特許異議申立
2023-700122
冷凍麺類の製造方法
- 審判番号
- 2023-700122
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-540864
- 登録番号
- 7126640
- 請求日
- 2023年02月03日
- 審決日
- 2023年10月23日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社日清製粉ウェルナ
- 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
- 【異議申立人】藤松 正雄
- 審判長/審判官
- 審判長 磯貝 香苗
- 審判官 中村 和正
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7126640号発明「冷凍麺類の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7126640号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7126640号の請求項1及び3ないし5に係る特許を維持する。
特許第7126640号の請求項2に係る特許に対する特許異議申立を却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7126640号(以下、この通知において「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)3月30日(優先権主張 2021年(令和3年)3月30日)を国際出願日とする出願であって、令和4年8月18日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対して、令和5年2月3日に特許異議申立人 藤松 正雄(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年6月5日付けで取消理由が通知され、同年8月1日に特許権者 株式会社日清製粉ウェルナ(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月17日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年9月12日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7126640号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「調理済み麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程と、該処理液が付着した麺類を冷凍する工程とを有する、冷凍麺類の製造方法。」と記載されているのを、「調理済み麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程と、該処理液が付着した麺類を冷凍する工程とを有し、前記処理液におけるアラビアガムの含有量は0.04~0.35質量%である、冷凍麺類の製造方法。」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項3、4及び5も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の冷凍麺類の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1に記載の冷凍麺類の製造方法。」に訂正する。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項4及び5も同様に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3の何れか1項に記載の冷凍麺類の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1又は3に記載の冷凍麺類の製造方法。」に訂正する。
請求項4の記載を引用して特定する請求項5も同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4の何れか1項に記載の冷凍麺類の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1、3及び4の何れか1項に記載の冷凍麺類の製造方法。」に訂正する。
(6) 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、「アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程」で用いる「処理液」におけるアラビアガムの含有量を「0.04~0.35質量%」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正が、特許請求の範囲の請求項2や願書に添付した明細書の【0015】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項3ないし5についても同様である。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(3) 訂正事項3ないし5について
訂正事項3ないし5に係る請求項3ないし5の訂正は、何れも、訂正事項2に係る請求項2の訂正により、請求項2が削除されたことに伴い、引用先の請求項から請求項2を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3ないし5に係る請求項3ないし5の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項3又は4の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。
4 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。また、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」を総称し「本件特許発明」ということがある。)は、令和5年8月1日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
調理済み麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程と、該処理液が付着した麺類を冷凍する工程とを有し、
前記処理液におけるアラビアガムの含有量は0.04~0.35質量%である、冷凍麺類の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記処理液は、更に油脂及び水を含有し、該処理液における該油脂の含有量は23~75質量%である、請求項1に記載の冷凍麺類の製造方法。
【請求項4】
前記麺類はパスタ類である、請求項1又は3に記載の冷凍麺類の製造方法。
【請求項5】
前記冷凍麺類は、出力1000W以上の電子レンジで加熱してから食されるものである、請求項1、3及び4の何れか1項に記載の冷凍麺類の製造方法。」
第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1ないし5に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨(下記1ないし13)は、次のとおりである。
1 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由1-3(甲第3号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由1-4(甲第4号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由1-5(甲第5号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由1-6(甲第6号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
8 申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
9 申立理由2-3(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
10 申立理由2-4(甲第4号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
11 申立理由2-5(甲第5号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
12 申立理由2-6(甲第6号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
13 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由は、おおむね次のとおりである。
(1) 申立理由3-1(処理液におけるアラビアガム含有量について)
本件特許発明2では、調理済み麺類の表面に付着させる処理液におけるアラビアガム含有量が0.04~0.35質量%と限定されており、本件特許の明細書の【0015】には、「処理液におけるアラビアガムの含有量は、該処理液の全質量に対して0.04~0.35質量%であり、好ましくは0.08~0.28質量%、より好ましくは0.12~0.22質量%である。処理液におけるアラビアガムの含有量が0.04質量%未満では、本発明の所定の効果が奏されず、該含有量が0.35質量%を超えると、麺類に異味が生じるおそれがある。」と記載されている。
しかし、本件特許発明1では、処理液におけるアラビアガム含有量が何ら限定されていないため、【0015】において、「本発明の所定の効果が奏されず」と記載されている0.04質量%未満、及び「麺類に異味が生じるおそれがある」と記載されている0.35質量%を超えるアラビアガム含有量までも発明に含まれている。
すなわち、本件特許発明1は、発明の課題を解決し得ないアラビアガム含有量も包含しており、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
本件特許発明1の従属項にあたる本件特許発明3ないし5についても同様である。
(2) 申立理由3-2(処理液の粘度について)
本件特許の明細書の【0021】には、「処理液の粘度は、調理済み麺類に対する付着性を高める観点から、好ましくは50~1000mPa・s、より好ましくは70~700mPa・sである」と記載されており、「調理済み麺類の表面に処理液を付着させる方法は特に制限されず、例えば、調理済み麺類に対して処理液を噴霧する方法、処理液中に調理済み麺類を浸漬させる方法が挙げられる」とも記載されている。実施例における処理液の粘度は不明であるが、例えば、著しく高粘度の処理液であれば、噴霧により麺類の表面全体に均一に処理液を付着させることは技術的に不可能といえる。その場合、本件特許の発明の課題を解決することも不可能といえる。
すなわち、本件特許発明1は、発明の課題を解決し得ない粘度の処理液である場合をも包含しており、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
本件特許発明1の従属項にあたる本件特許発明2ないし5についても同様である。
(3) 申立理由3-3(麺類表面への処理液の付着量について)
本件特許の明細書の【0021】には、「処理液の付着量は、付着対象の調理済み麺類100質量部に対して湿重量基準で、好ましくは2~10質量部、より好ましくは4~8質量部である」と記載されている。また、実施例においては、麺類100質量部に対して1~12質量部の処理液を付着させている(表4)。
しかし、同じ処理液であっても、実施例よりも極端に少ない付着量である場合にも、実施例と同じ効果が得られるとは考えられず、その場合には、本件特許の発明の課題を解決することは不可能といえる。なお、実施例よりも極端に多い付着量とすれば、過剰の処理液により麺類を冷凍する工程に支障を生じ、食感も影響を受けることが予想される。
すなわち、本件特許発明1は、発明の課題を解決し得ない付着量である場合をも包含しており、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
本件特許発明1の従属項にあたる本件特許発明2ないし5についても同様である。
(4) 申立理由3-4(処理液の溶媒について)
本件特許の明細書の【0017】には、「本発明で用いる処理液は、典型的には、アラビアガム及び油脂の他に、水を含有する。処理液において、水は溶媒として機能し、処理液のハンドリング性を高めるためのものである。処理液用の水 としては、例えば、清水、精製水、水道水など、通常調理に使用することができる水を特に制限なく用いることができる。」と記載され、さらに、実施例の処理液は、全て水を有している。このため、本件特許発明においては、処理液は水を溶媒として含有している必要がある。
ところが、本件特許発明1では、処理液の成分としてアラビアガムのみが限定されており、溶媒に関しては何ら限定されておらず、水以外の溶媒のみを使用する場合も包含されている。
すなわち、本件特許発明1は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
本件特許発明1の従属項にあたる本件特許発明2ないし5についても同様である。
14 証拠方法
・甲第1号証:特開平2-117353号公報
・甲第2号証:特開2007-174920号公報
・甲第3号証:特開2010-119307号公報
・甲第4号証:特開2011-177120号公報
・甲第5号証:特開2012-235746号公報
・甲第6号証:国際公開第2016/031525号
なお、証拠の表記については、おおむね特許異議申立書における記載にしたがった。
第5 令和5年6月5日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要
請求項1及び4に係る特許に対して、当審が令和5年6月5日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。なお、取消理由には、申立理由1-1、申立理由1-3のうち請求項1に係る特許についての部分、申立理由1-4、申立理由1-5、申立理由2-1、申立理由2-3のうち請求項1に係る特許についての部分、申立理由2-4及び申立理由2-5が包含される。
1 取消理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由1-2(甲第3号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 取消理由1-3(甲第4号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 取消理由1-4(甲第5号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 取消理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 取消理由2-2(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 取消理由2-3(甲第4号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
8 取消理由2-4(甲第5号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
以下のとおり、当審は、取消理由及び申立理由は何れもその理由がないものと判断する。
1 令和5年6月5日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由についての判断
(1) 取消理由1-1及び取消理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第1号証の記載事項等
(ア) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「冷凍茹で麺類の製造方法」に関し、次の記載がある。
「常法により製造された茹で麺類の表面に、下記(イ)、(ロ)、(ハ)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の物質を含む溶液を付着させ、その後凍結することを特徴とする冷凍茹で麺類の製造方法。
(イ)カラギーナン、グアガム、タマリンドガム等の糊料
(ロ)DE(Dextrose Equivalence)が2~35のデキストリン、澱粉リン酸エステル、ポリデキストロースよりなる糖質誘導体
(ハ)カゼインナトリウム、ゼラチンよりなるタンパク質」(第1頁左下欄第5ないし17行)
「本発明は、うどん、日本そば、中華麺、パスタ麺等の麺類を茹でたもの、すなわち茹で麺類を冷凍してなる冷凍茹で麺類の製造方法の改良に関する。」(第1頁右下欄第12ないし15行)
「本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、冷凍保存中における品質の劣化を防いで従来より長期間の保存を可能とし、しかも解凍後に品質の良好な茹で麺類を得ることの出来る冷凍茹で麺類の製造方法を提供することを目的とするものである。」(第2頁右上欄第8ないし13行)
「冷凍茹で麺類の品質劣化の原因は、流通段階における温度変化による澱粉質の変化もさることながら、冷凍保存中における前述したような麺表面の乾燥による麺の食感の変化および風味の揮散によるところが極めて大である。
そこで、本発明者等は上述した麺表面の乾燥を防止する方法について鋭意研究を重ねた結果、凍結する前の茹で麺類もしくは凍結した後の冷凍茹で麺類を、ある種の物質を含む溶液中に浸漬したり、あるいは当該溶液を前記麺類に噴霧したりして麺類の表面に当該溶液をなるべく万遍なく付着させることにより、冷凍保存中における麺表面からの水分(氷)の昇華を防止することが出来、保存中における品質劣化を防止することが出来ることを見出した。
上記物質としては先ず糊料が挙げられ、カラギーナン、グアガム、タマリンドガム、アラビアガム、ローストビーンガム、タラガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カードラン、プルラン、ペクチン、CMC、メチルセルロース等、いわゆる食品添加物として認められている糊料であればすべて用いることが出来る。」(第2頁左下欄第11行ないし同頁右下欄第13行)
「実施例-1(凍結前浸漬)
富士製粉社製うどん用小麦粉「富士梅」1kgに対して、食塩を30g、水を400gの割合で添加して混練し、次いで角カッターNo..12を用いて製麺して生うどんを製造した。このようにして製造した生うどんを12分間茹で、その後直ちに冷水で洗ってしめて茹でうどんを得た。当該茹でうどんを十分に水切りした後、第1表に示した各物質を同表に「実験濃度」として示した濃度でそれぞれ一種類ずつ溶解してなる水溶液のいずれかに浸漬し、その後プラスチックトレー内に入れて-48℃で急速に凍結し、本発明による冷凍茹でうどんを製造した。次いで、得られた冷凍茹でうどんをポリエチレンフィルムで包装し、-20℃の冷凍庫内に入れて一定期間保存した。保存一ヶ月後および6ヶ月後に、当該冷凍茹でうどんの一部を取り出して解凍し、解凍後の茹でうどんの外観の観察および試食による食味の評価を行った。外観の観察結果を第2表に、また食味の評価結果を第3表に示す。」(第3頁左下欄第2行ないし同頁右下欄第1行)
「
[図:0001405817000001.jpg]
[図:0001405817000002.jpg]
[図:0001405817000003.jpg]
[図:0001405817000004.jpg]
[図:0001405817000005.jpg]
[図:0001405817000006.jpg]
」(第4頁右上欄ないし第5頁)
(イ) 甲第1号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例-1のうち、「アラビアガム」を用いた例を中心にまとめると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。
「製造した生うどんを12分間茹で、その後直ちに冷水で洗ってしめて茹でうどんを得、当該茹でうどんを十分に水切りした後、アラビアガムを20.0重量%となるように溶解してなる水溶液に浸漬し、その後プラスチックトレー内に入れて-48℃で急速に凍結する、冷凍茹でうどんの製造方法。」(以下、「甲1発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
A 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「茹でうどん」、「アラビアガムを20.0重量%となるように溶解してなる水溶液」、「冷凍茹でうどん」は、それぞれ、本件特許発明1の「調理済み麺類」、「アラビアガムを含有する処理液」、「冷凍麺類」に相当する。
また、甲1発明の「茹でうどん」を「アラビアガムを20.0重量%となるように溶解してなる水溶液に浸漬」する工程は、本件特許発明1の「調理済み麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程」に相当する。
さらに、甲1発明の「-48℃で急速に凍結する」工程は、本件特許発明1の「冷凍する工程」に相当する。
してみると、両者は、
「調理済み麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程と、該処理液が付着した麺類を冷凍する工程とを有する、冷凍麺類の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-1
アラビアガムを含有する処理液におけるアラビアガムの含有量について、本件特許発明1は「0.04~0.35質量%」であるのに対し、甲1発明は「20.0重量%」である点。
B 判断
上記相違点1-1について検討する。
相違点1-1は実質的な相違点であることは明らかである。
よって、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
また、甲第1号証の第1表における「溶液の濃度」において、アラビアガムの好ましい濃度範囲(重量%)は「10.0~30.0」であり、また、甲第1号証の他の記載及び他の全ての証拠をみても、甲1発明において、「アラビアガムを20.0重量%となるように溶解してなる水溶液」のアラビアガムの濃度を変更し、相違点1-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとする動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
C 特許異議申立人の意見書における主張について
この点について、特許異議申立人は意見書において、甲第2号証及び甲第3号証の記載を参照の上、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨主張する(意見書「3(1)」)。
しかしながら、甲第2号証及び甲第3号証の記載を参酌したとしても、甲1発明において、アラビアガムの濃度を「10.0~30.0」の範囲外とする動機付けがあるとはいえないことは上記のとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(イ) 本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1は、上記(ア)のとおり、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の全ての特定事項を有する本件特許発明4もまた、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 取消理由1-1及び取消理由2-1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-1及び取消理由2-1は、その理由がない。
(2) 取消理由1-2及び取消理由2-2(甲第3号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第3号証の記載事項等
(ア) 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「麺類用ほぐれ改良剤」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】
アラビアガム及び反応モノグリセライドを含有することを特徴とする麺類用ほぐれ改良剤。」
「【0007】
本発明は、茹で、蒸しなどの加熱工程後に麺線の表面に付着させて使用するのに適した麺類用ほぐれ改良剤を提供することを目的とする。」
「【0008】
本発明者等は、上記課題に対して鋭意・検討を行った結果、アラビアガム及び反応モノグリセライドを含有する水分散液を麺に噴霧すると、麺類のほぐれ性が改良されることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、アラビアガム及び反応モノグリセライドを含有することを特徴とする麺類用ほぐれ改良剤、からなっている。」
「【0022】
本発明の麺類用ほぐれ改良剤100質量%中の各成分の含有量に特に制限はないが、例えば、アラビアガムが約0.25~30質量%、好ましくは約1~20質量%、反応モノグリセライドが約0.25~30質量%、好ましくは約1~20質量%、水が約60~98質量%、好ましくは約70~90質量%となるように調製するのが好ましい。
【0023】
上記の如くして得られる本発明の麺類用ほぐれ改良剤を適用できる麺は、特に制限されず、例えば、生麺、即席麺(ノンフライ麺など)、調理麺、冷凍麺、ゆで麺やLL麺などが挙げられる。これらのうち、とりわけノンフライ麺、調理麺などへの応用が効果的である。」
「【0025】
本発明の麺類用ほぐれ改良剤の使用方法の使用量は、該改良剤の使用方法、麺類の種類あるいは流通形態、保管期間、期待効果の度合いによって異なるが、例えば該麺類用ほぐれ改良剤を浸漬、噴霧または塗布する方法では、アラビアガム及び反応モノグリセライドの含有量が0.5質量%以上、好ましくは2~30質量%となるように水分散液を調製し、それを使用するとよい。水分散液の使用量は、その濃度を勘案して適宜調整すると良い。」
(イ) 甲第3号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に請求項1、【0007】及び【0008】の記載を中心に整理すると、甲第3号証には次の発明が記載されていると認める。
「茹で、蒸しなどの加熱工程後に麺線の表面に、アラビアガム及び反応モノグリセライドを含有する水分散液を麺に噴霧し付着させる、麺類の製造方法。」(以下、「甲3発明」という。)
イ 対比・判断
・本件特許発明1について
(ア) 対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「茹で、蒸しなどの加熱工程後」の「麺線」は、本件特許発明1の「調理済み麺類」に相当する。
また、甲3発明の「アラビアガム及び反応モノグリセライドを含有する水分散液」は、本件特許発明1の「アラビアガムを含有する処理液」に相当する。
してみると、両者は、
「調理済み麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程を有する、麺類の製造方法。」
で一致し、次の点で一応相違する。
・相違点3-1
本件特許発明1は、「冷凍麺類」の製造方法であって、「冷凍する工程」を有するのに対し、甲3発明にはそのような特定がない点。
・相違点3-2
アラビアガムを含有する処理液におけるアラビアガムの含有量について、本件特許発明1は「0.04~0.35質量%」であるのに対し、甲3発明にはそのような特定がない点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点3-2について検討する。
甲第3号証には、「本発明の麺類用ほぐれ改良剤100質量%中の各成分の含有量に特に制限はないが、例えば、アラビアガムが約0.25~30質量%・・・(中略)・・・となるように調製するのが好ましい。」(【0022】)との記載はあるものの、「本発明の麺類用ほぐれ改良剤の使用方法の使用量は、該改良剤の使用方法、麺類の種類あるいは流通形態、保管期間、期待効果の度合いによって異なるが、例えば該麺類用ほぐれ改良剤を浸漬、噴霧または塗布する方法では、アラビアガム及び反応モノグリセライドの含有量が0.5質量%以上、好ましくは2~30質量%となるように水分散液を調製し、それを使用するとよい。(【0025】)との記載があり、また、実施例においても、5質量%を超える例が記載されているにすぎない。
してみると、甲第3号証には、「麺類の製造方法」に用いられる「麺類用ほぐれ改良剤」におけるアラビアガムの割合として、「0.04~0.35質量%」の範囲のもの、すなわち、相違点3-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものが記載されていたということはできない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明ではない。
また、甲第3号証及びその他の全ての証拠の記載をみても、甲3発明において、アラビアガムの含有割合を調整し、相違点3-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとする動機付けがない。
したがって、甲3発明において、相違点3-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 特許異議申立人の意見書における主張について
特許異議申立人は意見書において、「ほぐれ改良剤(本件特許における処理液)のアラビアガム濃度を0.25重量%~30重量%とすることは、甲第3号証の【0022】にも開示されている。よって、甲第3号証の技術においてもアラビアガム濃度を0.25重量%とすることは設計事項に過ぎない。」(3(1))と主張する。
しかしながら、アラビアガム濃度に関しては、上記(イ)のとおり判断されるものであるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
ウ 取消理由1-2及び取消理由2-2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-2及び取消理由2-2は、その理由がない。
(3) 取消理由1-3及び取消理由2-3(甲第4号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第4号証の記載事項等
甲第4号証には、「麺類のほぐれ改良剤および麺類のほぐれ改良方法」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】
アラビアガム、ガティガムおよび1種以上の乳化剤成分をそれぞれ0.5~4.5重量%、0.5~4.0重量%および0.5~2.5重量%含有し、残部が水である水性溶液からなり、かつ温度5~20℃における粘度が1~35mPa・sであることを特徴とする麺類のほぐれ改良剤。
【請求項2】
前記乳化剤成分が、グリセリン脂肪酸エステル類、グリセリン有機酸脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、レシチン類およびアシル化乳酸類から選択される化合物である請求項1に記載の麺類のほぐれ改良剤。
【請求項3】
前記乳化剤成分が、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリソルベートから選択される化合物である請求項1または2に記載のほぐれ改良剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の麺類のほぐれ改良剤を麺類の表面に付着させて、麺類のほぐれを改良することを特徴とする麺類のほぐれ改良方法。」
「【0009】
本発明の発明者は、麺類のほぐれ改良について鋭意研究の結果、意外なことに、特定量のアラビアガム、ガティガムおよび乳化剤成分を有効成分として含有し、残部が水である、温度5~20℃における噴霧する直前の粘度が1~35mPa・sである水性溶液を麺類に付着させることにより、麺のほぐれ性が著しく向上し、食味および食感の良好な麺類が得られ、その作業性が良好であることを見 出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
かくして、本発明によれば、アラビアガム、ガティガムおよび1種以上の乳化剤成分をそれぞれ0.5~4.5重量%、0.5~4.0重量%および0.5~ 2.5重量%含有し、残部が水である水性溶液からなり、かつ温度5~20℃における粘度が1~35mPa・sであることを特徴とする麺類のほぐれ改良剤が提供される。
また、本発明によれば、上記の麺類のほぐれ改良剤を麺類の表面に付着させて、麺類のほぐれを改良することを特徴とする麺類のほぐれ改良方法が提供される。」
「【0014】
本発明における麺類としては、例えば、中華麺、うどん、きしめん、素麺、冷や麦、そば、スパゲッティのように細長く成形した麺類、マカロニのように任意の形状に成形したものなどが挙げられる。そして、その形態は、生麺、茹で麺、蒸し麺、ロングライフ麺(LL麺)、即席麺、冷凍麺、乾麺などのいずれであってもよい。」
(イ) 甲第4号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に請求項1及び4の記載を中心に整理すると、甲第4号証には次の発明が記載されていると認める。
「アラビアガム、ガティガムおよび1種以上の乳化剤成分をそれぞれ0.5~4.5重量%、0.5~4.0重量%および0.5~2.5重量%含有し、残部が水である水性溶液からなり、かつ温度5~20℃における粘度が1~35mPa・sである麺類のほぐれ改良剤を、麺類の表面に付着させて、麺類のほぐれを改良する麺類の製造方法。」(以下、「甲4発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
A 対比
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
甲4発明の「アラビアガム、ガティガムおよび1種以上の乳化剤成分をそれぞれ0.5~4.5重量%、0.5~4.0重量%および0.5~2.5重量%含有し、残部が水である水性溶液からなり、かつ温度5~20℃における粘度が1~35mPa・sである麺類のほぐれ改良剤」は、本件特許発明1の「アラビアガムを含有する処理液」に相当する。
してみると、両者は、
「麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程を有する、麺類の製造方法。」
で一致し、次の点で一応相違する。
・相違点4-1
本件特許発明1は「冷凍麺類」であって、「冷凍する工程」を有するとともに、処理液を付着させる麺類が「調理済み麺類」であることを特定するものであるのに対し、甲4発明にはそのような特定がない点。
・相違点4-2
アラビアガムを含有する処理液におけるアラビアガムの含有量について、本件特許発明1は「0.04~0.35質量%」であるのに対し、甲4発明は「0.5~4.5重量%」である点。
B 判断
事案に鑑み、相違点4-2について検討する。
相違点4-2は実質的な相違点であることは明らかである。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明ではない。
また、甲第4号証及びその他の全ての証拠の記載をみても、甲4発明において、アラビアガムの含有割合を調整し、相違点4-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとする動機付けがない。
したがって、甲4発明において、相違点4-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
C 特許異議申立人の意見書における主張について
特許異議申立人は意見書において、甲第2号証及び甲第3号証の記載を参照の上、本件特許発明1は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨主張する(意見書「3(1)」)が、上記(1)イ(ア)Cと同様に判断されるものであり、採用することができない。
(イ) 本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1は、上記(ア)のとおり、甲4発明ではなく、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の全ての特定事項を有する本件特許発明4もまた、甲4発明ではなく、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 取消理由1-3及び取消理由2-3についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-3及び取消理由2-3は、その理由がない。
(4) 取消理由1-4及び取消理由2-4(甲第5号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第5号証の記載事項等
(ア) 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、「麺類のほぐれ改良剤とその使用方法」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】
水性媒体100重量部中に、増粘剤としてのアラビアガム0.5~30重量部、油脂としての高級脂肪酸のグリセライド0.05~5重量部、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類から選択される少なくとも1種の乳化剤0.05~7重量部を含み、前記油脂Oと前記乳化剤Eとの重量比O/Eが0.03~80であることを特徴とする麺類のほぐれ改良剤。
【請求項2】
前記油脂が、炭素数が6~24である脂肪酸のグリセライドから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の麺類のほぐれ改良剤。
【請求項3】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類が、ポリソルベート60およびポリソルベート80から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の麺類のほぐれ改良剤。
【請求項4】
前記麺類のほぐれ改良剤が、酢酸、酢酸ナトリウムおよびエタノールから選択される少なくとも1種をさらに含む請求項1~3のいずれか1つに記載の麺類のほぐれ改良剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の麺類のほぐれ改良剤を麺類の表面に付着させて、麺類のほぐれを改良することを特徴とする麺類のほぐれ改良方法。」
「【0008】
本発明の発明者らは、麺類のほぐれ改良について鋭意研究の結果、意外なことに、増粘剤としてのアラビアガム、油脂としての高級脂肪酸のグリセライドおよび特定の乳化剤を、特定量でかつ油脂と乳化剤とを特定の比率で含む水性媒体を麺類に付着させることにより、ほぐれが著しく向上し、食味および食感の良好な麺類が得られ、その水性媒体に由来する析出物が噴霧装置のノズルを目詰まりさせて操作性や生産性を低下させることがないことを見出し、本発明を完成するに到った。
上記の先行技術には、油脂および乳化剤が個別に記載されているものの、これらを特定の比率で用いることおよびそれによる効果については記載も示唆もない。
【0009】
かくして、本発明によれば、水性媒体100重量部中に、増粘剤としてのアラビアガム0.5~30重量部、油脂としての高級脂肪酸のグリセライド0.05~5重量部、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類から選択される少なくとも1種の乳化剤0.05~7重量部を含み、前記油脂Oと前記乳化剤Eとの重量比O/Eが0.03~80であることを特徴とする麺類のほぐれ改良剤が提供される。
また、本発明によれば、上記の麺類のほぐれ改良剤を麺類の表面に付着させて、麺類のほぐれを改良することを特徴とする麺類のほぐれ改良方法が提供される。」
「【0014】
本発明においてほぐれ改良の対象となる麺類としては、例えば、中華麺、うどん、きしめん、素麺、冷や麦、そば、スパゲッティのように細長く成形した麺類、マカロニのように任意の形状に成形したものなどが挙げられる。そして、その形態は、生麺、茹で麺、蒸し麺、ロングライフ麺(LL麺)、即席麺、冷凍麺、乾麺などのいずれであってもよい。」
(イ) 甲第5号証に記載された発明
上記アの記載、特に請求項1及び5の記載を中心に整理すると、甲第5号証には次の発明が記載されていると認める。
「水性媒体100重量部中に、増粘剤としてのアラビアガム0.5~30重量部、油脂としての高級脂肪酸のグリセライド0.05~5重量部、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類から選択される少なくとも1種の乳化剤0.05~7重量部を含み、前記油脂Oと前記乳化剤Eとの重量比O/Eが0.03~80である麺類のほぐれ改良剤を、麺類の表面に付着させて、麺類のほぐれを改良する麺類の製造方法。」(以下、「甲5発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
A 対比
本件特許発明1と甲5発明を対比する。
甲5発明の「水性媒体100重量部中に、増粘剤としてのアラビアガム0.5~30重量部、油脂としての高級脂肪酸のグリセライド0.05~5重量部、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類から選択される少なくとも1種の乳化剤0.05~7重量部を含み、前記油脂Oと前記乳化剤Eとの重量比O/Eが0.03~80である麺類のほぐれ改良剤」は、本件特許発明1の「アラビアガムを含有する処理液」に相当する。
してみると、両者は、
「麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程を有する、麺類の製造方法。」
で一致し、次の点で一応相違する。
・相違点5-1
本件特許発明1は「冷凍麺類」であって、「冷凍する工程」を有するとともに、処理液を付着させるの麺類が「調理済み麺類」であることを特定するものであるのに対し、甲5発明にはそのような特定がない点。
・相違点5-2
アラビアガムを含有する処理液におけるアラビアガムの含有量について、本件特許発明1は「0.04~0.35質量%」であるのに対し、甲5発明は水性媒体100重量部中に「0.5~30重量部」である点。
B 判断
事案に鑑み、相違点5-2について検討する。
相違点5-2は実質的な相違点であることは明らかである。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲5発明ではない。
また、甲第5号証及びその他の全ての証拠の記載をみても、甲5発明において、アラビアガムの含有割合を調整し、相違点5-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとする動機付けがない。
したがって、甲5発明において、相違点5-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
C 特許異議申立人の意見書における主張について
特許異議申立人は意見書において、甲第2号証及び甲第3号証の記載を参照の上、本件特許発明1は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨主張する(意見書「3(1)」)が、上記(1)イ(ア)Cと同様に判断されるものであり、採用することができない。
(イ) 本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1は、上記(ア)のとおり、甲5発明ではなく、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の全ての特定事項を有する本件特許発明4もまた、甲5発明ではなく、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 取消理由1-4及び取消理由2-4についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-4及び取消理由2-4は、その理由がない。
2 令和5年6月5日付け取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
令和5年6月5日付け取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、申立理由1-2、申立理由1-3のうち訂正前の請求項2に係る特許についての部分、申立理由1-6、申立理由2-2、申立理由2-3のうち訂正前の請求項2に係る特許についての部分、申立理由2-6及び申立理由3である。
なお、申立理由1-3及び申立理由2-3のうち訂正前の請求項2に係る特許についての部分については、実質的に上記1(2)で既に検討したとおりであるから、その余の部分について、以下、検討する。
(1) 申立理由1-2及び申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第2号証の記載事項等
(ア) 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「マイクロウェーブ解凍・加熱用冷凍麺類の製造方法」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】
茹で上げまたは蒸し上げた麺類に、水、油脂、タンパク質および/またはその加水分解物、および増粘多糖類を混合・乳化して得られる乳化油を添加して、該麺類の表面を該乳化油で被覆し、次いで、当該麺類を、冷凍後の麺塊が中央部に凹部を形成するように整形して冷凍し、該冷凍中または該冷凍後に、当該麺類の表面に水または水性液体を付着させ、さらに冷凍して、当該麺類の表面に水または水性液体の凍結層を形成させることを特徴とする、マイクロウェーブ解凍・加熱用冷凍麺類の製造方法。」
「【0001】
本発明は、電子レンジ等によるマイクロウェーブで解凍・加熱(調理)するのに適した冷凍麺類の製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、マイクロウェーブ(電子レンジ)で解凍・調理(加熱)した際に、焼けこげが生じたり、麺の外周部が乾燥したり、麺がガミー状になることがなく、食感に優れた麺類が得られ、且つ麺どうしのほぐれもよく、また解凍後のハンドリングの手間がかからず、しかも解凍時間も短い、冷凍麺類の製造方法を提供することにある。」
「【0013】
上記乳化油に用いられる増粘多糖類としては、ペクチン、アラビアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、タマリンドシードガム、サイリュームシードガム、タラガム、ファーセレラン、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、このうちの1種または2種以上を適宜選択することができるが、時間が経過しても粘度が低下しないもの(例えばローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム)が好ましい。」
「【0024】
実施例1
乾燥スパゲッティーを通常通り茹で上げた後に水洗して冷却し、歩留まりを230%に調整する。次いで、このスッパゲッティー200gに対して、予め高速ミキサーにて乳化調製しておいた乳化油〔水100質量部(49. 2%)、なたね油100質量部(49. 2%),カゼインナトリウム3質量部(1. 5%)およびグアーガム0. 3質量部(0. 15%)からなるもの〕4g(スッパゲッティーの質量に対して2質量%)を添加・混合して、スッパゲッティーの表面を乳化油で被覆する。この乳化油で表面が被覆されたスッパゲッティを、図1および図2に示す形状の容器体1に、該容器体の隆起部3が当該スッパゲッティで覆いかくされるように収納して、冷凍する。冷凍後、容器体1に収納されたままのスッパゲッティー(麺塊)の上面(片面)に水を5g(スッパゲッティーの質量に対して2. 5質量%)噴霧し付着させる。これを冷凍庫に入れて再冷凍し、麺塊の表面に氷の層を有する冷凍スッパゲッティーを得る。
尚、上記容器体1の大きさは次の通りである。
容器体1の開口径:142mm、容器体1の底面径:128mm、容器体1の高さH:65mm、隆起部3の底面3bの径:108mm、隆起部3の頂部平坦面3aの径:60mm、隆起部3の高さh:40mm。
【0025】
上記冷凍スッパゲッティーを冷凍庫に10日間保管後、冷凍庫より取り出し、凹部を上向きにして皿に乗せ、電子レンジにて1400Wで70秒間解凍調理した。この時のスッパゲッティーの品温は平均90℃であった。解凍調理したスッパゲッティーにソースをかけて評価を行なった。評価は、温度ムラおよび麺の状態(ガミー状態、ほぐれ)について、下記評価基準に従って8名のパネラーに採点させた。その評価結果(8名のパネラーの平均点)を表1に示す。」
「【0034】
実施例6~7
表3に示す配合組成の乳化油を用いた以外は、実施例1と同様にして、冷凍スッパゲッティーをそれぞれ得た。得られた各冷凍スッパゲッティーを、実施例1と同様に、冷凍保管後、電子レンジにて1400Wで解凍調理し、これにソースをかけて評価を行なった。その結果、いずれのスッパゲッティーも、実施例1のスッパゲッティーと同様に、麺の中心と外周とで温度ムラが少なく、ガミー状態になることがなく、且つ麺どうしのほぐれもよいとの評価が得られた。
【0035】
【表3】
[図:0001405817000007.jpg]
」
(イ) 甲第2号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に請求項1の記載を中心に整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されているものと認める。
「茹で上げまたは蒸し上げた麺類に、水、油脂、タンパク質および/またはその加水分解物、および増粘多糖類を混合・乳化して得られる乳化油を添加して、該麺類の表面を該乳化油で被覆し、次いで、当該麺類を、冷凍後の麺塊が中央部に凹部を形成するように整形して冷凍し、該冷凍中または該冷凍後に、当該麺類の表面に水または水性液体を付着させ、さらに冷凍して、当該麺類の表面に水または水性液体の凍結層を形成させることを特徴とする、マイクロウェーブ解凍・加熱用冷凍麺類の製造方法。」(以下、「甲2発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
A 対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「茹で上げまたは蒸し上げた麺類」、「乳化油」及び「乳化油で被覆し」は、それぞれ、本件特許発明の「調理済み麺類」、「処理液」及び「処理液を付着させる工程」に相当する。
また、甲2発明は「乳化油で被覆し、次いで、当該麺類を、冷凍後の麺塊が中央部に凹部を形成するように整形して冷凍」するものであるから、本件特許発明1の「処理液が付着した麺類を冷凍する工程」に相当する工程を有することも明らかである。
してみると、両者は、
「調理済み麺類の表面に、処理液を付着させる工程と、該処理液が付着した麺類を冷凍する工程とを有する、冷凍麺類の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点2-1
処理液に関し、本件特許発明1は「アラビアガムを含有する」と特定されるのに対し、甲2発明にはそのような特定はない点
・相違点2-2
アラビアガムを含有する処理液におけるアラビアガムの含有量について、本件特許発明1は「0.04~0.35質量%」であるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。
B 判断
上記相違点2-1について検討する。
甲第2号証には、乳化油に用いられる増粘多糖類として、「ペクチン、アラビアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、タマリンドシードガム、サイリュームシードガム、タラガム、ファーセレラン、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、このうちの1種または2種以上を適宜選択することができるが、時間が経過しても粘度が低下しないもの(例えばローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム)が好ましい。」(【0013】)との記載はあるものの、具体的に検討されているのは「グアーガム」及び「ローカストビーンガム」(実施例1ないし7)にとどまる。
つまり、甲第2号証において「アラビアガム」は多数の選択肢の一つとしてあげられているにとどまるものであって、かつ、好ましいものの例示にも含まれないものであることからすると、甲第2号証において「アラビアガム」を用いた発明が実質的に開示されていたとまではいえない。
してみると、相違点2-1は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明ではない。
また、甲2発明は、「マイクロウェーブ(電子レンジ)で解凍・調理(加熱)した際に、焼けこげが生じたり、麺の外周部が乾燥したり、麺がガミー状になることがなく、食感に優れた麺類が得られ、且つ麺どうしのほぐれもよく、また解凍後のハンドリングの手間がかからず、しかも解凍時間も短い、冷凍麺類の製造方法を提供すること」(【0005】)を目的とするものであり、具体的には温度ムラ、ガミー状態、ほぐれについての評価がなされている(実施例)ものである。
これに対し、本件特許発明1は、処理液に「アラビアガム」を含有させることで、「冷凍焼けが生じにくく、また、高出力電子レンジを用いて加熱を行っても焦げが生じにくい冷凍麺類を提供する」(【0006】)との、甲第2号証及び他の全ての証拠の記載からみて格別の効果を奏するものである。
したがって、甲2発明において、相違点2-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
C 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は特許異議申立書において、「本件特許発明1が有する「加熱しても焦げが生じにくい」効果も、甲第2号証に開示されている発明が有する「マイクロウェーブ(電子レンジ)で解凍・調理した際に、焼きこげが生じにくい」効果と同一である」(第15頁)とし、本件特許発明1は、甲2発明であるか、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、上記Bの検討のとおり、本件特許発明1は、アラビアガムを特定の割合で含有する処理液を付着させることで、「冷凍焼けが生じにくく、また、高出力電子レンジを用いて加熱を行っても焦げが生じにくい冷凍麺類を提供する」との格別の効果を奏するものであるから、「加熱しても焦げが生じにくい」との点にのみ着目した特許異議申立人の当該主張は採用することができない。
(イ) 本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1は、上記(ア)のとおり、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の全ての特定事項を有する本件特許発明3ないし5もまた、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-2及び申立理由2-2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-2及び申立理由2-2は、その理由がない。
(2) 申立理由1-6及び申立理由2-6(甲第6号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第6号証の記載事項等
(ア) 甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、「冷凍食品の製造方法」に関し、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、冷凍焼けの生じにくい冷凍食品の提供に関する。」
「[0007] 本発明は、冷凍食品の冷凍保存中に発生する冷凍焼けを防止することができる冷凍焼け防止剤、及び当該冷凍焼け防止剤を用いた冷凍焼けの生じにくい冷凍食品の製造方法を提供する。」
「[0008] 本発明者は、上記課題を解決すべく、種々研究を重ねた結果、冷凍前の食品に、イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせ、水、増粘剤、及び油脂を少なくとも含有する組成物を付着させ、次いでこれを凍結して製造された冷凍食品が、冷凍耐性が高く冷凍で長期保存しても冷凍焼けが生じにくいことを見出した。」
「[0012] 本発明によれば、冷凍食品の冷凍保存中における冷凍焼けを防止することができるため、冷凍焼けのない高品質の冷凍食品を提供することができる。」
「[0015] 本明細書において「調理済み食品」とは、茹で、蒸し、揚げ、煮る、焼く、マイクロ波加熱等の任意の調理法で加熱調理した食品をいう。「調理済み食品」の種類は特に限定されないが、好ましくは、アルファ化した澱粉を多く含みかつ水分の比較的多い調理済み食品、例えば、加熱調理済みの穀類やその加工物であり、より好ましくは加熱調理済みの米や麺類が挙げられる。調理済みの米としては、例えば米飯、炊き込みご飯、おこわ、チャーハン、ピラフ、ドリア、リゾット、餅、団子などが挙げられるが、これらに限定されない。調理済み麺類のための「麺類」としては、例えばパスタ、ピザ、うどん、平めん、日本蕎麦、素麺、冷麦、中華麺、麺皮類(例えば、餃子、焼売、春巻き、ワンタン、包子、饅頭等の皮)、ビーフンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
[0016] より好ましくは、「冷凍食品」は、冷凍調理済みパスタである。調理済みパスタは、パスタを茹で、蒸し、マイクロ波加熱等の手段で喫食可能な程度に加熱調理することにより製造することができる。当該パスタの種類は特に制限されないが、小麦粉を含む粉原料から得られた生地から公知の手段で製造したパスタであればよい。小麦粉としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉(デュラムセモリナを含む)、及びそれらの混合物が挙げられる。当該粉原料は、小麦粉以外の穀粉や、澱粉又は加工澱粉をさらに含有していてもよい。本発明で使用される調理済みパスタは、生パスタの調理物であっても、半乾燥パスタや乾燥パスタの調理物であってもよい。」
「[0023] 本発明において、上記組成物中に含まれる増粘剤としては、通常食品に使用されている増粘剤であればよく、例えば、キサンタンガム、タマリンドガム、グアガム、カードラン、カラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、グルコマンナン、プルラン、ヒアルロン酸、ペクチン酸、アルギン酸、セルロース、メチルセルロース等の増粘多糖類;コラーゲン、アルブミン、ゼラチン及びカゼイン等のタンパク質などが挙げられるが、増粘多糖類が好ましく、このうち、キサンタンガム、タマリンドガム、グアガム及びカラギーナンがより好ましい。これらの増粘剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。」
「[0036] 試験例1
(冷凍焼け防止用コーティング液の調製)
イヌリンを水(20℃)に溶解させ、次いでこれに油脂(大豆油)と増粘剤(キサンタンガム)を加えて混合することにより、冷凍焼け防止用コーティング液を調製した。該コーティング液中、イヌリンの量は、0、1、2、5、10、15、18、19又は20質量%であり、かつ油脂の量は0、5、10、25、50、75、90、95、又は100質量%であり、残部は水と増粘剤であった。キサンタンガムは、組成物全量中0.005~0.4質量%になる範囲で、組成物が乳化する量を添加した。
[0037](冷凍調理済みスパゲッティの製造)
市販の乾燥スパゲッティ(セレクト1.7、マ・マーマカロニ株式会社製)を歩留まり220~235%内になるように茹でた後、冷水で冷却し、ざるに入れて水分を十分に切った。得られた調理済みスパゲッティ200gに上記冷凍焼け防止用コーティング液のいずれか20gを噴霧し、該コーティング液の全量をスパゲッティ表面に付着させた。コーティング液を付着させたスパゲッティをトレーに充填し、-20℃で急速冷凍し、冷凍スパゲッティを得た。
冷凍スパゲッティの入ったトレーを密閉し、-20℃に設定した冷凍庫内で-5℃に設定したヒートシート上において保管した。24時間後、冷凍スパゲティをマイクロ波加熱解凍し、冷凍焼けの状態(麺の白色化)を下記評価基準に基づいて評価し、10個のサンプルの平均値を求めた。
〔冷凍焼けの評価基準〕
5 麺表面の白色化した部分が5%未満である。
4 麺表面の白色化した部分が5%~10%未満である。
3 麺表面の白色化した部分が10%~20%未満である。
2 麺表面の白色化した部分が20%~50%未満である。
1 麺表面の白色化した部分が50%以上である。」
「[請求項1] 冷凍食品の製造方法であって、
調理済み食品に、イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせ、水、増粘剤、及び油脂を含有する組成物を付着させることと、該組成物を付着させた食品を冷凍することとを含み、
該組成物は、イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせ1~19質量%と、油脂95~5質量%と、増粘剤0.005~0.4質量%とを含有し、
該組成物中における該イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせ、該水及び該増粘剤の合計量中の該イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせの量が20質量%以下である、
方法。」
(イ) 甲第6号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に請求項1の記載を中心に整理すると、甲第6号証には次の発明が記載されているものと認める。
「冷凍食品の製造方法であって、
調理済み食品に、イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせ、水、増粘剤、及び油脂を含有する組成物を付着させることと、該組成物を付着させた食品を冷凍することとを含み、
該組成物は、イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせ1~19質量%と、油脂95~5質量%と、増粘剤0.005~0.4質量%とを含有し、
該組成物中における該イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせ、該水及び該増粘剤の合計量中の該イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせの量が20質量%以下である、
方法。」(以下、「甲6発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
A 対比
本件特許発明1と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「調理済み食品」は、本件特許発明1の「調理済み麺類」との特定事項のうち、「調理済み食品」である限りにおいて一致する。
また、甲6発明の「イヌリン若しくはDE値4~9のデキストリン又はそれらの組み合わせ、水、増粘剤、及び油脂を含有する組成物」は、本件特許発明1の「処理液」に相当する。
さらに、甲6発明の「該組成物を付着させた食品を冷凍すること」は、本件特許発明1の「該処理液が付着した麺類を冷凍する工程とを有する」との特定事項のうち、「該処理液が付着した食品を冷凍する工程とを有する」である限りにおいて一致する。
してみると、両者は、
「調理済み食品の表面に、処理液を付着させる工程と、該処理液が付着した食品を冷凍する工程とを有する、冷凍食品の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。
・相違点6-1
本件特許発明1が「調理済み麺類」と特定されるのに対し、甲6発明は「調理済み食品」である点。
・相違点6-2
処理液に関し、本件特許発明1は「アラビアガムを含有する」と特定されるのに対し、甲6発明にはそのような特定はない点
・相違点6-3
アラビアガムを含有する処理液におけるアラビアガムの含有量について、本件特許発明1は「0.04~0.35質量%」であるのに対し、甲6発明にはそのような特定がない点。
B 判断
事案に鑑み、上記相違点6-2について検討する。
甲第6号証には、「組成物中に含まれる増粘剤としては、通常食品に使用されている増粘剤であればよく、例えば、キサンタンガム、タマリンドガム、グアガム、カードラン、カラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、グルコマンナン、プルラン、ヒアルロン酸、ペクチン酸、アルギン酸、セルロース、メチルセルロース等の増粘多糖類;コラーゲン、アルブミン、ゼラチン及びカゼイン等のタンパク質などが挙げられるが、増粘多糖類が好ましく、このうち、キサンタンガム、タマリンドガム、グアガム及びカラギーナンがより好ましい。」([0023])との記載はあるものの、具体的に検討されているのは「キサンタンガム」(実施例)にとどまる。
つまり、甲第6号証において「アラビアガム」は多数の選択肢の一つとしてあげられているにとどまるものであって、かつ、好ましいものの例示にも含まれないものであることからすると、甲第6号証において「アラビアガム」を用いた発明が実質的に開示されていたとまではいえない。
してみると、相違点6-2は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲6発明ではない。
また、甲6発明は、「冷凍食品の冷凍保存中に発生する冷凍焼けを防止することができる冷凍焼け防止剤、及び当該冷凍焼け防止剤を用いた冷凍焼けの生じにくい冷凍食品の製造方法を提供する」([0007])ことを目的とするものであり、実施例においても冷凍焼けについての評価がなされているにすぎない。
これに対し、本件特許発明1は、処理液に「アラビアガム」を含有させることで、「冷凍焼けが生じにくく、また、高出力電子レンジを用いて加熱を行っても焦げが生じにくい冷凍麺類を提供する」(【0006】)との、甲第6号証及び他の全ての証拠の記載からみて格別の効果を奏するものである。
したがって、甲6発明において、相違点6-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
C 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は特許異議申立書において、「本件特許発明1が有する「冷凍焼け防止」効果も、甲第6号証に開示されている発明が有する効果と同一である」(第18頁)とし、本件特許発明1は、甲6発明であるか、甲6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、上記Bの検討のとおり、本件特許発明1は、アラビアガムを特定の割合で含有する処理液を付着させることで、「冷凍焼けが生じにくく、また、高出力電子レンジを用いて加熱を行っても焦げが生じにくい冷凍麺類を提供する」との格別の効果を奏するものであるから、「冷凍焼け防止」との点にのみ着目した特許異議申立人の当該主張は採用することができない。
(イ) 本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1は、上記(ア)のとおり、甲6発明ではなく、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の全ての特定事項を有する本件特許発明4もまた、甲6発明ではなく、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-6及び申立理由2-6についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-6及び申立理由2-6は、その理由がない。
(3) 申立理由3(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 特許請求の範囲の記載
上記第3に記載のとおりである。
ウ サポート要件についての判断
本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「冷凍焼けが生じにくく、また、高出力電子レンジを用いて加熱を行っても焦げが生じにくい冷凍麺類を提供すること」(【0006】)である。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明は、調理済み麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程と、該処理液が付着した麺類を冷凍する工程とを有する、冷凍麺類の製造方法である」(【0007】)こと、「本発明で用いる調理済み麺類は、麺類を加熱調理したα化麺類である」(【0009】)こと、「前記処理液付着工程では、調理済み麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる。これにより本発明の所定の効果(冷凍焼け防止効果、電子レンジ加熱時の焦げ防止効果等)が奏され得る」(【0014】)こと、「前記処理液付着工程において、調理済み麺類の表面に処理液を付着させる方法は特に制限されず、例えば、調理済み麺類に対して処理液を噴霧する方法、処理液中に調理済み麺類を浸漬させる方法が挙げられる」(【0021】)こと、「前記冷凍工程では、前記処理液付着工程を経た調理済み麺類を冷凍する。調理済み麺類の冷凍方法は特に制限されず、麺類に対して通常行われる冷凍方法を採用することができ、例えば、急速冷凍、緩慢冷凍が挙げられる」(【0022】)ことが記載され、これらのことを裏付ける具体的な実施例の記載もある。
してみると、当業者であれば、「調理済み麺類の表面に、アラビアガムを含有する処理液を付着させる工程と、該処理液が付着した麺類を冷凍する工程とを有する、冷凍麺類の製造方法」との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できるものと認識できる。
そして、本件特許発明1及び3ないし5はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明1及び3ないし5はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は特許異議申立書において、上記第4 13(1)ないし(4)の点について、さらに、意見書において処理液の溶媒及び加熱条件の点について主張する。
しかしながら、本件特許発明は、他の条件が同じであればアラビアガムを含有する処理液を付着させることで、冷凍焼け防止効果、電子レンジ加熱時の焦げ防止効果を発現するものである、すなわち、発明の課題を解決できると当業者は認識できるものであるから、何れの主張も採用することができない。
オ 申立理由3についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由3は、その理由がない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700122