの粘着層であるシート体として形成されたものであり、甲5に係る出願の当初明細書等の記載(【0097】~【0100】)によれば、銅板とシリコンチップとの間に介在させて焼結して接合するために用いられるものである。 一方、本件発明1のフィルム状焼成材料は、本件明細書の記載(【0016】、【0050】)によれば、フィルム状焼成材料を構成するための各成分及び溶媒を含む焼成材料組成物を、剥離フィルムの表面に塗工又は印刷し、必要に応じて溶媒を揮発させることで、剥離フィルム上に積層された状態で形成されるものであり、本件明細書の記載(【0084】~【0086】)によれば、チップと基板とを焼成により接合するために用いられるものである。 そうすると、先願発明1の「焼結接合用シート」は、本件発明1の「フィルム状焼成材料」に相当するといえる。 f 以上によれば、本件発明1と先願発明1とは、 「第1の金属粒子、第2の金属粒子及びバインダー成分を含有するフィルム状焼成材料であって、 第1の金属粒子の金属種が、銀又は酸化銀であり、 第2の金属粒子の金属種が、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミ、パラジウム、白金、チタン、又は、これらの酸化物若しくはこれらの合金であり、 前記第1の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径が100nm以下であり、かつ最大粒子径が250nm以下であり、 前記第2の金属粒子の、粒度分布における最小粒子径が250nm超であり、かつ最大粒子径が10000nm以下であり、 第1の金属粒子/第2の金属粒子で表される質量比が3.0以上25以下である、フィルム状焼成材料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1 第2の金属粒子の「平均粒子径」が、本件発明1では、「1250~6000nm」であるのに対して、先願発明1では、「1100nm」である点。 (イ)相違点1の検討 甲5に係る出願の当初明細書等には、先願発明1に係る焼結接合用シートに関し、焼結性粒子としての第2の銀粒子の平均粒径が「1250~6000nm」であることについては、記載されていない。 以上によれば、相違点1は実質的な相違点である。 また、相違点1が、課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、先願発明1と同一であるとはいえない。 イ 先願発明2との対比 本件発明1と先願発明2とを対比すると、上記ア(ア)と同様に、両者は相違点1と同様の点で相違するところ、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、本件発明1は、先願発明2と同一であるとはいえない。 (3)本件発明2、3について 本件発明2、3は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、先願発明1、2と同一であるとはいえない以上、本件発明2、3についても同様に、先願発明1、2と同一であるとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1~3は、甲5に係る出願の当初明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。 したがって、取消理由1(拡大先願)、申立理由3(拡大先願)によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性) (1)甲1に記載された発明 甲1の記載(請求項1~10、22、【0002】~【0007】、【0010】~【0016】、【0025】、【0027】~【0029】、【0031】、【0050】、【0061】~【0065】、【0104】、【0105】、【0140】、【0141】、図1~5、8)によれば、特に請求項1、4、6~8、22の記載に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「10μmより小さい平均最大直径を有する粒状物であって、前記粒状物を形成する粒子の少なくともいくつかが少なくとも部分的にキャッピング剤で被覆された銀またはその合金を含む金属を含む粒状物を含む焼結粉末およびバインダーを含む焼結フィルムであって、 前記粒状物が、1~100nmの最大直径を有する第1の種類の粒子と、100nmより大きく50μmまでの最大直径を有する第2の種類の粒子とを含み、 前記第1の種類の粒子が5~75nmの直径を有し、および/または前記第2の種類の粒子が100nmより大きく20ミクロンまで、好ましくは600nm~1ミクロンの直径を有し、 前記粒状物が、81~99重量%の第1の種類の粒子と1~19重量%の第2の種類の粒子とを含み、好ましくは85~95重量%の第1の種類の粒子と5~15重量%の第2の種類の粒子とを含む、焼結フィルム。」(以下、「甲1発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明における「焼結粉末」に含まれる「10μmより小さい平均最大直径を有する粒状物であって、前記粒状物を形成する粒子の少なくともいくつかが少なくとも部分的にキャッピング剤で被覆された銀またはその合金を含む金属を含む粒状物」に含まれる、「1~100nmの最大直径」の範囲内である「5~75nmの」(最大)「直径を有」する「第1の種類の粒子」は、その全ての粒子について、最大直径(個々の粒子についての最長寸法(甲1【0014】))が5~75nmの範囲に収まっており、また、その最大直径の平均値(平均最大直径)は5~75nmの範囲のいずれかの数値となると解される。 ここで、本件発明1でいう「粒子径」(個々の粒子についての投影面積円相当径(本件明細書【0022】))は、甲1発明でいう「最大直径」(個々の粒子についての最長寸法)と同じ数値か、より小さな数値となることが明らかである。 そうすると、甲1発明における上記の最大直径(個々の粒子についての最長寸法)の数値範囲(5~75nm)は、本件発明1でいう「粒子径」(個々の粒子についての投影面積円相当径)で考えると、同じ数値範囲か、より小さな数値範囲となり、本件発明1でいう「最大粒子径」(複数の粒子のうち最も大きな粒子径(本件明細書【0022】))は、75nm以下となると認められる。 また、甲1発明における上記の最大直径の平均値(平均最大直径)の数値(5~75nmの範囲のいずれかの数値)も、本件発明1でいう「粒子径」(個々の粒子についての投影面積円相当径)で考えると、同じ数値か、より小さな数値となり、本件発明1でいう「平均粒子径」(複数の粒子の粒度分布曲線における積算値50%での粒子径D50(本件明細書【0022】))は、上限が75nm以下となると認められる。 以上によれば、甲1発明における上記「粒状物」に含まれる、「1~100nmの最大直径」の範囲内である「5~75nmの」(最大)「直径を有」する「第1の種類の粒子」は、本件発明1における「粒度分布における平均粒子径が100nm以下であり、かつ最大粒子径が250nm以下であり」、「金属種が、銀又は酸化銀であ」る「第1の金属粒子」に相当するといえる。 (イ)甲1発明における上記アの「粒状物」に含まれる、「100nmより大きく50μmまでの最大直径」の範囲内である「100nmより大きく20ミクロンまで、好ましくは600nm~1ミクロンの」(最大)「直径を有」する「第2の種類の粒子」と、本件発明1における「粒度分布における平均粒子径が1250~6000nmであり、最小粒子径が250nm超であり、かつ最大粒子径が10000nm以下であり」、「金属種が、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミ、パラジウム、白金、チタン、又は、これらの酸化物若しくはこれらの合金であ」る「第2の金属粒子」とは、「金属種が、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミ、パラジウム、白金、チタン、又は、これらの酸化物若しくはこれらの合金であ」る「第2の金属粒子」である限りで共通する。 (ウ)甲1発明における「バインダー」は、本件発明1における「バインダー成分」に相当する。 (エ)甲1発明における上記アの「粒状物」に含まれる、「81~99重量%」の範囲内である「85~95重量%」の第1の種類の粒子と、「1~19重量%」の範囲内である「5~15重量%」の第2の種類の粒子との、第1の種類の粒子/第2の種類の粒子で表される重量比(質量比)は、5.67(=85重量%/15重量%)~19(=95重量%/5重量%)であるから、本件発明1における「第1の金属粒子/第2の金属粒子で表される質量比が3.0以上25以下」に相当する。 (オ)甲1発明における焼結フィルムは、甲1の記載(請求項24)によれば、接合する2つ以上のワークピースの近傍に供給し、加熱して、少なくとも部分的に金属を焼結して焼結接合部を製造するために用いられるものである。 一方、本件発明1のフィルム状焼成材料は、本件明細書の記載(【0084】~【0086】)によれば、チップと基板とを焼成により接合するために用いられるものである。 そうすると、甲1発明の「焼結フィルム」は、本件発明1の「フィルム状焼成材料」に相当するといえる。 (カ)以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「第1の金属粒子、第2の金属粒子及びバインダー成分を含有するフィルム状焼成材料であって、 第1の金属粒子の金属種が、銀又は酸化銀であり、 第2の金属粒子の金属種が、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミ、パラジウム、白金、チタン、又は、これらの酸化物若しくはこれらの合金であり、 前記第1の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径が100nm以下であり、かつ最大粒子径が250nm以下であり、 第1の金属粒子/第2の金属粒子で表される質量比が3.0以上25以下である、フィルム状焼成材料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点2 第2の金属粒子の粒度分布について、本件発明1では、「平均粒子径が1250~6000nmであり、最小粒子径が250nm超であり、かつ最大粒子径が10000nm以下であ」るのに対して、甲1発明では、「100nmより大きく50μmまでの最大直径」の範囲内である「100nmより大きく20ミクロンまで、好ましくは600nm~1ミクロンの」(最大)「直径を有」する点。 イ 相違点2の検討 (ア)まず、相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲1発明における粒状物に含まれる、「100nmより大きく50μmまでの最大直径」の範囲内である「100nmより大きく20ミクロンまで、好ましくは600nm~1ミクロンの」(最大)「直径を有」する「第2の種類の粒子」は、 (a)その全ての粒子について、最大直径(個々の粒子についての最長寸法)が100nmより大きく20ミクロンまでの範囲に収まっており、また、その最大直径の平均値(平均最大直径)は100nmより大きく20ミクロンまでの範囲のいずれかの数値となる、 (b)その全ての粒子について、最大直径(個々の粒子についての最長寸法)が600nm~1ミクロンの範囲に収まっており、また、その最大直径の平均値(平均最大直径)は600nm~1ミクロンの範囲のいずれかの数値となる、 のいずれかであると解される。 b しかしながら、上記a(a)の場合については、上記ア(ア)での検討と同様に、甲1発明における上記a(a)の最大直径(個々の粒子についての最長寸法)の数値範囲(100nmより大きく20ミクロンまで)は、本件発明1でいう「粒子径」(個々の粒子についての投影面積円相当径)で考えると、同じ数値範囲か、より小さな数値範囲となり、本件発明1でいう「最小粒子径」(複数の粒子のうち最も小さな粒子径(本件明細書【0022】))は、100nm以下となり、同「最大粒子径」(複数の粒子のうち最も大きな粒子径)は、20ミクロン以下となると認められる。 また、甲1発明における上記a(a)の最大直径の平均値(平均最大直径)の数値(100nmより大きく20ミクロンまでの範囲のいずれかの数値)も、本件発明1でいう「粒子径」(個々の粒子についての投影面積円相当径)で考えると、同じ数値か、より小さな数値となり、本件発明1でいう「平均粒子径」(複数の粒子の粒度分布曲線における積算値50%での粒子径D50)は、下限が100nm以下、上限が20ミクロン以下となると認められる。 以上によれば、甲1発明における上記a(a)の数値範囲又は数値は、本件発明1における「平均粒子径が1250~6000nm」、「最小粒子径が250nm超」、「最大粒子径が10000nm以下」との各数値範囲に完全に包含されるものではないから、甲1発明における上記a(a)の数値範囲又は数値が、本件発明1における上記の各数値範囲に相当するとはいえない。 c また、上記a(b)の場合については、その全ての粒子について、最大直径(個々の粒子についての最長寸法)が600nm~1ミクロンの範囲に収まっていることから、上記bと同様に、本件発明1でいう「最小粒子径」(複数の粒子のうち最も小さな粒子径)は、600nm以下となり、同「最大粒子径」(複数の粒子のうち最も大きな粒子径)は、1ミクロン以下となると認められ、本件発明1における「最小粒子径が250nm超」、「最大粒子径が10000nm以下」との各数値範囲に完全に包含されることが、一応は推認される。 しかしながら、最大直径の平均値(平均最大直径)は、600nm~1ミクロンの範囲のいずれかの数値となることから、上記bと同様に、本件発明1でいう「平均粒子径」(複数の粒子の粒度分布曲線における積算値50%での粒子径D50)は、下限が600nm以下、上限が1ミクロン以下となると認められ、本件発明1における「平均粒子径が1250~6000nm」に相当するとはいえない。 d 以上のとおり、甲1発明における粒状物に含まれる、「100nmより大きく50μmまでの最大直径」の範囲内である「100nmより大きく20ミクロンまで、好ましくは600nm~1ミクロンの」(最大)「直径を有」する「第2の種類の粒子」は、本件発明1における「粒度分布における平均粒子径が1250~6000nmであり、最小粒子径が250nm超であり、かつ最大粒子径が10000nm以下であ」る「第2の金属粒子」に相当するとはいえない。 e 以上によれば、相違点2は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点2の容易想到性について検討する。 a 甲1発明は、粒状物に含まれる「第2の種類の粒子」が、「100nmより大きく50μmまでの最大直径」の範囲内である「100nmより大きく20ミクロンまで、好ましくは600nm~1ミクロンの」(最大)「直径を有」するものであるところ、上記のうち、「好ましい」とされる「600nm~1ミクロンの」(最大)「直径を有」するものとする動機付けがある。 そして、「第2の種類の粒子」の全ての粒子について、最大直径(個々の粒子についての最長寸法)が600nm~1ミクロンの範囲に収まることになるから、上記(ア)cで述べたとおり、本件発明1における「最小粒子径が250nm超」、「最大粒子径が10000nm以下」との各数値範囲に完全に包含されることが、一応は推認される。 しかしながら、最大直径の平均値(平均最大直径)は、600nm~1ミクロンの範囲のいずれかの数値となることから、上記(ア)cで述べたとおり、本件発明1でいう「粒子径」(個々の粒子についての投影面積円相当径)の平均値である「平均粒子径」(複数の粒子の粒度分布曲線における積算値50%での粒子径D50)が「1250~6000nm」となるものではない。 この点、甲1には、「第2の種類の粒子」の最大直径の平均値(平均最大直径)については何ら記載されていないから、そもそも、甲1発明において、「第2の種類の粒子」の最大直径の平均値(平均最大直径)を設定することが動機付けられるとはいえず、そうであれば、本件発明1でいう「平均粒子径」(複数の粒子の粒度分布曲線における積算値50%での粒子径D50)を「1250~6000nm」に設定することが動機付けられるともいえない。また、このことは、甲2、3の記載を考慮しても、変わるものではない。 b また、甲1発明は、「第2の種類の粒子」の最大直径(個々の粒子についての最長寸法)について、「100nmより大きく50μmまで」、「100nmより大きく20ミクロンまで」、「600nm~1ミクロン」との各数値範囲を含むものであるが、甲1には、これらの数値範囲のうち、特に「1250~6000nm」程度が好ましいことは記載されておらず、また、そのようなことが技術常識であるともいえない。 そうすると、甲1発明において、「第2の種類の粒子」の最大直径(個々の粒子についての最長寸法)を、特に「1250~6000nm」程度(本件発明1における「最小粒子径が250nm超」、「最大粒子径が10000nm以下」に相当する。)に設定することが動機付けられるとはいえず、そうであれば、その最大直径の平均値(平均最大直径)を「1250~6000nm」程度(本件発明1における「平均粒子径が1250~6000nm」に相当する。)に設定することも動機付けられるとはいえない。 c そして、本件発明1は、請求項1に記載される発明特定事項を備えることにより、厚さ安定性及び熱伝導性に優れ、焼成後に優れたせん断接着力を発揮し、特に熱伝導性とせん断接着力とのバランスに優れたフィルム状焼成材料を提供できるという、当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである(本件明細書【0007】、【0009】、【0027】、【0028】、【0044】、【0048】、【0098】~【0108】、表1)。 上記の効果のうち、熱伝導性とせん断接着力とのバランスに優れる点については、本件明細書の表1に示される実施例2、3、5と比較例1(上記bの「第2の種類の粒子」の最大直径(個々の粒子の最長寸法)が「100nmより大きく50μmまで」に該当する。)との比較からも、明らかである。 d 以上によれば、甲1発明において、「第2の種類の粒子」について、本件発明1でいう「粒子径」(個々の粒子についての投影面積円相当径)の平均値である「平均粒子径」(複数の粒子の粒度分布曲線における積算値50%での粒子径D50)を「1250~6000nm」とし、同「最小粒子径」を「250nm超」とし、同「最大粒子径」を「10000nm以下」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2、3について 本件発明2、3は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2、3についても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1、2は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1、2は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 さらに、本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲2又は甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由5(明確性要件) (1)申立人の主張について ア 申立人は、本件明細書には、SEM、TEMで観察を行う際の観察倍率が記載されていないところ、観察倍率によっては、過剰に大きな粒子又は過剰に小さな粒子が偏在している視野を観察する場合があることから、観察倍率が特定されていない場合、ある観察倍率の観察視野における最小粒子が、他の観察倍率の観察視野における最小粒子であるとは限らないため、観察倍率によって本件発明1~3における「平均粒子径」、「最小粒子径」、「最大粒子径」は変わりうると主張する。 しかしながら、SEMやTEMで粒子を観察する際の観察倍率が、本件発明1~3において特定されておらず、また、本件明細書にも記載されていないとしても、当業者であれば、観察対象である粒子のサイズや観察の目的等に応じて、適切な観察倍率に設定するのが通常と解される。 また、実際に、SEMやTEMで粒子を観察する際の観察倍率によって、本件発明1~3における「平均粒子径」、「最小粒子径」、「最大粒子径」が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに大きく変わることを示す具体的な根拠は見当たらない。 よって、申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は、本件明細書の【0022】には、画像解析法によって粒度分布曲線を求めることが記載されているが、画像解析法を行う際の条件が記載されていないところ、画像解析法を行う際の条件が異なれば、求められる粒度分布曲線は異なり、ひいては、求められる「平均粒子径」、「最小粒子径」、「最大粒子径」も異なるものとなると主張する。 しかしながら、本件明細書に画像解析法を行う際の条件が記載されていないとしても、当業者であれば、観察対象である粒子のサイズや観察の目的のほか、得られた画像等に応じて、適切な条件を設定するのが通常と解される。 また、実際に、画像解析法を行う際の条件によって、本件発明1~3における「平均粒子径」、「最小粒子径」、「最大粒子径」が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに大きく異なるものとなることを示す具体的な根拠は見当たらない。 よって、申立人の主張は採用できない。 ウ 申立人は、本件発明1で特定されるほどの小さい第1の金属粒子の場合、通常、凝集して二次粒子を形成する傾向にあるところ、TEMで観察する際に、二次粒子を1つの粒子として粒度分布曲線を求めるのか、あるいは、二次粒子を解砕などさせた一次粒子を1つの粒子として粒度分布曲線を求めるのか、本件明細書には示されていないが、二次粒子を1つの粒子として扱う場合と、二次粒子中の一次粒子を1つの粒子として扱う場合とでは、粒度分布曲線が異なり、ひいては、求められる「平均粒子径」、「最小粒子径」、「最大粒子径」も異なるものとなると主張する。 しかしながら、本件明細書には、粒子の凝集を避ける旨の記載がある(【0024】、【0025】、【0103】)ことから、本件明細書の上記記載を考慮すれば、本件発明1における「平均粒子径」、「最小粒子径」、「最大粒子径」は、一次粒子を1つの粒子として求めるものであることが理解できる。 よって、申立人の主張は採用できない。 エ 申立人は、本件明細書には、SEM、TEMで観察を行う際に、粒子の断面を観察するのか、粒子の表面を観察するのかが特定されていないところ、ある粒子を断面観察する場合と表面観察する場合とでは、測定される粒子径は異なるものとなると主張する。 しかしながら、本件明細書の記載(【0022】)及び技術常識によれば、第1の金属粒子はTEMで観察するところ、TEMでの観察により、金属粒子が投影された像が得られ、その像の投影面積に基づいて粒子径を求めるものと理解できる。 また、同様に、第2の金属粒子はSEMで観察するところ、SEMによる観察により、金属粒子の外観(表面)の像が得られ、その像の投影面積に基づいて粒子径を求めるものと理解できる。 よって、申立人の主張は採用できない。 (2)まとめ したがって、申立理由5(明確性要件)によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由4(サポート要件) (1)本件発明1~3について 本件明細書の記載(【0002】~【0006】)によれば、本件発明1が解決しようとする課題は、「厚さ安定性及び熱伝導性に優れ、焼成後に優れたせん断接着力を発揮するフィルム状焼成材料を提供すること」であると認められる。 本件明細書の記載及び図面(【0007】~【0009】、【0019】~【0033】、【0044】、【0048】、【0059】、【0098】~【0108】、表1、図1~4)によれば、上記課題は、第1の金属粒子、第2の金属粒子及びバインダー成分を含有するフィルム状焼成材料において、第1の金属粒子を、「粒度分布における平均粒子径が100nm以下であり、かつ最大粒子径が250nm以下であり」、「金属種が、銀又は酸化銀であ」るものとし、第2の金属粒子を、「粒度分布における平均粒子径が1250~6000nmであり、最小粒子径が250nm超であり、かつ最大粒子径が10000nm以下であり」、「金属種が、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミ、パラジウム、白金、チタン、又は、これらの酸化物若しくはこれらの合金であ」るものとし、「第1の金属粒子/第2の金属粒子で表される質量比」を「3.0以上25以下」とすることによって、解決できることが理解できる。 以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、上記の各条件を満たす本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって、本件発明1については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、3についても同様である。 (2)申立人の主張について ア 申立人は、本件明細書【0007】の記載を指摘した上で、本件発明1は、第2の金属粒子が非焼結性金属粒子であることを規定しておらず、焼結性金属粒子と非焼結性金属粒子とを併用することを規定していないところ、甲4の記載(【0089】)によれば、本件発明1における第2の金属粒子が焼結性金属粒子である場合も含まれるため、本件発明1には、焼結性金属粒子と非焼結性金属粒子とを併用しない場合も含まれるが、そのような場合にも本件発明1の課題が解決できることは、本件明細書に記載されていないと主張する。 確かに、本件明細書【0007】には、焼結性金属粒子と非焼結性金属粒子とを併用することで、熱伝導性が向上することを見出した旨の記載があるが、本件明細書及び図面には、当該記載以外にも、上記(1)で指摘した記載があり、これらの記載によれば、本件発明1は、第1の金属粒子、第2の金属粒子及びバインダー成分を含有するフィルム状焼成材料において、所定の粒度分布を有する所定の材質の第1の金属粒子と、所定の粒度分布を有する所定の材質の第2の金属粒子とを併用し、両者の質量比を特定することによって、課題を解決したものと解される。そして、本件発明1~3について、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであることは、上記(1)のとおりである。 なお、本件発明1においては、第1の金属粒子が焼結性金属粒子であり、第2の金属粒子が非焼結性金属粒子であることは、明示的に特定されていないものの、本件明細書【0019】、【0026】の記載を考慮すれば、第1の金属粒子は、その平均粒子径が100nm以下であることにより焼結性金属粒子であることが実質的に特定され、また、第2の金属粒子は、その平均粒子径が1250nm以上であることにより非焼結性金属粒子であることが実質的に特定されているものともいえる。 よって、申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明は、「前記第2の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径が1000~7000nmであり」を規定するところ、本件明細書【0027】には、第2の金属粒子の平均粒子径が上記下限値以上であることで、熱伝導性において優れることが記載されているものの、本件明細書の実施例において、実験例の第2の金属粒子として用いられる平均粒子径は、3500nmと5000nmの2種類のみであり、実施例4と比較例1との比較を踏まえると、平均粒子径が3倍異なると、評価結果が大きく異なる場合があることが予想されるが、平均粒子径1000nmの3.5倍である平均粒子径が3500nmの実験例があるからといって、平均粒子径1000nmの場合に、本件訂正前の請求項1に係る発明の課題を解決できることを当業者は理解できないと主張する。 しかしながら、本件訂正により訂正された本件発明1~3(「前記第2の金属粒子の、粒度分布における平均粒子径が1250~6000nmであり」と規定)について、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであることは、上記(1)のとおりである。 また、実際に、平均粒子径の下限値である1000nm(訂正後では1250nm)の場合に、本件発明1の課題が解決できないことを示す具体的な根拠は見当たらない。 よって、申立人の主張は採用できない。 ウ 申立人は、本件発明1においては、バインダー成分の種類が特定されていないところ、本件明細書の実施例において用いられているバインダー成分は、メタクリレートである2-エチルヘキシルメタクリレート重合体であるが、本件明細書【0032】に記載の各種のバインダー成分は、熱的性質、化学的性質、物理的性質などが異なり、メタクリレート以外の樹脂を用いた場合に、本件発明1の課題を解決できることは、本件明細書に記載されていないと主張する。 しかしながら、上記(1)で指摘した本件明細書の記載及び図面によれば、本件発明1は、第1の金属粒子、第2の金属粒子及びバインダー成分を含有するフィルム状焼成材料において、所定の粒度分布を有する所定の材質の第1の金属粒子と、所定の粒度分布を有する所定の材質の第2の金属粒子とを併用し、両者の質量比を特定することによって、課題を解決したものと解される。そして、本件発明1~3について、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであることは、上記(1)のとおりである。 一方、申立人が指摘するバインダー成分は、本件明細書の記載(【0032】)によれば、焼成材料をフィルム状に成形し、焼成前のフィルム状焼成材料に粘着性を付与するものにすぎず、本件発明1の課題解決の観点からは、その種類が影響するものとは解されない。 また、実際に、バインダー成分としてメタクリレート以外の樹脂を用いた場合に、本件発明1の課題が解決できないことを示す具体的な根拠は見当たらない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3)まとめ したがって、申立理由4(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700164

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    共通の審決分類: 113・B22F、121・B22F、537・B22F
  • 2024-701158異議申立 / 2025-08-29 / 訂正認容造形用金属粉末およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・B22F、121・B22F、537・B22F
  • 2024-700505異議申立 / 2024-11-29 / 訂正認容金属元素含有粉及び成形体
    共通の審決分類: 113・B22F、121・B22F、537・B22F

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