特許異議申立
2023-701193
航空機、その制御方法、プログラム及び記憶媒体
- 審判番号
- 2023-701193
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-118668
- 登録番号
- 7277695
- 請求日
- 2023年11月10日
- 審決日
- 2024年02月27日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】キヤノンマーケティングジャパン株式会社
- 【権利者代理人】木村 友輔
- 【異議申立人】藤松 正雄
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 北中 忠
- 審判官 久島 弘太郎
- 分類
- P1652.121-Y (G05D) / P1652.113-Y (G05D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7277695号発明「航空機、その制御方法、プログラム及び記憶媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7277695号の請求項1~10、18~24、26、27に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7277695号の請求項1~27に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」等という。)についての出願は、平成30年6月22日に出願され、令和5年5月11日にその特許権の設定登録がされ、同年5月19日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許1~10、18~24、26、27に対し、同年11月10日に特許異議申立人藤松正雄(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7277695号の請求項1~10、18~24、26、27に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10、18~24、26、27に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
人が搭乗していない航空機であって、
回転翼と、
前記回転翼と外部物体との接触を抑制する保護手段と、
前記保護手段のうち、前記回転翼のある側を内側とした場合の外側に配置された近接検知手段であって、第1の方向における近接と、前記第1の方向と異なる第2の方向における近接とを検知可能な近接検知手段と、
前記近接検知手段で対象物が近接したことを検知したことに応じて、前記対象物から離れる方向に前記航空機が移動する第1の飛行動作を行うように制御する制御手段と
を有し、
前記制御手段は、
前記近接検知手段で検出された対象物の近接態様に応じて異なる飛行動作を行うように制御し、
前記第2の方向からの近接を検知することなく前記第1の方向から対象物が近接したことに応じて前記第1の方向と逆側に移動するように制御し、
前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、前記近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する
ことを特徴とする航空機。
【請求項2】
人が搭乗していない航空機であって、
回転翼と、
前記回転翼と外部物体との接触を抑制する保護手段と、
前記回転翼のある側を前記保護手段より内側とした場合の、前記保護手段より外側に配置された近接検知手段であって、第1の方向における近接と、前記第1の方向と異なる第2の方向における近接とを検知可能な近接検知手段と、
前記近接検知手段で対象物が近接したことを検知したことに応じて、前記対象物から離れる方向に前記航空機が移動する第1の飛行動作を行うように制御する制御手段と
を有し、
前記制御手段は、
前記近接検知手段で検出された対象物の近接態様に応じて異なる飛行動作を行うように制御し、
前記第2の方向からの近接を検知することなく前記第1の方向から対象物が近接したことに応じて前記第1の方向と逆側に移動するように制御し、
前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、前記近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する
ことを特徴とする航空機。
【請求項3】
複数の回転翼を有し、
前記保護手段は、前記複数の回転翼を内包する部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の航空機。
【請求項4】
複数の回転翼を有し、
前記保護手段は複数の保護部材を含み、
前記複数の保護部材は、前記複数の回転翼のそれぞれに対して設けられた部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の航空機。
【請求項5】
前記近接検知手段は、水平方向における対象物の近接を検知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項6】
前記近接検知手段は、第1の方向側に設置された第1のセンサと、前記第1の方向と逆の第2の方向側に設置された第2のセンサを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項7】
人が搭乗していない航空機であって、
回転翼と、
第1の方向における近接と、前記第1の方向と異なる第2の方向における近接とを検知可能な近接検知手段と、
前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、前記近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する制御手段と
を有することを特徴とする航空機。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の飛行状態と異なる第2の飛行状態である場合に前記第1の近接態様が検知されたことに応じて、前記第1の飛行状態に変更するように制御することを特徴とする請求項7に記載の航空機。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記第1の飛行状態においては、前記近接検知手段で対象物の特定の近接態様を検知したことに応じて、前記航空機が移動する第1の飛行動作を行うように飛行を制御し、
前記第2の飛行状態においては、前記近接検知手段で対象物の前記特定の近接態様を検知したことに応じた前記第1の飛行動作は行わないように制御することを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項10】
前記特定の近接態様は、前記第2の方向からの近接を検知することなく前記第1の方向から対象物が近接する近接態様であり、
前記第1の飛行動作は、前記航空機が前記第1の方向と逆側に移動する動作であることを特徴とする請求項9に記載の航空機。」
「【請求項18】
前記対象物はユーザの手を含むことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項19】
前記近接検知手段は、静電容量型の近接センサ、赤外光型のセンサ、高周波発信型のセンサ、磁気型のセンサのうち少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項20】
前記制御手段はさらに、前記近接検知手段に近接する対象物の速度に応じて異なる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項21】
前記制御手段はさらに、
遠隔操作端末からの操作に応じて前記航空機の飛行を制御し、
前記近接検知手段で対象物の近接を検知したことに応じた飛行の制御を、前記遠隔操作端末からの操作に応じた制御よりも優先して行うことを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項22】
回転翼と、
前記回転翼と外部物体との接触を抑制する保護手段と、
前記保護手段のうち、前記回転翼のある側を内側とした場合の外側に配置された近接検知手段と、
を有する人が搭乗していない航空機の制御方法であって、
前記近接検知手段で対象物が近接したことを検知したことに応じて、前記対象物から離れる方向に前記航空機が移動する第1の飛行動作を行うように制御する制御ステップ
を有し、
前記制御ステップは、
前記近接検知手段で検出された対象物の近接態様に応じて異なる飛行動作を行うように制御し、
第2の方向からの近接を検知することなく第1の方向から対象物が近接したことに応じて前記第1の方向と逆側に移動するように制御し、
前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、前記近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する
ことを特徴とする航空機の制御方法。
【請求項23】
回転翼と、
前記回転翼と外部物体との接触を抑制する保護手段と、
前記回転翼のある側を前記保護手段より内側とした場合の、前記保護手段より外側に配置された近接検知手段と、
を有する人が搭乗していない航空機の制御方法であって、
前記近接検知手段で対象物が近接したことを検知したことに応じて、前記対象物から離れる方向に前記航空機が移動する第1の飛行動作を行うように制御する制御ステップ
を有し、
前記制御ステップは、
前記近接検知手段で検出された対象物の近接態様に応じて異なる飛行動作を行うように制御し、
第2の方向からの近接を検知することなく第1の方向から対象物が近接したことに応じて前記第1の方向と逆側に移動するように制御し、
前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、前記近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する
ことを特徴とする航空機の制御方法。
【請求項24】
回転翼を有し、人が搭乗していない航空機の制御方法であって、
第1の方向における近接と、前記第1の方向と異なる第2の方向における近接とを検知可能な近接検知ステップと、
前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知ステップで検知されたことに応じて、前記近接検知ステップで検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する制御ステップと
を有することを特徴とする航空機の制御方法。」
「【請求項26】
コンピュータを、請求項1乃至21のいずれか1項に記載された航空機の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項27】
コンピュータを、請求項1乃至21のいずれか1項に記載された航空機の各手段として機能させるためのプログラムを格納したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として以下の甲第1号証及び周知技術の証拠として以下の甲第2号証を提出し、本件特許1~6、18~23、26、27は特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許1~6、18~23、26、27を取り消すべきものである旨主張する。
また、申立人は、甲第1号証を主たる証拠として、本件特許7~10、19、21、24、26、27は特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであるから、本件特許7~10、19、21、24、26、27を取り消すべきものである旨主張する。
甲第1号証:上戸祐哉、外4名、超音波センサを用いたドローン衝突回避方式、第25回マルチメディア通信と分数処理ワークショップ論文集、一般社団法人情報処理学会、平成29年10月、162~164ページ
甲第1-1号証:一般社団法人情報処理学会のウェブページを印刷したもの、https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=183735&item_no=1&page_id=13&block_id=8
甲第2号証:特開2016-212465号公報
甲第3号証:DJI JAPAN株式会社、MAVIC PROユーザーマニュアルV1.6、2017年6月
甲第3-1号証:DJI JAPAN株式会社のウェブページを印刷したもの、https://www.dji.com/jp/company?site=brandsite&from=footer
(以下、それぞれ「甲1」、「甲1-1」、「甲2」、「甲3」、「甲3-1」という。)
第4 各甲号証の記載事項及び引用発明
1 甲1
(1) 記載事項
甲1には次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。以下同様。)。
ア 「本提案における衝突回避手法を説明する.飛行しているドローンに障害物が近づいてきた場合に,センサを用いて障害物を検知する.障害物を検知したとき,自動で避けるように設定すると,障害物との衝突を回避することができる.」(第162ページ右欄第30行~第163ページ左欄第2行)
イ 「今回提案するシステムは,無線操縦するドローンが4方向からの障害物に対して自動的に回避するように,超音波センサを持つ基盤をドローン上に設置したものである.図2のように超音波センサをドローンの4つの足にそれぞれ装着して,物体が近づいてきたら,近づいてきた物体に対して反対方向に進み回避行動を行う.また,センサの数を増やすことで何方向にも対応できるようになる.」(第163ページ右欄第11行~同欄第17行)
ウ 甲1の図2には、以下の内容が示されている。
「
[図:0001407872000001.jpg]
」
エ 「「第25回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集」平成29年10月」(第1ページヘッダー上部)
(2) 認定事項
ア 上記(1)ア及びイの記載から、4つの足にそれぞれ装着された超音波センサによって、4方向における物体が近づいてきた方向を検知可能な超音波センサが理解でき、超音波センサで物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動を行うようにシステムが制御することが理解できる。
イ 上記(1)ア及びイの記載から、4つの方向のうちの異なる2つの方向を第1の方向、第2の方向としたとき、物体が第1の方向から近づいてきたときはその反対方向に、第2の方向から近づいてきたときはその反対方向に、それぞれ回避行動を行うように制御されることが理解できる。
ウ 上記(1)ウの記載から、ドローンが回転翼を有していると看取できる。
エ 上記(1)エの記載から、甲1が平成29年10月に発行されていることが認められる。
(3) 甲1に記載された発明
上記(1)及び(2)を総合的に参酌し、本件発明1に倣って整理すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ドローンであって、
回転翼と、
4つの足にそれぞれ装着された超音波センサであって、4方向における物体が近づいてきた方向を検知可能な超音波センサと、
前記超音波センサで物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動を行うように制御するシステムと
を有し、
前記システムは、
4方向のうちの異なる2つの方向を第1の方向、第2の方向としたとき、物体が第1の方向から近づいてきたときはその反対方向に、第2の方向から近づいてきたときはその反対方向に、それぞれ回避行動を行うように制御する
ドローン。」
2 甲2
(1) 記載事項
甲2には次の事項が記載されている。
「【0011】
ドローン4は、4つのローター41の周囲を保護する筐体Bを有する。筐体Bによって、ローター41は、水平方向から接近した周囲の障害物に直接接触しないよう保護される。障害物とは、ドローン4が飛行するときに飛行の妨げになるものである。障害物とは、具体的には、例えば、他のドローン、電柱、電線、壁、家具、移動体(人物、動物、車両等)などである。」
3 甲3
(1) 記載事項
甲3には次の事項が記載されている。
「RTH中の障害物回避
明るさが前方ビジョンシステムに適していると、機体はRTH中に障害物を検知し、積極的に回避しようとします。障害物を検知すると、機体は以下のように動作します。
1.15m前方に障害物が検知されると、機体は減速します。
2.機体が停止し、ホバリング状態になると、垂直方向に上昇して障害物を回避します。検知された障害物から5m以上離れると、機体は上昇を停止します。
3.RTH手順を再開します。機体はそのままの高度でホームポイントまで飛行を継続します。」(第16ページ)
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「ドローン」は前者の「人が搭乗していない航空機」に相当し、以下同様に、「回転翼」は「回転翼」に、「装着」することは「配置」することに、「近づいてきた方向」は「近接」に、「検知」は「検知」に、「4方向」のうちの異なる2つの方向は「第1の方向」及び「前記第1の方向と異なる第2の方向」に、物体が近づいてきた方向を検知する「超音波センサ」は「近接検知手段」に、「物体」は「対象物」に、「前記物体に対して反対方向」は「前記対象物から離れる方向」に、「システム」は「制御手段」に、「進む」ことは「移動する」ことに、飛行するドローンの動作である「回避行動」は「飛行動作」に、「物体が第1の方向から近づいてきたときはその反対方向」及び「第2の方向から近づいてきたときはその反対方向」は「第1の方向と逆側」に、それぞれ相当する。
そして、上記の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
ア 後者の「4方向における物体が近づいてきた方向を検知可能な超音波センサ」は、前者の「第1の方向における近接と、前記第1の方向と異なる第2の方向における近接とを検知可能な近接検知手段」に相当する。
イ 後者の「前記超音波センサで物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動を行うように制御するシステム」は、前者の「前記近接検知手段で対象物が近接したことを検知したことに応じて、前記対象物から離れる方向に前記航空機が移動する第1の飛行動作を行うように制御する制御手段」に相当する。
ウ 後者の「4方向のうちの異なる2つの方向を第1の方向、第2の方向としたとき、物体が第1の方向から近づいてきたときはその反対方向に、第2の方向から近づいてきたときはその反対方向に、それぞれ回避行動を行うように制御する」ことは、前者の「前記第2の方向からの近接を検知することなく前記第1の方向から対象物が近接したことに応じて前記第1の方向と逆側に移動するように制御」することに相当する。
以上のことより、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「人が搭乗していない航空機であって、
回転翼と、
第1の方向における近接と、前記第1の方向と異なる第2の方向における近接とを検知可能な近接検知手段と、
前記近接検知手段で対象物が近接したことを検知したことに応じて、前記対象物から離れる方向に前記航空機が移動する第1の飛行動作を行うように制御する制御手段と
を有し、
前記制御手段は、
前記第2の方向からの近接を検知することなく前記第1の方向から対象物が近接したことに応じて前記第1の方向と逆側に移動するように制御する
航空機。」
〔相違点1〕
本件発明1は、「前記回転翼と外部物体との接触を抑制する保護手段」を有しており、近接検知手段について、「前記保護手段のうち、前記回転翼のある側を内側とした場合の外側に配置され」ているのに対して、甲1発明は、超音波センサを有しているものの、そのような保護手段を有していない点。
〔相違点2〕
本件発明1は、「前記近接検知手段で検出された対象物の近接態様に応じて異なる飛行動作を行うように制御」するのに対して、甲1発明は、「前記超音波センサで物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動を行う」ものの、それ以外の飛行動作を行わない点。
〔相違点3〕
本件発明1は、「前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、前記近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する」のに対して、甲1発明は、「前記超音波センサで物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動を行う」ものの、それ以外の飛行動作を行わないし、第1の方向及び第1の方向と異なる第2の方向において対象物が近接する場合に、どのように制御するのかが不明である点。
(2) 判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
甲2や甲3は、上記相違点3に係る本件発明1の構成を開示していない。
したがって、甲1発明において上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、相違点1、2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は、「甲第1号証に開示されたドローンでは、前方から物体が近づいた場合には後方に進んで回避行動を行い、右方から物体が近づいた場合には左方に進んで回避行動を行うことになり、物体の近接態様に応じてドローンの飛行動作が異なる。よって、甲第1号証には、制御手段は、近接検知手段で検出された対象物の近接態様に応じて異なる飛行動作を行うように制御すること、・・・、が開示されている。」(申立書第26ページ第1行~第8行)と主張する。
しかしながら、前方から物体が近づいた場合に後方に進む回避行動及び右方から物体が近づいた場合に左方に進む回避行動は、いずれも、物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動であって、本件発明1の「第1の飛行動作」に相当し、「異なる飛行動作」に相当しない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。
また、申立人は、「前方及び右方の両方から物体が近づいた場合には斜め後左方に進んで回避行動を行うことになる。よって、甲第1号証には、第1の方向において対象物が近接するとともに第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御することが開示されている。」(申立書第26ページ第9行~第17行)、「また、甲第1号証に開示されたドローンでは、前方から物体が近づくことで後方に進んで回避行動を行っている状態のときに、右方から物体が近づいてきた場合には斜め後左方に進んで回避行動を行う状態に変化する。よって、甲第1号証には、制御手段は、第1の飛行状態と異なる第2の飛行状態である場合に第1の近接態様が検知されたことに応じて、第1の飛行状態に変更するように制御することが開示されている。換言すれば、・・・、第2の飛行状態においては、近接検知手段で対象物の特定の近接態様を検知したことに応じて、第2の飛行動作を行うように制御すること(換言すれば第1の飛行動作は行わないように制御すること)が開示されている。」(申立書第26ページ第24行~第27ページ第6行)と主張する。
しかしながら、甲1には、「前方及び右方の両方から物体が近づいた場合」及び「前方から物体が近づくことで後方に進んで回避行動を行っている状態のときに、右方から物体が近づいてきた場合」について記載されておらず、ゆえに、申立人が主張するような回避行動を行うことも記載されていない。甲1発明に対して前方及び右方の両方から物体が近づいた場合に、甲1発明がどのような飛行動作を行うかは不明である。
そうすると、甲1には「前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、前記近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する」ことが開示されているとはいえない。
仮に、申立人が主張するように回避行動が変化するとしても、それは、前方から物体が近づいてきたことを検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向(前方)に対して反対方向(後方)に進むことに加えて、右方から物体が近づいてきたことを検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向(右方)に対して反対方向(左方)に進むことにすぎず、後方に進むことも左方に進むことも、物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動であって、本件発明1の「異なる飛行動作」ではない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。
2 本件発明2について
(1) 対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
〔相違点4〕
本件発明2は、「前記回転翼と外部物体との接触を抑制する保護手段」を有しており、近接検知手段について、「前記回転翼のある側を前記保護手段より内側とした場合の、前記保護手段より外側に配置され」ているのに対して、甲1発明は、超音波センサを有しているものの、そのような保護手段を有していない点。
〔相違点5〕
本件発明2は、「前記近接検知手段で検出された対象物の近接態様に応じて異なる飛行動作を行うように制御」するのに対して、甲1発明は、「前記超音波センサで物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動を行う」ものの、それ以外の飛行動作を行わない点。
〔相違点6〕
本件発明2は、「前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、前記近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する」のに対して、甲1発明は、「前記超音波センサで物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動を行う」ものの、それ以外の飛行動作を行わないし、第1の方向及び第1の方向と異なる第2の方向において対象物が近接する場合に、どのように制御するのかが不明である点。
(2) 判断
相違点6について検討すると、相違点6は相違点3と同じであるから、上記1(2)で説示したのと同様の理由により、甲1発明において上記相違点6に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、相違点4、5を検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、請求項3~6において特定した事項をさらに付加することにより限定をしたものであるから、本件発明3~6と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点3又は相違点6が存在する。
そうすると、上記1(2)、2(2)で説示したのと同様の理由により、甲1発明において相違点3又は相違点6に係る本件発明3~6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明3~6は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明7について
(1) 対比
本件発明7と甲1発明とを対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
〔相違点7〕
本件発明7は、「前記第1の方向において対象物が近接するとともに前記第2の方向において対象物が近接することを含む第1の近接態様が前記近接検知手段で検知されたことに応じて、前記近接検知手段で検出される対象物の近接態様に応じた飛行動作が異なる複数の飛行状態のうち第1の飛行状態となるように制御する」のに対して、甲1発明は、「前記超音波センサで物体が近づいてきた方向を検知したことに応じて、前記物体が近づいてきた方向に対して反対方向にドローンが進む回避行動を行う」ものの、それ以外の飛行動作を行わないし、第1の方向及び第1の方向と異なる第2の方向において対象物が近接する場合に、どのように制御するのかが不明である点。
(2) 判断
本件発明7と甲1発明との間には、上記相違点7が存在するから、本件発明7は甲1発明ではない。
5 本件発明8~10について
本件発明8~10は、本件発明7の発明特定事項を全て含み、請求項8~10において特定した事項をさらに付加することにより限定をしたものであるから、本件発明8~10と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点7が存在する。
よって、本件発明8~10は、甲1発明ではない。
6 本件発明18~21について
本件発明18~21は、本件発明1、本件発明2又は本件発明7の発明特定事項を全て含み、請求項18~21において特定した事項をさらに付加することにより限定をしたものであるから、本件発明18~21と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点3、相違点6又は相違点7が存在する。ここで、相違点7は相違点3と同じである。
そうすると、本件発明19、21は、甲1発明であるとはいえないし、本件発明18~21は、上記1(2)で説示したのと同様の理由により、甲1発明において相違点3、相違点6又は相違点7に係る本件発明18~21の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明19、21は、甲1発明ではなく、また、本件発明18~21は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
7 本件発明22~24について
本件発明22~24については、本件発明1、2、7の「航空機」の発明とカテゴリー違いで実質的に同様内容の「航空機の制御方法」の発明である。
そうすると、本件発明22~24と甲1発明との間には、それぞれ、少なくとも相違点3、相違点6、相違点7が存在する。
したがって、本件発明22、23は、上記1(2)で本件発明1、2について説示したのと同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないし、本件発明24は、甲1発明ではない。
8 本件発明26、27について
本件発明26、27は、本件発明1、2、7、22、23又は24の発明特定事項を全て含み、請求項26、27において特定した事項をさらに付加することにより限定をしたものであるから、本件発明26、27と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点3、相違点6又は相違点7が存在する。
そうすると、本件発明26、27は、甲1発明であるとはいえないし、上記1(2)で説示したのと同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許第7277695号の請求項1~10、18~24、26、27に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に特許第7277695号の請求項1~10、18~24、26、27に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701193