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特許異議申立

2024-700125

調理済み冷凍麺類の製造方法

審判番号
2024-700125
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-123361
登録番号
7325586
請求日
2024年02月14日
審決日
2024年05月16日
公報発行日
2024年06月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社日清製粉ウェルナ
  • 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
  • 【異議申立人】田村 良介
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 磯貝 香苗
  • 審判官 天野 宏樹
分類
P1651.121-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第4号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7325586号発明「調理済み冷凍麺類の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7325586号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7325586号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、 2018年(平成30年) 9月 4日(優先権主張 平成29年 9月 7日)を国際出願日とする特願2019-540964号の一部を新たな特許出願として、 令和 4年 8月 2日に出願した特願2022-123361号に係るものであって、 令和 5年 8月 3日に特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、 令和 5年 8月14日に特許掲載公報が発行され、 その後、当該特許に対し、 令和 6年 2月14日に特許異議申立人 田村 良介(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 難消化性澱粉類を含有する麺類を加熱調理し、その調理済み麺類を冷凍する工程を有する、調理済み冷凍麺類の製造方法であって、 前記冷凍に先立ち、前記調理済み麺類の表面に、油脂及び油脂組成物からなる群から選択される1種以上の油剤を付着させる、調理済み冷凍麺類の製造方法であり、 前記調理済み麺類における前記油剤の付着量が、該調理済み麺類の1質量%以上であり、 前記油脂組成物が、油脂を20質量%以上含有し、 前記麺類が、粉体原料と水との混合物であり、該粉体原料に前記難消化性澱粉類が5~50質量%含まれる、方法。 【請求項2】 前記粉体原料に、前記難消化性澱粉類が20~40質量%含まれる、請求項1に記載の調理済み冷凍麺類の製造方法。 【請求項3】 前記油脂組成物が、乳化物である、請求項1又は2に記載の調理済み冷凍麺類の製造方法。 【請求項4】 前記油脂組成物が、増粘多糖類を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の調理済み冷凍麺類の製造方法。 【請求項5】 前記加熱調理が、茹で調理及び蒸し調理の少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の調理済み冷凍麺類の製造方法。 【請求項6】 難消化性澱粉類を含有する麺類を加熱調理し、その調理済み麺類を冷凍する工程を有し、 前記冷凍に先立ち、前記調理済麺類の表面に、油脂及び油脂組成物からなる群から選択される1種以上の油剤を付着させる、難消化性澱粉類を含有する調理済み冷凍麺類の食感改善方法。 第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要 令和 6年 2月14日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 具体的理由はおおむね次のとおりである。 ・請求項1では、油脂組成物について「油脂を20質量%以上含有する」ことのみ特定され、その他の成分や組成物の状態については何ら特定されていないため、本件特許発明1には、油脂を20質量%以上含有するありとあらゆる組成物が含まれる。しかし、本件特許明細書には、油脂を20質量%以上含有するありとあらゆる組成物において同等の作用効果を奏することを示す理論上ないし実験上の根拠は示されていないから、本件特許発明1の範囲まで、本件特許の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。したがって、本件特許発明1は、本件特許の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。請求項1を引用する本件特許発明2ないし5も同様である。 ・請求項6には、冷凍に先立ち、調理済麺類の表面に、油脂及び油脂組成物からなる群から選択される1種以上の油剤を付着させる点のみ記載され、油剤の付着量や油脂組成物を構成する成分組成は何ら特定されていない。すなわち、本件特許発明6は、油剤の付着量が極めて少ない場合や油脂組成物中の油剤量が極めて少ない場合も含む。しかし、本件特許明細書には、そのような場合にも、食感改善効果が得られることは示されておらず、また、油剤の付着量が少なければその作用効果が低下することは出願時の技術常識である。このように、本件特許発明6は課題を解決できない範囲を含んでいるから、本件特許発明6は本件特許の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。 3 申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由はおおむね次のとおりである。 ・上記2のような本件特許の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1ないし6を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 4 証拠方法 甲第1号証:特開2016-2000号公報 甲第2号証:特開2017-51163号公報 甲第3号証:特開平3-175942号公報 甲第4号証:国際公開第2016/031525号 甲第5号証:特開2007-174920号公報 甲第6号証:国際公開第2013/172118号 甲第7号証:特開2016-2024号公報 甲第8号証:特開2000-32938号公報 証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。 以下、順に「甲1」等という。 第4 当審による判断 当審は以下に述べるように申立理由1ないし3によっては本件特許を取り消すことはできないと判断する。 1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について (1)主な証拠に記載された事項 ア 甲1に記載された事項等 甲1には、「低糖質麺及びその調製に使用するミックス粉」に関し、次の事項が記載されている。 「【請求項6】 下記(A)及び(B)の工程を有する低糖質麺の製造方法: (A):難消化性でん粉、小麦たん白、及び増粘多糖類を含有する粉を水と混練りし、ドウを調製する工程、 (B):(A)工程で調製したドウを麺状に成形して生麺を調製する工程。 【請求項7】 さらに(C)の工程、または(C)及び(D)の工程を有する、請求項6に記載する製造方法: (C):(B)工程で調製した生麺を水存在下で加熱処理する工程、 (D):(C)工程で加熱処理した麺を凍結処理する工程。」 「【0011】 (III)低糖質麺の製造方法 (III-1)下記(A)及び(B)の工程を有する低糖質麺の製造方法: (A):難消化性でん粉、小麦たん白、及び増粘多糖類を含有する粉を水と混練りし、ドウを調製する工程、 (B):(Aa)工程で調製したドウを麺状に成形して生麺を調製する工程。 (III-2)さらに(C)の工程、または(C)及び(D)の工程を有する、(III-1)に記載する製造方法: (C):(B)工程で調製した生麺を水存在下で加熱処理する工程、 (D):(C)工程で加熱処理した麺を凍結処理する工程。」 「【0020】 本発明の低糖質麺用ミックス粉に含まれる難消化性でん粉の割合は、特に制限されないものの、1~50重量%の範囲で設定することができる。好ましくは5~42重量%、より好ましくは10~40重量%、さらに好ましくは20~30重量%である。なお、低糖質麺用ミックス粉に配合される基本原料(a)~(c)の総量を100重量%にした場合において、これら3成分中の(a)難消化性でん粉の割合としては、1~90重量%を挙げることができる。好ましくは5~90重量%、より好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは25~89重量%である。」 「【0056】 当該製麺工程には、下記(A)及び(B)の工程が含まれる: (A):難消化性でん粉、小麦たん白、及び増粘多糖類を含有する粉を水と混練りし、ドウを調製する工程、 (B):(A)工程で調製したドウを麺状に成形して生麺を調製する工程。」 「【0058】 上記(A)及び(B)工程により生麺が製造されるが、当該生麺はさらに下記の(C)工程に供することで茹麺若しくは蒸麺に、または(C)及び(D)工程に供することで冷凍麺に調製することができる。 (C):(B)工程で調製した生麺を水存在下で加熱処理する工程(茹・蒸工程)、 (D):(C)工程で加熱処理した麺を冷凍処理する工程(冷凍工程)。 【0059】 以下これらの工程について説明する。 【0060】 (A)工程:混捏工程 混捏工程は、麺用原料(主原料、副原料)を、水(以下、「捏水」という)と混ぜ合わせ、捏ねる工程である。麺用原料には、(I)で説明する基本原料(a)~(c)、及び必要に応じてさらに(c)~(f)からなる群から選択される少なくとも1種(以上、主原料)の他、(g)副原料が含まれる。」 「【0073】 低糖質麺のうち、蒸し麺は、上記(B)工程で製造された生麺を、蒸し機を用いて95~100℃程度の蒸気で蒸す(蒸熱)ことによって製造することができる(蒸し工程)、蒸し工程で蒸し上げられた低糖質麺は、水洗冷却後、または温かいままで蒸し麺として直接消費者に供されるか、または水洗冷却後、包装されて、蒸し麺製品として市場に提供される。蒸し時間は、麺中の澱粉がα化する時間であればよく制限されないが、通常100℃の蒸気で1~5分程度を挙げることができる。」 「【0075】 当該、茹で工程又は蒸し工程で加熱処理された低糖質麺(茹で麺、蒸し麺)は、所望に応じて、下記(D)の凍結工程に供することもできる。 【0076】 (D)凍結工程 凍結工程は、上記の(C)工程で製造される茹で麺または蒸し麺を、冷却後、凍結し、冷凍麺を製造する工程である。通常、当該凍結工程は、(C)工程で製造される茹で麺または蒸し麺を、1食または数食ごとに個別包装した後に供される。凍結処理には、急速凍結と緩慢凍結とがあるが、低糖質麺の品質を維持するうえで、急速凍結を採用することが好ましい。急速凍結方法としては、制限されることなく当業界で使用される方法が広く利用できるが、例えばセルアライブシステム凍結(CAS凍結)、及びプロトン凍結等を挙げることができる。」 「【0080】 実験例1 (1)低糖質麺(低糖質うどん風麺)の調製 表1に記載する各成分を使用して低糖質麺(低糖質うどん風麺)を調製した(実施例1~14)。また、比較対照のため、低糖質麺用ミックス粉に代えて小麦粉(中力粉)100%からなる通常麺(通常うどん)(対照例1)を調製した。 【0081】 具体的には、低糖質うどん風麺の調製については、まず、小麦粉、増粘多糖類、難消化性澱粉、小麦たん白、セルロース、小麦ファイバー、卵白粉末、及び加工澱粉を、表1に記載する割合で混合して、低糖質麺用ミックス粉を調製した。調製した低糖質麺用ミックス粉100重量部に対して、食塩の量が2重量部、水の量が110~246重量部となるように食塩を入れた常温水(25±5℃)(練り水)を加えて、パン用縦型ミキサーにて5分間混合(ミキシング)した後(混捏工程)、シート状の麺帯に成形し(麺帯形成工程)、これを圧力をかけながら3.5mm程度の厚さになるように薄く延伸し(圧延工程)、次いでこれをJISの規定に基づいて#8番手の太さになるように切断し、麺線(生麺)を作製した(麺線切り出し工程)。 【0082】 一方、対照例1のうどん(通常うどん)については、小麦粉(中力粉)100重量部に対して、2重量部の食塩と47重量部の水で作製した練り水(常温:25±5℃)を加えて、パン用縦型ミキサーにて5分間混合(ミキシング)した後(混捏工程)、低糖質うどんと同様に、麺帯形成工程、圧延工程、及び麺線切り出し工程に供し、麺線(生麺)を作製した。 【0083】 次いで、これらの麺線(生麺)を、それぞれ95~100℃の熱湯にて8分間茹で、茹でた後、水あらい(水浸漬)(15℃)、及び冷水浸漬(5℃)した後に、-35℃で急速凍結して、冷凍茹で麺を調製した。 【0084】 表1に、ミックス粉中の糖質含量、冷凍茹で麺中の糖質含量、及び冷凍茹で麺中の含水量を記載する。 【0085】 なお、ミックス粉中の糖質含量は、原料メーカーから供給された規格書に基づいて計算により算出し、それに基づいて冷凍茹で麺中の糖質含量も算出した。また冷凍茹で麺中の含水量は、当該冷凍茹で麺の重量からその調製に使用したミックス粉の重量を差し引くことで算出した。 【0086】 【表1】 [図:0001411362000001.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 上記アより、甲1の実施例1~14を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「下記(A)ないし(D)の工程を有する低糖質麺の製造方法であって、 (A):難消化性でん粉、小麦たん白、及び増粘多糖類を含有する粉と水と混練りし、ドウを調製する工程、 (B):(A)工程で調製したドウを麺状に成形して生麺を調整する工程、 (C):(B)工程で調製した生麺を水存在下で加熱処理する工程、 (D):(C)工程で加熱調理した麺を凍結処理する工程、 低糖質麺用ミックス粉に含まれる難消化性でん粉の割合が、5~42.0重量%である製造方法。」 (2)検討 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「難消化性でん粉、小麦たん白、及び増粘多糖類を含有する粉」から製造された「低糖質麺」は、本件特許発明1における「難消化性澱粉類を含有する麺類」に相当する。 甲1発明における「(C):(B)工程で調製した生麺を水存在下で加熱処理する工程」、「(D):(C)工程で加熱調理した麺を凍結処理する工程」を有する「低糖質麺の製造方法」は、本件特許発明1における「麺類を加熱調理し、その調理済み麺類を冷凍する工程を有する、調理済み冷凍麺類の製造方法」に相当する。 甲1発明における「(A):難消化性でん粉、小麦たん白、及び増粘多糖類を含有する粉と水と混練りし、ドウを調製する工程」で使用される「低糖質麺用ミックス粉に含まれる難消化性でん粉の割合が、5~42.0重量%」である構成は、本件特許発明1における「麺類が、粉体原料と水との混合物であり、該粉体原料に前記難消化性澱粉類が5~50質量%含まれる」との特定事項を満たす。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「難消化性澱粉類を含有する麺類を加熱調理し、その調理済み麺類を冷凍する工程を有する、調理済み冷凍麺類の製造方法であって、前記麺類が、粉体原料と水との混合物であり、該粉体原料に前記難消化性澱粉類が5~50質量%含まれる、方法。」 <相違点1> 本件特許発明1は、「前記冷凍に先立ち、前記調理済み麺類の表面に、油脂及び油脂組成物からなる群から選択される1種以上の油剤を付着させ」「前記調理済み麺類における前記油剤の付着量が、該調理済み麺類の1質量%以上であり」「前記油脂組成物が、油脂を20質量%以上含有」するとの特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。 相違点1について検討する。 甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明の難消化性澱粉類を含有する調理済み冷凍麺の製造方法において、相違点1に係る、「前記冷凍に先立ち、前記調理済み麺類の表面に、油脂及び油脂組成物からなる群から選択される1種以上の油剤を付着させ」る動機となる記載はない。 そして、本件特許発明1は、難消化性澱粉類を含有し低糖質でありながらも、難消化性澱粉類を含有する麺類に特有のざらついた食感が抑制された調理済み冷凍麺類を得られるという顕著な効果を奏するものである。 特許異議申立人は、特許異議申立書(第25頁第1行~第28頁末行)において、 ・「甲1発明と、甲第2号証、甲第3号証及び甲第8号証に記載の発明は、いずれも冷凍麺の製造方法に関する技術であるから、これらを組み合わせることには動機付けがある。」 ・「本件特許発明1の効果は、「難消化性澱粉類を含有し低糖質でありながらも、難消化性澱粉類を含有する麺類に特有のざらついた食感が抑制された調理済み冷凍麺類が得られる」であるが、構成が同じであれば当然に同じ効果が得られるから、結着防止、乾燥防止及びレンジ焼け防止等の食感改善以外の目的でなされた場合であっても、甲1発明に、甲第2号証、甲第3号証及び甲第8号証に記載の技術事項を適用すれば、「難消化性澱粉類を含有する麺類に特有のざらついた食感を抑制する」効果が得られる。」 ・「「(キ)作用効果について」にも記載しているように、甲第8号証には、「調理済み麺に油脂を付着させることで麺に油脂特有のなめらかさを付与できる」ことが記載されており、その油脂の付着により得られる油脂特有のなめらかさによって、難消化性澱粉類を含有する麺類に特有のざらついた食感を抑制できる点は、当業者であれば当然容易に想到しうることであるから、本件特許発明1の効果も当業者の予測の範囲である。」 ・「甲1発明と、甲第4号証乃至甲第8号証に記載の発明は、いずれも冷凍麺の製造方法に関する技術であるから、これらを組み合わせることには動機付けがある。」 ・「更に、構成が同じであれば当然に同じ効果が得られるから、例え冷凍焼け防止等の目的であっても、甲1発明と、甲第4号証乃至甲第8号証に記載の技術事項を組み合わせれば、「難消化性澱粉類を含有する麺類に特有のざらついた食感を抑制する」効果が得られる。」 と主張している。 しかしながら、甲1ないし甲8を参酌しても、甲1発明の難消化性澱粉類を含有する調理済み冷凍麺の製造方法において、冷凍に先立ち、調理済み麺類の表面に、油脂及び油脂組成物からなる群から選択される1種以上の油剤を付着させる動機となる記載はない。 そして、甲1ないし甲8、及び、技術常識を参酌しても、難消化性澱粉類を含有する麺類に特有のざらついた食感が抑制されるという効果は、当業者の予測を超えるものである。 よって、本件特許発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 よって、本件特許発明2ないし5は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明6について 甲1の記載事項は、上記(1)アのとおりであるところ、甲1の記載からは、「難消化性澱粉類を含有する調理済み冷凍麺類の食感改善方法」に対応する発明を認定することができない。 よって、本件特許発明6は甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立理由1のまとめ 上記のとおり、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。 よって、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、申立理由1によって取り消すことはできない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。 (3)サポート要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0007】「本発明の課題は、難消化性澱粉類を含有し低糖質でありながらも、難消化性澱粉類を含有する麺類に特有のざらついた食感が抑制された調理済み麺類を製造し得る、調理済み麺類の製造方法を提供することである。」との記載によると、本件特許発明1ないし5の解決しようとする課題(以下、「発明の課題1」という。)は、難消化性澱粉類を含有する麺類に特有のざらついた食感が抑制された調理済み麺類を製造し得る、調理済み麺類の製造方法を提供することであり、本件特許発明6の解決しようとする課題(以下、「発明の課題2」という。)は、難消化性澱粉類を含有する麺類に特有のざらついた食感を抑制し食感を改善することである。 本件特許の発明の詳細な説明の【0010】には調理済み冷凍麺類の製造方法は、麺類を加熱調理する加熱工程と、該加熱工程によって得られた調理済み麺類を冷凍する冷凍工程とを有することが記載され、【0011】には加熱調理に供される麺類の種類について、【0012】には加熱工程で加熱調理に供される麺類が粉体原料を用いて製造されることについて、【0013】には粉体原料に含まれる穀粉類について、【0014】には粉体原料に含まれる難消化性澱粉類について、【0015】には難消化性デキストリン及び還元難消化性デキストリンについて、【0016】ないし【0017】には難消化性澱粉類の含有量について、【0019】には加熱工程について、【0020】には冷凍工程について記載されている。そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0021】ないし【0022】には冷凍に先立ち、加熱工程で得られた調理済み麺類(α化麺類)の表面に、油脂及び油脂組成物からなる群から選択される1種以上の油剤を付着させる工程について、【0023】ないし【0028】には用いる油剤及び油脂組成物について、【0029】には油剤を付着させる方法について、【0030】には油剤の付着量について記載されている。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0031】ないし【0040】には、難消化性澱粉を含有する麺類を加熱調理し、その調理済み麺類を冷凍する前に、調理済み麺類の表面に、油脂又は油脂組成物からなる油剤を付着させ、その後冷凍して、冷凍麺類とすることにより、食感(ざらつきの少なさ)が改善されることが記載されている。 そうすると、当業者は、難消化性澱粉類を含有する麺類を加熱調理し、その調理済み麺類を冷凍する工程を有する、調理済み冷凍麺類の製造方法であって、前記冷凍に先立ち、前記調理済み麺類の表面に、油脂及び油脂組成物からなる群から選択される1種以上の油剤を付着させる、調理済み冷凍麺類の製造方法により、発明の課題1を解決することができると認識でき、また、難消化性澱粉類を含有する麺類を加熱調理し、その調理済み麺類を冷凍する工程を有し、前記冷凍に先立ち、前記調理済み麺類の表面に、油脂及び油脂組成物からなる群から選択される1種以上の油剤を付着させることにより、発明の課題2を解決することができると認識できる。 そして、本件特許発明1ないし6は、上記発明の課題を解決することができる特定事項を全て含み、これをさらに限定するものであるから、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。 (4)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の第3 2における主張について検討する。 特許異議申立人の油脂組成物に関する主張については、油脂組成物について何らかの特定がないと発明の課題を解決することができないとする具体的証拠や根拠を提示するものではなく、また、そのような技術常識が存在するものでもない。 また、特許異議申立人の油剤の付着量等に関する主張については、油剤の付着量が少なくても、油剤を付着しないものや、付着させる組成物中に油剤がないものに比べ、食感のざらつきを改善することができ、発明の課題を解決することができると当業者は理解する。 よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。 3 申立理由3(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 上記第2のとおり、本件特許発明1ないし5は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。 また、上記第2のとおり、本件特許発明6は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2)実施可能要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の記載には、本件特許発明1ないし6の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例においてもその製造方法を含め具体的に記載されている。 したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし5を使用し、本件特許発明1ないし5により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえ、さらに、本件特許発明6の使用をすることができる程度の記載があるといえる。 よって、本件特許発明1ないし6に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第3 3の主張について検討する。 実施可能要件を充足するかどうかの判断は、上記(1)の判断基準により行うものであり、特許異議申立人の主張は、実施可能要件の充足性の判断とは関係がない。 よって、上記第3 3の主張は採用し得ない。 (4)取消理由3についてのまとめ 上記のとおり、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当しない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700125

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