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特許異議申立

2024-701069

外壁下地材及び外壁構造

審判番号
2024-701069
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-008702
登録番号
7479036
請求日
2024年11月01日
審決日
2025年09月30日
公報発行日
2026年01月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大建工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
  • 【権利者】ビッグテクノス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
  • 【異議申立人】金澤 毅
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 澤田 真治
  • 審判官 油原 博
分類
P1651.121-YAA(E04B) / P1651.536-YAA(E04B) / P1651.851-YAA(E04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7479036号発明「外壁下地材及び外壁構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7479036号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2~7〕について訂正することを認める。 特許第7479036号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7479036号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和5年1月24日の出願であって、令和6年4月25日にその特許権の設定登録がされ、同年5月8日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許について、令和6年11月1日に、特許異議申立人 金澤 毅(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1~7に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 その後の経緯は、次のとおりである。 令和 7年 3月28日付け 取消理由通知書 同年 5月30日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 8月 7日 申立人による意見書の受付 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年5月30日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第7479036号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項2に 「上記シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けられて該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有している」と記載されているのを、 「上記シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けられて該シート本体と上記基材とを接着する、透湿抵抗値が0.06m2・s・Pa/μg以下になるように構成された透湿性を有する粘着剤層とを有している」 に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~7も同様に訂正する。)。 2 訂正の単位について 訂正事項1に係る訂正前の請求項2について、請求項3~7は請求項2を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項2~7に対応する訂正後の請求項2~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項に係る訂正は、当該一群の請求項〔2~7〕に対し請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び独立特許要件について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項2に係る発明の「粘着剤層」が有している「透湿性」について、「透湿抵抗値が0.06m2・s・Pa/μg以下になるように構成された」ことを特定して限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」といい、本件特許明細書に特許請求の範囲及び図面を含むものを「本件特許明細書等」という。)の【0053】には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。 「【0053】 なお、本実施形態1では、粘着剤層14は、JIS A6111に準拠して測定される透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となる(透湿性を有する)ように構成され、シート本体13の片面全体を覆っている。」 よって、訂正事項1は、本件特許明細書の【0053】の記載に基づくものであって、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項1は、上記アのとおり「粘着剤層」が有している「透湿性」について、「透湿抵抗値が0.06m2・s・Pa/μg以下になるように構成された」ことを減縮するものであって、発明のカテゴリーを変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 申立人の意見書における主張について 申立人は、令和7年8月7日受付の意見書において、本件訂正の適否について、特段の主張は行っていない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔2~7〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、各々を「本件特許発明1」等という。)は、令和7年5月30日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の、請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 建物の外壁に用いられる外壁下地材であって、 耐力面材となる矩形板状の基材と、 上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、 上記透湿防水シートは、 シート本体と、 上記シート本体の片面全体を覆い、該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有し、 透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成されている ことを特徴とする外壁下地材。 【請求項2】 建物の躯体の屋外側に複数取り付けられて外壁を構成する外壁下地材であって、 耐力面材となる矩形状の1枚の板状部材で構成された基材と、 上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、 上記透湿防水シートは、 透湿性を有するシート本体と、 上記シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けられて該シート本体と上記基材とを接着する、透湿抵抗値が0.06m2・s・Pa/μg以下になるように構成された透湿性を有する粘着剤層とを有している ことを特徴とする外壁下地材。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の外壁下地材であって、 上記基材は、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成されている ことを特徴とする外壁下地材。 【請求項4】 建物の外壁構造であって、 上記建物の躯体の屋外側に、請求項1又は2に記載の外壁下地材が複数取り付けられ、 上記複数の外壁下地材の屋外側に、上下に延びる複数の胴縁が取り付けられ、 上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、 上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間であって、上記複数の胴縁の隣り合う各2本の胴縁間には、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されている ことを特徴とする外壁構造。 【請求項5】 請求項4に記載の外壁構造において、 上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材の上下方向に延びる継ぎ目を屋外側から覆い隠す位置に設けられている ことを特徴とする外壁構造。 【請求項6】 請求項5に記載の外壁構造において、 上記複数の外壁下地材は、上記建物の躯体である複数の柱に複数の釘で固定され、 上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材を上記複数の柱に固定するための上記複数の釘及び釘穴を屋外側から覆い隠す位置に設けられている ことを特徴とする外壁構造。 【請求項7】 建物の外壁構造であって、 上記建物の躯体の屋外側に、請求項1又は2に記載の外壁下地材が複数取り付けられ、 上記複数の外壁下地材の屋外側に、左右に延びる複数の胴縁が取り付けられ、 上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、 上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間に、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されるように、上記各胴縁の上下の空間を連通する連通路が形成された通気胴縁である ことを特徴とする外壁構造。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について (1)取消理由の概要 訂正前の請求項2~7に係る特許に対して、当審において、令和7年3月28日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1.(進歩性)本件特許の請求項2~7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)当審の判断 ア 本件特許発明1~7について 本件特許発明1~7は、上記第3に記載したとおりのものである。 イ 甲号証について 甲第1号証:特開2019-5960号公報(以下「甲1」という。) 甲第2号証:特開2014-224447号公報(以下「甲2」という。) 甲第3号証:特開平9-4075号公報(以下「甲3」という。) 甲第4号証:特開2009-269231号公報(以下「甲4」という。) 甲第5号証:特開2022-156992号公報(以下「甲5」という。) 甲第6号証:特開2004-168983号公報(以下「甲6」という。) 甲第7号証:特開2018-193693号公報(以下「甲7」という。) 甲第8号証:特開2017-25670号公報(以下「甲8」という。) (ア)甲1、甲1発明 a 記載事項 本願の出願日前の平成31年1月17日に発行された甲1には、次の事項が記載されている。 (a)「【0011】 図1~図4は、本開示の建材用積層体を例示する概略斜視図である。図1に示すように、建材用積層体10は、木質基材1と、木質基材1の一方の面側の遮熱透湿防水シート2とを有する。また、本開示の建材用積層体10は、図2に示すように、木質基材1と遮熱透湿防水シート2との間に、接着層3を有していてもよい。さらに、本開示の建材用積層体10は、図3に示すように、木質基材1および遮熱透湿防水シート2を固定するタッカー針4を有していてもよい。すなわち、遮熱透湿防水シート2が、タッカー針4により木質基材1に固定されていてもよい。さらにまた、本開示の建材用積層体10は、図4に示すように、木質基材1と遮熱透湿防水シート2との間に接着層3を有し、かつ木質基材1および遮熱透湿防水シート2を固定するタッカー針4を有していてもよい。」 (b)「【0016】 遮熱透湿防水シートが有する遮熱性は、例えば住宅の壁や屋根の下地に本開示の建材用積層体を用いた際、外部からの熱線を良好に遮断することができる程度であることが好ましい。具体的には、本開示における遮熱透湿防水シートは、波長10μmにおける反射率が、例えば20%以上であることが好ましく、中でも30%以上であることが好ましく、特に40%以上であることが好ましい。遮熱透湿防水シートの波長10μmにおける反射率が上記下限を有することで、良好な遮熱性を得ることができる。遮熱透湿防水シートの上記反射率は、フーリエ変換赤外分光分析装置(Nicolet Magna 550)の試料室に金コーティング積分球を装着し、金コーティング表面鏡の分光反射率を100%としたときの、波長10μmにおける反射率を測定することで求めることができる。 【0017】 遮熱透湿防水シートが有する透湿性は、例えば住宅の壁や屋根の下地に本開示の建材用積層体を用いた際、内部から蒸気を良好に透過させることができる程度であることが好ましい。具体的には、本開示における遮熱透湿防水シートの透湿抵抗が、例えば0.65m2・s・Pa/μg以下であることが好ましく、中でも0.30m2・s・Pa/μg以下であることが好ましく、特に0.24m2・s・Pa/μg以下であることが好ましく、さらには0.19m2・s・Pa/μg以下であることが好ましい。遮熱透湿防水シートの透湿抵抗が上記上限を有することにより、良好な通気性を得ることができ、結露等の発生を抑制することができる。なお、透湿抵抗は、JIS A 1324に準拠した方法により測定することができる。 【0018】 遮熱透湿防水シートが有する防水性は、例えば住宅の壁や屋根の下地に本開示の建材用積層体を用いた際、外部からの水の侵入を良好に防止することができる程度であることが好ましい。具体的には、本開示における遮熱透湿防水シートは、JIS L 1092(繊維製品の防水性試験法、耐水度試験A法(低水圧法))による耐水圧が、例えば1kPa以上であることが好ましく、中でも5kPa以上であることが好ましく、特に10kPa以上であることが好ましい。」 (c)「【0091】 2.木質基材 本開示における木質基材は、上述した遮熱透湿防水シートが一方の面側に配置される部材である。 【0092】 本開示における木質基材としては、一般的な建材に用いられる木製の材料や、木材繊維を加工して形成される木質材料、枠組壁工法や木造軸組工法の枠組体が挙げられる。具体的な木質基材としては、例えば、インシュレーションボード、シージングボード、中密度木質繊維板(MDF)、高密度木質繊維板(HDF)、パーティクルボード(PB)、ランバーコア、単板積層材(LVL)、配向性ボード(OSB)、パララム(PSL)、ウエハーボード(WB)等が挙げられる。本開示においては、建材用積層体の用途に応じて木質基材を適宜選択することができる。」 (d)「【0099】 本開示の建材用積層体は、上述した木質基材と遮熱透湿防水シートとを有していればよいが、必要に応じて、木質基材と遮熱透湿防水シートとの間に接着層を有していてもよい。 【0100】 図2に示すように、木質基材1と遮熱透湿防水シート2との間に接着層3を有する場合、接着層は、木質基材1の表面に遮熱透湿防水シート2を接着して固定することができるように配置することが好ましい。接着層3は、木質基材1と遮熱透湿防水シートとの間に、パターン状に形成されていてもよく、全面に形成されていてもよい。本開示においては、接着層が、木質基材と遮熱透湿防水シートとの間に、パターン状に形成されていることが好ましい。接着層が木質基材と遮熱透湿防水シートとの間の全面に形成される場合には、遮熱透湿防水シートの一方の全面が接着層により覆われることで、遮熱透湿防水シートの透湿性が十分に得られないおそれがあるからである。 【0101】 木質基材と遮熱透湿防水シートとの間に、接着層をパターン状に形成するとは、接着層が配置された平面視上の面積の割合が、木質基材および遮熱透湿防水シートが平面視上重なる面積に対して、例えば、10%以上50%以下である好ましく、中でも15%以上45%以下であることが好ましく、特に20%以上40%以下であることが好ましい。接着層が配置された平面視上の面積の割合が上記範囲内であることで、木質基材に遮熱透湿防水シートを固定することができるとともに、遮熱透湿防水シートの表面が接着層で覆われることによる透湿性の低下を抑制することができる。なお、ここでいう「固定」には、完全なる固定の他にも、仮固定等の一時的な固定も包含される。 【0102】 ここで、「接着層が配置された平面視上の面積の割合」とは、例えば、図10(a)に示すように接着層3をドット状に形成し、図10(b)に示すように当該接着層3を平面視したときに、接着層3を画定する線3Rで囲われた総面積の割合を指す。また、「木質基材および遮熱透湿防水シートが平面視上重なる面積」とは、例えば、図10(b)に示すように、建材用積層体を平面視したときに、木質基材1を画定する線1Rで囲われた領域と、遮熱透湿防水シート2を画定する線2Rで囲われた領域とが、平面視上重複する面積を指す。したがって、図10(a)、(b)の場合には、「木質基材および遮熱透湿防水シートが平面視上重なる面積」とは、線1Rで囲われた領域の面積に相当する。なお、図10(a)は、説明を簡単にするために、各部材を離して図示している。 【0103】 木質基材と遮熱透湿防水シートとの間に、パターン状に形成された接着層の形状は、特に限定されないが、例えば、図10(a)に示すようにドット状であってもよく、図11(a)に示すように枠状であってもよく、あるいは図11(b)に示すような格子状であってもよい。なお、図示はしないが、ドット状、枠状および格子状の組み合わせであってもよい。本開示においては、パターン状の接着層を容易に形成することができるという観点から、接着層の形状がドット状であることが好ましい。なお、図11(a)、(b)において説明していない符号については、上述した図3と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。また、図11(a)、(b)は、説明を簡単にするために、各部材を離して図示している。 【0104】 本開示における接着層は、木質基材の表面に遮熱透湿防水シートを固定するための部材であり、所定の接着性を有することが好ましい。接着層が有する接着性は、木質基材の表面に遮熱透湿防水シートを固定することができる程度の接着性であればよく、建材用積層体の用途に応じて適宜調整することができる。 【0105】 本開示における接着層を構成する接着剤には、一般的な建材に用いられる接着剤を用いることができる。このような接着剤としては、例えば、1液あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のラミネート用接着剤等が挙げられる。 【0106】 本開示における接着層の厚みは、接着剤の種類や求める接着性に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。」 (e)「【0117】 [実施例1] 木質基材として、構造耐力面材パーティクルボード(幅998mm、長さ2440mm、厚み9mm 日本ノボパン工業株式会社製 「novopan STPII」)を準備した。また、遮熱透湿防水シート(波長10μmにおける反射率35%、透湿抵抗0.12m2・s・Pa/μg、耐水圧36kPa セーレン株式会社製)を準備した。 【0118】 次に、得られた木質基材および遮熱透湿防水シートを、接着剤により積層して固定した。このようにして、木質基材および遮熱透湿防水シートが接着層を介して積層された建材用積層体を得た。なお、接着層が配置された平面視上の面積の割合は、木質基材および遮熱透湿防水シートが平面視上重なる面積に対して、30%であった。」 b 甲1発明 上記aで示した事項からみて、甲1には下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「建材用積層体10は、木質基材1と、木質基材1の一方の面側の遮熱透湿防水シート2とを有し、木質基材1と遮熱透湿防水シート2との間に、接着層3を有し(【0011】)、 遮熱透湿防水シートが有する透湿性は、住宅の壁や屋根の下地に建材用積層体を用いた際、内部から蒸気を良好に透過させることができる程度であることが好ましく、遮熱透湿防水シートの透湿抵抗が、0.19m2・s・Pa/μg以下であり(【0017】)、 木質基材としては、一般的な建材に用いられる木製の材料や、木材繊維を加工して形成される木質材料、枠組壁工法や木造軸組工法の枠組体が挙げられ、木質基材としては、中密度木質繊維板(MDF)が挙げられ(【0092】)、 木質基材1と遮熱透湿防水シート2との間に接着層3を有する場合、接着層は、木質基材1の表面に遮熱透湿防水シート2を接着して固定することができるように配置することが好ましく、接着層3は、木質基材1と遮熱透湿防水シートとの間に、パターン状に形成されていても、全面に形成されていてもよく、接着層が木質基材と遮熱透湿防水シートとの間の全面に形成される場合には、遮熱透湿防水シートの一方の全面が接着層により覆われることで、遮熱透湿防水シートの透湿性が十分に得られないおそれがあり(【0100】)、 接着層が配置された平面視上の面積の割合が上記範囲内であることで、木質基材に遮熱透湿防水シートを固定することができるとともに、遮熱透湿防水シートの表面が接着層で覆われることによる透湿性の低下を抑制することができ(【0101】)、 木質基材と遮熱透湿防水シートとの間に、パターン状に形成された接着層の形状は、ドット状であってもよく、枠状であってもよく、格子状であってもよく(【0103】)、 住宅の壁や屋根の下地に用いる(【0017】) 建材用積層体10(【0011】)。」 (イ)甲2、甲2に記載の技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の平成26年12月4日に発行された甲2には、次の事項が記載されている。 「【0080】 [透湿性試験] 実施例及び比較例の透湿防水シートについて、JIS Z0208に準拠した方法により透湿度を算出し、JIS A6111記載の計算式(下記式)で透湿抵抗を算出した。 【0081】 Pe=574×(1/Rv) (式中、Peは透湿度を示し、Rvは透湿抵抗を示す) ◎:透湿抵抗が0.19以下である ×:透湿抵抗が0.19より大きい。」 b 甲2に記載の技術事項 上記aからみて、甲2には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲2に記載の技術事項」という。)。 「JIS A6111記載の計算式であるPe=574×(1/Rv)を適用することによって、JIS Z0208に準拠した方法により算出された透湿度Peから、透湿抵抗Rvの値を算出すること(【0080】、【0081】)。」 (ウ)甲3、甲3に記載された技術事項 本願の出願日前の平成9年1月7日に発行された甲3には、次の事項が記載されている。 (a)「【0016】本発明では、透湿性及び防水性を有する合成繊維不織布の片側面に、防水性及び釘孔シール性を有する塗覆層を設けた場合のJIS Z 0208に規定する透湿度が3000g/m2・24h以上であることが肝要である。透湿度が3000g/m2・24h未満では、特に寒冷地などにおける施工後の建築物内部の結露を完全に防止することが期待できない。本発明の透湿性防水シートを製造するに際しては、不織布シートに占める塗覆層の面積比を予め計算しておいて、透湿度が既知の不織布シートを選定することができる。」 (b)「【0021】 【実施例】JIS Z 0208に規定する透湿度が4147g/m2・24hであり、厚さ0.17mm、目付量61g/m2、幅90cmの高密度ポリエチレン極細繊維不織布に、幅方向に25cmの間隔、長手方向に40cmの間隔をおいて幅5cm、厚さ0.5mmのゴムアスファルトからなる帯状に連続する塗覆層を格子状に形成して透湿性防水シートを得た。塗覆層を設けた後のシートの透湿度を計算すると3072g/m2・24hである。このシートを壁下葺材として用い、さらにその外側に通気用空間を設けて施工したところ、建築物内部の結露を防止する効果の大きいことが確認された。」 b 甲3に記載の技術事項 上記aからみて、甲3には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲3に記載の技術事項」という。)。 「透湿性及び防水性を有する合成繊維不織布の片側面に、防水性及び釘孔シール性を有する塗覆層を設けた場合のJIS Z 0208に規定する透湿度が3000g/m2・24h以上である透湿性防水シートであって(【0016】)、塗覆層を設けた後のシートの透湿度を計算すると3072g/m2 ・24hであり、このシートを壁下葺材として用い、さらにその外側に通気用空間を設けて施工したところ、建築物内部の結露を防止する効果の大きいこと(【0021】)。」 (エ)甲4、甲4に記載された技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の平成21年11月19日に発行された甲4には、次の事項が記載されている。 (a)「【0001】 本発明は、壁体などの構築物の防水や結露防止などに好適な建材用透湿防水シートに関する。 ・・・ 【0008】 以下に本発明を実施するための最良の形態について詳述する。 なお、図1は本発明の建材用透湿防水シート1の一例を示す模式断面図であり、図2は本発明の建材用透湿防水シート1の他の一例を示す模式断面図である。 図1、2からも明らかなように本発明の建材用吸湿防水シート1は、表面から特定の形状と表面粗さを有する通気性補強材11、透湿防水膜12、粘着剤13(裏面)の層構成(図1)、或いは特定の形状と表面粗さを有する通気性補強材11、透湿防水膜12、通気性補強材14、粘着剤13(裏面)の層構成を有している。」 (b)「【0011】 本発明の透湿防水シートを構成する透湿防水膜12としては、例えば、無機充填材、有機充填材或いは可塑剤などを含有する合成樹脂からなるフィルムから充填材や可塑剤などを溶剤で溶出させる方法や、無機充填材又は有機充填材を含有する合成樹脂からなるフィルムを一軸或いは二軸に延伸することで製造される微多孔性のフィルムが挙げられる。これらの中でも本発明においては無機充填材含有合成樹脂フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる微多孔性のフィルムを透湿防水膜12として使用するのが好ましい。 【0012】 これらの中でも、壁面に使用した場合の内部の湿気を放出する上で透湿防水膜12の水蒸気透過率が1,000~20,000g/m2・24h、特に2,000~10,000g/m2・24hであるものを使用することが好ましい。また、外部から水分が浸入するのを防止する上で耐水度が50cm・H2O以上、特に100cm・H2O以上が好ましい。 なお、合成樹脂としては、特に制限はないが高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などのポリオレフィン樹脂を使用するのが好ましい。無機充填材としては炭酸カルシウム、タルク、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナなどが挙げられるが、通常、炭酸カルシウムが好適に使用される。 【0013】 図1に示す本発明の実施形態を示す建材用透湿防水シート1は、上述した透湿防水膜12の表面に通気性補強材11が積層され、裏面側(反対面)には粘着剤13が塗布された構造となっている。粘着剤13としては特に制限はなく、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、ビニルエーテル系、シリコーン系、アミド系及びスチレン系粘着剤、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー及びエチレン系不飽和カルボン酸やその無水物でグラフト変性された酸変性オレフィン樹脂等の各種粘着剤が好適に用いられ、また、その形態は、溶液型、エマルジョン型、ホットメルト型等いずれであってもよい。前記粘着剤層には、粘着特性の制御等を目的として必要に応じて、例えばα-ピネンやβ-ピネン重合体、ジテルペン重合体、α-ピネン・フェノール共重合体等のテルペン系樹脂、脂肪族系や芳香族系、脂肪族・芳香族共重合体系等の炭化水素系樹脂、その他ロジン系樹脂やクマロンインデン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂やキシレン系樹脂等適当な粘着付与剤を配合できる。 ・・・ 【0015】 粘着剤13の塗布方法については特に制限はないが、例えば、溶液型やエマルジョン型の粘着剤を使用する場合はニップコーター、リバースコーター、グラビアコーター、コンマコーター等で、ホットメルト粘着剤の場合はホイルタイプ或いはノズルタイプの塗布装置を用いて塗布するのが一般的である。また、粘着剤の塗布形状としては、上述した透湿防水膜12の透湿防水性を損なわないようにする必要がある。具体的には、ストライプ状、ドット状、格子状、網目状等のように非塗布部が生じる形状に塗布するのが好ましい。この非塗布部の面積割合は好ましくは30%~98%、好ましくは50~98%である。特に、本発明においては粘着剤としてホットメルト粘着剤を使用し、ノズルタイプの塗布装置を用いてドット状或いは繊維状にして吹き付け塗布した場合、粘着剤の非塗布部の面積割合を70%以上、例えば90%程度とした場合であっても全面に渡って均一に塗布でき、しかも十分な粘着力を発現することができるのでより好ましい。 ・・・ 【0017】 以下、本発明を実施例および比較例によって詳細に説明する。なお、得られた建材用透湿防水シートは以下の試験方法で評価した。 [表面粗度] 透湿防水シートの表面の算術平均粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(Sm)はJIS B0601-1994に準拠して測定した。 [水蒸気透過率] JIS Z 0208(カップ法)に準拠して、恒温恒湿装置条件B(40℃、90%RH)で測定した。 [耐水度] JIS L 1092(静水圧法、A法(低水圧法))に準拠して測定した。 [粘着剤非塗布部の面積割合] シートの全面に対する粘着剤非塗布部の面積割合は、得られる建材用透湿防水シートの水蒸気透過率と、粘着剤塗布前の水蒸気透過率との比から下記式により求めた。 面積割合(%)=Vs/Vi×100 但し、Vs:建材用透湿防水シートの水蒸気透過率 Vm:粘着剤塗布前の水蒸気透過率 (c)「【0024】 [実施例4、5、比較例4~6] 粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用し、グラビアロールを使用して塗布部の巾が2mm、非塗布部の巾が1mmとなるように長手方向に連続してストライプ状に塗布した以外は実施例1と同様にして建材用透湿防水シートを得た。得られた、建材用透湿防水シートの水蒸気透過率、耐水度、ロール巻き特性を表3に示す。また、アクリル系粘着剤塗布前の水蒸気透過率6,846g/m2・24hから求めた粘着剤非塗布部の面積割合についても表3に示す。 【0025】 【表3】 [図:0001431130000001.jpg] 」 b 甲4に記載の技術事項 上記aからみて、甲4には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲4に記載の技術事項」という。)。 「建材用吸湿防水シート1は、表面から特定の形状と表面粗さを有する通気性補強材11、透湿防水膜12、粘着剤13(裏面)の層構成を有し(【0008】)、 透湿防水膜12の表面に通気性補強材11が積層され、裏面側(反対面)には粘着剤13が塗布された構造となっており(【0013】)、 粘着剤の塗布形状としては、上述した透湿防水膜12の透湿防水性を損なわないようにする必要があり、ストライプ状、ドット状、格子状、網目状等のように非塗布部が生じる形状に塗布するのが好ましく(【0015】)、 水蒸気透過率を、JIS Z 0208(カップ法)に準拠して、恒温恒湿装置条件B(40℃、90%RH)で測定し、粘着剤非塗布部の面積割合を、シートの全面に対する粘着剤非塗布部の面積割合は、得られる建材用透湿防水シートの水蒸気透過率と、粘着剤塗布前の水蒸気透過率との比から下記式により求め、 面積割合(%)=Vs/Vi×100 但し、Vs:建材用透湿防水シートの水蒸気透過率 Vm:粘着剤塗布前の水蒸気透過率 (【0017】)、 水蒸気透過率は3,356g/m2・24h、面積割合は49%である(【0025】の実施例4)、 壁体などの構築物の防水や結露防止などに好適な建材用透湿防水シート(【0001】)。」 (オ)甲5、甲5に記載の技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の令和4年10月14日に発行された甲5には、次の事項が記載されている。 (a)「【0037】 -屋根構造の構成- 図2~図4に示すように、屋根構造1は、屋根葺材10と、屋根下地材20と、断熱材30とを備えている。屋根葺材10と屋根下地材20は、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の上方に施工されている。複数の垂木2,…,2の下端面には、石膏ボード3が取り付けられている。なお、図2中、符号7は鼻隠し、符号8は水切り、符号9aは棟包み、符号9bは棟換気部材である。 【0038】 屋根構造1では、断熱材30は、ロックウールによって構成され、複数の垂木2,…,2の各間に設けられている。断熱材30は、高さが、複数の垂木2,…,2の成よりも低くなるように形成されている。そのため、屋根下地材20の下方には、垂木2に沿って軒先6側から棟木5側へ延びる通気路40が形成されている。」 (b)「【0050】 〈屋根下地材の詳細な構成〉 図2~図4に示すように、屋根下地材20は、野地板21と、防水シート22とを備えている。なお、本実施形態1では、野地板21と防水シート22とは、いずれも透湿性と防水性とを兼ね備えている。そのため、本実施形態1では、屋根葺材10と屋根下地材20との間に屋外と連通する連通路が設けられていない。つまり、屋根葺材10と屋根下地材20とは大部分が当接し、屋根葺材10と屋根下地材20との間に空間が形成されていても屋外と連通していない。 【0051】 [野地板] 野地板21は、密度(g/cm3)が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成されている。本実施形態では、密度0.79g/cm3の厚さ9.2mm厚の中密度繊維板を、野地板21として用いている。」 (c)「【0060】 [防水シート] 図3に拡大して示すように、防水シート22は、シート本体22aと、該シート本体22aの下面に形成された粘着剤層(透湿粘着剤層)22bとを有している。防水シート22は、JIS A6111に準拠して測定した透湿抵抗が0.6m2・s・Pa/μg以下に構成されている。 【0061】 本実施形態1では、シート本体22aは、JIS A6111に準拠して測定される透湿抵抗が0.4m2・s・Pa/μg以下となる透湿性を有する透湿防水シートで構成されている。より具体的には、本実施形態1では、シート本体22aは、多数の微細孔(直径0.5μm程度)が設けられた樹脂フィルムで構成され、透湿抵抗が0.4m2・s・Pa/μg以下に構成されている。なお、シート本体22aとして用いる透湿防水シートは、JIS A6111に準拠したものであればいかなるものを用いてもよく、不織布で構成してもよい。また、これらを積層したものとしてもよい。 【0062】 粘着剤層22bは、JIS A6111に準拠して測定される透湿抵抗が0.4m2・s・Pa/μg以下となるような透湿性を有する透湿粘着剤層に構成されている。具体的には、本実施形態1では、粘着剤層(透湿粘着剤層)22bは、(メタ)アクリル系ポリマー5~60重量%に親水性化合物であるポリプロピレングリコールを添加し、溶媒によって全体が100重量%に調整されたアクリル系粘着剤組成物と架橋剤としてイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合した溶液をシート本体22aの下面に塗布又は転写することによって形成されている。ここで用いる(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えば、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。なお、アクリル系粘着剤組成物中、ポリプロピレングリコールは、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して1~20重量部の割合で添加されている。添加量が1重量部より少ないと粘着剤層22bに所望の透湿抵抗(0.4m2・s・Pa/μg以下)を与えることができず、添加量が20重量部より多いと正常な粘着剤層22bの形成が困難であるため、添加量は上記の範囲が好ましい。」 (d)「【図3】 [図:0001431130000002.jpg] 」 b 甲5に記載の技術事項 上記aからみて、甲5には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲5に記載の技術事項」という。)。 「屋根構造1は、屋根葺材10と、屋根下地材20と、断熱材30とを備え(【0037】)、屋根下地材20の下方には、垂木2に沿って軒先6側から棟木5側へ延びる通気路40が形成され(【0038】)、屋根下地材20は、野地板21と、防水シート22とを備え、野地板21と防水シート22とは、いずれも透湿性と防水性とを兼ね備えており(【0050】)、防水シート22は、シート本体22aと、該シート本体22aの下面に形成された粘着剤層(透湿粘着剤層)22bとを有し、防水シート22は、JIS A6111に準拠して測定した透湿抵抗が0.6m2・s・Pa/μg以下に構成され(【0060】)、粘着剤層22bは、JIS A6111に準拠して測定される透湿抵抗が0.4m2・s・Pa/μg以下となるような透湿性を有する透湿粘着剤層に構成されており、具体的には、粘着剤層(透湿粘着剤層)22bは、(メタ)アクリル系ポリマー5~60重量%に親水性化合物であるポリプロピレングリコールを添加し、溶媒によって全体が100重量%に調整されたアクリル系粘着剤組成物と架橋剤としてイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合した溶液をシート本体22aの下面に塗布又は転写することによって形成され、アクリル系粘着剤組成物中、ポリプロピレングリコールは、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して1~20重量部の割合で添加されていること(【0062】)。」 (カ)甲6、甲6に記載の技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の平成16年6月17日に発行された甲6には、次の事項が記載されている。 (a)「【0024】 この発明の建築材料は、建築物の部分構造のために用いられるブロック、柱状、シートまたはパネル材その他、いわゆる建材と呼ばれるものを含み、建具や家具の素材をも含むものである。 【0025】 特に建築材料の中でも、木質ボ-ドなどの木質系建築材料に対するこの発明の効果は大きい。木質ボ-ドなどの木質系建築材料を製造する際に使用する木材片は、特に木材の種類を限定したものではなく、林地残廃材、小径木、合板・製材工場残廃材、製紙未利用チップ、建築解体材などから得られるチップを利用できる。」 【0026】 このようなチップは、高温高圧で熱分解することによって、繊維(ファイバー)化し、接着剤と撥水剤を配合してボードに熱圧成形することができる。 【0027】 木質ボードは、JIS A 5905に基づいて、ハードボード、MDF、インシュレーションボードに分類されるが、いずれにこの発明の撥水剤を適用できる。 【0028】 この発明に用いる撥水剤は、従来法でのパラフィンワックスやマイクロワックスと同様の態様で用いることができる。すなわち、リファイナーやリファイブレーター、削片機等を作動させて調製された木削片に対して、液状化した撥水剤を接着剤と混入し、熱圧成形することができる。 【0029】 また、撥水剤は、別途設けた木質ボードなどの建築材料の表面に液状の撥水剤をスプレー等の手法により塗布機で塗布してもよい。混合または塗布量は木質ボードなどの絶乾重量ベースに対して、好ましくは0.1~20重量%程度、より好ましくは0.5~10重量%である。0.1重量%より少ないと所期した撥水効果が得られず、木質ボードは吸湿のために変形しやすくなる。20重量%を超えて多量に配合すると、接着不良による木質ボードの剥離強さ・曲げ強さが低下する。 【0030】 木質ボードなどの建築材料の表面に、撥水剤を塗布する量は、撥水層の厚さが1~1000μmとなるようにすることが好ましい。なぜなら、1μm未満の薄い層では、所期した撥水効果が得られず、木質ボードは吸湿のために変形しやすくなる。また、1000μmを越えて厚い層に塗布すると、木質ボード等の強度が低下して好ましくないからである。」 b 甲6に記載の技術事項 上記aからみて、甲6には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲6に記載の技術事項」という。)。 「木質ボ-ドなどの木質系建築材料であり(【0025】)、 木質ボードである、MDFに撥水剤を適用し(【0027】)、 木質ボードの表面に液状の撥水剤を塗布する(【0029】)こと。」 (キ)甲7、甲7に記載の技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の平成30年12月6日に発行された甲7には、次の事項が記載されている。 (a)「【0019】 建物1の外壁2は、図1に示すように、枠組部材3と、石膏ボード4と、壁パネル5と、断熱材6と、縦胴縁7と、外装材8と、通気層9とにより構成される。枠組部材3は、図2に示すように、基礎Kに沿って設置された梁Hに垂直に固定され、建物1の横方向に等間隔に配置された複数の柱3aで構成されている。 【0020】 石膏ボード4は、図1および図2に示すように、枠組部材3の屋内側に固定されており、壁パネル5は枠組部材3の屋外側に固定されている。断熱材6は、石膏ボード4と壁パネル5と枠組部材3の柱3aとにより囲まれた空間に設けられている。縦胴縁7は、枠組部材3と同様に、建物1の横方向に等間隔に配置されており、壁パネル5に固定されている。外装材8は、縦胴縁7の屋外側に固定されている。通気層9は、壁パネル5と外装材8と縦胴縁7とにより囲まれた空間からなり、この空間を通して空気が流通するようになっている。」 (b)「【図1】 [図:0001431130000003.jpg] 」 (c)「【図7】 [図:0001431130000004.jpg] 」 b 認定事項 上記a(b)の図1から、3本の「縦胴縁7」のいずれもが、隣り合う「壁パネル5」が接する部位に重なるように配置されることが、上記a(c)の図7から、当該図1に示される「壁パネル5」に対する「縦胴縁7」の配置が、「壁パネル5」及び「縦胴縁7」の高さ方向にわたるものであることがみてとれるから、甲7には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項」という。)。 「縦胴縁7がその高さ方向にわたって、隣り合う壁パネル5が接する部位に重なるように配置されること。」 c 甲7に記載の技術事項 上記a及びbからみて、甲7には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲7に記載の技術事項」という。)。 「枠組部材3と、石膏ボード4と、壁パネル5と、断熱材6と、縦胴縁7と、外装材8と、通気層9とにより構成され(【0019】)、 壁パネル5は枠組部材3の屋外側に固定され、縦胴縁7は、枠組部材3と同様に、建物1の横方向に等間隔に配置されており、壁パネル5に固定されており、外装材8は、縦胴縁7の屋外側に固定されており、通気層9は、壁パネル5と外装材8と縦胴縁7とにより囲まれた空間からなり、この空間を通して空気が流通するようになっており(【0020】)、 縦胴縁7がその高さ方向にわたって、隣り合う壁パネル5が接する部位に重なるように配置される(認定事項)、 建物1の外壁2(【0019】)。」 (ク)甲8、甲8に記載の技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の平成29年2月2日に発行された甲8には、次の事項が記載されている。 (a)「【0016】 本実施形態の外壁の通気構造は、図1に示すように、横胴縁3を有する壁下地1と、複数の外壁材4とを備えている。以下、壁下地1と外壁材4とが並ぶ方向を前後方向として定義し、前後方向のうち壁下地1側から外壁材4側に向かう方向を前方向と定義する。また、外壁材4の後方を外壁材4の内方といい、外壁材4の前方を外壁材4の外方という場合がある。 【0017】 壁下地1は、複数の外壁材4を後方から支持する。壁下地1は、図2及び図3に示すように、左右方向に並設された互いに平行な複数の柱11と、これら複数の柱11の外方に配設された透湿防水シート12と、この透湿防水シート12の外方に上下方向に並設された複数の水平な横胴縁3とを備えている。これら横胴縁3に外方から上記外壁材4が固定されて、これら外壁材4と透湿防水シート12との間に通気層13(図6参照)が形成される。この通気層13の厚み(前後幅)は、横胴縁3の前後幅と略同一である。」 (b)「【0033】 また、最下段の外壁材であるスタータ9の上端部を支持する第1の横胴縁31よりも下方に配置されるすべての横胴縁3には、図8に示すように、通気路8が設けられる。通気路8は、横胴縁3を上下方向に貫通している。本実施形態の通気路8は、最下部の横胴縁3を含めて、下方から4つの横胴縁3に設けられている。これら通気路8は、鉛直な直線上に並ぶように配置される。 【0034】 本実施形態の外壁の通気構造は、図8に示すように、第1の外壁材41の下方から当該第1の外壁材41の後方の空間に空気を取り込む。取り込まれた空気は、通気路8及び通気層13を上昇しながら通過する。その途中、第1の外壁材41の切欠部6aと隙間7とからなる通気空間70を介して、第1の横胴縁31の下方の通気層13から上方の通気層13に流れる。次いで、この空気は、第2の外壁材42の切欠部6bを介して、第2の横胴縁32の下方の通気層13から上方の通気層13に流れる。この空気は、第3の外壁材43の切欠部6c,第4の外壁材4の切欠部6d,…と順に通過し、この後、例えば、軒下から排出される。」 b 甲8に記載の技術事項 上記aからみて、甲8には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲8に記載の技術事項」という。)。 「横胴縁3を有する壁下地1と、複数の外壁材4とを備え(【0016】)、 壁下地1は、複数の外壁材4を後方から支持し、左右方向に並設された互いに平行な複数の柱11と、これら複数の柱11の外方に配設された透湿防水シート12と、この透湿防水シート12の外方に上下方向に並設された複数の水平な横胴縁3とを備え、これら横胴縁3に外方から上記外壁材4が固定されて、これら外壁材4と透湿防水シート12との間に通気層13が形成され(【0017】)、 横胴縁3には、通気路8が設けられ、通気路8は、横胴縁3を上下方向に貫通しており(【0033】)、 第1の外壁材41の下方から当該第1の外壁材41の後方の空間に空気を取り込む。取り込まれた空気は、通気路8及び通気層13を上昇しながら通過し、軒下から排出される(【0034】)、 外壁の通気構造(【0016】)。」 ウ 対比・判断 (ア)本件特許発明2について a 対比 (a)本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、引用発明の「住宅」は、本件特許発明2の「建物」に相当し、甲1発明の「建材用積層体」は、「住宅の壁」「の下地に」「用い」られるものであるから、本件特許発明2の「外壁下地材」に相当し、かつ、技術常識からみて、「建物の躯体の屋外側に複数取り付けられて外壁を構成する」ものであることは明らかである。 したがって、甲1発明の「住宅の壁や屋根の下地に用いる建材用積層体10」は、本件特許発明2の「建物の躯体の屋外側に複数取り付けられて外壁を構成する外壁下地材」に相当する。 (b)甲1発明の「木質基材」は、「中密度木質繊維板(MDF)が挙げられ」るものであって、これを「住宅の壁」「の下地に」「用い」る際の、用途及び形状に係る技術常識からみて、その単一の「板」にあたるものが、本件特許発明2の「耐力面材となる矩形状の1枚の板状部材で構成された基材」に相当する。 (c)甲1発明の「遮熱透湿防水シート2」は、「透湿」性能を備えることが明らかであって、「木質基材1の表面に」「接着して固定する」ものであるから、本件特許発明2の「透湿防水シート」の「シート本体」に相当する。 また、当該「遮熱透湿防水シート2」は、その機能からみて、これにより「木質基材1の表面」が露出しないように配されると解されるから、本件特許発明2と甲1発明とは、「基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え」るものである点において一致する。 (d)甲1発明の「接着層3」は、「木質基材1の表面に遮熱透湿防水シート2を接着して固定することができるように配置する」ものであって、「パターン状に形成され」、「ドット状であってもよく、」「格子状であってもよ」いものであるから、本件特許発明2の「粘着剤層」と、「部分的に又は断片的に設けられ」る点において共通する。 また、甲1発明における、「遮熱透湿防水シート2」に対する「接着層3」の関係からみて、本件特許発明2と甲1発明とは、「シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けられて該シート本体と上記基材とを接着する」「層」を「有」するものである点において一致する。 (e)以上のことから、本件特許発明2と甲1発明とは、次の一致点において一致し、次の相違点1において相違する。 (一致点) 「 建物の躯体の屋外側に複数取り付けられて外壁を構成する外壁下地材であって、 耐力面材となる矩形状の1枚の板状部材で構成された基材と、 上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、 上記透湿防水シートは、 透湿性を有するシート本体と、 上記シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けられて該シート本体と 上記基材とを接着する層とを有している 外壁下地材。」 (相違点1) 透湿防水シートを構成する「層」に関して、本件特許発明2は、「透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となるように構成された透湿性を有する粘着剤層」からなるのに対して、引用発明は「接着層3」である点。 b 判断 (a)相違点1について 上記相違点1について検討する。 まず、甲4に記載の技術事項における「透湿防水膜12」及び「粘着剤13の層」を備える「建材用吸湿防水シート1」における「透湿抵抗値」について検討する。 甲4に記載の技術事項は、「透湿」に係る性能の指標としての「JIS Z 0208(カップ法)に準拠」した「水蒸気透過率」が、「3,356g/m2・24h」との値をとるものである。 一方、甲2に記載の「算出」方法において、「Pe=574×(1/Rv)」との「JIS A6111記載の計算式」を適用することによって、「JIS Z0208に準拠した方法により算出された透湿度Pe」の値から、「JIS A6111」で規定されるところの「透湿抵抗Rvの値」が算出できるので、当該計算式に基づいて、甲4に記載の技術事項における「透湿抵抗Rvの値」を求めると、「0.171」との値が得られる。 そうすると、当該甲4記載の技術事項は、本件特許明細書に記載されるところの、上記「JIS A6111に準拠して測定される値である」「透湿防水シートの透湿抵抗」(【0009】)として示されるところの、「粘着剤層を含む透湿防水シート全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になる」との条件を満たすものである。 したがって、甲4に記載の技術事項の「粘着剤13の層」は、「49%」との「面積割合」を有するものであったとしても、その透湿抵抗が、「建材用吸湿防水シート1」全体としての透湿性を損なうものではないことが理解できるから、本件特許発明2の「透湿性を有する粘着剤層」に相当するものとは認められる。 しかしながら、甲4に記載の技術事項の「粘着剤13の層」自体の透湿抵抗については明らかではなく、また、「粘着剤13の層」は「粘着剤の塗布形状としては、上述した透湿防水膜12の透湿防水性を損なわないようにする必要があり、ストライプ状、ドット状、格子状、網目状等のように非塗布部が生じる形状に塗布するのが好まし」いものであり、「透湿防水膜12の透湿防水性を損なわないように」「非塗布部が生じる形状に塗布するのが好まし」いことからして、「粘着剤13の層」自体が高い透湿性を備えるものでないことは明らかである。 そして、甲4には「粘着剤層」に「透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となるように構成され」ることは記載も示唆もされていない。 また、甲5に記載の技術事項は、上記イ(オ)a(d)の図3からも明らかなように、屋根葺材10の下にシート本体22a及びシート本体22aの下面に形成された粘着剤層22bからなる防水シート22を備え、その下に野地板21、さらにその下に通気路40が形成された屋根構造1に関するものであり、本件特許発明2の「建物の躯体の屋外側に複数取り付けられて外壁を構成する外壁下地材」である点を充足するものではなく、甲1発明において「住宅の壁や屋根の下地」のうち「住宅の壁」「の下地に建材用積層体を用いた際」に、建物の外壁下地材と屋根の下地材とでは、その配置や構造が異なるものであるから、甲5に記載の技術事項を甲1発明に適用する動機付けは見出せないし、仮に適用の動機付けを有するとしても、甲5には「粘着剤層22b」に「透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となるように構成され」ることは記載も示唆もされていない。 ここで、本件特許明細書の【0006】~【0008】を参酌すると、本件特許発明2は、粘着剤層を含む透湿防水シート全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材を形成するにあたって、同【0050】~【0054】に記載のように、「粘着剤層14は、」「透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となる(透湿性を有する)ように構成され」ることにより課題を解決できるという技術的意義を有するものであり、この点、その他の甲号証にも記載も示唆もない。 そして、本件特許発明2によれば、基材の片面に透湿防水シートを接着するに際して、透湿抵抗値が0.06m2・s・Pa/μg以下と極めて低い粘着剤層を用いることにより、粘着剤層を用いても透湿防水シートの透湿性が局所的に低くならず、通気構法に求められる機能が阻害されず、外壁内における結露の発生を抑制することができ、室内の空調効率を向上させることができるという格別の効果を奏する。 c 申立人の主張について 申立人は令和7年8月7日受付の意見書において、 「(4)甲1号証と甲5号証に基づく取消理由について 甲1号証は、段落0001、0002に記載するように、住宅の壁や屋根の下地に関する技術 分野に属し、甲5号証は、段落0001に記載するように、屋根下地材に関する技術分野に属し、 双方の技術分野は共通している。 ・・・ 従って、上記(2)で記載するように、意見書において本件特許権者が主張する、相違点2-1は、甲5号証に記載される粘着剤層22bにより充足され、相違点2-2は、甲5号証に記載される粘着剤層22bの透湿抵抗の数値範囲とその生成材料及び各生成材料の個別の配合量に関する記載により充足されることから、訂正により付加された特許発明2における粘着剤層の数値限定構成が新たな相違点となることはない。 以上のことから、特許発明2は、甲第1号証と甲第5号証に基づいて進歩性が否定されるもの であり、依然として取消理由を有することから、上記意見書において本件特許権者が主張する、 特許発明2が取消理由を有しないとする主張は 認められない。さらに特許発明3~7は、甲第1号証及び甲第5号証に加えて、他の甲号証に基づいてそれらの進歩性が否定されることに変わり はなく、これらが取消理由を有しないとする主張も同様に認められない。」(7頁10行~9頁11行) しかしながら、上記bで検討したとおり、甲5に記載の技術事項は、屋根葺材10の下にシート本体22a及びシート本体22aの下面に形成された粘着剤層22bからなる防水シート22を備え、その下に野地板21、さらにその下に通気路40が形成された屋根構造1に関するものであり、本件特許発明2の「建物の躯体の屋外側に複数取り付けられて外壁を構成する外壁下地材」である点を充足せず、さらに、甲1発明において「住宅の壁や屋根の下地」のうち「住宅の壁」「の下地に建材用積層体を用いた際」に、建物の外壁下地材と屋根の下地材とでは、その配置や構造が異なるものであるから、甲5に記載の技術事項を甲1発明に適用する動機付けは見出せないし、仮に適用の動機付けを有するとしても、甲5には「粘着剤層22b」に「透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となるように構成され」ることは記載も示唆もされていない。 そして、上記bで説示のとおり、本件特許明細書の【0006】~【0008】を参酌すると、本件特許発明2は、粘着剤層を含む透湿防水シート全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材を形成するにあたって、同【0050】~【0054】に記載のように、「粘着剤層14は、」「透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となる(透湿性を有する)ように構成され」ることにより課題を解決できるという技術的意義を有するものである。 したがって、上記申立人の主張は妥当ではなく採用できない。 d 小括 よって、本件特許発明2は、甲1発明、甲4に記載の技術、甲5に記載の技術事項及びその他甲号証に記載の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。 (イ)本件特許発明3~7について 本件特許発明2を直接的又は間接的に引用する本件特許発明3~7は、本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)取消理由通知に記載した取消理由のまとめ 以上のことから、本件特許発明2及び本件特許発明2を直接的又は間接的に引用する本件特許発明3~7は、甲1発明、甲4に記載の技術、甲5に記載の技術事項及びその他甲号証に記載の技術事項から当業者が容易に発明できたものではない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由及び本件訂正により生じたとする新たな取消理由について 1 特許異議申立理由の概要 申立人が、申立書において主張する、取消理由通知において採用しなかった請求項1についての特許法第29条第2項に関する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 本件特許発明1は、甲1と甲5の記載、もしくは、甲1と周知技術(甲2~甲4)と甲5の記載から容易想到である。そうでないとしても、本件特許発明1は、甲1の記載及び周知技術(甲3、甲4)から容易想到である。 2 甲各号証の記載 甲1~甲5の記載は、上記第4(2)イの(ア)~(オ)のとおりである。 3 本件特許発明1について (1)対比 (ア)本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、引用発明の「住宅」は、本件特許発明1の「建物」に相当し、甲1発明の「建材用積層体」は、「住宅の壁」「の下地に」「用い」られるものであるから、本件特許発明1の「外壁下地材」に相当する。 したがって、甲1発明の「住宅の壁や屋根の下地に用いる建材用積層体10」は、本件特許発明1の「建物の外壁に用いられる外壁下地材」に相当する。 (イ)甲1発明の「木質基材」は、「中密度木質繊維板(MDF)が挙げられ」るものであって、これを「住宅の壁」「の下地に」「用い」る際の、用途及び形状に係る技術常識からみて、その単一の「板」にあたるものが、本件特許発明1の「耐力面材となる矩形状の基材」に相当する。 (ウ)甲1発明の「遮熱透湿防水シート2」は、「透湿」性能を備えることが明らかであって、「木質基材1の表面に」「接着して固定する」ものであるから、本件特許発明1の「透湿防水シート」の「シート本体」に相当する。 また、当該「遮熱透湿防水シート2」は、その機能からみて、これにより「木質基材1の表面」が露出しないように配されると解されるから、本件特許発明1と甲1発明とは、「基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え」るものである点において一致する。 (エ)甲1発明の「接着層3」は、「木質基材1の表面に遮熱透湿防水シート2を接着して固定することができるように配置する」ものであって、「全面に形成されていてもよ」いものであるから、本件特許発明1の「粘着剤層」と、「上記シート本体の片面全体を覆」う点において共通する。 また、甲1発明では、「接着層が木質基材と遮熱透湿防水シートとの間の全面に形成される場合には、遮熱透湿防水シートの一方の全面が接着層により覆われることで、遮熱透湿防水シートの透湿性が十分に得られないおそれがあ」るものの、「接着層」によって「遮熱透湿防水シート」の「透湿」に係る機能が完全に損なわれないことは技術常識から明らかであるから、本件特許発明1と甲1発明とは、「上記シート本体の片面全体を覆い、該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有」するものである点において一致する。 上記(ア)~(エ)からみて、本件特許発明1と甲1発明とは以下の点で一致し、以下の相違点2で相違する。 (一致点) 「 建物の躯体の屋外側に複数取り付けられて外壁を構成する外壁下地材であって、 耐力面材となる矩形状の1枚の板状部材で構成された基材と、 上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、 上記透湿防水シートは、 透湿性を有するシート本体と、 上記シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けられて該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有している 外壁下地材。」 (相違点2) 「透湿性を有する粘着剤層」に関して、 本件特許発明1では、「透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成されている」のに対して、 甲1発明では、透湿抵抗値は不明である点。 (2)判断 上記相違点2について検討する。 甲1発明では、「遮熱透湿防水シートの透湿抵抗が、0.19m2・s・Pa/μg以下であ」り、「木質基材1と遮熱透湿防水シート2との間に接着層3を有する場合、」「接着層3は、木質基材1と遮熱透湿防水シートとの間に、パターン状に形成されていても、全面に形成されていてもよく、接着層が木質基材と遮熱透湿防水シートとの間の全面に形成される場合には、遮熱透湿防水シートの一方の全面が接着層により覆われることで、遮熱透湿防水シートの透湿性が十分に得られないおそれがあ」るものであって、「接着層」によって損なわれる可能性がある「遮熱透湿防水シート」の透湿性について、「接着層が配置された平面視上の面積の割合が上記範囲内」とすることで「遮熱透湿防水シートの表面が接着層で覆われることによる透湿性の低下を抑制する」ものである。 そうすると、甲1発明では「遮熱透湿防水シートの透湿抵抗が、0.19m2・s・Pa/μg以下であ」って、「接着層が配置された平面視上の面積の割合が上記範囲内」とすることで「遮熱透湿防水シートの表面が接着層で覆われることによる透湿性の低下を抑制」していることからして、本件特許発明1の「上記透湿防水シート」が「該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有し、」「透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成され」ることは、甲1には記載も示唆もされてない。 また、甲5に記載の技術事項は、上記第4(2)ウ(ア)b(a)で検討したように、屋根葺材10の下にシート本体22a及びシート本体22aの下面に形成された粘着剤層22bからなる防水シート22を備え、その下に野地板21、さらにその下に通気路40が形成された屋根構造1に関するものであり、本件特許発明1の「建物の外壁に用いられる外壁下地材」である点を充足するものではなく、甲1発明において「住宅の壁や屋根の下地」のうち「住宅の壁」「の下地に建材用積層体を用いた際」に、建物の外壁下地材と屋根の下地材とでは、その配置や構造が異なるものであるから、甲5に記載の技術事項を甲1発明に適用する動機付けは見出せないし、仮に適用の動機付けを有するとしても、甲5には「上記透湿防水シート」が「上記シート本体の片面全体を覆い、該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有し、」「透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成され」ることは記載も示唆もされていない。 さらに、本件特許発明1の「上記透湿防水シート」が「上記シート本体の片面全体を覆い、該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有し、」「透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成され」ることは、その他の甲号証にも記載も示唆もされていない。 そして、本件特許発明1によれば、外壁下地材を建物の骨格となる構造材に固定するだけで、施工し難い透湿防水シートも容易に施工でき、上記外壁下地材は、工場等の屋内において透湿防水シートを基材に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シートが捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になり、上記外壁下地材を用いることにより、容易に仕上がり良く施工可能な外壁構造を提供することができるとともに、外壁下地材を建物の骨格となる構造材に固定するだけで、施工し難い透湿防水シートも施工でき、通気構法による外壁の施工が容易になるという格別の効果を奏する(【0012】、【0022】)。 (3)申立人の主張について 申立人は申立書において、 「・構成要件(C)について 本件特許発明1の構成要件(C)における、「上記透湿防水シートは、シート本体と、上記シート本体の片面全体を覆い、該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する接着剤層とを有し」は、・・・甲第2号証、甲第3号証、及び甲第4証はいずれも、本件特許及び甲第1号証と同様に、透湿防水シートを備えた建築下地材に関する同一の技術分野に属する。従って、本件特許発明1は、甲第1号証と、周知技術である甲第2号証乃至甲第4号証と、甲第5号証に基づいて容易に想到し得る発明であることから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」(23頁1行~26頁3行)と、 令和7年8月7日受付の意見書において、 「(6)特許発明1が取消理由を有する旨 特許発明1は、取消理由通知書において取消の対象となっておらず、訂正請求書において何らの訂正も行われていないが、特許発明1は、異議申立書の第31頁20行目~同頁29行目に記載されている理由と同じ理由から、甲第1号証と甲第5号証、及び周知技術を示す甲第2号証乃至甲第4号証に基づいて進歩性がない。 ・・・ 以上のことから、特許発明1における上記構成は、甲1号証、甲5号証、甲2号証、及び甲4号証に基づいて当業者が容易に想到できたものであり、進歩性が否定されるものであることから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許発明1は依然として取消理由を有する。」(10頁17行~13頁9行) しかしながら、上記(2)で検討したとおり、甲5に記載の技術事項は、屋根葺材10の下にシート本体22a及びシート本体22aの下面に形成された粘着剤層22bからなる防水シート22を備え、その下に野地板21、さらにその下に通気路40が形成された屋根構造1に関するものであり、本件特許発明1の「建物の外壁に用いられる外壁下地材」である点を充足するものではなく、さらに、甲1発明において「住宅の壁や屋根の下地」のうち「住宅の壁」「の下地に建材用積層体を用いた際」に、建物の外壁下地材と屋根の下地材とでは、その配置や構造が異なるものであるから、甲5に記載の技術事項を甲1発明に適用する動機付けは見出せないし、仮に適用の動機付けを有するとしても、甲5には「上記透湿防水シート」が「上記シート本体の片面全体を覆い、該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有し、」「透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成され」ることは記載も示唆もされていない。 また、「上記透湿防水シート」が「上記シート本体の片面全体を覆い、該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有し、」「透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成され」ることは、その他の甲号証に記載も示唆もされていない。 したがって、上記申立人の主張は妥当ではなく採用できない。 (4)小括 よって、本件特許発明1は、甲1発明、甲5記載の技術事項及びその他の甲号証から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。 2 本件特許発明3~7について 本件特許発明1を直接的又は間接的に引用する本件特許発明3~7は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 取消理由通知に記載した取消理由のまとめ 以上のことから、本件特許発明1及び本件特許発明1を直接的又は間接的に引用する本件特許発明3~7は、甲1発明、甲5記載の技術事項及びその他の甲号証から当業者が容易に発明できたものではない。 4 本件訂正により生じたとする新たな取消理由の概要 (1)新たな取消理由の概要 仮に、本件特許の出願時点において、本件特許明細書に記載される、透湿抵抗が0.06m2 ・s・Pa/μg以下である粘着剤層が公知ではなかったとする場合は、今回の訂正により追加された構成要件に基づく本件特許明細書の記載事項は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなかったということから、実施可能要件を満たさないこととなり、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができない。 (2)実施可能要件の判断基準 本件特許発明1は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を満たすためには、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、本件特許明細書等の記載並びに出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用すcることができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 (3)検討 本件特許明細書には下記のとおり記載されている。 「【0052】 粘着剤層14は、シート本体13の片面に粘着剤を塗布又は転写することにより形成されている。粘着剤層14は、シート本体13を基材11の片面に接着させることができる程度の粘着力を有し、透湿防水シート12の透湿抵抗が0.19m2・s・Pa/μg以下となるものであれば、いかなる粘着剤を用いて形成してもよい。 【0053】 なお、本実施形態1では、粘着剤層14は、JIS A6111に準拠して測定される透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となる(透湿性を有する)ように構成され、シート本体13の片面全体を覆っている。 【0054】 より具体的には、本実施形態1では、粘着剤層14は、(メタ)アクリル系ポリマー5~60重量%に親水性化合物であるポリプロピレングリコールを添加し、溶媒によって全体が100重量%に調整されたアクリル系粘着剤組成物と架橋剤としてイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合した溶液をシート本体13の下面に塗布又は転写することによって形成されている。ここで用いる(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えば、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。なお、アクリル系粘着剤組成物中、ポリプロピレングリコールは、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して1~20重量部の割合で添加されている。添加量が1重量部より少ないと粘着剤層14に所望の透湿抵抗(0.06m2・s・Pa/μg以下)を与えることができず、添加量が20重量部より多いと正常な粘着剤層14の形成が困難であるため、添加量は上記の範囲が好ましい。 【0055】 以上のように、本実施形態1では、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対してポリプロピレングリコールが1~20重量部添加されたアクリル系粘着剤組成物とイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合して塗布することにより、透湿抵抗0.06m2・s・Pa/μg以下の粘着剤層14が形成される。 【0056】 なお、本実施形態1では、通常用いられる方法で発泡させる、又は気泡を発生させることで、透湿抵抗が0.03m2・s・Pa/μg以下の粘着剤層14を形成することができ、好ましい。 【0057】 また、粘着剤層14は、10μm以上150μm以下の厚さを有することが好ましく、30μm以上90μm以下の厚さを有することがより好ましい。10μmより薄い場合、粘着力が低く透湿防水シート12が剥がれ易くなるおそれがあり、150μmより厚い場合、透湿抵抗が増大するため好ましくない。 【0058】 以上のように、外壁下地材10は、耐力面材となる基材11の片面に透湿防水シート12を接着することによって構成されている。そして、外壁下地材10は、基材11の透湿防水シート12の非接着面を構造材2の外面に当接させ、外壁下地材10の屋外側から構造材2に向かって外壁下地材10を貫通するように釘7を打ち込むことにより、構造材2に取り付けられる。」 本件特許発明1の、透湿抵抗が0.06m2 ・s・Pa/μg以下である粘着剤層に関して、本件特許明細書の【0054】には、「本実施形態1では、粘着剤層14は、(メタ)アクリル系ポリマー5~60重量%に親水性化合物であるポリプロピレングリコールを添加し、溶媒によって全体が100重量%に調整されたアクリル系粘着剤組成物と架橋剤としてイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合した溶液をシート本体13の下面に塗布又は転写することによって形成されている。ここで用いる(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えば、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。なお、アクリル系粘着剤組成物中、ポリプロピレングリコールは、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して1~20重量部の割合で添加されている」こと、すなわち【0055】には、「本実施形態1では、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対してポリプロピレングリコールが1~20重量部添加されたアクリル系粘着剤組成物とイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合して塗布することにより、透湿抵抗0.06m2・s・Pa/μg以下の粘着剤層14が形成される。」ことが記載されており、それらの記載から、本件特許発明1における「透湿抵抗が0.06m2 ・s・Pa/μg以下である粘着剤層」が当業者による過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく得られたと解される。 また、本件特許の出願時点において、本件特許明細書に記載される、透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下である粘着剤層が公知ではなかったとする具体的な根拠等を申立人は示していない。 したがって、透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下である粘着剤層を得ることに、当業者にとって過度の試行錯誤が必要とまではいえない。 したがって、上記主張については採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701069

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