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特許異議申立

2024-700709

デュアルICカード

審判番号
2024-700709
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-011487
登録番号
7424073
請求日
2024年07月26日
審決日
2026年02月12日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】松沼 泰史
  • 【権利者代理人】鈴木 史朗
  • 【権利者代理人】清水 雄一郎
  • 【権利者代理人】大槻 真紀子
  • 【異議申立人】真角 侑子
審判長/審判官
  • 審判長 林 毅
  • 審判官 脇岡 剛
  • 審判官 山崎 慎一
分類
P1651.841-ZB (G06K) / P1651.536-ZB (G06K) / P1651.537-ZB (G06K) / P1651.121-ZB (G06K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7424073号発明「デュアルICカード」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7424073号の請求項1~2に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7424073号の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和2年1月28日に出願され、令和6年1月22日にその特許権の設定登録がされ、同年1月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年7月26日に特許異議申立人 真角侑子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 本件特許異議申立て以後の経緯は、次のとおりである。 令和 6年11月29日 取消理由通知書(起案日) 令和 7年 1月31日 訂正請求書・意見書(特許権者。以下、「意見 書1」という。)の提出 令和 7年 3月26日 意見書(申立人)の提出 令和 7年 6月 5日 取消理由通知書(決定の予告)(起案日) 令和 7年 8月 7日 訂正請求書・意見書(特許権者。以下、「意見 書2」という。)の提出 令和 7年10月 6日 意見書(申立人)の提出 令和 7年12月 9日 訂正拒絶理由通知書(起案日) 令和 8年 1月 5日 手続補正書・意見書(特許権者)の提出 以下、最新の令和7年8月7日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を、「本件訂正」という。 なお、本件訂正により、令和7年1月31日に提出された訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。 第2 異議申立理由、証拠 1 異議申立理由 (1)異議申立理由1(甲第1号証に基づく新規性欠如) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、同法113条2号に該当し、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 (2)異議申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性欠如) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第4号証~甲第9号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)異議申立理由3(甲第3号証に基づく進歩性欠如) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第1号証~甲第3号証及び甲第4号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)異議申立理由4(サポート要件違反) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、この発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 (5)異議申立理由5(明確性要件違反) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、発明が明確でないから、この発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠 甲第1号証 :特開2006-2150号公報 甲第2号証 :特開2007-310482号公報 甲第3号証 :特開2006-245140号公報 甲第4号証 :特開2017-117468号公報 甲第5号証 :特開2000-187238号公報 甲第6号証 :国際公開第99/08192号 甲第7号証 :特開平11-16946号公報 甲第8号証 :国際公開第2011/058810号 甲第9号証 :特開2001-127103号公報 甲第10号証 :特開2009-169563号公報 第3 訂正の適否について 1 本件訂正請求書による本件訂正の内容 本件訂正は、本件訂正請求書において特許権者が主張する「訂正事項1」及び「訂正事項2」からなるものである。 そのうち、請求項1及び2に係る訂正事項1は、以下の訂正事項1-1~1-3を含む。(下線は、当審で付加したものであり、以下も同様であるが、本項においては訂正箇所を示すものである。) (1)訂正事項1 ア 訂正事項1-1 請求項1に、 「前記アンテナ接続用端子は、前記カード基材を形成する積層体に埋め込まれた巻線からなる前記アンテナの一部がミーリング加工されて露出した表面であり、」 との事項を追加するとともに、本件訂正前の請求項1に「表面に形成された凹凸形状の最大段差」とあるのを「前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大段差」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。) イ 訂正事項1-2 本件訂正前の請求項1に、 「前記ICモジュール側の前記接続端子の表面に形成された凹凸形状の最大段差が、前記異方性導電フィルムの前記導電粒子の粒子径より小さい」 とあるのを、本件訂正により、 「前記ICモジュール側の前記接続端子の表面が有する凹凸形状の最大段差が、前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大段差より小さく」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。) ウ 訂正事項1-3 請求項1に、 「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径が、前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅より小さい」 との事項を追加する。 (請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 本件特許明細書の段落【0017】に記載された、 「 上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続用端子と、ICモジュール側の接続端子と、が異方性導電フィルムによって接続されたデュアルICカードにおいて、 アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状の最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さく、且つ前記ICモジュール側の前記接続端子の表面に形成された凹凸形状の最大段差が、前記異方性導電フィルムの前記導電粒子の粒子径より小さい事を特徴とするデュアルICカードである。」 とあるのを、 「 上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続用端子と、ICモジュール側の接続端子と、が異方性導電フィルムによって接続されたデュアルICカードにおいて、 前記アンテナ接続用端子は、前記カード基材を形成する積層体に埋め込まれた巻線からなる前記アンテナの一部がミーリング加工されて露出した表面であり、 前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さく、且つ前記ICモジュール側の前記接続端子の表面が有する凹凸形状の最大段差が、前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大段差より小さく、 異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径が、前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅より小さい事を特徴とするデュアルICカードである。」 と訂正する。 2 一群の請求項 本件訂正前の請求項2は、本件訂正前の請求項1を引用しているものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正前の請求項1ないし2に対応する本件訂正後の請求項1ないし2は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 令和8年1月5日提出の手続補正書による手続補正について (1)手続補正の内容 令和8年1月5日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和7年12月9日付け訂正拒絶理由通知に対して、本件訂正に係る訂正請求書、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書について補正するものである。 本件補正は、上記訂正事項1-3を、請求項1に、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径が、前記露出した表面に形成された凹凸形状の移動幅の最大値より小さい」との事項を追加する、との訂正事項に変更する補正事項、及び、当該補正事項に対応するように明細書に係る訂正事項である訂正事項2を変更する補正事項からなるものである。(下線は補正箇所を示す。) (2)手続補正の適否についての当審の判断 訂正請求書については、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等、訂正請求書の要旨を変更しないものであれば補正することができる。しかし、新たな訂正事項を加えることや、訂正事項を変更することは、訂正の要旨を変更するものである(特許法120条の5第9項で準用する同法131条の2第1項(審判便覧67―05.3の4.(3)イ参照。))。 そして、上記補正事項はいずれも訂正事項を変更するものであることが明らかであるから、当該各補正事項からなる本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものである。 なお、特許権者は、意見書において、本件補正が適法である理由については何ら主張していない。 以上のとおりであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法131条の2第1項の規定により本件補正を認めない。 4 訂正拒絶理由の概要 令和7年12月9日付け訂正拒絶理由通知の概要は、以下のとおりである。 本件訂正において新たに追加された事項である、「前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅」を含む訂正事項1-3及び訂正事項2は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正とはいえない。 したがって、訂正事項1-3が対象とする請求項1についての訂正は認められず、よって請求項1を対象とする訂正事項1-1及び1-2も一体的に認められない。また、請求項1に連動して訂正される請求項2についての訂正も認められない。 また、訂正事項1-3と同様の記載を含む訂正事項2に係る訂正も認められない。 したがって、請求項〔1、2〕に係る訂正事項1及び明細書についての訂正事項2を含む本件訂正は認められず、よって本件訂正の請求は、これを拒絶すべきものである。 5 本件訂正についての当審の判断 事案に鑑み、本件訂正において新たに追加された事項である、「前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅」を含む訂正事項1-3及び訂正事項2について、その適否を先に検討する。 (1)新規事項の追加について 本件特許明細書等には、「最大幅」なる語は記載されていない。 一方、本件特許明細書等の図1には、次の記載が認められる。 「図1 [図:0001435160000001.jpg] 」 図1(a)には、「アンテナ接続用端子11」、「ACF(Anisotropic Conductive Film、異方性導電フィルム)12」、「第二凹部22」、「導電粒子24」、及び、「アンテナ接続用端子11」に係る「熱圧着前」の状態(上図)と「熱圧着後」の状態(下図)が図示されている。 熱圧着前の状態を示す上図には、「移動幅」なる語が記載されている。 一方、本件特許明細書等段落【0051】~【0060】には、以下の記載がある。(下線は当審で付加。以下同様。) 「【0051】 次に、ミーリング加工することにより第二凹部22を形成し、個片化したカードのアンテナ接続用端子11(図3(a)、(b)参照)を露出させた。 ミーリング加工は、ミーリングツールを回転させながら、移動させることにより切削加工を行う加工方法である。カードをミーリング加工する際に、ミーリングツールの先端に形成されたテーパ角と、ツール1回転当たりの移動幅により、加工面に形成される段差が決まる。 本実施例では、ミーリングツールのテーパ角を5°とし、ミーリングツールが1回転する間に送り方向に移動する距離である移動幅を、0.2mmと0.4mmにして、第二凹部22を形成した。 本実施例では、導電粒子の粒子径が20μmのACFを用いた。 【0052】 次に、アンテナ接続用端子の上にACF(デクセリアルズ社製)を配置した後、ICモジュールの接続端子を平面視でアンテナ接続用端子に合わせて配置し、ICモジュールの接続端子の裏面から熱圧着装置(ルーラマット社製)を用いて熱圧着する事により、デュアルICカードを作製した。 【0053】 作製したサンプルは、移動幅が0.2mmのデュアルICカードを10枚、移動幅が0.4mmのデュアルICカードを10枚とした。 【0054】 以上の様にして作製したデュアルICカードのサンプルについて、下記の評価試験を行った。 ・ 動的曲げ力試験 :JIS X 6305-1(2010)に準拠(回数は8000回) ・ 動的ねじり力試験 :JIS X 6305-1(2010)に準拠(回数は10000回) ・ スリーホイール試験:旧JIS X 6305-3(2002)の付属書Aに準拠(挿抜回数は表裏1000回) ・ 高温高湿保存試験 :60℃、90%RHの恒温恒湿層に1000時間保存 【0055】 上記の試験項目、試験内容および判定基準について、表1にまとめて示した。 また、表1に示した各試験の結果を表2にまとめて示した。評価結果は、機能障害がある場合をNG(不良)としてカウントし、評価数(評価したサンプルの数)と共に示した。 【0056】 【表1】 [図:0001435160000002.jpg] 【0057】 【表2】 [図:0001435160000003.jpg] 【0058】 表2に示した様に、移動幅が0.4mmの場合は、動的ねじり力試験を除き、評価結果が悪かった。一方、移動幅が0.2mmの場合は、全て良好な結果であった。 【0059】 移動幅が0.4mmの場合、第二凹部22の表面に形成される凹凸形状の段差は、ミーリングツールの先端のテーパ角が5°の場合、tan(5°)×0.4(mm)≒35(μm)となる。また、移動幅が0.2mmの場合は、その半分の17.5μmとなる。 【0060】 ACFの導電粒子の粒子径は20μmである為、移動幅が0.4mmの場合は段差が35μmと導電粒子の粒子径より大きかった為、不良となる数が多かったが、移動幅が0.2mmの場合は段差17.5μmであり、導電粒子の粒子径の方が大きかった為、不良とならなかった、と考えられる。」 上記記載によれば、図1(a)に記載された、「移動幅」とは、「ミーリング加工」の際に、「ミーリングツールを回転させながら、移動」した際の、「ツール1回転当たりの移動幅」のこと(【0051】)をいうものと解される。 そして、本件特許明細書等に記載された「移動幅」については、「0.2mm」又は「0.4mm」であること(【0053】、【0057】(表2)、【0058】~【0060】)の記載は認められるものの、それ以外の「移動幅」については、本件特許明細書等には記載がない。 他方、令和7年1月31日付けの意見書1において特許権者は、「ミーリング加工」について、以下のように主張している。(12ページ下から4行~13ページ末行) 「そして、参考文献1(精機学会切削加工専門委員会「切削仕上面の粗さの改善とその対策」精密機械(1958年)24巻281号366-393頁、https://doi.org/10.2493/jjspe1933.24.366 )の図2及びその本文にも記載があるように、「切削」加工により、周期的な「凹凸形状」が形成されることは、本件特許出願時、当業者にとって技術常識であった。 [図:0001435160000004.jpg] 参考文献1の図2。 当該技術常識に照らせば、訂正後発明は、「本質的に技術的な意義がなく、本件特許明細書にサポートされていない」(7頁)ということにはならない(次図も参照)。 [図:0001435160000005.jpg] 本願[0059]の記載の図示。 」 また、同意見書と共に提出された、上記「技術常識」を示す、参考文献1(「精密機械(1958年)24巻281号」)の61ページには、図10として、切削加工した際の表面粗さが示されている。この図を含め参考文献1の記載に鑑みれば、切削加工を施すと、その表面には本件特許明細書等の図1に示されるように、同じ形状の凹凸が繰り返し形成されるとは限らず、むしろ凹凸の段差や幅に一定程度のバラツキが生じるものと解され、このことは当該技術分野の技術常識からも明らかであると認められる。 そうすると、訂正事項1-3及び訂正事項2に係る、「前記露出した表面」、すなわち、「アンテナ接続用端子」が「ミーリング加工されて露出した表面」においても、ミーリングツールの移動によって、凹凸幅、すなわち凹凸の例えば凸部の頂点間の距離には、一定程度のバラツキが存在し、そのうちのもっとも広い幅のことを、「最大幅」と称するものと解するのが相当である。 よって、訂正事項1-3及び訂正事項2に示される、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径」と「前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅」との間の大小関係は、“前記露出した表面に形成された凹凸形状の”凹凸幅のうち、少なくとも「最大幅」のものが、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径」よりも大きいことを規定するにとどまり、“前記露出した表面に形成された凹凸形状の”凹凸幅のうち、「最大幅」よりも小さい(狭い)間隔の凹凸幅については、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径」よりも小さくても構わないことを意味する。しかしながら、本件特許明細書等には、そもそも“前記露出した表面に形成された凹凸形状の”凹凸幅と、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径」との大小関係については記載も示唆もなく、また、本件特許発明を設計図のごとく精緻に記載したとはいえない、願書に添付した図面(図1)の記載のみから直ちに上記大小関係が実質的に記載されているともいえず、ましてや、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径が、前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅より小さい」という具体的な大小関係について記載されているともいえないから、訂正事項1-3を含む訂正事項1及び同様の記載を含む訂正事項2は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正とはいえない。 (2)小括 上記(1)で検討したように、訂正事項1-3及び訂正事項2は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。 (3)特許権者の主張について ア 意見書による主張 特許権者は、意見書において、次のように主張しているのでこれを検討する。 「(4)訂正事項1-3が新規事項に当たらないことについて 上記訂正事項1-3は、令和7年8月7日付意見書6頁でも述べたとおり、本件特許図1(b)が示すように、「凹凸形状」の谷部に導電粒子が入り込むような場合を想定していることを、より明らかにするための訂正である。 訂正事項1-3に関して、本件訂正拒絶理由通知書は、上で引用したとおり、「願書に添付した図面(図1)の記載のみから直ちに上記大小関係が実質的に記載されているともいえず、ましてや、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径が、前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅より小さい」という具体的な大小関係について記載されているともいえない」と述べる。 しかしながら、導電粒子に関し、本件明細書段落[0009]には、次の記載がある。 「ACFは、熱硬化性樹脂中に導電粒子が均一に分散されたフィルムである。初期状態では電気的な絶縁体であるが、このACFをフィルムの膜厚方向に熱圧着すると、その方向でACF中の導電粒子が圧着されて、導電パスを形成する事により導通する。しかし、フィルムの面に平行な方向は熱圧着されない為、絶縁性が維持される。」 当該記載によれば、異方性導電フィルムの導電粒子を用いて膜厚方向に導電パスを形成する技術においては、「フィルムの面に平行な方向は熱圧着されない」ことが前提なのであるから、図1では、当然、導電粒子の粒径が「移動幅」よりも大きい場合は想定していない。特に、「移動幅」の中で最大のもの(「最大幅」)よりも導電粒子の粒径が大きい場合は、「フィルムの面に平行な方向」全体にわたって、導電粒子が熱圧着されてしまい、「フィルムの面に平行な方向」全体に導電パスが形成されてしまう。その結果、「絶縁性が維持」されなくなる。 このような場合は、当然の前提としてもとより想定されていない以上、図1にも当然、その記載は無い。 したがって、図1に「上記大小関係が実質的に記載されて」いないと認定し、本件特許明細書に「“前記露出した表面に形成された凹凸形状の”凹凸幅と、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径」との大小関係については記載も示唆も」ないと述べた本件訂正拒絶理由通知書の判断は、異方性導電フィルムの導電粒子を用いて膜厚方向に導電パスを形成する技術に関する本件明細書の記載を看過した誤りがあり、それゆえ、訂正事項1-3は新規事項追加に当たるから訂正は認められないとした本件訂正拒絶理由通知書の判断には誤りがあると、いわざるを得ないと思料する。」(3ページ19行~4ページ20行) イ 当審の判断 上記主張は、要するならば、訂正事項1-3は、図1(b)が本来前提としている「「凹凸形状」の谷部に導電粒子が入り込むような場合」の構成を明確化しただけであり、本件特許明細書等の段落【0009】に示される「フィルムの面に平行な方向は熱圧着されない」という技術的前提から、異方性導電フィルムの粒子径が「移動幅」よりも大きい場合は当業者にとって想定外であるため、図示がなくとも大小関係は自明であることを主張するものと認める。 しかしながら、一般的なACFにおいて、熱圧着によりフィルムの面に平行な方向への導通を防ぎつつ、膜厚方向への導通を実現するという性質が、本件出願前に周知の技術的事項であったとしても、そのことが本件特許明細書等における訂正事項の記載欠缺の要因であるとする上記主張は、以下に述べるとおり、採用することができない。 まず、以下の第6の2(1)で述べるように、本件特許が解決しようとする課題は、「ミーリング加工によってICカード側のアンテナ接続用端子を露出する方法により製造するデュアルICカードにおいて、ACFの接続部の導通不良による接続信頼性の問題が無いデュアルICカードを提供する事」であると認められるところ、本件特許明細書等には、フィルムの面(接続端子の表面)に平行な方向への導通パスが形成される場合に接続信頼性が低下することは記載されておらず、そのことが本願出願時における技術常識とも認められない。 仮に、本件特許において、フィルムの面(接続端子の表面)に平行な方向への導通パスが形成される場合に接続信頼性が低下すると仮定しても、フィルムの面(接続端子の表面)に平行な方向とは、本件特許明細書等の図1の紙面左右方向のみならず紙面を貫通する方向も含むものと解されるところ、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径が、前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅より小さい」との構成により、本件特許明細書等の図1の紙面貫通方向に導電パスが形成されることを防止することができるとはいえないことは、ミーリング加工によって形成される凹凸の形状(意見書1における上掲した参考文献1の図2、本件特許明細書段落【0059】の記載等。)から明らかである。 さらに、本件特許明細書等の図1の記載のみから、直ちに「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径」と「前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅」との間の大小関係が実質的に記載されているとはいえないし、また、本件特許明細書等には、「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径が前記露出した表面に形成された凹凸形状の最大幅より小さい」という具体的な大小関係について記載されているともいえないことは、上述したとおりである。 したがって、意見書における特許権者の主張は採用することができない。 (4)本件訂正についてのまとめ 以上のとおり、請求項1及び2に係る訂正事項1-3及び明細書に係る訂正事項2は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。 よって、訂正事項1~2からなる本件訂正を認めることはできない。 第4 本件特許発明について 本件訂正は、上記第3に示したとおり、これを認めることはできないから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、令和6年1月30日に発行された特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1~2に記載された、次のとおりのものと認められる。なお、「1A」~「2E」の記号は、各構成要素を識別するために当審で付加したものであって、それぞれ、「構成要件1A」~「構成要件2E」などという。 1 本件特許発明1 1A カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続 用端子と、ICモジュール側の接続端子と、が異方性導電フィルムに よって接続されたデュアルICカードにおいて、 1B アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状の 最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さく、 1C 且つ前記ICモジュール側の前記接続端子の表面に形成された凹凸形 状の最大段差が、前記異方性導電フィルムの前記導電粒子の粒子径よ り小さい事を特徴とするデュアルICカード。 2 本件特許発明2 2A 前記カード基材は、その内部に外部装置と非接触接続する前記アン テナと、前記ICモジュールを格納する凹部とを備えており、 2B 前記ICモジュールは、 前記ICモジュールの基板の一方の面に、外部装置と接触接続を行 う接触接続用端子を備え、 前記ICモジュールの基板のもう一方の面に、前記カード基材側に 形成された前記アンテナ接続用端子と接続する前記ICモジュール側 の前記接続端子と、前記接触接続用端子および前記アンテナ接続用端 子と電気的に接続される事で外部装置との有線および無線通信を可能 とするICチップと、を備えており、 2C 前記カード基材の前記凹部は、少なくとも、前記ICモジュールを 格納可能な深さを備えた第一凹部と、前記第一凹部の周縁部に沿って 、前記第一凹部の底面より高く、前記カード基材の前記ICモジュール 側の表面より低い位置に形成された第二凹部と、を備えており、 2D 前記第二凹部に、前記アンテナ接続用端子が備えられている事を特 徴とする 2E 請求項1に記載のデュアルICカード。 第5 取消理由の概要 本件特許発明1及び2に対し、令和6年11月29日付けの取消理由通知書において示した取消理由の概要は、以下のとおりである。 取消理由1.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由2.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由3.(実施可能要件)本件特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由4-1.(進歩性)本件特許発明1及び2は、本件特許出願前に日本国内において頒布された、甲第1号証(特開2006-2150号公報)に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 取消理由4-2.(進歩性)本件特許発明1及び2は、本件特許出願前に日本国内において頒布された、甲第4号証(特開2017-117468号公報)に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 第6 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(明確性要件違反)について (1)「前記ICモジュール側の前記接続端子の表面に形成された凹凸形状」について 構成要件1Cにおいて、「前記ICモジュール側の前記接続端子の表面に形成された凹凸形状の最大段差」とあるところ、本件特許明細書には、次の記載が認められる。(下線は当審で付加。以下同様。) 「【0037】 通常、ICモジュール側の接続端子13は、プリント配線基板の銅箔をフォトリソグラフィ法によってパターニングしたパッド電極である。通常は、銅箔パターンの表面には、ニッケルめっきと金めっきが施されている。その為、銅箔の表面に薄い金属めっき層が形成された表面であるため、ミーリング加工によって形成される凹凸形状による段差より小さい段差となっているのが通常である。 【0038】 しかしながら、何らかの理由で、ICモジュール側の接続端子13の表面に大きな凹凸形状が形成される場合には、その表面に形成された凹凸形状の最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さい事が望ましい。」 上記記載によれば、本件特許明細書には、「ICモジュール側の接続端子の表面に形成される凹凸形状」について、プリント配線基板の銅箔をフォトリソグラフィ法によってパターニングしたパッド電極であるため、ミーリング加工によって形成される凹凸形状による段差より小さい段差となっているのが通常であるところ(【0037】)、何らかの理由で、ICモジュール側の接続端子の表面に大きな凹凸形状が形成される場合(【0038】)があることが記載されている。そして、「フォトリソグラフィ法によってパターニングしたパッド電極」の表面は、一般的には平滑で、ほとんど凹凸がないことが本件特許出願時における技術常識であるところ、「大きな凹凸形状」とはいい難いため、段落【0037】に記載した「小さい段差」と、段落【0038】に記載した「大きな凹凸形状」とは、これらをまとまった1つの技術思想として把握することは困難である。 そして、構成要件1Cの「ICモジュール側の接続端子の表面に形成される凹凸形状」は、本件特許明細書の段落【0037】に記載した「小さい段差」を有する「凹凸形状」を想定しているのか、又は、本件特許明細書の段落【0038】に記載した「何らかの理由」によって形成される「大きな凹凸形状」を想定しているのか、不明である。 加えて、段落【0038】に記載された、「何らかの理由」がどのような理由であるのか不明であるため、「大きな凹凸形状」がどのような形状であるのか、本件特許明細書の他の箇所及び本件特許出願時の技術常識を補ったとしても明らかでない。 よって、本件特許発明1は、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (2)構成要件1Bの「アンテナ接続用端子」の表面に、「凹凸形状」がどのように「形成」されるのかについて 構成要件1Bの「アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状の最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さく」において、「アンテナ接続用端子」の表面に、「凹凸形状」がどのように「形成」されるのか何ら具体的に特定されていないところ、本件特許明細書の段落【0037】に記載された「フォトリソグラフィ法によってパターニング」して「形成」された「凹凸形状」も含まれるのか否か、明確ではない。 よって、本件特許発明1は、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 また、請求項2は、請求項1を引用するものであって、構成要件2A~2Eによっても上記で指摘した点は明確とはいえないから、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 2 取消理由2(サポート要件違反)について (1)本件特許が解決しようとする課題について 本件特許明細書の段落【0001】~【0014】の記載を参酌すれば、本件特許が解決しようとする課題は、「ミーリング加工によってICカード側のアンテナ接続用端子を露出する方法により製造するデュアルICカードにおいて、ACFの接続部の導通不良による接続信頼性の問題が無いデュアルICカードを提供する事」であると認められる。 一方、本件特許発明1及び本件特許発明2において、「ICカード側のアンテナ接続用端子」が「ミーリング加工」によって露出されるものであるとの発明の前提となる構成は具体的に特定されていない。すなわち、構成要件1Bの「アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状」が、どのように「形成」されるのか何ら特定されていない。 また、「アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状」が、「アンテナ接続用端子」が「ミーリング加工」によって露出されることによりその表面に形成される「凹凸形状」であることが、本件特許出願時における技術常識であったとはいえない。 よって、本件特許発明1及び本件特許発明2は、本件特許明細書の記載及び本件特許出願時における技術常識に照らし、当業者が、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。 したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (2)構成要件1B及び1Cについて 本件特許が解決しようとする課題は、上記(1)で述べたように「ACFの接続部の導通不良による接続信頼性の問題が無いデュアルICカードを提供する事」である。 そして、異方性導電フィルムの導電粒子が、アンテナ接続用端子の凹部とこれに対向する接続端子の凹部との間に形成される空間にすっぽり入ってしまうと、導電粒子が、アンテナ接続用端子と接続端子とを接続することができずに接続不良が生じることは本件特許出願時における技術常識である。(本件特許明細書の【0024】及び図1(a)にも同様の状態が記載されている。) 一方、構成要件1B及び1Cにおいて、「アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状」及び「ICモジュール側の接続端子の表面に形成された凹凸形状」のいずれにおいても、当該「凹凸形状」のうち、「最大段差」のみが特定され、それ以外の形状(幅、形)について何ら特定されていない。 そうすると、構成要件1B及び1Cは、アンテナ接続用端子の凹部とこれに対向するICモジュール側の接続端子の凹部との間に形成される空間に導電粒子がすっぽり入ってしまう態様を含むことは明らかである。(例えば、導電粒子が直径20μmの球体であり、アンテナ接続用端子の凹部とこれに対向する接続端子の凹部とがそれぞれ深さ18μm(半径18μmの半球)である場合には、アンテナ接続用端子の凹部とこれに対向する接続端子の凹部との間に直径36μmの球の空間が形成され、当該空間には直径20μmの導電粒子がすっぽり入ってしまうため、アンテナ接続用端子と接続端子との間に接続不良が生じる。) また、「アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状」及び「ICモジュール側の接続端子の表面に形成された凹凸形状」のいずれにおいても、当該「凹凸形状」のうち、「最大段差」のみを特定することにより、接続不良が生じないことが本件特許出願時における技術常識であるとも認められない。 よって、本件特許発明1及び本件特許発明2は、本件特許明細書の記載及び本件特許出願時における技術常識に照らし、当業者が、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。 したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (3)構成要件1B及び1Cに対応する実施例の記載について 構成要件1B及び1Cにより、「カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続用端子」のみならず「ICモジュール側の接続端子」の「凹凸形状の最大段差」も「前記異方性導電フィルムの前記導電粒子の粒子径より小さい」ことを特定するものであるところ、本件特許明細書の段落【0038】には、「何らかの理由で、ICモジュール側の接続端子13の表面に大きな凹凸形状が形成される場合には、その表面に形成された凹凸形状の最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さい事が望ましい。」と記載されている。 しかしながら、本件特許明細書の段落【0045】~【0060】には、「ミーリング加工することにより第二凹部22を形成し、個片化したカードのアンテナ接続用端子11(図3(a)、(b)参照)を露出させた。…(中略)…ミーリングツールのテーパ角を5°とし、ミーリングツールが1回転する間に送り方向に移動する距離である移動幅を、0.2mmと0.4mmにして、第二凹部22を形成した。本実施例では、導電粒子の粒子径が20μmのACFを用いた。」(【0051】)、「移動幅が0.4mmの場合は、動的ねじり力試験を除き、評価結果が悪かった。一方、移動幅が0.2mmの場合は、全て良好な結果であった。」(【0058】)、「移動幅が0.4mmの場合、第二凹部22の表面に形成される凹凸形状の段差は、ミーリングツールの先端のテーパ角が5°の場合、tan(5°)×0.4(mm)≒35(μm)となる。また、移動幅が0.2mmの場合は、その半分の17.5μmとなる。」(【0059】)という実施例が記載されているが、本件特許明細書にはこれ以外の実施例がない。 すなわち、本件特許明細書等に開示されているのは、導電粒子の粒子径が20μmであって、テーパ角5°のミーリングツールを使用し、ミーリングツールが1回転する間に送り方向に移動する距離である移動幅を0.2mmとしたミーリング加工の場合、アンテナ接続用端子の表面に形成された凹凸形状の最大段差が理論上17.5μmとなり、その場合には、課題を解決することができ、一方、移動幅0.4mmとした場合には、上記最大段差が理論上35μmとなり、課題を解決することができない、という実施例のみである。そして、当該実施例からは、本件特許出願時における技術常識を参酌したとしても、当業者が、アンテナ接続用端子に形成された凹凸形状の最大段差が構成要件1Bを満たすいかなる態様(例えば、アンテナ接続用端子の表面の凹凸形状を、テーパ角5°のミーリングツールを使用し、ミーリングツールが1回転する間に送り方向に移動する距離である移動幅を0.2mmとした「ミーリング加工」を使用せずに形成した場合、及び/又は、その凹凸形状の最大段差が17.5μm~30μm未満の範囲)であっても、かつ、ICモジュール側の接続端子の表面に形成された凹凸形状の最大段差が構成要件1Cを満たすいかなる態様(例えば、意図的な加工によるものか意図的ではない事故等によるものかにかかわらず「何らかの理由」で「大きな凹凸形状」が形成される場合)であっても、上記課題を解決することができると当業者が認識することができるとはいえない。 よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 請求項2は、請求項1を引用するものであって、構成要件2A~2Eによっても上記(1)及び(2)で指摘した点は同様であるから、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 3 取消理由3(実施可能要件違反)について (1)構成要件1C 上記1(1)で述べたように、構成要件1Cは、本件特許明細書の段落【0038】に記載の「何らかの理由で、ICモジュール側の接続端子13の表面に大きな凹凸形状が形成される場合には、その表面に形成された凹凸形状の最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さい事が望ましい。」に対応した態様を含むところ、本件特許明細書には、「何らかの理由」がどのような理由であるのか具体的に特定していない以上、意図的ではない事故等の理由を含むものと解されるが、その理由により、どのような形状の凹凸形状が形成されるのか、また、その「形成」の際に、どのようにして「凹凸形状の最大段差」を「異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さい」ように制御するのかについて何ら記載がなく、本件特許出願時の技術常識に鑑みたとしても、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件特許発明1を実施することができるとは認められない。 本件特許発明2についても同様である。 よって、発明の詳細な説明は、当業者が、本件特許発明1及び本件特許発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 4 取消理由4-1(甲第1号証に基づく進歩性)について (1)甲第1号証に記載された事項及び甲1発明 ア 甲第1号証に記載された事項 特許異議申立書において引用された甲第1号証(以下、「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明はカード本体中に電気モジュールを接合するための、そして更にカード本体中に電気モジュールとアンテナ間の電気的接触を恒久的に確立するための電気的に異方性の導電性のホットメルト接着剤に関する。 …(中略)… 【0014】 当該技術分野のこの状態を考慮して、本発明が基礎とする目的は前記に特定された基準を充たす、カード本体中に電気モジュールを埋め込むための異方性導電性接着シートを特定することである。 【課題を解決するための手段】 【0015】 本発明に従うと、この目的は、少なくとも1種の加熱活性化可能な接着剤を基剤にした少なくとも1層の接着剤系から成る、異方性導電性接着シートにより達成され、ここで接着剤系の軟化温度が65℃~165℃の範囲内に位置し、そこで導電性粒子が接着剤系と混合され、粒子が更に平均、25~100μmの粒径を有する(但し導電性粒子の平均粒径が接着剤系の層の厚さより大きいことを条件とする)。軟化温度の表示はドイツ工業規格53460に従う測定法により実施される。 …(中略)… 【0018】 図1)において、1はデュアルインターフェースモジュールを表わし、2はカード本体を表わし、3は接着剤4および混合導電性粒子5から成る本発明の接着シートを表わし、そして6はアンテナを表わす。1つの好ましい態様において、本発明の温度活性化可能な接着剤は20~95μm間の層の厚さを有し、特に好ましい態様においては30~80μmの層の厚さを有する。 加熱活性化可能接着剤 電気モジュールを接合する目的のためには、加熱活性化可能接着剤はエポキシ材料、ポリエステルおよびポリイミドに高い接着性をもち、そしてカード本体への接合の目的のためには、それはPC、ABS、PVCおよびPETに良好な接着性を有する。1つの非常に好ましい方法は、例えば熱可塑性材料(例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-ビニルアセテート)、合成ゴム(例えばスチレン-イソプレン・ジブロックおよびトリブロック・コポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン・ジブロックおよびトリブロック・コポリマー(SBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン・ジブロックおよびトリブロック・コポリマー(SEBS))、ポリビニルアセテート、ポリイミド、ポリエーテル、コポリアミド、コポリエステル)、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)、またはポリ(メタ)アクリレートを使用する。この引用は完全性を主張しない。ポリマーは65~175℃の間の軟化範囲を有する。 …(中略)… 【0034】 本発明は更に特にカード本体中に電気モジュールを接着結合するための、接着部位上で基剤の導電性接触をもたらすために基剤を接合するための前記の接着シートの使用を提供する。粒子は好ましくは、特に高温下で-すなわち外気温度より上の温度で-圧力負荷下で接着結合段階において圧縮され、その結果圧縮されないときの接合状態に比較して、電気接触面積が増加する。非常に好ましい方法において、接着結合段階における温度は120℃~250℃の間である。」 (イ)「図1 [図:0001435160000006.jpg] 」 イ 甲1発明 上記アの記載事項(特に下線部)から、次の事項を読み取ることができる。 (ア)上記ア(ア)の「図1)において、1はデュアルインターフェースモジュールを表わし、2はカード本体を表わし、3は接着剤4および混合導電性粒子5から成る本発明の接着シートを表わし、そして6はアンテナを表わす。」(【0018】)との記載、及び同(イ)(図1)から、甲1には、“デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)と、カード本体2と、接着剤4および混合導電性粒子5から成る接着シート3と、アンテナ6とからな”ることが記載されているといえる。 (イ)上記ア(イ)(図1)から、次の事項を読み取ることができる。 a.上記(ア)を参照して図1からは、“カード本体2は、その内部にアンテナ6と、デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)を格納する凹部とを備え”ることを読み取ることができる。 b.上記a.を踏まえると、凹部が2段の構成となっていることが読み取れる。 そして、当該2段の凹部は、凹部のインターフェースモジュール1の出っ張り部分と対向する部分である一番低い凹部(第1凹部)と、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2凹部とからなる構造を読み取ることができる。そして、当該第2凹部は、カード本体2の上面側にあることを読み取ることができるから、図1からは、“前記凹部は、2段の構成となっていて、一番低い凹部(インターフェースモジュール1の出っ張り部分と対向する部分)の第1凹部と、カード本体2の上面側で、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2凹部からな”ることを読み取ることができる。 c.上記b.を踏まえ、アンテナ6とデュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)とは、第2凹部にて接着シート3によって接着結合されて電気的接続が図られていることを読み取ることができるから、図1からは、“前記第2凹部にてアンテナ6とデュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)とが接着シート3によって接着結合されて電気的接続が図られ”ることを読み取ることができる。 d.上記a.~c.より、甲1には、“カード本体2は、その内部にアンテナ6と、デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)を格納する凹部とを備え、前記凹部は、2段の構成となっていて、一番低い凹部(インターフェースモジュール1の出っ張り部分と対向する部分)の第1凹部と、カード本体2の上面側で、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2凹部からなり、前記第2凹部にてアンテナ6とデュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)とが接着シート3によって接着結合されて電気的接続が図られ”ることが記載されているといえる。 (ウ)上記ア(ア)の「本発明はカード本体中に電気モジュールを接合するための、そして更にカード本体中に電気モジュールとアンテナ間の電気的接触を恒久的に確立するための電気的に異方性の導電性のホットメルト接着剤に関する。」(【0001】)との記載から、甲1には、“カード本体中の電気モジュールとアンテナ間の電気的接触を恒久的に確立するための電気的に異方性の導電性のホットメルト接着剤”が記載されているといえる。 上記ア(ア)の「カード本体中に電気モジュールを埋め込むための異方性導電性接着シート」(【0014】)との記載から、甲1には、“カード本体中に電気モジュールを埋め込むための異方性導電性接着シートに用いられ”ることが記載されているといえるから、以上を踏まえ、甲1には、“カード本体中の電気モジュールとアンテナ間の電気的接触を恒久的に確立するための電気的に異方性の導電性のホットメルト接着剤は、カード本体中に電気モジュールを埋め込むための異方性導電性接着シートに用いられ”ることが記載されているといえる。 (エ)上記ア(ア)の「異方性導電性接着シートにより達成され、ここで接着剤系の軟化温度が65℃~165℃の範囲内に位置し、そこで導電性粒子が接着剤系と混合され、粒子が更に平均、25~100μmの粒径を有する(但し導電性粒子の平均粒径が接着剤系の層の厚さより大きいことを条件とする)。」(【0015】)との記載から、甲1には、“異方性導電性接着シートは、導電性粒子が接着剤系と混合され、導電性粒子の平均粒径が接着剤系の層の厚さより大き”いことが記載されているといえる。 (オ)上記ア(ア)の「本発明は更に特にカード本体中に電気モジュールを接着結合するための、接着部位上で基剤の導電性接触をもたらすために基剤を接合するための前記の接着シートの使用を提供する」(【0034】)との記載、及び上記ア(イ)(図1)から、甲1には、“カード本体中に電気モジュールを接着結合するため、前記の接着シートを使用したカード”が記載されているといえる。 (カ)上記(ア)~(オ)から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)と、カード本体2と、接着剤4および混合導電性粒子5から成る接着シート3と、アンテナ6とからなり、 カード本体2は、その内部にアンテナ6と、デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)を格納する凹部とを備え、前記凹部は、2段の構成となっていて、一番低い凹部(インターフェースモジュール1の出っ張り部分と対向する部分)の第1凹部と、カード本体2の上面側で、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2凹部からなり、前記第2凹部にてアンテナ6とデュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)とが接着シート3によって接着結合されて電気的接続が図られ、 カード本体中の電気モジュールとアンテナ間の電気的接触を恒久的に確立するための電気的に異方性の導電性のホットメルト接着剤は、カード本体中に電気モジュールを埋め込むための異方性導電性接着シートに用いられ、 異方性導電性接着シートは、導電性粒子が接着剤系と混合され、導電性粒子の平均粒径が接着剤系の層の厚さより大きく、 カード本体中に電気モジュールを接着結合するため、前記の接着シートを使用した カード。」 (2)甲第2号証に記載された事項 特許異議申立書において引用された甲第2号証(特開2007-310482号公報。以下、「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0037】 このようなICカード10は、図示しない外部装置(リーダ・ライタ等)と非接触で通信することができ、外部装置からICモジュール11に記憶された情報を読み取ったり、ICモジュール11へ新たな情報を書き込んだりすることができるようになっている。なお、後述するように、本実施の形態においては、ICモジュール11に外部端子13aが設けられており(図1)、この外部端子13aを介した接触状態で、ICカード10と外部装置との間における情報の送受信を行うことも可能となっている。」 (イ)「図1 [図:0001435160000007.jpg] 」 (ウ)「図2 [図:0001435160000008.jpg] 」 (エ)「図3 [図:0001435160000009.jpg] 」 (3)本件特許発明1について ア 甲1発明との対比 (ア)構成要件1Aについて 甲1発明において、「カード」を構成する「カード本体2」、「アンテナ6」、「電気モジュール」及び「接着剤4および混合導電性粒子5から成る接着シート3」は、それぞれ構成要件1Aの「カード基材」、「アンテナ」、「ICモジュール」及び「異方性導電フィルム」に相当する。 甲1発明は、「接着シート3を使用して、カード本体中に電気モジュールを接着結合」するとともに、「カード本体中の電気モジュールとアンテナ間の電気的接触を恒久的に確立するための電気的に異方性の導電性のホットメルト接着剤」が用いられる「異方性導電性接着シート」、すなわち「接着剤4および混合導電性粒子5から成る接着シート3」を介して、「電気モジュール」及び「アンテナ6」との電気的接続がなされるところ、当該「電気モジュール」及び「アンテナ6」には、それぞれ接続端子が存在することは自明であり、そのそれぞれの接続端子は、構成要件1Aの「アンテナの接続端子」及び「ICモジュール側の接続端子」に対応する。 甲1発明の「カード」は、「デュアルインターフェースモジュール1」及び「アンテナ6」を有することから、「デュアルICカード」といい得るものである。 したがって、甲1発明の「デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)と、カード本体2と、接着剤4および混合導電性粒子5から成る接着シート3と、アンテナ6とからなり」「カード本体中に電気モジュールを接着結合するため、前記の接着シートを使用したカード」は、構成要件1Aの「カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続用端子と、ICモジュール側の接続端子と、が異方性導電フィルムによって接続されたデュアルICカード」に相当する。 (イ)構成要件1B及び1Cについて 甲1発明の「異方性導電性接着シート」に混合される、「導電性粒子」は、「導電性粒子の平均粒径が接着剤系の層の厚さより大き」いものではあるが、「電気モジュール」の接続端子の表面や「アンテナ」における接続端子の表面との関係において、どのような大きさの関係を有するものであるかが特定されていないから、甲1発明は、構成要件1B及び1Cに係る構成を有するものとはいえない。(相違点1-1) イ 一致点及び相違点 以上、ア(ア)及び(イ)の検討から、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 1A カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続 用端子と、ICモジュール側の接続端子と、が異方性導電フィルムに よって接続されたデュアルICカード。 〈相違点1-1〉 本件特許発明1が、「アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状の最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さく、且つ前記ICモジュール側の前記接続端子の表面に形成された凹凸形状の最大段差が、前記異方性導電フィルムの前記導電粒子の粒子径より小さい事を特徴とする」のに対し、甲1発明の「電気モジュール」及び「アンテナ6」の接続端子が、「異方性導電性接着シート」の「導電性粒子の平均粒径」に対してどのような凹凸形状をなすのか、特定されていない点。 ウ 相違点についての当審の判断 甲1発明における、「電気モジュール」の接続端子や「アンテナ」における接続端子は、通常、金属端子表面にメッキ等が施され、また、その表面はほぼ平滑で、当該表面に形成される凹凸形状は、これらの接続端子同士を接着する「異方性導電性接着シート」に混合される「導電性粒子」の径よりも小さいものになることが本件特許出願時における技術常識である。加えて、本件特許明細書の段落【0037】を参酌すれば、構成要件1B及び1Cにおいて、各端子の表面に形成される「凹凸形状」は、「プリント配線基板の銅箔をフォトリソグラフィ法によってパターニングしたパッド電極」の「表面」に形成される「凹凸形状」を排除していない。 そうすると、相違点1-1に係る構成、すなわち、「アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状の最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さく、」(構成要件1B)「且つ前記ICモジュール側の前記接続端子の表面に形成された凹凸形状の最大段差が、前記異方性導電フィルムの前記導電粒子の粒子径より小さい事」(構成要件1C)は、甲1には明示がなくとも上記技術常識を参酌することにより当業者が容易に想到できる程度のことに過ぎない。 したがって、本件特許発明1は、当業者が、甲1に記載された発明に基づいて、上記技術常識を参酌することにより、容易に発明をすることができたものである。 エ むすび 相違点1-1に係る構成によって奏される効果も、当業者が普通に想起し得る程度のものに過ぎないことから、本件特許発明1は、当業者が、甲1に記載された発明に基づいて、上記技術常識を参酌することにより、容易に発明をすることができたものである。 (4)本件特許発明2について ア 甲1発明との対比 (ア)構成要件2Aについて 甲1発明の「アンテナ6と、デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)を格納する凹部」は、構成要件2Aの「前記アンテナと、前記ICモジュールを格納する凹部」に相当する。 甲1発明の「アンテナ6」は、外部装置と非接触接続するためのものであることが技術常識であるから、上記(3)ア(ア)の認定を踏まえると、甲1発明において、「カード本体2は、その内部にアンテナ6と、デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)を格納する凹部とを備え」ることは、構成要件2Aの、「前記カード基材は、その内部に外部装置と非接触接続する前記アンテナと、前記ICモジュールを格納する凹部とを備えて」いることに相当する。 (イ)構成要件2Bについて 甲1発明の「デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)」は、構成要件2Bの「ICモジュール」に相当する。 上記(3)ア(ア)における接続端子に係る認定を踏まえると、甲1発明において、「接着シート3」によって「電気モジュールとアンテナ間の電気的接触」が「恒久的に確立」される「デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)」の接続端子を備えることと、構成要件2Bの「前記ICモジュールの基板のもう一方の面に、前記カード基材側に形成された前記アンテナ接続用端子と接続する前記ICモジュール側の前記接続端子」を「備え」ることとは、“前記ICモジュールの基板の一方の面に、前記カード基材側に形成された前記アンテナ接続用端子と接続する前記ICモジュール側の前記接続端子”を備えることで共通する。 また、甲1発明の「デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)」は、「アンテナ6」によって外部装置との無線通信を行うものと認められ、上記(3)ア(ア)における接続端子及びその電気的接続関係に関する認定を踏まえると、構成要件2Bの「前記接触接続用端子および前記アンテナ接続用端子と電気的に接続される事で外部装置との有線および無線通信を可能とするICチップ」とは、“前記アンテナ接続用端子と電気的に接続される事で外部装置との無線通信を可能とするICチップ”である点で共通する。 したがって、甲1発明の「デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)と、カード本体2と、接着剤4および混合導電性粒子5から成る接着シート3と、アンテナ6とからなり」「カード本体中の電気モジュールとアンテナ間の電気的接触を恒久的に確立するための電気的に異方性の導電性のホットメルト接着剤は、カード本体中に電気モジュールを埋め込むための異方性導電性接着シートに用いられ」ることと、構成要件2Bの「前記ICモジュールは、 前記ICモジュールの基板の一方の面に、外部装置と接触接続を行う接触接続用端子を備え、 前記ICモジュールの基板のもう一方の面に、前記カード基材側に形成された前記アンテナ接続用端子と接続する前記ICモジュール側の前記接続端子と、前記接触接続用端子および前記アンテナ接続用端子と電気的に接続される事で外部装置との有線および無線通信を可能とするICチップと、を備えており、」とは、下記の点(相違点2-1)を除き、 “前記ICモジュールは、 前記ICモジュールの基板の一方の面に、前記カード基材側に形成された前記アンテナ接続用端子と接続する前記ICモジュール側の前記接続端子と、前記アンテナ接続用端子と電気的に接続される事で外部装置との無線通信を可能とするICチップと、を備えて”いる点で共通する。 (ウ)構成要件2Cについて 甲1発明の「アンテナ6と、デュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)を格納する凹部」、「一番低い凹部(インターフェースモジュール1の出っ張り部分と対向する部分)の第1凹部」及び「カード本体2の上面側で、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2凹部」は、それぞれ構成要件2Cの「前記カード基材の前記凹部」、「前記ICモジュールを格納可能な深さを備えた第一凹部」及び「前記カード基材の前記ICモジュール側の表面より低い位置に形成された第二凹部」に相当する。 その一方で、甲1発明の「第2凹部」は、「第1凹部よりも底面に対して高い位置にある」が、「第1凹部」の周縁部に沿っているかは不明であるから、甲1発明において、「凹部」が「第1凹部」と「第2凹部」とを備えることと、構成要件2Cの「前記カード基材の前記凹部は、少なくとも、前記ICモジュールを格納可能な深さを備えた第一凹部と、前記第一凹部の周縁部に沿って、前記第一凹部の底面より高く、前記カード基材の前記ICモジュール側の表面より低い位置に形成された第二凹部と、を備え」ることとは、下記の点(相違点2-2)で相違するものの、“前記カード基材の前記凹部は、少なくとも、前記ICモジュールを格納可能な深さを備えた第一凹部と、前記第一凹部の底面より高く、前記カード基材の前記ICモジュール側の表面より低い位置に形成された第二凹部と、を備えて”いる点では共通する。 (エ)構成要件2Dについて 上記(3)ア(ア)における接続端子及びその電気的接続関係に関する認定を踏まえると、甲1発明の「前記第2凹部にてアンテナ6とデュアルインターフェースモジュール1(電気モジュール)とが接着シート3によって接着結合されて電気的接続が図られ」ることは、構成要件2Dの、「前記第二凹部に、前記アンテナ接続用端子が備えられている」との構成に相当する。 (オ)構成要件2Eについて 上記(3)イに示したとおり、請求項2が引用する請求項1に係る発明(本件特許発明1)は、甲1発明に対して、上記相違点1-1の点で異なるから、本件特許発明2は、甲1発明とは相違点2-3の点で異なる。 イ 一致点及び相違点 上記ア(ア)~(オ)の検討から、本件特許発明2と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 2A 前記カード基材は、その内部に外部装置と非接触接続する前記アン テナと、前記ICモジュールを格納する凹部とを備えており、 2B’ 前記ICモジュールは、 前記ICモジュールの基板の一方の面に、前記カード基材側に形成 された前記アンテナ接続用端子と接続する前記ICモジュール側の前 記接続端子と、前記アンテナ接続用端子と電気的に接続される事で外 部装置との無線通信を可能とするICチップと、を備えており、 2C’ 前記カード基材の前記凹部は、少なくとも、前記ICモジュールを 格納可能な深さを備えた第一凹部と、前記第一凹部の底面より高く、 前記カード基材の前記ICモジュール側の表面より低い位置に形成さ れた第二凹部 と、を備えており、 2D 前記第二凹部に、前記アンテナ接続用端子が備えられている事を特 徴とする 2E’請求項1に記載のデュアルICカード。 〈相違点2-1〉(構成要件2Bに関する点) 本件特許発明2が、「前記ICモジュールの基板の一方の面に、外部装置と接触接続を行う接触接続用端子を備え」るとともに、「前記接触接続用端子」が「前記ICモジュール側の前記接続端子」と「電気的に接続」されることで、「外部装置との有線」通信を可能とするものであるのに対し、甲1発明は、外部装置との接触接続を行う接触接続用端子を備え、当該接触接続端子を通じて外部装置との有線通信を行うことが特定されていない点。 〈相違点2-2〉(構成要件2Cに関する点) 本件特許発明2の「第二凹部」が、「前記第一凹部の周縁部に沿って」形成されるのに対し、甲1発明の「第2凹部」が、「第1凹部」の周縁部に沿って形成されていることが特定されていない点。 〈相違点2-3〉(構成要件2Eに関する点) 本件特許発明2が、上記相違点1-1の点で甲1発明とは異なる点。 ウ 相違点についての当審の判断 (ア)相違点2-1について 甲1発明の「カード」は、「アンテナ6」を有すると共に、「デュアルインターフェースモジュール1」を有することから、当該「アンテナ6」のほかに、有線通信を行うことが示唆されているといえる。 また、上記(2)及び後記する5(1)イの甲4発明などにあるように、接触・非接触の両方の機能をもつICカード、すなわちデュアルICカードは、本件特許出願前周知なものに過ぎず、無線通信のほか有線通信を行うための接触用接続端子を設けることは当業者にとって容易である。 (イ)相違点2-2について 甲1の図1からは、「第2凹部」が「第1凹部」に対して、どのような位置関係にあるのかは明らかでないものの、例えば甲第2号証の図1~3(上記(2)(イ)~(エ))や、甲第4号証の図1A~1C(下記5(1)ア(ク)~(コ))などにみられるように、甲1発明の「第2凹部」に相当する部分が甲1発明の「第1凹部」の周縁部に沿って形成される態様も、本件特許出願前の単なる周知技術に過ぎないことから、相違点2-2の構成は格別なものとはいえない。 (ウ)相違点2-3について 上記(3)ウで示したとおりである。 エ むすび 相違点2-1~2-3に係る構成によって奏される効果も、当業者が普通に想起し得る程度のものに過ぎないことから、本件特許発明2は、当業者が、甲1に記載された発明に基づいて、上記技術常識並びに甲第2号証及び甲第4号証に記載された周知技術を参酌することにより、容易に発明をすることができたものである。 5 取消理由4-2(甲第4号証に基づく進歩性)について (1)甲第4号証に記載された事項及び甲4発明 ア 甲第4号証に記載された事項 特許異議申立書において引用された甲第4号証(以下、「甲4」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0004】 図5は、非接触ICカード100の内部構成を示す図である。非接触ICカード100は、カード基材101に少なくとも1つのアンテナコイル102と、アンテナコイル102に接続されたICチップ103とが設けられており、アンテナコイル102を通じて、図示しない外部装置であるリーダライタから送出される交流電磁波の受信を行い、電力供給及び信号送受信を行うことによりカードとリーダライタとの間の通信が行われている。 また、近年、接触ICカードの機能と非接触ICカードの機能を1つのICチップで併せ持つ接触/非接触共用ICカードが開発されている。」 (イ)「【0012】 (ICカード) 本発明のICカードは、第1のカード基材と、第2のカード基材と、アンテナ基材と、ICチップと、導電性接着剤とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。 【0013】 <第1のカード基材> 前記第1のカード基材は、開口を有する。 前記開口の形状は、前記ICチップの形状に対応している。 …(中略)… 【0016】 <アンテナ基材> 前記アンテナ基材は、アンテナパターンを具備する。 前記アンテナ基材は、前記第1のカード基材と前記第2のカード基材との間に配される。 …(中略)… 【0018】 <<アンテナパターン>> 前記アンテナパターンは、例えば、前記アンテナ基材に埋設されている。そして、前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する領域は、例えば、埋設された前記アンテナパターンの一部が露出するように凹んでいる。すなわち、凹みは、前記開口の形状に対応している。 【0019】 前記アンテナパターンは、例えば、絶縁性樹脂により被覆された金属ワイヤーを、前記アンテナ基材に、所定の熱及び圧力を加えて押し付けることにより埋設させて、形成される。そして、前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する予定の領域を、前記領域内に埋設された前記アンテナパターンが露出するように削ることで、前記領域に前記アンテナパターンの一部が露出する。 前記金属ワイヤーとしては、例えば、銅線などが挙げられる。」 (ウ)「【0027】 <<第2の態様>> 前記ICカードの一つの態様として、前記アンテナ基材は、前記開口に面する前記第1のカード基材側の表面に、非貫通孔である複数の孔を有する。 前記複数の孔は、開口部の最短長さ及び最大深さの少なくともいずれかが前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さい孔を含む。 ここで、平均粒子径は、導電性粒子の粒径の算術平均値として算出される値である。 孔の開口部の最短長さとは、開口面の外周において対向する任意の2点間の最短距離である。例えば、開口部が円形の場合、直径が最短長さとなり、開口部が楕円形の場合、短径が最短長さとなる。 孔の最大深さとは、孔の開口面から孔の最深部までの距離である。 前記非貫通孔は、少なくともアンテナパターン3a上に存在することが、導通を得る上では好ましい。 【0028】 <<<孔の開口部の最短長さ>>> 前記孔の開口部の最短長さが前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まりやすくなり、導電性粒子の捕捉性が向上する。その結果、ICチップの電気的接続が優れる。 前記孔の開口部の最短長さは、前記導電性粒子の平均粒子径の20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上が特に好ましい。また、前記孔の開口部の最短長さは、前記導電性粒子の平均粒子径の80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましい。 なお、前記孔が複数存在する場合、各孔の開口部の最短長さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。 複数の孔の各開口部の最短長さが同じ長さである場合には、導電性粒子の捕捉性を事前に予測し易くなり、使用する導電性接着剤の選択が容易になるとともに、導通性能が安定しやすくなる。 他方、複数の孔の各開口部の最短長さが同じ長さではない場合には、導電性粒子の大きさがばらついているときに、導電性粒子は、各々の大きさの導電性粒子に適した孔に嵌まることになる。言い換えれば、複数の孔の各開口部の最短長さが同じ長さではない場合には、導電性粒子の大きさがばらついている導電性接着剤を使用することが適している。導電性粒子の大きさがばらついているものを使用できることは、導電性接着剤のコスト削減につながる。 なお、前記孔の開口部の最短長さが、前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さい場合には、前記孔の最大深さについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記導電性接着剤の導電性粒子の平均粒子径よりも小さくてもよいし、小さくなくてもよい。 また、前記孔の開口部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、矩形、多角形、円形、円形に近似する曲線を有する形状などが挙げられる。円形に近似する曲線を有する形状としては、例えば、楕円などが挙げられる。前記孔は、前記した非連続的な溝と、実質的に同一と見なせる場合もある。 【0029】 <<<孔の最大深さ>>> 前記孔の最大深さが前記導電性接着剤の導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まった際に、前記導電性粒子はアンテナ基材とICチップとに挟持される。その結果、ICチップの電気的接続が優れることとなる。 前記孔の最大深さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、導電性粒子を含有する導電性接着剤においては、通常、導電性粒子を15%~20%程度圧縮して使用することを想定している点からすれば、前記導電性粒子の平均粒子径の85%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下が特に好ましい。 他方、前記孔に前記導電性粒子を嵌めるためには、前記孔にはある程度の深さが必要であることから、前記孔の最大深さは、前記導電性粒子の平均粒子径の30%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。 前記孔の最大深さが、前記導電性接着剤の導電性粒子の平均粒子径よりも小さい場合、前記孔の開口部の最短長さについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記導電性粒子の平均粒子径より小さくてもよいし、小さくなくてもよい。 前記孔の最大深さが、前記導電性接着剤の導電性粒子の平均粒子径よりも小さい場合、前記孔の開口の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、矩形、多角形、円形、円形に近似する曲線を有する形状などが挙げられる。円形に近似する曲線を有する形状としては、例えば、楕円などが挙げられる。 前記孔が複数存在する場合、各孔の最大深さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。 各孔の最大深さが同じ深さである場合には、導電性粒子の捕捉性を事前に予測し易くなり、使用する導電性接着剤の選択が容易になるとともに、導通性能が安定しやすくなる。 他方、各孔の最大深さが同じ深さではない場合には、導電性粒子の大きさがばらついているときに、いずれかの孔で押圧が適した状態が得られ、結果、ICチップの電気的接続が優れることとなる。言い換えれば、複数の孔の最大深さが同じ長さではない場合には、導電性粒子の大きさがばらついている導電性接着剤を使用することが適している。導電性粒子の大きさがばらついているものを使用できることは、導電性接着剤のコスト削減につながる。」 (エ)「【0034】 前記ICチップは、例えば、ガラス-エポキシ製の基板上にICがChip On Tape(COT)等の実装方法により製造された接触/非接触共用のICチップである。例えば、前記ICチップの表面(おもて面)には、複数の接続端子が設けられており、接触方式により通信を行うことができる。前記ICチップは、裏面に、前記アンテナパターンと電気的に接続する電極を有する。前記電極は、例えば、前記ICチップの裏面全面に設けられている。」 (オ)「【0037】 <導電性接着剤> 前記導電性接着剤は、導電性粒子と、樹脂とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。 前記導電性接着剤は、前記ICチップと前記アンテナ基材との間に介在し、前記ICチップと前記アンテナパターンとを電気的に接続する。更には、前記ICチップを、前記アンテナ基材に接着させる。 前記導電性接着剤は、非熱硬化型であることが好ましい。 前記導電性接着剤は、作業性向上の点からフィルム状であることが好ましい。即ち、導電性接着フィルムであってもよい。 また、この導電性接着剤や導電性接着フィルムは、導電性粒子を含有していることから、公知の異方性導電接着剤(異方性導電ペーストや異方性導電フィルムなど)を用いてもよい。」 (カ)「【0042】 ここで、本発明のICカードの一態様を図を用いて説明する。 図1Aは、本発明のICカードの一例の外観の概略斜視図である。 図1Bは、本発明のICカードの一例の概略側面図である。 図1Cは、アンテナ基材の部分側面図である。 図1Aにおいては、第1のカード基材、アンテナ基材、及び第2のカード基材の積層構造を一体構造として図示している。 ICカード10は、第2のカード基材2と、アンテナ基材3と、第1のカード基材1とを積層してなる。 ICカード10には、アンテナ基材3の内部に複数周回するアンテナパターン3aが配されている。第1のカード基材1には開口1aが設けられおり、開口1aに、表面に複数の接続端子4aを設けたICチップ4が配置されている。ICチップ4の裏面は、例えば、全面が電極となっている。 アンテナ基材3の第1のカード基材1側の面における開口1aに面する領域は、埋設されたアンテナパターン3aの一部が露出するように凹んでいる。更に、前記領域の中央部は、ICチップ4の裏面の凸部が嵌合するように深く彫り込まれている。なお、ICチップ4の裏面に凸部がない場合は、前記領域は平面となる。 アンテナパターン3aの一部は、アンテナ基材3の第1のカード基材1側の面における開口1aに面する領域の側部3c(図1Aの斜線部)において、露出している。 この態様において、溝3bは、側部3cに形成されている。 …(中略)… 【0045】 次に、ICチップが配される領域の拡大図を用いて、孔の態様の一例を説明する。 図4は、ICチップが配される領域の拡大上面図である。 図4において、アンテナパターン3aの一部は、アンテナ基材3の第1のカード基材側の面における開口に面する領域の側部において、露出している。 前記側部において露出しているアンテナパターン3aは、一本の幹部と、該幹部と直交する方向に延びる複数の枝部とを有する串型形状をしている。 前記孔は、アンテナパターン3aに複数形成されている。前記孔は、円形であり、例えば、アンテナパターン3aをエッチングすることにより形成できる。前記アンテナパターンに前記孔を形成すると、前記孔に捕捉された導電性粒子は、確実にICチップとアンテナパターンとの導通に寄与する。そのため、前記アンテナパターンに前記孔を形成することにより、導通抵抗を調整しやすくなる。」 (キ)「【0094】 本発明のICカードは、ICチップの電気的接続に優れることから、情報管理や決済等に使用される接触型ICカード、非接触型ICカードなどに好適に用いることができる。」 (ク)「図1A [図:0001435160000010.jpg] 」 (ケ)「図1B [図:0001435160000011.jpg] 」 (コ)「図1C [図:0001435160000012.jpg] 」 (サ)「図4 [図:0001435160000013.jpg] 」 イ 甲4発明 (ア)上記ア(ア)の「また、近年、接触ICカードの機能と非接触ICカードの機能を1つのICチップで併せ持つ接触/非接触共用ICカードが開発されている。」(【0004】)との記載、同(エ)の「前記ICチップは、…(中略)…接触/非接触共用のICチップである。例えば、前記ICチップの表面(おもて面)には、複数の接続端子が設けられており、接触方式により通信を行うことができる。前記ICチップは、裏面に、前記アンテナパターンと電気的に接続する電極を有する。」(【0034】)との記載、及び、同(キ)の「本発明のICカードは、ICチップの電気的接続に優れることから、情報管理や決済等に使用される接触型ICカード、非接触型ICカードなどに好適に用いることができる。」(【0094】)との記載から、甲4には、“接触ICカードの機能と非接触ICカードの機能を1つのICチップで併せ持つ接触/非接触共用ICカード”が記載されているといえる。 (イ)上記ア(イ)の「本発明のICカードは、第1のカード基材と、第2のカード基材と、アンテナ基材と、ICチップと、導電性接着剤とを少なくとも有し」(【0012】)との記載から、甲4には、“ICカードは、第1のカード基材と、第2のカード基材と、アンテナ基材と、ICチップと、導電性接着剤とを少なくとも有”することが記載されているといえる。 (ウ)上記ア(カ)の「図1Bは、本発明のICカードの一例の概略側面図である。…(中略)…ICカード10は、第2のカード基材2と、アンテナ基材3と、第1のカード基材1とを積層してなる。」(【0042】)との記載、及び同(ケ)(図1B)から、甲4には、“ICカードは、第2のカード基材2と、アンテナ基材3と、第1のカード基材1とを積層してな”ることが記載されているといえる。 (エ)上記ア(イ)の「前記第1のカード基材は、開口を有する。前記開口の形状は、前記ICチップの形状に対応している。」(【0013】)との記載から、甲4には、“第1のカード基材は、開口を有し、開口の形状は、前記ICチップの形状に対応して”いることが記載されているといえる。 (オ)上記ア(イ)の「前記アンテナ基材は、アンテナパターンを具備する。前記アンテナ基材は、前記第1のカード基材と前記第2のカード基材との間に配される。」(【0016】)との記載から、甲4には、“アンテナ基材は、アンテナパターンを具備し、前記第1のカード基材と前記第2のカード基材との間に配され”ることが記載されているといえる。 (カ)上記ア(イ)の「アンテナパターンは、例えば、前記アンテナ基材に埋設されている。そして、前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する領域は、例えば、埋設された前記アンテナパターンの一部が露出するように凹んでいる。」(【0018】)との記載から、甲4には、“アンテナパターンは、前記アンテナ基材に埋設され、前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する領域は、埋設された前記アンテナパターンの一部が露出するように凹んで”いることが記載されているといえる。 (キ)上記ア(イ)の「前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する予定の領域を、前記領域内に埋設された前記アンテナパターンが露出するように削ることで、前記領域に前記アンテナパターンの一部が露出する。」(【0019】)との記載から、甲4には、“前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する予定の領域を、前記領域内に埋設された前記アンテナパターンが露出するように削ることで、前記領域に前記アンテナパターンの一部が露出”することが記載されているといえる。 (ク)上記ア(ウ)の「前記アンテナ基材は、前記開口に面する前記第1のカード基材側の表面に、非貫通孔である複数の孔を有する。前記複数の孔は、開口部の最短長さ及び最大深さの少なくともいずれかが前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さい孔を含む。」(【0027】)との記載から、甲4には、“前記アンテナ基材は、非貫通孔である複数の孔を有し、前記複数の孔は、開口部の最短長さ及び最大深さの少なくともいずれかが前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さい孔を含”むことが記載されているといえる。 (ケ)上記ア(コ)(図1C)から、アンテナ基材3に2段の構成の凹部が形成され、一番低い第1凹部と、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2の凹部が見て取れるから、甲4には、“前記アンテナ基材には、前記ICチップを格納する凹部を備え、前記凹部は、2段の構成となっていて、一番低い第1凹部と、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2凹部からな”ることが記載されているといえる。 (コ)上記ア(ウ)の「前記孔の開口部の最短長さが前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まりやすくなり、導電性粒子の捕捉性が向上する。…(中略)…前記孔の開口部の最短長さは、前記導電性粒子の平均粒子径の80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましい。」(【0028】)との記載から、甲4には、“前記孔の開口部の最短長さが前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まりやすくなり、導電性粒子の捕捉性が向上”すること、及び、“前記孔の開口部の最短長さは、前記導電性粒子の平均粒子径の80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が特に好まし”いことが記載されているといえる。 (サ)上記ア(ウ)の「前記孔の最大深さが前記導電性接着剤の導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まった際に、前記導電性粒子はアンテナ基材とICチップとに挟持される。その結果、ICチップの電気的接続が優れることとなる。…(中略)…前記導電性粒子の平均粒子径の85%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下が特に好ましい。…(中略)…前記孔の最大深さは、前記導電性粒子の平均粒子径の30%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。」(【0029】)との記載から、甲4には、“前記孔の最大深さが前記導電性接着剤の導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まった際に、前記導電性粒子はアンテナ基材とICチップとに挟持されその結果、ICチップの電気的接続が優れ”ること、“孔の最大深さは前記導電性粒子の平均粒子径の85%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下が特に好まし”いこと、及び、“前記孔の最大深さは、前記導電性粒子の平均粒子径の30%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、60%以上が特に好まし”いことが記載されているといえる。 (シ)上記ア(エ)の「前記ICチップは、例えば、ガラス-エポキシ製の基板上にICがChip On Tape(COT)等の実装方法により製造された接触/非接触共用のICチップである。例えば、前記ICチップの表面(おもて面)には、複数の接続端子が設けられており、接触方式により通信を行うことができる。前記ICチップは、裏面に、前記アンテナパターンと電気的に接続する電極を有する。」(【0034】)との記載から、甲4には、“前記ICチップは、例えば、ガラス-エポキシ製の基板上にICがChip On Tape(COT)等の実装方法により製造された接触/非接触共用のICチップであり、前記ICチップの表面(おもて面)には、複数の接続端子が設けられており、接触方式により通信を行うことができるとともに、裏面に、前記アンテナパターンと電気的に接続する電極を有”することが記載されているといえる。 (ス)上記ア(オ)の「前記導電性接着剤は、導電性粒子と、樹脂とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。前記導電性接着剤は、前記ICチップと前記アンテナ基材との間に介在し、前記ICチップと前記アンテナパターンとを電気的に接続する。…(中略)…この導電性接着剤や導電性接着フィルムは、導電性粒子を含有していることから、公知の異方性導電接着剤(異方性導電ペーストや異方性導電フィルムなど)を用いてもよい。」(【0037】)との記載から、甲4には、“前記導電性接着剤は、導電性粒子と、樹脂とを少なくとも含有し、前記導電性接着剤は、前記ICチップと前記アンテナ基材との間に介在し、前記ICチップと前記アンテナパターンとを電気的に接続し、この導電性接着剤は、異方性導電接着剤(異方性導電ペーストや異方性導電フィルムなど)を用いてもよ”いことが記載されているといえる。 (セ)上記ア(カ)の「ICカード10は、第2のカード基材2と、アンテナ基材3と、第1のカード基材1とを積層してなる。ICカード10には、アンテナ基材3の内部に複数周回するアンテナパターン3aが配されている。第1のカード基材1には開口1aが設けられおり、開口1aに、表面に複数の接続端子4aを設けたICチップ4が配置されている。ICチップ4の裏面は、例えば、全面が電極となっている。」(【0042】)との記載から、甲4には、“ICカード10は、第2のカード基材2と、アンテナ基材3と、第1のカード基材1とを積層してなり、ICカード10には、アンテナ基材3の内部に複数周回するアンテナパターン3aが配され、第1のカード基材1には開口1aが設けられおり、開口1aに、表面に複数の接続端子4aを設けたICチップ4が配置されていて、ICチップ4の裏面は、全面が電極となって”いることが記載されているといえる。 (ソ)上記ア(カ)の「前記孔は、アンテナパターン3aに複数形成されている。…(中略)…前記アンテナパターンに前記孔を形成すると、前記孔に捕捉された導電性粒子は、確実にICチップとアンテナパターンとの導通に寄与する。そのため、前記アンテナパターンに前記孔を形成することにより、導通抵抗を調整しやすくなる。」(【0045】)との記載、及び同(サ)(図4)から、甲4には、“前記孔は、アンテナパターン3aに複数形成されていて、前記アンテナパターンに前記孔を形成すると、前記孔に捕捉された導電性粒子は、確実にICチップとアンテナパターンとの導通に寄与するため、前記アンテナパターンに前記孔を形成することにより、導通抵抗を調整しやすくなる”ことが記載されているといえる。 (タ)上記(ア)~(ソ)の認定より、甲4には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 「接触ICカードの機能と非接触ICカードの機能を1つのICチップで併せ持つ接触/非接触共用ICカードであって、 ICカードは、第1のカード基材と、第2のカード基材と、アンテナ基材と、ICチップと、導電性接着剤とを少なくとも有し、 ICカードは、第2のカード基材2と、アンテナ基材3と、第1のカード基材1とを積層してなり、 第1のカード基材は、開口を有し、開口の形状は、前記ICチップの形状に対応しており、 アンテナ基材は、アンテナパターンを具備し、前記第1のカード基材と前記第2のカード基材との間に配され、 アンテナパターンは、前記アンテナ基材に埋設され、前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する領域は、埋設された前記アンテナパターンの一部が露出するように凹んでおり、 前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する予定の領域を、前記領域内に埋設された前記アンテナパターンが露出するように削ることで、前記領域に前記アンテナパターンの一部が露出し、 前記アンテナ基材は、非貫通孔である複数の孔を有し、前記複数の孔は、開口部の最短長さ及び最大深さの少なくともいずれかが前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さい孔を含み、 前記アンテナ基材には、前記ICチップを格納する凹部を備え、前記凹部は、2段の構成となっていて、一番低い第1凹部と、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2凹部からなり、 前記孔の開口部の最短長さが前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まりやすくなり、導電性粒子の捕捉性が向上し、 前記孔の開口部の最短長さは、前記導電性粒子の平均粒子径の80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましく、 前記孔の最大深さが前記導電性接着剤の導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まった際に、前記導電性粒子はアンテナ基材とICチップとに挟持されその結果、ICチップの電気的接続が優れ、 孔の最大深さは前記導電性粒子の平均粒子径の85%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下が特に好ましく、 前記孔の最大深さは、前記導電性粒子の平均粒子径の30%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましく、 前記ICチップは、例えば、ガラス-エポキシ製の基板上にICがChip On Tape(COT)等の実装方法により製造された接触/非接触共用のICチップであり、前記ICチップの表面(おもて面)には、複数の接続端子が設けられており、接触方式により通信を行うことができるとともに、裏面に、前記アンテナパターンと電気的に接続する電極を有し、 前記導電性接着剤は、導電性粒子と、樹脂とを少なくとも含有し、前記導電性接着剤は、前記ICチップと前記アンテナ基材との間に介在し、前記ICチップと前記アンテナパターンとを電気的に接続し、この導電性接着剤は、異方性導電接着剤(異方性導電ペーストや異方性導電フィルムなど)を用いてもよく、 ICカード10は、第2のカード基材2と、アンテナ基材3と、第1のカード基材1とを積層してなり、ICカード10には、アンテナ基材3の内部に複数周回するアンテナパターン3aが配され、第1のカード基材1には開口1aが設けられおり、開口1aに、表面に複数の接続端子4aを設けたICチップ4が配置されていて、ICチップ4の裏面は、全面が電極となっており、 前記孔は、アンテナパターン3aに複数形成されていて、前記アンテナパターンに前記孔を形成すると、前記孔に捕捉された導電性粒子は、確実にICチップとアンテナパターンとの導通に寄与するため、前記アンテナパターンに前記孔を形成することにより、導通抵抗を調整しやすくなる 接触/非接触共用ICカード。」 (2)本件特許発明1について ア 甲4発明との対比 (ア)構成要件1Aについて 構成要件1Aの「カード基材」は、本件特許明細書段落【0021】に記載された「カード基材10」に対応するところ、同【0048】及び図3を参照すると、オーバーシート1、中間シート2、中間シート3、アンテナシート4、中間シート5、中間シート6、及び、オーバーシート7からなる積層体を含むものと解される。 一方、甲4発明の「ICカード」は、「第1のカード基材」(上記オーバーシート1~中間シート3に相当。)と、「第2のカード基材」(上記中間シート5~オーバーシート7に相当。)と、「アンテナ基材」(上記アンテナシート4に相当。)とを有するとともに、これらを「積層してな」るものであるところ、当該積層体は、構成要件1Aの「カード基材」に相当する。 甲4発明の「アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する予定の領域を、前記領域内に埋設された前記アンテナパターンが露出するように削ることで、」「露出」する「アンテナパターンの一部」、「ICチップ4」の「裏面」の「電極」、「異方性導電フィルムなど」の「導電性接着剤」及び「接触/非接触共用ICカード」は、それぞれ構成要件1Aの「カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続用端子」、「ICモジュール側の接続端子」、「異方性導電フィルム」及び「デュアルICカード」に相当するから、甲4発明の「接触/非接触共用ICカード」は、構成要件1Aの「カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続用端子と、ICモジュール側の接続端子と、が異方性導電フィルムによって接続されたデュアルICカード」に相当する。 (イ)構成要件1Bについて 甲4発明の「アンテナパターン3a」には、「孔」が「複数形成されてい」ることから、当該「アンテナパターン3a」の表面には“凹凸形状”が形成されているといえる。 また、当該「孔」は、「孔の開口部の最短長さが前記導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まりやすくなり、導電性粒子の捕捉性が向上」するとともに、「孔の最大深さが前記導電性接着剤の導電性粒子の平均粒子径よりも小さいことにより、前記孔に前記導電性粒子が嵌まった際に、前記導電性粒子はアンテナ基材とICチップとに挟持されその結果、ICチップの電気的接続が優れ」るものであるところ、「孔の最大深さは前記導電性粒子の平均粒子径の85%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下が特に好ましく、」「前記孔の最大深さは、前記導電性粒子の平均粒子径の30%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、60%以上が特に好まし」いことからすると、当該「孔」が形成されている「アンテナパターン3a」の表面に形成された凹凸形状の最大段差は、「導電性粒子の平均粒子径」よりも小さいものであるといえる。 そうすると、甲4発明において、「アンテナパターン3a」の表面に形成された「孔」の最大深さが導電粒子径の平均粒子径よりも小さいことは、構成要件1Bの「アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状の最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さく、」との構成に相当する。 (ウ)構成要件1Cについて 甲4発明において、「ICチップ4の裏面」の「電極」の表面に形成された「凹凸形状の最大段差」について何ら具体的に特定されていないことから、甲4発明は、構成要件1Cを備えるとはいえない。(相違点4-1) イ 一致点及び相違点 以上、ア(ア)~(ウ)の検討から、本件特許発明1と甲4発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 1A カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続 用端子と、ICモジュール側の接続端子と、が異方性導電フィルムに よって接続されたデュアルICカードにおいて、 1B アンテナ接続用端子が備えられている表面に形成された凹凸形状の 最大段差が、異方性導電フィルムの導電粒子の粒子径より小さい 1C’事を特徴とするデュアルICカード。 〈相違点4-1〉 本件特許発明1が、「且つ前記ICモジュール側の前記接続端子の表面に形成された凹凸形状の最大段差が、前記異方性導電フィルムの前記導電粒子の粒子径より小さい」のに対し、甲4発明の「ICチップ4の裏面は、全面が電極」となっており、当該電極の凹凸形状の最大段差が、「導電性接着剤」に含まれる「導電性粒子の平均粒子径」に対してどれくらいの大きさかが具体的に特定されていない点。 ウ 相違点についての当審の判断 甲4発明における、「ICチップ4の裏面」の「電極」は、通常、金属端子表面にメッキ等が施され、その表面はほぼ平滑で、当該表面に形成される凹凸形状は、「導電性接着剤」に混合される「導電性粒子」の径よりも小さいものになることが本件特許出願時における技術常識である。また、本件特許明細書の段落【0037】を参酌すれば、構成要件1Cにおいて、端子の表面に形成される「凹凸形状」は、「プリント配線基板の銅箔をフォトリソグラフィ法によってパターニングしたパッド電極」の「表面」に形成される「凹凸形状」を排除していない。 そうすると、相違点4-1に係る構成、すなわち、「且つ前記ICモジュール側の前記接続端子の表面に形成された凹凸形状の最大段差が、前記異方性導電フィルムの前記導電粒子の粒子径より小さい事」(構成要件1C)は、甲4には明示がなくとも上記技術常識を参酌することにより当業者が容易に想到できる程度のことに過ぎない。 したがって、本件特許発明1は、当業者が、甲4に記載された甲4発明に基づいて、上記技術常識を参酌することにより、容易に発明をすることができたものである。 エ むすび 相違点4-1に係る構成によって奏される効果も、当業者が普通に想起し得る程度のものに過ぎないことから、本件特許発明1は、当業者が、甲4に記載された発明に基づいて、上記技術常識を参酌することにより、容易に発明をすることができたものである。 (3)本件特許発明2について ア 甲4発明との対比 (ア)構成要件2Aについて 甲4発明の「アンテナパターン」を有する「アンテナ」及び「ICチップ」は、それぞれ構成要件2Aの「外部装置と非接触接続する前記アンテナ」及び「ICモジュール」に相当する。 甲4発明の「第1のカード基材」は「開口を有し、開口の形状は、前記ICチップの形状に対応して」おり、「前記アンテナ基材には、前記ICチップを格納する凹部を備え」ているところ、前記「開口」及び「凹部」は、「ICチップ」を格納する“凹部”といい得ることから、上記(2)ア(ア)の「カード基材」に関する対比を踏まえると、甲4発明の「アンテナ基材は、アンテナパターンを具備し、前記第1のカード基材と前記第2のカード基材との間に配され」、「前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する領域は、埋設された前記アンテナパターンの一部が露出するように凹んでおり」、「前記第1のカード基材」は「開口を有し、開口の形状は、前記ICチップの形状に対応して」及び「前記アンテナ基材には、前記ICチップを格納する凹部を備え」との構成は、構成要件2Aの「前記カード基材は、その内部に外部装置と非接触接続する前記アンテナと、前記ICモジュールを格納する凹部とを備えて」いることに相当する。 (イ)構成要件2Bについて 甲4発明の「ガラス-エポキシ製の基板」、「ICチップの表面(おもて面)」、当該「表面(おもて面)」に設けられる「複数の接続端子」、「裏面」、及び、当該「裏面」に設けられる「アンテナパターンと電気的に接続する電極」は、上記(2)ア(ア)の「カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続用端子」及び上記(ア)の「ICモジュール」の認定を踏まえると、それぞれ構成要件2Bの「ICモジュールの基板」、「ICモジュールの基板の一方の面」、「外部装置と接触接続を行う接触接続用端子」、「ICモジュールの基板のもう一方の面」、及び、「前記カード基材側に形成された前記アンテナ接続用端子と接続する前記ICモジュール側の前記接続端子」に相当する。 甲4発明の「接触/非接触共用のICチップ」は、「前記ICチップの表面(おもて面)に」設けられる「複数の接続端子」によって、「接触方式により通信を行うことができ」るとともに、「アンテナパターン」を有する「アンテナ」によって、無線方式により通信を行うものと認められるから、甲4発明の「前記ICチップは、…中略…接触/非接触共用のICチップであり、前記ICチップの表面(おもて面)には、複数の接続端子が設けられており、接触方式により通信を行うことができるとともに、裏面に、前記アンテナパターンと電気的に接続する電極を有」すること及び「導電性接着剤は、前記ICチップと前記アンテナ基材との間に介在し、前記ICチップと前記アンテナパターンとを電気的に接続」することは、構成要件2Bの、「前記ICモジュールは、 前記ICモジュールの基板の一方の面に、外部装置と接触接続を行う接触接続用端子を備え、 前記ICモジュールの基板のもう一方の面に、前記カード基材側に形成された前記アンテナ接続用端子と接続する前記ICモジュール側の前記接続端子と、前記接触接続用端子および前記アンテナ接続用端子と電気的に接続される事で外部装置との有線および無線通信を可能とするICチップと、を備えて」いることに相当する。 (ウ)構成要件2Cについて 甲4発明の「第1のカード基材」は、「開口を有し、開口の形状は、前記ICチップの形状に対応し」、「アンテナ基材は、アンテナパターンを具備し、前記第1のカード基材と前記第2のカード基材との間に配され」るとともに、当該「アンテナ基材」には、「前記ICチップを格納する凹部を備え、前記凹部は、2段の構成となっていて、一番低い第1凹部と、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2凹部からな」ることから、上記(2)ア(ア)の「カード基材」に関する対比を踏まえると、甲4発明の「ICチップを格納する凹部」、「第1凹部」、及び、「第2凹部」は、それぞれ構成要件2Cの「前記カード基材の前記凹部」、「第一凹部」、及び、「第二凹部」に相当する。 また、甲4発明の「ICチップを格納する凹部」は、「ICモジュールを格納可能な深さを備え」るものといえるから、甲4発明の「第1凹部」は、構成要件2Cの「前記ICモジュールを格納可能な深さを備えた第一凹部」に相当するといえる。 また、甲4発明の「第2凹部」は、「前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する予定の領域を、前記領域内に埋設された前記アンテナパターンが露出するように削ることで、前記領域に前記アンテナパターンの一部が露出」することによって生じるものであるところ、「第2のカード基材2と、アンテナ基材3と、第1のカード基材1と」の「積層」体の表面よりも低い位置に形成されているといえる。 したがって、甲4発明の「第2凹部」は、「第1凹部」の周縁部に沿って、前記「第1凹部」の底面より高く、アンテナ基材の表面より低い位置に形成されているといえるから、甲4発明の「前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する予定の領域を、前記領域内に埋設された前記アンテナパターンが露出するように削ることで、前記領域に前記アンテナパターンの一部が露出し」、「前記アンテナ基材には、前記ICチップを格納する凹部を備え、前記凹部は、2段の構成となっていて、一番低い第1凹部と、第1凹部よりも底面に対して高い位置にある第2凹部からな」る構成は、構成要件2Cの「前記カード基材の前記凹部は、少なくとも、前記ICモジュールを格納可能な深さを備えた第一凹部と、前記第一凹部の周縁部に沿って、前記第一凹部の底面より高く、前記カード基材の前記ICモジュール側の表面より低い位置に形成された第二凹部と、を備え」る構成に相当する。 (エ)構成要件2Dについて 甲4発明は、「前記アンテナ基材の前記第1のカード基材側の面における前記開口に面する予定の領域を、前記領域内に埋設された前記アンテナパターンが露出するように削ることで、前記領域に前記アンテナパターンの一部が露出」するものであるところ、上記(ウ)の認定を踏まえると、当該「露出」した「アンテナパターンの一部」は、「第2凹部」に形成されることになるから、上記(2)ア(ア)の「カード基材側に備えられたアンテナの接続端子であるアンテナ接続用端子」の対比を踏まえると、甲4発明の「前記アンテナパターンの一部が露出し」た当該「アンテナパターンの一部」が、「第2凹部」に形成されることは、構成要件2Dの「前記第二凹部に、前記アンテナ接続用端子が備えられている」ことに相当する。 (オ)構成要件2Eについて 上記(2)イに示したとおり、請求項2が引用する請求項1に係る発明(本件特許発明1)は、甲4発明に対して、上記相違点4-1の点で異なるから、本件特許発明2は、甲4発明とは相違点4-2の点で異なる。 イ 一致点及び相違点 上記ア(ア)~(オ)の検討から、本件特許発明2と甲4発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 2A 前記カード基材は、その内部に外部装置と非接触接続する前記アン テナと、前記ICモジュールを格納する凹部とを備えており、 2B 前記ICモジュールは、 前記ICモジュールの基板の一方の面に、外部装置と接触接続を行 う接触接続用端子を備え、 前記ICモジュールの基板のもう一方の面に、前記カード基材側に 形成された前記アンテナ接続用端子と接続する前記ICモジュール側 の前記接続端子と、前記接触接続用端子および前記アンテナ接続用端 子と電気的に接続される事で外部装置との有線および無線通信を可能 とするICチップと、を備えており、 2C 前記カード基材の前記凹部は、少なくとも、前記ICモジュールを 格納可能な深さを備えた第一凹部と、前記第一凹部の周縁部に沿って 、前記第一凹部の底面より高く、前記カード基材の前記ICモジュール 側の表面より低い位置に形成された第二凹部と、を備えており、 2D 前記第二凹部に、前記アンテナ接続用端子が備えられている事を特 徴とする 2E’請求項1に記載のデュアルICカード。 〈相違点4-2〉(構成要件2Eに関する点) 本件特許発明2が、上記相違点4-1の点で甲4発明とは異なる点。 ウ 相違点についての当審の判断 上記(2)ウで示したとおりである。 エ むすび 相違点4-2に係る構成によって奏される効果も、当業者が普通に想起し得る程度のものに過ぎないことから、本件特許発明2は、当業者が、甲4に記載された発明に基づいて、上記技術常識を参酌することにより、容易に発明をすることができたものである。 6 特許権者の主張について 特許権者は、意見書1において、令和6年11月29日付けで当審が発した取消理由通知における取消理由2において、「構成要件1B及び1Cは、アンテナ接続用端子の凹部とこれに対向するICモジュール側の接続端子の凹部との間に形成される空間に導電粒子がすっぽり入ってしまう態様を含むことは明らかである。」との判断に対し、次のように反論している。 「(イ) 「構成要件1B及び1C」(取消理由通知書5~6頁)について 「凹凸形状」に関しては、「ア(ア)」に述べた訂正により、より具体的なものとなっており、「最大段差」「以外の形状(幅、形)」(5頁)も限定されている(「(ウ)」も参照)。 (なお、仮に、「構成要件lB及びlCは、アンテナ接続用端子の凹部とこれに対向するICモジュール側の接続端子の凹部との間に形成される空間に導電粒子がすっぽり入ってしまう態様」(5頁)であったとしても、熱圧着が行われるのであるから(願書に添付した明細書の段落[0007]~[0009]等参照)、そのことのみを以て直ちに「アンテナ接続用端子と接続端子との間に接続不良が生じる」(6頁)とはいえないことを、念のため付言する。)」(12ページ9~17行) 上記主張は、訂正後の請求項に係る構成を前提としたものであるから、そもそも採用の限りではない。 また、令和7年6月5日付け取消理由通知書(決定の予告)においても、本件特許明細書等の段落【0023】~【0024】の記載を参酌しつつ、熱圧着によってアンテナ接続用端子と接続端子との間の接続不良が生じないとの主張は、当該記載に反するものであることを示している。 特許権者は他にも意見書1及び意見書2等において縷々主張するが、いずれの主張も、訂正された請求項1及び2の構成に基づいた主張であるので採用しない。 第7 むすび 以上のとおり、本件特許発明1~2に係る特許は、特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件特許発明1~2に係る特許は、本件特許明細書の発明の詳細な説明が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 さらに、本件特許発明1~2に係る特許は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700709

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