特許異議申立
2017-701197
印刷用紙
- 審判番号
- 2017-701197
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-033282
- 登録番号
- 特許第6152130号(P6152130)
- 請求日
- 2017年12月19日
- 審決日
- 2018年10月09日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本製紙株式会社
- 【権利者代理人】小野 新次郎
- 【権利者代理人】中村 充利
- 【権利者代理人】小笠原 有紀
- 【権利者代理人】新井 規之
- 【異議申立人】遠藤 弘忠
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 井上 茂夫
- 審判官 蓮井 雅之
- 分類
- P1651.121-YAA(D21H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6152130号発明「印刷用紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6152130号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
特許第6152130号の請求項1~3、9~12に係る特許を維持する。
特許第6152130号の請求項4~8に係る特許についての申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6152130号の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成22年12月24日に出願した特願2010-287426号の一部を平成27年2月23日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月2日にその特許権の設定登録がされたものであり、その後、その特許について、平成29年12月19日に特許異議申立人遠藤弘忠(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成30年3月27日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成30年6月18日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、申立人より、平成30年7月20日に本件訂正請求について意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6152130号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「印刷用紙のJIS P8150の方法によって測定される紙の色相が、紫外線を含む測定においてa*値が-3以上3未満、b*値が-0.5以上4未満であり、
白色度が50%以上であり、
灰分が10重量%以上であり、
填料として炭酸カルシウムを5重量%以上含む、
印刷用紙。」とあるのを、
「印刷用紙のJIS P8150の方法によって測定される紙の色相が、紫外線を含む測定においてa*値が-3以上3未満、b*値が-0.5以上4未満であり、
白色度が50%以上であり、
灰分が10重量%以上であり、
填料として炭酸カルシウムを5重量%以上含み、
少なくとも原紙層とクリア塗工層とを有し、かつ顔料塗工層を含まず、
前記原紙層が青色染料、紫色染料、または赤色染料を含み、
前記クリア塗工層に、紫色顔料、青色顔料、紫色染料、および青色染料から選ばれるひとつ以上の色材を含有する、
印刷用紙。」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2、3、9~12も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1~8のいずれか1項に記載の印刷用紙。」とあるのを、
「請求項1~3のいずれか1項に記載の印刷用紙。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1~9のいずれか1項に記載の印刷用紙。」とあるのを、
「請求項1~3、または9のいずれか1項に記載の印刷用紙。」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1~10のいずれか1項に記載の印刷用紙。」とあるのを、
「請求項1~3、9、または10のいずれか1項に記載の印刷用紙。」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12に、
「請求項1~11のいずれか1項に記載の印刷用紙。」とあるのを、
「請求項1~3、9、10、または11のいずれか1項に記載の印刷用紙。」に訂正する。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正前の請求項1では「印刷用紙」の層構造について特定していなかったものを、訂正後の請求項1は「少なくとも原紙層とクリア塗工層とを有し、かつ顔料塗工層を含まず、前記原紙層が青色染料、紫色染料、または赤色染料を含み、前記クリア塗工層に、紫色顔料、青色顔料、紫色染料、および青色染料から選ばれるひとつ以上の色材を含有する、」と特定するものであるから、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正後の請求項2、3、9~12も、請求項1に係る訂正と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ.上記ア.で述べたように、訂正事項1は「印刷用紙」の層構造をより具体的に限定するもので、カテゴリーや対象、目的の変更を伴わないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ.訂正事項1のうち、「前記印刷用紙が少なくとも原紙層とクリア塗工層とを有する印刷用紙である」ことは訂正前の請求項5に、「前記原紙層が青色染料、紫色染料、または赤色染料を含む」ことは同じく請求項4に、「前記クリア塗工層に、紫色顔料および/または青色顔料を含有する」ことは同じく請求項7に、「前記クリア塗工層に、紫色染料および/または青色染料を含有する」ことは同じく請求項8に、それぞれ記載されている。
また、「顔料塗工層を含まず」との事項は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)に、「本発明の印刷用紙には、原紙の片面または両面に、クリア塗工層と顔料塗工層のいずれかまたは両方の層を設けてよい。」(段落【0026】)、「また別の態様において、本発明の印刷用紙は、原紙層とクリア塗工層を有する印刷用紙であり、紫色顔料、青色顔料、青色染料、紫色染料のうちいずれか1種以上が、原紙層とクリア塗工層の両方または一方に存在する。」(段落【0027】)と記載され、印刷用紙を、クリア塗工層を有し、顔料塗工層を有さないものとし得ることが記載されている。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2~6について
訂正事項2~6は、それぞれ、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7及び請求項8を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることも明らかであり、訂正事項2~6は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項7~10について
訂正事項7~10は、訂正事項2~6により請求項4~8が削除されたことに伴い、請求項9~12が引用する請求項から、整合をとるために請求項4~8を削除する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることも明らかであり、訂正事項7~10は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~12について、訂正前の請求項2~12は、訂正前の請求項1を、直接又は間接に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~12は、特許法第120条の5第4項に規定する、一群の請求項である。
3.訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1.請求項1~3、9~12に係る発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~3、9~12に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3、9~12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
紫色顔料、青色顔料、紫色染料、および青色染料から選ばれるひとつ以上の色材を含有する印刷用紙であって、
印刷用紙のJIS P8150の方法によって測定される紙の色相が、紫外線を含む測定においてa*値が-3以上3未満、b*値が-0.5以上4未満であり、
白色度が50%以上であり、
灰分が10重量%以上であり、
填料として炭酸カルシウムを5重量%以上含み、
少なくとも原紙層とクリア塗工層とを有し、かつ顔料塗工層を含まず、
前記原紙層が青色染料、紫色染料、または赤色染料を含み、
前記クリア塗工層に、紫色顔料、青色顔料、紫色染料、および青色染料から選ばれるひとつ以上の色材を含有する、
印刷用紙。
【請求項2】
前記印刷用紙が新聞印刷用紙である、請求項1記載の印刷用紙。
【請求項3】
前記印刷用紙の坪量が50g/m2以下である、請求項1~2のいずれか1項に記載の印刷用紙。
【請求項9】
印刷用紙のJIS P8251の方法によって測定される紙中灰分が12重量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の印刷用紙。
【請求項10】
印刷用紙のJIS P8251の方法によって測定される紙中灰分が40重量%以下である、請求項1~3、または9のいずれか1項に記載の印刷用紙。
【請求項11】
パルプ原料中のDIPの割合が40重量%以上である、請求項1~3、9、または10のいずれか1項に記載の印刷用紙。
【請求項12】
填料として炭酸カルシウムを6重量%以上含有する、請求項1~3、9、10、または11のいずれか1項に記載の印刷用紙。」
2.取消理由の概要
本件発明1~3、9~12に対して、特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。なお、申立人が特許異議申立書において主張した理由は、すべて通知した。
本件特許の請求項1~3、9~12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
《引用文献一覧》
引用文献1:特開2002-242092号公報(甲1)
引用文献2:広川欽一他1名、「紙の白さの測定」、印刷雑誌昭和63年7月号、株式会社印刷学会出版部、1988年、vol.71、No.7、31~41頁(甲2)
引用文献3:弓木慶一、「印刷標準の動向とカラーマネージメント」、日本印刷学会誌、社団法人日本印刷学会、平成16年2月29日発行、第41巻、第1号、23~32頁(甲3)
引用文献4:特開2010-209502号公報(甲4)
引用文献5:JIS P 8150:2004「紙及び板紙-色(C/2°)の測定方法-拡散照明法」(甲5)
引用文献6:須賀長市、「耐候光と色彩<改訂版>」、スガ試験機株式会社、昭和63年2月20日発行、197~203頁(甲6)
引用文献7:特開2009-256853号公報(甲7)
引用文献8:特開2008-248451号公報(原審の平成28年9月27日付け拒絶理由で引用された文献)
(1)引用文献1を主な引用例とする理由
・請求項1~3、9~12に係る発明に対して
・引用文献:1~3、5~7
本件発明1~3、9~12は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)引用文献4を主な引用例とする理由
・請求項1~3、9~12に係る発明に対して
・引用文献:4、2、3、5~7
本件発明1~3、9~12は、引用文献4に記載された発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)引用文献8を主な引用例とする理由
・請求項1~3、9~12に係る発明に対して
・引用文献:8、2、3、5~7
本件発明1~3、9~12は、引用文献8に記載された発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3.当審の判断
(1)引用文献1(甲1)を主な引用例とする理由について
ア.引用文献1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)は、「UV印刷時のような短時間の紫外線曝露のみならず、長期間に亘って保管されたり室内外に掲示されたりして光(紫外線)および熱の影響を受けても殆ど色相変化を生じず、しかも印刷品質ならびに印刷適性に優れた印刷用塗被紙を提供することを課題」(引用文献1の段落【0005】)として、その課題を、「原紙上に顔料と接着剤を主成分とする水性塗被液を塗布・乾燥して1層以上の塗被層を形成した印刷用塗被紙」(同【請求項1】)により解決するものであるから、甲1発明の印刷用塗被紙は、「原紙上に顔料と接着剤を主成分とする水性塗被液を塗布・乾燥して」形成した「1層以上の塗被層」、すなわち、本件特許明細書(段落【0054】)にいう「顔料塗工層」を備えることが必須であるといえる。
一方、本件発明1の「印刷用紙」は、「顔料塗工層」を含まないものであるから、本件発明1と甲1発明とは、「顔料塗工層」を備えるか否かで、少なくとも相違する。甲1発明において、この「顔料塗工層」に相当する「1層以上の塗被層」は、課題解決のために必須の構成であるから、そのような「1層以上の塗被層」を備えないようにすることには動機付けが見いだせない。また、引用文献2、3、5~7にも、甲1発明の「1層以上の塗被層」を備えないものとすることの動機付けについて示唆する記載はない。
よって、甲1発明の印刷用塗被紙において、「1層以上の塗被層」を備えないものとすることは、当業者が容易に想到することができたものではなく、本件発明1は、甲1発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.また、本件発明2、3、9~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(1)ア.のとおり、本件発明1は甲1発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定された本件発明2、3、9~12も、甲1発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ.したがって、本件発明1~3、9~12は、引用文献1を主な引用例とする理由により、特許法第29条第2項の規定に違反するものとすることはできず、本件発明1~3、9~12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(2)引用文献4(甲4)を主な引用例とする理由について
ア.引用文献4に記載された発明(以下「甲4発明」という。)は、「高い白色度を有し、グラビア印刷適性に優れたグラビア印刷塗工用紙、および、それを効率よく製造する方法を提供する」(引用文献4の段落【0012】)という課題を、「顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して、最外層に片面あたり5~15g/m2の顔料塗工層を設ける塗工工程」(同【請求項1】)により得られる、「原紙上に顔料塗工層を有する、白色度が80%以上であるグラビア印刷用塗工紙」(同【請求項4】)により解決するものであるから、甲4発明のグラビア印刷用塗工紙は、「顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工」して得られる「顔料塗工層」を備えることが必須であるといえる。
一方、本件発明1の「印刷用紙」は、「顔料塗工層」を含まないものであるから、本件発明1と甲4発明とは、「顔料塗工層」を備えるか否かで、少なくとも相違する。甲4発明において、この「顔料塗工層」は、課題解決のために必須の構成であるから、そのような「顔料塗工層」を備えないようにすることには動機付けが見いだせない。また、引用文献2、3、5~7にも、甲4発明の「顔料塗工層」を備えないものとすることの動機付けについて記載されていない。
よって、甲4発明のグラビア印刷用塗工紙において、「顔料塗工層」を備えないものとすることは、当業者が容易に想到することができたものではなく、本件発明1は、甲4発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.また、本件発明2、3、9~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(2)ア.のとおり、本件発明1は甲4発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定された本件発明2、3、9~12も、甲4発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ.したがって、本件発明1~3、9~12は、引用文献4を主な引用例とする理由により、特許法第29条第2項の規定に違反するものとすることはできず、本件発明1~3、9~12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(3)引用文献8を主な引用例とする理由について
ア.引用文献8(特に【0018】、【0026】、表1の実施例)には、以下の「引用文献8に記載された発明」が記載されている。
「パルプスラリーに、填料として、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物をパルプスラリーに5重量%配合し、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径4.3μm、白色度95%)を紙中灰分が15重量%となるように添加し、坪量40g/m2になるように抄紙し、顔料を含まない塗工液によりクリアー塗工され、白色度が67.5%である、印刷用紙。」
イ.本件発明1と引用文献8に記載された発明を対比すると、
本件発明1の印刷用紙が「印刷用紙のJIS P8150の方法によって測定される紙の色相が、紫外線を含む測定においてa*値が-3以上3未満、b*値が-0.5以上4未満であり」、「前記原紙層が青色染料、紫色染料、または赤色染料を含み、前記クリア塗工層に、紫色顔料、青色顔料、紫色染料、および青色染料から選ばれるひとつ以上の色材を含有する」のに対し、
引用文献8に記載された発明の印刷用紙は、顔料を含まない塗工液によりクリアー塗工されるものではあるものの、クリア塗工の塗工液が紫色染料か青色染料の色材を含有し、原紙層が青色染料、紫色染料、または赤色染料を含むか特定されておらず、印刷用紙のJIS P8150の方法によって測定される紙の色相が「紫外線を含む測定においてa*値が-3以上3未満、b*値が-0.5以上4未満」であるか不明である点で、両者は少なくとも相違する。
ウ.上記相違点について検討する。
引用文献8には、「塗工液には必要に応じて、・・・・着色染料、・・・・等の各種助剤を適宜配合してもよい。」(段落【0020】)と記載されているものの、クリア塗工の塗工液に紫色染料か青色染料の色材を含有させることの直接の記載はないし、原紙層に青色染料、紫色染料、または赤色染料を含むことも記載されていない。しかも、引用文献8に記載された発明は、「軽量でかつ白色度および不透明度が高いオフセット印刷用紙を提供する」(段落【0008】)という課題の解決のために、「填料の配合量は、少なすぎると得られる用紙の白色度と不透明度の向上が十分ではないため、前記軽質炭酸カルシウムおよび軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物を含有し、紙中灰分が15固形分重量%以上となるように添加する」(段落【0014】)ものであり、クリア塗工の塗工液や原紙層に、紫色や青色の染料・顔料の色材を含有させることにより、用紙の白色度や不透明度が向上できるという効果については、記載も示唆もされていない。
ここで、引用文献2(36頁)には、目で感じる紙の白さを増すために、紙を青紫系の着色剤で淡く着色することが、従来より製紙メーカーにおいて行われている旨記載されるが、青紫系の着色剤により不透明度が向上できるという効果までは記載されていない。また、引用文献3、5~7のいずれにも、紫色や青色の染料・顔料の色材を含有させることにより、用紙の白色度や不透明度が向上できることは記載されていない。そのため、引用文献8に記載された発明の印刷用紙において、クリア塗工の塗工液や原紙層に、紫色や青色の染料・顔料の色材を含有させることにより、用紙の不透明度を向上できるという効果が得られることは、当業者が予測し得るものではない。
そして、本件発明1は、本件特許明細書の【表1】に、原紙層やクリア塗工層に、紫色や青色の染料・顔料の色材を含有させることにより、原紙の色層が本件発明1の「a*値」と「b*値」を満たさない比較例のものと比べて、「見た目の白さ」と「印刷時の裏抜け」の評価項目が優れたものとなることが示されるように、高白色、高不透明性の両方を満たすという、予測を超えた格別な効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、引用文献8に記載された発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、当業者であれば、引用文献8に記載された発明に対し、白色度を向上させるために、原紙層やクリア塗工層に、紫色や青色の染料・顔料の色材を含有させることを試みる蓋然性はあるということはできるが、上記の格別な効果を奏することまでは予測し得るものではなく、上記の判断を覆す程の事情ではない。
また、申立人は、意見書(2頁下から3行~3頁4行)において、訂正後の請求項1には、特許権者がいう「青色系色材と印刷時の裏抜けとの関係」以外の場合が包含されており、それ以外の場合については、「印刷時の裏抜けを極めて高いレベルで向上させる」という顕著な効果を奏することがないと主張するが、訂正後の請求項1に係る発明の印刷用紙は、「紫色顔料、青色顔料、紫色染料、および青色染料から選ばれるひとつ以上の色材を含有する」クリア塗工層を備えるものであり、申立人の主張は、その前提において当を得たものではなく、採用することはできない。
エ.本件発明2、3、9~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用する
ものであるから、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(3)ウ.のとおり、本件発明1は引用文献8に記載された発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定された本件発明2、3、9~12も、引用文献8に記載された発明及び引用文献2、3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ.したがって、本件発明1~3、9~12は、引用文献8を主な引用例とする理由により、特許法第29条第2項の規定に違反するものとすることはできず、本件発明1~3、9~12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
4.むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由によっては、本件発明1~3、9~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~3、9~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求に係る訂正により、請求項4~8に係る特許は削除されたため、請求項4~8に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701197