特許拒絶査定不服審判
2023-005031
吸収性物品用積層体及びその製造方法
- 審判番号
- 2023-005031
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-100651外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月28日
- 審決日
- 2025年01月28日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】出口 智也
- 【請求人代理人】村田 卓久
- 【請求人代理人】小島 一真
- 分類
- P18 .121-Z (A61F) / P18 .56 -Z (A61F) / P18 .575-Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-100651「吸収性物品用積層体及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年9月24日出願公開、特開2021-142369〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)2月12日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2017年2月13日 US(米国)、2017年2月13日 US(米国)、2017年2月13日 US(米国)、2017年10月19日 US(米国)、2017年10月19日 US(米国)、2017年10月19日 US(米国)、2017年10月19日 US(米国))を国際出願日とする出願である特願2019-542533号の一部を、令和3年6月17日に新たな特許出願としたものであって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 7月 1日 :手続補正書の提出
令和4年 7月25日付け:拒絶理由の通知
令和4年 9月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年12月20日付け:拒絶査定(謄本送達日:令和5年1月6日)
令和5年 3月28日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出
第2 令和5年3月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年3月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。下線部は、補正箇所である。)。
【請求項1】
吸収性物品であって、
横方向軸と、
前記横方向軸に対して垂直に延在する長手方向軸と、
液体透過性の三次元積層体と、
液体不透過性のバックシートと、
前記三次元積層体と前記バックシートとの中間に少なくとも部分的に位置付けられた吸収性コアと、を備え、
前記三次元積層体が、
前記横方向軸に平行な方向に取られた、第1の坪量及び第1の横方向幅を有する第1の基材と、
前記横方向軸に平行な前記方向に取られた、第2の坪量及び第2の横方向幅を有する第2の基材であって、前記第2の横方向幅は、前記第1の横方向幅よりも大きく、前記第1及び第2の基材は、少なくとも部分的に重なり合って、前記第1の基材と前記第2の基材との間に重なり合う区域を形成する、第2の基材と、
前記第1の基材にのみ形成された三次元要素であって、前記第2の基材が概ね平面状である、三次元要素と、
前記重なり合う区域において前記第1及び第2の基材に定義された孔であって、前記重なり合う区域の外側の第2の基板の領域には存在しない、孔と、
前記重なり合う区域において前記第1及び第2の基材に形成され、前記第1及び第2の基材を接合する、複数の溶接部と、を含むものであり、
前記三次元積層体が、前記吸収性物品のトップシートの一部分を形成し、前記第1の基材が、疎水性であり、前記第2の基材が、親水性であるか又は前記第1の基材よりも疎水性が低いものであり、
前記第1の基材が、第1の材料を含み、前記第2の基材が、第2の材料を含み、前記第1の材料が、前記第2の材料とは異なるものであり、
前記重なり合う区域の外側の前記第2の基材の区域が、前記三次元要素を含まないものであり、
前記三次元積層体が、前記第1の基材の圧縮領域を含み、前記圧縮領域が、前記三次元要素のうちの少なくともいくつかの中に形成され、又は前記孔のうちの少なくともいくつかの外周の周りに少なくとも部分的に形成されている、吸収性物品。
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年9月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである(・・・は省略を示す。以下、請求項1に係る発明から順に「補正前発明1」、「補正前発明2」・・・という。)。
【請求項1】
吸収性物品であって、
横方向軸と、
前記横方向軸に対して垂直に延在する長手方向軸と、
液体透過性の三次元積層体と、
液体不透過性のバックシートと、
前記三次元積層体と前記バックシートとの中間に少なくとも部分的に位置付けられた吸収性コアと、を備え、
前記三次元積層体が、
前記横方向軸に平行な方向に取られた、第1の坪量及び第1の横方向幅を有する第1の基材と、
前記横方向軸に平行な前記方向に取られた、第2の坪量及び第2の横方向幅を有する第2の基材であって、前記第2の横方向幅は、前記第1の横方向幅よりも大きく、前記第1及び第2の基材は、少なくとも部分的に重なり合って、前記第1の基材と前記第2の基材との間に重なり合う区域を形成する、第2の基材と、
前記第1の基材にのみ形成された三次元要素であって、前記第2の基材が概ね平面状である、三次元要素と、
前記重なり合う区域において前記第1及び第2の基材に定義された孔であって、前記重なり合う区域の外側の第2の基板の領域には存在しない、孔と、
前記重なり合う区域において前記第1及び第2の基材に形成され、前記第1及び第2の基材を接合する、複数の溶接部と、を含むものであり、
前記三次元積層体が、前記吸収性物品のトップシートの一部分を形成し、前記第1の基材が、疎水性であり、前記第2の基材が、親水性であるか又は前記第1の基材よりも疎水性が低いものであり、
前記第1の基材が、第1の材料を含み、前記第2の基材が、第2の材料を含み、前記第1の材料が、前記第2の材料とは異なるものであり、
前記重なり合う区域の外側の前記第2の基材の区域が、前記三次元要素を含まない、吸収性物品。
【請求項2】
前記溶接部が、超音波溶接部を含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記溶接部が、結合部を含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1の坪量が、前記第2の坪量とは異なる、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記三次元積層体が、前記第1の基材の圧縮領域を含み、前記圧縮領域が、前記三次元要素のうちの少なくともいくつかの中に形成され、又は前記孔のうちの少なくともいくつかの外周の周りに少なくとも部分的に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1の基材が、前記吸収性物品の着用者に面する表面の一部分を形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記三次元積層体」について、上記1(1)のとおり補正前発明5の発明特定事項であった「前記第1の基材の圧縮領域を含み、前記圧縮領域が、前記三次元要素のうちの少なくともいくつかの中に形成され、又は前記孔のうちの少なくともいくつかの外周の周りに少なくとも部分的に形成されている」という限定を付加したものであって、補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第2014/084066号(2014年(平成26年)6月5日公開。以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付した。・・・は省略を示す。以下同様。)。
「技術分野
[0001] 本発明は、使い捨ておむつなどの使い捨て着用物品の表面シート等に用いられる複合シート材に関し、さらに詳しくは、立体シート材と平坦シート材とが互いに確りと接合されたものでありながら、通気性等に優れ、柔軟で肌触りが良好な複合シート材とこれを用いた使い捨て着用物品、および複合シート材の製造方法と製造装置に関する。
背景技術
[0002] 従来、使い捨て着用物品の表面シートに用いられる複合シート材として、多数の凸部を形成した立体シート材と、そのような凸部が形成されていない平坦なシート材とが互いに積層されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。この複合シート材からなる表面シートを備えた使い捨て着用物品は、上記の凸部が着用者の肌側に向けて突出するように装着され、良好な装着感が得られるとともに、液漏れが効果的に防止される。」
「発明が解決しようとする課題
[0004] 上記従来の複合シート材は、周面に多数の凹凸形状を有する1対のロールを互いに噛み合せ、その噛み合せ部に一方のシート材を噛み込ませることにより、このロールの凹部でシート材の凸部を形成して立体シート材とし、吸引によって一方のロールのロール周面にその立体シート材を保持しつつ、これに平坦な他のシート材を重ね合せ、そのロールにおける凹部の周囲で両シート材を溶着等により接合することで製造される。従って得られた複合シート材は、立体シート材の凸部を除く部分(以下、基部ともいう。)の全体が、上記の平坦シート材と接合されている。
[0005] このため、この従来の複合シート材は、立体シート材と平坦シート材との接合面積が広いので、溶着によりシート材がフィルム化等する面積も広く、複合シート材全体の柔らかさを高めることが容易でない。また、立体シート材は、上記の凸部に隣接する基部が平坦シート材に接合されているため、保形性には優れるものの、押圧されたときに変形しにくく、この点からも複合シート材の柔軟性を高めることが容易でない。この結果、この複合シート材を表面シート材としたときの、肌触りや装着感を一層良好にすることが容易でない。
[0006] また、上記の接合面積が広いことから、接着圧力を高めることが容易でなく、この接着部を確りと接合することが容易でない。そして立体シート材と平坦シート材とが十分に接合されておらず、外力等でその接合が外れると、両シート材が互いにズレ動いて上記の凸部の立体形状を維持できなくなる虞がある。
さらに、上記の両シート材が溶着により凸部間の広い面積でフィルム化すると、複合シート材としての通気性や透液性が低下する問題もある。
[0007] 本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、立体シート材と平坦シート材とが互いに確りと接合されたものでありながら、通気性等に優れ、柔軟で肌触りが良好な複合シート材と、その製造方法および複合シート材の製造装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図9に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明1は複合シート材に関し、多数の凸部(3)を形成した立体シート材(2)と、そのような凸部を有しない平坦シート材(4)とを互いに積層して接合した複合シート材であって、上記の立体シート材(2)は、上記の凸部(3)から離間した接合部(5)で上記の平坦シート材(4)と接合されていることを特徴とする。
[0009] 本発明2は使い捨て着用物品に関し、本発明1の複合シート材(1)を用いてあることを特徴とする。
[0010] また、本発明3は複合シート材の製造方法に関し、周面に賦形用凹部(21)を備える第1賦形ロール(11)と、周面に賦形用突起(24)を備える第2賦形ロール(12)との間に第1シート材(17)を案内して、多数の凸部(3)が形成された立体シート材(2)としたのち、第2シート材(19)からなる平坦なシート材(4)を上記の立体シート材(2)に重ね合せ、上記の凸部(3)から離間した部位でこの立体シート材(2)と平坦シート材(4)とを互いに圧接して接合部(5)を形成することを特徴とする。
[0011] また本発明4は複合シート材の製造装置に関し、多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)と、そのような凸部を備えていない平坦なシート材(4)とを互いに積層して接合する複合シート材の製造装置であって、軸方向が互いに平行な第1賦形ロール(11)と第2賦形ロール(12)と押圧ロール(13)とを備えており、上記の第1賦形ロール(11)は、ロール周面に多数の賦形用凹部(21)を備えるとともに、回転方向の上流側から順に賦形位置(14)と押圧位置(15・16)とがそのロール周面に設定してあり、上記の第2賦形ロール(12)は、ロール周面に多数の賦形用突起(24)を備え、上記の賦形位置(14)で上記の第1賦形ロール(11)と対面するとともに、その賦形位置(14)で上記の賦形用突起(24)が上記の賦形用凹部(21)と噛み合い、上記の第1賦形ロール(11)のロール周面と上記の押圧ロール(13)のロール周面とのいずれかに、径方向外側へ突出する圧接用突起(25)が設けてあり、上記の第1賦形ロール(11)と押圧ロール(13)は、上記の押圧位置(15・16)で、互いに重なり合った上記の立体シート材(2)と平坦シート材(4)とを上記の圧接用突起(25)の先端が押圧する状態で対面していることを特徴とする。
・・・
[0018] 上記の立体シート材と平坦シート材は、上記の接合部が圧接の際に接合されておればよく、その接合は接着剤等を用いたものであってもよいが、圧接するとともに加熱して溶着してあると、接着剤を用いないので安価に実施できるうえ、複合シート材が接着剤等により硬くなることを防止できて好ましい。
従って、上記の本発明4の複合シート材の製造装置は、上記の第1賦形ロールと押圧ロールとの少なくともいずれかが、上記の圧接用突起で押圧される立体シート材と平坦シート材とを加熱する加熱手段を備えていると、圧接の際に両シート材を互いに溶着できて好ましい。
・・・
[0020] なお上記の接合部は、加熱溶着される場合にフィルム化されていても、この接合部の面積が狭いので良好な通気性や透液性を備えることができる。さらにこの場合に、少なくとも一部の接合部が複合シート材を貫通する貫通孔を備えると、その貫通孔の周囲で立体シート材と平坦シート材を確りと接合しながら、しかもその貫通孔により、複合シート材の通気性や透液性を一層良好にできて好ましい。これらの貫通孔は、圧接の際の圧力を高めたり、圧接用突起の先端に小さな突起を形成したりして形成してもよく、或いは溶着後の複合シート材に張力を付与することで形成してもよい。」
「図面の簡単な説明
[0024][図1]本発明の実施形態を示す、複合シート材の破断斜視図である。
[図2]本発明の実施形態の、複合シート材の平面図である。
[図3]本発明の実施形態の、複合シート材の要部の拡大平面図である。
[図4]本発明の実施形態の、複合シート材の要部の拡大断面図である。
[図5]本発明の実施形態の、使い捨て着用物品の概略構成を示す、分解断面図である。
・・・」
「[0026] 図1から図4に示すように、この複合シート材(1)は、多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)と、これに積層された、そのような凸部を備えていない平坦なシート材(4)とを備える。この立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、上記の凸部(3)から離間した位置に形成されている接合部(5)で、溶着により互いに接合されて一体となっている。
[0027] 上記の立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、特定の材質のものに限定されず、例えば、エアースルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の各種製法による不織布などが用いてある。この立体シート材(2)と平坦シート材(4)とは同じ材質であってもよく、互いに異なる材質であってもよい。
[0028] 図2に示すように、この実施形態では、立体シート材(2)よりも平坦シート材(4)を広幅に形成してあり、上記の多数の凸部(3)は、狭い幅の立体シート材(2)の全幅に亘って形成してある。従ってこの複合シート材(1)は、両側縁に凸部が形成されていない平坦領域(6)を備えるが、この平坦領域(6)は平坦シート材(4)のみで形成されるので、複合シート材(1)全体としての柔らかさが良好に維持される。
[0029] また例えば図5に示すように、上記の複合シート材(1)を使い捨ておむつ(27)の吸収体(28)の表面シート(29)として用いる場合には、上記の平坦領域(6)は、立体ギャザーシート(30)など、他のシートと容易に接合できる利点がある。またこの平坦領域(6)は、吸収体(28)の両側縁を巻き込むように折り曲げて用いてもよい。なお、符号(31)は立体ギャザーシート(30)に付設された糸状弾性部材を示し、符号(32)は拡散シートを、符号(33)はバックシートを、符号(34)は外層シートをそれぞれ示す。」
「[0033] 図4に示すように、上記の接合部(5)の一部には、複合シート材(1)を貫通する貫通孔(8)が形成してあり、複合シート材(1)全体の通気性や透液性を高めてある。ただし本発明では、立体シート材(2)や平坦シート材(4)の通気性・透液性が十分に高い場合は、この貫通孔(8)を省略してもよく、或いは、通気性や透液性をさらに高めるため、全ての接合部に上記の貫通孔(8)を形成したものであってもよい。」
「[図1]
[図:0001423882000001.jpg]
」
「[図2]
[図:0001423882000002.jpg]
」
「[図3]
[図:0001423882000003.jpg]
」
「[図4]
[図:0001423882000004.jpg]
」
「[図5]
[図:0001423882000005.jpg]
」
(イ)上記記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されている。
a 複合シート材(1)は、多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)と、これに積層された、そのような凸部を備えていない平坦なシート材(4)とを備えており、この立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、上記の凸部(3)から離間した位置に形成されている接合部(5)で、溶着により互いに接合されて一体となっている(段落[0026])。
b この立体シート材(2)と平坦シート材(4)とは、互いに異なる材質であってもよい(段落[0028])。
c 立体シート材(2)よりも平坦シート材(4)を広幅に形成してあり、上記の多数の凸部(3)は、狭い幅の立体シート材(2)の全幅に亘って形成しており、それによってこの複合シート材(1)は、両側縁に凸部が形成されていない平坦領域(6)を備えるが、この平坦領域(6)は平坦シート材(4)のみで形成される(段落[0028]及び図2)。
d 上記の接合部(5)の一部には、複合シート材(1)を貫通する貫通孔(8)が形成してある(段落[0033]及び図4)。
e 少なくとも一部の接合部が複合シート材を貫通する貫通孔を備えると、その貫通孔の周囲で立体シート材と平坦シート材を確りと接合しながら、しかもその貫通孔により、複合シート材の通気性や透液性を一層良好にできて好ましく、これらの貫通孔は、圧接の際の圧力を高めたり、圧接用突起の先端に小さな突起を形成したりして形成してもよい(段落[0020])。
f 複合シート材(1)を使い捨ておむつ(27)の吸収体(28)の表面シート(29)として用いる場合には、上記の平坦領域(6)は、立体ギャザーシート(30)など、他のシートと容易に接合できる利点があり、使い捨ておむつ(27)は、バックシート(33)を含む(段落[0029])。
g 使い捨ておむつ(27)の分解断面図からみて、吸収体(28)は表面シート(29)とバックシート(33)の間に配置されている事項が看取される(段落[0029]及び図5)。
h 使い捨ておむつ(27)の分解断面図からみて、表面シート(29)である複合シート材(1)は左右方向に延在しており、複合シート材(1)は、凸部(3)のある立体シート材(2)の吸収体(28)側に平坦シート材(4)が積層されている。ここで平坦シート材(4)の両端は立体シート材(2)の両端よりも左右方向外側にあることで平坦領域(6)が形成されている(段落[0029]及び図5)。
(ウ)これらのことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「使い捨ておむつ(27)であって、
吸収体(28)の表面シート(29)として用いられ、透液性の複合シート材(1)と、
バックシート(33)と、
表面シート(29)とバックシート(33)の間に配置されている吸収体(28)と、を備え、
前記複合シート材(1)が、
左右方向に幅があり、多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)と、これに積層され、前記左右方向に幅があり、そのような凸部を備えていない平坦シート材(4)とを備え、
平坦シート材(4)は立体シート材(2)の吸収体(28)側に積層されており、
前記左右方向において、立体シート材(2)よりも平坦シート材(4)を広幅に形成してあることで、この複合シート材(1)は、両側縁に凸部が形成されていない平坦領域(6)を備えるが、この平坦領域(6)は平坦シート材(4)のみで形成され、
この立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、上記の凸部(3)から離間した位置に形成されている接合部(5)で、圧接するとともに加熱され、溶着により互いに接合されて一体となっており、
この立体シート材(2)と平坦シート材(4)とは互いに異なる材質であってもよく、
上記の接合部(5)の一部には、複合シート材(1)を貫通する貫通孔(8)が形成してあり、
貫通孔は、圧接の際の圧力を高めたり、圧接用突起の先端に小さな突起を形成したりして形成してもよい、使い捨ておむつ(27)。」
イ 引用例2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第2015/098373号(2015年(平成27年)7月2日国際公開。以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。
「技術分野
[0001] 本発明は、内部が中空の凸部を多数形成している立体シートに関する。」
「発明の詳細な説明
[0010] 以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1~図2には、本発明の立体シートの一実施形態が示されている。図1は、立体シートの要部を一部断面により模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示すII-II線断面図である。本実施形態の立体シート10は、互いに積層された第1不織布1及び第2不織布2が部分的に熱融着されてシート形成用融着部3が形成され、第1不織布1が、シート形成用融着部3で囲まれた非融着部において第2不織布2から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部4を多数形成している立体シートである。第1不織布1と第2不織布2とは部分的に熱融着されており、それにより多数のシート形成用融着部3が形成されている。第1不織布1は、シート形成用融着部3以外の部分において、第2不織布2側とは反対向きに突出して、内部空洞の多数の凸部4を形成している。このように、立体シート10は、第2不織布2側の面がほぼ平坦であり、第1不織布1側に起伏の大きな凹凸が形成されている。第1不織布1側の凸部4は、立体シート10を、例えば、吸収性物品の表面シートとして用いたときに、着用者の肌側に向く方向に突出する方向に配置する。」
「[0029] 上述した本実施形態の立体シート10は、第1不織布1側が着用者の肌側を向くようにして、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品の表面シートとして用いられるものである。すなわち、第1不織布1は、立体シート10を、吸収性物品の表面シートとして用いたときに、着用者の肌側に向けられる面(肌対向面)を形成するようになり、第2不織布2は、前記吸収性物品を構成する収体体側に向けられる面(非肌対向面)を形成するようになる。」
「[0039] また、立体シート10を構成する第2不織布2は、その親水度が、立体シート10を構成する第1不織布1の親水度よりも高いことが好ましい。ここで、「親水度」とは、以下に述べる方法で測定された繊維の接触角に基づき判断される。具体的には、親水度が高いことは接触角が小さいことと同義であり、親水度が低いことは接触角が大きいことと同義である。」
「[図1]
[図:0001423882000006.jpg]
」
「[図2]
[図:0001423882000007.jpg]
」
(イ)これらのことから、引用例2には、以下の技術的事項(以下「引用例2技術」という。)が記載されている。
「使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートとして用いられる立体シート10であって、
立体シート10は、互いに積層された第1不織布1及び第2不織布2が部分的に熱融着されてシート形成用融着部3が形成され、第1不織布1が、シート形成用融着部3で囲まれた非融着部において第2不織布2から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部4を多数形成していることで、第2不織布2側の面がほぼ平坦であり、第1不織布1側に起伏の大きな凹凸が形成されており、
第1不織布1は、立体シート10を、吸収性物品の表面シートとして用いたときに、着用者の肌側に向けられる面(肌対向面)を形成するようになり、第2不織布2は、前記吸収性物品を構成する収体体側に向けられる面(非肌対向面)を形成する、立体シート10において、
第2不織布2は、その親水度が、立体シート10を構成する第1不織布1の親水度よりも高いものとする技術。」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「使い捨ておむつ(27)」は、本件補正発明の「吸収性物品」に相当する。
(イ)引用発明の「左右方向」は本件補正発明の「横方向」に相当する。ここで、本件補正発明の「横方向軸」とは「横方向」という方向を単に用語として定義しているにすぎないから、引用発明においても「左右方向」を「横方向軸」と定義できる。
(ウ)本件補正発明の「前記横方向軸に対して垂直に延在する長手方向軸」は、空間を定義しているにすぎないから、引用発明においても「左右方向」にある「横方向軸」に対して垂直に延在する長手方向軸」を定義できる。
(エ)引用発明の「複合シート材(1)」は「多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)」と「平坦シート材(4)」が積層されているから、立体構造のある積層体であり、「三次元積層体」といえる。そうすると、引用発明の「透液性の複合シート材(1)」は本件補正発明の「液体透過性の三次元積層体」に相当する、
(オ)引用発明の「バックシート(33)」は、液体不透過性かどうかはさておき、本件補正発明の「液体不透過性のバックシート」と対比して、少なくとも「バックシート」である限りにおいて一致する。
(カ)引用発明の「表面シート(29)」は「複合シート材(1)」である。また、引用発明の「吸収体(28)」は本件補正発明の「吸収性コア」に相当する。そうすると、引用発明における「表面シート(29)とバックシート(33)の間に配置されている吸収体(28)」は、本件補正発明における「前記三次元積層体と前記バックシートとの中間に少なくとも部分的に位置付けられた吸収性コア」に相当する。
(キ)引用発明の「立体シート材(2)」は本件補正発明の「第1の基材」に相当する。ここで、坪量とは、シート状の物体が有する物性値であり、引用発明の「立体シート材(2)」も何らかの値の坪量があることは明らかであるから、引用発明の「立体シート材(2)」の坪量は、本件補正発明の「第1の坪量」に相当する。また、「立体シート材(2)」の「左右方向」の幅は、本件補正発明における「第1の横方向幅」に相当する。そうすると、引用発明における「前記複合シート材(1)が、左右方向に幅があり、多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)」を備えるという事項は、本件補正発明における「前記三次元積層体が、前記横方向軸に平行な方向に取られた、第1の坪量及び第1の横方向幅を有する第1の基材」を含む事項に相当する。
(ク)引用発明の「平坦シート材(4)」は本件補正発明の「第2の基材」に相当する。ここで、坪量とは、シート状の物体が有する物性値であり、引用発明の「平坦シート材(4)」も何らかの値の坪量があることは明らかであるから、引用発明の「平坦シート材(4)」の坪量は、本件補正発明の「第2の坪量」に相当する。また、「平坦シート材(4)」の「左右方向」の幅は、本件補正発明における「第2の横方向幅」に相当する。そうすると、引用発明における「前記左右方向に幅があり、そのような凸部を備えていない平坦シート材(4)」を備えるという事項は、本件補正発明における「前記三次元積層体が、」「前記横方向軸に平行な前記方向に取られた、第2の坪量及び第2の横方向幅を有する第2の基材」を含む事項に相当する。
(ケ)引用発明において「左右方向に幅があり、多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)と、これに積層され、前記左右方向に幅があり、そのような凸部を備えていない平坦シート材(4)とを備え、前記左右方向において、立体シート材(2)よりも平坦シート材(4)を広幅に形成してあることで、この複合シート材(1)は、両側縁に凸部が形成されていない平坦領域(6)を備えるが、この平坦領域(6)は平坦シート材(4)のみで形成され」ている事項は、「立体シート材(2)」と「平坦シート材(4)」が積層されており、「前記左右方向」で「立体シート材(2)よりも平坦シート材(4)を広幅に形成してある」から、本件補正発明において「第2の基材」が「前記第2の横方向幅は、前記第1の横方向幅よりも大きく、前記第1及び第2の基材は、少なくとも部分的に重なり合って、前記第1の基材と前記第2の基材との間に重なり合う区域を形成する」事項に相当する。
(コ)引用発明の「凸部(3)」は本件補正発明の「三次元要素」に相当する。ここで、引用発明の「複合シート材(1)」は「多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)」と「そのような凸部を備えていない平坦シート材(4)」で構成されるから、「凸部(3)」は「立体シート材(2)」にのみ形成されている。また、引用発明の「平坦シート材(4)」は「平坦」であるから、本件補正発明の「概ね平面状」なものであるといえる。そうすると、引用発明における「多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)と、これに積層され、前記左右方向に幅があり、そのような凸部を備えていない平坦シート材(4)とを備え」という事項での「凸部(3)」は、本件補正発明における「前記第1の基材にのみ形成された三次元要素であって、前記第2の基材が概ね平面状である、三次元要素」に相当する。
(サ)引用発明の「この立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、上記の凸部(3)から離間した位置に形成されている接合部(5)で、圧接するとともに加熱され、溶着により互いに接合されて一体となって」いるという事項から、引用発明における「接合部(5)」は「溶着」によるものであり、「立体シート材(2)と平坦シート材(4)」とが積層されている部分に存在するといえる。そうすると、引用発明における「接合部(5)」は、本件補正発明における「溶接部」に相当するから、引用発明における「前記複合シート材(1)が、」「この立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、上記の凸部(3)から離間した位置に形成されている接合部(5)で、圧接するとともに加熱され、溶着により互いに接合されて一体となって」いる事項は、本件補正発明における「前記三次元積層体が、」「前記重なり合う区域において前記第1及び第2の基材に形成され、前記第1及び第2の基材を接合する、複数の溶接部と、を含む」事項に相当する。
(シ)引用発明における「複合シート材(1)を貫通する貫通孔(8)」は、「上記の接合部(5)の一部」に設けられているものであり、「接合部(5)」は「立体シート材(2)と平坦シート材(4)」とが積層されている部分に存在するから、「平坦シート材(4)のみで形成され」ている「平坦領域(6)」には、接合部(5)は存在せず、貫通孔(8)も存在しない。ここで、引用発明における「立体シート材(2)と平坦シート材(4)」とが積層されている部分は、本件補正発明における「重なり合う区域」に相当し、引用発明における「平坦領域(6)」は本件補正発明における「前記重なり合う区域の外側の第2の基板の領域」に相当するから、引用発明における「複合シート材(1)を貫通する貫通孔(8)」は本件補正発明における「前記重なり合う区域において前記第1及び第2の基材に定義された孔であって、前記重なり合う区域の外側の第2の基板の領域には存在しない、孔」に相当する。
(ス)引用発明の「使い捨ておむつ(27)」における「吸収体(28)の表面シート(29)」は本件補正発明の「前記吸収性物品のトップシート」に相当するから、引用発明において「透液性の複合シート材(1)」が「吸収体(28)の表面シート(29)として用いられ」ている事項は、本件補正発明において「前記三次元積層体が、前記吸収性物品のトップシートの一部分を形成し」ている事項に相当する。
(セ)引用発明の「立体シート材(2)」と「平坦シート材(4)」はそれぞれ、何らかの材料で形成されているから、引用発明の「立体シート材(2)」と「平坦シート材(4)」を構成するそれぞれの材料は、本件補正発明における「第1の材料」と「第2の材料」に相当する。そうすると、引用発明における「この立体シート材(2)と平坦シート材(4)とは互いに異なる材質」という事項は、本件補正発明における「前記第1の基材が、第1の材料を含み、前記第2の基材が、第2の材料を含み、前記第1の材料が、前記第2の材料とは異なるもの」という事項に相当する。
(ソ)引用発明における「平坦領域(6)」は本件補正発明における「前記重なり合う区域の外側の第2の基板の領域」に相当するから、引用発明における「凸部が形成されていない平坦領域(6)」
は本件補正発明における「前記重なり合う区域の外側の前記第2の基材の区域が、前記三次元要素を含まないもの」に相当する。
(タ)引用発明の「接合部(5)」は、「上記の立体シート材と平坦シート材」を「圧接するとともに加熱され、溶着により互いに接合されて一体と」している箇所であるから、「圧接」されている領域を含んでいる。そして、「圧接」とは部材を圧縮して接合することを意味し、引用発明では「前記複合シート材(1)」において「立体シート材と平坦シート材」が圧縮して接合されているといえるから、引用発明の「圧接」されている領域は、本件補正発明の「前記三次元積層体が、前記第1の基材の圧縮領域」に相当する。
(チ)引用発明の「上記の凸部(3)から離間した位置に形成されている接合部(5)」という事項を踏まえると、引用発明の「圧接」されている領域は、複数の凸部(3)の間に形成されることとなるから、引用発明の「圧接」されている領域も、本件補正発明の「前記三次元要素のうちの少なくともいくつかの中に形成され」ている「前記圧縮領域」であるといえる。また、引用発明の「上記の接合部(5)の一部には、複合シート材(1)を貫通する貫通孔(8)が形成してあり、貫通孔は、圧接の際の圧力を高めたり、圧接用突起の先端に小さな突起を形成したりして形成してもよい」という事項から、引用発明は、貫通孔(8)の外周に「接合部(5)」の「圧接」されている領域があるといえるから、引用発明の「圧接」されている領域も、本件補正発明の「前記孔のうちの少なくともいくつかの外周の周りに少なくとも部分的に形成されている」「前記圧縮領域」であるといえる。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「 吸収性物品であって、
横方向軸と、
前記横方向軸に対して垂直に延在する長手方向軸と、
液体透過性の三次元積層体と、
バックシートと、
前記三次元積層体と前記バックシートとの中間に少なくとも部分的に位置付けられた吸収性コアと、を備え、
前記三次元積層体が、
前記横方向軸に平行な方向に取られた、第1の坪量及び第1の横方向幅を有する第1の基材と、
前記横方向軸に平行な前記方向に取られた、第2の坪量及び第2の横方向幅を有する第2の基材であって、前記第2の横方向幅は、前記第1の横方向幅よりも大きく、前記第1及び第2の基材は、少なくとも部分的に重なり合って、前記第1の基材と前記第2の基材との間に重なり合う区域を形成する、第2の基材と、
前記第1の基材にのみ形成された三次元要素であって、前記第2の基材が概ね平面状である、三次元要素と、
前記重なり合う区域において前記第1及び第2の基材に定義された孔であって、前記重なり合う区域の外側の第2の基板の領域には存在しない、孔と、
前記重なり合う区域において前記第1及び第2の基材に形成され、前記第1及び第2の基材を接合する、複数の溶接部と、を含むものであり、
前記三次元積層体が、前記吸収性物品のトップシートの一部分を形成し、
前記第1の基材が、第1の材料を含み、前記第2の基材が、第2の材料を含み、前記第1の材料が、前記第2の材料とは異なるものであり、
前記重なり合う区域の外側の前記第2の基材の区域が、前記三次元要素を含まないものであり、
前記三次元積層体が、前記第1の基材の圧縮領域を含み、前記圧縮領域が、前記三次元要素のうちの少なくともいくつかの中に形成され、又は前記孔のうちの少なくともいくつかの外周の周りに少なくとも部分的に形成されている、吸収性物品。」
<相違点1>
バックシートに関し、本件補正発明は「液体不透過性」であるのに対し、引用発明は「液体不透過性」であるかどうか明らかでない点。
<相違点2>
本件補正発明は「前記第1の基材が、疎水性であり、前記第2の基材が、親水性であるか又は前記第1の基材よりも疎水性が低いものであ」るのに対し、引用発明は「立体シート材(2)」と「平坦シート材(4)」のそれぞれについて、親水性か疎水性か明らかでなく、また、「立体シート材(2)」に対する「平坦シート材(4)」の疎水性の高低についても明らかでない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
使い捨ておむつにおいて、バックシートを液体不透過性のものとすることは、例示するまでもなく従来から当業者にとって周知の技術的事項(以下「周知技術1」という。)であって、使い捨ておむつにおいて一般的に用いられている事項である。
そうすると、引用発明のバックシートも液体不透過性とし、引用発明が上記相違点1に係る本件補正発明の事項を備えたものとすることは、上記周知技術1を踏まえると、当業者が容易になし得た事項である。
イ 相違点2について
引用例2には、引用例2技術である「使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートとして用いられる立体シート10であって、
立体シート10は、互いに積層された第1不織布1及び第2不織布2が部分的に熱融着されてシート形成用融着部3が形成され、第1不織布1が、シート形成用融着部3で囲まれた非融着部において第2不織布2から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部4を多数形成していることで、第2不織布2側の面がほぼ平坦であり、第1不織布1側に起伏の大きな凹凸が形成されており、
第1不織布1は、立体シート10を、吸収性物品の表面シートとして用いたときに、着用者の肌側に向けられる面(肌対向面)を形成するようになり、第2不織布2は、前記吸収性物品を構成する収体体側に向けられる面(非肌対向面)を形成する、立体シート10において、
第2不織布2は、その親水度が、立体シート10を構成する第1不織布1の親水度よりも高いものとする技術。」が記載されている。
ここで「ほぼ平坦」である「第2不織布2」の「親水度」は、「起伏の大きな凹凸が形成されて」いる「第1不織布1の親水度」よりも高いから、換言すると、引用例2技術において「第2不織布2」は「第1不織布1」よりも疎水性が低い、といえる。
また、おむつ等の吸収性物品の表面シートにおいて、肌に接する面を疎水性のものとすることは、例示するまでもなく当業者にとって周知の技術的事項(以下「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明と引用例2技術とは、「使い捨ておむつの表面シート」という同一の技術分野に属し、当該表面シートとして、多数の凸部を備える立体シート材とそのような凸部を備えていない平坦シート材を積層した複合シート材を用い、当該複合シート材における平坦シート材を多数の凸部を備える立体シート材の吸収体(28)側(非肌対向面)に配置するという構成においても共通するから、引用発明において明らかでない「立体シート材」と「平坦シート材」の疎水性について、引用例2技術を適用することは当業者が容易になし得た事項である。ここで、第2不織布2よりも第1不織布1を疎水性が高いものとする引用例2技術を適用するにあたり、上記周知技術2を踏まえ、第1不織布1を疎水性のものとすることで、上記相違点2に係る本件補正発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項である。
ウ 本件補正発明の効果について
上記相違点1,2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2技術、上記周知技術1及び上記周知技術2から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 請求人の主張について
(ア)請求人は審判請求書の【請求の理由】(3)(c)において「しかしながら、この引用文献1(特に、段落0026-0054、図1-9)では、前記三次元積層体が、前記吸収性物品のトップシートの一部分を形成し、前記第1の基材が、疎水性であり、前記第2の基材が、親水性であるか又は前記第1の基材よりも疎水性が低いものであり、前記第1の基材が、第1の材料を含み、前記第2の基材が、第2の材料を含み、前記第1の材料が、前記第2の材料とは異なるものであり、前記重なり合う区域の外側の前記第2の基材の区域が、前記三次元要素を含まないものであり、前記三次元積層体が、前記第1の基材の圧縮領域を含み、前記圧縮領域が、前記三次元要素のうちの少なくともいくつかの中に形成され、又は前記孔のうちの少なくともいくつかの外周の周りに少なくとも部分的に形成されていることについての記載および示唆すらされていない。」と主張する。
しかしながら、上記主張の下線部については、引用例1に記載されており、引用発明が備える事項であるし、第1の基材と第2の基材との疎水性の高低についても、上記イのとおり引用例2技術を踏まえると、当業者が容易になし得た事項である。
(イ)請求人は、令和5年7月14日に提出した上申書【上申の内容】(2)において「さらに、本件出願人は、本件出願人は、前置報告書で指摘された点に関して、令和5年3月28日付けの手続き補正書に記載の特許請求の範囲に対して、以下の特許請求の範囲の補正の準備がある。」とし、本件補正発明の限定事項に「・・・ものであり、
前記トップシートは、前記吸収性物品の、着用者に直接接触する部分であり、
前記トップシートの少なくとも一部分又はその全部は液体透過性であり、
前記第1の基材が、前記吸収性物品の前記着用者に面する表面の一部分を形成する」という事項を加える予定である旨、主張する。
しかしながら、引用発明の「表面シート(29)」は「トップシート」であり、「透液性の複合シート材(1)」でもある。また、「透液性の複合シート材(1)」である「表面シート(29)」は、引用例1の図5からも明らかなように「吸収性物品の、着用者に直接接触する部分」であり、ここで、引用発明の「複合シート材(1)」の構成要素である「立体シート材(2)」は着用者に接触する側にある。そうすると、上申書の「本願の補正予定の特許請求の範囲」の請求項1に係る発明についても、当業者が容易に想到し得たものである。
オ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、上記引用例2技術、上記周知技術1及び上記周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年3月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年9月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)【請求項1】に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2014/084066号
引用文献2:特開2010-133071号公報
引用文献3:国際公開第2015/098373号
3 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献3(上記第2[理由]2における引用例2)の記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正後発明から、「前記第1の基材の圧縮領域を含み、前記圧縮領域が、前記三次元要素のうちの少なくともいくつかの中に形成され、又は前記孔のうちの少なくともいくつかの外周の周りに少なくとも部分的に形成されている」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正後発明が、前記第2[理由]2(3)~(4)に記載したとおり、引用発明、上記引用例2技術、上記周知技術1及び上記周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、上記引用例2技術、上記周知技術1及び上記周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-005031