特許異議申立
2023-701212
薬品払出装置
- 審判番号
- 2023-701212
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-040255
- 登録番号
- 7277687
- 請求日
- 2023年11月16日
- 審決日
- 2024年05月16日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社湯山製作所
- 【権利者代理人】藤田 隆
- 【異議申立人】松本 征二
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 真徳
- 審判官 安井 寿儀
- 審判官 近藤 利充
- 分類
- P1651.121-Y (A61J) / P1651.537-Y (A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7277687号発明「薬品払出装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7277687号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7277687号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年 4月20日(優先権主張 平成27年 4月20日)の出願である特願2016-84338号の一部を、令和 4年 3月15日に新たな特許出願としたものであって、令和 5年 5月11日にその特許権の設定登録がされ、令和 5年 5月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和 5年11月16日に特許異議申立人 松本 征二(以下「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
特許第7277687号の請求項1~6に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明6」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の散薬収容容器と、容器移動手段と、散薬を分配する散薬分配装置と、複数の容器載置装置とを有し、
容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能であり、
全ての容器載置装置に散薬収容容器を設置し、全ての容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、
全ての容器載置装置の数を超える種類の散薬を投入する動作を実施する際には、全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬を排出し終えた散薬収容容器を容器載置装置から取り外し、別途の散薬収容容器を容器移動装置で移動させ、散薬を排出し終えた散薬収容容器が載置されていた容器載置装置に別途の散薬収容容器を載置する動作を含むことを特徴とする薬品払出装置。
【請求項2】
複数の散薬収容容器と、容器移動手段と、散薬を分配する散薬分配装置と、複数の容器載置装置とを有し、
容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能であり、
全ての容器載置装置に散薬収容容器を設置し、全ての容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器からの所定量の散薬が排出し終えた場合には、排出し終えた散薬収容容器を取り外して容器載置装置を空け、別途の散薬収容容器を容器移動手段で移動させて空いた容器載置装置に別途の散薬収容容器を設置することが可能であり、
容器載置装置に設置される散薬収容容器から所定量の散薬が排出し終えるのに要する時間を想定し、排出するのに要する時間の長短を勘案して散薬収容容器を容器載置装置に載置する順番を変更する順番決定機能を有することを特徴とする薬品払出装置。
【請求項3】
複数の散薬収容容器と、容器移動手段と、散薬を分配する散薬分配装置と、複数の容器載置装置とを有し、
容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能であり、
全ての容器載置装置に散薬収容容器を設置し、全ての容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器からの所定量の散薬が排出し終えた場合には、排出し終えた散薬収容容器を取り外して容器載置装置を空け、別途の散薬収容容器を容器移動手段で移動させて空いた容器載置装置に別途の散薬収容容器を設置することが可能であり、
容器移動手段によることなく使用者が手動で散薬収容容器を容器載置装置に載置及び取り外しが可能なように形成されており、全ての容器載置装置に載置されている散薬収容容器からの散薬の排出が終了したにも係わらず、使用者の手で載置した散薬収容容器が容器載置装置に載置されたままである場合に、その旨に関する情報を報知する報知動作が実施されることを特徴とする薬品払出装置。
【請求項4】
薬品払出装置は、2以上の分配皿をさらに有し、
複数の容器載置装置が2以上の分配皿の近傍に設置され、
複数の容器載置装置に異なる種類の散薬が収容された散薬収容容器を載置して異なる種類の散薬を2以上の分配皿のいずれかの分配皿に投入する混合処方動作が可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薬品払出装置。
【請求項5】
分配皿を清掃する清掃装置をさらに有し、清掃装置で分配皿を清掃する時期として下記(1)から(5)の条件:
(1)一つの処方による散薬の分配が終了したとき、
(2)新たに一つの処方による散薬の分配を開始せんとするとき、
(3)特定の散薬を含む処方による散薬の分配が終了したとき、
(4)容器移動手段によることなく使用者の手で散薬収容容器を容器載置装置に設置し、散薬の分配が終了したとき、
(5)容器移動手段によることなく使用者の手で散薬収容容器を容器載置装置に設置し、散薬の分配が終了し、さらに新たに一つの処方による散薬の分配を開始せんとするとき、
のいずれか一つ又は複数を選択可能であることを特徴とする請求項4に記載の薬品払出装置。
【請求項6】
複数の散薬収容容器と、容器移動手段と、散薬を分配する散薬分配装置と、複数の容器載置装置とを有する薬品払出装置の払出方法であって、
薬品払出装置は、容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能であり、
全ての容器載置装置に散薬収容容器を設置し、全ての容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、
全ての容器載置装置の数を超える種類の散薬を投入する動作を実施する際には、全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬を排出し終えた散薬収容容器を容器載置装置から取り外し、
別途の散薬収容容器を容器移動装置で移動させ、散薬を排出し終えた散薬収容容器が載置されていた容器載置装置に別途の散薬収容容器を載置することを特徴とする薬品払出装置の払出方法。」
第3 申立理由の概要
1.申立理由1
異議申立人は、下記の証拠を提出し、請求項1~6に係る特許は、以下のとおり特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~6に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
<証拠>
甲第1号証:国際公開第2014/046148号(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2014-88193号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2005-67739号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:“日本薬学会第132年会要旨集4”,日本薬学会第132年会組織委員会,平成24年3月5日,p.244(以下「甲4」という。)
甲第5号証:国際公開第2015/005460号(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開平3-264068号公報(以下「甲6」という。)
甲第7号証:特開2004-105514号公報(以下「甲7」という。)
(1)本件特許発明1、4及び6は、甲1発明及び周知技術(甲2、3)に基いて、あるいは、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものである(特許異議申立書第10~18、24~26、29~31ページ)。また、本件特許発明5は、甲1発明及び周知技術((甲2、3)、(甲3、7))に基いて、甲1発明、周知技術(甲2、3)及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、甲1発明及び周知技術(甲3、7)に基いて、あるいは、甲1発明及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものである(特許異議申立書第26~29ページ)。
(2)本件特許発明2、4は、周知の課題(甲3、4)を考慮すると、甲1発明及び周知技術(甲2、3)に基いて、あるいは、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものである(特許異議申立書第18~20、24~26ページ)。また、本件特許発明5は、甲1発明及び周知技術((甲2、3)、(甲3、7))に基いて、甲1発明、周知技術(甲2、3)及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、甲1発明及び周知技術(甲3、7)に基いて、あるいは、甲1発明及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものである(特許異議申立書第26~29ページ)。
(3)本件特許発明3、4は、甲1発明及び周知技術((甲2、3)、(甲5、6))に基いて、あるいは、甲1発明及び周知技術(甲5、6)に基いて、当業者が容易に想到し得るものである(特許異議申立書第20~26ページ)。また、本件特許発明5は、甲1発明及び周知技術((甲2、3)、(甲5、6)、(甲3、7))に基いて、甲1発明、周知技術((甲2、3)、(甲5、6))及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、甲1発明、周知技術((甲5、6)、(甲3、7))に基いて、あるいは、甲1発明、周知技術(甲5、6)及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものである(特許異議申立書第26~29ページ)。
2.申立理由2
異議申立人は、請求項1~請求項6の記載は、以下(1)~(7)のとおり特許法第36条第6項第1号ないし同第2号の要件に適合しないものであるから、請求項1~6に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
(1)請求項1~6(サポート要件)(特許異議申立書第31~32ページのウ(ア))
請求項1、2、3及び6の「複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能」との記載は、散薬を分配皿以外の例えば薬品導入口39に排出する場合や、散薬収容容器から排出した散薬を混合しない場合も含む。
本件特許の発明の詳細な説明には、散薬を分配皿に排出して混合する場合しか記載されておらず(明細書の段落0193)、散薬を分配皿以外に排出する場合および散薬を混合しない場合については何ら記載されていない。
本件特許発明1~6は、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて発明の課題を解決することができると当業者が認識する範囲を超えるものであることは明らかであるので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しない。
(2)請求項1~6(サポート要件)(特許異議申立書第32ページのウ(イ))
本件特許に係る発明が解決すべき課題は、特に異なる種類の薬剤を分配皿に投入する混合処方を行う場合において、「散薬分包作業を高速化することが可能な薬品払出装置を提供すること」であるが、本件特許発明1~6においては、散薬を分配皿以外に排出する場合も含み、さらには、分包作業が行われない場合も含まれる。請求項1~6において特定した発明では本件発明の課題を解決することができない。
本件特許発明1~6は、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて発明の課題を解決することができると当業者が認識する範囲を超えるものであることは明らかであるので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しない。
(3)請求項1~6(サポート要件)(特許異議申立書第32~33ページのウ(ウ))
請求項1、2、3及び6の「容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置」するとの記載は、複数の散薬収容容器を容器移動手段で同時に移動させる場合も含む。
本件特許の発明の詳細な説明には、容器移動手段としてアーム部30と昇降機構31を備えた容器移動ユニット28で1つの散薬収容容器を移動させることしか記載されておらず(明細書の段落0035、0036、0110、図2及び4)、複数の散薬収容容器を同時に移動させる場合については何ら記載されていない。
また、本件特許に係る発明が解決すべき課題は、「散薬分包作業を高速化することが可能な薬品払出装置を提供すること」であるが、本件特許発明1~6における解決手段は、いずれも容器移動手段で複数の散薬収容容器を同時に移動させることがないことを前提とするものである。この点からも、明細書には、複数の散薬収容容器を同時に移動させる場合について何ら記載されていない。複数の散薬収容容器を同時に移動させるとすると、請求項1~6において特定した発明では必ずしも本件発明の課題を解決することができない。
本件特許発明1~6は、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて発明の課題を解決することができると当業者が認識する範囲を超えるものであることは明らかであるので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しない。
(4)請求項2(明確性)(特許異議申立書第33ページのウ(エ))
請求項2の記載は以下の点において明確でないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合しない。
ア 「散薬収容容器から所定量の散薬が排出し終えるのに要する時間を想定し」とは、薬品払出装置としてどのような動作ないし処理を示すのかが明確でない。
イ 「排出するのに要する時間の長短を勘案して」とは、薬品払出装置としてどのような動作ないし処理を示すのかが明確でない。
ウ 「排出するのに要する時間の長短を勘案して散薬収容容器を容器載置装置に載置する順番を変更する」とは、時間の長短を基準に順番がどのように決まるのかが明確でない。また、排出するのに要する時間の長短がどのように決まるのかが明確でない。
(5)請求項2(サポート要件)(特許異議申立書第33~34ページのウ(オ))
請求項2の「容器載置装置に設置される散薬収容容器から所定量の散薬が排出し終えるのに要する時間を想定し、排出するのに要する時間の長短を勘案して散薬収容容器を容器載置装置に載置する順番を変更する順番決定機能を有する」との記載について、この順番決定機能で散薬収容容器を容器載置装置に載置する順番を変更したとしても、散薬収容容器から散薬を排出するタイミングは何ら特定されていないから、本件特許発明2は、散薬収容容器を容器載置装置に載置する順番とは異なる順番で散薬の排出を開始したり、全ての散薬収容容器において同時に散薬の排出を開始したりする場合も含む。このような場合には、本件特許に係る発明が解決すべき課題である「散薬分包作業を高速化することが可能な薬品払出装置を提供すること」との課題を解決することができない。
本件特許発明2は、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて発明の課題を解決することができると当業者が認識する範囲を超えるものであることは明らかであるので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しない。
(6)請求項2(サポート要件)(特許異議申立書第34~36ページのウ(カ))
請求項2の「容器載置装置に設置される散薬収容容器から所定量の散薬が排出し終えるのに要する時間を想定し、排出するのに要する時間の長短を勘案して散薬収容容器を容器載置装置に載置する順番を変更する順番決定機能を有する」との記載は、上記(4)のとおり、この構成の意味するところは不明確であるが、文言に基づくと、排出するのに要する時間の長短を勘案してあらゆる順番に変更することが含まれる。
この構成に関する記載は、明細書の段落0142及び0143のみであり、2つの分配ユニット35を使用して分包作業を実施する場合には、収容された薬品の排出時間の長い順に薬品容器を容器保持台36に設置し、2つの分配ユニット35のうちいずれか一方の分配ユニット35を使用して分包作業を実施する場合には、収容された薬品の排出時間の短い順に薬品容器を容器保持台36に設置する、2つの場合のみであり、それ以外の場合は何ら記載されていない。請求項2の文言に基づくと、排出するのに要する時間の長短を勘案してあらゆる順番に変更することが含まれ、発明の詳細な説明に記載されていない事項を含み、また、発明の詳細な説明に記載されていない順番を採用した場合にどのように本件発明の課題を解決するのかを理解することができない。
本件特許発明2は、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて発明の課題を解決することができると当業者が認識する範囲を超えるものであることは明らかであるので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しない。
(7)請求項2(サポート要件)(特許異議申立書第36ページのウ(キ))
請求項2の「容器載置装置に設置される散薬収容容器から所定量の散薬が排出し終えるのに要する時間を想定し、排出するのに要する時間の長短を勘案して散薬収容容器を容器載置装置に載置する順番を変更する順番決定機能を有する」との記載は、上記(4)のとおり、この構成の意味するところは不明確であるが、文言に基づくと、排出するのに要する時間の長短を勘案して、長い順に載置する場合と短い順に載置する場合の両方が含まれる。長い順に載置することと、短い順に載置することとは、全く逆の動作であり、このいずれに基づいても本件発明の課題が解決されると理解することは不可能である。
また、上記(6)のとおり、この構成に関する記載は、2つの分配ユニット35を使用して分包作業を実施する場合には、収容された薬品の排出時間の長い順に薬品容器を容器保持台36に設置し、2つの分配ユニット35のうちいずれか一方の分配ユニット35を使用して分包作業を実施する場合には、収容された薬品の排出時間の短い順に薬品容器を容器保持台36に設置する、2つの場合のみであり、請求項2の記載においては、分配ユニットの個数に関して何らの条件も付すことなく単に排出するのに要する時間の長短を勘案して、とのみ記載されており、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えることは明らかである。
また、分包動作で使用する分配ユニット35の数を基準として、薬品容器を容器保持台35に設置する順番を排出時間の長い順とするか短い順とするかを変更することによって上記した本件発明の課題が解決されると理解することは不可能である。
本件特許発明2は、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて発明の課題を解決することができると当業者が認識する範囲を超えるものであることは明らかであるので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しない。
第4 当審の判断
1 申立理由1について
(1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1の記載事項
(ア)段落[0157]~[0159]及び図30には、複数の薬剤容器2Cと、薬剤容器移動装置102と、散薬分配装置202と、複数台の薬剤フィーダ50とを有する薬剤払出し装置100が記載されている。
(イ)段落[0085]~[0086]には、薬剤フィーダ50は、薬剤容器2と本体装置3によって構成されることが記載され、段落[0163]には、薬剤容器移動装置102を駆動させて薬剤容器2Cを本体装置3に設置することが記載されている。そして、段落[0160]には、薬剤容器移動装置102が薬剤容器2Cを保持して移動させることが記載されているから、薬剤払出し装置100は、薬剤容器移動装置102で薬剤容器2Cを移動させて本体装置3に設置するものである。
(ウ)段落[0164]~[0167]、[0170]には、本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻すことが記載されている。
(エ)上記(ア)のとおり、薬剤フィーダ50は複数台あることから、本体装置3も複数あることは明らかである。そして、上記(イ)及び(ウ)の事項を合わせると、薬剤払出し装置100は、複数の薬剤容器2Cを移動させて複数の本体装置3に設置し、複数の薬剤容器2Cから散薬を払い出すことが可能であるといえる。
(オ)段落[0172]には、手動で散薬等の分包を行う場合に、薬剤容器2B、2Eを薬剤フィーダ50の振動台20に固定し、開放された上部側から大雑把な量の薬剤を薬剤容器2に投入することが記載されている。振動台20は本体装置3の一部であるから(段落[0062]参照)、手動で薬剤容器2B、2Eを本体装置3に設置及び取り外し可能なように形成されているといえる。
イ 甲1に記載された発明
(ア)上記アの(ア)~(エ)の事項から、甲1には次の2つの発明(以下、それぞれ「甲1発明A」、「甲1発明B」という。)が記載されている。
<甲1発明A>
「複数の薬剤容器2Cと、薬剤容器移動装置102と、散薬分配装置202と、複数の本体装置3とを有し、
薬剤容器移動装置102で複数の薬剤容器2Cを移動させて複数の本体装置3に設置し、複数の薬剤容器2Cから散薬を排出することが可能であり、
本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻す薬剤払出し装置100。」
<甲1発明B>
「複数の薬剤容器2Cと、薬剤容器移動装置102と、散薬分配装置202と、複数の本体装置3とを有する薬剤払出し装置100の払い出し方法であって、
薬剤容器移動装置102で複数の薬剤容器2Cを移動させて複数の本体装置3に設置し、複数の薬剤容器2Cから散薬を排出することが可能であり、
本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻す薬剤払出し装置100の払い出し方法。」
(イ)上記アの(ア)~(オ)の事項から、甲1には次の発明(以下「甲1発明C」という。)が記載されている。
<甲1発明C>
「複数の薬剤容器2Cと、薬剤容器移動装置102と、散薬分配装置202、複数の本体装置3とを有し、
薬剤容器移動装置102で複数の薬剤容器2Cを移動させて複数の本体装置3に設置し、複数の薬剤容器2Cから散薬を排出することが可能であり、
本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻し、
手動で薬剤容器2B、2Eを本体装置3に設置及び取り外し可能なように形成されている薬剤払出し装置100。」
(2)甲2の記載事項
段落【0005】の記載内容から、甲2には、比重や粒径その他の要因に基づく流動特性が同等でない散薬について、時を分けて別個に散薬分配分割部へ連続給送して多層分配することが記載されている。
(3)甲3
ア 請求項1及び3の記載内容から、甲3には、3種類以上の散薬を混合薬として分包する際には、2種類の散剤を2つのフィーダから同時に散剤分割用回転テーブル上に供給した後、再び異種の散剤を前記散剤分割用回転テーブル上に供給する動作を繰り返し行うことが記載されている。
イ 段落【0023】の記載内容から、甲3には、先に分包される散剤が第1フィーダ4aからすべてホッパ16に供給された後、散剤受け溝3に掻き残されている散剤は回転テーブル2が回転しつつ清掃ヘッド11により吸引され、その後、後に分包される散剤が第2フィーダ4bから散剤受け溝3に供給されることが記載されている。
(4)甲4
「31P1-am027」には、「散剤混和分包調剤における調剤時間短縮の工夫」と題した発表要旨が記載されており、甲4には、粒子径の大きく異なる顆粒剤と散剤を分包する際に、同時投入しても順次投入した場合に比べ分包時間を短縮できることが判明し,作業を効率化することが可能であることが記載されている。
(5)甲5
段落[0046]の記載内容から、甲5には、処方対象の薬剤の残量が処方量に対して不足する場合には、調剤動作に先立って所定の報知がなされることが記載されている。
(6)甲6
第4ページ左下欄第10行~同ページ右下欄第8行の記載内容から、甲6には、散薬の手撒き作業が必要である場合、手撒き作業に必要な内容を作業者に分かりやすいようあらかじめ決められた表現で、表示装置に表示することが記載されている。
(7)甲7
段落【0023】の記載内容から、甲7には、清掃材を薬剤経路に供給した後、薬剤経路に残留した散薬と共に清掃材を薬剤経路から回収することで薬剤経路を清掃することが記載されている。また、段落【0202】の記載内容から、甲7には、後の患者の薬剤に混入すると問題となる管理薬剤と清掃動作制御を関連付けることが記載されている。
(8)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明Aとを対比する。
(ア)甲1発明Aの「複数の薬剤容器2C」は、本件特許発明1の「複数の散薬収容容器」に相当し、以下同様に、「薬剤容器移動装置102」は「容器移動手段」に、「散薬分配装置202」は「散薬を分配する散薬分配装置」に、「複数の本体装置3」は「複数の容器載置装置」に、「薬剤払出し装置100」は「薬品払出装置」に、それぞれ相当する。
(イ)上記(ア)を踏まえると、甲1発明Aの「薬剤容器移動装置102で複数の薬剤容器2Cを移動させて複数の本体装置3に設置し、複数の薬剤容器2Cから散薬を排出することが可能」であることは、本件特許発明1の「容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能」であることに相当する。
(ウ)甲1発明Aの「本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻す」ことは、薬剤容器2Cを本体装置3から取り外すことが明らかであるので、当該事項と、本件特許発明1の「全ての容器載置装置に散薬収容容器を設置し、全ての容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、全ての容器載置装置の数を超える種類の散薬を投入する動作を実施する際には、全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬を排出し終えた散薬収容容器を容器載置装置から取り外し、別途の散薬収容容器を容器移動装置で移動させ、散薬を排出し終えた散薬収容容器が載置されていた容器載置装置に別途の散薬収容容器を載置する動作を含む」こととは、「容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬収容容器を容器載置装置から取り外す」ことの限りで一致する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明Aとは、
「複数の散薬収容容器と、容器移動手段と、散薬を分配する散薬分配装置と、複数の容器載置装置とを有し、
容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能であり、
容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬収容容器を容器載置装置から取り外す薬品払出装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A>
容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬収容容器を容器載置装置から取り外すことに関し、本件特許発明1は、「全ての」容器載置装置に散薬収容容器を設置し、「全ての」容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、「全ての容器載置装置の数を超える種類の散薬を投入する動作を実施する際には、全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬を排出し終えた散薬収容容器を容器載置装置から取り外し、別途の散薬収容容器を容器移動装置で移動させ、散薬を排出し終えた散薬収容容器が載置されていた容器載置装置に別途の散薬収容容器を載置する動作を含む」のに対し、甲1発明Aは、本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻す点。
イ 判断
上記相違点Aについて以下検討する。
(ア)上記(3)アのとおり、甲3には、3種類以上の散薬を混合薬として分包する際には、2種類の散剤を2つのフィーダから同時に散剤分割用回転テーブル上に供給した後、再び異種の散剤を前記散剤分割用回転テーブル上に供給する動作を繰り返し行うことが記載されている。
しかしながら、甲1発明Aは、複数の本体装置3を備えるものであるが、この複数の本体装置3の全てに薬剤容器2Cを設置し、全ての本体装置3に薬剤容器2Cが設置された後、全ての本体装置3の数を超える種類の散薬を投入する動作を実施することは、甲1に記載も示唆もされておらず、甲3に記載の事項を甲1発明Aに適用する動機は存在しない。
仮に、甲1発明Aに甲3に記載の事項を適用したとしても、甲3には、2つのフィーダの内のいずれかのフィーダから散薬が排出し終えた場合に、次の散薬をどのようなタイミングでフィーダに供給することの記載はなく、上記相違点Aに係る本件特許発明1の構成とはならない。
(イ)異議申立人は、異議申立書(第16~17ページ)において、甲3のほかに甲2を例示し、上記相違点Aに係る本件特許発明1の構成は周知技術にすぎないと主張するが、甲2及び甲3には、それぞれ上記(2)及び(3)アに記載したとおりの事項が記載されている程度であり、「全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬を排出し終えた散薬収容容器を容器載置装置から取り外し、別途の散薬収容容器を容器移動装置で移動させ、散薬を排出し終えた散薬収容容器が載置されていた容器載置装置に別途の散薬収容容器を載置する動作を含む」ことが周知であるとはいえない。
また、異議申立人は、異議申立書(第17~18ページ)において、上記相違点Aに係る本件特許発明1の構成における「全ての容器載置装置の数を超える種類の散薬を投入する動作を実施する際」には、連続する異なる処方における処理において「全ての容器載置装置の数を超える種類の散薬を投入する動作を実施する」場合が含まれると解すると、上記相違点Aに係る本件特許発明1の構成は甲1に実質的に記載されていると主張する。しかしながら、連続する異なる処方における処理が含まれると解したとしても、甲1には、複数の本体装置3の全てに薬剤容器2Cを設置し、全ての本体装置3に薬剤容器2Cが設置された後、全ての本体装置3の数を超える種類の散薬を投入する動作を実施することは記載も示唆もされていない。
以上のとおりであるから、異議申立人の主張はいずれも採用することはできない。
(ウ)したがって、甲1発明Aにおいて、上記相違点Aに係る本件特許発明1の構成にすることが、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明A及び周知技術(甲2、3)に基いて、あるいは、甲1発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(9)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2と甲1発明Aとを対比する。
(ア)甲1発明Aの「複数の薬剤容器2C」は、本件特許発明2の「複数の散薬収容容器」に相当し、以下同様に、「薬剤容器移動装置102」は「容器移動手段」に、「散薬分配装置202」は「散薬を分配する散薬分配装置」に、「複数の本体装置3」は「複数の容器載置装置」に、「薬剤払出し装置100」は「薬品払出装置」に、それぞれ相当する。
(イ)上記(ア)を踏まえると、甲1発明Aの「薬剤容器移動装置102で複数の薬剤容器2Cを移動させて複数の本体装置3に設置し、複数の薬剤容器2Cから散薬を排出することが可能」であることは、本件特許発明2の「容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能」であることに相当する。
(ウ)甲1発明Aの「本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻す」ことは、薬剤容器2Cを本体装置3から取り外すことが明らかであるので、当該事項と、本件特許発明2の「全ての容器載置装置に散薬収容容器を設置し、全ての容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器からの所定量の散薬が排出し終えた場合には、排出し終えた散薬収容容器を取り外して容器載置装置を空け、別途の散薬収容容器を容器移動装置で移動させて空いた容器載置装置に別途の散薬収容容器を載置することが可能」であることとは、「容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬収容容器を容器載置装置から取り外す」ことの限りで一致する。
したがって、本件特許発明2と甲1発明Aとは、
「複数の散薬収容容器と、容器移動手段と、散薬を分配する散薬分配装置と、複数の容器載置装置とを有し、
容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能であり、
容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬収容容器を容器載置装置から取り外す薬品払出装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点B>
容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬収容容器を容器載置装置から取り外すことに関し、本件特許発明2は、「全ての」容器載置装置に散薬収容容器を設置し、「全ての」容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、「全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器からの所定量の散薬が排出し終えた場合には、散薬を排出し終えた散薬収容容器を容器載置装置から取り外して容器載置装置を空け、別途の散薬収容容器を容器移動手段で移動させて空いた容器載置装置に別途の散薬収容容器を設置することが可能」であるのに対し、甲1発明Aは、本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻す点。
<相違点C>
本件特許発明2は、「容器載置装置に設置される散薬収容容器から所定量の散薬が排出し終えるのに要する時間を想定し、排出するのに要する時間の長短を勘案して散薬収容容器を容器載置装置に載置する順番を変更する順番決定機能を有する」のに対し、甲1発明Aは、そのような機能を有さない点。
イ 判断
まず、上記相違点Bについて以下検討する。
(ア)上記相違点Aについて検討したとおり(上記(8)イ(ア))、甲3に記載の事項を甲1発明Aに適用する動機は存在しない。
仮に、甲1発明Aに甲3に記載の事項を適用したとしても、甲3には、2つのフィーダの内のいずれかのフィーダから散薬が排出し終えた場合に、次の散薬をどのようなタイミングでフィーダに供給するかの記載はなく、上記相違点Bに係る本件特許発明2の構成とはならない。
(イ)異議申立人は、異議申立書(第19ページ)において、上記相違点Bに係る本件特許発明2の構成は周知技術にすぎないと主張するとともに、当該構成は甲1に実質的に記載されていると主張するが、当該主張についても上記(8)イ(イ)における説示と同様、異議申立人の主張を採用することはできない。
(ウ)したがって、甲1発明Aにおいて、上記相違点Bに係る本件特許発明2の構成にすることが、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点Cについて検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1発明A及び周知技術(甲2、3)に基いて、あるいは、甲1発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(10)本件特許発明3について
ア 対比
本件特許発明3と甲1発明Cとを対比する。
(ア)甲1発明Cの「複数の薬剤容器2C」は、本件特許発明3の「複数の散薬収容容器」に相当し、以下同様に、「薬剤容器移動装置102」は「容器移動手段」に、「散薬分配装置202」は「散薬を分配する散薬分配装置」に、「複数の本体装置3」は「複数の容器載置装置」に、「薬剤払出し装置100」は「薬品払出装置」に、それぞれ相当する。
(イ)上記(ア)を踏まえると、甲1発明Cの「薬剤容器移動装置102で複数の薬剤容器2Cを移動させて複数の本体装置3に設置し、複数の薬剤容器2Cから散薬を排出することが可能」であることは、本件特許発明3の「容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能」であることに相当する。
(ウ)甲1発明Cの「本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻す」ことは、薬剤容器2Cを本体装置3から取り外すことが明らかであるので、当該事項と、本件特許発明3の「全ての容器載置装置に散薬収容容器を設置し、全ての容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器からの所定量の散薬が排出し終えた場合には、排出し終えた散薬収容容器を取り外して容器載置装置を空け、別途の散薬収容容器を容器移動装置で移動させて空いた容器載置装置に別途の散薬収容容器を載置することが可能」であることとは、「容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬収容容器を容器載置装置から取り外す」ことの限りで一致する。
(エ)甲1発明Cの「手動で薬剤容器2B、2Eを本体装置3に設置及び取り外し可能なように形成されている」ことと、本件特許発明3の「容器移動手段によることなく使用者が手動で散薬収容容器を容器載置装置に載置及び取り外しが可能なように形成されており、全ての容器載置装置に載置されている散薬収容容器からの散薬の排出が終了したにも係わらず、使用者の手で載置した散薬収容容器が容器載置装置に載置されたままである場合に、その旨に関する情報を報知する報知動作が実施される」こととは、「容器移動手段によることなく使用者が手動で散薬収容容器を容器載置装置に載置及び取り外しが可能なように形成されて」いる限りで一致する。
したがって、本件特許発明3と甲1発明Cとは、
「複数の散薬収容容器と、容器移動手段と、散薬を分配する散薬分配装置と、複数の容器載置装置とを有し、
容器移動手段で複数の散薬収容容器を移動させて複数の容器載置装置に載置し、複数の散薬収容容器から散薬を排出することが可能であり、
容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬収容容器を容器載置装置から取り外し、
容器移動手段によることなく使用者が手動で散薬収容容器を容器載置装置に載置及び取り外しが可能なように形成されている薬品払出装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点D>
容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、散薬収容容器から所定量の散薬を排出し終えた場合には、散薬収容容器を容器載置装置から取り外すことに関し、本件特許発明3は、「全ての」容器載置装置に散薬収容容器を設置し、「全ての」容器載置装置に散薬収容容器が設置された後、「全ての容器載置装置に設置された散薬収容容器の内のいずれかの散薬収容容器からの所定量の散薬が排出し終えた場合には、散薬を排出し終えた散薬収容容器を容器載置装置から取り外して容器載置装置を空け、別途の散薬収容容器を容器移動手段で移動させて空いた容器載置装置に別途の散薬収容容器を設置することが可能」であるのに対し、甲1発明Cは、本体装置3に設置された薬剤容器2Cから所定量の散薬が払い出され、一連の排出工程や包装工程が終了すると、薬剤容器移動装置102を動作させて薬剤容器2Cを元の位置に戻す点。
<相違点E>
本件特許発明3は、「全ての容器載置装置に載置されている散薬収容容器からの散薬の排出が終了したにも係わらず、使用者の手で載置した散薬収容容器が容器載置装置に載置されたままである場合に、その旨に関する情報を検知する報知動作が実施される」のに対し、甲1発明Cは、そのような事項を有さない点。
イ 判断
まず、上記相違点Dについて検討すると、上記相違点Dは上記相違点Bと同じであり、上記(9)イでの検討内容と同様に、甲1発明Cにおいて、上記相違点Dに係る本件特許発明3の構成にすることが、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点Eについて検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1発明C及び周知技術((甲2、3)、(甲5、6))に基いて、あるいは、甲1発明C及び周知技術(甲5、6)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(11)本件特許発明4及び5について
本件特許発明4及び5は、本件特許発明1~3のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに技術的事項を追加したものであるから、上記(8)~(10)に示した理由と同じ理由で本件特許発明4は、甲1発明A及び周知技術(甲2、3)に基いて、甲1発明Aに基いて、甲1発明C及び周知技術((甲2、3)、(甲5、6))に基いて、あるいは、甲1発明C及び周知技術(甲5、6)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許発明5は、甲1発明A及び周知技術((甲2、3)、(甲3、7))に基いて、甲1発明A、周知技術(甲2、3)及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、甲1発明A及び周知技術(甲3、7)に基いて、甲1発明A及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、甲1発明C及び周知技術((甲2、3)、(甲5、6)、(甲3、7))に基いて、甲1発明C、周知技術((甲2、3)、(甲5、6))及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、甲1発明C、周知技術((甲5、6)、(甲3、7))に基いて、あるいは、甲1発明C、周知技術(甲5、6)及び甲3又は甲7に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(12)本件特許発明6について
本件特許発明6は、実質的に本件特許発明1の「薬品払出装置」という物の発明を、「薬品払出装置の払出方法」という方法の発明にしたものである。
上記(1)イ(ア)のとおり、甲1には甲1発明Bが記載されており、該甲1発明Bは、甲1発明Aに係る方法の発明である。
そして、本件特許発明6と甲1発明Bとは、上記(8)アで対比した一致点及び相違点Aを有するから、同イで判断したのと同様に、本件特許発明6は、甲1発明B及び周知技術(甲2、3)に基いて、あるいは、甲1発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(13)小括
以上により、本件特許発明1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1によって取り消すことはできない。
2 申立理由2について
(1)サポート要件(上記第3の2(1)~(3)、(5)~(7))
ア 本件明細書の段落【0010】の記載から、本件特許発明の課題は「散薬分包作業を高速化することが可能な薬品払出装置を提供すること」である。
イ そして、当該課題は、薬品払出装置として、以下の(ア)~(エ)のいずれかの事項により解決されると理解できる。
(ア)全ての容器載置装置に薬剤容器が載置された状態の後、いずれかの薬剤容器からの所定量の薬剤が排出し終えた場合には、排出し終えた薬剤容器を取り外して容器載置装置を空け、別途の薬剤容器を容器移動手段で移動させて空いた容器載置装置に前記別途の薬剤容器を設置すること(特に、明細書の段落【0193】~【0194】、【0197】を参照。)。
(イ)一つの分配ユニット35の全ての容器保持台36(3台)よりも多い種類(4種以上)の薬品であり、かつ、連続して異なる処方の分包動作を実施する場合に、あえて一つの分配ユニット35を使用すること(特に、明細書の段落【0129】~【0134】を参照。)。
(ウ)一つの薬品容器から所定量の散薬が排出し終えるのに要する時間に関する情報に基づき、複数の薬品容器にそれぞれ収容された散薬を排出時間の長短を基準として序列化し、該序列化の結果に基づいて薬品容器を容器保持台に設置する順番を決定すること。具体的には、2つの分配ユニット35を使用して分包動作を実施する場合には、収容された薬品の排出時間の長い順に薬品容器を容器保持台36に設置すること、及び、1つの分配ユニット35を使用して分包動作を実施する場合には、収容された薬品の排出時間の短い順に薬品容器を容器保持台36に設置すること(特に、明細書の段落【0013】~【0016】、【0135】~【0148】を参照。)。
(エ)使用者が手動で容器保持台36に載置した手動式薬品容器5からの散薬の排出が終了したにも係わらず、該手動式薬品容器5が容器保持台36に載置されたままである場合に、その旨に関する情報を報知すること(特に、明細書の段落【0017】~【0018】、【0185】~【0191】を参照。)。
ウ してみると、本件特許発明1及び6は、上記イの(ア)及び(イ)として発明の詳細な説明に記載したものであり、同様に、本件特許発明2は、同(ア)及び(ウ)として、本件特許発明3は、同(ア)及び(エ)として、それぞれ発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件特許発明1、2、3及び6は、発明の詳細な説明において、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものとはいえない。
エ したがって、本件特許の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合する。
(2)明確性(上記第3の2(4))
ア 請求項2の「容器載置装置に設置される散薬収容容器から所定量の散薬が排出し終えるのに要する時間を想定し、排出するのに要する時間の長短を勘案して散薬収容容器を容器載置装置に載置する順番を変更する順番決定機能を有する」との記載は、請求項2に係る発明である薬品払出装置が、複数の散薬収容容器を複数の容器載置装置に載置するに際し、散薬収容容器から所定量の散薬が排出し終えるまでに要する時間の長短を勘案して、その順番を決定する機能を有するものであると解釈することができ、その解釈において、本件明細書(特に段落【0135】~【0148】)及び図面(特に図17)を参酌して合理的に考えれば、該機能の意味内容が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
イ したがって、本件特許の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び同第2号の規定に違反してされたものではなく、申立理由2によって取り消すことはできない。
第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701212