特許拒絶査定不服審判
2023-000863
トナー供給ローラ
- 審判番号
- 2023-000863
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-191936外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年01月18日
- 審決日
- 2024年04月16日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社イノアックコーポレーション
- 【請求人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G03G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-191936「トナー供給ローラ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月21日出願公開、特開2022- 16656〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月31日(以下、「分割原出願日」という。)に出願した特願2017-70575号の一部を令和3年11月26日に新たな特許出願としたものであって、令和4年7月8日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年9月14日に意見書が提出されたが、同年10月13日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、令和5年1月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年3月14日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本願発明
本願発明は、令和3年11月26日(すなわち、本願出願時)の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
シャフトの外周に筒状のポリウレタンフォームを設けたトナー供給ローラにおいて、
前記筒状のポリウレタンフォームは、外周面に前記ポリウレタンフォームの内部よりもセルが圧縮された状態の被膜を有し、該被膜の表面にはピンホール状の孔が散在し、次の測定方法により測定した通気性の値が0.103~0.40kPaであることを特徴とするトナー供給ローラ。
通気性の測定は、測定用トナー供給ローラにおける筒状のポリウレタンフォームの外径より小の内径を有する円筒状の筒状測定具内に、前記測定用トナー供給ローラを圧入し、前記筒状測定具において正反対に対向する位置に形成されている一組の貫通孔の一方に測定管の一端を接続し、前記測定管の途中に差圧計と流量計を接続し、前記筒状測定具の両端から前記測定用トナー供給ローラの両端までを密封した状態で、前記流量計の値が0.3リッター/minとなるように前記測定管の他端から送風し、前記差圧計で測定した差圧を、前記筒状のポリウレタンフォームの通気性の値とする。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和4年7月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下の通りである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1乃至5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用例一覧>
1.特開2013-231953号公報
2.特開2013-11726号公報
3.特開2012-159676号公報
4.特開2007-333829号公報
5.特開2009-20198号公報
第4 引用例
1 引用例1
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の分割原出願日前である平成25年11月14日に頒布された刊行物である特開2013-231953号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
シャフトの外周に筒状のポリウレタンフォームを設けたトナー供給ローラの製造方法において、
シャフトの外周に製品径より大径の筒状のポリウレタンフォームを設けた中間成形体を形成し、
前記中間成形体のポリウレタンフォームの表面を加熱圧縮して前記ポリウレタンフォームの径を製品径にすることを特徴とするポリウレタンフォームローラの製造方法。
【請求項2】
前記中間成形体のシャフトを回転軸にして前記中間成形体を回転させながら、前記ポリウレタンフォームの表面を加熱圧縮することを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォームローラの製造方法。
【請求項3】
前記中間成形体のポリウレタンフォームが嵌ることが可能な溝を分割面に有する分割成形型を加熱し、
前記分割面の溝に前記中間成形体のポリウレタンフォームを配置して分割成形型で挟み、
前記中間成形体のシャフトを回転軸にして前記中間成形体を回転させながら、前記ポリウレタンフォームの表面を前記分割成形型で加熱圧縮することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンフォームローラの製造方法。
【請求項4】
前記分割面の溝は、長手方向に沿って両側の縁にテーパーが形成され、前記分割面の溝に前記中間成形体のポリウレタンフォームを配置して分割成形型で挟む際に、前記ポリウレタンフォームの表面が前記溝の両側の縁に食い込まないようにしたことを特徴とする請求項3に記載のポリウレタンフォームローラの製造方法。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式画像形成装置におけるトナー供給ローラあるいは帯電ローラに当接されるクリーニング用ポリウレタンフォームローラの製造方法に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、トナー供給性及びトナー掻き取り性が良好なポリウレタンフォームローラを安価に製造できる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、シャフトの外周に筒状のポリウレタンフォームを設けたポリウレタンフォームローラの製造方法において、シャフトの外周に製品径より大径の筒状のポリウレタンフォームを設けた中間成形体を形成し、前記中間成形体のポリウレタンフォームの表面を加熱圧縮して前記ポリウレタンフォームの径を製品径にすることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記中間成形体のシャフトを回転軸にして前記中間成形体を回転させながら、前記ポリウレタンフォームの表面を加熱圧縮することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記中間成形体のポリウレタンフォームが嵌ることが可能な溝を分割面に有する分割成形型を加熱し、前記分割面の溝に前記中間成形体のポリウレタンフォームを配置して分割成形型で挟み、前記中間成形体のシャフトを回転軸にして前記中間成形体を回転させながら、前記ポリウレタンフォームの表面を前記分割成形型で加熱圧縮することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3において、前記分割面の溝は、長手方向に沿って両側の縁にテーパーが形成され、前記分割面の溝に前記中間成形体のポリウレタンフォームを配置して分割成形型で挟む際に、前記ポリウレタンフォームの表面が前記溝の両側の縁に食い込まないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シャフトの外周に製品径より大径の筒状のポリウレタンフォームを設けた中間成形体を形成し、中間成形体のポリウレタンフォームの表面を加熱圧縮してポリウレタンフォームの径を製品径にしているため、次の効果が得られる。
(1)中間成形体のポリウレタンフォームを切削や研磨によって形成した場合でも、表面のケバ状の切り残しを加熱圧縮で無くすことができ、画像上に白い筋を生じないようにできる。
(2)中間成形体のポリウレタンフォームをスラブポリウレタンフォームの切り出し品から形成した場合、前記セルの異方性によって、ポリウレタンフォームの表面に比較的大きめの楕円の凹部を有する箇所と、小さめの真円に近い凹部を有する箇所を生じるが、本発明によれば、ポリウレタンフォームの表面を加熱圧縮によって平滑化することで大きさの異なる凹部の差を大幅に減少でき、トナー供給性及びトナー掻き取り性を良好なものにでき、良好な画像が得られる。
(3)スラブポリウレタンフォームを発泡方向に依拠せずに使用することができるため、歩留まりを向上させることができ、かつ高価な縦型が不要なため、製品コストを低減することができる。
(4)加熱条件と圧縮率の変更により、ローラのポリウレタンフォームの表面硬さを、ポリウレタンフォームローラの使用装置に応じた硬さにできる。
(5)加熱条件と圧縮率の変更により、ローラのポリウレタンフォームの外径を、ポリウレタンフォームローラの使用装置に応じた径にできる。
(6)加熱条件と圧縮率の変更により、ローラのポリウレタンフォーム表面における通気性を調整することができる。
(7)加熱条件と圧縮率の変更により、ローラのポリウレタンフォーム表面のみの特性を変更できるため、トナー掻き取り性の調整が可能である。」
(4)「【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のポリウレタンフォームローラの製造方法の実施形態について説明する。ポリウレタンフォームローラの製造方法は、初期成形体成形工程、中間成形体成形工程、加熱圧縮工程とよりなる、
初期成形体成形工程では、スラブポリウレタンフォームにシャフト挿通孔を形成し、次いでローラ1本分の大きさで切り出した後、スラブポリウレタンフォームのシャフト挿通孔にシャフトを挿通することにより、図1に示す初期成形体11を作製する。符号13はスラブポリウレタンフォーム切り出し品、14はシャフト挿通孔、15は金属製シャフトである。前記シャフト挿通孔14は、シャフト15の外径よりも所定寸法小さく形成し、シャフト15の挿通によってシャフト15がスラブポリウレタンフォーム切り出し品13に固定されるようにする。前記スラブポリウレタンフォームは、密度(JIS K7222:2005)10~350kg/m3のものが好ましい。また、前記スラブポリウレタンフォーム切り出し品13は、製品径(トナー供給ローラの径)よりも大の断面形状、例えば一辺が製品径よりも大の四角形断面形状からなる角柱等で形成される。前記シャフト15の両端部16、17は、少なくとも一方の端部17がDカット断面形状とされている。
【0017】
中間成形体成形工程では、前記初期成形体11における前記スラブポリウレタンフォーム切り出し品13の外周に、図2に示すような切削歯41を用いる切削加工やピーリング加工(図示せず)又は研磨等あるいはそれらの組み合わせ加工を行って、前記スラブポリウレタンフォーム切り出し品13の外径を製品径よりも大の円筒形状からなる図3のポリウレタンフォーム23とし、中間成形体21を形成する。前記中間成形体21におけるポリウレタンフォーム23の外径を製品径よりも大にする程度は、0.2~5mm程度が好ましい。
【0018】
加熱圧縮工程では、前記中間成形体21におけるポリウレタンフォーム23の表面を図4及び図5に示すような分割成形型51で加熱圧縮して前記ポリウレタンフォーム23の径を製品径にする。
前記分割成形型51は、下型53と上型59とよりなり、それぞれの分割面54、60には、前記中間成形体21のポリウレタンフォーム23が嵌ることが可能な溝55、61が形成されている。
【0019】
前記溝55、61は、断面が円弧状に窪んだ曲面からなり、長手方向(前記中間成形体21の長さ方向と同方向)に沿って両側(すなわち溝の幅方向w両側)の縁にテーパー56、62が形成されている。前記テーパー56、62は、前記溝55、61の両側(幅方向w両側)外方へ拡開する傾斜面からなり、加熱圧縮工程において、前記溝55、61に前記中間成形体21のポリウレタンフォーム23を配置して分割成形型51の下型51と上型59で挟む際及び回転時に、前記ポリウレタンフォーム23の表面が前記溝55、61の両側の縁に食い込まないようにするものである。また、前記溝55、61の内面は、フッ素コート等の平滑処理が施され、後述の回転が容易となるように表面摩擦抵抗が小さくされている。
【0020】
前記下型51と上型59には、前記溝55、61を加熱するための加熱手段が設けられている。加熱手段としては、加熱オイル等の熱媒体を循環させる配管、あるいは電熱ヒーター等を挙げることができる。前記溝55、61の加熱温度は、前記ポリウレタンフォーム23の表面を軟化あるいは塑性変形が可能な温度であり、170~280℃、より好ましくは200~250℃とされる。
【0021】
前記下型51はベース71に上向きに設置され、一方前記上型59は前記下型51上方の昇降装置73に下向きに取り付けられ、前記下型51に対して下降接近及び上方離間可能とされている。
また、前記ベース71上には、前記下型51の溝55の延長線上における下型51の一外側にシャフト保持筒部75が設けられ、反対の外側にシャフト回転装置79が設けられている。
前記シャフト保持筒部75には、前記中間成形体21のシャフト15の一端部16を挿入して回転可能に保持するシャフト挿入保持孔が形成されている。
一方、前記シャフト回転装置79は、シャフト係止筒部81と回転駆動部83とよりなる。前記シャフト係止筒部81には、前記中間成形体21のシャフト15におけるDカット断面の端部17を挿入係止可能なDカット断面の孔が形成されている。前記回転駆動部83は、前記シャフト係止筒部81をシャフト15と共に回転させるものであり、駆動モータで構成されている。なお、前記回転駆動部83は前記シャフト係止筒部81と連結された手動回転可能なクランクで構成し、前記クランクを手動で回転させることにより前記シャフト係止筒部81をシャフト15と共に回転させるように構成してもよい。
【0022】
また、前記シャフト保持筒部75と前記シャフト係止筒部81は、少なくとも一方が前記下型51の溝55の長さ方向へスライド等して、前記シャフト保持筒部75と前記シャフト係止筒部81との間の距離を変化可能に構成されている。前記シャフト保持筒部81と前記シャフト係止筒部81に前記シャフト15の両端部16、17を保持した状態では、前記シャフト保持筒部75と前記シャフト係止筒部81との間の距離が小にされ、一方、着脱する際には大にされる。
【0023】
前記シャフト保持筒部75と前記シャフト係止筒部81の高さは、前記シャフト保持筒部75と前記シャフト係止筒部81に前記中間成形体21のシャフト15の両端部16、17を保持した際に、前記中間成形体21のポリウレタンフォーム23の下側表面が、前記下型51の溝55の内面と接触して所定量圧縮されるように設定される。なお、前記シャフト保持筒部75と前記シャフト係止筒部81あるいは前記下型51の少なくとも一方の高さを調節可能にして、トナー供給ローラの製品径に応じて、前記シャフト保持筒部75及び前記シャフト係止筒部81と前記下型51の溝55の内面との距離を調節できるようにしてもよい。
【0024】
前記中間成形体21のポリウレタンフォーム23の加熱圧縮時、まず、前記シャフト保持筒部75に前記中間成形体21のシャフト15の一端部16を挿入すると共にDカット断面の他端部17を前記シャフト係止筒部81に挿入係止し、図5に示すように、前記中間成形体21のポリウレタンフォーム23の下側を前記下型21の溝55内に位置させる。これにより、前記中間成形体21のポリウレタンフォーム23の下側表面を前記下型51の溝55の内面に接触させて圧縮する。前記下型21は、予め前記ポリウレタンフォーム23の軟化あるいは塑性変形可能な温度に加熱しておく。
【0025】
そして、前記回転駆動部83の駆動によって前記中間成形体21を一方向へ回転させながら、図6のように前記上型59を下降させて前記下型51の溝55の内面と前記上型59の溝61の内面とで前記中間成形体21のポリウレタンフォーム23を挟みポリウレタンフォーム23の表面を所定量圧縮する。圧縮程度は、通常0.2~2.0mm程度が好ましい。前記中間成形体21のポリウレタンフォーム23は、回転しながら前記下型51の溝55の内面と前記上型59の溝の内面とで表面が加熱圧縮され、径が製品径まで小さくされた円筒状にされる。
【0026】
所定時間加熱圧縮を続けた後、前記上型59を上昇させて前記分割成形型51を開き、成形品を取り出すことにより、図7に示すポリウレタンフォームローラ100が得られる。符号101は表面が加熱圧縮されたポリウレタンフォームである。
【0027】
このようにして製造されたポリウレタンフォームローラ100は、前記シャフト15の外周のポリウレタンフォーム101の表面が加熱圧縮されて形成されているため、表面にケバ状の切り残しが無く、且つ表面のセルの開口が小さくなり、平滑性が高く、良好なトナー供給性能及びトナー掻き取り性能が得られる。さらに、前記ポリウレタンフォームローラ100は、前記中間成形体21の加熱圧縮工程時に、前記中間成形体21のポリウレタンフォーム23の表面が回転しながら加熱圧縮されることにより、前記ポリウレタンフォーム101の表面に分割成形型によるパーティングラインが形成されないため、複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等に使用した場合に良好な画像を得ることができる。しかも、高価な縦型を使用する必要がないため、ポリウレタンフォームローラを安価に製造することができる。さらに、縦型を使用した場合には脱型が難しくなるが、本発明では、ポリウレタンフォームローラの分割成形型からの取り出しが容易であり、製造作業性に優れる効果がある。
【実施例】
【0028】
・実施例1
密度90kg/m3のポリウレタンフォーム(品番:EXROTH-BB、(株)イノアックコーポレーション製)に直径6mmのシャフト挿通孔を形成し、次いで一辺25mmの四角形断面からなる長さ210mmの角柱状に切り出した後、スラブポリウレタンフォームのシャフト挿通孔に直径6mmの金属製シャフトを挿通して初期成形体を形成した。その後、前記初期成形体のポリウレタンフォームを切削研磨により直径20mmにして中間成形体を形成した。
次に、円弧面の両縁がテーパーとなった溝内面にフッ素コートを施した金属製の分割成形型を220℃に加熱し、前記中間成形体を前記シャフトを回転軸として一方向へ回転させながら分割成形型を閉じ、前記中間成形体を20秒間回転させながら溝内面で圧縮した。ポリウレタンフォームの圧縮程度は1mm、中間成形体の回転速度は4回/分である。その後、分割成形型を開いてポリウレタンフォームの外径が19.7mmになった実施例1のトナー供給ローラ用ポリウレタンフォームローラを得た。
【0029】
前記実施例1のポリウレタンフォームローラにおけるポリウレタンフォームの表面と、前記中間成形体におけるポリウレタンフォームの表面をKEYENCE製マイクロスコープで観察したところ、中間成形体では、ポリウレタンフォームの表面にケバ状の切り残しがあったのに対して実施例1のポリウレタンフォームローラでは、ポリウレタンフォームの表面にケバ状の切り残しが無かった。さらに、ポリウレタンフォーム表面におけるセルの開口は、中間成形体ではセルの異方性によりバラツキが大きく、かつ開口程度も大きいのに対して、実施例のポリウレタンフォームローラはバラツキが小さく、かつ開口程度も小さいものであり、ケバ状の切り残しが無いことと合わせて実施例1のポリウレタンフォームローラは中間成形体よりもポリウレタンフォームの表面が平滑であった。
【0030】
また、実施例1のポリウレタンフォームローラにおけるポリウレタンフォームの表面平滑性を、型発泡した比較例のポリウレタンフォーム(型発泡品)の表面と、以下の方法で比較した。
比較例1は、横型の分割発泡成形型にシャフトをセットし、ポリウレタンフォーム原料を充填してシャフトの外周にポリウレタンフォームを発泡成形し、実施例1のポリウレタンフォームローラと同サイズの比較例のトナー供給ローラ用ポリウレタンフォームローラを製造した。実施例1と比較例1のポリウレタンフォームローラをそれぞれ、1rpmで回転させた状態で、MITUTOYO製の品名:LSM-600レーザーマイクロメーターを用いて、周方向10ポイントの平均外径を、長さ方向に2mmピッチで99ポイント計測し、隣り合う2点の外径差の絶対値を98ポイント計算し、その平均値と標準偏差を比較した。その結果、型内で発泡成形した比較例1のポリウレタンフォームは外径差平均=0.006mm、標準偏差=0.005mmであったのに対し、実施例1のポリウレタンフォームは、外径差平均=0.007mm、標準偏差=0.006mmであり、実施例1のポリウレタンフォームローラのポリウレタンフォームは、型発泡した比較例1のポリウレタンフォームローラのポリウレタンフォームと同様の良好な平滑性を有していた。
【0031】
ローラ表面の平滑性が実際の印刷結果に与える影響を確認するため、以下の実施例2、実施例3及び従来品である比較例2を作成し、表面の平滑性と印刷結果に関する測定をした。
【0032】
・実施例2
密度60kg/m3のポリウレタンフォーム(エーテル系ポリウレタンフォーム、(株)イノアックコーポレーション製)に直径4mmのシャフト挿通孔を形成し、次いで一辺18mmの四角形断面からなる長さ210mmの角柱状に切り出した後、スラブポリウレタンフォームのシャフト挿通孔に直径6mmの金属製シャフトを挿通して初期成形体を形成した。その後、前記初期成形体のポリウレタンフォームを切削研磨により直径13.4mmの中間成形体を形成した。
次に、円弧面の両縁がテーパーとなった溝内面にフッ素コートを施した金属製の分割成形型を220℃に加熱し、前記中間成形体を前記シャフトを回転軸として一方向へ回転させながら分割成形型を閉じ、前記中間成形体を20秒間回転させながら溝内面で圧縮した。ポリウレタンフォームの圧縮程度は0.4mm、中間成形体の回転速度は4回/分である。その後、分割成形型を開いてポリウレタンフォームの外径が13mmになった実施例2のポリウレタンフォームローラを得た。
【0033】
・実施例3
密度35kg/m3のポリウレタンフォーム(品番:ER-26、(株)イノアックコーポレーション製)を用い、実施例2と同様にして実施例3のポリウレタンフォームローラを作成した。
・比較例2
横型の分割発泡成形型にシャフトをセットし、ポリウレタンフォーム原料を充填してシャフトの外周にポリウレタンフォーム(発泡倍率:12倍、密度:83kg/m3、セル径:180μm)を発泡成形し、実施例2及び実施例3のポリウレタンフォームローラと同サイズの比較例2のポリウレタンフォームローラを作成した。
【0034】
・外径実測
実施例2、実施例3及び比較例2のポリウレタンフォームローラをそれぞれ、1rpmで回転させた状態で、MITUTOYO製の品名:LSM-600レーザーマイクロメーターを用いて、周方向10ポイントの平均外径を、長さ方向に2mmピッチで99ポイント計測し、隣り合う2点の外径差の絶対値を98ポイント計算し、その平均値と標準偏差を比較した。その結果、実施例2は外径差平均=0.008mm、標準偏差=0.007mm、実施例3は外径差平均=0.009mm、標準偏差=0.008mm、比較例2は、外径差平均=0.028mm、標準偏差=0.019mmであり、実施例2及び実施例3は、型発泡した比較例2と同様の良好な表面平滑性を有していた。
【0035】
・電子顕微鏡による表面凹凸測定
実施例2及び比較例2に対して、シャフト外側のポリウレタンフォームをカッターで切断し、その断面に対して金蒸着後のロール表面付近をJSM-6100型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製)で撮影し、ロール表面の10個のセルに対して凹部深さを測定し、平均値と標準偏差を計算した。条件は、加圧電圧:10kV、倍率20倍である。実施例2の凹部深さは平均値:0.145mm、標準偏差:0.043mmであり、一方、比較例2の凹部深さは平均値:0.378mm、標準偏差:0.080mmであり、実施例2は比較例2よりも表面の凹部の深さが均一であった。
【0036】
実施例2、実施例3及び比較例2のポリウレタンフォームを、それぞれレーザープリンター(品名:HL-4040CN、ブラザー工業社製)のトナー供給ローラとして装着し、ゴースト試験とかすれ試験を行った。
ゴースト試験は、トナー掻き取り性を判断する試験である。ゴースト試験の方法について説明する。図8に示すように、まず、A4用紙21に対して、上端から所定範囲の部分32に、無色のブランク部33と黒く塗り潰した18×53mmの長方形部分のソリッド部35とを、交互に横方向に印刷し、その下に、無色部分37を上下幅12mmで設け、さらにその下に黒く塗り潰した評価部39を用紙下端まで印刷する設定を作図ソフトで行い、その設定で印刷して図9に示すような印刷後の用紙21Aを得た。印刷後の用紙21Aにおける符号33Aは前記ブランク部33が印刷されたブランク部印刷箇所、35Aは前記ソリッド部35が印刷されたソリッド部印刷箇所、39Aは前記評価部39が印刷された評価部印刷箇所である。また、前記ブランク部印刷箇所33Aとソリッド部印刷箇所35Aと対応する縦列に対して、便宜上、左から順に(1)、(2)、(3)・・・の番号を付した。すなわち、奇数の番号の縦列は、ブランク部の印刷時に使用された感光体ドラムの部分と対応する印刷箇所(ブランク部対応箇所)、偶数の番号の縦列は、ソリッド部の印刷時に使用された感光体ドラムの部分と対応する印刷箇所(ソリッド部対応箇所)を示す。
【0037】
レーザープリンターの感光体ドラムでは、前記ブランク部33とソリッド部35が並んだ部分を印刷する際に前記ソリッド部33と対応する感光体ドラムの部分に供給されたトナーは、ソリッド部33の印刷後にトナー供給ローラで掻き取られる。次に、前記評価部39を印刷する際に、前記評価部39と対応する感光体ドラムの部分にはトナーが供給されるが、前記ソリッド部33の印刷の際に供給されたトナーが、その後完全に掻き取られずに感光体ドラムの表面に残っていると、トナーが残っている感光体ドラムの部分では、残存トナーの上に新たにトナーが供給されることになる。そのため、ソリッド部印刷箇所35Aの次に印刷された評価部印刷箇所39Aでは、前記ソリッド部の印刷時に感光体ドラムに供給されたトナーが、その後完全に掻き取られずに掻き取り残しが残存していると、前記ソリッド部対応箇所(2)、(4)・・・の位置に、残存トナーにより印刷されたゴースト画像が加わる。従って、前記評価部印刷箇所39Aにおけるブランク部対応箇所(1)、(3)・・・とソリッド部対応箇所(2)、(4)・・・の濃度差を測定することにより、トナー供給ローラ(実施例2、実施例3及び比較例2のポリウレタンフォームローラ)のトナー掻き取り性を判断することができる。
【0038】
そこで、図9に示した印刷後の用紙21Aにおける評価部印刷箇所39Aの上端から下方へ10mm位置と50mm位置で、それぞれ前記ブランク部対応箇所(1)、(3)・・と、前記ソリッド部対応箇所(2)、(4)・・・の濃度を、マクベス反射濃度計(品番:RD918、グレタクマクベス社製)でそれぞれ測定し、10mm位置と50mm位置に対して、濃度差=[(ソリッド部対応箇所の濃度)-(ソリッド部対応箇所両側のブランク部対応箇所の平均濃度)]を、各ソリッド部対応箇所について計算し、さらに10mm位置と50mm位置における濃度差の平均値と標準偏差を求め、平均値の小さい程、残存トナーが少なく、トナー掻き取り性が高いと判断した。測定結果を表1に示す。50mm位置で値がマイナスとなっている。これは、次の理由による。現像ローラが10mmから50mmの位置へ移動する間に1回転することで、回転当初に付着していた不要なトナーが少なくなり、50mmの位置に到達した時には、有意差のないほどに不要なトナーがなくなっている。したがって、ソリッド部対応箇所の濃度よりもブランク部対応箇所の濃度のほうが、誤差の範囲で色濃く検出される結果、マイナスの値となる。濃度差平均値はマイナスであれ、平均値が小さいほど残存トナーは少ない。
【0039】
【表1】
[図:0001411830000001.jpg]
【0040】
表1に示す通り、10mm位置の濃度差平均値は、実施例2及び実施例3が比較例2よりも小さく、トナー掻き取り性が高いことがわかる。なお、50mm位置の測定結果が負の値となっているが、これは、前記評価部の印刷初期に供給されたトナーに対する掻き取り残りが影響していると推測される。
【0041】
かすれ試験は、トナー供給性を判断する試験である。かすれ試験の方法について説明する。図10に示すように、まず、A4用紙41に対して、印刷可能範囲を黒く塗り潰す設定を作図ソフトで行い、その設定で印刷して図11に示すような印刷後の用紙41Aを得た。
【0042】
レーザープリンターの感光体ドラムでは、黒く塗り潰すために順次トナーが感光体ドラムの表面に供給されるが、供給されるトナーの量が少なくなると、印刷後の用紙41Aにおける塗り潰し部分43Aでは、供給されたトナーの量が少ない部分で、濃度が薄くなる。
【0043】
そこで、図11に示した印刷後の用紙41Aにおける塗り潰し部分43Aにおいて、印刷開始の上端から10mmと50mm位置(上部側)の濃度と、印刷終了の下端から上方へ50mmと10mm(下部側)の濃度を、それぞれマクベス反射濃度計(品番:RD918、グレタクマクベス社製)で測定し、上部側の10mm濃度と50mm濃度を加算した上部側総和濃度を求め、また下部側の50mm濃度と10mm濃度を加算した下部側総和濃度を求め、単位領域あたりの濃度差=[上部側総和濃度-下部側総和濃度]÷2を求め、濃度差が小さい程、トナー供給性が高いと判断した。測定結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
[図:0001411830000002.jpg]
【0045】
表2に示す通り、実施例2及び実施例3は、比較例2よりもトナー供給性が高いことがわかる。
【0046】
なお、前記実施形態及び実施例では、加熱圧縮用の両方の分割成形型に断面が円弧状に窪んだ曲面からなる溝を形成し、その溝の長手方向に沿って両側(すなわち溝の幅方向w両側)の縁にテーパーを形成したが、前記分割成形型に前記テーパーを形成しなくてもよい。その場合、前記中間成形体を回転しながら少しずつ加熱圧縮して、その外径を徐々に小さくするように、緩やかに両方の前記分割成形型の間隔を狭めて、前記中間成形体のポリウレタンフォームの表面を前記溝の両側の縁に挟まれないようにすることが好ましい。また、両方の前記分割成形型の一方にのみ前記テーパーを設けても良いし、両方に設けても良い。」
上記(1)乃至(4)の記載事項から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリウレタンフォームにシャフト挿通孔を形成し、ポリウレタンフォームのシャフト挿通孔にシャフトを挿通し、切削研磨により中間成形体を形成し、金属製の分割成形型を220℃に加熱し、前記中間成形体を前記シャフトを回転軸として一方向へ回転させながら分割成形型を閉じ、前記中間成形体を20秒間回転させながら溝内面で圧縮して得た、トナー供給ローラ。」
2 引用例2
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の分割原出願日前である平成25年1月17日に頒布された刊行物である特開2013-11726号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周に発泡体層が担持されてなるトナー供給ローラにおいて、
前記発泡体層が、0.02~6.8cc/cm2/secの範囲内の通気性を有する発泡体を用いて形成されていることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項2】
前記発泡体の通気性が、0.02~5.5cc/cm2/secの範囲内である請求項1記載のトナー供給ローラ。
【請求項3】
前記発泡体の通気性が、0.02~0.1cc/cm2/secの範囲内である請求項2記載のトナー供給ローラ。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明はトナー供給ローラ(以下、単に「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、複写機やプリンタ、特にはレーザービームプリンタ(LBP)等の画像形成装置において、感光体や紙等の画像形成体にトナーを搬送してその表面に可視画像を形成する現像ローラに対しトナーを供給するために用いられるトナー供給ローラに関する。」
(3)「【0015】
本発明においては、発泡体層3に用いる発泡体の通気性が、0.02~6.8cc/cm2/sec、好適には0.02~5.5cc/cm2/sec、より好適には0.02~0.1cc/cm2/secの範囲内である点に特徴がある。発泡体の通気性を上記の低い範囲内に規定したことで、トナーがローラ内部に浸入する経路を遮断して、トナーの浸入量を低く抑えることができ、これにより、トナーのロスを低減して、トナー燃費の向上を図ることができるとともに、トナーの固化に起因する画像性の低下を防止することができる。一方で、通気性が上記範囲よりも低いと、トナー供給量が不十分となって、画質の低下を生じてしまう。ここで、上記発泡体の通気性は、JIS L 1096に準拠して測定された値である。」
3 引用例3
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の分割原出願日前である平成24年8月23日に頒布された刊行物である特開2012-159676号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明はトナー担持体に関し、詳しくは、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、感光体や紙等の画像形成体にトナー(現像剤)を搬送してその表面に可視画像を形成する現像ローラに対しトナーを供給するために用いられるトナー担持体に関する。」
(2)「【0033】
本発明において、ポリウレタンフォーム層2に用いるポリウレタンフォームの通気性は、10~50cc/cm2/secであることが好ましい。ポリウレタンフォームの通気性が低すぎると、トナー担持体としてのトナーを担持する機能を損なう(具体的には、トナーがポリウレタンフォーム層に浸入せず、トナーを搬送することができなくなる)おそれがあり、高すぎると、トナーがトナー担持体をすり抜けてしまい、トナーを担持できなくなるおそれがあり、いずれも好ましくない。なお、上記通気性は、JIS K 6400に準じて測定された値である。」
4 引用例4
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の分割原出願日前である平成19年12月27日に頒布された刊行物である特開2007-333829号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体またはゴム発泡体からなる発泡層を少なくとも外周に備えたトナー供給ローラであって、
上記発泡層は、通気性が120ml/cm2/s以上で且つ200ml/cm2/s以下であり、
硬度が50N以上で且つ200N以下であり、
平均セル密度が30個/25mm以上で且つ40個/25mm以下であることを特徴とするトナー供給ローラ。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリまたはこれらの機能を複合的に備えた複合機等の画像形成装置、これらの画像形成装置において静電潜像担持体の静電潜像を現像するために用いられる現像装置、および現像装置において現像剤担持体にトナーを供給するために用いられるトナー供給ローラに関する。」
(3)「【0046】
発泡層48の通気性は、JIS-L1096Aの試験方法による値が120ml/cm2/s以上で且つ200ml/cm2/s以下であることが好ましく、特に140ml/cm2/s以上で且つ180ml/cm2/s以下であることが望ましい。
【0047】
発泡層48の通気性を120ml/cm2/s以上とすることで、トナーが排出され易くなり、発泡層48内部でトナーが停滞し難くできる。また、発泡層48の通気性を200ml/cm2/s以下とすることで、現像ローラ36上のトナーを掻き取る掻き取り性の低下を防ぎ、掻き取り性の低下に起因するトナーの劣化や現像ローラ36のフィルミングの発生などを防止できる。」
5 引用例5
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の分割原出願日前である平成21年1月29日に頒布された刊行物である特開2009-20198号公報(以下「引用例5」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金外周に、ポリオールとポリイソシアネートとを含むポリウレタン材料を用いて形成されるポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラーにおいて、
ポリウレタンフォーム層が、通気量が2.0L/min以上5.5L/min以下で、ヒステリシスロス率が20%以下であり、且つ密度が0.05g/cm3以上0.2g/cm3以下であることを特徴とするトナー供給ローラー。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、ページプリンター、ファクシミリ等の画像形成装置の現像装置に備えられるトナー供給ローラーに関する。」
(3)「【0015】
上記ポリウレタンフォーム層は、表面に開口したセルと、この表面に開口したセルや内部のセル間に開口を有し相互に連結された、いわゆる連続セルとを有する発泡弾性体である。ポリウレタンフォーム層の発泡状態を指標する通気量として、2.0L/min以上5.5L/min以下を有する。通気量が2.0L/min以上であれば、セル内に進入したトナーがセル外へ排出され易く、セル内へのトナーの堆積を抑制し、ポリウレタンフォーム層の硬度の上昇を抑制することができる。また、通気量が5.5L/min以下であれば、トナーの無駄な消費を抑制し、現像ローラーへの適正量のトナーの供給により現像ローラーからの残留トナーの掻き取りを適正に行うことができる。このため、現像ローラーへの残留トナーの付着を抑制し現像ローラーの付着物に起因する画像不良の発生を抑制することができる。」
6 周知技術
上記引用例2乃至5より、以下の技術事項が、本願の分割原出願日時点において、周知の技術事項(以下「周知技術」という。)であると認める。
「トナー供給性及びトナー掻き取り性を良好にすべく、トナー供給ローラの表面の発泡体層の通気性を所定の数値範囲に設定すること。」
第5 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
1 後者の「シャフト」、「ポリウレタンフォーム」及び「トナー供給ローラ」は、それぞれ、前者の「シャフト」、「ポリウレタンフォーム」及び「トナー供給ローラ」に相当する。
2 後者の「トナー供給ローラ」は、ポリウレタンフォームにシャフト挿通孔を形成し、ポリウレタンフォームのシャフト挿通孔にシャフトを挿通したものであるから、シャフトの外周にポリウレタンフォームが設けられ、当該ポリウレタンフォームが筒状であることは明らかである。
3 後者の「トナー供給ローラ」は、シャフト挿通孔にシャフトを挿通したポリウレタンフォームを、220℃に加熱した金属製の分割成形型へ回転させながら溝内面で圧縮して得たものであるから、外周面にポリウレタンフォームの内部よりもセルが圧縮された状態の被膜を有し、該被膜の表面にピンホール状の孔が散在していることは明らかである。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、
[一致点]
「シャフトの外周に筒状のポリウレタンフォームを設けたトナー供給ローラにおいて、
前記筒状のポリウレタンフォームは、外周面に前記ポリウレタンフォームの内部よりもセルが圧縮された状態の被膜を有し、該被膜の表面にはピンホール状の孔が散在した、トナー供給ローラ。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本願発明の「トナー供給ローラ」の「次の測定方法により測定した通気性の値が0.103~0.40kPa」であって、「通気性の測定は、測定用トナー供給ローラにおける筒状のポリウレタンフォームの外径より小の内径を有する円筒状の筒状測定具内に、前記測定用トナー供給ローラを圧入し、前記筒状測定具において正反対に対向する位置に形成されている一組の貫通孔の一方に測定管の一端を接続し、前記測定管の途中に差圧計と流量計を接続し、前記筒状測定具の両端から前記測定用トナー供給ローラの両端までを密封した状態で、前記流量計の値が0.3リッター/minとなるように前記測定管の他端から送風し、前記差圧計で測定した差圧を、前記筒状のポリウレタンフォームの通気性の値」としたものであるのに対し、引用発明1のポリウレタンフォームの通気性が不明である点。
第6 判断
引用発明1は、「トナー供給性及びトナー掻き取り性が良好なポリウレタンフォームローラ」を提供することを課題(【0009】参照。))とした発明であって、上記周知技術と技術分野及び解決しようとする課題において共通するものである。
そうすると、引用発明1の「トナー供給ローラ」に、前記周知技術を適用し、トナー供給ローラの表面のポリウレタンフォームの通気性を所定の数値範囲に設定することは、当業者が容易になし得るものである。
ここで、上記第4 6のとおり、トナー供給ローラの表面の発泡体層の通気性を所定の数値範囲に設定することが周知技術であるところ、本願発明において、ポリウレタンフォームの通気性は、トナー供給性の指標であるが、図8に示された測定結果をみても、通気性の数値に対するトナー供給性の効果に臨界的意義は認められない。
してみると、通気性の数値は、当業者が、当該トナー供給ローラに求められるトナー供給性及びトナー掻き取り性に応じて適宜設定し得る事項といえる。
そうすると、上記相違点1は、当業者が、上記周知技術を参酌し適宜設定し得る事項といえる。
してみると、本願発明は、引用発明1に、上記周知技術を参酌することにより、当業者が容易になし得るものである。
そして、本願発明の効果も、引用発明1、上記周知技術から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、当業者が容易に発明できた発明である。
第7 請求人の主張について
請求人は、上記手続補正書(方式)において、
「本願発明の課題は、「トナー供給性及びトナー掻き取り性が良好なトナー供給ローラの提供」である([0009])。その課題を解決するため本願発明では、引用文献1-5には開示されていない方法で測定された圧力基準の通気性を用いて、トナー掻き取り性の好ましい範囲を見出した。すなわち、請求項1に記載された測定方法で取得した通気性とトナー掻き取り性との間の相関関係を見出した。本願発明は、その特性を有するトナー供給ローラを提供することにより本願発明の課題を解決したものである。実際に通気性が0.103~0.40kPaの範囲では実施例に示す通り顕著な効果が得られている(図8、実施例1、2、4、トナー掻き取り性:◎)。そのように構成することにより、本願発明は、トナーの掻き取り性が向上し、現像ローラ上に残存する古いトナーを清掃でき、印字品位が向上するとともにカートリッヂの寿命を長くすることができる、という、効果を奏することができる([0012])。」
と主張する。
しかし、本願の当初明細書、特許請求の範囲または図面(以下「当初明細書等」という。)には、通気性とトナー掻き取り性との関係については、何ら記載されておらず、また、本願の出願時点において、技術常識であるとの証拠も何ら示されていない。
そうすると、上記請求人の主張は、当初明細書等の記載に基づかない主張であるから、採用するに足らない。
また、通気性が0.103kPa以上0.385kPa以下の場合に、たまたま、残存率が13.1%以上16.2%以下であるものの、通気性が0.385kPaを超えるときの残存率の開示がないことからすると、通気性が0.103kPa以上0.385kPa以下の場合に、トナー掻き取り性に臨界的意義があることが示されているとはいえず、また、通気性とトナー供給性との因果関係(【0017】、【0042】参照。)、残存率とトナー掻き取り性との因果関係(【0012】、【0043】参照。)のように、技術的な因果関係を釈明せずに、特許性を主張することは、技術的な根拠に基づかない主張であって、採用するに足らない。
第8 むすび
以のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-000863