特許異議申立
2022-700688
ウインドレギュレータ
- 審判番号
- 2022-700688
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-130950
- 登録番号
- 7037692
- 請求日
- 2022年07月20日
- 審決日
- 2023年04月10日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社城南製作所
- 【権利者代理人】弁理士法人平田国際特許事務所
- 【異議申立人】伊東 沙織
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 前川 慎喜
- 分類
- P1651.113-YAA(E05F) / P1651.121-YAA(E05F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7037692号発明「ウインドレギュレータ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7037692号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
特許第7037692号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7037692号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、令和3年8月10日に出願され、令和4年3月8日にその特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。
令和4年 7月20日 特許異議申立人伊東 沙織(以下「申立人」
という。)による請求項1、2に係る発明の
特許に対する特許異議の申立て
同年11月17日付け 取消理由通知
令和5年 1月16日 意見書及び訂正請求書の差出(特許権者)
同年 3月 1日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年1月16日差出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されている」
と記載されているのを、
「 前記ガイドレールは、前記昇降方向に延在する平板部と、前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部から前記キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する側板部と、を有する共に、前記平板部が、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されている」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「 前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記直交方向において重なるように配設されていることを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。」
と記載されているのを、独立形式に改めると共に、
「 車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、
前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、
前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、
前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、
前記駆動部は、
回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、
前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、
前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、
前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設され、
前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータ。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0006】に
「 本発明は、上記目的を達成するため、車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、前記駆動部は、回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータを提供する。」
と記載されているのを、
「 本発明は、上記目的を達成するため、車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、前記駆動部は、回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、前記ガイドレールは、前記昇降方向に延在する平板部と、前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部から前記キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する側板部と、を有する共に、前記平板部が、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータを提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、前記駆動部は、回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設され、前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータを提供する。」
に訂正する。
2 訂正単位について
訂正前の請求項2は、請求項1を引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1、2に対応する訂正後の請求項1、2は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、特許権者は、訂正後の請求項2について、訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。
また、訂正事項3に係る明細書の訂正は、請求項1及び2に関係する訂正である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、ガイドレールを「昇降方向に延在する平板部と、前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部からキャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する側板部と、を有する」ものに特定して限定するとともに、(昇降方向に直交する)直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されているのがガイドレールのうちの「平板部」であることを特定して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無
願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と併せて「本件明細書等」という。)の段落【0016】には、「図4に示すように、ガイドレール2は、昇降方向に延在する平板部21と、平板部21の短手方向(昇降方向に直交する方向)における左右端部から前側に立設された右側板部22及び左側板部23(側板部)と、・・・を有している。ガイドレール2は、左側板部23において、キャリアプレート3を摺動自在に支持している。」と記載され、段落【0018】には、「そして、上昇側ワイヤ4のうちの、駆動部6とプーリ7との間に配索された上昇側ワイヤ4aは、ガイドレール2の平板部21上に位置しており、・・・下降側ワイヤ5とは、ガイドレール2から外れた位置に位置し、・・・」と記載されている。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2が請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して請求項2を独立形式とするとともに、ガイドレールとヨーク部とが重なるように配設されているのが、昇降方向に直交する直交方向のうち、車両の車幅方向から見た場合であるものに特定して限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とする。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、上記アのとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無
本件明細書の段落【0031】には、「本実施形態では、左右方向において、ガイドレール2とヨーク部52とが重なるように配設されている。」と記載され、「左右方向」について、同段落に「左右方向(昇降方向及び車幅方向に直交する方向)」と記載されている。「車両の車幅方向から見た場合」の、直交方向は左右方向であるから、「前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されている」ことは、本件明細書の段落【0031】に記載されている。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1及び訂正事項2によって特許請求の範囲が訂正されることに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、この訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
4 訂正に対する申立人の意見について
(1)申立人の主張
申立人は、令和5年3月1日提出の意見書(以下「申立人意見書」という。)において、いずれの訂正も訂正要件に適合せず、訂正が認められないと主張し、その理由について概略以下のように主張する。
ア 訂正事項1について
(ア)訂正前の請求項1は「前記ガイドレール」が「前記上昇側ワイヤのみと重なる」ことを条件としている一方、訂正後の請求項1は、「前記ガイドレール」を構成する「平板部」と「側板部」のうち「前記平板部」において「前記上昇側ワイヤのみと重なる」ことを条件としており、「側板部」における条件はない。そのため、「側板部」において「前記下降側ワイヤ」と重なるものが請求の範囲に含まれ、「ガイドレール」全体として「前記上昇側ワイヤのみと重なる」ものではないから、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである。
(イ)ヨーク部が「前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側」に隣接して配設されること、及び、「前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置」は、願書に添付した明細書に記載がなく、当初明細書等のすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項に対して新たな技術的事項を追加するものである。
イ 訂正事項2について
「前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されている」の「前記直交方向」が「前後方向」であると解釈される場合、当初明細書等の全ての事項を総合することにより導かれる事項に対して新たな技術的事項を追加するものであり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合しない。
ウ 訂正事項3について
上記ア及びイと同様の理由により、訂正は認められない。
(2)申立人の主張の検討
上記主張について検討する。
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、「ガイドレール」の「側板部」について「前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部から前記キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する」ものであることを特定する。
そうすると、「キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する」側板部が、下降側ワイヤと重なるように配設されるものではないことは明らかである。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
なお、(1)ア(イ)のヨーク部が「前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側」に隣接して配設されること、及び、「前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置」については、本件訂正によって新たに特定されたものではないため、新規事項の有無の検討は要しない。
イ 訂正事項2について
上記3(2)において検討したように、「前記直交方向」は「左右方向」である。よって、訂正事項2による訂正は、新規事項を追加するものではない。
ウ 訂正事項3について
上記ア及びイにおいて検討したとおり、訂正事項1及び2は訂正要件を満たすものであり、訂正事項3についても、訂正要件を満たさないとする理由はない。
よって、申立人の主張は採用できない。
5 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」といい、これらを併せて「本件訂正発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、
前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、
前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、
前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、
前記駆動部は、
回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、
前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、
前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、
前記ガイドレールは、前記昇降方向に延在する平板部と、前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部から前記キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する側板部と、を有する共に、前記平板部が、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、
前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、
前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、
前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、
前記駆動部は、
回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、
前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、
前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、
前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設され、
前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータ。
第4 特許異議申立理由及び取消理由通知で通知した取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、本件訂正前の本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」といい、これらを併せて「本件発明」という。)に対して、特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)に添付して下記甲第1号証ないし甲第9号証を証拠として提出し、次の特許異議申立理由を申し立てている。
(1)甲第1号証を主引用例とする新規性及び進歩性
ア (新規性)本件発明1は、甲第1号証に記載された発明である。(申立書37~41頁)
イ (進歩性)本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし9号証に示される周知技術ないし技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(申立書41~47頁)
(2)甲第2号証を主引用例とする進歩性
(進歩性)本件発明1及び2は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1号証または第4号証に記載された公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(申立書48~52頁)
甲第1号証:特開2020-165087号公報
甲第2号証:特開2012-149384号公報
甲第3号証:特開2017-8544号公報
甲第4号証:特開2010-116761号公報
甲第5号証:特開2019-2472号公報
甲第6号証:特開2006-28973号公報
甲第7号証:特開平10-315760号公報
甲第8号証:実公平4-32472号公報
甲第9号証:実願昭62-52665号
(実開昭63-162085号)のマイクロフィルム
以下、各甲号証を、その番号により「甲1」等ということがある。
2 令和4年11月17日付け取消理由通知で通知した取消理由の概要
本件発明1及び2に対して、当審が上記取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 令和4年11月17日付け取消理由通知で通知した取消理由についての当審の判断
1 証拠の記載
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のウインドレギュレータにおいて、ガイドレールの曲率が小さい場合には、上昇側ケーブルがガイドレールと非接触となるため、例えばドアを閉める際に伴う衝撃によって上昇側ケーブルが振動して異音が発生するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、曲率が小さいガイドレールであっても異音を抑制することができるウインドレギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、車両用窓ガラスの昇降方向に沿って設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに摺動して前記窓ガラスと共に移動するキャリアプレートと、前記キャリアプレートを上昇方向に牽引する上昇側ケーブルと、前記キャリアプレートを下降方向に牽引する下降側ケーブルと、前記ガイドレールの下端に設けられて前記上昇側ケーブル及び前記下降側ケーブルの巻取り及び送り出しをするドラムと、を備え、前記上昇側ケーブルは、その一端が前記ドラムに連結され、その他端が前記ガイドレールの長手方向における上端に設けられた方向転換部材を介して前記キャリアプレートに連結され、前記ガイドレールは、平板状の基部と、前記ガイドレールの短手方向における前記基部の一端に設けられて前記キャリアプレートが嵌合する嵌合部と、前記短手方向における前記嵌合部とは反対側の前記基部の他端に設けられ、前記ドラム及び前記方向転換部材の間に配索された前記上昇側ケーブルと接触する接触部と、を一体に有し、前記接触部は、前記基部から前記車両の車幅方向の外側に向かって所定の距離だけ隔てた位置で前記上昇側ケーブルと接触する、ウインドレギュレータを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウインドレギュレータによれば、曲率が小さいガイドレールであっても、異音を抑制することができる。」
(イ)「【0011】
(ウインドレギュレータ1の概要)
図1は、本実施の形態に係るウインドレギュレータ1、及びウインドレギュレータ1が設けられる車両のドア9を示す全体概略図である。図2は、本実施の形態に係るウインドレギュレータ1の構成を示す斜視図である。図3は、本実施の形態に係るウインドレギュレータ1の構成を示す正面図である。図4は、本実施の形態に係るウインドレギュレータ1の構成を示す側面図である。
【0012】
なお、図1は、窓ガラス90の全閉状態を示し、ドア1及び窓枠を二点鎖線で示す。またさらに図1において、紙面の左側を車両前後方向の後方側、紙面の右側を車両前後方向の前方側とする。
【0013】
図1及び図2に示すように、ウインドレギュレータ1は、車両のドア9に設けられた図略のドアパネル内に格納され、窓ガラス90の昇降方向に沿って設けられたガイドレール2と、ガイドレール2と摺動して窓ガラス90と共に移動するキャリアプレート3と、キャリアプレート3を牽引する上昇側ケーブル41及び下降側ケーブル42と、上昇側ケーブル41及び下降側ケーブル42の巻き取り及び繰り出しを行うドラム53(図3において破線で示す)を有する駆動部5と、を備えて概略構成されている。
・・・
【0015】
キャリアプレート3は、例えばポリアセタール等の樹脂によって形成された板状の部材である。キャリアプレート3には、上昇側ケーブル41の一端及び下降側ケーブル42の一端がそれぞれ連結されている。また、キャリアプレート3には、窓ガラス90を保持するためのガラスホルダが取り付けられる取付穴3a,3bが形成されている。
【0016】
(上昇側ケーブル及び下降側ケーブル)
上昇側ケーブル41は、その一端がガイドレール2の下端に設けられたドラム53に連結され、その他端がガイドレール2の長手方向における上端に配置された方向転換部材としてのプーリー6を介してキャリアプレート3に連結されている。下降側ケーブル42は、その一端がキャリアプレート3に連結され、その他端がドラム53に連結されている。プーリー6は、ガイドレール2の上端に固定されたプーリーブラケット60に軸支されている。」
(ウ)「【0021】
(駆動部5の構成)
駆動部5は、減速機付きのモータ50と、モータ50によって回転駆動され、回転することにより上昇側ケーブル41及び下降側ケーブル42の巻き取り及び繰り出しを行う円筒状のドラム53と、モータ50を保持するモータハウジング51と、ガイドレール2の下端に設けられてドラムを収容する樹脂製のドラムハウジング52と、を有している。
【0022】
モータハウジング51は、モータ50の一部である図略の減速ギヤを収容するモータ収容部510と、ドラムハウジング52のドラム53を収容する部位を覆うドラムカバー部511と、を有している。モータハウジング51は、ドラムハウジング52に締結されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、ドラムハウジング52は、ガイドレール2を支持する支持部520を有している。支持部520には、ガイドレール2の下端が嵌合している。また、支持部520には、上昇側ケーブル41が導出される上昇側導出溝52aと、下降側ケーブル42が導出される下降側導出溝52bとが形成されている。支持部520には、キャリアプレート3とドラムハウジング52との衝突時の衝撃を緩衝する弾性体7が設けられている。
・・・
【0025】
図5(a)に示すように、ガイドレール2は、平板状の基部20と、キャリアプレート3が嵌合する嵌合部21と、ドラムハウジング52及びプーリー6の間に配索された上昇側ケーブル41と接触する接触部220を有する突出部22と、を一体に有している。
【0026】
嵌合部21は、ガイドレール2の短手方向における基部20の一端に設けられている。また、嵌合部21は、ガイドレール2の基部20の一端から基部20の板厚方向に沿ってキャリアプレート3側に立ち上がって形成された側板部211と、側板部211の先端部からガイドレール2の短手方向に沿って基部20とは反対側に向かって張り出した鍔部212と、からなる。
【0027】
嵌合部21の鍔部212は、キャリアプレート3に形成された嵌合穴3c内に収容されている。キャリアプレート3は、ガイドレール2の嵌合部21に摺動する摺動部30を有している。また、キャリアプレート3には、ガイドレール2の基部20側に開口して下降側ケーブル42を導出するための下降側ケーブル溝30bが形成されている。下降側ケーブル42は、図3に示すようなキャリアプレート3がガイドレール2の上死点位置(窓ガラス90が全閉状態のときのキャリアプレート3の位置)においては、ガイドレール2から所定の距離だけ離れた場所に位置している。
【0028】
突出部22は、短手方向における嵌合部21とは反対側の基部20の他端に設けられている。突出部22は、基部20から板厚方向に所定の距離だけ張り出した第1及び第2張り出し部221,222と、第1及び第2張り出し部221,222のそれぞれの先端の間に設けられて上昇側ケーブル41と接触する接触部220と、を一体に有している。」
(エ)「【0038】
本実施の形態として、突出部22が有する接触部220の凹溝225の形状を図6に示す円弧状の場合で説明したが、接触部220の形状はこれに限られない。例えば接触部220の凹溝225はV字状やU字状でもよく、接触部220が凹溝225を有さない平面であってもよい。また、本実施の形態として、図2のレギュレータ1のガイドレール2に突出部22を設けた場合で説明したが、図7に示す変形例に係るウインドレギュレータ100のガイドレール200に突出部22を設けることも可能である。変形例に係るガイドレール200は、本実施の形態に係るガイドレール2よりも幅方向の寸法が小さく形成されたおり、ウインドレギュレータ100全体の軽量化が図られている。」
(オ)【図1】、【図2】、【図3】、【図7】は以下のとおり。
【図1】
「
[図:0001399370000001.jpg]
」
【図2】
「
[図:0001399370000002.jpg]
」
【図3】
「
[図:0001399370000003.jpg]
」
【図7】
「
[図:0001399370000004.jpg]
」
(カ) a 上記(ウ)の記載を踏まえると、上記(オ)の【図1】ないし【図3】からは、モータ50は、車両の前後方向においてドラム53の車両前方側に配設されることが看取される。
b 上記(イ)及び(ウ)の記載を踏まえると、上記(オ)の【図3】からは、ドラム53が繰り出しを行う、一端がガイドレール2の下端に設けられたドラム53に連結され、プーリー6との間に配索された上昇側ケーブル41は、ドラム53の車両の前後方向におけるモータ50と同じ車両前方側にあり、ドラム53が繰り出しを行う、一端がキャリアプレート3に連結され、他端がドラム53に連結されている下降側ケーブル42は、車両の前後方向における車両後方側にあることが看取される。
c 本実施の形態に関する上記(イ)及び(ウ)の記載を前提として、変形例に関する上記(エ)の記載を踏まえると、上記(オ)の【図7】からは、幅方向の寸法が小さく形成されたガイドレール200は、車両の前後方向において、一端がガイドレール200の下端に設けられたドラム53に連結され、プーリー6との間に配索された上昇側ケーブル41と重なるように配設され、一端がキャリアプレート3に連結され、他端がドラム53に連結されている下降側ケーブル42とは重なるように配設されていないことが看取される。
イ 甲1発明
本実施の形態を前提として変形例に着目すると、上記アより、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
窓ガラス90の昇降方向に沿って設けられたガイドレール200と、ガイドレール200と摺動して窓ガラス90と共に移動するキャリアプレート3と、キャリアプレート3を牽引する上昇側ケーブル41及び下降側ケーブル42と、
上昇側ケーブル41及び下降側ケーブル42の巻き取り及び繰り出しを行うドラム53を有する駆動部5と、を備えて構成されている、車両のドア9に設けられたドアパネル内に格納されたウインドレギュレータ100であって、
ガイドレール200は、平板状の基部20と、キャリアプレート3が嵌合する嵌合部21と、ドラムハウジング52及びプーリー6の間に配索された上昇側ケーブル41と接触する接触部220を有する突出部22と、を一体に有し、嵌合部21は、ガイドレール2の基部20の一端から基部20の板厚方向に沿ってキャリアプレート3側に立ち上がって形成された側板部211と、側板部211の先端部からガイドレール2の短手方向に沿って基部20とは反対側に向かって張り出した鍔部212と、からなり、突出部22は、基部20から板厚方向に所定の距離だけ張り出した第1及び第2張り出し部221,222と、第1及び第2張り出し部221,222のそれぞれの先端の間に設けられて上昇側ケーブル41と接触する接触部220と、を一体に有しており、
キャリアプレート3には、窓ガラス90を保持するためのガラスホルダが取り付けられる取付穴3a,3bが形成されており、ガイドレール200の嵌合部21に摺動する摺動部30を有し、
上昇側ケーブル41は、その一端がガイドレール200の下端に設けられたドラム53に連結され、その他端がガイドレール200の長手方向における上端に配置された方向転換部材としてのプーリー6を介してキャリアプレート3に連結されており、下降側ケーブル42は、その一端がキャリアプレート3に連結され、その他端がドラム53に連結されており、
駆動部5は、減速機付きのモータ50と、モータ50によって回転駆動され、回転することにより上昇側ケーブル41及び下降側ケーブル42の巻き取り及び繰り出しを行う円筒状のドラム53と、モータ50を保持するモータハウジング51と、ガイドレール200の下端に設けられてドラムを収容する樹脂製のドラムハウジング52と、を有し、
モータハウジング51は、モータ50の一部である減速ギヤを収容するモータ収容部510と、ドラムハウジング52のドラム53を収容する部位を覆うドラムカバー部511と、を有し、ドラムハウジング52に締結され、
モータ50は、車両の前後方向においてドラム53の車両前方側に配設され、
ドラム53が繰り出しを行う、一端がガイドレール200の下端に設けられたドラム53に連結され、プーリー6との間に配索された上昇側ケーブル41は、ドラム53の車両の前後方向におけるモータ50と同じ車両前方側にあり、ドラム53が繰り出しを行う、一端がキャリアプレート3に連結され、他端がドラム53に連結されている下降側ケーブル42は、車両の前後方向における車両後方側にあり、
幅方向の寸法が小さく形成されたガイドレール200は、車両の前後方向において、一端がガイドレール200の下端に設けられたドラム53に連結され、プーリー6との間に配索された上昇側ケーブル41と重なるように配設され、一端がキャリアプレート3に連結され、他端がドラム53に連結されている下降側ケーブル42とは重なるように配設されていない、ウインドレギュレータ100。
(2)甲2
ア 甲2の記載
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2では、ガイドレールとドラムハウジングを別部材として成形した上で両者を接続しているので、部品点数が多く、かつガイドレールとドラムハウジングの接続工程分だけ組立工数が多くなってしまう。
・・・
【0006】
本発明は、ガイドレールとドラムハウジングの接続部を薄くしつつ、ガイドレール及びドラムハウジングを簡単に成形することが可能な車両用ウインドレギュレータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用ウインドレギュレータ装置は、車両ドアのドアパネルに対して昇降するスライドウインドに固定したスライダと、上記ドアパネルに固定した、上記昇降方向に沿って延び、かつ上記スライダを移動案内するガイドレールと、上記ドアパネルに、上記ガイドレールの下方に位置させて固定したドラムハウジングと、該ドラムハウジングに回転可能に支持した駆動ドラムと、上記ガイドレールに設けた該駆動ドラムの上方に位置するワイヤガイドと、上記ワイヤガイドに掛け回した状態で上記駆動ドラムに連係させた、該駆動ドラムの回転動作に連動して上記スライダと一緒に上下動する駆動ワイヤと、を備える車両用ウインドレギュレータ装置において、上記ガイドレールと上記ドラムハウジングを樹脂の一体成形品である一体型ガイドレールとしたことを特徴としている。
・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明の一体型ガイドレールはガイドレールとドラムハウジングを樹脂により一体成形したものなので、ガイドレールとドラムハウジングの接続部を薄くすることが可能である。そのため、車両ドアの厚みを大きくしたり、車両ドアの内部空間に設けた他の部材のレイアウトを変更することなく、該他の部材との干渉を避けることができる。
しかも樹脂による一体成形品なので、表面に複雑な凹凸形状を有する一体型ガイドレールであっても簡単に成形することが可能である。
さらに、従来のウインドレギュレータ装置では別体であったガイドレールとドラムハウジングを一体化しているので、部品点数及び組立工数の削減を図ることが可能である。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1~図3を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の各方向は図中の矢印方向を基準としている。
図1は、自動車の車両ボディ(図示略)の側面開口を開閉する上下方向の軸回りに回転可能な車両ドア10の車外側から見た側面図である。
車両ドア10は、その下半部の車外側面を構成する金属製のアウタパネル(ドアパネル)11と、アウタパネル11の車内側面の上縁部を除く周縁部にその周縁部を固定した、アウタパネル11との間に上面が開放したレギュレータ収納空間13を構成する金属製のインナパネル(ドアパネル)12と、車両ドア10の上半部を構成する、アウタパネル11の車内側面に固定した逆U字形のドアサッシュ14と、アウタパネル11の車内側面に固定した前後一対のガラスガイド15と、を備えている。前方のガラスガイド15の後面及び後方のガラスガイド15の前面にはガイド溝(図示略)が形成してあり、前後のガラスガイド15のガイド溝には、前後のガラスガイド15の間に設けたガラス製のスライドウインド16の前後両縁部がそれぞれ上下方向に摺動自在に支持してある。スライドウインド16は前後のガラスガイド15に沿って、アウタパネル11とドアサッシュ14の間に形成された窓孔全体を閉塞する全閉位置(上限位置。図1参照)と、該窓孔全体をほぼ開放する全開位置(下限位置。図示略)と、の間を昇降可能である。また後方のガラスガイド15とドアサッシュ14の後部の間に形成された開口部には、該開口部と同じ形状の固定ガラス17が嵌合固定してある。
【0019】
レギュレータ収納空間13にはスライドウインド16を昇降させるためのウインドレギュレータ装置20が設けてある。
ウインドレギュレータ装置20は、樹脂の一体成形物である一体型ガイドレール21を具備している。一体型ガイドレール21は、その下端部を除く大部分を構成するガイドレール22と、下端部を構成するドラムハウジング28と、を一体的に備えている。
ガイドレール22は、上下方向(スライドウインド16の昇降方向と平行な方向)に延びるベース板23と、ベース板23の後縁部に突設した車外側に向かって延びるガイド壁24と、ガイドレール22の車外側面の上端部に形成した、その中央部に貫通取付孔26を有するプーリ取付部25と、貫通取付孔26の直上に形成した前後一対の貫通孔27と、を一体的に具備している。
ドラムハウジング28の車外側面には、ベース板23の車外側面より車内側に一段凹んだ側面視円形をなすドラム取付用凹部29が形成してあり、ドラム取付用凹部29の中心部には回転支持凸部30が形成してある。ドラムハウジング28の車外側面にはドラム取付用凹部29の周辺部を囲み、その前後の上端部を除く部分の内周面が回転支持凸部30を中心とする円弧面を形成する略U字形のドラムカバー壁31が一体的に突設してある。・・・
【0020】
一体型ガイドレール21には、樹脂製の一体成形物であるスライダ40がスライド自在に取り付けてある。
・・・
【0021】
このスライダ40には第1ワイヤ(駆動ワイヤ)54と第2ワイヤ(駆動ワイヤ)58の一端をそれぞれ取付可能である。
金属製の第1ワイヤ54の両端部には共に第1ワイヤ54より大径であるストッパ55、56が固着してあり、ストッパ55側の端部近傍には圧縮コイルばね57がスライド自在に取り付けてある。
・・・
【0024】
第1ワイヤ54の中間部はプーリ(ワイヤガイド)73の周面全体に凹設したワイヤ支持溝に掛け回してある。このプーリ73は、金属製のブラケット74に車幅方向に延びる回転支持軸75を介して回転可能に支持してある。ブラケット74は、その背面に突設したボルト(図示略)を車外側から貫通取付孔26に挿通し一体型ガイドレール21の車内側に突出した該ボルトの先端部にナット(図示略)螺合することにより、一体型ガイドレール21に対して取り付けてある。
第1ワイヤ54のストッパ56側の端部と第2ワイヤ58のストッパ60側の端部は駆動ドラム77に固定してある。駆動ドラム77の周面全体にはワイヤ支持溝が凹設してあり、駆動ドラム77の側面には該ワイヤ支持溝と連通する2つの係止凹部78が凹設してある(図2に一つのみ図示)。ストッパ56とストッパ60は2つの係止凹部78にそれぞれ抜止された状態で嵌合させてあり、第1ワイヤ54のストッパ56側の端部近傍部と第2ワイヤ58のストッパ60側の端部近傍部が駆動ドラム77の上記ワイヤ支持溝に巻き付けてある(第1ワイヤ54と第2ワイヤ58の巻き付け方向は互いに逆向き)。駆動ドラム77は、その中心貫通孔の車内側端部を回転支持凸部30に回転可能に嵌合した状態で一体型ガイドレール21のドラム取付用凹部29に収納させてあり、第1ワイヤ54の駆動ドラム77近傍に位置する部分はワイヤ挿通溝35にスライド自在に挿通させてある。
駆動ドラム77は、金属製の円板であるモータブラケット81に固定したモータ80の動力によって回転する。モータブラケット81は、車内側に向かって突出する回転支持軸82と、径方向外向きに突出する2つの突部にそれぞれ形成した2つの貫通孔83と、を備えている。モータブラケット81は、回転支持軸82を駆動ドラム77の中心貫通孔の車外側端部に相対回転可能に嵌合させ、かつ2つの貫通孔83に車外側から挿入したボルト84を雌ねじ孔33に螺合させることにより、ドラムカバー壁31の車外側面に接触した状態でドラムハウジング28に固定してある。モータブラケット81をドラムハウジング28に固定すると、回転支持軸82に支持された駆動ドラム77がドラム取付用凹部29内で回転可能となり、さらにモータ80の出力回転軸が減速機構(図示略)を介して駆動ドラム77と連係する。」
(ウ)【図1】、【図2】、【図3】は以下のとおり。
【図1】
「
[図:0001399370000005.jpg]
」
【図2】
「
[図:0001399370000006.jpg]
」
【図3】
「
[図:0001399370000007.jpg]
」
(エ)上記(イ)の記載を踏まえると、上記(ウ)の【図1】ないし【図3】からは、モータ80が、中心に回転支持軸82を有する駆動ドラム77に対し昇降方向に直交する直交方向である車両の前後方向の後側に隣接して配設され、
この駆動ドラム77の前記直交方向(車両の前後方向)の後側からプーリ73に繰り出された第1ワイヤ54は、駆動ドラム77の前記直交方向(車両の前後方向)の前側からスライダ40に繰り出された第2ワイヤ58よりも、モータ80に近く、
一体型ガイドレール21のガイドレール22のベース板23は、前記直交方向(車両の前後方向)において、第1ワイヤ54及び第2ワイヤ58の両方と重なるように配設され、
一体型ガイドレール21とモータ80とは、車両の車外-車内方向からみた場合に、前記直交方向において重なるように配設されていることが看取される。
イ 甲2発明
上記アより、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
樹脂の一体成形物である一体型ガイドレール21は、その下端部を除く大部分を構成するガイドレール22と、下端部を構成するドラムハウジング28と、を一体的に備えており、
ガイドレール22は、スライドウインド16の昇降方向と平行な方向に延びるベース板23と、ベース板23の後縁部に突設した車外側に向かって延びるガイド壁24と、ガイドレール22の車外側面の上端部に形成した、プーリ取付部25と、を一体的に具備しており、
ドラムハウジング28の車外側面には、ベース板23の車外側面より車内側に一段凹んだ側面視円形をなすドラム取付用凹部29が形成してあり、ドラム取付用凹部29の中心部には回転支持凸部30が形成してあり、ドラム取付用凹部29の周辺部を囲み、その前後の上端部を除く部分の内周面が回転支持凸部30を中心とする円弧面を形成する略U字形のドラムカバー壁31が一体的に突設してあり、
一体型ガイドレール21には、樹脂製の一体成形物であるスライダ40がスライド自在に取り付けてあり、スライダはスライドウインドに固定したものであり、
このスライダ40には第1ワイヤ54と第2ワイヤ58の一端をそれぞれ取付可能であり、第1ワイヤ54の中間部はプーリ73のワイヤ支持溝に掛け回してあり、第1ワイヤ54のストッパ56側の端部と第2ワイヤ58のストッパ60側の端部は駆動ドラム77に固定してあり、
駆動ドラム77は、金属製の円板であるモータブラケット81に固定したモータ80の動力によって回転し、
モータブラケット81は、回転支持軸82を備え、ドラムカバー壁31の車外側面に接触した状態でドラムハウジング28に固定してあり、
モータブラケット81をドラムハウジング28に固定すると、回転支持軸82に支持された駆動ドラム77がドラム取付用凹部29内で回転可能となり、モータ80の出力回転軸が減速機構を介して駆動ドラム77と連係するものであり、
モータ80が、中心に回転支持軸82を有する駆動ドラム77に対し昇降方向に直交する直交方向である車両の前後方向の後側に隣接して配設され、
この駆動ドラム77の前記直交方向(車両の前後方向)の後側からプーリ73に繰り出された第1ワイヤ54は、駆動ドラム77の前記直交方向(車両の前後方向)の前側からスライダ40に繰り出された第2ワイヤ58よりも、モータ80に近く、
一体型ガイドレール21のガイドレール22のベース板23は、前記直交方向において、第1ワイヤ54及び第2ワイヤ58の両方と重なるように配設され、
一体型ガイドレール21とモータ80とは、車両の車外-車内方向からみた場合に、前記直交方向において重なるように配設されている、
ウインドレギュレータ装置20。
(3)甲3
ア 甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るウインドウレギュレータを示す正面図
・・・
【図14】ウインドウレギュレータと窓ガラスの取付工程を示すもので、図14(a)は第1工程の模式図、図14(b)は第2工程の模式図
・・・」
(イ)「【0018】
本発明の実施の形態に係るウインドウレギュレータ1は、車両のドアのインナーパネルとアウターパネルとの間に固定され、ドアの窓(例えばガラス窓)を昇降する装置である。ウインドウレギュレータ1は、上ジョイント部材10と、ガイドレール11と、キャリアプレート12と、下ジョイント部材13と、駆動部14と、ドラム15と、上昇用ケーブル16と、下降用ケーブル17と、ストッパ20(図2参照)と、を備えている。上ジョイント部材10は、本発明に係る方向転換部材の一例に相当する。
・・・
【0028】
キャリアプレート12は、ドアの窓を支持する部材である。キャリアプレート12は、ガイドレール11に嵌合してガイドレール11に摺動して昇降移動する。キャリアプレート12は、図6に示すように、複数のガラスホルダ122を介して窓ガラスWを支持する。
・・・
【0030】
駆動部14は、電気的に駆動するモータと、モータの回転運動をドラム15に伝達する動力伝達部(例えばウォームギヤ)とを有する。駆動部14は、モータを順方向と逆方向とに回転駆動でき、これによりドラム15が順方向と逆方向とに回転する。
【0031】
ドラム15は、下ジョイント部材13に回転可能に保持され、駆動部14の回転駆動により、順方向の回転と、逆方向の回転とを行う。ドラム15は、上昇用ケーブル16と下降用ケーブル17とが、互いに逆向きに捲かれる。ドラム15は、回転方向によって、上昇用ケーブル16を巻き込んで上昇用ケーブル16を引っ張るか、下降用ケーブル17を巻き込んで下降用ケーブル17を引っ張る。
【0032】
上昇用ケーブル16は、一端がドラム15に接続され、上ジョイント部材10の方向転換部104に捲き掛けられ、他端がキャリアプレート12に接続される。ドラム15が上昇用ケーブル16を巻き込む方向に回転することで、上昇用ケーブル16が方向転換部104を経由して引かれ、キャリアプレート12を引き上げる。
【0033】
下降用ケーブル17は、一端がドラム15に接続され、他端がキャリアプレート12に接続される。ドラム15が下降用ケーブル17を巻き込む方向に回転することで、下降用ケーブル17が引かれ、キャリアプレート12を引き下げる。」
(ウ)【図1】、【図14】は以下のとおり。
【図1】
「
[図:0001399370000008.jpg]
」
【図14】
「
[図:0001399370000009.jpg]
」
(4)甲4
ア 甲4の記載
甲4には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0008】
図3に示すように、ドア昇降装置20は、キャリアプレート22と、ガイドレール24と、プーリ26と、ワイヤドラム28と、駆動機構30と、上昇用ワイヤ32と、下降用ワイヤ34などを含んで構成されている。
【0009】
図3、図6に示すように、キャリアプレート22は、ドア10の幅方向に沿って延在する本体部2202と、本体部2202の幅方向の両側からインナパネル12側に起立された2つの側部2204と、各側部2204の先端から本体部2202の幅方向外方にそれぞれ屈曲形成された2つの取り付け片部2206とを備えている。
・・・
【0011】
図3、図5に示すように、プーリ26は上側ブラケット36に取り付けられ、したがって、プーリ26は上側ブラケット36を介してガイドレール24の上端に設けられている。
プーリ26は、上昇用ワイヤ32が巻回されて上昇ワイヤ32の向きを変えるものであり、ガイド面2402の仮想延長面上に位置している。」
(イ)【図3】は以下のとおり。
【図3】
「
[図:0001399370000010.jpg]
」
2 本件訂正発明1について
(1)対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「窓ガラス90を保持するためのガラスホルダが取り付けられる取付穴3a,3bが形成され」る「キャリアプレート3」は、「取付穴3a,3b」に「取り付けられる」「ガラスホルダ」を介して「窓ガラス90」を支持しているといえるから、本件訂正発明1の「車両の窓ガラスを支持するキャリアプレート」に相当する。
イ 甲1発明の「窓ガラス90の昇降方向に沿って設けられたガイドレール200」は、「キャリアプレート3」が「ガイドレール200の嵌合部21に摺動する摺動部30」を有し、「ガイドレール200と摺動して」「移動する」ものであって、「ガイドレール200」が「キャリアプレート3」を摺動自在に支持するものといえるから、本件訂正発明1の「前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレール」に相当する。
ウ 甲1発明の「キャリアプレート3を牽引する上昇側ケーブル41及び下降側ケーブル42」は、本件訂正発明1の「前記キャリアプレートを牽引する上昇側及び下降側ワイヤ」に相当する。
エ 甲1発明において「駆動部5」の「ドラム53」が「ガイドレール200の下端に設けられ」たものであるから、甲1発明の「上昇側ケーブル41及び下降側ケーブル42の巻き取り及び繰り出しを行う駆動部5」は、本件訂正発明1の「前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に配設され、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する駆動部」に相当する。
オ 甲1発明において「上昇側ケーブル41」は、「方向転換部材としてのプーリー6を介して」配索されたものであるから、甲1発明の「ガイドレール200の長手方向における上端に配置された方向転換部材としてのプーリー6」は、本件訂正発明1の「前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に配設され、前記ワイヤを方向転換する方向転換部」に相当する。
カ 甲1発明の「駆動部5」が有する「回転することにより上昇側ケーブル41及び下降側ケーブル42の巻き取り及び繰り出しを行う円筒状のドラム53」は、本件訂正発明1の「駆動部」が有する「回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラム」に相当する。
キ 本件訂正発明1の「駆動部」が有する「前記回転ドラムを軸着した減速機」と甲1発明の「駆動部5」が有する「減速機付きのモータ50」の「減速機」とは、「駆動部」が有する「減速機」の点で共通する。
ク 甲1発明の「モータ50」がヨーク部を有し、当該ヨーク部がモータの他の部分と協働して「モータ50」として「ドラム53」を「回転駆動」することは自明であり、また、上記キの対比も踏まえると「減速機付きのモータ50」が「減速機を介して」ドラム53を回転させることも当然であるから、本件訂正発明1の「駆動部」が有する「前記回転ドラムを軸着した減速機」「に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータ」と、甲1発明の「駆動部5」が有する「モータ50」とは、「駆動部」が有する「減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータ」の点で共通する。
ケ 甲1発明の「車両の前後方向」は、本件訂正発明1の「昇降方向に直交する直交方向」に相当し、甲1発明の「車両の前後方向」における「車両前方側」及び「車両後方側」は、それぞれ、本件訂正発明1の「直交方向」の「第1側」及び「第2側」に相当する。
コ 甲1発明の「上昇側ケーブル41」は、「一端」が「ドラム53に連結され」、「ドラム53」が「繰り出」しを行って、「プーリー6との間に配索され」るものであるから、「上昇側ケーブル41」が「ドラム53」から繰り出される位置があることは自明であり、当該位置は、本件訂正発明1の「第1ワイヤ繰り出し位置」に相当する。同様に、甲1発明の「下降側ケーブル42」が「ドラム53」から繰り出される位置は、本件訂正発明1の「第2ワイヤ繰り出し位置」に相当する。
サ 上記クないしコの対比を踏まえると、甲1発明の「一端がガイドレール200の下端に設けられたドラム53に連結され、プーリー6との間に配索された上昇側ケーブル41は、ドラム53の車両の前後方向におけるモータ50と同じ車両前方側にあり、ドラム53が繰り出しを行う、一端がキャリアプレート3に連結され、他端がドラム53に連結されている下降側ケーブル42は、車両の前後方向における車両後方側にあ」ることは、本件訂正発明1の「前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近」いことに相当する。
シ 甲1発明の「窓ガラス90の昇降方向に沿って設けられたガイドレール200」の「平板状の基部20」は、本件訂正発明1の「ガイドレール」が「有する」「昇降方向に延在する平板部」に相当し、甲1発明の「キャリアプレート3」が有する「摺動部30」が「摺動」する「ガイドレール200」の「嵌合部21」の「側板部211」は、「基部20の一端から基部20の板厚方向に沿ってキャリアプレート3側に立ち上がって形成された」ものであるから、本件訂正発明1の「ガイドレール」が「有する」「前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部から前記キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する側板部」に相当する。
ス 甲1発明の「ウインドレギュレータ100」は、本件訂正発明1の「ウインドレギュレータ」に相当する。
セ 上記アないしスから、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、
前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、
前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、
前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、
前記駆動部は、
回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、
減速機、及び前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、
前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、
前記ガイドレールは、前記昇降方向に延在する平板部と、前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部から前記キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する側板部と、を有する、
ウインドレギュレータ。
(相違点1)
駆動部が、本件訂正発明1は、「減速機」が「前記回転ドラムを軸着した」ものであり、「駆動モータ」は、「前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され」るのに対し、甲1発明は、「減速機」が「前記回転ドラムを軸着した」ものと特定されておらず、「前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され」るかも不明である点。
(相違点2)
ワイヤの配設位置について、本件訂正発明1は、「前記平板部が、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されている」と特定されているのに対し、甲1発明は、「一端がガイドレール200の下端に設けられたドラム53に連結され、プーリー6との間に配索された上昇側ケーブル41」は「基部20から板厚方向に所定の距離だけ張り出した第1及び第2張り出し部221,222」の「それぞれの先端の間に設けられ」る「接触部220」に配設されるものであって、「基部20」に重なるように配設されているものではない点。
(2)判断
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
ア 甲1発明は、ウインドレギュレータの上昇側ケーブルがガイドレールと非接触となる場合、上昇側ケーブルが振動して異音が発生するという問題があるため、異音を抑制することを課題とし(上記1(1)ア(ア))、その解決のために、上昇側ケーブルと接触する「接触部220」を、「基部20から板厚方向に所定の距離だけ張り出した第1及び第2張り出し部221,222」の「それぞれの先端の間」に設けたものである。
イ そうすると、甲1発明において、「接触部220」に配設される「一端がガイドレール200の下端に設けられたドラム53に連結され、プーリー6との間に配索された上昇側ケーブル41」(以下、単に「上昇側ケーブル」という。)を「基部20」に重なるように配設する動機付けはない。
ウ また、甲1発明において「上昇側ケーブル」を「基部20」に重なるように配設すると、「上昇側ケーブル」がガイドレールと非接触となって「上昇側ケーブル」が振動して異音が発生するという問題が生じるものとなり、甲1発明の課題が解決できないものとなるから、甲1発明において「上昇側ケーブル」を「接触部220に接触する」ものから「基部20」に重なるように配設されているものに代えることには阻害要因があるといえる。
エ 以上のとおりであるから、甲1発明において、上昇側ケーブルを基部に重なるように配設されているものとし、もって、相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(3)申立人の主張について
ア 主張の概要
申立人は、申立人意見書に添付して甲10(特許第6580738号公報)、甲11(特開2016-204944号公報)を提出し、申立人意見書において、概略以下の主張をする。
ガイドレールが、「前記昇降方向に延在する平板部と、前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部から前記キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する側板部と」を有する構成は、甲10、甲11に記載されるように周知な構成にすぎず、甲1の変形例に記載された発明のガイドレールとして、「前記昇降方向に延在する平板部と、前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部から前記キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する側板部とを有するガイドレール」とすることは、容易に想到し得たことである。
イ 主張の検討
上記主張について検討する。
上記(1)で検討したように、本件訂正発明1と甲1発明との相違点は、上昇側ケーブルの配設位置についての「前記平板部が、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されている」こと(相違点2)を含む。
そうすると、仮に「前記昇降方向に延在する平板部と、前記平板部における前記昇降方向に直交する方向の端部から前記キャリアプレート側に立設され、前記キャリアプレートを摺動自在に支持する側板部とを有するガイドレール」が周知技術であったとしても、当該周知技術は相違点2に関する構成について何ら開示ないし示唆するものではなく、甲1発明及び当該周知技術から相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件訂正発明2について
(1)対比
本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。
ア 上記2(1)アないしサ及びスにおいてした本件訂正発明1と甲1発明との対比は、本件訂正発明2と甲1発明との対比においても同様である。
イ 上記2(1)コの対比を踏まえると、甲1発明の「ガイドレール200は、車両の前後方向において、一端がガイドレール200の下端に設けられたドラム53に連結され、プーリー6との間に配索された上昇側ケーブル41と重なるように配設され、一端がキャリアプレート3に連結され、他端がドラム53に連結されている下降側ケーブル42とは重なるように配設されていない」ことは、「ガイドレール200」は、前記上昇側ケーブル41と前記下降側ケーブル42とのうち前者のみと重なるように配設されているといえるから、本件訂正発明2の「前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設され」ていることに相当する。
ウ 上記ア及びイから、本件訂正発明2と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、
前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、
前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、
前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、
前記駆動部は、
回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、
減速機、及び前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、
前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、
前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されているウインドレギュレータ。
(相違点1’)
駆動部が、本件訂正発明2は、「減速機」が「前記回転ドラムを軸着した」ものであり、「駆動モータ」は、「前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され」るのに対し、甲1発明は、「減速機」が「前記回転ドラムを軸着した」ものと特定されておらず、「前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され」るかも不明である点。
(相違点3)
本件訂正発明2は「前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されている」のに対し、甲1発明は、そのように配設されているか不明である点。
(2)判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
ア 甲2発明の一体型ガイドレール21は、ガイドレール22と、下端部を構成するドラムハウジング28と、を一体的に備えたものであり、モータブラケット81をドラムハウジング28に固定すると、回転支持軸82に支持された駆動ドラム77がモータ80により減速機構を介してドラム取付用凹部29内で回転可能とされるものである。
そうすると、甲2発明のモータの配置は、ドラムハウジング28が一体的に備えられた一体型ガイドレール21と密接不可分なものであり、モータの配置のみを甲1発明に適用することができるものではない。
また、甲2発明の一体型ガイドレール21は、そのガイドレール22のベース板23が、第1ワイヤ54(本件訂正発明2の「上昇側ワイヤ」に相当)及び第2ワイヤ58(同「下降側ワイヤ」に相当)の両方と重なるように配設されるものであり、本件訂正発明2は「第1ワイヤ繰出し位置か方向転換部に繰り出された上昇側ワイヤのみと重なるように配設され」たものであるから、甲2発明の一体型ガイドレール21をそのまま甲1発明に採用しても、本件訂正発明2のウインドレギュレータとはならない。
イ 甲3には、「前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されている」ことは記載されていない。
すなわち、【図14】は、ウインドウレギュレータと窓ガラスの取付工程を示す模式図であって、図面中の「11」の示すガイドレールと「14」の示す駆動部との位置を示すものではない。また、甲3に記載されたウインドウレギュレータの正面図(【図1】)をみると、図面中の「11」の示すガイドレールと「14」の示す駆動部とは「前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設され」ていない。
ウ 申立人が申立人意見書に添付して提出した甲12(特開2020-128658号公報)、甲13(特開2012-31647号公報)を含むその他の文献にも、相違点3に係る本件訂正発明2の構成は記載も示唆もされていない。
よって、申立人が提出した証拠により、相違点3に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(3)申立人の主張について
ア 主張の概要
申立人は、申立人意見書に添付して甲12、甲13を提出し、申立人意見書において、概略以下の主張をする。
(ア)甲12の図4(側面図)、甲13の図2(側面図)に記載されるように、ガイドレールとモータ7が左右方向に重なる構成は周知であるから、甲1発明において、ガイドレールとモータの位置を「前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されている」とすることは容易である。
(イ)訂正後の請求項2の「前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なる」が車幅方向(前後方向)に重なるものである」と認定される場合であっても、甲2の図1に記載されており、ガイドレールとモータの位置を「前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されている」とすることは容易である。
イ 主張の検討
上記主張について検討する。
(ア)直交方向の認定については、上記第2の3(2)において示した判断のとおりであり、甲12の図4(側面図)、甲13の図2(側面図)には、ガイドレールとモータの位置を「前記車両の車幅方向から見た場合に、前記直交方向において重なるように配設されている」とすることについて記載も示唆もない。
(イ)甲1発明において甲2発明を組み合わせて本件訂正発明2となし得ないことについては、上記(2)において検討したとおりである。
(4)小括
以上のとおりであるから、相違点1’について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1発明、甲2発明及び甲第3号証ないし甲第13号証に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 まとめ
本件訂正発明1及び2は、甲1発明、甲2発明及び甲第3号証ないし甲第13号証に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由についての当審の判断
1 甲第1号証を主引用例とする新規性について
本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、上記第5の2(1)セの相違点1及び2で相違する。
そして、上記相違点は実質的な相違点であるから、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。
2 甲第2号証を主引用例とする進歩性について
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(相違点A)
本件訂正発明1は、ガイドレールの平板部が「前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されている」のに対し、甲2発明は、一体型ガイドレール21のガイドレール22のベース板23は、「前記直交方向において、第1ワイヤ54及び第2ワイヤ58の両方と重なるように配設され」る点。
イ 判断
上記相違点Aについて検討する。
甲2発明は、ドラム取付用凹部29がベース板23に一段凹んだ側面視円形をなして形成され、ドラム取付用凹部29の周辺部を囲み、回転支持凸部30を中心とする円弧面を形成する略U字形のドラムカバー壁31が一体的に突設され、ドラムカバー壁31に接触した状態で回転支持軸82を備えるモータブラケット81がドラムハウジング28に固定されて回転支持軸82に支持された駆動ドラム77がドラム取付用凹部29内で回転可能とされるものである。
そして、第1ワイヤ54及び第2ワイヤ58の端部は駆動ドラム77に固定され、第1ワイヤ54は駆動ドラム77の後側から、第2ワイヤ58は同前側から繰り出されるものであるから、一体型ガイドレール21のガイドレール22のベース板23が、「前記直交方向において、第1ワイヤ54及び第2ワイヤ58の両方と重なるように配設され」ることは、ガイドレール22とドラムハウジング28を一体化した一体型ガイドレール21において採用される自然な構成である。
しかも、甲2発明は、ガイドレールとドラムハウジングを別部材として成形して両者を接続すると、部品点数が多く、かつガイドレールとドラムハウジングの接続工程分だけ組立工数が多くなるという従来技術の課題を解決すべくとし、ガイドレール22と、下端部を構成するドラムハウジング28と、を一体的に備えた樹脂の一体成形物として一体型ガイドレール21を形成するものであるから、ガイドレールの平板部が「前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されている」ことが甲4に記載される公知技術であるとしても、甲2発明において当該構成を採用して下降側ワイヤは平板部と重ならないものとする動機はなく、むしろ、課題を解決できなくなる阻害要因が存在する。
ウ 申立人の主張について
(ア)主張の概要
申立人は、申立人意見書において、概略以下の主張をする。
甲1の段落【0038】及び図7によれば、ガイドレールの幅方向の寸法を小さく形成して上昇側ケーブルのみがガイドレールと接触する変形を行うことで、ウインドレギュレータ全体の軽量化を図ることが記載されており、軽量化は極めて一般的な課題であるから、甲2発明においても軽量化のために、甲1に記載されている変形と同様の変形を行うことは容易に想到し得ることである。
つまり、甲2発明において、「前記平板部が前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設」することは容易である。
(イ)主張の検討
上記主張について検討する。
軽量化は極めて一般的な課題であり、甲1に、ガイドレールの幅方向の寸法を小さく形成して上昇側ケーブルのみがガイドレールと接触する変形を行うことで、ウインドレギュレータ全体の軽量化を図ることが記載されているとしても、上記イで検討したように、甲2発明は、ガイドレールとドラムハウジングを別部材として成形して両者を接続すると、部品点数が多く、かつガイドレールとドラムハウジングの接続工程分だけ組立工数が多くなるという従来技術の課題を解決すべくとし、ガイドレール22と、下端部を構成するドラムハウジング28と、を一体的に備えた樹脂の一体成形物として一体型ガイドレール21を形成するものであるから、甲2発明において一般的な軽量化を目的としてガイドレールの幅方向の寸法を小さく形成して上昇側ケーブルのみがガイドレールと接触する変形を行うことは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
なお、甲1は、上昇側ケーブルがガイドレールの基部20(平板部)でなく突出部22で重なるように配設されるものであるが、上昇側ケーブルが平板部において重なる甲4に記載のウインドレギュレータの構成が公知であるとしても、甲2発明を、相違点Aに係る本件訂正発明1の構成となし得ないことは、上記イにおいて検討したとおりである。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲2発明並びに甲1発明または甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(相違点A’)
本件訂正発明2は、ガイドレールが「前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されている」のに対し、甲2発明は、一体型ガイドレール21のガイドレール22は、ベース板23において「前記直交方向において、第1ワイヤ54及び第2ワイヤ58の両方と重なるように配設され」る点。
イ 判断
上記相違点A’について検討する。
本件訂正発明1及び2と甲2発明との相違点について、上昇側ワイヤのみと重なる位置が、本件訂正発明1は「ガイドレール」の「平板部」と特定され(相違点A)、本件訂正発明2は「ガイドレール」と特定される(相違点A’)点で異なるが、その他については同様の相違点である。
そして、上記(1)イにおいて本件訂正発明1と甲2発明との相違点である上記相違点Aについて検討したのと同様の理由により、甲2発明において、下降側ワイヤをガイドレールと重ならないものとし、もって、相違点A’に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明2は、甲2発明並びに甲1発明または甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明1及び2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件訂正発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700688