特許異議申立
2023-700123
印刷用塗工紙および封筒用紙
- 審判番号
- 2023-700123
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-525542
- 登録番号
- 7123925
- 請求日
- 2023年02月06日
- 審決日
- 2023年12月19日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本製紙株式会社
- 【権利者代理人】山本 修
- 【権利者代理人】中村 充利
- 【権利者代理人】小笠原 有紀
- 【権利者代理人】新井 規之
- 【異議申立人】遠藤 弘忠
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 山崎 勝司
- 審判官 ▲高▼橋 杏子
- 分類
- P1651.83 -YAA(D21H) / P1651.113-YAA(D21H) / P1651.121-YAA(D21H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7123925号発明「印刷用塗工紙および封筒用紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7123925号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7123925号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7123925号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年6月15日(優先権主張平成29年6月15日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和4年8月15日にその特許権の設定登録がされ、令和4年8月23日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~7に係る特許に対し、令和5年2月6日に特許異議申立人遠藤弘忠(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされた。
それ以降の経緯は以下とおりである。
令和5年 7月 4日付け :取消理由通知書
令和5年 9月 5日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)
令和5年11月 1日 :意見書(申立人)
なお、令和5年9月5日提出の訂正請求書を以下「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正自体を「本件訂正」という。
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7123925号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示す。
[訂正事項]
訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「顔料100重量部中、当該第1および第2の炭酸カルシウムの合計量が90重量部以上である顔料塗工層」とあるのを、「顔料100重量部中、当該第1および第2の炭酸カルシウムの合計量が90重量部以上であり、かつカオリンおよびサチンホワイトを含まない顔料塗工層」と訂正する。
なお、本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。
2 本件訂正の適否
(1) 訂正の目的について
上記訂正事項は、訂正前の請求項1の「顔料塗工層」の「顔料」について、「カオリンおよびサチンホワイトを含まない」とさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項は、上記(1)のとおり、特許請求の範囲における「顔料塗工層」の「顔料」について、カオリン及びサチンホワイトを含まないことで特許請求の範囲の減縮をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
上記訂正事項は、訂正前の請求項1の「顔料塗工層」の「顔料」について、「カオリンおよびサチンホワイトを含まない」として技術事項を除くとする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
(4) むすび
したがって、本件訂正の訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件訂正後の請求項1~7に係る発明(以下「訂正発明1」等といい、まとめて「訂正発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
原紙の少なくとも片面に、0.80μm以下の平均粒子径(D50)を有する第1の炭酸カルシウムおよび0.80μmを超える平均粒子径(D50)を有する第2の炭酸カルシウムを含み、顔料100重量部中、当該第1および第2の炭酸カルシウムの合計量が90重量部以上であり、かつカオリンおよびサチンホワイトを含まない顔料塗工層を最外顔料塗工層として備え、
当該最外顔料塗工層の塗工量が6~20g/m2である、印刷用塗工紙。
【請求項2】
前記第1の炭酸カルシウムの平均粒子径(D50)が0.50~0.75μmである、請求項1に記載の印刷用塗工紙。
【請求項3】
前記原紙のパルプ100重量部中に、化学パルプを90重量部以上含む、請求項1または2に記載の印刷用塗工紙。
【請求項4】
紫外線を含まない条件で測定した白色度が85%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の印刷用塗工紙。
【請求項5】
白紙光沢度が40%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の印刷用塗工紙。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の印刷用塗工紙を用いた封筒用紙。
【請求項7】
請求項6に記載の封筒用紙から製造される封筒。」
第4 取消理由通知の概要
当審において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
1.請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、請求項1及び5に係る発明は、甲第6号証に記載された発明であるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、取り消されるべきものである。
2.請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、並びに、甲第6号証に記載された発明に基いて、請求項6及び7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、並びに、甲第6号証に記載された発明及び甲第3号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
<引用文献一覧>
甲第1号証:特開2008-106406号公報
甲第2号証:JIS P8142:2005 紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法
甲第3号証:特開2011-132649号公報
甲第4号証:山下憲一、河田憲男、「JIS Z 8901試験用粉体及び試験用粒子に定める試験用粉体1の粒径分布測定」、J.Soc.Powder Technol.、Japan、34、1997年、p.528-535
甲第5号証:レーザー回折式粒子径分布測定装置マスターサイザー3000のカタログ、スペクトリス株式会社、2022年
甲第6号証:特開平8-92894号公報
甲第7号証:特開2006-342433号公報
(以下、甲第1号証を「甲1」といい、以下、他の甲各号証についても同様とする。)
第5 取消理由通知についての当審の判断
1 甲1を主引用例とする理由について
(1) 甲1に記載された発明
甲1の記載(【0008】、【0011】、【0031】~【0033】、【0036】、【0049】、【0053】、【0056】、【表1】)を総合し、実施例4に着目すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「平均粒子径D50が0.6μmの微粒カオリン(商品名:ハイドラグロス90、ヒューバ社製・・カオリンA)5部、
平均粒子径D50が0.7μm、D75/D25が1.8の超微粒重質炭酸カルシウム(商品名:セタカーブHG、備北粉化工業社製・・重質炭酸カルシウムA)70部、
平均粒子径D50が1.2μm、D75/D25が2.4の微粒重質炭酸カルシウム(商品名:FMT-90、ファイマテック社製・・重質炭酸カルシウムB)25部からなる顔料に、
分散剤として対顔料でポリアクリル酸ソーダ0.05部を添加してミキサーで分散し、固形分濃度が72%の顔料スラリーに、
無機顔料100部あたりスチレン-ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ-2000、JSR社製)8部(固形分)、酸化澱粉(商品名:エースA)4部(固形分)およびその他助剤を添加し、固形分濃度65%の顔料塗被液を調製し、
原紙に上記顔料塗被液を片面の乾燥塗工量が10g/m2になるように、ブレードコーターで両面塗工を行い、紙水分が5.0%となるように乾燥された、印刷用艶消し両面塗被紙。」
(2) 訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 甲1発明の「平均粒子径D50が0.7μm、D75/D25が1.8の超微粒重質炭酸カルシウム(商品名:セタカーブHG、備北粉化工業社製・・重質炭酸カルシウムA)」、「平均粒子径D50が1.2μm、D75/D25が2.4の微粒重質炭酸カルシウム(商品名:FMT-90、ファイマテック社製・・重質炭酸カルシウムB)」、「原紙」、「顔料」、「印刷用艶消し両面塗被紙」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮すると、それぞれ、訂正発明1の「0.80μm以下の平均粒子径(D50)を有する第1の炭酸カルシウム」、「0.80μmを超える平均粒子径(D50)を有する第2の炭酸カルシウム」、「原紙」、「顔料」及び「印刷用塗工紙」に相当する。
そして、甲1発明は、顔料100重量部中、「微粒カオリン」5部を除く、「平均粒子径D50が0.7μm、D75/D25が1.8の超微粒重質炭酸カルシウム」70部と、「平均粒子径D50が1.2μm、D75/D25が2.4の微粒重質炭酸カルシウム」25部とが、95重量部となる。そうすると、当該顔料を塗工して「両面塗工を行い、紙水分が5.0%となるように乾燥」して得た「両面塗被紙」が顔料塗工層を有することは明らかで、甲1発明と、訂正発明1の「顔料100重量部中、当該第1および第2の炭酸カルシウムの合計量が90重量部以上であり、かつカオリンおよびサチンホワイトを含まない顔料塗工層を最外顔料塗工層」とは、「顔料100重量部中、当該第1および第2の炭酸カルシウムの合計量が90重量部以上である顔料塗工層」である限りで一致する。
甲1発明の「原紙に上記顔料塗被液を片面の乾燥塗工量が10g/m2になるように、ブレードコーターで両面塗工を行」うことは、両面塗工により最外顔料塗工層をなすことが明らかなので、訂正発明1の「原紙の少なくとも片面に」「顔料塗工層を最外顔料塗工層として備え、当該最外顔料塗工層の塗工量が6~20g/m2である」ことに相当する。
(イ) 以上から、訂正発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違する。
《一致点1》
「原紙の少なくとも片面に、0.80μm以下の平均粒子径(D50)を有する第1の炭酸カルシウムおよび0.80μmを超える平均粒子径(D50)を有する第2の炭酸カルシウムを含み、顔料100重量部中、当該第1および第2の炭酸カルシウムの合計量が90重量部以上である顔料塗工層を最外顔料塗工層として備え、
当該最外顔料塗工層の塗工量が6~20g/m2である、印刷用塗工紙。」
《相違点1》
顔料塗工層について、訂正発明1は、「カオリンおよびサチンホワイトを含まない」とされているのに対して、甲1発明は、「平均粒子径D50が0.6μmの微粒カオリン(商品名:ハイドラグロス90、ヒューバ社製・・カオリンA)5部」含んでいる点。
イ 上記相違点1について検討する。
甲1発明において、カオリンを添加することに関して、甲1には、以下の事項が記載されている。
「即ち、原紙上に顔料と接着剤を主成分とする水性塗被液を、ブレードコーターで塗被、乾燥して顔料塗被層を設けてなる印刷用艶消し塗被紙において、該原紙の填料として、無定形シリカまたは無定形シリケートの少なくとも1種を原紙質量に対して1~10質量%含有し、さらに該顔料塗被層中にレーザ回折方式にて測定された平均粒子径(D50)が2.0μm以下のカオリンを全顔料の2~20質量%、かつ平均粒子径(D50)が1.5μm以下の重質炭酸カルシウムを全顔料の80~98質量%含有し、該重質炭酸カルシウムの内、平均粒子径(D50)が1.0μm以下で、かつ粒度分布曲線における75累積体積%の粒子径(D75)と25累積体積%の粒子径(D25)との比(D75/D25)が2.0以下となる重質炭酸カルシウムを50質量%以上含有することを特徴とする。」(【0009】、下線は当審で付与した。以下同様である。)
「本発明において、上記原紙上に設ける顔料塗被層として、特定のカオリンと特定の重質炭酸カルシウムを含有する。即ち、顔料層にレーザ回折方式にて測定した平均粒子径(D50)が、2.0μm以下のカオリンを全顔料の2~20質量%と、平均粒子径(D50)が1.5μm以下の重質炭酸カルシウムを全顔料の80~98質量%含有することにある。平均粒子径が2.0μmを超えるカオリンは白紙の平滑度、印刷光沢を改善する効果が少なく、白色度も低くなる。ここで塗料の安定性、表面強度等の印刷適性を維持するために、カオリンの平均粒子径は0.2μm以上であることが好ましい。また平均粒子径が1.5μmを超える重質炭酸カルシウムの使用は、粗大な粒子が存在することにより、高い平滑性が得られず、印刷光沢も低下してしまう。また、重質炭酸カルシウムの特性である塗被液の流動性を維持する観点から、平均粒子径が0.2μm以上であることが好ましい。ここで、カオリンの使用量としては、全顔料の20質量%を超えて含有すると平滑度が高くなるが、白色度が低下し白紙光沢も高くなり艶消し調に仕上げることが困難になり、塗被液の粘度も上昇するため高速塗工適性が悪化する。逆に、2質量%未満では重質炭酸カルシウムとの混合による塗料安定性を高める効果がなくなってしまう。」(【0020】)
以上の記載事項を踏まえると、甲1発明において、カオリンを用いることは必須の技術事項であり、甲1発明をしてカオリンを用いないようすることは、想定することができない。
また、他の証拠にも、甲1発明において、カオリンを用いないようにすることを示唆する記載はない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点1に係る訂正発明1の特定事項である「かつカオリンおよびサチンホワイトを含まない顔料塗工層」とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 上記イのとおり、相違点1は、実質的な相違点である。そうすると、訂正発明1は、甲1発明ではない。また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 訂正発明2~7について
訂正発明2~7は、訂正発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)で検討したことと同様の理由により、訂正発明2~5は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて又は甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 甲6を主引用例とする理由について
(1) 甲6に記載された発明
甲6の記載(【請求項1】、【請求項2】、【0026】、【0038】、【0046】、【表1】、【表2】)を総合し、実施例4に着目すると、甲6には次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「原紙上に、顔料および接着剤を主成分とする水性塗被組成物を塗被、乾燥後、キャレンダー仕上げされた嵩高艶消し塗被紙において、
原紙として、緊度が0.65g/cm3、かつベック平滑度が11秒/10ccである原紙を用い、
水性塗被組成物(塗被液)中の顔料として、全顔料に対しサチンホワイトが10部、平均粒子径が0.45μmである沈降性炭酸カルシウムが25部、及び平均粒子径が10.0μmである重質炭酸カルシウムが65部含有せしめられ、
原紙に乾燥重量で片面で15g/m2となるように両面塗被し、
さらに仕上がり製品の緊度が0.95g/cm3、白紙光沢度が9%である嵩高艶消し塗被紙。」
(2) 訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲6発明を対比する。
(ア) 甲6発明の「原紙」、「顔料」及び「嵩高艶消し塗被紙」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮すると、それぞれ、訂正発明1の「原紙」、「顔料」及び「印刷用塗工紙」に相当する。
甲6には、顔料の平均粒子径について、「(顔料の平均粒子径)重力沈降法(測定器/SEDI-GRAPH 5000-1/島津製作所製)により粒度分布測定を行い、蓄積重量50%時の値を平均粒子径とした。」(【0038】)と記載され、他方、本件特許の明細書には、「D50は体積50%平均粒子径である。沈降法による顔料の粒度分布およびD50は、Malvern社製、マスターサイザー3000等により測定可能である。」(【0012】)と記載されている。
しかしながら、粒度分布は測定方法にほぼ依存しないといえるものである(特許異議申立書第34ページ第2~6行、甲4の第48ページ表5.2b参照。)。
そうすると、甲6発明の「平均粒子径が0.45μmである沈降性炭酸カルシウム」及び「平均粒子径が10.0μmである重質炭酸カルシウム」は、それぞれ、訂正発明1の「0.80μm以下の平均粒子径(D50)を有する第1の炭酸カルシウム」及び「0.80μmを超える平均粒子径(D50)を有する第2の炭酸カルシウム」に相当する。
また、甲6発明の「水性塗被組成物中の顔料として、全顔料に対しサチンホワイトが10部、平均粒子径が0.45μmである沈降性炭酸カルシウムが25部、及び平均粒子径が10.0μmである重質炭酸カルシウムが65部含有せしめられ」て、「原紙上に、顔料および接着剤を主成分とする水性塗被組成物を塗被、乾燥後、キャレンダー仕上げされた嵩高艶消し塗被紙」は、処理工程からみて、訂正発明1の「顔料100重量部中、当該第1および第2の炭酸カルシウムの合計量が90重量部以上であり、かつカオリンおよびサチンホワイトを含まない顔料塗工層を最外顔料塗工層として備え」るものとは、「顔料100重量部中、当該第1および第2の炭酸カルシウムの合計量が90重量部以上である顔料塗工層を最外顔料塗工層として備え」る限りで一致する。
そうすると、甲6発明の「原紙に乾燥重量で片面で15g/m2となるように両面塗被し」ていることは、両面塗被により最外顔料塗工層をなすことが明らかなので、訂正発明1の「原紙の少なくとも片面に」「顔料塗工層を最外顔料塗工層として備え、当該最外顔料塗工層の塗工量が6~20g/m2である」ことに相当する。
(イ) 以上から、訂正発明1と甲6発明とは、次の一致点で一致し、相違する。
《一致点2》
「原紙の少なくとも片面に、0.80μm以下の平均粒子径(D50)を有する第1の炭酸カルシウムおよび0.80μmを超える平均粒子径(D50)を有する第2の炭酸カルシウムを含み、顔料100重量部中、当該第1および第2の炭酸カルシウムの合計量が90重量部以上である顔料塗工層を最外顔料塗工層として備え、
当該最外顔料塗工層の塗工量が6~20g/m2である、印刷用塗工紙。」
《相違点2》
顔料塗工層について、訂正発明1は、「カオリンおよびサチンホワイトを含まない」とされているのに対して、甲6発明は、「全顔料に対しサチンホワイトが10部」含まれている点。
イ 上記相違点2について検討する。
甲6発明において、サチンホワイトを添加することに関して、甲6には、以下の事項が記載されている。
「【課題を解決するための手段】本発明は、原紙上に、顔料および接着剤を主成分とする水性塗被組成物を塗被、乾燥後、キャレンダー仕上げする嵩高艶消し塗被紙の製造方法において、該原紙として、緊度が0.7g/cm3未満、かつベック平滑度が7秒/10cc~20秒/10ccである原紙を用い、水性塗被組成物中の顔料として、全顔料に対しサチンホワイトが5~25重量%、および平均粒子径が5~15μmである重質炭酸カルシウムが50~95重量%含有せしめられ、さらに仕上がり製品の緊度が1.10g/cm3以下となるようにキャレンダー仕上げすることを特徴とする嵩高艶消し塗被紙の製造方法である。」(【0010】)
「その結果、特定の緊度、平滑度を有する原紙上に、サチンホワイトと特定の粒子径をもつ重質炭酸カルシウムおよび接着剤を主成分とする水性塗被組成物を塗被、乾燥してなる艶消し塗被紙は、白紙光沢および印刷光沢がともに抑えられ、かつ紙腰が強く、印刷適性に優れ、ブランケットパイリングやインク定着不良が解消され、極めて優れた嵩高艶消し塗被紙が得られることを見出し、遂に本発明を完成するに至ったものである。」(【0012】)
「本発明者等は、サチンホワイトの独特の粒子形状、粒子径、配向性等の特性に着目し、さらに、特定の粒子径をもつ炭酸カルシウムと組合わすことにより、白紙光沢および印刷光沢がともに低い、高品質のマット調艶消し塗被紙が得られることを見出したのである。」(【0016】)
以上の記載事項を踏まえると、甲6発明において、サチンホワイトを用いることは必須の技術事項であり、甲6発明をしてサチンホワイトを用いないようすることは、想定することができない。
また、他の証拠にも、甲6発明において、サチンホワイトを用いないようにすることを示唆する記載はない。
そうすると、甲6発明において、上記相違点2に係る訂正発明1の特定事項である「かつカオリンおよびサチンホワイトを含まない顔料塗工層」とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 上記イのとおり、相違点2は、実質的な相違点である。そうすると、訂正発明1は、甲6発明ではない。また、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 訂正発明2~7について
訂正発明2~7は、訂正発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)で検討したことと同様の理由により、訂正発明5は、甲6発明ではなく、甲6発明に基いて又は甲6発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、請求項1の「D50」について、「甲第4号証によれば重質炭酸カルシウム・微粒、超微粒に関し「レーザー回折散乱方法によって得られた粒度分布は液相沈降方法のそれにほぼ整合し(図6)、中位径および均等数の値も許容範囲内にある」と記載されているので粒度分布は測定方法にほぼ依存しないといえるものの、甲第5号証によればマスターサイザー3000は「レーザー回折式粒子サイズ分祈装置」であるから、本件特許の段落0011の「マスターサイザー3000」記載は、沈降法の測定装置の例示として間違いである。この間違いによって本願の「平均粒子径(D50)」の測定方法が不明確であり、それゆえ請求項1に記載の「平均粒子径(D50)」の技術的意義も不明確であるといえる。」の旨を述べ、請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項2~7に係る発明は明確でないと主張している(申立書33ぺージ下から6行~34ページ13行)。
この点について以下に検討する。
訂正発明1における、「原紙の少なくとも片面に、0.80μm以下の平均粒子径(D50)を有する第1の炭酸カルシウムおよび0.80μmを超える平均粒子径(D50)を有する第2の炭酸カルシウムを含み」との記載において、「平均粒子径(D50)」が文言上、不明確であるとするところはなく、また、本件特許明細書には、「顔料塗工層は平均粒子径(D50)が0.80μm以下の炭酸カルシウム(以下、「第1の炭酸カルシウム」ともいう)を含む。D50は体積50%平均粒子径である。」(【0012】)と記載され、平均粒子径のD50は、体積50%平均粒子径を意味するものと理解できる。
また、「沈降法による顔料の粒度分布およびD50は、Malvern社製、マスターサイザー3000等により測定可能である。」(【0012】)との記載については、測定装置を例示するものであり、記載された装置が仮に間違いであったとしても、D50については技術常識に基づき、他の装置や他の手段等を用いて適宜測定すればよいものであるから、上記【0012】の記載があるからといって、訂正発明1及び訂正発明1を引用する訂正発明2~7が不明確となるものではなく、上記申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。他に本件請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700123