特許拒絶査定不服審判
2024-012105
ドラムカートリッジ
- 審判番号
- 2024-012105
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-158770
- 請求日
- 2024年07月23日
- 審決日
- 2025年07月04日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブラザー工業株式会社
- 【請求人代理人】西田 隆美
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 山本 一
- 分類
- P18 .121-Z (G03G) / P18 .575-Z (G03G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-158770「ドラムカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月11日出願公開、特開2021- 39173〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年8月30日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 5月11日付け:拒絶理由通知
同年 7月10日 :意見書の提出
同年 9月22日付け:拒絶理由通知
令和6年 1月30日 :意見書の提出
同年 4月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月23日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年7月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年7月23日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年7月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
現像カートリッジを装着可能なドラムフレームと、
第1方向に延びる軸について回転可能な感光体ドラムと、
電気的接触面を有するメモリと、
前記電気的接触面と前記ドラムフレームとの間に位置する弾性部材であって、第1状態と、前記電気的接触面に交差する第2方向において前記第1状態よりも短い第2状態と、の間で伸縮可能であり、前記弾性部材が前記第2状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離は、前記弾性部材が前記第1状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離よりも短い、弾性部材と、
を備えることを特徴とする、ドラムカートリッジ。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
現像カートリッジを着脱可能なドラムフレームと、
第1方向に延びる軸について回転可能な感光体ドラムと、
電気的接触面を有するメモリと、
前記電気的接触面と前記ドラムフレームとの間に位置する弾性部材であって、第1状態と、前記電気的接触面に交差する第2方向において前記第1状態よりも短い第2状態と、の間で伸縮可能であり、前記弾性部材が前記第2状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離は、前記弾性部材が前記第1状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離よりも短い、弾性部材と、
を備えることを特徴とする、ドラムカートリッジ。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「現像カートリッジを装着可能なドラムフレーム」について、「現像カートリッジを着脱可能なドラムフレーム」と補正することにより、「ドラムフレーム」が、「現像カートリッジ」を装着することが可能であるものに加え、取り外せることも可能であるものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
イ 本件補正発明の分説
本件補正発明の構成を、後記(3)の対比の議論のために、便宜上次のように構成A~D、Xに分説する。
<本件補正発明の分説>
(構成A)現像カートリッジを着脱可能なドラムフレームと、
(構成B)第1方向に延びる軸について回転可能な感光体ドラムと、
(構成C)電気的接触面を有するメモリと、
(構成D)前記電気的接触面と前記ドラムフレームとの間に位置する弾性部材であって、第1状態と、前記電気的接触面に交差する第2方向において前記第1状態よりも短い第2状態と、の間で伸縮可能であり、前記弾性部材が前記第2状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離は、前記弾性部材が前記第1状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離よりも短い、弾性部材と、
を備えることを特徴とする、
(構成X)ドラムカートリッジ。
(2) 各引用文献等に記録された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-195726号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は、当審において付したものであり、以下同様である。
a 【0001】~【0003】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プロセスカートリッジおよびプロセスカートリッジを着脱可能な画像形成装置に関するものである。
【0002】ここで、画像形成装置としては、例えば電子写真複写機、電子写真プリンター(例えば、LEDプリンター、レーザービームプリンター等)、電子写真ファクシミリ装置および電子写真ワードプロセッサー等が含まれる。
【0003】また、プロセスカートリッジは、帯電手段、現像手段またはクリーニング手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して画像形成装置本体に対して着脱可能とするもの、あるいは、帯電手段、現像手段、クリーニング手段の少なくとも一つと電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して画像形成装置本体に着脱可能とするもの、あるいはさらに、少なくとも現像手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して画像形成装置本体に着脱可能とするものをいう。」
b 【0012】
「【0012】そこで、本発明は、前述した従来技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、プロセスカートリッジの有する記憶手段と画像形成装置本体との電気的接続を安定して行うことのできる画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供することを目的とし、さらに、ユーザーがジャム処理等をする際の操作性を向上させるとともにユーザーの有する静電気によるトラブルの発生(制御部の静電破壊等)を抑えることができる画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供し、また、プロセスカートリッジの駆動時に生じるスラスト方向の動き等による電気接点部の削れや変形を防止することができる画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供することを目的とするものである。」
c 【0028】~【0036】、【図3】
「【0028】(第1の実施例)本発明に基づいて構成されるプロセスカートリッジおよびプロセスカートリッジを着脱可能な画像形成装置について、次いで、プロセスカートリッジの記憶手段および装置本体側の電気接続手段について、図1ないし図7を参照して、説明する。なお、本実施例では、特に電子写真式のレーザービームプリンターを例にとって説明する。
【0029】画像形成装置Aは、図1に示すように、光学系(スキャナ)1から画像情報に基づいたレーザー光像をドラム形状の電子写真感光体(以下、単に感光体ドラムともいう)7に照射してその感光層に潜像を形成し、この潜像を現像剤を用いて現像して現像剤像を形成する。
【0030】そして、前記現像剤像の形成と同期して、記録紙、OHPシート、布等の記録媒体2は、記録媒体カセット3aからピックアップローラ3bや搬送ローラ対3c等により搬送される。プロセスカートリッジBとしてカートリッジ化された画像形成部において感光体ドラム7に形成した現像剤像を装置本体に設けた転写手段としての転写ローラ4に電圧印加することによって記録媒体2に転写する。そして、現像剤像を転写された記録媒体2はガイド板3dでガイドされて定着手段5へと搬送される。この定着手段5は、駆動ローラ5aおよびヒータ5bを内蔵する定着ローラ5cからなり、通過する記録媒体2に熱および圧力を印加して現像剤像を定着する。そして、現像剤像が定着された記録媒体2は、反転搬送径路を通して搬送され、排出ローラ対3eを介して機外の排出トレイ6へ排出される。
【0031】プロセスカートリッジBは、感光体ドラム7と少なくとも1つのプロセス手段を備えたものである。ここで、プロセス手段としては、例えば、電子写真感光体を帯電させる帯電手段(8)、電子写真感光体に形成された潜像を現像する現像手段(10、10a、10b‥)、電子写真感光体表面に残留する現像剤をクリーニングするためのクリーニング手段(11、11a、11b‥)等がある(図3参照)。」
「【図3】
[図:0001426597000001.jpg]
」
「【0032】本実施例のプロセスカートリッジBは、図3に詳細に示すように構成されている。周面に感光層を有する感光体ドラム7を回転させ、その表面を帯電手段である帯電ローラ8への電圧印加によって一様に帯電する。次いで、光学系1からの画像情報光をプロセスカートリッジBに設けた露光開口部9を介して感光体ドラム7に露光して潜像を形成する。そして、この感光体ドラム7に形成された潜像を現像手段(10、10a、10b‥)によって現像剤を用いて現像する。
【0033】現像手段(10、10a、10b‥)は、現像剤収納部10a内の現像剤を現像剤送り部材10bで送り出し、固定磁石を内蔵した現像ローラ10に付与させる。そして、現像ブレード10cによって摩擦帯電電荷を付与した現像剤層を現像ローラ10の表面に形成し、その現像剤を潜像に応じて感光体ドラム7へ転移させることによって現像剤像を形成して可視像化する。
【0034】そして、装置本体Aに設けられた転写ローラ4に現像剤像と逆極性の電圧を印加して現像剤像を記録媒体2に転写した後は、クリーニングブレード11によって感光体ドラム7に残留した現像剤を掻き落とし、掻き落とした現像剤を除去現像剤溜め11aへ集める。
【0035】なお、前述した感光体ドラム7やプロセス手段(8、10、11‥)は、カートリッジ枠体12内に収納保持されている。カートリッジ枠体12は、現像剤を収容する現像剤収納部10aを形成する現像剤収納枠体12aと、現像ローラ10等を保持する現像装置枠体12bと、感光体ドラム7とクリーニング手段を保持しそして除去現像剤溜め11aを形成するクリーニング枠体12cとからなる。また、現像剤収納枠体12aと現像装置枠体12bを溶着等により一体化してこれをクリーニング枠体12cに揺動可能に結合してプロセスカートリッジBを構成している。
【0036】プロセスカートリッジBは、装置本体Aに設けられたカートリッジ装着手段に対して着脱可能に装着される(図1、図5および図6参照)。そして、カートリッジ装着手段は、装置本体Aの筐体に対して軸14aを中心に開閉可能なカートリッジカバー(開閉カバー)14を開ける(図1や図2参照)ことによりアクセス可能な部位に設けられている。カートリッジカバー14を開放した状態でカートリッジ装着部位を斜視図で示す図5において、カートリッジ装着部位の左右両壁面15d、15e(なお、一方の壁面15eは不図示)にカートリッジ装着ガイド部材15が対向して取付けられている(図5には一方側のみを図示する)。そして、この左右の装着ガイド部材15は、それぞれ、プロセスカートリッジBを挿入するときのガイドとなるガイド部15a、15cと、ガイド部15aに連続して形成されプロセスカートリッジBを位置決めするためのカートリッジ位置決め部15bとを備えている。なお、ガイド部15cは、カートリッジ位置決め部15bの近傍付近においては下方に屈曲して配置されている。」
d 【0044】~【0047】、【図4】
「【0044】次に、プロセスカートリッジに搭載する記憶手段について図3および図4を用いて説明する。
【0045】記憶手段(メモリ手段)20は、プロセスカートリッジBのカートリッジ枠体12の外面に取付けられ、特に、図3および図4に示すようにカートリッジ枠体12(クリーニング枠体12c)の上面に取付けられている。この記憶手段20は、図4に明瞭に示すように、具体的にはRAMやROM等のメモリチップ20aとその両側の接点部21a、21bを基板22上に有するものであり、このメモリチップ20aに必要な情報(例えば、プロセスカートリッジのロット番号、プロセス条件などの初期値や使用状況、画像形成装置の特性やプロセス手段の特性など)を予め入力しておき、プロセスカートリッジBを装置本体Aに装着した時に装置本体側と情報をやり取りすることにより、プロセスカートリッジBの使用状況等の状態を装置本体Aの制御基板30に報知し、画像形成動作に役立てたり、操作者にプロセスカートリッジの状態を表示する等の目的のために使用される。また、メモリチップ20aには使用中でも書き込みができるので必要に応じて随時書込みが行われる。
【0046】接点部21a、21bは、メモリチップ20aに情報の読み書きをするために装置本体側の電気接点と接続するためのものであり、金メッキしたリン青銅板を基板22に実装したものである。
【0047】また、プロセスカートリッジBのカートリッジ枠体12の上面において、記憶手段20に隣接してガイドピン23が設けられている(図4参照)。このガイドピン23は、プロセスカートリッジBを装置本体Aに装着する際に、後述する装置本体側の電気接続手段30のスラスト方向の位置を決めるために電気接続手段31のガイドリブ36と係合する位置に配置されている。」
「【図4】
[図:0001426597000002.jpg]
」
e 【0052】~【0055】、【図1】、【図2】
「【0052】次に、プロセスカートリッジ装着時の記憶手段20と装置本体側の電気接続手段31との接続構成について説明する。
【0053】プロセスカートリッジBが装置本体Aに装着されていない時には、図2に示すように、電気接続手段31の回動アーム32は、ばね38の付勢力によって軸部材18aを中心にして反時計方向に付勢されて静止している。これにより、回動アーム32の本体部分32aに保持される接点ホルダ33および電気接点部34a、34bはフレーム部17の上方に退避した状態に保持されている。」
「【図2】
[図:0001426597000003.jpg]
」
「【0054】そして、プロセスカートリッジBが装置本体Aのカートリッジ装着部位に装着される際に、プロセスカートリッジBが挿入されると、そのカートリッジ枠体12(クリーニング枠体12c)の先端部が回動アーム32の下方突出部分32bに当接し、プロセスカートリッジBのさらなる挿入に応じて下方突出部分32bが時計方向に押圧されることにより、電気接続手段31の回動アーム32はばね38の付勢力に抗して時計方向に回動する。そして、プロセスカートリッジBが所定のカートリッジ装着部位に装着されると、電気接続手段31の回動アーム32は、図1に示す位置で静止する。」
「【図1】
[図:0001426597000004.jpg]
」
「【0055】この電気接続手段31の回動アーム32の回動に際して、回動アーム32の本体部分32aに保持されている接点ホルダ33も同時に時計方向に移動する。そして、接点ホルダ33のばね材からなる電気接点部34a、34bがプロセスカートリッジBの記憶手段接点部21a、21bに接触するとともに、接点ホルダ33に形成されている凸部33a、33bがクリーニング枠体12cの上面部に当接する。これにより、接点ホルダ33は図1に示す位置で静止する。ここで、接点ホルダ33を図中下方へ突出する方向に付勢するばね35のばね力は、電気接点部34a、34bのばね力の和に対して大きく設定されているため、接点ホルダ33の凸部33a、33bは、ばね35のばね力によって、クリーニング枠体12cに当接する。これにより、接点ホルダ33の凸部33a、33bがクリーニング枠体12cに直接当接するために、部品の公差による位置のずれが少なく、電気接点部34a、34bと記憶手段接点21a、21bの正確な位置精度と接点圧を得ることが可能である。」
(イ) 引用文献1から読み取れる認定事項
【0032】及び【図3】から、「感光体ドラム7」について次の事項が読み取れる。
「感光体ドラム7が、周面に感光層を有し、軸周りに回転すること。」
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)の記載事項及び前記(イ)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「装置本体Aに設けられたカートリッジ装着手段に対して着脱可能に装着されるプロセスカートリッジBであって、(【0036】)
プロセスカートリッジBは、感光体ドラム7と少なくとも1つのプロセス手段を備えたものであり、ここで、プロセス手段としては、電子写真感光体を帯電させる帯電手段(8)、電子写真感光体に形成された潜像を現像する現像手段(10、10a、10b‥)、電子写真感光体表面に残留する現像剤をクリーニングするためのクリーニング手段(11、11a、11b‥)等があり、(【0031】)
感光体ドラム7やプロセス手段(8、10、11‥)は、カートリッジ枠体12内に収納保持されており、(【0035】)
感光体ドラム7は、周面に感光層を有し、軸周りに回転し、(前記(イ)の認定事項)
記憶手段(メモリ手段)20は、プロセスカートリッジBのカートリッジ枠体12の外面に取付けられ、(【0045】)
記憶手段20は、RAMやROM等のメモリチップ20aとその両側の接点部21a、21bを基板22上に有するものであり、このメモリチップ20aに必要な情報(例えば、プロセスカートリッジのロット番号、プロセス条件などの初期値や使用状況、画像形成装置の特性やプロセス手段の特性など)を予め入力しておき、プロセスカートリッジBを装置本体Aに装着した時に装置本体側と情報をやり取りすることにより、プロセスカートリッジBの使用状況等の状態を装置本体Aの制御基板30に報知し、画像形成動作に役立てたり、操作者にプロセスカートリッジの状態を表示する等の目的のために使用され、(【0045】)
接点部21a、21bは、メモリチップ20aに情報の読み書きをするために装置本体側の電気接点と接続するためのものである、(【0046】)
プロセスカートリッジB。」
イ 引用文献2及び3に記載された事項、周知技術A及びBの認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2017-116826号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
a 【0176】、【図33】
「【0176】
<5-6.第6変形例>
図33は、第6変形例の現像カートリッジ1Fおよびドラムカートリッジ80Fの斜視図である。図33の現像カートリッジ1Fは、ケーシング10F、現像ローラ30F、ICチップアセンブリ60F、および第1カバー45Fを備える。図33の例では、現像カートリッジ1Fが、ドロアユニットではなく、ドラムカートリッジ80Fに対して装着される。ドラムカートリッジ80Fは、1つの現像カートリッジ1Fを保持する1つの現像カートリッジ保持部81Fを有する。現像カートリッジ保持部81Fには、感光ドラム82Fが設けられている。現像カートリッジ1Fがドラムカートリッジ80Fに装着されると、現像カートリッジ1Fの現像ローラ30Fが、感光ドラム82Fに接触する。」
「【図33】
[図:0001426597000005.jpg]
」
b 【0107】、【0151】~【0154】、【図18】~【図22】
「【0107】
<2.ICチップアセンブリについて>
ICチップアセンブリ60は、ケーシング10の第1外表面11に配置される。図6は、ICチップアセンブリ60の分解斜視図である。図7は、ICチップアセンブリ60を第1方向に直交する面で切断した断面図である。図2~図7に示すように、ICチップアセンブリ60は、記憶媒体であるICチップ61と、ICチップ61を保持するホルダ62とを有する。ホルダ62は、ケーシング10の第1方向の側部において、第1カバー45に保持される。ICチップ61には、現像カートリッジ1に関する種々の情報が記録されている。ICチップ61は、電気的接触面611を有する。電気的接触面611は、導体である金属からなる。以下では、電気的接触面611と交差する方向(本実施形態では、電気的接触面611に対して垂直な方向)を「第3方向」と称する。ICチップ61は、ホルダ62の第3方向の外表面に固定される。」
「【0151】
<5-2.第2変形例>
図18は、第2変形例の現像カートリッジ1Bの部分斜視図である。図18の例では、ICチップ61Bの電気的接触面611Bが、第1方向に向けられている。したがって、電気的接触面611Bに直交する第3方向と、第1方向とが、同方向となる。また、図18の例では、ケーシング10BとICチップアセンブリ60Bとの間に、柱状弾性体63Bが設けられている。柱状弾性体63Bには、例えば、第3方向に延びるコイルばねが用いられる。柱状弾性体63Bの第1方向の一端は、ICチップアセンブリ60Bのホルダ62Bに固定される。柱状弾性体63Bの第1方向の他端は、ケーシング10Bの第1外表面に固定される。すなわち、ケーシング10BとICチップアセンブリ60Bとが、柱状弾性体63Bによって連結されている。」
「【図18】
[図:0001426597000006.jpg]
」
「【0152】
図19および図20は、柱状弾性体63Bの変形によるICチップアセンブリ60Bの動きを示した図である。図19に示すように、柱状弾性体63Bは、第3方向に伸縮可能である。柱状弾性体63Bが伸縮すると、ケーシング10Bに対する電気的接触面611Bの第3方向の位置も変化する。また、図20に示すように、柱状弾性体63Bは、第3方向に対して斜めに変形可能である。柱状弾性体63Bが斜めに変形すると、柱状弾性体63Bの一端と他端との相対位置が、第3方向に対して垂直な方向に変化する。」
「【図19】
[図:0001426597000007.jpg]
」
「【図20】
[図:0001426597000008.jpg]
」
「【0153】
図21および図22は、第2変形例の現像カートリッジ1Bを、ドロアユニット90Bに装着するときの様子を示した図である。図21および図22に示すように、第1カバー45Bは、第2方向に間隔をあけて並ぶ第1枠部456Bおよび第2枠部457Bを有する。ICチップアセンブリ60Bおよび柱状弾性体63Bは、第1枠部456Bと第2枠部457Bとの間の空間である収容部452Bに収容される。また、第1カバー45Bは、第1枠部456Bから収容部452Bへ向けて突出する爪部453Bを有する。現像カートリッジ1Bをドロアユニット90Bへの装着する前は、図21のように、ICチップアセンブリ60の一部分が、爪部453Bに接触する。これにより、柱状弾性体63Bが、自然長よりも第3方向に圧縮された状態に維持される。
【0154】
現像カートリッジ1Bがドロアユニット90Bに装着されると、図22のように、ICチップ61Bの電気的接触面611Bが、電気コネクタ913Bに接触する。このとき、柱状弾性体63Bの第3方向の長さは、図21の状態よりも短くなる。したがって、柱状弾性体63Bの反発力によって、電気的接触面611Bと電気コネクタ913Bとの接触状態が維持される。」
「【図21】
[図:0001426597000009.jpg]
」
「【図22】
[図:0001426597000010.jpg]
」
(イ) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2019-144480号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
a 【0035】、【0068】、【図2】、【図8】
「【0035】
<2.プロセスカートリッジについて>
図2は、プロセスカートリッジ3の斜視図である。上述の通り、プロセスカートリッジ3は、現像カートリッジ1と、ドラムカートリッジ2とを有する。現像カートリッジ1は、ドラムカートリッジ2に対して着脱可能である。」
「【図2】
[図:0001426597000011.jpg]
」
「【0068】
<2-2.ドラムカートリッジについて>
図8は、ドラムカートリッジ2の斜視図である。図8に示すように、ドラムカートリッジ2は、現像カートリッジ保持部91と、感光ドラム92とを有する。現像カートリッジ1は、現像カートリッジ保持部91に装着される。感光ドラム92は、第1方向に延びる回転軸について回転可能なドラムである。感光ドラム92は、第2方向におけるドラムカートリッジ2の一端に位置する。現像カートリッジ保持部91に現像カートリッジ1が装着されると、現像ローラ30の外周面が、感光ドラム92の外周面に接触する。」
「【図8】
[図:0001426597000012.jpg]
」
b 【0048】~【0051】、【0071】~【0073】、【図5】
「【0048】
ホルダ60は、ケーシング10の第1方向の一端に位置する。図5は、ホルダ60の分解斜視図である。図6および図7は、ホルダ60を第1方向に直交する面で切断した縦断面図である。図5~図7に示すように、ホルダ60は、第1ホルダ外表面(第1端部)610と第2ホルダ外表面(第2端部)620とを有する。第1ホルダ外表面610は、ホルダ60の第3方向の一端に位置する。第2ホルダ外表面620は、ホルダ60の第3方向の他端に位置する。第1ホルダ外表面610は、第2ホルダ外表面620に対して、第3方向に移動可能である。」
「【図5】
[図:0001426597000013.jpg]
」
「【0049】
図5~図7に示すように、ホルダ60は、第1ホルダ部材61、第2ホルダ部材62、およびコイルばね63を有する。第1ホルダ部材61は、第1ホルダ外表面610を有する。第2ホルダ部材62は、第2ホルダ外表面620を有する。組み立て後のホルダ60において、第1ホルダ外表面610と第2ホルダ外表面620とは、第3方向に離れている。
【0050】
コイルばね63は、第3方向に伸縮可能な弾性部材である。コイルばね63は、第3方向において、第1ホルダ外表面610と第2ホルダ外表面620との間に位置する。コイルばね63は、第1ホルダ外表面610および第2ホルダ外表面620に対して、直接接続されていてもよいし、他の部材を介して間接的に接続されていてもよい。コイルばね63は、図6に示す第1状態と、図7に示す第2状態との間で、第3方向に伸縮可能である。
【0051】
第1状態におけるコイルばね63の第3方向の長さ(以下「第1長さ」と称する)は、第2状態におけるコイルばね63の第3方向の長さ(以下「第2長さ」と称する)よりも長い。コイルばね63が第1長さのときの第1ホルダ外表面610と第2ホルダ外表面620との間の第3方向の距離は、コイルばね63が第2長さのときの第1ホルダ外表面610と第2ホルダ外表面620との間の第3方向の距離よりも長い。また、少なくとも第2長さは、コイルばね63の自然長よりも短い。」
「【0071】
また、画像形成装置100は、本体端子(図示省略)を有する。本体端子は、導体である金属からなる。現像カートリッジ1およびドラムカートリッジ2により構成されるプロセスカートリッジ3が、画像形成装置100に装着されると、ホルダ60は、本体端子と保持プレート93との間に挟まれる。そして、電気的接触面71が、本体端子に接触する。これにより、画像形成装置100の制御部120が、本体端子、電気的接触面71、およびハーネス80を介して、主基板50のメモリ51と電気的に接続される。したがって、制御部120は、メモリ51からの情報の読み出しや、メモリ51への情報の書き込みを行うことが可能となる。
【0072】
画像形成装置100に対するプロセスカートリッジ3の挿抜時には、ケーシング10、ギアカバー42、およびホルダカバー64に対して、ホルダ60が第2方向または第3方向に移動する。これにより、電気的接触面71の第2方向または第3方向の位置を、カートリッジ保持部110の形状に応じて、変化させることができる。その結果、画像形成装置100に対する電気的接触面71の擦れを低減できる。
【0073】
また、画像形成装置100に対してプロセスカートリッジ3が装着されると、コイルばね63は、上述した第2状態となる。すなわち、コイルばね63の第3方向の長さは、第1長さよりも短い第2長さとなる。このように、コイルばね63が収縮することで、本体端子に対する電気的接触面71の擦れが低減される。また、電気的接触面71は、コイルばね63からの反発力により、本体端子へ押し付けられる。これにより、本体端子と電気的接触面71との導通が安定する。」
(ウ) 周知技術Aの認定
前記(ア)a及び前記(イ)aに例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術A」という。)。
<周知技術A>
「感光ドラムを有するドラムカートリッジに、現像カートリッジ保持部を設けて、現像カートリッジを着脱可能にすること。」
(エ) 周知技術Bの認定
前記(ア)b及び前記(イ)bに例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術B」という。)。
<周知技術B>
「カートリッジが、前記カートリッジが有するメモリの電気的接触面と前記カートリッジのフレームとの間に位置する弾性部材を有し、弾性部材は、電気的接触面に交差する伸縮方向において、電気的接触面と、フレームとの間に位置し、弾性部材が縮んだ場合のフレームと電気的接触面との伸縮方向の距離が、弾性部材が伸びた状態の場合のフレームと電気的接触面との伸縮方向の距離よりも短くすることで、画像形成装置に対する電気的接触面の擦れを低減するとともに、電気的接触面との導通を安定させること。」
ウ 引用文献5に記載された事項及び技術常識の認定
(ア) 引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2019-117343号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0005】
また、従来、記憶媒体であるトナーメモリを有するトナーカートリッジが知られている。トナーメモリには、トナーカートリッジに関する種々の情報が記憶される。近年では、画像形成装置において、トナーカートリッジだけではなく、ドラムカートリッジに関しても、多くの情報が扱われる。このため、ドラムカートリッジにも、記憶媒体であるドラムメモリを搭載することが求められている。」
(イ) 技術常識の認定
前記引用文献5に例示されているように、次の事項は技術常識であると認められる。
<技術常識>
「画像形成装置において、トナーカートリッジだけではなく、ドラムカートリッジに関しても、多くの情報が扱われるため、ドラムカートリッジにドラムメモリを搭載すること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xについて
a 引用発明の「プロセスカートリッジB」は、「感光体ドラム7」「を備えたものであ[る]」から、本件補正発明の「ドラムカートリッジ」に相当する。
b したがって、本件補正発明である「ドラムカートリッジ」と引用発明である「プロセスカートリッジB」は、「ドラムカートリッジ」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aについて
a 本件補正発明の「現像カートリッジを着脱可能なドラムフレーム」と引用発明の「カートリッジ枠体12」は、「ドラムフレーム」である点において共通する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「ドラムフレーム」を備える点において共通する。
c 一方、本件補正発明と引用発明は、構成Aに関して、次に示す点において相違する。
本件補正発明においては、
「ドラムフレーム」が、「現像カートリッジを着脱可能」であるのに対して、
引用発明においては、
カートリッジ枠体12が、電子写真感光体に形成された潜像を現像する現像手段(10、10a、10b‥)を着脱可能であるのか不明な点。
(ウ) 構成Bについて
a 引用発明の「軸周りに回転[する]」「感光体ドラム7」は、本件補正発明の「第1方向に延びる軸について回転可能な感光体ドラム」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「第1方向に延びる軸について回転可能な感光体ドラム」を備える点において一致する。
(エ) 構成Cについて
a 引用発明の「記憶手段20」の「接点部21a、21b」は、「基板22上に有する」ところ、この「基板22」の「接点部21a、21b」が設けられた面は、本件補正発明の「電気的接触面」に相当する。
b 前記aを踏まえると、引用発明の「RAMやROM等のメモリチップ20aとその両側の接点部21a、21bを基板22上に有する」「記憶手段20」は、本件補正発明の「電気的接触面を有するメモリ」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、「電気的接触面を有するメモリ」を備える点において一致する。
(オ) 構成Dについて
本件補正発明と引用発明は、構成Dに関して、次に示す点において相違する。
本件補正発明においては、
「前記電気的接触面と前記ドラムフレームとの間に位置する弾性部材であって、第1状態と、前記電気的接触面に交差する第2方向において前記第1状態よりも短い第2状態と、の間で伸縮可能であり、前記弾性部材が前記第2状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離は、前記弾性部材が前記第1状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離よりも短い、弾性部材」を備えているのに対して、
引用発明においては、
記憶手段(メモリ手段)20は、プロセスカートリッジBのカートリッジ枠体12の外面に取付けられているものの、弾性部材を介して取り付けられていない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
(構成A’)ドラムフレームと、
(構成B)第1方向に延びる軸について回転可能な感光体ドラムと、
(構成C)電気的接触面を有するメモリと、を備える
(構成X)ドラムカートリッジ、である点。
(イ) 相違点(構成A、D)
本件補正発明においては、
(構成A)「現像カートリッジを着脱可能なドラムフレーム」と、
(構成D)「前記電気的接触面と前記ドラムフレームとの間に位置する弾性部材であって、第1状態と、前記電気的接触面に交差する第2方向において前記第1状態よりも短い第2状態と、の間で伸縮可能であり、前記弾性部材が前記第2状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離は、前記弾性部材が前記第1状態の場合の前記ドラムフレームと前記電気的接触面との前記第2方向の距離よりも短い、弾性部材」と、
を備えているのに対して、
引用発明においては、
カートリッジ枠体12が、電子写真感光体に形成された潜像を現像する現像手段(10、10a、10b‥)を着脱可能であるのか不明であり、
記憶手段(メモリ手段)20は、プロセスカートリッジBのカートリッジ枠体12の外面に取付けられているものの、弾性部材を介して取り付けられていない点。
(4) 当審の判断
ア 相違点について
前記相違点について検討する。
(ア) プロセスカートリッジの記憶手段について
a(a) 引用発明の「プロセスカートリッジB」においては、「感光体ドラム7と少なくとも1つのプロセス手段を備えたものであり、ここで、プロセス手段としては、電子写真感光体を帯電させる帯電手段(8)、電子写真感光体に形成された潜像を現像する現像手段(10、10a、10b‥)、電子写真感光体表面に残留する現像剤をクリーニングするためのクリーニング手段(11、11a、11b‥)等があり」とされている。
(b) 前記(a)を踏まえると、引用発明の「プロセスカートリッジB」は、「現像手段(10、10a、10b‥)」を含まないものも想定されているから、「感光体ドラム7」は必須の構成であるのに対して、「現像手段(10、10a、10b‥)」は必須の構成ではないと認められる。
b また、前記(2)ウ(イ)において示したとおり、次の事項は技術常識である。
「画像形成装置において、トナーカートリッジだけではなく、ドラムカートリッジに関しても、多くの情報が扱われるため、ドラムカートリッジにドラムメモリを搭載すること。」
c そうすると、引用発明の「プロセスカートリッジBのカートリッジ枠体12の外面に取付けられ[た]」「記憶手段(メモリ手段)20」は、「プロセスカートリッジのロット番号、プロセス条件などの初期値や使用状況、画像形成装置の特性やプロセス手段の特性など」が入力されるものであるところ、前記a及びbを踏まえると、引用発明の「記憶手段(メモリ手段)20」に記憶される情報は、「感光体ドラム7」に関する情報を含むものであると理解される。
(イ) 現像カートリッジを着脱可能なドラムフレームについて
a 前記(2)イ(ウ)において周知技術Aとして示したとおり、次の事項は、本願出願前に周知技術である。
「感光ドラムを有するドラムカートリッジに、現像カートリッジ保持部を設けて、現像カートリッジを着脱可能にすること。」
b そして、前記(ア)aに示したとおり、引用発明の「プロセスカートリッジB」においては、「現像手段(10、10a、10b‥)」は必須の構成でないから、前記周知技術Aを適用して、引用発明の「プロセスカートリッジB」に対して、「現像手段(10、10a、10b‥)」を着脱可能にするための現像カートリッジ保持部(本件補正発明の「ドラムフレーム」に相当。)を備えるようにすることに、格別の困難性があるものではない。
c その場合、前記(ア)cに示したとおり、引用発明の「記憶手段(メモリ手段)20」に記憶される情報は、「感光体ドラム7」に関する情報を含むものであると理解されるから、引用発明の「記憶手段(メモリ手段)20」は、「プロセスカートリッジB」側にも設けられることも明らかである。
(ウ) 電気的接触面とドラムフレームとの間に位置する弾性部材について
a 前記(2)イ(エ)において周知技術Bとして示したとおり、次の事項は、本願出願前に周知技術である。
「カートリッジが、前記カートリッジが有するメモリの電気的接触面と前記カートリッジのフレームとの間に位置する弾性部材を有し、弾性部材は、電気的接触面に交差する伸縮方向において、電気的接触面と、フレームとの間に位置し、弾性部材が縮んだ場合のフレームと電気的接触面との伸縮方向の距離が、弾性部材が伸びた状態の場合のフレームと電気的接触面との伸縮方向の距離よりも短くすることで、画像形成装置に対する電気的接触面の擦れを低減するとともに、電気的接触面との導通を安定させること。」
b 引用発明においても、引用文献1の【0012】に記載があるように、「プロセスカートリッジの駆動時に生じるスラスト方向の動き等による電気接点部の削れや変形を防止する」ことを課題とするものであるから、当該課題を解決するために、前記周知技術Bを適用して、「プロセスカートリッジB」側に設けられる「記憶手段(メモリ手段)20」の「接点部21a、21b」と「プロセスカートリッジBのカートリッジ枠体12の外面」(本件補正発明の「ドラムフレーム」に相当。)の間に、弾性部材を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(エ) 小括
したがって、引用発明において前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由において、概略次の(ア)及び(イ)を主張しているので、以下、検討する。
(ア) 主張1について
a 請求人の主張1の内容
引用発明のような一体式のプロセスカートリッジを、現像カートリッジがドラムカートリッジに着脱可能な分離式のカートリッジに変更するためには、大掛かりな構造の変更が必要である。一つのプロセスカートリッジを現像カートリッジとドラムカートリッジとに分解する必要があり、仮に分解できたとしても、現像カートリッジをドラムカートリッジに着脱するための新たな構造を、現像カートリッジとドラムカートリッジの両方に設ける必要がある。このように、一体式のプロセスカートリッジを分離式のカートリッジに変更することは、当業者にとって、単なる設計変更の範疇を超えた大きな困難を伴うものであり、一体型のプロセスカートリッジが前提の引用発明に、分離式のカートリッジが前提の引用文献2、3に記載の構成を適用することは、当業者にとって容易なこととはいえない。
b 請求人の主張1についての検討
前記主張1について検討する。
前記ア(ア)aにおいて示したとおり、引用発明においては、「プロセスカートリッジB」は、「現像手段(10、10a、10b‥)」を含まないものも想定されている。
そうすると、引用発明においては、「感光体ドラム7」と「現像手段(10、10a、10b‥)」を一体化したものを前提とするものではなく、また前記周知技術Aのように、ドラムカートリッジと現像カートリッジを分離することは周知であったことを踏まえると、引用発明に引用文献2、3に例示される前記周知技術Aを適用することが、当業者にとって、単なる設計変更の範疇を超えた大きな困難を伴うものとまでは認められない。
したがって、請求人の前記主張1は採用できない。
(イ) 主張2について
a 請求人の主張2の内容
引用文献1には、カートリッジのメモリの接点が擦れるという課題に対して、カートリッジのメモリ側ではなく、本体側の接点を移動させることが記載されている。それにも関わらず、引用文献2、3の技術を適用させて、引用発明を本体側の接点ではなくドラムカートリッジの接点を移動させる発明へと変更することは、本願発明を予め知らない当業者が何の後知恵もなく実現できることではない。
b 請求人の主張2についての検討
前記主張2について検討する。
前記(2)イ(エ)において周知技術Bとして示したとおり、カートリッジが有するメモリの電気的接触面と前記カートリッジのフレームとの間に位置する弾性部材を有することで、画像形成装置に対する電気的接触面の擦れを低減することは、本願出願前に周知である。
そうすると、引用発明のように、装置本体側の接点を移動させることだけでなく、前記周知技術Bのように、カートリッジ側の接点を移動させることによっても、前記課題を解決し得ることは当業者にとって明らかであり、かつ、いずれか一方を選択することを妨げる特段の事情がない限り、どちらがより好ましいかを総合的に考慮して、当業者が選択すべき設計的事項に過ぎないから、前記ア(ウ)に示したとおり、引用発明において、前記課題を解決するために、前記周知技術Bを適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の前記主張2は採用できない。
(5) 独立特許要件の判断についてのまとめ
前記(3)及び(4)において検討したとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術A及びBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において発行された、下記引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2003-195726号公報(主たる引用例)
引用文献2.特開2017-116826号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2019-144480号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開平6-67484号公報
引用文献5.特開2019-117343号公報
3 引用発明、周知技術A及びBの認定
引用発明、周知技術A及びBの認定は、前記第2の3(2)ア及びイにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明の「現像カートリッジを装着可能なドラムフレーム」は、本件補正発明の「現像カートリッジを着脱可能なドラムフレーム」から、「現像カートリッジ」を取り外せることが可能であるという限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部をさらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)及び(4)において説示したとおり、引用発明、周知技術A及びBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明、周知技術A及びBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術A及びBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術A及びBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-012105