特許異議申立
2024-700578
デュアルICカードおよびその製造方法
- 審判番号
- 2024-700578
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-174001
- 登録番号
- 7400289
- 請求日
- 2024年06月18日
- 審決日
- 2025年03月11日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】鈴木 史朗
- 【権利者代理人】清水 雄一郎
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【異議申立人】真角 侑子
- 審判長/審判官
- 審判長 須田 勝巳
- 審判官 吉田 美彦
- 審判官 脇岡 剛
- 分類
- P1651.121-YAA(G06K) / P1651.537-YAA(G06K) / P1651.55 -YAA(G06K) / P1651.831-YAA(G06K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7400289号発明「デュアルICカードおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7400289号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
特許第7400289号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1.手続の経緯
特許第7400289号の請求項1ないし2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和元年9月25日に出願されたものであって、その後の手続の概要は、次のとおりである。
令和5年 5月19日付け :拒絶理由通知
同年 7月19日 :意見書及び補正書の提出
同年10月31日付け :特許査定
同年12月11日 :特許権の設定登録
同年12月19日 :特許掲載公報の発行
令和6年 6月18日 :特許異議の申立て
(特許異議申立人 真角 侑子)
同年10月 1日付け :取消理由通知
同年11月29日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年12月17日付け :訂正請求があった旨の通知
令和7年 1月17日 :意見書の提出(特許異議申立人)
第2.訂正請求について
1.訂正の趣旨及び訂正の内容
令和6年11月29日提出の訂正請求書における訂正(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第7400289号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~2について訂正することを求める。」(訂正請求書第2頁)というものであって、その内容は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合してなる積層体が、第一の凹部と、第二の凹部とを有し、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、
前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、
前記第一の凹部は、ICモジュールを収容し、
前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有し、
前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であり、
前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続されることを特徴とするデュアルICカード。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を、
「樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程と、
該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と、
該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、ICモジュールを収容する第一の凹部と、前記積層体の前記表面に開口し、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有する第二の凹部とを形成する工程と、
前記ICモジュールを前記第一の凹部に収容し、前記ICモジュールと前記巻線アンテナを前記接続部で電気的に接続する工程と、を備え、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、
前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であることを特徴とするデュアルICカードの製造方法。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の段落0012に、
「 上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、樹脂シートの片面に被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合してなる積層体の所定の位置をミーリング加工する事により、ICモジュールを収容する凹部を形成し、且つミーリング加工により巻線アンテナの所定の部位にICモジュールとの接続部を形成した後、ICモジュールを凹部に収容し、ICモジュールと巻線アンテナを電気的に接続してなるデュアルICカードにおいて、
ミーリング加工により凹部を形成する積層体の面側に、アンテナコアシートの巻線アンテナを備えた面とは反対側の面が備えられていることを特徴とするデュアルICカードである。」
とあるのを、
「上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合してなる積層体が、第一の凹部と、第二の凹部とを有し、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、
前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、
前記第一の凹部は、ICモジュールを収容し、
前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有し、
前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であり、
前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続されることを特徴とするデュアルICカードである。」
と訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落0013に、
「 また、請求項2に記載の発明は、樹脂シートの片面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程と、
該アンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と、
該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、ICモジュールを収容する凹部と巻線アンテナの所定の部位に前記ICモジュールとの接続部を形成する工程と、
ICモジュールを前記凹部に収容し、ICモジュールと巻線アンテナを電気的に接続する工程と、を備えていることを特徴とするデュアルICカードの製造方法である。」
とあるのを、
「 また、請求項2に記載の発明は、樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程と、
該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と、
該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、ICモジュールを収容する第一の凹部と、前記積層体の前記表面に開口し、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有する第二の凹部とを形成する工程と、
前記ICモジュールを前記第一の凹部に収容し、前記ICモジュールと前記巻線アンテナを前記接続部で電気的に接続する工程と、を備え、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、
前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であることを特徴とするデュアルICカードの製造方法である。」
と訂正する。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的について
(ア)訂正事項1の「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合してなる積層体が、第一の凹部と、第二の凹部とを有し」及び「前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続される」との事項は、本件訂正前の請求項1に記載された「樹脂シートの片面に被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合してなる積層体の所定の位置をミーリング加工する事により、ICモジュールを収容する凹部を形成し」及び「ミーリング加工により凹部を形成する積層体の面側に、アンテナコアシートの巻線アンテナを備えた面とは反対側の面が備えられている」との事項について、「所定の位置をミーリング加工する事により、・・・形成し」及び「ミーリング加工により凹部を形成する積層体の面側に」との不明瞭な記載を、物の発明としての本来の意とし、さらに「アンテナコアシート」の「面」及び「凹部」について、「前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面」及び「第一の凹部と、第二の凹部」に限定するものである。
(イ)訂正事項1の「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく」との事項は、本件訂正前の請求項1の「アンテナコアシート」の各面と「被覆導線」との関係について、「前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく」するように限定するものである。
(ウ)訂正事項1の「前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、前記第一の凹部は、ICモジュールを収容し、前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有し」との事項は、本件訂正前の請求項1に記載された「且つミーリング加工により巻線アンテナの所定の部位にICモジュールとの接続部を形成した後、ICモジュールを凹部に収容し」との不明確な記載を、物の発明としての本来の意とし、さらに「凹部」について、「前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく」するように限定するとともに、「接続部」について「前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部」と限定するものである。
(エ)訂正事項1の「前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であり」との事項は、本件訂正前の請求項1に記載された「接続部」について限定するものである。
(オ)以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の段落0020、0022ないし0025、0031、0032、0035、図1、2には、「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態(段落0031、0035、図1、2)で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合してなる積層体が(段落0022)、第一の凹部と、第二の凹部とを有し(段落0020、0024、図1、2)、前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく(図1、2)、前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し(図1、2)、前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく(図1、2)、前記第一の凹部は、ICモジュールを収容し、前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有し(段落0025、0032、図1、2)、前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され(段落0032、図1、2)、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であり(段落0032)、前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続される(段落0022、図1、2)」との事項が記載されていると認められる。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア及びイから明らかなように、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立事件においては、全請求項が特許異議の申立ての対象とされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(2)訂正事項2
ア.訂正の目的について
(ア)訂正事項2の「樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程」及び「該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と」との事項は、本件訂正前の請求項2に記載された「樹脂シートの片面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程」及び「該アンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程」に関し、「積層体」の構成について限定するものである。
(イ)訂正事項2の「該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、ICモジュールを収容する第一の凹部と、前記積層体の前記表面に開口し、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有する第二の凹部とを形成する工程」及び「前記ICモジュールを前記第一の凹部に収容し、前記ICモジュールと前記巻線アンテナを前記接続部で電気的に接続する工程」との事項は、本件訂正前の請求項2に記載された「該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、ICモジュールを収容する凹部と巻線アンテナの所定の部位に前記ICモジュールとの接続部を形成する工程」に関し、「凹部」と「接続部」に係る構成について限定するものである。
(ウ)訂正事項2の「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく」、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく」及び「前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下である」との事項は、「アンテナコアシート」の各面と、「被覆導線」、「凹部」及び「接続部」の関係について限定するものである。
(エ)以上のとおりであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書等の段落0020、0022ないし0025、0031、0032、0035、図1、2には、「樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程と、該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と、該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、ICモジュールを収容する第一の凹部と、前記積層体の前記表面に開口し、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有する第二の凹部とを形成する工程と、前記ICモジュールを前記第一の凹部に収容し、前記ICモジュールと前記巻線アンテナを前記接続部で電気的に接続する工程と、を備え、前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であることを特徴とするデュアルICカードの製造方法。」が記載されていると認められる。
したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア及びイから明らかなように、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立事件においては、全請求項が特許異議の申立ての対象とされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(3)訂正事項3
訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1の訂正による特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるために行う明細書についての訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、上記(1)の検討をふまえると、訂正事項3による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4
訂正事項4に係る訂正は、訂正事項2の訂正による特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるために行う明細書についての訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、上記(2)の検討をふまえると、訂正事項4による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3.まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
第3.本件特許発明
本件訂正の請求が認められたことにより、本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合してなる積層体が、第一の凹部と、第二の凹部とを有し、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、
前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、
前記第一の凹部は、ICモジュールを収容し、
前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有し、
前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であり、
前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続されることを特徴とするデュアルICカード。
【請求項2】
樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程と、
該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と、
該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、ICモジュールを収容する第一の凹部と、前記積層体の前記表面に開口し、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有する第二の凹部とを形成する工程と、
前記ICモジュールを前記第一の凹部に収容し、前記ICモジュールと前記巻線アンテナを前記接続部で電気的に接続する工程と、を備え、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、
前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であることを特徴とするデュアルICカードの製造方法。」
第4.特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法について
1.特許異議申立ての理由の概要
申立人による特許異議申立ての理由の概要は以下のとおりと認められる。
(1)理由1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)
ア.「ICモジュールとの接続部」
「本件特許発明1~2が解決しようとする課題の解決のためには、少なくとも、巻線アンテナのICモジュールとの接続部を、被覆導線の部分であって、樹脂シートに被覆線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれている部分に形成することが必要であるところ、本件特許発明1~2は、そのような構成を有しないものをも、その技術的範囲に含むものとなっている。」(特許異議申立書第3頁)
イ.「被覆導線の最大断面積が得られていること」
「また、本件特許発明1~2が解決しようとする課題は、ミーリング加工の深さが被覆導線の太さ方向の半分まで達しており、それにより被覆導線の最大断面積が得られていることを前提としているところ、本件特許発明1~2は、その前提に係る構成を有しないものをも、その技術的範囲に含むものとなっている。」(特許異議申立書第3頁)
ウ.「ミーリング加工の深さ」
「さらに、本件特許発明1~2は、ミーリング加工の深さがアンテナシートの裏面に接合される樹脂シートにまで達していないことを前提としているところ、本件特許発明1~2は、その前提に係る構成を有しないものをも、その技術的範囲に含むものとなっている。」(特許異議申立書第3頁)
エ.「接続部の底面に巻線アンテナの被覆導線が露出すること」
「また、本件特許発明1~2は、巻線アンテナのICモジュールとの接続部を形成するミーリング加工の際に、その接続部の底面に巻線アンテナの被覆導線が露出することが必須となっているところ、本件特許発明1~2は、そのような構成を有しないものをも、その技術的範囲に含むものとなっている。」(特許異議申立書第3頁)
(2)理由2 特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)
ア.物の製造方法
「請求項1は、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されているもの(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)であるところ、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情も存在しない。」(特許異議申立書第3頁)
イ.「巻線アンテナの所定の部位」
請求項1、2について「「巻線アンテナの所定の部位」の意義が明確でない。」(特許異議申立書第3頁)
(3)理由3 特許法第17条の2第3項(補正要件違反)
ア.「太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ(埋め込む)」
請求項1、2について、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、「太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ(埋め込む)」ことは記載されていない。」(特許異議申立書第4頁)
(4)理由4 特許法第29条第2項(進歩性違反)
ア.甲第1号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
本件特許発明1、2は、「甲1記載の発明及び周知技術(甲3~5)から容易想到」である。(特許異議申立書第4頁)
イ.甲第2号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
本件特許発明1、2は、「甲2記載の発明及び周知技術(甲4~5)から容易想到」である。(特許異議申立書第4頁)
ウ.甲第6号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
本件特許発明1は、「甲6記載の発明及び周知技術(甲4~5)から容易想到」である。(特許異議申立書第4頁)
2.証拠方法
甲第1号証:特開2009-169563号公報
甲第2号証:国際公開第98/38598号
甲第3号証:特表2010-505212号公報
甲第4号証:特開2012-33125号公報
甲第5号証:特開2009-214484号公報
甲第6号証:特開2004-171089号公報
甲第7号証:「マグネットワイヤ製品カタログ」、礎電線株式会社、令和6年6月12日(出力日)、http://www.ishizuedensen.com/index.files/SEIHIN_CATALOGUE.pdf
以下、甲第1号証ないし甲第7号証を、それぞれ「甲1」ないし「甲7」ともいう。
第5.令和6年10月1日付けの取消理由通知書で通知された取消理由の概要
令和6年10月1日付けの取消理由通知書で通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1.取消理由1(サポート要件)、取消理由2(明確性)
「1.「…大きく埋め込んだ状態」
本件明細書には、以下の記載がある。(下線は当審で付加した。以下同様である。)
…中略…
上記本件明細書の記載によると、発明が解決しようとする課題は、「デュアルICカードの製造方法において、複数のシートが接合された積層体の表面からミーリング加工を行う際に、シートとシートの接合面の接着性の不安定性に起因するミーリング加工の不安定性が無い」こと(段落0009)、及び、「アンテナコアシート1とコアシート2の接合面における接合性の不安定性に影響される事無く、巻線アンテナ7の所定の部位にICモジュールとの接続部10を形成する」ことを可能にする(段落0019)ものであり、また、上記課題を解決する手段には、「巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む」とともに、「前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面」から「巻線アンテナの半径まで」ミーリング加工して接続部を形成することにより、「巻線アンテナ7を構成している被覆導線の最大断面積」を得るための構成を備えるものと認められる。
他方、請求項2に係る発明は、「巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む」との構成を備えているところ、上記課題を解決するための手段における、「巻線アンテナの半径まで」ミーリング加工して接続部を形成するための構成を備えていない。
してみると、上記事項が反映されていない請求項2の記載は、発明の詳細な説明の記載や示唆又は出願時の技術常識に照らし、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。
したがって、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
そして、同様の理由により、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。(サポート要件)
2.「巻線アンテナの所定の部位」に形成される「接続部」
本件明細書に記載された発明が解決しようとする課題は、上記1で説示したとおり、「巻線アンテナ7の所定の部位にICモジュールとの接続部10を形成する」との事項を含むものであって、本件明細書の段落0032の記載、及び図1、2によると、当該事項を解決するための手段として、デュアルICカードの「接続部」は、ICモジュールのパッド電極に対応する位置に形成されるものであると認められる。
ここで、請求項2に係る発明は、「巻線アンテナの所定の部位に前記ICモジュールとの接続部を形成する」との構成を備えるところ、上記「接続部」は、任意の位置に形成されるものであると解されるものであるところ、上記解釈によると、上記「接続部」は、ICモジュールのパッド電極とは無関係の任意の位置に形成されるものを包含するため、上記「接続部」と上記ICモジュールのパッド電極とを接続するために必要な事項が特定されているとはいえない。
してみると、上記事項が反映されていない請求項2の記載は、発明の詳細な説明の記載や示唆又は出願時の技術常識に照らし、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。
したがって、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
そして、同様の理由により、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。(サポート要件)
3.物の発明における方法の記載
請求項1に係る発明は物の発明であるところ、請求項1の「樹脂シートの片面に被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合してなる積層体の所定の位置をミーリング加工する事により、ICモジュールを収容する凹部を形成し、且つミーリング加工により巻線アンテナの所定の部位にICモジュールとの接続部を形成した後、ICモジュールを凹部に収容し、ICモジュールと巻線アンテナを電気的に接続してなる」との記載は、製造方法としての記載であって、次の点において、物の発明に係る構成を特定することができないから、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。(明確性)
(1)「被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態」との事項は、積層体を形成する前のアンテナコアシートの状態を特定したものと解されるところ、本件出願時の技術常識からすると、積層体の形成過程、及び、その後の製造過程によって、「…半分よりも大きく埋め込んだ状態」は、変化する可能性があるため、製造後のデュアルICカードが当該「…半分よりも大きく埋め込んだ状態」を維持しているとはいえない。
したがって、上記「…半分よりも大きく埋め込んだ状態」との事項は、(製造後の)デュアルICカードに関して、どのような構成を特定したものであるのか明確ではない。
よって、請求項1に係る発明は、その構成が明確ではない。
(2)「所定の位置をミーリング加工する事により、ICモジュールを収容する凹部を形成し」との記載において、「ミーリング加工する事」との事項は、上記「ICモジュールを収容する凹部」の技術事項を特定するものいえるものの、本件出願時の技術常識からすると、当該事項は単に凹部を形成するために用いる手段に過ぎないため、当該事項によって特定される上記「ICモジュールを収容する凹部」の「物」としての構成が明確ではない。
また、同様の理由により、「且つミーリング加工により巻線アンテナの所定の部位にICモジュールとの接続部を形成した」との記載において、「ICモジュールとの接続部」の「物」としての構成が明確ではない。
よって、請求項1に係る発明は、「物」としての構成が明確ではない。」
2.取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
1.特開2009-169563号公報(甲第1号証)
2.国際公開第98/38598号(甲第2号証)
3.特開2012-33125号公報(甲第4号証)
4.特開2009-214484号公報(甲第5号証)
第6.当審の判断
1.甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲1には、以下の2つの発明(以下、それぞれ「甲1発明A」、「甲1発明B」という。)が記載されていると認められる。
ア.甲1発明A
「 絶縁被覆された金属線材6をアンテナシート用基材の樹脂層へと超音波溶着により埋め込みつつ固定していく方法により形成したアンテナコイル20を備えたアンテナシート101のアンテナ面にコアシート102が積層され、さらにその両面に透明オーバーシート104、105が積層されてなるカード基体100の所定の位置に、エンドミル刃を用いた切削加工により、ICモジュール50を装着するICモジュール装着用凹部30と、アンテナコイル20の端部20a、20bの一部がその底部で露出した導通用凹孔33a、33bと、を形成した後、ICモジュール50をICモジュール装着用凹部30に収容し、ICモジュール50とアンテナコイル101とを電気的に接続してなる接触・非接触共用型ICカード1において(段落0041ないし0044、0046ないし0055、図1、図6ないし8)、
エンドミル刃を用いた切削加工によりICモジュール装着用凹部30を形成するカード基体100の面側に、アンテナシート101のアンテナ面とは反対側の面が備えられ(段落0034、0042ないし0043、0049ないし0054、図6ないし8)、
アンテナシート101のアンテナ面から、アンテナコイル20の中心までの距離は、上記アンテナ面とは反対側の面から上記中心までの距離よりも小さく(図7、8)、
アンテナシート101のアンテナ面から導通用凹孔33a、33bの底部までの距離は、上記アンテナ面とは反対側の面から上記底部までの距離よりも小さく(図7、8)、
上記導通用凹孔33a、33bの底部は、アンテナコイル20の半径以下の部分までが除去されて形成されている(図7、8)、
接触・非接触共用型ICカード1。」
イ.甲1発明B
「 絶縁被覆された金属線材6をアンテナシート用基材の樹脂層へと超音波溶着により埋め込みつつ固定していく方法により形成したアンテナコイル20を備えたアンテナシート101を作製する工程と(段落0046ないし0047、図5)、
アンテナシート101のアンテナ面に、コアシート102を重ね、さらにその両面に透明オーバーシート104、105を積層した後、熱圧プレスして一体のカード基体100にする工程と(段落0048、図1、8)、
アンテナシート101のアンテナ面とは反対側のカード基体100表面から、エンドミル刃を用いた切削加工により、ICモジュール50を収容するICモジュール装着用凹部30と、アンテナコイル20の端部20a、20bの一部がその底部で露出した導通用凹孔33a、33bと、を形成する工程と(段落0049ないし0054、図6ないし8)、
ICモジュール50をICモジュール装着用凹部30に収容し、ICモジュール50とアンテナコイル20とを電気的に接続する工程と(段落0055)、を備え、
アンテナシート101のアンテナ面から、アンテナコイル20の中心までの距離は、上記アンテナ面とは反対側の面から上記中心までの距離よりも小さく(図7、8)、
アンテナシート101のアンテナ面から導通用凹孔33a、33bの底部までの距離は、上記アンテナ面とは反対側の面から上記底部までの距離よりも小さく(図7、8)、
上記導通用凹孔33a、33bの底部は、アンテナコイル20の半径以下の部分までが除去されて形成される(図7、8)、
接触・非接触共用型ICカードの製造方法。」
(2)甲第2号証
甲2には、以下の2つの発明(以下、それぞれ「甲2発明A」、「甲2発明B」という。)が記載されていると認められる。
ア.甲2発明A
「熱可塑性のアンテナフィルム6のアンテナ側7に銀メッキされた銅線からなるアンテナワイヤー3を押し込むことにより配置されたアンテナコイルを備えたアンテナフィルム6であって(第1頁第17行~第24行、第6頁第1行~第7行参照)、アンテナコイルの所定の位置に、アンテナワイヤー3を部分的にアンテナフィルム6の下面8まで押し込むことによりアンテナ接続部4を形成し(第3頁第14行~第19行、第6頁第1行~第7行、Fig.2参照)、
アンテナ接続部4を有するアンテナフィルム6の下面8に、1つのカバーフィルム5を積層し、かつ、アンテナフィルム6の上面側(アンテナ側7)に2つのカバーフィルム5を積層し(Fig.3参照)、
前記積層したアンテナフィルム6とカバーフィルム5とからなるプラスチックカードの所定の位置を、その下面側から削り込むことによりキャビティ9を形成するとともに(第1頁第26行~第34行、第3頁第14行~第19行、Fig.3参照)、
キャビティ9は、中央ステップ11と、アンテナ接続部4を備える周辺ステップ10とから構成されるものであり、
アンテナ接続部4のアンテナワイヤー3の金属素地が現れるようにした後、コンビカードモジュール2をキャビティ9に収容し、コンビカードモジュール2とアンテナコイルとを電気的に接続してなるコンビカードモジュールを備えたプラスチックカードであって(第1頁第17行~第24行、第1頁第26行~第34行、第4頁第21行~第5頁第6行、第6頁第27行~第7頁第7行、Fig.3参照)、
削り込みによりキャビティ9を形成する前記プラスチックカードの下面側に、アンテナフィルム6のアンテナ側7とは反対側の面である下面8が備えられている(第3頁第14行~第19行、Fig.3参照)、
コンビカードモジュールを備えたプラスチックカード(第1頁第12行、第17行~第24行参照)。」
イ.甲2発明B
「熱可塑性のアンテナフィルム6のアンテナ側7に銀メッキされた銅線からなるアンテナワイヤー3を押し込むことにより配置されたアンテナコイルを備えたアンテナフィルム6であって、アンテナコイルの所定の位置に、アンテナワイヤー3を部分的にアンテナフィルム6の下面8まで押し込むことによりアンテナ接続部4を形成し、アンテナ接続部4を有するアンテナフィルム6を製造する工程と(第3頁第14行~第19行、第6頁第1行~第7行、Fig.2参照)、
アンテナフィルム6の下面8に、1つのカバーフィルム5を積層し、アンテナフィルム6のアンテナ側7に、2つのカバーフィルム5を積層してプラスチックカードを製造する工程と(Fig.3参照)、
前記プラスチックカードの所定の位置において、その下面側から削り込むことにより、コンビカードモジュール2を収容するキャビティ9を形成するとともに、アンテナ接続部4のアンテナワイヤー3の金属素地が現れるようにするものであって、前記キャビティ9は、中央ステップ11と、アンテナ接続部4を備える周辺ステップ10とから構成されるものである工程と(第1頁第26行~第34行、第4頁第21行~第5頁第6行、第6頁第27行~第7頁第7行、Fig.3参照)、
コンビカードモジュール2を、キャビティ9に挿入し、コンビカードモジュール2とアンテナコイルとを電気的に接続する工程と(第1頁第17行~第24行、第26行~第34行参照)、を備える
コンビカードモジュールを備えたプラスチックカードの製造方法(第1頁第17行~第24行、第26行~第34行参照)。」
(3)甲第3号証
甲3には、次の事項が記載されていると認められる。
「RFインレイを製造する際に、アンテナを形成するワイヤは、超音波ワイヤ埋め込み技法を使用して、完全に又は部分的に基板内に埋め込むことができること」(段落0005)
(4)甲第4号証、甲第5号証
甲4の記載(段落0007、0033ないし0035、図1、2)及び甲5の記載(図5)によると、以下の事項は、周知技術であると認められる。
「ICカードにおいて、そのコアシートの両面にそれぞれ複数の樹脂シートを接合するようにすること」
(5)甲第6号証
甲6には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「260μm厚の乳白色塩化ビニルコアシート211であって、上面にエナメル被覆銅線を固着した状態で周回してなるアンテナコイル24が形成された乳白色塩化ビニルコアシート211の上面側に、360μm厚の乳白色塩化ビニルコアシート212、透明塩化ビニルオーバーシート215が積層され、下面側に、乳白色塩化ビニルコアシート213及び100μm厚の透明塩化ビニルオーバーシート214が積層され、熱厚プレスされたカード基体21の所定の位置に、ざぐり機及びエンドミルを用いた掘削により、ICモジュール10を収容する埋没凹部22と、アンテナコイル24の接続端部241、242を露出させる開孔151、152とを形成した後、ICモジュール10を埋没凹部22に収容し、ICモジュール10とアンテナコイル24とを電気的に接続してなる接触・非接触兼用ICカードであって(段落0001、0022ないし0025、図1、3)、
ざぐり機を用いた掘削(ミーリング加工)により埋没凹部22(凹部)を形成するカード基体21(積層体)の面側に、乳白色塩化ビニルコアシート211の上面が備えられている(段落0023ないし0024、図1、3)
接触・非接触兼用ICカード。」
(6)甲第7号証
甲7には、「断面形状が矩形の被覆導線(マグネットワイヤ)」(第16頁)が記載されていると認められる。
2.取消理由について
(1)取消理由1(サポート要件)、取消理由2(明確性)
ア.「…大きく埋め込んだ状態」
本件特許明細書等の記載によると、発明が解決しようとする課題は、「デュアルICカードの製造方法において、複数のシートが接合された積層体の表面からミーリング加工を行う際に、シートとシートの接合面の接着性の不安定性に起因するミーリング加工の不安定性が無い」こと(段落0009)、及び、「アンテナコアシート1とコアシート2の接合面における接合性の不安定性に影響される事無く、巻線アンテナ7の所定の部位にICモジュールとの接続部10を形成する」ことを可能にする(段落0019)ものであり、また、上記課題を解決する手段は、「巻線アンテナ7の半径までアンテナコアシート1をミーリング加工してもコアシート2との接合面には至る事が無い」(段落0041)構成とするものであると認められる。
そして、本件特許発明1は、「アンテナコアシート」において「第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた」こと、及び、「接続部」は、「前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下である」ことが特定されているところ、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された上記課題解決手段が反映されたものであるといえるから、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものである。
また、本件特許発明2についても、同様の理由により、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものである。
なお、本件特許明細書等の「接続部10、10´の形成は、ミーリング加工により露出した巻線アンテナ7の側面からミーリング加工し、巻線アンテナ7の表面を被覆している絶縁樹脂層の除去および巻線アンテナ7自身のミーリング加工による導電線の金属の露出面積を増大させる。露出面積は、巻線アンテナ7の半径まで加工した時が最大となる。その為、巻線アンテナ7の半径までミーリング加工する事が好ましい。」(段落0032)との記載によると、本件特許明細書等には、「巻線アンテナの半径まで」ミーリング加工して接続部を形成することにより、「巻線アンテナ7を構成している被覆導線の最大断面積」を得ることが記載されているといえるところ、本件特許出願時の技術常識を踏まえれば、当該記載事項に係る構成の有無にかかわらず、上記発明が解決しようとする課題は解決できるものである。そうすると、当該記載事項は、「好ましい」構成として記載されたものであって、上記発明が解決しようとする課題との関係では、任意付加的な事項であるといえる。
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2は、発明の詳細な説明に記載したものである。(サポート要件)
イ.「巻線アンテナの所定の部位」に形成される「接続部」
本件訂正により、本件特許発明1の「接続部」は、「前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部」に限定された。
したがって、本件特許発明1は、上記「接続部」と上記「ICモジュールのパッド電極」とを接続するために必要な事項を特定するものであるから、発明の詳細な説明の記載や示唆又は出願時の技術常識に照らし、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
そして、本件特許発明2についても、同様の理由により、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1、2は、発明の詳細な説明に記載したものである。(サポート要件)
ウ.物の発明における方法の記載
(ア)「被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態」
本件特許発明1の「被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態」は、本件特許発明1の構成全体、及び、本件特許出願時の技術常識を踏まえれば、「デュアルICカード」に関する構造を特定したものであると解される。
したがって、本件特許発明1は、明確でないとはいえない。(明確性)
(イ)「ミーリング加工する事」
本件請求項1は、本件訂正により、「ミーリング加工する事」との事項が削除され、「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合してなる積層体が、第一の凹部と、第二の凹部とを有し、前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、前記第一の凹部は、ICモジュールを収容し、前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有し、前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であり、前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続される」との事項を特定するものとなった。
したがって、本件特許発明1は、物の発明としての構成が明確ではないとはいえない。(明確性)
エ.取消理由1、2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2は、発明の詳細な説明に記載したものであり、また、本件特許発明1は、物の発明としての構成が明確であるといえる。
(2)取消理由3(進歩性)
ア.甲第1号証に記載された発明に対する進歩性について
(ア)本件特許発明1
a.対比
(a)甲1発明Aの「絶縁被覆された金属線材6」、「アンテナコイル20」、「アンテナシート101」、アンテナシート101の「アンテナ面」及び「アンテナ面とは反対側の面」、「カード基体100」、「ICモジュール50」、「ICモジュール装着用凹部30」、「アンテナコイル20の端部20a、20bの一部が露出した導通用凹孔33a、33b」、「接触・非接触共用型ICカード1」は、それぞれ本件特許発明1の「被覆導線」、「巻線アンテナ」、「アンテナコアシート」、アンテナコアシートの「第一の面」及び「第二の面」、「積層体」、「ICモジュール」、「第一の凹部」、「第二の凹部」、「デュアルICカード」に相当する。また、甲1発明Aの「コアシート102」及び「透明オーバーシート104、105」は、アンテナシート101の各面に接合される樹脂シートといえるから、本件特許発明1の「樹脂シート」に相当する。
(b)甲1発明Aの「導通用凹孔33a、33b」の底部は、アンテナコイル20の端部20a、20bの一部が露出し、ICモジュール50との接続部を形成するものといえる。よって、甲1発明Aの上記「導通用凹孔33a、33b」の底部は、本件特許発明1の「接続部」に相当する。
(c)甲1発明Aの「アンテナコイル20」は、甲1の図2、14、あるいは、本件特許出願時の技術常識から、巻き回して配置されたものであるといえる。そうすると、本件特許発明1の「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシート」と、甲1発明Aの「絶縁被覆された金属線材6をアンテナシート用基材の樹脂層へと超音波溶着により埋め込みつつ固定していく方法により形成したアンテナコイル20を備えたアンテナシート101」とは、「樹脂シートの第一の面に被覆導線をその太さ方向に埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシート」である点で共通する。
(d)甲1発明Aの「アンテナシート101のアンテナ面にコアシート102が積層され、さらにその両面に透明オーバーシート104、105が積層され」ることは、「前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合」することであるといえる。
そして、上記(a)ないし(c)を踏まえると、本件特許発明1と甲1発明Aとは、「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向に埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の樹脂シートを接合してなる積層体が、第一の凹部と、第二の凹部とを有」する点で共通する。
(e)甲1発明Aにおいて、「エンドミル刃を用いた切削加工によりICモジュール装着用凹部30を形成するカード基体100の面側に、アンテナシート101のアンテナ面とは反対側の面が備えられる」ことからすると、「ICモジュール装着用凹部30」及び「導通用凹孔33a、33b」は、アンテナシート101のアンテナ面とは反対の面に近い側のカード基体100の表面に開口するものであると解される。よって、甲1発明の「ICモジュール装着用凹部30」及び「導通用凹孔33a、33b」と、本件特許発明1の「第一の面」及び「第二の面」とは、「前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口」する点で共通する。
(f)甲1発明Aの「アンテナシート101のアンテナ面から、アンテナコイル20の中心までの距離は、上記アンテナ面とは反対側の面から上記中心までの距離よりも小さく」、「アンテナシート101のアンテナ面から導通用凹孔33a、33bの底部までの距離は、上記アンテナ面とは反対側の面から上記底部までの距離よりも小さく」、「上記導通用凹孔33a、33bの底部は、アンテナコイル20の半径以下の部分までが除去されて形成されている」ことは、本件特許発明1の「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく」、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく」、「前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下」であることに相当する。
(g)甲1発明Aの「ICモジュール50をICモジュール装着用凹部30に収容し、ICモジュール50とアンテナコイル101とを電気的に接続してなる」ことは、本件特許発明1の「前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続される」ことに相当する。
(h)以上のとおりであるから、本件特許発明1と甲1発明Aとは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向に埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の樹脂シートを接合してなる積層体が、第一の凹部と、第二の凹部とを有し、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面(開口)から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、
前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面(開口)から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、
前記第一の凹部は、ICモジュールを収容し、
前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有し、
前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であり、
前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続されるデュアルICカード。」
【相違点】
・相違点1-1A
本件特許発明1の「被覆導線」の樹脂シートへの「埋め込まれた状態」は、「その太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態」であるのに対して、甲1発明Aの「金属線材6」の樹脂シートへの「埋め込まれた状態」は、当該「埋め込まれた状態」がどのようなものであるのか特定されていない点。
・相違点1-2A
本件特許発明1の「積層体」は、「アンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合してなる」ものであるのに対して、甲1発明Aの「カード基体100」について、アンテナシートのアンテナ面側(第一の面)は、「コアシート102」及び「透明オーバーシート104」と接合されることにより「他の複数の樹脂シートを接合してなる」といえるものの、上記アンテナ面とは反対側の面(第二の面)に接合される樹脂シートは1つである点。
b.判断
甲2には、「アンテナワイヤー3を部分的にアンテナフィルム6の下面8まで押し込む」との事項が記載されているといえるところ、甲1には、甲1発明Aにおける「金属線材6」の「埋め込まれた状態」について、その具体的な構成については何ら説明されておらず、また、当該事項は本件特許出願時の技術常識であるともいえないことからすると、甲1発明Aの「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向に埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナ」における「埋め込まれた状態」として、上記甲2に記載された事項を採用すべき動機付けがあるとはいえない。
さらに、仮に、甲1発明Aにおいて、上記甲2に記載された事項を採用すべき動機付けがあるとしても、甲1発明Aにおける「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面(開口)から前記被覆導線の中心までの距離より小さく」、かつ、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面(開口)から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく」するとの構成を維持しつつ、甲1発明Aに上記甲2に記載された事項を採用することは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。
そして、甲3ないし7には、当該相違点1-1Aに係る構成が記載されているとはいえない。
したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲2ないし甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2
a.対比
(a)甲1発明Bの「絶縁被覆された金属線材6」、「アンテナコイル20」、「アンテナシート101」、アンテナシート101の「アンテナ面」及び「アンテナ面とは反対側の面」、「カード基体100」、「ICモジュール50」、「ICモジュール装着用凹部30」、「アンテナコイル20の端部20a、20bの一部が露出した導通用凹孔33a、33b」、「接触・非接触共用型ICカード1」は、それぞれ本件特許発明2の「被覆導線」、「巻線アンテナ」、「アンテナコアシート」、アンテナコアシートの「第一の面」及び「第二の面」、「積層体」、「ICモジュール」、「第一の凹部」、「第二の凹部」、「デュアルICカード」に相当する。また、甲1発明Bの「コアシート102」及び「透明オーバーシート104、105」は、アンテナシート101の各面に接合される樹脂シートといえるから、本件特許発明2の「樹脂シート」に相当する。
(b)甲1発明Bの「導通用凹孔33a、33b」の底部は、アンテナコイル20の端部20a、20bの一部が露出し、ICモジュール50との接続部を形成するものといえる。よって、甲1発明Bの上記「導通用凹孔33a、33b」の底部は、本件特許発明2の「接続部」に相当する。
(c)甲1発明Bの「アンテナコイル20」は、甲1の図2、14、あるいは、本件特許出願時の技術常識から、巻き回して配置されたものであるといえる。そうすると、本件特許発明2の「樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程」と、甲1発明Bの「絶縁被覆された金属線材6をアンテナシート用基材の樹脂層へと超音波溶着により埋め込みつつ固定していく方法により形成したアンテナコイル20を備えたアンテナシート101を作製する工程」とは、「樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向に埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程」である点で共通する。
(d)甲1発明Bの「アンテナシート101のアンテナ面に、コアシート102を重ね、さらにその両面に透明オーバーシート104、105を積層した後、熱圧プレスして一体のカード基体100にする工程」と、本件特許発明2の「該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程」とは、「該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程」で共通する。
(e)甲1発明Bの「アンテナシート101のアンテナ面とは反対側のカード基体100表面から、エンドミル刃を用いた切削加工により、ICモジュール50を収容するICモジュール装着用凹部30と、アンテナコイル20の端部20a、20bの一部がその底部で露出した導通用凹孔33a、33bと、を形成する工程」は、本件特許発明2の「該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、ICモジュールを収容する第一の凹部と、前記積層体の前記表面に開口し、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有する第二の凹部とを形成する工程」に相当する。
(f)甲1発明Bの「ICモジュール50をICモジュール装着用凹部30に収容し、ICモジュール50とアンテナコイル20とを電気的に接続する工程」は、本件特許発明2の「前記ICモジュールを前記第一の凹部に収容し、前記ICモジュールと前記巻線アンテナを前記接続部で電気的に接続する工程」に相当する。
(g)甲1発明Bの「アンテナシート101のアンテナ面から、アンテナコイル20の中心までの距離は、上記アンテナ面とは反対側の面から上記中心までの距離よりも小さく」、「アンテナシート101のアンテナ面から導通用凹孔33a、33bの底部までの距離は、上記アンテナ面とは反対側の面から上記底部までの距離よりも小さく」、「上記導通用凹孔33a、33bの底部は、アンテナコイル20の半径以下の部分までが除去されて形成されている」ことは、本件特許発明2の「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく」、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく」、「前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下である」ことに相当する。
(h)以上のとおりであるから、本件特許発明2と甲1発明Bとは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「 樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向に埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程と、
該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と、
該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、ICモジュールを収容する第一の凹部と、前記積層体の前記表面に開口し、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有する第二の凹部とを形成する工程と、
前記ICモジュールを前記第一の凹部に収容し、前記ICモジュールと前記巻線アンテナを前記接続部で電気的に接続する工程と、を備え、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく、
前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく、
前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であることを特徴とするデュアルICカードの製造方法。」
【相違点】
上記(ア)aにおいて説示した相違点1-1A、及び、相違点1-2Aと同様である。
b.判断
上記(ア)bでの検討と同様である。
よって、本件特許発明2は、甲1に記載された発明、及び、甲2ないし甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.甲第2号証に記載された発明に対する進歩性について
(ア)本件特許発明1
a.対比
(a)甲2発明Aの「アンテナワイヤー3」、「アンテナコイル」、「アンテナフィルム6」、アンテナフィルム6の「上面」及び「下面」、「プラスチックカード」、「コンビカードモジュール2」、「コンビカードモジュールを備えたプラスチックカード」は、それぞれ本件特許発明1の「被覆導線」、「巻線アンテナ」、「アンテナコアシート」、アンテナコアシートの「第一の面」及び「第二の面」、「積層体」、「ICモジュール」、「デュアルICカード」に相当する。また、甲2発明Aの「カバーフィルム5」は、アンテナフィルム6の各面に接合される樹脂シートといえるから、本件特許発明1の「樹脂シート」に相当する。
(b)本件特許発明1の「第一の凹部」と「第二の凹部」に関し、本件特許明細書等の段落0026の記載及び図1、2によると、「第一の凹部」と「第二の凹部」とは一体の凹部を形成するものであり、「第一の凹部」にICモジュールのICチップ部分が収容され、「第二の凹部」にICモジュールの電極部分が収容されるものと解されることからすると、甲2発明Aのキャビティ9の「中央ステップ11」及び「周辺ステップ10」は、本件特許発明1の「第一の凹部」及び「第二の凹部」に相当する。
(c)甲2発明Aの「アンテナワイヤー3を部分的にアンテナフィルム6の下面8まで押し込むこと」は、本件特許発明1の「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態」とすることに相当する。
(d)甲2発明Aの「前記積層したアンテナフィルム6とカバーフィルム5とからなるプラスチックカード」は、「アンテナ接続部4を有するアンテナフィルム6の下面8に、1つのカバーフィルム5を積層し、かつ、アンテナフィルム6の上面側(アンテナ側7)に2つのカバーフィルム5を積層」したものであるといえるところ、上記(a)ないし(c)の説示を踏まえると、甲2発明Aの上記「プラスチックカード」と、本件特許発明1の「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合してなる積層体」とは、「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の樹脂シートを接合してなる積層体」である点で共通する。
(e)甲2発明Aの「アンテナ接続部4」は、本件特許発明1の「前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部」に相当する。
(f)甲2発明Aでは、アンテナフィルム6とカバーフィルム5とからなるプラスチックカードについて、「その下面側から削り込むことによりキャビティ9を形成する」ものであることからすると、キャビティ9の「中央ステップ11」及び「周辺ステップ10」は、アンテナフィルム6の下面側に近い側のプラスチックカードの表面に開口するものであると解される。よって、甲2発明Aのキャビティ9の「中央ステップ11」及び「周辺ステップ10」と、本件特許発明1の「第一の面」及び「第二の面」とは、「前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口」する点で共通する。
(g)甲2発明Aの「アンテナ接続部4のアンテナワイヤー3の金属素地が現れるようにした後、コンビカードモジュール2をキャビティ9に収容し、コンビカードモジュール2とアンテナコイルとを電気的に接続」することは、本件特許発明1の「前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続される」ことに相当する。
(h)以上のとおりであるから、本件特許発明1と甲2発明Aとは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の樹脂シートを接合してなる積層体が、第一の凹部と、第二の凹部とを有し、
前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、
前記第一の凹部は、ICモジュールを収容し、
前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有し、
前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続される
デュアルICカード。」
【相違点】
・相違点2-1A
デュアルICカードのアンテナシートの厚さが、アンテナを構成する導線の太さよりも大きいものであることが、本件特許出願時常識であることからすると、甲2発明Aにおいて「アンテナワイヤー3を部分的にアンテナフィルム6の下面8まで押し込むことによりアンテナ接続部4を形成」した際には、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さい」ものではないことは明らかである。そうすると、本件特許発明1では、「前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さい」ものであるのに対して、甲2発明Aでは、「前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さい」ものではない点で相違する。
・相違点2-2A
本件特許発明1は、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく」構成されたものであるのに対して、甲2発明Aは、当該事項が特定されていない点。
・相違点2-3A
本件特許発明1において「前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下」であるのに対して、甲2発明Aでは、上記「接続部」を形成する際に「被覆導線」の除去される部分の「深さ」が特定されていない点。
・相違点2-4A
本件特許発明1の「積層体」は、「アンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合してなる」ものであるのに対して、甲2発明Aの「プラスチックカード」は、下面側に接合される樹脂シートが1つである点。
b.判断
甲2では、「アンテナ接続部4」を形成する際の「アンテナワイヤー3」を「アンテナフィルム6」に押し込む深さについて、「下面」まで押し込むことが記載されているところ、当該押し込む深さを、「下面」よりも浅くし、さらに、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく」なるような位置とすることについては記載されておらず、また、当該事項は、本件特許出願時の技術常識であるともいえない。
そうすると、相違点2-1Aに係る「前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さい」との構成が周知技術であるとしても、甲2発明Aにおいて上記周知技術を採用すべき動機付けがあるとはいえない。
さらに、仮に甲2発明Aにおいて、上記周知技術を採用すべき動機付けがあるとしても、甲2発明Aにおいて「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態」との構成を維持しつつ、上記周知技術を採用することは、当業者に容易に想到できたことであるとはいえない。
したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2に記載された発明、及び、甲1、甲3ないし甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2
a.対比
(a)甲2発明Bの「アンテナワイヤー3」、「アンテナコイル」、「アンテナフィルム6」、アンテナフィルム6の「上面」及び「下面」、「プラスチックカード」、「コンビカードモジュール2」、「コンビカードモジュールを備えたプラスチックカード」は、それぞれ本件特許発明2の「被覆導線」、「巻線アンテナ」、「アンテナコアシート」、アンテナコアシートの「第一の面」及び「第二の面」、「積層体」、「ICモジュール」、「デュアルICカード」に相当する。また、甲2発明Bの「カバーフィルム5」は、アンテナフィルム6の各面に接合される樹脂シートといえるから、本件特許発明2の「樹脂シート」に相当する。
(b)上記(ア)a(b)での説示と同様であるから、甲2発明Bのキャビティ9の「中央ステップ11」及び「周辺ステップ10」は、本件特許発明2の「第一の凹部」及び「第二の凹部」に相当する。
(c)甲2発明Bの「アンテナワイヤー3を部分的にアンテナフィルム6の下面8まで押し込むこと」は、本件特許発明2の「樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事」に相当する。そして(a)、(b)で説示したとおりであるから、甲2発明Bの「熱可塑性のアンテナフィルム6のアンテナ側7に銀メッキされた銅線からなるアンテナワイヤー3を押し込むことにより配置されたアンテナコイルを備えたアンテナフィルム6であって、アンテナコイルの所定の位置に、アンテナワイヤー3を部分的にアンテナフィルム6の下面8まで押し込むことによりアンテナ接続部4を形成し、アンテナ接続部4を有するアンテナフィルム6を製造する工程」は、本件特許発明2の「樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程」に相当する。
(d)甲2発明Bの「アンテナフィルム6の下面8に、1つのカバーフィルム5を積層し、アンテナフィルム6のアンテナ側7に、2つのカバーフィルム5を積層してプラスチックカードを製造する工程」と、本件特許発明2の「該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程」とは、「該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程」で共通する。
(e)甲2発明Bの「アンテナ接続部4」は、本件特許発明2の「前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部」に相当する。
(f)上記(ア)a(f)での説示と同様であるから、甲2発明Bの「前記プラスチックカードの所定の位置において、その下面側から削り込むことにより、コンビカードモジュール2を収容するキャビティ9を形成するとともに、アンテナ接続部4のアンテナワイヤー3の金属素地が現れるようにするものであって、前記キャビティ9は、中央ステップ11と、アンテナ接続部4を備える周辺ステップ10とから構成されるものである工程」は、本件特許発明2の「該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、ICモジュールを収容する第一の凹部と、前記積層体の前記表面に開口し、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有する第二の凹部とを形成する工程」に相当する。
(g)甲2発明Bの「コンビカードモジュール2を、キャビティ9に挿入し、コンビカードモジュール2とアンテナコイルとを電気的に接続する工程」は、本件特許発明2の「前記ICモジュールを前記第一の凹部に収容し、前記ICモジュールと前記巻線アンテナを前記接続部で電気的に接続する工程」に相当する。
(h)以上のとおりであるから、本件特許発明2と甲2発明Bとは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「樹脂シートの第一の面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程と、
該アンテナコアシートの前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と、
該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口し、ICモジュールを収容する第一の凹部と、前記積層体の前記表面に開口し、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有する第二の凹部とを形成する工程と、
前記ICモジュールを前記第一の凹部に収容し、前記ICモジュールと前記巻線アンテナを前記接続部で電気的に接続する工程と、を備える
デュアルICカードの製造方法。」
【相違点】
上記(ア)aにおいて説示した相違点2-1Aないし相違点2-4Aと同様である。
b.判断
上記(ア)bでの検討と同様である。
よって、本件特許発明2は、甲2に記載された発明、及び、甲1、甲3ないし甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)特許異議申立人の主張について
ア.特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、令和7年1月17日に提出された意見書(以下、「意見書」という。)において、次の理由により、請求項1、2に係る訂正は訂正要件に違反するものであり、また、請求項1、2に係る発明は、サポート要件に違反するものであり、進歩性が欠如したものであると主張している。
(ア)訂正要件
請求項1における「ミーリング加工」に係る記載を「第一の凹部」、「第二の凹部」の構成に係る記載に変更する訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正である、また、請求項1、2のそれぞれに「前記積層体の断面視において前記第一の面から前記被導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく」との記載及び「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さく」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正ではない。(意見書第3頁ないし第5頁)
(イ)サポート要件
請求項1、2は、巻線アンテナを構成している被覆導線の最大断面積を得るための構成を備えていない。そのため、当業者が発明の詳細な説明の記載から発明の課題が解決できることを認識できるものではなく、ひいては、発明の詳細な説明に記載されたものではない。(意見書第5頁ないし第6頁)
(ウ)進歩性欠如
請求項1、2に係る発明について、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明に基づく取消理由3は解消していない。
イ.当審の判断
(ア)訂正要件
上記第2.2(1)イ、及び、同(2)イで説示したとおりであるから、請求項1、2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(イ)サポート要件について
上記(1)アでの説示によると、「巻線アンテナ7を構成している被覆導線の最大断面積」を得るための構成は、発明が解決しようとする課題との関係において、任意付加的な事項であるといえる。よって、本件特許発明1、2は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(ウ)進歩性欠如
上記2(2)アで説示したとおりであるから、本件特許発明1、2は、甲1に記載された発明、及び、甲2ないし甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)まとめ
したがって、上記意見書における特許異議申立人の主張は認められない。
(4)取消理由についてのまとめ
以上のとおり、当審合議体が通知した取消理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
3.特許異議申立ての理由について
(1)理由1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
ア.「ICモジュールとの接続部」
上記2(1)イで説示したとおりであるから、本件特許発明1、2によって特定される「ICモジュールの接続部」が形成される部位は、発明の詳細な説明に記載したものである。
イ.「被覆導線の最大断面積が得られていること」
上記2(1)アでの説示によると、「ミーリング加工の深さが被覆導線の太さ方向の半分まで達しており、それにより被覆導線の最大断面積が得られていること」は、任意付加的な事項であるといえる。
ウ.「ミーリング加工の深さ」
本件訂正により、本件特許発明1、2では、「樹脂シートの第一の面に被覆導線がその太さ方向の半分よりも大きく埋め込まれた状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシート」、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さく」、「第二の凹部」は「前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部」を有し、「前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下であり」との事項が特定された。よって、本件特許発明1、2における「第二の凹部」(ミーリング加工の深さ)に係る事項は、発明の詳細な説明に記載したものである。
エ.「接続部の底面に巻線アンテナの被覆導線が露出すること」
上記2(1)イで説示したとおりであるから、本件特許発明1、2の「ICモジュールの接続部」は、発明の詳細な説明に記載したものである。
オ.理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
(2)理由2 特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)
ア.物の製造方法
上記2(1)ウで説示したとおりであるから、本件特許発明1は、「デュアルICカード」に関する構造を特定したものといえる。
イ.「巻線アンテナの所定の部位」
上記2(1)イでの説示を踏まえると、本件特許発明1、2における「ICモジュールの接続部」が形成される部位(本件訂正前の「巻線アンテナの所定の部位」)に係る事項は、明確ではないとはいえない。
(3)理由3 特許法第17条の2第3項(補正要件違反)
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)において、段落0004、0012、0022、0031の記載、及び、図1によると、当初明細書には、「太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ(埋め込む)」ことが記載されていたと認められる。
(4)理由4 特許法第29条第2項(進歩性違反)
ア.甲第1号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
上記2(2)アにおいて説示したとおりである。
イ.甲第2号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
上記2(2)イにおいて説示したとおりである。
ウ.甲第6号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
(ア)対比
甲6発明の「エナメル被覆銅線」、「アンテナコイル24」、「乳白色塩化ビニルコアシート211」、「カード基体21」、「ICモジュール10」、「ICモジュール10を収容する埋没凹部22」、「開孔151、152」、「アンテナコイル24の接続端部241、242」、「接触・非接触兼用ICカード」は、それぞれ本件特許発明1の「被覆導線」、「巻線アンテナ」、「アンテナコアシート」、「積層体」、「ICモジュール」、「第一の凹部」、「第二の凹部」、「ICモジュールとの接続部」、「デュアルICカード」に相当する。
甲6発明の「乳白色塩化ビニルコアシート211」の「上面」及び「下面」は、本件特許発明の「第一の面」及び「第二の面」に相当する。
甲6発明の「乳白色塩化ビニルコアシート211」は、「上面にエナメル被覆銅線を固着した状態で周回」して「アンテナコイル24」を形成したものであることからすると、上記「乳白色塩化ビニルコアシート211」と本件特許発明1の「アンテナコアシート」とは、「樹脂シートの第一の面に被覆導線が固着された状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシート」である点で共通する。
甲6発明の「乳白色塩化ビニルコアシート211の上面側に、260μm厚の乳白色塩化ビニルコアシート212、透明塩化ビニルオーバーシート215が積層され、下面側に、乳白色塩化ビニルコアシート213及び100μm厚の透明塩化ビニルオーバーシート214が積層され」ることは、本件特許発明1の「アンテナコアシートの、前記第一の面と、前記第一の面とは反対側の第二の面とに、それぞれ他の複数の樹脂シートを接合」することと、「アンテナコアシートの、各面にそれぞれ他の複数の樹脂シートを接合」する点で共通する。
甲6発明の「開孔151、152」は、「アンテナコイル24の接続端部241、242を露出させる」ものであることからすると、甲6発明の「開孔151、152」と本件特許発明1の「第二の凹部」とは、「前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有」する点で共通する。
甲6発明の「ICモジュール10を埋没凹部22に収容し、ICモジュール10とアンテナコイル24とを電気的に接続」されることは、本件特許発明1の「前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続される」ことに相当する。
以上のとおりであるから、本件特許発明1と甲6発明とは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「樹脂シートの第一の面に被覆導線が固着された状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの、各面にそれぞれ他の複数の樹脂シートを接合してなる積層体が、第一の凹部と、第二の凹部とを有し、
前記第一の凹部は、ICモジュールを収容し、
前記第二の凹部は、前記巻線アンテナの前記ICモジュールのパッド電極に対応する位置にある部位の前記被覆導線の金属が前記積層体の厚さ方向に向かって露出した面である前記ICモジュールとの接続部を有し、
前記ICモジュールが前記第一の凹部に収容され、前記ICモジュールと前記巻線アンテナとが前記接続部で電気的に接続されることを特徴とするデュアルICカード。」
【相違点】
・相違点6-1
本件特許発明1の「被覆導線」の樹脂シートへの固着された状態は、「その太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態」であるのに対して、甲6発明の「エナメル被覆銅線」の乳白色塩化ビニルコアシート211への固着された状態は、当該「その太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態」であることが特定されていない点。
・相違点6-2
本件特許発明1では、「前記第一の凹部と、前記第二の凹部とは、前記樹脂シートの前記第二の面に近い側の、前記積層体の表面に開口」するもの、つまり「第二の面」側に開口するものであるのに対して、甲6発明の「ICモジュール10を収容する埋没凹部22」と「開孔151、152」とは、「乳白色塩化ビニルコアシート211」の上面(第一の面)側に開口するものである点。
・相違点6-3
本件特許発明1は、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さい」との事項を備えるものであるのに対して、甲6発明は、当該事項が特定されていない点。
・相違点6-4
本件特許発明1は、「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記第二の凹部の底面までの距離は、前記第二の面から前記第二の凹部の前記底面までの距離より小さい」との事項を備えるものであるのに対して、甲6発明は、当該事項が特定されていない点。
・相違点6-5
本件特許発明1において、「前記接続部は、前記樹脂シートの前記第二の面の側から、前記被覆導線の所定の深さまでの部分が除去されて形成され、前記所定の深さは、前記被覆導線の半径以下である」のに対して、甲6発明の「アンテナコイル24の接続端部241、242」は、当該事項が特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑みて、まず、相違点6-1と相違点6-3について検討する。
甲6発明では、乳白色塩化ビニルコアシート211の上面側に乳白色塩化ビニルコアシート212等を積層し、熱厚プレスして「カード基体21」を形成するものであることからすると、「エナメル被覆銅線」は、「乳白色塩化ビニルコアシート211」あるいは「乳白色塩化ビニルコアシート212」のいずれか、あるいは、その両方において、「その太さ方向に埋め込んだ状態」であると解するのが相当である。
しかし、甲6には、「エナメル被覆銅線」を「乳白色塩化ビニルコアシート211」において、「その太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態」とすることは記載されておらず、当該事項は、本件特許出願時の技術常識であるともいえない。
そうすると、相違点6-1に係る「その太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態」が周知技術であるとしても、甲6発明において、当該周知技術を採用すべき動機付けがあるとはいえない。
さらに、仮に、甲6発明において上記周知技術を採用できたとしても、それに加えて、相違点6-3に係る「前記積層体の断面視において、前記第一の面から前記被覆導線の中心までの距離は、前記第二の面から前記被覆導線の中心までの距離より小さい」ようにすることは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。
したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲6に記載された発明、及び、甲1ないし甲5、甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)特許異議申立理由についてのまとめ
上記(1)ないし(4)で説示したとおりであるから、特許異議申立ての理由は採用できない。
第7.むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議の申立ての理由によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700578