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特許異議申立

2020-701018

電解コンデンサの製造方法

審判番号
2020-701018
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-539824
登録番号
6715442
請求日
2020年12月25日
審決日
2021年12月07日
公報発行日
2022年05月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
  • 【権利者代理人】鎌田 健司
  • 【権利者代理人】野村 幸一
  • 【異議申立人】ニチコン 株式会社
  • 【異議申立人代理人】特許業務法人みのり特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 清水 稔
  • 審判官 井上 信一
  • 審判官 山本 章裕
分類
P1651.113-YAA(H01G) / P1651.121-YAA(H01G) / P1651.537-YAA(H01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6715442号発明「電解コンデンサの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6715442号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6715442号の請求項1、4、5に係る特許を維持する。 特許第6715442号の請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6715442号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成27年7月23日(優先権主張 平成26年8月6日 日本国(JP))を国際出願日として出願され、令和2年6月11日にその特許権の設定登録がなされ、同年7月1日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てがなされたものであり、以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。 令和2年12月25日 特許異議申立人 ニチコン株式会社による請求 項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申 立て 令和3年 3月 3日付け 取消理由通知 令和3年 5月 6日 特許権者による訂正請求書・意見書の提出 令和3年 8月 4日付け 取消理由通知(決定の予告) 令和3年10月 5日 特許権者による訂正請求書・意見書の提出 なお、令和3年5月14日付け及び同年10月12日付けで特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知をし、意見書を提出する機会を与えたがいずれも提出されなかった。 また、先にした令和3年5月6日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和3年10月5日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第6715442号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである(なお、下線は訂正部分を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「誘電体層を有する陽極体と、前記誘電体層の表面に形成された固体電解質層と、を備える電解コンデンサの製造方法であって、 導電性高分子を液状の第1成分に溶解または分散させた後、静置して第1処理液を調製する第1工程と、 前記第1処理液と第2成分とを混合し、第2処理液を調製する第2工程と、 前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与して、前記誘電体層の表面に固体電解質層を形成する第3工程と、を含み、 前記第2成分が、前記導電性高分子および前記第1成分とは異なる1以上の成分であり、 前記導電性高分子を前記第1成分に溶解または分散させた後、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始するまでの期間を第1期間とし、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始した後、前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与するまでの期間を第2期間としたとき、前記第1期間は、第2期間よりも長い、電解コンデンサの製造方法。」と記載されているのを、 「誘電体層を有する陽極体と、前記誘電体層の表面に形成された固体電解質層と、を備える電解コンデンサの製造方法であって、 導電性高分子を液状の第1成分に溶解または分散させた後、24時間以上静置して第1処理液を調製する第1工程と、 前記第1処理液と第2成分とを混合し、第2処理液を調製する第2工程と、 前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与して、前記誘電体層の表面に固体電解質層を形成する第3工程と、を含み、 前記第2成分が、前記導電性高分子および前記第1成分とは異なる1以上の成分であり、 前記導電性高分子を前記第1成分に溶解または分散させた後、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始するまでの期間を第1期間とし、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始した後、前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与するまでの期間を第2期間としたとき、前記第1期間は、第2期間よりも長く、前記第2期間が12時間以内であり、 前記第2成分が、前記第1処理液100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下混合される、電解コンデンサの製造方法。」に訂正する(請求項1を引用する請求項4および5も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「前記第2成分が、カップリング剤、界面活性剤、凝集化剤、導電性向上剤、増粘剤およびpH調整剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解コンデンサの製造方法。」とあるのを、 「前記第2成分が、カップリング剤、界面活性剤、凝集化剤、導電性向上剤、増粘剤およびpH調整剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、 「前記第2成分が、アルコール、非プロトン性溶媒、エステル化合物、エーテル化合物、アルカリ性化合物、アミド化合物およびニトリル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解コンデンサの製造方法。」とあるのを、 「前記第2成分が、アルコール、非プロトン性溶媒、エステル化合物、エーテル化合物、アルカリ性化合物、アミド化合物およびニトリル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または4に記載の電解コンデンサの製造方法。」に訂正する。 2.訂正の適否についての判断 (1)一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア.訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1に係る発明において、「第1工程」について導電性高分子を液状の第1成分に溶解または分散させた後の静置が「24時間以上」であることの限定を付加するとともに、「第2期間」について「12時間以内」であることの限定し、さらに「前記第2成分が、前記第1処理液100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下混合される」ことの限定を付加するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、「第1工程」について導電性高分子を液状の第1成分に溶解または分散させた後の静置が「24時間以上」であることの限定に関して、明細書の段落【0033】~【0034】に「導電性高分子を第1成分に溶解または分散させてから第1期間経過させる際の条件は、・・・常圧下、2~40℃の温度条件の場所に静置しておいてもよい。・・・第1期間は、特に限定されないが、第1処理液の性状がより安定する点で、24時間以上であることが好ましく、・・・」と記載されている。また、「第2期間」について「12時間以内」であることの限定に関して、訂正前の請求項2に「前記第2期間が、12時間以内である、請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。」とあり、明細書の段落【0044】には「・・・得られた第2処理液を巻回体に付与するまでの期間(第2期間)は、できるだけ短いことが好ましい。特には、12時間以内であることが好ましい。」と記載されている。 さらに、「前記第2成分が、前記第1処理液100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下混合される」ことの限定に関して、明細書の段落【0047】には「例えば、第2成分は、第1処理液100質量部に対して、5質量部以上80質量部以下混合することができ、・・・さらに、10質量部以上60質量部以下混合することができる。」と記載されている。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 また、訂正事項1は上述のとおり、請求項1に係る発明において、「第1工程」について導電性高分子を液状の第1成分に溶解または分散させた後の静置が「24時間以上」であることの限定を付加するとともに、「第2期間」について「12時間以内」であることの限定を付加し、さらに「前記第2成分が、前記第1処理液100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下混合される」ことの限定することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 イ.訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ.訂正事項3について 訂正事項3は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 エ.訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか一項を引用する記載であったものを、上記訂正事項2及び上記訂正事項3による訂正によって請求項2及び請求項3が削除されたことに伴い、削除された請求項2、請求項3を引用しているという不明瞭な状態を解消するために請求項1を引用する記載としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 そして、訂正事項4は上述のとおり、削除された請求項2、請求項3の引用という不明瞭な状態を正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 オ.訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1~4のいずれか一項を引用する記載であったものを、上記訂正事項2及び上記訂正事項3による訂正によって請求項2及び請求項3が削除されたことに伴い、削除された請求項2、請求項3を引用しているという不明瞭な状態を解消するために請求項1または4を引用する記載としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 そして、訂正事項5は上述のとおり、削除された請求項2、請求項3の引用という不明瞭な状態を正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)独立特許要件について 訂正事項1ないし3については「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の請求項1ないし5の全請求項について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1ないし5に係る訂正事項1ないし3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3.訂正の適否についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 第3 当審の判断 1.本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(なお、下線は訂正された箇所を示す。)。 「【請求項1】 誘電体層を有する陽極体と、前記誘電体層の表面に形成された固体電解質層と、を備える電解コンデンサの製造方法であって、 導電性高分子を液状の第1成分に溶解または分散させた後、24時間以上 静置して第1処理液を調製する第1工程と、 前記第1処理液と第2成分とを混合し、第2処理液を調製する第2工程と、 前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与して、前記誘電体層の表面に固体電解質層を形成する第3工程と、を含み、 前記第2成分が、前記導電性高分子および前記第1成分とは異なる1以上の成分であり、 前記導電性高分子を前記第1成分に溶解または分散させた後、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始するまでの期間を第1期間とし、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始した後、前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与するまでの期間を第2期間としたとき、前記第1期間は、第2期間よりも長く、前記第2期間が12時間以内であり、 前記第2成分が、前記第1処理液100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下混合される、電解コンデンサの製造方法。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記第2成分が、カップリング剤、界面活性剤、凝集化剤、導電性向上剤、増粘剤およびpH調整剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。 【請求項5】 前記第2成分が、アルコール、非プロトン性溶媒、エステル化合物、エーテル化合物、アルカリ性化合物、アミド化合物およびニトリル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または4に記載の電解コンデンサの製造方法。」 2.取消理由通知(決定の予告)等に記載した取消理由について (1)取消理由の概要 令和3年8月4日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(新規性、進歩性)、及び同年3月3日付け取消理由通知に記載した取消理由のうちの「理由C(サポート要件)」の概要は、次のとおりである。 (1-1)令和3年8月4日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由 (1-1-1)請求項1、4、5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、4、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものである。 (1-1-2)請求項1、5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用例1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用例1に記載された発明及び引用例2に記載の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 記 ・引用例1:Electrochemistry,「導電性高分子分散液を用いたアルミ固体電解コンデンサの作製と電気特性」,村上敏行 他2名,80巻9号,636-639頁,2012年(甲第1号証) ・引用例2:特表2009-508342号公報(甲第6号証) (以下、参考文献) 1.CLEVIOSTMP,SAFETY DATA SHEET(甲第2号証) 2.CLEVIOSTMPH500,SAFETY DATA SHEET(甲第3号証) 3.CLEVIOSTMPH1000,SAFETY DATA SHEET(甲第4号証) (1-2)令和3年3月3日付け取消理由通知に記載した取消理由のうちの「理由C(サポート要件)」 請求項1ないし5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 記 請求項1において、「・・前記第1期間は、第2期間よりも長い」と記載されており、単に「第1期間」と「第2期間」との相対的な長さの関係のみを特定している。 しかしながら、発明の詳細な説明の段落【0032】~【0034】の記載や実施例によれば、「第1期間」には、第1処理液の性状を安定させ、その結果としてESRが低減されるように、下限(好ましくは24時間)があり、一方、段落【0041】~【0044】の記載や実施例によれば、「第2期間」には、第2処理液の経時的な性状変化や、第2成分を添加したことによる効果の経時的な低減を抑えるために、上限(好ましくは12時間)があり、その結果として概して「第1期間」は「第2期間」よりも長いといえるだけである。したがって、請求項1の上記記載のように、「第1期間」の下限及び「第2期間」の上限に関わらず、単に「第1期間」と「第2期間」との相対的な長さの関係のみを特定することで、固体電解質層に添加剤を付与しても、ESRを低減する効果が十分に得られるようにするという課題を解決できるものとは認められない(例えば、「第2期間」が1時間未満の場合、「第1期間」としては上記下限を大きく下回る1時間でもよいことになり、また逆に、「第1期間」が10日よりも長い場合、「第2期間」としては上記上限を大きく上回る10日であってもよいことになるが、このような場合まで課題を解決できるものとは認められない。)。 よって、出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件請求項1に係る発明及び本件請求項1に従属する請求項2ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (2)引用例の記載事項 取消理由通知(決定の予告)において引用した引用例1(Electrochemistry,「導電性高分子分散液を用いたアルミ固体電解コンデンサの作製と電気特性」,村上敏行 他2名,80巻9号,636-639頁,2012年、甲第1号証)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「Poly(4-styrenesulfonic acid)をドープしたPoly(3,4-ethylenedioxythiophene)(PEDOT/PSS)は代表的な導電性高分子であり、・・・」(636頁左下欄16~18行) イ.「本研究では、電気伝導度や粒径の異なるPEDOT/PSSを陰極材料に用いたアルミ固体電解コンデンサを作製し、これらの因子が等価直列抵抗と静電容量に与える影響について詳細に検討した。」(636頁右下欄13~16行) ウ.「2.1 PEDOT/PSS分散液の調製 PEDOT/PSS分散液は、ヘレウス社製のCLEVIOSTMP,PH500,PH1000の3種類を用い、高沸点溶媒として特級試薬のethylene glycol (EG)とdimethyl sulfoxide (DMSO)を用いた。PEDOT/PSSの固形分が1wt%になるよう純水で希釈したP,PH500,PH1000をpristineとし、これにEGとDMSOをそれぞれ5wt%添加した溶液6種を調製し、計9種類とした。」(636頁右下欄下から6行~637頁左欄2行) エ.「2.2 コンデンサの作製 コンデンサの陽極として純度99.9%以上のアルミニウム箔(厚さ100μm)を用いた。塩化物イオンを含む電解液中で交流電流を用いたエッチングにより表面積を拡大し、さらに陽極酸化(5V)処理より酸化アルミニウムを形成することで電極箔を作製した。次に、絶縁樹脂をパターニングしエリアを設定した後、調製したPEDOT/PSS分散液を塗布・乾燥させ、これを所定の回数繰り返すことで陰極を作製した。最後に、グラファイト及び銀ペーストを塗布し、外部電極を形成することで固体電解コンデンサとした。」(637頁左欄4~14行) オ.「3.2 電気伝導度と溶媒効果 種々のPEDOT/PSS分散液から成膜したフィルムの電気伝導度をTable 1に示す。添加剤の無いpristineの電気伝導度はPEDOT/PSSの種類によらず0.18-1.08S/cmと低いのに対し、EGやDMSOを5%添加することで2-3桁上昇することがわかる。高沸点溶媒を添加した時の電気伝導度はP,PH500,PH1000の順で高くなり、PH1000で最高848S/cmに達した。同様の効果はグリセリン,ソルビトール,ジメチルホルムアミド,N-メチル-2-ピロリドン,ポリエチレングリコール等についても確認されている。」(637頁左欄下から3行~同頁右欄下から22行) 上記「ア.」ないし「オ.」から以下のことがいえる。 ・上記「ア.」、「イ.」、「エ.」の記載によれば、引用例1には、コンデンサの陽極としてアルミニウム箔を陽極酸化処理によって酸化アルミニウムを形成した電極箔を作製し、次いで、調製したPEDOT/PSS分散液を塗布・乾燥させて導電性高分子の層を形成してなるアルミ固体電解コンデンサの作製方法が記載されている。 ・上記「ウ.」の記載によれば、PEDOT/PSS分散液として、ヘレウス社製のCLEVIOSTMP,PH500,PH1000のいずれかを用意し、PEDOT/PSSの固形分が1wt%になるよう純水で希釈する工程を有している。 ・上記「ウ.」、「オ.」の記載によれば、希釈したPEDOT/PSS分散液に、電気伝導度を上昇させるための添加剤としてEG(エチレングリコール)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)を5wt%添加し、調製したPEDOT/PSS分散液を得る工程を有しているといえる。 ・そして、上記「ウ.」の記載事項によれば、酸化アルミニウムを形成した電極箔に、調整したPEDOT/PSS分散液を塗布・乾燥させ、これを所定の回数繰り返すことで導電性高分子の層を形成する工程を有するものである。 以上のことから、上記記載事項を総合勘案すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「コンデンサの陽極としてアルミニウム箔を陽極酸化処理によって酸化アルミニウムを形成した電極箔を作製し、次いで、調製したPEDOT/PSS分散液を塗布・乾燥させて導電性高分子の層を形成してなるアルミ固体電解コンデンサの作製方法であって、 PEDOT/PSS分散液として、ヘレウス社製のCLEVIOSTMP,PH500,PH1000のいずれかを用意し、PEDOT/PSSの固形分が1wt%になるよう純水で希釈する工程と、 前記希釈したPEDOT/PSS分散液に、電気伝導度を上昇させるための添加剤としてEG(エチレングリコール)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)を5wt%添加し、前記調製したPEDOT/PSS分散液を得る工程と、 前記酸化アルミニウムを形成した電極箔に、前記調整したPEDOT/PSS分散液を塗布・乾燥させ、これを所定の回数繰り返すことで前記導電性高分子の層を形成する工程と、を含むアルミ固体電解コンデンサの作製方法。」 (3)取消理由についての当審の判断 (3-1)令和3年8月4日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(新規性、進歩性)について ア.本件発明1について 本件発明1と引用発明とを対比する。 (ア)製造される電解コンデンサについて 引用発明における「酸化アルミニウム」、その酸化アルミニウムを形成した「電極箔」、電極箔に調整したPEDOT/PSS分散液を塗布・乾燥させて形成された「導電性高分子の層」、そしてこれらを備える「アルミ固体電解コンデンサ」は、それぞれ本件発明1でいう「誘電体層」、「陽極体」、「固体電解質層」、「電解コンデンサ」に相当する。 したがって、本件発明1と引用発明とは、「誘電体層を有する陽極体と、前記誘電体層の表面に形成された固体電解質層と、を備える電解コンデンサ」の製造方法である点で一致する。 (イ)第1工程について 引用発明において、PEDOT/PSS分散液として用意されるへレウス社製のCLEVIOSTMP,PH500,PH1000は、いずれもPEDOT/PSSを水からなる分散媒体に分散してなるものである(参考文献1~3(甲第2~4号証)を参照)。ここで、本件発明1でいう「液状の第1成分」について、導電性高分子が溶解または分散されるものであるところ、本件特許明細書の段落【0028】には「第1成分は、水でもよく」と記載されていることを踏まえると、引用発明における「PEDOT/PSS」、分散媒体である「水」、用意される「PEDOT/PSS分散液」が、それぞれ本件発明1でいう「導電性高分子」、「液状の第1成分」、「第1処理液」に相当するといえる。 そして、本件特許明細書の段落【0034】には「第1処理液を調製することには、第1処理液を第1期間にわたり保管することや、第1期間にわたり保管された第1処理液を入手すること、ある期間保管された第1処理液を入手した後、さらに保管して、合計で第1期間にわたり保管することなどが含まれる。」と記載されているところ、引用発明におけるへレウス社製のCLEVIOSTMP,PH500,PH1000のいずれかからなる「PEDOT/PSS分散液」にあっても当然、外国での製造後日本での販売までの間や、購入後使用するまでの間保管された状態、すなわち静置した状態を長期間経ているといえ、少なくとも本件発明1で特定する「24時間以上」を経ていることは自明なことである。 したがって、引用発明における「へレウス社製のCLEVIOSTMP,PH500,PH1000のいずれかを用意」することが、本件発明1でいう「導電性高分子を液状の第1成分に分散させた後、24時間以上静置」することに相当する。そして、引用発明における「PEDOT/PSSの固形分が1wt%になるよう純水で希釈する」ことは、本件発明1でいう「第1処理液を調整する」ことに相当する。 よって、本件発明1と引用発明とは、「導電性高分子を液状の第1成分に分散させた後、24時間以上静置して第1処理液を調製する第1工程」を備えるものである点で一致するといえる。 (ウ)第2工程について 引用発明において、希釈したPEDOT/PSS分散液に添加剤として添加される「EG(エチレングリコール)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)」、その結果得られる「調製したPEDOT/PSS分散液」は、それぞれ本件発明1でいう「第2成分」、「第2処理液」に相当する。 したがって、引用発明における「調製したPEDOT/PSS分散液を得る工程」は、本件発明1でいう「第2処理液を調製する第2工程」に相当し、本件発明1と引用発明とは、「前記第1処理液と第2成分とを混合し、第2処理液を調製する第2工程」を備えるものである点で一致する。 (エ)第3工程について 引用発明において、酸化アルミニウムを形成した電極箔に調整したPEDOT/PSS分散液を塗布・乾燥させ、これを所定の回数繰り返すことによって「導電性高分子の層を形成する工程」は、本件発明1でいう「固体電解質層を形成する第3工程」に相当し、本件発明1と引用発明とは、「前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与して、前記誘電体層の表面に固体電解質層を形成する第3工程」を備えるものである点で一致する。 (オ)第2成分について 引用発明において、希釈したPEDOT/PSS分散液に添加剤として添加される「EG(エチレングリコール)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)」は、導電性高分子である「PEDOT/PSS」及び分散媒体である「水」とは異なるものであることは明らかである。 したがって、本件発明1と引用発明とは、「前記第2成分が、前記導電性高分子および前記第1成分とは異なる1以上の成分」である点で一致する。 ただし、第2成分の添加量(混合量)に関して、本件発明1では「前記第1処理液100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下」と特定するのに対し、引用発明では希釈したPEDOT/PSS分散液に5wt%添加されるものである点で相違する。 (カ)第1期間と第2期間の関係について へレウス社によりCLEVIOSTMP,PH500,PH1000のいずれかからなる「PEDOT/PSS分散液」が製造された後、当該引用発明においてEG(エチレングリコール)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)の添加を開始するまでの期間が本件発明1でいう「第1期間」に相当し、また、EG(エチレングリコール)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)を添加した後、酸化アルミニウムを形成した電極箔に調整したPEDOT/PSS分散液を塗布するまでの期間が本件発明1でいう「第2期間」に相当する。そして、引用発明においても、上記イ.でも述べたように、「第1期間」に相当する期間に関しては、へレウス社製のCLEVIOSTMP,PH500,PH1000のいずれかからなる「PEDOT/PSS分散液」は、外国での製造後日本での販売までの間や、購入後使用するまでの間保管された状態等を長期間経ており、当該「第1期間」に相当する期間は少なくとも「24時間以上」経ているといえるのに対し、「第2期間」に相当する期間に関しては、EG(エチレングリコール)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)の添加は実験室レベルで行われており、添加後の調製したPEDOT/PSS分散液の使用を意図してなされるものであることを踏まえると、実験当日において添加後速やかに電極箔への塗布が行われるのが普通であり、当該「第2期間」に相当する期間は本件発明1で特定する「12時間以内」の条件を満たしていると解され、「第1期間」に相当する期間は、「第2期間」に相当する期間よりも長いといえる。 したがって、本件発明1と引用発明とは、「前記導電性高分子を前記第1成分に分散させた後、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始するまでの期間を第1期間とし、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始した後、前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与するまでの期間を第2期間としたとき、前記第1期間は、第2期間よりも長く、前記第2期間が12時間以内」である点で一致するということができる。 よって上記(ア)ないし(カ)によれば、本件発明1と引用発明とは、 「誘電体層を有する陽極体と、前記誘電体層の表面に形成された固体電解質層と、を備える電解コンデンサの製造方法であって、 導電性高分子を液状の第1成分に分散させた後、24時間以上静置して第1処理液を調製する第1工程と、 前記第1処理液と第2成分とを混合し、第2処理液を調製する第2工程と、 前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与して、前記誘電体層の表面に固体電解質層を形成する第3工程と、を含み、 前記第2成分が、前記導電性高分子および前記第1成分とは異なる1以上の成分であり、 前記導電性高分子を前記第1成分に分散させた後、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始するまでの期間を第1期間とし、前記第1処理液と前記第2成分との混合を開始した後、前記誘電体層の表面に前記第2処理液を付与するまでの期間を第2期間としたとき、前記第1期間は、第2期間よりも長く、前記第2期間が12時間以内である、電解コンデンサの製造方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 第2成分の添加量(混合量)に関して、本件発明1では「前記第1処理液100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下」と特定するのに対し、引用発明では希釈したPEDOT/PSS分散液に5wt%添加されるものである点。 上記のとおり相違点があるから、本件発明1は、引用例1に記載された発明ではない。 次に、上記相違点について検討する。 引用発明において、希釈したへレウス社製のPEDOT/PSS分散液に対する、EG(エチレングリコール)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)の5wt%添加は、PEDOT/PSS分散液100質量部に対して約5.3質量部の添加ということになり、本件発明1で特定する「10質量部以上80質量部以下」の範囲(条件)の下限よりも少ない。 ここで、本件特許明細書の段落【0045】~【0047】の記載を参照すると、本件発明1は、第2期間を短くする、具体的には12時間以内とすることによって、第2成分」の添加量(混合量)を「10質量部以上」と多くして高いコンデンサ特性を得ることができるようにしたものであると解され、第2期間を12時間以内としたことと、第2成分の添加量(混合量)の下限が「10質量部」であることとは密接に関連しているといえる。これに対して、そもそも引用例1には、本件発明1でいう「第2期間」と第2成分の「添加量」との関係性に着目した記載はなく、積極的(意図的)に「第2期間」を12時間以内の短い期間とすることの記載もないことを踏まえると、EG(エチレングリコール)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)の添加量を、あえて約5.3質量部を超えて10質量部以上とすべき動機を見出せない。 よって、本件発明1は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 イ.本件発明4について 取消理由通知(決定の予告)において引用した引用例2(特表2009-508342号公報、甲第6号証)には、電解質キャパシタの固体電解質の形成に用いられる導電性ポリマーの分散液A)に、表面活性物質、接着促進剤や架橋剤、有機結合剤・水溶性結合剤、あるいはpH調整剤などを含有させることができることが記載(特に段落【0060】、【0062】~【0064】を参照)されているにすぎない。 そして、請求項4は請求項1を引用するものであり、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明4は、引用例1に記載された発明ではなく、また、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ.本件発明5について 請求項5は請求項1を引用するものであり、本件発明5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明5は、引用例1に記載された発明ではなく、また、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3-2)令和3年3月3日付け取消理由通知に記載した取消理由のうちの「理由C(サポート要件)」について 上記(1-2)に記載したとおりの記載不備の指摘に対して、本件訂正請求による訂正により、請求項1において、「第1期間」は「24時間以上」でありその下限が24時間であることが特定され、また、「第2期間」は「12時間以内」でありその上限が12時間であることが特定された。その結果、単に「第1期間」と「第2期間」との相対的な長さの関係のみを特定するものでなくなっており、本件請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えいているとはいえないものとなった。 したがって、取消理由で指摘した不備な点は解消され、請求項1に係る特許、及び請求項1を引用する請求項4,5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。 3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 上述のとおり、本件訂正請求による訂正により、請求項2及び請求項3は削除された。したがって、請求項2及び請求項3に対して、特許異議申立人が申立てた理由についてはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 また、請求項1、4、5について、令和3年3月3日付けの取消理由で通知した「理由C(サポート要件)」で指摘した不備(上記「2.(1-2)」を参照)以外に、特許異議申立人は次のようなサポート要件違反の理由(不備)を主張している。 請求項1において、「第1成分」は液状であることが規定されているだけであり、液状の成分全てを包含するが、本件特許明細書の実施例にて使用されている第1成分は「イオン交換水」だけである。また、「第2成分」についても「前記導電性高分子および前記第1成分とは異なる1以上の成分」との規定しか存在せず、第2成分には導電性高分子および第1成分とは異なるあらゆる成分が含まれる。よって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、請求項1に係る発明及び請求項1に従属する請求項4、5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 そこで、上記サポート要件違反の理由(不備)について検討する。 本件請求項1の記載によれば「第1成分」は、導電性高分子を溶解または分散することができる液状のもの、すなわち溶媒であることが理解できるところ、本件特許明細書の段落【0028】には「第1成分は、水でもよく、非水溶媒でもよく、これらの混合物でもよい。・・第1成分は、第1処理液の性状を経時的に大きく変化させる成分でない限り、特に限定されない。・・例えば、同じ導電性高分子を含む第1処理液であっても、第1成分の種類(性質)によって、大きな経時的変化を生じる場合とそうでない場合とがある。そのため、第1成分は一義的に決定するものではない。」と記載されている。また、本件請求項1の記載によれば「第2成分」は、第1処理液に対して混合される、導電性高分子および第1成分とは異なる成分であり、技術常識的に、電解コンデンサの性能向上などの目的をもって添加されるものであると理解できるものであり、本件特許明細書の段落【0035】にも「第2成分は、特に限定されず、導電性高分子および第1成分とは異なる1以上の成分である。具体的には、通常、固体電解質層の性能を向上させるために使用される各種添加剤である。」と記載されている。 したがって、これら段落【0028】や【0035】の記載と出願時の技術常識を踏まえると、請求項1において、「第1成分」及び「第2成分」が実施例にて使用されている特定の成分に限定されていないからといって、本件請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えいているとまではいえず、出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないものではない。 よって、特許異議申立人のサポート要件違反の理由(不備)に関する上記主張は採用することはできず、請求項1に係る特許、及び請求項1を引用する請求項4,5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。 第4 むすび 以上のとおり、本件発明1、4、5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件発明1、4、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件の請求項2、3に係る特許については訂正により削除され、本件特許の請求項2、3に対して特許異議申立人 ニチコン株式会社がした特許異議申立てについてはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-701018

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