特許異議申立
2023-700642
生産設備におけるパーツ交換作業を支援するシステム、処理装置、および方法
- 審判番号
- 2023-700642
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-093718
- 登録番号
- 7199766
- 請求日
- 2023年06月19日
- 審決日
- 2023年11月08日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社マイクロ・テクニカ
- 【権利者代理人】奥田 誠司
- 【権利者代理人】川喜田 徹
- 【異議申立人】平賀 博
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 大山 健
- 審判官 渋谷 善弘
- 分類
- P1651.121-Y (G05B) / P1651.537-Y (G05B) / P1651.536-Y (G05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7199766号発明「生産設備におけるパーツ交換作業を支援するシステム、処理装置、および方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7199766号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7199766号の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和4年6月9日に出願され、同年12月23日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月6日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和5年6月16日(同月19日差出)に特許異議申立人 平賀 博(以下「申立人」という。)により請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立てがなされた。
第2 本件発明
特許第7199766号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11の特許に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などという。また、総合して、「本件発明」という場合がある。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
A パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する作業支援システムであって、
B 各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
C 前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み、
D 生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを記憶する記憶装置と、
E 前記データを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させる処理装置と、
F 各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーと、
を備え、
G 前記処理装置は、
G1 前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、
G2 前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定し、
G3 判定結果を前記表示装置に表示させる、
H 作業支援システム。
【請求項2】
I 前記差分パーツリストは、
直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせのうち、前記生産設備から取り外すべき1つ以上の取り外しパーツを示す取り外しパーツリストと、
次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせのうち、前記生産設備に新たに取り付けるべき1つ以上の取り付けパーツを示す取り付けパーツリストと、
を含む、請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
J 前記処理装置は、前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記取り外しパーツリストに含まれるか否かを判定し、前記パーツが前記取り外しパーツリストに含まれる場合、表示される前記取り外しパーツリストに前記パーツの読み取りが完了したことを示す情報を付加する、請求項2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
K 前記処理装置は、前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記取り付けパーツリストに含まれるか否かを判定し、前記パーツが前記取り付けパーツリストに含まれる場合、表示される前記取り付けパーツリストに、前記パーツの読み取りが完了したことを示す情報を付加する、請求項2に記載の作業支援システム。
【請求項5】
L 前記処理装置は、前記画像に基づいて、前記スケールまたはインジケータの数値を認識し、認識した前記数値に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定する、請求項1から4のいずれかに記載の作業支援システム。
【請求項6】
M 前記生産設備には位置合わせ用のマーカーが設けられ、
前記処理装置は、前記位置合わせパーツおよび前記マーカーを前記カメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記マーカーに対する前記位置合わせパーツの相対位置を計測し、前記相対位置に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定する、
請求項1から4のいずれかに記載の作業支援システム。
【請求項7】
N 前記カメラをさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の作業支援システム。
【請求項8】
O 前記カメラを含むスマートグラスをさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の作業支援システム。
【請求項9】
P 前記スマートグラスは、前記表示装置をさらに含む、請求項8に記載の作業支援システム。
【請求項10】
A‘ パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する作業支援システムにおいて用いられる処理装置であって、
B 各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
C 前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み、
E‘ 生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、
前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させ、
G1 各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、
G2 前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定し、
G3 判定結果を前記表示装置に表示させる、
G 処理装置。
【請求項11】
A“ パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する方法であって、
B 各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
C 前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み、
E“ 生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定するステップと、
前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させるステップと、
G1‘ 各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定するステップと、
G2‘ 前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定するステップと、
G3‘ 判定結果を前記表示装置に表示させるステップと、
を含む方法。」
(なお、符号A~G3‘は、申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)8~12ページにおいて、本件発明を分説して、それぞれの構成に付したものである。また、以下、それぞれ「構成A」などという。)
第3 申立理由の概要
申立人が提出した証拠及び申立人による特許異議申立理由の概要は以下のとおりである。
1 申立人が提出した証拠
申立人が提出した証拠である甲第1号証~甲第15号証は、以下のとおりである。(以下、甲各号証を「甲1」などという。)
甲1:特開2021-142613号公報
甲2:特開昭64-34629号公報
甲3:特開2004-102482号公報
甲4:特開2021-64356号公報
甲5:特開2014-34042号公報
甲6:特開2021-44416号公報
甲7:再公表特許WO2019/167445
甲8:特開2000-211106号公報
甲9:特開2017-13969号公報
甲10:特開2021-137941号公報
甲11:特開平4-53653号公報
甲12:特開平7-204993号公報
甲13:特開2018-203418号公報
甲14:特開2021-93161号公報
甲15:特開2006-285303号公報
2 申立の理由の概要
申立人は、請求項1~11に係る特許は、以下の理由(1)~(2)により取り消されるべきものである旨を申立している。(申立書8ページ)
(1)申立理由1(本件発明1~11についての進歩性欠如)
本件発明1~11は、甲1~甲15記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
特に、申立人は、独立請求項である本件発明1、10、11について、甲1に記載された発明及び甲8~15に記載されているような周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。(申立書31~33ページ)
(2)申立理由2(本件発明1~11についての記載不備)
請求項1~11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号、同項第2号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第4 甲1に記載された事項及び発明等について
1 甲1の記載事項(なお、下線部は当審で付した。以下同様。)
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタのようなNC(Numerical Control)工作機械は、加工プロセスを記述したNCプログラムに従って制御される。NCプログラムに記述された個々の加工プロセスに必要な工具付き工具ホルダは、工具マガジンから選択され、自動工具交換装置を介して工作機械本体へ供給される。そのため、工具マガジン内にはNCプログラムを実行するために必要な全ての工具ホルダが、NCプログラムで指令される加工番号を付与されて、個別の番号が付された工具ポットに装着された状態で収納されている。NCプログラムに従った加工制御を行うため、工具マガジン内に収納されている全ての工具ホルダに関する工具データが必要となる。
・・・
【0023】
工具管理システム1は、マシニングセンタ7でのワークの加工に用いられる工具21が取り付けられた工具ホルダ2を、一括管理するシステムである。工具管理システム1は、管理対象となる複数の工具ホルダ2と、工具データベース3と、CAM(Computer Aided Manufacturing)4と、工具寸法測定装置5と、マシニングセンタ7と、端末6とを備えている。工具データベース3、CAM4、工具寸法測定装置5、マシニングセンタ7、および端末6は、ネットワーク9を介して互いに接続されている。
【0024】
各工具ホルダ2は、刃物である工具21を保持している。工具ホルダ2には、固有の識別子(以下「工具番号」という)を特定するためのコード情報としてのQRコード(登録商標)23が付与されている。「識別子」は、数字に限定されず、記号、アルファベットなどで表されてもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。QRコード23は、本体部22の外周面の一部分に設けられた平坦面に、マーキングされている。なお、以下の説明において、工具ホルダ2は、特筆しない限り、工具21が取り付けられた「工具付き工具ホルダ」を意味する。
【0025】
工具データベース3は、各工具ホルダ2に関する工具種類(フライス、ドリル、など)、補正値、ならびに寿命値などを含む工具データを、工具番号に対応付けて記憶している。工具データのデータ構造例については後述する。
【0026】
CAM4は、プログラム作成装置であり、マシニングセンタ7での加工に用いられる加工プログラム、すなわちNCプログラム41を作成する。また、NCプログラム41に記述されたプログラム上の識別子(以下「加工番号」という)ごとの対応リスト42を作成する。対応リスト42には、NCプログラム41に記述された全ての加工番号と、それぞれの加工番号に対応する使用工具情報とが記述されている。使用工具情報は、工具種類、工具径、および工具長を含む。なお、加工番号は、通常、TNo.で表される識別子である。NCプログラム41および対応リスト42は、ネットワーク9を介して他装置に送信される。
【0027】
工具寸法測定装置5は、ツールプリセッタと称される装置であり、測定部51および操作パネル52を備えている。工具寸法測定装置5は、上述の対応リスト42に基づいて、加工番号ごとに、測定部51にセットされた工具ホルダ2の形状(工具長および工具径)を測定して、工具レイアウトデータ54を作成する。より具体的には、対応リスト42に基づいて工具データベース3を参照して、プログラム上の加工番号ごとに適した工具ホルダ2の工具データを抽出し、操作パネル52に表示する。そして、工具21の形状の測定結果に基づいて、マシニングセンタ7での制御に用いられる工具レイアウトデータ54を作成する。工具レイアウトデータ54は、加工番号に対応付けて、工具種類、および、工具長/工具径補正値を記述したデータである。
【0028】
マシニングセンタ7は、複数のポット72が設けられた工具マガジン71を有しており、NCプログラム41および工具レイアウトデータ54に基づいて、工具マガジン71に取り付けられた工具ホルダ2を選択的に用いてワークを加工する。具体的には、工具マガジン71のポット72に、ワークの加工に用いられる全ての工具ホルダ2が収容されており、加工部73の主軸に、工具マガジン71に収容されている工具ホルダ2のうちの一つが取り付けられる。工具マガジン71の制御は主にPMC(Programable Machine Controller)装置によって実行され、加工部73の制御は主にNC装置によって実行される。
【0029】
上述のように、マシニングセンタ7は、プログラム上の加工番号に基づいて作動する。これに対し、工具データベース3においては、工具ホルダ2そのものの工具番号に基づいて工具データが管理されている。そのため、工具管理システム1は、マシニングセンタ7での加工前に、工具データベース3上において工具番号と加工番号とをリンクさせる(関連付ける)ことで、工具ホルダ2の一元管理を可能にしている。また、このような一元管理を実現するために、工具寸法測定装置5に、工具ホルダ2のQRコード23を読み取るためのリーダ53を設ける(接続する)とともに、マシニングセンタ7の近傍に、リーダ62付きの端末6を設けている。
【0030】
リーダ53は、工具寸法測定装置5による測定対象の工具ホルダ2に付与されたQRコード23を読み取る。リーダ62は、工具マガジン71に取り付ける工具ホルダ2または工具マガジン71から取り外す工具ホルダ2に付与されたQRコード23を読み取る。リーダ53,62は、たとえば光学式の読み取り手段である。
・・・
【0034】
図3(A)を参照して、工具データベース3は、管理対象の工具ホルダ2の個数(n個)分の工具データ30を格納している。各工具データ30は、複数の項目I1~I7を有している。項目I1は、マシニングセンタ(M/C)7の識別子(以下「機械番号」という)を記憶する。項目I2は、プログラム上の加工番号(TNo.)を記憶する。項目I3は、形状に関する工具長の補正値を記憶する。項目I4は、形状に関する工具径の補正値を記憶する。項目I5は、摩耗状態に関する工具長の補正値を記憶する。項目I6、摩耗状態に関する工具径の補正値を記憶する。項目I7は、工具寿命値を記憶する。工具寿命値は、工具ホルダ2に固定された工具21の使用時間または使用回数などに基づき算出される。なお、各工具データ30は、工具種類を記憶する項目をさらに有している(図示せず)。
・・・
【0037】
(工具寸法測定装置について)
図1および図2(A)を参照して、工具寸法測定装置5は、マシニングセンタ7でのワークの加工に用いられる工具ホルダ2の形状を測定する際に実行される機能として、検索部501と、測定処理部502と、更新部503と、作成部504とを含む。
・・・
【0039】
測定処理部502は、測定部51のスケールカウンタによって、工具ホルダ2の形状の測定処理を実行し、その測定結果を、メモリ上に展開されている工具データ30の項目I3およびI4に入力する。具体的には、図3(A)を参照して、工具長の項目I3に、スケールカウンタのZ値を入力し、工具径の項目I4に、スケールカウンタのX値を入力する。
【0040】
更新部503は、測定処理部502による測定結果に基づいて、工具データベース3の更新処理を行う。このとき、更新部503は、検索部501において特定された工具番号と、測定対象の工具ホルダ2の加工番号(すなわち、指定された加工番号)とをリンクさせる。具体的には、メモリ上に展開されている工具データ30の項目I2に、指定されている加工番号を入力してから、工具データベース3上の対象の工具データ30を展開されている工具データ30の情報に書き換える。
・・・
【0046】
ここで、工具マガジン71への工具ホルダ2の取り付け/取り外し位置は固定である。つまり、工具マガジン71の所定の位置(図1において円Cで囲む位置、以下「工具交換位置」という。)に位置するポット72においてのみ、工具ホルダ2の着脱が可能となっている。
【0047】
工具ホルダ2の取り付け時、リーダ62で1本ずつQRコード23を読み取って、送受信部603からネットワークを介してマシニングセンタ7のマガジンテーブル74および補正値テーブル75に、(検索された)工具データ30の情報を入力する。この結果、全てのマガジンテーブル74および補正値テーブル75に、ワークの加工に必要なデータが自動的に入力される。
・・・
【0049】
図3(B)に示されるように、マガジンテーブル74は、工具ホルダ2が取り付けられているポット72の識別番号と、加工番号(TNo.)とを1対1で対応付けて記憶している。加工番号のデータは、工具データ30の項目I2から読み取られたデータである。
・・・
【0054】
工具ホルダ2の取り外し時においても、工具交換位置に移動させたポット72から取り外した工具ホルダ2のQRコード23を、リーダ62で1本ずつ読み取る。
・・・
【0064】
(工具寸法測定装置において工具寸法を測定する際の手順)
図4は、工具寸法測定装置5において新たなNCプログラム41に使用する工具ホルダ2の寸法を測定する際の手順を示すフローチャートである。
【0065】
図1、図2(A)および図4を参照して、まず、オペレータが操作パネル52を介して、使用するマシニングセンタ7を選択する(ステップS11)。次に、工具寸法測定装置5のプロセッサが、NCプログラム41に対応する対応リスト42より、工具レイアウトデータを作成する(ステップS12)。
【0066】
オペレータは、対応リスト42に記述された加工番号(TNo.)のうちの一つを入力し(ステップS13)、対応リスト42を参照して、必要な工具ホルダ2に切削工具21を取り付ける(ステップS14)。オペレータは、リーダ53を用いて、工具21が取り付けられた測定対象の工具ホルダ2のQRコード23を読み込む(ステップS15)。これにより、検索部501が、測定対象の工具ホルダ2の工具番号を特定し、工具データベース3においてその工具番号に対応付けられた工具データ30を検索および抽出する。
【0067】
オペレータによって測定部51に工具ホルダ2がセットされると、工具寸法測定装置5の測定処理部502が工具ホルダ2のX値(工具長)およびZ値(工具径)を測定する(ステップS16)。
・・・
【0070】
(工具マガジンに工具ホルダを取り付ける際の手順)
図5は、マシニングセンタ7の工具マガジン71に工具ホルダ2を取り付ける際の手順を示すフローチャートである。
【0071】
図1、図2(B)および図5を参照して、まず、オペレータは、工具マガジン71を回転させて、工具交換位置に空のポット72を移動させる(ステップS21)。
【0072】
端末6のリーダ62を用いて、取り付ける工具ホルダ2のQRコード23を読み込む(ステップS22)。これにより、端末6の検索部601が、挿入対象の工具ホルダ2の工具番号を特定し、特定された工具番号をキーとして工具データベース3を検索する。すなわち、工具データベース3においてその工具番号に対応付けられた工具データ30を検索および抽出する。抽出された工具データ30の情報が、操作パネル61に表示される。
【0073】
表示された工具データ30の情報の確認が終わり、マシニングセンタ7への登録を指示すると、確認した工具データ30のデータが、マガジンテーブル74および補正値テーブル75に自動で入力される(ステップS23)。つまり、送受信部603を介して、工具データベース3上において、特定された工具番号と関連付けられた加工番号を、マガジンテーブル74に入力する。また、工具データベース3上において、特定された工具番号に対応付けられた工具データ30の工具長/工具径補正値(形状/摩耗)および工具寿命値を、特定された工具番号と関連付けられた加工番号対応の補正値テーブル75に入力する。
【0074】
オペレータは、工具交換位置にあるポット72に、工具ホルダ2を取り付ける(ステップS24)。
【0075】
工具レイアウトデータ54に記述された加工番号に関連付けられた工具番号の工具ホルダ2の全ての取り付けが終了するまで(ステップS25)、上記ステップS21~S24の処理を繰り返す。
【0076】
(工具マガジンから工具ホルダを取り外す際の手順)
図6は、マシニングセンタ7の工具マガジン71から工具ホルダ2を取り外す際の手順を示すフローチャートである。
【0077】
図1、図2(B)および図6を参照して、まず、オペレータは、工具マガジン71を回転させて、工具交換位置に取り外す工具ホルダ2を移動させる(ステップS31)。
【0078】
工具交換位置にある工具ホルダ2を取り外すと(ステップS32)、端末6のリーダ62を用いて、取り外した工具ホルダ2のQRコード23を読み込む(ステップS33)。これにより、端末6の検索部601が、取り外した工具ホルダ2の工具番号を特定し、工具データベース3においてその工具番号に対応付けられた工具データ30を検索および抽出する。抽出された工具データ30の情報が、操作パネル61に表示される。
【0079】
次に、端末6が、取り外した工具ホルダ2の最新の工具長/工具径補正値(摩耗)のデータおよび工具寿命データをマシニングセンタ7から受信し、工具データ30を書き換える(ステップS34)。具体的には、端末6は、工具データ30の項目I2に記録された加工番号対応のデータの送信をマシニングセンタ7に要求し、マシニングセンタ7から、当該加工番号に対応付けられた補正値テーブル75のデータ、すなわち工具長/工具径補正値(摩耗)のデータおよび工具寿命データ(項目I15~I17のデータ)を取得する。これにより、更新部604が、取得したデータによって工具データ30を書き換えて、工具データベース3に反映する。つまり、工具データベース3上の工具データ30を、マシニングセンタ7上のデータに従って更新する。なお、マシニングセンタ7では、マガジンテーブル74の該当ポット番号の加工番号をゼロクリアする処理が行われる。
・・・
【0081】
(マシニングセンタで用いる加工プログラムを切り替える際の手順)
図7は、マシニングセンタ7で用いるNCプログラム41を切り替える際の手順を示すフローチャートである。
【0082】
図1、図2(B)および図7を参照して、たとえば端末6において、工具寸法測定装置5により事前に作成された工具レイアウトデータ54のうち、次の加工で用いる工具レイアウトデータ54を選択する(ステップS41)。次に、新たなNCプログラム41での加工に用いるマシニングセンタ7を選択する(ステップS42)。端末6とマシニングセンタ7とが1対1の関係である場合には、マシニングセンタ7の選択は不要である。
【0083】
比較部605は、選択された新たな工具レイアウトデータ54上の加工番号と、対象のマシニングセンタ7のマガジンテーブル74上の加工番号とを比較する(ステップS43)。具体的には、新たな工具レイアウトデータ54の加工番号と、マガジンテーブル74上の加工番号とを比較する。
【0084】
比較の結果、加工番号が一致する工具ホルダ2は、工具マガジン71に残してよい工具ホルダと判断でき、加工番号が一致しない工具ホルダ2を、工具マガジン71から取り外してよい工具ホルダとして判断できる。表示部606は、取り外す工具ホルダのリスト、および、残しておいてよい工具ホルダのリストを一覧表示するとともに(ステップS44,46)、新たな工具レイアウトデータ54に基づいて、新たに組付けして取り付ける工具ホルダのリストを一覧表示する(ステップS45)。
[図:0001404819000001.jpg]
[図:0001404819000002.jpg]
[図:0001404819000003.jpg]
[図:0001404819000004.jpg]
2 上記1から理解できる事項
(1)段落【0002】の記載等から、マシニングセンタ7は、NCプログラム41に応じて、工具マガジン71の複数のポッド72に取り付ける工具ホルダ2の組み合わせを変更することによって複数種類のワークの生産が可能である。
(2)段落【0023】、【0081】~【0084】の記載等から、甲1の「工具管理システム」は、工具ホルダ2を、工具マガジン7の複数のポッド72に取り付ける又は取り外す交換作業を支援する作業支援システムである。
(3)段落【0082】~【0084】の記載及び図3、図7等から、甲1の「工具管理システム」は、マガジンテーブル74を参照して、マガジンテーブル74上の加工番号と、次のNCプログラム41による加工で用いる加工番号を比較し、比較の結果、加工番号が一致する工具ホルダ2は工具マガジン71に残してよい工具ホルダ2と判断し、加工番号が一致しない工具ホルダ2は工具マガジン71から取り外してよい工具ホルダ2として判断し、取り外す工具ホルダ2のリスト及び残しておいてよい工具ホルダ2のリストを表示部606に表示するとともに、新たに取り付ける工具ホルダ2のリストを表示する手段を備えている。
3 甲1発明
上記1及び2から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(便宜のため、本件発明1の構成A~Hに対応させて、甲1発明を分説し、それぞれの構成にa~hの符号を付した。以下「構成a」などという。)
「a 工具ホルダ2の組み合わせを変更することによって複数種類のワークの生産が可能なマシニングセンタ7の工具マガジン71に取り付けられる複数の工具ホルダ2の交換作業を支援する工具管理システムであって、
b 各工具ホルダ2には、前記工具ホルダ2の識別子が記録された、工具番号を特定するためのQRコード23が付されており、
d NCプログラム41に記述された全ての加工番号と、前記ワークを生産するために前記マシニングセンタ7の工具マガジン71に取り付けられる工具ホルダ2の工具番号のリンクを示すデータを記憶する工具データベース3と、前記工具ホルダ2が取り付けられている工具マガジン71のポット72の識別番号と、前記加工番号とを1対1で対応付けて記憶しているマガジンテーブル74と、
e、g 前記マガジンテーブル74を参照して、マガジンテーブル74上の加工番号と、次のNCプログラム41による加工で用いる加工番号を比較し、比較の結果、加工番号が一致する前記工具ホルダ2は前記工具マガジン71に残してよい前記工具ホルダ2と判断し、加工番号が一致しない前記工具ホルダ2は前記工具マガジン71から取り外してよい前記工具ホルダ2として判断し、取り外す前記工具ホルダ2のリスト及び残しておいてよい前記工具ホルダ2のリストを表示部606に表示するとともに、新たに取り付ける前記工具ホルダ2のリストを表示する手段と、
f 各工具ホルダ2に付された前記QRコード23に記録された前記工具ホルダ2の識別子を読み取るリーダ53、62と、
を備える
h 工具管理システム。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(本件発明についての進歩性欠如(第3の2(1))について)
(1)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と、甲1発明とを対比すると、甲1発明の「工具ホルダ2」は本件発明1の「パーツ」に相当し、以下同様に、「ワーク」は「物品」に、「工具管理システム」は「作業支援システム」に、「工具番号を特定するためのQRコード23」又は「QRコード23」は「RFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコード」に、「リンク」は「対応関係を示す」に、「比較し」は「差分を決定し」に、「表示部606」は「表示装置」に、「リーダ53、62」は「リーダー」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「マシニングセンタ7の工具マガジン71」は、生産設備の一部であるから、本件発明1の「生産設備」に相当する。
また、甲1発明の「工具データベース3」及び「マガジンテーブル74」は、甲1の図3(A)(B)のデータを記憶し保持しているものであるから、本件発明1の「記憶装置」に相当する。
また、甲1発明の「NCプログラム41に記述された全ての加工番号」は、NCプログラム41のパラメータであり、パラメータを変更することで異なる種類のワークを生産できることは明らかであるから、本件発明1の「生産される物品の種類」に相当する。
また、甲1発明の「NCプログラム41に記述された全ての加工番号と、前記ワークを生産するために前記マシニングセンタ7の工具マガジン71に取り付けられる工具ホルダ2の工具番号のリンクを示すデータ」と、「前記工具ホルダ2が取り付けられている工具マガジン71のポット72の識別番号と、前記加工番号とを1対1で対応付け」たデータは、本件発明1の「生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータ」を包含するため、相当する。
また、甲1発明の構成e、gの「手段」は、判断や表示などの処理を行う手段であるから、本件発明1の構成E、Gの「処理装置」に相当し、甲1発明の構成e、gと、本件発明1の構成E、G(G1~G3を含む。)とは、「前記データを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させる処理装置」(構成E)である限りで共通する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「A パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する作業支援システムであって、
B 各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
D 生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを記憶する記憶装置と、
E 前記データを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させる処理装置と、
F 各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーと、
を備える、
H 作業支援システム。」
<相違点1>
本件発明1は、「前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み」(構成C)、「前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定し」(構成G2)、「判定結果を前記表示装置に表示させる」(構成G3)のに対し、甲1発明は、工具ホルダ2(パーツ)が「位置合わせパーツ」を含むものではなく、当該「位置合わせパーツ」の位置が適正であるか否かの判定結果を表示するものではない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し」(構成G1)、「判定結果を前記表示装置に表示させる」(構成G3)のに対し、甲1発明は、取り外す工具ホルダ2のリスト及び残しておいてよい工具ホルダ2のリストと、新たに取り付ける工具ホルダ2のリストを表示するものの、リーダ62によって工具ホルダ2のQRコード23が読み取られる度に、当該工具ホルダ2がリストに含まれるか否かを判定しているか不明である点。
(2)相違点についての検討
相違点1について検討する。
本件発明1の「位置合わせパーツ」の定義について、本件明細書の段落【0045】には、「生産設備500に取り付けられる複数のパーツの中には、生産される製品の品種によって取り付け位置が異なるパーツが含まれ得る。そのようなパーツを、本明細書において「位置合わせパーツ」と呼ぶ。」との記載があることから、「位置合わせパーツ」とは、「生産される製品の品種によって取り付け位置が異なるパーツ」であると解釈できる。
他方、甲1には、「ここで、工具マガジン71への工具ホルダ2の取り付け/取り外し位置は固定である。つまり、工具マガジン71の所定の位置(図1において円Cで囲む位置、以下「工具交換位置」という。)に位置するポット72においてのみ、工具ホルダ2の着脱が可能となっている。」(段落【0046】)と記載され、工具ホルダ2は、工具マガジン71のポット72に対して、取り付け位置は固定である(工具交換位置においてのみ工具ホルダ2が取り付け又は取り外しされる)から、生産されるワークの品種が異なっても(NCプログラム41が異なっても)、工具マガジン71への工具ホルダ2の取り付け位置は固定である。すなわち、甲1には、工具ホルダ2が、「位置合わせパーツ」(生産される製品の品種によって取り付け位置が異なるパーツ)を含むものとする動機は見当たらず、却って、工具交換位置は常に固定されていることに鑑みれば、甲1発明において、工具ホルダ2が、「位置合わせパーツ」(生産される製品の品種によって取り付け位置が異なるパーツ)を含むように設計変更することは、阻害事由があるというべきである。
また、申立人が提出した甲2~15を総合しても、工具ホルダを工具マガジンへ、取り付け又は取り外しをする際に、「前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み」(構成C)、「前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定」(構成G2)することが公知又は周知の技術的事項であることを示す証拠は見当たらないから、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲15に記載の技術的事項から当業者が容易になし得たものということはできない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~15に記載の技術的事項から容易になし得たものということはできない。
(3)申立人の主張とその検討
申立人は、申立書31~32ページにおいて、本件発明1の構成C、G2は、甲8~10により周知であり、同じく、構成Cは甲11~13により周知であり、構成G2は甲14~15により周知である旨を主張している。
しかしながら、まず、上述したように、本件発明1の「位置合わせパーツ」とは、「生産される製品の品種によって取り付け位置が異なるパーツ」であり、甲1には、工具ホルダ2(パーツ)が、「位置合わせパーツ」を含むように設計変更する動機付けがない。さらに、甲8~15にも、工具ホルダを工具マガジンへ取り付け又は取り外しする際に、生産される製品の品種によって工具マガジン71への工具ホルダの取り付け位置が異なることの記載は見当たらないから、甲1に甲8~15の技術的事項を適用したとしても、甲1発明における、工具ホルダ2(パーツ)が、位置合わせパーツ(生産される製品の品種によって取り付け位置が異なるパーツ)を含むように設計変更することがそもそも容易になし得るとはいえない。
また、申立人は、申立書16ページにおいて、甲1の段落【0067】の記載より、本件発明1の「前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み」(構成C)が示唆されている旨を主張している。
しかしながら、甲1の段落【0067】には「オペレータによって測定部51に工具ホルダ2がセットされると、工具寸法測定装置5の測定処理部502が工具ホルダ2のX値(工具長)およびZ値(工具径)を測定する(ステップS16)。」と記載され、すなわち、工具寸法測定装置5の測定処理部502が工具ホルダ2のX値(工具長)とZ値(工具径)を測定することが記載されている程度であり、工具ホルダ2を、工具マガジン71のポット72に対して取り付け又は取り外しする際に、生産されるワークの品種によって、取り付け位置が異なることを示す記載ではないから、当該記載により請求項1の構成Cが示唆されているとはいえない。
なお、相違点2に関し、申立人は、申立書16ページにおいて、甲1の段落【0081】~【0084】の記載が、本件発明1の構成G1に相当する旨の主張もしているが、甲1の上記段落【0081】~【0084】には、リストを表示することが記載されている程度であり、リーダーによって工具ホルダ2のQRコード23が読み取られる度に、前記工具ホルダ2がリストに含まれるか否かを判定することまでは記載されていない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(4)本件発明2~9について
本件発明2~9はいずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~9と、甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1~2で相違し、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2~15に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たということはできない。
(5)本件発明10~11について
本件発明10~11は、上記相違点1に係る本件発明1の構成C、G2、G3と略同一の、構成C、G2、G3(本件発明10)又は構成C、G2‘、G3‘(本件発明11)を備えているから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2~15に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たということはできない。
(6)小括
したがって、少なくとも相違点1に係る本件発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明1~11は、甲1発明及び甲2~15に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項1~11に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたとする申立理由1により、取り消すことはできない。
2 申立理由2(本件発明についての記載不備(第3の2(2))について)
(1)申立人の具体的な主張
ア 請求項1の構成G3の「判定結果」の「判定」が、構成G1の「前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否か」の「判定」を指すのか、構成G2の「前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否か」の「判定」を指すのか、不明である。
また、発明の詳細な説明を参照しても、全てのケースを網羅する例が記載されていないから、サポート要件及び実施可能要件を満たしていない。(申立書34ページ)
イ 請求項1において、「位置合わせパーツ」は、「前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる」と規定されているが、「近傍」がどの程度を指すのか定かではない。
また、水平方向においては近傍であっても、例えば高さ方向に所定距離離隔しているケースも想定され、このように両者が高さ方向に所定距離離隔している場合、作業者が撮影する位置によっては(すなわち、作業者が着用しているスマートグラス200のカメラ210の位置によっては)、「スケールまたはインジケータ」と「位置合わせパーツ」との相対位置が異なったものとなるはずであり、位置が適正か否かを誤って判定する場合もあることから、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
さらには、「カメラ」が「生産設備」に固定されている場合を含むのか不明である。(申立書34~35ページ)
ウ 請求項7の構成Nに「前記カメラをさらに備える」と規定されているが、この技術的意義が不明である。
上記構成Nの「カメラ」は、請求項1に規定されている「カメラ」を指すと考えるのが自然であるところ、上記構成Nには、「さらに備える」とあるから、請求項1の「カメラ」とは別にさらなる「(2台目以降の)カメラ」が要件になっているとも考えられる。よって、請求項7は、1台の「カメラ」で足りるのか、2台以上の「カメラ」を要件としているのかが不明である。(申立書35ページ)
(2)申立人の主張に対する検討
ア 上記(1)アについて検討する。
請求項1には、
「G1 前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、
G2 前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定し、
G3 判定結果を前記表示装置に表示させる、」
と記載されているから、構成G3の「表示装置」には、「判定結果」として、構成G1の「判定」の結果と、構成G2の「判定」の結果の、両方が表示されると解される。
さらに、本件明細書には、「処理装置330は、リーダー100によってパーツの識別子が読み取られる度に、そのパーツが差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、判定結果を表示装置400に表示させる。」(段落【0040】)及び「ホストコンピュータ300の処理装置330は、カメラ210によって取得された画像に基づいて、位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定する。処理装置330は、判定結果を表示装置400に表示させる。」(段落【0048】)と記載されているから、請求項1の構成G3の「表示装置」に、「判定結果」として、構成G1の「判定」の結果と構成G2の「判定」の結果の両方が表示されるとの解釈は、本件明細書の記載によっても裏付けられており、実施できないような特段の事情は見いだせない。
イ 上記(1)イについて検討する。
請求項1には、構成Cの「前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み、」及び構成G2の「前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定し、」との構成が特定されている。
そして、「近傍」とは、「位置が近い範囲」などを意味し、さらに、上記構成G2の記載から、「位置合わせパーツ」と、「スケールまたはインジケータ」(以下「スケール等」という。)とが、カメラで撮影した際に、カメラの画像内に収まる程度に近接して配置されていると理解できる。
さらに、本件明細書には、「図12Cは、パーツ530の位置が適正であるかを判定する方法の他の例を示す図である。この例では、生産設備500に位置合わせ用のマーカー522が設けられている。図12Cに示すマーカー522は、スケール520の原点の近傍に設けられており、基準位置を示す。」(段落【0053】)及び「処理装置330は、基準位置を示すマーカー522と、パーツ530におけるマーカー532とをカメラ210で撮影することによって取得された画像に基づいて、マーカー522に対するパーツ530の相対位置を計測する。例えば、マーカー522、532(図示される例ではQRコード)に記録された位置情報の差分に基づいて、相対位置を計測することができる。処理装置330は、当該相対位置に基づいて、パーツ530の位置が適正であるか否かを判定することができる。」(段落【0054】)との記載及び図12Cの図示があり、請求項1の構成Cの「近傍」が、「位置合わせパーツ」と、「スケール等」とが、それらの相対位置を計測可能なように、カメラで撮影した際に、カメラの画像内に収まる程度に近接して配置されていることは裏付けられており、実施できないような特段の事情は見いだせない。
なお、申立人は、請求項1の記載では、「位置合わせパーツ」と、「スケール等」が、水平方向においては近傍であっても、例えば高さ方向に所定距離離隔しているケースで、位置が適正か否かを誤って判定する場合も含み得る旨を主張するが、そのように、位置合わせパーツの位置が適正か否かを誤って判定されてしまうほど、「位置合わせパーツ」と、「スケール等」が、(高さ方向に)離れて位置している場合には、それらの位置が本件発明1のいう「近傍」に配置されているとはいえないから、申立人の主張は採用できない。
また、カメラは撮影対象に応じて適宜配置できるものであり、「カメラ」が「生産設備」に固定されているか否かが請求項1に特定されていないことが、請求項1の記載を不明確にするとはいえない。
ウ 上記(1)ウについて検討する。
請求項1の「作業支援システム」は、その記載に鑑みれば、「記憶装置」、「処理装置」及び「リーダー」を「備え」ることを要件とするものであるところ、請求項7の「前記カメラをさらに備える」との記載は、「作業支援システム」がさらに「カメラ」をも包含することを特定しているから、請求項1の記載と整合し、明確に理解できるものである。
また、請求項7の「前記カメラ」が、請求項1の「カメラ」を指すことは明らかであるところ、カメラの台数が特定されていないことによって、請求項7の記載が不明確であるとはいえない。
(3)小括
したがって、請求項1~11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号、同項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとする申立理由2により本件特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700642