特許異議申立
2024-700643
プログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール
- 審判番号
- 2024-700643
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-199201
- 登録番号
- 7412076
- 請求日
- 2024年07月10日
- 審決日
- 2024年12月26日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社キーエンス
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【権利者代理人】大塚 康徳
- 【権利者代理人】大塚 康弘
- 【権利者代理人】高柳 司郎
- 【権利者代理人】木村 秀二
- 【権利者代理人】坂本 隆志
- 【異議申立人】大森 隆一
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 本庄 亮太郎
- 分類
- P1651.121-Y (G05B) / P1651.537-Y (G05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7412076号発明「プログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7412076号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7412076号の請求項1~15に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成30年10月23日に出願され、令和5年12月28日にその特許権の設定登録がされ、令和6年1月12日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~15に係る特許に対し、令和6年7月10日に特許異議申立人大森隆一(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、請求項○に係る発明を「本件特許発明○」といい、まとめて「本件特許発明」ということがある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
プログラマブルロジックコントローラにおいて収集された時系列の複数のデバイス値と、各デバイス値の収集時刻を示す時刻データとを保存する保存手段と、
前記デバイス値をラダー図上に表示する第一エンジニアリングソフトウェアモジュールと、
前記デバイス値を時系列波形として表示する第二エンジニアリングソフトウェアモジュールと、
前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻と前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻とを同期させる同期ソフトウェアモジュールと
を有し、
前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールは、
リアルタイム再生モードにおいて前記プログラマブルロジックコントローラからデバイス値を取得してラダー図上に当該デバイス値を表示し、履歴再生モードにおいて前記時刻データに基づき表示対象時刻に対応するデバイス値を前記保存手段から取得してラダー図上に表示する第一表示制御手段を有し、
前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールは、
前記リアルタイム再生モードにおいて前記プログラマブルロジックコントローラからデバイス値を取得して時系列波形を表示し、前記履歴再生モードにおいて前記時刻データに基づき前記表示対象時刻に対応するデバイス値を前記保存手段から取得して時系列波形を表示する第二表示制御手段を有し、
前記同期ソフトウェアモジュールは、前記履歴再生モードにおいて、前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールと前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールとの間で表示対象時刻を受け渡すことにより、前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻と前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻とを同期させる同期手段を有し、前記第一表示制御手段と前記第二表示制御手段のいずれによっても起動されることを特徴とするプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項2】
前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールは、前記履歴再生モードにおいてユーザ操作に応じて前記表示対象時刻を更新する第一更新手段を有し、
前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールは、前記履歴再生モードにおいてユーザ操作に応じて前記表示対象時刻を更新する第二更新手段を有し、
前記同期手段は、前記第一更新手段により表示対象時刻が更新された場合は、当該表示対象時刻を受け取って、前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールに通知し、前記第二更新手段により表示対象時刻が更新された場合は、当該表示対象時刻を受け取って、前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールに通知することを特徴とする請求項1に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項3】
前記第一更新手段は、時間軸方向にスライド移動して前記表示対象時刻を示す第一時刻指定カーソルを有し、当該第一時刻指定カーソルに対する移動操作に応じて前記表示対象時刻を更新し、
前記第二更新手段は、時間軸方向にスライド移動して前記表示対象時刻を示す第二時刻指定カーソルを有し、当該第二時刻指定カーソルに対する移動操作に応じて前記表示対象時刻を更新し、
前記同期手段が前記表示対象時刻を同期させることにより、前記第一時刻指定カーソルと前記第二時刻指定カーソルが連動することを特徴とする請求項2に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項4】
任意のデバイスを指定する指定手段をさらに有し、
前記第一表示制御手段は、前記プログラマブルロジックコントローラにおいて参照される複数のデバイスのうち前記指定手段により指定されたデバイスに関連する命令語を、前記ラダー図において検索し、前記ラダー図において見つかった命令語とともに当該デバイスのデバイス値を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項5】
前記第一表示制御手段は、前記プログラマブルロジックコントローラにおいてラダープログラムは複数のプログラム部品から構成されており、前記デバイスに関連する命令語を含む一つ以上のブロックを前記複数のプログラム部品の中から検索し、見つかったブロックを前記ラダー図として表示するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項6】
前記第一表示制御手段は、前記デバイスに関連する命令語を含む複数のブロックを見つけると、当該複数のブロックに対応するラダー図を並べて表示するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項7】
前記第一表示制御手段は、前記ラダープログラムにおいて、第一ブロックにおいて第一デバイスに関連する命令語が入力系の命令語である場合に、当該入力系の命令語に対応して記述されている出力系の命令語の対象とされている第二デバイスを特定し、当該第二デバイスを対象とする入力系の命令語を記述された第二ブロックを特定することを特徴とする請求項6に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項8】
前記第一表示制御手段は、前記ラダープログラムにおいて、第一ブロックにおいて第一デバイスに関連する命令語が出力系の命令語である場合に、当該出力系の命令語に対応して記述されている入力系の命令語の対象とされている第二デバイスを特定し、当該第二デバイスを対象とする出力系の命令語を記述された第二ブロックを特定することを特徴とする請求項6に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項9】
前記同期手段は、前記表示対象時刻の更新速度を設定する設定手段を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項10】
前記第一表示制御手段および前記第二表示制御手段は、前記プログラマブルロジックコントローラに関する情報を表示するヒューマンインタフェースから入力されたユーザ入力に基づき設定されたデバイス値をさらに表示するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項11】
前記ヒューマンインタフェースをエミュレータにより実現されていることを特徴とする請求項10に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項12】
前記保存手段は、カメラユニットより取得された時系列の複数の画像データと、各画像データの取得時刻を示す時刻データとをさらに保存しており、
前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールは、前記リアルタイム再生モードにおいて前記プログラマブルロジックコントローラからデバイス値を取得して時系列波形を表示するとともに前記カメラユニットから取得された画像データを表示し、前記履歴再生モードにおいて前記保存手段から表示対象時刻に対応するデバイス値と前記画像データとを取得して表示するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項13】
前記保存手段は、カメラユニットより取得された時系列の複数の画像データと、各画像データの取得時刻を示す時刻データとをさらに保存しており、
前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールは、前記リアルタイム再生モードにおいて前記プログラマブルロジックコントローラからデバイス値を取得してラダー図上に当該デバイス値を表示するとともに前記カメラユニットから取得された画像データを表示し、前記履歴再生モードにおいて前記保存手段から表示対象時刻に対応するデバイス値と前記画像データとを取得してラダー図上に表示するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項14】
前記第一表示制御手段および前記第二表示制御手段は、前記履歴再生モードにおいて、前記表示対象時刻に最も近い時刻データに関連付けられているデバイス値を読み出すように構成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
【請求項15】
前記第一表示制御手段および前記第二表示制御手段は、ユーザの入力操作に基づき前記リアルタイム再生モードと前記履歴再生モードのいずれが選択されたかを判定し、当該履歴再生モードが選択されると前記同期ソフトウェアモジュールを起動する、ことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載のプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。」
第3 申立ての理由
1 申立人が特許異議申立書で主張する申立ての理由の概要
(1)理由1(進歩性)
請求項1~2に係る発明は、甲第1~2号証、又は甲第1、3号証に記載された発明に基いて、
請求項3に係る発明は、甲第1、3号証、又は甲第1、3、10号証に記載された発明に基いて、
請求項4~6に係る発明は、甲第1、4号証に記載された発明に基いて、
請求項7に係る発明は、甲第1、5号証に記載された発明に基いて、
請求項8に係る発明は、甲第1、6号証に記載された発明に基いて、
請求項9に係る発明は、甲第1、3号証、又は甲第1、7号証に記載された発明に基いて、
請求項10に係る発明は、甲第1、4号証に記載された発明に基いて、 請求項11に係る発明は、甲第1、11号証に記載された発明に基いて、
請求項12に係る発明は、甲第1、7号証、又は甲第1、8号証に記載された発明に基いて、
請求項13~14に係る発明は、甲第1、9号証に記載された発明に基いて、
請求項15に係る発明は、甲第1、3号証に記載された発明に基いて、
当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2(明確性)
本件請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)理由3(サポート要件)
本件請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 引用文献等一覧
(1)甲第1号証:国際公開第2014/167726号
(2)甲第2号証:特開2014-89542号公報
(3)甲第3号証:特開2013-92858号公報
(4)甲第4号証:国際公開第2018/073868号
(5)甲第5号証:国際公開第2016/194099号
(6)甲第6号証:特開平4-286001号公報
(7)甲第7号証:特開平6-20180号公報
(8)甲第8号証:特開2012-118567号公報
(9)甲第9号証:特開2000-250775号公報
(10)甲第10号証:特開2000-322231号公報
(11)甲第11号証:特開2011-107866号公報
以下、甲第○号証を「甲○」という。
第4 文献の記載
1 甲1
(1)甲1の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「[0001]
この発明は、プログラマブルコントローラの周辺装置およびデバッグ支援プログラムに関するものである。」
「[0005]
この発明は上記に鑑みてなされたもので、トレンドグラフを用いて任意の時刻でのプログラムの動作状態を把握しやすくすることができるプログラマブルコントローラの周辺装置およびデバッグ支援プログラムを得ることを目的とする。
課題を解決するための手段
[0006]
上記目的を達成するため、この発明にかかるプログラマブルコントローラの周辺装置は、表示手段と、プログラマブルコントローラで実行させるユーザプログラムを格納するプログラム格納手段と、前記プログラマブルコントローラによる前記ユーザプログラムの実行中の演算処理情報を所定の条件で記録した履歴情報を格納する履歴情報格納手段と、指定されたユーザプログラムを前記表示手段に設けられるユーザプログラム表示領域に表示するプログラム表示処理手段と、前記指定されたユーザプログラムに対応する第1履歴情報をグラフ化した第1トレンドグラフと前記第1トレンドグラフ上での位置を示すカーソルとを、前記表示手段に前記ユーザプログラム表示領域とは別個に設けられるトレンドグラフ表示領域に表示するトレンドグラフ表示処理手段と、前記第1トレンドグラフ上での前記カーソルの位置を取得し、前記第1履歴情報から前記カーソルの位置に対応する演算処理情報を取得するカーソル情報取得手段と、を備え、前記プログラム表示処理手段は、前記カーソル情報取得手段から取得した前記演算処理情報を、前記ユーザプログラム表示領域の前記ユーザプログラムに重ねて表示することを特徴とする。
[0007]
この発明によれば、プログラマブルコントローラの異常発生前後のデータメモリ内の状態を履歴情報であるトレースデータとして取得し、周辺装置上でユーザプログラムとともにトレンドグラフとして表示できるとともに、トレンドグラフ上で指定される任意のタイミングでのデバイスデータの状態を、ユーザプログラム上に表示できるという効果を有する。その結果、トレンドグラフを用いて任意の時刻でのプログラムの動作状態が把握しやすくなるという効果を有する。」
「[0011]
図1は、実施の形態1によるプログラマブルコントローラの周辺装置の機能構成の一例を模式的に示すブロック図である。プログラマブルコントローラの周辺装置20は、通信部21と、編集手段である入力部22と、表示手段である表示部23と、プログラム格納手段であるプログラム格納部24と、履歴情報格納手段であるトレースデータ格納部25と、プログラム表示処理手段である回路モニタ表示処理部26と、トレンドグラフ表示処理手段であるトレンドグラフ表示処理部27と、カーソル情報取得手段であるカーソル情報取得部28と、これらの各処理部を制御する制御部29と、を備える。」
「[0014]
トレースデータ格納部25は、プログラマブルコントローラでサンプリングされたトレースデータを格納する。このトレースデータは、実行したユーザプログラムに対応付けて格納されてもよい。図2は、トレースデータの一例を示す図である。トレースデータは、サンプリングの単位時間に相当するインデックスごとに、収集時刻と、プログラマブルコントローラのデバイスデータ記憶部に記憶されるデバイスデータの値と、を記憶したものである。デバイスデータは、プログラマブルコントローラに接続される入力装置から取得した値、またはプログラマブルコントローラに接続される出力装置へ出力する値を示す演算処理情報である。ここでは、「X」は入力信号を示すビットデータであり、「Y」は出力信号を示すビットデータであり、「D」は数値を示すワードデータである。なお、このトレースデータは、プログラマブルコントローラで収集されたものを通信部21を介して格納されるものに限定されるものではない。たとえば、プログラマブルコントローラの各時間におけるデバイスデータを通信部21を介して周辺装置20で収集し、所定の期間収集したデバイスデータをトレースデータとしてトレースデータ格納部25に格納するようにしてもよい。
[0015]
回路モニタ表示処理部26は、ユーザによってたとえばユーザプログラムの異常発生時の原因究明処理モードの実行が指示されると、プログラム格納部24中のユーザによって選択されたユーザプログラムを表示部23の回路モニタ表示領域に表示させる処理を行う。一般的にプログラマブルコントローラで使用されるユーザプログラムはシーケンスプログラムである。このシーケンスプログラムは、リレー制御回路の考えを基本とした、リレーシンボリック語によってプログラムが記述されている。このように、シーケンスプログラムは回路図形式で記述されるので、シーケンスプログラムを表示したものは回路とも呼ばれる。そのため、以下の実施の形態では、ユーザプログラムを表示する領域を回路モニタ表示領域としている。
[0016]
トレンドグラフ表示処理部27は、ユーザによって原因究明処理モードの実行が指示されると、トレースデータ格納部25中のユーザによって選択されたプログラムに対応するトレースデータをトレンドグラフ化して、表示部23のトレンドグラフ表示領域に表示させる処理を行う。トレンドグラフ表示領域は、表示部23中で回路モニタ表示領域とは別個の領域として設けられる。
[0017]
図3は、実施の形態1による表示画面の一例を示す図である。この図3(a)では、表示画面100中の上半分に、ユーザプログラムを表示する回路モニタ表示領域110が設けられ、下半分にトレンドグラフを表示するトレンドグラフ表示領域120が設けられている。シーケンスプログラムは、多数の行(たとえば何百行、何千行)の命令によって構成されるのが普通であるため、回路モニタ表示領域110に全てのユーザプログラムを表示することができない。そのため、回路モニタ表示領域110にスクロールバー115を設けて、全てのユーザプログラムをスクロールしながら閲覧可能な構成としている。また、トレンドグラフ表示領域120も同様にスクロールバー125を有している。トレンドグラフ表示領域120には、トレンドグラフの時間を指定するカーソル121がトレンドグラフに重ねて表示されている。ここで、カーソル121とは、トレンドグラフ上を時間軸(に相当する)方向に沿って稼働可能な垂直線を指し、回路モニタ上に表示するデバイスデータの、トレースデータ上の位置(インデックス)を指示するために使用するものである。図3では、カーソル121は点線で表示されているが、実線または破線などの直線で表示されてもよいし、これらを点滅表示させてもよい。回路モニタ表示領域110とトレンドグラフ表示領域120は、それぞれ1つのウインドウによって構成することができる。
[0018]
また、図3(b)に示されるように、トレンドグラフ表示領域120で、カーソル121と各グラフとの接点の値を表示させるようにしてもよい。この場合のカーソルと各グラフとの接点の値は、後述するカーソル情報取得部28から取得したカーソル121の位置と各デバイスデータの値を用いることができる。このような表示画面とすることで、トレンドグラフ表示領域120でのカーソル121が指す位置の状態をさらに容易に把握することが可能になる。」
「[0020]
カーソル情報取得部28は、トレンドグラフ表示領域120に設けられるカーソル121の位置を取得する。具体的には、トレンドグラフ上でのカーソル121の位置(インデックス)を取得し、そのインデックスに対応するデバイスデータをトレースデータ格納部25から取得する。そして、取得したデバイスデータをカーソル指定情報として回路モニタ表示処理部26に渡す。
[0021]
この実施の形態1では、トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフと、回路モニタ表示領域110のユーザプログラムとを連動させるようにするために、上記のカーソル情報取得部28を設け、さらにカーソル情報取得部28で取得したカーソル指定情報を、回路モニタ表示処理部26で回路モニタ表示領域110上に表示させるようにしている。
[0022]
具体的には、回路モニタ表示処理部26は、トレンドグラフ表示領域120のカーソル121の位置における各デバイスデータの値を、回路モニタ表示領域110のユーザプログラムの対応箇所に重ねてまたは対応箇所の近傍に表示する機能を有する。たとえば、カーソル情報取得部28から取得したカーソル指定情報に基づいて、オン状態にあるビットデバイスを強調表示し、またワードデータの値をワードデバイスの位置の近傍に表示する。
[0023]
図5は、実施の形態1によるユーザプログラムとトレンドグラフの表示状態の一例を示す図である。図5(a)のトレンドグラフ表示領域120では、時刻Tnの位置にカーソル121があり、このときに導通状態にあるビットデバイス(X11,Y0)が回路モニタ表示領域110では黒塗りで示され、このときのワードデバイス(D0)の値(図の例では、「123」)がそのワードデバイスの近傍に表示されるようになっている。
[0024]
一方、図5(b)のトレンドグラフでは、時刻Tn+1の位置にカーソル121があり、このときに導通状態にあるビットデバイスが回路モニタ表示領域110では黒塗りで示され、このときのワードデバイス(D0)の値(図の例では、「653」)がそのワードデバイスの近傍に表示されるようになっている。ただし、この例は、導通状態にあるビットデバイスがない(非導通状態のビットデバイスのみである)ため、回路モニタ表示領域110で黒塗で示されているデバイスは存在しない。
[0025]
つぎに、このような構成のプログラマブルコントローラの周辺装置20のデバッグ支援方法について説明する。図6は、実施の形態1による周辺装置のデバッグ支援方法の手順の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、周辺装置20のトレースデータ格納部25にはすでにトレースデータが格納されているものとする。
[0026]
まず、ユーザによって入力部22を介して解析したいユーザプログラムが選択されると、回路モニタ表示処理部26は、プログラム格納部24から選択されたユーザプログラムを読み込む。そして、表示部23の回路モニタ表示領域110にユーザプログラムを表示する(ステップS11)。
[0027]
また、トレンドグラフ表示処理部27は、選択されたトレースデータをトレースデータ格納部25から読み込む。そして、表示部23のトレンドグラフ表示領域120にトレースデータをグラフ化したトレンドグラフとカーソル121とを表示する(ステップS12)。トレンドグラフにおいて、横軸は経過時間を示している。そのため、カーソル121は、時間軸方向に沿って移動可能な構成となる。
[0028]
その後、トレンドグラフ表示領域120のカーソル121がユーザによって入力部22を介して移動される。このときカーソル情報取得部28は、移動されるカーソル121のトレンドグラフ上での位置を取得する(ステップS13)。この例では、トレンドグラフ上の位置は、トレースデータにおけるインデックスである。また、カーソル情報取得部28は、トレンドグラフ上の位置におけるデバイスデータをトレースデータ格納部25中のトレースデータから取得し(ステップS14)、取得したデバイスデータを回路モニタ表示処理部26に渡す。
[0029]
回路モニタ表示処理部26は、取得したデバイスデータに合わせて、回路モニタ表示領域110のユーザプログラム中のデバイスの値の表示を変更する(ステップS15)。これは、回路モニタ表示処理部26は、たとえばデバイスデータがオン状態を示す場合には、対応するデバイスの表示を強調表示させたり、色を変えて表示させたりすることによって行われる。また、デバイスデータが数値を示すワードデータである場合には、対応するデバイスの近傍にその数値を表示する。
[0030]
その後、たとえばユーザからの入力部22を介した指示によって、表示処理が終了したかを判定する(ステップS16)。表示処理が終了でない場合(ステップS16でNoの場合)には、ステップS13へと処理が戻る。また、表示処理が終了の場合(ステップS16でYesの場合)には、処理が終了する。
[0031]
なお、上記した説明では、カーソル121はユーザによって移動される場合を例示したが、これに限定されるものではない。たとえばカーソル121を自動的に時系列にしたがって動かしつつ、回路モニタ表示上のデバイスの値を次々と変更させながら表示させるようにしてもよい。
[0032]
この実施の形態1では、プログラマブルコントローラで異常が発生した前後のユーザプログラムの演算処理情報を、ユーザプログラムの表示上に重ねて表示することが可能になるので、異常発生時のユーザプログラムの動作状態の把握が容易となる。その結果、ユーザプログラムの異常箇所の特定が行いやすくなり、ユーザプログラムのデバッグ作業を効率的に行うことができるという効果を有する。」
イ 図面
(ア)図1
[図:0001419364000001.jpg]
(イ)図2
[図:0001419364000002.jpg]
(ウ)図3
[図:0001419364000003.jpg]
(エ)図5
[図:0001419364000004.jpg]
(オ)図6
[図:0001419364000005.jpg]
(2)甲1の記載事項の整理
ア 段落[0001]、[0014]、図1の記載からみて、甲1はプログラマブルコントローラの周辺装置に関するものであって、この周辺装置は、プログラマブルコントローラでサンプリングされたトレースデータとしてのインデックスごとのデバイスデータの値と収集時刻とを記憶するトレースデータ格納部25を備える。
イ 段落[0015]、[0022]、図1、3、5の記載からみて、甲1のプログラマブルコントローラの周辺装置は、上記アのデバイスデータの値をユーザプログラム上に表示する回路モニタ表示処理部26を備える。
ウ 段落[0016]、図1、3、5の記載からみて、甲1のプログラマブルコントローラの周辺装置は、上記アのトレースデータをトレンドグラフとして表示するトレンドグラフ表示処理部27を備える。
エ 段落[0015]~[0017]、[0020]~[0022]、[0028]、図1、3、5~6の記載からみて、甲1のプログラマブルコントローラの周辺装置は、前記回路モニタ表示処理部26により回路モニタ表示領域110にユーザプログラム上に表示されるデバイスデータの値と、トレンドグラフ表示処理部27によりトレンドグラフ表示領域120に表示されるトレンドグラフとを、トレンドグラフの時間を指定するカーソル121の位置に対応するインデックスにより連動させるカーソル情報取得部28を備える。
オ 段落[0015]、[0020]~[0022]、[0026]、[0028]~[0029]、図3,5~6の記載からみて、上記イの回路モニタ表示処理部26は、原因究明処理モードにおいて収集時刻に基づきトレンドグラフのカーソル121に対応するインデックス(位置)のデバイスデータの値を取得してユーザプログラム上に表示する回路モニタ表示領域110を有し、デバイスデータの値は、カーソル情報取得部28がトレースデータ格納部25から取得して、回路モニタ表示処理部26に渡されるから、トレースデータ格納部25から取得したものといえる。
カ 段落[0016]、[0028]、図3、5~6の記載からみて、上記ウのトレンドグラフ表示処理部27は、原因究明処理モードにおいて、ユーザが選択したプログラムに対応する上記トレースデータ格納部25から取得されたトレースデータを、トレンドグラフ化して表示するトレンドグラフ表示領域120を有する。
キ [0007]、[0015]、[0016]、[0020]~[0021]、[0028]、図3、5~6の記載からみて、上記エのカーソル情報取得部28は、原因究明処理モードにおいて、トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフのカーソル121に対応するインデックスのデバイスデータの値を回路モニタ表示処理部26に渡して、この回路モニタ表示処理部26による回路モニタ表示領域110のユーザプログラムのデバイスデータの値の表示と、トレンドグラフ表示処理部27による前記トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフの表示とを連動させるものであって、また、特に段落[0028]の記載からみて、トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフのカーソル121がユーザによって入力部22を介して移動されると、対応するインデックスのデバイスデータの値をトレースデータ格納部25から取得するものである。
(3)甲1に記載された発明
上記(1)~(2)より、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「プログラマブルコントローラでサンプリングされたトレースデータとしてのインデックスごとのデバイスデータの値と収集時刻とを記憶するトレースデータ格納部25と
前記デバイスデータの値をユーザプログラム上に表示する回路モニタ表示処理部26と、
前記トレースデータをトレンドグラフとして表示するトレンドグラフ表示処理部27と、
前記回路モニタ表示処理部26により回路モニタ表示領域110にユーザプログラム上に表示されるデバイスデータの値と、トレンドグラフ表示処理部27によりトレンドグラフ表示領域120に表示されるトレンドグラフとを、トレンドグラフの時間を指定するカーソル121に対応するインデックスにより連動させるカーソル情報取得部28と、
前記回路モニタ表示処理部26は、
原因究明処理モードにおいて前記収集時刻に基づき前記トレンドグラフのカーソル121に対応するインデックスのデバイスデータの値を前記トレースデータ格納部25から取得してユーザプログラム上に表示する回路モニタ表示領域110を有し、
前記トレンドグラフ表示処理部27は、
前記原因究明処理モードにおいてユーザが選択したプログラムに対応するデバイスデータを前記トレースデータ格納部25から取得してトレンドグラフ化して表示するトレンドグラフ表示領域120を有し、
前記カーソル情報取得部28は、前記原因究明処理モードにおいて、前記トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフのカーソル121に対応するインデックスのデバイスデータの値を前記回路モニタ表示処理部26に渡して、この回路モニタ表示処理部26による前記回路モニタ表示領域110のユーザプログラムのデバイスデータの値の表示と、前記トレンドグラフ表示処理部27による前記トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフの表示とを連動させるものであって、前記トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフのカーソル121がユーザによって入力部22を介して移動されると、対応する前記インデックスのデバイスデータの値をトレースデータ格納部25から取得するプログラマブルコントローラの周辺装置。」
2 甲2
(1)甲2の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
この発明は、監視対象プラントの過去の運転データ、故障データを呼び出して、解析を行うプレイバック機能を有する監視制御システムに関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の監視制御システムにおいては、プレイバック機能はプレイバック再生画面上で、時間の流れる速さを変えずに再生させているので、ある時点での運転データ、故障データしか確認することができずに、その前後の関連情報を得るためには、履歴機能等の別機能により情報を解析することが必要であった。
また、過去の同様なイベントの変化パターンを検索することができないなどの問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、プレイバック再生画面に状態遷移タイムチャートを自動的に付加する監視制御システムを得ることを目的とする。」
「【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による監視制御システムを示す構成図である。
図1において、監視制御システム100は、記憶装置と表示装置を有する計算機によって構成され、プレイバック再生部1とタイムチャート部2を備えている。
プレイバック再生部1は、記憶装置に格納された監視制御対象プラントデータ3から、過去の運転データ、故障データを呼び出して、監視項目について時間の流れを変えずに表示装置4の画面上に再生する。タイムチャート部2は、プレイバック再生部1の表示に対応する監視項目についてのタイムチャートを表示装置4に表示する。
監視制御対象プラントデータ3は、監視制御対象のプラントデータを時刻情報とともに記憶装置に格納されたものである。
【0010】
図2は、この発明の実施の形態1による監視制御システムの表示画面を示す図である。
図2において、プレイバック再生部1が表示するプレイバック再生画面10とタイムチャート部2が表示するタイムチャート画面20とを同一画面に表示する。プレイバック再生画面10は、監視項目のシンボル情報11を表示し、記憶装置に格納された監視制御対象プラントデータ3から、監視制御対象プラントの過去の運転データ、故障データを呼び出して、時間の流れを変えずに再生する画面である。プレイバック再生画面10には、画面番号入力部12と、日時入力部13と、時刻を進めたり、時刻を遡ったり、停止させたりするための時刻操作部14が設けられている。
タイムチャート画面20は、プレイバック再生画面10のシンボル情報11から、登録されているポイント情報21を抽出し、該当の監視項目22(該当機器の名称)についてのタイムチャートを表示する。ヘアーラインカーソル23が、プレイバック再生画面10に表示された日時に対応する日時を示している。ここで、ポイント情報21は、プレイバック再生画面10に表示されるシンボルの情報であり、監視制御システム内に持っている、各シンボルに対応する機器の名称と該当機器の状態データのアドレスを有する。
【0011】
次に、動作について説明する。
画面番号入力部12と日時入力部13を用いて、あらかじめ登録されている(a)画面番号と、(b)日時を入力すると、プレイバック再生部1は、プレイバック再生画面10に過去のデータから読み込んだシンボル情報11で示される監視項目について、入力日時のプラント状態の表示を行う。
一方、タイムチャート部2は、タイムチャート画面20に、ポイント情報21をもとに、(c)該当の監視項目22(該当機器の名称)が登録され、入力された日時の前後の過去データを参照し、タイムチャートを自動表示させる。
【0012】
プレイバック再生画面10の時刻操作部14の操作に応じて、プレイバック再生画面10の表示時刻とその時刻に対応するプラント状態の表示も変わり、また、タイムチャート画面20のヘアラインカーソル23の表示時刻とタイムチャートも連動して変化するようになっている。
プレイバック再生画面10とタイムチャート画面20を同一画面に表示させることで、関連項目の状態と時系列での状態変化を容易に把握することができる。
また、運転データ、故障データの呼び出しだけでなく、アナログ計測データ、パルス積算データを呼び出してグラフ表示してもよい。
【0013】
実施の形態1によれば、タイムチャート画面をプレイバック再生画面と同一画面にて表示することにより、プレイバック再生中の状態だけでなく、一定時間の状態を容易に確認することができる。
【0014】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による監視制御システムの表示画面を示す図である。
図3において、10~13、20、22、23は図2におけるものと同一のものである。図3では、ヘアーラインカーソル23が、表示時刻の変更に用いられる。
【0015】
実施の形態1では、プレイバックさせる時刻を変更する場合、プレイバック再生画面10から日時を入力する必要があるが、実施の形態2では、図3に示すように、タイムチャート画面20のヘアーラインカーソル23を操作することにより、任意の時刻から再生させることが可能となり、タイムチャートを参照しながら再生させたい時刻を選択することができる。
すなわち、(d)タイムチャート画面20のヘアーラインカーソル23を左右に移動させることによって、(e)プレイバック再生画面10の表示時刻を変更し、プレイバック再生画面10に表示される状態の内容を変更させる。
【0016】
実施の形態2によれば、タイムチャート画面に設けられたヘアーラインカーソルを移動させるだけで、プレイバック再生画面の表示内容を変更することができる。」
イ 図面
(ア)図1
[図:0001419364000006.jpg]
(イ)図2
[図:0001419364000007.jpg]
(ウ)図3
[図:0001419364000008.jpg]
(2)甲2の記載事項の整理
ア 段落【0001】、【0009】~【0011】、図1~3の記載からみて、甲2はプラントの監視制御システムに関するものであって、このシステムは、シンボル情報11で示される監視項目について、記憶装置に格納された監視制御対象プラントデータ3から、監視制御対象プラントの過去の運転データ、故障データを呼び出して、時間の流れを変えずに再生するプレイバック再生画面10を表示するプレイバック再生部1を備える。
イ 段落【0009】~【0011】、図1~3の記載からみて、甲2のプラントの監視制御システムは、プレイバック再生画面10のシンボル情報11から、各シンボルに対応する機器の名称と該当機器の状態データのアドレスを有し登録されているポイント情報21を抽出し、タイムチャート画面20を表示するタイムチャート部2を備える。
ウ 段落【0012】、【0015】~【0016】、図1~3の記載からみて、甲2のプラントの監視制御システムは、プレイバック再生画面10の表示時刻とその時刻に対応するプラント状態の表示と、タイムチャート画面20のヘアーラインカーソル23の表示時刻とタイムチャートが連動して変化する表示装置4を備える。
エ 段落【0010】、【0012】、【0015】~【0016】、図1~3の記載からみて、甲2のプラントの監視制御システムは、日時入力部13と、時刻を進めたり、時刻を遡ったり、停止させたりするためにプレイバック再生画面10に設けた時刻操作部14を操作すること、及びタイムチャート画面20のヘアーラインカーソル23を左右に移動させることのいずれによっても、プレイバック再生画面10の表示時刻とその時刻に対応するプラント状態の表示と、タイムチャート画面20のヘアーラインカーソル23の表示時刻とタイムチャートが連動して変化するプラントの監視制御システムといえる。
(3)甲2記載の技術的事項
上記(1)~(2)より、甲2には次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「シンボル情報11で示される監視項目について、記憶装置に格納された監視制御対象プラントデータ3から、監視制御対象プラントの過去の運転データ、故障データを呼び出して、時間の流れを変えずに再生するプレイバック再生画面10を表示するプレイバック再生部1と、
プレイバック再生画面10のシンボル情報11から、各シンボルに対応する機器の名称と該当機器の状態データのアドレスを有し登録されているポイント情報21を抽出し、タイムチャート画面20を表示するタイムチャート部2と、
前記プレイバック再生画面10の表示時刻とその時刻に対応するプラント状態の表示と、タイムチャート画面20のヘアーラインカーソル23の表示時刻とタイムチャートが連動して変化する表示装置4と、
日時入力部13と、時刻を進めたり、時刻を遡ったり、停止させたりするためにプレイバック再生画面10に設けた時刻操作部14を操作すること、及びタイムチャート画面20のヘアーラインカーソル23を左右に移動させることのいずれによっても、前記プレイバック再生画面10の表示時刻とその時刻に対応するプラント状態の表示と、タイムチャート画面20のヘアーラインカーソル23の表示時刻とタイムチャートが連動して変化する監視制御システム。」
3 甲3
(1)甲3の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【0001】
この発明はプロセス監視システムに関し、特に、鉄鋼、石油化学などの産業プラントや上下水処理などの公共プラントなどの各種プラントの監視制御を行うプロセス監視システムに関するものである。」
「【0009】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、プロセスフロー画面上に、トレンド表示、警報履歴表示、操作・動作履歴表示、オペレータ日誌表示などの時系列画面を表示し、プレイバック機能によりそれらの全表示画面を再生時刻に連動させて表示させることが可能な、プロセス監視システムを提供することを目的とする。」
「【0013】
実施の形態1.
以下、この発明を図面により詳細に説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係るプレイバック処理部11を備えたプロセス監視システムのブロック図である。
プロセス監視システムは監視装置1から構成され、監視装置1には、制御装置2と、入力装置5と、表示装置6とが接続されている。
制御装置2は、プラントに設置された温度計、圧力計、バルブ、ポンプなどのフィールド機器3を制御するとともに、フィールド機器3からプロセス値を取得する。なお、プロセス値(プロセスデータ)とは、各フィールド機器3の現在の値(状態値)のことであり、フィールド機器3が温度計や圧力計などの計測機器の場合には、当該計測機器で計測された実測値(数値データ)であり、フィールド機器3がバルブやポンプの場合には、その動作を示す動作信号であり、また、それらのフィールド機器3から発生される警報信号(アラーム信号)や故障信号などの異常信号もプロセス値(プロセスデータ)に含まれる。各プロセス値には、それらを特定するための表示データ信号85Aと呼ばれる固有識別番号が付され、当該固有識別番号により管理される。また、制御装置2は、例えば、コンピュータ等の計算機あるいはプログラマブルロジックコントローラ(PLC)で構成する。
入力装置5は、運転操作や設定操作を行なうためのマウス51やキーボード52などインターフェース機器を有し、それらによって入力された操作情報を監視装置1に伝達する。
表示装置6は、監視装置1からの画像情報を受けて、液晶モニタ(LCD)61やCRTモニタ等のディスプレイ機器を用いて、画面の表示を行なう。図1においては、ディスプレイ機器として、LCD61を用いた例を示している。
監視装置1は、制御装置2のプロセス値を取得し、それを加工して、後述する各データベース(以下、DBとする。)14~17に保存したり、入力装置5の操作情報に基づき、各種処理を行い、表示装置6へ画像情報を送るなどの処理を行う。」
「【0019】
表示・入力処理部18は、入力装置5からのオペレータからの操作要求に応じて、図2,8に示すプロセスフロー画面62や、図3に示すプレイバック操作画面70、図4に示すトレンド画面80や、図5に示す警報履歴画面90や、図6に示す操作・動作履歴画面100や、図7に示すオペレータ日誌画面110などを、表示装置6のLCD61に表示する(以下では、「LCD61」との記載を省略し、単に「表示装置6に表示する」と記載する。)。表示・入力処理部18による表示装置6への表示には、2つの表示モードがあり、1つは、リアルタイムデータを表示するプロセスフロー画面62を表示する通常モードであり、他の1つは、過去のデータを再生するプレイバックモードである。図8が通常モードの表示例であり、図8のプロセスフロー画面62の右上のプレイバックモード操作スイッチ66をクリックすることにより、プレイバックモードに切り替わり、図2の画面が表示される。以下に詳細に説明する。
【0020】
まず、通常モードについて説明する。表示・入力処理部18は、通常時(デフォルト時)、および、入力装置5からのオペレータからの操作要求がプロセスフロー画面62の表示要求の場合には、画面に表示するためのリアルタイムのプロセス値(数値データやバルブなどの機器状態データ)を、プレイバック処理部11のプロセスデータ切り替え部11Aを介して、データ処理部12から直接リアルタイムで取得し、プロセスフロー表示・操作部18Aにより画像処理した結果を表示装置6に出力することで、図8に示すプロセスフロー画面62が表示装置6によりLCD61の画面に表示される。プロセスフロー画面62では、図8に示すように、フィールド機器3の各機器の配置または接続関係が表示されるとともに、データ処理部12から受信したリアルタイムのフィールド機器3のプロセス値に基づいて各機器による計測値等の各種数値データ68や各機器の状態表示67が各機器ごとに視覚的にわかりやすく表示される。
【0021】
また、通常モード時で、プロセスフロー画面62の表示中に、入力装置5にオペレータからのトレンド画面80や警報履歴画面90等の表示要求があった場合には、それに応じて、トレンド画面80や警報履歴画面90等が、プロセスフロー画面62に追加表示される。図9に、トレンド画面80が、プロセスフロー画面62上に追加表示された状態の一例を示す。
【0022】
具体的には、表示・入力処理部18は、通常モード時に、入力装置5へのオペレータの入力がトレンド画面80の表示要求だった場合は、プロセスフロー画面62上にトレンド画面80を表示し、プロセス値の種別を特定するための固有識別番号である(トレンド画面80下部に表示されているトレンドデータ表示ペン情報85の)表示データ信号85Aに基づき、プレイバック処理部11のトレンド表示部11Bにより、トレンドDB14から、現在のプロセス値と予め設定された所定時間範囲の直近の過去のプロセス値とをトレンドデータとして取り出し、トレンド表示部18Bで画像処理した結果を表示装置6に出力することで画面表示する。なお、トレンドデータとは、プロセス値を時系列に折れ線グラフ等のグラフで表示することにより、プロセス値の推移が表示され、それにより、プロセス値の傾向(トレンド)を示すデータのことである。この場合、図9のトレンド画面80のグラフ85Cにおける右端が現在のデータで、グラフ85Cのそれよりも左側に表示されている部分が直近の過去のデータとなる。すなわち、図9の例でいえば、2011年7月25日13:30:00が現在の時刻で、同日の09:30:00~13:30:00未満までの部分が直近の過去のデータとなる。」
「【0027】
次に、プレイバックモードについて説明する。通常モードからプレイバックモードへの切り替えは、上述のように、図8のプロセスフロー画面62の右上のプレイバックモード操作スイッチ66をクリックすることにより、プレイバックモードに切り替わる。プレイバックモードに切り替わると、プレイバック操作画面表示部18Fにより、図2に示すように、プレイバックモード操作スイッチ66がプレイバック操作画面70に切り替わると同時に、トレンド表示部18B、警報履歴表示部18C、操作・動作履歴表示部18D、および、オペレータ日誌表示・入力部18Eにより、トレンド画面80と警報履歴画面90と操作・動作履歴画面100とオペレータ日誌画面110とがすべて自動的にプロセスフロー画面62上に表示される。なお、下記の説明においては、プレイバックモード時には、トレンド画面80と警報履歴画面90と操作・動作履歴画面100とオペレータ日誌画面110のすべてが表示される例について説明するが、これに限定されるものではなく、オペレータにより、プレイバックモード時にどの画面を表示するかにつき選択設定できる構成にしてもよい。
【0028】
図3は、プレイバックモード時に表示されるプレイバック操作画面70の具体例を示す図である。オペレータは、プレイバック操作画面70において、プレイバック開始時刻設定欄75とプレイバック終了時刻設定欄76に、プレイバック表示(再生表示)したいデータの開始時刻と終了時刻とをそれぞれ入力し設定する。入力方法としては、画面上のプレイバック開始時刻設定欄75の位置にマウスポインタをおき、そこで、クリックすると、開始時刻が入力可能な状態になるので、キーボード52等を用いて、プレイバック開始時刻設定欄75に直接入力する。プレイバック終了時刻設定欄76においても同様の方法で入力する。なお、入力方法は一例であって、これに限定されるものではない。このようにして、開始時刻および終了時刻を入力することにより、データのプレイバック(再生)を行なう時間範囲が設定され、再生時刻表示74に、プレイバック開始時刻設定欄75に入力したプレイバック開始時刻が表示される。次に、オペレータが再生ボタン73Dをクリックすると、再生動作が開始され、当該再生時刻表示74が、プレイバック開始時刻から一定周期で時刻が加算され、プレイバック終了時刻設定欄76に入力したプレイバック終了時刻になるまで、設定された時間時範囲のデータが、トレンド画面80と警報履歴画面90と操作・動作履歴画面100とオペレータ日誌画面110とにおいて連動して同時にプレイバック再生される。また、再生中に一時停止ボタン73Cを押すと、すべての画面においてプレイバック再生が一時停止される。また、逆再生ボタン73Bを押すと、再生時刻表示74に表示されている時刻から一定周期で時刻が減算され、プレイバック開始時刻設定欄75に入力したプレイバック開始時刻まで、すべての画面で、連動して同時にプレイバック逆再生が行われる。また、一時停止中に巻き戻しボタン73Aを押すと、押した回数だけ再生時刻表示74に表示されている時刻が減算され、逆に、早送りボタン73Eを押すと、押した回数だけ再生時刻表示74に表示されている時刻が加算される。また、プレイバック操作終了ボタン71を押すことで、プレイバックモードが解除され、通常モードにモード変更され、プレイバック操作画面70がプレイバックモード操作スイッチ66に切り替ると同時に、トレンド表示画面80と警報履歴画面90と操作・動作履歴画面100とオペレータ日誌画面110とが画面から消去される。
【0029】
表示・入力処理部18は、プレイバック操作画面70においてデータのプレイバック再生を行なう開始時刻と終了時刻の設定入力がされ、再生時刻表示74に再生時刻が表示されると、プロセスフロー画面62に表示するための数値データやバルブなどの機器状態データ(プロセス値)として、プレイバック処理部11のプロセスデータ切り替え部11Aを介して、再生時刻表示74に表示されているオペレータから設定された再生時刻に基づき、トレンドDB14から、その時刻の数値データやバルブなどの機器状態データを取得し、プロセスフロー表示・操作部18Aへ送り、プロセスフロー表示・操作部18Aで画像処理した結果を表示装置6に出力することで、プロセスフロー画面62に当該データを表示する。プロセスフロー画面62では、図2に示すように、トレンドDB14から取得した各種数値データ68や機器の状態表示67が視覚的にわかりやすく表示される。
【0030】
また、それと同時に、表示・入力処理部18は、プレイバック処理部11のトレンド表示切替部11Bで、再生時刻表示74に表示されている再生時刻に基づき、トレンドDB14から、再生時刻前後のトレンドデータを取得し、トレンド表示部18Bへ送り、トレンド表示部18Bで画像処理した結果を表示装置6に出力することで、トレンド画面80に当該データを表示する。なお、上記の再生時刻前後のデータとは、再生時刻を中心とする所定時間範囲のデータのことを意味する(以下においても同様。)。図2または図4のトレンド画面80のグラフ85Cにおけるカーソル83の位置に表示されているデータが、再生時刻表示74に現在表示されている再生時刻に対応しているデータで、グラフ85Cのカーソル83の左右の部分に表示されている部分が再生時刻前後のデータとなる。すなわち、図2および図4の例でいえば、2011年7月25日11:30:00が、再生時刻表示74に現在表示されている再生時刻で、同日の09:30:00~11:30:00未満までの部分が再生時刻よりも過去のデータとなり、同日の11:30:00より後で13:30:00までの部分が再生時刻よりも後のデータとなる。」
「【0034】
このように、プレイバック操作画面70において、再生時刻の設定がなされると、表示・入力処理部18が、プレイバック処理部11を介して、すべてのDB14~17から、当該再生時刻前後のデータを連動させて同時に取り出し、それらを、各画面62,80,90,100,110に表示する。これにより、各画面62,80,90,100,110において、指定された再生時刻のデータを連動して同時に再生することができる。
【0035】
なお、上述の説明においては、再生時刻の設定をプレイバック操作画面70において行なう例について説明したが、再生時刻の設定は、他の画面80,90,100,110においても行なうことができる。プレイバックモードに切り替えたすぐの時点(再生時刻が未設定の状態)では、デフォルト値として、通常モードと同様に、現在時刻のデータから所定時間範囲だけ遡った過去のデータが各画面62、80,90,100,110に表示されている。この段階では、再生動作は停止状態であり、まだ再生動作は開始されていない。そのときに、画面80,90,100,110において表示される(後述の)時間スライドスクロールバーを操作することにより、再生時刻の設定が可能である。画面80,90,100,110のうちの1つの画面において、時間スライドスクロールバーの操作が行なわれると、プレイバック操作画面70の再生時刻表示74の時刻が加算または減算される構成となっている。これにより、画面80,90,100,110の他の画面においても、それに連動した動作となる。なお、再生動作開始前だけに限らず、再生動作が開始した後においても、再生動作を一時停止すれば、上記の時間スライドスクロールバーによる再生時刻の設定は可能である。本実施の形態においては、このようにすることにより、画面80,90,100,110のうちの1つの画面で再生時刻を設定すれば、他の画面においても、それに連動した動作となる。以下、本実施の形態に係るプロセス監視システムの動作についてさらに詳細に説明する。画面上の操作はマウスなどの入力用機器で行う。
【0036】
図8は、本実施の形態に係るプロセス監視システムのプロセスフロー画面62の一例である。プロセス監視システムでは、プロセスフロー画面62のような、視覚的にわかりやすい画面で、プロセスからの数値データ68やバルブなどの機器の状態表示67をグラフィカルに行い、監視・操業を行っている。プロセスフロー画面62の上部には、ツールバーとしてのプロセス監視システム共通表示部69が常に表示されており、その中には、警報発生時に赤などの目立つ色でフリッカ表示させるための警報発生通知表示部63や、システム警報発生時に赤などの目立つ色でフリッカ表示させるシステム異常発生通知表示部64や、他の画面に展開するためのプルダウンメニュー65A(図9参照)を表示するための画面展開メニュー呼び出しスイッチ65が配置されており、さらには、この発明の特徴である、プレイバックモードに切り替えるためのプレイバックモード操作スイッチ66を配置する。
【0037】
図4は、本実施の形態に係るトレンド画面80の一例を示す図である。プレイバックモード操作スイッチ66を操作することでプレイバックモードとなり、トレンド表示画面80がプロセスフロー画面62上に表示される。監視対象となるフィールド機器3のプロセス値(のトレンドデータ)は、複数のトレンドグループ(以下、トレンドGPとする。)に分けられ、1つのトレンドGP単位に複数のトレンドデータ表示ペンが含まれる。トレンド表示画面80の上部において、現在表示されているデータが、どのトレンドGPのエータであるかを示すために、トレンドGP表示86がタイトルとして表示され、当該トレンドGPに含まれる複数のトレンドデータ表示ペン85(PEN1,PEN2,PEN3,・・・)が表示され、トレンドデータ表示ペン85ごとに割付られた各ペンの表示データ信号85Aに基づいて各ペンのトレンドグラフ85Cが表示される。トレンドデータの表示範囲はトレンドデータ表示範囲時刻84で任意に変更可能となるとともに、時間スライドスクロールバー82を操作することで表示範囲をスライドさせることができる。トレンドデータ表示ペン85のカーソル時間データ85Bには、データ表示時間を示すカーソル83が示す時刻のデータが表示され、データ表示時間を示すカーソル83を左右に移動させることで各ペンのカーソル時間データ85Bの表示を切り替えることができる。なお、グラフ85Cの横軸は上述のトレンドデータ表示範囲時刻84だが、縦軸は表示レンジ85Dである。トレンドデータ表示ペン85は複数あるため、任意のペンを画面上で選択することで、グラフ85Cの内容が切り替わるとともに、それに応じて、縦軸の表示レンジ85Dも切り替わる。表示レンジ85Dの変域は、選択された各ペンの表示データ信号85Aのデータの変域に合わせて自動的に設定される。プレイバックモード時は、データ表示時間を示すカーソル83が再生時刻表示74の時刻を示し、トレンドデータ表示範囲時刻84も再生時刻74に連動して変化する。また、再生動作が一時停止時にデータ表示時間を示すカーソル83または時間スライドスクロールバー82を操作することで、再生時刻表示74を加算または減算することができる。表示終了ボタン81を押すとトレンド表示画面80が画面から消去される。」
「【0041】
以上のように、表示モードとして、リアルタイムのデータの表示を行なうための通常モードの他に、過去のデータのプレイバック再生を行なうためのプレイバックモードを用意しておき、プレイバックモードをオペレータが選択した場合に、設定された再生時刻表示74に表示された時刻に基づいて、当該時刻のデータプレイバック再生したプロセスフロー画面62上に、トレンド表示画面80や警報履歴画面90や操作・動作履歴画面100やオペレータ日誌画面110を同時に表示することができるので、1つの画面に、プロセスフロー表示の他に、トレンド表示、警報履歴表示、操作・動作履歴表示、オペレータ日誌表示などの時系列画面を同時に表示できるため、従来は画面を切り替えていたが、その手間が不要となり、オペレータの負荷が大幅に軽減され、トラブル原因が発生した箇所の特定を迅速かつ効率よく行なうことができる。
【0042】
また、すべてのリアルタイムデータおよび時系列データをプレイバック処理部11で管理するように構成したことで、どの画面62,80,90,100,110,110の時間スライドスクロールバーを操作しても、当該操作に基づいて、プレイバック操作画面70の再生時刻表示74が加算・減算されることで、各画面の再生時刻が連動して変更され、同期したデータ表示を自動的に行なうことができる。」
イ 図面
(ア)図1
[図:0001419364000009.jpg]
(イ)図2
[図:0001419364000010.jpg]
(ウ)図3
[図:0001419364000011.jpg]
(エ)図4
[図:0001419364000012.jpg]
(オ)図8
[図:0001419364000013.jpg]
(カ)図9
[図:0001419364000014.jpg]
(2)甲3の記載事項の整理
ア 段落【0001】、【0020】、【0029】、【0036】、図1、2、8~9の記載からみて、甲3はプロセス監視システムに関するものであって、このシステムは、フィールド機器3の各機器の配置または接続関係が表示されるとともに、前記フィールド機器3のプロセス値についての各種数値データ68や各機器の状態表示67が視覚的にわかりやすく表示されるプロセスフロー画面62を出力するプロセスフロー表示・操作部18Aを備える。
イ 段落【0022】、【0030】、【0037】、図1、2、8~9の記載からみて、甲3のプロセス監視システムは、上記アのプロセス値を、時系列にグラフで表示することで推移が表示されることにより傾向を示すトレンドデータとして取り出し、画像処理したトレンド表示画面80を出力するトレンド表示部18Bを備える。
ウ 段落【0034】~【0035】、【0042】、図1、2、8~9の記載からみて、甲3のプロセス監視システムは、プロセスフロー画面62とトレンド表示画面80において指定された再生時刻のプロセス値のデータを連動させるプレイバック処理部11を有する。
エ 段落【0019】、【0020】、【0027】、【0029】、図1、2、8~9の記載からみて、上記アのプロセスフロー表示・操作部18Aは、通常モードではリアルタイムのプロセス値についての、プレイバックモードではオペレータから設定された再生時刻のプロセス値についての、各種数値データ68や各機器の状態表示67が各機器ごとに視覚的にわかりやすく表示されるプロセスフロー画面62を出力する。
オ 段落【0022】、【0027】、【0030】、図1、2、8~9の記載からみて、上記イのトレンド表示部18Bは、通常モードでは現在のプロセス値と予め設定された所定時間範囲の直近の過去のプロセス値を、前記プレイバックモードではオペレータから設定された再生時刻前後のプロセス値を、時系列にグラフで表示することで推移が表示されることにより傾向を示すトレンドデータとして取り出し、画像処理したトレンド表示画面80を出力する。
カ 段落【0028】、【0034】~【0035】、【0041】~【0042】、図1、2、8~9の記載からみて、上記ウのプレイバック処理部11は、プレイバックモードにおいて、プロセスフロー表示・操作部18Aが出力するプロセスフロー画面62とトレンド表示部18Bが出力するトレンド表示画面80に連動して再生するように再生時刻前後のプロセス値を連動させ、前記プロセスフロー画面62で表示されるプレイバック操作画面70とトレンド表示画面80で表示される時間スライドスクロールバーのいずれによっても再生時刻の設定がなされる。
(3)甲3記載の技術的事項
上記(1)~(2)より、甲3には次の技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「フィールド機器3の各機器の配置または接続関係が表示されるとともに、前記フィールド機器3のプロセス値についての各種数値データ68や各機器の状態表示67が視覚的にわかりやすく表示されるプロセスフロー画面62を出力するプロセスフロー表示・操作部18Aと、
前記プロセス値を、時系列にグラフで表示することで推移が表示されることにより傾向を示すトレンドデータとして取り出し、画像処理したトレンド表示画面80を出力するトレンド表示部18Bとを備え、
プロセスフロー画面62とトレンド表示画面80において指定された再生時刻のプロセス値のデータを連動させるプレイバック処理部11とを有し、
前記プロセスフロー表示・操作部18Aは、通常モードではリアルタイムの前記プロセス値についての、プレイバックモードではオペレータから設定された再生時刻のプロセス値についての、各種数値データ68や各機器の状態表示67が各機器ごとに視覚的にわかりやすく表示されるプロセスフロー画面62を出力し、
前記トレンド表示部18Bは、前記通常モードでは現在のプロセス値と予め設定された所定時間範囲の直近の過去のプロセス値を、前記プレイバックモードではオペレータから設定された再生時刻前後のプロセス値を、時系列にグラフで表示することで推移が表示されることにより傾向を示すトレンドデータとして取り出し、画像処理したトレンド表示画面80を出力し、
前記プレイバック処理部11は、前記プレイバックモードにおいて、前記プロセスフロー表示・操作部18Aが出力するプロセスフロー画面62とトレンド表示部18Bが出力するトレンド表示画面80に連動して再生するように前記再生時刻前後のプロセス値を連動させ、前記プロセスフロー画面62で表示されるプレイバック操作画面70とトレンド表示画面80で表示される時間スライドスクロールバーのいずれによっても前記再生時刻の設定がなされるプロセス監視システム。」
第5 当審の判断
1 理由1(進歩性)
(1)本件特許発明1
ア 本件特許発明1と甲1発明の対比
(ア)甲1発明の「プログラマブルコントローラ」は本件特許発明1の「プログラマブルロジックコントローラ」に相当し、以下同様に「サンプリングされた」は「収集された」に、「トレースデータとしてのインデックスごとのデバイスデータの値」は「時系列の複数のデバイス値」に、「トレースデータとしてのインデックスごとの」「収集時刻」は「各デバイス値の収集時刻を示す時刻データ」に、「記憶」は「保存」に、「トレースデータ格納部25」は「保存手段」にそれぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「ユーザプログラム」は図3等からみて本件特許発明1の「ラダー図」に相当し、同様に「回路モニタ表示処理部26」は「第一エンジニアリングソフトウェアモジュール」に相当する。
(ウ)甲1発明の「トレンドグラフ」は本件特許発明1の「時系列波形」に相当し、同様に「トレンドグラフ表示処理部27」は「第二エンジニアリングソフトウェアモジュール」に相当する。
(エ)甲1発明の「前記回路モニタ表示処理部26により回路モニタ表示領域110にユーザプログラム上に表示されるデバイスデータの値と、トレンドグラフ表示処理部27によりトレンドグラフ表示領域120に表示されるトレンドグラフとを、トレンドグラフの時間を指定するカーソル121に対応するインデックスにより連動させる」ことは、デバイスデータの値とトレンドグラフの2つの表示対象時刻を、トレンドグラフの時間に対応するインデックスにより連動するものであるから、本件特許発明1の「前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻と前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻とを同期させる」ことに相当し、甲1発明の「カーソル情報取得部28」は本件特許発明1の「同期ソフトウェアモジュール」に相当する。
(オ)甲1発明の「原因究明処理モード」は本件特許発明1の「履歴再生モード」に相当し、以下同様に「トレンドグラフのカーソル121に対応するインデックスのデバイスデータの値」は「表示対象時刻に対応するデバイス値」に、「回路モニタ表示領域110」は「第一表示制御手段」にそれぞれ相当する。
(カ)甲1発明の「トレンドグラフ化して表示する」ことは本件特許発明1の「時系列波形を表示する」ことに相当し、同様に、「トレンドグラフ表示領域120」は「第二表示制御手段」に相当する。
そして、甲1発明の「前記原因究明処理モードにおいてユーザが選択したプログラムに対応するデバイスデータを前記トレースデータ格納部25から取得してトレンドグラフ化して表示する」と本件特許発明1の「前記履歴再生モードにおいて前記時刻データに基づき前記表示対象時刻に対応するデバイス値を前記保存手段から取得して時系列波形を表示する」を対比すると、「前記履歴再生モードにおいてデバイス値を前記保存手段から取得して時系列波形を表示する」という点に限り一致する。
(キ)甲1発明の「前記トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフのカーソル121に対応するインデックスのデバイスデータの値を前記回路モニタ表示処理部26に渡して、この回路モニタ表示処理部26による前記回路モニタ表示領域110のユーザプログラムのデバイスデータの値の表示と、前記トレンドグラフ表示処理部27による前記トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフの表示とを連動させるものであって」という事項は、トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフのカーソル121に対応するインデックスのデバイスデータの値を回路モニタ表示処理部26に渡しており、このデバイスデータの値はトレンドグラフの時刻と紐付けられていることから、デバイスデータの値を表示する回路モニタ表示処理部26とトレンドグラフを表示するトレンドグラフ表示処理部27の間で表示対象時刻を受け渡しているということができ、両者の表示対象時刻を同期させる手段であるといえる。そうすると、甲1発明の当該事項は、本件特許発明1の「前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールと前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールとの間で表示対象時刻を受け渡すことにより、前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻と前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻とを同期させる同期手段を有し」という発明特定事項に相当する。
そして、甲1発明の「前記トレンドグラフ表示領域120のトレンドグラフのカーソル121がユーザによって入力部22を介して移動されると、対応する前記インデックスのデバイスデータの値をトレースデータ格納部25から取得する」ことと、本件特許発明1の「前記第一表示制御手段と前記第二表示制御手段のいずれによっても起動される」ことを対比すると、甲1発明におけるデバイスデータの値の表示とトレンドグラフの表示を連動させることは、トレンドグラフのカーソル121が移動されることのみにより行われるから、「前記第二表示制御手段によって起動される」という点に限り一致する。
また、甲1発明の「プログラマブルコントローラの周辺装置」は、本件特許発明1の「プログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール」に相当する。
(ク)したがって、本件特許発明1と甲1発明は、次のイの点で一致し、ウの点で相違する。
イ 本件特許発明1と甲1発明の一致点
プログラマブルロジックコントローラにおいて収集された時系列の複数のデバイス値と、各デバイス値の収集時刻を示す時刻データとを保存する保存手段と、
前記デバイス値をラダー図上に表示する第一エンジニアリングソフトウェアモジュールと、
前記デバイス値を時系列波形として表示する第二エンジニアリングソフトウェアモジュールと、
前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻と前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻とを同期させる同期ソフトウェアモジュールと
を有し、
前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールは、
履歴再生モードにおいて前記時刻データに基づき表示対象時刻に対応するデバイス値を前記保存手段から取得してラダー図上に表示する第一表示制御手段を有し、
前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールは、
前記履歴再生モードにおいてデバイス値を前記保存手段から取得して時系列波形を表示する第二表示制御手段を有し、
前記同期ソフトウェアモジュールは、前記履歴再生モードにおいて、前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールと前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールとの間で表示対象時刻を受け渡すことにより、前記第一エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻と前記第二エンジニアリングソフトウェアモジュールにおける表示対象時刻とを同期させる同期手段を有し、前記第二表示制御手段によって起動されるプログラマブルロジックコントローラ用のエンジニアリングツール。
ウ 本件特許発明1と甲1発明の相違点
(ア)相違点1
本件特許発明1が、履歴再生モードに加えてリアルタイム再生モードを有するのに対して、甲1発明はリアルタイム再生モードを有しない点。
(イ)相違点2
同期ソフトウェアの起動に関し、本件特許発明1が、第一表示制御手段と第二表示制御手段のいずれによっても起動されるのに対して、甲1発明は、第一表示制御手段によっては起動されず、第二表示制御手段によって起動される点。
(ウ)相違点3
第二表示制御手段が履歴再生モードにおいてデバイス値を保存手段から取得して表示する時系列波形について、本件特許発明1は、「前記時刻データに基づき前記表示対象時刻に対応するデバイス値を」を表示するものであるのに対して、甲1発明は、「ユーザが選択したプログラムに対応するデバイスデータ」を表示するものである点。
エ 相違点の検討
事案に鑑み、相違点2から検討する。
(ア)甲1発明への甲2記載の技術的事項の適用
a 甲1の回路モニタ表示領域110には、表示されているシーケンスプログラムの時刻(表示対象時刻)を示す手段(例えば、トレンドグラフ表示領域120のカーソル121のような手段)が存在せず、シーケンスプログラムの表示時刻を任意に指定したり、特定したりすることができないから、甲1に接した当業者が、シーケンスプログラムの表示時刻に同期するようにトレンドグラフ表示領域120の時系列波形を表示させる、すなわち、第一表示制御手段によって、同期ソフトウェアを起動させる動機があるとはいえない。
b 甲2記載の技術的事項は、監視制御対象プラントデータ3を再生するプレイバック再生画面10と、監視制御対象プラントデータ3の時間的変化を表示するタイムチャート画面20を、一つの表示装置に並べて配置するものである。
そして、甲2記載の技術的事項のプレイバック再生画面10は、監視項目(シンボル情報11)である機器の実際の配置(配管等の配置)に対応して表示される形式のものであり、また、データの値が表示されるものではないのに対して、甲1発明における回路モニタ表示領域110は、ユーザプログラムの論理構造に対応して表示される形式のものであり、データの値がデバイスごとに表示されるものであるから、両者の表示の形式や表示内容は大きく異なる。
c また、甲1発明は、ユーザプログラムにしたがってプログラマブルコントローラがリード/ライトするデバイスデータの履歴情報であるトレースデータを収集して、ユーザプログラムのデバッグ支援を行うプログラマブルコントローラの周辺装置であって、回路モニタ表示領域110とトレンドグラフ表示領域120に表示される情報により、入力された時間のユーザプログラムの状態の把握を容易とするものであるのに対して、甲2記載の技術的事項は、プラントの運転データや故障データである監視制御対象プラントデータを画面上で再生して、プラントの状態を確認するプラントの監視制御システムであって、プレイバック再生画面10とタイムチャート画面20により、入力された時間のプラントの状態の確認を容易とするものである。
したがって、甲1発明の回路モニタ表示領域110とトレンドグラフ表示領域120が扱うトレースデータと、甲2記載の技術的事項のプレイバック再生画面10とタイムチャート画面20が扱うプラントの運転データや故障データは、その形態や目的が全く異なる。
d 上記b及びcのとおり、甲1発明と甲2記載の技術的事項は、技術分野が異なり、デバッグ支援を行うような周辺装置の当業者が、プラントの監視制御システムに係る甲2記載の技術的事項に基づいて、甲1発明のシーケンスプログラムの表示時刻に同期するようにトレンドグラフ表示領域120の時系列波形を表示させること、すなわち第一表示制御手段によって、同期ソフトウェアを起動させることを想到するとはいえない。
さらに、申立人が提出した甲3~甲11を参照しても、シーケンスプログラム(ラダー図)を表示する画面において表示時刻を指定ないし特定する手段が、本件特許に係る出願の出願時における技術常識であったとはいえない。
e そうすると、当業者が、甲1発明から出発して第一表示制御手段によって、同期ソフトウェアを起動させる改変をしようとするまでには到らないから、相違点2に係る本件特許発明1とすることが、当業者にとって容易であるとはいえない。
(イ)甲1発明への甲3記載の技術的事項の適用
a 上記(ア)aのとおり、甲1に接した当業者が、第一表示制御手段によって、同期ソフトウェアを起動させる動機があるとはいえない。
b 甲3記載の技術的事項は、フィールド機器3のプロセス値を表示するプロセスフロー画面62と、フィールド機器3のプロセス値の時間的変化を表示するトレンド画面80を、一つの表示装置に重なるように並べて配置するものである
そして、甲3記載の技術的事項におけるプロセスフロー画面62は、フィールド機器3の実際の配置や接続関係に対応して表示される形式のものであるのに対して、甲1発明における回路モニタ表示領域110は、ユーザプログラムの論理構造に対応して表示される形式のものであるから、画面に表示される両者の表示の形式は大きく異なる。
c また、甲1発明は、上記(ア)bと同様に、ユーザプログラムのデバッグ支援を行うプログラマブルコントローラの周辺装置であって、回路モニタ表示領域110とトレンドグラフ表示領域120に表示される情報により、入力された時間のユーザプログラムの状態の把握を容易とするものであるのに対して、甲3記載の技術的事項は、各フィールド機器3の現在の値(状態値)を画面上で表示して、プロセスの状態を確認するプロセス監視システムであって、プロセスフロー画面62とトレンド画面80により、指定される再生時刻のプロセスの状態の確認を容易とするものである。
したがって、甲1発明の回路モニタ表示領域110とトレンドグラフ表示領域120が扱うトレースデータと、甲3記載の技術的事項のプロセスフロー画面62とトレンド画面80が扱う各フィールド機器3の現在の値(状態値)は、その形態や目的が全く異なる。
d 上記b及びcのとおり、甲1発明と甲3記載の技術的事項は、技術分野が異なり、デバッグ支援を行うような周辺装置の当業者が、プロセス監視システムに係る甲3記載の技術的事項に基づいて、甲1発明のシーケンスプログラムの表示時刻に同期するようにトレンドグラフ表示領域120の時系列波形を表示させること、すなわち、第一表示制御手段によって、同期ソフトウェアを起動させることを想到するとはいえない。
さらに、申立人が提出した甲2及び甲4~甲11を参照しても、シーケンスプログラム(ラダー図)を表示する画面において表示時刻を指定ないし特定する手段が、本件特許に係る出願の出願時における技術常識であったとはいえない。
e そうすると、当業者が、甲1発明から出発して、第一表示制御手段によって、同期ソフトウェアを起動させる改変をしようとするまでには到らないから、相違点2に係る本件特許発明1とすることが、当業者にとって容易であるとはいえない。
(ウ)本件特許発明1の進歩性についてのまとめ
上記(ア)~(イ)のとおりであるから、相違点1及び3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2記載の技術的事項、又は甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、甲4~甲11を参照しても、この判断を覆すに足る技術的事項は示されていない。
(2)本件特許発明2~15
本件特許発明2~15は、本件特許発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。そうすると、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2~15は、甲1発明及び甲2記載の技術的事項、又は甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
したがって、請求項1~15に係る特許は、理由1(進歩性)によっては取り消すことはできない。
2 理由2(明確性)
(1)申立ての内容
申立人は、請求項1に記載した「起動」の用語に関し、一般的には、「ソフトウェア(またはアプリケーション)を起動するとは、ソフトウェア(またはアプリケーション)を立ち上げて実行可能な状態にすることを意味する」のに対して、本件明細書においては、「起動」について明確な定義がないとした上で「ソフトウェアを立ち上げるという意味ではなく、同期ソフトウェアモジュールの機能(表示時刻を取得する機能)を実際に実行させる毎回の動作を指すものと見受けられる」ことを指摘する。
そして、申立人は、特許権者が本件特許の特許権の設定登録前に提出した令和5年9月11日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)によると、「起動」は、「同期ソフトウェアモジュールを、第一エンジニアリングソフトウェアモジュールと、第二エンジニアリングソフトウェアモジュールとのいずれのソフトウェアからも立ち上げて実行することができる」との意味、すなわち前者の一般的な意味で使用されている旨を説明する。
申立人は、この内容に基づき、本件明細書の記載における「起動」が意味するものと、意見書における「起動」が意味するものとには、齟齬があるため、請求項1に記載した「起動」とは、ソフトウェアを立ち上げて実行可能な状態にすることを意味するのか、それとも機能を実行させる動作を意味するのかが不明であるから、請求項1の「前記第一表示制御手段と前記第二表示制御手段のいずれによっても起動される」との記載内容が、どのようなことが行われることであるのかを理解することができず、請求項1およびそれを引用する請求項2~15に係る発明は明確でない旨を主張する。
また、請求項15の「当該履歴再生モードが選択されると前記同期ソフトウェアモジュールを起動する」との記載内容についても同様に明確でない旨を主張する。
(2)申立ての検討
これに対して、請求項1に記載した「前記第一表示制御手段と前記第二表示制御手段のいずれによっても起動される」という発明特定事項について、申立人が「ソフトウェアを立ち上げるという意味ではなく、同期ソフトウェアモジュールの機能・・・を実際に実行させる毎回の動作を指すものと見受けられる」と指摘するとおり、「起動」の用語は、一般的な意味に限らずソフトウェアの機能を実行させる動作を意味すると解するのが相当であり、「起動」の用語は明確である。
そして、意見書における主張も、このように解したうえでも内容が理解できるものであるし、請求項15に記載した「前記第一表示制御手段と前記第二表示制御手段のいずれによっても起動される」という発明特定事項についても同様である。
(3)小括
したがって、本件特許発明1~15は明確であるから、請求項1~15に係る特許は、理由2(明確性)によっては取り消すことができない。
3 理由3(サポート要件)
(1)申立ての内容
申立人は、特許請求の範囲の請求項1の「起動」の用語について、意見書では、ソフトウェアを立ち上げて実行可能な状態にするという一般的な意味で使用されているのに対して、発明の詳細な説明における「起動」の用語について、同期ソフトウェアモジュールの機能(表示時刻を取得する機能)を実際に実行させる毎回の動作を指している旨を指摘する。
そして、発明の詳細な説明では、ソフトウェアの毎回の動作である「起動」を行うことのみが特定されているところ、請求項1におけるソフトウェアを立ち上げる動作である「起動」を行うことは特定されておらず、出願時の技術常識に照らしても、請求項1~15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張する。
(2)申立ての検討
上記2(2)で検討したとおり、請求項1に記載した「前記第一表示制御手段と前記第二表示制御手段のいずれによっても起動される」という発明特定事項について、「起動」の用語が、一般的な意味に限らずソフトウェアの機能を実行させる動作を意味すると解するのが相当であるから、請求項1における「起動」の用語の意味は、ソフトウェアを立ち上げる動作に限定されることはなく、発明の詳細な説明に記載したソフトウェアの機能を実行させる動作に対応するものといえる。
(3)小括
したがって、本件発明1~15は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、請求項1~15に係る特許は、理由3(サポート要件)によっては取り消すことができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700643