特許異議申立
2017-700494
ワイヤレギュレータ
- 審判番号
- 2017-700494
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-086013
- 登録番号
- 特許第6025366号(P6025366)
- 請求日
- 2017年05月16日
- 審決日
- 2017年12月25日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】シロキ工業株式会社
- 【権利者代理人】井島 藤治
- 【異議申立人】池内 義真
- 【異議申立人代理人】石野 明則
- 審判長/審判官
- 審判長 前川 慎喜
- 審判官 住田 秀弘
- 審判官 井上 博之
- 分類
- P1651.113-YAA(E05F) / P1651.121-YAA(E05F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6025366号発明「ワイヤレギュレータ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6025366号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
特許第6025366号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6025366号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成24年4月5日に特許出願され、平成28年10月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人池内義真(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年7月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年9月25日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、申立人から平成29年11月9日に意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(3)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「該ガイドレールに沿って設けられ、端部にワイヤエンド部材を有するワイヤと、」と記載されているのを「該ガイドレールに沿って設けられ、端部にスプリングの一方の端部が押接するワイヤエンド部材を有するワイヤと、」に訂正する。
なお、訂正事項1について、訂正請求書には、「・・・端部に、スプリングの一方・・・」と記載されているが、訂正特許請求の範囲に記載されたとおり、上記の「・・・端部にスプリングの一方・・・」とした。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記ガイドレールと対向する面と反対側の面側に、開口を有し、前記開口から前記ワイヤエンド部材が取り付けられるワイヤエンド部材取付部と、」とあるのを、「前記ガイドレールと対向する面と反対側の面から前記ガイドレールと対向する面まで貫通し、前記ワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴であって、前記ガイドレールと対向する面と反対側の面側の前記貫通穴の開口から前記ワイヤエンド部材が取り付けられ、前記ワイヤにテンションが発生するように前記スプリングの他方の端部が押接するワイヤエンド部材取付部と、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「前記開口に、前記開口から離脱する方向に移動する前記ワイヤエンド部材」とあるのを「前記ワイヤエンド部材取付部の開口に、前記ワイヤエンド部材取付部の開口から離脱する方向に移動する前記ワイヤエンド部材」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、「ワイヤエンド部材」について、「スプリングの一方の端部が押接する」構成に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1はワイヤエンド部材を限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
発明の詳細な説明には、「【0027】・・・一方の端部がフランジ部91bに当接可能な第1スプリング93が設けられている。」、及び「【0028】・・・一方の端部がフランジ部95bに当接可能な第2スプリング97が設けられている。」と記載され、図3~図5を参照すると、フランジ部91bに第1スプリング93の一方の端部が当接し、フランジ部95bに第2スプリング97の一方の端部が当接していることが看取できることから、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、「開口」について、「前記ガイドレールと対向する面と反対側の面側に」「有」する「開口」を、「前記ガイドレールと対向する面と反対側の面から前記ガイドレールと対向する面まで貫通し、前記ワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴であって、前記ガイドレールと対向する面と反対側の面側の前記貫通穴の開口」に限定し、また、「ワイヤエンド部材取付部」について、「前記ワイヤにテンションが発生するように前記スプリングの他方の端部が押接する」ものに限定することから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2は、「開口」及び「ワイヤエンド部材取け部」を限定したものであるから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
発明の詳細な説明には、「【0030】・・・他方の端部が第1ワイヤエンド部材91のフランジ部91bに押接することにより、第1ワイヤ55にテンションが発生すると共に、ワイヤエンド部材91は凹部(ワイヤエンド部材取付部)103に取り付けられる。」、及び「【0031】・・・他方の端部が第2ワイヤエンド部材95のフランジ部95bに押接することにより、第2ワイヤ57にテンションが発生すると共に、ワイヤエンド部材91は凹部(ワイヤエンド部材取付部)103に取り付けられる。」と記載され、図5を参照すると、ワイヤエンド部材取付部101(凹部103)は、ガイドレール31と対向する面と反対側の面からガイドレール31と対向する面まで貫通し、ワイヤエンド部材91,95が挿通可能な貫通穴であることが看取できるから、訂正事項2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、「開口」について、「ワイヤエンド部材取付部」または「溝」のどちらの「開口」か不明であったものを、「ワイヤエンド部材取付部の開口」であることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、不明瞭な「開口」という記載を、「ワイヤエンド部材取付部の開口」という明瞭な記載に訂正したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
発明の詳細な説明において、「【0033】また、第1ワイヤエンド部材91,スプリング93が開口から飛び出さないように、凹部103の開口の第1立壁面103a側に、第1ワイヤエンド部材91,スプリング93が当接可能な第1ひれ部103cが形成されている。第1ひれ部103cには、第1ワイヤ55が挿通可能な第1スリット(切れ目)103dが形成されている。また、第2ワイヤエンド部材95,スプリング97が開口から飛び出さないように、凹部103の開口の第2立壁面103b側に、第2ワイヤエンド部材95,スプリング97が当接可能な第2ひれ部103eが形成されている。第2ひれ部103eには、第2ワイヤ57が挿通可能な第2スリット(切れ目)103fが形成されている。」と記載され、また、図5を参照すると、スライダベース71において、第1ワイヤエンド部材91及び第2ワイヤエンド部材95からみて、ガイドレールと対向する面と反対側の面側に、第1ひれ部103c及び第2ヒレ部103eが設けられていることが看取できるから、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(4)一群の請求項について、
訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~3について、請求項1の記載を請求項2または3が直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1及び訂正事項2は、請求項1を訂正し、訂正事項3は、請求項2を訂正するものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、一群の請求項である。
3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1~3についての訂正を認める。
第3 訂正後の請求項1ないし3に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし3に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ウインドガラスの開閉方向に沿って配置されたガイドレールと、
該ガイドレールに沿って設けられ、端部にスプリングの一方の端部が押接するワイヤエンド部材を有するワイヤと、
該ワイヤを前記ガイドレールに沿って移動させる駆動部と、
前記ウインドガラス、前記ワイヤが取り付けられ、前記ガイドレールと対向する面側に前記ガイドレールに係合する係合部を有し、前記ガイドレールに移動可能に設けられたスライダベースと、
を有し、
前記スライダベースは、
前記ガイドレールと対向する面と反対側の面から前記ガイドレールと対向する面まで貫通し、前記ワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴であって、前記ガイドレールと対向する面と反対側の面側の前記貫通穴の開口から前記ワイヤエンド部材が取り付けられ、前記ワイヤにテンションが発生するように前記スプリングの他方の端部が押接するワイヤエンド部材取付部と、
前記ガイドレールと対向する面と反対側の面側に、開口を有し、前記スライダベースの外部から前記ワイヤエンド部材取付部へ前記ワイヤを案内する溝と、
を有することを特徴とするワイヤレギュレータ。
【請求項2】
前記ワイヤエンド部材取付部の開口に、前記ワイヤエンド部材取付部の開口から離脱する方向に移動する前記ワイヤエンド部材が当接可能なひれ部を設けたことを特徴とする請求項1記載のワイヤレギュレータ。
【請求項3】
前記ワイヤエンド部材取付部は、
第1ワイヤエンド部材と第2ワイヤエンド部材とが取り付けられ、
前記第1ワイヤエンド部材が取り付けられる位置と前記第2ワイヤエンド部材が取り付けられる位置とは、前記ワイヤの径方向にオフセットされた位置にあることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤレギュレータ。」
第4 特許異議の申立てについて
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし3に係る特許に対して、平成29年7月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、甲第1号証または甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、または甲第3号証に記載された発明、または甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証または甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[刊行物]
甲第1号証:米国特許出願公開2008/0236049号明細書
甲第2号証:実願証58-28806号(実開昭59-134673号)
のマイクロフィルム
甲第3号証:特開2002-4706号公報
甲第4号証:実願平5-11471号(実開平6-63771号)の
CD-ROM
甲第5号証:特開2003-336439号公報
2 甲号証の記載
(1)取消理由通知において引用した甲第1号証には、段落0021~0023、0027、0028の記載、請求項8、11の記載、及びFig1~7,7A~7Cをみると、「CABLE ATTACHMENT POCKET 34、INTERMEDIATE SECTION 80、CABLE PASSAGE 82が、GUIDE CHANNEL 16に対向する面と反対側の面側に開口を有する」点、及び「CENTER SECTION 78の一部とINTERMEDIATE SECTION 80は、円形の一部を書いた形状を有しており、GUIDE CHANNEL 16と対向する面と反対側の面側に向いた開口部分において両側から開口に向けて張り出した形状を有している」点が看取できることからみて、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「A.DOOR WINDOW 12の開閉方向に沿って配設されたGUIDE CHANNEL 16と、
B.GUIDE CHANNEL 16に沿って設けられ、端部にCOIL SPRING 90及びEND BUTTON 88を有するCABLE 92と、
C.CABLE 92をGUIDE CHANNEL 16に沿って移動させるDRIVE MOTORと、
D.DOOR WINDOW 12、CABLE 92が取り付けられ、GUIDE CHANNEL 16と対向する面側にGUIDE CHANNEL 16に係合するVERTICALLY EXTENDING CHANNEL48及びARMS49,51を有し、GUIDE CHANNEL 16に移動可能に設けられたWINDOW CARRIER ASSEMBLY 18と、
を有し、
E.WINDOW CARRIER ASSEMBLY 18は、
GUIDE CHANNEL 16と対向する面と反対側の面側に、開口を有し、前記開口からCOIL SPRING 90及びEND BUTTON 88を含むcable ends 84 and 86が取り付けられるCABLE ATTACHMENT POCKET 34と、
F.GUIDE CHANNEL 16と対向する面と反対側の面側に、開口を有し、WINDOW CARRIER ASSEMBLY 18の外部からCABLE ATTACHMENT POCKET 34へCABLE 92を案内するCABLE PASSAGE 82と、
を有し、
G.前記開口に、前記開口から離脱する方向に移動するEND BUTTON 88が当接可能な「張り出し」を設けたことを特徴とするWINDOW CARRIER ASSEMBLY FOR AUTOMOTIVE WINDOW REGULATOR。」(下線部分は決定で付加し、その他は申立書11頁9~末行のとおりとした。)
(2)取消理由通知において引用した甲第2号証には、明細書2頁5行~3頁6行、4頁2~13行、4頁17行~5頁7行、5頁13~16行の記載、及び第2図、第3図をみると、「係合部1bは、ガイドレールBと対向する面と反対側の面からガイドレールBと対向する面まで貫通する貫通穴であって、ガイドレールBと対向する面と反対側の面側の貫通穴の開口からニツプルD’が取付けられているものである」点、及び、「スライダC(ブラケット1)は、平板状の部材を凹部1aを湾曲させた構造である」点が看取できることからみて、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「A.窓ガラスAの開閉方向に沿って配設されたガイドレールBと、
B’.ガイドレールBに沿って設けられ、途中部分にニツプルD’を有するワイヤDと、
C.ワイヤDをガイドレールBに沿って移動させる電動モータと、
D.窓ガラスA、ワイヤDが取り付けられ、ガイドレールBと対向する面側にガイドレールBに係合する案内片3,3’を有し、ガイドレールBに移動可能に設けられたスライダCと、
を有し、
E.スライダCは、
ガイドレールBと対向する面と反対側の面からガイドレールBと対向する面まで貫通する貫通穴であって、ガイドレールBと対向する面と反対側の面側の前記貫通穴の開口からニツプルD’が取り付けられる係合部1bと、
F.ガイドレールBと対向する面と反対側の面側に、開口を有し、スライダCの外部から係合部1bへワイヤDを案内する凹部1aと、
を有し、平板状の部材を凹部1aを湾曲させた構造であることを特徴とするワイヤ式ウインドレギュレータ。」(下線部分は決定で付加し、その他は申立書13頁6~19行のとおりとした。)
(3)取消理由通知において引用した甲第3号証には、段落002、007、009、012の記載、及び図1、3、4をみると、「ワイヤー4の端末がワイヤー4の途中部分に設けられ、ワイヤー4より大きい径を有している」点、「係止片9aがガイドレール1と対向する面と反対側の面側に、開口を有し、前記開口からワイヤー4の端末が取り付けられる」点、「溝部11cがガイドレール1と対向する面と反対側の面側に、開口を有し、キャリアプレート6の外部から係止片9aへワイヤーを案内する」点、「ワイヤー4の端末がワイヤー4より大きな径を有していることにより、係止片9aにより端末が係止される」点が看取できることからみて、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認める。
「A.ドアガラス14の開閉方向に沿って配設されたガイドレール1と、
B.ガイドレール1に沿って設けられ、途中部分に端末を有するワイヤー4と、
C.ワイヤー4をガイドレール1に沿って移動させる駆動機構と、
D.ドアガラス14、ワイヤー4が取り付けられ、ガイドレール1と対向する面側にガイドレール1に係合する摺接片8,9を有し、ガイドレール1に移動可能に設けられるキャリアプレート6と、
を有し、
E.キャリアプレート6は、
ガイドレール13と対向する面と反対側の面側に、開口を有し、前記開口からワイヤー4の端末が取り付けられる係止片9aと、
F.ガイドレール1と対向する面と反対側の面側に、開口を有し、キャリアプレート6の外部から係止片9aへワイヤー4を案内する溝部11cと、
を有することを特徴するワイヤ式ウインドレギュレータ。」(申立書14頁25行~15頁9行のとおりとした。)
(4)取消理由通知において引用した甲第4号証には、段落0002、0008~0013、0016の記載によれば、以下の発明が記載されているものと認める。
「A.ウインドガラス51(ウインドガラス)の開閉方向に沿って配設されたガイドレール13(ガイドレール)と、
B.ガイドレール13に沿って設けられ、端部に係止板11a,11a’(ワイヤエンド部材)を有するワイヤ11(ワイヤ)と、
C.ワイヤ11をガイドレール13に沿って移動させるモータ(駆動部)と、
D.ウインドガラス51、ワイヤー11が取り付けられ、ガイドレール13と対向する面側にガイドレール13に係合するレールガイド105(係合部)を有し、ガイドレール13に移動可能に設けられるスライダベース10(スライダベース)と、
を有し、
E.スライダベース10は、
ガイドレール13と対向する面と反対側の面側に、開口を有し、前記開口からスプリング11bを介して係止される係止板11a,11a’が取り付けられるワイヤ係止部102(ワイヤエンド部材取付部)と、
F.ガイドレール13と対向する面と反対側の面側に、開口を有し、スライダベース10の外部からワイヤ係止部102へワイヤ11を案内するワイヤの導出路102b、102b’(溝)と、
G.前記開口に、前記開口から離脱する方向に移動する係止板11a,11a’が当接可能な張出部103a及び内側壁104の上端部分の張出部を設けたことを特徴とするウインドレギュレータ(ワイヤレギュレータ)。」(下線部分は決定で付加し、その他は申立書17頁4~24行のとおりとした。)
(5)取消理由通知において引用した甲第5号証には、段落0016,0017,0019,0021,0023,0025,0026の記載、及び図7,9をみると、「間隔Sは、ワイヤ6a,6bの径方向の間隔である」点、及び「空洞部16a、16bは、円形の一部を欠いた形状を有しており、開口部分において両側から開口に向けて張り出した形状を有している」点が看取できることからみて、以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認める。
「A.ウインドウパネル9の開閉方向に沿って配設されたガイドレール1と、
B.ガイドレール1に沿って設けられ、端部にボール部17a、17bを有するワイヤ6、6a、6bと、
C.ワイヤ6、6a、6bをガイドレール1に沿って移動させるモータ4と、
D.ウインドウパネル9、ワイヤー6、6a、6bが取り付けられ、ガイドレール1と対向する面側にガイドレール1に係合するスリット部11を有し、ガイドレール1と対向する面側にガイドレール1に係合するスリット部11を有し、ガイドレール1に移動可能に設けられたキャリアプレート7と、
を有し、
E’.キャリアプレート7は、
ガイドレール1と対向する面側に、開口を有し、前記開口からボール部17a、17bが取り付けられる空洞部16a、16bと、
F’.ガイドレール1と対向する面側に、開口を有し、キャリアプレート7の外部から前記ワイヤエンド部材取付部へワイヤ6、6a、6bを案内する溝部15a、15bと、
を有し、
G.前記開口に、前記開口から離脱する方向に移動するボール部17a、17bが当接可能な「張り出し部」を設け、
H.空洞部16a、16bは、
ボール部17aと17bとが取り付けられ、
I.ボール部17aが取り付けられる位置とボール部17bが取り付けられる位置とは、ワイヤ6、6a、6bの径方向に間隔S離間した位置にあることを特徴とするワイヤ式ウインドウレギュレータ装置。」(申立書19頁13行~20頁5行のとおりとした。)
3 取消理由通知に記載した取消理由1(特許法第29条第1項第3号)について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明または甲4発明を対比すると、「ワイヤエンド部材取付部」について、本件発明1は、「前記ガイドレールと対向する面と反対側の面から前記ガイドレールと対向する面まで貫通し、前記ワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴であ」るのに対し、甲1発明または甲4発明は、そのような貫通穴ではない点で相違している。
よって、本件発明1は、甲1発明または甲4発明と同一ではないから、甲第1号証または甲第4号証に記載された発明ではない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記(1)の判断と同様の理由により、甲1発明または甲4発明と同一ではないから、甲第1号証または甲第4号証に記載された発明ではない。
4 取消理由通知に記載した取消理由2(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1について
ア 甲2発明を主引用発明として検討
(ア)本件発明1と甲2発明を対比すると、ワイヤについて、本件発明1は、「端部にスプリングの一方の端部が押接するワイヤエンド部材を有する」のに対し、甲2発明は、途中にニツプルD’を備え、スプリングの一方の端部が押接するものでもない点(以下「相違点1」という。)、及び、ワイヤエンド部材取付部について、本件発明1は、「前記ワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴であって、」「前記ワイヤにテンションが発生するように前記スプリングの他方の端部が押接する」のに対し、甲2発明は、ニツプルD’が挿通可能かどうか不明な貫通穴であって、ワイヤにテンションが発生するようにスプリングの他方の端部が押接するものでもない点(以下「相違点2」という。)、で相違している。
(イ)まず、上記相違点1について検討する。
ワイヤの端部にワイヤエンド部材やスプリングを設けることは、甲第1号証に記載されているように、従来より周知または公知の技術ではあることから、甲2発明において、ワイヤの途中に備えたニツプルD’を、上記周知技術のように、ワイヤの端部のワイヤエンド部材やスプリングに替えることにより、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)次に、上記相違点2について検討する。
甲2発明の係合部1bは、貫通穴であるものの、ニツプルD’が挿通可能なものかどうか不明であるから、仮に、ニツプルD’をワイヤエンド部材に替えたとしても、係合部1bが、ワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴となるものではない。
また、貫通穴を、ワイヤエンド部材が挿通可能なものとすることは、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第5号証に記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、ワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴であることによって、「請求項1に係る発明は、ワイヤエンド部材はワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴に取り付けられてることにより、ワイヤエンド部材がワイヤエンド部材取付部に取り付けられる際に、ガイドレールと対向する面を超えて挿通可能なので、組み付け性が良いという効果を有します。」(平成29年9月25日付け意見書の5頁15~18行)との、顕著な効果を発揮するものである。
さらに、甲2発明のスライダCは、平板状の部材を凹部1aを湾曲させた構造であるから、上記(イ)で説示したとおりに、ニツプルD’をワイヤエンド部材とスプリングに替えたとしても、平板状の部材であるスライダCでは、テンションが発生するようにスプリングの他方の端部が押接することができず、押設するためには、スライダCを、スプリングの他方の端部が押接するような構成に変更することが必要である。
以上のことから、相違点2に係る構成は、甲2発明、及び甲第1号証、甲第3号証ないし甲第5号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に想到し得たことではない。
(エ)以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第2号証及び甲第1号証、甲第3号証ないし甲第5号証に記載した発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲3発明を主引用発明として検討
(ア)本件発明1と甲3発明を対比すると、ワイヤについて、本件発明1は「端部にスプリングの一方の端部が押接するワイヤエンド部材を有する」のに対し、甲3発明は、途中に端末を備え、スプリングの一方の端部が押接するものでもない点(以下「相違点A」という。)、及び、ワイヤエンド部材取付部について、本件発明1は、「前記ガイドレールと対向する面と反対側の面から前記ガイドレールと対向する面まで貫通し、前記ワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴であって、」「前記ワイヤにテンションが発生するように前記スプリングの他方の端部が押接する」のに対し、甲3発明は、貫通穴ではなく、ワイヤにテンションが発生するようにスプリングの他方の端部が押接するものでもない点(以下「相違点B」という。)、で相違している。
(イ)まず、上記相違点Aについて検討する。
ワイヤの端部にワイヤエンド部材やスプリングを設けることは、甲第1号証に記載されているように、従来より周知または公知の技術であることから、甲3発明において、ワイヤの途中に有する端末を、上記周知技術のように、ワイヤの端部のワイヤエンド部材やスプリングに替えることにより、上記相違点Aに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)次に、上記相違点Bについて検討する。
上記相違点Bのワイヤエンド部材取付部を貫通穴とすることについては、甲第1号証に記載も示唆もされておらず、さらに甲第4号証ないし甲第5号証にも記載されていない。
なお、甲第2号証には、凹部1aを貫通穴とすることが記載されている。
しかしながら、該凹部1aは、貫通穴であるものの、ニツプルD’が挿通可能かどうか不明であるから、甲第2号証に記載された貫通穴を甲3発明の係止片9aに適用したとしても、ワイヤエンド部材が挿通可能な貫通穴となるものではない。
よって、相違点Bに係る構成は、甲3発明及び甲第1、2、4及び5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たことではない。
(エ)以上のことから、本件発明1は、甲第3号証及び甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 甲1発明または甲4発明を主引用発明として検討
(ア)上記3において、甲1発明または甲4発明を引用発明として、同一性を検討しているので、予備的に、甲1発明または甲4発明を主引用発明として、容易想到性について検討する。
本件発明1と、甲1発明または甲4発明とを対比すると、上記3(1)で述べた相違点が存在するところ、当該相違点については、上記アやイで説示したことからみて、当業者が容易になし得たことではない。
よって、本件発明1は、甲第1号証または甲第4号証、及び甲第2号証、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記(1)の判断と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明3について
本件発明2は、本件発明1または2の構成をすべて含み、さらに減縮したものであるから、上記(1)、(2)の判断と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、平成29年7月24日付け取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700494