特許拒絶査定不服審判
2025-006476
帯電ロール
- 審判番号
- 2025-006476
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-578093
- 請求日
- 2025年04月25日
- 審決日
- 2026年07月08日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シンジーテック株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人NYTパートナーズ
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 山本 一
- 審判官 濱本 禎広
- 分類
- P18 .121-Z (G03G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-578093「帯電ロール」拒絶査定不服審判事件〔令和4年8月4日国際公開、WO2022/163128〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)12月3日(優先権主張 2021年(令和3年)2月1日)を国際出願日とする日本語特許出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
令和6年 6月13日付け:拒絶理由通知書
同年 8月 7日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月18日付け:拒絶理由通知書
同年11月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 1月17日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
同月28日 :原査定の謄本の送達
同年 4月25日 :審判請求書の提出
なお、優先権主張の令和3年2月1日を、以下「優先日」という。
第2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明は、令和6年11月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1、2に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、次に特定されるとおりである。
「 【請求項1】
芯材と、
前記芯材の周囲に配置されたゴム基材と、
前記ゴム基材の周囲に配置された表層とを備え、
前記表層は、
絶縁体から形成されたベース材と前記ベース材に分散された導電材を含む導電性マトリックスと、
前記導電性マトリックスに分散された表面粗さ付与材の粒子を有し、
前記表面粗さ付与材の粒子は、絶縁体から形成され、多孔質であり、
前記表層の前記導電性マトリックスは、前記表面粗さ付与材の粒子の平均直径の0.5以上、3.4以下である平均厚さを有し、
前記表面粗さ付与材の粒子は、前記表層の重量に対して、2%以上、4%以下の割合で含まれている
ことを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
芯材と、
前記芯材の周囲に配置されたゴム基材と、
前記ゴム基材の周囲に配置された表層とを備え、
前記表層は、
絶縁体から形成されたベース材と前記ベース材に分散された導電材を含む導電性マトリックスと、
前記導電性マトリックスに分散された表面粗さ付与材の粒子を有し、
前記表面粗さ付与材の粒子は、絶縁体から形成され、多孔質であり、
前記表層の前記導電性マトリックスは、前記表面粗さ付与材の粒子の平均直径の0.5以上、3.4以下である平均厚さを有し、
前記表面粗さ付与材の粒子は、8.7m2/g以上、55m2/g以下である比表面積を有する
ことを特徴とする帯電ロール。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
理由3 本願発明1、2は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2009-175427号公報
引用文献2:特開2019-191519号公報
第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
原査定で引用文献1として引用され、本願の優先日前に発行された特開2009-175427号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同じ。)。
(ア)【0001】~【0011】
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター,ファクシミリ等の電子写真装置に用いられる帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
・・・中略・・・
【0005】
このような接触式DC電圧印加方式においては、感光ドラム上の放電領域が狭いため、局部に帯電が集中し、帯電ロールと感光ドラムとの電位差が大きくなり、電位が高いところから低いところに移動する(沿面放電が大きくなる)。そのため、感光ドラム上に電位むらが生じ、横すじが発生する。
【0006】
そこで、このような横すじの発生を抑制するため、従来より、ロール最外層である表面層に粗さ形成粒子を添加した帯電ロールが提案されている。例えば、ロール最外層である表面層に、平均粒径が1μm以上の粒子(粉体)を含有させることにより、ロール表面を適度な粗面にして帯電むらを防止するようにしたもの(例えば、特許文献1参照)や、同じく表面層に含有させる粒子を、その粒径に応じて特定の分布割合となるようコントロールして塗布したもの(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、被帯電体に当接させて、この被帯電体との間に電圧を印加することにより、被帯電体を帯電させる帯電部材において、少なくとも上記被帯電体と接触する部材表面が、疎水性粉末を含有する樹脂組成物からなる表面層で形成されている帯電部材(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
・・・中略・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1~3に示すように、表面層に粒子(粗さ形成粒子)を添加すると、感光ドラム上の放電領域が広くなるため、広域に帯電して、帯電ロールと感光ドラムとの電位差が小さくなり、電位の移動も小さくなる(沿面放電が小さくなる)。そのため、感光ドラム上の電位むらが弱くなり、粒子を添加する前に比べると、横すじの発生を抑制することができる。しかしながら、上記表面層に含有させる粒子は、通常、絶縁物であるため、その粒子部分に電流が流れなくなり、この影響によって、抵抗むらが発生し、微小な横すじが発生するという難点がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、横すじの発生を抑制でき、帯電性能にばらつきがない、接触式DC電圧印加方式に最適な帯電ロールの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の帯電ロールは、軸体と、上記軸体の外周に、直接もしくは他の層を介して形成される抵抗調整層と、上記抵抗調整層の外周に形成される保護層とを備えた帯電ロールであって、上記保護層が、下記の(A)~(C)を含有する組成物からなるという構成をとる。
(A)バインダーポリマー。
(B)比表面積が9m2 /g以上の多孔質粒子。
(C)導電剤。
【0010】
すなわち、本発明者らは、横すじの発生を抑制でき、帯電性能にばらつきがない、接触式DC電圧印加方式に最適な帯電ロールを得るため、鋭意研究を重ねた。そして、保護層に含有させる粒子(粗さ形成粒子)について研究を重ねた結果、比表面積が9m2 /g以上の多孔質粒子を用いると、所期の目的を達成できることを見いだし、本発明に到達した。すなわち、バインダーポリマーと、比表面積が9m2 /g以上の多孔質粒子と、導電剤とを含有する組成物からなる保護層を備えた帯電ロールは、バインダーポリマー中に導電剤が分散されており、この導電剤が分散されたバインダーポリマーの一部が、多孔質粒子の内部(孔内)にまで侵入するため、多孔質粒子が絶縁物であっても、粒子部分に電流が流れるようになる。その結果、保護層内のバインダーポリマーおよび多孔質粒子での導電性が均一になり、保護層内の抵抗むらが小さくなり、微小な横すじの発生を抑制することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明の帯電ロールは、バインダーポリマーと、比表面積が9m2 /g以上の多孔質粒子と、導電剤とを含有する組成物からなる保護層を備えており、導電剤が分散されたバインダーポリマーの一部が、多孔質粒子の内部(孔内)にまで侵入するため、保護層内のバインダーポリマーおよび多孔質粒子での導電性が均一になり、粒子による微小な横すじの発生を抑制することができるようになる。」
(イ)【0020】~【0040】
「【0020】
つぎに、上記軸体1の外周面に形成される抵抗調整層2の形成材料(抵抗調整層用材料)としては、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ヒドリンゴム(ECO等)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(H-NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム等のベースポリマーがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
・・・中略・・・
【0024】
つぎに、上記抵抗調整層2の外周面に形成される保護層3の形成材料としては、下記の(A)~(C)を含有する組成物(保護層用材料)が用いられる。
(A)バインダーポリマー。
(B)比表面積が9m2 /g以上の多孔質粒子。
(C)導電剤。
【0025】
上記バインダーポリマー(A成分)としては、配合物の分散性の点から、溶剤可溶性のものが好ましく、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレア系樹脂、ゴム系ポリマー、熱可塑性エラストマー等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、防汚性の点で、アクリルフッ素樹脂等のアクリル系樹脂が好ましい。
【0026】
上記溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0027】
つぎに、上記バインダーポリマー(A成分)とともに用いられる、特定の多孔質粒子(B成分)は、比表面積が9m2 /g以上であり、好ましくは82m2 /g以上である。すなわち、比表面積が9m2 /g未満であると、微小な横すじが発生するようになるからである。
【0028】
ここで、上記多孔質粒子(B成分)の比表面積は、つぎのようにして測定される。すなわち、比表面積測定装置(例えば、島津製作所社製、Micromeritics GEMINI2360)を用い、比表面積前処理条件(通常、前処理温度:120℃、N2 ガスパージ:60分)、比表面積測定条件(BET多点法)により、多孔質粒子(B成分)の比表面積(m2 /g)を測定することができる。
【0029】
上記特定の多孔質粒子(B成分)における「多孔質」とは、孔が粒子内部まで連通している連通多孔質であることをいい、粒子が連通多孔質であるか否かは、例えば、粒子の断面を電子顕微鏡等で観察することにより確認できる。
【0030】
上記特定の多孔質粒子(B成分)は、絶縁性物でも導電性物でもよく、その材質も、無機、有機、カーボン、金属のいずれでもよく、例えば、シリカ、ゼオライト、アルミナ、アパタイト(リンカイ石)、酸化チタン、クレイ、ポリメタクリル酸メチル(架橋ポリメタクリル酸メチル)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、抵抗調整の点で、絶縁性物が好ましい。
【0031】
上記特定の多孔質粒子(B成分)の平均粒径としては、150μm以下が好ましく、特に好ましくは1~50μmの範囲である。
【0032】
なお、本発明において、上記多孔質粒子(B成分)の平均粒径は、母集団から任意に抽出される試料を用いて導出される値である。また、粒子形状が真球状ではなく楕円球状(断面が楕円の球)等のように一律に粒径が定まらない場合には、最長径と最短径との単純平均値をその粒子の粒径とする。
【0033】
また、上記特定の多孔質粒子(B成分)の配合量は、画像に対する効果の点から、上記バインダーポリマー(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、1~100部の範囲が好ましく、特に好ましくは3~50部の範囲である。すなわち、B成分の配合量が少なすぎると、画像に対する効果が充分に発揮されず、逆にB成分の配合量が多すぎると、高硬度化や抵抗調整が困難になる傾向がみられるからである。
【0034】
また、上記A成分およびB成分とともに用いられる導電剤(C成分)としては、例えば、導電性カーボンブラック,c-ZnO(導電性酸化亜鉛),c-TiO2 (導電性酸化チタン),c-SnO2 (導電性酸化錫),グラファイト等の電子導電剤や、第四級アンモニウム塩,ホウ酸塩,過塩素酸塩,リチウム塩,カリウム塩,界面活性剤等のイオン導電剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0035】
上記導電剤(C成分)が電子導電剤の場合の配合量は、物性や電気特性の点から、上記バインダーポリマー(A成分)100部に対して、1~100部の範囲が好ましく、特に好ましくは1~60部の範囲である。また、上記導電剤(C成分)がイオン導電剤の場合の配合量は、物性や電気特性の点から、上記バインダーポリマー(A成分)100部に対して、1~50部の範囲が好ましく、特に好ましくは1~5部の範囲である。
【0036】
なお、上記保護層用材料には、上記A~C成分に加えて、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、難燃剤、オイル等を必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0037】
そして、上記保護層用材料(コーティング液)は、例えば、上記各成分を所定の割合で配合し、サンドミルを用いて分散を行うことにより、調製することができる。
【0038】
本発明の帯電ロールは、これらの材料を用いて、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、芯金となる軸体1を用意し、その外周面に接着剤を塗布した後、所定の金型内に装填し、金型内の中空部に、前記抵抗調整層用材料を注型する。つぎに、金型を閉じて加熱処理(通常、130~200℃×20~90分)して、抵抗調整層2を架橋硬化させる。そして、上記金型から脱型することにより、軸体1の外周面に抵抗調整層2が形成されたロールを取り出す。つづいて、上記ロール中間体における抵抗調整層2の外周面に、保護層用材料(コーティング液)をロールコート法により塗工した後、乾燥(通常、40℃×30分)および加熱処理(通常、100℃×30分)を行うことにより、保護層3を形成する。このようにして、軸体(芯金)1の外周面に、抵抗調整層2が形成され、その外周面に保護層3が形成されてなる二層構造の帯電ロール(図1参照)を作製することができる。
【0039】
なお、上記保護層用材料の塗工方法は、上記ロールコート法に限らず、ディッピング法、スプレー法等であっても差し支えない。
【0040】
本発明の帯電ロールにおいて、抵抗調整層2の厚みは、通常、20~8000μmの範囲であり、好ましくは80~5000μmの範囲である。また、上記保護層3の厚みは、1~100μmの範囲が好ましく、特に好ましくは1~50μmの範囲である。」
(ウ)【0043】~【0055】
「【0043】
〔実施例1〕
(抵抗調整層用材料の調製)
エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合体(ダイソー社製、エピクロマーCG102)70部と、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(日本ゼオン社製、ニポールDN101)30部と、シリカ(日本シリカ社製、ニプシールVN3)50部と、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート5部と、酸化亜鉛5部と、ステアリン酸(花王社製、ルナックS-30)1部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラーDM)0.5部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラーTT)0.5部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラーTRA)0.5部とを配合し、ロールを用いて混練することにより、抵抗調整層用材料を調製した。
【0044】
(保護層用材料の調製)
後記の表1に示す材料を同表に示す割合で配合するとともに、溶剤としてMEK300mlを使用しサンドミルを用いて分散を行い、保護層用材料(コーティング液)を調製した。
【0045】
(帯電ロールの作製)
直径6mmの芯金を用意し、その外周面に接着剤を塗布した後、金型内に装填し、金型内の中空部に、上記抵抗調整層用材料を注型した。つぎに、金型を閉じて、加熱処理(一次加硫105℃×30分、二次加硫110℃×60分)を行うことにより加硫硬化させ、上記金型から脱型することにより、芯金の外周面に抵抗調整層が形成されたロール中間体を取り出した。つづいて、上記ロール中間体における抵抗調整層の外周面に、保護層用材料(コーティング液)をロールコート法により塗工した後、乾燥(40℃×30分)および加熱処理(100℃×30分)を行うことにより、保護層を形成した。このようにして、軸体(芯金)の外周面に、抵抗調整層(厚み1.5mm)が形成され、その外周面に保護層(厚み10μm)が形成されてなる二層構造の帯電ロール(図1参照)を作製した。
【0046】
〔実施例2~3、比較例1,2〕
下記の表1に示す材料を同表に示す割合で配合してなる保護層用材料を用いて保護層を形成する以外は、実施例1と同様にして、二層構造の帯電ロールを作製した。
【0047】
【表1】
[図:0001438974000001.jpg]
【0048】
なお、上記表1に示した材料は、下記のとおりである。
【0049】
〔アクリルフッ素樹脂(A成分)〕
エルフアトケムジャパン社製、カイナーSL
【0050】
〔絶縁多孔質粒子A(B成分)〕
クレイ(三洋貿易社製、ポリフィルWC、平均粒径:1.4μm)
【0051】
〔絶縁多孔質粒子B(B成分)〕
架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(積水化成品工業社製、MBP-8、平均粒径:8μm)
【0052】
〔絶縁多孔質粒子C(B成分)〕
シリカ粒子(富士シリシア化学社製、サイリシア446、平均粒径:4μm)
【0053】
〔絶縁粒子a〕
アクリル粒子(綜研化学社製、ケミスノーMX150、平均粒径:1.5μm)
【0054】
〔絶縁粒子b〕
シリカ粒子(テツタニ社製、アエロジルR972、平均粒径:16μm)
【0055】
〔導電剤(C成分)〕
電気化学工業社製、デンカブラックHS-100」
イ 引用文献1の記載から把握できる事項
前記ア(ア)【0006】の「ロール最外層である表面層に、平均粒径が1μm以上の粒子(粉体)を含有させることにより、ロール表面を適度な粗面にして帯電むらを防止するようにしたもの(例えば、特許文献1参照)」との従来の技術に関する記載と、同【0007】の「上記特許文献1~3に示すように、表面層に粒子(粗さ形成粒子)を添加すると、・・・横すじの発生を抑制することができる」、同【0010】の「保護層に含有させる粒子(粗さ形成粒子)について研究を重ねた結果、比表面積が9m2 /g以上の多孔質粒子を用いると、所期の目的を達成できることを見いだし、本発明に到達した。」との記載を踏まえれば、次の事項が把握できる。
「多孔質粒子は、保護層を適度な粗面にして帯電むらを防止するための粗さ形成粒子として用いられていること。」
ウ 引用発明及び文献1技術事項
(ア)引用発明1
前記ア及びイより、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「芯金となる軸体と、上記軸体の外周に形成される抵抗調整層と、上記抵抗調整層の外周に形成される保護層とを備えた二層構造の帯電ロールであって(前記ア(ア)【0009】、(イ)【0038】)、
上記保護層は、(A)バインダーポリマー、(B)比表面積が9m2 /g以上の多孔質粒子、(C)導電剤を含有する組成物からなり(前記ア(ア)【0009】)、
多孔質粒子は、保護層を適度な粗面にして帯電むらを防止するための粗さ形成粒子として用いられ(前記イ)、
導電剤が分散されたバインダーポリマーの一部が、多孔質粒子の内部(孔内)にまで侵入し(前記ア(ア)【0011】)、
抵抗調整層の形成材料としては、ポリウレタン系エラストマー、ヒドリンゴム(ECO等)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(H-NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム等のベースポリマーが用いられ(前記ア(イ)【0020】)、
バインダーポリマー(A成分)としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレア系樹脂、ゴム系ポリマー、熱可塑性エラストマー等が用いられ(前記ア(イ)【0025】)、
上記特定の多孔質粒子(B成分)は、抵抗調整の点で、絶縁性物が好ましく(前記ア(イ)【0030】)、平均粒径としては、1~50μmの範囲であり(前記ア(イ)【0031】)、配合量は、画像に対する効果の点から、上記バインダーポリマー(A成分)100部に対して、3~50部の範囲であり、B成分の配合量が少なすぎると、画像に対する効果が充分に発揮されず、逆にB成分の配合量が多すぎると、高硬度化や抵抗調整が困難になる傾向がみられ(前記ア(イ)【0033】)、
保護層用材料は、各成分を所定の割合で配合し、サンドミルを用いて分散を行うことにより、調製するものであって(前記ア(イ)【0037】)、
上記保護層の厚みは、1~50μmの範囲である(前記ア(イ)【0040】)、
帯電ロール。」
(イ)文献1技術事項1
前記ア(ウ)【0045】、【0051】及び【0052】の実施例2、3の保護層の厚み(10μm)と多孔質粒子の平均粒径(実施例2(絶縁多孔質粒子B):8μm、実施例3(絶縁多孔質粒子C):4μm)より、引用文献1には、以下のとおりの事項(以下「文献1技術事項1」という。)が記載されていると認められる。
「多孔質粒子の平均粒径の1.25又は2.5倍である厚みを有する保護層。」
(ウ)引用発明2
さらに、前記ア(ウ)【0043】~【0055】の実施例1を踏まえれば、引用文献1には、以下のとおりの発明(以下「引用発明2」という。)も記載されていると認められる。
「芯金となる軸体と、上記軸体の外周に形成される抵抗調整層と、上記抵抗調整層の外周に形成される保護層とを備えた二層構造の帯電ロールであって(前記ア(ア)【0009】、(イ)【0038】)、
上記保護層は、(A)バインダーポリマー、(B)比表面積が9m2 /g以上の多孔質粒子、(C)導電剤を含有する組成物からなり(前記ア(ア)【0009】)、
多孔質粒子は、保護層を適度な粗面にして帯電むらを防止するための粗さ形成粒子として用いられ(前記イ)、
導電剤が分散されたバインダーポリマーの一部が、多孔質粒子の内部(孔内)にまで侵入し(前記ア(ア)【0011】)、
抵抗調整層の形成材料としては、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合体70部と、アクリロニトリル-ブタジエンゴム30部が用いられ(前記ア(ウ)【0043】)、
バインダーポリマー(A成分)としては、アクリルフッ素樹脂が用いられ(前記ア(ウ)【0047】【表1】)、
上記特定の多孔質粒子(B成分)は、抵抗調整の点で、絶縁性物が好ましく(前記ア(イ)【0030】)、平均粒径1.4μm、比表面積9.5m2 /gであり(前記ア(ウ)【0047】【表1】、【0050】)、
保護層用材料は、各成分を所定の割合で配合し、サンドミルを用いて分散を行うことにより、調製するものであって(前記ア(イ)【0037】)、
上記保護層の厚みは、10μmである(前記ア(ウ)【0045】)、
帯電ロール。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
本願の優先日前に発行された特開2019-191519号公報には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の帯電ロールなどに用いられる導電性ロールに関する。」
「【0016】
図2は、本発明の実施形態に係る帯電ロールの一例を示す断面図である。
図2に示すように、帯電ロール40は、芯材401と、芯材401の外周面に形成されたゴム基材402と、ゴム基材402の外周面にコーティングされた表層403とを有する。ゴム基材402の外周面にコーティング成分による表層403を形成し、その表層403の表面粗さを適切にすることにより、感光体1と帯電ロール40の間の放電ムラが解消されて、感光体1に均一に放電することが可能となり、露光部3で形成された潜像に正確に対応する量のトナーを現像部2は感光体1の表面に付着させることができる。」
「【0026】
図3に示すように、硬化した表層403は、導電性マトリックス404と、導電性マトリックス404に分散された例えば絶縁性の表面粗さ付与材(粗さ付与材ともいう。)の粒子405を有する。粗さ付与材の粒子405は、表層403に適切な表面粗さを与える。導電性マトリックス404は、粗さ付与材の粒子405を固定位置に保持する役割と、感光体1に対する放電を行う役割を果たす。上記の通り、領域51(および場合により領域52)において、帯電ロール40と感光体1の間で放電が起こる。
【0027】
図3に示す例では、粗さ付与材の粒子405は導電性マトリックス404内に完全に埋没していないが、完全に埋没していてもよい。導電性マトリックス404の厚さが小さい場合には、粗さ付与材の粒子405を保持する能力が低いため、粗さ付与材の粒子405の直径に対して、導電性マトリックス404は適切な厚さを有するのが好ましい。粗さ付与材の粒子405が絶縁体であって、導電性マトリックス404の厚さが大きく、導電性マトリックス404の電気抵抗が大きい場合には、放電が発生しにくくなりがちであるが、導電性マトリックス404に含まれる導電剤の割合を向上させることにより、導電性マトリックス404の電気抵抗を低減して、放電を発生させやすくすることができる。
【0028】
本実施形態においては、表面粗さが調整されたゴム基材402の上に形成された表層403に粗さ付与材の粒子405が分散されていることにより、表層403の表面粗さが調整されている。
【0029】
本実施形態において、表層403の導電性マトリックス404の膜厚は、2μm以上15μm以下であることが好ましく、より好ましくは、3μm~14μmの範囲である。
この厚さが15μmを超えた場合には、表層403の表面粗さが小さくなりすぎて、画像ムラの原因となる。
【0030】
また、本実施形態において、表層403の粗さ付与材の粒子405の含有率が、粒子の粒径(直径)が0.5μm以上60μm以下の場合、1重量%以上70重量%以下であることが好ましい。
粒子含有量が多い場合、粒子同士が重なり合うため、表層403の凹凸のピッチ(後述する凹凸平均間隔Smおよび粗さ曲線要素の平均長さRSm)が大となり、画像ムラの原因となる。」
「【0045】
実験1では、異なる粒径と異なる量の表面粗さ付与材の粒子405を含むコーティング液の塗布によって、表層403の表面状態が異なるサンプルを製造した。これらのサンプルの表層403の表面粗さおよび凹凸のピッチは、表2に示す通りである。但し、サンプル9では、粗さ付与材の粒子405が表層403に含まれていない。
【0046】
上記組成のコーティング液を、ボールミルで3時間分散混合した。
【0047】
【表2】
[図:0001438974000002.jpg]
【0048】
<帯電ロールの作製>
研磨したゴム基材402の外周面に、上記コーティング液を塗布して表層403を形成し、帯電ロール40を作製した。具体的には、コーティング液を撹拌し、その液をゴム基材402の表面にスプレーコートして、電気炉にて120℃で60分間乾燥し、ゴム基材402の外周面に表層403を形成し、帯電ロールを作製した。」
イ 文献2技術事項
(ア)前記アより、引用文献2には、以下のとおりの事項(以下「文献2技術事項1」という。)が記載されていると認められる。
[文献2技術事項1]
「帯電ロールのゴム基材の外周面にコーティングされた表層は、導電性マトリックスと、導電性マトリックスに分散された例えば絶縁性の表面粗さ付与材(粗さ付与材ともいう。)の粒子を有し、導電性マトリックスは、粗さ付与材の粒子を固定位置に保持する役割を果たすものであって、導電性マトリックスの厚さが小さい場合には、粗さ付与材の粒子を保持する能力が低いため、粗さ付与材の粒子の直径に対して、導電性マトリックスは適切な厚さを有するのが好ましいこと(前記ア【0016】、【0026】、【0027】)。」
(イ)前記ア【0047】【表2】より、コーティング液中の粗さ付与材の含有率として、多くの場合(サンプル1~4、7、8、10、11)で2重量%が採用されていることが看取できるから、前記ア【0030】、【0048】も踏まえると、引用文献2には、以下のとおりの事項(以下「文献2技術事項2」という。)が記載されている。
[文献2技術事項2]
「帯電ロールの表層を形成するコーティング液中の粗さ付与材の含有率として、2重量%が採用されており、粗さ付与材の粒子の含有量が多い場合、粒子同士が重なり合うため、画像ムラの原因となること(前記ア【0030】、【0047】、【0048】)。」
2 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 本願発明1と引用発明1は、「帯電ロール」の発明である点で一致する。
イ(ア)引用発明1の「芯金となる軸体」は、本願発明1の「芯材」に相当する。
(イ)また、引用発明1の「抵抗調整層」は、「形成材料」が「ポリウレタン系エラストマー、ヒドリンゴム(ECO等)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(H-NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム等のベースポリマー」であるから、ゴム材料から形成されるものと認められる。したがって、引用発明1の「軸体の外周に形成される抵抗調整層」は、前記(ア)を踏まえると、本願発明1の「芯材の周囲に配置されたゴム基材」に相当する。
(ウ)さらに、引用発明1の「二層構造の帯電ロール」の「抵抗調整層の外周に形成される保護層」は、帯電ロールの表面となる層であるから、前記(イ)を踏まえると、本願発明1の「ゴム基材の周囲に配置された表層」に相当する。
(エ)前記(ア)~(ウ)より、本願発明1の「帯電ロール」と引用発明1の「帯電ロール」は、「芯材と、前記芯材の周囲に配置されたゴム基材と、前記ゴム基材の周囲に配置された表層とを備え」るものである点で一致する。
ウ(ア)引用発明1の「バインダーポリマー」は、「アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレア系樹脂、ゴム系ポリマー、熱可塑性エラストマー等が用いられ」るものであるから、技術常識を踏まえれば、絶縁性と認められる。
したがって、引用発明1の「バインダーポリマー」、「導電剤」は、本願発明1の「絶縁体から形成されたベース材」、「導電材」に相当し、引用発明1の「導電剤が分散されたバインダーポリマー」は、本願発明1の「絶縁体から形成されたベース材と前記ベース材に分散された導電材を含む導電性マトリックス」に相当する。
(イ)引用発明1の「多孔質粒子」は、「保護層を適度な粗面にして帯電むらを防止するための粗さ形成粒子として用いられ」るものであるから、本願発明1の「表面粗さ付与材の粒子」に相当する。
そして、引用発明1の「保護層」は、「(A)バインダーポリマー、(B)比表面積が9m2 /g以上の多孔質粒子、(C)導電剤を含有する組成物」からなり、引用発明1の「保護層用材料」は、「各成分を所定の割合で配合し、サンドミルを用いて分散を行うことにより、調製するもの」であるから、引用発明1の「多孔質粒子」も「導電剤」とともに「バインダーポリマー」に分散されていると認められる。
したがって、本願発明1の「表面粗さ付与材の粒子」と引用発明1の「多孔質粒子」は、前記(ア)を踏まえれば、「前記導電性マトリックスに分散された」ものである点で一致する。
(ウ)また、引用発明1の「多孔質粒子」は、「抵抗調整の点で、絶縁性物が好まし」いものであるから、本願発明1の「表面粗さ付与材の粒子」と引用発明1の「多孔質粒子」は、「絶縁体から形成され、多孔質であ」る点で一致する。
エ 本願発明1の「表層」の「導電性マトリックス」は、「表面粗さ付与材の粒子の平均直径の0.5以上、3.4以下である平均厚さを有し」ているのに対し、引用発明1の「保護層」は厚みが「1~50μmの範囲」であるものの、「導電剤が分散されたバインダーポリマー」の平均厚さと「多孔質粒子」の平均直径の比は特定されていない。
オ 本願発明1の「表面粗さ付与材の粒子」は、「表層の重量に対して、2%以上、4%以下の割合で含まれている」ものであるのに対し、引用発明1の「多孔質粒子」は、「バインダーポリマー(A成分)100部に対して、3~50部の範囲」であるものの、「保護層」の重量に対する割合は特定されていない。
カ 前記ア~オより、本願発明1と引用発明1とは、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「 芯材と、
前記芯材の周囲に配置されたゴム基材と、
前記ゴム基材の周囲に配置された表層とを備え、
前記表層は、
絶縁体から形成されたベース材と前記ベース材に分散された導電材を含む導電性マトリックスと、
前記導電性マトリックスに分散された表面粗さ付与材の粒子を有し、
前記表面粗さ付与材の粒子は、絶縁体から形成され、多孔質である、
帯電ロール。」
[相違点1]
本願発明1の「表層」の「導電性マトリックス」は、「表面粗さ付与材の粒子の平均直径の0.5以上、3.4以下である平均厚さを有し」ているのに対し、引用発明1の「保護層」は厚みが「1~50μmの範囲」であるものの、「導電剤が分散されたバインダーポリマー」の平均厚さと「多孔質粒子」の平均直径の比は特定されていない点。
[相違点2]
本願発明1の「表面粗さ付与材の粒子」は、「表層の重量に対して、2%以上、4%以下の割合で含まれている」ものであるのに対し、引用発明1の「多孔質粒子」は、「バインダーポリマー(A成分)100部に対して、3~50部の範囲」であるものの、「保護層」の重量に対する割合は特定されていない点。
(2)判断
ア 表面粗さ付与材の粒子の平均直径に対する導電性マトリックスの平均厚さの比、及び、粒子の含有割合の技術的意義
(ア)本件の願書に添付した明細書及び図面には、以下のとおりの記載がある。
a 「 【0034】
図3および図4に示す例では、粗さ付与材の粒子405は導電性マトリックス404内に完全に埋没していないが、完全に埋没していてもよい。導電性マトリックス404の厚さが小さい場合には、粗さ付与材の粒子405を保持する能力が低いため、粗さ付与材の粒子405の直径に対して、導電性マトリックス404は十分な厚さを有するのが好ましい。一方、導電性マトリックス404の厚さが大きすぎる場合には、表層403の表面粗さが小さくなりすぎて、表層403と感光体ドラム1の間の摩擦係数が増大してしまう。したがって、導電性マトリックス404の厚さは、適切な範囲内にあることが好ましい。
・・・中略・・・
【0036】
表層403の粗さ付与材の粒子405の含有率は、適切な数値範囲内にあることが好ましいと考えられる。粒子含有量が多い場合、粒子同士が重なり合うため、表層403の表面が粗くなり、画像ムラの原因となると考えられる。
・・・中略・・・
【0046】
導電性マトリックス404の厚さに対して、粗さ付与材の粒子405の直径が大きい場合には、導電性マトリックス404への粒子405の埋没深さが小さく、導電性マトリックス404と粒子405の密着性が小さい。このため、粒子405が導電性マトリックス404から脱落しやすい。多くの粒子405が失われると、領域51での帯電ロール40と感光体ドラム1の間隔が狭まり、帯電性能が変化する。
【0047】
しかし、粒子405の脱落を低減するために、導電性マトリックス404の厚さに対して、粗さ付与材の粒子405の直径を小さくすると、表層403の表面粗さが小さくなり過ぎて、感光体ドラム1の表面に対する帯電ロール40の接触面積が増加し、感光体ドラム1上のトナー粒子中の外添剤などの付着による放電阻害を促進させる懸念がある。
【0048】
そこで、出願人は、粒子405の脱落を低減し、高い画像品質を長期にわたって維持するために、粒子405として多孔質の粒子を使用することを検討した。「多孔質の粒子」とは少なくとも表面に多数の凹部すなわち微細孔がある粒子である。
【0049】
多孔質の粒子405としては、図3に示すように、表面のみに凹部が形成された粒子を使用してもよい。あるいは、図4に示すように、内部まで微細孔が交錯して形成された、例えばスポンジまたは発泡体のような構造を持つ粒子を多孔質の粒子405として使用してもよい。
【0050】
以下、表面に微細孔がない球形状を「真球」と呼ぶ。真球粒子に比べて、多孔質の粒子は、表面積が大きく、かつ微細孔に導電性マトリックス404が入るので、粒子が導電性マトリックス404に強固に固定される(アンカリングされる)。したがって、導電性マトリックス404の厚さに対して、粗さ付与材の粒子405の直径を大きい場合でも、粒子405が導電性マトリックス404から脱落しにくい。この点では、図3の粒子405よりも図4の粒子405が好ましいと考えられる。
【0051】
また、導電性マトリックス404の厚さに対して、粗さ付与材の粒子405の直径を大きくすることができるので、表層403の表面粗さを適切に大きくすることができる。これにより、感光体ドラム1の表面に対する帯電ロール40の接触面積を低減し、感光体ドラム1上のトナー粒子中の外添剤などの付着による放電阻害を抑制することができる。このようにして、高い画像品質を長期にわたって維持することができる。」
b 「 【0052】
出願人は、帯電ロール40の複数のサンプルを作製し、各サンプルが粒子405の脱落を低減することができるか否かを調べる耐久試験を行った。
・・・中略・・・
【0062】
上記のゴム基材402の外周面に表層403を形成するためのコーティング液を作製した。コーティング液の組成は、図5に示す通りである。
【0063】
コーティング液中の粗さ付与材の粒子405としては、下記を準備した。
【0064】
真球ウレタン粒子として、根上工業株式会社(日本国石川県)製の「アートパールC-800T」を用いた。その平均直径は6μmであった。その粒子比表面積は0.9m2/gであった。
【0065】
多孔質ウレタン粒子として、根上工業株式会社(日本国石川県)製の「アートパールTE-812T」を用いた。その平均直径は6μmであった。その粒子比表面積は55m2/gであった。当該粒子は、内部まで複数の微細孔が交錯する図4のタイプであった。
【0066】
多孔質ポリアミド粒子として、Arkema S.A.(フランス国コロンブ)製の「Orgasol 2001 UD Nat1」を用いた。その平均直径は5μmであった。その粒子比表面積は8.7m2/gであった。当該粒子は、表面のみに複数の凹部が形成された図3のタイプであった。試験に使用していないが、同直径の真球ポリアミド粒子の粒子比表面積は1.2m2/gである
・・・中略・・・
【0079】
30時間の経過後、粗さ付与材の粒子405が導電性マトリックス404から脱落したか否かを判断した。この判断においては、上記のレーザー顕微鏡「VK-X200」を用いて、1000倍の倍率で撮影した画像を観察した。撮影した画像の領域は、200.0μm×285.1μmであった。各サンプルにつき、サンプル表面(表層403)の2箇所を撮影し、各画像を目視で観察し、粗さ付与材の粒子405が導電性マトリックス404から脱落したか否かを判断した。図6において、「不良」は粒子405の脱落が発見されたことを示し、「良好」はそうではないことを示す。
【0080】
図6から明らかなように、真球ウレタン粒子を粗さ付与材の粒子405として有するサンプル1,2では、粒子405が導電性マトリックス404から脱落した。しかし、多孔質の粒子を粗さ付与材の粒子405として有するサンプル3~7では、粒子405が導電性マトリックス404から脱落しなかった。
・・・中略・・・
【0083】
また、図6の結果によれば、粒子405は、表層403の重量に対して、2%以上、4%以下の割合で含まれていることが好ましい。
【0084】
また、図6の結果によれば、導電性マトリックス404の厚さの平均値は、表面粗さ付与材の粒子405の平均直径の0.5以上、3.4以下であることが好ましい。」
c 「【図5】
[図:0001438974000003.jpg]
【図6】
[図:0001438974000004.jpg]
」
(イ)前記(ア)aの各記載を踏まえれば、本願発明1に特定される、表面粗さ付与材の粒子の平均直径に対する導電性マトリックスの平均厚さの比は、当該比が大きいと、表層の表面粗さが小さくなり過ぎて、感光体ドラム1上のトナー粒子中の外添剤などの付着による放電阻害を促進させる懸念があり、当該比が小さいと、導電性マトリックスと粒子の密着性が小さいため、粒子が導電性マトリックスから脱落しやすいことを考慮して、定められるものと理解できる。また、本願発明1に特定される、表面粗さ付与材の粒子の表層の重量に対する割合は、大きすぎると、表層の表面が粗くなり、画像ムラの原因となるものと理解できる。
一方、【0052】以降の耐久試験は、特定のベース材に対して、特定の材質及び比表面積を有する二種の多孔質の粒子に対して膜厚と添加率を変化させた表層と、特定の材質の真球粒子を用いた表層で、粒子の脱落の有無が変化した結果を示すものであって、多孔質の粒子を用いた場合において、サンプル以外の比表面積、材質、添加率や膜厚で耐久試験の結果がどうなるのか確認されていない。
技術常識からすれば、ベース材と粒子の材質間の接着力や比表面積等に応じて、粒子の脱落の結果は変わり得るところ、前記(ア)b及びcの耐久試験の結果は、限られた特定の多孔質粒子とベース材において、粒子の脱落の程度が良好であったことをいうにすぎず、粒子の平均直径に対する導電性マトリックスの平均厚さの比として、0.5なる下限と3.4なる上限の数値、添加率として2重量%なる下限と4重量%なる上限の数値、及び、これら数値の組み合わせに、それ以上の特段の技術的意義を認めることはできない。
イ 相違点1について
文献2技術事項1は、粗さ付与材の粒子の平均直径に対して導電性マトリックスの厚さを大きくすると、粒子が脱落することを抑制して、表面粗さを長期にわたって維持可能にする傾向を示すものと理解でき、このことは粗さ付与材が真球状か多孔質であるかを問わず、同様の傾向であることは明らかである。そして、引用発明1と文献2技術事項1はともに、表層に表面粗さ付与用の粒子を分散させた帯電ロールに関するものであり、帯電性能の安定性や感光ドラムへの汚染を考慮すれば、引用発明1の「多孔質粒子」においても、その脱落が望ましくないことは当業者に明らかであるところ、引用発明1に文献2技術事項1を採用する動機付けはあるといえる。
したがって、引用発明1の具体化に際し、文献2技術事項1を採用し、「多孔質粒子」の粒子直径に対して「保護層」の「導電剤が分散されたバインダーポリマー」を適切な厚さに調整することは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、文献1技術事項1のとおり、多孔質粒子の平均粒径の1.25又は2.5倍である厚みを有する保護層が通常想定される範囲内のものであるから、「導電剤が分散されたバインダーポリマー」の平均厚さと「多孔質粒子」の平均直径の比として、0.5以上、3.4以下となすことは単なる数値範囲の好適化にすぎない。
したがって、引用発明1において、前記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。
ウ 相違点2について
引用発明1の「多孔質粒子」の配合量は、「バインダーポリマー」の「100部に対して、3~50部の範囲」であり、「少なすぎると、画像に対する効果が充分に発揮されず」、「多すぎると、高硬度化や抵抗調整が困難になる傾向がみられ」るものであるから、当業者がこれら観点に基づいて適宜調整し得る事項であると認められる。
そして、文献2技術事項2に示すとおり、表層を形成するコーティング液中の粗さ付与材の含有率として、2重量%が従来用いられる程度の数値であるところ、引用発明1における「多孔質粒子」の「保護層」の重量に対する割合として、2%以上、4%以下とすることも単なる数値範囲の好適化にすぎない。
エ 格別顕著な効果について
引用発明1の「多孔質粒子」は、保護層を適度な粗面にして帯電むらを防止するための粗さ形成粒子として用いられるものであり、画像に対する効果や抵抗調整等を考慮して配合されるものであるとともに、文献2技術事項1は、「導電性マトリックスの厚さが小さい場合には、粗さ付与材の粒子を保持する能力が低いため、粗さ付与材の粒子の直径に対して、導電性マトリックスは適切な厚さを有するのが好ましい」ものであるから、これらを参酌すれば、引用発明1に文献2技術事項1を採用するに際し、帯電むらのない適度な粗面と粒子の保持能力の確保の両立は当業者が考慮し得る程度のものである。してみると、前記ア(イ)に示した技術的意義に照らして、本願発明1に当業者が予測し得ない格別顕著な効果は見いだせない。
(3)審判請求人の主張について
ア 審判請求書における主張
審判請求人は、令和7年4月25日提出の審判請求書において、概略、以下のとおり主張する。
引用文献2は、単に、本願発明1に対して従来から公知のことである、帯電ロールの表面粗さを調整することにより画像品質を向上することができること、及び表面粗さ付与材の粒子の直径に対して導電性マトリックスの厚さが小さいと、表面粗さ付与材の粒子の保持能力が低くなるということ、を開示するのみであり、引用文献1は、高い画像品質を長期にわたって維持するために、多孔質の表面粗さ付与材の粒子を開示又は示唆していないから、いずれも、高い画像品質を可能にする表面粗さにしつつ、表面粗さ付与材の粒子が脱落することを抑制して、この表面粗さを長期にわたって維持可能にするために、表面粗さ付与材の粒子を多孔質にすることを開示及び示唆しておらず、引用文献2に記載される事項に基づいて、引用発明1に、本願発明1の相違点1,2に係る構成を適用することが動機づけられることはなく、また、これは、当業者が通常の能力の発揮によってなし得ることではない。
イ 主張に対する検討
前記アの主張の趣旨は、引用発明1が高い画像品質を長期にわたって維持するものではないから、多孔質でない粗さ付与粒子に関する文献2技術事項を適用する動機づけがないことをいうものであると理解できる。しかしながら、前記(2)イ及びウに示すとおりであるから、引用発明1において、相違点1に係る本願発明1の構成を備える動機づけはあり、また、相違点2に係る本願発明1の構成は、当業者が通常の創作能力を発揮してなし得る範囲内の事項といえる。したがって、請求人の主張は採用することができない。
(4)小括
以上のとおりであるから、引用発明1において前記相違点1及び2に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明1の奏する作用効果としては、前記(2)エで検討したとおり、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
したがって、本願発明1は、引用発明1、文献1技術事項1、文献2技術事項1及び文献2技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明2とを対比する。
ア 本願発明2と引用発明2は、「帯電ロール」の発明である点で一致する。
イ 引用発明2の「抵抗調整層」は、「形成材料」が「エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合体」と、「アクリロニトリル-ブタジエンゴム」を配合してなるものであるから、ゴム材料から形成されるものと認められる。
したがって、前記2(1)イを踏まえれば、本願発明2の「帯電ロール」と引用発明2の「帯電ロール」は、「芯材と、前記芯材の周囲に配置されたゴム基材と、前記ゴム基材の周囲に配置された表層とを備え」るものである点で一致する。
ウ 引用発明2の「バインダーポリマー」は、「アクリルフッ素樹脂が用いられ」るものであるから、技術常識を踏まえれば、絶縁性と認められる。
したがって、前記2(1)ウ(ア)を踏まえれば、引用発明2の「バインダーポリマー」は、本願発明2の「絶縁体から形成されたベース材」に相当し、引用発明2の「導電剤が分散されたバインダーポリマー」は、本願発明2の「絶縁体から形成されたベース材と前記ベース材に分散された導電材を含む導電性マトリックス」に相当する。
前記2(1)ウ(イ)を踏まえれば、引用発明2の「多孔質粒子」は、本願発明2の「表面粗さ付与材の粒子」に相当する。
エ 本願発明2の「表層」の「導電性マトリックス」は、「表面粗さ付与材の粒子の平均直径の0.5以上、3.4以下である平均厚さを有し」ているのに対し、引用発明2の「保護層」は厚みが「10μm」であり、「多孔質粒子」は「平均粒径1.4μm」であるから、「導電剤が分散されたバインダーポリマー」の平均厚さと「多孔質粒子」の平均直径の比は本願発明2の数値範囲を充足しない。
オ 引用発明2の「多孔質粒子」は、「比表面積9.5m2 /g」であるから、本願発明2の「表面粗さ付与材の粒子」が「8.7m2/g以上、55m2/g以下である比表面積を有する」ものであることを充足する。
カ その他の点は、前記2(1)のとおりであるから、本願発明2と引用発明2とは、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「 芯材と、
前記芯材の周囲に配置されたゴム基材と、
前記ゴム基材の周囲に配置された表層とを備え、
前記表層は、
絶縁体から形成されたベース材と前記ベース材に分散された導電材を含む導電性マトリックスと、
前記導電性マトリックスに分散された表面粗さ付与材の粒子を有し、
前記表面粗さ付与材の粒子は、絶縁体から形成され、多孔質であり、
前記表面粗さ付与材の粒子は、8.7m2/g以上、55m2/g以下である比表面積を有する、
帯電ロール。」
[相違点3]
本願発明2の「表層」の「導電性マトリックス」は、「表面粗さ付与材の粒子の平均直径の0.5以上、3.4以下である平均厚さを有し」ているのに対し、引用発明2の「保護層」は厚みが「10μm」であり、「多孔質粒子」は「平均粒径1.4μm」であるから、「導電剤が分散されたバインダーポリマー」の平均厚さと「多孔質粒子」の平均直径の比は本願発明2の数値範囲を充足しない点。
(2)判断
ア 相違点3について
前記2(2)イ相違点1の項で述べたのと同様に、引用発明2に文献2技術事項1を採用する動機付けはあるといえる。
したがって、引用発明2の「多孔質粒子」の粒子直径に対する「保護層」の「導電剤が分散されたバインダーポリマー」の厚さを、文献2技術事項1を踏まえ、粗面の程度と粒子の保持能力に応じて適宜調整することは、当業者が通常の創作能力を発揮して容易になし得たものである。
また、文献1技術事項1のとおり、多孔質粒子の平均粒径の1.25又は2.5倍である厚みを有する保護層が通常想定される程度のものであるから、「導電剤が分散されたバインダーポリマー」の平均厚さと「多孔質粒子」の平均直径の比として、0.5以上、3.4以下となすことも単なる数値範囲の好適化にすぎない。
したがって、引用発明2において、前記相違点3に係る本願発明2の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。
イ 格別顕著な効果について
前記2(2)エで述べたとおりであるから、前記2(2)ア(イ)に示した技術的意義に照らして、本願発明2に当業者が予測し得ない格別顕著な効果は見いだせない。
(3)小括
以上のとおりであるから、引用発明2において前記相違点3に係る本願発明2の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明2の奏する作用効果としては、前記(2)イで検討したとおり、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
したがって、本願発明2は、引用発明2、文献1技術事項1及び文献2技術事項1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1、文献1技術事項1、文献2技術事項1及び文献2技術事項2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、本願発明2は、引用発明2、文献1技術事項1及び文献2技術事項1に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-006476