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特許異議申立

2022-701307

ショベル及びショベル用周辺監視装置

審判番号
2022-701307
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-242841
登録番号
7130547
請求日
2022年12月26日
審決日
2025年03月19日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】住友建機株式会社
  • 【権利者代理人】伊東 忠重
  • 【権利者代理人】伊東 忠彦
  • 【異議申立人】IPセイル 合同会社
審判長/審判官
  • 審判長 高橋 宣博
  • 審判官 渡辺 努
  • 審判官 畑中 高行
分類
P1651.113-ZB (E02F) / P1651.121-ZB (E02F) / P1651.55 -ZB (E02F) / P1651.536-ZB (E02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7130547号発明「ショベル及びショベル用周辺監視装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7130547号の請求項1~8に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7130547号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成25年5月16日に出願した特願2013-104506号の一部を平成29年5月8日に出願した特願2017-092544号の一部を平成29年9月6日に出願した特願2017-171561号の一部を平成30年12月26日に特願2018-242841号として出願したものであって、令和4年8月26日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和4年9月5日)がされた。 その特許についての本件特許異議申立ての経緯は、以下のとおりである。 令和4年12月26日 :特許異議申立人(以下、「申立人」という。)IPセイル合同会社により請求項1~8に対しての特許異議の申立て 令和5年 6月16日付け:取消理由通知書 同年 8月21日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 9月27日 :意見書の提出(申立人) 同年11月30日付け:訂正拒絶理由通知書 令和6年 1月 4日 :手続補正書及び意見書の提出(特許権者) 同年 3月25日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 5月27日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)(以下、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。) 同年 7月11日 :意見書の提出(申立人) 同年10月30日付け:訂正拒絶理由通知書 同年12月 5日 :手続補正書及び意見書の提出(特許権者)(以下、この補正書における補正を「本件補正」という。) なお、令和5年8月21日提出の訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、令和6年1月4日提出の手続補正書による補正は、同年3月25日付け取消理由通知書(決定の予告)における説示のとおり採用しない。 第2 本件補正について 本件訂正は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、令和6年5月27日に提出された訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。 また、本件補正は、令和6年10月30日付け訂正拒絶理由通知に対して、本件訂正に係る訂正請求書、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書について補正することを求めるものである。 そこで、まず本件訂正及び本件補正の内容を示し、次に本件補正が上記訂正請求書の要旨を変更するものか否かを検討する。 1 本件訂正の内容 本件訂正は、「特許第7130547号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものであり、以下の訂正事項1~3からなるものである。なお、当審にて各訂正事項の訂正箇所に下線を付し、記号1A~8Gを分説するために付した。以下、「構成1A」~「構成8G」という。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「 1A 走行動作を行う下部走行体と、 1B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 1C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 1D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 1E 周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、 を有するショベルであって、 1F 複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、 1G 前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され、 1H 前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に(一部が)配置されている、 1I ショベル。」 と記載されているのを、「 1A 走行動作を行う下部走行体と、 1B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 1C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 1D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 1E 周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、 を有するショベルであって、 1F 複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、 1G’ 複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、 1H’ 複数台の前記カメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、 1X 複数台の前記カメラが撮影した画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示し、前記視点変換画像では、複数台の前記カメラのうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した画像のそれぞれを混在させることによって防止し、且つ、複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示するように構成される、 1I ショベル。」 に訂正する。 また、訂正前の請求項1~7について、請求項2~7はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項2~7も同様に訂正するものである。 なお、令和6年5月27日付け訂正請求書の7(2)アにおける訂正事項1では、構成1Hに関し、「前記上部旋回体の外周よりも内側に一部が配置されている」と記載されているが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1(特許掲載公報における特許請求の範囲の請求項1)では、「前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている」と記載されていることから、上記構成1Hでは、「一部が」を()で記載し、以下では、下記2(1)を除いて、「一部が」が無いものとして検討する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項8に「 8A 走行動作を行う下部走行体と、 8B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 8C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 8D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 8E 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置された複数台のカメラと を有するショベルのショベル用周辺監視装置であって、 8F1 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され、 8F2 複数台の前記カメラとは別に、複数の位置から周囲に存在する物体の距離情報を取得する、 8G ショベル用周辺監視装置。」 と記載されているのを、「 8A 走行動作を行う下部走行体と、 8B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 8C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 8D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 8E’ 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置された複数台のカメラと を有し、 8X 複数台の前記カメラが撮影した画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示し、前記視点変換画像では、複数台の前記カメラのうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した画像のそれぞれを混在させることによって防止し、且つ、ショベル用周辺監視装置の出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示するように構成される ショベルのショベル用周辺監視装置であって、 8F1’ 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、 8F2 複数台の前記カメラとは別に、複数の位置から周囲に存在する物体の距離情報を取得する、 8G ショベル用周辺監視装置。」 に訂正する。 (3)訂正事項3 願書に添付した明細書の段落【0008】に記載された 「上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るショベルは、走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、を有するショベルであって、複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され、前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている。」 を 「上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るショベルは、走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、を有するショベルであって、複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、複数台の前記カメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、複数台の前記カメラが撮影した画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示し、前記視点変換画像では、複数台の前記カメラのうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した画像のそれぞれを混在させることによって防止し、且つ、複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示するように構成される。」 に訂正する。 2 本件補正の内容 本件補正は、上記本件訂正に係る訂正事項を以下のとおり補正するものである。なお、当審にて各訂正事項における本件補正の補正箇所に下線を付し、記号1A~8Gを分説するために付した。以下、「構成1A」~「構成8G」という。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「 1A 走行動作を行う下部走行体と、 1B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 1C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 1D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 1E 周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、 を有するショベルであって、 1F 複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、 1G 前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され、 1H 前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に(一部が)配置されている、 1I ショベル。」 と記載されているのを、「 1A 走行動作を行う下部走行体と、 1B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 1C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 1D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 1E 周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、 を有するショベルであって、 1F 複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、 1G’’ 前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、 1H’’ 前記複数台の前記カメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、 1W 前記周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部を有し、 1X’ 前記複数台の前記カメラが撮影した前記出力画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示し、前記視点変換画像では、前記複数台の前記カメラのうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した前記出力画像のそれぞれを混在させることによって防止し、且つ、前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示するように構成される、 1I ショベル。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8に「 8A 走行動作を行う下部走行体と、 8B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 8C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 8D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 8E 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置された複数台のカメラと を有するショベルのショベル用周辺監視装置であって、 8F1 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され、 8F2 複数台の前記カメラとは別に、複数の位置から周囲に存在する物体の距離情報を取得する、 8G ショベル用周辺監視装置。」 と記載されているのを、「 8A 走行動作を行う下部走行体と、 8B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 8C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 8D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 8E’’ 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置された複数台のカメラと、 8W 周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部と を有し、 8X’ 前記複数台の前記カメラが撮影した前記出力画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示し、前記視点変換画像では、前記複数台の前記カメラのうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した前記出力画像のそれぞれを混在させることによって防止し、且つ、ショベル用周辺監視装置の出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示するように構成される ショベルのショベル用周辺監視装置であって、 8F1’ 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、 8F2’ 前記複数台の前記カメラとは別に、複数の位置から前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する、 8G ショベル用周辺監視装置。」 に訂正する。 (4)訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【0008】に記載された 「上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るショベルは、走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、を有するショベルであって、複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され、前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている。」 を 「上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るショベルは、走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、を有するショベルであって、複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、前記複数台の前記カメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され、前記周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部を有し、前記複数台の前記カメラが撮影した前記出力画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示し、前記視点変換画像では、前記複数台の前記カメラのうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した前記出力画像のそれぞれを混在させることによって防止し、且つ、前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示するように構成される。」 に訂正する。 3 補正の適否についての当審の判断 (1)はじめに 本件補正は、本件訂正の訂正事項1~3について、以下の補正を行うものと解される。 ア 訂正事項1について 本件補正前の訂正事項1について補正した上記2(1)の訂正事項1は、以下の補正事項を含むものである。 (ア)構成1G’及び構成1Xにおける「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」を構成1G’’及び構成1X’において「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」とする補正。 (イ)構成1H’及び構成1Xにおける「複数台の前記カメラ」を構成1H’’及び構成1X’において「前記複数台の前記カメラ」とする補正。 (ウ)構成1H’’の後に構成1Wの「前記周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部を有し、」を追加する補正。 (エ)構成1Xにおける「複数台の前記カメラが撮影した画像」及び「2台の前記カメラが撮像した画像」を構成1X’においてそれぞれ「前記複数台の前記カメラが撮影した前記出力画像」及び「2台の前記カメラが撮像した前記出力画像」とする補正。 イ 訂正事項2について 本件訂正の訂正事項2を削除した上で、上記2(2)の訂正事項2のとおり、「特許請求の範囲の請求項7を削除する」という訂正事項を新たに追加する補正を行うものである。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3についての本件補正は、本件訂正の訂正事項3を削除した上で、上記1(2)の本件補正前の訂正事項2について補正した上記2(3)の訂正事項3を新たに追加する補正を行うものである。 そして、上記1(2)の本件補正前の訂正事項2について補正した上記2(3)の訂正事項3は、以下の補正事項を含むものである。 (ア)構成8E’の末尾に読点を付与して構成8E’’とし、その後に構成8Wの「周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部と」を追加する補正。 (イ)構成8X及び構成8F2における「複数台の前記カメラ」を構成8X’及び構成8F2’において「前記複数台の前記カメラ」とする補正。 (ウ)構成8Xにおける「複数台の前記カメラが撮影した画像」及び「2台の前記カメラが撮像した画像」を構成8X’においてそれぞれ「前記複数台の前記カメラが撮影した前記出力画像」及び「2台の前記カメラが撮像した前記出力画像」とする補正。 (エ)構成8F2における「周囲に存在する物体の距離情報」を構成8F2’において「前記周囲に存在する物体の距離情報」とする補正。 エ 本件補正後の訂正事項4について 本件補正は、本件訂正に、上記1(3)の本件補正前の訂正事項3について補正した上記2(4)の訂正事項4を新たに追加する補正を行うものを含む。 そして、上記1(3)の本件補正前の訂正事項3について補正した上記2(4)の訂正事項4は、願書に添付した明細書の段落【0008】において、上記アの訂正事項1と同様の補正を行うものである。 (2)補正の適否について ア 訂正事項1について (ア)上記(1)ア(ア)の補正によって、構成1G’’及び構成1X’において「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」に「前記」が追加され、当該「前記」が指し示すものは、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」における「複数台」である。 そして、構成1G’及び構成1Xでは「前記」がないことから、構成1G’及び構成1Xの「複数台」は、構成1G’及び構成1Xにおいて初出するものであり、構成1Fとの関係は不明である。 そうすると、構成1G’及び構成1Xは、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の一部のみについて、それぞれ「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ること及びその「出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示する」ことを含むものであるのに対し、構成1G’’及び構成1X’は、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の全てについて、それぞれ「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ること及びその「出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示する」ことを特定するものである。 してみると、上記(1)ア(ア)の補正の前後で、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」のうちどの装置に対して「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ること及びその「出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示する」こととするのかが変更されているから、当該補正は、訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の訂正事項1に関して要旨を変更するものである。 (イ)上記(1)ア(イ)の補正によって、構成1H’’及び構成1X’において「複数台の前記カメラ」に「前記」が追加され、当該「前記」が指し示すものは、構成1Fの「複数台のカメラ」における「複数台」である。 そして、構成1H’及び構成1Xでは「前記」がないことから、構成1H’及び構成1Xの「複数台」は、構成1H’及び構成1Xにおいて初出するものであり、構成1Fとの関係は不明である。 そうすると、構成1H’及び構成1Xは、構成1Fの「複数台の前記カメラ」の一部のみについて、それぞれ「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ること及びそれ「が撮影した前記出力画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成」すること、それ「のうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した前記出力画像のそれぞれを混在させることによって防止」することを含むものであるのに対し、構成1G’’及び構成1X’は、構成1Fの「複数台の前記カメラ」の全てについて、それぞれ「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ること及びそれ「が撮影した前記出力画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成」すること、それ「のうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した前記出力画像のそれぞれを混在させることによって防止」することを特定するものである。 してみると、上記(1)ア(イ)の補正の前後で、構成1Fの「複数台の前記カメラ」のうちどのカメラに対して「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ること及びそれ「が撮影した前記出力画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成」すること、それ「のうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した前記出力画像のそれぞれを混在させることによって防止」することとするのかが変更されているから、当該補正は、訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の訂正事項1に関して要旨を変更するものである。 (ウ)上記(1)ア(ウ)の補正によって、構成1H’’の後に構成1Wの「前記周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部を有し、」を追加することについて、構成1Xに「操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示し、」とあるものの、当該構成1Xの「表示部」の前に「前記」がないことから、当該補正は、当該構成1Xの「表示部」とは別に構成1Wの「表示部」を有するようにすることを含む補正である。 また、構成1Wの「表示部」と構成1Xの「表示部」とが同じ表示部であったとしても、構成1Xの「表示部」は、「視点変換画像を表示し、前記視点変換画像では、・・・複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示するように構成される」のに対し、構成1Wの「表示部」は、「前記周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける」ことから「枠」だけでなく「前記周囲に存在する物体の距離情報と出力画像と」の間の何らかの「対応付け」を表示することができるようにすることを含む補正である。 してみると、上記(1)ア(ウ)の補正の前後で、新たな構成を追加していることから、当該補正は、訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の訂正事項1に関して要旨を変更するものである。 (エ)上記(1)ア(エ)の補正によって、構成1Xにおける「複数台の前記カメラが撮影した画像」及び「2台の前記カメラが撮像した画像」を構成1X’においてそれぞれ「前記複数台の前記カメラが撮影した前記出力画像」及び「2台の前記カメラが撮像した前記出力画像」と補正するが、構成1Xにおける「複数台の前記カメラが撮影した画像」及び「2台の前記カメラが撮像した画像」は、それぞれ「複数台の前記カメラ」の「出力画像」及び「2台の前記カメラ」の「出力画像」であることは明らかであるから、構成1X’において「出力画像」とすることは、訂正請求書の訂正事項1に関して要旨を変更するものではない。 しかしながら、構成1X’において「出力画像」の前に「前記」があることから、当該「前記」が指し示すものは構成1Wの「出力画像」であり、構成1Wに関する上記(ウ)と同様に、訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の訂正事項1に関して要旨を変更するものである。 イ 訂正事項2について 上記(1)イの訂正事項2についての補正は、本件訂正の訂正事項2を削除した上で、「特許請求の範囲の請求項7を削除する」という訂正事項を新たに追加する補正であるが、当該追加した補正は、請求項の削除を行う補正であるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3についての本件補正は、本件訂正の訂正事項3を削除した上で、上記1(2)の本件補正前の訂正事項2について補正した上記2(3)の訂正事項3を新たに追加する補正を行うものであるから、訂正事項の番号を繰り下げており、当該繰り下げに関しては、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、それ以外の補正事項に関して以下で検討する。 (ア)上記(1)ウ(ア)の補正については、上記ア(ウ)と同様であるから、当該補正は、訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の訂正事項3(本件補正前の訂正事項2)に関して要旨を変更するものである。 (イ)上記(1)ウ(イ)の構成8Xにおける「複数台の前記カメラ」を構成8X’において「前記複数台の前記カメラ」とする補正については、上記ア(イ)と同様であるから、当該補正は、訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の訂正事項3に関して要旨を変更するものである。 また、構成8F2における「複数台の前記カメラ」を構成8F2’において「前記複数台の前記カメラ」とする補正については、構成8Gの「ショベル用周辺監視装置」が、「複数台の前記カメラとは別に」「周囲に存在する物体の距離情報を取得する」ことは、「ショベル用周辺監視装置」が、「カメラ」と別の装置であることを特定することであるから、「複数台」と「前記複数台」とで当該特定事項を変更するものでなく、当該補正は、訂正請求書の訂正事項3(本件補正前の訂正事項2)に関して要旨を変更するものではない。 (ウ)上記(1)ウ(ウ)の補正のうち、構成8X’において「出力画像」とすることについては、上記ア(エ)と同様であるから、訂正請求書の訂正事項3(本件補正前の訂正事項2)に関して要旨を変更するものではない しかしながら、構成8X’において「出力画像」の前に「前記」があることについては、上記ア(エ)と同様に、訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の訂正事項3(本件補正前の訂正事項2)に関して要旨を変更するものである。 (エ)上記(1)ウ(エ)の補正によって、構成8F2における「周囲に存在する物体の距離情報」を構成8F2’において「前記周囲に存在する物体の距離情報」と補正するが、構成8F2’において「前記」が指し示すものは構成8Wの「周囲に存在する物体の距離情報」であり、上記(ア)と同様に、訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の訂正事項3(本件補正前の訂正事項2)に関して要旨を変更するものである。 エ 本件補正後の訂正事項4について 本件補正後の訂正事項4についての本件補正は、上記1(3)の本件補正前の訂正事項3について補正した上記2(4)の訂正事項4を新たに追加する補正を行うものであるから、訂正事項の番号を繰り下げており、当該繰り下げに関しては、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、それ以外の補正事項に関して以下で検討する。 上記(1)エのように、本件補正後の訂正事項4についての本件補正は、願書に添付した明細書の段落【0008】において、上記(1)アの訂正事項1と同様の補正を行うものであるから、上記アと同様に、当該補正は、訂正事項を変更するものであり、訂正請求書(本件補正前の訂正事項3)の要旨を変更するものである。 (3)令和6年12月5日付け意見書について 令和6年12月5日付け意見書において特許権者は、下記ア及びイの主張をしている。 ア 「また、特許権者は、以上の見解を維持しつつ、権利の早期の安定化を図るために、訂正事項1が訂正の目的を満たすものであり、新規事項の追加に該当せず、且つ、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないことをより明確にすべく、請求項1の内容を修正しました。具体的には、請求項1の記載「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」、「複数台の前記カメラ」を、それぞれ、「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」、「前記複数台の前記カメラ」に戻しました。」(第7ページ第10行~第17行) イ 「また、特許権者は、以上の見解を維持しつつ、権利の早期の安定化を図るために、訂正事項1及び訂正事項3(旧訂正事項2)が訂正の目的を満たすものであり、新規事項の追加に該当せず、且つ、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないことをより明確にすべく、請求項1及び請求項8の内容を修正しました。具体的には、請求項7の内容を請求項1に統合し、訂正後の請求項1が訂正前の請求項7を減縮したものに対応すること(訂正前の請求項1が実質的に削除されたこと)を明確にしました。」(第10ページ第2行~第8行) 上記アの主張については、本件補正の適否の判断は、令和6年5月27日付け訂正請求書の要旨を変更するか否かの判断であるから、請求項の記載を訂正前の記載に戻したとしても、当該戻すことが訂正請求書の要旨を変更することであれば認められず、上記「前記」を付加することが要旨の変更であることは、上記(2)ア(ア)及び(2)ア(イ)のとおりであるから、上記アの主張を採用することはできない。なお、訂正事項3(本件補正前の訂正事項2)及び訂正事項4(本件補正前の訂正事項3)の「前記」を付加することについても同様である。 上記イの主張については、従属請求項の内容を独立請求項に付加したとしても、当該従属請求項の内容の付加が訂正請求書の要旨を変更することであれば認められず、本件の請求項7の内容を請求項1に統合し、訂正後の請求項1が訂正前の請求項7を減縮したものに対応したことが、要旨の変更となることは、上記(2)ア(ウ)のとおりであるから、上記イの主張を採用することはできない。なお、訂正事項3(本件補正前の訂正事項2)及び訂正事項4(本件補正前の訂正事項3)の請求項7の内容の統合についても同様である。 なお、令和6年12月5日付け意見書における上記ア及びイ以外の主張については、下記第3の3(1)において説示した。 4 本件補正についてのまとめ 以上のとおり、本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項に適合しないから、本件補正を採用しない。 第3 本件訂正について 上記第2の4のとおり、本件補正を採用しないことから、本件訂正の内容は、上記第2の1のとおりである。 1 一群の請求項について 請求項2~7は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について (ア)構成1G’について 構成1G’の訂正は、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」に関して、訂正前の構成1Gにおいて「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」とあるものを、訂正後の構成1G’において「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」とするものである。 a 構成1Gでは「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」とあるものを、構成1G’では「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」とする訂正(以下、「訂正1」という。)に関し、構成1Gの文頭の「前記」が指し示すものは、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」における「複数台」であるのに対し、構成1G’の文頭には「前記」がないことから、構成1G’の「複数台」は、構成1G’において初出するものであり、構成1Fとの関係の有無は不明であるといえる。 そうすると、構成1Gは、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の全てについて、「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」ることを特定するのに対し、構成1G’は、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の一部のみについて、「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ることを特定することも含むものである。 してみると、訂正1後の構成1G’は、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」と「上部旋回体」との配置関係について、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の全てだけでなく、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の一部のみの複数台について特定することを含むこととなるから、訂正1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえない。 また、訂正1が、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのいずれかを目的とするものでないことは明らかである。 b 構成1Gでは「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」とあるものを、構成1G’において「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」とする訂正(以下、「訂正2」という。)は、「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」が「上部旋回体の外周よりも内側に」「配置され」る際に、構成1G’において「内端が位置するように」という事項を直列的に付加したものであり、発明を特定するための事項の直列的付加により特許請求の範囲を限定する訂正であるから、訂正2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 (イ)構成1H’について 構成1H’の訂正は、構成1Fの「複数台のカメラ」に関して、訂正前の構成1Hにおいて「前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」とあるものを、訂正後の構成1H’において「複数台の前記カメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」とするものである。 a 構成1Hでは「前記複数台のカメラ」とあるものを、構成1H’では「複数台の前記カメラ」とする訂正(以下、「訂正3」という。)に関し、構成1Hの文頭の「前記」が指し示すものは、構成1Fの「複数台のカメラ」における「複数台」であるのに対し、構成1H’の文頭には「前記」がないことから、構成1H’の「複数台」は、構成1G’において初出するものであり、構成1Fとの関係の有無は不明であるといえる。 そうすると、構成1Hは、構成1Fの「複数台のカメラ」の全てについて、「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」ることを特定するのに対し、構成1H’は、構成1Fの「複数台のカメラ」の一部のみについて、「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ることを特定することも含むものである。 してみると、訂正3後の構成1H’は、「複数台の前記カメラ」と「上部旋回体」との配置関係について、「複数台のカメラ」の全てだけでなく、「複数台のカメラ」の一部のみの複数台について特定することを含むこととなるから、訂正3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえない。 また、訂正3が、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのいずれかを目的とするものでないことは明らかである。 b 構成1Hでは「カメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」とあるものを、構成1H’において「カメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」とする訂正(以下、「訂正4」という。)は、「カメラ」が「上部旋回体の外周よりも内側に」「配置され」る際に、構成1H’において「内端が位置するように」という事項を直列的に追加したものであり、発明を特定するための事項の直列的付加により特許請求の範囲を限定する訂正であるから、訂正4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 (ウ)構成1Xについて 構成1Xの訂正(以下、「訂正5」という。)は、構成1Iの「ショベル」に関して、「複数台の前記カメラが撮影した画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示し、前記視点変換画像では、複数台の前記カメラのうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した画像のそれぞれを混在させることによって防止し、且つ、複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示するように構成され」るという事項を直列的に付加したものであり、発明を特定するための事項の直列的付加により特許請求の範囲を限定する訂正としたものであるから、訂正5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 (エ)訂正事項1の訂正の目的のまとめ 上記(ア)a及び(イ)aのように、訂正1及び訂正3は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではない。 よって、訂正事項1の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではない。 イ 新規事項の追加の有無について (ア)構成1G’について a 上記ア(ア)aのように、訂正1後の構成1G’は、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」と「上部旋回体」との配置関係について、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の全てだけでなく、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の一部のみの複数台についても特定することを含むが、図11には、上記「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」と「上部旋回体」との配置関係について、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の全ての場合については特定されているものの、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の一部のみの複数台の場合については特定されておらず、また願書に添付した(設定登録時の)明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)の他の記載から見て、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の一部のみの複数台について特定することは記載されておらず、さらに自明でもない。 したがって、訂正1は、願書に添付した明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 b 構成1G’の訂正2後の構成は、図11に記載されている。 (イ)構成1H’について a 上記ア(イ)aのように、訂正3後の構成1H’は、「複数台の前記カメラ」と「上部旋回体」との配置関係について、「複数台の前記カメラ」の全てだけでなく、「複数台の前記カメラ」の一部のみの複数台について特定することを含むが、図11には、上記「複数台の前記カメラ」と「上部旋回体」との配置関係について、「複数台の前記カメラ」の全ての場合については特定されているものの、「複数台の前記カメラ」の一部のみの複数台の場合については特定されておらず、また願書に添付した明細書等の他の記載から見ても、「複数台の前記カメラ」の一部のみの複数台について特定することは記載されておらず、さらに自明でもない。 したがって、訂正3は、願書に添付した明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 b 構成1H’の訂正4後の構成は、図11に記載されている。 (ウ)構成1Xについて 構成1Xは、段落【0015】、【0052】、【0133】、【0134】、【0147】、【0171】、【0176】、【0255】、【0284】、図10、図11及び図18に記載されている。 (エ)新規事項の追加の有無についてのまとめ 上記(ア)a及び(イ)aのように、訂正1及び訂正3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 よって、訂正事項1の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について (ア)構成1G’について a 上記ア(ア)aのように、訂正1後の構成1G’は、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」と「上部旋回体」との配置関係について、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の全てだけでなく、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の一部のみの複数台について特定することを含むことから、請求項に記載した事項をより広い意味を表す表現に入れ替える訂正といえ、訂正の前後で拡張があり、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。 b 訂正2前の構成は、令和2年3月4日付け意見書に記載されているように、「ショベルをトレーラに積載して搬送する際に、「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置・・・」が損傷することを防止することができ」るという作用効果を奏する構成であるが、訂正2後の構成では、「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」が「前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ることから、「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の外端に関して特定されておらず、外端が「上部旋回体の外周よりも」外側に「配置され」ることも含むものであり、この場合、上記作用効果を奏しない。 また、訂正2後の構成によると、図2と図19、24及び30とを比較して明らかなように、ショベルの下方向における死角となる領域が小さくなって、当該死角となる領域に存在する地物までの距離をより容易に認識することができるという、訂正2前の構成によっては奏さなかった新たな作用効果を奏するものである。 してみると、訂正2は、特許請求の範囲をずらす訂正又は発明の対象を変更する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 (イ)構成1H’について a 上記ア(イ)aのように、訂正3後の構成1H’は、「複数台のカメラ」と「上部旋回体」との配置関係について、「複数台のカメラ」の全てだけでなく、「複数台のカメラ」の一部のみの複数台について特定することを含むことから、請求項に記載した事項をより広い意味を表す表現に入れ替える訂正といえ、訂正の前後で拡張があり、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。 b 訂正4前の構成は、令和2年3月4日付け意見書に記載されているように、「ショベルをトレーラに積載して搬送する際に、「・・・前記複数台のカメラ・・・」が損傷することを防止することができ」るという作用効果を奏する構成であるが、訂正4後の構成では、「カメラ」が「前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ることから、「カメラ」の外端に関して特定されておらず、外端が「上部旋回体の外周よりも」外側に「配置され」ることも含むものであり、この場合、上記作用効果を奏しない。 また、訂正4後の構成によると、図2と図19、24及び30とを比較して明らかなように、ショベルの下方向における死角となる領域が小さくなって、当該死角となる領域に存在する地物の位置をより容易に認識することができるという、訂正4前の構成によっては奏さなかった新たな作用効果を奏するものである。 してみると、訂正4は、特許請求の範囲をずらす訂正又は発明の対象を変更する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 (ウ)構成1Xについて 訂正5後の構成1Xの構成によると、段落【0174】、【0176】にあるように、「ショベル60の操作者は、ショベル60の周囲に存在する地物の位置、及びその地物までの距離をより容易に認識することができ」、また、「操作者から見て死角となる領域に存在する地物の位置、及びその地物までの距離をより容易に認識することができる」という、訂正5前の特許請求の範囲の構成によっては奏さなかった新たな作用効果を奏するものである。 してみると、訂正5は、特許請求の範囲をずらす訂正又は発明の対象を変更する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 (エ)特許請求の範囲の拡張又は変更の存否についてのまとめ 上記(ア)~(ウ)のように、訂正1~5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。 よって、訂正事項1の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について (ア)構成8E’について 構成8E’の訂正は、訂正前の構成8Eにおいて「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置された複数台のカメラ」とあるものを訂正後の構成8E’において「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置された複数台のカメラ」とする訂正(以下、「訂正6」という。)である。 そして、訂正6は、「カメラ」が「上部旋回体の外周よりも内側に」「配置され」る際に、構成8E’において「内端が位置するように」という事項を直列的に追加したものであり、発明を特定するための事項の直列的付加により特許請求の範囲を限定する訂正であるから、訂正6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 (イ)構成8Xについて 構成8Xの訂正(以下、「訂正7」という。)は、構成8Gの「ショベル用周辺監視装置」に関して、「複数台の前記カメラが撮影した画像に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示し、前記視点変換画像では、複数台の前記カメラのうちの2台の前記カメラのそれぞれの撮像範囲の重複領域における物体の画像の消失を、2台の前記カメラが撮像した画像のそれぞれを混在させることによって防止し、且つ、ショベル用周辺監視装置の出力に基づいて前記重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠を表示するように構成される」という事項を直列的に付加したものであり、発明を特定するための事項の直列的付加により特許請求の範囲を限定する訂正としたものであるから、訂正7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 (ウ)構成8F1’について 構成8F1’の訂正は、構成8Gの「ショベル用周辺監視装置」に関して、訂正前の構成8F1において「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」とあるものを訂正後の8F1’において「前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」とする訂正(以下、「訂正8」という。)である。 そして、訂正8は、「ショベル用周辺監視装置」が「上部旋回体の外周よりも内側に」「配置され」る際に、構成8F1’において「内端が位置するように」という事項を直列的に追加したものであり、発明を特定するための事項の直列的付加により特許請求の範囲を限定する訂正であるから、訂正8は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 (エ)訂正事項2の訂正の目的のまとめ 上記(ア)~(ウ)のように、訂正6~8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 よって、訂正事項2の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について. 構成8E’及び8F1’の訂正事項は、図11に記載され、構成8Xの訂正事項は、段落【0015】、【0052】、【0133】、【0134】、【0147】、【0171】、【0176】、【0255】、【0284】、図10、図11及び図18に記載されている。 したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 よって、訂正事項2の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について (ア)構成8E’について 訂正6前の構成は、令和2年3月4日付け意見書に記載されているように、「ショベルをトレーラに積載して搬送する際に、「・・・前記複数台のカメラ・・・」が損傷することを防止することができ」るという作用効果を奏する構成であるが、訂正6後の構成では、「カメラ」が「前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ることから、「カメラ」の外端に関して特定されておらず、外端が「上部旋回体の外周よりも」外側に「配置され」ることも含むものであり、この場合、上記作用効果を奏しない。 また、訂正6後の構成によると、図2と図19、24及び30とを比較して明らかなように、ショベルの下方向における死角となる領域が小さくなって、当該死角となる領域に存在する地物の位置をより容易に認識することができるという、訂正6前の構成によっては奏さなかった新たな作用効果を奏するものである。 してみると、訂正6は、特許請求の範囲をずらす訂正又は発明の対象を変更する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 (イ)構成8Xについて 訂正7後の構成8Xの構成によると、段落【0174】、【0176】にあるように、「ショベル60の操作者は、ショベル60の周囲に存在する地物の位置、及びその地物までの距離をより容易に認識することができ」、また、「操作者から見て死角となる領域に存在する地物の位置、及びその地物までの距離をより容易に認識することができる」という、訂正7前の特許請求の範囲の構成によっては奏さなかった新たな作用効果を奏するものである。 してみると、訂正7は、特許請求の範囲をずらす訂正又は発明の対象を変更する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 (ウ)構成8F1’について 訂正8前の構成は、令和2年3月4日付け意見書に記載されているように、「ショベルをトレーラに積載して搬送する際に、「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置・・・」が損傷することを防止することができ」るという作用効果を奏する構成と同様の作用効果を奏する構成であるから、「ショベル用周辺監視装置」に関して、「ショベルをトレーラに積載して搬送する際に」、「損傷することを防止することができ」るという作用効果を奏する構成であるが、訂正8後の構成では、「ショベル用周辺監視装置」が「前記上部旋回体の外周よりも内側に内端が位置するように配置され」ることから、「ショベル用周辺監視装置」の外端に関して特定されておらず、外端が「上部旋回体の外周よりも」外側に「配置され」ることも含むものであり、この場合、上記作用効果を奏しない。 また、訂正8後の構成によると、図2と図19、24及び30とを比較して明らかなように、ショベルの下方向における死角となる領域が小さくなって、当該死角となる領域に存在する地物までの距離をより容易に認識することができるという、訂正8前の構成によっては奏さなかった新たな作用効果を奏するものである。 してみると、訂正8は、特許請求の範囲をずらす訂正又は発明の対象を変更する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 (エ)特許請求の範囲の拡張又は変更の存否についてのまとめ 上記(ア)~(ウ)のように、訂正6~8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。 よって、訂正事項2の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。 (3)訂正事項3 訂正事項3の訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明 細書の訂正であるから、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載 を正す訂正であるといえ、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。 しかしながら、訂正事項3の訂正は、訂正事項1の特許請求の範囲の請求項1に対する訂正と同様の訂正であるから、上記(1)イと同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合せず、また、発明の詳細な説明中の記載の訂正が、請求項に記載された事項の解釈に影響を与え、その結果、上記(1)ウのように実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、上記特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。 3 意見書について (1)令和6年12月5日付け意見書について 令和6年12月5日付け意見書において特許権者は、下記ア~ウの主張をしている。 ア 「このご指摘は、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」が上部旋回体に配置された「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の全て(例えば、左側方カメラ、右側方カメラ、及び後方カメラのそれぞれの撮像範囲に対応するように配置される3台の「距離情報を取得する装置」の全て)であることを前提とされています。 しかしながら、請求項1は、構成1Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」が‘‘上部旋回体に配置された「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の全て’’である点を限定していません。 そのため、訂正1前の構成1Gは、訂正1後の構成1G’と同様に、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」と「上部旋回体」との配置関係について、‘‘上部旋回体に配置された「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の全て’’だけでなく、上部旋回体に配置された「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」の一部のみの複数台について特定することを含むことになります。 すなわち、訂正1に関する「前記」の有無は、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」と「上部旋回体」との配置関係に影響を与えるものではありません。 したがって、訂正1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると考えます。訂正3についても同様です。」(第6ページ第18行~第7ページ9行) イ 「このご指摘は、[前提1]訂正2後の構成(すなわち、外端が「上部旋回体の外周よりも」外側に「配置され」る構成)では「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置・・・」が損傷することを防止することができる」という作用効果を奏しない点、及び、[前提2]訂正2前の構成では「ショベルの下方向における死角となる領域が小さくなって、当該死角となる領域に存在する地物までの距離をより容易に認識することができる」という作用効果を奏しない点を前提とされています。 しかしながら、[前提1]に関しては、訂正2後の構成(すなわち、外端が「上部旋回体の外周よりも」外側に「配置され」る構成)であっても、(内端を含む)全体が上部旋回体の外周よりも外側に配置される構成に比べれば、「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置・・・」が損傷することを防止することができる」という作用効果を奏することは明らかであると考えます。そのため、[前提1]は成り立たないと考えます。 また、[前提2]に関しては、図2と図19、24及び30とを比較することによって導き出された「ショベルの下方向における死角となる領域が小さくな(る)」という作用効果は、撮像方向又は垂直画角を変えることによって得られる作用効果であり、上部旋回体の外周よりも内側に内端を配置することによって得られる作用効果ではありません。また、請求項1には撮像方向又は垂直画角に関する限定はありません。したがって、「ショベルの下方向における死角となる領域が小さくなって、当該死角となる領域に存在する地物までの距離をより容易に認識することができる」という作用効果を奏することができるか否かという観点では、訂正2前の構成と訂正2後の構成との間に違いはないと考えます。そのため、[前提2]は成り立たないと考えます。訂正4、訂正6、及び訂正8についても同様です。」(第8ページ第5行~第9ページ第2行) ウ 「このご指摘は、訂正5前の特許請求の範囲の構成では、「ショベル60の操作者は、ショベル60の周囲に存在する地物の位置、及びその地物までの距離をより容易に認識することができ」、また、「操作者から見て死角となる領域に存在する地物の位置、及びその地物までの距離をより容易に認識することができる」という作用効果を奏することができないという点を前提とされています。 しかしながら、訂正5前の特許請求の範囲の構成は、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」と「複数台のカメラ」とを備えています。そのため、訂正5前の特許請求の範囲の構成が、「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」が出力する距離情報、及び、「複数台のカメラ」が出力する出力画像を利用できることは自明であり、距離情報及び出力画像の利用方法として、距離情報に基づいて警報を出力したり、警告灯を点灯・点滅させたり、距離情報及び出力画像を表示したりすることも自明であると考えます(段落【0053】及び段落【0169】参照)。そのため、訂正5前の特許請求の範囲の構成では上述の作用効果を奏することができないとする前提は成り立たないと考えます。訂正7についても同様です。」(第9ページ第13行~第10ページ第1行) 上記アの主張については、当該指摘事項において「含む」と記載しているように、「全て」や「一部」はあくまでも例示であり、「前記」がある場合、構成1Fと構成1Gとは、同じ「装置」を対象とし、「前記」がない場合、構成1Fと構成1G’とは、異なる「装置」が対象となり得ることを説示したものであるから、上記アの主張を採用することはできない。 上記イの主張については、[前提1]に関し、「損傷することを防止する」とは文字どおり損傷しないようにすることであり、損傷することがあり得る、外端が「上部旋回体の外周よりも」外側に「配置され」る構成について、「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置・・・」が損傷することを防止することができる」という作用効果を奏しないことから上記イの[前提1]に関する主張を採用することはできない。 また、[前提2]に関し、外端の位置によってショベルの下方向における死角となる領域が変化することは明らかであり、外端が「上部旋回体の外周よりも」外側に「配置され」る構成の場合、外側に配置されない構成よりも死角となる領域よりも小さくなるから、上記イの[前提2]に関する主張を採用することはできない。 上記ウの主張については、当該指摘事項は、自明な事項と比較して「より容易に認識することができ」るという作用効果を奏することができるか否かについての指摘であって、請求人の主張する自明な事項についての作用効果とは異なるから、上記ウの主張を採用することはできない。 (2)令和6年5月27日付け意見書について 令和6年5月27日付け意見書において特許権者は、下記ア及びイの主張をしている。 ア 「(3)訂正について」において、「カテゴリーや対象、目的を変更するものではないため、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではありません。」(第3ページ第10行~第5ページ第11行) イ 「(4)本件特許が取消理由を有しない理由の説明」において、「(4-1)理由1(新規事項)及び理由2(サポート要件)」に関し、「したがって、本件の訂正後の請求項1、本件の訂正後の請求項1の従属項である、本件の訂正後の請求項2~7、及び、本件の訂正後の請求項8のそれぞれに対する、新規事項に関する取消理由及びサポート要件に関する取消理由は解消されたものと考えます。」及び「(4-2)理由3(新規性)及び理由4(進歩性)」に関し、「以上より、本件の訂正後の請求項1及び請求項8のそれぞれに係る発明は、引用文献1~引用文献8の何れにも開示されておらず、引用文献1~引用文献8のそれぞれに開示された構成又はそれらの組み合わせに基づいて当業者が容易に発明することができたものでもありません。また、本件の訂正後の請求項2~7は、本件の訂正後の請求項1の内容を含む従属項であるため、本件の訂正後の請求項2~7のそれぞれに係る発明は、本件の訂正後の請求項1に係る発明と同様に、引用文献1~引用文献8の何れにも開示されておらず、引用文献1~引用文献8のそれぞれに開示された構成又はそれらの組み合わせに基づいて当業者が容易に発明することができたものでもありません。」(第5ページ第12行~第10ページ第10行) 上記アの主張については、上記2(1)及び2(2)のとおり、訂正事項1及び2が、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではなく、また、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定にも適合せず、さらに、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合しないこと、上記2(3)のとおり、訂正事項3が、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合せず、また、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合しないことから、上記アの主張を採用することはできない。 上記イの主張については、本件訂正が認められた場合の主張であり、本件訂正は、上記2(1)、2(2)及び2(3)のとおり認められないから、上記イの主張を採用することはできない。 4 本件訂正についてのまとめ 上記2(1)及び2(2)のとおり、訂正事項1及び2は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではなく、また、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定にも適合せず、さらに、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合しないことから、訂正事項1及び2は、いずれも訂正が認められない。 また、上記2(3)のとおり、訂正事項3は、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合せず、また、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合しないことから、訂正事項3は、訂正が認められない。 よって、訂正後の請求項〔1-7〕、〔8〕について訂正は認められない。 第4 本件特許発明について 上記第3のとおり、本件訂正は認められないから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明8」という。また、本件特許発明1~8を総称して「本件発明」という。)は、令和4年4月25日付け手続補正書における手続補正(以下、「本件補正2」という)によって補正された請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(下線は、令和4年4月25日付け手続補正書における手続補正によって補正された補正部分を当審にて付したものである。) 〔本件特許発明1〕 「1A 走行動作を行う下部走行体と、 1B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 1C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 1D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 1E 周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、 を有するショベルであって、 1F 複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、 1G 前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され、 1H 前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている、 1I ショベル。」 〔本件特許発明2〕 「 前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて、前記走行動作を制御する制御部を有する、 請求項1に記載のショベル。」 〔本件特許発明3〕 「 前記制御部は、前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づく前記走行動作を制御する処理を、所定の制御周期で繰り返し実行する、 請求項2に記載のショベル。」 〔本件特許発明4〕 「 前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は、前記周囲に存在する物体を撮像することで距離情報を取得する、 請求項1乃至3の何れかに記載のショベル。」 〔本件特許発明5〕 「 前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて、所定の高さ以上となる地物の有無を判断する、 請求項1乃至4の何れかに記載のショベル。」 〔本件特許発明6〕 「 前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて、設置面から所定距離以上の深さの地物の有無を判断する、 請求項1乃至4の何れかに記載のショベル。」 〔本件特許発明7〕 「 前記周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部を有する、 請求項1乃至6の何れかに記載のショベル。」 〔本件特許発明8〕 「8A 走行動作を行う下部走行体と、 8B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 8C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 8D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 8E 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置された複数台のカメラと を有するショベルのショベル用周辺監視装置であって、 8F1 前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され 8F2 複数台の前記カメラとは別に、複数の位置から周囲に存在する物体の距離情報を取得する、 8G ショベル用周辺監視装置。」 第5 取消理由の概要 訂正前の請求項1~8に対して、当審が令和6年3月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)(新規事項)本件特許発明1~8に係る特許は、令和4年4月25日付け手続補正書でした補正が願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)(サポート要件)本件特許発明1~8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)(新規性)請求項1及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (4)(進歩性)請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1~6号証、令和元年10月29日付け拒絶理由通知で引用された引用文献3であって令和4年2月15日付け拒絶理由通知で引用された引用文献4である特開平11-222882号公報及び当審で発見した特開2006-173999号公報に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 本件特許は、上記(1)~(4)の理由によって取り消すべきものです。 第6 当審の判断 1 新規事項の追加の有無について (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1の記載について 本件特許発明1の記載は、上記第4に記載したとおりである。 また、令和2年3月4日付け手続補正書における手続補正によって補正された本件補正2前の請求項1の記載は、以下のとおりである。(下線は、令和2年3月4日付け手続補正書における手続補正によって補正された補正部分を当審にて付したものである。) 「A 走行動作を行う下部走行体と、 B 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 E 周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、 を有するショベルであって、 F 複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、 J 前記上部旋回体に配置される前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と前記複数台のカメラとは前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている、 I ショベル。」 本件補正2は、本件補正2前に構成Jの「前記上部旋回体に配置される前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と前記複数台のカメラとは前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている」とされていたものを、本件補正2後に構成Gの「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」及び構成Hの「前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている」(以下、「本件補正2事項」という。)へと補正するものである。 イ 当初明細書等の記載 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。(下線は、当審にて付したものである。) (ア)特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 走行動作を行う下部走行体と、 前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、 周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、 を有するショベルであって、 前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置とは別に、カメラが前記上部旋回体に配置されている、 ショベル。」 「【請求項8】 走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、前記ブームに取り 付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、カメラとを有するショベルのショベ ル用周辺監視装置であって、 前記カメラとは別に前記上部旋回体に配置され、周囲に存在する物体の距離情報を取得 する、 ショベル用周辺監視装置。」 (イ)明細書の記載 「【0015】 また、上部旋回体63は、その前方左側部にキャブ(運転室)64を備え、その前方中央部に掘削アタッチメントEを備え、その右側面及び後面にカメラ2(右側方カメラ2R、後方カメラ2B)及びステレオカメラ6(右側方ステレオカメラ6R、後方ステレオカメラ6B)を備えている。なお、キャブ64内の操作者が視認し易い位置には表示部5が設置されている。」 「【0018】 カメラ2は、ショベル60の周囲を映し出す入力画像を取得するための装置であり、例えば、キャブ64にいる操作者の死角となる領域を撮像できるよう上部旋回体63の右側面及び後面に取り付けられる(図2参照。)、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備えた右側方カメラ2R及び後方カメラ2Bである。なお、カメラ2は、上部旋回体63の右側面及び後面以外の位置(例えば、前面及び左側面である。)に取り付けられていてもよく、広い範囲を撮像できるよう広角レンズ又は魚眼レンズが装着されていてもよい。」 「【0023】 ステレオカメラ6は、ショベル60の周囲に存在する物体の距離情報の二次元配列を取得するための装置であり、例えば、キャブ64にいる操作者の死角となる領域を撮像できるよう上部旋回体63の右側面及び後面に取り付けられる(図2参照。)。なお、ステレオカメラ6は、上部旋回体63の前面、左側面、右側面、及び後面のうちの何れか1つに取り付けられていてもよく、全ての面に取り付けられていてもよい。」 「【0141】 図11は、画像生成装置100を搭載するショベル60の上面図である。図11に示す実施例では、ショベル60は、3台のカメラ2(左側方カメラ2L、右側方カメラ2R、及び後方カメラ2B)と3台のステレオカメラ6(左側方ステレオカメラ6L、右側方ステレオカメラ6R、及び後方ステレオカメラ6B)とを備える。なお、図11の一点鎖線で示す領域CL、CR、CBは、それぞれ、左側方カメラ2L、右側方カメラ2R、後方カメラ2Bの撮像範囲を示す。また、図11の点線で示す領域ZL、ZR、ZBは、それぞれ、左側方ステレオカメラ6L、右側方ステレオカメラ6R、後方ステレオカメラ6Bの撮像範囲を示す。」 (ウ)図面の記載 「【図2】 [図:0001423420000001.jpg] 」 「【図11】 [図:0001423420000002.jpg] 」 (エ)当初明細書等に記載された技術事項 a 請求項1及び8には、距離情報を取得する装置とカメラとが別で上部旋回体に配置されることが記載されている。 b また、明細書には、上部旋回体63は、その右側面及び後面にカメラ2(右側方カメラ2R、後方カメラ2B)及びステレオカメラ6(右側方ステレオカメラ6R、後方ステレオカメラ6B)を備え(【0015】)、カメラ2は、上部旋回体63の右側面及び後面に取り付けられ、カメラ2は、上部旋回体63の右側面及び後面以外の位置(例えば、前面及び左側面である。)に取り付けられていてもよく(【0018】)、ステレオカメラ6は、ショベル60の周囲に存在する物体の距離情報を取得するための装置であり、上部旋回体63の右側面及び後面に取り付けられ、ステレオカメラ6は、上部旋回体63の前面、左側面、右側面、及び後面の全ての面に取り付けられていてもよい(【0023】)ことが記載されている。 c さらに、図2によると、後方カメラ2B及び後方ステレオカメラ6Bは、上部旋回体63の外周よりも内側に配置されているといえるが、右側方カメラ2R及び右側方ステレオカメラ6Rは、上部旋回体63の外周よりも内側に配置されているか否か不明であるといえる。 d 加えて、明細書の【0141】によれば、図11は、ショベル60の上面図であり、ショベル60は、3台のカメラ2(左側方カメラ2L、右側方カメラ2R、及び後方カメラ2B)と3台のステレオカメラ6(左側方ステレオカメラ6L、右側方ステレオカメラ6R、及び後方ステレオカメラ6B)とを備え、ショベル60の上面図である図11によれば、3台のカメラ2(左側方カメラ2L、右側方カメラ2R、及び後方カメラ2B)と3台のステレオカメラ6(左側方ステレオカメラ6L、右側方ステレオカメラ6R、及び後方ステレオカメラ6B)とは、それぞれ上部旋回体63の外周よりも外側に出た部分がある態様で配置されているといえる。 ウ 新規事項の追加の有無に係る判断 本件補正2事項は、上記アのように、構成Gの「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」ていること及び構成Hの「前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている」ことである。 一方、当初明細書等には、上記イ(エ)bによると、上部旋回体の前面、左側面、右側面、及び後面の全ての面にステレオカメラが取り付けられること、上部旋回体は、その右側面及び後面、さらに右側面及び後面以外の位置である前面及び左側面にカメラが取り付けられることが記載されているから、構成Gの「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置に」「配置され」ていること及び構成Hの「前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置に」「配置されている」ことは記載されているといえる。 しかしながら、上記イ(エ)cによると、後方カメラ及び後方ステレオカメラは、上部旋回体の外周よりも内側に配置されているといえるが、右側方カメラ及び右側方ステレオカメラは、上部旋回体の外周よりも内側に配置されているか否か不明であること及び上記イ(エ)dによると、ショベルは、3台のカメラ(左側方カメラ、右側方カメラ、及び後方カメラ)と3台のステレオカメラ(左側方ステレオカメラ、右側方ステレオカメラ、及び後方ステレオカメラ)とを備え、3台のカメラ(左側方カメラ、右側方カメラ、及び後方カメラ)と3台のステレオカメラ(左側方ステレオカメラ、右側方ステレオカメラ、及び後方ステレオカメラ)とは、それぞれ上部旋回体の外周よりも外側に出た部分がある態様で配置されていることから、上部旋回体に配置される複数のカメラが少なくとも後方カメラ及び右側方カメラを含む場合、当該複数のカメラのうち後方カメラは、上部旋回体の外周よりも内側に配置されているとしても、右側方カメラは、上部旋回体の外周よりも内側に配置されているか否か不明であり、また上部旋回体に配置される複数のステレオカメラが少なくとも後方ステレオカメラ及び右側方ステレオカメラを含む場合、当該複数のステレオカメラのうち後方ステレオカメラは、上部旋回体の外周よりも内側に配置されているとしても、右側方ステレオカメラは、上部旋回体の外周よりも内側に配置されているか否か不明であるといえる。 以上より、構成Gの「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は」「前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」ていること及び構成Hの「前記複数台のカメラは」「前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている」ことは、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 したがって、本件補正2事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではない。 よって、本件特許発明1の特許は、本件補正2が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 なお、令和2年3月4日付け手続補正書における手続補正によって補正された請求項1における構成Jの「前記上部旋回体に配置される前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と前記複数台のカメラとは前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている」は、令和元年6月13日付け手続補正書における請求項1の記載に対して新たに追加された補正事項であり、当該補正事項も、上記本件補正事項と同様に当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではない。 (2)本件特許発明2~7について 本件特許発明2~7は、請求項1を引用する請求項に係る発明であるので、本件特許発明1における補正事項が含まれることとなるから、上記(1)ウと同じ判断により、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではない補正事項が含まれる。 (3)本件特許発明8について 本件特許発明8におけるカメラに関する補正事項は、本件特許発明1におけるカメラに関する補正事項と実質的に同じ補正事項であり、また、本件特許発明8におけるショベル用周辺監視装置は、本件特許発明1における周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と実質的に同じ装置であり、当該ショベル用周辺監視装置に関する補正事項も、本件特許発明1における周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置に関する補正事項と実質的に同じ補正事項であるから、本件特許発明8における補正事項は、上記(1)ウと同じ判断により、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでない。 (4)段落【0008】について 段落【0008】における補正事項は、上記(1)の本件特許発明1についての補正事項と実質的に同じ補正事項であるので、上記(1)ウと同じ判断により、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでない。 エ 新規事項の追加の有無についてのまとめ 以上より、本件特許発明1~8に係る特許は、令和4年4月25日付け手続補正書でした補正が願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 サポート要件について (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1の記載について 本件特許発明1の記載は、上記第4に記載したとおりである。 イ 明細書及び図面の記載 明細書及び図面における記載は、上記1(1)イに記載した当初明細書等に関する記載に加えて、以下の記載がある。 「【0008】 上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るショベルは、走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と、を有するショベルであって、複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されているとともに、前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され、前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている。」 ウ サポート要件についての判断 上記アにおける本件特許発明1の記載と上記イにおける明細書及び図面の記載とを対比すると、次のとおりである。 上記イの【0008】の記載は、上記1(4)のように、その補正事項が当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないことから、本件特許発明1についてのサポート要件の根拠とはならない。 そして、上記【0008】の記載を除くと、上記1と同様に、本件特許発明1の構成Gの「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は」「前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」ていること及び構成Hの「前記複数台のカメラは」「前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている」ことは、発明の詳細な説明及び図面に記載されたものではない。 よって、本件特許発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)本件特許発明2~7について 本件特許発明2~7は、請求項1を引用する請求項に係る発明であるので、本件特許発明1における構成G及び構成Hが含まれることとなるから、上記(1)ウと同じ判断により、本件特許発明2~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (3)本件特許発明8について 本件特許発明8におけるカメラに関する記載は、本件特許発明1におけるカメラに関する記載と実質的に同じ記載であり、また、本件特許発明8におけるショベル用周辺監視装置に関する記載も、本件特許発明1における周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置に関する記載と実質的に同じ記載であるから、上記(1)ウと同じ判断により、本件特許発明8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (4)サポート要件についてのまとめ 以上より、本件特許発明1~8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4項の規定により取り消されるべきものである。 3 新規性について 引用文献1:特開2002-327470号公報(甲第1号証) (1)請求項1に係る発明について:引用文献1 ア 本件特許発明1 本件特許発明1の記載は、上記第4に記載したとおりである。 イ 引用文献、引用発明等 (ア)引用文献1に記載された事項 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。)。 「【0024】図1は本発明の実施形態に係る油圧ショベル3を上面からみた図である。図1は近接センサ1a~1d、CCDカメラ4a~4d、モニタパネル20の配設位置を示すとともに、油圧ショベル3に対する近接センサ1a~1dの検出エリアE1~E4の相対位置を示している。なお図1中で上側を油圧ショベル3の旋回体3aの前方側とし、図1中で下側を油圧ショベル3の旋回体3aの後方側とする。 【0025】近接センサ1a、1b、1c、1dは、オペレータの視界に入らない障害物や人を検出できるように油圧ショベル3の旋回体3aの後方側にフラッシャーランプ10a、10b、10c、10dに対応して複数設けられている。 【0026】近接センサ1a~1dは、例えば超音波が物体に向けて発射されてから、物体によって反射されて戻るまでの時間に基づいて、近接センサ1a~1dから物体までの距離を求め、この距離が所定の距離以下である場合に検出エリアE1~E4内に物体が存在していることを検出する。 ・・・ 【0028】CCDカメラ4a、4b、4c、4dは、近接センサ1a、1b、1c、1d、およびフラッシャーランプ10a、10b、10c、10dに対応して、油圧ショベル3の旋回体3aの後方側に複数設けられている。」 「【図1】 [図:0001423420000003.jpg] 」 上記記載事項によれば、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。 a 【0024】によると、図1は、油圧ショベル3を上面から見た図であり、近接センサ1a~1d、CCDカメラ4a~4dの配設位置を示すとともに、油圧ショベル3に対する近接センサ1a~1dの検出エリアE1~E4の相対位置を示している。また、当該油圧ショベル3を上面から見た図1の記載からみて、油圧ショベル3は、走行するための下部走行体を有し、旋回体3aは、前記下部走行体に搭載され、旋回体3aには、アタッチメントに含まれるブームが取り付けられ、前記ブームには、前記アタッチメントに含まれるアームが取り付けられている。 b 【0026】によれば、近接センサ1a~1dは、検出エリアE1~E4内に存在する物体までの距離を求めることが記載され、油圧ショベル3を上面から見た図1の記載から見て、検出エリアE1~E4は、ショベルの周囲のエリアであることが記載されている。 c 【0025】及び【0028】によれば、近接センサ1a~1d及びCCDカメラ4a~4dは、旋回体3aに複数設けられていることが記載されている。 d 油圧ショベル3を上面から見た図1の記載から見て、近接センサ1a~1dは、それぞれ旋回体3aの異なる位置に配置され、それぞれの位置において、旋回体3aの外周よりも内側に配置されている。 e 油圧ショベル3を上面から見た図1の記載から見て、CCDカメラ4a~4dは、それぞれ旋回体3aの異なる位置に配置され、それぞれの位置において、旋回体3aの外周よりも内側に配置されている。 (イ)引用文献1に記載された発明 上記(ア)a~eによると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。(記号a~iは分説するために当審にて付した。以下「構成a」~「構成i」という。)。 「a 油圧ショベル3は、走行するための下部走行体を有し、 b 旋回体3aは、前記下部走行体に搭載され、 c 旋回体3aには、アタッチメントに含まれるブームが取り付けられ、 d 前記ブームには、前記アタッチメントに含まれるアームが取り付けられ、 e 近接センサ1a~1dは、ショベルの周囲のエリアである検出エリアE1~E4内に存在する物体までの距離を求め、 f 近接センサ1a~1d及びCCDカメラ4a~4dは、旋回体3aに複数設けられ、 g 近接センサ1a~1dは、それぞれ旋回体3aの異なる位置に配置され、それぞれの位置において、旋回体3aの外周よりも内側に配置され、 h CCDカメラ4a~4dは、それぞれ旋回体3aの異なる位置に配置され、それぞれの位置において、旋回体3aの外周よりも内側に配置されている、 i 油圧ショベル3。」 ウ 対比・判断 (ア)対比 a 構成Aについて 構成aの「走行するための下部走行体」は、構成Aの「走行動作を行う下部走行体」に相当する。 b 構成Bについて 構成bの下部走行体に搭載される「旋回体3a」が旋回可能であることは明らかであるから、構成bの「旋回体3a」は、構成Bの「前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体」に相当する。 c 構成Cについて 構成cの「旋回体3a」に取り付けられている「アタッチメントに含まれるブーム」は、構成Cの「前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブーム」に相当する。 d 構成Dについて 構成dの「前記ブーム」に取り付けられている「前記アタッチメントに含まれるアーム」は、構成Dの「前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアーム」に相当する。 e 構成Eについて 構成eの「近接センサ1a~1d」は、「ショベルの周囲のエリアである検出エリアE1~E4内に存在する物体までの距離を求め」ることから、構成Eの「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」に相当する。 f 構成Fについて 構成fの「近接センサ1a~1d及びCCDカメラ4a~4dは、旋回体3aに複数設けられ」ていることは、上記eを考慮すると、構成Fの「複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置と複数台のカメラとが前記上部旋回体に配置されている」ことに相当する。 g 構成Gについて 構成gの「近接センサ1a~1dは、それぞれ旋回体3aの異なる位置に配置され、それぞれの位置において、旋回体3aの外周よりも内側に配置され」ていることは、上記eを考慮すると、構成Gの「前記複数台の前記周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置され」ていることに相当する。 h 構成Hについて 構成hの「CCDカメラ4a~4dは、それぞれ旋回体3aの異なる位置に配置され、それぞれの位置において、旋回体3aの外周よりも内側に配置されている」ことは、上記eを考慮すると、構成Hの「前記複数台のカメラは前記上部旋回体の異なる位置における前記上部旋回体の外周よりも内側に配置されている」ことに相当する。 i 構成Iについて 構成iの「油圧ショベル3」は、構成aのように「走行するための下部走行体を有し」、構成b~fによれば、「アタッチメントに含まれるブーム」、「アタッチメントに含まれるアーム」及び「近接センサ1a~1d」も「油圧ショベル3」が有するといえ、構成fによれば、「CCDカメラ4a~4d」も「旋回体3a」に設けられている。 してみると、上記「油圧ショベル3」は、構成Iの「ショベル」に相当するといえる。 (イ)判断 上記(ア)によれば、本件特許発明1と引用発明との間に相違点は存在しないことから、本件特許発明1は、引用発明である。 (2)請求項8に係る発明について:引用文献1 本件特許の請求項8に係る発明(本件特許発明8)は、本件特許発明1の「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置」を「ショベル用周辺監視装置」と換言し、発明の対象を当該「ショベル用周辺監視装置」とした発明であって、「ショベル」に関する発明特定事項は、本件特許発明1と同一であるから、上記(1)の請求項1に係る発明についてと同様に、本件特許発明8は、引用発明である。 (3)新規性についてのまとめ 以上より、請求項1及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された上記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。 4 進歩性について 引用文献1:特開2002-327470号公報(甲第1号証) 引用文献2:特開2010-198519号公報(甲第2号証) 引用文献3:特開2004-17710号公報(甲第3号証) 引用文献4:特開2008-144379号公報(甲第4号証) 引用文献5:特開平11-222882号公報(令和元年10月29日付け拒絶理由通知で引用された引用文献3、令和4年2月15日付け拒絶理由通知で引用された引用文献4) 引用文献6:特開昭63-68006号公報(甲第5号証) 引用文献7:特開2008-95307号公報(甲第6号証) 引用文献8:特開2006-173999号公報 (1)請求項1及び8に係る発明について:引用文献1 上記3(1)及び(2)のように本件特許発明1及び本件特許発明8は、それぞれ引用発明であるが、仮に本件特許発明1及び本件特許発明8と引用発明との間に何らかの相違する点があったとしても、引用発明において、当該相違する点に係る本件特許発明1及び本件特許発明8の発明特定事項とすることに格別の困難性はなく、本件特許発明1及び本件特許発明8は、それぞれ引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)請求項2に係る発明について:引用文献1~3 ア 引用文献2について (ア)引用文献2に記載された事項 引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。)。 「【0021】 作業機械の一例である油圧ショベルの概観を図1に示す。油圧ショベルは、垂直方向にそれぞれ回動するブーム1a,アーム1b及びバケット1cからなる多関節型のフロント作業機1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成される。上部旋回体1dには、運転室1fが備えられている。フロント作業機1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に支持されている。ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1d及び下部走行体1eはそれぞれブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3c,旋回モータ3d(図1には図示しない)及び左右の走行モータ3e,3f(図示しない)の各アクチュエータによりそれぞれ駆動される。また、ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1dは、それぞれの回動角を検出する角度検出器8a,8b,8c,8dを備える。更に、機械の後方にカメラ13aを設置して後方シーンを撮影し、ミリ波レーダ(距離センサ)14aを設置して機械後方から障害物までの距離を計測する。また、機械の右側方にカメラ13bを設置して右側方シーンを撮影し、距離センサ14b(図示しない)を設置して機械右側方から障害物までの距離を計測する。 【0022】 図2は、作業機械の一例である油圧ショベルの作業における動作と処理の流れの手順例を示す説明図である。図2の説明例では距離センサとしてカメラ13aとミリ波レーダ14aを用いた例である。 【0023】 ある時間1701において、カメラ13aはシーンを撮影し、機械が掘削を開始1702すると障害物検知手段600が撮影したシーンを用いて画像処理1706を行い、掘削作業中1703の障害物の有無を検知する。一方、ミリ波レーダ14aは、機械の作業中は常時センシング1712を行っている。そこで、掘削作業中1703は、画像処理した結果1706である障害物有無と障害物の種別(人物か人物以外)、及び、ミリ波レーダ14aの障害物の距離データを統合(フュージョン)して、障害物有無と種別と障害物までの距離データの結果を出力1707する。運転員は、この結果をモニタや音声で確認し、操作変更時(後進や旋回等)に変更方向の周囲の危険度を確認しながら機械の操作を行う。」 「【0030】 本発明の他の実施例を図4に示す。図4において、画像処理装置90は、障害物検出手段600,障害物と機械の位置関係算出手段1100,接触危険度算出手段1200,警報レベル決定手段1300,警報出力手段1400,機械状態取り込み手段700,機器操作状態判断手段1600,接触回避制御手段1700,機器制御信号出力手段1800で構成する。画像処理装置90における処理は、カメラ13aが機械の後方シーンを撮影すると、障害物検出手段600がカメラ13aの撮影シーンを用いて画像処理を行い、作業機械周囲の作業者や物体等の障害物の存在有無を検出する。障害物検出手段600で障害物が存在した場合、障害物と機械の位置関係算出手段1100は、機械本体から障害物と機械までの距離や方向の位置関係を算出し、接触危険度算出手段1200が、障害物と機械の位置関係算出手段1100が算出した位置関係と機械状態取り込み手段700が取り込んだ作業機械の掘削や旋回や移動等の姿勢変更等の動作から障害物の接触危険度レベルを算出する。」 「【0032】 運転員は、出力装置1500の結果を目視や音声で把握して機械の操作を判断するが、もし、運転員が他の操作に気を取られて出力装置1500を見落とした場合、機器操作状態判断手段1600は、接触危険度算出手段1200で算出した接触危険度と機械状態取り込み手段700が取り込んだ作業機械の状態から掘削や旋回や移動等の姿勢変更等を判断し、更に、警報レベル決定手段1300で決定した警報レベルから機器の操作状態を判断すると、接触回避制御手段1700が、機器操作状態判断手段1600の判断結果に応じて機器操作を制御して後進や旋回時の速度を落としたり、停止したりして接触を回避する制御信号を出力する。すると、機器制御信号出力手段1800は、接触回避制御手段1700の出力を機器に送信して作業機械の操作を制御する。これにより、人物等への接触が回避されて安全が確保でき、しかも、必要最低限での機械操作が可能となり、作業効率が向上できる。」 「【図1】 [図:0001423420000004.jpg] 」 「【図2】 [図:0001423420000005.jpg] 」 「【図4】 [図:0001423420000006.jpg] 」 (イ)引用文献2に記載された技術事項 上記(ア)の引用文献2に記載された事項によると、引用文献2には、以下の技術事項(以下、「引用文献2技術事項」という。)が記載されている。(括弧内に、対応する段落番号や図番号を付した。) 「作業機械の一例である油圧ショベルにおいて、後方にカメラ13a、右側方にカメラ13bを設置し、それぞれ後方シーン、右側方シーンを撮影し、後方にミリ波レーダ(距離センサ)14a、右側方に距離センサ14bを設置し、それぞれ機械後方から障害物までの距離、機械右側方から障害物までの距離を計測し(【0021】、【0022】、図1)、 カメラ13aはシーンを撮影し、機械が掘削を開始1702すると障害物検知手段600が撮影したシーンを用いて画像処理1706を行い、掘削作業中1703の障害物の有無を検知し、掘削作業中1703は、画像処理した結果1706である障害物有無と障害物の種別(人物か人物以外)、及び、ミリ波レーダ14aの障害物の距離データを統合(フュージョン)して、障害物有無と種別と障害物までの距離データの結果を出力1707し(【0023】、図2)、 障害物検出手段600で障害物が存在した場合、障害物と機械の位置関係算出手段1100は、機械本体から障害物と機械までの距離や方向の位置関係を算出し、接触危険度算出手段1200が、障害物と機械の位置関係算出手段1100が算出した位置関係と機械状態取り込み手段700が取り込んだ作業機械の掘削や旋回や移動等の姿勢変更等の動作から障害物の接触危険度レベルを算出し(【0030】、図4)、 機器操作状態判断手段1600は、接触危険度算出手段1200で算出した接触危険度と機械状態取り込み手段700が取り込んだ作業機械の状態から掘削や旋回や移動等の姿勢変更等を判断し、更に、警報レベル決定手段1300で決定した警報レベルから機器の操作状態を判断すると、接触回避制御手段1700が、機器操作状態判断手段1600の判断結果に応じて機器操作を制御して後進や旋回時の速度を落としたり、停止したりして接触を回避する制御信号を出力し、機器制御信号出力手段1800は、接触回避制御手段1700の出力を機器に送信して作業機械の操作を制御する(【0032】、図4)こと。」 ウ 引用文献3について (ア)引用文献3に記載された事項 引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。)。 「【0013】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 図1は、本発明を適用した車両用制動制御装置の一実施形態を示すブロック図である。 図中1は、車間距離センサとしてのスキャニング式のレーザレーダであって、車幅中央の、車両前方の障害物を検出することの可能な位置に設けられている。そして、一定角度ずつ水平方向にずれながら周期的に車両の前方方向にレーザ光を照射し前方物体から反射して戻ってくる反射光を受光して、出射タイミングから反射光の受光タイミングまでの時間差に基づいて、各角度における物体までの距離を検出するようになっている。2は、車速センサであって、これらレーザレーダ1及び車速センサ2の検出信号は、制御装置10に入力される。」 「【0017】 図5は、制御装置10で実行される自動制動制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 制御装置10では、自動制動制御処理を開始すると、まず、ステップS1において、レーザレーダ1の検出信号を読み込み、自車両前方の障害物と自車両との間の自車両の進行方向における相対距離d、及び相対速度Vrを検出し、さらに、レーザレーダ1の検出信号に基づいて、自車両前方の障害物の左右エッジまでの距離及び角度を検出する。また、これらに基づいて自車両が前方の障害物との接触を回避するために必要な横移動量Yを算出する。」 「【0051】 そして、図11のインフラ情報受信時の割り込み処理を終了し、図5の自動制動制御処理を実行する。まず、レーザレーダ1の検出信号を読み込み、この検出信号に基づいて、先行車両との車間距離d及び相対速度Vrを算出し、さらに、先行車両の左右エッジ角度を検出する。 ここで、例えば自車両前方に先行車両が存在し、この先行車両が図6に示すように、自車両前方のやや左よりに位置する場合には、レーザレーダ1の検出信号に基づいて左右のエッジ角度θ1 及びθ2 が検出され、より小さい方のθ1 が選択されてこれに基づいて横移動量Yが算出される(ステップS1)。」 「【0054】 また、インフラ情報受信時の割り込み処理によって、制動力F1を発生させている状態で、自車両が次の道路側路車間通信機21の設置位置に到達し、再度インフラ情報を受信した場合には、既に制動力F1が発生されている状態であるから、新たに割り込み処理を開始せずに引き続き制動力F1を発生させる。 一方、制動力F1が印加された状態でさらに自車両が障害物に接近し、車間距離dが前記(2)式は満足しないが、横移動量Yに基づき算出される操舵回避にかかる時間Tyが前記(6)式を満足するようになると(ステップS1~S3)、制動による接触回避は可能であるが、操舵による接触回避は不可能であると判定されるから、ステップS4からステップS6を経てステップS7に移行し、大きさf2の制動力F2を発生するよう制動力制御装置15が制御される。」 「【0069】 そして、この状態から例えば、インフラ側システムが設置されていない走行路に進入した場合等には、図5の自動制動制御処理を所定周期で実行し、自車両前方に障害物を検知した場合には、上記と同様にして、この障害物を操舵操作及び制動操作によって回避することができるかどうかを判定し、操舵操作或いは制動操作の何れか一方によって回避することができなくないと判定された場合には、例えば図10に一点鎖線で示すように、操舵操作或いは制動操作の何れかに一方によって回避することが不可能であると判定された時点t2′で零から増加する場合の制動力F2の傾きαを算出し、算出した傾きαで増加する制動力F2を発生させる。そして、時点t3で制動及び操舵共に障害物を回避不可となったとき、制動力F3を発生させる。また、障害物を検知した時点で、この障害物を制動及び操舵の何れによっても回避不可と判定されるときには、例えば図10に一点鎖線で示すように、障害物を制動及び操舵の何れによっても回避不可と判定された時点t3′で速やかに最も強い制動力F3を発生させ、障害物との接触回避を図る。」 「【図1】 [図:0001423420000007.jpg] 」 「【図5】 [図:0001423420000008.jpg] 」 (イ)引用文献3に記載された技術事項 上記(ア)の引用文献3に記載された事項によると、引用文献3には、以下の技術事項(以下、「引用文献3技術事項1」という。)が記載されている。(括弧内に、対応する段落番号や図番号を付した。) 「制御装置10では、自動制動制御処理を開始すると、まず(【0017】)、車幅中央の、車両前方の障害物を検出することの可能な位置に設けられ、一定角度ずつ水平方向にずれながら周期的に車両の前方方向にレーザ光を照射し前方物体から反射して戻ってくる反射光を受光して、出射タイミングから反射光の受光タイミングまでの時間差に基づいて、各角度における物体までの距離を検出する、車間距離センサとしてのスキャニング式のレーザレーダ(【0013】、図1)1の検出信号を読み込み、自車両前方の障害物と自車両との間の自車両の進行方向における相対距離d、及び相対速度Vrを検出し、さらに、レーザレーダ1の検出信号に基づいて、自車両前方の障害物の左右エッジまでの距離及び角度を検出し(【0017】、図5)、 制動力F1が印加された状態でさらに自車両が障害物に接近し、車間距離dが前記(2)式は満足しないが、横移動量Yに基づき算出される操舵回避にかかる時間Tyが前記(6)式を満足するようになると(ステップS1~S3)、制動による接触回避は可能であるが、操舵による接触回避は不可能であると判定されるから、ステップS4からステップS6を経てステップS7に移行し、大きさf2の制動力F2を発生するよう制動力制御装置15が制御される(【0054】、図5)こと。」 エ 周知技術1について (ア)引用文献2技術事項によると、ミリ波レーダ(距離センサ)14a、距離センサ14bは、それぞれ機械後方から障害物までの距離、機械右側方から障害物までの距離を計測するから、ミリ波レーダ(距離センサ)14a、距離センサ14bは、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置といえる。 また、引用文献2技術事項によると、機器制御信号出力手段1800は、接触回避制御手段1700の出力を機器に送信して作業機械の操作を制御し、接触回避制御手段1700は、機器操作状態判断手段1600の判断結果に応じて機器操作を制御して後進や旋回時の速度を落としたり、停止したりして接触を回避する制御信号を出力し、機器操作状態判断手段1600は、接触危険度算出手段1200で算出した接触危険度と機械状態取り込み手段700が取り込んだ作業機械の状態から掘削や旋回や移動等の姿勢変更等を判断し、更に、警報レベル決定手段1300で決定した警報レベルから機器の操作状態を判断し、接触危険度算出手段1200は、障害物と機械の位置関係算出手段1100が算出した位置関係と機械状態取り込み手段700が取り込んだ作業機械の掘削や旋回や移動等の姿勢変更等の動作から障害物の接触危険度レベルを算出し、障害物と機械の位置関係算出手段1100は、機械本体から障害物と機械までの距離や方向の位置関係を算出し、障害物有無と種別と障害物までの距離データの結果は、カメラ13aが撮影したシーンを用いて障害物検知手段600が行う画像処理の結果1706である障害物有無と障害物の種別(人物か人物以外)、及び、ミリ波レーダ14aの障害物の距離データを統合して得られるから、接触回避制御手段1700が出力する機器操作を制御して後進や旋回時の速度を落としたり、停止したりして接触を回避する制御信号は、ミリ波レーダ14aの障害物の距離データに基づいて得られるといえ、後進や旋回時の速度を落としたり、停止したりして接触を回避することは、走行動作を制御することであり、接触回避制御手段1700及び機器制御信号出力手段1800は、走行動作を制御する制御部といえる。 してみると、引用文献2には、油圧ショベルにおいて、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて、走行動作を制御する制御部を備えることが記載されているといえる。 (イ)引用文献3技術事項1によると、レーザレーダは、車間距離を検出するセンサであるから、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置といえる。 また、引用文献3技術事項1によると、制御装置10では、自動制動制御処理を実行し、レーザレーダの検出信号に基づいて、先行車両との車間距離dを算出し、少なくとも車間距離dを(2)式及び(6)式のパラメータとして、大きさf2の制動力F2を発生するよう制動力制御装置15が制御されるから、制御装置10は、レーザレーダの出力に基づいて、走行動作を制御する制御部といえる。 してみると、引用文献3には、車両において、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて、走行動作を制御する制御部が記載されているといえる。 (ウ)上記(ア)における「油圧ショベル」は、車両の一種であるといえるから、上記(ア)及び(イ)によれば、「車両において、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置の出力に基づいて、走行動作を制御する制御部を設けること」は、周知技術(以下、「周知技術1」という。)といえる。 オ 判断 引用発明における「油圧ショベル3」も、引用文献2の油圧ショベルと同様に車両の一種であるといえるから、引用発明と周知技術1とは、ともに車両において適切な周辺監視を行う点で共通し、引用発明に周知技術1を適用して、引用発明の近接センサ1a~1dの出力に基づいて、油圧ショベル3の走行動作を制御する制御部を設けることは、当業者にとって容易である。 してみると、本件特許発明2は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)請求項3に係る発明について:引用文献1~3 ア 引用文献3に記載された技術事項 上記(2)ウ(ア)の引用文献3に記載された事項によると、引用文献3には、以下の技術事項(以下、「引用文献3技術事項2」という。)も記載されている。(括弧内に、対応する段落番号を付した。) 「インフラ側システムが設置されていない走行路に進入した場合等には、自動制動制御処理を所定周期で実行(【0069】)すること。」 イ 判断 引用文献3技術事項2によると、自動制動制御処理を所定周期で実行することから、上記(2)オにおける引用発明の近接センサ1a~1dの出力に基づいて、油圧ショベル3の走行動作を制御する制御部を設けた場合、当該制御部における制御をする処理を、所定の制御周期で繰り返し実行することは、当業者が適宜なし得ることである。 してみると、本件特許発明3は、引用発明、周知技術1及び引用文献3技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)請求項4に係る発明について:引用文献1、4、5 ア 引用文献4について (ア)引用文献4に記載された事項 引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。)。 「【0029】 〔2.ステレオカメラ〕 上記の油圧ショベル20の作業現場には、油圧ショベル20の周囲の対象地形の形状を計測するステレオカメラ(地形計測装置)3が設けられる。ステレオカメラ3は、複数のカメラによって撮影された画像間の視差を利用して、画像中の被写体までの距離を算出する。これにより、ステレオカメラ3の撮影範囲内の地形形状が計測される。ただしこれは、ステレオカメラ3の固設位置を基準とした座標系における座標情報によって構成された地形形状である。なお、このステレオカメラ3は、油圧ショベル20とは別設され、例えば作業現場の建造物に固定される。作業現場が屋内の場合には、ステレオカメラ3を天井から吊り下げてもよい。」 「【図1】 [図:0001423420000009.jpg] 」 (イ)引用文献4に記載された技術事項 上記(ア)の引用文献4に記載された事項によると、引用文献4には、以下の技術事項(以下、「引用文献4技術事項」という。)が記載されている。(括弧内に、対応する段落番号や図番号を付した。) 「油圧ショベル20の周囲の対象地形の形状を計測するステレオカメラ3は、複数のカメラによって撮影された画像間の視差を利用して、画像中の被写体までの距離を算出する(【0029】、図1)こと。」 イ 引用文献5について (ア)引用文献5に記載された事項 引用文献5には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。)。 「【0021】多眼カメラ1は、1つの多眼カメラ1内に複数のカメラが所定間隔で配置され、同一被写体を同時に撮像するものであり、CCD固体撮像素子あるいはMOS型固体撮像素子によって実現される。 【0022】この多眼カメラ1を用いるのは、カメラの個数が2台の場合、図2(a),(b)に示すように、多眼カメラ1によって撮像された画像20a,20bのうちの一方の画像20aのある所定の画像21の距離を求める場合に有効で、画像21の周囲のウィンドウ22(画素21を含む)の輝度値(明度)パターンに最もよく似ているパターンを、他の画像20bの中のエキシポーラ線上で探索し、対応するパターン22’を求めることによって、画素21に対応する画像20b内の画素の位置を求め、その画素のズレすなわち視差から距離を求めることができ、この距離を画素21の距離とし、他の画素も同様に距離の情報を持たせることにより、一方の画像20aに対応した距離情報をもった画像を得ることができる。」 「【0042】例えば、図7は、多眼カメラ1によって撮像された撮像画像を一例を示している。但し、図7の被写体は崖際Eを含む地表面ではなく、地上面に立つ作業員を被写体とした一例を示している。 【0043】図7に示すような、多眼カメラ1のカメラの個数分の撮像画像から、距離画像を生成され、この生成した距離画像の各画素毎の距離情報から、図8に示すような3次元情報が得られる。この3次元情報は、距離画像の各画素毎の距離情報をもとに演算されるものである。この図8に示す3次元情報から図9(a)に示す正面画像や図9(b)に示す側面画像が得られ、作業員が地上面に立っている位置関係を容易に理解することができる。崖際認識部7は、例えば高さが、幅-奥行き平面に対して最も低いデータP1(最下点データ)を抽出し、この抽出した最下点データP1のデータ群に対してハフ変換等の画像変換処理を施すことによって平面近似した地上面を認識する。図9では、崖のない地上面を有するが、例えば図9(b)の領域E2にデータが存在しない場合は、この領域E2は崖際Eの存在による危険領域と認識することができる。この場合、奥行き方向に対して分割し、各分割毎に平面を求めると、奥行きのどこまで平面が存在するかによって容易に崖際Eを認識できる。また、分割された各平面の形状が急激に変化した場合も、崖際Eが存在すると認識することができる。さらに、最下点データP1に限らず、最下点から2番目あるいは3番目等のデータを用いて平面近似してもよい。」 「【図1】 [図:0001423420000010.jpg] 」 「【図2】 [図:0001423420000011.jpg] 」 「【図7】 [図:0001423420000012.jpg] 」 「【図8】 [図:0001423420000013.jpg] 」 「【図9】 [図:0001423420000014.jpg] 」 (イ)引用文献5に記載された技術事項 上記(ア)の引用文献5に記載された事項によると、引用文献5には、以下の技術事項(以下、「引用文献5技術事項」という。)が記載されている。(括弧内に、対応する段落番号や図番号を付した。) 「多眼カメラ1は、1つの多眼カメラ1内に複数のカメラが所定間隔で配置され、同一被写体を同時に撮像するものであり(【0021】、図1)、 この多眼カメラ1を用いると、カメラの個数が2台の場合、画素のズレすなわち視差から距離を求めることができ(【0022】、図2)、 多眼カメラ1によって撮像された撮像画像が地上面に立つ作業員を被写体とした(【0042】)場合、多眼カメラ1のカメラの個数分の撮像画像から、距離画像を生成され、この生成した距離画像の各画素毎の距離情報から、3次元情報が得られ、この3次元情報は、距離画像の各画素毎の距離情報をもとに演算されるものであり、この3次元情報から正面画像や側面画像が得られ、作業員が地上面に立っている位置関係を容易に理解することができる(【0043】、図7~9)こと。」 ウ 周知技術2について (ア)引用文献4技術事項によると、ステレオカメラ3は、油圧ショベル20の周囲の対象地形の形状を計測し、複数のカメラによって撮影された画像間の視差を利用して、画像中の被写体までの距離を算出するから、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置であり、周囲に存在する物体を撮像することで距離情報を取得するといえる。 (イ)引用文献5技術事項によると、多眼カメラ1は、1つの多眼カメラ1内に複数のカメラが所定間隔で配置され、同一被写体を同時に撮像するものであり、地上面に立つ作業員を被写体とすることができ、画素のズレすなわち視差から距離を求めることができるから、周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置であるといえる。 また、引用文献5技術事項によると、多眼カメラ1は、撮像された撮像画像が地上面に立つ作業員を被写体とした場合、多眼カメラ1のカメラの個数分の撮像画像から、距離画像が生成されるから、周囲に存在する物体を撮像することで距離情報を取得するといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、「周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は、前記周囲に存在する物体を撮像することで距離情報を取得すること」は、周知技術(以下、「周知技術2」という。)といえる。 エ 判断 引用発明の近接センサ1a~1dと周知技術2の周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置は、ともに周囲の物体までの距離情報を取得する装置という点で共通するから、引用発明に周知技術2を適用し、引用発明の近接センサ1a~1dに代えて、周知技術2の周囲に存在する物体の距離情報を取得する装置として周囲に存在する物体を撮像することで距離情報を取得するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。 してみると、本件特許発明4は、引用発明及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)請求項5に係る発明について:引用文献1、6 ア 引用文献6に記載された事項 引用文献6には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。)。 「走行車体(1)の走行中における走行装置が平坦な土壌面(2)にあって、前方の土壌面(2)の超音波センサ(4)による検出位置が、高位置(A)と低位置(B)との間にあるときは(第1図)、走行機体(1)の前進が継続される。しかし、走行機体(1)の進行方向前方に走行土壌面(2)よりも高い畦(3)(第3図)や深い溝(3)(第4図)等があると、これらの畦(3)は高位置(A)上の高い領域(H)において、又は、溝(3)は低位置(B)の低い領域(L)において検出されるため、これによって走行を停止する。」(第1ページ右欄第17行-第2ページ左上欄第7行) 「第3図 [図:0001423420000015.jpg] 」 「第4図 [図:0001423420000016.jpg] 」 イ 引用文献6に記載された技術事項 上記アの引用文献6に記載された事項によると、引用文献6には、以下の技術事項(以下、「引用文献6技術事項1」という。)が記載されている。(括弧内に、対応する記載箇所や図番号を付した。) 「前方の土壌面(2)の超音波センサ(4)による検出位置によって、走行機体(1)の進行方向前方に走行土壌面(2)よりも高い畦(3)があると、これらの畦(3)は高位置(A)以上の高い領域(H)において、検出されるため、これによって走行を停止する(第1ページ右欄第18行~第19行、第2ページ左上欄第1行~第7行、第3図)こと。」 ウ 判断 引用文献6技術事項1によると、超音波センサ(4)による検出は、走行土壌面(2)よりも高い畦(3)を高位置(A)以上の高い領域(H)において検出するから、周囲に存在する畦(3)が領域(H)に入ることを距離によって判断し、所定の高さである高位置(A)以上となる地物の有無を判断しているといえる。 そして、引用発明の近接センサ1a~1dと上記超音波センサ(4)とは、ともに周囲の物体までの距離情報を取得する装置という点で共通するから、引用発明に引用文献6技術事項1を適用し、引用発明の近接センサ1a~1dの出力に基づいて、引用文献6技術事項1のように所定の高さ以上となる事物の有無を判断することは、当業者が適宜なし得ることである。 してみると、本件特許発明5は、引用発明及び引用文献6技術事項1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)請求項6に係る発明について:引用文献1、6 ア 引用文献6に記載された技術事項 上記(5)アの引用文献6に記載された事項によると、引用文献6には、以下の技術事項(以下、「引用文献6技術事項2」という。)も記載されている。(括弧内に、対応する段落番号を付した。) 「前方の土壌面(2)の超音波センサ(4)による検出位置によって、走行機体(1)の進行方向前方に走行土壌面よりも低い深い溝(3)があると、これらの溝(3)は低位置(B)以下の低い領域(L)において、検出されるため、これによって走行を停止する(第1ページ右欄第18行~第19行、第2ページ左上欄第1行~第3行、第5行~第7行、第4図)こと。」 イ 判断 引用文献6技術事項2によると、超音波センサ(4)による検出は、走行土壌面(2)よりも低い深い溝(3)を低位置(B)以下の低い領域(L)において検出するから、周囲に存在する溝(3)が領域(L)に入ることを距離によって判断し、所定の高さである低位置(B)以下、すなわち、設置面から所定距離以上の深さとなる地物の有無を判断しているといえる。 そして、引用発明の近接センサ1a~1dと上記超音波センサ(4)とは、ともに周囲の物体までの距離情報を取得する装置という点で共通するから、引用発明に引用文献6技術事項2を適用し、引用発明の近接センサ1a~1dの出力に基づいて、引用文献6技術事項2のように設置面から所定距離以上の深さとなる事物の有無を判断することは、当業者が適宜なし得ることである。 してみると、本件特許発明6は、引用発明及び引用文献6技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)請求項7に係る発明について:引用文献等:1、7、8 ア 引用文献7について (ア)引用文献7に記載された事項 引用文献7には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。)。 「【0010】 図2は、油圧ショベルの上面図である。上部旋回体1dの右側方および後方は運転席の死角となる方向である。この上部旋回体1dの右側面および後面には、それぞれ障害物検出器10a,10bが設けられ、障害物検出器10a,10bの上方に、それぞれ車体の右側方監視用および後方監視用のカメラ13a,13bが設けられている。 【0011】 障害物検出器10a,10bは、周囲の作業員や構造物などの障害物を検出し、その距離と方向から障害物の位置を得るセンサであり、例えばレーザレーダにより構成される。障害物検出器10a,10bによる監視可能な範囲(監視範囲)を図2に12a,12bで示す。監視範囲12a,12b内には警報を発生する範囲(警報範囲)11a,11bが設定されている。監視カメラ13a,13bは、例えばCCDなどの撮像素子を有するビデオカメラであり、電源オン時に常時油圧ショベルの周囲の動画を撮影する。監視カメラ13a,13bは、所定の取付位置に斜め下方に向けて取り付けられており、カメラ画像に旋回体端部からの距離を対応付けて表示することができる。」 「【0016】 表示画像生成部22には、予め監視カメラ13a,13bの搭載位置情報が設定されている。表示画像生成部22には、監視カメラ13a,13bからの信号と侵入判定部21からの信号が入力され、これらの信号に基づき画像信号を生成する。そして、運転室内に設けられた表示用モニタである表示装置50に制御信号を出力し、以下のようにモニタ上の表示画像を制御する。」 「【0018】 周囲監視モニタ画像領域61には、作業機全体(機体)を上方から見た外観形状を模したイラスト画像が、所定の縮尺で表示される。イラスト画像には、障害物検出器10a,10bと監視カメラ13a,13bの取付位置が表示され、監視範囲12a,12bと警報範囲11a,11bがイラスト画像の縮尺に合わせて表示される。障害物検出器10a,10bにより機体の周囲の障害物が検出された場合は、障害物の位置も表示される。なお、上部旋回体1dの表示上の向きは一定であり、上部旋回体1dが旋回した場合は、下部走行体1eの向きが変更して表示される(図6参照)。」 「【0022】 さらに後方カメラ画像領域62には、下部走行体1eの走行予定軌跡を示すマーク101と、上部旋回体1dの後端からの距離を示す目盛り102が、カメラ画像の上に重ねて表示されている。表示画像生成部22では以下の処理が実行され、走行予定軌跡101と目盛り102は、カメラ13a,13bの監視方向に機体が走行する場合にカメラ画像に重ねて表示される。」 「【0025】 ステップS6では、上部旋回体1dの旋回角に基づきクローラ1gの向きを判定し、図4に示すようにクローラ1gを後方に延長した直線を走行予定軌跡101として、後方カメラ画像領域63のカメラ画像に重ねて表示する。この場合、カメラ画像領域62,63のどこに走行予定軌跡101を描写するのかを旋回角に対応付けて予め設定しておけば、図4のように旋回角に対応して走行予定軌跡101を描くことができる。なお、カメラ13aの監視方向に機体は走行しないため、右側方カメラ表示領域62には走行予定軌跡101は表示されない。旋回角が0°以外、例えば10°のときは、後方カメラ画像領域63の下部走行体1eは10°だけ回転して表示され、この旋回角に対応して走行予定軌跡101も10°だけ回転して表示される。ステップS6では、さらにカメラ画像に対応付けられた上部旋回体1dの後端からの距離を取得し、走行予定軌跡101に直交するように所定間隔(例えば1mおき)に目盛り102を重ねて表示する。」 「【0029】 このように本実施の形態では、上部旋回体1dの旋回角と操作レバー4c、4dの操作に基づき上部旋回体1dに対する機体の走行方向を判定し、走行方向とカメラ13a、13bの監視方向が一致したときに、カメラ画像領域62,63に表示されたカメラ画像に走行予定軌跡101を重ねて表示するようにした。これにより運転者は油圧ショベルの移動方向が一見してわかるとともに、走行予定軌跡上に障害物が存在するか否かを容易に判断することができ、安全性が向上する。また、走行予定軌跡101とともに目盛り102を重ねて表示するので、障害物が機体からどの程度離れているかを運転者が容易に判断することができる。」 「【図2】 [図:0001423420000017.jpg] 」 「【図3】 [図:0001423420000018.jpg] 」 「【図4】 [図:0001423420000019.jpg] 」 (イ)引用文献7に記載された技術事項 上記(ア)の引用文献7に記載された事項によると、引用文献7には、以下の技術事項(以下、「引用文献7技術事項」という。)が記載されている。(括弧内に、対応する段落番号や図番号を付した。) 「油圧ショベルの上部旋回体1dの右側面および後面には、それぞれ障害物検出器10a,10bが設けられ、障害物検出器10a,10bの上方に、それぞれ車体の右側方監視用および後方監視用のカメラ13a,13bが設けられ(【0010】、図2)、 障害物検出器10a,10bは、周囲の作業員や構造物などの障害物を検出し、その距離と方向から障害物の位置を得るセンサであり、例えばレーザレーダにより構成され、監視カメラ13a,13bは、例えばCCDなどの撮像素子を有するビデオカメラであり、電源オン時に常時油圧ショベルの周囲の動画を撮影し、監視カメラ13a,13bは、所定の取付位置に斜め下方に向けて取り付けられており、カメラ画像に旋回体端部からの距離を対応付けて表示することができ(【0011】、図2)、 表示画像生成部22には、監視カメラ13a,13bからの信号と侵入判定部21からの信号が入力され、これらの信号に基づき画像信号を生成し、運転室内に設けられた表示用モニタである表示装置50に制御信号を出力し、モニタ上の表示画像を制御し(【0016】、図3)、 障害物検出器10a,10bにより機体の周囲の障害物が検出された場合は、障害物の位置も表示され(【0018】、図4)、 後方カメラ画像領域62には、上部旋回体1dの後端からの距離を示す目盛り102が、カメラ画像の上に重ねて表示され(【0022】、図4)、 カメラ画像に対応付けられた上部旋回体1dの後端からの距離を取得し、走行予定軌跡101に直交するように所定間隔(例えば1mおき)に目盛り102を重ねて表示し(【0025】、図4)、 目盛り102を重ねて表示するので、障害物が機体からどの程度離れているかを運転者が容易に判断することができる(【0029】)こと。」 イ 引用文献8について (ア)引用文献8に記載された事項 引用文献8には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。)。 「【0057】 このような画像情報の表示処理と並行して、カメラ装置100では、障害物センサ140は障害物(対象物体)までの距離を計測し、この計測した距離情報を主制御部110に送出する。 【0058】 主制御部110では、前記距離情報を記憶部111に格納するとともに、この距離情報を、イベント(距離イベント)として送信すべくイベント送信部150に送出する。イベント送信部150は、主制御部110からの距離情報を距離イベントとして、無線通信にてコマンド送信遠隔装置200へ送信する(ステップS11)。 【0059】 コマンド送信遠隔装置200では、制御部230が送受信部220を介して受信された距離イベント(距離情報)を基に、例えば図4(a)、(b)に示すように、カメラ装置100から被写体中の障害物までの距離に対応する数値を当該障害物の画像に対応させて表示部240に表示する。」 「【図2】 [図:0001423420000020.jpg] 」 「【図4】 [図:0001423420000021.jpg] 」 (イ)引用文献8に記載された技術事項 上記(ア)の引用文献8に記載された事項によると、引用文献8には、以下の技術事項(以下、「引用文献8技術事項」という。)が記載されている。(括弧内に、対応する段落番号や図番号を付した。) 「画像情報の表示処理と並行して、カメラ装置100では、障害物センサ140は障害物(対象物体)までの距離を計測し、この計測した距離情報を主制御部110に送出し(【0057】、図2)、 主制御部110では、前記距離情報を記憶部111に格納するとともに、この距離情報を、イベント(距離イベント)として送信すべくイベント送信部150に送出し、イベント送信部150は、主制御部110からの距離情報を距離イベントとして、無線通信にてコマンド送信遠隔装置200へ送信し(【0058】、図2)、 【0059】 コマンド送信遠隔装置200では、制御部230が送受信部220を介して受信された距離イベント(距離情報)を基に、カメラ装置100から被写体中の障害物までの距離に対応する数値を当該障害物の画像に対応させて表示部240に表示する(【0059】、図2、図4)こと。」 ウ 周知技術3について (ア)引用文献7技術事項によると、油圧ショベルの運転室内に設けられた表示用モニタには、表示画像生成部22が生成した画像信号が表示され、同時に、カメラ画像に対応付けられた上部旋回体1dの後端からの距離によって、後方カメラ画像領域62には、上部旋回体1dの後端からの距離を示す目盛り102が、カメラ画像の上に重ねて表示され、周囲の作業員や構造物などの障害物を検出し、その距離と方向から障害物の位置を得る障害物検出器10a,10bにより機体の周囲の障害物が検出された場合は、障害物の位置も表示され、障害物が機体からどの程度離れているかを運転者が容易に判断することができることから、表示用モニタは、周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部であるといえる。 (イ)引用文献8技術事項によると、表示部240には、障害物センサ140が障害物までの距離を計測し、カメラ装置100から被写体中の障害物までの距離に対応する数値を当該障害物の画像に対応させて表示するから、表示部240は、周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部であるといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、「周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部」は、周知技術(以下、「周知技術3」という。)といえる。 エ 判断 引用文献1の油圧ショベル3には、モニタパネル20が配設され(【0024】)ることが記載されており、引用発明においてもモニタパネル20に周囲の物体を表示させうるといえる。そして、引用発明と周知技術3とは、車両において適切な周辺監視を行う点で共通するから、引用発明に周知技術3を適用し、引用発明の周囲の物体を表示させうるモニタパネル20として周知技術3の周囲に存在する物体の距離情報と出力画像とを対応付ける表示部を適用することは、当業者が適宜なし得ることである。 してみると、本件特許発明7は、引用発明及び周知技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8)進歩性についてのまとめ 以上より、請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された上記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。 第7 むすび 以上のとおり、本件特許発明1~8に係る特許は、令和4年4月25日付け手続補正書でした補正が願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項の規定により取り消されるべきものである。 また、本件特許発明1~8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4項の規定により取り消されるべきものである。 さらに、請求項1及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された上記第6の3の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。 加えて、請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された上記第6の4の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701307

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