特許異議申立
2023-700148
監査証跡の管理システム
- 審判番号
- 2023-700148
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-163787
- 登録番号
- 7134796
- 請求日
- 2023年02月09日
- 審決日
- 2023年10月12日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】岩井ファルマテック株式会社
- 【権利者代理人】栗原 浩之
- 【権利者代理人】山▲崎▼ 雄一郎
- 【異議申立人】平賀 博
- 審判長/審判官
- 審判長 渋谷 善弘
- 審判官 大山 健
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1651.121-YAA(G05B) / P1651.537-YAA(G05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7134796号発明「監査証跡の管理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7134796号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7134796号の請求項2~5に係る特許を維持する。
特許第7134796号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7134796号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年8月31日(優先権主張 平成30年6月18日)に出願され、令和4年9月2日にその特許権の設定登録がされ、令和4年9月12日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許について、令和5年2月9日に特許異議申立人 平賀 博(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和5年5月16日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和5年7月14日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。その後、令和5年8月10日付けで、申立人に対して訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は応答しなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
令和5年7月14日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(なお、下線部は訂正事項について特許権者が付したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載する監査証跡の管理システムにおいて、前記記録手段は、(a)前記設定値取得手段により前記設定入力値を取得したこと、(b)前記理由取得手段により前記理由を取得したこと、を時系列に並べて記録するとともに、前記(a)及び前記(b)に対となる所定の文字情報を付すことを特徴とする監査証跡の管理システム。」と記載されているのを、
「医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、
設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、
前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、
前記タッチパネルは、
前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、
前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段と、
前記設定入力値及び前記理由を記録する記録手段と、
前記理由取得手段により前記理由を取得した後、前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件に、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させ、
前記記録手段は、
(a)前記設定値取得手段により前記設定入力値を取得したこと、
(b)前記理由取得手段により前記理由を取得したこと、
を時系列に並べて記録するとともに、
前記(a)及び前記(b)に対となる所定の文字情報を付す
ことを特徴とする監査証跡の管理システム。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は請求項2に記載する監査証跡の管理システムにおいて、前記理由取得手段は、前記理由を階層的に表示することを特徴とする監査証跡の管理システム。」と記載されているのを、
「請求項2に記載する監査証跡の管理システムにおいて、
前記理由取得手段は、前記理由を階層的に表示する
ことを特徴とする監査証跡の管理システム。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から請求項3の何れか一項に記載する監査証跡の管理システムにおいて、前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記設定値取得手段は、ある運転モードにおいて前記設定入力値及び前記理由を取得した後、別の運転モードに切り替えられた際には、前記運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に前記設定入力値を受け付けることを特徴とする監査証跡の管理システム。」と記載されているのを、
「医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、
設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、
前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、
前記タッチパネルは、
前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、
前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段と、
前記設定入力値及び前記理由を記録する記録手段と、
前記理由取得手段により前記理由を取得した後、前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件に、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させ、
前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、
前記設定値取得手段は、
ある運転モードにおいて前記設定入力値及び前記理由を取得した後、別の運転モードに切り替えられた際には、前記運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に前記設定入力値を受け付ける
ことを特徴とする監査証跡の管理システム。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から請求項4の何れか一項に記載する監査証跡の管理システムにおいて、前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記理由取得手段は、前記運転モードごとに選択可能な前記理由を表示することを特徴とする監査証跡の管理システム。」と記載されているのを、
「医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、
設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、
前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、
前記タッチパネルは、
前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、
前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段と、
前記設定入力値及び前記理由を記録する記録手段と、
前記理由取得手段により前記理由を取得した後、前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件に、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させ、
前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、
前記理由取得手段は、前記運転モードごとに選択可能な前記理由を表示する
ことを特徴とする監査証跡の管理システム。」に訂正する。
(6)訂正事項6
ア 明細書の段落【0009】を削除する。
イ 明細書の段落【0011】に「本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する監査証跡の管理システムにおいて、前記記録手段は、(a)前記設定値取得手段により前記設定入力値を取得したこと、(b)前記理由取得手段により前記理由を取得したこと、を時系列に並べて記録するとともに、前記(a)及び前記(b)に対となる所定の文字情報を付すことを特徴とする監査証跡の管理システムにある。」と記載されているのを、
「本発明の第2の態様は、医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、前記タッチパネルは、前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段と、前記設定入力値及び前記理由を記録する記録手段と、前記理由取得手段により前記理由を取得した後、前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件に、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させ、前記記録手段は、(a)前記設定値取得手段により前記設定入力値を取得したこと、(b)前記理由取得手段により前記理由を取得したこと、を時系列に並べて記録するとともに、前記(a)及び前記(b)に対となる所定の文字情報を付すことを特徴とする監査証跡の管理システムにある。」に訂正する。
ウ 明細書の段落【0012】に「本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する監査証跡の管理システムにおいて、前記理由取得手段は、前記理由を階層的に表示することを特徴とする監査証跡の管理システムにある。」と記載されているのを、「本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する監査証跡の管理システムにおいて、前記理由取得手段は、前記理由を階層的に表示することを特徴とする監査証跡の管理システムにある。」に訂正する。
エ 明細書の段落【0013】に「本発明の第4の態様は、第1から第3の何れか一つの態様に記載する監査証跡の管理システムにおいて、前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記設定値取得手段は、ある運転モードにおいて前記設定入力値及び前記理由を取得した後、別の運転モードに切り替えられた際には、前記運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に前記設定入力値を受け付けることを特徴とする監査証跡の管理システムにある。」と記載されているのを、
「本発明の第4の態様は、医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、前記タッチパネルは、前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段と、前記設定入力値及び前記理由を記録する記録手段と、前記理由取得手段により前記理由を取得した後、前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件に、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させ、前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記設定値取得手段は、ある運転モードにおいて前記設定入力値及び前記理由を取得した後、別の運転モードに切り替えられた際には、前記運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に前記設定入力値を受け付けることを特徴とする監査証跡の管理システムにある。」に訂正する。
オ 明細書の段落【0014】に「本発明の第5の態様は、第1から第4の何れか一つの態様に記載する監査証跡の管理システムにおいて、前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記理由取得手段は、前記運転モードごとに選択可能な前記理由を表示することを特徴とする監査証跡の管理システムにある。」と記載されているのを、
「本発明の第5の態様は、医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、前記タッチパネルは、前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段と、前記設定入力値及び前記理由を記録する記録手段と、前記理由取得手段により前記理由を取得した後、前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件に、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させ、前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記理由取得手段は、前記運転モードごとに選択可能な前記理由を表示することを特徴とする監査証跡の管理システムにある。」に訂正する。
(7)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~5は、本件訂正前の請求項2~5が請求項1を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の記載を削除するものである。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の記載を削除する訂正であるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2
a 訂正の目的について
訂正事項2は、実質的に、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2について、訂正前の請求項1に記載した発明特定事項を付加し、他の請求項を引用しない形式とした上で、「タッチパネル」が「前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され」と限定して明確化し、「設定変更手段」について「その内容を確認する画面を表示し」とあったのを「前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し」と、画面に表示される内容を明確化したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものと認められる。
b 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
「タッチパネル」が「前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され」ていることは、本件明細書等の段落【0005】の「また、医薬品の製造設備ではクリーンルーム内に制御装置やタッチパネルが配備されており、制御装置の入出力画面はタッチパネルが用いられている。・・・つまり、現場で設定作業を行う際には、タッチパネルの操作性が問題となる。」(なお、下線部は、当審が付したものである。以下同様。)との記載、段落【0062】の「さらに、設定変更及びその理由の記録は、現場に配置されたタッチパネル20及びPLC10で完結している。このように管理システム1は、現場の操作者が各種処理装置2~7の状況を見ながら、その場で即時にPLC10の設定値を変更し、かつその理由を記録することができるので、メンテナンス時など効率よく工程の調整を行うことができる。」との記載等に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、「設定変更手段」が「設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示」することは、本件明細書等の段落【0077】の「図9は、本実施形態の設定入力値をPLC10に反映させる際の確認画面を示す図である。同図に示すように、設定値取得手段24及び理由取得手段25が設定入力値及び理由を取得したあと、設定変更手段27は、確認画面95を表示する。この確認画面95には、設定入力値の変更があった旨を表示するとともに、その設定入力値をPLC10の設定値に反映させてよいかを確認するための確認ボタン96(「はい」と表示されている)と、反映させないための否定ボタン97(「いいえ」と表示されている)が表示されている。」との記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(3)訂正事項3
a 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項3が、請求項1又は請求項2を引用するものであったのを、請求項2を引用するものに限定し、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正と認められる。
b 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項3は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項3は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(4)訂正事項4
a 訂正の目的について
訂正事項4は、実質的に、本件訂正前の請求項4が、「請求項1から請求項3の何れか一項」を引用する形式であったものを、訂正前の請求項1に記載した発明特定事項を付加し、限定した上で、他の請求項を引用しない形式とし、さらに、訂正事項2と同様に、「タッチパネル」が「前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され」と限定して明確化し、「設定変更手段」について「その内容を確認する画面を表示し」とあったのを「前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し」と、画面に表示される内容を明確化したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものと認められる。
b 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項4は、実質的に、本件訂正前の請求項1を引用する請求項4について、訂正事項2と同様の訂正を行うものといえるから、訂正事項2と同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項4は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(5)訂正事項5
a 訂正の目的について
訂正事項5は、実質的に、本件訂正前の請求項5が、「請求項1から請求項4の何れか一項」を引用する形式であったものを、訂正前の請求項1に記載した発明特定事項を付加し、限定した上で、他の請求項を引用しない形式とし、さらに、訂正事項2と同様に、「タッチパネル」が「前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され」と限定して明確化し、「設定変更手段」について「その内容を確認する画面を表示し」とあったのを「前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し」と、画面に表示される内容を明確化したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものと認められる。
b 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項5は、実質的に、本件訂正前の請求項1を引用する請求項5について、訂正事項2と同様の訂正を行うものといえるから、訂正事項2と同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項5は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(6)訂正事項6
a 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正事項1~5に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
よって、訂正事項6は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正と認められる。
b 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項6は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、訂正事項1~5と同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項6は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
3 独立特許要件
本件訂正前の請求項1~5について特許異議申立がされているので、訂正事項1~6について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 別の訂正単位とする求め
本件訂正は、引用関係を解消する訂正及び請求項を削除する訂正をするものであるが、別の訂正単位とする求めはされなかった。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~5に係る発明(請求項1は本件訂正により削除されている。また以下、それぞれ「本件発明2」~「本件発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、
設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、
前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、
前記タッチパネルは、
前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、
前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段と、
前記設定入力値及び前記理由を記録する記録手段と、
前記理由取得手段により前記理由を取得した後、前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件に、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させ、
前記記録手段は、
(a)前記設定値取得手段により前記設定入力値を取得したこと、
(b)前記理由取得手段により前記理由を取得したこと、
を時系列に並べて記録するとともに、
前記(a)及び前記(b)に対となる所定の文字情報を付す
ことを特徴とする監査証跡の管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載する監査証跡の管理システムにおいて、
前記理由取得手段は、前記理由を階層的に表示する
ことを特徴とする監査証跡の管理システム。
【請求項4】
医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、
設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、
前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、
前記タッチパネルは、
前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、
前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段と、
前記設定入力値及び前記理由を記録する記録手段と、
前記理由取得手段により前記理由を取得した後、前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件に、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させ、
前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、
前記設定値取得手段は、
ある運転モードにおいて前記設定入力値及び前記理由を取得した後、別の運転モードに切り替えられた際には、前記運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に前記設定入力値を受け付ける
ことを特徴とする監査証跡の管理システム。
【請求項5】
医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、
設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、
前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、
前記タッチパネルは、
前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、
前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段と、
前記設定入力値及び前記理由を記録する記録手段と、
前記理由取得手段により前記理由を取得した後、前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件に、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させ、
前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、
前記理由取得手段は、前記運転モードごとに選択可能な前記理由を表示する
ことを特徴とする監査証跡の管理システム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和5年5月16日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(明確性要件違反)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~5の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由2(サポート要件違反)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~5の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由3(進歩性欠如)請求項1、3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記2の甲第1号証~甲第2号証、甲第5号証に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠
甲第1号証:特開2010-42350号公報
甲第2号証:特開平8-328829号公報
甲第5号証:特開2012-203730号公報
第5 取消理由についての判断
1 取消理由1(明確性要件違反)について
(1)具体的な内容
本件訂正前の請求項1には、「前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、その内容を確認する画面を表示し、」と記載されているが、「その内容」が、「前記設定入力値」を指すのか、「前記理由」を指すのか、その両方を指すのか、またはその他の内容(例えば、設定入力値の変更があった旨等)を指すのか、不明であり、その結果、「その内容を確認する画面」において、どのような内容が表示されるのか不明である。
したがって、本件訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2~5に係る発明は明確でない。
(2)取消理由1についての検討
本件発明2、4~5は、本件訂正により、「前記設定変更手段は、前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、」と訂正され、「設定変更手段」が「確認する画面」において表示するのが、「設定入力値の変更があった旨」であることが明確となったから、本件発明2、4~5及び本件発明2を引用する本件発明3は明確である。
(3)小括
以上により、本件発明2、4~5に係る特許及び本件発明2を引用する本件発明3に係る特許について、上記取消理由1により取り消すことはできない。
2 取消理由2(サポート要件違反)について
(1)具体的な内容
本件は、「しかしながら、従来の手法では、現場作業員がコンピュータのオペレータに連絡して設定値を変えさせる必要があるので、現場の状況に即した調整を行い難いという問題がある。従来技術・・・では、遠隔の管理端末により制御装器の設定値を変更することができるものの、現場で設定変更及びその理由の記録を行えるものではなかった。」(段落【0004】)ことを解決すべき課題とするところ、本件訂正前の請求項1には、「タッチパネル」の配置(現場にあるのか、遠隔地にあるのか)についての記載はなく、タッチパネルが現場以外に配置された場合には上記課題を解決し得ないから、本件訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2~5に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(2)理由2についての検討
本件発明2、4~5は、本件訂正により、「前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネル」と訂正され、タッチパネルが現場に配置されていることが特定されたことにより、上記課題を解決し得るものとなった。
(3)小括
以上により、本件発明2、4~5に係る特許及び本件発明2を引用する本件発明3に係る特許について、上記取消理由2により取り消すことはできない。
3 取消理由3(進歩性欠如)について
取消理由3は、本件訂正前の請求項1、3に係る発明は甲第1号証~甲第2号証、甲第5号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を通知した取消理由であるところ、特許権者は、本件訂正により、取消理由3が通知されていない本件訂正前の請求項2、4~5に係る発明に、「タッチパネル」が「前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され」と限定して明確化し、「設定変更手段」について「その内容を確認する画面を表示し」とあったのを「前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し」と、画面に表示される内容を明確化する訂正を行って、本件発明2、4~5としたものであるから、本件発明2、4~5に係る特許及び本件発明2を引用する本件発明3に係る特許について、上記取消理由3により取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった申立人の申立理由の概要
1 申立理由の概要
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、取消理由通知において採用しなかった申立人の申立理由の要旨は、以下のとおりである。
なお、当審は、令和5年8月10日付けで、申立人に対して訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は応答しなかった。
申立理由1(進歩性欠如)本件訂正前の請求項2、4~5に係る発明は、下記2の甲第1号証~甲第7号証に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるから、本件訂正前の請求項2、4~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
申立理由2(サポート要件違反)本件特許は、本件訂正前の請求項1~5の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
申立理由3(明確性要件違反)本件特許は、本件訂正前の請求項1~5の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 証拠
甲第1号証(上記第4の2を参照。)
甲第2号証(上記第4の2を参照。)
甲第3号証:特開2001-306139号公報
甲第4号証:特開2015-94591号公報
甲第5号証(上記第4の2を参照。)
甲第6号証:特開2018-10883号公報
甲第7号証:特開2017-102570号公報
(以下「甲1」などという。)
第7 取消理由通知において採用しなかった申立理由1(進歩性欠如)についての判断
1 本件発明2について
(1)甲1の記載
【0001】
本発明は、試料を収容したロータを回転させることによって試料を遠心分離するための遠心分離機に関する。
・・・
【0003】
従来より、GMP(Good Manufacturing Practice)というワクチンや医薬品の製造に関するソフト面およびハード面の規範が決められており、これに適合した設備や管理の下で製造しなければならないことが義務付けられている。GMPの要求を満足するためには、遠心分離機を使用する工程を含むすべての工程を管理するための膨大な資料を必要とし、これらの資料は紙による保管を余儀なくされてきていた。遠心分離機の回転数、温度、運転時間等の運転条件と、当該運転条件にて運転された過程の時系列的な記録たる運転状態はすべて管理されるが、オペレータが記録した紙によるデータだけしか残らないため、記載ミスや記載漏れなどの人為的なミスが発生することがある。
【0004】
近年、このような紙による資料の保管による不都合を解消するために、紙の代わりに電子データを正式な書類として管理することを認めるガイドライン(米国FDA 21CFR Part11:電子記録・電子署名に関するガイドライン)が制定されている。当該ガイドラインには、遠心分離機の運転条件と運転状態の記録以外に、遠心分離機をいつ、だれが、どのような操作を行ったか、また、遠心分離機の異常発生状況等を運転過程と共に時系列的に記録していき、医薬品製造の過程・状態を追跡できる監査証跡記録が含まれている。
・・・
【0008】
また、このような遠心分離機では、遠心分離機の運転記録の電子データ以外に、遠心分離機の操作や運転状態を随時記録する監査証跡機能があり、製品となるワクチンの製造工程における運転記録電子データと最終的にトレースが取れるように管理される。
・・・
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態による遠心分離機について図1乃至図7に基づき説明する。図1に示されるように遠心分離機1は、ワクチン製造工程などに使用されるいわゆる連続超遠心分離機であり、遠心分離部100と制御装置部200とを備えている。遠心分離部100と制御装置部200との間は配線・配管群50で接続されている。
・・・
【0022】
エバポレータ102は、チャンバ101の内部を冷やすことができるように冷媒ガスを循環させる銅配管で構成されており、チャンバ101の内部を冷却可能である。また、チャンバ101の内部には温度センサ105が設けられており、制御装置部200(図1)は、チャンバ101の内部温度が設定された温度になるようにコントロールする。
・・・
【0029】
制御装置部200には、図3に示されるように、チャンバ101(図1等)内部の遠心室全体を冷却するための冷凍機201A、駆動部130を冷却するための冷凍機201B、チャンバ101内部の遠心室を減圧された状態にするための真空ポンプ202、上部駆動部130を所定の場所に移動させるためのリフト駆動装置203、モータ駆動回路と入出力回路とCPU回路とからなる電気制御部212等が収容されている。制御装置部200は制御部に相当する。
【0030】
また、制御装置部右側面に遠心分離機1のメインブレーカ220が設けられており、また、制御装置部200の上部に、ユーザーインターフェース機能と遠心分離機1の運転記録である運転記録電子データや監査証跡データなどを記憶する機能とを備えた操作部240が設置されている。操作部240はタッチパネル型のパソコンにより構成されており、操作パネル250、及び運転記録を保管するための図示せぬハードディスクを備え、図示せぬハードディスクに記録された電子データの内容を出力可能な図示せぬプリンタ等の出力手段に接続されている。図示せぬハードディスクは記録手段に相当する。操作パネル250は操作部に相当する。
【0031】
操作パネル250の画面においては、図4に示されるような基本画面260と、図5に示されるような監査証跡記録項目の設定画面300と、図示せぬプリントアウト画面とを切換えて表示可能である。図4に示されるように、操作パネル250の基本画面260は、回転速度の状態を表示する回転速度表示部261と、運転する回転速度を表示する設定回転速度表示部262と、運転の経過時間を表示する運転時間表示部263と、設定した運転時間を表示する設定時間表示部264と、チャンバ101内の温度を表示する測定温度表示部265と、チャンバ101内を保持する温度を表示する設定温度表示部266と、図示せぬIDコードとパスワードで遠心分離機1にログインできるようにするためのIDコード・パスワード・ユーザ名を登録するためのユーザリストボタン270と、時刻設定や監査証跡記録項目の設定画面を表示するためのユーザカスタマイズボタン271と、監査証跡データを参照するための監査証跡リストボタン272と、運転記録電子データの参照や印刷などを行うための運転記録ボタン273とを有している。
【0032】
回転速度についての回転速度表示部261、設定回転速度表示部262は、上段が状態表示で下段が設定値表示となっている。即ち、現在のロータ120の回転数は0rpmであり、10000rpmでロータ120が回転するように設定されている。同様に、時間についての運転時間表示部263、設定時間表示部264は、上段が状態表示で下段が設定値表示となっており、温度についての測定温度表示部265、設定温度表示部266は、上段が状態表示で下段が設定値表示となっている。各設定値を変更する際には、設定変更する表示欄の上段または下段をタッチすると図示せぬキーボードが操作パネル250に表示され、キーボードにタッチして設定値を入力することができるように構成されている。入力された設定値は図示せぬハードディスクに電子データとして記憶されるように構成されている。
【0033】
また、図4に示されるように、操作パネル250の基本画面260は、真空ポンプONボタン267と、真空ポンプOFFボタン275と、スタートボタン268と、ストップボタン269と、ログアウトボタン274とを有している。真空ポンプONボタン267は、制御部200内の真空ポンプ202を動作させチャンバ101内の遠心室を減圧された状態とする。真空ポンプOFFボタン275は、真空ポンプ202の動作を停止し、チャンバ101内に空気を導入し大気状態とする。真空ポンプONボタン267をオンするとチャンバ101内の温度コントロールを開始し、設定温度表示部266に表示されている温度に保持するように冷凍機201Aを電気制御部212で制御し、チャンバ101内の温度センサ105で検出した温度を操作パネル250の測定温度表示部265に表示する。真空ポンプONボタン267をオンして運転準備完了後、スタートボタン268を押すことで、ロータ120の回転が開始し、ロータ120の回転速度が設定回転速度表示部262に表示された回転速度となるように電気制御部212は制御する。
・・・
【0035】
図5に示されるように、ユーザカスタマイズ画面から表示される監査証跡記録項目の設定画面300では、監査証跡データとして記録する項目を選択可能であり、図5では代表的な監査証跡記録項目を例として図示している。監査証跡記録項目の設定画面300では、運転に関する項目301と遠心分離機1の運転以外の管理項目(操作状況項目)302とにグループ分けして表示され、選択し易い構成をなしている。運転に関する項目301は運転状態項目選択部に相当し、運転に関する項目301の一部及び遠心分離機1の運転以外の管理項目302は遠心分離機の操作状況項目選択部に相当する。なお、項目301及び項目302で選択されて電子データとして記録するものを監査証跡データいう。
・・・
【0037】
記録項目として登録された項目は、電子データとして図示せぬハードディスクに記憶されている。運転に関する項目301の全項目は運転状態に関する複数項目に相当し、運転に関する項目301の全項目及び遠心分離機1の運転以外の管理項目302の全項目は監査証跡として記録する複数項目に相当する。
・・・
【0040】
IDコードとパスワード設定後、操作パネル250が図4に示される基本画面260となり、設定回転速度表示部262、設定時間表示部264、設定温度表示部266を操作して回転速度、運転時間、温度の運転条件を設定する(S403)。次に、ロータを回転可能な状態にする準備を行う(S404)。
【0041】
次に、基本画面260において真空ポンプオンボタン267をオンして真空ポンプを動作させ(S405)、運転開始のスタートボタン268をオンする(S406)。すると、それ以降10秒毎に電子データとして運転状態を記録し始める(S407)。この場合、運転状態として記録されるのは、実際の回転速度・運転時間・運転開始時刻・温度であり、これらは図示せぬハードディスクに記録される。そして、遠心分離機1は、設定回転速度たる10000rpmまで加速し(S407)、当該設定回転速度で整定する(S408)。
【0042】
基本画面260で設定した運転時間たる2時間が経過したら減速を開始し(S410)、回転速度が0rpmとなったら運転停止とし(S411)、運転停止時刻を図示せぬハードディスクに電子データとして記録し、電子データの記録を停止する(S412)。運転が停止した後、真空ポンプオフボタン275をオンし真空ポンプを停止させてチャンバ101内部に空気を導入し減圧した状態を解除し(S413)、ロータをチャンバ101から取り出す(S414)。最後に運転終了のためLOGOUTボタン274を押すことでLOGOUTした時刻を図示せぬハードディスクに電子データとして記録し(S415)、メインブレーカ220をオフすることにより、制御装置部200への電力供給をストップさせる(S416)。
【0043】
以上の遠心分離機1の一回の運転により、図7に示されるような監査証跡記録リスト画面500が操作パネル250に表示可能となる。電子データとして図示せぬハードディスクに記録された遠心分離機1の運転の日付け502、記録項目503、ユーザ名504等が表示されており、記録項目503中の設定回転速度変更、設定時間変更、設定温度変更については、設定値の変更前と変更後が共に記憶されているため表示され、設定値の変更履歴として参照することが可能である。
図1
[図:0001406697000001.jpg]
図4
[図:0001406697000002.jpg]
図5
[図:0001406697000003.jpg]
図6
[図:0001406697000004.jpg]
図7
[図:0001406697000005.jpg]
(2)甲1から理解できる事項
ア 甲1の段落【0030】~【0032】、【0035】、図4、5の記載等から、甲1の操作部240はタッチパネル型のパソコンにより構成され、その操作パネル250は、基本画面260及び設定画面300を表示して、操作者による操作を受け付ける設定画面であり、基本画面260は、設定回転速度、設定時間、設定温度等の項目の設定値を変更するための設定入力値(入力された設定値)を受け付ける画面であることが理解できる。また、段落【0032】から、設定入力値をハードディスクに記録していることも理解できる。
イ 甲1の段落【0032】、【0033】、【0040】~【0042】の記載から、甲1の遠心分離機1が、操作者の設定入力値を、制御装置部200の設定値に反映させる手段(設定変更手段)を備えることが理解できる。
ウ 甲1の段落【0019】、【0030】、図1等から、甲1のタッチパネル型のパソコンにより構成された操作部240の操作パネル250は、制御装置部200及び遠心分離部100が配備された現場に配置されていることが理解できる。
(3)甲1発明
上記(1)、(2)からみて、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「ワクチン製造工程などに使用される遠心分離部100と、
設定値に基づいて前記遠心分離部100を制御する制御装置部200と、
前記制御装置部200及び前記遠心分離部100が配備された現場に配置され、基本画面260及び設定画面300を表示するとともに、操作者による操作を受け付けるタッチパネル型のパソコンにより構成された操作部240の操作パネル250と、を備えた監査証跡機能を有する遠心分離機1であって、
前記操作パネル250は、
前記設定値を変更するための基本画面260及び設定画面300を表示し、前記基本画面260を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得するキーボードと、
前記設定入力値を記録するハードディスクと、
前記キーボードで取得した前記設定入力値を前記制御装置部200の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値を取得した後、前記設定入力値を前記制御装置部200の前記設定値に反映させる
監査証跡機能を有する遠心分離機1。」
(4)対比
甲1発明の「ワクチン製造工程などに使用される」は、その機能等に照らせば、本件発明2の「医薬品、飲料又は食品を製造する」に相当し、以下同様に、「遠心分離部100」は「処理装置」に、「設定値」は「設定値」に、「制御装置部200」は「制御装置」に、「基本画面260及び設定画面300」は「設定画面」に、「操作者」は「利用者」に、「タッチパネル型のパソコンにより構成された操作部240の操作パネル250」は「タッチパネル」に、「設定値を更新するための設定入力値を取得するキーボード」は「設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段」に、「設定入力値を記録するハードディスク」は「設定入力値を記録する記録手段」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「監査証跡機能を有する遠心分離機1」は、甲1の段落【0008】に「また、このような遠心分離機では、遠心分離機の運転記録の電子データ以外に、遠心分離機の操作や運転状態を随時記録する監査証跡機能があり、製品となるワクチンの製造工程における運転記録電子データと最終的にトレースが取れるように管理される。」との記載があることに鑑みれば、本件発明2の「監査証跡の管理システム」に相当するといえる。
以上から、本件発明2と甲1発明を対比すると、以下の一致点で一致し、以下の相違点1~3で相違する。
<一致点>
医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、
設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、
前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、
前記タッチパネルは、
前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、
前記設定入力値を記録する記録手段と、
前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる、
監査証跡の管理システム。
<相違点1>
本件発明2は、「前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段」を備え、記録手段に、「前記理由」を記録するのに対して、甲1発明は、理由取得手段を備えていない点。
<相違点2>
本件発明2では、設定入力値を制御装置の設定値に反映させるのが、「前記理由取得手段により前記理由を取得した後」及び「前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件」としているのに対し、甲1発明は、設定入力値を制御装置の設定値に反映させることについての条件等は特定されていない点。
<相違点3>
本件発明2は、「前記記録手段は、(a)前記設定値取得手段により前記設定入力値を取得したこと、(b)前記理由取得手段により前記理由を取得したこと、を時系列に並べて記録するとともに、前記(a)及び前記(b)に対となる所定の文字情報を付す」としているのに対し、甲1発明は、設定入力値を取得したことと、理由を取得したこととを時系列に並べて記録するとともに、それらに対となる所定の文字情報を付すことは特定されていない点。
(5)判断
事案に鑑みて、相違点3について検討する。
相違点3に係る本件発明2の構成である「前記記録手段は、(a)前記設定値取得手段により前記設定入力値を取得したこと、(b)前記理由取得手段により前記理由を取得したこと、を時系列に並べて記録するとともに、前記(a)及び前記(b)に対となる所定の文字情報を付す」ことは、甲2~甲7のいずれにも記載されていない。
また、上記相違点3に係る本件発明2の構成により、本件明細書等の段落【0050】に記載されているとおり、「また、本実施形態の記録手段26は、3番目の記録と、5番目の記録とに対となる所定の文字情報として「▼▼▼」「▲▲▲」が付されている。このように、設定入力値を取得した記録と、理由を取得した記録とに文字情報を伏すことで、設定変更の理由がどの設定入力値を対象としたものかを容易に把握することができる。ちなみに、このような文字情報が付されていない場合は、設定を変えるために入力した設定入力値と、その理由とが異なる時間に記録され、設定入力値に対する設定変更の理由が一見して判別しにくい。」との効果を奏するものである。
以上から、その他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2~甲7に記載の技術的事項に基づいて、当業者が本件発明2とすることが容易になし得るということはできない。
(6)本件発明2についての申立人の主張
申立人は、本件訂正前の請求項2の進歩性欠如について、特許異議申立書(19ページ)において、甲3には、相違点3に係る本件発明2の構成に相当する記載があるし、そもそも「設定入力値」とそれに対応する「理由」とを対応づけることは、当業者にしてみれば単なる設計事項に過ぎない旨を主張している。
しかしながら、甲3に、「また、変更されたデータ及びコメントなどの情報は、ログ情報格納手段15に出力され、パラメータのデータの変更が確定した時間のデータとともにログデータとしてログファイル16に格納される(ステップ38)。さらに、ログファイル16に格納されたログデータは、図5に示すように、従来のログデータとともに時系列に印刷装置4で印刷され、出力される。」(段落【0021】)等の記載や下記図5の図示があるとしても、甲3には、記録手段において、時系列に並べて記録された設定入力値及び理由に対して、対となる所定の文字情報を付すことは記載されていない。
また、記録手段において、設定入力値及び理由に、対となる所定の文字情報を付すことにより、上記効果を奏するものであり、単なる設計事項ということもできない。
以上から、申立人の主張は採用できない。
<甲3の図5>
[図:0001406697000006.jpg]
2 本件発明3について
本件発明3は、本件発明2を引用するから、本件発明3と、甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記1(4)で示した相違点1~3で相違する。
そして、相違点3について、甲1発明及び甲2~甲7に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得るということはできないことは、上記1(5)で説示したとおりであるから、本件発明3も同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲7に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得るということはできない。
3 本件発明4について
上記1の本件発明2についての検討の内容に鑑みれば、本件発明4と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点4~6で相違する。
<一致点>
医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、
設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、
前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、
前記タッチパネルは、
前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、
前記設定入力値を記録する記録手段と、
前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる、
監査証跡の管理システム。
<相違点4>
本件発明4は、「前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段」を備え、記録手段に、「前記理由」を記録するのに対して、甲1発明は、理由取得手段を備えていない点。
<相違点5>
本件発明4では、設定入力値を制御装置の設定値に反映させるのが、「前記理由取得手段により前記理由を取得した後」及び「前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件」としているのに対し、甲1発明は、設定入力値を制御装置の設定値に反映させることについての条件等は特定されていない点。
<相違点6>
本件発明4は、「前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記設定値取得手段は、ある運転モードにおいて前記設定入力値及び前記理由を取得した後、別の運転モードに切り替えられた際には、前記運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に前記設定入力値を受け付ける」としているのに対し、甲1発明は、複数の運転モードを有し、ある運転モードにおいて設定入力値及び理由を取得した後、別の運転モードに切り替えられた際には、運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に設定入力値を受け付けることは特定されていない点。
(5)判断
事案に鑑みて、相違点6について検討する。
相違点6に係る本件発明4の構成である「前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記設定値取得手段は、ある運転モードにおいて前記設定入力値及び前記理由を取得した後、別の運転モードに切り替えられた際には、前記運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に前記設定入力値を受け付ける」ことは、甲2~甲7のいずれにも記載されていない。
また、上記相違点6に係る本件発明4の構成により、本件明細書等の段落【0072】に記載されているとおり、「実務上、通常運転にて設定を変更した者と、メンテナンスモードで保守作業をする者とは異なる場合がある。このような場合であっても、保守作業者がメンテナンスモードにおいてタッチパネル20を操作して設定を変更しようとする場合は、必ず、確認画面90を確認することになる。したがって、通常運転における設定が変わったことを確認した上で、より適切なメンテナンスをすることができる。このことは、運転モードの変更にともない作業担当者が変更されたときに特に有用である。」との効果を奏するものである。
以上から、その他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2~甲7に記載の技術的事項に基づいて、当業者が本件発明4とすることが容易になし得るということはできない。
(6)本件発明4についての申立人の主張
申立人は、本件訂正前の請求項4の進歩性欠如について、特許異議申立書(19~20ページ)において、甲6~甲7には、「制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる設定値を設定可能である」点が記載されており、かかる技術思想は周知であり、「別の運転モードに切り替えられた際に」、「運転モードの変更があったことを表示する」こと、「当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に前記設定入力値を受け付ける」ことは、誤操作、誤入力を防止するという観点からは、当業者にとって単なる設計事項に過ぎない旨の主張をしている。
しかしながら、「制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる設定値を設定可能である」ことが一般的に知られている事項であるとしても、相違点6に係る本件発明4の「前記設定値取得手段は、ある運転モードにおいて前記設定入力値及び前記理由を取得した後、別の運転モードに切り替えられた際には、前記運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に前記設定入力値を受け付ける」との構成は、甲2~7にも記載されていない。
また、別の運転モードに切り替えられた際には、運転モードの変更があったことを表示するとともに、当該運転モードの変更を確認した旨の操作がなされたことを条件に設定入力値を受け付けることにより、上記効果を奏するものであり、誤操作、誤入力を防止するという観点を考慮した単なる設計事項ということもできない。
以上から、申立人の主張は採用できない。
4 本件発明5について
上記1の本件発明2についての検討に鑑みれば、本件発明5と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点7~9で相違する。
<一致点>
医薬品、飲料又は食品を製造する処理装置と、
設定値に基づいて前記処理装置を制御する制御装置と、
前記制御装置及び前記処理装置が配備された現場に配置され、設定画面を表示するとともに、利用者による操作を受け付けるタッチパネルと、を備えた監査証跡の管理システムであって、
前記タッチパネルは、
前記設定値を変更するための設定画面を表示し、前記設定画面を介して前記設定値を更新するための設定入力値を取得する設定値取得手段と、
前記設定入力値を記録する記録手段と、
前記設定値取得手段で取得した前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる設定変更手段と、を備え、
前記設定変更手段は、前記設定入力値を前記制御装置の前記設定値に反映させる、
監査証跡の管理システム。
<相違点7>
本件発明5は、「前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、前記理由入力画面を介して入力された理由を取得する理由取得手段」を備え、記録手段に、「前記理由」を記録するのに対して、甲1発明は、理由取得手段を備えていない点。
<相違点8>
本件発明5では、設定入力値を制御装置の設定値に反映させるのが、「前記理由取得手段により前記理由を取得した後」及び「前記設定入力値及び前記理由を取得した後、前記設定入力値の変更があった旨を確認する画面を表示し、当該画面において確認する旨の操作がなされたことを条件」としているのに対し、甲1発明は、設定入力値を制御装置の設定値に反映させることについての条件等は特定されていない点。
<相違点9>
本件発明5は、「前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記理由取得手段は、前記運転モードごとに選択可能な前記理由を表示する」としているのに対し、甲1発明は、複数の運転モードを有し、運転モードごとに異なる設定値を設定可能であり、運転モードごとに選択可能な理由を表示することは特定されていない点。
(5)判断
事案に鑑みて、相違点9について検討する。
相違点9に係る本件発明5の構成である「前記制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる前記設定値を設定可能であり、前記理由取得手段は、前記運転モードごとに選択可能な前記理由を表示する」ことは、甲2~甲7のいずれにも記載されていない。
また、上記相違点9に係る本件発明5の構成により、本件明細書等の段落【0075】に記載されているとおり、「このような構成の管理システム1によれば、タッチパネル20の操作者は、運転モードに適した設定変更の理由を選択することができる。また、そのような理由を予め作成するためには、運転モードごとに想定しうる設定変更の理由を洗い出すことになるから、設備におけるリスクアセスメントを促進することができる。」との効果を奏するものである。
以上から、その他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2~甲7に記載の技術的事項に基づいて、当業者が本件発明5とすることが容易になし得るということはできない。
(6)本件発明5についての申立人の主張
申立人は、本件訂正前の請求項5の進歩性欠如について、特許異議申立書(20ページ)において、甲6~甲7には、「制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる設定値を設定可能である」点が記載されており、かかる技術思想は周知であり、「運転モードごとに」、設定変更の理由が相違することは自明であることから、「前記理由取得手段は、前記運転モードごとに選択可能な前記理由を表示する」ことについて、当業者にしてみれば単なる設計事項に過ぎない旨の主張をしている。
しかしながら、「制御装置は、複数の運転モードを有し、前記運転モードごとに異なる設定値を設定可能である」ことが一般的に知られている事項であるとしても、相違点9に係る本件発明5の「前記理由取得手段は、前記運転モードごとに選択可能な前記理由を表示する」との構成は甲2~甲7に記載されていないし、運転モードごとに、設定変更の理由が相違することが自明であるとまではいうことができない。
また、運転モードごとに異なる設定値を設定可能であることにより、上記効果を奏するものであり、単なる設計事項ということもできない。
以上から、申立人の主張は採用できない。
5 小括
以上により、本件発明2、4~5に係る特許及び本件発明2を引用する本件発明3に係る特許は、申立人の主張する申立理由1によっては取り消すことはできない。
第8 取消理由通知において採用しなかった申立理由2(サポート要件違反)及び申立理由3(明確性要件違反)についての判断
1 申立理由2及び申立理由3の具体的な内容
本件明細書等の段落【0005】、【0008】の記載から、「操作性」が「よいこと」が本件において重要な課題であると捉えることができるところ、本件訂正前の請求項1に係る発明を参照してみても、そのための手段が反映されていない。
本件訂正前の請求項1に係る発明に「・・・選択的に入力・・・」という記載はあるものの、例えば、文字入力のためのキーボードを表示し、作業員にキーボードを入力させるような場合であっても、「限りある文字群」の中から「特定の文字」を「選択的に入力」させることには相違はないから、本件訂正前の請求項1に係る発明はサポート要件に違反する[申立理由2]。また、何をもって選択的であり、どのような場合に選択的でないのか、外延が不明確であり、結果として発明が不明確である[申立理由3]。(特許異議申立書3.(4)エ.(b)21~22ページ)
2 申立理由2及び申立理由3についての検討
本件明細書等の段落【0005】、【0008】に記載された課題を解決するための手段に関して、本件明細書等の段落【0061】には「また、操作者は、設定変更の理由を、タッチパネル20を用いてタップして選択するだけで入力することができる。このように管理システム1は、現場において文字入力することなく設定変更の理由を入力することができるので、非常に操作性に優れたものである。」と記載されているところ、本件発明2、4~5には、「前記タッチパネルは、・・・前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、」と特定されているから、本件発明2、4~5及び本件発明2を引用する本件発明3には、本件明細書等の段落【0005】、【0008】に記載の課題を解決するための手段が反映されているといえる。
なお、申立人は、本件発明2、4~5の「選択的に入力」との記載について、文字入力のためのキーボードを表示し、作業員にキーボードを入力させるような場合であっても、「限りある文字群」の中から「特定の文字」を「選択的に入力」させることには相違はない旨を主張しているが、本件発明2、4~5の「理由を選択的に入力するための理由入力画面」について、本件明細書等の段落【0041】~【0045】及び図5等には、例えば、まず理由入力画面70に複数の理由選択ボタン71(例えば「有効期限切れ」、「一時変更」等)を表示して、該当する理由があれば当該理由の理由選択ボタン71を選択し、該当する理由がない場合(「その他」と表示された理由選択ボタン71を選択する場合)には、キーボードを表示することが記載されており、タッチパネルの画面にキーボードを表示し、作業員にキーボードを入力させるような場合であっても、操作性を良くすることは可能であり、必ずしもタッチパネルにキーボードを表示することにより上記課題が解決し得ないということはできない。
さらに、本件発明2、4~5の「前記タッチパネルは、・・・前記設定値を変更する理由を選択的に入力するための理由入力画面を表示し、」との構成については、本件明細書等の段落【0041】~【0045】及び図5等を参酌すれば、明確に理解できるものであるから、不明確であるということもできない。
3 小括
以上により、本件発明2、4~5に係る特許及び本件発明2を引用する本件発明3に係る特許は、申立人の主張する申立理由2及び申立理由3によっては取り消すことはできない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、請求項2~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項2~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、請求項1に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、本件特許異議の申立てについて、請求項1に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700148