特許異議申立
2020-700382
端末装置、プログラム、情報処理方法、情報提供システムおよび情報提供方法
- 審判番号
- 2020-700382
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-074650
- 登録番号
- 特許第6613994号(P6613994)
- 請求日
- 2020年06月03日
- 審決日
- 2021年03月24日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ヤマハ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人旺知国際特許事務所
- 【異議申立人】渡邉 規雄
- 審判長/審判官
- 審判長 清水 正一
- 審判官 樫本 剛
- 審判官 小池 正彦
- 分類
- P1651.55 -ZDA(G10L) / P1651.113-ZDA(G10L) / P1651.121-ZDA(G10L) / P1651.537-ZDA(G10L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法29条1項特許法29条2項特許法113条1項特許法113条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6613994号発明「端末装置、プログラム、情報処理方法、情報提供システムおよび情報提供方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6613994号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、4、6について訂正することを認める。
特許第6613994号の請求項1、3、5に係る特許を取り消す。
同請求項2、4、6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6613994号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成27年4月28日(優先権主張 平成26年7月29日、平成26年10月24日)に出願した特願2015-92283号の一部を平成28年1月13日に新たな特許出願とした特願2016-4055号の、さらにその一部を平成28年4月1日に新たな特許出願としたものであって、令和元年11月15日にその特許権の設定登録(特許公報発行日 令和元年12月4日)がされ、その特許について、令和2年6月3日に特許異議申立人渡邉規雄により特許異議の申立てがされた。
そして、その後の経緯は次のとおりである。
令和2年 7月20日付け 取消理由通知
同年 9月23日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年10月30日 意見書の提出(特許異議申立人)
同年11月27日付け 取消理由通知(決定の予告)
なお、特許権者から、令和2年11月27日付け取消理由通知(決定の予告)に対する意見書等は提出されなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨、訂正の内容
(1)請求の趣旨
令和2年9月23日に特許権者により行われた、願書に添付した特許請求の範囲の訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、特許第6613994号の特許請求の範囲を、本訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、4、6について訂正することを求める、というものである。
(2)訂正の内容
本件訂正の内容は以下ア~ウのとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に、
「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応し、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する取得部と
を具備する端末装置。」と記載されているのを、
「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する取得部と
を具備する端末装置。」と訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に、
「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部、および
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応し、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する取得部
としてコンピュータを機能させるプログラム。」と記載されているのを、
「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部、および
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する取得部
としてコンピュータを機能させるプログラム。」と訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に、
「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出し、
前記抽出した識別情報に対応し、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する
コンピュータにより実現される情報処理方法。」と記載されているのを、
「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出し、
前記抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する
コンピュータにより実現される情報処理方法。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否について
訂正事項1~3は、訂正前の請求項2、4、6の「抽出した識別情報に対応し、」の係り受けが明確でなかったものを、「抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、」とすることにより当該係り受けを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の規定に適合するものである。
3 新規事項の追加の有無について
識別情報に複数の関連情報が対応することは、明細書の段落0066の「展示施設M内の相異なる展示物に対応する複数の関連情報Qを対応管理部34が1個の識別情報Dに対応させ、放音システム16の放音装置166から放音される識別情報Dの音響を端末装置12が収音した場合に、当該識別情報Dに対応する複数の関連情報Qを端末装置12が一括的に情報提供部36から取得することも可能である。」との記載から明らかであり、訂正後の請求項2、4、6に係る発明は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の発明である。
なお、特許異議申立人は、令和2年10月30日付けの意見書において、「訂正後の請求項2は、端末装置が識別情報Dを取得する時点よりも前に、何等かの方法で、識別情報に関連する複数の関連情報を取得している、という技術も含まれる。このような技術は、発明の詳細な説明に記載されていない。よって、訂正後の請求項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内にないものとなっている。したがって、訂正事項1は、訂正要件を満たさない。」及び「同様のことは、請求項4、6の訂正についても言える。したがって、訂正事項2、3は、訂正要件を満たさない。」と主張している。
しかしながら、取得される「識別情報に対応する複数の関連情報」は、請求項2、4では「前記情報抽出部が抽出した識別情報」に対応するものとされ、請求項6では「前記抽出した識別情報」に対応するものとされているから、「識別情報に対応する複数の関連情報」の取得は、請求項2、4では「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部」が識別情報を抽出したことを前提とし、請求項6では「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出し」との処理において、識別情報を抽出したことを前提としている。したがって、特許異議申立人が例示する「端末装置が識別情報Dを取得する時点よりも前に、何等かの方法で、識別情報に関連する複数の関連情報を取得している、という技術」は、識別情報を抽出したことを前提としているものではないという点で、請求項2、4、6に含まれるものと解することはできないから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
よって、訂正事項1~3は、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
4 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項1~3は、明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
5 独立特許要件について
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項2、4、6に係る訂正事項1~3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
6 小括
以上のとおり、訂正事項1~3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、4、6について訂正することを認める。
第3 訂正後の発明
本件特許の請求項1、3、5に係る発明、及び、本件訂正請求により訂正された請求項2、4、6に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部と、
前記放音システムにより放音される複数の案内音声の発音内容をそれぞれ表す複数の関連情報を記憶する情報提供システムに、前記情報抽出部が抽出した識別情報を含む情報要求を送信することで、前記複数の関連情報を前記情報提供システムから取得する取得部と
を具備する端末装置。
【請求項2】
放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する取得部と
を具備する端末装置。
【請求項3】
放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部、および、
前記放音システムにより放音される複数の案内音声の発音内容をそれぞれ表す複数の関連情報を記憶する情報提供システムに、前記情報抽出部が抽出した識別情報を含む情報要求を送信することで、前記複数の関連情報を前記情報提供システムから取得する取得部
としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項4】
放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部、および
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する取得部
としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項5】
放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出し、
前記放音システムにより放音される複数の案内音声の発音内容をそれぞれ表す複数の関連情報を記憶する情報提供システムに、前記抽出した識別情報を含む情報要求を送信することで、前記複数の関連情報を前記情報提供システムから取得する
コンピュータにより実現される情報処理方法。
【請求項6】
放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出し、
前記抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する
コンピュータにより実現される情報処理方法。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由通知の概要
令和2年7月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1-1(新規事項) 令和元年5月17日付け手続補正書でした請求項1、3、5に係る補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、請求項1、3、5に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由1-2(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項2、4、6の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
また、令和2年11月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由2-1(新規事項) 令和元年5月17日付け手続補正書でした請求項1、3、5に係る補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、請求項1、3、5に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2-2(新規性) 請求項1、3、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3、5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
理由2-3(進歩性) 請求項1、3、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 新規事項(上記理由1-1、2-1)について
1 請求項1について
令和元年5月17日付けの手続補正書により、特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりの補正(以下、「本補正」という。)がなされた。なお、当該補正の前後の請求項1をそれぞれ「本補正前の請求項1」、「本補正後の請求項1」という。また、下線は補正箇所である。
〔本補正前の請求項1〕
識別情報を含む音響を収音した収音信号から当該識別情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報を情報提供システムから取得する取得部と
を具備する端末装置。
〔本補正後の請求項1〕
放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部と、
前記放音システムにより放音される複数の案内音声の発音内容をそれぞれ表す複数の関連情報を記憶する情報提供システムに、前記情報抽出部が抽出した識別情報を含む情報要求を送信することで、前記複数の関連情報を前記情報提供システムから取得する取得部と
を具備する端末装置。
本補正により、請求項1の「関連情報」は、「案内音声の発音内容を表すもの」であることが特定された。
当該関連情報が、「案内音声の発音内容を表すもの」である場合において、「複数の関連情報」を前記情報提供システムから取得することは、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のいずれにも記載されていないし、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
なお、特許権者は、令和2年9月23日付けの意見書において、段落0068の「関連情報Qとして例示した音響と画像と文字列とのうちの少なくとも2種類の組合せを関連情報Qとして情報提供部36から端末装置12に提供する」との記載に基づき、当該関連情報が、「案内音声の発音内容を表すもの」である場合において、「複数の関連情報」を前記情報提供システムから取得することは、当初明細書等に明確に記載されていることは明らかである旨主張するが、段落0068は、「関連情報Qとして例示した音響と画像と文字列とのうちの少なくとも2種類の組合せ」は「関連情報Qとして」提供されると記載されているのであるから、一の関連情報Qが複数の情報を含むことを示しているだけのことである。したがって、特許権者による上記主張は採用することができない。
したがって、本補正により補正された請求項1の記載は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面に記載された事項の範囲内で補正されたものではない。
2 請求項3、5について
請求項1とカテゴリが異なる請求項3、5についても、上記1と同様の理由により、当該関連情報が「案内音声の発音内容」を表すものである場合において、「複数の関連情報」を前記情報提供システムから取得することは、当初明細書等のいずれにも記載されていないし、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
したがって、本補正により補正された請求項3、5の記載は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面に記載された事項の範囲内で補正されたものではない。
3 まとめ
以上のとおり、令和元年5月17日付け手続補正書でした請求項1、3、5に係る補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第6 新規性(上記理由2-2)について
1 甲第1号証について
(1)記載事項
甲第1号証である「音響すかし技術を活用した情報配信システムの開発・調査 報告書」平成22年3月19日発行 財団法人 ニューメディア開発協会、URL:http://www.nmda.or.jp/seika/seika21.htmlには、次の記載がある。
「
」(38頁)
「
」(39頁)
「
」(40頁)
「
」(41頁)
(2)甲第1号証に記載された技術的事項
上記(1)の記載によれば、甲第1号証には以下の技術的事項が記載されている。
ア 上記40頁には、携帯端末を活用した音響透かし館内放送サービスモデル(上記38頁)における主な登場プレイヤーについて、次の技術的事項が記載されている。
「携帯端末(デコーダ)」は、「音響透かし館内放送を受音し、透かし情報抽出からサービス内容に関連する動作を実行するアプリを搭載した携帯端末」であること。
「音響透かし館内放送サービスセンタ」は、「サービス事業者が指定したサービス内容(メッセージ)と、それに割り当てる透かし情報(リンクコード)を払い出しエンコーダに配布」し、「また、デコーダから送られてきたリンクコードを解析し、関連付けられたサービス(アクション)の実行を支援」するものであること。
「リンクコード」は、「透かし情報としてサービスセンタにて管理され各サービスに対してユニークに発行される文字情報」であり、「エンコーダにより音に埋め込まれ、デコーダにより抽出され」、「サービスセンタにてメッセージと一意に紐付けられ管理される」というものであること。
イ 上記41頁には、「携帯端末を活用した音響透かし館内放送サービスモデル」の利用イメージである「駅構内・車内放送におけるサービスイメージ」として、音声アナウンスに文字情報が割り当てられ、「まもなく、桜木町に到着します」という構内・車内放送が行われ、携帯端末に「まもなく、桜木町に到着します」という文字と画像が表示されるものが記載されている。
(3)甲1発明
上記(2)の技術的事項から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
〔甲1発明〕
携帯端末を活用した音響透かし館内放送サービスモデルであって、
携帯端末(デコーダ)は、音響透かし館内放送を受音し、透かし情報抽出からサービス内容に関連する動作を実行するアプリを搭載した携帯端末であり、
音響透かし館内放送サービスセンタはサービス事業者が指定したサービス内容(メッセージ)と、それに割り当てる透かし情報(リンクコード)を払い出しエンコーダに配布し、また、デコーダから送られてきたリンクコードを解析し、関連付けられたサービス(アクション)の実行を支援するものであり、
リンクコードは、透かし情報としてサービスセンタにて管理され各サービスに対してユニークに発行される文字情報であり、エンコーダにより音に埋め込まれ、デコーダにより抽出され、サービスセンタにてメッセージと一意に紐付けられ管理されるものであり、
携帯端末を活用した音響透かし館内放送サービスモデルの利用イメージである駅構内・車内放送におけるサービスイメージとして、音声アナウンスに文字情報が割り当てられ、「まもなく、桜木町に到着します」という構内・車内放送が行われ、携帯端末に「まもなく、桜木町に到着します」という文字と画像が表示されるものである
携帯端末を活用した音響透かし館内放送サービスモデル。
2 請求項1について
(1)対比
請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「音響透かし館内放送」及び「透かし情報」は、本件発明1の「放音システムにより放音される音響」及び「識別情報」にそれぞれ相当する。そして、甲1発明の「携帯端末(デコーダ)」は、「音響透かし館内放送を受音し、透かし情報抽出」を行うものであるから、本件発明1の「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部」に相当する構成を備えているといえる。
イ 甲1発明の「音響透かし館内放送サービスセンタ」は、デコーダから送られてきた「メッセージに割り当てる透かし情報(リンクコード)」を解析し、関連付けられたサービスとして「携帯端末に「まもなく、桜木町に到着します」という文字と画像が表示される」ことを支援するものであるから、「メッセージ」に対応して「「まもなく、桜木町に到着します」という文字と画像」が記憶されていることは当然である。ここで、当該「「まもなく、桜木町に到着します」という文字と画像」、及び、当該文字と画像をメッセージに対応して記憶する「音響透かし館内放送サービスセンタ」は、本件発明1の「前記放音システムにより放音される案内音声の発音内容を表す複数の関連情報」及び「前記放音システムにより放音される案内音声の発音内容を表す複数の関連情報を記憶する情報提供システム」にそれぞれ相当する。
そして、甲1発明の「まもなく、桜木町に到着します」という駅構内・車内放送の内容が、停車駅に対応して複数備えられていることも当然の事項であるから、甲1発明の「音響透かし館内放送サービスセンタ」は、本件発明1の「前記放音システムにより放音される複数の案内音声の発音内容をそれぞれ表す複数の関連情報を記憶する情報提供システム」に相当する。
甲1発明の「音響透かし館内放送サービスセンタ」における「デコーダから送られてきたリンクコード」とは「メッセージに割り当てる透かし情報」のことであり、当該「透かし情報」は、携帯端末(デコーダ)において音響透かし館内放送を受音して抽出されるものであるから、甲1発明の「携帯端末(デコーダ)」は、本件発明1の「前記放音システムにより放音される複数の案内音声の発音内容をそれぞれ表す複数の関連情報を記憶する情報提供システムに、前記情報抽出部が抽出した識別情報を含む情報要求を送信すること」に相当する構成を備えているといえる。
甲1発明の「音響透かし館内放送サービスセンタ」は、デコーダから送られてきた「メッセージに割り当てる透かし情報(リンクコード)」を解析し、関連付けられたサービスとして「携帯端末に「まもなく、桜木町に到着します」という文字と画像が表示される」ことを支援するものであるから、当該「「まもなく、桜木町に到着します」という文字と画像」が携帯端末に送信されていること、すなわち、携帯端末が「音響透かし館内放送サービスセンタ」から当該「「まもなく、桜木町に到着します」という文字と画像」を取得することは明らかである。
したがって、甲1発明の「携帯端末(デコーダ)」は、本件発明1の「前記放音システムにより放音される複数の案内音声の発音内容をそれぞれ表す複数の関連情報を記憶する情報提供システムに、前記情報抽出部が抽出した識別情報を含む情報要求を送信することで、前記複数の関連情報を前記情報提供システムから取得する取得部」に相当する構成を備えているといえる。
ウ 上記ア、イの構成を備えた甲1発明の「携帯端末(デコーダ)」は、本件発明1の「端末装置」に相当する。
エ 上記ア~ウから、甲1発明は、本件発明1の全ての構成を含むものである。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明である。
3 請求項3、請求項5について
請求項1とカテゴリが異なる請求項3、5に係る発明も、上記2と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるといえる。
4 まとめ
以上のとおり、請求項1、3、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、請求項1、3、5に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
第7 進歩性(上記理由2-3)について
1 請求項1について
上記第6のとおりであるから、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、音透かし技術を用いてサーバを介して情報を得るシステムにおいて、音響に含まれる識別情報と複数の関連情報とを対応付けることは、特開2012-155706号公報(甲第2号証)の段落0037等、特開2013-8109号公報(甲第3号証)の段落0023等、特開2007-164659号公報(甲第4号証)の段落0043等に記載されているように周知技術であるから、上記甲1発明に当該周知技術を適用することによりメッセージ(案内音声)の関連情報を複数とすることも、当業者が適宜なしうることである。
したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいても当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 請求項3、請求項5について
請求項1とカテゴリが異なる請求項3、5に係る発明も、上記1と同様の理由により、甲第1号証に基づいて、又は、甲第1号証及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
3 まとめ
上記1、2のとおり、請求項1、3、5に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第8 明確性(上記理由1-2)について
令和2年7月20日付け取消理由通知において係り受けが明確でなく2通りに解釈されうるとされた請求項2における「前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応し、」との記載は、本件訂正により「前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、」と訂正されたことにより、複数の関連情報に係るものであることが明確となった。
したがって、請求項2の記載は、特許を受けようとする発明が明確なものである。
また、請求項2と同様の訂正がなされた請求項4、6の記載についても、上記と同様の理由により、特許を受けようとする発明が明確なものである。
第9 取消理由として採用しなかった申立理由について
特許異議申立人により申立理由とされた請求項2、4、6に係る発明の進歩性について、以下検討する
1 甲号証
(1)甲第1号証について
ア 記載事項(追加)
甲第1号証には、上記第6の1(1)の記載事項に加えて、次の記載がある。
「
」(44頁)
イ 甲第1号証に記載された技術的事項(追加)
上記(1)の記載によれば、甲第1号証には、上記第6の1(2)の技術的事項に加えて、娯楽施設におけるサービスイメージについて、以下の技術的事項が記載されている。
(ア)音声アナウンスに文字情報が割り当てられ、「まもなく、レースが始まります!!」という構内放送が行われ、携帯端末に「まもなく、レースが始まります!!」という文字と画像が表示される。
(イ)「2.9.3.4 娯楽施設におけるサービスイメージ」は、41頁(第6の1(1)を参照)の「2.9.3 サービスの利用イメージ」に属しており、当該「2.9.3 サービスの利用イメージ」には「2.9.2サービスモデルの検討で検討した“携帯端末を活用した音響透かし館内放送サービスモデル”の利用イメージと想定される音響透かしデータ・サービス内容(メッセージ)を以下に示す。」と記載されているから、44頁の「想定される音響透かしデータ・サービス」も、想定される音響透かしデータ・サービス(メッセージ)と認められる。
そして、当該想定される音響透かしデータ・サービス(メッセージ)は、「(1)出走、オッズのアナウンス、(2)結果速報、払戻金情報のアナウンス、(3)業務連絡」である。(審決注:甲第1号証に記載されている丸中数字を、以下、「(1)」~「(3)」と記載する。)
ウ 甲1’発明
上記第6の1(3)の引用発明及び上記イの記載事項(追加)から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1’発明」という。)が記載されている。
〔甲1’発明〕
携帯端末を活用した音響透かし館内放送サービスモデルであって、
携帯端末(デコーダ)は、音響透かし館内放送を受音し、透かし情報抽出からサービス内容に関連する動作を実行するアプリを搭載した携帯端末であり、
音響透かし館内放送サービスセンタはサービス事業者が指定したサービス内容(メッセージ)と、それに割り当てる透かし情報(リンクコード)を払い出しエンコーダに配布し、また、デコーダから送られてきたリンクコードを解析し、関連付けられたサービス(アクション)の実行を支援するものであり、
リンクコードは、透かし情報としてサービスセンタにて管理され各サービスに対してユニークに発行される文字情報であり、エンコーダにより音に埋め込まれ、デコーダにより抽出され、サービスセンタにてメッセージと一意に紐付けられ管理されるものであり、
携帯端末を活用した音響透かし館内放送サービスモデルの利用イメージである駅構内・車内放送におけるサービスイメージとして、音声アナウンスに文字情報が割り当てられ、「まもなく、桜木町に到着します」という構内・車内放送が行われ、携帯端末に「まもなく、桜木町に到着します」という文字と画像が表示されるものであり、
また、娯楽施設におけるサービスイメージとして、音声アナウンスに文字情報が割り当てられ、「まもなく、レースが始まります!!」という構内放送が行われ、携帯端末に「まもなく、レースが始まります!!」という文字と画像が表示され、
想定される音響透かしデータ・サービス(メッセージ)は、「(1)出走、オッズのアナウンス、(2)結果速報、払戻金情報のアナウンス、(3)業務連絡」である
携帯端末を活用した音響透かし館内放送サービスモデル。
(2)甲第2号証について
ア 記載事項
甲第2号証である特開2012-155706号公報には次の記載がある。なお、以降の下線は、当審において付したものである。
「【0016】
図面を参照してこの発明の実施形態である情報提供システムについて説明する。図1は、情報提供システムの構成を説明する図である。
【0017】
この情報提供システムは、本発明の放音装置であるテレビ(TV)1が、本発明の識別情報である音響IDが重畳された音声を放音し、本発明の携帯端末装置であるスマートフォン2がこの音響IDを用いて特定のインターネットサイト(URL)にアクセスして情報を獲得するというシステムである。
【0018】
テレビ1は、テレビ放送を受信して映像を表示するとともに音声を放音する。このテレビ放送の音声に音響信号に変調されたIDコードである音響IDが重畳されている。音響IDの内容および重畳方式については後述する。音響IDが重畳された音声をスマートフォン2が収音する。スマートフォン2はユーザ6が所持している。スマートフォン2には、情報提供システム用に用いられる音響IDアプリケーションプログラム200がインストールされている。音響IDアプリケーションプログラム200は、収音した音声から音響IDを分離・復調し、このIDコードをID解決サーバ4に送信してコンテンツサーバ5のURLに変換するアプリケーションプログラムであり、携帯端末装置2の制御部と協働することにより音響ID処理部22を構成する。この音響ID処理部22の詳細動作は図5のフローチャートで説明する。スマートフォン2は、この音響ID処理部22により、音声に含まれる音響IDを復調し、これを情報通信ネットワーク3を介してID解決サーバ4に送信する。ID解決サーバ4は、ID・URL対応テーブル40を備えており、受信した音響IDを用いて、ID・URL対応テーブル40を検索して対応するURLを読み出してスマートフォン2に返信する。
【0019】
スマートフォン2は、ID解決サーバ4からURLを受信すると、スマートフォン2の標準アプリケーションプログラムであるウェブブラウザプログラム201を起動してウェブブラウザ25を構成し、このウェブブラウザ25に受信したURLを渡す。ウェブブラウザ25は、受け取ったURLで指定されるコンテンツサーバ5にアクセスして、このURLで指定されるウェブページを表示する。URLで指定されるウェブページは、たとえば、テレビ1でそのとき放送されているCMの企業や商品に関するウェブページなどである。
【0020】
なお、ID解決サーバ4は1つであることが望ましいが、コンテンツサーバ5はコンテンツを表示する各社ごとに別々であって構わない。
【0021】
テレビ放送において、情報提供システムは、たとえば以下のような用途で使用される。 CMの企業・商品や番組に関連した商品等のクーポンを配ったり、商品情報を掲載するページへユーザを誘導したりする。ここで、番組に関連した商品とは、たとえば、番組に登場した人物が着用している服装のブランド、番組で訪れている観光地や店舗(レストランやホテルなど)などである。
【0022】
また、スポーツ番組の放送中に、登場選手の情報を詳細に表示するページへ誘導する。さらにまた、TVショッピング番組の放送中に、紹介された商品の注文・決済を行うページへ誘導する。あるいは、番組や商品のアンケートやクイズに応募するページへ誘導する。
【0023】
このように、放送局から送信されるテレビ放送の音声は、番組やCMの内容に連携して提供されるコンテンツサーバのサービス内容に対応した音響IDが適宜重畳されたものである。これにより、ユーザが、スマートフォン2を携帯してテレビ放送を視聴していれば、ユーザが何らの操作をしなくても特定のウェブページへ誘導することができるプッシュ型のサービスを提供することが可能になる。
【0024】
音響IDを上記のようなURLに解決するために、ID解決サーバ4には、たとえば図2に示すようなID・URL対応テーブル40が設けられる。このID・URL対応テーブル40には、ID、番組名(CM商品名)および提供するサービス(URL)が対応づけて記憶されている。」
「【0037】
以上は、テレビ1から放音される音響IDをURLと一対一で対応させた例を示したが、1つの音響IDを複数のコンテンツに対応させることも可能である。この場合、音響IDを受信したスマートフォン2の位置や受信時刻に基づき、1つのIDに対応させるURLを振り分けるようにすればよい。」
イ 甲2技術
上記アの記載から、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾の括弧内に対応する記載箇所を付した。
〔甲2技術〕
放音装置であるテレビ1が、識別情報である音響IDが重畳された音声を放音し、携帯端末装置であるスマートフォン2がこの音響IDを用いて特定のインターネットサイト(URL)にアクセスして情報を獲得するという情報提供システムであって、(段落0017)
テレビ放送の音声は、番組やCMの内容に連携して提供されるコンテンツサーバのサービス内容に対応した音響IDが適宜重畳されたものであり、(段落0023)
1つの音響IDを複数のコンテンツに対応させることも可能であり、この場合、音響IDを受信したスマートフォン2の位置や受信時刻に基づき、1つのIDに対応させるURLを振り分けるようにすればよい(段落0037)
情報提供システム。
(3)甲第3号証について
ア 記載事項
甲第3号証である特開2013-8109号公報には次の記載がある。
「【0017】
図面を参照してこの発明の実施形態である文書投稿支援システムについて説明する。図1は文書投稿支援システムの構成を示す図である。図2は文書投稿支援システムが適用されるショッピングモールのレイアウト例を示す図である。また、図3は、文書投稿支援システムの放音装置1が放音する音声の周波数分布を示す図である。
【0018】
この実施形態における文書投稿支援システムは、図2に示すショッピングモール10におけるクーポン配布システムに付属するシステムである。クーポン配布システムは、ショッピングモール10内に1または複数の放音装置1を設置し、この放音装置1が放音する音響IDを用いて、店舗11で使用できるクーポンを配布するシステムである。文書投稿支援システムは、利用者3がクーポンを取得した旨をTwitter(登録商標)などの投稿サイトに投稿しやすいように、投稿文の例文を提供するシステムである。
【0019】
図2において、ショッピングモールに10の1または複数の箇所に放音装置1が設置される。放音装置1のスピーカは、図7に示すような形態で設置される。放音装置1は、音響ID42を含む音声40を放音する。この音声40は、図3に示すように、楽音や案内アナウンスなどの可聴帯域音声41に非可聴帯域の音響ID42を重畳したものが好適であるが、重畳方式はこれに限定されない。この音響ID42が、以下説明するように、クーポンや投稿用文書を取得するための識別情報となる。
【0020】
ショッピングモール10を訪れる利用者3は、携帯端末装置2を携帯している。携帯端末装置2は、携帯端末装置2はたとえばスマートフォンなどで構成される。携帯端末装置2は、音声40を収音可能で、IMT-2000規格(3G)やWi-Fiなどによりインターネット4に接続可能ものであればよくスマートフォンに限定されない。
【0021】
図1において、携帯端末装置2は、3GやWi-Fiなどによりインターネット4に接続し、インターネット4を介してID解決サーバ5、コンテンツサーバ6および文書投稿サーバ7と通信する。ID解決サーバ5は、ID/URL対応テーブル50を備え、携帯端末装置2から送られてきたIDコード43(図4参照)に対応するコンテンツサーバ6のURL44(図4参照)を割り出して携帯端末装置2に返信する。コンテンツサーバ6は、クーポン画像を含むコンテンツを記憶したコンテンツデータベース60を備え、携帯端末装置2から送られてきたIDコード43に対応するコンテンツ45(図4参照)を携帯端末装置2に返信する。文書投稿サーバ7は、たとえばTwitter(登録商標)などの投稿サイトの投稿受付サーバであり、携帯端末装置2から送信されてきた文書を受け付けて、利用者3のアカウントの投稿としてサイトにアップロードする。
【0022】
図4は文書投稿支援システムを用いた文書投稿の手順を示す図である。図5は、ID解決サーバ5が備えるID/URL対応テーブル、および、コンテンツサーバ6が備えるコンテンツデータベース60の構成を示す図である。携帯端末装置2は、図4に示すような手順で上記ID解決サーバ5、コンテンツサーバ6および文書投稿サーバ7と通信する。
【0023】
携帯端末装置2は、放音装置1が放音する音声40を収音し、収音した音声から音響ID41を抽出してこれをデコードすることによりIDコード43を取得する。携帯端末装置2は、このIDコード43を、インターネット4を介してID解決サーバ5に送信する。ID解決サーバ5は、受信したIDコード43に対応するコンテンツサーバ6のURL44を選出し、このURL44を携帯端末装置2に返信する。この処理を行うため、ID解決サーバ5は、図5(A)に示すようなID/URL対応テーブル50を備えている。ID/URL対応テーブル50には、携帯端末装置2から受信するIDコード43と、このIDコード43に対応するコンテンツサーバ6のURL44とが対応づけて記憶されている。IDコードとURLの対応づけは、1対1であってもよく1対複数であってもよい。
【0024】
図4において、携帯端末装置2は、受信したURL44を用いてコンテンツサーバ6にアクセスする。このアクセス時にIDコード43も送信する。携帯端末装置2とコンテンツサーバ6との間のIDコード43の送受信はどのような形態で行われてもよいが、携帯端末装置2が、URL44にIDコード43をクエリストリングとして付加して、コンテンツサーバ6をアクセスするようにしてもよい。
【0025】
コンテンツサーバ6は、携帯端末装置2からアクセスがあると、受信したIDコード43に基づいてコンテンツ45選択し、このコンテンツ45を携帯端末装置2に送信する。コンテンツ45は、クーポンと投稿用文書からなっている。クーポンとは、ショッピングモール10のいずれかの店舗11で使用すると割引等の特典を得ることのできる券である。送信されるクーポンは、JPEGなどのクーポンの画像ファイルであってもよく、インターネット4経由でクーポン画像を取得するためのURLであってもよい。また、投稿用文書は、このクーポンを取得した旨の文書であり、たとえば「○○(店名)のクーポンゲットなう」などである。コンテンツサーバ6は、複数のIDコード43に対応するコンテンツを記憶したコンテンツデータベース60を備えている。たとえば、IDコード43が複数の店舗11に別々に設定されている場合、コンテンツサーバ6は、各店舗のIDコード43にそれぞれ対応するクーポンおよび投稿用文書を記憶している。図2のショッピングモール10の場合、入口(放音装置1)毎に異なるIDコードを設定しておけばよい。
【0026】
クーポン画像および投稿用文書(テキスト)を受信した携帯端末装置2は、受信したクーポンの画像を一定時間表示したのち、受信した投稿用文書を編集する文書編集画面を表示する。利用者3は、この文書編集画面で投稿用文書を編集し、編集が完了したのち投稿操作を行う。携帯端末装置2は、投稿操作に対応して、投稿用文書を文書投稿サーバ7に送信する。利用者3は、受信した投稿用文書が編集を要しないものであればそのまま投稿操作をすることで、投稿用文書がそのまま投稿される。なお、本発明において文書を確認・編集して投稿操作を受け付ける手順は必須ではなく、受信した投稿用文書をそのまま送信するようにしてもよい。」
「【0031】
図8は携帯端末装置2のブロック図である。スマートフォン2は、制御部20、マイク21、ネットワーク通信部22、表示部23、操作部24を備えている。制御部20は、マイクロコンピュータで構成され、ソフトウェアとの協働により、コンテンツ取得部25、文書編集・投稿部26および画像表示部27が機能的に実現される。マイク21は、放音装置1のスピーカ36から放音された音声40を収音する。ネットワーク通信部22は、インターネット4を介してID解決サーバ5、コンテンツサーバ6および文書投稿サーバ7と通信する。表示部23は、取得したクーポン画像や投稿用文書等を表示する。また、操作部24は、利用者3が文書の編集や投稿操作を行うための複数のキースイッチを備えている。操作部24はタッチパネルで構成してもよい。
【0032】
コンテンツ取得部25は、マイク21によって収音された音声40から音響ID42を抽出し、この音響ID42からIDコード43をデコードし、このIDコード43を用いてID解決サーバ5およびコンテンツサーバ6にアクセスする。このアクセスにより、クーポン画像および投稿用文書を含むコンテンツ45を取得する。IDコード43は、たとえば、音声信号(音響ID42)を、フィルタ係数としてIDコード43の拡散に用いられた拡散符号列が設定されている適合フィルタに通すことにより復調される。この復調処理の詳細は、上述の国際公開第2010/016589号パンフレットに記載されている。音響IDのデコードは、たとえば、国際公開第2010/016589号パンフレットに説明されている手法を用いればよい。文書編集・投稿部26は、コンテンツサーバ6から受信した投稿用文書を表示して利用者3による編集入力を受け付ける。また、投稿操作を受け付けて、編集が完了した文書を文書投稿サーバ7に送信する。また、画像表示部27は、取得したクーポンの画像を表示する。コンテンツサーバ6から受信したクーポンが画像の場合にはそのまま、URLの場合にはそのURLにアクセスしてクーポンの画像を取得して表示する。
【0033】
なお、コンテンツ取得部25、文書編集・投稿部26および画像表示部27は、ソフトウェア(プログラム)によって制御部20上に実現されるが、コンテンツ取得部25と文書編集・投稿部26とは、一体のプログラムであっても別々のプログラムであってもよい。また、文書編集・投稿部26および画像表示部27は、ウェブブラウザに担当させることも可能である。」
「【0042】
また、本発明は、商業施設や美術館、博物館などの展示施設などでその場所の雰囲気や展示物の印象の投稿を支援するシステムに適用が可能である。この場合、展示物の解説を放音する装置や、環境音やBGMを放音する装置を放音装置1とすればよい。また、何ら音を流さない施設の場合には、放音装置1を図6の音声再生部33、合成部34を省略し、非可聴帯域の音響IDのみ放音する装置を放音装置1としてもよい。」
イ 甲3技術
上記アの記載から、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾の括弧内に対応する記載箇所を付した。
〔甲3技術〕
ショッピングモール10内に設置された放音装置1が放音する識別情報である音響IDを用いて、店舗11で使用できるクーポンを配布するシステムであって、(段落0018、0019)
携帯端末装置2は、放音装置1が放音する音声40を収音し、収音した音声から音響ID41を抽出してIDコード43を取得し、このIDコード43をID解決サーバ5に送信し、(段落0023)
ID解決サーバ5は、受信したIDコード43に対応するコンテンツサーバ6のURL44を携帯端末装置2に返信し、(段落0023)
IDコードとURLの対応づけは、1対複数であってもよく、(段落0023)
また、商業施設や美術館、博物館などの展示施設などでその場所の雰囲気や展示物の印象の投稿を支援するシステムに適用が可能であり、この場合、展示物の解説を放音する装置や、環境音やBGMを放音する装置を放音装置1とすればよい(段落0042)
システム。
(4)甲第4号証について
ア 記載事項
甲第4号証である特開2007-164659には次の記載がある。
「【0043】
前記の透かし、埋め込み情報からなる認識情報は、前述したように、音楽情報4に係る楽曲の名称やアーティスト名などの情報を入手したり、音楽情報4に係る楽曲や、当該アーティストの制作、等に係る楽曲、CDなどを、インターネット等のネットワーク2を介してダウンロードすることにより入手したり、ネットワーク2を介して購入申し込み手続きを行ったり、音楽情報4に係る楽曲や、アーティストに関連する商品、コンサート、等の企画に関する情報を取得したり、商品・チケット購入申し込みする、等々の要求を、携帯情報端末1から、前記の情報提供サーバ3に対してネットワーク2を介して送信する際に必要な、情報提供サーバ3のURLや、当該URLと、前記認識情報が付加されている音楽情報4から認識情報を抽出する処理を行って情報提供サーバ3にアクセスしていることに相違ないことを情報提供サーバ3において認証する際に必要な識別情報などとからなるものである。」
「【0052】
前記の検索要求情報をネットワーク2を介して取得した情報提供サーバ3は、検索要求情報に付帯されている前記の認識情報を参照して携帯情報端末1に配信する情報を検索する処理を行い(ステップ306)、所定の情報を情報提供サーバ3で閲覧可能にしたり、携帯情報端末1からネットワーク2を介して送信されてくる所定の要求情報に応じて、音楽情報4に係る楽曲の名称やアーティスト名などの情報を提供したり、音楽情報4に係る楽曲や、当該アーティストの制作、等に係る楽曲、CDなどのネットワーク2を介したダウンロードを行ったり、購入申し込み手続の進行、音楽情報4に係る楽曲や、アーティストに関連する商品、コンサート、等の企画に関する情報の提供、商品・チケット購入申し込み手続きの進行を行う。
【0053】
図9は、前記のようにして自己が所有する携帯情報端末1(例えば、携帯電話)から情報提供サーバ3にアクセスしたユーザの携帯情報端末1の表示手段14(例えば、液晶表示画面)に表示されている情報の一例を表すものである。図中「○○○○○」の部分は、例えば、携帯情報端末1に音楽情報取得手段11を介して取り込んだ楽曲の曲名、「△△△△△」の部分は、アーティスト名であって、いずれも、前記の認識情報を手がかりとして検索することにより情報提供サーバ3から得た情報である。」
イ 甲4技術
上記アの記載から、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾の括弧内に対応する記載箇所を付した。
〔甲4技術〕
透かし、埋め込み情報からなる認識情報は、音楽情報4に係る楽曲の名称やアーティスト名などの情報を入手したりする際に必要な、情報提供サーバ3のURLなどからなるものであり、(段落0043)
情報提供サーバ3は、検索要求情報に付帯されている前記の認識情報を参照して携帯情報端末1に配信する情報を検索する処理を行い、音楽情報4に係る楽曲の名称やアーティスト名などの情報を提供する技術。(段落0052)
2 対比
請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)と甲1’発明とを対比する。
ア 甲1’発明の「音響透かし館内放送」及び「透かし情報」は、本件発明2の「放音システムにより放音される音響」及び「識別情報」にそれぞれ相当する。そして、甲1’発明の「携帯端末(デコーダ)」は、「音響透かし館内放送を受音し、透かし情報抽出」を行うものであるから、本件発明2の「放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部」に相当する構成を備えているといえる。
イ 甲1’発明の、娯楽施設の構内で放送される「レース」及び「まもなく、レースが始まります!!」は、本件発明2の「放音システムが設置される施設内の案内対象」及び「放音システムが設置される施設内の案内対象に関連する関連情報」に相当する。
甲1’発明の「音響透かし館内放送サービスセンタ」は、デコーダから送られてきた「メッセージに割り当てる透かし情報(リンクコード)」を解析し、関連付けられたサービスとして「携帯端末に「まもなく、レースが始まります!!」という文字と画像が表示される」ことを支援するものであるから、当該「「まもなく、レースが始まります!!」という文字と画像」が携帯端末に送信されていること、すなわち、携帯端末が「音響透かし館内放送サービスセンタ」から当該「「まもなく、レースが始まります!!」という文字と画像」を取得することは明らかである。
したがって、甲1’発明の「音響透かし館内放送サービスセンタ」は、本件発明2の「情報提供システム」に相当し、甲1’発明の「携帯端末(デコーダ)」は、本件発明2の「前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、前記放音システムが設置される施設内の案内対象に関連する複数の関連情報を情報提供システムから取得する取得部」に相当する構成を備えているといえる。
しかしながら、甲1’発明は、「まもなく、(レースが)始まります!!」という放送音声の透かし情報(識別情報)に対応する関連情報は、「レース」という1つの案内対象についての「まもなく、レースが始まります!!」というものである。
また、その他の想定される音響透かしデータ・サービス(メッセージ)である「(1)出走、オッズのアナウンス、(2)結果速報、払戻金情報のアナウンス、(3)業務連絡」についてみても、関連情報である上記(1)~(3)についての各メッセージは、上記(1)~(3)の内容自体が1つの案内対象と認められるから、複数の関連情報が複数の案内対象にそれぞれ関連する複数のものとはいえない。
したがって、識別情報に関連する複数の関連情報が、本件発明2では施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数のものであるのに対し、甲1’発明では1つの案内対象に関連するものである点で、両者は相違する。
ウ 上記ア、イの構成を備えた甲1’発明の「携帯端末(デコーダ)」は、本件発明1の「端末装置」に相当する。
エ 上記ア~ウから、本件発明2及び甲1’発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
放音システムにより放音される音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、前記放音システムが設置される施設内の案内対象に関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する取得部と
を具備する端末装置。
(相違点)
識別情報に関連する複数の関連情報が、本件発明2では施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数のものであるのに対し、甲1’発明では1つの案内対象に関連するものである点。
3 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
甲’1発明における、関連情報であるメッセージは、その内容自体が1つの案内対象と認められるものであり、各メッセージの透かし情報(識別情報)に対応する関連情報において、当該メッセージに直接的な関係のない施設内の別の案内対象に関連する情報を追加する(複数にする)ことへの動機は、甲第1号証及び甲2~4号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
したがって、甲1’発明において、識別情報に関連する複数の関連情報を、施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連するものとすることは、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項2、4、6に係る発明が進歩性を有しないことについて概略次の主張を行っている。
〔主張1〕
商品や物それぞれの情報を、音声とともに一括して提供するか、又は逐次提供するかは、設計事項にしか過ぎず、一括して提供するのが便宜上好ましいことは言うまでもない。(37頁9~11行)
〔主張2〕
展示物それぞれの関連情報を一括して提供するのがよいのか、逐次提供するのがよいのかは、展示物の配列によるのであるから、まさに設計事項に他ならない。また、1つの識別情報と複数の識別情報とを対応付けることは、甲第2号証及び甲第3号証にも記載されており、周知技術である。したがって、関連情報を一括して提供することに関して、何ら技術的困難性もない。(37頁24行~38頁2行)
しかしながら、上記いずれの主張も、メッセージに直接的な関係のない施設内の別の案内対象に関連する情報を追加することについてのものではないから、採用することができない。
また、特許異議申立人は、令和2年10月30日付け意見書において、概略次の予備的主張を行っている。
〔主張3〕
請求項2において、情報抽出部と取得部との動作の連係がないため、請求項2は、「前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報であって、前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する複数の関連情報を、情報提供システムから取得する」というだけの発明となっている。
この構成において「前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報」自体は、甲第4号証及び甲第3号証に開示されており、周知技術事項である。
識別情報に関連付けられる関連情報をどのような情報にするかは、提供しようとする情報に応じて決められることに過ぎないから、当業者が行う設計事項に他ならない。なお、甲第3号証の段落0042には「展示物の解説を放音する装置や、環境音やBGMを放音する装置を放音装置1とすればよい」と記載されているから、情報提供システムに記憶されている関連情報が、「前記放音システムが設置される施設内の複数の案内対象にそれぞれ関連する」情報であることは、周知技術に他ならない。
したがって、請求項2に係る発明は進歩性を有しない。請求項4、6に係る発明も同様である。(6頁26行~7頁23行)
しかしながら、甲第3号証の段落0042に係る甲3技術は、商業施設や美術館、博物館などの展示施設などでその場所の雰囲気や展示物の印象の投稿を支援するものであり、前記「その場所」が本件発明2の「案内対象」に対応すると認められるところ、IDコードとURLの対応づけを1対複数にした場合でも、支援する投稿が複数になるのは、その場所(案内対象)に関するものであり、その場所以外のものが含まれる、すなわち案内対象が複数であると解することはできない。
したがって、甲第3号証の段落0042に基づく特許異議申立人の主張は採用することができない。
以上から、請求項2に係る発明は、当業者が甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 請求項4、請求項6について
請求項2とカテゴリが異なる請求項4、6に係る発明も、上記請求項2についての理由と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第10 むすび
以上のとおり、請求項1、3、5に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1項に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項1、3、5に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
請求項2、4、6に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に請求項2、4、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700382