特許異議申立
2023-700065
アシストドア
- 審判番号
- 2023-700065
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-032896
- 登録番号
- 7108074
- 請求日
- 2023年01月20日
- 審決日
- 2023年10月16日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大建工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 【異議申立人】藤田 孝子
- 【異議申立人】田中 清史
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 前川 慎喜
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P1651.113-YAA(E05F) / P1651.121-YAA(E05F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7108074号発明「アシストドア」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7108074号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について、訂正することを認める。
特許第7108074号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
特許第7108074号の請求項2ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7108074号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、令和3年3月2日に特許出願され、令和4年7月19日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年1月20日に以下(1)の、同月25日に以下(2)の特許異議の申立てがされた。
(1)特許異議申立人藤田孝子による特許異議の申立て(以下「申立人1」および「申立1」という。)。
(2)特許異議申立人田中清史による特許異議の申立て(以下「申立人2」および「申立2」という。)。
当審より、令和5年5月11日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、その指定期間内である令和5年7月14日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。
同年8月10日付けで当審から申立人1、2に対し、訂正の請求があった旨の通知を行い、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与え(特許法第120条の5第5項)、その指定期間内である同年9月13日に申立人2より意見書(以下「意見書2」という。)が提出され、申立人1から意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「請求項1のアシストドアにおいて、上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものである」と記載されているのを、「左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠と、該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉とを備え、扉のスライド移動がアシストされるアシストドアであって、左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口内に上記扉枠が施工されたインセット構造であり、上記上枠は上記横架材の下面に、また上記縦枠は上記柱にそれぞれ固定されており、上記上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ、該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車と、該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置とが設けられており、上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられ、上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものであり、上記切欠部は、上記吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上記上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成されている」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3,4も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2のアシストドアにおいて」と記載されているのを、「請求項2のアシストドアにおいて」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか1つのアシストドアにおいて」と記載されているのを、「請求項2又は3のアシストドアにおいて」に訂正する。
(5)訂正の単位について
訂正前の請求項2ないし4は、訂正前の請求項1を、直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし4は、一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項1ないし4について訂正する訂正事項1ないし4は、一群の請求項に対してされたものである。
2 訂正の適否の判断
以下、各訂正事項について、訂正の適否を検討する。
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項の削除を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2に、
・「請求項1のアシストドアにおいて、」と記載されているのを、「左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠と、該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉とを備え、扉のスライド移動がアシストされるアシストドアであって、左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口内に上記扉枠が施工されたインセット構造であり、上記上枠は上記横架材の下面に、また上記縦枠は上記柱にそれぞれ固定されており、上記上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ、該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車と、該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置とが設けられており、上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられ、」に訂正する訂正事項(以下「訂正事項2A」という。)と、
・「上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものである」と記載されているのを、「上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものであり、上記切欠部は、上記吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上記上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成されている」に訂正する訂正事項(以下「訂正事項2B」という。)の、
2つの訂正事項よりなるものであり、以下、訂正事項2Aと訂正事項2Bに分けて検討する。
ア 訂正事項2Aについて
訂正事項2Aは、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
イ 訂正事項2Bについて
(ア)訂正の目的について
訂正事項2Bは、訂正前の請求項2に記載のアシストドアの切欠部について、「上記切欠部は、上記吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上記上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成されている」と特定して限定するものである。
また訂正前の請求項3、4が請求項2を引用するので、請求項2の訂正により、訂正後の請求項3、4も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項2Bに係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項2Bの「上記切欠部は、上記吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上記上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成されている」という点は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)の、段落【0028】の「図6に示すように、上記鴨居13の下面(左側部では前側部分)には、鴨居13の長さ方向の全体に亘り断面矩形状のレール取付溝17が形成され」という記載、及び、段落【0037】の「図6、図12~図14に示すように、扉枠10における鴨居13の左端部には、その前後幅方向の中間部を矩形状に切り欠いた切欠部13aが形成されている。」という記載を踏まえ、「鴨居端部の切欠き部と縦枠との間の配線挿通孔からまぐさに配線用ドリル孔を形成する状態を示す斜視図である」(段落【0021】)図13、及び、「鴨居端部の切欠き部と縦枠との間の配線挿通孔、及びまぐさに形成された電源配線用ドリル孔を示す平面図である」(段落【0021】)図14に図示される、レール取付溝17と切欠部13aとの位置関係より、看取できる。
・図13及び図14は以下のとおりのものである。
[図:0001405815000001.jpg]
[図:0001405815000002.jpg]
よって、訂正事項2Bは、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
上記(ア)のとおり、訂正事項2Bは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3において引用されていた訂正前の請求項1の記載の引用をしないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、訂正により削除された請求項1を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、同ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。(なお、訂正請求書に明示的な記載はないが、請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正されることは明らかである。)
そして、このような訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項4において引用されていた訂正前の請求項1の記載の引用をしないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、訂正により削除された請求項1を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、同ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、このような訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(5)独立特許要件について
訂正前の請求項1ないし4が特許異議の申立ての対象とされており、本件訂正において、上記(1)ないし(4)のとおり特許請求の範囲の減縮が行われていても、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正後の請求項〔1-4〕についての訂正を認める。
第3 訂正後の本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、項番号によりそれぞれ「本件訂正発明2」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(下線部は訂正箇所を示す。)
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠と、該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉とを備え、扉のスライド移動がアシストされるアシストドアであって、
左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口内に上記扉枠が施工されたインセット構造であり、
上記上枠は上記横架材の下面に、また上記縦枠は上記柱にそれぞれ固定されており、
上記上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ、該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車と、該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置とが設けられており、
上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられ、
上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、
配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものであり、
上記切欠部は、上記吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上記上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成されている
ことを特徴とするアシストドア。
【請求項3】
請求項2のアシストドアにおいて、
配線挿通孔には、少なくともアシスト装置に接続される電源配線が挿通されていることを特徴とするアシストドア。
【請求項4】
請求項2又は3のアシストドアにおいて、
アシスト装置は、吊戸レールに固定された固定子と、該固定子によって駆動され、吊車に移動一体に連結された可動子と、該可動子の動作を固定子により制御して扉のスライド移動時のアシスト力をコントロールするコントローラとを備えたリニアモータ装置であることを特徴とするアシストドア。」
第4 証拠一覧、特許異議申立理由の要旨、及び取消理由通知に記載した取消理由の要旨
1 申立人1及び申立人2の提出した証拠一覧等
(1)申立人1の提出した証拠一覧
ア 異議申立書(以下「申立書1」という。)とともに提出した証拠
(以下、申立人1の提出した甲第1号証を、甲第A1号証あるいは甲A1という。甲第2号証以下についても同様。)
・甲A1:「TOSTEM リビング建材カタログ リニア式自動引戸 らくらくさぽー戸」,トステム株式会社,2000年12月,第1版,表紙,p.1-8,13-18,裏表紙
・甲A2:「三協アルミ インテリア建材 リニアモーター引戸 施工要領書」,三協立山株式会社 三協アルミ社,第3版2019年10月改訂(第1版2017年10月発行),p.1-15,裏表紙
・甲A3:実願昭50-62454号(実開昭51-141934号)のマイクロフィルム(甲B6に同じ。)
・甲A4:実願昭58-189812号(実開昭60-97883号)のマイクロフィルム(甲B7に同じ。)
・甲A5:実願昭58-37628号(実開昭59-142378号)のマイクロフィルム(甲B8に同じ。)
(2)申立人2の提出した証拠一覧
ア 異議申立書(以下「申立書2」という。)とともに提出した証拠
(以下、申立人2の提出した甲第1号証を、甲第B1号証あるいは甲B1という。甲第2号証以下についても同様。)
・甲B1:特開2017-193821号公報
・甲B2:特開2017-155470号公報
・甲B3:特開平10-25965号公報
・甲B4:特開2001-349137号公報
・甲B5:特開平8-199904号公報
・甲B6:実願昭50-62454号(実開昭51-141934号)のマイクロフィルム(甲A3に同じ。)
・甲B7:実願昭58-189812号(実開昭60-97883号)のマイクロフィルム(甲A4に同じ。)
・甲B8:実願昭58-37628号(実開昭59-142378号)のマイクロフィルム(甲A5に同じ。)
イ 意見書2とともに提出した参考資料
・参考資料1:「EIDAI 2010 CATALOGUE フローリング・室内階段・室内ドア・可動間仕切り 収納・造作材・カウンター・壁材」,永大産業株式会社,2010年8月,表紙,p.184-185,950-951,後付
・参考資料2:「FULL HEIGHT DOOR〇R 2021 納まり図面集」,神谷コーポレーション株式会社,2021年2月1日,表紙,目次,p.172-174,339,後付(「〇R」は〇内にR。以下同様。)
・参考資料3:「FULL HEIGHT DOOR〇R 2021 vol.2 納まり図面集」,神谷コーポレーション株式会社,2021年9月1日,表紙,目次,p.148-152,後付
2 特許異議申立理由の要旨
(1)申立1
申立人1が申立書1において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。(申立書1、7頁の表中の「理由の要点」欄、23頁6~15行)
(新規性)
本件訂正前の本件特許の請求項1、3及び4に係る発明は、甲第A1号証に記載された発明、又は、甲第A2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(進歩性)
本件訂正前の本件特許の請求項1、3及び4に係る発明は、甲第A1号証及び甲第A2号証に記載された発明に基いて、
本件訂正前の本件特許の請求項2に係る発明は、甲第A1号証ないし甲第A5号証に記載された発明に基いて、
当業者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立2
申立人2が申立書2において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。(申立書2、4頁の表中の「理由の要点」欄、21頁8~21行)
(進歩性)
本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明は、甲第B1号証に記載された発明及び周知技術(甲第B2号証)に基づいて、
本件訂正前の本件特許の請求項2に係る発明は、甲第B1号証に記載された発明及び周知技術(甲第B3号証ないし甲第B8号証)に基づいて、
本件訂正前の本件特許の請求項3に係る発明は、甲第B1号証に記載された発明及び周知技術(甲第B3号証、甲第B5号証)に基づいて、
本件訂正前の本件特許の請求項4に係る発明は、甲第B1号証に記載された発明及び周知技術(甲第B3号証ないし甲第B5号証)に基づいて、
当業者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知に記載した取消理由の要旨
令和5年5月11日付け取消理由通知に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(新規性)
本件訂正前の本件特許の請求項1、3及び4に係る発明は、甲第A1号証に記載された発明、又は、甲第A2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(進歩性)
本件訂正前の本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第A1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、又は、甲第A2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、本件訂正前の本件特許の請求項1及び2に係る発明は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 証拠について
1 甲号証
(1)甲A1
ア 甲A1の記載事項
甲A1は、下記(ア)bの(表紙部分拡大1)の「第1版 '00.12」という記載から、本件特許の出願前に発行されたものと認められる。
甲A1には、以下の記載がある。(枠線は申立人が付与。以下同様。)
(ア)表紙
a 表紙全体
[図:0001405815000003.jpg]
b 表紙部分拡大
(表紙部分拡大1)
[図:0001405815000004.jpg]
(表紙部分拡大2)
[図:0001405815000005.jpg]
(表紙部分拡大3)
[図:0001405815000006.jpg]
(イ)1頁
a 1頁全体
[図:0001405815000007.jpg]
b 1頁部分拡大
(1頁部分拡大1)
[図:0001405815000008.jpg]
(ウ)2頁
a 2頁全体
[図:0001405815000009.jpg]
b 2頁部分拡大
(2頁部分拡大1)
[図:0001405815000010.jpg]
(2頁部分拡大2)
[図:0001405815000011.jpg]
(エ)3頁
a 3頁全体
[図:0001405815000012.jpg]
b 3頁部分拡大
(3頁部分拡大1)
[図:0001405815000013.jpg]
(オ)4頁
[図:0001405815000014.jpg]
(カ)5頁
[図:0001405815000015.jpg]
(キ)6頁
[図:0001405815000016.jpg]
(ク)7頁
[図:0001405815000017.jpg]
(ケ)8頁
[図:0001405815000018.jpg]
(コ)13頁
a 13頁全体
[図:0001405815000019.jpg]
b 13頁部分拡大
(13頁部分拡大1)
[図:0001405815000020.jpg]
(サ)14頁
a 14頁全体
[図:0001405815000021.jpg]
b 14頁部分拡大
(14頁部分拡大1)
[図:0001405815000022.jpg]
(シ)15頁
a 15頁全体
[図:0001405815000023.jpg]
b 15頁部分拡大
(15頁部分拡大1)
[図:0001405815000024.jpg]
(15頁部分拡大2)
[図:0001405815000025.jpg]
(15頁部分拡大3)
[図:0001405815000026.jpg]
(15頁部分拡大4)
[図:0001405815000027.jpg]
(ス)16頁
a 16頁全体
[図:0001405815000028.jpg]
b 16頁部分拡大
(16頁部分拡大1)
[図:0001405815000029.jpg]
(セ)17頁
[図:0001405815000030.jpg]
(ソ)18頁
[図:0001405815000031.jpg]
(タ)裏表紙
[図:0001405815000032.jpg]
イ 上記ア及び引戸における技術常識を踏まえ、甲A1には、次の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されていると認める。(便宜のためにとくに関連する頁数を付した。以下同様。)
[甲A1発明]
「ユニバーサルデザインを考えたアシストバーと少し力を加えるだけで、自動で開閉するパワーアシスト機構を搭載し、アシストバーにかるーく力を加えるだけで自動的に開閉する、
リニア式自動引戸であって、(表紙(表紙部分拡大2)、3頁(3頁部分拡大1))
上吊り方式であり、(表紙(表紙部分拡大2))
左右の小縦枠、縦枠の上部間に上枠を組合せ、ねじで固定して組み立てた枠を備え、(14頁(14頁部分拡大1))
上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて固定され、(14頁(14頁部分拡大1))
枠が施工される開口部は、壁部の開口であり、(表紙(表紙部分拡大3)、1頁(1頁部分拡大1)、2頁(2頁部分拡大1))
左右の柱と両柱間に架設されたまぐさにより形成され、(15頁(15頁部分拡大1))
該開口内に枠が施工され、(15頁(15頁部分拡大1、15頁部分拡大2))
上枠はまぐさの下面に、また縦枠は上記柱にそれぞれねじ等で取り付けられ、(15頁(15頁部分拡大1、15頁部分拡大2))
上枠の下面に上レールが取り付けられ、(15頁(15頁部分拡大2))
上レールは駆動部を含むものであり、(13頁(13頁部分拡大1))
上レールに、2つの吊車と、磁石ケースとが設けられ、(16頁(16頁部分拡大1))
上枠には、電源配線穴が上枠を枠の内外方向に貫通して設けられ、(15頁(15頁部分拡大3、15頁部分拡大4))
電源配線穴は、上枠の戸先側端部に形成された切欠部であり、(15頁(15頁部分拡大3、15頁部分拡大4))
駆動部にはリニアモーターを使用している、(2頁(2頁部分拡大2))
リニア式自動引戸。」
(2)甲A2
ア 甲A2の記載事項
甲A2は、下記(タ)bの(裏表紙部分拡大1)の「2019年10月改訂」という記載から、本件特許の出願前に発行されたものと認められる。
甲A2には、以下の記載がある。
(ア)1頁
a 1頁全体
[図:0001405815000033.jpg]
b 1頁部分拡大
(1頁部分拡大1)
[図:0001405815000034.jpg]
(イ)2頁
a 2頁全体
[図:0001405815000035.jpg]
b 2頁部分拡大
(2頁部分拡大1)
[図:0001405815000036.jpg]
(ウ)3頁
[図:0001405815000037.jpg]
(エ)4頁
a 4頁全体
[図:0001405815000038.jpg]
b 4頁部分拡大
(4頁部分拡大1)
[図:0001405815000039.jpg]
(オ)5頁
[図:0001405815000040.jpg]
(カ)6頁
a 6頁全体
[図:0001405815000041.jpg]
b 6頁部分拡大
(6頁部分拡大1)
[図:0001405815000042.jpg]
(キ)7頁
a 7頁全体
[図:0001405815000043.jpg]
b 7頁部分拡大
(7頁部分拡大1)
[図:0001405815000044.jpg]
(7頁部分拡大2)
[図:0001405815000045.jpg]
(ク)8頁
[図:0001405815000046.jpg]
(ケ)9頁
a 9頁全体
[図:0001405815000047.jpg]
b 9頁部分拡大
(9頁部分拡大1)
[図:0001405815000048.jpg]
(9頁部分拡大2)
[図:0001405815000049.jpg]
(9頁部分拡大3)
[図:0001405815000050.jpg]
(コ)10頁
a 10頁全体
[図:0001405815000051.jpg]
b 10頁部分拡大
(10頁部分拡大1)
[図:0001405815000052.jpg]
(サ)11頁
[図:0001405815000053.jpg]
(シ)12頁
[図:0001405815000054.jpg]
(ス)13頁
a 13頁全体
[図:0001405815000055.jpg]
b 13頁部分拡大
(13頁部分拡大1)
[図:0001405815000056.jpg]
(セ)14頁
[図:0001405815000057.jpg]
(ソ)15頁
[図:0001405815000058.jpg]
(タ)裏表紙
a 裏表紙全頁
[図:0001405815000059.jpg]
b 裏表紙部分拡大
(裏表紙部分拡大1)
[図:0001405815000060.jpg]
イ 上記ア及び引戸における技術常識より、甲A2には、次の発明(以下「甲A2発明」という。)が記載されていると認める。
[甲A2発明]
「障子を開く方向に2cm程度動かすと、全開までゆっくり開き、その後全閉まで動いて停止する、(13頁(13頁部分拡大1))
リニアモーター引戸であって、(1頁(1頁部分拡大1))
左右のたて枠、小たて枠の上部間に鴨居を組合せ、枠組み立て用ねじで組み立てた枠を備え、(6頁(6頁部分拡大1))
鴨居の戸先側端部は戸先側のたて枠に突き合わされて組み立てられ、(6頁(6頁部分拡大1))
障子を吊り込むものであり、(10頁(10頁部分拡大1))
枠が施工される開口部は、壁部の開口部であり、(7頁(7頁部分拡大1))
該開口部は、柱と両柱間に架設されたまぐさにより形成され、(4頁(4頁部分拡大1))
該開口部内に枠が施工され、(7頁(7頁部分拡大2))
鴨居はまぐさの下面に、また縦枠は柱にそれぞれねじ等で固定され、(7頁(7頁部分拡大2))
上枠の下面に、2つの吊り車が取り付け済みのモーターユニットが取り付けられ、(2頁(2頁部分拡大1)、9頁(9頁部分拡大1、9頁部分拡大2))
鴨居には、電源への鴨居端部通し穴が、鴨居を上下方向に貫通して設けられ、(4頁(4頁部分拡大1))
鴨居端部通し穴は、鴨居の戸先側端部に形成された穴であり、(4頁(4頁部分拡大1))
モータ戸先側小口には、電源コードやサブコードを通して上に出す半円切り欠きが設けられ、該半円切り欠きは開口が縦枠側を向いたものであり、(9頁(9頁部分拡大1、9頁部分拡大2))
電源コードを壁内の電源ボックス内で接続する場合、鴨居端部の穴へ電源コードを入れ、電源ボックス内に引き込むものである、(9頁(9頁部分拡大3))
リニアモーター引戸。」
2 参考資料
(1)参考資料1
ア 参考資料1の記載事項(枠線に加え、矢印は申立人が付与。)
(ア)185頁部分拡大
[図:0001405815000061.jpg]
(イ)950頁部分拡大
[図:0001405815000062.jpg]
(2)参考資料2
ア 参考資料2の記載事項
(ア)目次
[図:0001405815000063.jpg]
(イ)173頁
[図:0001405815000064.jpg]
(3)参考資料3
ア 参考資料3の記載事項
(ア)目次
[図:0001405815000065.jpg]
(イ)149頁
[図:0001405815000066.jpg]
(ウ)150頁
[図:0001405815000067.jpg]
第6 当審の判断
本件訂正前の請求項1に係る発明について、上記第2のとおり、請求項1を削除する本件訂正が認められたので、請求項1に係る発明に対する特許異議申立ては、その対象が存在しないものとなった。
以上より、以下、本件訂正発明2ないし4について検討する。
1 本件訂正発明2について
(1)甲A1を主引用例として
ア 対比
(ア)甲A1発明の、
「ユニバーサルデザインを考えたアシストバーと少し力を加えるだけで、自動で開閉するパワーアシスト機構を搭載し、アシストバーにかるーく力を加えるだけで自動的に開閉する、
リニア式自動引戸」は、
本件訂正発明2の「扉のスライド移動がアシストされるアシストドア」に相当する。
(イ)甲A1発明の、「左右の小縦枠、縦枠の上部間に上枠を組合せ、ねじで固定して組み立てた枠」は、本件訂正発明2の「左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠」に相当する。
そして、上吊り方式の引戸において、扉が上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能されることは技術常識であるから、甲A1発明の引戸が「上吊り方式」であることは、本件訂正発明2において「該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉」を備えていることに相当する。
(ウ)本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、「・・・建物の壁部に、左右の柱1,1と、両柱1,1・・・間に架設された横架材としてのまぐさ2と、・・・で囲まれた開口4が形成され、」(段落【0023】)と説明されていることを踏まえ、甲A1発明の「まぐさ」は本件訂正発明2の「横架材」に相当する。
よって、A1発明における、「左右の柱と両柱間に架設されたまぐさにより形成され」る、「壁部の開口」は、本件訂正発明2における、「左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口」に相当する。
(エ)甲A1発明においては「該開口内に枠が施工され」ていることは、インセット構造であるといえ、このことは本件訂正発明2における「壁部の開口内に上記扉枠が施工されたインセット構造」に相当する。
(オ)甲A1発明において「上枠はまぐさの下面に、また縦枠は上記柱にそれぞれねじ等で取り付けられ」ていることは、本件訂正発明2において「上記上枠は上記横架材の下面に、また上記縦枠は上記柱にそれぞれ固定されて」いることに相当する。
(カ)甲A1発明において「上枠の下面に上レールが取り付けられ」ていることは、本件訂正発明2において「上記上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ」ていることに相当する。
(キ)甲A1発明において「上レールに、2つの吊車」が設けられているということは、「吊り車」は扉を吊り下げてレール内を移動するものであり、また「吊り車」が「2つ」であるならば扉を左右端部で吊り下げることは明らかであることを踏まえ、本件訂正発明2において「該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車」が設けられていることに相当する。
(ク)甲A1発明において「上レールは駆動部を含むものであり」、「駆動部にはリニアモーターを使用している」ことは、「駆動部」が吊車を駆動するものであることは自明であり、また「リニアモーターを使用している」ならば電動型であることは明らかであり、さらに甲A1発明の引戸はそもそも「ユニバーサルデザインを考えたアシストバーと少し力を加えるだけで、自動で開閉するパワーアシスト機構を搭載し、アシストバーにかるーく力を加えるだけで自動的に開閉する」ものであることを踏まえると、本件訂正発明2において「該吊戸レールには」「該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置」が設けられていることに相当する。
(ケ)甲A1発明において「上枠には、電源配線穴が上枠を枠の内外方向に貫通して設けられ」ていることは、当該「電源配線」が「駆動部」(「リニアモータ」)に接続されるものであることは自明であることを踏まえ、本件訂正発明2において「上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられている」ことに相当する。
(コ)甲A1発明において「上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて」いることは、本件訂正発明2において「上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され」ていることに相当し、
甲A1発明において「電源配線穴は、上枠の戸先側端部に形成された切欠部」であることは、本件訂正発明2において「配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部」を有していることに相当する。
(サ)上記(ア)ないし(コ)より、本件訂正発明2と甲A1発明とは、
[一致点A1]
「左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠と、該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉とを備え、扉のスライド移動がアシストされるアシストドアであって、
左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口内に上記扉枠が施工されたインセット構造であり、
上記上枠は上記横架材の下面に、また上記縦枠は上記柱にそれぞれ固定されており、
上記上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ、該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車と、該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置とが設けられており、
上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられ、
上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、
配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有している、
アシストドア。」
の点で一致し、以下の相違点A1の1、及び、相違点A1の2で相違する。
[相違点A1の1]
本件訂正発明2では、「該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものである」のに対し、甲A1発明における「切欠部」の開口は戸先側の縦枠により閉塞されるものではない点。
[相違点A1の2]
本件訂正発明2では、「切欠部は、上記吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上記上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成されている」のに対し、甲A1発明における「切欠部」はそのような特定を有しない点。
イ 検討
まず、新規性について確認しておくと、本件訂正発明2と甲A1発明との間に実質的な相違点が存在するから、本件訂正発明2は、甲A1発明ではない。
次に、進歩性について、事案に鑑み、相違点A1の2から検討する。
甲A1発明における「切欠部」を、相違点A1の2に係る本件訂正発明2の構成のように、吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成することは、甲A1全体をみても記載も示唆もない。また、甲A2、さらに、甲A3ないし甲A5、甲B1ないし甲B8のいずれにも記載も示唆もされていないものであり、本件特許に係る出願時において当業者にとり周知技術であるともいえない。
よって、相違点A1の2に係る本件訂正発明2の構成は、甲A1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件訂正発明2に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由及び特許異議申立理由により取り消すことはできない。
(2)甲A2を主引用例として
ア 対比
(ア)甲A2発明の「障子」は本件訂正発明2の「扉」に相当し、
甲A2発明の、「障子を開く方向に2cm程度動かすと、全開までゆっくり開き、その後全閉まで動いて停止する、リニアモーター引戸」は、本件訂正発明2の「扉のスライド移動がアシストされるアシストドア」に相当する。
(イ)本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、「・・・上記扉枠10は、・・・両縦枠11,12の上部間に連結された上枠としての鴨居13とを有する・・・」(段落【0024】)と説明されていることを踏まえ、甲A2発明の「鴨居」は本件訂正発明2の「上枠」に相当し、そして甲A2発明の、「左右のたて枠、小たて枠の上部間に鴨居を組合せ、枠組み立て用ねじで組み立てた枠」は、本件訂正発明2の「左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠」に相当する。
加えて、障子を吊り込む引戸において、障子が上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能されることは技術常識であるから、甲A2発明の引戸が「障子を吊り込むもの」であることは、本件訂正発明2において「該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉」を備えていることに相当する。
(ウ)本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、「・・・建物の壁部に、左右の柱1,1と、両柱1,1・・・間に架設された横架材としてのまぐさ2と、・・・で囲まれた開口4が形成され、」(段落【0023】)と説明されていることを踏まえ、甲A2発明の「まぐさ」は本件特許発明1の「横架材」に相当する。
よって、甲A2発明における、「柱と両柱間に架設されたまぐさにより形成され」る、「壁部の開口部」は、本件訂正発明2における、「左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口」に相当する。
(エ)甲A2発明において「該開口部内に枠が施工され」ていることは、インセット構造であるといえ、このことは本件訂正発明2における「壁部の開口内に上記扉枠が施工されたインセット構造」に相当する。
(オ)甲A2発明において「鴨居はまぐさの下面に、また縦枠は柱にそれぞれねじ等で固定され」ていることは、本件訂正発明2において「上記上枠は上記横架材の下面に、また上記縦枠は上記柱にそれぞれ固定されて」いることに相当する。
(カ)甲A2発明において「上枠の下面に、2つの吊り車が取り付け済みのモーターユニットが取り付けられ」ていることは、「吊り車が取り付け」られるところ「モーターユニット」がレールを含むことは明らかであることを踏まえ、本件訂正発明2において「上記上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ」ていることに相当する。
(キ)甲A2発明において(レールを含む)「モーターユニット」に「2つの吊り車が取り付け済み」であるということは、「吊り車」は障子(扉)を吊り下げてレール内を移動するものであり、また「吊り車」が「2つ」であるならば障子(扉)を左右端部で吊り下げることは明らかであることを踏まえ、本件訂正発明2において「該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車」が設けられていることに相当する。
(ク)甲A2発明において「2つの吊り車が取り付け済みの(レールを含む)モーターユニットが取り付けられ」るということは、「モーターユニット」のモーターが吊車を駆動するものであることは自明であり、また「リニアモーター引戸」のモーターが電動型であることは明らかであり、さらに甲A2発明の引戸はそもそも「障子を開く方向に2cm程度動かすと、全開までゆっくり開き、その後全閉まで動いて停止する」ものであることを踏まえると、本件訂正発明2において「該吊戸レールには」「該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置」が設けられていることに相当する。
(ケ)甲A2発明において「鴨居には、電源への鴨居端部通し穴が、鴨居を上下方向に貫通して設けられ」、「電源コードを壁内の電源ボックス内で接続する場合、鴨居端部の穴へ電源コードを入れ、電源ボックス内に引き込むものである」ということは、当該「電源コード」が「モーターユニット」(のモーター)に接続されるものであることは自明であることを踏まえ、本件訂正発明2において「上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられている」ていることに相当する。
(コ)甲A2発明において「鴨居の戸先側端部は戸先側のたて枠に突き合わされて組み立てられ」いることは、本件訂正発明2において「上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され」ていることに相当する。
(サ)上記(ア)ないし(コ)より、本件訂正発明2と甲A2発明とは、
[一致点A2]
「左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠と、該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉とを備え、扉のスライド移動がアシストされるアシストドアであって、
左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口内に上記扉枠が施工されたインセット構造であり、
上記上枠は上記横架材の下面に、また上記縦枠は上記柱にそれぞれ固定されており、
上記上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ、該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車と、該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置とが設けられており、
上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられ、
上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結されている、
アシストドア。」
の点で一致し、以下の相違点A2で相違する。
[相違点A2]
本件訂正発明2では、「配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものであり、
上記切欠部は、上記吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上記上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成されている」のに対し、甲A2発明における「鴨居端部通し穴」は切欠部でなく「穴」であり、そのような特定を有しない点。
イ 検討
まず、新規性について確認しておくと、本件訂正発明2と甲A2発明との間に実質的な相違点が存在するから、本件訂正発明2は、甲A2発明ではない。
次に、進歩性について、相違点A2について検討する。
甲2発明にあるような、開口が縦枠側を向いた切り欠きから電源コードを出すことが周知技術であるとしても、切欠部の位置を、相違点A2に係る本件訂正発明2の構成である「切欠部は、上記吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上記上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成されている」ようにすることは当該周知技術から導かれるものではなく、甲A2全体をみてもそのようにすることを示す記載も示唆もない。また甲A1、さらに、甲A3ないし甲A5、甲B1ないし甲B8のいずれにも記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願時において当業者にとり技術常識であるともいえない。
よって、相違点A2に係る本件訂正発明2の構成は、甲A2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。
以上のとおりであるから、本件訂正発明2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件訂正発明2に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由及び特許異議申立理由により取り消すことはできない。
(3)申立人の主張について
上記相違点A1の2及び相違点A2に係る本件訂正発明2の構成である「切欠部は、上記吊戸レールが嵌合されて取り付けられる上記上枠の下面に形成されたレール取付溝の底に形成されている」ことに関し、申立人2は、参考資料1ないし3を提出するとともに、意見書2において、以下のように主張している。
「・・・さらに、オートマチックドア片引き戸が設置される上枠下地について、本件特許の出願日後に発行された参考資料3の「縦断面図」(p.150)には、本件特許の出願日前に発行された参考資料2の「縦断面図」(p.173)と完全に一致する内容が開示されている。そして、参考資料3のオートマチックドア片引き戸の施工に関する「オートマチックドアの荒配線について」の「上枠姿図」(p.149)において、縦枠下地に連結される上枠が記載され、電源配線が挿通された孔が、上枠の戸先端部に形成された切欠部を有し、かつ、切欠部の開口が縦枠下地により閉塞されたものであることが記載されている。
また、・・・参考資料3の切欠部の位置は、レールが取り付けられている溝の位置と一致している。
・・・
参考資料3の発行日は、2021年9月1日であり、参考資料2の発行日である2021年2月1日よりも7か月後にすぎない。参考資料3は、従来から製造、販売されていたオートマチックドア片引き戸(神谷コーポレーション株式会社)を説明したものであり、参考資料2においても同一製品が開示されていることが上述したとおり明らかである。したがって、参考資料3に記載されたオートマチックドア片引き戸の配線方法は、本件特許発明の出願日よりも前の参考資料2の発行時点における技術水準であると認定することができる。
参考資料2に開示されたオートマチックドア片引き戸及び当時の技術水準によれば、上枠に形成する切欠部の構成は、当業者であれば容易に選択可能な設計事項であるといえる。
以上より、訂正後の本件特許発明2は、依然として、甲第A1号証に記載の発明により進歩性を有さず、取り消されるべきものである。・・・」(意見書2、4頁30行~5頁20行)
上記主張について検討する。
上記主張においては、概ね、本件特許に係る出願前に発行された参考資料2と、当該出願後の発行である参考資料3とは、縦断面図において一致し、同一製品を開示するものである旨が主張されている。
しかしながら、両資料の縦断面図が一致することのみをもって、両資料に示された製品が同一のものとはいえないから、参考資料3の「上姿枠図」に示された「切欠部」まで参考資料2に示されているとは認められない。また他に、参考資料3記載の製品が「従来から製造、販売されていた」ことを示す証拠もない。よって、参考資料2を参照しても、参考資料3に記載された、切欠部(「上枠の開口」)の構成が、本件特許に係る出願時の技術水準であるとは認定できない。
以上より、申立人の主張は採用できない。
2 本件訂正発明3、4について
本件訂正発明3、4は、本件訂正発明2の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記1と同様の理由により、甲A1発明、又は、甲A2発明ではなく、また、当業者が甲A1発明及び周知技術、又は、甲A2発明及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものでもない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が申し立てた特許異議申立理由及び証拠によっては、本件訂正発明2ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明2ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1は、本件訂正により削除された。これにより、請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえるから、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700065