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特許異議申立

2024-701019

蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法

審判番号
2024-701019
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-524465
登録番号
7476535
請求日
2024年10月16日
審決日
2025年01月20日
公報発行日
2025年03月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】恩田 誠
  • 【権利者代理人】恩田 博宣
  • 【異議申立人】村野 親
審判長/審判官
  • 審判長 井上 猛
  • 審判官 粟野 正明
  • 審判官 池渕 立
分類
P1652.121-Y (C23C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7476535号発明「蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7476535号の請求項7、8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7476535号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(特願2019-524465号。以下「本願」という。)は、2018年(平成30年)10月12日(優先権主張:平成29年10月13日)を国際出願日とする出願であって、令和 6年 4月22日にその特許権の設定登録がされ、同年 5月 1日に特許掲載公報が発行され、その後、同年10月16日に、その請求項7、8に係る特許について、特許異議申立人である村野 親(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項7、8に係る発明は、以下のとおりのものである。なお、以下において、本願の請求項7、8に係る発明をそれぞれ「本件特許発明7」、「本件特許発明8」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。 「【請求項7】 金属板と、前記金属板に形成された複数のマスク孔とを含む蒸着マスクの製造方法であって、 金属板に複数のマスク孔を形成することにより蒸着マスクを形成することであって、 前記蒸着マスクは、 表面と、 前記表面とは反対側の面である裏面と、 各マスク孔を区画する内面と、を備え、 各マスク孔は、前記表面と前記裏面との間を貫通しており、 各マスク孔は、前記表面と対向する平面視において、前記表面に位置する大開口と、前記大開口の内側に位置する小開口と、を備え、各マスク孔の少なくとも一部は、前記大開口と前記小開口とを繋ぐ逆錘台筒状を有し、 各内面は、前記小開口から前記大開口に向けて拡開した段差面を備える、 蒸着マスクを形成すること、を含み、 前記段差面は2段の段差面であり、前記表面に直交する断面において2段の円弧状を有した孤状部を備え、前記孤状部は、第1円弧と前記第1円弧よりも前記裏面寄りに位置する第2円弧とを有し、 前記第1円弧の曲率半径は、前記第2円弧の曲率半径よりも小さく、 前記蒸着マスクを形成することは、前記金属板の前記表面にレジストマスクを形成すること、および、 前記レジストマスクを用いた一度のエッチングによって、前記段差面を形成すること、を含み、 前記レジストマスクは、前記金属板に接する面とは反対側の面であるレジスト表面と、前記段差面における前記第2円弧を形成するための第1パターンと、前記第1パターンとともに前記段差面を形成するための第2パターンであって、前記段差面における前記第1円弧を形成するための前記第2パターンとを含み、各第1パターンおよび各第2パターンは、前記レジストマスクの厚さ方向に沿って前記レジストマスクを貫通し、 前記レジスト表面と対向する平面視において、1つの前記第1パターンが2つの前記第2パターンに挟まれている 蒸着マスクの製造方法。 【請求項8】 金属板と、前記金属板に形成された複数のマスク孔とを含む蒸着マスクを用いた表示装置の製造方法であって、 金属板に複数のマスク孔を形成することにより蒸着マスクを形成することであって、 前記蒸着マスクは、表面と、前記表面とは反対側の面である裏面と、各マスク孔を区画する内面と、を備え、 各マスク孔は、前記表面と前記裏面との間を貫通しており、 各マスク孔は、前記表面と対向する平面視において、前記表面に位置する大開口と、前記大開口の内側に位置する小開口と、を備え、 各マスク孔の少なくとも一部は、前記大開口と前記小開口とを繋ぐ逆錘台筒状を有し、 各内面は、前記小開口から前記大開口に向けて拡開した段差面を備える、 蒸着マスクを形成することと、 前記蒸着マスクを用いた蒸着によって表示装置が有するパターンを形成することと、を含み、 前記段差面は2段の段差面であり、前記表面に直交する断面において2段の円弧状を有した孤状部を備え、前記孤状部は、第1円弧と前記第1円弧よりも前記裏面寄りに位置する第2円弧とを有し、 前記第1円弧の曲率半径は、前記第2円弧の曲率半径よりも小さく、 前記蒸着マスクを形成することは、前記金属板の前記表面にレジストマスクを形成すること、および、 前記レジストマスクを用いた一度のエッチングによって、前記段差面を形成すること、を含み、 前記レジストマスクは、前記金属板に接する面とは反対側の面であるレジスト表面と、前記段差面における前記第2円弧を形成するための第1パターンと、前記第1パターンとともに前記段差面を形成するための第2パターンであって、前記段差面における前記第1円弧を形成するための前記第2パターンとを含み、各第1パターンおよび各第2パターンは、前記レジストマスクの厚さ方向に沿って前記レジストマスクを貫通し、 前記レジスト表面と対向する平面視において、1つの前記第1パターンが2つの前記第2パターンに挟まれている 表示装置の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第5号証(以下「甲1」等という。下記2参照。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項7、8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 1 申立理由1(進歩性) 本件特許発明7、8は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 甲1:特開2009-41054号公報 甲2:特開平7-126870号公報 甲3:米国特許第5830373号明細書 甲4:米国特許第5635320号明細書 甲5:米国特許第3179543号明細書 第4 当審における判断 当合議体は、以下に述べるとおり、上記第3の申立理由1によっては、本件請求項7、8に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 申立理由1(進歩性)について (1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 ア 本願の優先日前に公知となった甲1には、「蒸着用マスクおよびその製造方法ならびに表示装置の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (ア)「【0001】 本発明は、例えば有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示装置の製造工程において用いられる蒸着用マスクおよびその製造方法、ならびに表示装置の製造方法に関する。」 (イ)「【0006】 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、透過孔パターンを精度良く形成しつつ、多面取りを実現することが可能な蒸着用マスクの製造方法および蒸着用マスクならびに表示装置の製造方法を提供することにある。」 (ウ)「【0007】 本発明による蒸着用マスクの製造方法は、開口部を有する枠体に、マスク用の複数の金属薄膜を、開口部を覆うように張力を付加しつつ固定する張設工程と、枠体に固定された複数の金属薄膜に、蒸着材料を透過させるための複数の透過孔をそれぞれ形成する透過孔形成工程とを含むものである。 【0008】 本発明による蒸着用マスクの製造方法では、複数の金属薄膜を枠体に張力を付加しつつ固定したのち、金属薄膜に透過孔パターンを形成することにより、従来のように複数の金属薄膜を、透過孔を形成した後に枠体に張設する場合に比べて、透過孔の寸法や位置のずれが生じにくくなる。よって、複数の透過孔が所望の寸法形状で形成されると共に、各金属薄膜内における透過孔の位置精度、および複数の金属薄膜間における透過孔同士の相対的な位置精度が確保される。」 (エ)「【0063】 (変形例5) 図19~図21は、本発明の変形例5に係る蒸着用マスク7の製造方法を説明するためのものである。この蒸着用マスク7の製造方法では、金属薄膜40に対して、多段階に分けてエッチングを施すこと以外は、上述の蒸着用マスク1と同様にして製造することができる。 【0064】 まず、上述の蒸着用マスク1の図4~図6の工程と同様の手順で、枠体11に金属薄膜40を固定する。こののち、上述の蒸着用マスク6の図14~図16の工程と同様の手順で、金属薄膜40の表面側をハーフエッチングしたのち、フォトレジスト膜12a-2,12b-2および目止め部13を形成し、露光パターンの描画、フォトレジスト膜12b-2の現像を行う。 【0065】 次いで、図19(A)に示したように、金属薄膜40の裏面側から表面側に向けて、エッチングを施し、貫通する直前で止める。続いて、図19(B)に示したように、フォトレジスト膜12a-2,12b-2および目止め部13を剥離し、水洗乾燥させる。 【0066】 次いで、金属薄膜40の表面側および裏面側に、上述のスプレイコーティング法によりフォトレジスト膜12a-3,12b-3を形成したのち、図20(A)に示したように、金属薄膜40の裏面側のフォトレジスト膜12b-3上に、上述のレーザダイレクト露光法により露光パターンの描画を行う。続いて、図20(B)に示したように、フォトレジスト膜12b-3を現像する。 【0067】 次いで、21(A)に示したように、金属薄膜40の裏面側から表面側に向けて貫通するまでエッチングを行う。最後に、図21(B)に示したように、フォトレジスト膜12a-3,12b-3および目止め部13を剥離して、水洗乾燥させることにより、透過孔パターン40Aを有する蒸着用マスク7を完成する。このようにして形成した透過孔パターン40Aの透過孔40A-1は、図22に示したような断面形状となる。なお、図22は、図21(B)における領域S3を拡大したものである。 【0068】 このように、透過孔パターン40Aを、多段階エッチングを施すことによって形成することも可能である。これにより、裏面側の断面の傾斜を大きくすることができるため、蒸着シャドウ効果を低減することができる。」 (オ)「【図19】 [図:0001420357000001.jpg] 【図20】 [図:0001420357000002.jpg] 【図21】 [図:0001420357000003.jpg] 【図22】 [図:0001420357000004.jpg] 」 イ 上記ア(オ)に摘記した図22には、蒸着用マスク7を構成する金属薄膜40に形成した透過孔パターン40Aの複数形成された透過孔40A-1について、その断面形状が示されているところ、当該断面形状からは、上記透過孔40A-1の各々が、金属薄膜40の表面側と裏面側とを貫通するように形成されたものであり、表面側には、ハーフエッチングにより形成され、表面において所定の開口面積を有し、表面側から深さ方向に徐々に開口面積が小さくなるように略円弧状の断面形状を備えた第1の部分が形成されており、一方、裏面側には、多段階エッチングにより形成され、裏面において表面側の上記所定の開口面積より大きい開口面積を有し、裏面側から深さ方向に徐々に開口面積が小さくなるとともに、途中の段差部で接続された2つの略円弧状の部分が結合された断面形状を備えた第2の部分が形成されており、上記第1の部分と上記第2の部分とがそれぞれの底部で接続されていることが見て取れる。 ウ そうすると、上記アに摘記した甲1の記載事項を総合勘案し、特に、【0063】~【0068】及び図19~図22に記載された「変形例5」に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「金属薄膜40に対して、多段階に分けてエッチングを施す、蒸着用マスク7の製造方法であって、 枠体11に金属薄膜40を固定し、こののち、金属薄膜40の表面側をハーフエッチングしたのち、フォトレジスト膜12a-2、12b-2および目止め部13を形成し、露光パターンの描画、フォトレジスト膜12b-2の現像を行い、 次いで、金属薄膜40の裏面側から表面側に向けて、エッチングを施し、貫通する直前で止め、続いて、フォトレジスト膜12a-2、12b-2および目止め部13を剥離し、水洗乾燥させ、 次いで、金属薄膜40の表面側および裏面側に、スプレイコーティング法によりフォトレジスト膜12a-3、12b-3を形成したのち、金属薄膜40の裏面側のフォトレジスト膜12b-3上に、レーザダイレクト露光法により露光パターンの描画を行い、続いて、フォトレジスト膜12b-3を現像し、 次いで、金属薄膜40の裏面側から表面側に向けて貫通するまでエッチングを行い、 最後に、フォトレジスト膜12a-3、12b-3および目止め部13を剥離して、水洗乾燥させることにより、透過孔パターン40Aを有する蒸着用マスク7を完成し、 上記蒸着用マスク7の透過孔パターン40Aの複数形成された透過孔40A-1の各々は、金属薄膜40の表面側と裏面側とを貫通するように形成されたものであり、表面側には、ハーフエッチングにより形成され、表面において所定の開口面積を有し、表面側から深さ方向に徐々に開口面積が小さくなるように略円弧状の断面形状を備えた第1の部分が形成されており、一方、裏面側には、多段階エッチングにより形成され、裏面において表面側の上記所定の開口面積より大きい開口面積を有し、裏面側から深さ方向に徐々に開口面積が小さくなるとともに、途中の段差部で接続された2つの略円弧状の部分が結合された断面形状を備えた第2の部分が形成されており、上記第1の部分と上記第2の部分とがそれぞれの底部で接続されている、 蒸着用マスク7の製造方法。」(以下「甲1発明」という。) (2)本件特許発明7について ア 対比 本件特許発明7と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「金属薄膜40」は、「枠体11」に「固定」された板状のものであるから、本件特許発明7の「金属板」に相当する。 (イ)甲1発明の「複数形成された透過孔40A-1」は、本件特許発明7の「前記金属板に形成された複数のマスク孔」に相当する。 (ウ)上記(ア)、(イ)の検討を踏まえると、甲1発明の「蒸着用マスク7の製造方法」は、本件特許発明7の「金属板に複数のマスク孔を形成することにより蒸着マスクを形成する」、「金属板と、前記金属板に形成された複数のマスク孔とを含む蒸着マスクの製造方法」に相当する。 (エ)甲1発明の「蒸着用マスク7」における「裏面」、「表面」及び「透過孔40A-1」各々の内面は、それぞれ本件特許発明7の「蒸着マスク」が備えた「表面」、「前記表面とは反対側である裏面」及び「各マスク孔を区画する内面」に相当する。 (オ)甲1発明の「透過孔40A-1」各々の「第2の部分」の「底部」が、本件特許発明7の「小開口」に相当するものであることを踏まえると、本件特許発明7の「蒸着マスク」に形成された「各マスク孔」と、甲1発明の「蒸着マスク7」における「透過孔40A-1」の各々とは、「前記表面と前記裏面との間を貫通しており」、「前記表面と対向する平面視において、前記表面に位置する大開口と、前記大開口の内側に位置する小開口と、を備え」、それら「の少なくとも一部は、前記大開口と前記小開口とを繋ぐ逆錘台筒状を有し」、「各内面は、前記小開口から前記大開口に向けて拡開した段差面を備え」、「前記段差面は2段の段差面であり、前記表面に直交する断面において2段の円弧状を有した弧状部を備え、前記弧状部は、前記第1円弧と前記第1円弧よりも裏面よりに位置する第2円弧とを有」するものである点で共通する。 (カ)本件特許発明7と甲1発明とは、「前記蒸着マスクを形成することは、前記金属板の前記表面にレジストマスクを形成すること、および」、「前記レジストマスクを用いた」「エッチングによって、前記段差面を形成すること、を含」む点で共通する。 (キ)そうすると、本件特許発明7と甲1発明とは、 「金属板と、前記金属板に形成された複数のマスク孔とを含む蒸着マスクの製造方法であって、 金属板に複数のマスク孔を形成することにより蒸着マスクを形成することであって、 前記蒸着マスクは、 表面と、 前記表面とは反対側の面である裏面と、 各マスク孔を区画する内面と、を備え、 各マスク孔は、前記表面と前記裏面との間を貫通しており、 各マスク孔は、前記表面と対向する平面視において、前記表面に位置する大開口と、前記大開口の内側に位置する小開口と、を備え、各マスク孔の少なくとも一部は、前記大開口と前記小開口とを繋ぐ逆錘台筒状を有し、 各内面は、前記小開口から前記大開口に向けて拡開した段差面を備える、 蒸着マスクを形成すること、を含み、 前記段差面は2段の段差面であり、前記表面に直交する断面において2段の円弧状を有した孤状部を備え、前記孤状部は、第1円弧と前記第1円弧よりも前記裏面寄りに位置する第2円弧とを有し、 前記蒸着マスクを形成することは、前記金属板の前記表面にレジストマスクを形成すること、および、 前記レジストマスクを用いたエッチングによって、前記段差面を形成すること、を含む、 蒸着マスクの製造方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 各マスク孔を区画する内面が備える段差面において、表面に直交する断面における2段の円弧状を有した弧状部について、本件特許発明7は、表面寄りに位置する「第1円弧の曲率半径」が、「裏面寄りに位置する」「第2円弧の曲率半径よりも小さ」いのに対して、甲1発明は、「透過孔40A-1」各々の「第2の部分」が、「途中の段差部で接続された2つの略円弧状の部分が結合された断面形状」を備えてはいるものの、上記2つの略円弧状の部分の曲率半径の関係までは不明である点。 <相違点2> 本件特許発明7は、「レジストマスクを用いた一度のエッチングによって、」「段差部を形成する」ものであって、「前記レジストマスクは、前記金属板に接する面とは反対側の面であるレジスト表面と、前記段差面における前記第2円弧を形成するための第1パターンと、前記第1パターンとともに前記段差面を形成するための第2パターンであって、前記段差面における前記第1円弧を形成するための前記第2パターンとを含み、各第1パターンおよび各第2パターンは、前記レジストマスクの厚さ方向に沿って前記レジストマスクを貫通し、前記レジスト表面と対向する平面視において、1つの前記第1パターンが2つの前記第2パターンに挟まれている」のに対して、甲1発明は、「段差部」を含む「第2の部分」を「多段階エッチングにより形成」している点。 イ 相違点についての検討 事案に鑑み、上記相違点1について、まず検討する。 (ア)上記(1)アに摘記した甲1の記載事項及び本願優先日当時の技術常識を考慮しても、甲1発明における上記「第2の部分」に係る2つの略円弧状の部分の間の曲率半径の関係は不明と言わざるを得ない。 (イ)この点、申立人は、特許異議申立書の第22頁において、以下の図を示し、「甲1の図22には、以下に示すように、「前記段差面は2段の段差面であり、前記表面に直交する断面において2段の円弧状を有した弧状部を備え、前記弧状部は、第1円弧と前記第1円弧よりも前記裏面寄りに位置する第2円弧を有し、前記第1円弧の曲率半径は、前記第2円弧の曲率半径よりも小さ」いと(構成要件7H、7I)が表されている(図22)。」と主張している。 しかしながら、甲1の【0085】の記載からすると、図22は、「本発明の変形例5に係る蒸着用マスクの透過孔の拡大図である。」とはされているものの、「蒸着用マスクの概略構成を表す断面図」の「透過孔の拡大図」であるから、この図のみに基づいて弧状部の正確な形状を把握することは困難であるし、また、微妙な形状の違いによってそこから算出される曲率半径の値が大きく異なることも考慮すると、図22から上記のように「前記第1円弧の曲率半径は、前記第2円弧の曲率半径よりも小さ」いとは認められない。 したがって、申立人の上記主張は採用しない。 「 [図:0001420357000005.jpg] 」 (ウ)よって、上記相違点1は、実質的な相違点である。 (エ)そこで、上記相違点1の容易想到性についてさらに検討する。 a 甲1には、甲1発明における上記「第2の部分」に係る2つの略円弧状の部分の間の曲率半径に着目した記載は、見当たらない。 b この点については、甲2~甲5の記載を参照しても同様である。 c また、本件特許発明7が上記相違点1に係る特定事項を備えていることによって、本件特許明細書中には明記はないものの、「蒸着粒子がマスク孔を通過することが可能な蒸着粒子の入射角度における制約を小さくする」(本件特許明細書の【0006】、【0021】参照。)点で有利に働くとの技術的意義を有することが推認されるから、甲1発明において、上記相違点1に係る特定事項を備えることが、単なる設計的事項の範疇であるとはいえない。 d そうすると、甲1発明において、上記相違点1に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 e 以上によれば、甲1発明において、上記相違点1に係る特定事項を備えさせることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 ウ 小括 したがって、上記相違点2及び本件特許発明7によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明7は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明8について ア 対比・判断 (ア)上記(2)アの検討結果を踏まえて本件特許発明8と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも、上記相違点1と同様の点で相違する。 (イ)そして、上記相違点1については、上記(2)イにおいて検討したとおりであるから、甲1発明において、上記相違点1に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)以上によれば、甲1発明において、上記相違点1に係る特定事項を備えさせることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 イ 小括 したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項7、8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項7、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701019

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