2023-700020
加飾シート
- 審判番号
- 2023-700020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-168574外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7098693
- 請求日
- 2023年01月11日
- 審決日
- 2023年09月06日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アルプスアルパイン株式会社
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人】真角 侑子
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 18項目
第1 手続の経緯
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特許第7098693号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)3月11日(優先権主張 令和元年7月1日)を国際出願日とする特願2020-547239号の一部を令和2年10月5日に新たな特許出願としたものであって、令和4年7月1日にその特許権の設定登録がされ、令和4年7月11日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、訂正自体を、「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における
「 前記加飾層と前記遮光層との間に形成された中間色調層とを備え、前記中間色調層は、グレー系の色調を有するインクが用いられて形成されることを特徴とする加飾シート。」
との記載を、
「 前記加飾層と前記遮光層との間に形成された中間色調層と、光を拡散させる光拡散層とを備え、前記中間色調層は、グレー系の色調を有するインクが用いられて形成され、前記光拡散層は、前記加飾層と前記中間色調層との間に形成されることを特徴とする加飾シート。」
と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4~7も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2における
「 前記加飾層と前記遮光層との間に形成された中間色調層とを備え、前記中間色調層は、メタリックインクが用いられて形成されることを特徴とする加飾シート。」
との記載を、
「 前記加飾層と前記遮光層との間に形成された中間色調層と、光を拡散させる光拡散層とを備え、前記中間色調層は、メタリックインクが用いられて形成され、前記光拡散層は、前記加飾層と前記中間色調層との間に形成されることを特徴とする加飾シート。」
と訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3~7も同様に訂正する。)
(3)一群の請求項について
請求項4~7が、訂正の請求の対象である請求項1、2の記載を引用する関係にあり、本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕について請求されている。
2 訂正についての判断
訂正事項1及び2は、「加飾シート」について、「光を拡散させる光拡散層」が「前記加飾層と前記中間色調層との間に形成される」構成を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、「加飾シート100は、表側(図中上側)から順に、感触層101、ベースフィルム層102、加飾層103、光拡散層104、中間色調層105、遮光層106、および粘着層107を備える」(【0016】)と記載されているから、当該訂正事項は、新規事項の追加に該当しない。
そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
3 小括
上記のとおり、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められるから、本件訂正後の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】加飾対象部品の表面に貼り付けられる加飾シートであって、シート状のベースフィルムからなるベースフィルム層と、カラーインクが用いられて形成され、加飾パターンを表す加飾層と、続きを表示(全38行)前記加飾層よりも裏側に設けられ、所定の形状の光透過部を有する遮光層と、前記加飾層と前記遮光層との間に形成された中間色調層と、光を拡散させる光拡散層とを備え、前記中間色調層は、グレー系の色調を有するインクが用いられて形成され、前記光拡散層は、前記加飾層と前記中間色調層との間に形成されることを特徴とする加飾シート。【請求項2】加飾対象部品の表面に貼り付けられる加飾シートであって、シート状のベースフィルムからなるベースフィルム層と、カラーインクが用いられて形成され、加飾パターンを表す加飾層と、前記加飾層よりも裏側に設けられ、所定の形状の光透過部を有する遮光層と、前記加飾層と前記遮光層との間に形成された中間色調層と、光を拡散させる光拡散層とを備え、前記中間色調層は、メタリックインクが用いられて形成され、前記光拡散層は、前記加飾層と前記中間色調層との間に形成されることを特徴とする加飾シート。【請求項3】前記中間色調層は、Inメタリックインク、または、Snメタリックインクが用いられて形成されることを特徴とする請求項2に記載の加飾シート。【請求項4】前記加飾シートの最も表側に、凹凸状に形成された感触層をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の加飾シート。【請求項5】前記感触層は、透明色インクが用いられて形成されることを特徴とする請求項4に記載の加飾シート。【請求項6】前記加飾層は、前記ベースフィルム層の裏側の面に形成され、前記感触層は、前記ベースフィルム層の表側の面に形成されることを特徴とする請求項4または5に記載の加飾シート。【請求項7】前記加飾層、前記中間色調層、および前記遮光層の各々は、非導電性を有するインクが用いられて形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の加飾シート。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(新規性)請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(進歩性)請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1~3号証に記載された発明及び甲5、62,8~10に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
証拠一覧
甲第1号証(国際公開第2019/055469号)
甲第2号証(特開2010-228号公報)
甲第3号証(特開2019-84821号公報)
甲第5号証(特開平10-264346号公報)
甲第6号証(特開2000-117927号公報)
甲第8号証(特開2009-295365号公報)
甲第9号証(特開2002-210908号公報)
甲第10号証(特開2004-74442号公報)
以下「甲1」のようにいう。他も同じ。
2 各甲号証の記載
(1)甲1に記載された発明
甲1の請求項1~3、[0002]~[0004]、[0053]~[0055]、[0057]、[0061]、[0066]及び図7等からみて、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。以下同じ。)が記載されていると認められる。
「車両インテリアシステムに使用される、湾曲したシートであるデッドフロント製品であって、0.05~2.0mmの厚さを有する基板450と、CMYK色モデルを使用して印刷され、木目調パターンを表す半透明層460と、前記半透明層460よりも裏側に設けられ、グラフィック、電源ボタンおよび/またはアイコンのための窓を形成する、光が透過することを遮断するための不透明層510と、前記半透明層460と前記不透明層の間に形成された、グレーで印刷されたコントラスト層470とを備えているデッドフロント製品。」
(2)甲2に記載された発明
甲2の請求項1、2、4、【0001】~【0011】、【0024】~【0033】、【0044】~【0062】、図2等からみて、甲2には以下の甲2発明が記載されていると認められる。
「遊技盤の盤面を構成する装飾板であって、透明シート21と、4色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)のインクが用いられて形成され、図柄部22aが設けられた一側図柄層22と、前記一側図柄層22よりも裏側に設けられ、くり抜いて形成される図柄部24aと赤色に印刷され光を透過させる図柄部24bを有する他側図柄層24と、前記一側図柄層22と前記他側図柄層24との間に形成された、メタリックインクが用いられて形成される遮蔽層23と他側図柄層24の裏面に沿い層状にかつ光拡散特性を有するように形成されて縮み層25とを備えている加飾シート。」
(3)甲3に記載された発明
甲3の請求項1、2、5、6、15、【0001】、【0002】、【0005】~【0008】、【0019】~【0045】、図1、2A、2B等の記載からみて、甲3には以下の甲3発明が記載されていると認められる。
「成形品の表面に取り付けられる光透過性加飾フィルムであって、上部意匠層12が、表面層124と第1樹脂層122とを有し、前記上部意匠層12よりも裏側に設けられた下部意匠層16の柄層164と、前記上部意匠層12と前記下部意匠層16との間に形成された反射層14とを備え、前記反射層14は、光輝性顔料がバインダー樹脂に分散された樹脂層であり、上部意匠層12が塗装色などを呈する色層、ロゴ、絵柄などを表す柄層の組み合わせを含む層である光透過性加飾フィルム。」
(4)甲5、甲6、甲8~10に記載された事項
ア 甲5に記載された事項 甲5の【0001】~【0004】、【0010】等の記載からみて、甲5には、次の事項(以下「甲5記載事項」という。以下同様。)が記載されている。
「化粧シートにおいて、透明インキからなるトップコート層により凹凸模様を深いものとしたこと。」
イ 甲6の【0001】~【0005】、【0009】等の記載からみて、次の甲6記載事項が記載されている。
「化粧シートにおいて、透明インキを塗装し、撥液絵柄層5によりはじかれたトップコート層6を形成し、良好な凹凸模様を有するものとすること。」
ウ 甲8の【0001】、【0007】、【0025】、【0036】等の記載からみて、次の甲8記載事項が記載されている。
「加飾シートにおいて、遮光部を絶縁性黒色インクで形成し、さらに内部の層にも絶縁性を要求すること。」
エ 甲9の【0001】、【0004】、【0005】、【0023】、【0024】等の記載からみて、次の甲9記載事項が記載されている。
「加飾シートにおいて、光輝性インキ層に錫を用いること。」
オ 甲10の【0001】~【0005】、【0018】~【0021】等の記載からみて、次の甲10記載事項が記載されている。
「高輝度加飾フィルムにおいて、高輝度インキ層にインジウムを用いること。」
3 甲1を主引用例とする理由について
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「デッドフロント製品」は「木目調パターンを表す半透明層460」を有する。よって、甲1発明の「車両インテリアシステム」は本件発明1の「加飾対象部品」に相当し、したがって、甲1発明の「デッドフロント製品」は本件発明1の「加飾シート」に相当する。
甲1発明の「0.05~2.0mmの厚さを有する基板450」は、本件発明1の「シート状のベースフィルムからなるベースフィルム層」に相当する。
甲1発明の「CMYK色モデルを使用して印刷され」ること、「木目調パターン」は本件発明1の「カラーインクが用いられて形成され」ること、「加飾パターン」に相当し、したがって、甲1発明の「半透明層460」は、本件発明1の「加飾層」に相当する。
甲1発明の「グラフィック、電源ボタンおよび/またはアイコンのための窓」は本件発明1の「所定の形状の光透過部」に相当し、したがって、甲1発明の「光が透過することを遮断するための不透明層510」は本件発明1の「遮光層」に相当する。
甲1発明の「グレーで印刷されたコントラスト層470」は、本件発明1の「グレー系の色調を有するインクが用いられて形成される」「中間色調層」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「加飾対象部品の表面に貼り付けられる加飾シートであって、シート状のベースフィルムからなるベースフィルム層と、カラーインクが用いられて形成され、加飾パターンを表す加飾層と、前記加飾層よりも裏側に設けられ、所定の形状の光透過部を有する遮光層と、前記加飾層と前記遮光層との間に形成された中間色調層とを備え、前記中間色調層は、グレー系の色調を有するインクが用いられて形成される加飾シート。」
<相違点1>
本件発明1は、「前記加飾層と前記中間色調層との間に形成される」「光を拡散させる光拡散層」を有するのに対し、甲1発明は、「半透明層460」(加飾層)と「コントラスト層470」(中間色調層)との間に層を有しない点。
イ 判断
(ア)上記相違点1について検討する。
甲1発明の「コントラスト層470」は、甲1の記載によれば、「領域の色の可視性を高めるように」、または「配置されている領域の部分における、領域のデザインの色間のコントラストを高めるように」「構成され」([0004])、「半透明層460におけるパターンまたはデザインの全体的な外観がより明るくなり、そのパターンまたはデザインにおける色間のコントラストが高められ」([0069])ており、それらの層の間に別の層を挿入する動機付けはない。
また、特許異議申立書に添付された他の証拠にも、動機付けを示唆するものはない。
(イ)申立人は、加飾層の下に光拡散層を設けることに関し、令和5年7月18日の意見書に添付して、甲18~29を提出するが、例えば甲20には「光拡散層(2)が介在することによって、パネル裏面側の光源(3)からの光が散乱光となることによって、パネル表面において、マスク層(7)に設けられた情報やパターンをより均一かつ明瞭に浮かび上がらせることが可能になる。」(【0050】)と記載されることから、「光拡散層」とは、甲1発明の「コントラスト層470」と同様の目的を達成するために加飾層の下に設けられるものであるので、甲1発明の「半透明層460」(加飾層)と「コントラスト層470」(中間色調層)との間にさらに光拡散層を加えて採用する動機付けはないといえる。
加えて、「半透明層460」(加飾層)と「コントラスト層470」(中間色調層)との間に光拡散層を形成することは、いずれの文献にも記載されていない。
(ウ)よって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者であっても容易に想到し得たものではない。
(2)本件発明4~7
本件発明4~7は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同様に、本件発明4~7は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 甲2を主引用例とする理由について
(1)本件発明2
ア 対比
本件発明2と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「遊技盤」は本件発明2の「加飾対象部品」に相当し、したがって、甲2発明の「遊技盤の盤面を構成する装飾板」は本件発明2の「加飾対象部品の表面に貼り付けられる加飾シート」に相当する。
甲2発明の「透明シート21」は、本件発明2の「シート状のベースフィルムからなるベースフィルム層」に相当する。
甲2発明の「4色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)のインク」は本件発明2の「カラーインク」に相当し、したがって、甲2発明の「4色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)のインクが用いられて形成され、図柄部22aが設けられた一側図柄層22」は、本件発明2の「カラーインクが用いられて形成され、加飾パターンを表す加飾層」に相当する。
甲2発明の「くり抜いて形成される図柄部24aと赤色に印刷され光を透過させる図柄部24bを有する他側図柄層24」は、本件発明2の「所定の形状の光透過部を有する遮光層」に一致する。
甲2発明の「メタリックインクが用いられて形成される遮蔽層23」は、本件発明2の「メタリックインクが用いられて形成される」「中間色調層」に相当する。
甲2発明の「光拡散特性を有するように形成されて縮み層25」は、本件発明2の「光拡散層」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「加飾対象部品の表面に貼り付けられる加飾シートであって、シート状のベースフィルムからなるベースフィルム層と、カラーインクが用いられて形成され、加飾パターンを表す加飾層と、前記加飾層よりも裏側に設けられ、所定の形状の光透過部を有する遮光層と、前記加飾層と前記遮光層との間に形成された中間色調層とを備え、前記中間色調層は、メタリックインクが用いられて形成される加飾シート。」
<相違点2>
本件発明2は、「前記光拡散層は、前記加飾層と前記中間色調層との間に形成される」のに対し、甲2発明は、「光拡散特性を有するように形成されて縮み層25」が「他側図柄層24の裏面に沿い」形成される点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
甲2には、「縮み層25」の機能作用について、「ここで、縮み層25は、上述のごとく光拡散特性を有するため、基板10からの入射光を拡散させる。このため、図柄部24aに入射する各青色光は、図柄部24aの全体に亘り均一な輝度の青色拡散光となって、図柄部24aを透過するとともに、図柄部24bに入射する各赤色光は、図柄部24bの全体に亘り均一な輝度の赤色拡散光となって、図柄部24bを透過する。」(【0056】)と記載される。
要するに、「縮み層25」によって拡散された入射光を、「図柄部24a」が形成された「他側図柄層24」に透過させるために、当該「縮み層25」が設けられているものと解される。
してみると、「縮み層25」は「他側図柄層24の裏面に沿い」形成されるべきであって、他の位置に形成することには阻害要因があるというべきである。
また、特許異議申立書に添付された他の証拠にも、動機付けを示唆するものはない。
さらに、甲18~29に記載される光拡散層を「縮み層25」に加えて設けることは採用し得ない。
よって、甲2発明において、上記相違点2に係る本件発明2の発明特定事項を採用することは当業者であっても容易に想到し得たものではない。
(2)本件発明3~7
本件発明3~7は、本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同様に、本件発明3~7は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 甲3を主引用例とする理由について
(1)本件発明2
ア 対比
本件発明2と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「成形品」は本件発明2の「加飾対象部品」に相当するから、甲3発明の「成形品の表面に取り付けられる光透過性加飾フィルム」は本件発明2の「加飾対象部品の表面に貼り付けられる加飾シート」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「加飾対象部品の表面に貼り付けられる加飾シート。」
<相違点3-1>
本件発明2は「シート状のベースフィルムからなるベースフィルム層」を有するのに対し、甲3発明は上部意匠層12が第1樹脂層122を有する点。
<相違点3-2>
本件発明2は「カラーインクが用いられて形成され、加飾パターンを表す加飾層」を有するのに対し、甲3発明はそうではない点。
<相違点3-3>
本件発明2は「前記加飾層よりも裏側に設けられ、所定の形状の光透過部を有する遮光層」を有するのに対し、甲3発明は「下部意匠層16の柄層164」を有する点。
<相違点3-4>
本件発明2は「前記加飾層と前記遮光層との間に形成された中間色調層」を備え、「前記中間色調層は、メタリックインクが用いられて形成される」のに対し、甲3発明は光輝性顔料がバインダー樹脂に分散された樹脂層である反射層14を備える点。
<相違点3-5>
本件発明2は、「前記光拡散層は、前記加飾層と前記中間色調層との間に形成される」のに対し、甲3発明は、「上部意匠層12が塗装色などを呈する色層、ロゴ、絵柄などを表す柄層の組み合わせを含む層である」点。
イ 判断
事案に鑑み、まず相違点3-5について検討する。
(ア)甲3には、「光源からの光を拡散して光源形状の視認性を低下させる目的で、成形品と光源の間に拡散板又は拡散フィルムが配置されてもよい。」(【0078】)ことが記載されており、「成形品と光源の間」以外の位置に「拡散板又は拡散フィルム」を設けるべき動機付けもない。
また、特許異議申立書に添付された他の証拠、申立人が上記意見書に添付した甲18~29にも、動機付けを示唆するものはない。
よって、甲3発明において、上記相違点3-5に係る本件発明2の発明特定事項を採用することは当業者であっても容易に想到し得たものではない。(イ)申立人は、令和5年7月18日の意見書(以下「意見書」という。)において、「甲第3号証の上部意匠層(柄層)が本件訂正発明の「加飾層」に、甲第3号証の上部意匠層(色相(酸化チタン等からなる))が本件訂正発明の「加飾層」に、甲第3号証の反射層が本件訂正発明の「中間色調層」に、甲第3号証の下部意匠層(柄層)が本件訂正発明の「遮光層」に、それぞれ相当し」、甲23~26を参酌すれば、「加飾層に相当する「上部意匠層(柄層)」の直下に光拡散甲に相当する「上部意匠層(色相)」を設けることの明確な示唆があり、かかる構成を採用することは極めて容易と言えます。」(意見書第28ページ第1から第17行)と主張する。
しかしながら、「上部意匠層は透明な色層を含み、上部意匠層の全光線透過率が約85%以上、約90%以上、又は約95%以上である」(【0031】)とも記載され、光を拡散するものであるか不明である。
さらに、仮に当該「色層」が光を拡散するとしても、「上部意匠層12が塗装色などを呈する色層、ロゴ、絵柄などを表す柄層の組み合わせを含む層である」ところ、甲3には「色層」や「柄層」の積層位置について何ら記載も示唆もされていない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明3~7
本件発明3~7は、本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同様に、本件発明3~7は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知で採用しなかった理由について
1 明確性
(1)「中間色調層」について
ア 申立人は、特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
「本件発明1の「前記中間色調層は、グレー系の色調を有するインクが用いられて形成される」という規定は、「中間色調」層でありながら、明らかにその定義には該当しない白と黒の中間色としてのグレーの色調を規定しているようにも思われ、同じ構成要件でありながら「中間色調層」という用語と「グレー系の色調を有する」という用語が明らかに相反している。従って、具体的にどのような色調であれば、「中間色調」かつ「グレー系の色調を有する」色調を有するインクと言えるのか不明確であり、この意味においてもかかる規定は著しく不明確であると言わざるを得ない。この点、本件発明2の「メタリックインク」に関しても、同様に通常は彩度が極めて低いと考えられることから、「グレー系の色調を有する」という用語と同じことが当て嵌まると言える。」(異議申立書第30ページ第7行から第31ページ第2行)
「本件発明1は前記中間色調層は、「前記中間色調層は、グレー系の色調を有するインクが用いられて形成される」と規定され、本件発明2は、「前記中間色調層は、メタリックインクが用いられて形成される」と規定されており(下線はいずれも申立人による)、いずれも経時的要素を含むプロダクト・バイ・プロセス・クレームとして規定されている。然るところ、中間色調層自体の色調を具体的に規定するのではなく、このように製造プロセスとして規定すべき合理的理由は存在しないのであるから、最高裁平成24年(受)第1204号平成27年6月5日第二小法廷判決・裁判所時報1629号の趣旨に照らし、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情」が存在したとは認められないのであるから、本件特許はこの意味においても明確性要件違反の取消理由が存在すると言える。」(異議申立書第31ページ第15行から第26行)
「グレー系の色調を有するインクやメタリックインクが用いられてさえいればこれらの範囲に含まれるのであれば、他のインクを用いることにより、全体としての色調がグレー系の色調やメタリンク系の色調とは全く異なるものになってしまう場合にも権利範囲に含まれると解される一方、直接的にグレー系の色調やメタリック系の色調のインキを用いず、複数のインクの組み合わせでCMYKカラーモデル1により層全体をグレー系の色調やメタリック系の色調とした場合には、本件発明の範囲に含まれないことになり、本件明細書に記載の課題解決原理と本件発明の規定は全く整合しない。同様のことは、「前記中間色調層は、Inメタリックインク、または、Snメタリックインクが用いられて形成される」と規定する本件発明3、その他、本件発明1,2を引用する従属項に係る発明に関しても当て嵌まる。従って、本件発明はいずれも、これらの規定の技術的意味に関しても、これによって規定される権利範囲に関しても、第三者に不測の不利益を及ぼす程に不明確であると言わざるを得ない。」(異議申立書第32ページ第1行から第13行)
イ 「中間色」とは、「純色(単色光のもつ色)に灰色を混ぜた色。」(広辞苑第六版)を意味し、そうであれば、本件発明1の「グレー系の色調を有するインクが用いられて形成され」る「中間色調層」、本件発明2の「メタリックインクが用いられて形成され」る「中間色調層」とは、「中間色」でありかつ「グレー系の色調を有するインク」が用いられて形成される層、「中間色」でありかつ「メタリックインク」が用いられて形成される層を意味し、明確である。
また、本件発明1の「グレー系の色調を有するインクが用いられて形成され」、本件発明2の「メタリックインクが用いられて形成され」なる記載についても、「中間色調層」に含有されるインクを特定しているに過ぎず、「中間色調層」の製造に関する経時的な要素が記載されているわけでも、「中間色調層」の製造に関する技術的な特徴や条件が付されているわけでもないから、当該発明特定事項が、「中間色調層」の製造方法の記載ということはできない。したがって、本件発明1、2は、物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されているもの、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームには該当しない。
さらに、本件発明1の「グレー系の色調を有するインクが用いられて形成され」る「中間色調層」は、他のインクの有無にかかわらず「グレー系の色調を有するインクが用いられて形成され」ており、同様に本件発明2の「メタリックインクが用いられて形成され」る「中間色調層」も、他のインクの有無にかかわらず「メタリックインクが用いられて形成され」ているものを意味し、明確である。
以上のとおり、本件発明1、2は明確であり,申立人の主張は採用できない。
(2)「非導電性を有するインク」について
ア 申立人は、特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
「電流は電圧を抵抗で除すことで与えられること(オームの法則)は技術常識であるから、「非導電性」といえども程度問題であり、抵抗値は有限の値で与えられることは明らかである。そのため、「非導電性」と記載のあるのみで、その抵抗値が具体的にどの程度であるか規定されていなければ、その技術的意味を理解することが出来ず、また具体的にどのようなインクを用いれば本件発明の構成を満たすか理解することも出来ない。」(異議申立書第33ページ第2行から第7行)
「本件発明7では、「前記加飾層、前記中間色調層、および前記遮光層の各々は、非導電性を有するインクが用いられて形成される」と規定されており(下線は申立人による)、経時的要素を含むプログクト・バイ・プロセス・クレームになっている。然るところ、加飾層、中間色調層、および遮光層の自体の導電性ないし抵抗値を具体的に規定するのではなく、このように製造プロセスとして規定すべき合理的理由は存在しないのであるから、上掲最高裁判決の趣旨に照らし、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情」が存在したとは認められないのであるから、本件発明7に係る特許はこの意味においても明確性要件違反の取消理由が存在すると言える。」(異議申立書第33ページ第16行から第25行)
「非導電性を有するインクが用いられてさえいればこれらの範囲に含まれるのであれば、他のインク素材を用いることにより、全体としての導電性になってしまう場合にも権利範囲に含まれると解される一方、インク自体は導電性と言えても、他の素材との組み合わせで層全体を非導電性とした場合には、本件発明の範囲に含まれないことになり、本件明細書の上記段落【0022】に記載の課題解決原理と本件発明7の規定は全く整合しない。従って、その技術的意味やこれによって規定される権利範囲に関しても、第三者に不測の不利益を及ぼす程に不明確であると言わざるを得ない。」(異議申立書第34ページ第1行から第8行)
イ しかしながら、本件発明7の「非導電性を有するインクが用いられて形成される」「前記加飾層、前記中間色調層、および前記遮光層」は、インクや加飾シートに関する技術常識を参酌して、導電性の影響を及ぼさない程度の「非導電性を有するインクが用いられて形成される」ことを意味し、明確である。実際に、本件特許明細書に「静電センサ120による接触検知機能に影響を及ぼさないようにするため、遮光層106は、遮光性且つ非導電性を有するインクが用いられて形成される」(【0022】)と記載されるように、「非導電性」については、技術常識を参酌すれば、その使用に際して影響を及ぼさない程度を意味する。
また、本件発明7の「非導電性を有するインクが用いられて形成される」なる記載についても、「前記加飾層、前記中間色調層、および前記遮光層」に含有されるインクを特定しているに過ぎず、「前記加飾層、前記中間色調層、および前記遮光層」の製造に関する経時的な要素が記載されているわけでも、「前記加飾層、前記中間色調層、および前記遮光層」の製造に関する技術的な特徴や条件が付されているわけでもないから,当該発明特定事項が、「前記加飾層、前記中間色調層、および前記遮光層」の製造方法の記載ということはできない。したがって、本件発明7は、物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されているもの、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームには該当しない。
さらに、本件発明7の「非導電性を有するインクが用いられて形成される」「前記加飾層、前記中間色調層、および前記遮光層」は、他のインクの有無にかかわらず「非導電性を有するインクが用いられて形成される」ものを意味し、明確である。
以上のとおり、本件発明7は明確であり、申立人の主張は採用できない。
(3)「透明色インク」について
ア 申立人は、特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
「本件発明5は「前記感触層は、透明色インクが用いられて形成される」ことを規定している。然るところ、ここでの文言は「透明インク」ではなく敢えて「透明色インク」と規定していることから(下線は申立人による)、いわゆる無色透明ではなく、有色透明を意味しているようにも理解できるが、敢えて無色透明を排除し、有色透明に限定する意味も見出難い。そのため、ここでの「透明色インク」が無色透明な「透明色」インクのみを意味するのか、有色透明な「透明」色インクを以って「透明色インク」と規定しているのか、或いはその両方を含むのか、本件明細書に記載からは明らかではなく、当該規定は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるという他ない。」(異議申立書第34ページ第14行から第22行)
「本件発明5では、「前記感触層は、透明インクが用いられて形成される」と規定されており(下線は申立人による)、経時的要素を含むプロダクト・バイ・プロセス・クレームになっている。然るところ、感触層自体の透明性ないし透過度を具体的に規定するのではなく、このように製造プロセスとして規定すべき合理的理由は存在しないのであるから、上掲最高裁判決の趣旨に照らし、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情」が存在したとは認められないのであるから、本件発明5に係る特許はこの意味においても明確性要件違反の取消理由が存在すると言える。」(異議申立書第34ページ第23行から第35ページ第6行)
「透明色インクが用いられてさえいればこれらの範囲に含まれるのであれば、他のインク素材を用いることにより、全体としての不透明になってしまう場合にも権利範囲に含まれると解される一方、インク自体は不透明と言えても、他の素材との組み合わせで層全体を透明色とした場合には、本件発明の範囲に含まれないことになり、本件発明の課題解決原理と全く整合しない。従って、その技術的意味やこれによって規定される権利範囲に関しても、第三者に不測の不利益を及ぼす程に不明確であると言わざるを得ない。」(異議申立書第35ページ第7行から第13行)
イ しかしながら、本件発明5の「透明色インク」とは、その文言のとおり、「透明」な「色インク」を意味する。実際に本件特許明細書には、「但し、感触層101は、透明色インクに限らず、例えば、マットインク、シルバーインク、色インク等を用いて形成されてもよい。これにより、感触層101は、視覚的にも、より本物に近い素材感を実現することが可能となる。」と記載され(【0028】)、「透明色インク」と「色インク」なる文言が使われている。そうであれば、やはり本件発明5の「透明色インク」とは、「透明」な「色インク」を意味すると理解するのが相当である。
また、本件発明5の「透明色インクが用いられて形成される」なる記載についても、「前記感触層」に含有されるインクを特定しているに過ぎず、「前記感触層」の製造に関する経時的な要素が記載されているわけでも、「前記感触層」の製造に関する技術的な特徴や条件が付されているわけでもないから,当該発明特定事項が、「前記感触層」の製造方法の記載ということはできない。したがって、本件発明5は、物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されているもの、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームには該当しない。
さらに、本件発明5の「透明色インクが用いられて形成される」「前記感触層」は、他のインクの有無にかかわらず「透明色インクが用いられて形成される」ものを意味する。この解釈は、本件特許明細書の「但し、感触層101は、透明色インクに限らず、例えば、マットインク、シルバーインク、色インク等を用いて形成されてもよい。」(【0028】)との記載とも整合するものである。
以上のとおり、本件発明5は明確であり、申立人の主張は採用できない。
2 サポート要件
(1)本件発明の解決しようとする課題とその解決手段
本件発明が解決しようとする課題に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。
「このような構成を有する従来の加飾シートは、遮光層に黒インクを用いているため、光画像を表示しないときに、光画像を表示するための光透過部の輪郭が加飾シートの表側から透けて見えてしまい、加飾対象部品のデザイン性に影響を及ぼす虞がある」(【0005】)
発明の詳細な説明の上記記載から、本件発明が解決しようとする課題は、「光画像を表示しないときに、光画像を表示するための光透過部の輪郭が加飾シートの表側から透けて見えてしまい、加飾対象部品のデザイン性に影響を及ぼす」(以下「本件課題」という。)ことと認められる。
本件課題を解決するための手段に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。
「中間色調層105は、加飾層103と遮光層106との間に設けられる。中間色調層105は、光画像12が表示されないときに、中間色調層105よりも下層の遮光層106の光透過部106Aの輪郭が目立たないようにする。」(【0021】)
「第1実施形態に係る加飾シート100は、中間色調層105を設けたことにより、光画像12を表示しないとき(すなわち、LED130を発光させないとき)に、遮光層106が有する光透過部106Aの輪郭を、加飾シート100の表側から、視認され難くすることができる」(【0032】)
これらの発明の詳細な説明の記載によると、本件発明は、本件課題を解決するための手段を包含するものである。また、当該手段を備える第1実施形態がその課題を解決することができるものであることから、当該手段が、本件課題を解決するための手段に該当するものであるといえることが裏付けられている。したがって、本件発明は、本件課題を解決するものであるといえる。
よって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(2)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
ア 「すなわち、本件発明においては、加飾層の絵柄や色調並びに遮光層の色調などについては全く限定がないが、光画像を表示しないときに、当該光画像を表示するための光透過部の輪郭を表側から視認され難いか否かは、言うまでもなく中間色調層の色調等のみによって決まるものではなく、加飾層の絵柄や色調並びに遮光層の色調などとの相対的な関係が重要になることは言うまでもない。従って、例えば加飾層が白、若しくは遮光層が極めて白色要素の強いいわゆる水色等の場合を考えると、中間層を「グレー系の色調」とすることによってグレー系の黒色要素が顕著となる結果、かえって遮光層の光透過部の輪郭が目立つようになるという他ない。しかしながら、本件明細書の実施例においては、上述のとおり、遮光層の光透過部の輪郭に関する記載はおろか、具体的な遮光層や加飾層等の色調の記載やその評価に関する記載など一切存在せず、ましてや本件発明1,2のような中間色調層を用いさえすれば、加飾層の絵柄や色調並びに遮光層の色調によらず、遮光層の光透過部の輪郭が日立たないようにするという効果が得られることなど到底認識し得ない。」(異議申立書第37ページ第21行から第38ページ第8行)
イ 「上述のとおり、本件発明は、画像を表示しないときに、光画像を表示するための光透過部の輪郭が加飾シートの表側から透けて見えてしまい、加飾対象部品のデザイン性に影響を及ぼす虞を防止することを目的とするものであるが、言うまでもなく、そこで観察される封象は加飾対象部品と加飾シートのデザインが合わさったものであり、加飾対象部品に貼り付けることが可能であることが前提となるはずである。しかしながら、本件発明においては、これに対応する「粘着層」など加飾対象部品との接着手段に関する規定が一切なされていない。」(異議申立書第38ページ第12行から第18行)
ウ 「上記(4-2-2)において述べたとおり、本件発明1は前記中間色調層は、「前記中間色調層は、グレー系の色調を有するインクが用いられて形成される」と規定され、本件発明2は、「前記中間色調層は、メタリックインクがいられて形成される」と規定されており(下線は申立人による)、層自体の色調を直接規定せずに、用いるインクの性質を規定している。しかしながら、グレー系の色調を有するインクやメタリックインクが用いられてさえいればこれらの範囲に含まれるのであれば、他のインクを用いることにより、全体としての色調がグレー系の色調やメタリック系の色調とは全く異なるものになってしまう場合にも権利範囲に含まれると解される一方、直接的にグレー系の色調やメタリック系の色調のインキを用いず、複数のインクの組み合わせでCMYKカラーモデル3により層全体をグレー系の色調やメタリック系の色調とした場合には、本件発明の範囲に含まれないことになり、本件明細書に記載の課題解決原理と本件発明の規定は全く整合しない。」(異議申立書第39ページ第12行から第40ページ第1行)
エ しかしながら、上記のとおり、本件発明は、本件課題を解決するための手段を発明特定事項として備えており、本件課題を解決できることが当業者であれば認識することができるから、上記ア、イの主張のように「加飾層の絵柄や色調並びに遮光層の色調」や、「粘着層」などを発明特定事項とすることは要しない。
オ また、上記ウの主張についても、本件明細書の記載によれば、本件発明1の「グレー系の色調を有するインクが用いられて形成され」る「中間色調層」や、本件発明2の「メタリックインクが用いられて形成され」る「中間色調層」を備えることにより、光透過部の輪郭を表側から視認し難くできるとされているのであって、複数のインキを組み合わせた結果としての色調が、「グレー系の色調」であるか、あるいは、「メタリック系の色調」であるかを要件としているのではないから、申立人の「本件明細書に記載の課題解決原理と本件発明の規定は全く整合しない」との主張は、当を得たものではない。
カ よって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものであり、申立人の主張は採用できない。
3 実施可能要件
ア 申立人は、特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
「然るところ、上記(4-2-2)において述べたとおり、本件発明1の「前記中間色調層は、グレー系の色調を有するインクが用いられて形成される」という規定は、「中間色調」層でありながら、明らかにその定義には該当しない白と黒の中間色としてのグレーの色調を規定しているようにも思われ、同じ構成要件でありながら「中間色調層」という用語と「グレー系の色調を有する」という用語が明らかに相反している。従って、具体的にどのような色調のインクを用いれば、「中間色調」かつ「グレー系の色調を有する」色調を有するインクと言えるのか理解できず、過度な試行錯誤を要することなく本件発明1の実施をすることが出来るとは認められない。この点、本件発明1の「メタリックインク」に関しても、同様のことが当て嵌まり、本件発明1,2を直接乃至間接的に引用する本件発明3乃至7に関しても同様のことが言える。」(異議申立書第40ページ第15行から第41ページ第2行)
イ しかしながら、第5 1(1)でも述べたとおり、本件発明1の「グレー系の色調を有するインクが用いられて形成され」る「中間色調層」、本件発明2の「メタリックインクが用いられて形成され」る「中間色調層」とは、「中間色調」でありかつ「グレー系の色調を有するインク」が用いられて形成される層、「中間色調」でありかつメタリックインク」が用いられて形成される層を意味し、そうであれば、発明の詳細な説明の記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。
したがって、本件発明1~7に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしているから、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立人の意見書における主張について
申立人は、意見書において、以下の旨を主張する。
「「光を拡散させる光拡散層」の定義に関し、本件明細書の段落【0020】に「光拡散層104は、加飾層103よりも裏側に設けられる。光拡散層104は、LED130から出射された光を拡散させることにより、光画像12が均―に発光するようにする。例えば、光拡散層104は、白色インクが、熱転写式プリンタを用いた熱転写印刷によって、加飾層103の裏側の面に対して一様に印刷されることによって形成される」などと記載があるものの、具体的な層の性質や、具体的にどの程度光を拡散させ、光画像が「均―に発光」すれば、「光を拡散させる」こととなるのか、本件明細書から全く読み取ることができません。」(意見書第7ページ第1行から第9行)
「「光拡散層」の通常の語義からは、ある程度の透過率以下であることを要すると思われるところ、本件明細書には透過率等に関して一切記載がない以上、やはりこの点は不明確という他はありません。」(意見書第7ページ第16行から第18行)
「本件明細書の段落【0019】に「例えば、加飾層103は、加飾シート100によって呈示される模様に応じて、複数のカラーインク(例えば、CMYK)が、熱転写式プリンタを用いた熱転写印刷によって、画素単位でベースフィルム層102の裏側の面に印刷されることによって形成される」と記載され、同段落【0029】に「また、感触層101は、インク層毎に、任意の色のインクを用いることができる。すなわち、感触層101は、複数のインク層で、インク色を異ならせることができる」(下線はいずれも申立人による)と記載されているように、本件発明においては同一の層を複数重ねる構成が否定されていないところ、加飾層の下に設けられた層(典型的には、白ベタ層)が「加飾層(の一部)」か「光拡散層」のいずれに該当するか判断できず、かかる規定はその意味でも、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確と言えます。」(第8ページ第1行から第11行)
しかしながら、本件発明1、2の「光拡散層」の「光拡散」とは、その文言のとおり「光を拡散させる」ことを意味し、「光拡散層」の「層」とは「かさなること。かさなり。」(広辞苑第六版)を意味し、「前記光拡散層は、前記加飾層と前記中間色調層との間に」かさねられて「形成される」ことを意味するから、明確である。
以上のとおり、本件発明1、2は明確であり,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしているから、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700020