特許拒絶査定不服審判
2023-004402
画像形成装置
- 審判番号
- 2023-004402
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-234304
- 請求日
- 2023年03月15日
- 審決日
- 2024年05月22日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コニカミノルタ株式会社
- 【請求人代理人】IBC一番町弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 桐山 愛世
- 分類
- P18 .121-Z (G03G) / P18 .575-Z (G03G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-234304「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月24日出願公開、特開2019-101314〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月6日の出願であって、令和3年8月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年10月27日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年2月16日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年4月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月19日付けで拒絶理由(最後)が通知され、これに対して、同年9月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月9日付けで同年9月26日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、令和5年3月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和5年3月15日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和5年3月15日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和4年4月22日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至5を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至4へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーを使用して用紙にトナー画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された前記トナー画像を前記用紙に定着する定着装置と、を有し、
前記トナー画像のトナー層は結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記定着装置は、
無端状の定着ベルトと、
回転可能に構成された加圧ローラーと、
前記定着ベルトを挟んで前記加圧ローラーに対向して配置され、前記加圧ローラーとの間に用紙を搬送する1つの定着ニップ部を形成する押し圧部材と、を有し、
前記定着ニップ部の通紙方向の圧力分布が、通紙方向の入口側において最大となるように設定され、前記用紙に定着される画像の光沢が強化される、画像形成装置。
【請求項2】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、
貯蔵弾性率が30℃にて1.0×108Pa以上、80℃にて1.0×105Pa以下である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙の搬送速度は、300mm/s以上である、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着ニップ部の通紙方向に対して、前記圧力分布を変化させる圧力調整機構をさらに有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記圧力調整機構は、前記用紙に定着される画像の光沢を強化するため、
前記押し圧部材と前記加圧ローラーとの間の相対的な位置関係、または前記押し圧部材の前記加圧ローラーに対する姿勢を変化させることにより、前記押し圧部材と前記加圧ローラーとの間の押圧力が、前記定着ニップ部の通紙方向の入口側において最大となるように設定する、請求項4に記載の画像形成装置。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーを使用して用紙にトナー画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された前記トナー画像を前記用紙に定着する定着装置と、を有し、
前記トナー画像のトナー層は結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記定着装置は、
無端状の定着ベルトと、
回転可能に構成された加圧ローラーと、
前記定着ベルトを挟んで前記加圧ローラーに対向して配置され、前記加圧ローラーとの間に用紙を搬送する1つの定着ニップ部を形成する押し圧部材と、を有し、
前記用紙の搬送速度は、400mm/s以上であり、
前記定着ニップ部の通紙方向の圧力分布が、通紙方向の入口側において最大となるように設定され、前記用紙に定着される画像の光沢が強化される、画像形成装置。
【請求項2】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、
貯蔵弾性率が30℃にて1.0×108Pa以上、80℃にて1.0×105Pa以下である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着ニップ部の通紙方向に対して、前記圧力分布を変化させる圧力調整機構をさらに有する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記圧力調整機構は、前記用紙に定着される画像の光沢を強化するため、
前記押し圧部材と前記加圧ローラーとの間の相対的な位置関係、または前記押し圧部材の前記加圧ローラーに対する姿勢を変化させることにより、前記押し圧部材と前記加圧ローラーとの間の押圧力が、前記定着ニップ部の通紙方向の入口側において最大となるように設定する、請求項3に記載の画像形成装置。」
(3)補正事項
上記(1)及び(2)によれば、本件補正は、
ア 本件補正前の請求項1の「画像形成装置」の発明特定事項である「定着装置」について、「用紙の搬送速度は、400mm/s以上」と、用紙の搬送速度を特定する補正(以下「補正事項1」という。)、
イ 本件補正前の請求項3を削除し、請求項3の削除に伴い、本件補正前の請求項4以降の項番を1つずつ繰り上げるとともに、引用する請求項の項番を整理する補正(以下「補正事項2」という。)、
からなるものである。
2 補正の適否について
(1)補正事項1について
ア 特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明瞭でない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
イ そこで、補正事項1について、以下、検討する。
ウ 補正事項1は、定着装置における「用紙の搬送速度」を「400mm/s以上」と限定するものである。
エ そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
オ そうすると、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
カ また、補正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0079】に「システム速度(用紙搬送速度)415mm/sで通紙してトナー画像を定着し」との記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(2)補正事項2について
ア 補正事項2は、本件補正前の請求項3を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的とするものに該当する。
イ また、本件補正前の請求項4以降の項番を1つずつ繰り上げるとともに、引用する請求項の項番を整理する補正は、同法同条同項第4号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
ウ また、補正事項2は、上記アのとおり、請求項の削除を目的とするとともに、請求項の削除に伴う請求項の項番を繰り上げるとともに、引用する請求項の項番を整理するものであって、新規事項を追加するものではないことは明らかであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
上記2(1)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものを含むものであるので、本件補正後の請求項1に係る発明(令和5年3月15日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】乃至【請求項4】(以下、それぞれ「本件補正発明1」乃至「本件補正発明4」という。))における本件補正発明1が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正発明1は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載された事項により特定されるものと認められる。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前である平成26年3月13日に頒布された刊行物である特開2014-44257号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。以下、同様。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、トナー定着後の記録媒体の下地とトナーとのコントラスト差を抑制することができる定着装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。」
ウ 「【0019】
[画像形成装置の全体構成]
図1は、本実施形態に係る画像形成装置10を正面側から見た全体構成を示す概略図である。この図に示される如く、画像形成装置10は、電子写真方式により記録媒体の一例としての記録用紙Pに画像を形成する画像形成部12と、記録用紙Pを搬送する媒体搬送部50と、画像が形成された記録用紙Pに対する後処理等を行う後処理部60とを含んで構成されている。さらに、画像形成装置10は、上記各部の制御を行う制御部70、並びに制御部70を含む上記各部に電力を供給する電源部80を含んで構成されている。
【0020】
<画像形成部の構成>
図2に示すように、画像形成部12は、トナー画像を形成するトナー画像形成部20と、トナー画像形成部20で形成された画像を記録用紙Pに転写する転写装置30と、記録用紙Pに転写されたトナー画像を記録用紙Pに定着する定着装置100とを含んで構成されている。トナー画像形成部20は、潜像(静電潜像)を保持する像保持部材の一例である感光体21と、帯電器22と、露光装置23と、現像装置24と、清掃装置25とを含んで構成されている。
…
【0027】
詳細には、トナーTは、例えば、結着樹脂、着色剤、及び必要に応じて離型剤などの他の添加剤を含むトナー粒子と、必要に応じて外添剤と、を含んで構成される。なお、本実施形態では、一例として、現像剤GがトナーT及びキャリア(図示省略)を含む2成分現像剤を用いているが、キャリアは現像工程で回収され定着工程で用いられないので、キャリアについての説明を省略する。
【0028】
結着樹脂としては、特に制限はないが、スチレン類(例えばスチレン、クロロスチレンなど)、モノオレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレンなど)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなど)、α?メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシルなど)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテルなど)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン)などの単独重合体および共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂などが挙げられる。」
エ 「【0053】
[要部構成]
図4に示すように、定着装置100は、後述する定着回転体の一例としての定着ベルト112を有する定着ベルトモジュール102と、定着ベルト112の外側に設けられた外部ロール104と、定着ベルト112とでトナーT及び記録用紙Pを挟んで加圧する加圧回転体の一例としての加圧ロール106と、記録用紙Pの出口側の圧力が入口側の圧力以下となるように定着ベルト112を内側から支持する支持部の一例としてのパッド部材114とを含んで構成されている。
【0054】
また、定着装置100は、定着ベルト112と加圧ロール106とが接触して、接触部の一例としての定着ニップNFを形成している。本実施形態では、定着ニップNFは、作用する圧力(加圧力)が0[Pa]よりも大きい範囲である。そして、定着ニップNFにおける入口から出口までの幅はW(図5参照)となっている。さらに、定着装置100は、定着ベルト112を加熱するハロゲンランプ108と、定着ニップNFを通過した記録用紙Pの先端を定着ベルト112から剥がすための剥離パッド機構109とを含んで構成されている。
…
【0057】
定着ベルト112は、記録用紙Pの搬送方向に直交する装置奥行き方向の両側に開口する環状(無端状)を成している。そして、定着ベルト112は、パッド部材114、複数のロール116、及び外部ロール104に巻き掛けられて定められた姿勢とされ、該姿勢を維持したまま(該姿勢に沿った周回軌道上を)図4に示す矢印R方向に周回する。なお、定着ベルト112と記録用紙Pの画像形成面との摩擦係数をμとする。
…
【0064】
加圧ロール106は、一例として、アルミニウム製の円柱状のロール本体106Aの外周に、シリコーンゴム製の弾性体層106Bが被覆されて構成されている。図示は省略するが、弾性体層106Bの外周には、その外周面に膜厚100μmのフッ素系樹脂などより成る剥離層が形成されている。そして、加圧ロール106は、図示しない駆動源によって回転されることで、定着ベルト112に周回のための駆動力F(図6(A)参照)を付与する駆動ロールとして機能する。」
オ 「【0072】
<加圧ロールの位置切替機構>
上記構成の定着装置100は、後述する切替機構140によって、定着ベルトモジュール102に対して加圧ロール106が接触、離間可能に構成されている。具体的には、加圧ロール106は、図5に示される如く定着ベルト112に接触して定着ニップNFを形成する接触位置と、図示を省略するが、定着ベルト112から離間する離間位置とを切り替え得る構成とされている。
【0073】
定着装置100は、装置フレーム130を備えている。装置フレーム130は、固定側フレーム132と、該固定側フレーム132に対し相対変位される可動フレーム134とを含んで構成されている。本実施形態では、可動フレーム134は、固定側フレーム132に対し、装置奥行き方向を軸方向とする支軸136周りに相対回転可能とされている。
【0074】
固定側フレーム132は、定着ベルトモジュール102を構成するパッド部材114を固定的に支持すると共に、各ロール116をそれぞれの軸周りに回転可能に支持している。これにより、定着ベルトモジュール102は、定着ベルト112の周回の動作及び各ロール116の回転動作を除いて、固定側フレーム132に対して相対変位しない構成とされている。
【0075】
一方、加圧ロール106は、可動フレーム134に回転可能に支持されている。そして、加圧ロール106は、可動フレーム134が固定側フレーム132に対し支軸136回りに回転することで、その位置が図5に示される接触位置と、離間位置(図示省略)との何れかに切り替えられるようになっている。」
カ 「【0083】
また、定着装置100では、可動フレーム134の荷重入力部138側が支軸136回りに上方に回転されることにより、加圧ロール106が、パッド114Bに対して定着ニップNFの入口側、出口側の順で接触する。これにより、加圧ロール106の弾性体層106B(図4参照)が弾性変形し、定着ニップNFにおける記録用紙Pの出口側の圧力が入口側の圧力以下となっている。」
上記ア乃至カの記載事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「記録用紙Pに転写されたトナー画像を記録用紙Pに定着する定着装置100を含み、記録用紙Pに画像を形成する画像形成部12を含む画像形成装置10であって、
定着装置100は、環状(無端状)を成している定着ベルト112を有する定着ベルトモジュール102と、定着ベルト112の外側に設けられた外部ロール104と、定着ベルト112とでポリエステル樹脂からなる結着樹脂を含むトナーT及び記録用紙Pを挟んで加圧する回転加圧ロール106と、記録用紙Pの出口側の圧力が入口側の圧力以下となるように定着ベルト112を内側から支持するパッド部材114とから構成され、定着装置100は、定着ベルト112と加圧ロール106とが接触して、定着ニップNFを形成しており、
定着装置100は、装置フレーム130を備え、装置フレーム130は、固定側フレーム132と、該固定側フレーム132に対し相対変位される可動フレーム134とから構成され、可動フレーム134は、固定側フレーム132に対し、装置奥行き方向を軸方向とする支軸136周りに相対回転可能とされており、可動フレーム134の荷重入力部138側が支軸136回りに上方に回転されることにより、加圧ロール106が、パッド114Bに対して定着ニップNFの入口側、出口側の順で接触することにより、加圧ロール106の弾性体層106Bが弾性変形し、定着ニップNFにおける記録用紙Pの出口側の圧力が入口側の圧力以下となる、画像形成装置10。」
(3)対比
本件補正発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ポリエステル樹脂からなる結着樹脂を含むトナーT」、「トナー画像」、「記録用紙Pに画像を形成する画像形成部12」、「トナー画像を記録用紙Pに定着する定着装置100」、「環状(無端状)を成している定着ベルト112」、「回転加圧ロール106」、「パッド部材114」、「定着ニップNF」及び「画像形成装置10」は、それぞれ、本件補正発明1の「結晶性ポリエステル樹脂を含むトナー」、「トナー画像」、「用紙に画像を形成する画像形成部」、「トナー画像を用紙に定着する定着装置」、「無端状の定着ベルト」、「回転可能に構成された加圧ローラー」、「押し圧部材」、「定着ニップ部」及び「画像形成装置」に相当する。
イ 引用発明の「画像形成部12」は、記録用紙Pに画像を形成するものであるところからすると、引用発明の「トナー画像」は、「画像形成部によって形成された」ものといえる。
ウ 引用発明の「トナーT」は「ポリエステル樹脂からなる結着樹脂を含む」ものであるから、引用発明の「トナー画像」のトナー層がポリエステル樹脂を含んでいることは明らかである。
エ 引用発明の「パッド部材114」は、定着ベルト112を内側から支持するものであるところ、定着ベルト112の外側には、定着ベルト112とでトナーT及び記録用紙Pを挟んで加圧する回転加圧ロール106が設けられ、定着ベルト112と加圧ロール106とが接触して、定着ニップNFを形成しているから、本件補正発明1の「押し圧部材」と引用発明の「パッド部材114」とは、「定着ベルトを挟んで加圧ローラーに対向して配置され、前記加圧ローラーとの間に用紙を搬送する1つの定着ニップ部を形成する」ものとの概念で一致する。
オ 引用発明の「定着ニップNFにおける記録用紙Pの出口側の圧力が入口側の圧力以下とな」っているから、引用発明の「定着ニップNF」は、「通紙方向の圧力分布が、通紙方向の入口側において最大となるように設定され」ているといえる。
そうすると、本件補正発明1と引用発明とは、
[一致点]
「ポリエステル樹脂を含むトナーを使用して用紙にトナー画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された前記トナー画像を前記用紙に定着する定着装置と、を有し、
前記トナー画像のトナー層はポリエステル樹脂を含み、
前記定着装置は、
無端状の定着ベルトと、
回転可能に構成された加圧ローラーと、
前記定着ベルトを挟んで前記加圧ローラーに対向して配置され、前記加圧ローラーとの間に用紙を搬送する1つの定着ニップ部を形成する押し圧部材と、を有し、
前記定着ニップ部の通紙方向の圧力分布が、通紙方向の入口側において最大となるように設定される、画像形成装置。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件補正発明1の「トナー」が、「結晶性」ポリエステル樹脂を含み、「トナー画像のトナー層」が、「結晶性」ポリエステル樹脂を含んでいるのに対し、引用発明の「トナーT」及び「トナー画像」は、ポリエステル樹脂を含んでいるものの、「結晶性」ポリエステル樹脂であるの可否か定かでない点。
[相違点2]
本件補正発明1の「用紙の搬送速度」が、「400mm/s以上」であるのに対し、引用発明の記録用紙Pの搬送速度は、不明な点。
[相違点3]
本件補正発明1の「定着装置」は、定着ニップ部の通紙方向の圧力分布が、通紙方向の入口側において最大となるように設定されることにより、「用紙に定着される画像の光沢が強化される」のに対し、引用発明のトナー画像の光沢については、明記がない点。
(4)判断
上記各相違点について、以下、検討する。
ア [相違点1]について
本件補正発明1は、「画像形成装置」に係る発明であるところ、「トナー」は、「画像形成装置」で使用するものであるものの、「画像形成装置」の構成・作用・機能を特定するものではないから、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
仮に、「トナー」を「画像形成装置」の構成の一部と認めたとしても、優れた定着性(高い定着率)のためにトナーの結着樹脂として結晶性物質を用いることは、原査定の引用文献2(特開2004-12870号公報の【0039】等参照。)に示されているように、当該技術分野において、周知の技術手段(以下「周知技術」という。)である。
そして、当該画像形成装置の定着装置の技術分野において、トナーの定着性は、自明の技術的課題であるから、引用発明においても、当該課題を備えているといえる。
してみると、優れた定着性のために、引用発明のトナーTに含まれるポリエステル樹脂からなる結着樹脂に、前記周知技術を適用し、結晶性のポリエステル樹脂とすることにより、以て相違点1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
イ [相違点2]について
当該技術分野において、「用紙の搬送速度」として、「400mm/s以上」の速度は、一般に採用されている速度であるといえる(例えば、特開2008-225221号公報の【0057】「540mm/sec」及び特開2012-83414号公報の【0042】「480mm/sec」参照。)。
そうすると、引用発明の用紙の搬送速度が明らかでないところ、「用紙の搬送速度」として、「400mm/s以上」の速度は、前述の通り、一般に採用されている速度であるから、引用発明において、記録用紙Pの搬送速度を、「400mm/s以上」とすることは、当業者にとって、何ら困難性のないことである。
ウ [相違点3]について
本願明細書の【0055】~【0067】を参酌すると、「定着される画像の光沢が強化」されるとは、定着ニップ部の通紙方向の圧力分布を、通紙方向の入口側において最大となるように設定することにより、実現されることが理解できる。
そうすると、引用発明は、加圧ロール106が、パッド114Bに対して定着ニップNFの入口側、出口側の順で接触することにより、加圧ロール106の弾性体層106Bが弾性変形し、定着ニップNFにおける記録用紙Pの出口側の圧力が入口側の圧力以下となるものであるから、定着ニップNFにおける圧力分布について、本件補正発明1と同じ、通紙方向の入口側において最大となるように設定されているといえる。
してみると、引用発明においても、定着装置100により定着されるトナー画像は、光沢が強化されることとなることが理解できるから、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。
したがって、本件補正発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるか,少なくとも、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、本件補正発明1の効果も、引用発明及び上記周知技術から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
(5)独立特許要件についての検討のまとめ
以上検討したように、本件補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件補正発明1は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記において検討したように、本件補正発明1は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下された。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年4月22日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーを使用して用紙にトナー画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された前記トナー画像を前記用紙に定着する定着装置と、を有し、
前記トナー画像のトナー層は結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記定着装置は、
無端状の定着ベルトと、
回転可能に構成された加圧ローラーと、
前記定着ベルトを挟んで前記加圧ローラーに対向して配置され、前記加圧ローラーとの間に用紙を搬送する1つの定着ニップ部を形成する押し圧部材と、を有し、
前記定着ニップ部の通紙方向の圧力分布が、通紙方向の入口側において最大となるように設定され、前記用紙に定着される画像の光沢が強化される、画像形成装置。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和4年7月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下のものを含むものである。
1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例(特開2014-44257号公報)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例(特開2014-44257号公報)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用例
令和4年7月19日付けの拒絶理由通知書で引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3(2)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
上記「第2 1(3)」のとおり、本願発明は、本件補正発明1から「前記用紙の搬送速度は、400mm/s以上であり、」との事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 3(3)対比」での検討を勘案すると、両者は、
[一致点]
「ポリエステル樹脂を含むトナーを使用して用紙にトナー画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された前記トナー画像を前記用紙に定着する定着装置と、を有し、
前記トナー画像のトナー層はポリエステル樹脂を含み、
前記定着装置は、
無端状の定着ベルトと、
回転可能に構成された加圧ローラーと、
前記定着ベルトを挟んで前記加圧ローラーに対向して配置され、前記加圧ローラーとの間に用紙を搬送する1つの定着ニップ部を形成する押し圧部材と、を有し、
前記定着ニップ部の通紙方向の圧力分布が、通紙方向の入口側において最大となるように設定される、画像形成装置。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明1の「トナー」が、「結晶性」ポリエステル樹脂を含み、「トナー画像のトナー層」が、「結晶性」ポリエステル樹脂を含んでいるのに対し、引用発明の「トナーT」及び「トナー画像」は、ポリエステル樹脂を含んでいるものの、「結晶性」ポリエステル樹脂であるの可否か定かでない点。
[相違点3]
本願発明1の「定着装置」は、定着ニップ部の通紙方向の圧力分布が、通紙方向の入口側において最大となるように設定されることにより、「用紙に定着される画像の光沢が強化される」のに対し、引用発明のトナー画像の光沢については、明記がない点。
そうすると、上記「第2 3(4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明と引用発明とは実質的な相違点はなく、本願発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているといえるから、本願発明と、引用発明とに差異はないか、すくなくとも、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないものであるか、少なくとも、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-004402